文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 当社グループを取り巻く経営環境
当社グループを取り巻く市場環境をみると、国内では、政府による「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」や「改正国土強靱化基本法」に加え、「防災庁」設置構想や次期国土強靭化中期計画の策定等、公共事業分野において引き続き安定的な市場機会が見込まれます。また、国内外ではグリーンエコノミーへの政策推進の動き等が継続しており、資源循環や生物多様性ビジネス市場の拡大も期待されます。更には、2050年までにカーボン・ニュートラルを目指す政府方針のもと、洋上風力発電等の再生可能エネルギー分野の市場拡大も予想されます。
こうした点を踏まえ、当社グループの各事業の市場環境を概観すると以下のようになります。
国土強靭化に向けた国内公共事業は引き続き安定的に推移することが見込まれ、高度成長期に建設された各種社会インフラの老朽化を背景に、公共部門を中心にインフラの補修・維持管理や建替え等に関する需要も今後継続することが予想されます。また、近年の地震や台風・豪雨等による自然災害の頻発化や激甚化により、そうした災害からの復旧工事の需要や災害防止のための需要、災害発生の予兆把握に関する需要などが高まる傾向にあります。こうした、国土強靭化や防災・減災に対する意識の高まりを背景に、同事業関連の需要は今後も底堅く推移していくことが期待されます。
環境分野においては、環境に関する社会的関心・意識が強まるなか、当社グループが実施する環境アセスメントやアスベスト対策サービスなどに加え、脱炭素社会や資源循環型社会の形成に繋がる業務への需要は今後一層高まっていくことが予想されます。また、自然災害の多発化や資源循環という観点からも、当社グループが提供する災害廃棄物処理支援関連サービスへの需要が堅調に推移することが見込まれます。
一方、エネルギー分野では、世界的な脱炭素化の流れや政府による「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」策定に伴い、再生可能エネルギーへの関心は引き続き高く、当社グループの洋上風力発電関連支援サービス等に対する需要は今後も高まっていくことが予想されます。また、政府の原子力政策の見直しに伴い、原子力発電所関連の地質調査などの需要も高まることが期待されます。
地政学的リスクやトランプ米大統領再選等により不透明さが増すものの、高い経済成長を続ける東南アジアや中東地域をはじめ、新興国では都市化が加速し、インフラ整備や更新の需要が活発化することが見込まれます。また、人口増加や工業化の進展に伴い、資源・エネルギーへの拡大需要も予想されます。こうした需要を背景に、インフラ整備やメンテナンス、防災、資源・エネルギー開発に関わる製品・サービスを展開する当社グループ企業により、各国経済・社会基盤強化への貢献が期待されます。
(2) 経営方針並びに対処すべき課題
当社グループは、こうした経営環境を踏まえ、長期ビジョン『OYO サステナビリティ ビジョン 2030』および中期経営計画『OYO 中期経営計画2026』を策定し取り組んでおります。『OYO サステナビリティ ビジョン 2030』のアクションプランとなる『OYO 中期経営計画2026』の遂行により、社会・環境価値と事業収益を一層向上させ、持続可能な社会の実現に貢献していくこと、2030年のありたい姿を目指してまいります。
① 長期ビジョン:『OYOサステナビリティビジョン2030』
応用地質グループは、人と地球の課題を解決し、持続可能な社会を実現するために、これまで、培ってきた技術資産に新たな創造的技術を加え、安全・安心を技術で支えるサービスを展開してまいりました。これからも「サステナブル経営」を推進し、当社グループの多様な経営資源を最大限に活用することで、近年ますます多様化する地球規模の社会課題に対応してまいります。
そこでSDGs最終年の2030年における人と地球の未来に対する社会課題を抽出し、当社グループが取り組むべきことを明確にするために『OYO サステナビリティ ビジョン 2030』を策定し遂行しています。
ありたい姿を①100年企業に向けた持続的成長、②社会課題の解決に貢献する企業、③「働きやすさ」と「働きがい」を実現する企業として定め、その実現に向けて特定した八つのマテリアリティごとに当社グループが対応できる社会課題や貢献できることを整理し取り組んでいます。
② 中期経営計画:『OYO中期経営計画2026』の位置づけ
応用地質グループは、『OYO サステナビリティ ビジョン 2030』のアクションプランとして中期経営計画『OYO 中期経営計画2026』を位置付け、①セグメント戦略の推進、②バランスシートの最適化、③サステナブル経営の強化を3つの基本方針とし、社会・環境価値と事業収益性を向上させ、持続可能な社会実現への貢献を目指して取り組んでいます。
③ 『OYO 中期経営計画2026』基本方針等
A.セグメント戦略の推進
a. セグメントの再編
・市場特性に即した組織・セグメントの再編による事業の効率化と収益性向上
(新セグメント:①防災・インフラ、②環境・エネルギー、③国際)
・ グループシナジーの最大化と製品・サービスの見直しによる企画開発・販売力の強化
b. 未来創造・成長投資
・市場ニーズに即したイノベーション開発投資
B.バランスシートの最適化
a. キャッシュアロケーション
・ノンコア資産の売却、売上債権回転期間の短縮化推進、グループ内余剰資金の活用等による資本効率性の向上
b. 株主還元施策
・営業キャッシュフローと余剰資金活用による株主還元施策の実施
連結配当性向50%以上、且つDOE2%以上を原則とした配当実施
機動的な自己株式取得の継続
C. サステナブル経営の強化
a. 人材戦略・働き方改革
・セグメント戦略に沿った人材ポートフォリオの拡充
・「働きやすさ」と「働きがい」の実現
b. 気候変動リスク対応
・ 組織活動ならびに事業活動による脱炭素(GHG排出量削減)の取組み
c. ガバナンス・コンプライアンス
・グループガバナンスの強化
・株主とのエンゲージメントの強化
・コンプライアンスの徹底
D.「資本コストや株価を意識した経営」の実現に向けた対応
a. 2026年度目標:ROE6%以上、営業利益率8%以上とする。
・セグメント戦略の推進を通した事業収益性の向上
・バランスシートの最適化を通した資産/資本効率性の向上、資本構成の最適化
・株主エンゲージメント強化やESG開示情報拡充を通した資本コストの低減
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、以下の通りです。
応用地質グループは、経営理念として、「人と自然の調和を図るとともに、安全と安心を技術で支え、社業の発展を通じて社会に貢献する」を掲げて、事業活動、組織活動を行っています。当社グループが展開する3つの事業セグメント(防災・インフラ事業、環境・エネルギー事業、国際事業)のすべてが、サステナビリティに深く関わっています。事業活動を通じてお客さまにソリューションを提供することが、持続可能な社会の形成に貢献し、社会・環境価値を高めています。
※事業活動:お客様、取引先・協力企業など当社グループ外部に向けた活動
※組織活動:当社グループ組織内の活動
なお、2024年2月に、2030年を見据えた長期ビジョンである「OYOサステナビリティビジョン2030」および、2024年から2026年までのアクションプランである「OYO中期経営計画2026」を策定しており、当社ホームページに掲載しております。
本項では、始めにサステナビリティ全般について、「ガバナンス」および「リスク管理」としての経営管理の枠組み、「戦略」としてマテリアリティの取り組み概要を説明し、次に個別テーマである「気候変動」および「人的資本」についての具体的な「戦略」および「指標・目標」を概説いたします。
当社グループは、当社社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、その事務局およびグループ全体のサステナビリティ経営推進の調整を行うサステナビリティ推進部を設置しています。サステナビリティ推進委員会は、当社グループのサステナビリティに係わるリスクと機会についての事業方針や活動方針と施策、情報開示などの審議・決定を行っています。重要事項については、年2回以上の頻度で取締役会に報告を行います。
当社社長を全社リスク統括責任者とするリスク管理体制を構築しています。全社リスク統括責任者が、リスク管理規程に従い、当社グループを統括して、グループ全体の経営成績、株価および財政状態などに影響を及ぼすリスクを抽出、共有、監視するとともに、取締役会に適宜報告を行っています。リスク発生の可能性を認識した上で、可能な限り発生の防止に努め、また発生した場合には的確な対応を行います。
リスク管理体制の枠組みの下、サステナビリティ推進委員会を中心にサステナビリティに係わるリスクの管理に取り組んでいます。
当社グループのサステナビリティに係わるリスクと主な対応については、当社グループの「事業等のリスク」と同等と考えております。詳細は「3 事業等のリスク」をご参照下さい。
当社グループでは、SDGsや社会課題への貢献、経営ビジョンの実現に向けて、2021年にマテリアリティを特定しました。社会環境の変化、事業特性等を考慮し、当社グループのサステナブル経営におけるマテリアリティを「事業活動」と「経営基盤となる組織活動」に分けて、合計で八つ特定しています。
<当社グループのマテリアリティ>
当社グループは、気候変動を含む環境の課題や、気候変動に伴う自然災害の激甚化への対応を重要な経営課題の一つと認識しています。2019年12月、金融安定理事会(FSB)「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)※」の提言に賛同を表明し、TCFDのフレームワークに基づいた重要情報を開示しています。
「気候変動への取り組み (TCFD提言に基づく情報開示)」の詳細については、当社ホームページの「気候変動への対応」に掲載しております。
※ TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):2015年12月に金融安定理事会(FSB)により設立された、気候関連情報開示を企業へ促す民間主導のタスクフォース。なお、TCFDは、2023年10月をもって解散しており、企業の情報開示に関する監督業務は国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)に移管されております。
当社は、今後、日本におけるサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が示すフレームワークに基づいた情報開示の充実化に向けた準備を進めてまいります。
当社では、1.5℃、2℃、4℃の気候変動関連の3つシナリオにおいて、2030年および2050年に発生する事象、当社に影響のあるリスクおよび機会を検討、想定しました。
応用地質単体における気候変動関連のリスクおよび機会についての影響評価を行いました。リスク管理を通じて、多様化、広域化、激甚化する気候変動に関するリスクや機会に対応していきます。特に、機会については、当社のすべての事業活動が深く関わっており、事業活動を通じてお客様にソリューションを提供することが、持続可能な社会の形成に貢献し、社会・環境価値を高めることになります。
国内グループ会社、国際グループ会社についての影響評価を、引き続き行う予定です。
<応用地質単体の事業に与える影響度が「大」となる主な要因と対応>
※1 短期:3年以内、中期:3年超~10年以内(2030年を含む)、長期:10年超(2050年を含む)
※2 当社グループの商品サービスのGHG削減貢献量の算定を行い、適宜、当社ホームページにて開示
いたします。GHG削減貢献量(以下、「削減貢献量」)とは、これまで使用されていた製品・サ
ービスを、GHG(温室効果ガス)の削減を促進する自社製品・サービスに代替することで、サプ
ライチェーン上の「GHG削減量」に対する貢献度を定量化する考え方です。当社グループは、マ
テリアリティに「脱炭素社会、持続可能な循環型社会の形成」を掲げ、事業活動を通じてお客
さまに低炭素のソリューションを提供することで、脱炭素社会の形成に貢献し、環境価値を高
めていきます。
当社グループは、気候変動の関連リスクが経営に及ぼす影響を評価・管理するため、GHG(温室効果ガス:CO2)排出量総量を指標とし、中長期のGHG排出量の削減目標を設定しています。
<GHG(CO2)排出量の削減目標と実績(2024年)> (単位:t-CO2)
※Scope3のCategory8、10、14および15については、該当はありません。
※2024年の排出量には、近年買収した日本ジタン株式会社および三洋テクノマリン株式会社の排出量を追加しています。
●TNFDの中核開示指標
TNFD低減によると、まず自社にとっての優先地域を特定し、そのうえで当該特定地域に関する指標を開示することが求められています。当社は提言に則って優先地域の特定を検討し、TNFDが求める指標の開示を検討してまいります。
なお、当社ホームページの「ESGデータ E:環境関連」に下記の項目を含む環境データを掲載しております。
当社グループは、ESGの取り組みにおいて、人的資本、すなわち人こそが価値向上の源泉であると考えています。社員の力を結集することでお客様と社会に価値を提供し、サステナブルな社会の実現に貢献することを目指しています。また、多様な人材は当社グループの成長やイノベーションの源泉として極めて重要な要素であると認識しています。そうした人材重視の観点から、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を含め、人材の多様性の確保や、安全で働きがいのある職場づくりなどを推進しています。
当社グループは、ダイバーシティはイノベーションの源泉であり、多様な人材を受け入れ、社員一人ひとりが持つ個性を活かしながら事業活動を行っていくことが、企業価値向上のために必要不可欠と考えます。こうした考えに基づき、D&Iに関する様々な取り組みを継続的に進めています。
●女性活躍推進
職場における女性活躍の推進は、事業の持続的発展の観点からも中長期的な経営上の重要な課題と捉え、男女差のない採用活動の強化や女性管理職育成に向けた研修の充実、女性が働きやすい職場づくりなどに取り組んでいます。
●多様性を重視した採用活動と職場環境づくり
性別や国籍、障がいの有無によらない採用活動を続けるとともに、多様性を有する社員がさまざまな分野、職位で活躍できるよう職場環境づくりを推し進めます。また、中途採用者の管理職への登用にも取り組んでいます。
当社は、2021年に健康経営宣言を表明し、経営理念である「人と自然の調和を図るとともに安全と安心を技術で支え社業の発展を通じて社会に貢献する」を実現するために、健康経営に取り組んでいます。健康経営の取り組みは、「健康経営戦略マップ」をもとに、健康投資と健康投資効果を定量的に把握し、PDCAサイクルを回すことで効果的に進めています。「健康経営戦略マップ」の詳細については、当社ホームページの「健康経営戦略マップ」に掲載しております。
また、2023年4月に当社グループの健康管理センターを設置しました。健康管理センターには、常勤の看護師と非常勤の産業医が所属しており、グループの健康経営推進、健康課題の解決に取組んでいます。
当社グループは、「社員の安全は最優先」と考えています。2021年に策定した「安全方針」に基づき、グループの全社員並びに協力会社を含めた共に働くすべての関係者が一体となって、「労働災害ゼロ」を目指して安全活動を進めています。「安全方針」の詳細については、当社ホームページの「安全方針」に掲載しております。
<応用地質グループ 安全方針の概要>
●労働安全活動の推進体制
当社グループでは、労働安全活動の推進体制を構築しています。具体的には、事業統轄本部長を安全統括責任者とし、各事業所に安全委員会を組織し、協力会社と連携して事故防止に努めています。また、グループ会社における安全については、事業統轄本部、国内グループ本部、国際グループ本部が支援を行う体制としています。
●事故リスク低減
当社は、労働安全活動の一環で、車両に通信型ドライブレコーダーを設置し、車両の運行データを収集し、分析しています。ヒヤリハット、社員の運転特性などを確認し、運転リスクの低減につなげています。また、交通事故削減の取り組みとして、バスや電車等の公共交通機関の利用促進、現場近くの駐車場借り上げなどにより、運転機会や運転距離の削減を推進しています。
●OYO安全体験センター
社員、グループ会社、協力会社がいつでも利用、体験できる、研修施設(OYO EXPERIENCE CENTER)を当社つくばオフィス敷地内に設置し、現物確認による統一した一定レベルの教育の実施、浸透により、労働災害ゼロを目指しています。
当社グループの人材マネジメントに関する基本的な考え方を「人材育成方針」として制定しています。詳細については、当社ホームページの「人材育成方針」に掲載しております。
当社では、社員が能力を高め、現場で力を発揮できるように、キャリア教育、テーマ別教育、専門教育などを実施しています。キャリア教育では、社員がキャリアアップを実現できるように、行動原則や業務遂行に必要なスキル、マネジメントについて学ぶ研修を実施しています。
※参加者数は、グループ会社の参加者を含む。
※女性社員割合および女性管理職割合とも執行役員を除く正社員
※1 第3期(2018~2023年度)特定健康診査等実施計画期間における所属する保険者の種別目標
※2 厚労省「ストレスチェック制度実施マニュアル (2021)」より
※3 厚労省「過労死等防止対策白書 (2021)」より
④人的資本投資
当社グループの経営成績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす主要なリスクは以下のようなものがあります。
当社グループにはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、可能な限り発生の防止に努め、また発生した場合の的確な対応に努めていく方針であります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの各事業において、公共事業領域は依然として当社の主要市場の一つであり、国及び地方公共団体等は主要顧客になります。国及び地方公共団体等の財政状況の悪化や事業量の縮小に伴う発注量の減少、調達方式の変更、並びに不測の事態に伴う指名停止措置等により、当社グループの営業成績に影響を及ぼす可能性があります。当社は、公共事業に依存した従来型のビジネスモデルからの脱却を進めることで、そうしたリスクの抑制に努めています。
当社グループは各事業において各種調査業務等の実施や計測機器等の製造・販売を行っていますが、こうした成果品に関して瑕疵(契約不適合)が発生し、多額の損害賠償請求を受けた場合には業績等に影響を及ぼす可能性があります。当社は、品質マネジメントシステム(ISO9001)等の導入や厳格な照査等の実施により、品質の確保と向上に努めるとともに、成果品に関する瑕疵責任が発生した場合に備えて損害賠償責任保険に加入することにより、そうしたリスクの低減に努めています。
当社グループの各事業は、国内外で事業を展開しています。各事業における海外での事業は、主に北米地区やシンガポールを拠点とした海外グループ会社が、現地通貨建てで取引しているため、為替変動により財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社は、必要に応じて為替予約等の措置を検討することで、そうしたリスクの抑制に努めています。
(4) 気候変動や自然災害等に関するリスク
当社グループの各事業は、地震や気候変動に伴う台風・豪雨・河川氾濫等の自然災害、火災等の不測の災害に見舞われた場合には、生産設備やデータの損傷・喪失、人的リソースの喪失等による事業活動の縮退、生産能力の低下などの影響を受ける可能性があります。また、炭素税の導入や環境負荷の少ない設備導入等により事業運営コストが増加する可能性もあります。当社は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとするカーボン・ニュートラルを掲げながら気候変動対策に取り組むと同時に、災害等の発生を想定した事業継続計画(BCP)の作成とその定期的な点検・訓練の実施や、気候変動が事業遂行に与える影響を継続的に評価・モニタリングすることで、そうしたリスクを最小限に抑制するよう努めています。
感染症の世界的流行(パンデミック)が発生した場合には、当社グループの事業に対する需要減少、サプライチェーンにおける納品遅延や部材不足、調達コスト増加などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。当社は、各種リスクシナリオを想定しながら、そうした影響を最小限に抑える対応を取っております。
(6) 国際紛争・テロ行為に関するリスク
当社グループにおける海外での事業は、新興国や途上国における社会資本整備事業、開発事業を主要な市場と位置付けておりますが、これらの国では、国際紛争やテロ行為が発生する場合があり、紛争活動や武装行為に巻き込まれた場合には、事業の中止もしくは停止など、業務遂行に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、長期化するウクライナ情勢により、エネルギー価格や原材料価格の高騰など、世界経済への影響も継続しています。当社は、随時、諸外国の治安関連情報や最新の経済関連情報の収集を行うことで、そうしたリスクの抑制に努めています。
(7) 知的財産等に関するリスク
当社グループの各事業は、専門技術を用いた各種サービスや製品を提供するとともに、事業を展開する各国において商標登録等も実施していますが、将来的に知的所有権などの使用差し止めや、商標の使用停止、あるいは損害賠償を請求された場合には業績等に影響を及ぼす可能性があります。当社は、適切な知財管理を行うための組織を設置することにより、そうしたリスクの低減に努めています。
(8) 資源価格変動に関するリスク
当社グループの海外子会社の中には、資源探査用の機器やシステムを販売している会社があります。資源価格の低迷や、資源開発市場の縮小などが発生した場合には、子会社の業績等に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクを低減するため、新しい市場開拓を通して資源依存度の低減を図るなど、事業ポートフォリオの見直しに努めています。
(9) データの偽装・改ざん・流用に関するリスク
当社グループの各事業の遂行過程において、社内ルールに反して各種データの偽装や改ざん、及び過去データ等の流用が発生した場合には、信用失墜や損害賠償請求などが発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社は、コンプライアンス教育の徹底や業務監査室による業務プロセスの検証や、業務マニュアルの見直しなどを進めることで、こうしたリスクの顕在化の抑制に努めています。
(10) ITシステムのセキュリティ管理に関するリスク
当社グループの各企業は、ITシステムを活用した業務処理並びに情報管理を行っています。コンピュータウイルスや悪意ある第三者の不正侵入により、ITシステムの停止やランサムウェア攻撃、情報漏洩等が発生した場合には、業務遂行に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社は、ITシステムの安全性及び情報セキュリティの強化に努めるとともに、関連する諸規定を整備し、ランサムウェア攻撃に対する防御策強化や外部からの不審メールに対する定期的な訓練を行うなどリスクの低減に努めています。
当社グループの安定的成長を持続させるためには、高度な専門性を有する優秀な人材の確保・育成が必要不可欠です。しかしながら、少子高齢化による労働人口の減少が進む中で、こうした優秀な人材の確保・育成が進まない場合には、業務遂行や業績等に影響を及ぼす可能性があります。当社は、社員の健康保持・増進活動を組織で支える健康経営に取り組むと同時に、働きやすい職場の形成や従業員のエンゲージメント向上、教育制度の充実、安定的な新卒者採用並びに優秀な中途採用者の確保等を推進することにより、そうしたリスクの低減に努めています。
(12) 法的規制に関するリスク
当社グループは、会社法、金融商品取引法、税法、労働法、独占禁止法及び建設業法等の法規制を始め、品質に関する基準、環境に関する基準、会計基準等、事業展開している国内外のさまざまな法規制の適用を受けており、社会情勢の変化等により、将来において、改正や新たな法的規制が設けられる可能性があります。その場合には当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社グループが直接的または間接的に関係する取引の一部が法規制等に違反していると規制当局が判断した場合には、課徴金等の行政処分や社会的な信用の失墜等の影響を受ける可能性があります。当社は、随時、関連する法規制の最新情報や改正動向に関する情報収集に努めるとともに、社内での法令順守教育を徹底することでリスクの抑制に努めています。
(13) 保有資産の減損リスク
当社グループは、長期的な取引関係の維持などを目的として株式等の有価証券を保有しており、保有する有価証券の大幅な市場価格の下落、当該企業の財政状態の悪化等があった場合、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは国内外の事業拠点の不動産を所有していますが、不動産価格の下落等があった場合、「固定資産の減損に係る会計基準」を適用し、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
繰延税金資産は、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断して計上しています。将来の課税所得の見積り等に大きな変動が生じた場合、あるいは制度面の変更等があった場合には繰延税金資産が減少し、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
売上高は、740億8千5百万円(前期比112.9%)と前連結会計年度から84億8千2百万円増加いたしました。
売上総利益は、229億7千9百万円(同118.0%)と前連結会計年度から35億8百万円増加いたしました。
販売費及び一般管理費は、185億9千9百万円(同111.8%)と前連結会計年度から19億7千万円増加いたしました。
営業利益は、43億8千万円(同154.1%)と前連結会計年度から15億3千8百万円増加いたしました。売上高営業利益率は5.9%となり、前連結会計年度から1.6ポイント増加いたしました。
営業外損益は、9億3千6百万円の利益となり、前連結会計年度から1億8千3百万円増加いたしました。この結果、経常利益は前連結会計年度に比べ17億2千1百万円増加し、53億1千6百万円となりました。
特別損益は、2億1百万円の利益となり、前連結会計年度から3億6千6百万円減少いたしました。この結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べ13億5千4百万円増加し、55億1千8百万円となりました。
当連結会計年度における税金費用は、14億5百万円と前連結会計年度に比べ12億9千8百万円増加いたしました。また、当連結会計年度の非支配株主に帰属する当期純利益は1億2百万円(同204.3%)となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は40億1千万円となり、前連結会計年度に比べ3百万円増加いたしました。
当社グループの事業セグメント別の業績は、以下のとおりです。なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しております。詳細は、「第5経理の状況1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
(防災・インフラ事業)
受注高は293億3百万円(前期比120.4%)となりました。売上高は268億9千4百万円(同107.6%)と前期を上回り、営業利益も10億6千9百万円(同204.6%)と増益となりました。
(環境・エネルギー事業)
受注高は314億4百万円(前期比119.3%)となりました。売上高は、286億5千8百万円(同119.8%)と増収となり、営業利益も29億9百万円(同124.5%)と増益となりました。
(国際事業)
受注高は192億3千万円(前期比118.8%)となりました。売上高は、185億3千2百万円(同111.0%)と増収となり、営業利益も4億2百万円(前期は2千6百万円の営業利益)と増益となりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ61億7千万円増加し、1,068億3千7百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ19億6千万円増加し、764億6千6百万円となりました。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ42億1千万円増加し、303億7千万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ25億5百万円増加し、280億7千8百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ36億6千4百万円増加し、787億5千8百万円となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ63億1千3百万円減少(前期は36億3千3百万円の資金増)し、124億1千4百万円(前期比66.3%)となりました
営業活動によるキャッシュ・フローは、営業活動の結果、得られた資金は13億5百万円(前期は8億7千万円の資金増)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資活動の結果、使用した資金は26億6千2百万円(前期は5億9千8百万円の資金増)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、財務活動の結果、使用した資金は52億8千6百万円(前期は19億6千1百万円の資金増)となりました。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループが中期経営計画 「OYO 中期経営計画2026」 で目標としている経営指標における実績値は次のとおりであります。
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善や設備投資の持ち直しに加え、政府による各種政策効果もあり、景気は緩やかな回復基調を維持しました。一方で、地政学的リスクやトランプ米大統領再選をはじめとした各国政策の不透明感等、不安定な国際情勢の下、原材料・エネルギー価格の高止まりや物価上昇等による影響を引き続き注視していく必要があり、先行きは依然として不透明な状況が続いています。
当社グループを取り巻く市場環境は、社会インフラの老朽化や自然災害の激甚化・頻発化に対応する国土強靭化対策等により公共投資は底堅く推移し、防災・インフラ事業においては良好な市場環境が継続することが予想されます。また、世界的な気候変動に対する関心が高まる中、カーボン・ニュートラルに貢献する再生可能エネルギー市場が急速に拡大しているほか、資源循環や生物多様性確保への動きも活発化するなど、環境・エネルギー事業分野での一層の市場機会の広がりも期待されます。
このような中での当社グループの当連結会計年度の業績は、受注高は799億3千8百万円(前期比119.6%)となりました。売上高は740億8千5百万円(同112.9%)、営業利益は、43億8千万円(同154.1%)と増収増益の結果となりました。経常利益は53億1千6百万円(同147.9%)、親会社株主に帰属する当期純利益は40億1千万円(同100.1%)となりました。
(売上高)
売上高は、740億8千5百万円(前年同期比112.9%)と前連結会計年度から84億8千2百万円増加いたしました。これは、洋上風力関連事業を中心に当社の売上高が増加したことに加え、当期から新たに連結対象に加わった国内子会社および昨年買収したシンガポール子会社の寄与等により、売上高が増加したことによります。
(売上総利益)
売上総利益は、229億7千9百万円(前年同期比118.0%)と前連結会計年度から35億8百万円増加いたしました。これは、上記のとおり売上高が増加したことによるものです。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は、185億9千9百万円(前年同期比111.8%)と人件費の増加などにより前連結会計年度から19億7千万円増加いたしました。営業利益は、販売費及び一般管理費の増加はありましたが、売上高の増加により、43億8千万円(前年同期比154.1%)と前連結会計年度から15億3千8百万円増加いたしました。売上高営業利益率は5.9%となり、前連結会計年度から1.6ポイント増加いたしました。
(営業外損益、経常利益)
営業外損益は、9億3千6百万円の利益となり、前連結会計年度から1億8千3百万円増加いたしました。この結果、経常利益は前連結会計年度に比べ17億2千1百万円増加し、53億1千6百万円となりました。
(特別損益、税金等調整前当期純利益)
特別損益は、2億1百万円の利益となり、前連結会計年度から3億6千6百万円減少いたしました。これは、主に前連結会計年度において、投資有価証券の売却益5億8千5百万円があったことによります。この結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べ13億5千4百万円増加し、55億1千8百万円となりました。
(法人税等(法人税等調整額を含む)、非支配株主に帰属する当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における税金費用は、14億5百万円と前連結会計年度に比べ12億9千8百万円増加いたしました。また、当連結会計年度の非支配株主に帰属する当期純利益は1億2百万円(前年同期は4千9百万円の利益)となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は40億1千万円となり、前連結会計年度に比べ3百万円増加いたしました。
当社グループの事業セグメント別の業績に関する分析は、以下のとおりです。
国土強靭化に向けた国内公共事業が安定的に推移したことに加え、能登半島地震に伴う復旧支援業務や自然災害に備えた防災・減災関連事業が堅調に推移したことから、受注高は293億3百万円(前期比120.4%)、売上高は268億9千4百万円(同107.6%)と増収となりました。また、事業部再編による重複業務の解消、管理部門や営業体制・業務実施体制の効率化等を進めたことにより収益性が改善してきたことから、営業利益は10億6千9百万円(同204.6%)と増益となりました。
洋上風力発電関連業務や能登半島地震を含む災害廃棄物関連業務等が安定的に推移したことから、受注高は314億4百万円(前期比119.3%)となりました。これらの受注案件が進捗したことに加え、国内グループ会社の環境アセスメント業務が順調に推移したこと、ならびに当期から新たに連結対象に加わった国内子会社も業績拡大に寄与したこと等により、売上高は286億5千8百万円(同119.8%)、営業利益は29億9百万円(同124.5%)と増収増益となりました。
米国子会社の地震関連業務の案件成約が順調であったことに加え、シンガポール子会社の同国公共事業案件成約等を背景に、受注高は192億3千万円(前期比118.8%)となりました。売上高は、米国子会社による大型地震関連案件の業務進捗等により185億3千2百万円(同111.0%)となり、これに伴い営業利益も4億2百万円(前期は2千6百万円の営業利益)と増収増益となりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ61億7千万円増加し、1,068億3千7百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ19億6千万円増加し、764億6千6百万円となりました。これは主として、洋上風力発電関連業務が順調に推移したこと等による売上の増加に伴い、完成業務未収入金及び契約資産が64億2千1百万円増加した一方で、現金及び預金が56億4百万円減少したことによります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ42億1千万円増加し、303億7千万円となりました。これは主として、有形固定資産が26億3千7百万円増加したこと、及びのれんが4億3千6百万円増加し、退職給付に係る資産が4億3千万円増加し、投資有価証券が3億9千4百万円増加したことによります。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ25億5百万円増加し、280億7千8百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ16億5千6百万円増加し、174億2千8百万円となりました。これは主として、リース債務が2億5千3百万円増加し、1年内返済予定の長期借入金が1億9千7百万円増加したこと、業務未払金が2億5千4百万円減少したこと、及び流動負債のその他が12億2千9百万円増加したことによります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ8億4千9百万円増加し、106億5千万円となりました。これは主として、リース債務が7億7百万円増加したことによります。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ36億6千4百万円増加し、787億5千8百万円となりました。これは主として、資本剰余金が自己株式の消却等により16億3千9百万円減少した一方で、利益剰余金が25億6百万円増加したこと、為替相場が大きく変動したことにより為替換算調整勘定が21億9千6百万円増加したことによります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ63億1千3百万円減少(前期は36億3千3百万円の資金増)し、124億1千4百万円(前期比66.3%)となりました
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動の結果得られた資金は13億5百万円(前期比150.0%)となりました。これは主として、洋上風力関連の大型案件で売上債権が多く計上されたことから、売上債権の増加39億9千3百万円(同96.3%)や仕入債務の減少5億7百万円(前期は6億8千4百万円の資金増)等の資金の減少要因があった一方で、税金等調整前当期純利益55億1千8百万円(前期比132.5%)や、減価償却費17億8千7百万円(同112.7%)、未払消費税等の増加3億9千万円(同52.9%)等の資金の増加要因があったことによります。
投資活動の結果使用した資金は26億6千2百万円(前期は5億9千8百万円の資金増)となりました。これは主として、有形及び無形固定資産の取得による支出15億5千8百万円(前期比92.2%)や連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出7億9千8百万円(同44.8%)等があったことによります。
財務活動の結果使用した資金は52億8千6百万円(前期は19億6千1百万円の資金増)となりました。これは主として、自己株式の取得20億1百万円(前期比586.5%)や配当金の支払額15億1百万円(同124.7%)、長期借入金の返済による支出9億9千8百万円(前期は2千1百万円の資金減)、短期借入金の返済による支出7億8千9百万円(前期比375.4%)等があったことによります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、以下の通りであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、外注費及び人件費並びに販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、研究開発、設備投資及びM&A等によるものであります。これらの資金につきましては、原則として自己資金で賄うこととしております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの詳細につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報」をご参照ください。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー関連指標の推移は次のとおりであります。
※ 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注) 1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値によって算出しております。
2 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3 キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
4 2023年12月期において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、2022年12月期の各数値については、暫定的な会計処理の確定の内容を反映させております。
5 2022年12月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは、営業キャッシュ・フローがマイナスであるため記載しておりません。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)のとおりです。なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、特に重要と考えるものは以下のとおりであります。
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 重要な会計上の見積り」に記載しております。
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、将来キャッシュ・フローの見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループにおける研究開発活動はイノベーション開発と称し、研究開発とDXの2本柱で構成されております。活動内容は、「防災・インフラ」「環境・エネルギー」「国際」の3つ事業セグメントごとに重要課題を設定し、課題解決に向けて、地盤調査技術、3次元可視化技術、モニタリング技術およびAI技術などの要素技術の開発を進めています。また、これらの情報をIoT技術およびモニタリング解析プラットフォームを始めとした各種プラットフォームに載せて、新規ビジネスの創出、競争力の優位性確保、生産性向上に活かしていくことを目指しています。
防災・インフラ事業では、頻発化・激甚化している自然災害や高度成長期以降に整備した社会インフラの急速な老朽化などの社会課題に対して、それらを解決するためのソリューション開発を進めています。頻発化・激甚化する自然災害への対応としては、当社が開発したハザードマッピングセンサーとそれを集中管理するモニタリングプラットフォーム、これら様々な情報を用いて被害予測を行うシミュレーション技術を当社独自のクラウドで連携することで、現地でのリアルタイムの調査から危険度分析、アラートの発信までをワンストップで発信するサービスの構築を進めています。老朽化した社会インフラ構造物への対応としては、当社の強みである物理探査技術および計測技術を駆使して、効率的なモニタリング手法の開発を推進しています。
環境・エネルギー事業では、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた再生可能エネルギーの主力電源化の推進への対策支援の取り組みや、サーキュラーエコノミー(資源循環)およびネイチャーポジティブ(自然再興)の実現に向けた活動を推進しています。再生可能エネルギーに関しては、現在洋上風力発電事業における海底地盤調査では国内トップシェアを誇っておりますが、このシェアを維持・拡大するための技術開発を継続的に推進しています。ネイチャーポジティブに関しては、2024年3月に当社つくばオフィス内の緑地が自然共生サイトとして認定され、OECM(*)として国際データベースに登録されました。今後も、自然共生サイトの認証ノウハウを活用し、生物多様性の保全や創出、持続可能な社会の実現に向けて貢献していきます。
国際事業では、中東および東南アジアを主に、全世界のインフラ整備事業や洋上風力発電所立地調査を事業の柱としています。そして、これらに必要な地盤調査技術サービスの提供と関連する機器の製造・販売を行っています。現在、国際事業を取り巻く状況は、当期においても複雑化の様相を呈しています。新型コロナウィルスの蔓延をきっかけに発生したサプライチェーンの混乱、原材料や人件費の高騰は現在も継続しています。これに加えて懸念されることとしては、中国における景気減速と米国の関税引き上げ政策による米中関係の影響が不透明であることです。これらによりグループ会社は難しい経営環境に直面しています。一方で、このような世界情勢に関わらず、気候温暖化にともなう風水害、あるいは、地震災害などの脅威はますます増加しています。インフラの整備、防災・減災、エネルギー開発、地球環境の全てにおいて、地球上で起きている脅威を解決するソリューションへのニーズは減ることはないと考えています。国際事業を担っている国際グループ各社は、これらのニーズをしっかりとつかむために必要な研究開発を推進していきます。
(*)OECM (Other Effective area-based Conservation Measures):保護地域以外で生物多様性保全に資する地域
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費の総額は
地盤振動を3次元かつリアルタイムで計測・解析して、地盤状況の変化(S波速度構造など)を可視化する技術「OYO Tracker 4D(R)」を開発しました。本技術は2025年2月12日に開催された国土交通省主催の令和6年度インフラDX大賞授与式で、i-Construction・インフラDX推進コンソーシアム会員の取組部門「優秀賞」を受賞しました。「3次元調査」から「4次元モニタリングサービス」へ進化させることにより、様々な事業の施工・維持管理において地盤のリスクを見える化し、安全・安心で持続可能な社会実現に貢献してまいります。
近年、光ファイバをセンサとして利用する光ファイバセンシング技術がめまぐるしく進化しており、当社でも光ファイバで振動を計測するDAS技術を利用した物理探査技術の開発を進めております。これまでに国道や河川堤防にすでに設置されている通信用の光ファイバを利用して、光ファイバ直下の地盤構造を推定できることを確認しました。OYO Tracker 4D(R)では、多数の地震計を長期間にわたり地面に設置する必要がありますが、地震計を光ファイバに置き換えることで作業性の課題を解決できる可能性があります。今後もDAS技術の開発を推進していきます。
令和5年11月に施行された気象業務法及び水防法の一部を改正する法律により、土砂災害に関する気象予報業務が民間開放されました。当社でも防災・減災の促進を目的に土砂災害を高度に予測するための技術開発を推進しています。豪雨発生時に水が集まりやすい斜面である0次谷を機械学習により抽出する手法の開発はその一部であり、表層崩壊危険斜面全国マップとして公開しています。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
洋上風力発電事業で重要な建設海域の海底地盤調査においては、当社の強みである物理探査および機器開発技術を活用した海底微動アレイ探査を提案・実施し、過酷な環境下の地盤調査の高度化および効率化を図ってまいりました。洋上風力の開発が着床式から浮体式へと移行し、沿岸から数10㎞~数100㎞離れた海域が対象となる場合、微動の発生源である海岸線から離れてしまうため、微動探査の実施が困難になることが予想されます。この問題を解決するために、海底に重錘を落下させて表面波を発生させて地盤のS波速度構造を推定する「大水深表面波探査」を開発し、複数の海域での実証実験を通じて調査手法の有効性を確認いたしました。2025年1月には、(独)エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が公募した洋上風力発電の導入促進に向けた浮体式海底地盤調査実施者に採択されました。今後も洋上風力発電を始めとした再生可能エネルギーに係る開発支援を推進していきます。
サーキュラーエコノミーにおいては、当社は災害廃棄物処理計画サービスを展開しています。当社の強みである国内トップレベルの地震被害予測技術と融合させ、廃棄物量の算定の高精度化や適切な運搬・処理計画の策定に活用しています。昨年発生した能登半島地震では、災害廃棄物の円滑・迅速な処理をおこなうために、石川県の災害廃棄物処理の計画策定支援を行いました。仮置き場の廃棄物を迅速に処理するには廃棄物を種類ごとに分別することが重要となるため、ドローンによって撮影した画像をもとに分別する技術を実用化いたしました。今後も自然災害発生前の自治体職員の研修を始め、処理計画の策定支援、発生直後の初動対策支援および復旧・復興対策支援のフェイズを一元管理したシステムの開発を推進し、自然災害へのレジリエンスの強化および減災対策支援を推進していきます。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
国際事業を担う会社で当期に研究開発活動を行ったのは、GEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS, INC.(米国)、GEOMETRICS,INC.(米国)、ROBERTSON GEOLOGGING LTD.(英国)、KINEMETRICS,INC.(米国)の4社で、これらは全て地盤調査に関わる機器製造・販売会社です。
GEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS, INC.社は、地中レーダの専門メーカーであり、同社の地中レーダは、地盤中の埋設管等の探索、インフラ設備の劣化など、肉眼で見えない個所の調査・診断に多く用いられております。2023年度に、インフラ・メンテナンス用途向けの新型地中レーダの次世代機として、Flex NX (R)シリーズの販売を開始しました。今期は、Flex NX (R)で培われた製造技術をベースに、さらにコスト削減を図ったFlex LTをリリースしました。今後は他の製品群も、Flex NX (R)をベースに設計・製造のコストの低減化を図った製品を開発して提供していきます。また、前期に続いてアスファルト舗装道路のアスファルト材料の材質管理、舗装工事の品質管理などに有効な装置としてPaveScanシリーズの販売拡大を進める為の開発も行っております。
GEOMETRICS,INC.社は、地震探査、磁気探査装置などの専門メーカーとして、資源探査や土木地質調査向けの製品の提供を行っている中、近年は洋上風力発電所建設の立地に関わる調査などにおいて、過去の戦争や紛争で投下された不発弾の探索のために磁気探査装置の需要が増えてきています。そこで当期において、新しい磁気探査装置、MagEXをリリースしました。これは既存の製品に比較して小型の磁気センサを用いることで可搬性に優れた製品となっています。現在はこれを海域での調査でも適用できるものを開発しています。
ROBERTSON GEOLOGGING LTD.社は、インフラ整備のための地盤調査、資源探査のために掘削するボーリング孔内で使用する検層機器の開発・製造・販売を行う専門メーカーとして、近年は洋上風力発電所立地調査などへの適用が増えてきたことを受けて、これら検層機器が深い水深でも稼働するように機能の向上や専用の解析ソフトとのパッケージ化などの開発を行っています。
KINEMETRICS,INC.社は、地震観測機器の専門メーカーとして、地震防災やインフラ設備の耐震調査などに必要な地震計の開発、製造・販売、観測システムの構築およびソリューション提供を行っており、サプライチェーン問題の克服、データ収録機の小型化、低消費電力化を実現するために、新しいデータロガーの開発、既存の地震計の改良作業に取り組んでいます。
当連結会計年度における研究開発費の金額は