第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月26日)現在において当社グループが判断したものです。

 

当面の優先的に対処すべき課題の内容等

当社は、企業目的である「感動創造企業」のもと、2030年に向けた長期ビジョンとして「ART for Human Possibilities~人はもっと幸せになれる~」を2018年に発表しました。2025年からの新中期経営計画は、この長期ビジョンの後半6年間のスタートになります。

新中期経営計画の基本方針は、「コア事業の競争力を高め、人の可能性を拡げる新技術を獲得し、人の悦びと環境が共存する社会をヤマハ発動機らしい挑戦で実現する」としています。

 

詳細は、当社ウェブサイト「中期経営計画」をご参照ください。

(https://global.yamaha-motor.com/jp/profile/mtp/)

 

○事業ポートフォリオ

当社は、前中期経営計画から、ポートフォリオ経営を実装しました。新中期経営計画では、ポートフォリオ戦略として、コア事業(二輪車事業、マリン事業)、戦略事業(ロボティクス事業、SPV事業、OLV事業)、新規事業の3つの領域に取り組みます。そして、将来的には、当社が保持する全ての事業がROIC 12.5%を上回る経営を目指します。

 


 

 

■コア事業領域

新中期経営計画では、コア事業の競争力を再強化していきます。二輪車事業とマリン事業へ重点的な投資を行い、魅力ある商品、サービスを提供することで、成長と収益性を両立させます。

 

[二輪車事業]

「移動に喜びを、週末に楽しさを、人々と共に創る」ことを目指し、魅力的な商品ラインアップ、デジタル技術を活用したユーザーサービス強化に取り組みます。

アセアン、新興国では、これまで注力してきたプレミアム戦略をさらに強化します。また、マーケティング力を強化することで、デジタル技術の活用とユーザーに寄り添った体験の提供により、顧客エンゲージメントを高めます。電動領域は、自社でのプラットフォーム開発と外部との連携の両輪で推進していきます。

 

[マリン事業]

「信頼性と豊かなマリンライフ 海の価値を更に高める」ことを目指し、船外機大型モデルのラインアップ拡充、統合ボートビジネスの推進により、顧客価値の向上を追求していきます。

統合ボートビジネスでは、これまで進めてきたマリン版CASE戦略を発展させ、次世代操船システムの導入、コネクテッド技術の活用、シェアリングシステムの提供、電動船外機の拡大など、多彩なボート体験を可能にしていきます。

 

■戦略事業領域

市場ポテンシャルの高い、ロボティクス事業、SPV事業、OLV事業(Outdoor Land Vehicle: RV事業とゴルフカー事業を統合)の3つを戦略事業領域とします。

 

[ロボティクス事業]

加速するデジタル社会と変革するモビリティを、ワンストップスマートソリューションで支えていくことで、成長と収益性を両立させます。成長する領域に経営資源を集中し、当社の強みであるワンストップスマートソリューションを進化させることで、シェア向上と事業活動の効率化を実現します。

 

[SPV事業]

地球環境に優しいモビリティである電動アシスト自転車を通じ、人々の挑戦を後押しすることで事業の成長を実現します。海外完成車ビジネス事業を見直し、中長期的な成長が見込めるe-Kitビジネスと国内完成車ビジネスに注力します。特にe-Kitビジネスでは、徹底したお客さま視点でOEM顧客の信頼を獲得するため、ダイレクトサービス機能の強化や供給リードタイムの短縮、開発スピードの迅速化に取り組みます。

 

[OLV事業]

陸から海まで、お客さまが生涯にわたりワンブランドで楽しめるアウトドア商材を持つ、当社の強みが生きる北米市場でのシナジーを創出していきます。

OLV事業の製品の市場規模は、付加価値化が進み、長期的に拡大すると見込んでいます。

こうした市場成長を捉えるべく、新中期経営計画では、2030年に向けた次世代プラットフォームの開発に注力します。

 

■新規事業領域

これまで、モビリティサービス、低速自動走行、農業・医療省人化の領域で事業化に取り組んできましたが、今後は、事業拡大の可能性を見極めながら、モビリティサービス、低速自動走行、農業の3領域に注力していきます。

 

 

■財務指標・株主還元方針

資本コスト以上のリターンを継続的に創出することを目標とし、ROE14%水準、ROIC8%水準、ROA9%水準(いずれも3年平均)を目指します。株主還元については、「業績の見通しや将来の成長に向けた投資を勘案しつつ、安定的かつ継続的な配当を行う」ことを基本方針とし、キャッシュ・フローの規模に応じて機動的な株主還元を実施します。総還元性向は中期経営計画期間累計で40%以上です。

 


 

■環境計画

新中期経営計画における環境計画は、「気候変動」「資源循環」「生物多様性」の3つの柱で構成されています。

気候変動では、企業活動における自社のCO2排出量は2010年比で74%の削減、2035年にカーボンニュートラルを目指します。また、お客さまや社員の製品使用からのCO2排出量はマルチパスウェイの方針で削減を進めます。

資源循環では、2050年までにサステナブル原材料使用比率100%を目指し、新中期経営計画では、現状の14%から18%に引き上げます。

生物多様性では、生態系と人間の双方に利益をもたらす課題解決方法を探求します。

 

■人的資本経営

グローバルエンゲージメント指標を導入し、人的資本経営の重要な指標として高いレベルを維持していきます。DE&Iの推進に加え、タレントマネジメントではグローバル人財プログラムを拡充します。多様な社員がチャレンジの機会を得ることで、個人と会社が成長し未来を切り開いていける組織を目指します。

 

 

■リスク・コンプライアンス経営

当リスク・コンプライアンス経営の強化を重要な方針として位置づけ、Global、Integrated、Agileの3つを柱に、当社の経営・事業に想定されるリスクを特定し、適切にコントロールしていきます。

これらを通じて、環境の変化を素早く捉え、責任と権限のグローバル化を図る経営をさらに促進していきます。

 

なお、2024年6月3日公表の二輪車の型式指定申請における不適切事案につきまして、ステークホルダーの皆様に多大なご心配・ご迷惑をお掛けしたことを深くお詫び申しあげます。皆様からの信頼回復と再発防止に向けて、コンプライアンス及びガバナンスのさらなる強化を図ってまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) ヤマハ発動機グループのサステナビリティ

ヤマハ発動機では創業以来、「社訓」に“企業活動を通じた国家社会への貢献”を謳い、この精神に基づいた従業員一人ひとりの行動を通して社会に貢献することを掲げています。そして、「感動創造企業:世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供する」ことを企業目的として、「モノ創り」を通じて多様な価値の創造に努めてきました。また、経営理念では「顧客の期待を超える価値の創造」、「仕事をする自分に誇りが持てる企業風土の実現」、「社会的責任のグローバルな遂行」というお客さま・従業員・社会に対する経営の基本姿勢を示しています。

こうした理念の下、ヤマハ発動機グループではステークホルダーへの主な社会的責任をサステナビリティ基本方針としてまとめ、企業理念に基づく事業活動を通じて社会の持続可能な発展に貢献することが私たちに期待されているサステナビリティと考え、取組を行っています。

 

ヤマハ発動機グループサステナビリティ基本方針

ヤマハ発動機グループは、「感動創造企業」を企業目的に、社会や地球環境との調和を図りながら、製品やサービスを通じて世界の人々に喜びや驚き、高揚感、そして豊かさや幸福感を提供し続けていくことを目指しています。これを実現するために私たちは、人と人とのつながりから生まれる共感を新しい価値を生む原動力とし、適正な企業統治の下、社会から信頼される企業として、革新的で多様な製品やサービスを通じ、ヤマハらしい形で社会の課題解決と持続的発展に貢献していきます。

取引先においても、この方針を支持し、それに基づいて行動することを要請します。

 

・私たちは、国際ルール・法令を遵守するとともに腐敗防止に取り組み、公正・誠実に業務を遂行します。

・私たちは、人権を尊重し、差別をせず、いかなる形であれ児童労働・強制労働は行いません。

・私たちは、ステークホルダーとの関係を大切にし、適時かつ適正な情報開示を行います。

 

お客さま

誰もが安全・安心に使用できる高品質の製品やサービスを提供し、正しい使い方の教育・普及と使用環境づくりに努めます。

従業員

従業員の健康・安全を企業成長の基盤と考え、労働環境の向上に努め、多様性を重視し、人材活躍推進に積極的に取り組みます。また、結社の自由、及び団体交渉の権利を尊重します。

取引先

国籍や規模にかかわらず広く門戸を開き、長期的視野で相互繁栄の実現に取り組みます。

地球環境

地球温暖化防止に向けた技術開発を進め、環境負荷の最小化に努めます。また、生物多様性の保全とその持続可能な利用に取り組みます。

地域社会

各国・地域の文化・慣習を尊重し、地域社会との調和に努めます。

株主・投資家

相互対話に基づき、長期安定的な成長を通じた企業価値向上を目指します。

 

 

 

① ガバナンス

社長執行役員が委員長を務め役付執行役員が委員となる「経営会議」の中で、サステナビリティを巡る課題及びリスク・コンプライアンスに係る課題への対応を協議・決定しています。

さらに経営会議での審議を前提に、専門的視点から審議・検討を行うため、その下部委員会としてCSO(チーフステラテジーオフィサー)が委員長を務め、CSOが指定する役付執行役員が委員となる「サステナビリティ委員会」、及びCRCO(チーフリスク・コンプライアンスオフィサー)が委員長を務め、CRCOが指定する役付執行役員が委員となる「グローバルリスク・コンプライアンス経営委員会」を設置しています。またその下部に、環境担当執行役員が委員長を務め、委員長が指定する事業・部門の推進責任者を委員とする「環境委員会」と、CRCOが委員長を務め、CRCOが指定する主要地域のRCO(リスク・コンプライアンスオフィサー)が委員となる「グローバルリスク・コンプライアンス推進委員会」を設置しています。

「サステナビリティ委員会」と「環境委員会」ではサステナビリティについての方針やビジョン、中・長期環境計画、投資やモニタリングを、「グローバルリスク・コンプライアンス経営委員会」と「グローバルリスク・コンプライアンス推進委員会」ではリスク・コンプライアンス経営についての方針や中・長期の計画、リスク評価・対策・モニタリングなどを専門的視点で審議・検討しています。

また、当社の取締役会・監査役会が備えるべきスキルとしてサステナビリティを設定し、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)のそれぞれの選定理由と定義を公開しています。

 

ESGに関するスキルの選定理由及び定義

E

環境/カーボンニュートラル

2050年のカーボンニュートラルを目指しており、この取り組みを加速するためには、環境分野に関する知識・経験を持つ役員が必要である。

S

DE&I/人財開発

グローバルな事業環境と変化の早い市場ニーズに対応するためには、多様な人財の確保、ならびに各人のスキル強化が不可欠であり、DE&Iの推進や人財開発に関する知識・経験を持つ役員が必要である。

G

法務/リスクマネジメント

グローバルに事業を営む当社にとって、ガバナンス強化は重要である。国内外の法制度・各種規制の知識・経験を持ち、リスクを適切に評価し、予防・対策をリードできる役員が必要である。

 

 

② 戦略

企業価値の持続的な成長とともに社会・地球環境の持続的な発展を目指すという自覚の下、ヤマハ発動機グループは、SDGs(2015年9月に国連で採択された持続可能な開発目標)などから抽出した社会課題のうち当社が展開する幅広い分野での事業活動を通して解決することができる重要な社会課題を特定して取組を推進しています。

2022年にはそれまでの4つの課題の見直しを行い、「環境・資源」「交通・産業」「人材活躍推進」の3つの課題に再構成しています。また、取組テーマも社内外の環境変化に伴って見直しを行い、重点化して絞り込みました。さらに2023年は、目標をより具体的に表現し、人権に関わるKPIを新たに設定するなど、全体を通して見直しを行っています。

 

 

③ リスク管理

チーフ・リスク・コンプライアンス・オフィサー(CRCO)を任命し、「リスクマネジメント規程」に基づき、CRCOが委員長となり指名する執行役員を委員とする「グローバルリスク・コンプライアンス経営委員会」において、グループ全体のリスク状況をモニタリングすると同時に、重点的に取り組む「グループ重要リスク」の選定、対策活動のチェックなどを行い、グループ全体のリスク低減を図っています。また、その下部委員会として、CRCOが指名する主要各地域を統括するリスク・コンプライアンス・オフィサーを委員とする「グローバルリスク・コンプライアンス推進委員会」を設置するとともに、本社各リスク主管部門長等による「リスク・コンプライアンス推進会議」を設置し、リスクマネジメントについての方針や計画、モニタリングと対策などを専門的視点で審議しています。そしてこれらの審議の結果は、CRCOより取締役会に適宜報告されており、実効性を担保した体制を整備しています。

 

④ 指標及び目標

環境・資源

カーボンニュートラルの実現を目指して

当社の課題

SDGsテーマ

目指す姿(2030)

中期目標(2022~2024)

二輪車・船外機等CO2を排出する基幹製品の環境負荷軽減



生産活動から排出されるCO2(売上収益原単位)を2010年比で80%削減

(2035年までにネットゼロを実現)

生産活動からの売上当たりCO2排出量を2010年比で58%削減

*カーボンニュートラル2035年前倒しに伴い、目標を2024年58%削減に上方修正

再生可能エネルギー設備を10以上の国・地域に展開

ヤマハ発動機の国内事業所にCO2が排出されない方法で発電された電力を導入



電動化をはじめとする環境負荷の低いヤマハらしい製品開発・販売の推進

カーボンニュートラル燃料*を利用した、内燃機関の研究開発を推進

*水素、合成液体燃料、バイオ燃料など

新たに8機種以上の電動二輪車をグローバルに市場導入

新たなマリン電動コンセプトモデルの試作評価完了

新たに6機種以上の電動アシスト自転車をグローバルに市場

 

 

海洋資源の保全を目指して

当社の課題

SDGsテーマ

目指す姿(2030)

中期目標(2022〜2024)

マリントップブランド企業として海洋生態系の破壊や漁業資源枯渇のリスクを低減


ボート製品のリサイクル性向上

FRP廃材リサイクル技術研究を進め2024年までに実現技術を獲得

FRPの素材を自然由来素材に切り替え、2024年量産モデルより順次導入


漁業の持続可能性に寄与するソリューションを確立

漁獲管理ソリューションの実証実験を経て、2024年にパイロット導入

 

 

 

交通・産業

すべての人に安全でやさしい移動を

当社の課題

SDGsテーマ

目指す姿(2030)

中期目標(2022~2024)

二輪車による交通死亡事故ゼロに向けた活動推進


全交通死亡事故に占める二輪車運転者の割合を低減

YRA受講者数:前中期3年間の22万人の1.6倍*に増やす

*35万2千人

エアバッグ機能の技術研究・開発を推進

事故回避のための周辺情報警報システム(前方・後方・死角・車線逸脱)の開発及び2024年度内市場導入

モビリティ技術を活用し、高齢者、子ども、過疎地など、交通弱者が利用できる交通インフラを提供


低速自動走行システムの導入による交通弱者の減少を実現

2024年までに3カ所以上での実装に向け、限定された公道でのサービスカー自動運転技術を確立

人をもっと幸せにする新しいモビリティの提供

2023年に新たな移動体験を提供するパーソナルモビリティ―を市場導入

モビリティーサービスに対するアセット提供を通じて、利便性向上と雇用創出を実現


二輪車を購入できない人でも生活水準の向上と安定した収入の獲得が可能なサービスを提供

新興国市場2、3カ国でモビリティサービスとして提供する事業を開始

安全な移動・物流サービスを提供するスタートアップに対し資産リース(2024年で100〜150億円規模)などを通じて支援し、人々の基礎的サービスへのアクセス向上に貢献

 

 

 

ロボティクス技術で仕事を楽に快適に精密に

当社の課題

SDGsテーマ

目指す姿(2030)

中期目標(2022~2024)

省人化により新たな時間を創出し、人が人らしく働ける環境を実現


製造・農業・医療分野における新技術の事業化と効率化の促進

2022年に工場間自動搬送を事業化し、2024年までに海外でのビジネス展開を図る

人による繰返し作業や高負担作業を支援し自動化するための自社製の協働ロボットを、2023年に工場へテスト導入し、2024年に本格的なビジネス展開を実施

農林水産省事業として、収量10%向上、減農薬・減肥料を実現するスマート農業システムを販売

米国・豪州などで果樹農耕作業・育成状況監視の省人化技術・ビジネスを確立



現行機種より精度の高い細胞ハンドリング装置の新機種を販売

人それぞれにあった治療法を見出すための抗体検出サービスを提供

 

 

人材活躍推進

多様な人材で企業力強化を

当社の課題

SDGsテーマ

目指す姿(2030)

中期目標(2022~2024)

グローバル視点で人材を適時適切に配置し、エンゲージメントとパフォーマンスを最大化



性別、出身国、原籍などの個人の属性によらない適材適所を実現し、多様な価値観を尊重しながら事業を推進

海外子会社経営幹部のローカルタレント比率を55%以上

グローバルモビリティ(国際間異動)を2024年末時点で10件程度実施

グループ全体での女性管理職比率13%以上(2024年末)

本社社員エンゲージメントスコアを2021年比で20%以上向上(2024年 70%)

 

 

 

人権尊重の企業責任を果たすために

当社の課題

SDGsテーマ

目指す姿(2030)

中期目標(2022~2024)

当社のサプライチェーン全体から人権侵害のリスクを排除されている





人権に対する対応が体系的に整備され、人権リスクを最小化するための仕組みが効果的に運用されている

人権方針を策定し、グループ会社に100%採択される

人権方針についてサプライチェーンにおける*販売店・調達先と合意できている(2024年80%、2027年100%)
*当社または子会社が、直接取引基本契約を締結している販売店・製品本体に関わるTier1の調達先

救済メカニズムの運用がグローバルで開始され、リスク案件への対応が適切になされている

 

 

(2) ヤマハ発動機グループの気候変動への対応

健全な地球をフィールドに豊かな自然と触れ合う多様な商品群を提供するヤマハ発動機において、気候変動が地球環境に与える影響は、企業目的である「感動創造企業:世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供する」の実現において大きなリスクとなっています。ヤマハ発動機では「サステナビリティ基本方針」の「地球環境」において「地球温暖化防止に向けた技術開発を進め、環境負荷の最小化に努めます。また、生物多様性の保全とその持続可能な利用に取り組みます。」を掲げています。気候変動対策の国際的な合意であるパリ協定では「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べ1.5℃に抑える努力を追求すること」を目指しており、「ヤマハ発動機グループ環境計画2050」では、「ヤマハ発動機グループは、2050年カーボンニュートラルを目指します。」を掲げ、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同した情報開示を積極的に実施しています。

 

① ガバナンス

環境分野を重要な経営課題の一つと位置づけ、環境活動を管掌する執行役員を委員長とする「環境委員会」を設置しています。環境委員会は年6回開催し、環境に係る方針(TCFD対応方針など)やビジョンの審議、ヤマハ発動機グループの環境長期計画(環境計画2050)の策定、各事業部の目標に対する進捗等を毎年レビューし、少なくとも年2回は取締役会へ報告します。

また、環境委員会直下に環境推進会議を設置し、各事業部・調達部門・生産部門・技術部門などの推進責任者による会議を隔週で開催し、原材料の調達から生産・使用段階・廃棄に至るサプライチェーン全体でのカーボンニュートラルの実現や資源循環、生物多様性といった目標に向けた活動を推進しています。

 

 

 


 

 

 

 

② 戦略

IPCC(気候変動に関する政府間パネル) 第6次評価報告書では、COP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)で産業革命前からの気温上昇を「1.5℃に抑える努力を追求する」と合意されたことで、世界平均地上気温の変化シナリオにおいて新たに1.5℃目標に相当するSSP(※)1-1.9が設定されました。この報告書では、2100年までの世界の平均気温の変化を評価した5つのシナリオ全てで2040年までに1.5℃に達する可能性が高いと予測しており、世界の国・企業は気候変動への取組のさらなる強化が必要となってきています。ヤマハ発動機グループでは、2050年カーボンニュートラルを目指すにあたり、不確実性(リスク)要因に対応するために、IPCC第6次評価報告書の情報を参照にしてSSP1-1.9及びSSP1-2.6とSSP3の各シナリオを選択しました。

 

※SSP:共通社会経済経路(Shared Socio-economic Pathways)のことで、地球温暖化と社会経済の多様な発展の可能性を「緩和と適応」の困難度で5つのシナリオに分類している

シナリオ分析の詳細 https://global.yamaha-motor.com/jp/profile/csr/environmental-field/plan-2050/#sec-03-01

 

(主な事業リスクと機会)

シナリオ

SSP1(持続可能な発展の下で、1.5℃以下
に抑える気候政策を導入するシナリオ)

SSP3(地域対立的な発展の下で気候政策を導入しない中~高位参照シナリオ)

ヤマハ発動機の戦略

移行
リスク

政策・法規制

各国・各地域の排ガス規制やCO2排出量規制対応の開発コスト増加

 

各国地域の一番厳しい規制に準拠したモデル開発とグローバル展開

政策・法規制

炭素税の導入による操業コスト増加

 

1.5℃シナリオに沿ったScope1、2のCO2排出削減量目標を設定

技術

電動化への取り組みが各メーカーで加速され始めると、レアアースの需要が高まり、原料の調達が困難になるリスク

 

同業他社との協業にてバッテリーの相互利用を見据えたバッテリー規格共通化やインフラ整備のコンソーシアムを発足し電動モデルの普及促進にむけた活動を推進

市場

化石燃料使用の乗り物の市内走行禁止によるICE系二輪車販売減少のリスク

 

化石燃料に代わる次世代動力源を用いたモビリティ製品(電動二輪車、電動アシスト自転車、低速電動ランドカーなど)の開発強化とCASEを見据えた社会インフラとの統合に向けたパートナーとの協業を推進

評判

投資家などステークホルダーから情報開示が不十分と評価されるリスク

 

個人投資家向け会社説明会や、機関投資家との積極的対話

物理的
リスク

急性

 

極端な気象現象が、操業に影響を及ぼすリスク

自社及びサプライヤーのリスク調査と対応体制の構築

慢性

 

長期的な極端気候が、操業及び販売に影響を及ぼすリスク

気温上昇や洪水を想定した商材の耐熱・防水対策

 

 

 

 

シナリオ

SSP1(持続可能な発展の下で、1.5℃以下
に抑える気候政策を導入するシナリオ)

SSP3(地域対立的な発展の下で気候政策を導入しない中~高位参照シナリオ)

ヤマハ発動機の戦略

機会

資源効率性

生産工程におけるエネルギー効率の改善

 

理論値生産活動をグローバルに展開

エネルギー源

製造拠点における再生可能エネルギーの活用

 

太陽光発電のグローバル導入拡大
CO2フリー電源の導入拡大

製品/サービス

低炭素商品の開発拡大
BEV商材の拡充と拡販

 

電動アシスト自転車、スクーター、ゴルフカー、電動車いす、産業用無人ヘリコプターなど、さまざまな製品群の電動モデルの販売拡大

市場

各国・地域のグリーン戦略や政府補助金などによる当社製品群の需要拡大

 

世界的な電動化製品の需要増加に備え、電動化製品の開発、ラインナップの拡充

評判

環境分野に特化した新規市場・地域へのアクセス

 

環境・資源分野に特化した自社ファンド設立

レジリエンス

各国・地域のエネルギー政策や多様なエネルギー源に対応した製品・サービスによる収益増加

 

CN燃料(水素・バイオ・合成液体燃料など)など、多様なエネルギー源への対応技術開発

 

 

③ リスク管理

ヤマハ発動機では、「事業戦略」と「事業継続」の2つの側面から気候変動リスクの特定と評価を行っています。

 

a.リスクの特定

各事業・機能部門は、短期・中期・長期の気候関連リスクを「低炭素経済への移行に関するリスク」と「気候変動による物理的変化に関するリスク」に分けてそれぞれの側面が事業に与える財務影響を考慮し、また気候変動緩和策・適応策を経営改革の機会として事業に与える財務影響を考慮し、事業中期計画の中でリスクと機会を特定します。

 

b.リスクの評価

環境活動を管掌する執行役員を委員長とする「環境委員会」は、各事業・機能部門が特定したリスクと機会に対する事業戦略としての具体的取組を評価します。

 

c.気候変動リスクの「管理」プロセス

「環境委員会」は、各事業・機能部門が特定したリスクと機会に対する事業戦略としての具体的取組のゴールや目標について毎年進捗を管理し、「サステナビリティ委員会」及び取締役会で結果を報告します。環境委員会は、進捗管理を実施するとともに事業に重要な影響を及ぼす案件については審議し、少なくとも年2回は取締役会で報告または決議を行います。

 

 

④ 指標及び目標

2050年目標

サプライチェーン全体でカーボンニュートラル

2035年目標

Scope 1、2:カーボンニュートラル達成

Scope 3:24%削減(2019年度比)※主に製品の使用段階

2030年目標

Scope 1、2:80%削減(2010年度比)

Scope 3:7%削減(2019年度比)※主に製品の使用段階

 

2023年度のCO2排出実績と削減目標推移

Scope 1、2(t)

402,658

Scope 1

Scope 2

144,959

257,699

Scope 3(t)

cat 1~15

cat 11

30,549,563

24,784,905

 

 

Scope 1、 2

 

2010年

2019年

2020年

2021年

2022年

2023年

(基準年)

排出量(t)

662,261

540,105

442,533

500,903

465,326

402,658

排出原単位(t/売上収益:億円)

51.2

32.4

30.1

27.6

20.7

16.7

削減率(2010年度比)

▲36.7%

▲41.2%

▲46.1%

▲59.6%

▲67.4%

 

 

Scope 1(エネルギー起源直接排出)、Scope 2(エネルギー起源間接排出)

対象範囲

 :ヤマハ発動機及び連結子会社130社を含む全149社

 :敷地外移動体に利用される燃料は除く

 :構内サプライヤーのエネルギー使用量は除く

 

Scope 3 ※cat 11-製品の使用段階

 

2019年

2020年

2021年

2022年

2023年

(基準年)

排出量(t)

29,344,372

21,961,065

26,016,843

26,506,968

24,784,905

排出原単位(t/販売台数)

4.39

4.11

4.16

4.15

4.13

削減率(2019年度比)

▲6.4%

▲5.2%

▲5.5%

▲5.9%

 

 

※cat 11 : 当社が対象期間に国内外で販売した製品についてアジア、欧州、北米、日本、大洋州、中南米、その他の各地域における販売台数に、原則として、モデル平均燃費(あるいはモデル電気使用量)、年間走行距離(あるいは年間使用量)、生涯使用年数を乗じて対象期間に販売した製品の生涯消費燃料量(あるいは生涯電気使用量)を算出し、生涯消費燃料量(あるいは生涯電気使用量)に排出係数を乗じて排出量を算定。

 

 

 

(3) ヤマハ発動機グループの人的資本

グローバルな事業展開の中、進化・変化していく市場ニーズに機敏に対応できる組織体制づくりに加え、個人と会社が高い志を共有し、事業の発展及び個人の成長の実現に向けて協力し合うことで、感動を創造し続けることができると考えています。

「企業活動の原点は人」という基本認識の下、変化が激しい環境の中で、多様な人財がワクワク、自ら感動しつつ、失敗を恐れず高い目標へチャレンジし、成長を実感できると同時に、会社の成長と未来を切り開いていくことを目指します。この実現のため、2025年から始まる新中期経営計画における人事のミッションステートメントを ”Challenge & Growth ~多様な社員にチャレンジの機会を!ヤマハ発動機らしいチャレンジで個人と会社の成長を!” と設定し、社員の主体的な活動に焦点を当てて次の感動創造につなげる取り組みである ”NEXT KANDO ACTIONS” の全社活動と連携しながら、グループ全体で社員の挑戦と成長を後押ししていきます。

また、従業員の就業環境の改善や心理的安全性の確保、ハラスメント防止に関しても全社を挙げて取り組んでおり、具体的な目標数値を定めてエンゲージメントの向上を目指しています。

 

① ガバナンス

人的資本経営のさらなるガバナンス強化と戦略の最適化を実行するために、2024年に人的資本経営委員会を設置しました。役付執行役員、海外拠点長を参加者とし、グローバル規模での人的資本に関する主要課題である人財投資戦略、エンゲージメントの向上、ダイバーシティの促進等の議論を積極的に行っています。また、ヤマハ発動機グループの経営幹部候補の人財育成計画、配置及び育成状況についての審議を行うことを目的に、タレントマネジメント委員会を設立しました。これらを通じ、従業員のキャリアに対する自主性並びに将来のキャリアパスの透明性を向上させていきます。

 

② 戦略

多様性を認めた一人ひとりが働きやすい環境づくり

当社は、社員エンゲージメントを重要な指標と位置づけ、2025年からの新中期経営計画においてエンゲージメントポジティブスコア80%以上をグローバル共通の目標として設定しました。引き続き、エンゲージメントの向上を目指し、全社を挙げて取り組んでいきます。2022年からYamaha Motor Global Awardを導入し、2023年には、社員も投票に参加することができる「社員投票最優秀賞」を設置、そして2024年には、縁の下の力持ちとして事業継続やサステナビリティに欠くことのできない貢献をしている「影の貢献者賞」を新設しました。2024年度は国内・海外事業部門とグループ会社から挙がった39エントリーからヤマハ発動機らしさを体現する8つの優れたプロジェクトを表彰しています。このような、成功を祝う活動を通じて社員エンゲージメントの向上を図り、Yamaha Day(当社の創立記念日にあたる7月1日とヤマハ株式会社の設立記念日にあたる10月12日をYamaha Dayと定め、本社及び国内外グループ各社にて自律的なイベントを開催)と合わせて授賞式を行っていきます。

また、エンゲージメントを高める取組として、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンと人財育成に力を入れていきます。

ヤマハ発動機グループの企業理念である「感動創造企業」を実現するためには、さまざまなバックグラウンドで活躍する人々がお互いを認め合い、成長していくことでその価値を最大限発揮することが重要です。また、持続的な成長を実現しお客さまの期待を超える新しい価値を生み出し続けるためにも、多様な視点や価値観を持った人財の育成、活躍が不可欠であると考えています。

 

多様な人財が集まり、互いの異なる視点や価値観を尊重しながら、新たな気づきや発見を価値創造につなげていける組織風土を醸成するために、2023年9月に「ヤマハ発動機グループ ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)方針」を制定し、職場内及び子会社への周知を行っています。当方針の中で「ダイバーシティを通じて感動を創造する」ことをステートメントの中心に置き、「RESPECT.」(リスペクト ピリオド)を行動原則としています。「RESPECT.」とは、ヤマハ発動機グループの全員が、同僚、お客さま、サプライヤー、その他のステークホルダーに対して、他者の意見や権利を価値あるものとして認識し、接する責任を持つことを意味します。その上で 「重点領域とヤマハ発動機グループの姿勢」を定め、全ての役職員が年齢、性別、性的指向、性自認、障がい、国籍、人種、宗教・信条、価値観、経験などに関わらず自分の個性(強み・経験・考え方)を最大限に発揮できる職場を目指しています。

「性別」に関わる取組として、女性活躍推進の観点から、女性の管理職比率について目標を設定し取り組んでおり、ヤマハ発動機グループ全体では、女性管理職比率を2023年の11.1%から2027年に13%とする目標を設定しました。この目標の達成に向けて継続して取組を進めていきます。

さらに、重点領域の一つである「LGBTQ+」については、性自認や性的指向に関する働く上での悩みや困りごとを相談できる社外相談窓口を本社に新設しました。今後も、性自認や性的指向に関わらず、社員一人ひとりが安心して受け入れられ、自分らしく働くことができるような職場環境の整備を進めていきます。

本社におけるキャリア採用者(中途採用者)の管理職登用比率は、新卒採用者の同比率と同程度となっています。採用形態等の属性によらない人物・能力本位での管理職登用を今後も継続していきます。

 

人財育成方針

ヤマハ発動機グループでは、進化・変化していく市場ニーズに機敏に対応できる組織体制づくりに加え、個人と会社が高い志を共有し、事業の発展及び個人の成長の実現に向けて協力し合うことで、感動を創造し続けることを「人事の目指す姿」として設定しています。具体的な項目として以下の3つを掲げ、多様性が尊重される職場づくりを進めています。

1. 性別・年齢・国籍・人種・価値観等にとらわれず、一人ひとりがそれぞれのチャレンジへ果敢に挑める施策を構築し、挑戦する風土を醸成すること

2. 個人が自らの手で、生涯にわたり啓発する意欲を持つ役職員に対し、適宜その機会と支援を提供すること

3. 「発、悦、信、魅、結」の共有価値を基本とし、「ヤマハらしさ」を開発・育成することで人財における他社との差別化を図ること

 

そして、目指す姿に向けて次のような人財とともに働きたいと考えています。

 

1. 自己価値向上に努力する自立・自律型の人財

2. チームワークを大切にした行動ができる人財

3. ヤマハブランドの価値を高められる人財

 

上記のような職場づくりを実現するためヤマハ発動機グループでは人材マネジメントグループ業務指針を定め、さまざまな取組を行っています。

 

グローバル人財の活用

人財のグローバル化については、性別・年齢・国籍及び原籍等を問わず優秀な人財の早期発掘、キャリアプランの検討、育成、登用を進めています。具体的には、以前から進めてきたグローバルコアポジションの後継者管理に加え、グローバルでの次世代経営人財の発掘と育成強化、人財の可視化を目的としたグローバル人財データベースの拡充に着手しました。

また、2020年からグローバル人事異動を促すGAP(Global Assignment Policy 旧:Yamaha Assignment Policy)を導入し、優秀な人財の国際間異動を推進しています。これまでに19件の実績があり、今後もさらなる拡大を図っていきます。

 

 

人財育成

階層に応じた研修をはじめ、ハイポテンシャル人財に対する選抜研修、機能面での専門スキルを磨く研修、世界で活躍できる人財を目指す海外トレーニー制度、チーム力を高めて組織としてのパフォーマンスを高めるコーチング研修やダイバーシティ研修などを整備しています。また、自ら学ぶ風土の定着に向けて、自己啓発への支援を拡充し、学びの選択肢を増やすとともにオンデマンド型教育を整備しています。

人財育成に関しては、成長を望めば誰しもが機会を与えられる仕組みの構築を目指し、Yamaha Motor Learning System(YLS)オンライン・オンデマンド型の学習プラットフォームの導入と、自己啓発講座の推進を進めてきました。YLSの利用者数は約2万人に達し、自己啓発講座は社員の多様な学びのニーズに対して豊富な選択肢を提供できるようカフェテリアプラン(注)の適用範囲を外部の自己啓発講座・セミナー・オンライン語学講座・オンライン学習サービス・自己啓発用テキスト・書籍購入にまで拡大しました。また、グローバルな経営人財を育成するための選抜研修プログラムを2015年から実施し、これまで延べ155人が参加しています。

 

(注) 『カフェテリアプラン』とは、それぞれのライフスタイルに合わせて、会社が設定した福利厚生メニューの中から好きなメニューを選び、補助を受けることができる『選択型福利厚生制度』です。

 

モノづくりの現場においては、「人が主役のモノづくり」をコンセプトとし、人財の獲得、育成、配置、維持・定着のサイクルを構築しています。特に、人財の維持・定着については、エンゲージメント向上施策やインターナルブランディング活動を積極的に展開し、当社で働く喜びや成長意欲を高め、「人が主役のモノづくり」を実現することで、「人財の価値」「社会の価値」「商品の価値」「つながる価値」の向上を目指しています。

モノづくりの現場においては社内だけではなく、グループ会社やお取引先も含めた人財の育成と協創が大変重要です。モノづくりの基本思想「ヤマハ発動機モノづくりWay」の海外・国内グループ会社やお取引先への体系的な導入に加え、人財育成、DXへの取組についても協業を進め、当社製品のさらなる価値向上を目指します。
 

健康かつ安心して働ける安全な環境づくり

当社グループでは、従業員の健康・安全を企業成長の基盤と考え、労働環境の向上に努めています。ヤマハ発動機グループ労働安全衛生基本方針、「安全・健康 最優先」の考えの下、従業員全員参加で安全と健康の確保に取り組むとともに、快適な職場環境の形成を促進しながら、業務遂行の円滑化を図り生産性の向上にもつなげています。

ヤマハ発動機においては、従来から推進してきた労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)を再構築し、2023年に国際規格であるISO45001を導入、認証を取得しています。マネジメントシステム運用の中軸である、職場におけるリスクアセスメント(危険性や有害性を特定・評価)の実施、その結果に基づく計画的な労働安全衛生リスクの除去・低減に取り組み、労働災害の未然防止を図っています。また、全従業員の安全意識向上のため、法規制上の教育・講習はもちろん、リスクアセスメントや実践的な危険予知トレーニング等、各種教育・研修の充実にも取り組んでいます。

なお、2023年5月、当社浜北工場(浜松市浜名区)にてエンジン部品加工作業に従事していた社員1名が死亡する労働災害事故が発生しました。このような重大な労働災害を二度と発生させないため、設備機械の安全総点検と対策、リスクアセスメント徹底によるリスク除去・低減、「安全の日」設定による安全意識の高揚など、再発防止の取組を継続的に進めています。

ヤマハ発動機グループ全体の労働安全衛生水準の向上に向けては、労働災害発生リスクが相対的に高いと考えられる製造拠点を中心に、ISO45001を基軸とした労働安全衛生マネジメントシステムの整備を進めるとともに、継続的な改善に取り組んでいきます。

健康に関しては、2020年にヤマハ発動機健康宣言を制定し、社員の健康を会社の発展に欠かせない重要な経営課題ととらえ、会社・社員が一体となって健康の保持・増進に取り組んでいます。

 

具体的には、ヤマハ発動機では健康診断受診率100%・メタボリックシンドローム(該当者+予備群)の低減・喫煙率の低減を三大課題とし、さまざまな取組を進めています。メタボリックシンドローム低減に関しては、若年層を含めリスクを抱えた社員への看護職・管理栄養士による継続的な保健指導、専門医の治療に早期につなぐための受診勧奨となるイエローペーパー制度の運用等を行っています。また、喫煙率低減に向けては従来から行ってきた禁煙支援に加え、2024年1月よりヤマハ発動機敷地内・就業時間中の全面禁煙化を開始、国内グループ会社にも順次展開を進めています。

社員のメンタル不調を未然に防止するため、ストレスチェック実施後には高ストレス者の希望者全員に産業医や看護職等によるフォロー面談を実施、集団分析結果を職場へフィードバックすることで職場環境改善につなげている他、セルフケア・ラインケア等のさまざまな教育・研修を実施しています。

フィジカル・メンタル共に休職者の復帰時には、復職前に社内リワークプログラムを実施、復帰後も所属長・人事部門・産業医が連携し1年ほど本人をフォローすることで、再発防止に努めています。

また、社内環境整備の一環として、人事部門と健康推進部門が連携して適正な労働時間管理を推進し、過重労働対策とワークライフバランスの確保を行っている他、女性社員特有の健康問題に対応するための専用相談窓口やセミナー等の整備など、さまざまな取組をきめ細かく展開しています。

これらの活動を通じ、ヤマハ発動機は健康経営を戦略的に取り組む法人を認定する「健康経営優良法人認定制度」において健康経営優良法人2025(大規模法人部門)・ホワイト500に認定されています。

 

コンプライアンスの遵守

ヤマハ発動機グループでは、グループ全体のコンプライアンス遵守の体制を構築する目的で、チーフ・リスク・コンプライアンス・オフィサー(CRCO)を2025年1月に任命し、CRCOが委員長となり指名する執行役員を委員とする「グローバルリスク・コンプライアンス経営委員会」において、コンプライアンス遵守のための計画を審議し、その実行状況やコンプライアンス遵守の風土についてモニタリングを行います。また、その下部委員会として、CRCOが指名する主要各地域を統括するリスク・コンプライアンス・オフィサーを委員とする「グローバルリスク・コンプライアンス推進委員会」を設置するとともに、本社各リスク主管部門長等による「リスク・コンプライアンス推進会議」を設置し、コンプライアンスについての方針や計画、モニタリングと対策などを専門的視点で審議することとしています。そしてこの結果は、グローバルリスク・コンプライアンス経営委員会での審議事項としてCRCOよりESGリスクとともに取締役会に適宜報告するものとされており、実効性を担保した体制を整備しています。具体的な活動は「コンプライアンス管理規程」に従って展開し、CRCOとコンプライアンス統括部門がグループ全体の活動を管理します。

また、コンプライアンス風土を測定する手段の一つとして、グループ会社共通のコンプライアンス意識調査を毎年実施し、「倫理行動規範」の理解度や規範の実践度合い、レポーティングラインやホットラインの利用度、教育の有効性などコンプライアンス施策の有効性を確認しています。また、調査の結果や社会の潮流も踏まえ、「倫理行動規範ガイドブック」の毎年の更新と「倫理行動規範」の定期的な見直しを行っています。

この倫理行動規範では、日々の活動の中で遵守すべき行動基準をコンプライアンスの視点から表していますが、中でも人権は重要なものと位置付けており、職場で人権を侵害し得る、職場でのセクシュアルハラスメントや、職場における地位や人間関係などの優位性を背景にした相手の人格・尊厳の侵害など、あらゆる種類のハラスメントを一切禁止しています。そのために主にマネジメント層に対して「人権・ハラスメント」研修を毎年開催しています。もしハラスメントの報告を受けた際には当事者から詳細なヒアリングを行い事実確認した上で、懲戒を含めた適正な対応を行うとともに、再発防止に向けた取組を進めています。

倫理行動規範に違反する行為に気付いた場合の通報先として「コンプライアンス・ホットライン」を設置し、国内外のグループ会社からの内部通報を受け付けるとともに、必要な調査・是正を実施しています。加えて、仕入先からの通報を対象にした「フェアビジネスホットライン」、社外ステークホルダー向けの「人権ホットライン」を設置し、課題の是正・救済に取り組んでいます。

 

ヤマハ発動機が受け付けたホットラインの件数

2022年

2023年

2024年

177件

203件

247件

 

 

 

③ リスク管理

ヤマハ発動機グループでは、必要なリスクを網羅したリスク管理台帳を作成しており、リスク管理台帳を適切に管理・運用することにより、リスク低減を図っています。この中に「ダイバーシティへの対応不足」という項目を織り込み、「多様性のある人財を確保できず、斬新なアイデアの喚起、社会の多様なニーズへの対応が遅れる」ことをリスクととらえ、対応できなかった場合には「性別や人種、年齢、学歴などの多様性を欠き、企業活力が低下する」「企業価値の訴求不足によって有能な人財の確保が困難になる」ことをダメージとして想定しています。

 

④ 指標及び目標

エンゲージメントスコア

集計対象

2022年

2023年

2024年

ヤマハ発動機 単体

62%

61%

63%

海外主要子会社(12社)

(注)

-

80%

83%

ヤマハ発動機 単体
+海外主要子会社(12社)

(注)

-

79%

82%

 

(注)各社エンゲージメントスコアの合計を会社数で除して算出

 

目的: 調査を通じて会社全体や各組織のエンゲージメントを可視化し、エンゲージメントに特に影響度が高い要素と各組織の強み・課題点を特定することで社員が働きがいのある職場環境を社員全員で作り上げることを目指す

内容: 社員のエンゲージメント並びにそれらに影響を与える「心理的安全性」「キャリア」「将来性」「成長と能力開発」「会社戦略」「リーダーシップ」「協働」「コミュニケーション」「インクルージョン」等に関する設問

指標: 5段階評価における肯定的回答の割合

目標: 今中期経営計画(2025年-2027年)においてグローバルで80%以上

 

産休・育休取得状況

集計対象

データ区分

2022年

2023年

2024年

ヤマハ発動機 単体

女性取得率

100%

100%

100%

女性復職率

99%

93%

100%

男性取得率

54%

65%

84%

男性取得者数

152人

193人

230人

国内グループ

女性取得率

-

125%

141%

女性復職率

-

100%

88%

男性取得率

-

49%

59%

男性取得者数

-

42人

48人

 

(注)取得率については、過年度に出産した従業員または配偶者が出産した従業員が翌年度に育児休業を取得することがあるため、取得率が100%を超えることがあります。

 

 

女性従業員比率

集計対象

2022年

2023年

2024年

ヤマハ発動機 単体

16.0%

12.7%

13.0%

国内グループ会社

22.2%

22.4%

北米

30.2%

30.5%

30.8%

欧州

22.8%

22.4%

21.0%

アジア

27.2%

24.1%

23.7%

その他

23.1%

24.9%

26.4%

全体

23.4%

22.4%

22.0%

 

 

女性管理職比率

集計対象

2022年

2023年

2024年

ヤマハ発動機 単体

3.2%

3.7%

3.8%

国内グループ会社

-

5.5%

6.5%

北米

-

19.5%

20.3%

欧州

-

16.4%

20.5%

アジア

-

14.3%

16.0%

その他

-

17.7%

19.0%

全体

11.2%

11.1%

12.1%

 

 

コアポジション現地化率 (注)

2022年

2023年

2024年

49.2%

55.6%

57.5%

 

(注)海外子会社のコアポジション(本社部長級)に占める現地人財の比率

 

選抜研修の参加者数

選抜研修

2022年

2023年

2024年

Global Executive Program (注1)

16人

-

18人

Yamaha Business School Global (注1)

-

24人

-

Regional Development Program

39人

71人

-

Yamaha Business School Junior (注2)

-

25人

25人

 

(注)1 Global Executive Program、Yamaha Business School Globalは隔年で実施

   2 2022年はコロナ禍のため実施なし

 

自己啓発講座受講数(延べ人数)

集計対象

2022年

2023年

2024年

ヤマハ発動機 単体

2,795人

4,219人

3,250人

国内グループ会社

292人

820人

773人

 

 

従業員一人当たり研修時間 (注1)

集計対象

2022年

2023年

2024年

ヤマハ発動機 単体

5.7時間

14.8時間

18.0時間

国内グループ会社(注3)

-

9.7時間

10.4時間

 

 

 

従業員一人当たり研修費用 (注2)

集計対象

2022年

2023年

2024年

ヤマハ発動機 単体

19,000円

39,000円

52,000円

国内グループ会社(注3)

-

23,000円

24,000円

 

(注)1 コンプライアンス教育・安全衛生等法令に関する研修や新入社員研修を除く。また、2024年から自己啓発講座の機会提供の拡大(会社が対象講座を指定する方法から、個人が自由に選択する方法へ変更)を実施したことに伴い、自己啓発講座受講時間数の把握が困難となったため、自己啓発分を除いた時間数を遡及して計算

   2 社内の人件費、施設運営費等は除く

   3 国内グループ会社で提出のあった拠点のみが対象

 

労働災害 発生件数(休業災害以上)

集計対象

2022年

2023年

2024年

ヤマハ発動機 単体

12件

11件

11件

国内外グループ会社(注)

117件

171件

126件

 

 

労働災害 休業度数率(100万延べ実労働時間当たりの労働災害による死傷者数)

集計対象

2022年

2023年

2024年

ヤマハ発動機 単体

0.43人

0.39人

0.39人

国内外グループ会社(注)

1.11人

1.50人

0.98人

 

(注)2022年の対象範囲は生産機能を持つ連結子会社と関連会社の合計30社。2023年の対象範囲は生産機能以外も含む連結子会社と関連会社の合計117社。2024年の対象範囲は生産機能以外も含む連結子会社と関連会社の合計140社

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しています。なお、これらは全てのリスクを網羅したものではなく、これら以外にも投資者の判断に影響を及ぼす事項が発生する可能性があります。また、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月26日)現在において当社グループが判断したものです。

 

<1>    リスクマネジメントの取り組み

リスクマネジメント対応のために適切な体制や規程を整備・運用し、リスク低減活動に取り組んでいます。平常時の予防活動として、当社グループが対処すべきリスクについて担当部門を明確にして対策を推進し、グループ全体で活動を行っています。重大な危機が発生した場合には、社内規程等に基づき、社長執行役員を本部長とする緊急対策本部を設け、損害・影響を最小限にとどめています。

 

<2>    リスクマネジメント体制

「リスクマネジメント規程」に基づき、チーフ・リスク・コンプライアンス・オフィサー(CRCO)が委員長を務め、CRCOが指名する執行役員を委員とする「グローバルリスク・コンプライアンス経営委員会」、及び下部組織としてCRCOが指名する各地域のリスク・コンプライアンスオフィサー(RCO)を委員とする「グローバルリスク・コンプライアンス推進委員会」とリスクマネジメント統括部門とリスクの主管部門で構成される「リスク・コンプライアンス推進会議」を設置し、グループ全体のリスク状況をモニタリングしています。同時に、重点的に取り組む「グループ重要リスク」の選定、対策活動のチェックなどを行い、グループ全体のリスク低減を図っています。またリスクの主管部門は、主管リスクについて対応方針、規程等を定めるとともに、本社各部門及びグループ会社に対して対応方針等に基づく対策活動の推進、活動モニタリングなどを行います。その実効性を担保するため、統合監査部はリスク主管部門に対して監査を実施しています。

 


 

 

<3>    リスクマネジメント活動サイクル

リスクマネジメント活動は、下記のPDCAサイクルを回すことで推進しています。当社グループでは、必要なリスクを網羅したリスク管理台帳を作成しており、リスク管理台帳を適切に管理・運用することにより、リスク低減を図っています。


 

<4>    グループ重要リスク

毎年、リスクの中でも特に重点的に予防・対策に取り組むべきものをグループ重要リスクに定めています。グループ重要リスクは、グループ全体のリスク評価結果に加え、グループ事業戦略、グループ内外の法令変更、環境変化及び発生事案情報などを踏まえ、総合的に判断・選定されます。

 

<5>    事業等のリスク

 

(1)経済環境変化リスク - ①市場における競争環境変化

<リスク>

当社グループは、事業を展開する多くの市場において激しい競争環境の変化にさらされており、このような競争状態のために当社グループにとって有利な価格決定をすることが困難な状況に置かれる場合があります。このような競争状態は、当社グループの利益の確保に対する圧力となり、その圧力は特に市場が低迷した場合に顕著となります。また、当社グループは、激しい競争の中で優位性を維持又は獲得するために、競争力のある新製品を市場に投入し続けていますが、資源を投入して開発した製品が計画通り販売出来ない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

<対応策>

モーターサイクル事業においては、今後10年で急速に拡大することが予想されるアセアン・インドの上位中間層をターゲットに、プレミアム戦略を加速し、収益性の向上を目指しています。具体的には、アジア主要国でのプレミアムオートマチックスクーターやプレミアムスポーツモデルに注力することを戦略的に取り組んでいます。また、ボディやエンジンのプラットフォーム化を導入したことで開発のスピードが上がり、お客様の求める商品を適切なタイミングで上市しています。

マリン事業においては、当社グループとしてグローバルに拠点を構える販売子会社との連携により、市場の変化にフレキシブルに対応する事業運営を行っています。特に先進国では、エンジンの卸先であるボートビルダーと長期契約に基づく関係を築くことで販売の安定化を図っています。エンジンとボートの操船に関わる周辺機器をセットで提供することで、当社ブランド製品に対するロイヤリティを高めています。

 

 

 

(1)経済環境変化リスク - ②為替の変動

<リスク>

当社グループは、日本を含む世界の国々で生産活動を行い、その製品を世界各国に輸出しており、製造のための原材料や部品の調達及び製品の販売において、各国で外貨建の取引があります。従って、為替変動は、当社グループの売上はもとより、収益及び費用等に影響し、その結果、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、当社グループは在外子会社の現地通貨ベースの業績を円換算して作成した連結財務諸表をもって業績及び財政状態を表示していますので、各通貨の円に対する為替レートの変動が当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

<対応策>

当社グループでは、為替ヘッジ取引や為替変動分の価格転嫁等により、為替レートの変動による影響を最小限に止める努力をしています。

 

 

(1)経済環境変化リスク - ③金利変動、資金調達環境の変化

<リスク>

当社グループは、事業活動の資金を内部資金及び金融機関からの借入や社債の発行等により調達しています。しかしながら、経済環境が変動した際、金融機関の融資姿勢や金融市場の不安定化により、また格付機関による当社信用格付けの引下げの事態が生じた場合などに資金調達を想定通り行うことが難しくなり、資金調達コストが増加するリスクがあります。

<対応策>

当社グループでは、適時に資金繰り計画を作成・更新するとともに、手元流動性を適度に維持しています。加えて、銀行借入や社債の発行など資金調達の多様化を進めることにより流動性リスクを低減しています。また、借入金に係る支払利息の金利上昇リスクを抑制するために、固定金利で長期資金調達又は金利スワップ取引等を利用することがあります。

 

 

(2)海外事業展開リスク

<リスク>

当社グループの売上収益に占める海外比率は約90%となっています。地政学リスクをはじめ、外的要因による経済安全保障リスクは高まりを見せており、当社グループが事業を展開している国又は地域における予期しない輸出入規制の運用・改廃、不利な影響を及ぼす税制・関税等の変更、外貨規制、移転価格税制を含む税務調査・追徴課税などが発生した場合には当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

<対応策>

当社グループでは、リスク低減のため、国際情勢の動向や各国の法規制の改正等に関する情報を定常的に把握し、対応を実行しています。2023年7月より貿易管理委員会を設置し、貿易・経済安全保障に関するリスクの選定、対応策の審議・遂行をタイムリーに行う対応を進めています。幅広い機能・部門の責任者である執行役員以上のメンバーで構成された委員会の運営により、事業活動リスク(サプライチェーン維持、データ・情報管理、人事管理等)の把握を行い、リスク回避・低減の仕組み作りだけでなく、リスク顕在時の初動対応が図れる対応を進めています。

また、税務基本方針や移転価格設定方針を定め、早期に税務リスクを把握するために本社と各子会社の間で情報交換を行い、リスク低減のため方策を講じています。税務処理に不確実性がある場合は、税務当局への事前照会や外部専門家への相談を行い不確実性の排除に努めています。

 

 

 

(3)合弁事業リスク

<リスク>

当社グループは、一部の国又は地域において合弁で事業を展開しています。これらの合弁事業は、合弁パートナーの経営方針等により影響を受けることがあります。

<対応策>

合弁パートナーとは配当金による利益分配や損益を応分に負担する等で良好な関係を保つとともに、製品に係る知財を当社が保持することでパートナーの方針変更があっても事業を継続しやすい対応を取っています。

 

 

 

(4)特定の顧客・マーケットへの依存リスク

<リスク>

当社グループは、二輪車、船外機等の消費者向け製品を市場に供給しているだけでなく、顧客企業に対して自動車用エンジン等を供給しており、その売上は顧客企業の経営方針、調達方針等の当社グループが管理出来ない要因により影響を受けることがあります。

<対応策>

当社グループは、常に最新のマーケット動向へ目を向け、自動車エンジン等に加えてEV用電動モーター等の新商材開発を積極的に行い、取扱商材の多様化に向けた努力をすると同時に、顧客企業数を増やす活動を推進し、特定の顧客に過度に依存しない供給体制の構築を目指しています。

 

 

(5)調達リスク

<リスク>

当社グループは、製品の製造に使用する原材料及び部品等を当社グループ外の多数の供給業者から調達しており、これらの一部については特定の供給業者に依存しています。市況、災害等、当社グループでは制御出来ない要因により、当社グループがこれらの原材料及び部品等を効率的に、且つ安定したコストで調達し続けることが出来なくなった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。原材料価格の今後の高騰や部品不足などが発生、長期化する場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。

<対応策>

当社グループは、互換性のある部品や原材料への切替や、長期的な内示数量提示による供給数の確保などの対策を進めています。

 

 

 

(6)製品品質・リコール関連リスク

<リスク>

当社グループは、グループ品質保証体制の下に、世界各国の工場で製品を製造しています。しかし、法律や政府の規制に従い、或いは、お客様の安心感の観点から、リコール等の市場処置を実施する可能性もあります。また、当社グループは、製造物責任等の訴訟、その他の商取引、独占禁止、消費者保護などの法的手続の当事者となる可能性があります。大規模なリコール等の市場処置を講じた場合や当社グループが当事者となる法的手続で不利な判断がなされ、多額の費用・損害賠償責任が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

<対応策>

・品質マネジメントシステム

当社では、社長により表明された当社グループ全体の独自の品質方針ならびにISO9001規格に基づいた品質マネジメントシステムを構築し運用しています。これらの取り組みはグローバルに展開されており、本社において策定された3年間の中期計画に沿った活動が各拠点の中期目標として作成し実施されています。各事業で作成された中期計画の内容と進捗状況は年に1度の事業マネジメントレビューで見直しするとともに課題解決策の討議を行うということで品質マネジメントシステムにおけるPDCAサイクルを回しています。なお、各市場での商品の不具合情報や保証修理の情報などから市場における品質情報処理が適切になされているかを確認する委員会が設けられており、タイムリーな調査とマネジメントへの報告を行っています。

・市場情報収集と対応

市場で発生した品質問題は、国内外の販売会社のサービスを通じてその製品の製造工場に情報が集約される体制を作っています。その情報は設計、製造、サプライヤーなどの開発・生産部門に届けられ、連携して原因の究明や対策を実施するとともに、該当するお客さまへの適切な対応や再発防止策を策定していきます。製品事故が発生した場合や法規に抵触する可能性のある不具合が発生した場合は迅速にマネジメントへも情報が届くフローと討議できるシステムを設定しており、判断や決定に遅れがないようにしています。市場措置が必要であると決定した場合は、発生国の法規に従って迅速に当局に届け出を行い、販売会社からその製品のお客様に無償修理のご案内をダイレクトメールや電話、ホームページなどを使ってお届けしています。

 

 

(7)人権侵害リスク

<リスク>

各国において、国際連合や国際労働機関が提唱する人権に関する国際規範や法令に基づく人権の取組みを求める法規の制定が進んでおり、サプライチェーン全体での人権リスクへの対応・順応の必要性が急速に高まってきています。これらの法規に対して適時適切な対応が出来なかった場合や、取り組みが奏功しない、もしくは不十分である場合、ブランドイメージの毀損や社会的信用の低下に加え、当社グループの生産活動の停滞や遅延、開発や購買や営業などの各事業、ビジネス活動にかかる追加の対応コストなどが生じる可能性があり、その場合には、当社グループの事業業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

<対応策>

当社グループでは、「ヤマハ発動機グループ人権方針」のグループ会社・取引先展開に加え、実業務に織り込むべく契約書への人権条項織り込みなどを実施してきました。また本方針に基づき人権デューデリジェンスにてリスクの特定に向けた活動、社内外に向けたホットラインの設定、教育・啓発活動を進め、グループ従業員及びサプライチェーンへの人権意識を高める取り組みを行っています。

 

 

 

(8)ハラスメントリスク

<リスク>

サプライチェーン全体での人権リスクへの対応・順応の必要性が急速に高まっている中、当社グループは従業員に対して、人種・国籍・生活信条・身体・性格・親族等についての誹謗中傷、人格を否定するような言動の禁止、セクシャルハラスメントをはじめとしたすべてのハラスメント行為の禁止を倫理行動規範でうたっています。しかしながら、ハラスメントは誰しも意図せず行為者になりうるものであり、ひとたび重大なハラスメントが発生すると、被害者だけでなく、会社、組織、事業活動そのものにも影響を与える可能性があります。

<対応策>

当社グループで展開しているダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)の浸透、社員のエンゲージメント向上等の取組みを通じ、ハラスメントが起きにくい組織風土を醸成し、事案発生時には、再発防止も含め、迅速・適切に対応すると共に、ハラスメントを未然防止するための啓発、教育活動にも継続的に取り組んでいます。また、日本国内ではコンプライアンス案件通報窓口に加え、ハラスメント・労務問題専用の相談窓口を設置し、ハラスメントを受けた、見聞きした、という場合には速やかに相談できるレポートラインを整備しています。

 

 

(9)法規制の強化・法的手続リスク

<リスク>

当社グループが事業を展開する多くの国又は地域において、当社グループは、製品の安全性、燃費、排ガス規制、並びに工場からの汚染物質排出レベル等の広範囲な環境規制及びその他の法規制を受けています。これらの規制は変更されることがあり、多くの場合規制が厳しくなる傾向にあります。当社グループが事業を展開する国又は地域におけるこれらに関連する規制又は法令の変更があった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

<対応策>

当社グループは、環境負荷の低減を目的としたグリーン調達を推進するためのガイドラインを制定し、さらに専任者を含むチームを置いて活動するなどの環境活動を推進しています。

 

 

(10)知的財産リスク

<リスク>

当社事業に関わる特許、商標、その他の知的財産が十分に確保されないことにより当社事業の差別化や優位性を喪失する場合及び第三者が当社グループの知的財産を不正に用いて類似した事業を行うことを効果的に防止できない場合や当社が第三者の知的財産を侵害して当社事業に影響を及ぼす場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

<対応策>

当社グループでは、知財戦略を担う部門を設置し、製品及びサービスを差別化して優位性を確保するために必要な特許権、商標権、その他の知的財産に関わる権利を各市場国で保有しています。そして、これらの知的財産を侵害する行為には、各国の当局等とも連携して法的手続きを含む各種対応を講じるとともに、知財部門による第三者の知的財産に関する調査及び分析を踏まえて事業活動を推進しています。

 

 

 

(11)情報セキュリティ・サイバーリスク

<リスク>

顧客等の個人情報や機密情報の漏洩等の防止は、会社の信用維持、円滑な事業運営にとって、必要不可欠の事項といえます。万一、情報漏洩等の事態が発生した場合、当社グループの信用低下、顧客等に対する損害賠償責任が発生するおそれがあります。また、当社グループの事業活動において、情報システムへの依存度とその重要性は増大しており、サイバー攻撃やコンピューターウイルスの感染等により情報システムに障害が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

<対応策>

当社グループは、社内規程の制定、社員に対する定期的なセキュリティトレーニング、サイバーセキュリティ対策システムの構築、サイバーセキュリティインシデントに備えた事業継続要領・事業継続計画(BCP)策定等の措置を講じています。また、情報システム全体の可用性の向上を図るとともに、ハード・ソフト両面でサイバーセキュリティ対策等を実施しています。

 

 

(12)自然災害による事業中断リスク

<リスク>

当社グループの日本における主要製造拠点は、南海トラフ巨大地震の予想震源域近傍に集中しています。そのため、巨大地震が発生した場合には当社グループの製造拠点等が直接に被害を受け、操業が遅延又は中断し、業績及び財政状態にも影響を与える可能性があります。

<対応策>

巨大地震発生に対しては被害を最小化するため主要建築物・設備の耐震補強工事・情報システムのクラウド化等を行うと共に、平時から防災体制の整備・強化、災害用資機材・備蓄品の準備、全役職員を対象とした避難訓練や防災組織を対象とした初動対応訓練の実施等の対応を行っています。また、被災後の早期復旧を可能にするための事業継続要領・事業継続計画(BCP)を策定している他、当社グループが保有する建築物、在庫等の損害に対する地震保険にも加入しています。

 

 

(13)パンデミックによる事業中断リスク

<リスク>

新型インフルエンザ等の感染症が国内外でまん延しパンデミック状態となった場合には、多くの従業員が罹患・出社不能となる可能性があります。これにより、当社グループの操業が遅延または中断し、業績及び財政状態にも影響を与える可能性があります。

<対応策>

当社グループは新型インフルエンザ等によるパンデミックに対する事業継続要領・事業継続計画(BCP)を策定し、新型インフルエンザ等の発生段階に応じた対応体制、業務継続方針、感染対応等を定めています。2019年に新型コロナウイルスの感染が拡大した際には、事業継続計画に準じて本社で職域接種を実施した他、感染防止策の一つとして在宅勤務制度の導入やそれを可能とする各種システムツールの整備も実施しました。その他、今回の対応で得られた知見を反映し事業継続要領の見直しも行っています。

 

 

 

(14)人為災害等による事業中断リスク

<リスク>

戦争、テロ、ストライキ、デモ等が発生した場合、当社グループの操業が遅延又は中断する可能性があり、さらに、当社グループの製造拠点等が直接に損害を受けた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

<対応策>

戦争、テロ等の有事の際には、従業員の安全を最優先として、収集した情報に基づき影響範囲や期間を見積もった上で代替生産や代替輸送等の対応策を講じ、当社グループの操業に及ぼす影響の最小化に努めます。従業員によるストライキやデモ等を防ぐため、当社グループの各社では労使関係を円満に保つための労使間の対話を行っています。また、当該事象が発生した場合には迅速に対処して当社グループの操業に及ぼす影響の最小化に努めます。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

※当社グループは当連結会計年度(2024年1月1日から2024年12月31日まで)より、従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値をIFRSベースに組み替えて比較・分析を行っています。

 

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営成績の概要及び分析

当連結会計年度の当社グループを取り巻く環境について、米国はFRBが利下げに転じるなど、政府の景気刺激策が経済を下支えし、底堅い成長を維持しました。一方、欧州は中央銀行の利下げにより個人消費は回復基調にあるものの、ドイツやフランスの経済は停滞しています。加えて中東情勢をはじめとした地政学リスクや中国経済の低迷、資源価格高騰、金融資本市場の変動、米国新政権が及ぼす影響など、先行きの不透明な状況が続いています。

当社においては、半導体の供給が改善し、二輪車のプレミアムモデルの供給が回復した一方、コロナ禍に高まったアウトドアレジャー需要は先進国を中心に落ち着き、マリン事業やRV事業、SPV事業については、需給の調整に取り組みました。

このような経営環境の中、当社は中期経営計画に基づき各事業の戦略を推進するとともに、損益分岐点経営を念頭にコストダウンなどに取り組みました

 

当連結会計年度の売上収益は、コア事業の二輪車のうち、ブラジル、インドにおいて販売台数の増加及び台当たり単価が向上したことにより、2兆5,762億円と前連結会計年度に比べ1,614億円(6.7%)の増収となりました。

営業利益は物価高騰に伴う人件費等販管費の増加、在庫評価減など事業構造の見直しに伴う費用やSPV事業やRV事業の一部固定資産の減損損失などを計上した結果、1,815億円と前連結会計年度に比べ624億円(25.6%)の減益となりました。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益の減少に伴い、1,081億円と前連結会計年度に比べ504億円(31.8%)の減益となりました。

なお、当連結会計年度の為替換算レートは、米ドル152円(前期比11円の円安)、ユーロ164円(同12円の円安)でした。

財務体質については、ROEは9.7%(前期比5.9ポイント減少)、ROICは5.4%(同3.7ポイント減少)、ROAは6.8%(同3.5ポイント減少)となりましたが、中期経営計画期間累計目標はいずれも達成しました。親会社の所有者に帰属する持分は1兆1,616億円(前期末比858億円増加)、親会社所有者帰属持分比率は41.7%(同0.2ポイント減少)となりました。また、フリー・キャッシュ・フロー(販売金融含む)は481億円のプラス(前期比782億円増加)となりました。

 

 

セグメント別の概況

〔ランドモビリティ〕

売上収益1兆7,154億円(前期比1,301億円8.2%増加)、営業利益855億円(同420億円33.0%減少)となりました。

部門別の経営成績の概要は、次の通りです。

二輪車事業では、売上収益1兆5,711億円(前期比1,577億円・11.2%増加)、営業利益1,265億円(同10億円・0.8%増加)となりました。先進国では、欧州主要国の需要が増加し、欧米の販売台数が増加した結果、売上収益3,993億円(前期比420億円・11.8%増加)となりました。新興国では、需要が増加しているブラジル、インドにおける販売台数の増加及び台当たり単価の向上により、売上収益1兆1,718億円(前期比1,157億円・11.0%増加)となりました。二輪車事業全体の営業利益は、新興国でのプレミアムモデルの供給改善により販売台数は増加した一方、物価高騰に伴う人件費や製品保証引当金繰入額等の販管費の増加により前年並みとなりました。

二輪車全体の販売台数は、ブラジル、インドを中心に多くの地域で需要が堅調に推移し、496万台(前期比2.8%増加)となりました。

RV事業(四輪バギー、レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル(ROV))では、売上収益1,058億円(前期比241億円・18.5%減少)、営業損失183億円(前期:営業利益72億円)となりました。需要が前年を下回り、当社の出荷も下回った結果、減収となりました。営業利益は、販売減少ならびにモデルミックスの悪化、競争環境の激化に伴う販促費の増加、また固定資産の減損損失などを計上した結果、減益となりました。

SPV事業(電動アシスト自転車、e-Kit、電動車いす)では、売上収益385億円(前期比36億円・8.6%減少)、営業損失227億円(前期:営業損失52億円)となりました。国内向け電動アシスト自転車は、販売台数が前年を上回りました。一方、e-Kitは、メイン市場である欧州の需要停滞に伴い在庫調整局面が継続し、販売台数が減少した結果、減収となりました。営業利益は、e-Kitの販売減少や海外完成車の販促費の増加、固定資産の減損損失など、事業構造の見直しに伴う費用を計上した結果、減益となりました。

 

 [マリン]

売上収益5,377億円(前期比98億円1.8%減少)、営業利益878億円(同164億円15.7%減少)となりました。

船外機の需要は、主要な市場である米国において、9月に政策金利の引き下げがあったものの、高い金利水準が続いていたことや物価上昇の影響により減少しました。当社販売のうち、新モデルは好調だったものの、船外機全体では減少となりました。ウォータービークルは、金利上昇を懸念した買い控えにより需要が減少した一方、当社の販売台数は、昨年の部品不足やサプライチェーン混乱による供給制約が改善されたことにより増加しました。この結果、マリン事業全体では減収・減益となりました。

なお、当連結会計年度の業績には、ドイツのマリン電動推進機メーカーTorqeedo GmbHの2024年4月~12月の業績を含んでいます。

 

[ロボティクス]

売上収益1,133億円(前期比115億円11.4%増加)、営業損失30億円(前期:営業利益7億円)となりました。

サーフェスマウンターは、先進国の販売台数は減少したものの、中国などアジアにおける販売台数が増加した結果、当社の販売は増加しました。産業用ロボットの販売台数は増加したものの、モデルミックスは悪化しました。また、半導体製造後工程装置は生成AIや先端パッケージ向けの需要が増加し、販売が増加しました。これらの結果、ロボティクス事業全体では増収となりました。営業利益は、製造経費や開発費などの販管費の増加により、減少しました。

 

[金融サービス]

売上収益1,122億円(前期比257億円29.7%増加)、営業利益227億円(同56億円32.6%増加)となりました。

当社の売上収益は、販売金融債権の増加により増収となりました。営業利益は、金利収入の増加に加えて、前期に発生した金利スワップ評価損が当期は評価益に転じたことで増益となりました。

 

 

[その他]

売上収益976億円(前期比39億円4.1%増加)、営業損失115億円(前期:営業損失56億円)となりました。

当社の売上収益は、ゴルフカーの北米での需要増加を背景に販売台数が増加した結果、増収となりました。営業利益は、パワープロダクツ事業関連商品の在庫評価減の影響などにより減益となりました。

 

なお、各セグメントの主要な製品及びサービスは以下のとおりです。

セグメント

主要な製品及びサービス

ランドモビリティ

二輪車、中間部品、海外生産用部品、四輪バギー、レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル、電動アシスト自転車、電動アシスト自転車ドライブユニット(e-Kit)、電動車いす、自動車用エンジン、自動車用コンポーネント

マリン

船外機、ウォータービークル、ボート、漁船・和船

ロボティクス

サーフェスマウンター、半導体製造後工程装置、産業用ロボット、産業用無人ヘリコプター

金融サービス

当社製品に関わる販売金融及びリース

その他

ゴルフカー、発電機、汎用エンジン、除雪機

 

 

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

製品

台数(台)

前期比(%)

ランドモビリティ

二輪車

4,971,871

102.6

四輪バギー、
レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル

48,040

123.1

電動アシスト自転車、電動アシスト自転車ドライブユニット(e-Kit)

291,610

44.5

マリン

船外機

225,960

68.9

ウォータービークル

53,912

101.2

ボート、漁船・和船

6,499

75.7

ロボティクス

サーフェスマウンター、産業用ロボット

33,315

111.1

その他

ゴルフカー

72,373

103.3

 

(注) 主要製品について記載しています。

 

② 受注実績

当社グループは主に見込み生産をしています。

 

③ 販売実績
(a)当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

ランドモビリティ

1,715,384

108.2

マリン

537,739

98.2

ロボティクス

113,262

111.4

金融サービス

112,172

129.7

報告セグメント計

2,478,558

106.8

その他

97,620

104.1

合計

2,576,179

106.7

 

(注) セグメント間取引については相殺消去しています。

 

(b)ランドモビリティの主要製品である二輪車の当連結会計年度における当社グループの販売実績は、次のとおりです。

地域

台数(台)

前期比(%)

日本

72,004

95.1

海外

4,888,768

102.9





北米

82,275

107.8

欧州

225,666

108.1

アジア

3,862,858

99.5

その他

717,969

123.2

合計

4,960,772

102.8

 

 

(3) 財政状態の概要及び分析

当連結会計年度末の総資産は、前期末比2,199億円増加し、2兆7,835億円となりました。流動資産は、販売金融債権の増加や現金及び現金同等物の増加などにより同951億円増加しました。非流動資産は、販売金融債権の増加や固定資産の増加などにより同1,248億円の増加となりました。

負債合計は、社債及び借入金の増加や引当金の増加などにより同1,277億円増加し、1兆5,569億円となりました。

資本合計は、配当金の支払484億円、自己株式の取得200億円、当期利益1,246億円などにより同922億円増加し、1兆2,266億円となりました。

これらの結果、親会社所有者帰属持分比率は41.7%(前期末:42.0%)、D/Eレシオ(ネット)は0.50倍(同:0.47倍)となりました。

 

(4) キャッシュ・フローの状況

〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕

税引前当期利益1,832億円(前期:2,361億円)や減価償却費831億円(同:710億円)、棚卸資産の減少313億円(同:383億円の増加)などの収入に対して、法人所得税の支払額966億円(同:792億円)や販売金融債権の増加622億円(同:1,230億円の増加)などの支出により、全体では1,768億円の収入(同:860億円の収入)となりました。

 

〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕

有形固定資産及び無形資産の取得による支出1,159億円(前期:1,090億円の支出)やTorqeedo GmbHの支配獲得による支出123億円などにより、1,287億円の支出(同:1,161億円の支出)となりました。

 

〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕

短期借入金の増加や社債の発行などがありましたが、配当金の支払、自己株式の増加などにより464億円の支出(前期:885億円の収入)となりました。

 

これらの結果、当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フローは481億円のプラス(前期:301億円のマイナス)、現金及び現金同等物の残高は3,730億円(前期末比:260億円の増加)となりました。当連結会計年度末の有利子負債(リース負債を除く)は9,520億円(同:1,082億円の増加)となりました。

 

(5) 金融サービス事業を区分した経営成績情報

以下の表は金融サービス事業と金融サービス事業以外の事業を区分した要約連結財政状態計算書、要約連結損益計算書及び要約連結キャッシュ・フロー計算書です。これらの要約連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準においては要求されていませんが、金融サービス事業はそれ以外の事業とは性質が異なるため、このような表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つものと考えています。なお、以下の「金融サービス事業以外の事業及び消去」は連結計から金融サービス事業の数値を差し引いたものとしています。

 

要約連結財政状態計算書

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金融サービス事業

金融サービス事業以外
の事業及び消去

連結計

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2023年

12月期

2024年

12月期

2023年

12月期

2024年

12月期

2023年

12月期

2024年

12月期

資産

 

 

 

 

 

 

 

 

現金及び現金同等物

22,134

33,461

324,882

339,537

347,016

372,999

 

 

営業債権及びその他の債権

1,044

251

178,663

177,934

179,707

178,186

 

 

販売金融債権

324,098

372,582

-

-

324,098

372,582

 

 

棚卸資産

-

-

568,596

574,105

568,596

574,105

 

 

その他

32,725

16,120

61,094

94,373

93,819

110,493

 

 

流動資産合計

380,001

422,416

1,133,237

1,185,951

1,513,238

1,608,368

 

 

有形固定資産、のれん及び無形資産

21,696

27,969

476,934

536,343

498,630

564,313

 

 

販売金融債権

316,676

367,709

-

-

316,676

367,709

 

 

その他

8,921

28,898

226,093

214,212

235,015

243,110

 

 

非流動資産合計

347,295

424,577

703,027

750,555

1,050,322

1,175,133

 

資産合計

727,296

846,994

1,836,265

1,936,507

2,563,561

2,783,501

負債

 

 

 

 

 

 

 

 

営業債務及びその他の債務

2,642

2,365

151,476

147,557

154,118

149,922

 

 

社債及び借入金

179,368

380,913

259,505

299,417

438,873

680,330

 

 

その他

39,866

16,457

259,332

301,151

299,199

317,608

 

 

流動負債合計

221,877

399,735

670,314

748,126

892,192

1,147,861

 

 

社債及び借入金

316,960

211,758

87,973

59,884

404,934

271,643

 

 

その他

3,684

19,311

128,390

118,097

132,075

137,409

 

 

非流動負債合計

320,645

231,070

216,364

177,982

537,009

409,053

 

負債合計

542,523

630,806

886,678

926,108

1,429,202

1,556,915

資本

 

 

 

 

 

 

 

 

資本金

49,686

53,153

36,414

32,947

86,100

86,100

 

 

資本剰余金

143

12

64,003

63,363

64,146

63,375

 

 

利益剰余金

106,878

120,827

839,228

858,360

946,106

979,188

 

 

自己株式

-

-

△61,389

△54,064

△61,389

△54,064

 

 

その他の資本の構成要素

28,065

42,194

12,744

44,774

40,810

86,969

 

 

非支配持分

-

-

58,585

65,017

58,585

65,017

 

資本合計

184,773

216,187

949,586

1,010,398

1,134,359

1,226,586

 

負債及び資本合計

727,296

846,994

1,836,265

1,936,507

2,563,561

2,783,501

 

 

 

 

要約連結損益計算書

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金融サービス事業

金融サービス事業以外
の事業及び消去

連結計

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2023年

12月期

2024年

12月期

2023年

12月期

2024年

12月期

2023年

12月期

2024年

12月期

売上収益

86,471

112,172

2,328,288

2,464,006

2,414,759

2,576,179

売上原価

△51,668

△66,156

△1,550,846

△1,688,058

△1,602,515

△1,754,214

売上総利益

34,802

46,016

777,441

775,948

812,244

821,964

販売費及び一般管理費

△18,961

△24,077

△554,345

△618,447

△573,307

△642,525

その他の収益費用(純額)

1,284

766

△1,450

△5,752

△166

△4,985

持分法による投資損益

-

-

5,149

7,062

5,149

7,062

営業利益

17,126

22,705

226,794

158,810

243,920

181,515

金融収益

65

234

9,866

15,445

9,932

15,679

金融費用

△1,883

△34

△15,896

△13,984

△17,779

△14,019

税引前当期利益

15,308

22,904

220,765

160,271

236,073

183,175

法人所得税費用

△3,407

△6,363

△59,786

△52,241

△63,194

△58,605

当期利益

11,900

16,540

160,978

108,029

172,879

124,570

親会社の所有者

11,900

16,540

146,520

91,528

158,421

108,069

非支配持分

-

-

14,458

16,500

14,458

16,500

 

 

要約連結キャッシュ・フロー計算書

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金融サービス事業

金融サービス事業以外
の事業及び消去

連結計

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2023年

12月期

2024年

12月期

2023年

12月期

2024年

12月期

2023年

12月期

2024年

12月期

営業活動によるキャッシュ・フロー

 

 

 

 

 

 

 

税引前当期利益

15,308

22,904

220,765

160,271

236,073

183,175

 

減価償却費及び償却費

3,613

2,705

67,427

80,362

71,041

83,067

 

販売金融債権の増減額(△は増加)

△122,979

△62,199

-

-

△122,979

△62,199

 

その他

9,709

△4,924

△107,813

△22,271

△98,103

△27,196

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

△94,348

△41,513

180,380

218,361

86,031

176,847

投資活動によるキャッシュ・フロー

 

 

 

 

 

 

 

有形固定資産及び無形資産の取得による支出

△9,582

△7,424

△99,447

△108,458

△109,029

△115,882

 

その他

79,954

1,343

△87,051

△14,209

△7,096

△12,865

 

投資活動によるキャッシュ・フロー

70,372

△6,080

△186,498

△122,667

△116,126

△128,748

財務活動によるキャッシュ・フロー

 

 

 

 

 

 

 

借入金の増減額(△は減少)

21,096

71,271

142,734

△28,649

163,831

42,622

 

社債の増減額(△は減少)

8,809

△11,600

19,915

19,915

28,724

8,314

 

その他

14,062

960

△118,086

△98,323

△104,023

△97,363

 

財務活動によるキャッシュ・フロー

43,969

60,631

44,563

△107,058

88,532

△46,426

現金及び現金同等物に係る換算差額

△11,180

△2,912

2,613

21,693

△8,567

18,781

現金及び現金同等物の増減額
(△は減少)

8,812

10,124

41,058

10,330

49,871

20,454

現金及び現金同等物の期首残高

12,995

22,134

283,823

324,882

296,819

347,016

新規連結に伴う現金及び
現金同等物の増加額

325

1,203

-

4,325

325

5,528

現金及び現金同等物の期末残高

22,134

33,461

324,882

339,537

347,016

372,999

 

 

 

(6) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループにおける主な資金需要は、製品製造のための材料・部品等の購入費、製造費用、製品・商品の仕入、販売費及び一般管理費、運転資金、設備投資資金、投融資及び当社製品に関わる販売金融です。

運転資金については返済期限が一年以内の短期借入金で、通常各々の会社が運転資金として使用する現地の通貨で調達しています。設備投資資金については主に資本金、内部留保といった自己資金でまかなうこととしています。

資金の流動性管理にあたっては、適時に資金繰り計画を作成・更新するとともに、手元流動性を適度に維持することで、必要な流動性を確保しています。

当連結会計年度においては、設備投資やTorqeedo GmbHの支配獲得などの活発な投資活動による支出があったものの、船外機やSPVの在庫適正化に伴う棚卸資産の減少による運転資金の減少などにより、フリー・キャッシュ・フローを確保しました。また、株主還元と資本効率の向上を図るために自己株式の取得を行いました。

当社は株主の皆様の利益向上を重要な経営課題と位置付け、企業価値の向上に努めています。株主配当については期末配当1株当たり25円(2025年3月25日開催の第90期定時株主総会にて決議)、2025年は年間配当1株当たり50円、加えて100億円の自己株式の取得を予定しています。

また、2025年の設備投資は1,400億円、研究開発支出は1,550億円を計画しています。

 

(7) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。

当社の連結財務諸表で採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」に記載していますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。なお、当連結会計年度における重要な会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記   4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しています。

 

① 棚卸資産

当社グループは、棚卸資産の、推定される将来需要及び市場状況に基づく時価の見積額と総平均法による原価法(貸借対照表価額は、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しています。)による評価額との差額に相当する陳腐化の見積額について、評価減を計上しています。実際の将来需要又は市場状況が、当社グループ経営者による見積りより悪化した場合、追加の評価減が必要となる可能性があります。

 

② 損失評価引当金

当社グループは、売掛金、販売金融債権及び貸付金その他これらに準ずる債権を適正に評価するため、営業債権及びその他の債権については常に損失評価引当金を全期間の予想信用損失に等しい金額で測定しています。金融サービス事業に係る債権については、報告日ごとに予想信用損失を見積り、予想信用損失に対して損失評価引当金を計上しています。なお、米国内のインフレの急激な進行等の外部環境の変化により債権の信用リスクが増加した場合には、必要に応じて見積りに対し補正を加えています。将来、債権の相手先の財務状況がさらに悪化して支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は追加の損失が発生する可能性があります。

 

③ 非金融資産の減損

当社グループは、減損の兆候のある資産または資産グループごとに将来キャッシュ・フローの見積りを行い、当該資産の減損要否の判定を行っています。資産または資産グループの減損が必要であると判断した場合、帳簿価額が回収可能価額を超える部分について減損損失を認識します。将来、回収可能価額が減少した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

 

④ 繰延税金資産

当社グループは、将来の一定期間における課税所得の見積りやタックスプランニングに基づき、繰延税金資産の回収可能性を検討しています。これらの将来に係る見積りは、市場の動向や経済環境、また、当社グループの事業計画等の変動の影響を受けるため、回収可能性が大きく変動した場合、税金費用が大きく変動する可能性があります。

 

⑤ 製品保証引当金

当社グループは、販売済製品の保証期間中のアフターサービス費用、その他販売済製品の品質問題に対処する費用の見積額を計上しています。当該見積りは、過去の実績若しくは個別の発生予想額に基づいていますが、実際の製品不良率又は修理コストが見積りと異なる場合、アフターサービス費用の見積額の修正が必要となる可能性があります。

 

⑥ 退職給付に係る負債

従業員の退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、長期期待運用収益率、将来の給与水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率などが含まれます。当社及び一部の国内連結子会社が加入する年金制度においては、割引率は優良社債を基礎とした複数の割引率を退職給付の支払見込期間ごとに設定しています。長期期待運用収益率は、年金資産が投資されている資産の種類毎の期待収益率の加重平均に基づいて計算されます。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に計上されるため、一般的には将来期間において認識される収益・費用、計上される資産・負債及び純資産に影響を及ぼします。

確定給付制度の当期勤務費用及び確定給付負債(資産)の純額に係る利息の純額は純損益として認識しています。確定給付制度の再測定額は、発生した期に一括してその他の包括利益で認識し、直ちに利益剰余金に振り替えています。制度の改訂による従業員の過去の勤務に係る確定給付制度債務の増減は、純損益として認識しています。

 

 

8) 並行開示情報

「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年(1976年)大蔵省令第28号。第3編から第6編を除く。以下「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表、要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更は、次のとおりです。

なお、日本基準により作成した要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けていません。

また、日本基準により作成した要約連結財務諸表については、百万円未満を切り捨てして表示しています

 

① 要約連結貸借対照表

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2023年12月31日)

当連結会計年度

(2024年12月31日)

資産の部

 

 

 流動資産

1,517,158

1,628,790

 固定資産

 

 

  有形固定資産

433,886

473,906

  無形固定資産

51,132

70,619

  投資その他の資産

547,437

621,261

  固定資産合計

1,032,457

1,165,787

 資産合計

2,549,615

2,794,577

負債の部

 

 

 流動負債

865,165

1,128,383

 固定負債

524,125

397,671

 負債合計

1,389,291

1,526,054

純資産の部

 

 

 株主資本

1,073,061

1,122,368

 その他の包括利益累計額

28,052

80,402

 非支配株主持分

59,210

65,752

 純資産合計

1,160,323

1,268,523

負債純資産合計

2,549,615

2,794,577

 

 

② 要約連結損益計算書及び要約連結包括利益計算書

要約連結損益計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

売上高

2,414,759

2,576,179

売上原価

1,602,575

1,754,444

売上総利益

812,183

821,734

販売費及び一般管理費

567,706

641,054

営業利益

244,477

180,680

営業外収益

21,418

33,103

営業外費用

30,092

24,945

経常利益

235,803

188,839

特別利益

4,212

3,201

特別損失

4,512

8,712

税金等調整前当期純利益

235,503

183,328

法人税等合計

60,988

47,487

当期純利益

174,515

135,840

非支配株主に帰属する当期純利益

14,350

16,556

親会社株主に帰属する当期純利益

160,164

119,284

 

 

 

要約連結包括利益計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

当期純利益

174,515

135,840

 その他の包括利益合計

47,311

55,204

包括利益

221,826

191,045

(内訳)

 

 

 親会社株主に係る包括利益

202,206

171,635

 非支配株主に係る包括利益

19,620

19,410

 

 

③ 要約連結株主資本等変動計算書

前連結会計年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の
包括利益累計額

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

1,016,475

△13,401

51,225

1,054,298

会計方針の変更による

累積的影響額

△23,025

△23,025

会計方針の変更を反映した

当期首残高

993,449

△13,401

51,225

1,031,272

当期変動額

79,611

41,453

7,984

129,050

当期末残高

1,073,061

28,052

59,210

1,160,323

 

 

当連結会計年度(自 2024年1月1日 至 2024年12月31日)

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の
包括利益累計額

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

1,073,061

28,052

59,210

1,160,323

当期変動額

49,307

52,350

6,542

108,200

当期末残高

1,122,368

80,402

65,752

1,268,523

 

 

④ 要約連結キャッシュ・フロー計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

営業活動によるキャッシュ・フロー

80,150

165,941

投資活動によるキャッシュ・フロー

△116,972

△125,261

財務活動によるキャッシュ・フロー

95,260

△39,006

現金及び現金同等物に係る換算差額

△8,567

18,781

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

49,871

20,454

現金及び現金同等物の期首残高

296,819

347,016

新規連結に伴う現金及び現金同等物の増加額

325

5,528

現金及び現金同等物の期末残高

347,016

372,999

 

 

 

⑤ 要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更

前連結会計年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)

(連結の範囲の変更)

新たに設立した4社、及び重要性が高まった非連結子会社1社を連結の範囲に含めました。また、清算結了により2社を連結の範囲から除いています。

 

(持分法適用の範囲の変更)

新たに出資した関係会社1社を持分法適用の範囲に含めました。また、清算結了により2社、株式売却により1社を持分法適用の範囲から除いています。

 

(会計方針の変更)

(米国財務会計基準審議会会計基準編纂書(ASC)第326号「金融商品-信用損失」の適用)

米国基準を採用する北米子会社において、ASC第326号「金融商品-信用損失」を当連結会計年度の期首から適用しています。これにより、金融商品の測定方法を見直し、また金融資産について予想信用損失モデルによる減損を認識することが求められます。

本会計基準の適用にあたっては、その経過的な取扱いとして認められている会計方針の変更による累積的影響額を適用開始日に認識する方法を採用しています。

この結果、流動資産が368百万円、投資その他の資産が4,265百万円、株主資本が4,634百万円減少しています。

 

(時価の算定に関する会計基準の適用指針の適用)

日本基準を採用する当社及び国内子会社において、「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第31号2021年6月17日。以下「時価算定会計基準適用指針」という。)を当連結会計年度の期首から適用し、時価算定会計基準適用指針第27-2項に定める経過的な取扱いに従って、時価算定会計基準適用指針が定める新たな会計方針を将来にわたって適用することとしました。なお、連結財務諸表に与える影響はありません。

 

当連結会計年度(自 2024年1月1日 至 2024年12月31日)

(連結の範囲の変更)

新たに設立した3社、新たに取得した3社、及び重要性が高まった非連結子会社5社を連結の範囲に含めました。また、吸収合併により3社を連結の範囲から除いています。

 

(持分法適用の範囲の変更)

清算結了により1社、株式売却により3社を持分法適用の範囲から除いています。

 

(会計方針の変更)

(費用計上区分の変更)

当社グループは、当連結会計年度より、従来、売上原価に計上していた研究開発費を販売費及び一般管理費に計上する方法に変更しています。詳細は、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」に記載しています。

当該会計方針の変更は遡及適用され、前連結会計年度の要約連結貸借対照表は、流動資産が31,396百万円、株主資本が22,346百万円減少し、投資その他の資産が9,049百万円増加しています。

また前連結会計年度の要約連結損益計算書は、売上原価が96,833百万円減少し、売上総利益が96,833百万円、販売費及び一般管理費が103,011百万円増加しています。これにより、営業利益、経常利益、税金等調整前当期純利益がそれぞれ6,178百万円、法人税等合計が2,223百万円、当期純利益が3,955百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が3,955百万円減少しています。前連結会計年度の期首の純資産に累積的影響額が反映されたことにより、株主資本の期首残高は、18,391百万円減少しています。 

なお、遡及適用を行う前と比べて、前事業年度の1株当たり純資産額が22.54円、1株当たり当期純利益及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益がそれぞれ3.94円減少しています。

 

 

(9経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報

前連結会計年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)

「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 40.初度適用」をご参照ください。

 

当連結会計年度(自 2024年1月1日 至 2024年12月31日)

(リース)

日本基準では借手としてのリースについてファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、オペレーティング・リースについては通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っていました。IFRSでは借手としてのリースについて当該分類を行わず、基本的にすべてのリースについて使用権資産及びリース負債を認識しています。この影響により、IFRSでは、日本基準に比べ使用権資産が23,609百万円増加し、リース負債が17,852百万円増加しています。また、営業活動によるキャッシュ・フローが7,335百万円増加し、財務活動によるキャッシュ・フローが同額減少しています。

 

(開発費の資産化)

日本基準では費用処理していた一部の開発費用について、IFRSでは一定の要件を満たした部分について資産計上しています。この影響により、IFRSでは、日本基準に比べ無形資産が9,005百万円増加しています。

 

(のれんの償却)

日本基準ではのれんを一定期間にわたり償却していますが、IFRSでは移行日以降償却は行わず、毎年減損テストを実施しています。この影響により、IFRSでは、日本基準に比べ販売費及び一般管理費が666百万円減少しています。

 

5 【経営上の重要な契約等】

特記事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、「感動創造企業」を企業目的とし、世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供することを目指しています。その実現のために、「新しく独創性ある発想・発信」「お客様の悦び・信頼感を得る技術」「洗練された躍動感を表現する魅力あるデザイン」「お客様と生涯にわたり結びつく力」を目指す「ヤマハ発動機らしいモノ創り」に挑戦し続け、人間の論理と感性を織り合わせる技術により、個性的かつ高品質な製品・サービスを提供します。

当社は、こうした「ヤマハ発動機らしさ」が「ヤマハ」ブランドとして様々なステークホルダーの皆様に認識され、生涯にわたって当社の製品・サービスを選んでいただけるよう、努力を続けることが当社の持続的な成長を実現するとともに中長期的な企業価値を高めるものと考えます。

当社は、2030年を見据えた長期ビジョンならびに2025年からの3ヵ年における中期経営計画において、人の可能性を拡げる新技術の獲得と、人の悦びと環境が共生する社会の実現に向けた施策に取り組んでいます。新たに定義したコア技術である「ソフトウエアサービス」「知能化」「エネルギーマネジメント」を強化し、「人機官能」の開発思想のもとで培われてきた「人間研究」、そして「ヤマハ発動機らしいモノ創り」の下支えとなる「基盤技術」を組み合わせることで、「楽しさの追求と社会課題の解決で、みんなの未来を創る」という技術ビジョンの実現を目指します。

 

当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発支出は、1,360億円となりました。各セグメントの主要な製品及びサービス、セグメントごとの研究開発支出及び研究開発活動の成果は、次のとおりです。

 

ランドモビリティ

二輪車、中間部品、海外生産用部品、四輪バギー、レクリエーショナル・オフハイウェイ・

ビークル、電動アシスト自転車、電動アシスト自転車ドライブユニット(e-Kit)、電動車いす、自動車用エンジン、自動車用コンポーネント

当連結会計年度の研究開発支出:877億円

 

主な成果は以下のとおりです。

(二輪車)

・ミドルクラス最強のトラックパフォーマンスの中に最高のエキサイトメントと、様々なスキルやステージでも楽しめるアクセシビリティを併せ持つ、懐の広いモデルとして、888cm³水冷4ストローク・DOHC・直列3気筒4バルブ・FIのCP3エンジンを搭載した新型スーパースポーツ「YZF-R9」の開発。

・新たに車体後方にもレーダーを追加し、後方から接近してくる車両を検知しミラー内に表示する機能「BSD(Blind Spot Detection)」を搭載し、クラッチレバーやシフトペダルの操作が不要の自動変速トランスミッション「Y-AMT(Yamaha Automated Transmission/ワイ・エーエムティ)」を新たに備え、先行車に追従走行する機能「ACC(Adaptive Cruise Control)」との組み合わせによりライダーの疲労負担を軽減し、スポーツツアラーとしての走行をより快適にした「TRACER9 GT+」の開発。

 

(電動アシスト自転車)

・毎日使う高校生のためのデザインと機能を兼ね備えた通学向けの新型電動アシスト自転車「PAS ULU(パス ウル)」の開発。

・フレームを刷新し、夫婦共用のしやすさや低重心化を実現した、20型小径子ども乗せ電動アシスト自転車「PAS babby(パス バビー)」、「PAS kiss(パス キッス)」の開発。

 

(電動車いす)

・車いすユーザーや介助者の視点で機能を高めた、手動車いすに後付けで装着する電動化ユニット「JWG-1」を開発。

 

(自動車用エンジン及び中間部品)

・Lola Cars LtdとABB FIA フォーミュラE世界選手権における、高性能電動パワートレイン開発・供給に関するテクニカルパートナーシップ契約を締結し、電動パワートレイン(動力ユニット)を開発。今シーズンより「ローラ・ヤマハABTフォーミュラEチーム」として参戦開始。

・VTホールディングス株式会社傘下の英国Caterham EVo Limitedが量産・市販化に向けて開発を進めている新型EVスポーツクーペ・プロジェクトに、パートナーとして参画。

 

 

マリン

船外機、ウォータービークル、ボート、漁船・和船

当連結会計年度の研究開発支出:302億円

 

主な成果は以下のとおりです。

(船外機)

・既存モデルF300Fからストロークの拡張や、新たな燃料噴射制御技術と吸気バルブ大型化によって、低速域からの大きなトルク特性を実現するとともに、旧モデルF350Aから約20%の大幅な軽量化も両立した350HP船外機「F350B/FL350B」を開発。

 

(ウォータービークル)

・水上オートバイ「ウェーブランナー」の「FX Cruiser HO」及び「VX Cruiser HO」の2モデルに採用されている従来のHOエンジンに対して、排気量を拡大するとともに吸排気や燃焼室形状の見直しにより、自然吸気エンジンでは、業界No.1となる高出力化(旧エンジン比 約15%の向上)を実現。また、排気系の改善でノイズが低減し、メンテナンス性も改善。さらに、エンジンヘッドには加飾を伴うクロス・バーを施し、自然由来のセルロース材を世界で初めて採用するなど環境にも配慮。

 

(ボート)

・インボードエンジン(船内機)を搭載したオフショア・フィッシングボート「DFRシリーズ」において、トヨタ自動車株式会社と共同開発したインボード艇専用の操船支援システム「Y-FSH(ワイ・フィッシュ)」を開発。

・日清紡ホールディングス株式会社と協業し、航行支援アプリ「JM-Safety」(ジェイマリン・セーフティ)に、PWC専用モードを追加し、国内初のPWC航行支援アプリを導入。また、同アプリを「ヤマハマリンクラブ・シースタイル(Sea-Style)」において、レンタルボートで活用。

・YFRシリーズの最大スケールを誇るフラグシップとして、ボートで釣りを楽しみたい人々に、出港から移動、実釣、休息、帰港に至るまで、より充実した"釣り時間"の提供をコンセプトとした新型フィッシングボート「YFR330」を開発。

 

ロボティクス

サーフェスマウンター、半導体製造後工程装置、産業用ロボット、産業用無人ヘリコプター

当連結会計年度の研究開発支出:122億円

 

主な成果は以下のとおりです。

(サーフェスマウンター)

・インテリジェントファクトリーを体現する次世代型プラットフォーム「YRシリーズ」のディスペンサーとして、業界最高水準の塗布性能を実現しながら、扱いやすく面積生産性にも考慮した高速ディスペンサー「YRM-D」の開発。

・エントリーモデル「YSM10」の後継機として、小型・高速・省スペースに部品対応力と汎用性を兼ね備え、1ビーム1ヘッドクラス最高水準の搭載能力(注2)52,000CPH(注3)を実現した次世代小型高速モジュラー「YRM10」の開発。

・従来機比2倍以上となる2,500万画素の高解像度カメラと最新の高性能CPU・GPUの採用により、画像処理能力を大幅に高めた3Dハイブリッド光学外観検査装置「YRi-V TypeHS」の開発。

 

(半導体製造後工程装置)

・優れた生産性、成形精度及び汎用性に定評がある「GTMシリーズ」の後継機として、幅広い半導体パッケージに対するプロセス対応能力の高さを維持、拡大したうえで、生産能力と成形精度を向上させ、さらに当社グループの最新の成形技術を搭載した、オートモールディング装置「MS-Rシリーズ」の開発。

・プラットフォームを一新し、コンパクトサイズで面積生産性を向上した新世代高速ワイヤボンダ「UTC-RZ1」の開発。

 

 

(産業用ロボット)

・ロボットコントローラ「RCX340」で制御するスカラロボット及び3軸以上の直交ロボットを対象とした、速度監視・領域監視機能など、認証機関TÜV SÜDが定義した安全機能を提供するオプションユニット「RCX3-SMU」の開発。

・アーム長1,200mm・最大可搬質量50kgで業界最速レベル(注4)のサイクルタイムを実現したスカラロボット「YK1200XG」と従来のコンパクト設計ながら最大出力電流を増大し、「YK1200XG」の重量物搬送の高速性を安定的に支える専用コントローラ「RCX341」の開発。

 

注2:表面実装機における最適条件下での搭載能力(CPH)比較。

注3:CPH (Chip Per Hour):単位時間当たりで実行可能な搭載部品の総数。各種条件での処理能力を示す。

注4:アーム長1,200mmのスカラロボットにて。2024年9月現在当社調べ。標準サイクルタイム0.92sec(40kg搬送時)。

 

その他

ゴルフカー、発電機、汎用エンジン、除雪機

当連結会計年度の研究開発支出:59億円

 

 主な成果は以下のとおりです。

(ゴルフカー)

・水素エンジン搭載ゴルフカーのコンセプトモデル「DRIVE H2」を開発。米国・フロリダ州で開催されたゴルフ業界最大級イベント「PGAショー2024」に世界初公開として出展。