第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの事業環境は、地政学・経済・地球環境・サステナビリティ・デジタル化を含む技術革新などにおいて、様々な変化が複合的・加速度的に起こり続けています。特に、当社グループが経営の中核に据えるサステナビリティについては、気候変動対応に加えて、ネイチャーポジティブ(自然再興)への対応などより一層重要性が高まっております。また、モビリティ業界においては、EVの普及スピードは足元で一部停滞傾向にありますが、中長期的には変わらず、中国EVメーカーが攻勢を強めるなど自動車業界の構造変化が進んでおり、それに連動してタイヤ業界においても欧州・南米を中心に中国廉価輸入タイヤの増加などが「新たな脅威」となっております。

このような環境下、当社グループは、ビジョンに「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」を掲げ、2022年8月に発表した「2030年 長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」を当社創立100周年となる2031年へ向けた道筋として、常態化する変化に動じず、ゴムのように強靭でしなやかに、変化をチャンスに変えるということを意味するレジリアントな“エクセレント”ブリヂストンを目指しております。2024年3月に発表した中期事業計画(2024-2026)において、この実現したい姿に向けた活動を3カ年計画として具体化し、変革を加速しております。

中期事業計画(2024-2026)においては、経営の3つの軸である「過去の課題に正面から向き合い、先送りしない」、「足元をしっかり、実行と結果に拘る」、「将来への布石を打つ」は変えず、4つのビジネス基本シナリオに沿って、「価値創造へ、よりフォーカス」しております。4つのビジネス基本シナリオは、「良いビジネス体質を創る」、「良いタイヤを創る」、「良いビジネスを創る」、そして「良い種まきをし、新たなビジネスを創る」です。特に、2025年においては、「良いビジネス体質を創る」に沿って、経営・業務品質の向上を最優先課題としております。

2025年は、自動車業界・タイヤ業界の構造変化の加速も踏まえ、「緊急危機対策年」と位置付け、バリューチェーン全体で経営・業務品質の向上を徹底する「守り」と、2026年以降の成長を見据えた「断トツ商品」やソリューション事業の強化などを含めた「攻め」の活動の両輪で経営を推進してまいります(2025年通期連結業績予想 売上収益4兆3,300億円、調整後営業利益5,050億円、調整後営業利益率11.7%、ROIC9.2%、ROE7.2%)。まず、経営・業務品質の向上を追求するため、2025年1月1日付にて新たなグローバル経営執行体制を構築しました。Global CEOの下に、4名の副社長を配置し、Bridgestone West(ウェスト)、Bridgestone East(イースト)の事業責任(Profit(プロフィット) & Loss(ロス)(PL)責任)と、Global CTO(Chief(チーフ) Technology(テクノロジー) Officer(オフィサー))及び、Global CAO(Chief Administration(アドミニストレーション) Officer)・CSO(Chief Strategy(ストラテジー) Officer)によるグローバル最適を追求する横串・グローバル最適責任を明確にし、それぞれが対等の立場で各役割責任を果たすことで、管理・ガバナンスを強化、チェック&バランスを担保し、「実行と結果に拘る」経営を推進しております。

「守り」の活動については、まず、北米・南米、欧州を中心にグローバルで事業再編・再構築(第2ステージ)を実施し、それと連動した固定費削減を断行してまいります。特に、業績・事業環境ともに厳しい状況にある欧州事業については、2024年末より着手している生産、販売・小売、本社機能などすべての領域における再編・再構築をもう一段強化し、組織体制を統合・シンプル化させ、その効果を取り込むことで、業績の改善を進めてまいります。北米事業においては、2025年1月に米国テネシー州のトラック・バス用タイヤ工場であるラバーン工場の閉鎖を発表し、同時に、アイオワ州デモインの農機用タイヤ工場における生産能力削減、本社機能、販売・オペレーション機能の人員削減など事業拠点とコストの最適化を進めております。南米事業においても、ブラジル・アルゼンチンにおいて、各生産拠点の生産能力及び人員削減に着手しております。また、日本タイヤ、化工品事業を含むBridgestone Eastにおいても、組織のシンプル化、機能集約などを実行してまいります。

「攻め」の活動については、「断トツ商品」を中核に、タイヤを「創って売る」から「使う」段階で価値を増幅してまいります。そのために「断トツ商品」を継続的に強化してまいります。乗用車用タイヤにおいては、「EV時代の新たなプレミアム(乗用車系)」と位置付ける商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」を搭載した新商品、鉱山車両用タイヤにおいては「Bridgestone MASTERCORE(マスターコア)」の展開を拡大するとともに、次世代の「断トツ商品」の開発・企画も進めてまいります。また、原材料の調達から、開発、生産、物流までモノづくりに関わる領域全体において、グローバルビジネスコストダウン活動を強化し、バリューチェーン全体におけるビジネスの質の向上を推進してまいります。この活動は、グローバル調達活動、SCM(サプライチェーンマネジメント)物流改革、BCMA(Bridgestone Commonality(コモナリティ) Modularity(モジュラリティ) Architecture(アーキテクチャ))、グリーン&スマート化、現物現場での地道な生産性向上で構成され、2024年の厳しい事業環境においても業績を下支えしました。2025年においても、これらを加速し、業績への貢献と価値創造を強化してまいります。

成長事業であるソリューション事業においては、生産財系Bto(トゥ)Bソリューション(鉱山、航空、トラック・バス系ソリューション)を、戦略事業として強化してまいります。当社グループの強みである強いリアルとデジタルを融合させ、現物現場でお客様に寄り添い、困りごとを解決することで、「断トツ商品の価値の増幅」、「お客様との信頼の増幅」、「データの価値の増幅」を実現し、新たな社会価値・顧客価値を創造することで、業績への貢献を拡大してまいります。これらを踏まえ、当社グループでは、米国事業、インド事業、鉱山車両用及び航空機用タイヤ・ソリューション事業を成長市場として位置づけ、質の伴った成長を実現してまいります。米国においては、米国の社会・経済に貢献し、人とモノの移動を支え続けるという想いの下、乗用車用タイヤにおいて「断トツ商品」の強化を中核にチャネルについても拡充を図り、米国消費財ビジネス再構築に着手することで、成長に舵を切ってまいります。トラック・バス用タイヤにおいても、リアルとデジタルを融合させたトラック・バス系ソリューションを拡充し、カスタマー・サクセスを創出してまいります。インドにおいては、乗用車用タイヤにおいて生産増強投資や、インド市場向けの「断トツ商品」強化のためのサテライトテクノロジーセンターの設立など技術開発投資も実行し、インド市場における存在感を高め、マーケットリーダーポジションをより強固なものにしてまいります。鉱山車両用及び航空機用タイヤ・ソリューション事業については、プレミアムタイヤの販売拡大や、上述の生産財系BtoBソリューションの方向性に沿ってプレミアムタイヤとソリューションの連動を深めることで、価値創造を進めてまいります。

加えて、新たなコーポレートブランディング活動にも着手し、「サステナブルなプレミアム」ブランドの構築を進めてまいります。サステナブルなグローバルモータースポーツ活動を軸に、「サステナブルなプレミアム」として、全ての一人ひとりにとっての「最高」を支え続け、モビリティの未来になくてはならない存在となることを目指してまいります。

化工品・多角化事業においては、引き続き当社グループの強みが活きる領域にフォーカスしてまいります。

将来に向けた「新たな種まき」と位置付ける探索事業においては、社会価値とサステナビリティを中核に推進しております。リサイクル、グアユール、ソフトロボティクス、パンクしない次世代タイヤ「AirFree(エアフリー)」において、社外パートナーとの共創を軸にビジネスモデルの探索を加速してまいります。

これらの「守り」と「攻め」の活動を両輪で実行することで、変化に対応できる「強いブリヂストン」へ進化し、「稼ぐ力の強化」を実現し、2026年には「真の次のステージ」へ歩を進めてまいります。

経営の中核であるサステナビリティについては、商品を「創って売る」「使う」、原材料に「戻す」という、バリューチェーン全体でカーボンニュートラル化(脱炭素化)、サーキュラーエコノミー(循環型経済)及びネイチャーポジティブ(自然再興)に貢献する取り組みとビジネスを連動する当社グループ独自のサステナビリティビジネスモデルを進化させてまいります。

特に、環境面は、当社グループとしての目標として、2050年を見据えた環境長期目標を2012年に策定し、これを達成するために2030年を目標とした環境中期目標「マイルストン2030」を設定し、その実現に向けた取り組みを進めております。カーボンニュートラル化へ向けては、2030年にCO2の総量(Scope(スコープ)1、2)(注)を2011年対比50%削減、2050年にカーボンニュートラル化という明確なターゲットを掲げており、2024年は、目標を上回る約60%の削減を見込んでおります。この大幅な削減は、前期対比で生産量減の影響や生産性向上の効果などに加えて、CO2排出量削減に向けたグローバル各工場における再生可能エネルギー(電力)比率の向上が大きく寄与しており、グローバル各地域において、太陽光発電パネルの設置や外部から購入する電力の再生可能エネルギー由来の電力への切り替えを推進しております。2024年の再生可能エネルギー(電力)の比率は約70%を見込んでおり、2030年目標の100%への挑戦に向けて着実に進めてまいります。バリューチェーン全体のCO2排出量(Scope3)(注)については、2030年までに、商品・サービス・ソリューションのライフサイクルを通じて、Scope1、2における排出量の5倍以上のCO2削減に貢献(基準年:2020年)することを目標とし、活動を進めてまいります。2024年は約2.6倍と、着実な貢献拡大を見込んでおります。サーキュラーエコノミーの実現に向けては、2030年までに再生資源・再生可能資源比率を40%に向上、2050年までにサステナブルマテリアル化を目標としており、2024年は約39%を見込み、商品戦略との連動を基盤に継続的に強化してまいります。今後に向けては、モータースポーツ活動を「走る実験室」として、バリューチェーン全体でのカーボンニュートラル化、サーキュラーエコノミーの実現を加速してまいります。加えて、ネイチャーポジティブへの貢献において、当社グループの事業に直結している天然ゴムや水資源の持続可能な利用を推進する活動に注力してまいります。特に、小規模農家の生産性向上、森林破壊ゼロの実現に貢献するために、自社農園で培った技術や病害対策に有効なノウハウを活用し、2026年までに累計12,000軒を目標に、天然ゴム小規模農家の支援に取り組んでおります。現物現場で現地の農家に寄り添い、困りごとを解決する活動に注力し、地域社会へも貢献してまいります。

また、事業環境が常に変化していく中、変化に動じないためにグローバル経営リスク管理を強化してまいります。当社グループにおいては、4つの重点管理アイテムを現在設定しております。1つ目は、6PPD(タイヤ業界で一般的に使用される老化防止剤)、TRWP(Tire(タイヤ) and(アンド) Road(ロード) Wear(ウェア) Particles(パーティクルズ))、についての対応であります。6PPDについては、業界全体として取り組むと共に、当社グループとしても、タイヤの安全性を担保できることを大前提として代替品の開発を進めております。TRWPは、タイヤが安心・安全な移動を支えるために必要な路面と摩擦することによって発生する粉じんで、タイヤの表面であるトレッドと道路舗装材の混合物です。当社グループは業界のリーダーとして、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)傘下のタイヤ産業プロジェクトを通じて、TRWPの特性とその影響の研究に取り組んでおります。また、各地域業界団体での取り組みに積極的に参加し、評価試験法の国際標準(ISO規格)策定を主導すると共に、当社グループ独自の取り組みとして、タイヤを「創って売る」「使う」バリューチェーン全体で、ロングライフ商品の拡大やソリューション事業との連携を含め、TRWPの削減に向けたアプローチを継続的に強化してまいります。2つ目は、EUDR(欧州森林破壊防止規則)への対応であります。サステナビリティを中核とした天然ゴムパートナーとの関係を強化してまいります。3つ目は、サイバー攻撃への対応であります。当社グループでは、グローバルでセキュリティー対応チームを立ち上げ、抜本的な対策を進めております。4つ目は、地政学リスクへの対応であります。特に、当社グループの重要市場である米国の政治動向を中心に注視しており、政策変更に伴うビジネスインパクトの洗い出しと対策を進めております。2025年1月の米国トランプ政権の発足後に発表されたメキシコ、カナダ、中国に対する追加関税につきましては、想定されるケースを検討し、複数のシナリオを構築することで、迅速に対応できる体制を整備し、状況を正しく見極め、適切なタイミングで構築したシナリオの中から実行計画を発動、迅速に実行する様、今後も状況を注視しながら対応を進めてまいります。

これら全ての企業活動の基盤となる人財については、生産性・創造性の向上を基本として、「人財投資を強化し、付加価値をあげ、価値創造の好循環を生む」ことを目指しております。その取り組みを表す指標として「人的創造性」を、2024年からグローバル経営指標として正式に導入いたしました。グローバルの推移を把握しながら、地域別・国別の課題に取り組んでおります。特に日本においては、デジタル研修、現場での挑戦を後押しする現場100日チャレンジ、生産現場の環境改善を実行するなど、多様な人財が輝く場、働きやすい職場づくりを進めております。さらに、2020年に開始した次世代経営リーダー育成を目的としたプログラム「Bridgestone NEXT(ネクスト)100」では、グローバルで毎年約100人を選抜し、経営層との対話機会の強化、積極的なストレッチアサイメントなどを通じた重点育成を進めております。また、DE&Iの推進については、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決するフェムテック・プログラムを導入するなど、一人ひとりが自分らしい毎日を歩める職場環境の整備を強化しています。厳しい事業環境下においても、多様な人財が輝けるよう、人的創造性・生産性の向上をベースに、金銭報酬のみならず報酬以外の施策を組み合わせた人財投資を強化しメリハリをつけた賃金の引き上げを含め、一人あたり人財投資額アップに取り組んでいきます。

当社グループは、不変の使命である「最高の品質で社会に貢献」の下、株主・顧客・パートナー(サプライヤー)・従業員・社会といった全てのステークホルダーへの貢献を最大化することを目指してまいります。「Bridgestone E8 Commitment」を価値創造の軸として、持続的な価値創造基盤の構築に継続して取り組んでまいります。

 

(注) Scope1は企業が直接排出するCO2(自社工場のボイラーなどからの排出)、Scope2はエネルギー起源間接排出(電力など他社から供給され、自社で消費したエネルギーに伴うCO2排出)、Scope3はライフサイクルにおける原材料調達、流通、顧客の使用と廃棄・リサイクル段階のCO2排出量等を指します。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) サステナビリティ全般

当社グループは創業以来、変わりゆく社会のニーズに対応し、それぞれの時代において一人ひとりの安心・安全な移動や暮らしを支え続けるために事業を拡大・進化させてきました。社会の変化を先取りし、変化をチャンスに変え、事業活動・社会貢献活動を通じて、持続可能な社会の実現に貢献することは、「最高の品質で社会に貢献」を使命とする当社グループの果たすべき役割・責任だと考えております。

2020年を初年度とした「第三の創業」Bridgestone 3.0では、サステナビリティを経営の中核に据えた中長期事業戦略を発表し、「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」をビジョンとして掲げました。同時に、2020年に、当社グループ自身の持続的な成長のためにも、社会価値と顧客価値の創造を両立させ、社会、お客様、ブリヂストンが共にWin-Win-Winとなる「サステナビリティビジネス構想」を発表しました。現在は、当社グループのバリューチェーン全体でカーボンニュートラル化やサーキュラーエコノミーの実現、ネイチャーポジティブの推進とビジネスモデルを連動させる独自のサステナビリティビジネスモデルの確立を、経営戦略、中期事業計画に織り込んで推進しております。

 

① ガバナンス

当社は、企業理念に掲げた使命である「最高の品質で社会に貢献」の下、ビジョンの実現に向け中長期事業戦略を基に、3ヶ年毎に作成する中期事業計画に沿って経営を進めており、その一環としてガバナンス体制の整備も進めております。当社は、内部統制のより一層の強化によるガバナンス体制の向上に継続的に取り組み、サステナブルなソリューションカンパニーへの進化を実現してまいります。

当社の取締役会は、執行部門からの業務執行状況の進捗報告・情報共有等を通じて、多様な視点から執行部門と議論し、監督機能を発揮することで、中長期事業戦略の実現を目指すコーポレート・ガバナンス体制となっております。カーボンニュートラル化やサーキュラーエコノミーの実現、ネイチャーポジティブの推進などのサステナビリティに関する取り組みについて定期的に報告を受け、進捗状況のレビューを実施しております。

執行部門においては、2024年1月より、Global CEOの下、当社グループのビジネスを主に米欧を中心とするBRIDGESTONE WEST、日本・アジアを中心とするBRIDGESTONE EASTの2つのリージョンとして区分しております。2つのリージョンの下に、複数のSBU(戦略的事業ユニット)を設置し、より現場に密着し、課題に深く入り込めるよう、細かく事業エリアとしてブレークダウンしております。さらに、2025年1月よりシン・グローカル経営体制を進化させ、副社長4名がGlobal CEOをサポートする体制とし、BRIDGESTONE WEST、BRIDGESTONE EASTの事業責任(Profit & Loss(PL)責任)と、グローバル最適を追求する横串・グローバル最適責任を明確にし、Global CAO(Chief Administration Officer)・Global CSO(Chief Strategy Officer)及びGlobal CTO(Chief Technology Officer)を任命し、それぞれが対等の立場で役割責任を果たすことで、「実行と結果に拘る」経営を推進しております。この体制において、管理・ガバナンスを強化し、グローバルで経営・業務品質の向上をさらに追求してまいります。

そして、これらのメンバーを中心に構成するGlobal EXCOを当社グループにおける最上位の経営執行会議体として設置し、グローバルな視点から経営戦略や経営課題について議論、審議することにより、当社グループとしてのチェック&バランス機能の強化、意思決定プロセスでの透明性の向上を図っております。サステナビリティを経営の中核に据えた中長期事業戦略を基にした中期事業計画、年度予算、重要な投資案件などの合意、計画の進捗を共有しております。

取締役及び執行役の報酬体系は「優秀人材の確保と啓発」、「競争力のある水準」、「事業戦略遂行の動機付け」、「株主価値増大への動機付け」という報酬原則に基づいて設計されており、2022年度よりサステナビリティ及びトランスフォーメーション推進と中長期事業戦略実現を後押しすることを目的とした中長期インセンティブを導入し、報酬委員会で以下6つの目標を設定したうえで、取り組みを評価しております。

 

a.社内外へのコミュニケーションと「Bridgestone E8 Commitment」を軸とした具体的な価値創造

b.付加価値と働き甲斐を向上させるための人への投資と育成

c.CO2排出量の削減をはじめとしたカーボンニュートラル化

d.再生資源・再生可能資源比率の向上を含むサーキュラーエコノミーの実現

e.天然ゴム、水資源にフォーカスしたネイチャーポジティブへ向けた取り組み

f.業界リーダーとしてのTRWP(タイヤ・路面摩耗粉じん)及び6PPD(タイヤ業界で一般的に使用される老化防止剤)への対応

 

当社のコーポレート・ガバナンス体制の概要図は次のとおりであります。

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2025年3月25日現在

 

コーポレート・ガバナンス体制及び報酬体系の詳細につきましては、第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ①コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及びその施策の実施状況 b.コーポレート・ガバナンス体制の概要、(4) 役員の報酬等 ①当事業年度に係る取締役及び執行役の報酬等の額 c.業績連動報酬の算定方法と評価結果の記載内容を参照ください。

 

また、Global EXCOのもとでは、Global CTO及びGlobal CAO・Global CSOを責任者として、経営戦略や経営課題に基づいたコミッティを設置し、各コミッティが地域や組織を横断して、課題解決に向けた取り組みを推進しております。Global CTO、Global CAO・Global CSOは、それらの活動において、横串・グローバル最適責任を果たし、それぞれの領域において経営課題をG-EXCOへの報告・答申をいたします。サステナビリティについては、Global CAO・Global CSO下のグローバルサステナビリティコミッティ(GSC)をはじめとして、関連する各コミッティがサステナビリティの各種取り組みの計画・実行を推進する役割を担っており、各取り組みにおける進捗管理や、目標値及びKPI、測定基準の策定を進め、PDCAを回しながら継続的に取り組みを強化しております。GSCでは、サステナビリティ優先課題を定期的に見直すと共に、主要なテーマごとに傘下のワーキンググループが活動を推進し、計画と進捗を少なくとも四半期ごとにコミッティに報告しております。

グローバルサステナビリティ推進体制(2025年1月1日現在)

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② 戦略・リスク管理

社会やお客様へ新たな価値を創出し、お客様・パートナーの皆様と共に持続的に成長していくためには、責任ある企業として不可欠な基盤となる取り組みを継続的に推進しながら、ステークホルダーの皆様と強い信頼関係を構築していくことが重要であると考えております。当社グループのサステナビリティ戦略は、その基盤となる取り組みの一つとして、事業活動や社会貢献活動、あらゆるパートナーとの共創活動を通じて社会やお客様への価値を創出していくための方向性を示したものであり、社会価値・顧客価値を両立しながら持続的に創造していくために取り組むべきサステナビリティ優先課題を明確にしております。

 

取り組むべきサステナビリティ優先課題

・サステナビリティビジネスモデルの確立・進化:カーボンニュートラルへの対応力強化、サーキュラーエコノミービジネス活動の推進、ネイチャーポジティブの推進(「天然ゴム・水資源の持続可能な利用に向けた活動」に注力)

・お客様やパートナー、地域との信頼の醸成:地域社会の課題解決に貢献、世界各地での交通安全啓発活動の推進

・人権の尊重:グローバル人権方針に沿った取り組みの推進・活動レベルの継続強化

・TRWP(タイヤ・路面摩耗粉じん)・6PPD(タイヤ業界で一般的に使用される老化防止剤):業界リーダーとして、業界団体や学術機関などと連携し、タイヤのライフサイクルにおける環境への影響についての調査を推進。また、ロングライフ商品などの訴求やソリューション事業との連携を含め、タイヤを「創って売る」「使う」バリューチェーン全体でTRWP発生量削減の取り組みを継続的に推進。タイヤの安心・安全を担保できることを大前提とした6PPD代替品開発への取り組みを推進。

 

サステナビリティビジネスモデル

当社グループはビジョンとして掲げる「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」の実現に向けて、サステナビリティを中核に据えた中長期事業戦略構想を策定し、具体的な実行計画である中期事業計画に沿って、取り組みを進めております。

経営の中核に据えているサステナビリティについては、商品を「創って売る」「使う」、原材料に「戻す」という、バリューチェーン全体でカーボンニュートラル化、サーキュラーエコノミーの実現、ネイチャーポジティブの推進にフォーカスする取り組みと、ビジネスを連動させるブリヂストン独自のサステナビリティビジネスモデルの確立を進めております。

当社グループは、2011年にリファインした「環境宣言」を起点に、「自然と共生する」ために、「資源を大切に使う」技術を開発・活用し、喫緊の課題である地球温暖化に対して「CO2を減らす」ことに取り組み、長年にわたり自然共生に向けて包括的に取り組んでまいりました。2050年を見据えた環境長期目標を2012年に策定し、これを達成するために、2030年を目標とした環境中期目標「マイルストン2030」を2020年に公開しました。カーボンニュートラル化については、2030年にCO2の総量(Scope1、2)を2011年対比50%削減、2050年にカーボンニュートラルへという明確なターゲットを掲げております。サーキュラーエコノミーについては、2030年までに使用する原材料に占める再生資源・再生可能資源比率を40%に向上、2050年に100%サステナブルマテリアル化を目標にしております。

また、自然生態系の損失を食い止め、回復させていくネイチャーポジティブの実現に向けて、自然環境毀損につながる行動を回避し(Avoid)、できるだけ低減し(Reduce)、自然の再生及び回復に貢献し(Restore and Regenerate)、根本的なシステムを変革していく(Transform)といったSBTs(注) for Natureフレームワークの考え方に沿って、このサステナビリティビジネスモデルをより循環型・再生型のビジネスモデルとして進化させており、中期事業計画(2024-2026)では、事業に直結する「天然ゴム・水資源の持続可能な利用に向けた活動」に注力してまいります。サステナビリティへの取り組みをバリューチェーン全体で推進し、「Bridgestone E8 Commitment」の「Energy カーボンニュートラルなモビリティ社会の実現を支えること」や「Ecology 持続可能なタイヤとソリューションの普及を通じ、より良い地球環境を将来世代に引き継ぐこと」にコミットしてまいります。

 

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リスク管理につきましては、第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等の「グローバル経営リスク管理」に関する記載内容、3 事業等のリスクの記載内容もご参照ください。

 

(注) Science-based targets

 

③ 指標及び目標

当社グループは、社会価値・顧客価値を両立しながら持続的に創造していくために取り組むべき優先課題について指標及び目標を設定しております。課題解決に向けた活動については、これらの指標及び目標に基づいて、中長期事業戦略の実現を目指す当社のコーポレート・ガバナンス体制のもとで適切に進捗管理を行っております。

バリューチェーン全体でカーボンニュートラル化、サーキュラーエコノミーの実現、ネイチャーポジティブの推進とビジネスを連動させる独自のサステナビリティビジネスモデルの確立に向けた取り組みの進捗は以下の通りであります。

取り組むべき優先課題

サブカテゴリー

目標

進捗

(2024年)

SDGsへの貢献

Bridgestone E8 Commitmentに掲げる価値の創出

サステナビリティビジネスモデルの確立・進化

カーボンニュートラルへの対応力強化

Scope1、2におけるCO2排出量削減:2030年 50%削減(2011年対比)

2050年 カーボンニュートラル化

Scope1、2:60%削減(2011年対比)(注1)

再生可能エネルギー比率(電力):72%(注1)

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・Energy:カーボンニュートラルなモビリティ社会の実現を支えることにコミットする

・Ecology:持続可能なタイヤとソリューションの普及を通じ、より良い地球環境を将来世代に引き継ぐことにコミットする

Scope3におけるCO2削減貢献:2030年 排出量の5倍以上

サーキュラーエコノミービジネス活動の推進

資源生産性の向上、長寿命・省資源商品の開発

サーキュラーエコノミーへの貢献:2030年 再生資源・再生可能資源比率40%(注2)

2050年 100%サステナブルマテリアル化

再生資源・再生可能資源率:39%(注1)

ネイチャーポジティブの推進

水ストレス地域における生産拠点でのウォータースチュワードシッププランの策定・実行:2030年 全対象拠点で実行

対象となる全17拠点で実行中

天然ゴムの小規模農家支援強化:2026年 累計支援件数12,000軒(注3)

累計11,687軒の小規模農家への研修・技術支援を実施(注1)

(注1) 2025年3月25日時点の見込値であり、第三者機関による保証審査を経た確定時に修正する可能性があります。

(注2) リトレッド用台タイヤを含むタイヤの総原材料重量に占める比率

(注3) 2023年以降の累計件数

 

その他、ESG関連データは当社Webサイト「サステナビリティ」をご参照ください。

 

(2) 気候変動及び自然資本損失に関する取組

気候変動及び自然資本損失への対応に世界的な関心が高まり、パリ協定に代表される脱炭素社会への動き、ならびに、昆明・モントリオール生物多様性枠組として採択された、生態系や自然資本の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せることを目指すネイチャーポジティブの達成に向けた動きが加速する中で、当社グループは気候変動及び自然資本損失によるリスクと機会を統合的に認識し、事業戦略への反映を進めております。

主なリスクとしては、脱炭素社会や自然と共生する社会への転換に伴う「移行リスク」並びに気候変動及び自然資本損失による「物理的リスク」を認識しております。「移行リスク」には、気候変動や自然資本損失のために、国内外において、炭素税やCO2排出削減義務・排出量取引制度、タイヤの低燃費性能等に関する制度・規制、使用済タイヤのリサイクルに関する制度・規制、取水に関する制度・規制、持続可能な天然ゴムに関する制度・規制などの導入が進む際に、社会や顧客の急速なニーズ変化に対して研究開発費を十分な事業成果に結びつけることができない場合は、事業活動の制約やコストの上昇など当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。「物理的リスク」には、台風の大型化、洪水や渇水の発生頻度の増加による事業活動中断のリスク、降雨パターンの変化に伴う天然ゴムの収穫不良による原材料調達に関するリスク、降雪量の減少により冬タイヤの需要が減少するリスクがあります。反面、これらの社会や顧客のニーズ変化を新たな成長機会とも捉えており、バリューチェーン全体でカーボンニュートラル化、サーキュラーエコノミーの実現、ネイチャーポジティブの推進とビジネスを連動させる独自のサステナビリティビジネスモデルの確立を、経営戦略、中期事業計画に織り込んで推進しております。

「移行リスク」及び機会への認識を踏まえ、2030年目標として「私たちが排出するCO2の総量(Scope1、2)を50%削減する(2011年比)」「ソリューションの提供により、商品・サービスのライフサイクル、バリューチェーン全体(Scope3)を通じて、私たちの生産活動により排出するCO2排出量(Scope1、2)の5倍以上のCO2削減に貢献していく(2020年比)」「再生資源または再生可能資源に由来する原材料の比率を40%に向上する」「水ストレス地域における生産拠点において、水リスク低減に向けたウォータースチュワードシッププランを推進する」を設定し、CO2削減に貢献する新技術の開発、当社グループの生産拠点におけるCO2排出や水ストレス地域での取水などによる自然資本への影響の低減、低燃費タイヤの開発・販売、リトレッドタイヤビジネスの拡大、取引先との協働によるサプライチェーンのCO2排出量及び自然資本への影響の低減など、目標の達成へ向けた活動を進めております。

また、森林に関わる移行リスクへの対応として、森林破壊禁止を含む「グローバルサステナブル調達ポリシー」の展開や、サステナビリティに関する第三者調査・評価機関を活用したサプライヤーアセスメントの実施、天然ゴム加工工場への現地監査などを進めております。さらに、取引先と協働して上流の農家を訪問することでトレーサビリティを高めるとともに、農家へのアセスメントや改善支援を行うなど、生産現場の実態を確認しながら取り組みを進めております。森林破壊防止に向けて当社グループでは、欧州法令に対応するための包括的な体制をグループ全体で整えており、対応準備を進めています。天然ゴムの生産地は東南アジアの熱帯雨林に集中しており、多くの小規模農家によって支えられていることにより、天然ゴムの持続可能なサプライチェーンの構築が当社の持続性においても重要であると考えています。小規模農家の生産性向上や森林破壊ゼロの実現に貢献するために、自社農園で培った技術や病害対策に有効なノウハウを活用し、2026年までに累計12,000軒を目標に、天然ゴム小規模農家の支援に取り組んでいます。個社としての取り組みに加え、持続可能な天然ゴムのためのプラットフォーム(GPSNR)の設立及び推進を主導し、マルチステークホルダーとの対話や協働を通じてサプライチェーンの透明性やトレーサビリティ向上のための基準づくりを進めるなど、天然ゴムの持続可能な利用に向けた取り組みを強化しております。

投資の判断においても「移行リスク」及び機会が評価できるように、社内カーボンプライシングによるCO2排出コストと削減効果を加味した投資判断を行っております。また、使用済タイヤを原材料などに「戻す」リサイクル事業の構築、天然ゴム事業における生産性向上に向けた取り組みを通じて、バリューチェーン全体でのCO2排出量及び各種環境負荷による自然資本への影響の低減にも取り組んでおります。

「物理的リスク」及び機会に対しては、事業継続計画(Business Continuity Plan、以下BCP)を策定して事業の継続または再開に向けて適切な危機対応や支援が行えるように体制を整えると共に、乾燥地帯で育つ「ゴムをつくる植物」グアユールの事業化に向けた取り組みを通じて、天然ゴム供給源の多様化に取り組んでおります。

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)最終提言及びTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)最終提言V1.0が推奨する開示内容に沿った当社グループの対応状況は以下の通りであります。

 

① ガバナンス

推奨される開示内容

ブリヂストングループの対応状況

TCFD

TNFD

依存関係・影響・リスク・機会に対する取締役会の監督体制

・取締役会はカーボンニュートラル化やサーキュラーエコノミーの実現、ネイチャーポジティブの推進に向けた活動を含むサステナビリティへの取り組みの状況について定期的に報告を受け、進捗状況のレビューを実施

依存関係・影響・リスク・機会の評価と管理における経営者の役割

・最上位の経営執行会議体であるGlobal EXCOでカーボンニュートラル化、サーキュラーエコノミーの実現、ネイチャーポジティブの推進に向けた中長期の戦略・目標、実行計画の承認、計画の進捗を管理

先住民族・地域社会・影響を受けるステークホルダー・その他ステークホルダーに向けた人権方針とエンゲージメント活動、取締役会・経営者の監督

(TNFD推奨開示内容)

・「グローバル人権方針」及び当社グループの「グローバルサステナブル調達ポリシー」を策定し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」など国際基準が掲げる人権の尊重に対して強いコミットメントを表明。取引先に必ず実施いただきたい事項として、国連「先住民族の権利に関する宣言」に従った合法的な手段での土地取得・利用、土地取得時や森林開発評価・実行方針策定時のFPIC原則の遵守を定め、当社グループ内・取引先・サプライチェーン全体への浸透活動を推進

・サプライチェーンが「グローバルサステナブル調達ポリシー」に準拠しているかどうかを確認するデューディリジェンスプロセスを検討・開発するために公益財団法人世界自然保護基金(WWF)ジャパンと協働。WWFと連携して開発したSAQ(Self-Assessment Questionnaire)を使って、天然ゴムの小規模農家を含む取引先のESG現地監査を行い、FPIC原則の遵守含め、リスク評価を実施

・天然ゴムのサプライチェーンを対象としたグリーバンスメカニズムを構築し、標準作業手順書と苦情(グリーバンス)への対応状況を公開。先住民族・地域社会に関連するリスクも本メカニズムを活用し確認

・人権の尊重を含むサステナビリティへの取り組みの実行計画や進捗状況は最上位の経営執行会議体であるGlobal EXCOで承認・管理され、取締役会がレビューを実施

 

② 戦略

推奨される開示内容

ブリヂストングループの対応状況

TCFD

TNFD

短期・中期・長期の依存関係・影響・リスクと機会

・気候・自然資本への依存関係と影響、気候変動及び自然資本損失によるリスクと機会を統合的に評価・管理。以下の依存関係・影響・リスク・機会を特定

・バリューチェーン全体でカーボンニュートラル化、サーキュラーエコノミーの実現、ネイチャーポジティブの推進とビジネスを連動させる独自のサステナビリティビジネスモデルの確立に取り組んでおり、重要度の高いリスク・機会を経営戦略、中期事業計画に織り込んで推進

気候・自然資本との依存関係(注)

・原材料調達段階における水やバイオマスを供給するサービス、生態系が持つ気候・良好な土壌等を維持調整するサービスへの依存

・タイヤ製造段階における水を供給するサービスへの依存

気候・自然資本への影響(注)

・原材料調達段階における土地利用による影響

・タイヤ製造段階における水資源の使用、廃棄物の排出による影響

・バリューチェーン全体での温室効果ガスの排出、水資源の使用、大気・水質・土壌への排出、廃棄物の排出による影響

気候変動・自然資本損失による物理的リスク・機会

・台風の大型化、洪水や渇水の発生頻度の増加による事業活動中断のリスク

・降雨パターンの変化に伴う天然ゴムの収穫不良による原材料調達に関するリスク

・降雪量の減少により冬タイヤの需要が減少するリスク

・熱帯地域に偏在するパラゴムノキ由来の天然ゴムの収穫不良に伴う、乾燥地帯で育つグアユール由来の天然ゴムの事業化機会

脱炭素社会や自然と共生する社会への移行リスク・機会

・気候変動や自然資本損失のために制度・規制などの導入が進む際、社会や顧客の急速なニーズ変化に対して研究開発費を十分な事業成長に結びつけることができない場合における事業活動の制約やコストの上昇など、業績や財務状態に悪影響を及ぼすリスク(炭素税やCO2排出削減義務・排出量取引制度、タイヤの低燃費性能に関する制度・規制、使用済タイヤのリサイクルに関する制度・規制、取水に関する制度・規制、持続可能な天然ゴムに関する制度・規制など)

・モビリティニーズの変化に伴う競争要因変化に伴う機会(EV向けタイヤの需要増加、お客様のCO2排出量削減に貢献するタイヤ及びソリューションの需要増加等)

・使用済タイヤのリサイクルに関する規制地域拡大に伴うリサイクル事業の事業化機会

(注) 国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)他の

   「ENCORE」の産業グループ別評価で重要性が「非常に高い」または「高

   い」と評価された、タイヤ事業のバリューチェーンにおける主な依存関

   係及び影響

ビジネスモデル・バリューチェーン・戦略・財務計画に及ぼす影響

様々なシナリオを考慮した組織戦略のレジリエンス

・複数の気候関連シナリオ・自然関連シナリオに基づいてリスク・機会を評価し、特定された重要度の高いリスク・機会について、既に対応を始めており、今後も定期的な評価を行っていく

直接事業・上流・下流において次に該当する地域

・生態系の完全性が高いまたは低下している地域

・生物多様性の重要性が高い地域

・水ストレスのある地域

・大きな依存関係や影響を持つ可能性がある地域

(TNFD推奨開示内容)

・荒廃地緑化によるCO2吸収・固定化の拡大

・水資源の量や質の低下リスクのある水ストレス地域に立地する生産拠点を定期的に評価。2024年末時点で水ストレス地域に立地する17生産拠点の全てで、地域の水事情を踏まえたウォータースチュワードシッププランを策定し、実行中

 

③ リスクと影響の管理

推奨される開示内容

ブリヂストングループの対応状況

TCFD

TNFD

直接事業、バリューチェーンの上流及び下流における依存関係・影響・リスク・機会の特定・評価・優先順位付けプロセス

・グループ会社の事業規模や特性を考慮に入れながら、グループ共通のリスク・機会に包括的かつ適切に特定及び対処するよう努めており、気候及び自然資本に関しては、国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)他の「ENCORE」及び一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)の「企業と生物多様性の関係性マップ®」を活用して評価したバリューチェーン全体における依存関係・影響を考慮の上、リスク・機会を特定

・中長期事業戦略の実行に直接関連するビジネス戦略リスク・機会については、重点管理アイテムを設定し、グローバル経営リスクとして管理を強化。欧州森林破壊防止規則など、4つの重点管理アイテムを現在設定。また、日常諸業務に係るオペレーショナル・リスクに関しては、チーフリスクオフィサー(CRO)が統括責任者として対応し、リスクへの対応計画を策定

・毎年各地域及びグループ全体で直面する可能性のあるリスクを特定し、そのリスクに対してグループ全体だけではなく、事業・SBU・部門単位での責任者を明確にし、自律的かつ継続的にリスク管理を実施

管理プロセス

組織全体のリスク管理への統合・伝達状況

 

④ 指標及び目標

推奨される開示内容

ブリヂストングループの対応状況

TCFD

TNFD

リスクと機会の評価・管理に用いる指標

・気候関連リスク・機会・影響を評価・管理する指標の一つとして温室効果ガス排出量(Scope1、2、3、及び商品・サービスのライフサイクル・バリューチェーン全体を通じた温室効果ガス排出量の削減貢献量)を設定し、定期的にモニタリング

・投資の判断においてもリスク・機会が評価できるよう、社内カーボンプライシングによるCO2排出コスト(US$100/tCO2)と削減効果を加味した投資判断を実施

・自然関連リスク・機会・影響を評価・管理する指標として、水ストレス地域における取水量、環境負荷(有害/非有害廃棄物排出量・埋立量、VOC排出量、SOx/NOx排出量)、生息地の保全・管理面積、天然ゴムの小規模農家の支援軒数などを設定し、定期的にモニタリング

依存関係と影響の評価・管理に用いる指標

依存関係・影響・リスク・機会の管理に用いる目標と実績

・カーボンニュートラル化、サーキュラーエコノミーの実現、ネイチャーポジティブの推進に向けた中長期環境目標(2050年以降、2030年)を設定し、毎年実績を評価・開示

・2030年に向けた目標として「私たちが排出するCO2の総量(Scope1、2)を50%削減する(2011年比)」「ソリューションの提供により、商品・サービスのライフサイクル、バリューチェーン全体(Scope3)を通じて、私たちの生産活動により排出するCO2排出量(Scope1、2)の5倍以上のCO2削減に貢献していく(2020年比)」「再生資源または再生可能資源に由来する原材料の比率を40%に向上する」「水ストレス地域における生産拠点において、水リスク低減に向けたウォータースチュワードシッププランを推進する」を設定

・森林破壊抑制に向けた天然ゴム小規模農家支援については「2026年までに12,000軒の支援を行う」目標を設定

・2030年に向けた目標に対する主な実績は以下の通りであります。

取り組むべき重点課題

指標

2023年実績

2024年実績

2030年目標

サステナビリティビジネスモデルの確立・進化

カーボンニュートラル化への対応力強化

CO2排出量(Scope1、2)の総量削減率(2011年比)

57%

約60%

(注1)

50%

サーキュラーエコノミービジネス活動の推進

再生資源または再生可能資源に由来する原材料の比率(注2)

39.6%

約39%

(注1)

40%

ネイチャーポジティブに向けた取り組み

天然ゴムの小規模農家支援件数12,000軒(注3)

5,640軒

6,047軒

(注1)

(2026年)

12,000軒

水ストレス地域における生産拠点でのウォータースチュワードシッププランの策定・実行

対象となる全17拠点で策定完了

対象となる全17拠点で実行中

全対象拠点で実行

(注1) 2025年3月25日時点の見込値であり、第三者機関による保証審査を経た確定時に修正する可能性があります。

(注2) リトレッド用台タイヤを含むタイヤの総原材料重量に占める比率

(注3) 2023年以降の累計件数

 

(3) 人的資本・多様性に関する取組み

① 戦略

当社グループでは、事業戦略と連動した付加価値創造により企業価値向上を図ると共に、個人の成功・自信の波及を通じて多様な人財が輝ける様になることを人財戦略の軸とし、事業戦略と連動した人財戦略の推進に取り組んでおります。「2030年 長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」の実現を目指し、中期事業計画(2024-2026)において、グローバルで現物現場を大切に、「価値創造に、よりフォーカス」することで変革を加速させていくため、経営・業務品質の向上を最優先に、変革の原動力である人財一人ひとりの生産性・創造性の向上に向けて様々な取り組みを進めております。

これらの取り組みを表す指標として、「人的創造性」を2023年から試行し、中期事業計画(2024-2026)からグローバル経営指標として導入いたしました。「人的創造性」は、人財投資を強化し、付加価値を上げ、価値創造の好循環を生むことを基本的な考え方としております。グローバル共通の一本の軸として、人的創造性KPI(調整後営業利益(付加価値)を人財投資(労務費、教育訓練費、福利厚生費の和)で割ったもの)でグローバルの推移を把握しながら、地域別・国別の課題に取り組んでおります。

 

人的創造性KPI

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自動車業界やタイヤ業界の構造変化の加速等による厳しい環境を生き抜くため、当社グループは、2025年を「緊急危機対策年」と位置づけております。厳しい事業環境においても生産性・創造性の向上を目指し、課題に正面から向き合い、正しい危機感を持って、企業理念の一つとして掲げる「熟慮断行」をそれぞれの持ち場で実行いたします。そして人財一人ひとりが「品質へのこだわり」「現物現場」「お客様の困りごとに寄り添う」「挑戦」という当社DNAに共感し、体現しながら価値創造に取り組むことを重視し、事業戦略と連動した人財戦略を推進してまいります。

 

a.経営・業務品質向上の追求

当社グループは、価値創造の基盤として、「良いビジネス体質を創る」ことを、中期事業計画(2024-2026)の最優先課題としております。1960年代に卓越した総合的品質管理を実施している企業に与えられる「デミング賞実施賞」の受賞に向けて策定した、「ブリヂストン独自のデミング・プラン」に沿って、イノベーションと継続的改善に取り組み、グローバルで経営・業務品質の向上を追求しております。このデミング・プランは、当社DNAを反映しているものであります。当社グループは、この経営・業務品質の向上を図るため、当社DNAへの共感を育み、行動変革を促進する「デミング・プラン再浸透施策(経営・業務品質向上)」「創業の地研修」、当社DNAを次世代に繋ぐ上で重要な次世代グローバル経営リーダー育成「Bridgestone NEXT100」プログラムを通じた経営人財の重点育成に取り組んでおります。

 

グローバルの取り組み

デミング・プラン再浸透施策

(経営・業務品質向上)

「ブリヂストン独自のデミング・プラン」をグローバルで再確認・再浸透する活動について、中期事業計画(2024-2026)初年度活動として以下を実施

Step1研修:「ブリヂストン独自のデミング・プラン」冊子を用いた、考え方・行動「型」の学習

Step2研修:各機能部門による業務実例PDCA・なぜなぜ分析を持ち寄ったワークショップ

また当活動のPDCAとしてデミング・プラン浸透をチェックするアセスメントもグローバルに調査実施、活動の有効性を評価

創業の地研修

当社創業の地である久留米(久留米工場、石橋文化センター等)を訪問し、創業者の想いや受け継いできたDNA、企業理念を体感し、より一層理解を深めることで、当社グループで働く誇りを醸成し、業務へのマインドセットにつなげる機会を整備。日本で開催するGlobal EXCOやリーダー育成研修の機会を活用し、海外SBU人財も多数、当プログラムに参加

Bridgestone NEXT100

各地域・国別リーダー開発と共に、グローバルで毎年約100人(規模:日本 30名、米州 30名、欧州 20名、アジア 20名)を選抜し、3階層(Next / Advancing / Developing Executive)に分け、Global CEO、副社長及び各海外Group Presidentとのタウンホールミーティングや各経営報告会議体への参画、海外ビジネススクール研修への参加等を通じた重点育成を推進。2024年は、Next Executivesより常務役員へ2名昇格。更に2025年、常務役員へ1名昇格、及び当社代表執行役 副社長へ1名選任

 

b.人財一人ひとりの生産性・創造性向上(人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)

当社グループは、厳しい事業環境を生き抜くため、「強いブリヂストン」への進化と「稼ぐ力の強化」に取り組んでおります。稼ぐ力の強化の実現には、人財一人ひとりの生産性・創造性(人的創造性)の向上が必要であり、当社DNA強化を進めていくと共に、会社の成長と従業員一人ひとりの成長の実現が両輪をなすものであるよう、ブリヂストンらしい人財育成と職場環境整備に取り組んでおります。具体的には、多様な人財が自身のキャリアを自覚的に捉え、ブリヂストンの幅広い業務領域で現物現場を大切に、価値創造に主体的に挑戦する人財づくり(挑戦・成長支援)、働きがいと働きやすさを両立した職場環境づくり(多様な人財が輝く場づくり)を重視し、様々な取り組みを加速させております。

また、当社グループは、断トツ商品を「創って売る」プレミアムタイヤ事業をコア事業として強化すると同時に、お客様が「断トツ商品」を「使う」段階でその価値を増幅するソリューション事業を成長事業として拡充しております。プレミアムタイヤ事業とソリューション事業の連携を深めていくことが、新たな社会価値・顧客価値の創造につながり、当社グループの企業価値を向上させ、持続的な成長につながると考えております。その実現のためには、当社の断トツ商品や現場力などの強いリアルにデジタルを組み合わせ、社会やお客様の困りごとに寄り添い、解決することが重要であると捉えております。そうした「リアル×デジタル」を加速させるブリヂストンらしいデジタル及びソリューション人財の育成に取り組み、新たな価値創造を支えてまいります。

これらの取り組みが、変化に対応できる「強いブリヂストン」、「稼ぐ力の強化」を実現し、2026年「真の次のステージ」への基盤構築になるものと考えております。

当社グループの企業経営の基盤は、「安全宣言」に掲げております「安全はすべてに優先する」であります。お客様をはじめとするステークホルダーの皆様からも期待されており、高い安全基準の適用により当社グループの従業員や協力会社の労働安全・衛生を確保する上で、一層重要となっている、この安全宣言に基づき、従業員一人ひとりが安全な職場で安心して働くための環境整備にも取り組んでおります。

 

・多様な人財の挑戦・成長支援

グローバルの取り組み

自律的キャリア開発支援

全ての事業所で従業員にキャリア計画や能力開発計画の策定を推奨し、従業員が上司や経営陣の協力・支援を得て意義とやりがいのある業務を完遂し、自律的なキャリア開発に取り組むことを支援

- 適切かつオープンなフィードバック文化の推進

- 定期的なキャリア開発面談や360度評価等の多面評価の導入

幅広い層に対する学びの機会提供

当社グループで長期的に活躍してもらうべく、従業員の継続的な学習と成長文化の促進、学習する組織づくりを目指し、地域別・国別の状況を踏まえながら、グループ全体で人財育成投資の継続的強化に取り組み。従業員の自発的な学びを促進するラーニングアクティビティも地域別に開催

自ら挑戦・成長する意欲のある人財への重点機会支援

自ら手を挙げて在籍国の内外の現場において、自分で立てた課題・仮説の現場での検証、改善、解決に取り組む「現場100日チャレンジプログラム」を通じた挑戦の後押し、挑戦風土醸成に取り組み

- 2023年に日本からスタート、2024年はBSAPIC(アジア・大洋州・インド・中国)へ拡大、今後も更なるグローバル展開を推進

 

日本の取り組み

若手従業員への早期マネジメント機会支援

マネジメントへのチャレンジ意欲のある若手従業員が、マネジメント補佐として早期にマネジメント経験に挑戦する「マネジメント・チャレンジ制度」を2023年より導入

部下の挑戦・成長を後押しするマネジメントビヘイビア強化支援

全ライン長(部課長)を対象に、自身のマネジメント行動におけるリーダーシップ促進或いは阻害要素についての気づきを得て改善につなげる「360度評価」や、1on1等のメンバーとの対話においてメンバーの主体的な行動や成長への挑戦を支援する上で必要なコーチングスキルと実践方法を習得する「コーチング研修」を実施

 

・多様な人財が輝く場づくり

グローバルの取り組み

安全な職場で安心して働くための活動

高齢化に伴う人間工学的リスクの増加、規制の変更、機械や設備の老朽化、新技術の現場への導入にも対応するように安全基準を継続的に更新すると共に、当社グループの新規事業においても安全に対する意識を真摯に醸成。安全な職場づくりに向け、安全成熟度評価により課題を顕在化し、継続的な改善を推進

カルチャーチェンジ推進、その基盤となるエンゲージメント向上活動

「Bridgestone E8 Commitment」と連動したグローバルカルチャーチェンジを推進するうえで、従業員エンゲージメントの向上を重要課題のひとつと位置付け、2023年からグローバル統一のエンゲージメントサーベイも実施。各地域の文化、特性の違いを尊重しながらも、グローバル共通の強みや改善アイテムを確認し、各地域の事例を共有し合う等、取り組みを深化・進化

- グローバル共通の強み:品質及び顧客志向/ビジョン・戦略の浸透

- グローバル共通の改善アイテム:コラボレーション(サイロの打破)/迅速なオペレーションの実行/DE&I/人財開発

グループグローバルでの女性リーダー育成

多様な人財が相互に尊重し合う職場環境の実現を目指すと共に、組織としての意思決定の多様化を進める観点から、事業活動を行う地域別・国別の状況も踏まえながら、女性リーダー育成を推進

 

日本の取り組み

生産現場でのモノづくり進化とカルチャーチェンジ推進を支える環境整備

現場最前線の声を反映した即効性がある投資を実施し、福利厚生の充実化、職場環境改善、労働負荷軽減策を引き続き実施

- 継続的な暑熱対策、重量物運搬対策、女性技能員向けロッカー・休憩室整備、女性作業服導入

- “現場で裁量をもった予算を持ち、職場の困りごとを自ら改善する”小集団活動の活性化

- 女性技能員の視点が起点となった、安全性と作業性を両立した生産工程改善事例(部材運搬業務の省力化)

多様な人財活躍基盤の整備、女性基幹職登用促進

当社グループ海外拠点と比べ、ギャップのある日本では、多様な人財が活躍するための各種取り組みを推進

- 全ライン長(部課長)を対象としたDE&Iマネジメントワークショップ

- 女性特有の健康課題をテクノロジーを活用し解決するフェムテックプログラムと、それを通じた従業員一人ひとりが輝ける職場づくりに向けた啓発活動

- 当社役員や社外の専門家がメンターとなり女性基幹職や登用候補者のキャリア形成をサポートするメンター制度

起業家精神を持った人財が挑戦する場づくり

探索事業の一つとして、2023年に社内ベンチャー「ソフトロボティクス ベンチャーズ」を設立。新しい事業をゼロから創り出したいという起業家精神を持った人財が集結、「ゴムを極めたブリヂストンの新たな挑戦 -“いい感じ”にモノをつかむソフトロボティクス、ゴムの力で、すべての人の生活を支える-」の早期事業化に挑戦

 

・強いリアル×デジタルを加速させる人財強化

グローバルの取り組み

デジタル人財の育成・獲得

Webfleet、Azugaと当社グループ人財との融合を図りながら、社会価値・顧客価値の創造のために不可欠な、現物現場を重視するブリヂストンらしいデジタル人財の裾野を広げるべく、育成・獲得をグローバルで推進

ソリューションエンジニア人財育成

当社グループの戦略の根幹である断トツ商品をコアに、「創って売る」から「使う」段階で価値を増幅させていくために、当社グループの強みである、現場に密着してお客様の困りごとを深く理解する技術サービス活動を更にグローバルで強化。その実行を支える人財として、商品の価値とお客様のニーズ双方への深い理解を有するエンジニア育成に向けて、地域毎の市場特性やニーズに応じて必要なソリューションスキルの体系的習得を推進

 

日本の取り組み

幅広いスキルレベルに対応したデジタルスキル強化への挑戦機会提供

デジタルスキルの必要性や習得意欲のある従業員が、自分に合ったレベルを組み合わせることでデジタルスキル習得・強化に挑戦できる機会「デジタル100日研修」を2023年に導入。座学だけでなく、自分の担当業務に関わるデジタル技術の演習をベースにより深く学ぶ機会も提供。さらに、中級(ソリューションフィールドエンジニア)、上級(AI/アルゴリズムエキスパート)向けの習熟度別研修コースを整備

 

② 指標及び目標

 

グローバル

2026年目標

グローバル

2024年実績

人的創造性KPI

(注)2019年を100とした場合のindex推移

130レベル

102(前年比△8)

 

人的創造性

重点活動指標

グローバル

2026年目標

グローバル

2024年実績

経営

業務

品質

向上

生産性・

創造性向上

挑戦・

成長

支援

働く

環境

整備

リアル×デジタル人財強化

ⅰ 経営・業務品質向上活動

ブリヂストンらしい品質経営研修

-2024年より当社幅広い層へ拡大、グローバル展開開始

「ブリヂストン独自のデミング・プラン」冊子とともに、デミング・プラン再確認・再浸透活動をグローバルで展開。浸透度アセスメントも実施し、活動のPDCAを推進

 

 

 

ⅱ デジタル人財数

2,000レベルへ拡充

1,750

(前年比 約150人増)

 

 

 

ⅲ 現場100日チャレンジプログラム実行者数

2024年よりグローバル展開開始

2026年に45レベル/年の取り組みへ拡充

BSAPIC(アジア・大洋州・インド・中国)へ拡大、2023-24年で延べ24人が取り組み

 

 

 

ⅳ 労働災害発生状況

重篤災害

0

1件(前年比△1)

 

 

 

②休業度数率(注1)

2.50

2.41(前年比△0.34)

ⅴ 女性リーダーの割合(注2)

2023年対比+3%レベル

16.4(前年比+0.3%)

(注3)

 

 

 

(注1) 算出方法は、(死傷者数/延実労働時間数)×1,000,000としております。2024年実績は2025年2月28日時点の数値であり、労災判定により変動する可能性があります。

(注2) 生産現場を始めとする現場のチームを管理・監督するリーダーを含めたマネジメントポジションを対象にしております。

(注3) 当社グループのセグメント別の女性リーダーの割合は以下の通りとなっております。

(2024年12月31日現在)

 

カテゴリー

セグメント

女性リーダーの割合

トップ

マネジメント

マネジメント

ポジション

ジュニアマネジメント

ポジション

合計

日本

0.6%

8.0%

5.7%

6.4%

アジア・大洋州・インド・中国

9.8%

22.3%

12.2%

14.0%

米州

34.0%

26.0%

21.9%

22.6%

欧州・中近東・アフリカ

9.4%

22.9%

19.3%

20.5%

合計

8.6%

17.8%

16.1%

16.4%

・就業人員に基づいた割合を示しております。

・「日本」には「その他」「全社(共通)」セグメントも含んでおります。

・各カテゴリーの当社及び連結子会社における定義は以下の通りであります。

トップマネジメント:役員相当の者(Executives & VPs)

マネジメントポジション:組織のマネジメントを担う立場にある者(ライン長)

ジュニアマネジメントポジション:個人の知見や経験で組織に貢献する、あるいは組織の日々の管理目標を指導する立場にある者

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、当該リスク発生の回避、及び発生した場合の対応に努めております。

ただし、記載された事項以外にも予見することが困難なリスクが存在し、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、文中に含まれる将来に関する記載は、有価証券報告書提出日(2025年3月25日)現在で判断したものであります。

 

(リスクの管理・評価プロセス)

当社グループでは、毎年各地域及びグループ全体で直面する可能性のあるリスクを影響度と発生可能性の観点から評価及び特定し、そのリスクに対してグループ全体だけではなく、事業・SBU・部門単位での責任者を明確にし、自律的且つ継続的にリスク管理を行うと共に、経営上重大なリスクに関しては、Global CEOの直接の指揮の下で対応する体制をとっております。

 

(1) 事業を取り巻く経済環境、及び需要動向に関するリスク

当社グループは、開発・調達・生産・流通・販売などの事業活動をグローバルに展開しており、当社グループの業績及び財政状態は、事業活動を行っているそれぞれの国や地域における金利、為替、株式相場の変動などの経済環境や需要動向の変化により、さまざまな形で影響を受けております。当連結会計年度の当社グループの地域ごとの売上収益比率は、米州が52%、欧州・中近東・アフリカが20%、アジア・大洋州・インド・中国が15%、日本が13%の構成となっており、これらの地域の経済環境が悪化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に特に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループのビジネスは自動車産業と密接に関連していることから、当社グループの業績及び財政状態は、グローバルな自動車産業の景況による影響を受けております。自動車産業の動向以外にも、タイヤ市販用市場では各国の消費動向や自動車燃料価格の変動などによる影響を受けており、これらの要因によりタイヤ需要が減少する、あるいは予想している需要増加が減速する場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの鉱山・建設車両用大型・超大型ラジアルタイヤや油圧ホース等一部の商品につきましては、資源産業及び土木・建築産業の景況による影響を受けており、これらの要因により需要が減少する、あるいは予想している需要増加が減速する場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

さらに、当社グループは、日本、欧州、北米などさまざまな地域で冬用タイヤを販売しておりますが、これらの地域における降雪が少なく需要が減少する場合には、当社グループの業績が悪影響を受ける可能性があります。

 

(2) 法律・規制・訴訟に関するリスク

当社グループは、事業活動を行っている各国において、投資、貿易、為替管理、移転価格を含む税制、独占禁止、環境保護、個人情報保護など、関連する法律や規制の適用を受けております。当社グループの事業活動に影響を及ぼすものとして、例えば、国内外においてタイヤ性能に関する表示制度・規制や化学物質規制などが制定・導入されております。したがって、将来においても、新たな法律や規制により、事業活動の制約やコストの上昇など当社グループの業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

これらの他、当社グループは、国内外の事業活動に関連して、訴訟や各国当局による捜査・調査の対象となる可能性があります。重要な訴訟が提起された場合や、各国当局による捜査・調査が開始された場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 事業活動中断のリスク

・災害、戦争・テロ・暴動、社会的・政治的混乱など

当社グループは、開発・調達・生産・流通・販売などの事業活動をグローバルに展開しており、さまざまな国や地域における大規模な地震や風水害などの自然災害や、戦争・テロ・暴動、ボイコット、感染症、エネルギー供給障害、交通機能障害を含む社会的・政治的混乱などのリスクにさらされております。さらに、国内外における政治的・経済的条件の急激且つ大幅な変動などの要因により、当社グループの事業活動の継続に支障をきたす可能性があり、その結果、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループの事業活動の中核として重要な拠点が多数所在している日本における地震災害リスクに対しては、当社グループは耐震診断の結果に基づき優先順位をつけて耐震補強工事を計画的に進めております。さらに、地震災害が発生した場合の迅速な初期対応の推進及び業務を早期に復旧継続させることを目的としたBCPを策定し、その運用を振り返ることで内容を継続的に改善しております。また、新型インフルエンザや新型コロナウイルスなどの未知なる病原体が引き起こす感染症の拡大に対しても、従業員・家族・関係者の生命と安全の確保を最優先しながら事業損失の最小化を図るためのBCPを策定し、その運用を通じて内容を拡充しております。しかしながら、実際に発生した場合には、操業の中断・縮小、施設等の損害、多額の復旧費用などにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの特定商品や特定原材料を集中的に生産している拠点で事業活動の継続に支障をきたすような事態が生じた場合は、供給義務を果たせないことによる顧客からの信頼の喪失や賠償責任の追及につながる可能性もあり、その場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

・情報システム障害

当社グループの事業活動における情報システムの重要性は非常に高まっており、セキュリティの高度化などシステムやデータの保護に努めておりますが、それにもかかわらず、災害やサイバー攻撃など外的要因や人為的要因などにより情報システムに障害が生じた場合、重要な業務やサービスの停止、機密情報・データや個人情報の盗取や漏洩などのインシデントを引き起こし、事業活動の継続に支障をきたす可能性があります。その結果、当社グループのブランドイメージや社会的信用の低下、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

・ストライキ

当社グループは、円滑な労使関係の構築に努めておりますが、労使間の交渉が不調に終わり、長期間に及ぶストライキなどが発生した場合、事業活動の継続に支障をきたす可能性があり、その結果、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 気候変動及び自然資本損失に関するリスク

当社グループは気候変動及び自然資本損失によるリスクと機会を統合的に認識し、事業戦略への反映を進めております。主なリスクとしては、脱炭素社会や自然と共生する社会への転換に伴う「移行リスク」並びに気候変動及び自然資本損失による「物理的リスク」を認識しております。反面、これらの社会や顧客のニーズ変化を新たな成長機会とも捉えております。リスクとその対応の詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 気候変動及び自然資本損失に関する取組」に記載しております。

 

(5) 企業イメージに関するリスク

当社グループは、事業活動を通じて企業イメージ・ブランドイメージの維持向上に努める一方、法令遵守や企業倫理に基づく事業活動、及び火災や労働災害などの企業災害の防止・対策活動に努めております。加えて、当社グループを取り巻く社会からの信頼をさらに高めていくことの重要性が高まっているとの認識の下、ステークホルダーの皆様への迅速且つ適切な情報発信の強化にも努めております。それにもかかわらず、社会的な信用を失墜させるような企業不祥事や企業災害が発生した場合、さらにはそれらの事象に対する迅速で適切な情報発信などの対応が実施できなかった場合には、顧客からの信頼喪失や株価の下落を招き、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 為替変動に関するリスク

当社グループは、開発・調達・生産・流通・販売などの事業活動をグローバルに展開しており、原材料の調達や販売活動などにおいて、多種の通貨による取引を行っております。外貨建営業債権債務に対しては為替予約取引など、また、外貨建貸付金及び借入金に対しては通貨スワップ取引などを行うことにより、短期的な為替相場の変動影響を最小限にする努力をしておりますが、世界各地で国際間取引を行っていることから、為替相場の変動は、当社グループの業績に影響を及ぼすことになります。また、海外での売上収益、費用、資産・負債等は、連結財務諸表作成のために円換算されることから、為替相場の変動による影響を受けることになります。一般に、他国通貨に対する円高は当社グループの業績に悪影響を及ぼし、円安は当社グループの業績に好影響をもたらします。

 

(7) 競争激化に関するリスク

当社グループは、それぞれの市場で多数の企業と競合しており、販売価格競争を含む厳しい競争環境の中で事業を推進しております。また、原材料価格・エネルギー費・労務費の上昇等によって原価・経費面でマイナス影響を受けることがあります。このような事業環境に対し、当社グループは、顧客や市場への新しい商品価値の提案・提供などにより競争力を高める努力と共に、生産性の向上や経費マネジメントの強化などによる内部努力を継続しておりますが、それらの努力で利益低下を吸収できない場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、製造業者として従来から培ってきた製品開発力やモノづくり力に加え、技術イノベーションを核とした戦略を重視しており、新技術を搭載した製品の市場投入を積極的に進めております。これらの技術開発のための投資や費用は、最終的に高い商品価値を顧客や社会に認めていただくために投入しているものですが、競合他社との激しい競争において、事業として十分な成果に結びつけることができない場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 製品の欠陥に関するリスク

当社グループは、製造業者として販売する製品の品質に万全を期すことに努めております。特に、タイヤなど人命にかかわる商品を主に扱っているという認識に立ち、製品品質の確保、市場情報の収集や品質に関する早期警報システムの構築など、品質保証体制の充実に努めておりますが、予測できない原因により製品に欠陥が生じた場合や、顧客の安全・安心を最優先に確保するという観点から大規模なリコールなどを実施する可能性は皆無ではありません。そのような事態が発生した場合には、回収費用、社会的な信用の毀損、顧客への補償や訴訟費用・賠償費用などにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に米国の製造物責任訴訟や集団訴訟は、より重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 原材料調達に関するリスク

当社グループは、タイヤなどゴム製品の原材料として天然ゴムを使用しておりますが、天然ゴムの主要生産地である東南アジア諸国における災害、戦争・テロ・暴動、社会的・政治的混乱、ストライキ、あるいは収穫不良などにより、天然ゴムの安定供給に支障が生じた場合、当社グループの生産に必要な量を確保することが困難になり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、天然ゴム以外の主要原材料調達においても、原料需給の逼迫や供給能力の制約により、当社グループの生産に必要な量を確保することが困難になる場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

さらに、当社グループは、いくつかの主要原材料の調達について、グループ内の原材料生産拠点、又は一部のグループ外供給元に依存しております。このため、特定の原材料供給元の操業が停止するなどにより、必要な原材料の調達ができない状況が発生した場合は、当該原材料に依存している当社又はグループ会社の生産に著しい悪影響を及ぼし、その結果、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

加えて、需給の逼迫や投機目的の売買などにより、当社グループが調達している原材料の価格が高騰し、生産性向上などの内部努力や価格への転嫁などにより吸収できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 退職給付費用及び債務に関するリスク

当社グループの退職給付費用及び債務は、数理計算上の割引率などの前提条件に基づいて算出しております。しかしながら、年金資産等の制度資産の公正価値、金利の変動等により、これらの前提条件に大きな変動があった場合、あるいは前提条件の変更が必要になった場合には、退職給付費用や債務が増加し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 知的財産侵害に関するリスク

当社グループでは、知的財産を企業の競争力を高めるための重要な経営資源と位置づけ、第三者の知的財産権に対する侵害の予防、及び保有している多数の知的財産権の保護に努めております。それにもかかわらず、当社グループの認識又は見解との相違から、第三者から知的財産権を侵害したとして訴訟を受け、当社グループとして製造販売中止、あるいは損害賠償などが必要になった場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、第三者による知的財産権侵害を当社グループが主張したにもかかわらず、侵害があったと認められない場合には、当社グループの製品差別化や競争優位性が確保されず、結果として当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度より、当社グループではグローバル経営体制の更なる強化の一環として、インド事業のセグメント区分を変更しております。これにより、「中国・アジア・大洋州」セグメントを「アジア・大洋州・インド・中国」セグメントへ、「欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ」セグメントを「欧州・中近東・アフリカ」セグメントへ変更いたします。これにより、前連結会計年度の数値についても新たなセグメント区分に組み替えたうえで表示しております。なお、ロシア事業は2023年12月に譲渡が完了しております。

 また、当社グループは防振ゴム事業、化成品ソリューション事業を非継続事業に分類しており、前連結会計年度及び当連結会計年度の金額から非継続事業を控除しております。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.事業セグメント」に記載のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において、判断したものであります。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

a.業績全般

 

当連結会計年度

前連結会計年度

増減

金額

比率

 

億円

億円

億円

売上収益

44,301

43,138

+1,163

+3

調整後営業利益

4,833

4,806

+27

+1

営業利益

4,433

4,818

△385

△8

税引前当期利益

4,214

4,442

△227

△5

親会社の所有者に帰属する当期利益

2,850

3,313

△463

△14

 

 当社グループは、「最高の品質で社会に貢献」という使命の下、「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」というビジョンを掲げております。また、従業員、社会、パートナー、お客様と共に持続的な社会を支えることにコミットする「Bridgestone E8 Commitment」を企業コミットメントとして制定し、価値創造の軸としております。ビジョンの実現に向けては、創立100周年である2031年を視野に「2030年 長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」を策定し、これを北極星として、具体的な計画である2024年3月に発表した「中期事業計画(2024-2026)」に沿って、着実に経営を推進しております。

 当連結会計年度は、中国EV攻勢などによる自動車業界構造変化や、欧州・南米市場への廉価輸入タイヤの増加などのタイヤ業界構造変化の加速が「新たな脅威」となり、これらへの素早い対応が求められる厳しい事業環境において経営・業務品質の向上を最優先課題に掲げ、事業再編・再構築(第2ステージ)へ着手しながら、現物現場で「価値創造へ、よりフォーカス」することに注力いたしました。

 

 コア事業であるプレミアムタイヤ事業においては、新車用の乗用車用及び小型トラック用タイヤの需要が、EVシフト減速等を背景にグローバルで減速しました。アジアは前連結会計年度を若干上回った一方で、特に、欧州・日本は前連結会計年度比大幅に需要が減少し、北米においても前連結会計年度比微減となりました。高インチタイヤ(18インチ以上)の需要は車両の大型化を反映し、北米・欧州では概ね前連結会計年度並みの需要で推移、日本では前連結会計年度を上回りました。新車用トラック・バス用タイヤの需要は、北米・欧州・アジアでは前連結会計年度比需要大幅減となりましたが、日本は前連結会計年度の部品供給不足の影響を受けた車両生産減の反動もあり、前連結会計年度並みの需要となりました。市販用乗用車用タイヤ及び小型トラック用タイヤの需要は、北米において2024年1月にタイ・韓国品の輸入関税引き下げがあり、廉価輸入品の流入の影響が大きく、米国・カナダのタイヤ製造者協会に参加する主要タイヤブランドの需要では前連結会計年度比減となりました。一方、日本・アジアでは需要は前連結会計年度並み、欧州では緩やかに市況は回復傾向にあり前連結会計年度を上回る需要となりました。また、市販用の高インチタイヤ(18インチ以上)は、北米・欧州を中心に需要伸張が継続しました。市販用トラック・バス用タイヤの需要は、北米では第1四半期に流通在庫が正常化し、第2四半期以降順調に需要が回復した結果、年間で前連結会計年度比需要増となりました。欧州・アジアにおける需要は前連結会計年度比回復し、日本では前連結会計年度並みに推移しました。

 当社グループの売上収益については、上記需要環境の中、グローバルの新車用の乗用車用及び小型トラック用タイヤ、並びにトラック・バス用タイヤの販売本数減、加えてブラジル・アルゼンチンを主とした南米事業の悪化があるも、市販用において乗用車用プレミアムタイヤ(18インチ以上高インチタイヤ、各地域において高収益なプレミアムタイヤブランドなど)の販売拡大による販売MIX改善を進めると共に、超大型鉱山用タイヤについては前連結会計年度並みの販売を確保し、為替の追い風もあり前連結会計年度比増収となりました。

 調整後営業利益については、再編・再構築(第2ステージ)の断行、売値、MIXスプレッドの改善に加え、為替円安による追い風の影響があり、南米事業の悪化や販売本数減少の影響を吸収し、前連結会計年度を若干上回る水準での着地となりました。当連結会計年度は、断トツ商品を軸にプレミアム領域へのフォーカスを一層強化し、赤字・不採算事業の削減・中止を加速させ、販売MIXの改善を継続しました。また、乗用車用及び小型トラック用、トラック・バス用タイヤにおいて販売本数減少の影響による固定費負担増、加工費悪化がある一方で、海上運賃単価の下落による影響に加え、中期事業計画(2024-2026)にて推進するグローバル調達、グローバルSCM(サプライチェーンマネジメント)物流改革、BCMA(Bridgestone Commonality Modularity Architecture) 、グリーン&スマート化、現物現場での地道な生産性改善などのビジネスコストダウンが業績に貢献しております。

 また、営業利益については、第2四半期に六本木社宅売却益の計上があった一方、欧州事業用資産減損など再編・再構築関連費用を計上した結果、前連結会計年度比減益の着地となりました。

 以上の結果、当社グループの当連結会計年度の売上収益は44,301億円(前連結会計年度比3%増)、調整後営業利益は4,833億円(前連結会計年度比1%増)、営業利益は4,433億円(前連結会計年度比8%減)、税引前当期利益は4,214億円(前連結会計年度比5%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,850億円(前連結会計年度比14%減)となりました。今後も、引き続き経営・業務品質の向上を最優先としながら、「価値創造へ、よりフォーカス」するとともに、「守り」と「攻め」の両輪で経営を推進してまいります。

 

b.セグメント別業績

 

 

当連結会計年度

前連結会計年度

増減

金額

比率

 

日本

 

億円

億円

億円

売上収益

12,261

12,424

△164

△1

調整後営業利益

1,873

2,065

△192

△9

アジア・大洋州・インド・中国

売上収益

5,297

5,515

△217

△4

調整後営業利益

585

552

+33

+6

米州

売上収益

21,800

20,800

+999

+5

調整後営業利益

1,801

2,120

△318

△15

欧州・中近東・アフリカ

売上収益

8,356

8,192

+164

+2

調整後営業利益

298

117

+181

+155

その他

売上収益

840

773

+67

+9

調整後営業利益

75

55

+21

+38

連結 合計

売上収益

44,301

43,138

+1,163

+3

調整後営業利益

4,833

4,806

+27

+1

 

[日本]

 売上収益は12,261億円(前連結会計年度比1%減)、調整後営業利益は1,873億円(前連結会計年度比9%減)となりました。

 市販用乗用車及び小型トラック用タイヤ、並びにトラック・バス用タイヤの販売本数は概ね前連結会計年度並みに推移した一方で、乗用車用及びトラック・バス用タイヤの海外向け輸出は前連結会計年度を大きく下回り推移しました。戦略的価格マネジメントに加え、低採算領域の削減によりプレミアム領域へのフォーカスを強化したものの、固定費負担増、原材料高騰・インフレ影響を売値・販売MIX改善及び為替円安の追い風でも吸収しきれず、前連結会計年度比減収減益となりました。

[アジア・大洋州・インド・中国]

 売上収益は5,297億円(前連結会計年度比4%減)、調整後営業利益は585億円(前連結会計年度比6%増)となりました。

 販売本数では、新車用タイヤが大幅に前連結会計年度を下回る一方、市販用乗用車及び小型トラック用タイヤは前連結会計年度並み、市販用トラック・バス用タイヤは順調に推移しました。加えて、域内各国での売値改善、プレミアム領域へのフォーカス徹底による販売MIX改善で原材料高騰・インフレ影響を吸収し、事業再構築の効果もあり前連結会計年度比減収も増益となりました。

[米州]

 売上収益は21,800億円(前連結会計年度比5%増)、調整後営業利益は1,801億円(前連結会計年度比15%減)となりました。

 北米タイヤ事業において、販売本数は、市販用トラック・バス用タイヤは前連結会計年度を上回る一方、新車用・市販用乗用車及び小型トラック用タイヤ、並びに新車用トラック・バス用タイヤは、前連結会計年度を下回りました。販売MIXは着実に改善したものの、コスト面においては、インフレ及び販売本数減により生産調整を行い、加工費が悪化したことに加え、南米事業に関連する減益が大きく影響し、為替円安の追い風でも吸収できず前連結会計年度比増収も大幅な減益となりました。

 

[欧州・中近東・アフリカ]

 売上収益は8,356億円(前連結会計年度比2%増)、調整後営業利益は298億円(前連結会計年度比155%増)となりました。

 欧州事業において、販売本数は乗用車及び小型トラック用、トラック・バス用タイヤ双方において、市販用では概ね前連結会計年度並みに推移する一方で、新車用は前連結会計年度を大幅に下回りました。販売本数減による悪化はあるも、原材料に対する売値とMIXのスプレッドは前連結会計年度比改善したことに加え、事業再編・再構築の効果も収益性改善に一部貢献を開始し、前連結会計年度比増収増益となりました。

 

(注1) セグメント別の金額はセグメント間の取引を含んでおり、連結合計の金額はそれらを消去した後の数値であります。

(注2) 当連結会計年度より、以下のとおりセグメント区分を変更しております。なお、対応する前連結会計年度についても区分変更後の金額・数値としております。

「中国・アジア・大洋州」 : 「アジア・大洋州・インド・中国」に変更

「欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ」 : 「欧州・中近東・アフリカ」に変更

 

c.財政状態

(流動資産)

 流動資産は、現金及び現金同等物が179億円減少したものの、営業債権及びその他の債権が850億円、棚卸資産が767億円増加したことなどから、前連結会計年度末比1,662億円増加(同6%増)し、28,636億円となりました。

(非流動資産)

 非流動資産は、有形固定資産が1,018億円、使用権資産が94億円増加したことなどから、前連結会計年度末比1,295億円増加(同5%増)し、28,599億円となりました。

(流動負債)

 流動負債は、営業債務及びその他の債務が115億円、リース負債が52億円増加したものの、社債及び借入金が1,191億円減少したことなどから、前連結会計年度末比886億円減少(同7%減)し、11,762億円となりました。

(非流動負債)

 非流動負債は、退職給付に係る負債が71億円減少したものの、リース負債が118億円増加したことなどから、前連結会計年度末比32億円増加(同0.4%増)し、7,608億円となりました。

 なお、流動負債及び非流動負債に計上された有利子負債(注)の合計は、前連結会計年度末比1,024億円減少(同12%減)し、7,277億円となりました。

(注) 有利子負債には社債及び借入金、リース負債を含んでおります。

(資本)

 資本合計は、配当金(親会社の所有者)により1,404億円減少したものの、その他の資本の構成要素が2,192億円、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により2,850億円増加したことなどから、前連結会計年度末比3,811億円増加(同11%増)し、37,865億円となりました。

 

 これらの結果、当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べて2,957億円増加(同5%増)し、57,235億円となりました。また、当連結会計年度の親会社所有者帰属持分比率は65.2%となり、前連結会計年度末比3.4ポイントの上昇となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 

当連結会計年度

前連結会計年度

増減

金額

 

億円

億円

億円

営業活動によるキャッシュ・フロー

5,488

6,614

△1,126

投資活動によるキャッシュ・フロー

△2,551

△2,977

+427

財務活動によるキャッシュ・フロー

△3,433

△1,837

△1,596

現金及び現金同等物に係る換算差額

322

255

+67

現金及び現金同等物の増減額

△173

2,055

△2,228

現金及び現金同等物の期首残高

7,246

5,189

+2,057

売却目的で保有する資産に含まれる現金及び現金同等物の増減額

△6

△8

現金及び現金同等物の期末残高

7,067

7,246

△179

 

 当連結会計年度における当社グループの現金及び現金同等物(以下、「資金」)は、全体で179億円減少(前年同期は2,057億円の増加)し、当連結会計年度末には7,067億円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金収支は、5,488億円の収入(前連結会計年度比1,126億円の収入減)となりました。これは、営業債権及びその他の債権の増加額295億円(前連結会計年度は営業債権及びその他の債権の減少額568億円)や、棚卸資産の増加額163億円(前連結会計年度は棚卸資産の減少額853億円)、利息の支払額240億円(前連結会計年度は178億円)、法人所得税の支払額1,173億円(前連結会計年度は580億円)などがあったものの、税引前当期利益4,214億円(前連結会計年度は4,442億円)や、減価償却費及び償却費3,481億円(前連結会計年度は3,058億円)、利息及び配当金の受取額207億円(前連結会計年度は345億円)などがあったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金収支は、2,551億円の支出(前連結会計年度比427億円の支出減)となりました。これは、有形固定資産の売却による収入806億円(前連結会計年度は296億円)や、貸付金の回収による収入110億円(前連結会計年度は149億円)などがあったものの、有形固定資産の取得による支出2,993億円(前連結会計年度は2,824億円)や、無形資産の取得による支出380億円(前連結会計年度は605億円)、長期貸付けによる支出138億円(前連結会計年度は211億円)などによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金収支は、3,433億円の支出(前連結会計年度比1,596億円の支出増)となりました。これは、短期借入金の増加額141億円(前連結会計年度は209億円)などがあったものの、長期借入金の返済による支出357億円(前連結会計年度は207億円)や、社債の償還による支出1,000億円(前連結会計年度は支出なし)、リース負債の返済による支出716億円(前連結会計年度は684億円)、配当金の支払額(親会社の所有者)1,403億円(前連結会計年度は1,300億円)などがあったことによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

日本

805,888

+0.9

アジア・大洋州・インド・中国

430,416

△5.2

米州

1,639,633

+1.7

欧州・中近東・アフリカ

662,860

+1.7

合計

3,538,798

+0.6

  (注) 金額は、販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当社グループは、少数の特殊製品(特殊ホース等)について受注生産を行うほかは、すべて見込生産であります。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

日本

961,777

+1.6

アジア・大洋州・インド・中国

478,690

△1.9

米州

2,157,097

+4.6

欧州・中近東・アフリカ

813,048

+1.7

その他

19,475

+16.1

全社又は消去

10

△57.6

合計

4,430,096

+2.7

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月25日)現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下、「連結財務諸表規則」という。)第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、次のとおりであります。

 なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因や当該事項への対応については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

 (売上収益、調整後営業利益及び営業利益)

 売上収益、調整後営業利益及び営業利益並びにセグメント別の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 この結果、調整後営業利益率は10.9%となり、前連結会計年度比0.2ポイントの低下となりました。

 (親会社の所有者に帰属する当期利益)

 親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比463億円減少(同14%減)し、2,850億円となりました。これは、営業利益が385億円減益、金融収益が81億円減少したことなどによるものです。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

 現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比179億円減少し、7,067億円となりました。なお、活動区分ごとのキャッシュ・フローについては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 資金調達にあたっては、金融機関からの借入れに加え、引き続き、国内普通社債やコマーシャル・ペーパーなどの直接金融手段や、売上債権の証券化、リースの活用など、リスク分散や金利コストの抑制に向けその多様化を図ってまいります。

 資金使途につきましては、主に稼ぐ力の強化、価値創造へのフォーカス、サステナブルなプレミアムブランド構築のための戦略的成長投資による持続的な成長と企業価値向上の実現を優先しつつ、適正な財務体質の維持と株主還元に活用してまいります。

 

④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当連結会計年度においては、売上収益4兆4,301億円(前連結会計年度比1,163億円増加)、調整後営業利益4,833億円(前連結会計年度比27億円増加)、調整後営業利益率10.9%(前連結会計年度比0.2ポイント低下)、ROIC8.2%(前連結会計年度比0.5ポイント低下)、ROE8.1%(前連結会計年度比2.3ポイント低下)となりました。

 中期事業計画(2024-2026)においては、経営の3つの軸である「過去の課題に正面から向き合い、先送りしない」、「足元をしっかり、実行と結果に拘る」、「将来への布石を打つ」は変えず、4つのビジネス基本シナリオに沿って、「価値創造へ、よりフォーカス」しております。4つのビジネス基本シナリオは、「良いビジネス体質を創る」、「良いタイヤを創る」、「良いビジネスを創る」、そして「良い種まきをし、新たなビジネスを創る」です。特に、2025年においては、「良いビジネス体質を創る」に沿って、経営・業務品質の向上を最優先課題としております。

 2025年は、自動車業界・タイヤ業界の構造変化の加速も踏まえ、「緊急危機対策年」と位置付け、バリューチェーン全体で経営・業務品質の向上を徹底する「守り」と、2026年以降の成長を見据えた「断トツ商品」やソリューション事業の強化などを含めた「攻め」の活動の両輪で経営を推進してまいります(2025年通期連結業績予想   売上収益4兆3,300億円、調整後営業利益5,050億円、調整後営業利益率11.7%、ROIC9.2%、ROE7.2%)。

(注) ROEにつきましては、親会社の所有者に帰属する当期利益のうち継続事業に係る金額に基づいて算出しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、「ゴムを極める」、「接地を極める」、「モノづくりを極める」の3つの「極める」を軸に技術イノベーションに取り組み、ビジョンに掲げる社会価値・顧客価値の創造を推進するものです。コア事業であるプレミアムタイヤ事業において「断トツ商品」の開発を強化し、成長事業であるソリューション事業との連携を深めることで、お客様が「断トツ商品」を使う段階でその価値を増幅させ、お客様の困りごとを解決することを目指しております。これらの活動は、当社グループが独自に持つ技術・知見・ノウハウなどの強いリアルにデジタルを融合させることで推進してまいります。また、化工品・多角化事業、当社グループの新たな事業機会を探索する探索事業においても同様の考え方で研究開発活動に取り組んでおります。

プレミアムタイヤ事業では、商品設計基盤技術「ENLITEN」の進化に取り組んでおります。「ENLITEN」技術は、当社グループが独自に価値を創造する「新たなプレミアム」と位置付けており、タイヤを「薄く・軽く・円く」作ることで従来品のタイヤ性能を全方位で向上させると共に、商品、市場、お客様ごとに異なるタイヤ性能への要求や付加価値を、それぞれに合わせてカスタマイズして提供する「究極のカスタマイズ」を追求し、技術の確立・進化へ取り組んでおります。乗用車用タイヤから「ENLITEN」技術を搭載した新商品をグローバルで拡充しており、2024年までに、米国のEV向け専用商品「Turanza(トランザ) EV(イーブイ)」、欧州の「Turanza 6(シックス)」、インドの「Turanza 6i(シックスアイ)」などを発売いたしました。日本では2024年に「REGNO(レグノ) GR(ジーアール)-XⅢ(クロススリー)」を発売し、2025年2月にはミニバン・コンパクトSUV専用プレミアムブランド商品「REGNO GR-XⅢ TYPE(タイプ) RV(アールブイ)」を発売いたしました。この新商品は、REGNO GR-XⅢの特性を引き継ぎながらミニバン・コンパクトSUVユーザーのニーズと車両の特徴に合わせてカスタマイズしており、従来のミニバンユーザーだけでなく、コンパクトSUVユーザーにも深みを増した空間品質や磨き抜かれた走行性能といった新たな「REGNO FEELING(フィーリング)」の価値を提供するものです。今後もより多くのお客様に当社プレミアム商品の価値を実感いただける様、「ENLITEN」技術搭載商品の拡充をグローバルで進めてまいります。

さらに、次世代の「ENLITEN」技術の進化に向けては、サステナブルなグローバルモータースポーツ活動を「走る実験室」として、極限の条件で使用されるモータースポーツタイヤの開発を通じて、市販用タイヤ技術開発も加速してまいります。

また、「ENLITEN」技術を、モノづくり基盤技術であるBCMA(Bridgestone Commonality Modularity Architecture)と融合させることで、商品力アップとビジネスコストダウンの両立、環境負荷の低減を推進しております。BCMAは、タイヤを骨組みであるカーカス、補強帯のベルト、表面のトレッドの3つのモジュールに分け、モジュール1(カーカス)、モジュール2(ベルト)を異なる商品間で共有し、開発から生産のバリューチェーンをシンプル化することでビジネスコストを低減し、モジュール3(トレッド)でタイヤ性能をカスタマイズし差別化するものです。2024年より本格的にグローバルへ導入し、まずは乗用車用タイヤ工場から4つのモデル工場を設定し、モデル工場を起点に各地域・グローバルのBCMAに関わる活動を推進しております。2024年は、モジュール共用による連続生産の実現などの取り組みを広め、ビジネスコストの低減に寄与しました。さらに、原材料調達や在庫削減などバリューチェーン全体においても効果を波及させてまいります。また、日本をグローバルにおける「モノづくりの中核」として、BCMAと連動し、「モノづくり」の本質を追求し、次のレベルへ進化させる取り組みを「シン・彦根モデル」として展開を開始しました。このモデルは、AIを実装したタイヤ成型システム「EXAMATION(エクサメーション)」の導入を起点に、生産に関連するデータを収集し、デジタル技術を駆使した分析を実施し、タイヤ生産過程における課題を抽出し、現物現場での改善活動を推進するものです。リアルとデジタルの融合によりモノづくりを進化させ、さらに、BCMAによる「バラつきのないシンプルなモノづくり」の実現と掛け合わせた相乗効果により、安全、環境、品質、コストなどのモノづくりの指標を連鎖的に改善してまいります。

成長事業であるソリューション事業では、鉱山車両用、航空機用、トラック・バス用タイヤの生産財にフォーカスしてソリューション開発を推進しております。鉱山車両用タイヤにおいては、「断トツ商品」の「Bridgestone MASTERCORE」を中核として、強いリアルとデジタルを組み合わせ、鉱山オペレーションの最適化に貢献するソリューションの拡充に取り組んでおります。一例として、鉱山事業者の大きな困りごとであるタイヤの熱に起因する故障を未然に防止するため、お客様との信頼をベースに鉱山車両情報を共有いただきながら、お客様のデータと、鉱山車両向け次世代タイヤモニタリングシステム「Bridgestone iTrack(アイトラック)」から取得できるタイヤの温度や空気圧などの当社のデータを組み合わせ、AIを活用した独自のアルゴリズムを構築しております。これにより、タイヤ耐久を予測し、最適なタイヤメンテナンスのタイミングや車両運行ルートをお客様へご提案し、タイヤにかかるコスト削減や、車両のダウンタイム削減といった鉱山オペレーションの生産性、経済価値の最大化へ貢献してまいります。また、タイヤを安全に長く使用いただくことでタイヤ使用本数を削減でき、資源生産性を向上させ、サステナビリティへも貢献してまいります。今後も、「断トツ商品」の強化とデジタル技術の進化により鉱山ソリューションを拡充させてまいります。航空ソリューションにおいても、お客様との共創をベースにソリューション開発を強化しております。これまで、日本航空株式会社との共創において、株式会社ジェイエアが運航するリージョナル機を対象に、精度の高い計画的なタイヤ交換を実現するため、オペレーション中のタイヤ摩耗量を予測する技術開発を進めてまいりました。この知見をもとに、タイヤ摩耗予測技術をさらに進化させ、2024年5月からは精度の高い計画的なタイヤ交換オペレーションの対象を、A350-900型機をはじめとした大型機に拡大いたしました。今後も航空業界におけるオペレーションの安心・安全を支え、新たな価値の創造を進めてまいります。

さらに探索事業領域においても、社会価値の創造を中核に研究開発活動を推進しております。

1つ目は、リサイクル事業の推進であります。リサイクル事業では、日本において、使用済タイヤのケミカルリサイクル技術の社会実装に向けたENEOS株式会社との共同プロジェクトを開始しております。本プロジェクトでは、経済産業省により設置された「グリーンイノベーション基金事業」の支援を受け、タイヤ・ゴム産業及び石油化学産業のバリューチェーンにおける資源循環性の向上とカーボンニュートラル化への貢献を目指しております。使用済タイヤの精密熱分解(油化)によるケミカルリサイクル技術の社会実装に向け、2023年6月に「Bridgestone Innovation(イノベーション) Park(パーク)」(以下「BIP」といいます。)内に導入した実証機により、使用済タイヤを精密熱分解して得られる分解油をリサイクルオイル化し、このオイルから合成ゴムの素原料であるブタジエンなどの化学品を高収率に製造するケミカルリサイクル技術の社会実装に向けた実証実験を開始しております。さらに、2025年1月には、実証機で得た精密熱分解の基盤技術を実装した使用済みタイヤの精密熱分解パイロット実証プラントの建設を発表し、今後も、社会実装に向けて量産を想定したスケールアップ技術の確立を目指してまいります。また、もう1つのリサイクルの取り組みとして、廃プラスチックの半分以上を占めるポリオレフィン(ポリエチレンやポリプロピレンなど)のマテリアルリサイクル技術確立に向けた産官学の取り組みについても、2024年に開始いたしました。これは、当社が開発した世界初の高機能性エチレン系熱可塑性エラストマー(ESB)を用いてポリオレフィン再生材の強度を高め、繰り返しリサイクルできる新たな資源循環型プラスチック材料の創出を目指すものです。本取り組みを通じて、ポリオレフィン特性の変化メカニズムを分子レベルで解明し、ESBの最適な分子設計を行うことで、プラスチックの効果的なマテリアルリサイクルの実現に向けた可能性を検討してまいります。

2つ目は、天然ゴム供給源の多様化を図るグアユール事業です。米国を中心に、米国エネルギー省・地域NGO・外部パートナーとの共創やオープンイノベーションをベースに推進しております。グアユールは乾燥地帯で栽培できることから、天然ゴムの代替原料として供給源の多様化だけでなく、乾燥地帯の緑化にも貢献します。グアユール由来のタイヤ開発を、2012年から本格的に推進し、2022年には、NTT INDYCAR(インディカー)® SERIES(シリーズ)において、グアユール由来の天然ゴムを使用したレースタイヤを供給し、パフォーマンスを実証しました。今後も、「走る実験室」コンセプトの下、NTT INDYCAR® SERIES を活用し、実用化へ向けた技術を探索してまいります。

3つ目は、ソフトロボティクス事業であります。ソフトロボットハンド(商品名:TETOTE(テトテ))を用いて、主に物流業、製造業におけるピースピッキング作業の自動化に向けた提案を行っております。小規模事業化フェーズとして、業界リーダーとの共創を通じて、社会と顧客の期待値に応え、需要を獲得すべく商品・サービスの開発を推進しております。加えて、ヒトのこころを動かすやわらかいロボット(umaru(ウマル)、Morph(モーフ) inn(イン))を通じて新たな感動・体験価値の創造を進めております。幅広いパートナーとの共創をベースに、探索事業としての新たな種まきを展開するとともに、若手を中心に多様な人財が活躍する場として、当社グループにおける人的創造性向上へも活かしてまいります。

4つ目は、空気充填が要らない次世代タイヤ「AirFree」の開発です。当社は安心・安全な移動を支える次世代タイヤとして、パンクの心配がなく省メンテナンスに優れ、リサイクルにも対応した非空気入りタイヤの開発を2008年より開始し、AirFreeConcept(エアフリーコンセプト)として技術を磨いてまいりました。当社グループのコアコンピタンスである「ゴムを極める」を活用した樹脂素材技術と「接地を極める」技術を軸に、デジタルによるシミュレーション技術とタイヤ技術を活用することで、非空気入りタイヤを安心・安全で乗り心地が良く、リサイクル・リトレッド性にも優れた新たな素材・構造へと進化させました。2024年には、社会実装を見据えて、AirFreeConceptを「AirFree」へと進化させ、公道における実証実験を小平市近郊で開始し、実際の使用環境により近い様々な環境で「AirFree」の特性や機能を検証しております。今後は、「AirFree」の提供価値と親和性が高いと考える「グリーンスローモビリティ(時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービス)」を事業化に向けたターゲットの1つとして、地方自治体との共創を広めることで、地域社会のモビリティを支えるべく、2026年の社会実装を目指してまいります。

また、当社は国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、トヨタ自動車株式会社と共に、人類の夢を背負って過酷な月面環境に挑戦する国際宇宙探査ミッションへ参加し、有人月面探査車向けタイヤの研究開発を推進しております。ラクダのふっくらとした足裏から着想を得て、金属製の柔らかいフエルトを接地面となるトレッド部に配置することで月面を覆うきめ細かい砂との摩擦力を高めた第1世代タイヤの技術を進化させ、「AirFree」で培った技術を活かしてしなやかに変形する薄い金属製スポークを採用し、さらにトレッド部を分割させた点を特徴とする第2世代タイヤを開発、過酷な月面環境下で求められる高い耐久性と走破性の両立を目指しております。この第2世代タイヤの開発を加速するために米国のアストロボティック社との技術協業を進めております。これまで地上走行試験やシミュレーションを中心に技術開発を進めてまいりましたが、本協業を通じて月面で実際に得られる走行データの検証により、タイヤ技術開発が大きく前進すると考えております。月面という「究極」の環境においても安心・安全な人とモノの移動を支え、スペースモビリティの未来になくてはならない存在となるべく、共創を推進し開発を進めてまいります。

さらに、モビリティの進化やサステナビリティを中核とした共創活動を推進しております。

安心・安全な自動運転車両の開発及び運営に必要となるソリューションを提供する株式会社ティアフォーとの共創を通じて、自動運転の研究開発や実用化などモビリティの進化へも貢献してまいります。自動運転技術の共創については2022年よりBIPにて開始し、2024年は自動運転車両の安全運行に向けた実証実験を長野県塩尻市の公道で行っております。この実証実験で得られるデータを用い、自動運転の技術・ノウハウを取り入れたモビリティの安全性や生産性の向上に貢献するタイヤ技術や、次世代のモビリティソリューションなどの開発を加速してまいります。

また、タイヤの原材料領域においては、天然ゴムの持続可能な安定供給・生産性向上、供給源の多様化を推進するため、様々なパートナーとの共創を通じて技術の構築を進めております。当社は2024年に福岡バイオコミュニティが実施するプロジェクトに参画し、天然ゴム資源であるパラゴムノキの栽培現場が抱えている、天然ゴムの持続的かつ安定供給上の課題である根白腐病に対して、根白腐病原菌への感染予防技術を開発し天然ゴム農園の生産性向上に貢献する研究を開始いたしました。また、米国のパシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)と提携し、タイヤの主な材料の1つで従来は石油由来で精製されるブタジエンをエタノールから合成する手法に関する研究開発に取り組んでおります。この取り組みでは、PNNLの触媒技術とブリヂストンのプロセスエンジニアリングを組み合わせ、持続可能で費用対効果の高いエタノールからブタジエンを合成する手法の確立を目指します。この手法の確立により、植物由来あるいはリサイクルより得られるエタノールからブタジエンを合成するという将来の可能性に繋げるべく研究開発を進めてまいります。

加えて、材料開発においては、国立大学法人東北大学の構内に「ブリヂストン×東北大学共創ラボ」を設置し、ゴムのシミュレーション基盤技術に関する共同研究を開始するなど、共創をベースにデジタル技術を駆使した取り組みを進めております。さらに、次世代放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」を活用したタイヤ材料の研究開発を2024年から開始いたしました。タイヤ製品に広く使用されている高分子材料を分子スケールで観察していき、ここから生まれる様々なデータとシミュレーションを融合させ、革新的な材料開発を加速してまいります。

これらの技術イノベーションを推進する場として、東京都小平市にある技術センターをグローバルなイノベーション拠点BIPとして再構築いたしました。BIPを中核に、欧州・ローマ、米国オハイオ州アクロンにある当社グループのイノベーション拠点とも連携を強化し、それぞれの強みを活かすことで、グローバルにおけるイノベーションを促進してまいります。また、BIPにおけるイノベーションを加速させるため、従業員一人ひとりが個とチームのアウトプット最大化のために自分自身で多様な働き方をデザインするABW(Activity(アクティビティ) Based(ベースド) Working(ワーキング))の考え方を取り入れた働き方変革を推進し、一人ひとりの生産性と人的創造性の向上に取り組んでまいります。

なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は1,262億円であります。

 

(注) 当社グループの研究開発活動には、特定のセグメントに紐づかないものがあり、またその成果はセグメント横断的に効果があるため、セグメント別の状況及び金額の記載を省略しております。