文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、経営理念「光を究め、感動と安心を創造し、心豊かな社会の実現に貢献します。」のもと、あらゆるステークホルダーとの良好な関係を築き、持続的な成長と企業価値の向上を目指してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社は、経済価値だけでなく、社会価値・非財務価値も高め、企業価値の最大化を図ることで株主・投資家の皆さまのご期待に応えるとともに、当社の持続的な成長とサステナブルな社会の実現を目指しています。
2024年より2026年12月期を最終年度とする新中期経営計画「Value Creation26」を掲げ、新たにスタートをしましたが、2026年の経営数値目標の全てについて初年度で達成することができました。現在はこの大きな成果を踏まえ、「Value Creation26 ver2.0」として進化させ、目標を上方修正し、更なる飛躍を目指しています。
その目標とする経営指標は以下のとおりです。
①売上高 950億円
②営業利益 205億円 (営業利益率21.6%)
③EBITDA率 24%以上
④ROE 16%以上
⑤株主還元 総還元性向60%程度
(3)中長期的な会社の経営戦略、経営環境及び優先的に対処すべき課題
当社を取り巻く経営環境は、地政学リスクの高まりやインフレの長期化懸念等により依然として不確実性は高い状況です。加えて、サプライチェーンの安定性、デジタル化、脱炭素等の多様化・複雑化する社会・産業・個人のニーズに対して、先見性をもち、変化に迅速かつ柔軟に対応し、企業として様々な価値を創出・提供していくことが重要と考えています。
これらを実現するため、「Value Creation26 ver2.0」では、「事業戦略」「財務戦略」「ESG/サステナビリティ戦略」の3つを基本戦略とし、実行することにより「持続可能な事業基盤」を構築し、「質の高い飛躍、企業価値最大化」を実現していきます。
<事業戦略>
①事業ポートフォリオ最適化の深化
②新規事業の育成・創出の加速
<財務戦略>
①効率的かつ安定性を確保した経営の構築
②株主還元政策の拡充
<ESG/サステナビリティ戦略>
①コーポレート・ガバナンス体制の変革
②経営インフラ/人的資本拡充
③カーボンニュートラル・環境負荷低減
<対処すべき課題>
①既存事業のグローバル展開を加速させ、マーケティング力・商品企画力・営業力を強化し、米州/欧州市場の挽回を最優先に新興国市場の需要の取り込み、収益性の向上を図り、事業基盤を強化する。
②市場毎の顧客ニーズに応じた新製品をタイムリーに提供できるように、関係部門が連携し、全社一丸(チームタムロン)で開発体制を強化する。
③技術戦略「“撮る”から“測る”へ」を推進し、コア技術である光学技術を中心とし、要素技術開発と新たな技術領域での研究開発を、技術革新で創造していく。
④DX推進会議を全社的に展開、ITを活用した業務改革を推進し、全社的に生産性向上を図る。
⑤地政学リスクへ対応するため、ベトナム新工場を含む世界3極生産体制・サプライチェーンを強化し、工場の自動化・省力化・省人化を推進する。
⑥新規事業の育成と創出を実現するため、社内推進体制の構築とともに、財務戦略に基づきM&A、アライアンス、オープンイノベーションを加速させ、戦略投資を積極化する。
⑦監督機能の強化と迅速な意思決定を図り、実効性の高いコーポレート・ガバナンス体制を構築する。
⑧「環境ビジョン2050」に基づき、心豊かな社会を実現するため、持続可能な社会づくりに貢献していく。
⑨E&Iの推進、人的資本投資の拡充、健康経営の推進、エンゲージメント活動の拡充等を図り、社員が創造性を発揮できる「働きがいのある会社」を目指す。
これらにより、写真関連事業では「人々に感動を、心を豊かに」をテーマに、中核事業としての高収益体質を向上させ安定的な収益確保を目指します。監視&FA関連事業では「安心・安全な社会づくりに」をテーマに、成長事業への再転換、営業利益率10%以上の確保を目指します。モビリティ&ヘルスケア、その他事業では「安全な暮らしと健康を」をテーマに、車載事業、医療事業の更なる成長を図り、新規事業の創出を加速します。
(4)その他、会社の経営上重要な事項
該当事項はありません。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
サステナビリティに関する考え方 タムロンは、「光を究め、感動と安心を創造し、心豊かな社会の実現に貢献します。」という経営理念に基づき、全てのステークホルダーの皆さまとともに、SDGsが掲げる持続可能な社会の実現を目指しています。 変化の激しい社会情勢において当社が変わらず求めていくものは、光学製品を通して「心豊かな社会」の実現に貢献することです。 光学の力で未来の社会課題に立ち向かい、新たな価値を世界中に提供していくことが当社の社会的使命であり、この使命の実現を通じて、持続可能な社会の実現と当社の持続的成長を図っていくことが当社のサステナビリティであると考えています。 |
(1)ガバナンス・戦略
<サステナビリティ全般>
当社は、サステナビリティの推進機能として、CSR 委員会・リスクマネジメント委員会・情報マネジメント委員会・コンプライアンス委員会を設置し、サステナビリティを巡る諸課題への対応に向けた体制を強化しております。各委員会によるサステナビリティに関する取り組みは定期的に取締役会に報告し、取締役会によるサステナビリティに関する監視・監督の強化を図っております。
中期計画「Value Creation26 ver2.0」の基本戦略の一つである「ESG/サステナビリティ戦略」にて以下を実行することにより「持続可能な事業基盤」を構築してまいります。
・コーポレート・ガバナンス体制の変革
・経営インフラ/人的資本拡充
・カーボンニュートラル・環境負荷低減
2025年度からは、更なる活動強化のため、取締役会への報告を審議へ変更し、中長期的な企業価値向上の観点からサステナビリティを巡る諸課題の検討を行う体制を取っております。
また、サステナビリティに関する取り組みと役員報酬との連動強化を目的として2024年度から役員報酬の業績連動指標に、新たにESG指標を追加いたしました。役員報酬制度の詳細については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4)役員の報酬等をご覧ください。
<気候変動>
当社は、気候変動・人的資本経営をCSR重要課題の一つとして認識しており、方針や重要事項をCSR 委員会で審議・決定しております。また、CSR委員会による取り組みは定期的に取締役会に報告し、取締役会による監視・監督の強化を図っております。
全ての人々が生き生きと暮らすことのできる心豊かな社会の実現のために「環境ビジョン2050」を策定し、「脱炭素社会」「資源循環社会」「自然共生社会」の実現に向けた中長期目標を設定しております。「脱炭素社会」の実現に向けては2050年までにCO2排出量ゼロの目標を掲げ、バリューチェーン全体において目標達成に向けた取り組みを実施しております。
気候変動による世界的な平均気温の4℃上昇が社会へ及ぼす影響は甚大であると認識し、気温上昇を1.5℃以下に抑制することを目指す動きに貢献していくことが重要であると考え、2℃以下(1.5℃)シナリオを用いて気候変動にともなう様々なリスクと機会がもたらす事業への影響を把握し、戦略策定を進めています。
<人的資本経営>
タムロンのありたい姿の実現、経営戦略の実現に不可欠なものは、経営戦略と連動した人材戦略であり、そのために個人・組織の活性化、個人・組織が最大限に能力を発揮できる制度・職場環境の整備を重点的に加速させていきます。事業構造の変化やデジタル化の進展に伴う様々な経営環境の変化に対応していくため、全社員の知識・スキルの底上げ、新規事業を含む注力分野におけるキージョブ・キースキルの獲得・強化、事業環境等に応じた人材の適正配置を柔軟に行っていきます。タムロンの人材戦略は2つの要素「個人・組織の活性化」「職場環境の整備」から成り立っており、各要素について、経営戦略を踏まえ当社が重要と位置付ける人材戦略テーマに落とし込み、各々の目標設定・施策の企画・実行へとつなげることで着実に戦略実現を目指しています。
(2)リスク管理
「第2事業の状況
(3)指標及び目標
<気候変動>
当社は、気候変動に対する指標を温室効果ガス排出量の98%を占める CO2排出量と定め目標管理を行っています。「環境ビジョン2050」では、2050年までに自社の事業活動におけるCO2 排出量ゼロを目指し、2030年までに30%削減、2026年までに18%削減する目標を設定しています(2015年比)。また、間接排出量(以下Scope3)の算出を継続して行っており、今後はScope3に対する測定手法の確立、削減目標の設定に取り組んで参ります。
CO2排出量の削減目標及び実績は以下のとおりです。
指標 |
目標 |
実績 |
CO2排出量の削減 |
2026年 18.0%(2015年比) 2024年 12.0%(2015年比) |
15.2%(2015年比) |
<人的資本経営>
人的資本経営に関する指標及び目標は以下のとおりに設定しております。
指標 |
目標 |
実績 |
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<リスクマネジメントの仕組みと体制>
当社グループは、短期・中期・長期にわたるリスクを防止又は計画的に軽減する等の対策を実施するリスクマネジメントを通じて、企業の安定した成長に資することを目的として「リスクマネジメント規程」を制定し、リスクマネジメント推進のための基本事項・方針の決定、審議を行う「リスクマネジメント委員会」、その下部組織である「リスクマネジメント検討委員会」を設置しております。毎年、タムロングループ全体を対象範囲として気候変動や人的資本経営を含むリスクの抽出、影響度と発生可能性の観点からのリスク評価、対応策の策定・モニタリング等を行っております。また、企業経営に重大な影響が想定されるリスクは重点対策テーマとして特定し、対応策を検討・実行しております。進捗状況はリスクマネジメント委員会並びにリスクマネジメント検討委員会にて定期モニタリングを通じ確認がなされ、必要に応じて対応策等を見直すこととしております。
<リスクマネジメント体制図>
<事業等のリスク>
(1)デジタルカメラ業界の市場環境におけるリスク
リスクシナリオ |
スマートフォンカメラの性能向上と写真撮影の手軽さにより、スマートフォン市場が全世界的に拡大していること等により、デジタルカメラ市場は縮小傾向が続いており、それに伴い当社の主要製品である交換レンズ市場も縮小傾向が続いています。今後もスマートフォンカメラとの比較等において、デジタルカメラが優位性を訴求できない場合、市場縮小が進み、結果として、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、ミラーレスカメラへとシフトする市場環境を考慮し、ミラーレスカメラ用の交換レンズの新製品投入を積極的に進めております。 |
(2)需要に合わせた生産・販売ができないことによるリスク
リスクシナリオ |
製品供給が実際の需要を超過する場合、過剰在庫となり、それにより値下げや資金効率の低下を引き起こし、収益の減少につながる可能性があります。一方で、実際の製品需要が当社の供給を超過する場合、全ての注文に対応ができないことで、結果として売上の機会損失をもたらし、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、全社横断による在庫状況、見通しに関する会議を定期的に開催し、適正な在庫管理に努めております。 |
(3)自然災害などによるリスク
リスクシナリオ |
大地震・火災・洪水等の自然災害の発生により、当社グループの開発・製造拠点並びに調達先等に壊滅的な損害が生じた場合、操業が中断し、生産や出荷に遅延が生じるおそれがあります。これにより、売上高が減少し、事業の復旧に多大な費用が生じた場合、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、国内外における事業継続計画(BCP)による対応とその継続的改善を行っております。 |
(4)気候変動に関するリスク
リスクシナリオ |
気候変動は国・地域を超えて世界に影響を与える問題であり、グローバルに活動する当社グループにとって重要な課題であると認識し、対策を実施しておりますが、対応の不足や遅れにより以下の移行リスクと物理的リスクが顕在化する可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、2050年までのCO₂排出量ゼロ等を掲げた「環境ビジョン2050」を策定し、気候変動対策に取り組んでおります。 |
(5)写真関連事業への依存へのリスク
リスクシナリオ |
当社グループは、写真関連事業の売上高構成比が約73.3%(2024年12月期)を占めており、ミラーレスカメラやデジタル一眼レフカメラ等のレンズ交換式カメラ市場の変動が、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、監視カメラや車載カメラ等の産業向けでの事業拡大、医療等の新規分野への事業展開を進めております。 |
(6)特定顧客への依存リスク
リスクシナリオ |
当社グループは、ソニーグループ各社に対する売上高が連結売上高の約26.5%(2024年12月期)を占めております。従って同社グループの戦略・方針の変更及び取引関係等に変更が生じた場合には、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、その他顧客とのパートナーシップ強化、新規顧客開拓を進めております。 |
(7)特定の仕入先への依存リスク
リスクシナリオ |
当社グループは、多数の外部の取引先から原材料、部品等を調達しておりますが、特に硝子材料につきましては、限られた取引先に依存しております。これら原材料、部品等が、何らかの理由により当社グループが計画していた数量や価格で入手できず、予定していた数量の生産ができない場合等には、得意先への納品責任を果たせなくなる可能性があり、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、複数購買や代替調達先候補の把握、設計変更等による代替措置の早期実施等を図っております。 |
(8)カメラとのアンマッチングによる不具合発生リスク
リスクシナリオ |
当社デジタルカメラ用交換レンズは十分な品質保証検査を実施し、出荷を行っていますが、各カメラメーカーの新製品モデルの内蔵する規格の変更等によりカメラの一部機能が動作しない場合があります。その場合、購入を見送る顧客が増えることで、売上の機会損失をもたらし、当社グループの業績の変動要因となる可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、品質保証検査の更なる充実、出荷済み製品に対してはファームアップ等の書き換えを無償サービスで行う等の対応をしております。 |
(9)新規事業についてのリスク
リスクシナリオ |
当社グループは、新規事業の育成・拡大を図っていく方針ですが、価格競争の激化、急速な技術革新、市場ニーズの急激な変化等により新規事業の縮小や撤退を決断した場合には、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、社内リソースの柔軟なシフト、社外リソースの効率的活用を行っております。 |
(10)技術革新等による影響リスク
リスクシナリオ |
当社グループの事業分野においては、新しい光学技術が急速に発展していますが、技術革新を継続的に進め、製品に適用することは、当社の成長のために不可欠です。そのため、研究開発に対する多大な努力が必要となりますが、当社グループの先端技術の開発又は製品への適用が予定どおり進展しなかった場合は当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、中長期的な技術ロードマップに基づく技術開発、オープンイノベーションの推進等を図っております。 |
(11)業務提携及び企業買収に関連するリスク
リスクシナリオ |
当社グループの成長のための施策として、業務提携を始めとした様々な形態で、他社との関係を構築しております。また事業拡大を目的として企業買収も検討しております。しかし、景気動向の悪化や、対象会社もしくはパートナーの業績不振により、期待していた事業拡大を実現できない可能性があります。また、有力な提携先との提携が解消になった場合、事業計画に支障をきたし、投資に対する回収が遅れる可能性が生じることや、回収可能性が低下し、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす恐れがあります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、業務提携等の実施前において戦略や事業計画の整合性や妥当性、投資内容や潜在リスク等、様々な視点での検証を行い、実施後も定期的な評価による進捗管理と早期課題解決に努めております。 |
(12)製品の欠陥リスク
リスクシナリオ |
当社グループは、高度な品質保証体制を構築しておりますが、万一、大規模な製造物責任につながるような製品の欠陥が発生した場合には、多額の費用の発生あるいは当社グループの信用低下等を招き、それらが当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、品質保証体制の継続的な強化、品質不良発生時の対策と流出防止の徹底を図っております。 |
(13)優秀な人材の確保と主要な知識の流出リスク
リスクシナリオ |
当社グループは、レンズ加工での特殊技能などの高度な技術及び能力を有する社員によって支えられていますが、これらの主要な人材が退職し、その知識・ノウハウが社外に流出する可能性があります。また、有能な人材を採用・育成し、実力ある従業員の雇用の維持を図ることが当社の将来の経営成績に影響してくると考えておりますが、有能な人材を採用・育成できず、また有能な人材の流出が生じた場合、開発や生産の遅れなどをもたらし、主要な知識・ノウハウが流出するリスクが発生します。これらの結果、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす恐れがあります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、職種別採用制度、役割等級制度、社内公募制度等の人事制度の充実、ワークライフバランスやダイバーシティの推進による働きやすい職場環境の整備、健康経営の推進等を図っております。 |
(14)情報セキュリティに関連するリスク
リスクシナリオ |
当社グループは、技術情報等の重要な情報や取引先の企業情報並びに多くの顧客又はその他関係者の個人情報を保有しております。これらの情報へのセキュリティレベルの向上を図るとともに、情報取り扱いに関する社内規程の整備、従業員教育等を実施しております。しかしながら、情報への安全対策に努めているものの、ハッカーやコンピュータウイルスによる攻撃やインフラの障害、天災などによって、個人情報や技術情報の漏洩などが発生する可能性があります。このような事態が起きた場合、当社グループの企業価値を毀損する可能性があり、また企業情報及び個人情報が流出した場合には、当社グループの信頼を毀損するだけでなく、流出の影響を受けた取引先、顧客、従業員又はその他関係者から損害賠償を請求される可能性があります。そのような場合、対象企業や個人への補償、再発防止措置の実施等が必要になり、そのために多大なコストを要し、当社グループの収益と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、情報セキュリティ体制の構築、情報セキュリティポリシーに基づく情報管理を行っております。 |
(15)為替レートの変動リスク
リスクシナリオ |
当社グループは、当社と海外子会社間の取引を外貨建てで行っているほか、国内外の取引先との取引も一部外貨建てで行っているため、為替レートの変動が当社グループの製品の海外市場における競争力、輸出採算、業績等に大きく影響を及ぼす可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、為替予約等によるリスクヘッジを実施し対処しております。 |
(16)知的財産に関連するリスク
リスクシナリオ |
当社グループが、第三者との間に知的財産を巡って紛争が生じた場合には、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、知的財産権に関する権利の確保やトラブル回避のため、調査・交渉・申請等の必要な対応を行っております。 |
(17)法規制に関連するリスク
リスクシナリオ |
当社グループの事業は、国内外の各種法令、行政による許認可や規制等に関連しており、意図せざる理由により法令違反又は訴訟提起が生じた場合には、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、コンプライアンス委員会における方針の決定と推進等により法令遵守に努めております。 |
(18)減損損失リスク
リスクシナリオ |
当社グループの資産の時価が著しく下落した場合や、事業の収益性が悪化した場合には、減損会計の適用により減損損失が発生し、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、有形・無形固定資産について、減損の兆候判定と減損損失の認識及び測定を行うための手続きを整備・運用するとともに、投資時の投資回収性等の検証やその後の定期的なモニタリングを通じた早期兆候把握に努めております。 |
(19)地政学リスク
リスクシナリオ |
当社グループは企業活動の多くを日本国外で行っており、それら事業展開している国や地域で、予期しない不利な政治又は経済要因の発生、不利な影響を及ぼす税制又は税率の変更、テロ・戦争・自然災害・伝染病・その他の要因による社会的混乱等の事象が発生した場合には、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。 |
対応 |
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、グローバルな政治・社会・経済情勢を定常的にモニタリングし、企業活動への影響の把握・分析に努めております。 |
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済を概観しますと、中国など一部地域で停滞がみられましたが、総じて回復基調となりました。一方で、ロシアのウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫化等の地政学リスクなど不透明感が続く状況となりました。
米国経済は良好な所得環境が個人消費を下支えし、堅調に推移しました。欧州経済はインフレ率の低下により持ち直しの動きは見られましたが、低成長に留まり本格回復には至りませんでした。中国経済は不動産不況の長期化や内需に鈍化が見られ、個人消費も伸び悩み、景気の減速が継続しました。日本経済は、設備投資が堅調に推移し、良好な雇用・所得環境により、個人消費が回復基調となりました。
当社グループ関連市場では、レンズ交換式カメラ市場は前期比で数量ベース、金額ベースともに10%以上の増加となりました。内訳としては、一眼レフカメラは数量ベース、金額ベースともに約15%の減少となりましたが、ミラーレスカメラは、数量ベース、金額ベースともに15%以上の増加と、好調が継続しました。交換レンズは前期比で数量ベースで7%、金額ベースでは11%の増加となりました。
平均為替レートにつきましては、前期比で米ドルは約11円、ユーロは約12円の円安となりました。
このような状況のもと、当社グループの当連結会計年度における経営成績は、すべての事業セグメントにおいて好調に推移し、また円安進行によるプラス影響もあったことから、売上高は884億75百万円(前期比23.9%増)となりました。
また利益面につきましては、大幅増収による売上総利益の増加に加え、販管費を増収率の半分程度となる前期比12%の増加に抑制したことにより、営業利益は192億1百万円(前期比41.1%増)、経常利益は193億4百万円(前期比38.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は145億26百万円(前期比34.4%増)と各利益において大幅増益となりました。
全てのセグメントで2桁以上の増収増益を達成し、また、2026年12月期を最終年度とし、2024年よりスタートしました新中期経営計画「Value Creation26」の売上高・営業利益・ROE等の経営数値目標の全てにおいて初年度で達成することができました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
(写真関連事業)
自社ブランド製品は、2023年に発売したソニーEマウント用2機種(A065、A068)、ニコンZマウント用2機種(A058、A057)、富士フイルムXマウント用1機種(B060)の計5機種が今期業績に大きく寄与しました。2024年には、ソニーEマウント用で望遠ズームレンズ(A069)、高倍率ズームレンズ(A074)、中望遠マクロレンズ(F072)の3機種、ニコンZマウント用で大口径標準ズームレンズ(A063)、超望遠ズームレンズ(A067)、中望遠マクロレンズ(F072)を発売し、既存マウントでのラインナップ拡充を更に加速させました。また、12月には当社初となるキヤノンRFマウント用として超広角ズームレンズ11-20mm F/2.8 RXD (B060)を発売し、対応マウントの拡充も図り、新製品投入本数を計7機種へと増加させました。このようにミラーレス用交換レンズのラインナップ強化効果等により、増収となりました。OEMにおいても、市場の堅調な推移に伴い、カメラメーカーへの交換レンズの供給が好調に推移し、前期比で1.4倍以上となる増収となりました。
このような結果、写真関連事業の売上高は648億35百万円(前期比22.3%増)、営業利益は181億11百万円(前期比29.3%増)となりました。
(監視&FA関連事業)
監視やFA/マシンビジョン用レンズは、FA分野では従来からの高精細、高解像ニーズの高まりを見据えたラインナップ拡充効果により好調を維持し、前期比で1.5倍以上となる大幅増収となりました。監視分野では、前年から継続していた半導体不足緩和等に伴うカメラメーカーの在庫適正化の影響が、第3四半期以降は一段落したこともあり増収に転換いたしました。カメラモジュールは2023年、2024年の新機種が売上に大きく貢献し、前期比で約3倍の大幅増収となりました。一方で、TV会議用レンズは市場の低迷により減収となりました。
このような結果、監視&FA関連事業の売上高は123億13百万円(前期比25.8%増)、営業利益は15億66百万円(前期比118.7%増)となりました。
(モビリティ&ヘルスケア、その他事業)
車載カメラ用レンズは、急速に進む先進運転支援システム(ADAS)の普及による旺盛な需要を背景にセンシング用途を中心に好調を維持し、1.3倍以上となる大幅増収となりました。また注力分野の医療用レンズも、当社の強みである極小径や薄膜技術で低侵襲を可能にする製品ラインナップの増加により、前期比で1.7倍以上となる大幅増収を果たしました。コンパクトデジタルカメラ用やビデオカメラ用レンズにおいても市場の回復もあり、増収を維持いたしました。
このような結果、モビリティ&ヘルスケア、その他事業の売上高は113億25百万円(前期比31.6%増)、営業利益は24億76百万円(前期比66.0%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ57億43百万円増加し、383億84百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローは次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益が193億4百万円、減価償却費が30億82百万円、売上債権の増加額が7億94百万円となったこと等により、営業活動によるキャッシュ・フローは176億44百万円の収入(前連結会計年度は100億27百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出が48億53百万円となったこと等により、投資活動によるキャッシュ・フローは67億34百万円の支出(前連結会計年度は51億45百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払額が43億8百万円、長期借入金の返済による支出が74百万円であったこと等により、財務活動によるキャッシュ・フローは60億22百万円の支出(前連結会計年度は27億78百万円の支出)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
写真関連事業 |
66,744 |
122.2 |
監視&FA関連事業 |
11,455 |
118.6 |
モビリティ&ヘルスケア、その他事業 |
11,558 |
131.2 |
計 |
89,759 |
122.8 |
(注)金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
写真関連事業 |
- |
- |
- |
- |
監視&FA関連事業 |
- |
- |
- |
- |
モビリティ&ヘルスケア、その他事業 |
875 |
105.5 |
3 |
6.1 |
計 |
875 |
105.5 |
3 |
6.1 |
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
写真関連事業 |
64,835 |
122.3 |
監視&FA関連事業 |
12,313 |
125.8 |
モビリティ&ヘルスケア、その他事業 |
11,325 |
131.6 |
計 |
88,475 |
123.9 |
(注)主な相手先への販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
販売高(百万円) |
割合(%) |
販売高(百万円) |
割合(%) |
|
Sony Electronics Operations (China) Limited |
8,005 |
11.2 |
15,656 |
17.7 |
深圳市今日捷成実業有限公司 |
7,717 |
10.8 |
9,577 |
10.8 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりであります。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたり、連結会計年度末における資産・負債及び収益・費用の計上等に関連しての種々の見積りを行っております。この見積りは、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいて行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があり、連結財務諸表に重要な影響を及ぼすことがあります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)財政状態の分析
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は、723億10百万円となり、前連結会計年度末に比べ85億13百万円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が57億43百万円増加し、受取手形及び売掛金が11億56百万円増加したことによるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は、298億73百万円となり、前連結会計年度末に比べ66億8百万円増加いたしました。これは主に、建物及び構築物(純額)が31億24百万円増加したことによるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は、166億7百万円となり、前連結会計年度末に比べ23億80百万円増加いたしました。これは主に、買掛金が8億17百万円増加したことによるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は、32億43百万円となり、前連結会計年度末に比べ11億40百万円増加いたしました。これは主に、繰延税金負債が4億94百万円増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は823億33百万円となり、前連結会計年度末に比べ116億円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を145億26百万円計上したことによるものであります。
2)経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、主に写真関連事業が増収となったことにより、前連結会計年度に比べ170億48百万円増加し、884億75百万円となりました。
(売上総利益)
当連結会計年度の売上総利益は、売上高の増加により、前連結会計年度に比べ77億29百万円増加し、393億86百万円となりました。
(営業利益)
当連結会計年度の営業利益は、売上総利益の増加により、前連結会計年度に比べ55億94百万円増加し、192億1百万円となりました。
(営業外収益及び費用)
当連結会計年度の営業外収益は、その他を2億87百万円計上したこと等により、前連結会計年度に比べ1億40百万円減少し、5億88百万円となりました。
当連結会計年度の営業外費用は、為替差損を1億58百万円計上したこと等により、前連結会計年度に比べ1億22百万円増加し、4億86百万円となりました。
(税金等調整前当期純利益)
当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、経常利益が増加したことにより、前連結会計年度に比べ53億31百万円増加し、193億4百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、税金等調整前当期純利益が増加したことにより、前連結会計年度に比べ37億13百万円増加し、145億26百万円となりました。
セグメントごとの経営成績等の状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要①経営成績の状況」に記載のとおりであります。
3)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2026年12月期を最終年度とする新中期経営計画「Value Creation26」として、売上高830億円、営業利益153億円、EBITDA率22%以上、ROE14%以上を目指し、株主還元も総還元性向目標60%程度へと大幅に拡充し、2024年からスタートいたしました。
1年目の2024年12月期においては、全セグメントで2桁以上の増収増益とそれぞれの事業が大きな成長を果たしました。売上高は10期ぶりに過去最高売上高を更新して初の800億円台に到達し、中期経営計画目標を超える884億円となり、営業利益も3期連続で過去最高益を更新し、中期経営計画比で約25%増となる192億円へと大幅増益となりました。営業利益率は20%を超え、各経営指標含め、2026年の経営数値目標の全てについて初年度で達成することができました。なお、為替の円安影響もありますが、売上高・利益ともに為替影響を除いても中期経営計画を達成しており、大きな成果をあげることができました。
現在はこの大きな成果を踏まえ、「Value Creation26 ver2.0」として進化させ、目標を上方修正し、更なる飛躍を目指しています
4)経営成績に重要な影響を与える要因について
「3〔事業等のリスク〕」に記載のとおりであります。
5)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、営業活動により安定したキャッシュ・フローを得ておりますが、必要な営業活動や設備投資に備えるために、自己資金の他に金融機関からの借入により資金調達を実施しております。借入金のうち、短期借入金は主に営業取引に係る資金調達、長期借入金は主に設備投資に係る資金調達であり短期借入金、長期借入金とも安定的な資金調達ができております。また、今後の設備投資については、量産金型、レンズ生産設備等への設備投資を実施する予定ですがこれら投資資金については、自己資金及び金融機関からの借入により調達する予定であります。
6)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、光学開発センター及びR&D技術センターが研究開発、光学開発技術、レンズ加工技術、コーティング/フィルタ技術、アクチュエータ技術、樹脂成形/金型技術といった基幹となる各要素技術の開発を行い、製品開発については各事業本部の技術部門が行っております。
当連結会計年度における研究開発費は
(写真関連事業)
写真関連事業では、自社ブランド製品において、ソニーEマウント用で望遠ズームレンズ(A069)、高倍率ズームレンズ(A074)、中望遠マクロレンズ(F072)の3機種、ニコンZマウント用で大口径標準ズームレンズ(A
063)、超望遠ズームレンズ(A067)、中望遠マクロレンズ(F072)を発売し、既存マウントでのラインナップ拡充を更に加速させました。また、12月には当社初となるキヤノンRFマウント用として超広角ズームレンズ11-20mm F/2.8 RXD(B060)を発売し、対応マウントの拡充も図り、新製品投入本数を計7機種へと増加させました。このような結果、当事業に係る研究開発費は
(監視&FA関連事業)
監視&FA関連事業では、都市監視も含めた旺盛なセキュリティ需要、製造業の高度化・効率化推進による底堅いFA/マシンビジョン等の需要等を見据え、様々な用途での高画素等のニーズに対応すべく、各種レンズの開発を行い、カメラモジュールの開発も進めました。このような結果、当事業に係る研究開発費は
(モビリティ&ヘルスケア、その他事業)
モビリティ&ヘルスケア、その他事業では、高い市場成長が今後も見込まれる車載用レンズにおいて、特に需要が見込まれるセンシング用途のレンズ開発に注力すると共に、今後の事業拡大を目指す医療分野での要素技術や製品開発を進めました。このような結果、当事業に係る研究開発費は