当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、2019年に、より長期的な視点から10年後にありたい姿としての経営ビジョンNext10を策定しましたが、新型コロナウイルス感染症の影響、世界的な脱炭素社会への加速などによる外部環境の激変に対応するため、期間を2030年までとしたNext10(2030)に改訂いたしました。Next10(2030)では「事業ポートフォリオの深化」を掲げ社会課題の解決、お客様の価値向上を目指して当社のビジネスモデルを変革してまいります。
当社グループは、2025年度を初年度とする2027年度までの中期経営計画(2027)を策定しております。
中期経営計画(2027)は、「事業領域拡大」のステージと位置づけ取り組みを進めてまいります。
財務戦略は、企業価値向上に向け、「資本効率性の向上として資本構成バランスの最適化、そして政策保有株式の縮減」、及び「株主還元の拡充として、安定的な配当及び配当性向の更なる向上、そして自己株式取得の検討」を主たる政策として取り組みます。
また、中長期的に企業価値を向上させるため、人的資本投資やESG・SDGsといった非財務資本的価値の企業価値への反映が必要不可欠であり、取締役会を中心としたコーポレート・ガバナンス改革と、サステナビリティ推進部が進めるESG各テーマへの取組みが、新中計期間で更に重要度を増すと考えています。
当社グループの対処すべき課題は、経営ビジョンNext10(2030)及び中期経営計画(2027)の目標を達成することであります。
前中期経営計画は、経営ビジョンNext10(2030)での2030年のありたい姿「要素技術を通じて、新たな価値を創造し、お客様から選ばれるソリューションパートナー」を実現すべく、「お客様の価値向上と社会課題の解決に貢献し、事業を通じて、社会・環境価値を創出する」ことを目指し、「土台作り&基盤強化」に取り組みました。
財務目標において、最終年の2024年は、インバウンド需要の増加を背景に外食産業向けは回復基調になったものの、インフレ進行による買い控えなどもあり全体的に販売数量が減少したことから、売上高は目標820億円に対し811億円と未達でした。また原材料コスト上昇分の価格転嫁を推進しましたが、大型液晶ディスプレイ向けアクリルフィルム新工場の品質安定化に時間を要し、それに伴う費用が増加したことなどから、営業利益も目標53億円に対して45億円と未達でした。
中期経営計画(2027)では「事業領域拡大」のステージと位置づけ、築き上げた成長への土台をベースに成長戦略を加速させるとともに、事業戦略・財務戦略・非財務戦略の各施策の実行により、業績目標の達成とさらなる企業価値の向上を目指してまいります。
①中期経営計画(2027)事業戦略
②中期経営計画(2027)財務戦略
③中期経営計画(2027)非財務戦略
当社グループは、投下資本の運用効率や収益性を測る指標として調整後ROE(特別損益を除く親会社株主に帰属する当期純利益を自己資本の期中平均で除した自己資本当期純利益率)を重視しております。当社の目標は調整後ROE7.5%を2027年度に達成することであります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは以下のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
サステナビリティに関する具体的な取組み施策については、「サステナビリティ委員会」において、当社グループのサステナビリティ推進活動が世の中の動向に適応しているかどうかを客観的な視点でチェックし、対応方針や実行計画についての議論と進捗状況の監督を行っています。同委員会は取締役会の直下に設置されており、サステナビリティ推進担当取締役が委員長を務め、取締役及び執行役員を委員として構成されています。定例で年2回開催することに加え、必要に応じて開催しています。討議結果は取締役会において報告される体制としています。当事業年度における同委員会の活動状況は次のとおりです。
委員長:サステナビリティ推進担当取締役
構成:取締役(社外取締役を含む)及び執行役員 計 18名
開催回数:2回
出席率:第1回100%(委員全員出席)、第2回94%(委員17名出席、1名欠席)
主な議題・報告
・サステナビリティ推進活動の議論・報告
・マテリアリティと事業継続のための基盤に関する議論・報告
・J-クレジットの購入の方向性に関する決議
・ICP(インターナルカーボンプライシング)の導入に関する決議
・大倉工業グループの環境目的(2025~2027)に関する決議 ほか
また、組織を横断するサステナビリティ推進活動に関する基本計画の策定やその推進を担当するセクションとして「サステナビリティ推進部」を設置し、サステナビリティ委員会の事務局を担当します。
当社グループは、経営ビジョンNext10(2030)で掲げた「お客様の価値向上と社会課題の解決に貢献し、事業を通じて、社会・環境価値を創出する」とは、社会との共生を念頭に持続可能な社会の実現に貢献する企業として成長することを意味し、持続的発展可能な社会づくりへの貢献を目指すことが、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上へ繋がると考えています。
当社グループはサステナビリティ基本方針として『「社会から信頼される企業」であり続けるために、事業を通じて、社会との共生を念頭に企業の成長を目指す』を掲げ、2020年に特定した、事業を通じたソリューション提供への重要課題「マテリアリティ」と「事業継続のための基盤」を基に、サステナビリティを経営戦略の中心とした積極的な活動を推進していきます。
当社グループは、SDGsに代表される社会課題やステークホルダーからの要求に対し、マテリアリティとして「脱炭素経営(気候変動対策)の推進」「資源循環対策の更なる推進」「環境貢献製品の創出と拡大」「CSR調達の推進」「DX推進による競争優位性の確保」「イノベーション創出に向けた研究開発」を特定しました。これらの課題を解決することで、企業の持続的な成長を目指します。
更に、当社グループとして事業を継続していくために不可欠な基盤(以下、「事業継続のための基盤」という)となる「汚染防止の徹底」「働きがいのある職場環境の整備」「地域社会との共生」「企業の信頼性・透明性の向上」の4項目を併せて設定し、マテリアリティ同様に積極的な取組みを推進していきます。
当社グループは、気候変動をはじめとした地球規模の環境問題への配慮、人権の尊重、従業員を含むすべてのステークホルダーへの公正・適正な事業活動など、社会や企業のサステナビリティを巡る課題解決を事業機会と捉え、2019年に設立したCSR委員会を「サステナビリティ委員会」に改めるとともに、サステナビリティ推進活動に関する基本計画策定などを担当するセクションとして、「サステナビリティ推進部」を新設しました。サステナビリティ推進担当取締役を委員長とした当委員会は、社外取締役を含む取締役及び執行役員を委員として構成しています。社外取締役も含めることで、当社グループのサステナビリティ推進活動を客観的、専門的な視点でチェックし、当委員会での活発な議論による、より深化した活動を進めています。
更に、当社グループのコンプライアンスを統括する「コンプライアンス委員会」を設置し、実働部隊である「コンプライアンス実行委員会」と連携しながら、周知啓発活動や内部通報への対応等を行っております。
これらの体制のもと、取組み状況をステークホルダーに向けて、積極的な情報開示を行うとともに、継続的に改善を行いながら様々な活動を進めています。
当社グループは2020年に特定した事業を通じたソリューション提供への重要課題「マテリアリティ」と「事業継続のための基盤」のそれぞれについて、取組み指標「KPI」を設定しております。
下記マテリアリティのうち「脱炭素経営(気候変動対策)の推進」「環境貢献製品の創出と拡大」について、取組み指標KPIとして「自社CO2排出量」「生活サポート群環境貢献製品売上比率」について目標を下記のように設定しております。また、これらの目標に加えて、「資源循環対策の更なる推進」「DX推進による競争優位性の確保」「働きがいのある職場環境の整備」に関しても、取組み指標KPIとして「木質構造材事業によるCO2貯蔵量」「DX推進による生産性向上と業務の効率化」「女性管理職者比率」「プレゼンティーズム」「ワークエンゲージメント」についても、新たに中期経営計画(2027)において目標を下記のように設定しております。
脱炭素経営(気候変動対策)の推進
・自社CO2排出量(CO2排出量(Scope1,2)削減)
2024年:2021年比12%以上削減(2013年比30%以上削減に相当)
2027年:2021年比25%以上削減(2013年比40%以上削減に相当)
2030年:2021年比37%以上削減(2013年比50%以上削減に相当)
環境貢献製品の創出と拡大
・生活サポート群環境貢献製品売上比率
2024年:50%以上
2027年:75%以上
2030年:100%
資源循環対策の更なる推進
・木質構造材事業によるCO2貯蔵量
2027年:17,700t以上
DX推進による競争優位性の確保
・DX推進による生産性向上と業務の効率化
2027年:2024年比6,000時間/月以上の工数削減
働きがいのある職場環境の整備
・女性管理職者比率(当社単体)
2027年:8%以上
・プレゼンティーズム
2027年:24%以下
・ワークエンゲージメント
2027年:2.6pt以上
[マテリアリティ]
[事業継続のための基盤]
① 人的資本
(1)ガバナンス
人的資本関連の課題は「社会関連ワーキンググループ」及び社会関連ワーキンググループの下部組織に位置する「女性分科会」を通じて社内の要望等の吸い上げを行います。「社会関連ワーキンググループ」は、サステナビリティ推進部、総務・人事部と各部門から選出された従業員で構成され、新たな施策や制度の検討などを行います。「女性分科会」は、総務・人事部の女性従業員が事務局となり、各部門から選出された女性従業員が会員となり、女性従業員へのアンケートなどを実施し、現状の課題把握や新たな施策や制度の検討などを行います。これらの活動結果については、「サステナビリティ委員会」に報告されます。
(2)戦略
当社グループでは、経営ビジョンNext10(2030)の実現に向けた経営戦略と成長戦略を可能とする人財を育成・確保するため、人材を当社の資本と位置づけ、「教育・育成プログラム」「人事・評価制度」「ダイバーシティ」「従業員エンゲージメント」の充実した環境整備に、投資を継続していきます。
当社グループは、「誠実かつ粘り強い人材」が多数在籍していますが、事業環境の変化に応じた価値創出を使命とする「イノベイティブかつチャレンジブルなリーダーシップ」を求め、「教育・育成プログラムの内容の見直し」「人事・評価制度の再構築」「女性活躍・多様な人材採用」「健康経営」の取組みを推進していきます。
(3)リスク管理
当社グループでは、従業員の要望、意見、提案について会社と従業員が誠実な話し合いを行い、相互の理解と信頼を深め、社業の発展と従業員の生活の向上を図ることを目的とした「職場委員会」が設置されており、総務・人事部が事務局を担当しております。職場委員会を通じて賃金や福利厚生などの様々な人事に関する課題や社内の要望等の吸い上げを行い、施策や制度などの重要な課題や要望については総務・人事部で検討し、取締役会にて報告しています。取締役会で検討・決定された政策や制度については職場委員会を通じて従業員に施策や制度の浸透と啓発を行います。
(4)指標と目標
当社グループでは、人的資本経営に関連するKPIとして、「女性役職者・女性管理職者比率」を設定しております。当社単体は2024年12月31日時点で、女性役職者は61名(全役職者における割合:12.8%)、女性管理職者は5名(全管理職者における割合:3.9%)となっております。また「新卒女性比率」の向上を施策として対応しており、女性分科会で女性従業員の管理職を増やすための意識調査の実施や女性活躍に向けた研修内容の検討を行っております。これらの状況を踏まえた上で、中期経営計画(2027)においての「女性管理職者比率」の目標を設定しております。
それ以外の「インターンシップ参加者」「障がい者雇用率」「年次有給休暇取得率」「育児・介護休業制度等の利用状況」についての目標は設定中です。これらの推移を確認しながら、人材の確保・育成における取組みを進め、従業員が自らの能力を最大限発揮できる働きやすい職場環境づくり及び従業員の人生設計やライフステージに合わせて柔軟な働き方を選択できる職場環境の整備を推進していきます。
なお、当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
新卒女性比率の推移
インターンシップ参加者の推移
障がい者雇用者数、雇用率の推移
年次有給休暇取得日数、取得率の推移
当事業年度における育児・介護休業制度等の利用状況
また健康経営に関するKPIとして、中期経営計画(2027)において新たに「プレゼンティーズム」「ワークエンゲージメント」の目標を設定しております。2024年において、プレゼンティーズム(健康問題による出勤時の生産性低下)は29%、ワークエンゲージメント(仕事にやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得ている状態)は2.5ptとなっております。従業員のエンゲージメントが向上することで、人的生産性の向上に繋がると考え、健全で健康な職場環境が、従業員一人一人の生産性を上げると認識しております。これらの状況を踏まえた上で、「プレゼンティーズム」「ワークエンゲージメント」の目標を設定しております。
② 気候変動
(1)ガバナンス
気候変動関連の課題は、サステナビリティ推進担当取締役が統括する「サステナビリティ推進部」が企画立案し、「サステナビリティ委員会」において議論・意思決定が行われています。課題への対応策は各部門、事業所、工場等で実行され、対応状況は「サステナビリティ推進部」がとりまとめ、「サステナビリティ委員会」に報告されます。
「サステナビリティ委員会」で決議された取組みについて、「サステナビリティ推進部」が企画立案し、「環境保全推進委員会」にて審議されます。気候変動対策の取組み状況については、ステークホルダーに向けて積極的な情報開示を行うとともに、継続的に改善を行いながら環境マネジメントシステム等の仕組みを通じて管理し、その結果についてマネジメントレビューを行っています。
(2)戦略
気候変動のリスクと機会を明確にするために2つのシナリオ(4℃シナリオ、2℃シナリオ)を設定し、シナリオ分析を行いました。シナリオ分析を行う上では、当社の主要事業部である合成樹脂事業部、新規材料事業部、建材事業部ごとにバリューチェーンを設定して具体的な検討を行い、主要なリスクと機会による財務インパクトの算定、対応策の検討を行いました。今後は前記2つのシナリオ分析のブラッシュアップなどを進めていきます。
・4℃シナリオ
「気候変動対策が進まず成行きのまま気温が上昇し、それによる物理的リスク・機会が発生するシナリオ」を4℃シナリオとして、「急性」「慢性」について分析を行いました。
・2℃シナリオ
「温暖化防止に向けて様々な活動が実施され、脱炭酸社会への移行に伴うリスク・機会が発生するシナリオ」を2℃シナリオとして「政策・規制」「技術」「市場」「評判」について分析を行いました。
シナリオ分析の結果、識別した主要なリスク及び機会の対応策は下記のとおりです。
詳細については、下記にて開示しております。
https://www.okr-ind.co.jp/wp/wp-content/themes/okr-ind/images/sustainability/environment/okura_tcfd.pdf
(3)リスク管理
当社グループが気候変動リスク及び機会を選別・評価するプロセスは事業部ごとに以下のステップで実施しています。これらのリスク及び機会の管理は「ガバナンス」の項目で示した体制で実施していきます。
(4)指標と目標
[脱炭素経営の推進]
当社グループでは、脱炭素経営の推進をマテリアリティとして定め、気候変動の要因となるCO2排出量削減活動に取り組んでいます。当社グループ※1の2024年及び2030年のCO2排出量(Scope1,2)削減目標は、2021年比12%以上削減(2013年比30%以上削減に相当)及び2021年比37%以上削減(2013年比50%以上削減に相当)と設定しております。2024年のCO2排出量は104,662t-CO2※2であり、削減目標に対して2021年比約14.4%削減(2013年比約32.1%削減)となっており、2024年のCO2排出量(Scope1,2)削減目標を達成しております。2030年までには、既存設備の省エネ設備への導入・更新や燃料転換・電力化と、太陽光発電システム(PPAを含む)やCO2フリー電力などの導入などにより、今後も着実に目標達成に向けて推進していきます。
なお、2020年に対して2021年、2022年のCO2排出量が増加した主要因は、当社グループの生産拠点の大半は香川県にあり、その生産拠点で使用する電気のCO2排出係数が約1.4倍になったためです。
※1:当社+国内連結子会社+大倉産業株式会社+オー・エル・エス有限会社+大友化成株式会社+大倉工業健保組合
※2:2024年のCO2排出量の数値は第三者検証受審中です。受審後に数値が変更になる場合があります。
※3:2013年~2020年の数値は、各年4月~翌3月累計データ。
2021年~2023年の数値は、1月~12月累計データ。
2021年~2023年の数値は第三者検証受審済。
[環境貢献製品の創出と拡大]
当社グループでは、環境貢献製品の創出と拡大をマテリアリティとして定めています。温室効果ガスの排出削減に貢献できる製品や、廃棄物の削減に貢献できる製品等、環境に対して何らかの貢献が認められる製品を「環境貢献製品」と認定しております。当社の環境貢献製品を「Caerula®(カエルラ)」と命名し、3つのランクに分けて認定しています。Caerula®認定制度を2019年から構築し、SDGsへの貢献や省資源・資源循環、環境汚染防止、廃棄物の適正処理、またライフサイクル思考としてリサイクルしやすい設計の製品、製造上必要不可欠な環境負荷化学物質を極力減らした製品など、独自の認定基準により様々な製品を認定しております。当該目標は、生活サポート群製品(生活に密着した住や食に関わり、人々の安心で快適な生活を支える製品)におけるCaerula®認定製品の売上高比率を、2024年に50%以上、2030年に100%としています。2024年の当該割合は約55.1%となっており、2024年の生活サポート群製品におけるCaerula®認定製品の売上高比率の目標を達成しております。今後も既存製品でCaerula®認定可能な製品の早期認定、既存製品への環境付加価値の付与及び今後開発される新製品のCaerula®認定製品の創出に取り組むことで着実に目標達成に向けて推進していきます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
これらのリスクが顕在化した場合、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性がありますが、当社といたしましては、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応として、代替する事業計画を機動的に策定し、その遂行に努める方針であります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは主に合成樹脂事業、新規材料事業、建材事業を通じて広範な産業に製品を供給しており、需要動向の変化や技術革新による市場環境の変化により、当社グループの製品に対する需要減退や製品価格の下落等が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(2) 合成樹脂事業の経営成績が、原料価格の変動等により影響を受ける可能性があることについて
当社グループの合成樹脂事業で製造するフィルムの主原料は石油化学製品であるため、原油価格や為替の変動が原料価格動向に大きく影響し、価格変動分を製品価格に転嫁できなかった場合、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(3) 住友化学株式会社への依存度が高いことについて
当社の新規材料事業における光学機能性フィルム関連製品の過半は住友化学株式会社へ販売しておりますが、将来にわたり当社製品が同社に採用される保証はありません。予期しない契約の打ち切りや販売数量の大きな減少があった場合、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。ただし、財務諸表上の売上高は「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第103期の期首から適用しており、第103期以降減少しております。
(4) 建材事業の経営成績が、新設住宅着工戸数の増減により影響を受ける可能性があることについて
当社グループの建材事業の製品は、主に住宅の建築資材となっているため新設住宅着工戸数の減少による需要の減少及び価格競争の激化が起こった場合、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(5) 保証債務について
当社は、関連会社のオー・エル・エス㈲に対し、資金調達を円滑に行うための債務保証を行っております。当連結会計年度末現在の保証債務の合計は2億3千8百万円であります。
今後、同社(非連結)の業績動向により債務履行又は引当を要する場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(6) 固定資産の減損について
産業用途向けなどの一部の製品分野においては、技術革新のスピードが速く、市場環境が急激に変化し続けているため、これまでに投資した設備について、資金回収が終わらないうちに稼働率が著しく低下した場合、減損損失などの特別損失が発生し、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは品質管理に留意して製品の生産を行っておりますが、当社グループの製品に欠陥があった場合、賠償責任を負い当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは当該リスクに対する取り組みとして、コーポレートセンターにおいて品質に関するリスク等の様々なリスクに対する予防活動及びクライシス発現時の緊急対応準備に努めております。また、製造物責任賠償については生産物賠償責任保険(PL保険)に加入しています。
当社グループの合成樹脂事業の生産設備は香川県、埼玉県、静岡県、滋賀県、岡山県、熊本県に分散させておりますが、新規材料事業、建材事業の生産設備は香川県に集中しております。地震、台風、津波等の自然災害、感染症、事故、火災、停電、戦争、テロ等により、当社グループの事業拠点における生産設備の損壊や、国内外の経済活動の著しい停滞等が生じ、当社グループの事業活動に甚大な影響を及ぼした場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。当社グループでは当該リスクに対する取り組みとして、香川県内の臨海部にある生産設備を津波の心配がなく地盤が安定している内陸部の山側へ分散させることにより、事業停滞の影響を最小限にするように努めております。
(経営成績等の状況の概要)
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下
「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、インバウンド需要の増加や雇用・所得環境の改善が進んでいるものの、物価上昇に伴う個人消費の落ち込みや人手不足の継続などにより、おおむね横ばいで推移しました。また、先行きにつきましては、実質賃金の継続的な上昇などによる期待感があるものの、家計の節約志向の高まりや不安定な国際情勢などが懸念されることから、今後を見通すことが依然として困難であり、不透明な状況が続いております。
このような状況のもと、当社グループでは、新規材料事業において中小型パネル用途の光学フィルムの需要が増加したことなどにより、当連結会計年度の売上高は811億9千2百万円(前年同期比3.0%増)となりました。
利益面では、売上高は増加したものの、新規材料事業において新工場の品質安定化に時間を要し、それに伴う費用が増加したことなどにより、営業利益は45億6千4百万円(前年同期比7.9%減)、経常利益は51億1千1百万円(前年同期比5.6%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、固定資産売却益や投資有価証券売却益を特別利益に計上したことなどにより、43億5千9百万円(前年同期比1.0%増)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。
〔合成樹脂事業〕
パッケージ関連では、地球環境保全に対する意識の高まりを背景に環境対応アイテムが堅調に推移し、また、プロセスフィルムにおいても光学・半導体用途が市場の回復に伴って好調に推移しました。一方、農業用マルチフィルムにおいては環境対応アイテムの拡大に努めましたが市場は低位に推移しており前年水準には及びませんでした。この結果、売上高は518億6千1百万円(前年同期比1.7%増)となりました。営業利益は不採算製品の整理や生産体制の改善による生産性の向上などがコスト削減に寄与し、44億5千5百万円(前年同期比7.5%増)となりました。
〔新規材料事業〕
自動車用途などの機能材料が低調に推移したものの、中小型パネル用途の光学フィルムの需要が増加したことにより、売上高は146億1千1百万円(前年同期比6.7%増)となりました。営業利益は新工場の品質安定化に時間を要し、それに伴う費用が増加したことなどにより、12億4千7百万円(前年同期比32.7%減)となりました。
〔建材事業〕
基盤事業のパーティクルボードでは、安定生産の継続ときめ細かな営業活動により販売数量が堅調に推移しました。また、木材加工事業は住宅着工戸数の減少による影響で上期は落ち込んだものの、下期にかけて非住宅の受注が増加したことで、売上高は128億5千9百万円(前年同期比2.0%増)となりました。営業利益は売上高の増加に加えて、パーティクルボードの生産性向上など原価低減を進めたことにより、9億4千5百万円(前年同期比5.0%増)となりました。
〔その他〕
ホテル事業で観光客を中心に宿泊が増加したことや情報処理システム開発事業で調剤薬局向けシステムの販売が好調に推移したことにより、その他全体の売上高は18億6千万円(前年同期比19.8%増)となりました。営業利益は売上高の増加などにより、4億9千4百万円(前年同期比8.5%増)となりました。
(2) 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、有形固定資産が23億3千7百万円減少したものの、その他流動資産が12億7千7百万円、売上債権が12億4千6百万円、現金及び預金が11億4千2百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ27億4千1百万円増加し、1,030億1千4百万円となりました。
一方、負債につきましては、未払金が33億7千1百万円、その他流動負債が23億2千9百万円減少したものの、借入金が42億1千7百万円、仕入債務が32億6千8百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ15億3千5百万円増加し、409億3千8百万円となりました。
また、純資産は、自己株式が12億6千7百万円減少したものの、利益剰余金が23億6千4百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ12億6百万円増加し、620億7千5百万円となりました。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べて0.5ポイント下落し、60.2%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、89億4千9百万円(前連結会計年度比11億4千2百万円増)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により増加した資金は58億3千3百万円(前連結会計年度比25億7千万円減)となりました。
これは、主として税金等調整前当期純利益60億円による資金の増加によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は57億8百万円(前連結会計年度比21億8千9百万円増)となりました。
これは、主として製造装置等の有形固定資産の取得による資金の減少と、投資有価証券の売却による資金の増加によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果増加した資金は9億4千8百万円(前連結会計年度比21億4千2百万円増)となりました。
これは、主として借入金の増加42億1千4百万円による資金の増加と、配当金の支払額19億8千7百万円による資金の減少によるものです。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
当社グループは建材事業のうち、宅地造成及び建物建築事業において一部受注生産を行っており、その受注状況は次のとおりであります。
その他の製品については見込生産を主として行っているので特記すべき受注生産はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10を超える販売先はありません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文
中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(経営成績等の状況の概要) (1)経営成績の状況」に記載しております。
(3) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料、商品等の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入による資金調達で対応しております。
なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりであります。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注) 1.いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
4.有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。
(4) 経営方針、経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、投下資本の運用効率や収益性を測る指標として調整後ROE(特別損益を除く親会社株主に帰属する当期純利益を自己資本の期中平均で除した自己資本当期純利益率)を重視しております。当社の目標は調整後ROE7.5%を2027年度に達成することであります。
当連結会計年度における調整後ROEは、5.6%(前年同期比1.3ポイント悪化)となりました。翌連結会計年度においても、目標達成に向けて、経営ビジョンNext10(2030)及び中期経営計画(2027)で掲げた戦略に引き続き取り組んでまいります。
該当事項はありません。
当社グループにおける研究開発の基本方針は、「要素技術を通じて新たな価値を創造し、お客様から選ばれるソリューションパートナー」を目指し、お客様の価値向上と社会課題の解決に貢献し、事業を通じて社会・環境価値を創出することでグループの持続的成長を果たすことであります。
この基本方針のもと、当社グループの強みである押出・延伸等のプラスチック加工技術を基礎に、より競争力のある製品を生み出すべく経営資源を集中し、グループ一体となって取り組んでおります。
当社グループの研究開発活動は、R&Dセンターを中心に各事業部門が密接に連携を取りながら、短期的成果の実現と中期的先行開発のバランスに配慮し、効率的に新たな技術や製品開発に取り組んでおります。
また、各種研究機関、大学、企業とのプロジェクト、共同研究もR&Dセンターを中心に推進しております。
当連結会計年度における主な活動内容は次のとおりであります。
[R&Dセンター]
「情報電子」「環境・エネルギー」「ライフサイエンス」「モビリティ」を注力する分野と捉え、新しい要素技術の獲得に取り組み、事業につながる新製品の開発を行っております。
「情報電子分野」では、回路基板の材料として広く採用されているポリイミドフィルムに比べ、吸湿による電気信号の減衰が小さく、高速伝送回路や高周波電子機器に適した材料として、液晶ポリマー(LCP)フィルムを開発し、ユーザー評価を進めています。今後更なる品質向上に取り組み採用を目指します。
「環境・エネルギー分野」では、再生可能エネルギーの活用に向け、要素技術である「製膜・塗工・印刷技術」を活かし、太陽電池やバッテリーに使用される機能性フィルムの開発を進めております。また、地球環境の保護と環境改善への貢献が求められるなか、外部とのリサイクルスキームの構築、再生プラスチックの活用による石油由来プラスチックの使用量を削減したフィルム製品の開発に取り組んでいます。
「ライフサイエンス分野」では、細胞培養関連部材の開発に取り組み、バイオ医薬品製造用、細胞培養装置用バッグの販路を広げております。今後も更に特徴あるバッグを開発し用途拡大に取り組みます。また、植物由来の未利用資源を利用して機能性成分を抽出するヘルスケア・スキンケア向け原料開発においては、地域の未利用素材有効活用を目指し産官学連携で開発した製品に当社抽出エキスが採用されました。今後もラインナップの拡充に取り組みます。
「モビリティ分野」では、主にEV・PHEV自動車関連部材の開発に取り組み、モーターコア積層用接着剤の販路を広げるべく取り組んでおります。また、EVバッテリー用途での接着剤開発にも取り組み、ユーザー評価を進めています。今後も顧客の将来ニーズをレスポンス良くキャッチし、スピーディーな開発を行っていきます。
[合成樹脂事業]
当事業では、プラスチックリサイクルへの取組みとしてクローズドループによる資源循環を目標に掲げ、地方自治体やブランドオーナーとの取組みを進めております。地方自治体向けに販売しておりますエコマーク認定のPCRごみ袋は順調に採用が進んでおります。今後は更に複合材料廃プラスチックをアップサイクルさせる技術を確立させて、クローズドリサイクルの実現を目指しております。
また、社会的な課題となっている労働力不足に対しては、パッケージ作業領域の省人化・省力化をテーマとし、お客様の作業業態に合致させた複数の自動包装システムの提案を包装機メーカーとの協業体制を強化させながら進めております。
[新規材料事業]
当事業におけるIoT分野での取組みでは、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を実現するウェアラブルデバイスや環境配慮型素材の開発を行い、それらについては一部実用化が始まっております。
また、ライフサイエンス分野においては、R&Dセンターと密接に連携を取りながら医療従事者のタクト低減を目的とした医療用部材や細胞培養装置用バッグの開発及び製品化に取り組んでおります。
モビリティ分野への取組みにおいては、ディスプレイの大型化・省エネルギー化に対応した部材、ドライバーの安全運転支援を目的とした各種アプリケーションに求められる部材の開発及び自動車外装加飾用フィルムの開発を継続して取り組んでおります。
今後も高精度製膜延伸技術・ファインコーティング技術・各種二次加工技術・評価技術を用い、ディスプレイ・デバイスの進化に対応した機能性部材や脱炭素化社会に貢献する製品開発を継続的に進めてまいります。
[建材事業]
当事業は、木材と技術を最大限に利活用し、事業拡大、脱炭素社会の実現化に向けて新たな事業価値の創出に取り組みます。木材資源による新事業創出は、四国地域木材を活用した集成材事業の開始に向け、原材料の乾燥技術及び性能強度への知見を深め、木材樹種の特性分析や異樹種複合などによる集成材の設計・開発を進め、製品の実現化に向けて進めています。
また、非住宅分野への展開を視野に入れ、幅広い用途に対応できる製品開発を推進してまいります。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は
なお、当連結会計年度末における特許権及び実用新案権の総数は175件であります。