文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
当社グループは、テクノロジーに立脚したバイオ医薬品企業であり、日本及び世界中のアンメットニーズにお応えし、患者さまの生活の質を向上させる新しいスペシャリティ医薬品をお届けすることを目指しています。
(2)経営環境
医薬品開発は、国際的な巨大企業を含む国内外の数多くの企業や研究機関等により激しい競争が行われている分野であり、開発には多額の先行投資と、長期に亘る開発期間が必要となりますが、成功確率は高くありません。しかしながら、世界には、アンメットメディカルニーズが存在し、患者さまに価値をもたらす新薬が待ち望まれています。
(3)経営戦略等
創薬においては、Gタンパク質共役受容体(以下「GPCR」)を標的とする新規の低分子、ペプチド並びに抗体医薬品など、重要なアンメットメディカルニーズに応える革新的な新薬の創製に注力しています。独自のGPCR構造ベース創薬「NxWave™」プラットフォームにより、GPCRをターゲットとする新薬の設計における世界的リーダーとなり、神経疾患及び精神神経疾患、免疫疾患、炎症性疾患などの重要な治療領域をターゲットとした、自社開発あるいは提携中のプログラムを含めファーストインクラスあるいはベストインクラスとなり得る30品目を超える幅広いパイプラインを有しています。
後期開発・販売においては、日本及びAPAC(中国除く)でピヴラッツ®(一般名:クラゾセンタンナトリウム、脳血管攣縮発症抑制薬として日本では2022年に上市済、韓国では承認取得済、2025年もしくは2026年に上市見込み)及びクービビック®(一般名:ダリドレキサント、日本では2024年に不眠症治療薬として上市済)のライセンスと、Idorsia Pharmaceuticals Ltdが保有するフェーズ3段階にあるLucerastat(ファブリー病)の同地域でのライセンスの独占的オプション権を保有しています。
また上記に加えて、Novartis International AG(以下「ノバルティス社」)の呼吸器疾患製品シーブリ®、ウルティブロ®及びエナジア®のグローバルでの販売からのロイヤリティ収入を受領しています。ロイヤリティ収入は、当社グループの重要かつ安定的な資本の源泉となっています。
2024年4月1日、社名をそーせいグループ株式会社からネクセラファーマ株式会社に変更したことに伴い、「NxWave™」プラットフォーム、保有するパイプライン及び創薬・開発・商業化の能力を活用し、自社開発及び外部から取得した候補化合物を日本及び世界の患者さまに複数の治療オプションとして提供することを目指し、戦略をさらに進化させ、ブラッシュアップしました。この戦略では、以下の3つを戦略的な柱としました。
① 日本の患者さまに向けて、革新的な医薬品をお届けする
スリムでアジャイルかつ拡大可能なビジネスモデルを活用し、日本における幅広い臨床開発・商業化事業をテコに、規模が大きく成長している日本市場の患者さまに新薬をお届けするとともに、他のAPAC市場に進出するための基盤を構築する。
② 創薬デザインで創出した価値の高いプログラムを推進
患者さまの人生を変える可能性のある新薬の幅広いパイプラインを自社で、あるいは提携先と推進・強化し、日本及び世界中でアンメットメディカルニーズが高く急成長している治療領域をターゲットとした価値創造の機会を創出する。
③ 最先端のサイエンスとテクノロジーを活用
社内のイノベーションと提携を通じて、「NxWave™」プラットフォームの優位性を維持・強化 - 自社あるいは提携による開発のための新規プログラムの特定・選定を加速する。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 事業の進捗と戦略
当社グループは、テクノロジーに立脚し、医薬品の研究(創薬)から開発、さらには販売までを手掛けるバイオ医薬品企業として、日本・全世界の事業を成長させる戦略を打ち出しています。日本及びAPAC(中国除く)以外の地域では、創薬からトランスレーショナルメディシンを通じた初期臨床開発までの研究開発を自社で行い、その後はこれら自社品の主に日本及びAPAC(中国除く)以外の権利を提携先へ導出することを目指しています。日本及びAPAC(中国除く)においては、外部から開発リスクの低い承認済あるいは後期臨床開発段階の開発品を導入するとともに、中長期的には自社品の開発によりパイプラインの拡充を図る方針です。
② 当社グループの認識するリスクへの対応
当社グループは、自らが事業を展開している製薬業界特有のさまざまなリスクを負っており、当社グループの事業、財政状態及び業績は、これらのリスクにより悪影響を受ける可能性があります。当社グループは、「3.事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループの財政状態及び経営成績に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を認識しており、これらのリスクに対する必要な対策を講じています。
③ 価値創造
医薬品業界では、特許の失効、承認の負担増大、継続的なコストの増加など、大手企業は多くの困難に直面し、急速な変化が起こっています。これにより、医薬品開発における財務上・商業上のリスクを取って研究開発を目指す事業者の数が減少しています。業界全体を通じて、効率よく外部のイノベーションを確保することが新しい戦略として重視されています。さらに、多くの先進国での高齢化の進行により、差別化されたより良い治療法の必要性が高まっています。その結果、大手製薬・バイオ医薬品企業は、研究、創薬及び開発活動全体にわたり、技術に立脚した比較的小規模な企業との提携により、研究開発における課題への革新的ソリューションを見出そうとする傾向が強くなっており、当社グループは有利な立場にあります。このように業界の状況が変化する中で、当社グループは、事業拡大と価値創造の機会を定期的に認識、評価し、持続的にビジネス機会を創出する資本効率の良いビジネスモデルを追求しています。
④ コーポレート・ガバナンス
当社グループは複数の地域において事業活動を行っており、コーポレート・ガバナンス体制の重要性を認識しています。各国の規制に対応するため、体制やプロセス強化の方策について継続的に検討しています。さらに、最高水準の透明性、完全性、説明責任にコミットする企業文化の強化に引き続き取り組みます。当社の取締役会は、規範と説明責任を維持するために、経営の監督とリスク管理及びコンプライアンス活動に責任を有しており、取締役の過半数は独立社外取締役です。執行役は、当社の長期的かつ持続可能な成長を達成し、株主価値を創出するために、取締役会との緊密な連携のもと、取締役会の委任を受けて取締役会が定める経営方針と戦略に沿った事業戦略と重要な業務執行について決定し、執行します。
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は提出日現在において判断したものであり、実際の結果とは異なる可能性があります。
(1)ガバナンス
当社グループでは、ESG活動の豊富な知見と経験を持つ独立社外取締役を含む取締役会が、ESG活動に対する管理、指導及び監督を行っています。取締役会は、ESG活動のパフォーマンス向上が、当社グループの長期的な成長と成功に不可欠だと確信しており、そのために、環境、社会、ガバナンスの観点での目標が当社の企業文化、バリューそして事業運営の基礎となるよう、当社グループのESGへの取り組みを組織全体へ浸透させるよう努めています。ESGの取組は、当社取締役及び執行役にとって優先事項であり、取締役会のリーダーシップのもと、チャリティ・コミッティー、ソーシャル・コミッティー、環境サステナビリティ・グループ、ワーキング・グループを通じて、組織全体で推進・実行されています。
(2)戦略
① 気候変動に関する戦略
当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づく気候変動のシナリオ分析を実施し、気候変動リスクと機会の特定、財務インパクトの評価を行い、その対応策を検討しました。シナリオ分析では、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるRCP2.6(2℃未満シナリオ)、RCP8.5(4℃シナリオ)(注)1、2、国際エネルギー機関(IEA)によるシナリオを参照し、主要なグローバル拠点である日本、英国、韓国等を総合してそのインパクトを分析しました。シナリオ分析の結果、気候変動における自社事業における影響は、現時点では限定的ですが、評価・特定されたリスク対策については、取締役会がグループ全体の進捗管理を行なっていきます。当社グループの気候変動に関するリスク及び機会が事業に及ぼす影響、ならびに当社グループの対応は以下の通りです。
(注)1 RCP(Representative Concentration Pathways):代表的濃度経路
2 RCPには、1つの厳しい緩和シナリオ(RCP2.6シナリオ)、2つの中間的シナリオ(RCP4.5シナリオ及びRCP6.0シナリオ)、1つの非常に高い温室効果ガス排出となるシナリオ(RCP8.5シナリオ)が含まれる。排出を抑制する追加的努力のないシナリオ(「ベースラインシナリオ」)は、RCP6.0シナリオからRCP8.5シナリオの範囲にわたる経路となる。RCP2.6シナリオは、工業化以前に対する世界平均の気温上昇を2℃未満に維持する可能性が高くなることを目指すシナリオを代表するものである。
シナリオ |
事象 |
影響 |
当社グループの対応 |
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物理的シナリオ (4℃) |
リスク |
急性 |
極端な気象現象(台風や集中豪雨、洪水など)の増加と激化 |
当社グループの拠点に直接的な物理的リスクが高い地域はありません。しかし、急性的な水害等の被害リスクが大きくなり、創薬、研究開発、臨床試験、販売事業の一部の操業に影響を与える可能性があります。 |
本社及び各拠点の事業継続計画(BCP)を策定し、被害発生時の操業の影響を最小限に抑えます。 |
慢性 |
年平均気温の上昇 |
使用電力量の増加による電気コスト増加のリスクがあります。 |
各拠点の省エネ対策を徹底します。 |
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水資源不足 |
中長期的な水資源枯渇により、水の使用制限による操業の中断が発生するリスクがあります。 |
事業への影響を把握するため、世界資源研究所(World Resources Institute)が提供する「AQUEDUCT Water Risk Atlas」を使用し、水資源取得リスク調査を実施しています。 |
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機会 |
製品・ サービス |
医薬品・創薬需要の拡大 |
地球温暖化による疾病動向の変化による既存薬に対する需要の増加、あるいは新薬の開発・商業化により収益が増加する可能性があります。 |
開発パイプラインを継続的に強化し、地球温暖化に関連して、当社パイプラインが新たに貢献し得る疾患領域における医薬品の研究・開発の機会を模索します。 |
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移行シナリオ (1.5℃) |
レジリエンス |
エネルギー効率向上 |
脱炭素社会の実現推進により、エネルギー効率を向上させる製品やサービスが新たに開発されます。 |
環境性能が高いオフィスビルに入居することにより、エネルギー効率を高め、エネルギー消費量と温室効果ガス(GHG)排出量を減少させます。 |
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リスク |
政策・ 法規制 |
炭素税や二酸化炭素排出規制 |
拠点がある日本やイギリス、韓国、アイルランド、米国、スイス等に、炭素価格メカニズムが導入され、特にエネルギー使用に対する規制が増える可能性があり、エネルギーコストの増加が見込まれますが、全社の操業コストに対する影響は限定的です。 |
本社及び各拠点のGHG排出量算定を実施し、炭素価格メカニズムが各市場で導入された場合の財務的影響を分析しました。また、GHG排出量削減に向けた取組の検討を開始しています。 |
② 人的資本に関する戦略
当社グループが掲げる、世界をリードするサイエンスで、人生を変える医薬品を届けるというビジョンにおいて、ダイバーシティ&インクルージョンの推進とコラボレーション型の職場環境は、当社の大きな柱となっています。
ダイバーシティとペイ・エクイティ
当社グループは、多様でインクルーシブな組織づくりのために、ペイ・エクイティ(同一労働同一賃金)に取り組んでいます。2021年から、各従業員の役割と経験に基づいた市場ベンチマークに照らして、毎年、グローバルでの従業員給与の精査を行っています。また、組織全体で等級制度による各従業員の役割を明確にすることによって、評価と処遇の一貫性と公平性を確保しています。
当社グループはダイバーシティとペイ・エクイティの推進について、今後も全社で取り組みを進めていきます。
株式報酬
当社グループでは、従業員が自社の株式を保有することで、会社に対する自らの貢献から利益を得ることができるという観点から、長期インセンティブ・プラン(LTIP)のもと、2022年4月以降、すべての社員が、毎年、事後交付型株式報酬(リストリクテッド・ストック・ユニット(RSU))制度に基づく当社株式割当の権利を有しています。従業員に対する割当及び実際の株式付与は、LTIP制度に基づき適正に行われます。株式報酬により、長期的に当社で活躍が期待できる優秀な人材を積極的に採用するため、また、従業員の業績と会社への貢献を評価する制度の一つとして、年次での割当を継続する方針です。
福利厚生、ワーク・ライフ・バランス
当社グループは、従業員の健康や成長を軸にして福利厚生を整えています。また、育児を行っている従業員の支援を行っております。さらに、リモートワークの導入や、フレキシブルな勤務時間の設定等、業務状況と従業員の生活スタイルに合わせた柔軟な働き方ができるようサポートしています。
能力開発研修
当社グループでは、従業員に成長と能力開発の機会を提供し、従業員が潜在能力を最大限に発揮できるよう様々な取り組みを行っています。E-Learningや資格支援制度を導入しており、マイクロラーニングや専門分野での資格取得等をサポートしております。様々なスキル開発の機会を提供することによって従業員の成長を促し、個々の能力と組織力の向上を図っております。
当社グループは、「従業員満足度調査」を毎年実施しています。この調査結果をもとに、従業員満足度の向上や人財育成のための施策をさらに進めていく考えです。
(3)リスク管理
2022年、当社グループはESGへの取り組み推進のための体制構築と、ESG目標を達成するための明確なロードマップ策定に注力しました。当社グループがESGの課題にどう向き合うべきかを検討するところからスタートし、その後、取締役会・従業員・外部のステークホルダーとの対話を通じ、当社グループにとっての「重要課題」(マテリアリティ)の特定、マテリアリティに対応する取り組み及びその進捗を評価する重要業績評価指標(KPI)の設定を行いました。特定したマテリアリティとKPI(以下に記載)は2023年3月の当社取締役会により承認され、今後数年間のESG活動でこれらを達成すべく取り組んでいます。当社グループは、これらのESG目標を組織全体に浸透させ、社内外のステークホルダーと協力し、これらの優先事項が当社の企業文化、バリューそして事業運営の基礎となるよう努めてまいります。
(4)指標及び目標
当社グループは、上記(3)の通り、マテリアリティとKPIが、長期的に企業価値を高めるという目標に合致していると認識しており、継続的な取り組みとしてこれらを定着させ実行してまいります。
気候変動に関しては、当社グループのScope 1及びScope 2の温室効果ガス(GHG)排出量は、2024年度実績で1,001.64 t-CO2(注)でした。GHG排出量削減目標については、今後、協議を行う予定です。
(注) 2023年度実績は、NPJ/NPKの2023年7月20日以前のGHG排出量が入手可能になったことから、800.66 t-CO2から946.79 t-CO2に修正。
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マテリアリティ |
取り組み |
KPI |
Environment(環境) |
環境マネジメントの推進 |
英国の研究開発施設における環境マネジメントシステム(EMS)とエネルギー削減計画に基づき、排出量と廃棄物を適切に管理する。 |
英国の研究開発施設で5年以内にグリーンラボの認証を取得する。 |
Social(社会) |
ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI) |
ジェンダーギャップの解消に努める。 |
女性管理職比率 (グローバル)を中期的に30%以上に維持する。 |
患者さまのための革新的な医薬品の創出 |
患者さまの人生を変える医薬品を生み出すため、研究開発の効率化を推進する。 |
研究開発の効率化の推進 - 自社開発パイプラインから今後3年間、前臨床候補化合物と臨床候補化合物をそれぞれ年間1品目平均的に創出する。 |
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Governance(ガバナンス) |
全てのステークホルダーに対する公平性及び透明性 |
株主との対話を強化・拡充する。 |
全ての株主が参加し、当社経営陣とオープンかつ率直に議論できる機会を提供する。 |
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループの事業等はこれら以外にも様々なリスクを伴っており、以下に記載したものがリスクのすべてではありません。
当社グループではCEO及びCAOがグループ全体のリスク管理を行っており、各部門の責任者から、主要なリスクを適宜報告される体制を整えています。個別のリスクの程度と内容に応じた対応策に基づき、リスクの回避措置、リスクが顕在化した際の影響の低減措置を行っています。
なお、文中における将来に関する事項は提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)医薬品の研究開発事業一般に関する事項
① 研究開発の不確実性に関する事項
・リスク
当社グループは、医薬品の研究開発を主な業務としています。一般的に、医薬品の研究開発は、基礎研究段階から承認取得に至るまで長期間を要し、多額の投資が必要となる反面、その成功の可能性は、他産業に比べて極めて低いものです。従って、研究開発活動は不確実性を伴っており、この不確実性は当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
・対応策
当社グループは、比類のないプラットフォーム技術による複数の新規治療薬候補品を継続的に創出し、さらに臨床開発及び商業化を行うための費用の負担とリスクを引き受けることを前提に他の製薬会社との共同研究や開発品の導入も行うことで、開発パイプラインを拡充してきました。多種多様な提携を通じて、開発資金を提供いただくパートナーの分散を図り、また、臨床開発という不確実なリスクのバランスをとることによって、業績への影響を最小限にしております。
② 提携先の事業戦略見直しに関する事項
・リスク
医薬品業界は、国際的な巨大企業を含む国内外の数多くの企業や研究機関等による競争が激しい状態にあります。また、その技術革新は急速に進歩しています。そのため、大手製薬・バイオ医薬品企業は、業界での競争力を維持するために定期的に事業戦略の見直しを行っており、その見直しの影響により当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
また、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動における競争相手との競争の結果、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、提携先との良好な関係を維持、発展させるとともに、適切な契約の締結に努める等、当該リスクの低減に努めております。また、収益性のある品目を複数研究開発することで、提携関係の解消等があった場合の業績への影響を最小限にするようにしてまいります。
③ 副作用等に関する事項
・リスク
医薬品は、臨床試験段階から市販後に至るまで、副作用等が発現するリスクがあります。当社は発売後の医薬品について製造販売業としての医薬品安全性監視(ファーマコビジランス)を行うことで患者様の健康被害リスクを最小化する活動を継続して実施し、これにより医薬品使用に関連するリスクの回避と受けうる影響の低減に最大限努めております。副作用等が発現し、製品の回収、製造販売の中止、薬害訴訟の提起等に発展した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループでは、提携会社または販売委託会社等と連携し、国内外の安全管理情報(副作用情報等)を収集しております。また、収集された安全管理情報は適切に評価・検討・分析し、各国・地域の規制に応じ適切に当局に報告するとともに、提携会社または販売委託会社等と連携して情報提供することで医薬品の適正使用を推進しております。
④ 薬事法制その他の規制に関する事項
・リスク
医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事法及び薬事行政指導その他関係法令等により、様々な規制を受けています。
医薬品は、創薬から製造販売承認を取得するまでに、多額の研究開発コストと長い年月を必要としますが、安全性及び有効性に関する期待したデータが得られず、医薬品としての安全性及び有用性を示すことができない場合には、規制当局の承認が計画どおり取得できず上市が困難になる可能性があります。これは開発品を他社に導出する場合も同様であり、当初計画した条件での導出もしくは導出そのものが困難になる可能性があります。
このような事象が生じた場合又は将来各国の薬事法等の諸規制に大きな変化が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、提携先と協力しながら、薬事関連規制の改正動向を早期に把握し、対応の要否を分析する体制を取っております。また、リスクを最小限にするための対応について、迅速に判断するガバナンス体制を取っております。
⑤ 製造物責任に関する事項
・リスク
当社グループは、医薬品の臨床試験を含む開発、製造、販売を行っております。それらの製品が必要な品質及び安全性の基準を満たしておらず、これを原因とした製造物責任を負う場合、当社グループの財政状態及び経営成績に深刻な影響を与える可能性があります。
・対応策
当社グループは、製品の安全、品質への取り組みを最優先事項としており、社内教育等を通じて、常に従業員の意識向上に努めております。また、適切な保険に加入することで製造物責任によるリスクを軽減しております。
(2)当社グループの戦略に関する事項
① 事業戦略の実行に関する事項
・リスク
当社グループは、新薬開発候補品を創製するための自社プラットフォームの活用と、新たな導出あるいは共同投資を可能にする重要な価値の転換を生み出すためのパイプラインの強化、ならびに日本及び一部のAPAC市場における自社開発・商業化の機会創出に注力しています。さらに、日本及びAPAC市場における事業の構築に向け、外部から開発リスクの低い承認済あるいは後期臨床開発段階の開発品の導入に注力していますが、他の新薬開発を行う企業同様、開発が成功しない新薬開発候補品、または機能しないテクノロジーに対して投資が行われる可能性があります。このような事象が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、投資の検討に当たっては、社内外の意見を集約し、研究開発プログラムや技術への投資機会を、その商業的実行可能性を含めて総合的に評価しております。投資に対しては、リスクとリターンのバランスが適切なものになるようなアプローチを取っています。
② 投資戦略に関する事項
・リスク
過去において、当社グループは、非常に有望ではあるものの、実証されていないテクノロジーを有する企業に出資を行ってきました。これらの投資により、重要な価値の転換点への到達につながり、ビジネスモデルを加速できる可能性があります。しかし、そのような出資は減損につながる可能性のある失敗のリスクを伴うため、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループにおいては、戦略的投資の評価に責任を有し、係る投資の承認に責任を負う当社の取締役会に対して助言を行う投資委員会を設置しています。また過度な資本リスクに晒されないよう、投資に対しては、リスクとリターンのバランスが適切なものになるようなアプローチを取っています。
(3)当社グループの事業活動に関する事項
① 提携関係に関する事項
・リスク
当社グループは、研究開発の各段階において最先端技術の取り込みを含めた広範な提携関係を構築し、それによって固定費の増加回避を図っています。しかし、現在の提携関係に変化が生じた場合や今後の提携関係が期待どおりに構築できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、契約締結においては、発生しうるリスクを想定し、これを低減するための戦略に関する協議と合意形成に努め、必要に応じてその内容を契約書に定めております。さらに、提携先との間で様々な機能・階層を通じた強固なガバナンス体制を構築し、提携におけるリスクの把握と解決策の協議を密に行い、必要な打ち手を講じることで、業績への影響を最小化するよう努めております。
② 人材の確保及び育成に関する事項
・リスク
当社グループの事業活動は、現在の経営陣、事業を推進する各部門の責任者や構成員等に依存しているところがあります。そのため、常に適材適所に優秀な人材を確保することや、将来を見据えた人材育成に努めています。労働市場の逼迫により人材確保や人材育成が計画どおりに行えない場合は、当社グループの事業活動や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
・対応策
当社グループは、社員が会社の理念や目標を理解し、進むべき方向性を共有することで一体感を高めるとともに、会社に愛着を持ち安心して働けるように、働く環境の整備と社員教育の充実を図ることが人材リスクを回避するうえで重要と考えています。そのため、快適なオフィス環境の維持、社員それぞれのライフスタイルに合わせた柔軟な働き方(スーパーフレックス制度の導入やリモートワーク等)、社内外のさまざまな分野の専門家との交流や研修の実施、健康維持を目的とした食育等を実施しています。
③ 知的財産権に関する事項
・リスク
当社グループは、研究開発活動等において当社グループが所有し又は使用許諾を受けた様々な知的財産を使用しています。当社グループの事業運営に必要な知的財産について継続して使用許諾を受けることができない場合や第三者の知的財産の侵害による係争が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、保有する知的財産の管理につき、専門弁護士・弁理士事務所を起用しながら、第三者侵害の有無を監視しながら、適切に管理する体制を整えております。
④ 資金調達に関する事項
・リスク
医薬品事業においては、多額の研究開発費を要し、その額は研究開発の進捗に応じて増加する傾向にあります。当社グループに資金需要が生じた場合に、市場環境の悪化等により機動的な資金調達を行うことができない可能性があり、その場合には、当社グループの研究開発に係る体制及び計画の見直しを余儀なくされるなど、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、適時資金繰り計画を作成・更新し、十分な手元流動性(当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高32,268百万円)を維持することで当該リスクの低減に努めています。また、新株発行、社債発行、コミットメントラインの設定、及び他の借り換え手段の選択肢を定期的に見直すことで、資金調達市場の状況に応じた資金確保を可能としています。当社グループは、手元流動性は十分に確保しており当面の事業運営には影響ありません。今後、営業キャッシュ・フローの収入に加え、上記の資金調達手段も検討し、安定したネットキャッシュの維持を進めます。また、コミットメントラインの契約を締結しております(総額4,400百万円。当連結会計年度末における借入実行残高なし)。
⑤ 外国為替変動に関する事項
・リスク
当社グループは、事業活動をグローバルに展開しており、海外企業とのライセンス取引、海外での研究開発活動等において外貨建取引が存在します。為替変動リスクはヘッジ活動によっても完全に取り除くことはできないため、急激な為替変動によって為替リスクが顕在化した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、通貨保有による外国為替変動リスクを定期的にモニタリングするために、毎月取締役会に通貨毎の預金残高や為替差損益の分析を報告しております。さらに、決済通貨を適宜購入または為替予約を締結することで外国為替変動が軽減するよう管理しています。
⑥ 契約に基づく支払義務の負担に関する事項
・リスク
当社グループは、開発パイプラインに関する提携企業との契約において、販売に至る前の開発段階及び販売開始後に提携先に対する支払義務を負っている場合があります。また、開発費の共同負担や販売開始後一定額の販売活動経費の投入を行う義務を負う場合もあります。これらの対価の支払形態は、製品開発型バイオベンチャーとしての事業の性質上当然のものと認識していますが、当社グループの資本力に比べ支払額が高額となる場合には、当社グループにとって大きな財務的負担となる可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、契約締結においては、発生しうるリスクを想定し、これを低減するための協議と合意形成に努め、その内容を契約書に定めております。さらに、提携中も提携先との間で様々な機能・階層を通じた強固なガバナンス体制を構築し、提携におけるリスクの把握と解決策の協議を密に行い、必要な打ち手を講じることで、業績への影響を最小化するよう努めております。
⑦ 国内及び海外市場における販売体制の構築及び技術導出に関する事項
(a)国内市場における自社製品の販売
・リスク
当社グループは、国内外において、医薬品製造販売業の許可を取得しております。自社製品が医薬品製造販売承認を取得した場合、製造販売元として、製品の市場価値を最大化することを目標とし、自社に限らず販売提携先の締結など適切な販路を確保し、自社製品の安定供給を行います。国内外において、適切な販路の確保が進まない場合、自然災害、火災等により当社又は委託先の製造・物流施設等の損壊又は事業活動の停滞等が生じた場合、原材料の仕入れが遅延又は停止した場合、品質問題が生じた場合、販売委託先による体制の不備などにより自社製品の販売成果が期待通り得られない場合、又は法令遵守等の問題が発生した場合は、自社製品の安定供給に支障が生じ、医薬品製造販売業としての信頼及び売上収益の低下により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響が及ぶ可能性があります。
また、医療用医薬品という性質上、薬価改定による薬剤価格引き下げにより、売上収益の低下が発生する可能性があります。
・対応策
当社グループは、自社製品の品質及び安全性の確保のため、医薬品製造販売業として必要な社内体制を整備しており、法令遵守を最優先事項としております。また、委託先に対しても、法令遵守状況の把握を含めた適切な能力評価を行い、健全な提携関係の維持と発展に努めております。
また、コンプライアンスを遵守した販売情報提供活動を遂行するため、コンプライアンス部門を設置し、コンプライアンスを推進する環境を整備し、また、当社および販売委託先においてコンプライアンスを遵守していることをモニタリングしております。
薬価引き下げリスクにあたっては、国内外の医療費に係る制策の分析、市場動向のモニタリングを実施しリスクの回避に努めます。
(b)自社又は子会社の開発品の技術導出
・リスク
開発品を開発の途中段階で他社に導出することにより、一時金や導出先の販売高に連動した収益を受領することが可能となります。しかし、開発の遅延その他の理由により計画どおりの時期に技術導出ができない場合や技術導出を予定している開発品に関して導出そのものが困難になる場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、想定外の外部要因による遅延やその他の悪影響を及ぼす問題に対処してまいります。開発の遅延リスクを回避するため、外部の専門家を適宜活用するとともに、社内の人材の能力及び専門性の育成にも努めております。
⑧ M&A等(買収、合併、営業の譲渡・譲受、出資)による事業拡大に関する事項
・リスク
当社グループは、保有する経営資源の効率的運用と企業価値の最大化のため、M&A等を活用して事業規模の拡大を図ることを経営方針の一つとしています。その施策により想定どおりの効果が得られない場合は、最大でのれん25,693百万円及び無形資産51,911百万円の減損損失の計上等により、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、M&Aの実施に際しては、外部専門家を起用しながら、詳細なデューディリジェンスを実施した上で、中期事業戦略との整合性、事業価値、シナジー等を総合的に検証しております。
⑨ 取得事業の統合に関する事項
・リスク
当社グループは2023年7月にイドルシア社より同社の日本及びAPAC(中国を除く)地域における子会社を買収しました。その結果、当社グループの事業活動の規模及び範囲が拡大し、新たな価値創造の機会がもたらされた一方で、当該新たな事業等に起因するリスクが発生する可能性を認識しております。移行措置や統合活動及び当該子会社の事業計画の遂行に不具合が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、当社の執行役複数名を子会社の取締役に任命することにより、子会社管理体制を構築するとともに、当社取締役会や監査委員会による当該子会社の経営状況の定常的な監視、指導、助言を行うことにより、新たなリスクの監視、未然予防など管理を強化しております。なお、当該取得事業の統合に関する活動は概ね完了しております。
⑩ 重要な契約に関する事項
・リスク
「第一部 企業情報、第2 事業の状況、5.経営上の重要な契約等」に記載した、当社グループの経営上の重要な契約が期間満了、解除その他の理由により終了した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、重要な契約作成時において、必要に応じ外部弁護士を活用し、適切な解除条項を設けるなどリスク低減措置を講じております。また、経営戦略検討時に重要契約の終了時期を考慮するとともに、重要契約パートナーとの活動を注視し状況に応じた対応を実施するなどのリスク軽減策を講じております。
⑪ 訴訟等に関する事項
・リスク
当社グループは、当連結会計年度において訴訟の提起を受けていませんが、訴訟その他の法的手続や当局による調査を受ける可能性があります。多額の支払を命じられた場合や当社グループにとって不利益な決定がなされた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、コンプライアンス体制や品質マネジメントその他必要な社内体制の整備により問題発生の未然防止に努めるとともに、事業活動においては必要に応じて法務部門による審査や外部弁護士等の専門家の助言を得るなど、訴訟に関するリスクの低減に努めております。
⑫ 内部統制の整備に関する事項
・リスク
当社グループは、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準に準拠し、財務報告に係る有効な内部統制システムを整備し、その適正な運用に努めています。内部統制が有効に機能せず、あるいは予期しない内部統制上の問題により、多額の損失が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
・対応策
当社グループは、財務報告に係る有効な内部統制システムの構築を行い、適切な運用に努めております。
文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)財政状態及び経営成績の状況
日本の患者さまに向けて、革新的な医薬品をお届けするという目標については重要な進展があり、不眠症治療薬クービビック®について、2024年9月に日本での製造販売承認を取得しました。10月には、塩野義製薬株式会社(以下「塩野義製薬」)と同製品の日本における流通と販売に関する提携契約を締結し、12月に新発売したことを発表しました。また、ダリドレキサントの韓国でのフェーズ3試験において最初の被験者の組み入れを行いました。
また、当期末以降に発生した事象として、自己免疫疾患治療薬候補cenerimodの日本及びAPAC(中国を除く)における権利をViatris Inc.に譲渡しました。
創薬デザインで創出した価値の高いプログラムの推進では、成功のための戦略として、「NxWave™」プラットフォームを活用して、自社で開発した個別の候補化合物やプログラム、あるいは提携先が選定したターゲットに対する候補化合物の創薬・開発に関して、世界的なバイオ医薬品企業と提携を行ってきました。当社グループは、これらの提携の多くで、神経疾患及び精神神経疾患、代謝性疾患、免疫疾患、炎症性疾患など、医薬品市場で最も急成長している領域の開発プログラムに対する経済的権利を有しています。
提携プログラムでは、Neurocrine Biosciences Inc.(以下「ニューロクライン社」)との提携が引き続き大きく進展し、同社は業界最大級のムスカリン受容体作動薬候補のポートフォリオを保有しています。ニューロクライン社は、統合失調症に対するNBI-1117568(ムスカリンM4受容体作動薬)のフェーズ2試験で良好な結果を達成したことに加えて、NBI-1117567(M1-preferring agonist)のフェーズ1試験を開始しました。ニューロクライン社はNBI-1117569(M4-preferring agonist)及びNBI-1117570(選択的M1/M4デュアル受容体作動薬)のフェーズ1試験を実施中です。さらに、NBI-1117568の統合失調症を対象としたフェーズ3試験を2025年前半に、双極性障害を対象としたフェーズ2試験を2025年後半に開始する予定です。また、統合失調症を対象としたNBI-1117570のフェーズ2試験を2025年後半に開始する予定です。
さらに当社グループは、Boehringer Ingelheim International GmbH(以下「ベーリンガーインゲルハイム社」)と、統合失調症の治療薬候補であるGPR52受容体作動薬ポートフォリオの開発及び商業化を目的とした新規グローバル提携及びライセンスの独占的オプション契約を締結しました。また、Centessa Pharmaceuticals Limitedが選択的経口オレキシン2受容体(OX2R)作動薬 ORX750のフェーズ1試験に関して、良好な中間結果を公表し、さらにナルコレプシー1型(NT1)、ナルコレプシー2型(NT2)、及び特発性過眠症の患者を対象としたフェーズ2試験を開始しました。
自社開発プログラムでは、炎症性腸疾患の治療薬候補であるEP4受容体作動薬(NXE0033744)のフェーズ1試験を開始しました。
最先端のサイエンスとテクノロジーの活用についても順調に進展し、PrecisionLife Limitedと2022年に締結した共同研究開発契約において、新規創薬ターゲットの同定を目的とした戦略的研究開発提携の対象を自己免疫疾患へ拡大しました。また、Antiverse Ltdと、GPCRに対する抗体設計を目的とした複数のターゲットを対象にした新規提携及びライセンス契約を締結しました。
当社グループは、今後数年間で日本・全世界の事業を成長させることに注力します。同時に、事業全体にわたって選択と集中を重視した投資戦略を維持し、あらゆる価値創造の機会に柔軟に対応する一方、引き続きコスト管理を強化してまいります。
2024年12月31日現在、当社グループの従業員数は374人(2023年12月31日時点比24名増)です。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上収益28,835百万円(前連結会計年度比16,069百万円増加)、コア営業利益3,606百万円(前連結会計年度は3,076百万円の損失)、営業損失5,423百万円(前連結会計年度は9,526百万円の損失)、税引前損失4,662百万円(前連結会計年度は10,680百万円の損失)、当期損失4,838百万円(前連結会計年度は7,193百万円の損失)となりました。
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(単位:百万円) |
|
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
増減 |
売上収益 |
28,835 |
12,766 |
16,069 |
売上原価 |
△7,616 |
△3,102 |
△4,514 |
研究開発費 |
△11,816 |
△10,075 |
△1,741 |
販売費及び一般管理費 |
△16,015 |
△9,965 |
△6,050 |
営業費用合計 |
△35,447 |
△23,142 |
△12,305 |
その他の収益及びその他の費用 |
1,189 |
850 |
339 |
営業損失(△) |
△5,423 |
△9,526 |
4,103 |
金融収益及び金融費用 |
761 |
△1,154 |
1,915 |
税引前損失(△) |
△4,662 |
△10,680 |
6,018 |
法人所得税費用 |
△176 |
3,487 |
△3,663 |
当期損失(△) |
△4,838 |
△7,193 |
2,355 |
|
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|
|
代替業績評価指標 |
|
|
|
(コア営業損益) |
|
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|
営業損失(△) |
△5,423 |
△9,526 |
4,103 |
調整額 |
|
|
|
有形固定資産の減価償却費 |
1,613 |
983 |
630 |
無形資産の償却費 |
2,371 |
1,495 |
876 |
株式報酬費用 (注)2 |
1,396 |
844 |
552 |
構造改革費用 (注)2 |
28 |
53 |
△25 |
売上原価調整額 (注)3 |
2,401 |
1,812 |
589 |
統合関連費用 (注)4 |
1,220 |
- |
1,220 |
企業買収関連費用 |
- |
1,263 |
△1,263 |
コア営業利益又は損失(△) |
3,606 |
△3,076 |
6,682 |
|
|
|
|
USD:JPY(期中平均為替レート) |
151.43 |
140.53 |
10.90 |
GBP:JPY(期中平均為替レート) |
193.49 |
174.81 |
18.68 |
(注)1 コア営業損益は営業損益(IFRS)+重要な非現金支出費用+重要な一時的支出費用で定義され、事業の潜在的な経常キャッシュ創出能力を表しております。
2 構造改革に係る株式報酬費用の加速償却による影響額は構造改革費用に含まれております。
3 売上原価調整額は、2023年7月の企業結合により取得した棚卸資産のうち、当連結会計年度に販売した棚卸資産の売上原価に対応する非現金支出費用です。第3四半期連結累計期間までに当該棚卸資産は払い出しが完了しました。
4 統合関連費用は、ITシステムの統合及び企業ブランド再構築を含む一次的支出費用です。
当社グループは、医薬品事業の単一セグメントであるため、報告セグメント別の記載は省略しています。
当連結会計年度の経営成績の分析は以下のとおりです。
(売上収益)
|
|
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(単位:百万円) |
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|
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
増減 |
増減率 |
上市済製品 |
16,248 |
10,177 |
6,071 |
60 |
ピヴラッツ® |
12,651 |
6,109 |
6,542 |
107 |
クービビック® |
1,336 |
1,500 |
△164 |
△11 |
呼吸器疾患 |
2,190 |
2,504 |
△314 |
△13 |
その他 |
71 |
64 |
7 |
11 |
研究・開発 |
12,587 |
2,589 |
9,998 |
386 |
契約一時金収入 |
1,392 |
- |
1,392 |
- |
マイルストン収入 |
8,505 |
608 |
7,897 |
1,299 |
前受収益取崩額(注) |
2,658 |
1,731 |
927 |
54 |
その他 |
32 |
250 |
△218 |
△87 |
合計 |
28,835 |
12,766 |
16,069 |
126 |
(注) 第5 経理の状況 21.売上収益 (4) 契約残高 ② 契約負債に含まれている前受収益より取り崩したものになります。
当連結会計年度の上市済製品に関する収益は、前連結会計年度に比べ6,071百万円増加し、16,248百万円となりました。内訳は以下の通りです。
ピヴラッツ®
日本において自社で販売する脳血管攣縮治療薬ピヴラッツ®の製品販売による収益を指します。当連結会計年度は前連結会計年度に比べ107%増加しました。これはピヴラッツ®の販売が好調に推移したこと、また前連結会計年度はNPJを連結範囲に含めた2023年7月以降の約5か月分が計上されたのに対し、当連結会計年度は12か月分が計上されたことによります。
クービビック®
提携先の塩野義製薬から得ている、主に販売に応じたロイヤリティ及び製品供給による収益を指します。当連結会計年度は前連結会計年度に比べ11%減少しました。これは前連結会計年度に旧提携先の持田製薬からIdorsia Pharmaceuticals Ltd を通じて受領した一過性のマイルストンがあったのに対し、当連結会計年度は塩野義製薬からロイヤリティ、製品売上、契約一時金、マイルストン収入を受領したことによります。
呼吸器疾患
提携先のノバルティス社から、ウルティブロ®、シーブリ®及びエナジア®(注)の売上に関連して得ている、ロイヤリティによる収益を指します。当連結会計年度は前連結会計年度と比較して13%減少しました。これはウルティブロ®及びシーブリ®が成熟期に入っていることによります。
(注) シーブリ®、ウルティブロ®及びエナジア®はノバルティス社の登録商標です。
当連結会計年度の研究・開発に関する収益は、前連結会計年度に比べ9,998百万円増加し、12,587百万円となりました。内訳は以下の通りです。
契約一時金収入
新規の提携先と研究・開発段階における契約開始時に受領し、かつ認識される収益を指します。当連結会計年度は前連結会計年度と比較して1,392百万円増加しました。これは前連結会計年度には新規契約が無かったのに対し、当連結会計年度はベーリンガーインゲルハイム社と新規グローバル提携及びライセンスの独占的オプション契約を締結したことによります。
マイルストン収入
既存の提携先が研究・開発段階における一定の進捗を達成した時に受領し、かつ認識される収益を指します。当連結会計年度は前連結会計年度と比較して7,897百万円増加しました。これは前連結会計年度にマイルストンの達成が3件であったのに対し、当連結会計年度は5件であったことによるものです。
前受収益取崩額
研究・開発段階において受領済の契約一時金及びマイルストンのうち、前受収益として受領し、研究開発計画の開始時から完了予定時までの総見積時間または費用に対する期末日までの実際発生時間または費用の割合に応じて、収益計上額を測定し同額の前受収益を取り崩して売上収益に振り替えた額を指します。2024年12月末時点で、これらの前受収益の残高は6,916百万円であり、今後の研究開発の進捗に応じて前受収益取崩額として売上に計上される予定です。
(営業費用)
売上原価
当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度比4,514百万円増加し、7,616百万円となりました。なお、NPJ/NPKを連結範囲に含めたことによる影響を除く売上原価は、前連結会計年度比2,333百万円増加し、2,791百万円となりました。これは主に、2024年3月に開始されたベーリンガーインゲルハイム社との臨床段階での提携に関連する費用が発生したことによるものです。NPJを連結範囲に含めたことによるピヴラッツ®及びクービビック®の売上原価を4,825百万円計上しております。
研究開発費
当連結会計年度の研究開発費は、前連結会計年度比1,741百万円増加し、11,816百万円となりました。なお、NPJ/NPKを連結範囲に含めたことによる影響を除く研究開発費は、前連結会計年度比1,139百万円増加し、10,333百万円となりました。これは主に、研究開発への投資の増加、及び円安の影響によるものです。NPJ/NPKを連結範囲に含めたことによる研究開発費を1,483百万円計上しております。
当連結会計年度においては、研究開発費全体の87%は英国における活動によるものです。
販売費及び一般管理費
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度比6,050百万円増加し、16,015百万円となりました。なお、NPJ/NPKを連結範囲に含めたことによる影響を除く販売費及び一般管理費は、前連結会計年度比833百万円増加し、7,043百万円となりました。サプライチェーンマネジメントを含む組織力強化のための委託費及び人件費の増加、及びITシステム統合費用、並びに「ネクセラファーマ」ブランドでのグループ統一のための費用発生によるものです。NPJ/NPKを連結範囲に含めたことによる無形資産の償却費を含む販売費及び一般管理費を8,972百万円計上しております。
その他の収益及びその他の費用
当連結会計年度のその他の収益及びその他の費用の純額は、前連結会計年度比339百万円増加し、1,189百万円の収益となりました。これは主に、英国の研究開発税額控除です。
(営業損益)
上記の結果、当連結会計年度の営業損益は、5,423百万円の損失(前連結会計年度は9,526百万円の損失)となりました。
金融収益及び金融費用
当連結会計年度の金融収益及び金融費用の純額は、前連結会計年度比1,915百万円増加し、761百万円の収益となりました。これは主に、英国において金利が大幅に上昇したことに伴う預金利息の増加、及び社債償却原価の減少によるものです。
(税引前当期損益)
上記の結果、当連結会計年度の税引前当期損益は、4,662百万円の損失(前連結会計年度は10,680百万円の損失)となりました。
法人所得税費用
当連結会計年度の法人所得税費用は176百万円(前連結会計年度は△3,487百万円)となりました。これは主に、当連結会計年度はNPU及びNPJにおいて課税所得に対し法人税等を計上した一方で、前連結会計年度は欠損金に関する繰延税金資産を計上したことによるものです。
(当期損益)
上記の結果、当連結会計年度の当期損益は、4,838百万円の損失(前連結会計年度は7,193百万円の損失)となりました。
(代替業績評価指標:コア営業損益)
コア営業損益は、中核事業の潜在的な経常キャッシュ創出能力を示すために、重要な非現金支出費用及び一時的な費用を調整した代替的な業績評価指標です。
当連結会計年度のコア営業損益は、3,606百万円の利益(前連結会計年度は3,076百万円の損失)となりました。
コア営業損益はIFRSの営業損益に対して以下の調整を行い算出しております。
・ 有形固定資産の減価償却費1,613百万円(前連結会計年度比630百万円増加、うちNPJ/NPKを連結範囲に含めたことによる増加額808百万円)
・ 無形資産の償却費2,371百万円(前連結会計年度比876百万円増加、うちNPJ/NPKを連結範囲に含めたことによる増加額1,428百万円)
・ 株式報酬費用1,396百万円(前連結会計年度比552百万円増加)
・ 構造改革費用28百万円(前連結会計年度比25百万円減少)
うち0百万円(前連結会計年度は26百万円)は構造改革に係る株式報酬費用の加速償却の影響によるものです。
構造改革費用は子会社の執行体制の変更に伴う費用となります。
・ 売上原価調整額2,401百万円(前連結会計年度比589百万円増加)
売上原価調整額は2023年7月の企業結合により取得した棚卸資産の販売時に、売上原価に計上されるものです。当連結会計年度に当該棚卸資産は払い出しが完了しました。以後の調整は発生しません。
・ 統合関連費用1,220百万円(前連結会計年度発生なし)
統合関連費用は、グループ統合推進のための一時的支出費用であり、システム統合費用や「ネクセラファーマ」ブランドのもとでのブランド再構築費用を含んでいます。
・ 企業買収関連費用(専門家アドバイザリー費用含む)当連結会計年度発生なし(前連結会計年度は1,263百万円)
当連結会計年度の財政状態の分析は以下のとおりです。
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ5,700百万円減少し、151,498百万円となりました。これは主に、借入金の返済をしたことにより、現金及び現金同等物が減少したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ7,408百万円減少し、82,980百万円となりました。これは主に、借入金の返済をしたことによるものです。
(資本)
当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末に比べ1,708百万円増加し、68,518百万円となりました。これは主に、在外営業活動体の為替換算差額の増加等によりその他の資本の構成要素が5,157百万円、及び事後交付型株式報酬(RSU)の費用計上に伴い資本剰余金が1,026百万円増加した一方で、当期損失4,838百万円により利益剰余金が減少したことによるものです。
なお、現金及び現金同等物並びに有利子負債の総資産に占める比率及び親会社所有者帰属持分比率は、それぞれ21.3%、44.8%、45.2%となります。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ16,797百万円減少し、当連結会計年度末は32,268百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、7,718百万円の支出となりました。これは主に、クービビック®の販売増加が見込まれる中で安定供給を確保するべく、2024年第4四半期に5,937百万円の原薬(今後1年超の供給に相当)を購入したことで、棚卸資産が増加し、営業に関する現金支出が売上に関する現金収入を上回ったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、4,763百万円の支出となりました。これは主に、無形資産の取得による支出、及び定期預金(3か月超6か月以内)の預入れによる支出です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、6,854百万円の支出となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出によるものです。
(3)資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、製品販売及び、共同開発やライセンス契約に基づく提携パートナー企業からの契約一時金、マイルストン収入並びにロイヤリティ収入により事業を推進するための運転資金を創出しています。また、持株会社である当社の新株発行、社債発行及び借入等により運転資金及び事業買収にかかる資金を調達しています。
当社グループは主に、導入品の販売及び、保有している候補薬の臨床開発や将来における自社開発パイプラインの研究開発を進めるための投資を継続していきます。
「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 8.金融商品 (1) 資本管理」に、資本管理に関する定量的情報を記載しております。
(4)生産、受注及び販売の実績
当社グループの事業は医薬品事業の単一セグメントであります。
① 生産実績
(a) 生産実績
当連結会計年度における生産実績は以下のとおりです。
(単位:百万円)
|
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
増減率 (%) |
生産実績 |
10,996 |
- |
- |
(注)1 生産実績の金額は販売価格により算出したものであります。
2 当連結会計年度より、当社グループ内においてピブラッツ®及びクービビック®の生産を開始しております。
(b) 商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績は以下のとおりです。
(単位:百万円)
|
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
増減率 (%) |
商品仕入実績 |
711 |
111 |
541.8 |
(注)商品仕入実績の金額は仕入価格によっております。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績は以下のとおりです。
(単位:百万円)
受注実績
|
前年同期比 (%) |
受注残高
|
前年同期比 (%) |
1,859 |
- |
1,122 |
- |
(注)1 受注実績の金額は販売価格により算出したものであります。
2 当連結会計年度において、クービビック®の受注生産を開始しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績は以下のとおりです。
(単位:百万円)
区分 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
増減率 (%) |
上市後の医薬品 |
16,248 |
10,177 |
59.7 |
創薬 |
12,587 |
2,589 |
386.2 |
合計 |
28,835 |
12,766 |
125.9 |
前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりです。
相手先 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
株式会社メディパルホールディングス |
7,584 |
26.3 |
4,070 |
31.9 |
Neurocrine Biosciences Inc. |
7,335 |
25.4 |
21 |
0.2 |
Novartis International AG |
2,190 |
7.6 |
2,504 |
19.6 |
Idorsia Pharmaceuticals Ltd.(注)2 |
- |
- |
1,500 |
11.8 |
(注)1 上記には、顧客のグループ会社の金額も含めて記載しております。
2 Idorsia Pharmaceuticals Ltd.への売上収益は、持田製薬株式会社からのマイルストン収益に関するものです。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの重要性がある会計方針、会計上の見積りにつきましては、「第5 経理の状況、1.連結財務諸表等、(1) 連結財務諸表、連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針、4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。
当連結会計年度における当社グループの経営上の重要な契約は、以下のとおりです。
(1)ネクセラファーマ株式会社を当事者とする契約
① 金銭消費貸借契約
契約名 |
金銭消費貸借契約書 |
相手方 |
株式会社みずほ銀行 |
契約締結日 |
2023年7月20日 |
最終返済日 |
2030年7月11日 |
主な契約内容 |
イドルシアファーマシューティカルズジャパン株式会社(現ネクセラファーマジャパン株式会社)、及びIdorsia Pharmaceuticals Korea Co.,Ltd.(現Nxera Pharma Korea Co.,Ltd.)の発行済全株式並びに関連する知的財産権を取得する資金等に充当する目的で、400億円を借り入れる。 |
(2)Nxera Pharma UK Limitedを当事者とする契約
① ライセンスに関する契約
契約名 |
License Agreement |
相手方 |
Novartis International Pharmaceutical Ltd., Vectura Group Plc. |
契約締結日 |
2005年4月12日 |
契約期間 |
契約締結日から①Nxera Pharma UK Limited(以下「NPU」)及び共同ライセンサーであるVectura Group Plc.が許諾した最後の特許が満了する日、又は②NPU又は実施権者により商業化された最後の商品の発売開始日から10年が経過した日のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
NPU及びVectura Group Plc.はNovartis International Pharmaceutical Ltd.に対し、NVA237及びQVA149の全世界における開発及び商業化の独占的権利を許諾 |
契約名 |
Research Collaboration and License Agreement |
相手方 |
Pfizer Inc. |
契約締結日 |
2015年11月18日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の最終の特許期間満了日又は②市販開始から10年経過のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
複数の領域における最大 10 種の GPCR ターゲットに関する新規医薬品の独占的開発・製造販売権をPfizer Inc.に許諾し、これによりPfizer Inc.から開発・販売マイルストン及び売上高に応じたロイヤリティを受領 |
契約名 |
Research Collaboration and License Agreement |
相手方 |
Genentech, Inc. |
契約締結日 |
2019年7月12日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日又は②市販開始から10年経過のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
複数のGPCRターゲットを対象として共同開発を実施し、Genentech, Inc.に対し、特定された独占的ターゲットについて、全世界における独占的開発、製造販売権を許諾し、その対価として、契約一時金、マイルストン及びロイヤリティを受領 |
契約名 |
Collaboration and Option to License Agreement |
相手方 |
AbbVie Ireland Unlimited Company |
契約締結日 |
2020年6月24日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日、②市販開始から10年経過又は③法令上の独占期間の終了日のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
AbbVie Ireland Unlimited Companyと共同開発により新規医薬品候補を見出し、同社に対しグローバルな開発・販売を行うことの独占的ライセンスオプションを許諾。その対価として、契約一時金と初期マイルストン、マイルストン及び販売高に応じた段階的ロイヤリティを受領。AbbVie Ireland Unlimited Companyは合計で最大4種までターゲットを拡大できるオプションを保持 |
契約名 |
Collaboration and License Agreement |
相手方 |
Tempero Bio, Inc. |
契約締結日 |
2020年11月2日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日又は②市販開始から10年経過のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
Tempero Bio, Inc.に対し、開発候補品HTL0014242を含む、代謝型グルタミン酸受容体5(mGlu5)NAMのポートフォリオに関するグローバルでの独占的権利を許諾し、その対価として、契約一時金および戦略的株式持分としてTempero Bio, Inc.の株式、マイルストン及びロイヤルティを受領 |
契約名 |
License, Assignment and Research Service Agreement (Amended and Restated) |
相手方 |
Orexia Limited and Inexia Limited(Centessa Pharmaceuticals Limitedグループ) |
契約締結日 |
2021年1月29日 |
契約期間 |
①ライセンス対象知的財産の特許期間満了、②ロイヤリティ期間の満了又は③契約発効日から15年経過のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
共同研究開発提携のもと、オレキシン受容体作動薬化合物の開発権を付与し、その対価として売上高に応じた株式受領権、マイルストン、ロイヤルティ等を受領。株式受領権は、Centessa Pharmaceuticals Limited株式に交換された。 |
契約名 |
Collaboration and License Agreement |
相手方 |
Neurocrine Biosciences, Inc. |
契約締結日 |
2021年11月22日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日、②市販開始から10年経過又は③法令上の独占期間の終了日のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
アルツハイマー病等の神経系疾患を適応とする新規ムスカリン受容体サブタイプ選択的作動薬化合物群に関する独占的開発・製造販売権をNeurocrine Biosciences, Inc.に許諾し、その対価として、契約一時金、開発・販売マイルストン及び売上高に応じたロイヤリティを受領 |
契約名 |
Amendment to Collaboration and Option to License Agreement |
相手方 |
AbbVie Global Enterprises Ltd. |
契約締結日 |
2022年8月1日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日、②市販開始から10年経過又は③法令上の独占期間の終了日のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
AbbVie Global Enterprises Ltd.と共同開発により神経疾患におけるターゲットを対象とした新規医薬候補品を見出し、同社に対しグローバルな開発・販売を行うことの独占的ライセンスオプションを許諾。その対価として、契約一時金、マイルストン及び販売高に応じた段階的ロイヤリティを受領 |
契約名 |
Multi-Target Collaboration and License Agreement |
相手方 |
Eli Lilly and Company |
契約締結日 |
2022年12月15日 |
契約期間 |
契約締結日から対象製品及び対象国ごとに、①対象特許権等の特許期間満了日、②市販開始から10年経過又は③法令上の独占期間の終了日のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
Eli Lilly and Companyと共同開発により糖尿病・代謝性疾患における複数ターゲットを対象とした新規医薬候補品を見出し、同社に対し全世界における独占的開発、製造販売権を許諾し、その対価として、契約一時金、マイルストン及び段階的ロイヤリティを受領 |
契約名 |
Collaboration and License Option Agreement |
相手方 |
Boehringer Ingelheim International Gmbh |
契約締結日 |
2024年3月8日 |
契約期間 |
契約締結日からロイヤルティ支払い義務期間終了まで |
主な契約内容 |
BOEHRINGER INGELHEIM INTERNATIONAL GMBHと共同開発によりGPR52受容体作動薬ポートフォリオを開発し、同社に対しグローバルな開発・販売を行うことの独占的ライセンスオプションを許諾。その対価として、契約一時金、オプション行使金、マイルストン及び段階的ロイヤリティを受領 |
(3)ネクセラファーマジャパン株式会社を当事者とする契約
① ライセンスに関する契約
契約名 |
License Supply and Commercialization Agreement |
相手方 |
塩野義製薬株式会社 |
契約締結日 |
2024年9月17日 |
契約期間 |
契約締結日から①市販開始から10年経過又は①対象特許権等の満了に伴う後発品発売のいずれか遅い日まで |
主な契約内容 |
塩野義製薬株式会社に対し日本におけるクービビック®の流通と販売の独占的権利を付与し、契約一時金及び売上高に応じたロイヤリティ等を受領。また、日本市場においてクービビック®製剤を供給 |
当社グループは、製品開発型のバイオ医薬品企業として、経営資源を医薬品の研究開発活動に集中しています。研究開発費は、当社グループが保有する開発品の開発費、次期開発候補品の探索及び創薬基盤技術の研究に係る費用で構成されています。
当連結会計年度における、IFRSに基づく当社グループの研究開発費は
研究開発活動の具体的な内容は、以下のとおりです。
(1)創薬デザインで創出した価値の高いプログラムを推進
当社グループは、成功のための戦略として、「NxWave™」プラットフォームを活用して、自社で開発した個別の候補化合物やプログラム、あるいは提携先が選定したターゲットに対する候補化合物の創薬・開発に関して、世界的なバイオ医薬品企業と提携を行ってきました。当社グループは、これらの提携の多くで、神経疾患及び精神神経疾患、代謝性疾患、免疫疾患、炎症性疾患など、医薬品市場で最も急成長している領域の開発プログラムに対する経済的権利を有しています。
この戦略目標におけるこのような実績は、当社グループのアプローチが業界で受け入れられていることの重要な証拠となるものであり、これまでに提携先からの契約一時金とマイルストンにより10億ドル近い収益を生み出しており、さらなるマイルストンの達成によって重要な継続的収益となる可能性があります。
同時に、当社グループは、社内の研究開発体制をプログラム重視型モデルに転換し、質の高い候補化合物の臨床開発段階への移行を加速させることを重要な目標としています。これは、日本及びAPACでの一部の適応症において、自社で開発から販売まで行う機会と収益可能性の高い導出案件を創出することを目的としています。
提携プログラム
2024年3月11日、当社グループは、Boehringer Ingelheim International GmbH(以下「ベーリンガーインゲルハイム社」)と新規グローバル提携及びライセンスの独占的オプション契約を締結したことを発表しました。当社グループが創出したファーストインクラスの治療薬候補であるGPR52受容体作動薬ポートフォリオの開発及び商業化を両社共通の目的としています。GPR52受容体作動薬は統合失調症の陽性症状、陰性症状及び認知機能障害を同時に改善し、患者さまの予後を向上できることが期待されています。
当社グループは、契約一時金として25百万ユーロ、オプション行使料として60百万ユーロをベーリンガーインゲルハイム社から受領する権利を有しています。また、開発、申請・承認、販売の目標達成に応じ、最大670百万ユーロのマイルストンを受領する権利に加えて、段階的ロイヤリティを受領する権利を有しています。本契約一時金は2024年3月に一括で受領していますが、その大半を2024年に、残りを2025年に売上として計上する予定です。当社グループの収益は、IFRSの収益認識に関する会計基準に基づき、履行義務の充足に応じて認識しています。
ファーストインクラスのGPR52受容体作動薬であるNXE0048149で現在実施中の第Ⅰ相臨床試験と第Ⅰb相臨床試験などの必要なデータが揃った後、本契約に基づきベーリンガーインゲルハイム社は当社グループのGPR52作動薬ポートフォリオのライセンスに関する独占的オプション権を保有することになります。2025年もしくは2026年に予定されている本オプション権行使まで、当社グループはこれらの臨床試験を引き続き主導し管理していきます。ライセンスの対象となるポートフォリオには、NXE0048149に加え、複数の異なるバックアップ化合物が含まれます。
2024年4月16日、当社グループは、提携先であるNeurocrine Biosciences Inc.(以下「ニューロクライン社」)から、NBI-1117568の長期前臨床毒性試験の成功を通知されたことを発表しました。NBI-1117568は経口投与可能なムスカリンM4受容体作動薬で、統合失調症及びその他の神経精神疾患治療薬候補として第Ⅱ相臨床試験を実施中(2024年4月時点)でした。この長期前臨床毒性試験の成功に伴い、その後実施される臨床試験において、安全に長期投与を行うための米国食品医薬品局(以下「FDA」)の要件を満たしました。この安全性に係る重要な進捗達成により、当社グループはニューロクライン社から15百万米ドルのマイルストンを受領しました。
ニューロクライン社と2021年に締結した提携契約のもと、主要な神経疾患の治療薬開発を目指して、サブタイプ選択的ムスカリンM4、M1及びM1/M4デュアル受容体作動薬の広範な新薬ポートフォリオを当社グループは創出してきました。NBI-1117568は、そのポートフォリオの中で最も開発が進んでいる候補品です。これらの候補品は、様々な神経疾患や神経精神疾患の治療薬となることが期待されており、以下の品目が含まれます。
NBI-1117568(M4作動薬)第Ⅲ相臨床試験を2025年前半に開始予定
NBI-1117570(M1/M4デュアル作動薬)第Ⅰ相臨床試験実施中
NBI-1117569(M4-preferring作動薬)第Ⅰ相臨床試験実施中
NBI-1117567(M1-preferring作動薬)第Ⅰ相臨床試験実施中
2024年5月9日、当社グループは、ニューロクライン社が、NBI-1117567の安全性、忍容性、薬物動態及び薬力学を評価する、健常成人を対象とした第Ⅰ相臨床試験を開始したことを発表しました。NBI-1117567は、当社グループが見出したムスカリンM1受容体作動薬(M1-preferring agonist)であり、神経・精神疾患の認知症状に対する経口治療薬となることが期待されています。
2024年5月30日、当社グループは、当社グループが設計し、協業先であるCentessa Pharmaceuticals Limited(以下「Centessa社」)が開発中の新規オレキシン2受容体(OX2R)作動薬ORX750に関するライセンス契約に基づき、Centessa社から4.6百万米ドルのマイルストンを受領することを発表し、当該マイルストンを2024年6月までに受領しています。本マイルストンは、ORX750について、FDAに新薬臨床試験開始申請(IND)が受理され、第Ⅰ相臨床試験が開始されたことに伴うものです。ORX750は、ナルコレプシー1型(NT1)におけるオレキシン産生ニューロンの脱落の基礎病理に直接作用するよう設計された選択的経口OX2R作動薬です。また、ORX750はナルコレプシー2型(NT2)、特発性過眠症、その他のオレキシン値の減少を伴わない睡眠・覚醒障害にも応用できる可能性を持っています。
2024年6月27日、当社グループは、AbbVie Inc.(以下「アッヴィ社」)との神経疾患における複数のターゲットを対象とした創薬提携において研究段階における重要なマイルストンを達成したことを発表しました。この成果により、当社グループは10百万米ドルを受領しています。当社グループとアッヴィ社は、当社グループの「NxWave™」プラットフォームを活用し、神経疾患に関するGPCRをターゲットとした新薬の研究開発と商品化を目指し、2022年に本創薬提携及びライセンスのオプション契約を締結しています。本契約に基づき、当社グループは、最大40百万米ドルの初期開発マイルストンを受領する権利を有しており、さらにオプション行使や開発・販売の目標達成に応じ、最大12億米ドルのマイルストンに加えて、グローバルでの販売高に応じた段階的ロイヤリティを受領する権利を有しています。
2024年8月28日、当社グループは、ニューロクライン社が、統合失調症の成人を対象としたNBI-1117568の第Ⅱ相臨床試験で良好な結果が得られたと公表したことを開示しました。NBI-1117568-SCZ2028用量設定試験は、20 mg 1日1回投与群で主要評価項目を達成しました。6週時点における統合失調症の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS:Positive and Negative Syndrome Scale)合計スコアは、プラセボ投与群と比較し平均7.5ポイントの改善(ベースラインから18.2ポイントの改善)となり、臨床的に意味があり統計学的にも有意な改善(p=0.011、効果量0.61)が認められました。また、20 mg 1日1回投与群では、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スケール、Marder因子スコア(陽性症状)、Marder因子スコア(陰性症状)などの追加評価項目においても統計学的に有意な改善が認められました。
また、全ての投与量群においてNBI-1117568の安全性と忍容性は概ね良好でした。有害事象による投与中止率はNBI-1117568投与群とプラセボ投与群で同程度でした。最も高頻度で報告された有害事象は傾眠、めまい、頭痛でした。吐き気や便秘などの消化器系の有害事象は発生頻度が低く、プラセボ投与群と同程度でした。心血管関連の有害事象も発生頻度は低く、いずれの用量においても臨床的な関連性は認められませんでした。プラセボ投与群と比較して、NBI-1117568投与群において体重増加との関連性は見られませんでした。錐体外路症状の有害事象はほとんど報告されませんでした。
2024年9月2日、当社グループは、統合失調症の成人を対象としたNBI-1117568の第Ⅱ相臨床試験が良好な結果を達成し、事前に定められたマイルストン受領要件の全てが満たされたと確認されたことを受け、ニューロクライン社より35百万米ドルを受領することになったと発表しました。本マイルストンは、2024年12月期第3四半期に一括で収益計上しています。
2024年9月11日、当社グループは、提携先であるCentessa社が、急性睡眠不足の健常人を対象としたORX750の第Ⅰ相臨床試験に関して、良好な中間結果を公表したことを開示しました。ORX750の2用量(1.0 mgと2.5 mg)について、覚醒維持検査(MWT)においてプラセボと比較して臨床的に意味があり統計的に有意な平均睡眠潜時の改善を示しました。2.5 mg投与群では平均睡眠潜時は32分となり、標準的な覚醒状態に回復することを示しました。また、ORX750の安全性及び忍容性は良好であり、他のOX2R作動薬で頻繁に報告される標的由来の有害事象は観察されませんでした。また、データカットオフ時点において、試験中に投与された3つの用量(1.0 mg、2.0 mg、2.5 mg)における肝毒性及び視覚障害は認められていません。
2024年11月13日、当社グループは、Centessa社が、NT1、NT2、及び特発性過眠症の患者を対象としたORX750の第Ⅱ相臨床試験を開始したことを発表しました。
自社開発プログラム
2024年3月21日、当社グループは、炎症性腸疾患「以下(IBD)」の治療薬候補であるEP4受容体作動薬(NXE0033744)の第Ⅰ相臨床試験で、最初の被験者への投与を行ったことを発表しました。IBDは世界中で数百万人を超える患者さまがおり、いまだ大きなアンメットニーズが存在する疾患です。
NXE0033744は、選択性が高く、消化管で局所作用するプロスタグランジンEP4受容体作動薬です。有害事象を回避するために全身への影響を最小限に抑えながら、損傷した粘膜上皮の治癒を促進し、腸管の炎症亢進を抑制することで治療効果を発揮するように特別に設計されています。このアプローチは、完全寛解を促進し、長期的な臨床結果も良好となることが広く認められています。NXE0033744は、症状を十分にコントロールできていないIBDの患者さまの大きなアンメットニーズを満たすことを目標としています。なお、現在のIBD治療薬の寛解率は通常25%未満であり、安全性プロファイルを理由に慎重なモニタリングが必要とされています。
本第Ⅰ相臨床試験は、NXE0033744の安全性や薬物動態に加え、薬力学的バイオマーカーへの影響を評価する、無作為化二重盲検単回及び反復投与量漸増試験です。健常成人に加えクローン病患者も対象とし、バイオマーカー評価による作用機序の検証も行います。本試験は英国で実施され、最初のデータリードアウトは2025年になる予定です。
2024年3月21日、当社グループは、IBDに対する新規治療薬候補として開発中の、ファーストインクラスの治療薬となる可能性のある選択的経口GPR35受容体作動薬NXE0027477(GSK4381406)について、GlaxoSmithKline plc.(以下「GSK社」)からの全権利再取得を完了したことを発表しました。GPR35受容体はIBDと遺伝学的な関連性が検証済みのオーファンGPCRの一つです。
NXE0027477は「NxWave™」プラットフォームを用いて設計され、2020年にGSK社にライセンスされました。以来、当社グループとGSK社による共同開発プログラムを通じて得られた基礎研究や前臨床試験及び安全性試験の結果により、潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群(IBS)などの消化器疾患において、GPR35受容体作動薬がバリア機能を改善し内臓痛の改善に効果がある可能性が示唆されました。また、英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は、2023年半ばにNXE0027477の第Ⅰ相臨床試験実施を承認しました。
GSK社によるプログラムの優先順位の変更を受け、当社グループは、一時金を支払うことなく、NXE0027477の所有権、当社グループからGSK社に許諾した関連する全ての知的財産、及び提携から生み出された全ての前臨床データの権利を再取得しました。当社グループは、本品目の今後の開発に向けて、自社開発や外部提携を含め最善の戦略を決定する予定です。
(2) 最先端のサイエンスとテクノロジーを活用
合理性の高い構造ベース創薬アプローチでGPCR構造を解明することができる当社グループの能力とリーダーシップは、業界全体で認知されています。それにより、30品目を超える新薬候補とプログラムを創出しており、グローバルバイオ医薬品企業との提携あるいは社内で開発が進められています。
この強力かつ世界をリードするプラットフォームにより、当社グループの幅広いパイプラインに、新規ターゲットや候補化合物を前例のないレベルで追加することが可能になります。当社グループは、産学界のグローバルテクノロジーリーダーとの協業に加え、AI(人工知能)や機械学習の幅広い応用などの絶え間ない社内イノベーションを通じて、プラットフォームの強化に注力しています。現在、PrecisionLife Limited(以下「PrecisionLife社」)、Antiverse Ltd(以下「Antiverse社」)などと技術提携を行っています。
2024年5月30日、当社グループと、AIを活用したプレシジョンメディシン(精密医療)を目指すPrecisionLife社は、新規創薬ターゲットの同定を目的とした戦略的研究開発提携の対象を自己免疫疾患へ拡大したことを発表しました。これは、当社グループとPrecisionLife社が2022年に締結した共同研究開発契約における最新の進捗です。本提携では、自己免疫疾患において新規創薬ターゲットを同定したのち、PrecisionLife社が持つバイオマーカーにより患者さまを層別化し、各サブグループに適した治療薬の開発を行います。PrecisionLife社は、疾患リスクや予防効果に関連する生物学的特徴の組み合わせを発見しています。この組み合わせは、治療薬に効果がある患者さまを特定するためのバイオマーカーや、疾患の誘発因子に関する生物学的知見を提供し、当社グループが既存及び新規の創薬ターゲットがどの患者群に効果的かをより正確に特定する手助けとなる可能性があります。
2024年11月5日、当社グループは、創薬が困難な標的に対する抗体設計を手掛けるバイオ医薬品企業である Antiverse社と、GPCRに対する抗体設計を目的とした複数のターゲットを対象にした新規提携及びライセンス契約を締結したことを発表しました。本提携により、機械学習を用いて作成したAntiverse社独自の「エピトープ特化型ライブラリー」を含む、生成AI を活用した抗体設計の専門知識と、GPCR ターゲットの選定、バリデーション、構造決定のための強力なツールである当社の「NxWave™」プラットフォームを活用します。本提携では、アンメットニーズの高い複数の疾患に対する画期的な治療法の実現を目指しています。最初のプロジェクトでは、創薬が困難なGPCRターゲットに対してアゴニストの機能を持つ抗体設計に取り組みます。複数年にわたる本契約に基づき、Antiverse社は契約一時金及び研究資金を受領し、さらにマイルストンを受領する権利を有します。当社は、抗体医薬候補品の開発及び商業化に関するグローバルな独占的権利を保有します。