第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社経営の基本方針

ミッション「すべての人を非効率な仕事から解放する」

企業理念「情報サービスをとおして、世界の豊かな社会生活の実現に貢献する」

 当社グループは、「すべての人を非効率な仕事から解放する」ことをミッションとして掲げております。このミッションを実現するため、「情報サービスをとおして、世界の豊かな社会生活の実現に貢献する」ことを企業理念とし、「ITの大衆化」を目指しております。一過性のブームで終わるものではなく、お客様に継続的に利用していただき、企業文化となるようなサービスを開発し提供することを目指しております。簡単な操作、シンプルな機能と分かりやすいデザインで、日常的にパソコンやスマートフォンを活用していないIT初心者の方にとっても、安心して利用できるサービスを提供し、企業における情報活用の第一歩を支援したいと考えております。

 

(2)目標とする経営指標等

 当社グループは過年度実績を踏まえ、2025年12月期の経営計画を策定しており、目標達成に向けて取り組みを行っております。

 当社グループのサービスは、利用期間に応じて料金が発生するビジネスモデルであり、有償契約数の増加により、継続的に収益が積み上がるストック型ビジネスであることから、有償契約数、MRR(注)、チャーンレートを重要な指標としております。なお、有償契約数の増加とチャーンレートの低減によるMRRの拡大が、売上高及び利益の増加に影響するものとして、当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を実現するために重要であると認識しております。

 

(注)MRR(Monthly Recurring Revenue)

 毎月継続して生じる収益を表す指標。当社グループではサービスの利用に伴い毎月発生する利用料が該当し、サービス導入時等における一時的な手数料や短期的な利用を前提としたオプション料等は含んでおりません。

 

(3)経営環境

 当社グループが属するクラウドサービス市場におきましては、業務の効率化や生産性の向上を実現するためにデジタルトランスフォーメーションの重要性が高まっている一方で、日々新しい技術が生まれ、新規企業の参入、新サービスの提供等により変化の激しい環境にあります。また、コロナ禍を経て、リモート勤務をはじめとする多様な働き方の普及に伴い、時間や場所にとらわれず利用が可能なクラウドサービスの需要は増えていくと考えております。こうした状況を背景に、企業のITへの投資は増加が期待され、クラウドサービス市場は今後も成長していくものととらえております。

 お問い合わせを頂いた企業には製品を無料で試用環境を提供し、製品に関するセミナー動画の配信、ホームページのFAQの充実に加えて、必要に応じて、電話サポート、オンラインでの商談、セミナーを実施しております。企業活動における意思決定の遅延による新規契約の減少、景気後退に伴う企業のコスト見直し等によりサービスの解約が一時的に増加するといった懸念がありますが、現時点において経営へのマイナスの影響は軽微であります。

 このような環境の中、当社グループでは継続的に新たな技術やサービスの習得に取り組み、簡単な操作、シンプルな機能と分かりやすいデザインで企業における情報活用の第一歩となるようなクラウドサービスを提供してまいります。

 

(4)経営戦略

 「ITの大衆化」の実現のため、当社グループはより大きく成長する必要がありますが、シンプルなビジネスモデルを突き詰め、磨き続けることで一歩ずつ成長できるものと信じ、以下の図のビジネスサイクルを意識し、日々活動を続けております。

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 また、「安否確認サービス」「kintone連携サービス」ではそれぞれ以下の施策を行い、さらなる成長に向けた活動を行っております。

① 安否確認サービス

a.大規模テストによる競合サービスに対する優位性の訴求

 当社グループの安否確認サービスを契約中の顧客企業のうち申し込みのあった企業に向けて一斉送信を行う「ユーザー同時一斉訓練」を2024年10月1日に実施いたしました。顧客企業に訓練の機会を提供する目的に加え、サーバーに実際の災害時と同等のアクセスが集中してもシステムが稼働することを検証することができました。アクセスの急増にも問題なくシステムが稼働した実績を、安否確認サービスの優位性として訴求してまいります。

b.サプライチェーン全体に対する安否確認サービス利用の訴求

 従前、安否確認は自社従業員に対して行うものとして考えられておりましたが、企業が災害時に事業活動の継続を検討するためには、取引先も含めたサプライチェーン全体での安否確認が必要になると考えられます。今後、このような市場は拡大していくものと見込んでおり、また当社グループのサービスはそのような用途にも利用できるものであります。サービスの新たな活用方法として、すでに導入された企業を事例として訴求してまいります。

 

② kintone連携サービス

a.顧客当たりの売上単価の向上

 当社グループが提供するkintone連携サービスには製品ごとに複数のコースがありますが、高機能な上位コースを契約していただくことで、より高度な業務プロセスのシステム化が可能となります。

 また、当社グループは複数のkintone連携サービスを提供しておりますが、それらのサービスは互いに連携し合うことで、kintoneを安価にWebシステムのように活用することが可能となります。今後、サービスに関する活用事例などをわかりやすく動画や製品ページで紹介し、既存顧客のクロスセル・アップセルによる顧客当たりの売上単価の向上を進めてまいります。

b.エンタープライズ用途への対応

 デジタルトランスフォーメーションの重要性が高まる中、自治体や大企業によるkintone連携サービスの導入が進んでおります。その結果、サービスに対する短期的な高負荷、同一サービスの複数契約など、大規模な活用事例が増えてまいりました。今後、kintone連携サービスの改善に加えて、自治体や大企業をはじめとするエンタープライズ用途に向けた販売体制を構築し、更なる売上の向上を目指してまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループが対処すべき主要な課題は、以下のとおりです。

① 人材確保及び育成

 当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を実現するためには、優れた技術を持ち、新たな価値の創造に挑戦することのできる人材を確保、育成していくことが重要であると考えております。そのため、今後も労働環境の整備、福利厚生の充実、従業員への教育研修等に取り組んでまいります。

 

② サービス内容の充実

 当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を実現するためには、継続的にサービスの内容を充実させる必要があると認識しております。現在、当社グループの既存事業である安否確認サービス、kintone連携サービス及びトヨクモ スケジューラーに加えて、2025年1月に当社グループに迎え入れた株式会社プロジェクト・モードが提供するNotePMにおいては、便利に使えるだけでなく、誰でも簡単に操作できることを第一に、機能追加及びメンテナンスを継続してまいります。

 

③ 企業認知度及びサービス認知度の向上

 当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を実現するためには、当社グループのサービスを認知していただき、ご利用していただく有償契約数が増加していくことが必要であると認識しております。これまでも、各種イベントへの出展、広告展開等を行い、企業認知度及び当社グループのサービス認知度の向上に努めてまいりましたが、今後も引き続き、各種イベントへの出展、サービス説明セミナーの開催、広告展開等により、企業認知度及び認知度向上に努めてまいります。

 

④ 代理店販売の強化

 サービスの販売につきましては、当社グループに直接お申込みを頂いた顧客企業に販売する(直販)だけでなく、代理店等の販売パートナーを通した販売(間販)も行っております。当社グループの製品の拡販のため、間販を取り扱う専属の担当者を中心に、販売パートナー向けの資料の充実をはじめ、パートナー企業への情報提供や支援を強化することで、当社グループの製品の導入がより一層促進されるように努めてまいります。

 

⑤ トヨクモ スケジューラーの普及

 トヨクモ スケジューラーは社内のスケジュール管理と社外との日程調整が可能なサービスであり、業種や規模を問わずご利用いただけるサービスです。そのため、競合他社は多いものの市場規模は大きいと考えており、インターネットをはじめとする広告展開、展示会への出展等の実施、外部ツールとの連携機能を強化し、トヨクモ スケジューラーの普及に努めてまいります。

 

⑥ 新規サービスの開発

 当社グループの主な既存事業である安否確認サービス及びkintone連携サービスは、流行や景気に左右されにくく、安定的な売上が見込めるサービスでありますが、当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を実現するためには、新規サービスの立ち上げが重要であると考えております。法人向けクラウドサービスを提供するという軸は継続しつつ、次なる事業の柱となるサービスの開発を進めてまいります。

 

⑦ 内部管理体制の強化

 当社グループの組織は小規模であり、内部管理体制も規模に応じたものとなっておりますが、当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を実現するためには、内部管理体制の充実・強化が重要な経営課題と位置付けております。当該認識のもと、組織の拡大に応じて内部管理体制の一層の強化、充実に努めてまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティに関連するリスク及び機会などの管理のため、コーポレート・ガバナンス体制と同様、取締役社長を委員長としたコンプライアンス・リスク管理委員会を設置しております。当社のコーポレート・ガバナンスの状況の詳細は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のとおりであります。

 

(2)戦略

 当社グループは、企業理念である「情報サービスをとおして、世界の豊かな社会生活の実現に貢献する」ことの実現を目指しております。企業理念の実現のための事業活動は、社会全体の長期的な発展(サステナビリティ)に寄与するものと考えております。

 当社グループでは、事業活動を通じた社会貢献を実現するため、安定したサービスの提供、情報資産の適切な管理、保護に努めております。こうした取り組みはサステナビリティに関するリスク及び機会に対処するための取り組みとして、重要なものであると認識しております。そのため、当社グループでは、情報マネジメントシステム(ISO/IEC 27001)の認証の取得、安否確認サービスのサービス品質保証制度(以下SLA)などに取り組んでおります。

 また、当社グループのクラウドサービスは様々なオープンソースソフトウェア(※、以下OSS)を利用して製品を開発しています。OSS開発者への継続的なOSS開発の支援のため、「Thanks OSS Award」という活動を行っております。活動の詳細は「https://oss.toyokumo.co.jp/」をご参照ください。

 加えて、当社グループの事業活動を支える基盤として、人的資本への投資を重要視しており、人材確保及び育成に注力しております。具体的には、優秀で多様な人材を確保し、育成するために、継続的な採用活動に加えて、積極的な平均年収の向上、当社グループが提供するサービスに係る資格取得を支援しております。

 

※ オープンソースソフトウェア(Open Source Software)

  開発者がソースコードを無償で、公開、再利用、再配布等をすることが可能なソフトウェアのこと。

 

(3)リスク管理

 当社グループは、取締役社長を委員長としたコンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、サステナビリティ関連のリスク及び機会についての評価、管理を行っております。当社グループのコンプライアンス・リスク管理委員会については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 イ.企業統治の体制 f.会議体等 (b) コンプライアンス・リスク管理委員会」に記載のとおりであります。

 

(4)指標及び目標

 当社グループは、企業理念の実現のためのサステナビリティに関する戦略のひとつとして安定したサービスの提供を掲げており、安否確認サービスの稼働率を重要指標としております。安否確認サービスのSLAの概要及び稼働実績は「https://www.anpikakunin.com/sla」をご参照ください。

 また、優秀な人材を獲得し、能力が発揮できる環境を整え、高品質なサービスを提供することが、当社グループの戦略のひとつとして重要であると考えております。そのため、人的資本への投資という観点から、積極的な年収の向上に取り組んでおり、平均年収を重要指標としております。平均年収は、対象となる人員構成の変化による変動、経済環境や労働市場の変化の可能性を鑑みて、具体的な数値目標を定めることはせず、継続的な平均年収の向上を目指しております。

 以下に記載しております平均年収につきましては、子会社が小規模な組織であることから、当社のみの実績を記載しております。

事業年度

2022年12月期

2023年12月期

2024年12月期

平均年収千円

8,218

8,523

8,959

 

 

 加えて、企業理念の実現のために、お客様に長く利用していただき、企業文化となるようなサービスを提供することを目指しております。そのため、安否確認サービス、kintone連携サービスに係る資格取得を支援し、お客様に提供するサービスの質を高め、安心して長く利用することができる環境作りに努めております。今後、当社グループを取り巻く市場環境の変化等により、求められる知識、経験などが変わる可能性があるため、具体的な数値目標等は定めておりませんが、従業員の資格取得を継続的に支援していく方針であります。当連結会計年度末現在における当社グループの資格保有者数は以下のとおりであります。

資格名

保有者

防災士(名)

4

kintone認定アソシエイト(名)

30

 

 

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下のとおり記載しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅したものではありません。

 

(1)事業に関するリスク

① 技術革新への対応について

 当社グループの営む法人向けクラウドサービス事業を含むインターネット業界においては、技術革新のスピードが早く、日々新たなサービスが生み出されております。技術革新への対応が遅れ、当社グループが提供するサービスの競争力が低下した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、新技術への対応のため、想定していないシステムへの投資が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループでは、当該リスクが顕在化する可能性は高くないと考えておりますが、継続的にエンジニアの育成を行い、新たな技術やサービスの習得に取り組んでまいります。

 

② システム障害について

 当社グループは、インターネットを介したクラウドサービスの提供を行っているため、当社グループの利用するシステムに障害が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループでは、小規模な障害については日常的に発生しうるリスクであると認識しておりますが、できうる限り安定したサービスを提供するため、日頃からサーバーの負荷分散や定期的なバックアップ、サーバーの稼働状況の監視を行い、トラブル等の未然防止を図ってまいります。

 

③ 競合について

 当社グループは、効率的な事業運営を行うことにより、競合他社と比較して、価格面で優位性のあるサービスを提供しておりますが、競争が激化し当社グループの優位性が損なわれた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループでは、当該リスクが顕在化する可能性は高くないと考えておりますが、今後も効率的な事業運営を継続しつつ、誰もが直感的に使えて日常役立つサービスの開発に集中することにより、競合他社に対し優位性のあるサービス提供を継続してまいります。

 

④ 特定サービスへの依存について

 当社グループのkintone連携サービスは、サイボウズ株式会社の提供する「kintone」に依存したサービスとなっており、当連結会計年度において当社グループの売上高全体の約6割を占めていることから、同サービスの競争激化などにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループでは、当該リスクが顕在化する可能性は高くないと考えておりますが、引き続きkintone連携サービスの拡販に努めるとともに、当社グループの業績がkintone連携サービスに過度に依存することのないよう、安否確認サービスの拡販並びに新規サービスの普及と開発を行ってまいりました。加えて、2025年1月8日に株式会社プロジェクト・モードを子会社化することにより、同社のサービスである「NotePM」を当社グループのサービスに追加することとなりました。これにより、クラウドサービスのラインナップを拡充し、当該リスクの軽減を図ってまいります。

 

⑤ 特定取引先との契約について

 当社グループのkintone連携サービスは、サイボウズ株式会社とのパートナーネットワークオフィシャルパートナー基本規約に基づいて行われております。当該契約は、当社グループ又は同社のいずれかが有効期間満了日の2ヶ月前までに相手方に終了の通知を行った場合のほか、当社グループ又は同社のいずれかが解除事由への抵触を理由に解除を申し出た場合を除いて継続するものとされておりますが、今後当社グループが解除事由に抵触したこと等を理由に契約を解除された場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループでは、当該リスクが顕在化する可能性は極めて低いと考えており、引き続きサイボウズ株式会社と良好な関係を築いていく予定であります。

 

⑥ M&A等について

 当社グループは、成長戦略の一環としてM&A等を活用する方針です。M&A等の実施にあたっては、対象会社の成長性及び事業領域におけるポジショニングの評価並びに事前のデューデリジェンスにおいて対象企業の財務内容や契約関係等についての審査に努め、リスクを検討した上で決定しておりますが、将来、計画通りに収益を確保出来ない場合には、のれんの減損損失や投資有価証券及び関係会社株式の評価損等が発生し、当社グループの財政状態及び業績等に影響を与える可能性があります。

 

⑦ 大規模な自然災害について

 地震、台風、水害等の自然災害により、当社グループの事業活動の継続が困難になる場合のほか、当社グループが利用する設備、サービスの利用ができなくなる等の状況が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当該リスクが顕在化する時期や影響を予測することは困難でありますが、当社グループでは、有事の際に有用なクラウドサービスの提供を行っていることから、日頃より有事に備えた危機管理体制の整備を行い、発生時の損害をできうる限り低減するように努めております。

 

(2)管理体制に関するリスク

① 人材確保及び育成について

 当社グループが事業を拡大していくためには、優れた技術を持ち、新たな価値の創造に挑戦することのできる人材を確保、育成していくことが重要であると考えております。そのため、人材の採用、育成が計画通りに進まない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループでは、当該リスクが顕在化する可能性は高くないと考えておりますが、優秀な人材に適切な報酬を支払うこと、能力を発揮できる環境を整えることを経営上の重要な取り組みとしており、今後も人材の採用、育成に継続的に注力してまいります。

 

② 小規模組織であることについて

 当社グループの組織は小規模であり、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。今後、組織の拡大に応じて内部管理体制の一層の強化、充実を図っていく方針でありますが、これら施策が適切に進まなかった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性は高くないと考えております。

 

③ 情報管理体制について

 当社グループは、提供するサービスに関する多数の情報を取り扱っており、その情報資産を適切に管理することは、重要な経営課題であると認識しております。しかしながら、重要な情報資産が外部に漏洩した場合、当社グループの社会的信用の低下、損害賠償請求の発生等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループでは、当該リスクが顕在化する可能性は常にあると考えており、その対策が重要な経営課題であると認識しております。そのため、当社グループでは情報セキュリティ基本方針を定め、情報マネジメントシステム(ISO/IEC 27001)の認証(登録番号 ISA-IS-0127)を取得し、これらの方針に従って情報資産の管理、保護に努めております。これらの対策により、当社グループとして当該リスクをできうる限り低減してまいります。

 

④ 知的財産権について

 当社グループはこれまで第三者の知的財産権を侵害した事実や損害賠償等の請求を受けた事実はありませんが、何らかの理由により、当社グループが第三者の知的財産権を侵害することがあった場合、当社グループへの損害賠償請求やロイヤリティ支払要求等が発生し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループでは、当該リスクが顕在化する可能性は高くないと考えておりますが、第三者の知的財産権を侵害しないため調査等を行い、当該リスクをできうる限り低減してまいります。

 

⑤ 法的規制等について

 当社グループは、提供するサービスの必要性から、電気通信事業者の届出を行っており、「電気通信事業法」の適用を受けておりますが、その他について、現時点においては当社グループの事業そのものを規制する法的規制はないと認識しております。今後、新たな法令等の整備が行われた場合、その内容により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループでは、当該リスクが顕在化する可能性は高くないと考えておりますが、当社グループの事業に関連する法令等の整備が行われる可能性が発生した場合、顧問弁護士等の専門家と連携し速やかに対応する方針であります。

 

⑥ 特定の人物への依存について

 当社グループの創業者であり代表取締役社長である山本裕次は、会社経営の最高責任者として、当社グループの事業推進において重要な役割を果たしております。何らかの理由により同氏が当社グループの業務執行を継続することが困難になった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループでは、当該リスクが顕在化する可能性は高くないと考えておりますが、同氏に過度に依存しない経営体制を整備するため、幹部人材の育成及び強化を進めてまいります。

 

(3)その他のリスク

①配当政策について

 当社グループの配当政策につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。当社グループでは、今後、記載の方針に基づき配当額を決定していくため、当社グループの業績が配当額の算定に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、当社グループは法人向けクラウドサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は行っておりません。また、当連結会計年度は連結財務諸表作成初年度であるため、前連結会計年度との比較は行っておりません。

 

① 経営成績の状況

 当社グループは法人向けクラウドサービスの開発・販売を行っております。主なサービスとして、緊急時に簡単に情報共有できるように設計したシンプルなクラウドサービス「安否確認サービス」の開発・販売、サイボウズ株式会社の提供する業務アプリケーション構築サービス「kintone」と連携することで、より便利に利用するためのクラウドサービス「kintone連携サービス」の開発・販売を行っております。そのほか、社内のスケジュール管理と社外との日程調整が可能な新しいコンセプトのスケジューラー「トヨクモ スケジューラー」などを展開しております。

 当社グループが主なサービスを展開している国内のクラウド市場は、2011年の東日本大震災を背景に、企業におけるリスク管理やBCP(事業継続計画)に関する意識の高まりによって広がり始めました。また、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、リモート勤務をはじめとする多様な働き方の普及に伴い、時間や場所にとらわれず利用可能なクラウドサービスの需要が高まっております。今後は、従前において多くみられた基幹系システムをクラウドサービスへ移行するだけでなく、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX(注1))やデータ駆動型ビジネス(注2)、生成AI(注3)の普及によるITインフラへの投資の拡大が見込まれております。国内民間企業によるIT投資の市場規模は、2023年度の15兆500億円から、2026年度は17兆1,000億円になると予測(注4)されており、国内民間企業においてDXへの投資の必要性と意欲は継続されると考えております。

 当社グループが提供する「安否確認サービス」は、災害時に従業員等の安否確認を自動で行うクラウドサービスであります。地震をはじめ、津波や特別警報などにも連動して自動で安否確認を送信します。利用者が回答した最新の情報を、管理者権限を持つユーザーが、いつでもリアルタイムで確認することができます。また、全社で利用できる掲示板だけでなく、限定されたメンバーのみが利用できる、グループメッセージ機能を備えています。これにより、災害対策本部をオンライン上に設置し、運営することが可能となっております。パンデミックをはじめとした非常時においては、従業員等に適切な予防方法を周知する、定期的に体温の報告をしてもらうなど従業員の健康管理として活用したり、サプライチェーン等に納期の懸念があるかを確認するといった、BCP(事業継続計画)対策としても活用したりすることが可能なため、今後もサービスを利用して頂ける機会は拡大していくものと認識しております。

 2024年10月1日には、実際の災害を想定し、安否確認サービスをご利用中のお客様のうち、1,921社、702,114ユーザーに向けて全国同時一斉訓練を実施いたしました。前年を上回る過去最大規模の実施となりましたが、災害時のようなアクセス負荷状況であっても、システムが安定して稼働することを確認しております。

 「ITreview」が発表する「ITreview Grid Award 2024 Fall 安否確認システム部門」においては、満足度と認知度の高い製品に贈られる最高評価の「Leader」に18期連続で選ばれております。また、他社システムとの連携も強化しており、2024年10月には、サイボウズ株式会社の提供するkintoneのアプリに登録されている従業員の情報を、当社グループの「安否確認サービス」に簡単に取り込むことができる、アプリ連携機能を実装いたしました。

 近年、南海トラフ、首都直下地震をはじめとする巨大地震のリスクに加えて、豪雨災害を中心とした自然災害の頻発化・激甚化に伴い、住民生活や社会経済に大きな影響を与えており、防災情報システム・サービス市場は2021年度に1,050億円だった市場が、2027年度には約1,533億円市場に発展すると予測(注5)されており、災害対策のニーズは高まる方向にあると考えております。このような認識のもと、交通広告、インターネット広告、テレビCM、展示会への出展等を通じて、安否確認サービスの知名度向上と普及を進めてまいります。

 当社グループが提供する「kintone連携サービス」は、サイボウズ株式会社の提供する「kintone」と連携することで、より便利に「kintone」を利用するためのクラウドサービスであります。「kintone」内にある情報を参照した帳票の作成やWebフォームの作成など、用途に応じた6つのサービスを提供しております。「kintone連携サービス」は、1つのサービス導入でも「kintone」を便利に利用することが可能になりますが、複数のサービスを導入していただくことで、「kintone」をノーコード、ローコードでWebシステムのように活用することができるようになります。

 2024年11月には、「kintone連携サービス」の各サービスに「テンプレートギャラリー」の提供を開始いたしました。これは、勤怠登録システムやログイン認証付きマイページシステムなど、さまざまな業務シーンですぐに活用できるテンプレートを提供するものになります。これにより、お客様がゼロからシステムを構築する非効率さを解消し、時間を有効活用できるような環境づくりを目指しているものになります。2024年12月には「kintone連携サービス」の「PrintCreator」の全コースに「電子契約」機能を実装し、「kintone」を用いることで契約業務の一元管理と、迅速化、効率化を実現が可能となりました。また、「kintone」のアカウントを持っていない社外の取引先や顧客などとの情報共有を「よりセキュアに」「よりカンタン」に行うことができる機能「Toyokumo kintoneApp認証」の利用者数が2024年12月に累計で60万人を突破いたしました。

 先述の通り、従前から使い続けてきたシステムの刷新のため、自治体や民間企業によるITインフラへの投資が見込まれており、クラウドサービスを導入することが期待されております。2021年は1兆3,000億円だったクラウド基盤(IaaS/PaaS(注6))サービスの売上高は、2027年には年間平均成長率が19.6%、3兆8,000億円まで発展すると予測(注7)されております。また、国内のSaaS市場は、2023年に1.4兆円に達しており、2027年には年間平均成長率が11%、2兆円を突破すると予想(注8)されております。そのため、「kintone」を導入する企業は引き続き増加し、それに伴い、「kintone連携サービス」の契約数も増えていくものと考えております。このような認識のもと、今後もインターネット広告、イベント及び展示会への出展に加えて、設定方法や活用事例のコンテンツを充実させていくことで、「kintone連携サービス」の普及を進めてまいります。

 当社グループが提供する「トヨクモ スケジューラー」は、従来のグループスケジューラーがもつ社内の日程調整に加えて、社外の人との日程調整もできる新しいコンセプトのスケジューラーであります。予定を作成する際、サイボウズ株式会社の提供する「kintone」、「cybozu.com」と連携することで手入力の手間を省いたり、WebミーティングのURLをワンクリックで発行したりすることが可能であります。日程調整を目的としたサービスであるため、業種や規模を問わずご利用いただけるものであり、競合他社は多いものの市場規模は大きいと考えております。そのため、インターネット広告等を通じて、知名度向上に努めてまいりました。

 2023年11月に設立した子会社であるトヨクモクラウドコネクト株式会社(以下、TCC)は、当社のビジネスモデルである、IT初心者の方でも簡単で安価にご利用いただけるものとは異なり、主なターゲットとして自治体や大企業を想定し、業務パックというかたちで、kintoneをはじめとする複数のクラウドサービスを組み合わせたパッケージ製品を開発・提供することを目的としております。2024年12月には、株式会社インバウンドテックとTCCが協業し、自治体向けの給付金事業において、BPOサービスとシステムの提供を開始いたしました。こうした活動を通じて、従来はBPOサービスを利用していた案件に対して、SaaSを活用することで、低コストでのシステム構築と業務の効率化を実現できるようなサービスの開発を進めております。

 これらの結果、当連結会計年度における売上高は3,146百万円、営業利益は1,162百万円、経常利益は1,162百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は841百万円となりました。

 

(注1) デジタル技術を活用することで、業務を改善するだけでなく、製品やサービス、ビジネスモデルを改革し、業務や企業文化なども変革することで、競争力を高めること。

(注2) データをもとに、企業の意思決定を行ったり、ビジネスに活かしたりすること。

(注3) 文字などによる入力(プロンプト)に対して、テキスト、画像、その他のコンテンツを生成する人工知能。

(注4) 株式会社矢野経済研究所「国内企業のIT投資に関する調査(2024年)」(2024年11月21日発表)

(注5) 株式会社シード・プランニング「2023年版 防災情報システム・サービス市場の最新動向と市場展望」(2023年1月25日発表)

(注6) IaaSはソフトウェアを実行するための仮想サーバーやストレージ、ネットワークなどを提供するサービス。PaaSはソフトウェアを実行するためのデータベースやワークフローなどを提供するサービス。

(注7) 株式会社矢野経済研究所「クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場に関する調査(2024年)」(2024年4月23日発表)

(注8) One Capital「Japan SaaS Insights 2024」(2024年3月26日発表)

 

 

② 財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における総資産は4,663百万円となりました。主な内訳は、現金及び預金4,196百万円、売掛金107百万円であります。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債は1,606百万円となりました。主な内訳は、未払金及び未払費用242百万円、未払法人税等235百万円、契約負債977百万円であります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は3,056百万円となりました。主な内訳は、利益剰余金2,398百万円であります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、4,196百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は1,337百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上1,162百万円、契約負債の増加額256百万円、法人税等の支払額265百万円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は70百万円となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出63百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は107百万円となりました。これは主に、配当金の支払額108百万円によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績は、次のとおりです。なお、当社グループは法人向けクラウドサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載は省略しております。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

販売高(百万円)

前年同期比(%)

法人向けクラウドサービス事業

3,146

 (注)当連結会計年度の主な相手先の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については次のとおりであります。

相手先

当連結会計年度

(自  2024年1月1日

至  2024年12月31日)

金額(百万円)

割合(%)

SB C&S株式会社

366

11.6

ダイワボウ情報システム株式会社

354

11.3

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。また、当連結会計年度は連結財務諸表作成初年度であるため、前連結会計年度との比較は行っておりません。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たり、連結決算日における財政状態及び会計期間における経営成績に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、この見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)

 売上高に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。

 

(営業利益)

 当社グループの売上原価は、主にサーバー運用に係る労務費、通信費で構成され、販売費及び一般管理費は、主に人件費、広告宣伝費で構成されております。人件費については、優秀な人材を獲得し、その能力を発揮できる環境を提供することが当社グループの成長に繋がると考えているため、既存の従業員の賃金水準を高めることも含め、積極的に投資をしております。また、広告宣伝費につきましても、サービスの知名度を向上させるため積極的な投資を続けております。

 以上の結果、当連結会計年度における営業利益は1,162百万円となりました。

 

(経常利益)

 特に大きな営業外収益、営業外費用は発生しておりません。

 以上の結果、当連結会計年度における経常利益は1,162百万円となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 特別損益は発生しておりません。法人税等は322百万円となりました。

 以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は841百万円となりました。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。資金需要のうち主なものは、既存サービスの向上及び新規サービス開発に伴う人材採用費及び人件費、サービス知名度向上のための広告宣伝費、並びに新規事業展開のための投資資金であります。必要な資金については自己資金により賄う方針です。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。また、今後の経営成績に影響を与える課題につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。当社グループは経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減するため、常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制の強化、人材の確保及び育成等に努めてまいります。

 

⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について

 経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 

(1)当社がkintone連携サービスについてオフィシャルパートナー契約を行っている契約

相手方の名称

相手先の所在地

契約品目

契約締結日

契約内容

契約期間

サイボウズ株式会社

東京都中央区

kintone連携

サービス

cybozu.com

サービス

(kintone等のライセンスの仕入)

2020年11月17日

パートナーネットワークオフィシャルパートナー基本規約

プロダクトパートナー

1年ごとの自動更新

 

(2)株式譲渡契約

 当社は2024年12月13日開催の取締役会において、株式会社プロジェクト・モードの全株式を取得することを決議し、2024年12月25日に株式譲渡契約を締結、2025年1月8日付で全株式を取得し、子会社化しております。

 詳細につきましては、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご参照ください。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。