当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
<経営方針>
(1) 企業理念
当社グループは、以下の企業理念に基づき、様々な産業分野に特色のある高品質な化学製品を提供することを主方針として経営諸活動を遂行しております。
・ 企業使命 「化学の力」で、よりよい明日を実現する。
・ 経営姿勢 確かな技術と豊かな発想で、夢を「かたち」にする。
・ 行動指針 「新たな一歩」を踏み出して、さらなる高みに挑戦する。
・ 安全指針 自分を守る、仲間を守る。
(2) VISION 2030
当社グループは中長期的な視点から目指す姿を描くとともに、実現に向けた道筋を示すものとして「VISION 2030 ~世界で輝くスペシャリティケミカル企業~」を策定しております。
VISION 2030において、当社グループが目指す具体的な姿は以下の3点です。
目指す姿① 地球温暖化抑制・豊かな暮らしに貢献するスペシャリティケミカル素材を提供
事業活動を通じて地球温暖化抑制に資する製品や、よりよい暮らしに貢献できる素材を世界に向けて提供してまいります。
目指す姿② 戦略ドメインで世界シェアNo.1製品と新事業を拡大
当社が強みをもつ、冷凍機油原料、化粧品原料、高純度溶剤分野の製品を核とし、設備投資や研究開発など集中的に資源を配分する領域として、戦略ドメインを「環境」「ヘルスケア」「エレクトロニクス」に設定しました。この戦略ドメインにおいて、世界シェアNo.1の製品を拡大するとともに、新たな事業や製品を創出します。
目指す姿③ 国内で化学業界トップクラスの利益率
戦略ドメインにおいて、高付加価値で独自性の高い製品に対して生産能力の増強や新製品の開発を進め、AIやIoT等の最新技術を取り込み、生産効率を向上させることで、国内の化学業界の中でもトップクラスの営業利益率を目指します。
(3) 第5次中期経営計画
<経営環境>
世界経済は、アジア新興国を中心に安定的な成長が期待されるものの、紛争の長期化や保護主義政策の拡大、中国経済停滞の長期化が懸念されるなど将来を見通しにくい状況が続いています。また、石油化学業界においては、中国での大型設備増強により需給バランスが悪化し、汎用品を中心に国際市況も低迷していることから、国内での業界再編が進みつつあります。
<対処すべき課題>
2025年度から開始した第5次中期経営計画では、基本方針を「新たな成長ステージへ」と定め、以下の基本戦略を推進することで、更なる企業価値向上を図ってまいります。
基本戦略
戦略Ⅰ 稼ぐ力の強化
当社グループは、VISION 2030で掲げた「世界で輝くスペシャリティケミカル企業」の実現に向け、これまでも機能化学品(機能性材料、電子材料)の生産能力の増強に多くの経営資源を割くなど事業ポートフォリオ改革を進めてまいりましたが、第5次中期経営計画では、それを更に加速し、連結営業利益に占める機能化学品比率を8割超まで高めてまいります。
機能性材料分野の冷凍機油原料においては、主用途であるエアコンの市場が、今後も世界的に拡大し、特にインドを中心としたアジア地域における成長が見込まれるなか、当社は冷凍機油原料のリーディングカンパニーとして、増強した生産能力を活用するとともにグローバルに展開した物流拠点を活かすことで、収益拡大を図ってまいります。電子材料分野においては、AIなどの最先端用途向けを中心に半導体市場の拡大が見込まれるとともに、品質に対する要求水準が高まっております。当社は、四日市工場において、2022年に品質管理棟を新設するなど、高純度溶剤の品質管理体制を強化し、より付加価値の高い製品を創出してまいります。また、グループ会社である黒金化成において、2024年に増強した次世代半導体材料設備の活用等により、最先端分野向けを中心に需要を取り込んでまいります。基礎化学品においては、アジア地域における需給がさらに緩む懸念もありますが、当社は自動車・住宅などの国内基幹産業を支える販売シェアの高い製品を数多く有しており、合理化の徹底などを通して安定供給と収益確保を両立させ、その社会的使命を果たしてまいります。
戦略Ⅱ 将来への布石
戦略ドメインにおける新製品・新規事業の開発においては、これまでの「探索」から「創出」へとステージを上げてまいります。当社は、バイオ医薬品向け原料として注目されている「糖鎖」について、スタートアップ企業を始めとした社外との協業等により、他社に先駆けて量産化技術を確立することで、糖鎖製造を担うトップメーカーとなることを目指すとともに糖鎖を活用したバイオ医薬品の創薬にも貢献してまいります。更に、次世代光学レンズ材料として期待される「脂環式化合物」は、当社のコア技術であるオキソ反応を用いており、2027年度中の事業化に向けて取組みを加速してまいります。
カーボンニュートラルの実現に向けた施策としては、千葉工場において新たに導入したCO2回収装置を用いて、CO2を原料として再利用することで排出量を削減するなど、マイルストーンとして掲げた2030年の目標である2017年度比30%削減を第5次中期経営計画の期間中に前倒しで達成することを目指してまいります。
戦略Ⅲ 経営基盤の強化
当社は、競争力ある製品を世界へ展開するため、「安全総点検運動2022」の継続や予兆診断システム、高度制御システムの活用等によるスマート保安を推進することで工場の現場力を強化し、安全・安定操業を実現してまいります。加えて、一人ひとりの事情に応じた働き方が選択できる職場環境を整備するため、育児・介護・治療通院のための支援制度等の拡充や工場事務所棟の新設、改修など、ソフト・ハード両面で職場環境を改善し、多様な人財が活躍できるようにしてまいります。これらの施策に取組むことで経営基盤を強化し、サステナブル経営を更に推進してまいります。
財務資本戦略
当社グループは、今後の成長分野への投資と内部留保のバランスを勘案しつつ、株主の皆様への利益還元を実施してまいりましたが、財務健全性が一段と高まったことを受け、株主還元の強化を図ってまいります。配当性向を従来の30%目処から40%目処に引き上げるとともに、安定した配当を継続する観点からDOE(株主資本配当率)4%以上を新たに設定いたします。また、機動的に自己株式の取得を実施するなど、株価と資本コストを意識した経営を推進してまいります。
経営数値目標
期間累計連結営業利益 449億円、期間累計連結EBITDA 653億円、ROE 15%の達成を目指してまいります。また、最終年度となる2027年度には、連結営業利益 165億円、連結EBITDAは過去最高水準となる236億円を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
当社グループは「「化学の力」で、よりよい明日を実現する。」を企業使命とし、事業を通じ「安心・安全・信頼」を基盤として「環境に優しい社会」「人々の豊かな暮らし」に寄与する価値を提供するとともに、持続可能な社会に貢献することで、当社自身も持続的に企業価値を向上していく「サステナブル経営」を推進しています。
① ガバナンス
「
② 戦略
当社グループは、VISION 2030の実現に向け、第5次中期経営計画の基本方針を「新たな成長ステージへ」と定め、以下の基本戦略に基づき、施策を推し進めることで、企業価値向上を図るとともに、サステナブル経営を推進してまいります。
戦略Ⅰ 稼ぐ力の強化
戦略Ⅱ 将来への布石
戦略Ⅲ 経営基盤の強化
③ リスク管理
当社グループは、
④ 指標及び目標
当社グループは、事業を通じ「安心・安全・信頼」を基盤として「環境に優しい社会」「人々の豊かな暮らし」に寄与する価値を提供するとともに、持続可能な社会に貢献することで、当社自身も持続的に企業価値を向上していく「サステナブル経営」を推進するにあたり「7つの約束」を定めました。
7つの約束 |
|
1 |
社会課題解決に貢献する事業を展開すること |
2 |
環境への負荷低減を意識した事業活動を行うこと |
3 |
安全・安定操業を通じた信頼の確保に努めること |
4 |
高い倫理観を持った透明性ある経営を実践すること |
5 |
多様な人財がいきいきと働くことのできる環境を提供すること |
6 |
責任あるサプライチェーンマネジメントを推進すること |
7 |
「稼ぐ力」を強化すること |
当社グループは、「7つの約束」の実現に向け、第5次中期経営計画におけるKPIを設けております。KPIの進捗については、取締役会において定期的に進捗管理を行い、未達の項目があれば対策を講じております。また、達成状況を継続的に開示することで、ステークホルダーの皆様との建設的な対話の充実に努めています。
財務KPI |
2024年 |
2027年目標値 |
|
1 |
営業利益 |
122億円 |
165億円 |
2 |
EBITDA |
172億円 |
236億円 |
3 |
ROE |
13% |
15% |
4 |
ROIC |
10% |
12% |
5 |
EBITDAマージン |
14% |
18% |
6 |
一人あたりEBITDA |
21百万円 |
28百万円 |
|
第4次中計累計 |
第5次中計累計 |
|
7 |
営業利益 |
346億円 |
449億円 |
8 |
EBITDA |
485億円 |
653億円 |
9 |
機能性材料分野のEBITDA |
345億円 |
489億円 |
10 |
電子材料分野のEBITDA |
93億円 |
111億円 |
11 |
配当方針 |
配当性向30%目処 |
配当性向40%目処 |
12 |
DOE |
― |
4%以上 |
(注)No.9,10は、全社に共通する管理費用等は含まれません。
非財務KPI |
2024年 |
2027年目標値 |
|
13 |
GHG排出量(Scope1,2) |
2017年度比30.1%削減 |
2017年度比30%削減 (2030年度目標を前倒し) |
14 |
総合職に占める女性社員比率 |
14.6% |
17%以上 |
15 |
管理職に占める女性労働者の割合 |
7.7% |
11%以上 |
16 |
労働者の一月あたりの平均残業時間 |
― |
2024年度比15%削減 |
17 |
男性労働者の育児休業取得率 (育児目的の休暇制度取得を含む) |
105.0% (注)2 |
80%以上 |
(注)1.No.13,16,17は、2023年4月~2024年3月実績を表記しております。
2.2023年年末に子が生まれた社員が、2024年年初に休暇取得した為、100%を超える取得率になっております。
(2)気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応
気候変動に起因する熱中症や自然災害の増加、カーボンニュートラルに向けた脱炭素要請の高まりなど、当社を取り巻く事業環境の不確実性はますます高まっています。当社は、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」への賛同を表明し、気候変動に関する情報開示を進めています。
① ガバナンス
② 戦略
当社は、気候変動の観点からリスク・機会を洗い出し、4℃シナリオや1.5℃シナリオに基づきシナリオ分析を行い、2030年時点のリスクや機会の影響度を評価しています。これらのリスクや機会に対し「サステナブル経営」を推進することで、リスクの低減と機会の拡大を図り、企業価値の向上を目指しています。
(気候変動に対する戦略)
分類 |
リスクまたは機会の内容 |
主な対応策 |
|
物理リスク (4℃シナリオ) |
異常気象による操業への影響 |
気候変動により、高潮・豪雨・洪水・台風等の異常気象が増加し、操業への影響が増加するおそれがあります。 |
・訓練等を通じた、BCM/BCPの理解度と実効性の向上 |
移行リスク (1.5℃シナリオ) |
カーボンプライシングの導入 |
脱炭素社会の実現に向け、炭素税等のカーボンプライシングの導入が進み、財務的な負担が増加するおそれがあります。2023年のCO₂排出量と同水準:約 |
・2050年カーボンニュートラルを目指した省エネ化・新技術導入の推進 ・2030年の温室効果ガス排出量30%削減(2017年度比)の目標を第5次中期経営計画期間中に前倒しで達成 ・製品の原料としてのCO₂使用 ・インターナルカーボンプライシングの導入(1万円/1t-CO₂) ・再生可能エネルギー電力の導入 |
特定原料調達不能 |
石油精製メーカーが脱炭素の流れを受けて製油所を減らした場合、製油所から購入する原料の調達が難しくなるおそれがあります。 |
・複数購買の推進 |
|
バイオ由来原料への転換による影響 |
原料が石油由来からバイオ由来に転換することにより、品質トラブルが生じるおそれや調達コストが増加するおそれがあります。 |
・品質管理体制の維持・向上 |
|
ESG投資対応遅れ |
化石燃料の大量使用への批判が高まり、投資撤退(ダイベストメント)、株価の下落等のおそれがあります。 |
・2050年カーボンニュートラルを目指した省エネ化・新技術導入の推進 ・2030年の温室効果ガス排出量30%削減(2017年度比)の目標を第5次中期経営計画期間中に前倒しで達成 |
|
機会 (4℃シナリオ) |
適応型製品へのニーズ拡大 |
熱中症の増加等、気候変動による悪影響が拡大する中、悪影響を低減し、気候変動への適応に資する製品へのニーズが増加する可能性があります。 |
・熱中症を防ぐエアコンに不可欠な冷凍機油原料の提供の拡大 |
機会 (1.5℃シナリオ) |
脱炭素製品へのニーズ拡大 |
環境配慮要請の高まりに伴い、GHG排出量が少ない製品へのニーズが増加する可能性があります。 |
・世界中で環境に配慮したエアコンへのシフトが加速する中、そうしたエアコンに用いられる冷媒に対応した冷凍機油原料の提供の拡大 ・製品の原料としてのCO₂使用 |
(注)当社に対して、リスクまたは機会の影響度が極めて大きい項目を記載しています
③ リスク管理
当社は、リスク評価プロセスに則り重要リスクを特定していますが、気候変動に起因するリスクについても、当社に影響を大きく与えるものとして、経営上の重要リスクに特定しています。また、リスクマネジメントシステムに基づいて、リスクアセスメントを継続的に実施するとともに適宜、取締役会にてモニタリングするなど、リスク顕在化に対する予防や影響度低減のための対策を実行しています。
④ 指標と目標
(気候変動リスクに対する指標)
気候変動リスクに対する指標として、GHG排出量(Scope1,2)の削減を経営目標に設定しております。2050年までにカーボンニュートラルを目指すとともに、そのマイルストーンとして2030年におけるGHG排出量を2017年度比30%削減するという目標を設定しています。この削減目標に対し、プラント高度制御システム導入による効率的な運転の実現や高効率なLNG発電を導入するなど、様々な対策を講じております。今後、生産量の増加にともなうGHG排出量の増加も見込まれますが、第5次中期経営計画中において、2030年の目標値である2017年度比30%削減を前倒しで達成できるよう、引続き取組みを推進してまいります。
(気候変動の機会)
気候変動の機会として、当社が、環境に配慮したエアコンに用いられる冷凍機油の原料を製造・販売していることが挙げられます。エアコンにはさまざまな種類の冷媒が使用されており、冷媒の種類によって必要とされる冷凍機油の種類も変わります。これらの冷媒に起因する世界のGHG排出量は、CO2換算で年間約10億t超であるといわれています。そのため、環境に優しい冷媒への移行が世界的に進んでおり、それに適応した冷凍機油の製造には、当社の冷凍機油原料が必要不可欠なものとなっています。
加えて、当社のコア技術であるオキソ反応の原料としてCO2を使用しており、他社から購入するほか、自社で発生したCO2の一部を回収し、再利用することで排出量を低減しています。さらに、新たなCO2回収装置を千葉工場に導入し、稼働を開始しております。これら施策を通じて、排出量のさらなる削減に取り組んでいます。
オキソ反応の概要
(3)人的資本
① ガバナンス
経営による人事施策のモニタリング
3ヵ年の中期経営計画期間中に実行すべき人事施策ごとに指標を設定し、代表取締役社長をはじめとする経営陣のリーダーシップのもと、取締役会又は経営会議にてその進捗を四半期ごとにモニタリングし、各種人事施策の有効性を経営が確認しています。
また、会社の持続的成長に関わる重要な人事施策の進捗については、取締役会の諮問機関であるサステナビリティ委員会等でも今後モニタリングを行い、中長期的な視点での有効性の確認を実施してまいります。
② 戦略
当社は、長期ビジョン「VISION 2030」において人財を成長の原動力として位置付け、多様な人財が活躍し、成果を最大化する企業風土の醸成を目指しています。社員一人ひとりが自らの成長に向けて自主的に行動し、プロとして成果を出すことが、組織全体の持続的成長を促進する主要要素であると考え、さまざまな人事施策を実行しています。
企業価値向上に向けた人財強化の一環として、部門長を始めとした企業内の重要ポジションの後継者計画を検討する「人事会議」を継続して開催する一方、選抜型の育成プログラムを実施し、今後の中核ポジションを担う能力を持った人財の育成を目指しています。また、「挑戦し、やれば報われる」というコンセプトを基に、ジョブ型人事制度を管理職に続き一般職層にも導入し、実力主義に基づく「適所適財」の人財配置を実践しつつ、社員自身のキャリア形成を支援する構造を定着化させています。一方、多様な価値観を認め合う風土の醸成も重要ととらえ、育児期の社員支援、女性社員のキャリアアップ支援などのダイバーシティとインクルージョンを促進するさまざまな施策を実施しています。これにより、年齢や性別を問わず、多様な社員が最大限の成果を発揮できる環境を作り出しています。
今後も計画的な後継者育成や、高い専門性を持つプロフェッショナル人財を継続的に育成する取り組みをあらゆる部門において主体的に推進し、VISION 2030の実現に必要となる変化に強い企業体質を磨き上げてまいります。
③ リスク管理
経営活動・事業活動に影響を及ぼすリスクの実効的な管理を推進するため、リスク管理統括責任者であるCFO(最高財務責任者)を委員長、全部門長をメンバーとするリスク管理委員会を設置しております。
人財戦略を遂行する上での重要なリスク、及びその対策は次の通りです。
リスク |
主な対策 |
■人財確保や人財の定着に関するリスク ・人財は会社のサステナブルな成長、そして経営目標を達成するための原動力であることから、適切な人財を確保できないことで、経営計画の進捗に遅れが生ずる恐れがあります。特に、次期経営幹部候補などの中核人財の育成停滞については、経営上特に大きなリスクと捉えております。 |
主な対策として以下の施策に取り組んでいます。 ・採用ブランディングやチャネルの多様化等の採用強化 ・次期経営層・部門長等中核ポジションをはじめ各階層の後継計画を検討する人事会議の開催 ・中核人財の育成計画立案及び研修制度の整備 ・自律的なキャリア開発の支援・成長機会の提供 ・シニア人財活用のための再雇用制度の整備 |
■D&Iに関するリスク ・当社の経営方針であるVISION 2030で掲げる「世界で輝くスペシャリティケミカル企業」を目指す上で、イノベーションの創出は欠かせません。そのイノベーションの源泉である多様性をもった人財が生き生きと活躍できる職場環境を整備できていないことは、当社の持続的な成長の阻害要因になり得ると共に、レジリエンス(困難をしなやかに乗り越え回復する力)が低下する恐れがあります。 |
多様性を受け入れ、活かすための組織風土を醸成するべく、以下の各種施策に取り組んでいます。 ・多様な人財が自律的に働き成果を発揮できるよう、フレックスタイム制度や在宅勤務制度等のワークライフバランスを重視した勤務制度を導入 ・計画的な管理に基づく、工場部門を含めた全社における高水準の年次有給休暇取得率維持 ・国籍、年齢、性別等にかかわらず「挑戦し、やれば報われる評価・処遇制度」を導入 |
④ 指標及び目標
当社の経営方針である「VISION 2030」にて掲げるチャレンジングな目標を達成するためには、その原動力となる「人財」を強化していくことが極めて重要です。そして、この人財強化を実現するために「多様な人財が活躍し、成果を最大化する企業風土の醍成」を人財戦略の大きなテーマとしており、次の指標を目標として、定期的に実績のモニタリングを実施しております。
2024年目標で未達となった指標については、経営に大きな影響を与える要因を重点的に分析し、下記のような抜本的な改善施策を実施します。
総合職および管理職に占める女性社員比率向上
ポジションを限定せず、優秀な人財を広く募るキャリア採用活動の他、外部キャリアコンサルタントによるキャリア相談の充実、総合職へのコース転換支援などを通じ、女性社員がキャリアを持続的に形成できる環境を整えます。また、優秀な女性人財の採用と定着により、管理職層への女性の登用を加速させます。
採用者(3年未満)の離職率改善
新卒・キャリア入社者が早期に活躍できるよう、受け入れプロセスの再構築と個別支援体制の導入を進め、入社後の職場適応をサポートします。特に上司および同僚との初期段階での関係構築を促進するため、コミュニケーション活性化にむけた施策や育成体制を強化し、早期離職のリスクを低減します。
エンゲージメント調査のスコア改善
マネジメント強化と風土改革を両軸とするプロジェクトを実施し、組織全体での一体感を醸成します。さらに、工場における人事ビジネスパートナー(HRBP)の配置を推進し、現場密着型の改善を実施します。これらの施策を通じて、社員の組織への信頼を高め、持続的なエンゲージメント向上を目指します。
なお、当社グループでは、事業内容や規模の異なるグループ会社が独自の人的資本管理方針を採用し、各会社はそれぞれの事業特性や市場環境、従業員構成に応じた指標や評価基準を運用しております。これをグループ全体で統一するには、それぞれの違いを十分に考慮した上での調整作業が必要となるため、指標の目標および実績は提出会社のものを記載しております。
現時点では、グループ全体で統一された開示体制は未確立ですが、今後、各会社の情報を整理し、共通の基準を策定するプロセスを進めてまいります。また、基本方針や主要なKPIをグループ全体で共有し、段階的に開示体制を整備する予定です。
NO |
指標 |
2024年末実績 (注)1 |
(注)2 |
1 |
|
|
|
2 |
|
|
|
3 |
|
|
|
4 |
|
|
10%以上改善 ( |
5 |
(休暇年度:4月1日~3月31日) |
(注)3 |
|
6 |
(育児目的の休暇制度取得を含む) |
(注)4 |
|
(注)1.実績は、NO4を除き2024年12月31日現在の実績を表記しております。
2.第4次中期経営計画で掲げた目標数値を表記しております。
3.2023年4月1日~2024年3月31日を休暇年度とした年次有給休暇取得率の実績を表記しております。
4.2023年年末に子が生まれた社員が、2024年年初に休暇取得した為、100%を超える取得率になっております。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。ただし、以下の事項は当社グループのリスクのうち主要なものを記載しており、当社グループのリスクを網羅的に記載したものではなく、記載された事項以外にも予測しがたいリスクが存在する可能性があるものと考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)リスク管理への取組み状況
① リスク管理活動
当社グループは、リスクを経営活動・事業活動に影響を及ぼす不確実性と定義しております。部門横断による全社視点からの内部リスク及び政治・経済・社会情勢等を考慮した外部リスクの両面から可能な限りリスクを洗い出したうえで、一覧化した全社リスク台帳とリスク毎に影響度と発生可能性を評価したリスクマップを作成し、毎年見直しをしております。リスクを把握することによって、リスクの顕在化を可能な限り未然防止するとともに、リスクが顕在化した際にその影響を最小限にとどめるためのリスク管理活動をしています。
② リスク管理体制
当社グループのリスク管理を推進するため、CFO(最高財務責任者)を委員長、全部門長をメンバーとするリスク管理委員会を設置し、当社グループの経営上重要なリスクの抽出・評価・対策計画の立案に関する検討及び審議を行い、対策の進捗状況のモニタリングを行っております。本委員会は、原則として年2回開催し、議論された内容は、サステナビリティ委員会に報告し、経営リスク全般の確認と対策の検討・策定を行った上で、重要な事項は取締役会に報告しています。
(2)リスク認識
① 外部環境リスク
当社グループの事業は、経済・市場環境、原燃料の価格変動、為替変動等の外部環境の影響を受けるおそれがあります。
1)経済及び市場環境の変動に係るリスク
当社グループの製品の需要は、自動車、住宅、電子電気機器及び消費財等の最終製品の需要に左右され、国内外の工業生産量の全体的な変動及び個別最終製品を消費する国または地域の経済状況や地政学的リスクが当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、競合他社による大型生産設備の建設等により供給過剰となるなど市場環境が大幅に変動した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、製品需要に応じた生産及び在庫調整を行うとともに、販売施策を講じることにより、これらの影響を低減するように努めております。
2)原燃料の価格変動に係るリスク
当社グループは、ナフサを分解して製造されるプロピレンやエチレン等を主要原材料とし、またLNG等を原燃料とする等、グローバルな経済活動と連動した事業特性を有しております。そのため、原油価格、需給バランス、為替等の影響により、これらの価格が急激に変動した場合、もしくは価格の高騰が続く場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、製品販売価格への転嫁等をタイムリーかつ適切に講じることにより、これらの影響を低減するように努めております。
3)為替変動に係るリスク
当社グループは、海外から原材料の一部を輸入するとともに、国内で製造した製品の一部を海外に輸出しております。そのため、為替レートが大幅に変動した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、為替予約等によりリスクヘッジを行っております。
4)感染症に係るリスク
当社グループが事業活動を行う国・地域で重篤な感染症が発生・拡大し、事業活動に制限が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、感染症蔓延に備え、従業員の行動ガイドラインを策定し、これを徹底させること等により、事業への影響の最小化に努めてまいります。
② 重要リスク
リスクマップの中から、当社グループの経営活動・事業活動に対して、影響度が極めて高く、企業価値・社会的関心の視点から重視すべきリスクを「重要リスク」と位置づけ、リスク項目毎に、責任者としてCxOをリスクオーナーに任命し、リスク対策の立案及び対策の実行を推進する統括部門及び関連部門と連携を図りながら、実効的なリスク対策を推進しています。
リスク分類 |
リスク項目 |
1)コンプライアンス |
法令違反、法的規制 |
2)生産活動 |
設備・機械の損傷・故障、労働災害 |
3)人財 |
人員不足、中核人財の育成停滞 |
4)事業継続 |
大地震・自然災害、特定原料・資材の調達不能 |
5)サイバーセキュリティ |
サイバー攻撃 |
6)気候変動 |
異常気象、炭素税の賦課 |
1)コンプライアンスに係るリスク
当社グループは、事業の特性上、高圧ガス保安法に基づく高圧ガス製造に係る許認可をはじめとする各種許認可を受け事業を展開しております。さらに、取り扱う化学物質に関する国内外の様々な法規制の適用を受けており、法令遵守とともに、これら法令に基づく手続きを漏れなく適切に行うことが求められます。これらの規制は強化される傾向にあり、法規制の大幅な変更や規制強化が行われた場合、あるいは予期せず対応が遅れた場合、事業上の制約や法令遵守のための費用の増加、もしくは行政処分、罰則等の賦課により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、当社グループにおいて、役職員等による個人的なコンプライアンス上の違反が判明した場合、当社グループの社会的信用の失墜、ブランドイメージの低下、損害賠償請求等を受けた場合には、対応措置のための費用の発生等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、当社グループの持続的な成長を可能とするために実施すべき行動原則としてコンプライアンス・コードを定め、商取引、保安・安全衛生、環境・化学物質、人権・労働などに関する国内外の様々な関連法規制に則り、コンプライアンスの徹底を図りながら事業活動を行っております。さらに、公益通報を含む各種通報や相談を受け付けるKHネオケムホットラインの対象をグループ会社にも拡充し、不正やリスクの未然防止や早期発見・適切な改善を図る体制を構築しております。また、コンプライアンス研修や教育を行うなど、コンプライアンス意識向上に積極的に努めております。
2)生産活動に係るリスク
当社グループは、生産活動において各種化学物質を使用しており、その取扱いには万全の対策を講じております。しかしながら、設備・機械の損傷・故障、火災や爆発等の産業事故災害、労働災害等が発生した場合には、生産への影響、行政処分、社会的信頼の失墜等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、製造設備に対する保守点検・計画的な検査修繕、安全確保のための設備投資等を実施するなど、工場の保安事故の発生防止に努めております。また、保安・安全及び環境保全に係る環境保安ポリシーを定め、当社のRC(レスポンシブル・ケア)活動を確実に推進するとともに、全社重点施策等を立案する機関として、環境保安委員会を設置し、原則として年1回開催しております。
3)人財に係るリスク
当社グループは、労働市場の人財獲得競争の激化や人財流動化等により、必要な人財が確保できず、また中核人財等の育成が計画通りに進まない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、採用活動・体制を強化し、人財要件を明確化した上で採用計画を策定するなど、必要な人財の確保に取り組んでおります。また、中核人財の育成計画の策定及び研修制度の整備などに積極的に取り組んでおります。
4)事業継続に係るリスク
(大地震・自然災害等に係るリスク)
当社グループは、大規模な地震や大型台風等の自然災害の発生等により、当社グループの役職員等の人的な被害、製造設備の被害による生産活動の停止及び修繕のための費用の発生、または、サプライチェーン上の障害に伴う機会損失が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、地震をはじめとした災害に対しては、事業継続マネジメント(BCM)基本方針書を策定し、本社及び工場を対象に事業継続計画(BCP)を用いて定期的に訓練を実施することで、災害が発生した際に損害を最小限に抑え、事業の継続や早期復旧を図る体制を整備しております。
(特定原料・資材の調達に係るリスク)
当社グループは、特定原料・資材等について製造拠点の立地条件及び運搬・貯蔵方法等に伴う制約から特定の仕入先に依存する場合があり、特定の仕入先における被災や事故、事業ポートフォリオの見直しによる事業撤退や統廃合等により長期間に亘る特定原料・資材等の供給不能又は供給不足・停止が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、特定原料・資材等を複数の仕入先から購入することにより安定調達を図るとともに、適正在庫を保有することで、生産に必要な特定原料・資材等が十分に確保されるよう努めております。
5)サイバーセキュリティに係るリスク
当社グループは、事業活動を行ううえで多くの機密情報や個人情報を保有しております。年々高度化するサイバー攻撃や不正アクセス、ネットワーク障害等が発生した場合には、業務活動に支障が出るとともに、競争力の低下により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、不測の事態により、個人情報等の情報漏洩やデータ改ざんが発生した場合には、社会的信用の低下を招く可能性があります。
当社グループでは、その対策として、サイバーセキュリティポリシー及び個人情報保護ポリシーを定め、厳正な管理体制のもとで情報漏洩の防止に努めるとともに、様々なサイバーセキュリティ対策を講じております。
6)気候変動に係るリスク
当社グループは、気候変動によって生じる変化を重要なリスク要因と認識しております。当社グループでは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同し、TCFD提言の枠組みに基づき、事業活動への影響分析を行い、統合報告書等において、その対応結果や進捗の開示に努めております。
気候変動によって、高潮・豪雨・洪水・台風等の異常気象が増加した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、脱炭素社会の実現に向け、炭素税等のカーボンプライシングの導入が進むことで、財務的な負担が増加するおそれがあります。具体的には、IEA(国際エネルギー機関)のNZE2050に基づく、1.5℃シナリオでは、2030年時点における炭素価格が130USD/1トンとなり、仮に炭素税等が導入された場合、2023年度のGHG排出量約37.8万トンに対し、約68.8億円/年(為替1USD=140円)の負担が増加する可能性があります。将来の炭素税等の導入リスクを鑑み、2024年からインターナルカーボンプライシングを導入いたしました。社内炭素価格をCO2排出量1トンあたり1万円とし、今後の投資判断の参考といたします。
また、最新技術を活用したプラント高度制御システムの導入を拡大することや自家発電設備の更新等、これまで培ってきた技術力を活用することにより、生産活動におけるエネルギー効率向上を通じたGHG排出量の削減などに積極的に取り組んでおります。当社の主力製品である冷凍機油原料は、低GWP(地球温暖化係数)冷媒を使用したエアコンに使用されており、事業を通じ、地球温暖化抑制に貢献しております。加えて、当社は、製品の生産において、CO2を原料として使用するオキソ技術を用いており、自社で発生したCO2の一部を回収し、再利用することで排出量の削減に貢献しております。さらに、2025年2月に千葉工場で完成したCO2回収装置も活用し、CO2排出量のさらなる低減に取り組んでまいります。
気候変動による事業活動への影響分析や、その対応策等に関しては、サステナビリティ委員会において、審議・モニタリングを行い、定期的に施策を見直すことで、引き続きリスクの低減に努めてまいります。
③ その他事業上のリスク
1)海外事業に係るリスク
当社グループは、アジア及び米州を中心とした海外事業を展開しておりますが、海外においては、政治、経済情勢の変化、予期しえない法規制の変更、自然災害、テロ、戦争による社会的又は経済的な混乱、慣習等に起因する予測不可能な事態の発生等、それぞれの国や地域固有のリスクが存在します。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、駐在員の派遣等の対応により現地事情などの情報収集に努めております。
2)製品品質保証・製造物責任に係るリスク
当社グループにおいて、大規模な製造物責任につながる製品の欠陥が発生した場合には、多額の賠償額が発生することにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、国際的な品質マネジメントシステム規格であるISO9001に従い、製品品質の向上に努めた生産活動を行うとともに、万一の事故に備え、製造物責任賠償保険に加入することでリスクヘッジしております。また、品質保証に係る品質保証ポリシーを定め、当社の品質管理活動を確実に推進するとともに、全社重点施策等を立案する機関として、品質保証推進会議を設置し、原則として年1回開催しております。
3)知的財産に係るリスク
当社グループにおいて、第三者が当社グループの特許権等を侵害している場合には、警告や訴訟提起などの対策を行いますが、第三者の侵害行為や同様の技術開発を全て発見できない可能性があります。また、第三者から特許権等への抵触を理由として差止訴訟、損害賠償請求訴訟等を提起され、当社グループにとって不利な判断が下される可能性があります。このような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、その対策として、知的財産ポリシーを制定し、自社の知的財産の保全、管理、活用と第三者の知的財産の尊重とを進めることを通じて、企業価値の維持・向上、知的財産リスク低減に努めております。研究開発の成果について特許権等の権利化を進めることにより知的財産権の保護や他社へのライセンス等による活用を図るとともに、他社の知的財産を侵害しないために、新製品や新技術の開発前に先行技術等の調査を行うほか、既存製品についても定期的に調査を実施しております。
(1) 経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、持続的な賃上げによる雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の増加を背景に、緩やかな回復が継続しました。一方で、欧米における高い金利水準の継続や中国経済の停滞など、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクとなっており、物価や金融資本市場の動向も含め、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような環境のもと、当社グループは、競争優位性のある機能性材料分野と電子材料分野が業績を牽引し増収増益となりました。また、当社の主力製品である冷凍機油原料設備の増強工事を完了しました。
それらの結果、当連結会計年度の当社グループの売上高は1,197億58百万円(前連結会計年度比3.9%増)、営業利益は121億95百万円(同22.6%増)、経常利益は120億55百万円(同24.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は83億60百万円(同22.5%増)となりました。
事業分野別には、次のとおりであります。
(事業分野別の売上高の概況)
区分 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
|||
金額 |
構成比 |
金額 |
構成比 |
金額 |
増減率 |
|
(百万円) |
(%) |
(百万円) |
(%) |
(百万円) |
(%) |
|
機能性材料 |
50,374 |
43.7 |
55,874 |
46.7 |
5,499 |
10.9 |
電子材料 |
11,668 |
10.1 |
11,961 |
10.0 |
292 |
2.5 |
基礎化学品 |
52,352 |
45.4 |
51,189 |
42.7 |
△1,163 |
△2.2 |
その他 |
822 |
0.7 |
733 |
0.6 |
△88 |
△10.8 |
合計 |
115,217 |
100.0 |
119,758 |
100.0 |
4,540 |
3.9 |
(事業分野別の営業利益の概況)
区分 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
|||
金額 |
構成比 |
金額 |
構成比 |
金額 |
増減率 |
|
(百万円) |
(%) |
(百万円) |
(%) |
(百万円) |
(%) |
|
機能性材料 |
8,430 |
64.4 |
11,063 |
71.4 |
2,633 |
31.2 |
電子材料 |
1,883 |
14.4 |
2,407 |
15.5 |
523 |
27.8 |
基礎化学品 |
2,611 |
19.9 |
1,970 |
12.7 |
△641 |
△24.5 |
その他 |
167 |
1.3 |
62 |
0.4 |
△104 |
△62.6 |
本社費 |
△3,146 |
- |
△3,308 |
- |
△161 |
5.1 |
合計 |
9,946 |
100.0 |
12,195 |
100.0 |
2,248 |
22.6 |
(注)なお、事業分野別の状況における「営業利益」には、全社に共通する管理費用等は含まれません。
機能性材料は、インド等新興国での需要拡大もあり全体としてエアコン市場は堅調であったなか、当社冷凍機油原料の販売も順調に推移しました。また、販売価格についても変動するコストの転嫁を適切に推し進めました。化粧品原料に関しては、国内を中心に高品質グレードを増販、海外でも現地販売網の拡大に取り組みました。その結果、売上高は558億74百万円(前連結会計年度比10.9%増)、営業利益は110億63百万円(同31.2%増)と増収増益となりました。
電子材料は、半導体市場において生成AI向けなどの先端分野が好調に推移し、当社高純度溶剤の販売も増加しました。その結果、売上高119億61百万円(前連結会計年度比2.5%増)、営業利益24億7百万円(同27.8%増)となりました。
基礎化学品は、国内における自動車生産や住宅着工は前年割れが続きました。また、大規模定期修繕等の影響もあり、売上高は511億89百万円(前連結会計年度比2.2%減)、営業利益は19億70百万円(同24.5%減)となりました。
その他の分野の売上高は7億33百万円(前連結会計年度比10.8%減)、営業利益は62百万円(同62.6%減)となりました。
②財政状態
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は693億66百万円となり、前連結会計年度末に比べ31億21百万円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が25億26百万円減少しましたが、受取手形、売掛金及び契約資産が46億38百万円、棚卸資産が6億24百万円増加したことによるものであります。
固定資産は620億95百万円となり、前連結会計年度末に比べ38億42百万円増加いたしました。これは主に、無形固定資産が1億88百万円減少しましたが、有形固定資産が32億17百万円、投資有価証券が4億71百万円増加したことによるものであります。
この結果、資産合計は1,314億62百万円となり、前連結会計年度末に比べ69億64百万円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は466億49百万円となり、前連結会計年度末に比べ46億82百万円減少いたしました。これは主に、コマーシャル・ペーパーが29億96百万円増加しましたが、1年内償還予定の社債が50億円、修繕引当金が19億95百万円減少したことによるものであります。
固定負債は128億93百万円となり、前連結会計年度末に比べ62億21百万円増加いたしました。これは主に、社債が50億円、修繕引当金が7億7百万円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は595億42百万円となり、前連結会計年度末に比べ15億38百万円増加いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は719億19百万円となり、前連結会計年度末に比べ54億25百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益83億60百万円及び剰余金の配当33億43百万円によるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ25億26百万円減少し、71億58百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は69億82百万円(前連結会計年度は132億1百万円の獲得)となりました。これは主に、売上債権の増加額45億97百万円、法人税等の支払額28億41百万円、仕入債務の減少額16億4百万円により資金が減少しましたが、税金等調整前当期純利益119億18百万円、減価償却費48億39百万円により資金が増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は88億97百万円(前連結会計年度は49億37百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出84億32百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は6億45百万円(前連結会計年度は95億1百万円の使用)となりました。これは主に、コマーシャル・ペーパーの増加額29億94百万円、社債の発行による収入49億72百万円により資金が増加しましたが、社債の償還による支出50億円、配当金の支払額33億42百万円により資金が減少したことによるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
当社グループは化学品事業の単一セグメントであるため、事業分野別に記載しております。
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績を事業分野ごとに示すと、次のとおりであります。
事業分野の名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前年同期比(%) |
機能性材料 (百万円) |
54,504 |
110.1 |
電子材料 (百万円) |
11,369 |
99.8 |
基礎化学品 (百万円) |
50,154 |
105.0 |
合計(百万円) |
116,029 |
106.8 |
(注)金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当社グループでは一部受注生産を行っておりますが、売上高のうち受注生産の占める割合が低いため、受注実績は記載しておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績を事業分野ごとに示すと、次のとおりであります。
事業分野の名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前年同期比(%) |
機能性材料 (百万円) |
55,874 |
110.9 |
電子材料 (百万円) |
11,961 |
102.5 |
基礎化学品 (百万円) |
51,189 |
97.8 |
その他 (百万円) |
733 |
89.2 |
合計(百万円) |
119,758 |
103.9 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
出光興産㈱ |
14,755 |
12.8 |
17,448 |
14.6 |
ミヤコ化学㈱ |
11,803 |
10.2 |
12,115 |
10.1 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の当社グループの売上高は1,197億58百万円(前連結会計年度比3.9%増)、営業利益は121億95百万円(同22.6%増)、経常利益は120億55百万円(同24.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は83億60百万円(同22.5%増)となり、前連結会計年度に比べ増収増益となりました。
当連結会計年度末における有利子負債(リース債務を除く。)残高は前連結会計年度末に比べ29億27百万円増加の177億47百万円、純有利子負債(リース債務を除く。)残高は前連結会計年度末に比べ54億53百万円増加の105億88百万円となりました。これは主に、設備資金の支払により現金及び預金が減少したこととコマーシャル・ペーパーを発行したことによるものであります。
当連結会計年度末における自己資本比率は52.6%となり、引き続き安定的な水準にあるものと認識しております。
なお、経営成績等の概要につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況及び②財政状態」に記載のとおりであります。
②経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、経済・市場環境、原燃料の価格変動、為替変動が挙げられます。詳細につきましては「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の概要は「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社は、運転資金及び設備投資に使用するための資金を内部資金または借入金及び社債により調達しております。このうち、有利子負債による資金調達につきましては、運転資金を主に短期借入金及びコマーシャル・ペーパーにより、設備投資などのための長期資金を主に長期借入金及び社債により、それぞれ調達しております。
当連結会計年度末における現金及び預金は71億58百万円となりました。前連結会計年度末の96億84百万円から25億26百万円減少しておりますが、十分な手元流動性を確保しているものと認識しております。
当社グループは、現在の手元流動性と営業活動によるキャッシュ・フローの創出により、財務健全性を維持しながら、今後の資金需要に対応可能であると考えております。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
⑤経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
合弁関係
KHネオケム株式会社(当社)
締結先 |
合弁会社名 |
設立の目的 |
資本金 |
設立年月日 |
三菱ケミカル㈱ |
㈱ジェイ・プラス (持分法適用関連会社) |
可塑剤の製造及び販売 |
480百万円 出資比率50.0% |
2000年4月 |
当社は、企業使命“「化学の力」で、よりよい明日を実現する。”を具現化するため、積極的に研究開発を進め、既存事業の競争優位性向上と社会課題解決型の新製品・新規事業創出に取り組んでいます。
当社の創業以来のDNAは、世の中に求められる製品を開発し、より付加価値の高い製品群に発展させていくモノづくりの姿勢です。当社のコア技術である、オキソ反応を軸とする合成技術を活用し、単に規模を追い求めるのではなく、市場が抱える課題に正面から向き合うことで価値を創造してきました。これまでに蓄積した無形資産(ネットワーク、技術・ノウハウ等)を駆使し、市場ニーズに向き合う顧客起点での連続的な成長だけでなく、新たな社会課題解決型のビジネス創出をオープンイノベーション活動等も活用しながら目指す非連続的な成長にも取り組んでいます。連続的な成長は事業部、非連続的な成長はイノベーション戦略部が主に担当しています。加えて、生産技術力のさらなる強化を図る技術開発センター、新規事業を含めた知的資産の強化を担う知的財産部が連携し、事業戦略・研究開発戦略・知的財産戦略が三位一体で活動しています。
2024年は第4次中期経営計画の最終年度であり、探索により見出されたテーマを事業化に繋げるための活動を展開してきました。2025年からの第5次中期経営計画では、「探索」から「創出」ステージに移行し、事業化に向けた取り組みを加速化してまいります。
当連結会計年度における主な研究開発活動の内容は以下のとおりであります。
(1)環境
<冷凍機油原料>
当社の冷凍機油原料事業は、グローバル市場での成長を支える核となる事業です。世界的に冷媒規制が強化される中、低GWP冷媒を使用した環境配慮型エアコンの需要が拡大しています。当社は、環境配慮型エアコンに対応可能な冷凍機油原料を製造しており、競争力のある製品の安定供給を実現しています。さらに、この冷凍機油原料の生産性を高め、変化する市場のニーズに対応するため、技術開発を進める体制を強化しています。
長年の技術蓄積がある高圧法および低圧法オキソ反応技術の継続的な進化や、炭酸ガス回収技術及び高度制御システムを用いた省資・省エネの取り組みを進め、持続可能な生産体制の構築に注力しています。
これらの技術の蓄積を生かし、2024年7月には、冷凍機油原料の生産設備増強工事が完工しました。この増強工事では、従来比1.5倍の生産能力増強を実現しています。この成果により、拡大する市場需要への迅速な対応が可能となり、当社の競争優位性がさらに高まりました。
<新製品・新規事業>
当社は海洋プラスチック問題の解決を目指し、再生可能資源を活用した海洋生分解性樹脂(PHB)の開発を進めています。これは、グリーンケミカルを基盤として、海洋環境での生分解性を持つ材料を発酵法で製造し提供することを目指したものであります。当社では、強みである化学技術や品質管理技術、及び顧客と連携した製品開発ノウハウを活かしたうえで、大学や様々な企業の外部の力を積極的に取り入れるオープンイノベーションも推進させることで、量産化に向けた具体的な技術基盤の確立に取り組んでいます。この取り組みは、環境負荷を低減しながら新たな価値を創造する重要な分野として位置づけ、事業部、イノベーション戦略部、知的財産部が連携し進めています。
また、農業分野においては、地球温暖化に伴う気候変動が農作物の生産に与える影響に対応するため、2022年にバイオスティミュラント剤の開発を強みとするアクプランタ株式会社に出資しました。このバイオスティミュラント剤は、植物の気候変動耐性を高め、農作物の生産性向上に寄与することが期待されています。当社はアクプランタとの共同研究を深めており、当社の化学ノウハウとアクプランタの農学ノウハウのシナジー創出を進め、農業分野での新たな価値創造を目指しています。
さらに、カーボンニュートラルへの貢献が期待できる新製品の開発に取り組み、当社の生産技術を活用した量産化プロセスを検討しています。これにより、持続可能性と収益性を両立し、社会課題の解決と当社の成長を支えてまいります。
(2)ヘルスケア
<化粧品原料>
当社は、化粧品原料分野において、高度な精製技術と品質管理技術の研究開発に注力しています。技術開発センターでは、最新の分析機器を活用した不純物の特定・分析技術の開発を進めており、より微細な不純物を検出・同定する技術の確立に取り組んでいます。同時に、工場における製造工程では、これらの知見を活かした不純物の抑制技術の開発や、品質管理技術に基づく厳格なモニタリング体制の整備を推進しています。特に、製造工程の各段階における不純物の挙動を詳細に解析し、その生成メカニズムを解明することで、より効率的な除去方法の開発に成功しています。これらの技術革新により、当社は化学品特有のにおいや肌への刺激が極めて少ない製品を実現してきました。開発された製品群は高い保湿性と適度な抗菌性を兼ね備えており、高級スキンケア製品をはじめとする幅広い用途で採用されています。
現在、アジアを中心とした新興国での中間所得層の拡大に伴い、高品質な化粧品原料の需要は世界的な成長が見込まれています。特に、スキンケア製品に対する品質要求の高まりや、インバウンド需要の回復により、当社の化粧品原料への期待は一層高まっています。当社はこの成長市場における競争優位性をさらに高めるため、研究開発投資を続けてまいります。また、当社の製造技術、精製技術を基盤とした新規事業創出に向けた検討も進めております。
<新製品・新規事業>
当社はバイオ医薬品に着目し、糖鎖という人工合成が困難な生体内希少成分による創薬支援を行っている株式会社糖鎖工学研究所との取り組みを進めています。糖鎖工学研究所は糖鎖の製造技術を有している世界的に数少ない企業であり、同研究所の製造技術と当社の強みである化学技術を掛け合わせて、商業レベルの製造技術を確立することを目指しています。また、2024年12月には、独自のDRP(ジスルフィドリッチペプチド)を用いてリード化合物(創薬の種となる化合物)の探索を行うベネイノテクノロジーズ株式会社と資本・業務提携を行いました。糖鎖による薬理活性や体内動態の改善効果の実証を進め、ベネイノテクノロジーズのDRP技術とのさらなるシナジー創出およびDRP創薬の加速を進めていき、次世代の医薬品開発に寄与することを目指します。
(3)エレクトロニクス
<高純度溶剤>
当社は半導体および液晶ディスプレイの製造プロセスに不可欠なフォトレジスト等の原料となる高純度溶剤を提供しています。また、グループ会社の黒金化成では、次世代半導体向け材料の製造を通じて、電子材料分野での競争力を強化しています。市場から求められる超高純度化や極低金属化といった品質要求に応えるため、事業部、技術開発センター、工場が連携し、技術革新を積極的に推進しています。
2022年には、四日市工場に新たな品質管理棟を建設し、業界最高水準のクリーンルームを導入しました。この施設は、顧客からの品質に対する信頼性の向上を目的とするとともに、高度化する顧客要求に迅速かつ柔軟に対応するための重要な基盤となっています。また、EUV(極端紫外線)リソグラフィー技術の進展に対応するため、大学との共同研究を通じて、当社溶剤が最先端のプロセスにおいて果たす効果を検証し、次世代半導体製造に寄与する製品の開発を進めています。
黒金化成では、受託事業に関連した研究開発活動を中心に行っています。新規受託案件を検討する「研究部」と量産化に向けた工業的製法の確立と製造部門への業務移管を行う「生産技術部」の2部門を設置し、開発段階に応じた業務分担により、顧客の要望に対して柔軟かつ迅速に対応できる体制をとっております。また2020年秋には最初の次世代半導体向け材料設備を完工させ半導体関連材料の研究開発活動を精力的に推進すると共に2024年秋には大型の次世代半導体向け材料設備も完成させ拡大する需要の取り込みを図っております。こうした設備投資の他、高まる品質要求への対応や次世代半導体向けの素材需要の取り込みをより確実なものにするため、引き続き半導体関連材料の研究開発活動を進めていきます。
これらの研究開発活動により、高純度溶剤の品質向上や付加価値のさらなる向上を目指してまいります。今後も、当社グループは半導体産業を中心とする電子材料分野での取り組みを強化し、顧客の期待に応える製品開発を進めることで、持続可能な成長を実現してまいります。
<新製品・新規事業>
当社は、オキソ反応技術を基盤とし、電子材料分野での新規事業開発を推進しています。その一例として、車載カメラの義務化や先進運転支援システム(ADAS)、さらには自動運転技術の進展に伴い需要が拡大している高性能センシングカメラ用のプラスチックレンズ向け素材として脂環式モノマーの開発に取り組んでいます。このモノマーは、高耐熱性、低誘電特性、低吸水性といった優れた特長を備えており、車載やスマートフォンのカメラ、さらには5G・6G通信といった次世代電子材料分野での幅広い応用が期待されています。これらの用途では、高い品質基準を満たす原料が求められることから、当社の化学品製造ノウハウを最大限に活用し、事業化に向けた取り組みを加速しています。
当社独自の技術を活用した開発品は市場で高く評価されており、これにより開発のステージが着実に進展しています。今後も、電子材料市場での成長機会を捉え、社会的需要の高い製品の開発に注力することで、当社の持続可能な成長と収益基盤の強化を実現してまいります。
(4)当連結会計年度の研究開発活動
当連結会計年度における研究開発費の総額は
当社グループは、化学品事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を省略しております。