【要約四半期連結財務諸表注記】
1 報告企業
武田薬品工業株式会社(以下、「当社」)は、日本に所在する上場企業であります。当社および当社の子会社(以下、「当社グループ」)は、自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業です。当社グループは、幅広い医薬品のポートフォリオを有し、研究、開発、製造、およびグローバルでの販売を主要な事業としております。当社グループの主要な医薬品には、当社の主要なビジネスエリアである消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤(免疫疾患)、オンコロジー(がん)、ニューロサイエンス(神経精神疾患)の医薬品が含まれております。
2 作成の基礎
当社グループの要約四半期連結財務諸表は、IAS第34号に準拠して作成しております。本要約四半期連結財務諸表は、年度の連結財務諸表で要求されるすべての情報を含んでいないため、2023年3月31日に終了した前年度の連結財務諸表と併せて利用されるべきものであります。
本要約四半期連結財務諸表は、2024年2月2日に代表取締役社長CEO クリストフ ウェバーおよび取締役CFO コンスタンティン サルウコスによって承認されております。
当社グループの要約四半期連結財務諸表は当社の機能通貨である日本円で表示されており、特に記載のない限り、百万円未満を四捨五入して表示しております。四捨五入された数値を含む表の合計は必ずしも各項目の合算値と一致しない場合があります。
要約四半期連結財務諸表の作成にあたり、経営者は会計方針の適用ならびに資産、負債、収益および費用の金額、ならびに偶発資産および偶発負債の開示に影響を及ぼす判断、見積りおよび仮定の設定を行うことが要求されております。実際の業績はこれらの見積りとは異なる場合があります。
見積りおよびその基礎となる仮定は、継続的に見直されます。会計上の見積りの変更による影響は、その見積りを変更した会計期間および影響を受ける将来の会計期間に認識されます。
本要約四半期連結財務諸表における会計方針を適用する過程で行われた判断および見積り、ならびに会計上の見積りおよび仮定は、前年度と同様であります。
3 重要性がある会計方針
本要約四半期連結財務諸表において適用する重要性がある会計方針は、前年度に係る連結財務諸表において適用した会計方針と同一であります。
なお、当第3四半期累計の法人所得税費用は、見積年次実効税率を基に算定しております。
4 事業セグメントおよび売上収益
当社グループの顧客との契約から生じる売上収益の内訳は、以下のとおりであります。
財またはサービスの種類別の売上収益
(第3四半期累計)
(第3四半期)
(第3四半期累計)
(注)1 国内製品名:エンタイビオ
2 配合剤、パック製剤を含む
3 一般名:pantoprazole
4 国内製品名:ビバンセ
(第3四半期)
(注)1 国内製品名:エンタイビオ
2 配合剤、パック製剤を含む
3 一般名:pantoprazole
4 国内製品名:ビバンセ
(第3四半期累計)
(注)「その他」には、中東・オセアニア・アフリカが含まれております。売上収益は顧客の所在地を基礎とし、国または地域に分類しております。
(第3四半期)
(注)「その他」には、中東・オセアニア・アフリカが含まれております。売上収益は顧客の所在地を基礎とし、国または地域に分類しております。
5 製品に係る無形資産償却費及び減損損失
当第3四半期累計の製品に係る無形資産減損損失119,307百万円には、主にクローン病に伴う複雑痔瘻治療剤「アロフィセル」の臨床第3相 ADMIRE-CD Ⅱ試験のトップライン結果を踏まえて計上した73,979百万円の減損損失、および非小細胞肺がん治療剤「EXKIVITY」の販売や開発活動を全世界で自主的に中止する決定を行ったことに伴う28,477百万円の減損損失が含まれております。
6 その他の営業費用
前第3四半期累計および当第3四半期累計のその他の営業費用は、それぞれ127,643百万円および145,685百万円となりました。
前第3四半期累計のその他の営業費用には、事業構造再編費用38,473百万円、承認前在庫に係る評価損18,984百万円、提携契約に伴い当社グループが認識したオプション権に係る評価損14,796百万円が含まれております。
当第3四半期累計のその他の営業費用には、事業構造再編費用60,130百万円、AbbVie, Inc.(以下、「AbbVie社」)との供給契約に関する訴訟について当期に計上した費用25,339百万円、および条件付対価契約に関する金融資産の公正価値変動による評価損12,957百万円が含まれております。
7 法人所得税費用
Shire社は、2018年11月28日に、アイルランド歳入庁から398百万ユーロの課税に関する通知を受領しました。本通知は、2014年にShire社がAbbVie社からの買収の申し出の取下げに関する違約金として受領した1,635百万米ドルの税務上の取り扱いに関係するものです。Shire社は2019年1月に当社によって買収されています。当社グループは、本件に関して税務不服審査委員会に異議申し立てを行い、2020年末に税務不服審査委員会においてヒアリングが行われました。2021年7月30日、当社グループは本件に関して税務不服審査委員会よりアイルランド歳入庁の見解を支持する裁定を受領したことを受けて、本件に関する税金費用を引当計上しました。その後、2023年10月17日、当社グループはアイルランド歳入庁と本違約金の受領に関するすべての債務の完全かつ最終的な解決として、利息を含み罰金を含まない金額である130百万ユーロを以って本税務評価について和解する契約を締結しました。これにより、当社グループは、当第3四半期累計において、未払法人所得税のうち130百万ユーロの和解金を超える部分を振り戻し、税金費用63,547百万円を減額しました。なお、当社グループは、当第3四半期に和解金を支払っております。
実際税負担率は、前第3四半期累計12.6%に対して当第3四半期累計では△46.7%となりました。この減少は主に、当第3四半期累計に認識した上記税金費用の減額によるものです。この減少は、繰延税金資産の評価減および組織再編にかかる税金費用の増加と一部相殺されております。
8 1株当たり利益
当社の普通株主に帰属する基本的1株当たり四半期利益および希薄化後1株当たり四半期利益の算定基礎は以下のとおりであります。
(第3四半期累計)
(第3四半期)
9 社債及び借入金
(1) 社債
当第3四半期累計において、当社グループは、下記の社債を償還いたしました。
(2) 借入金
当第3四半期累計において、当社グループは、下記の借入を行いました。
当第3四半期累計において、当社グループは、下記の借入を返済いたしました。
10 資本及びその他の資本項目
(1) 自己株式の処分
前第3四半期累計において、当社は、国外の当社グループ従業員に対する長期インセンティブ報酬制度に基づき、自己株式8,091千株を処分しました。自己株式処分により、当社の自己株式は27,599百万円減少しました。
当第3四半期累計において、当社は、国外の当社グループ従業員に対する長期インセンティブ報酬制度に基づき、自己株式13,958千株を処分しました。自己株式処分により、当社の自己株式は47,614百万円減少しました。
なお、当該自己株式は、当社米国預託証券(American Depositary Share)に転換の上、従業員に交付されています。
(2) 配当
11 金融商品
(1) 公正価値の測定方法
公正価値で測定されるデリバティブおよび非デリバティブ金融商品は、公正価値測定を行う際のインプットの重要性を反映した、以下の3段階の公正価値ヒエラルキーに分類しております。レベル1は活発に取引される市場での同一の資産又は負債の取引相場価格などの観察可能なインプットとして定義されます。レベル2は、レベル1に含まれる相場価格以外のインプットのうち、資産又は負債について直接的又は間接的に観察可能なものとして定義されます。レベル3は資産又は負債に関する観察可能でないインプットであります。
(単位:百万円)
(2) 評価技法
レベル2に分類されるデリバティブの公正価値は、財務管理システムの評価モデル、またはブラック・ショールズ・モデルを用いて測定しております。これらの評価技法への重要なインプットは観察可能な市場情報に基づいております。
レベル3に分類されるデリバティブには、バーチャル電力販売契約に基づく再生可能エネルギーの固定価格と市場変動価格との差額から生じるキャッシュ・フローの決済に関連して認識したデリバティブおよび当該キャッシュ・フローの変動を相殺するために行った契約により認識したデリバティブが含まれております。レベル3に分類されるデリバティブの公正価値は、割引キャッシュ・フロー法を用いて算定しており、主な仮定として再生可能エネルギーの予想価格および再生可能エネルギー発電設備の予想発電量が考慮されております。
転換社債への投資の公正価値は、割引キャッシュ・フロー法、オプション・プライシング・モデル等の評価技法を用いて算定しております。
当社グループが売却する権利を有する顧客に対する売上債権及びその他の債権の公正価値は、請求額に基づいて測定しております。
資本性金融商品および負債性金融商品は売買目的保有ではありません。資本性金融商品または負債性金融商品が活発な市場で取引されている場合、公正価値は期末日の市場価格に基づいております。資本性金融商品または負債性金融商品が活発な市場で取引されていない場合、公正価値は各期末日現在の入手可能な情報および類似企業に基づき、修正簿価純資産法またはEBITDA倍率法を用いて算定しております。レベル3に分類された資本性金融商品または負債性金融商品の公正価値算定に用いた観察可能でない主なインプットは、EBITDA倍率法におけるEBITDA倍率であり、4.1倍から12.4倍の範囲に分布しております。
条件付対価契約に関する金融資産および金融負債は、売却時または企業結合における取得日時点の公正価値で測定しております。条件付対価契約が金融資産または金融負債の定義を満たす場合は、その後の各期末日において公正価値で再測定しております。公正価値はシナリオ・ベース・メソッドや割引後のキャッシュ・フロー等を基礎として算定しており、主な仮定として、各業績指標の達成可能性、将来収益予測および割引率が考慮されております。なお、条件付対価契約に関する金融資産は主に「XIIDRA」の売却に伴い認識した金融資産であります。条件付対価契約に関する金融負債の詳細は、「(5) 条件付対価契約に関する金融負債」に記載しております。
(3) 公正価値ヒエラルキーのレベル間の振替
当社グループは、報告期間に発生した公正価値ヒエラルキーのレベル間の振替を報告期間の末日において生じたものとして認識しております。当第3四半期累計において、レベル3からレベル1への振替がありました。当該振替は、以前取引所に上場しておらず、観察可能である活発な市場で取引がなかった企業の株式が取引所に上場したことによるものです。同社の株式は現在活発な市場において取引されており、活発な市場における取引相場価格を有しているため、公正価値の測定額を公正価値ヒエラルキーのレベル3からレベル1に振替えております。上記以外に、当第3四半期累計において公正価値ヒエラルキーのレベル間の重要な振替はありません。
(4) レベル3の金融資産の公正価値
当社グループは、主に研究協力企業への出資を目的として、資本性金融商品への投資を行っております。レベル3の金融資産の公正価値の期首残高から期末残高への調整は以下のとおりであります。レベル3の金融負債である条件付対価契約に関する金融負債については、「(5) 条件付対価契約に関する金融負債」に記載しております。レベル3の金融資産に関して、公正価値に影響を与える重要な仮定が変動した場合における、公正価値の重要な変動はありません。
条件付対価契約に関する金融負債は、当社グループが買収した被買収企業における既存の条件付対価契約を含む、開発マイルストンおよび販売マイルストンの達成等の将来の事象を条件とする企業結合における条件付対価またはライセンス契約に基づき認識した金融負債であります。各期末日において、条件付対価契約に関する金融負債の公正価値は、リスク調整後の将来のキャッシュ・フローを適切な割引率を用いて割り引いた金額に基づいて再測定しております。
当四半期末の残高は主に過去の買収から生じた既存の条件付対価契約に関するものであります。
条件付対価契約に関する金融負債の公正価値は、公正価値測定の前提となる特定の仮定が変動することにより増減します。当該仮定には、マイルストンの達成可能性が含まれます。
条件付対価契約に関する金融負債の公正価値のヒエラルキーのレベルはレベル3であります。条件付対価契約に関する金融負債の期首残高から期末残高への調整は以下のとおりであります。条件付対価契約に関する金融負債に関して、公正価値に影響を与える重要な仮定が変動した場合における、公正価値の重要な変動はありません。
(6) 公正価値で測定されない金融商品
要約四半期連結財政状態計算書上において公正価値で測定されない金融商品の帳簿価額と公正価値は以下のとおりであります。短期間で決済され、帳簿価額が公正価値の合理的な近似値となっている場合、金融商品の公正価値情報は下の表から除外しております。
長期金融負債は帳簿価額で認識しております。社債の公正価値は、評価技法への重要なインプットが観察可能な市場情報に基づいている時価情報によっており、長期借入金の公正価値は、一定の期間ごとに区分した債務ごとに、信用リスクを加味した利率により、その将来キャッシュ・フローを割り引いた現在価値によっております。社債および長期借入金の公正価値のヒエラルキーはレベル2であります。
12 コミットメントおよび偶発債務
訴訟
当社グループは、複数の訴訟および行政手続に当事者として関与しております。下記の記載事項を除き、当第3四半期累計において重要な変更はありません。
販売・営業および規制
コルクリスの反トラスト訴訟
2021年9月、米国ペンシルバニア州の東部地区連邦地方裁判所において、武田ファーマシューティカルズU.S.A., Inc.(以下、「当社グループ」)に対して反トラスト集団訴訟が提起されました。原告は卸売業者から成る暫定的クラスであり、2015年および2016年に、「コルクリス」の後発品の複数の後発品製薬会社との間の特許侵害訴訟の解決のために、当社グループが締結した和解が反競争的であると主張しておりました。2023年9月、当社グループと原告は、当社グループが少額の和解金を支払うことにより本訴訟を解決することで概ね合意し、2023年12月に和解契約を締結しました。なお、この和解は当社グループの要約四半期連結損益計算書に重大な影響を及ぼすものではありません。
供給契約に関連するAbbVie社による訴訟
2020年11月、AbbVie社は、デラウェア州の衡平法裁判所において、武田薬品工業株式会社(以下、「当社グループ」)に対して訴訟を提起し、米国食品医薬品局が当社グループの日本の光工場について指摘した品質管理体制上の問題に関連して2019年11月にForm 483および2020年6月にWarning Letterを受領したことにより生じた供給不足に起因して、AbbVie社と締結した「リュープリン」の米国での供給契約の債務不履行があったと主張していました。当該訴訟において、AbbVie社は予備的差止命令および損害賠償請求の申し立てを行いました。2021年9月、衡平法裁判所は、AbbVie社の予備的差止命令の申し立てを却下し、その後、当社グループによる供給契約の債務不履行を認めた判決を言い渡しました。2023年9月、衡平法裁判所は、AbbVie社の損害賠償額の算定について判定を行い、続いて2023年12月に判決を言い渡しました。これに基づき、当社グループは利息を含めた506百万米ドルを2024年4月にAbbVie社に支払います。当社グループは、これまでの訴訟過程において当該訴訟に係る引当金を計上しており、2023年9月の衡平法裁判所による判定に伴い、当第3四半期累計において、その他の営業費用として25,339百万円、利息を金融費用として6,577百万円、追加計上しました。
患者支援プログラムに関する調査
2019年3月期に当社グループがShire社の買収により取得したShire Pharmaceuticals LLCに対して、2019年6月に、米国司法省ボストン地方検事局から召喚状(subpoena)が発行されました。当該召喚状において、遺伝性血管性浮腫の治療薬である「フィラジル」や「CINRYZE」を含むShire社の医薬品を使用するメディケア・プログラム上の患者に対して財政支援を行う非営利団体(501(c)(3))とShire社の関係について情報の提出を求められておりました。当社グループは当該調査に協力しておりましたが、2023年12月、少額の支払により本件を解決することで合意しました。なお、この支払は当社グループの要約四半期連結損益計算書に重大な影響を及ぼすものではありません。
13 後発事象
該当事項はありません。