第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営理念

 当社グループは、

・人を大切にし、人を育てる

・どのような社会の変化にも対応する

・地球環境問題への取組みなど社会的責任を果たす

・パッケージのトータルソリューション企業として社会の発展と繁栄に貢献する

を経営理念とし、業績の継続的な成長と企業価値の向上を目指し、株主の皆様のご期待にお応えしていく所存です。

 

 当社グループは「愛し愛され」の社是のもと、パーパス(存在意義)を「パッケージを通して社会を豊かに、人を笑顔に」と定め、サステイナブル経営を実践します。パッケージのトータルソリューション企業として、パッケージの新たな価値を創造することで、ステークホルダーのさまざまな課題を解決し、持続可能で笑顔あふれる豊かな社会を実現します。そのために、どのような社会の変化にも対応できるような体制を整え、持続的に成長することで、環境-社会-経済に対して当社グループならではの価値を提供していきます。

 

(2) 目標とする経営指標

 当社グループは、各事業の収益性向上を図り、株主の皆様はもちろん、取引先・従業員等のステークホルダー各

位が安心かつ安定したお付合いを続けていただけるように、確固たる財務基盤を築く必要があります。その為に自己

資本利益率と資本投下利益率の向上に努め、なおかつ、安定的な配当に留意した経営に努めてまいる所存です。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社の属する業界は、既存の顧客、取扱い製品だけでは大きな業績の伸長を望みにくい成熟産業とされています。そのため、当社は、従来からの主力製品に加え、米袋、紙おむつ用外袋、食品用パッケージ等、販売先市場の開拓及び取扱い製品の拡充をしてまいりました。今後も、需要が見込める新たな市場の開拓や製品の開発に注力し、必要となる設備には積極的に投資して事業の拡大に努めてまいります。

 近年では原材料や輸入品の価格上昇に加え、物流費やエネルギー価格の上昇にも直面しています。当社は、企画提案販売と品質管理を強化し顧客満足度の向上を図ることで適正価格による販売に努めます。また、業務改革による合理化を一層推進して利益体質強化を図り、中長期的な経営戦略を着実に実行することで、さらなる業績の向上に努める所存です。

 他方、当社は「パッケージのトータルソリューション企業として社会の発展と繁栄に貢献する」、「地球環境問題への取組みなど社会的責任を果たす」を経営理念として、1981年に包装資料館(現パッケージラボ)を設置して国内外のパッケージ研究及び情報発信の拠点とした他、1993年より森林保全活動費用を拠出し、主力事業におきましては環境対応新商品及び新技術の開発に積極的に取り組みながら、2000年には「ザ・パックフォレスト®環境基金」を設立し、NPO法人と協働で植林活動・森林保全活動を推進しております。さらに、1999年の茨城工場を皮切りに、現在は当社の国内4工場及び全事業所においてISO14001「環境マネジメントシステム」、ISO9001「品質マネジメントシステム」の認証を取得しております。また、紙を素材としたパッケージ製造を行う全工場と全販売部門でFSC® CoC認証(FSC® C020517)、東京・大阪工場の食品用紙器製造ラインでFSSC22000認証を取得しております。2023年より当社グループにおけるサステイナブル経営推進のため、サステイナブル委員会を設置しております。今後も、地球環境問題への積極的な取組みと、社会の発展と繁栄に継続的に貢献していく所存です。

 

(4) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、「進化 -パーパス経営・サステイナブル経営のスタート-」を中期経営計画のスローガンに掲げ、連結売上高1,070億円、営業利益83億円(2025年12月期)の達成を目標としております。

 

① 成長戦略

a.食品市場(コンビニ・ファストフード含む)への注力

食品用紙製一次容器の販売強化のため設備投資及び新商品開発への取組みや、紙器の組立て・商品詰め作業等の顧客の人手不足を補うサービスを付加した複合提案を強化します。

b.EC/通販市場/物流業界への注力

輸送効率向上に貢献する紙製宅配袋や薄型配送資材の供給能力向上及び販売強化、また梱包作業の省人省力化に向けたソリューション提案に注力します。

c.一般流通小売市場等への深耕

製造設備増強により生産性・生産能力を向上させ、紙化を推進、紙袋シェアの拡大を図ります。また、環境対応商品の販売額の一部についてNPOを通じ「ザ・パックフォレスト®環境基金」として森林保全活動に役立ててお客様とともに社会貢献を推進するとともに、ブランド価値向上及びビジネスチャンス創出を図ります。

 

② 人的資本戦略

a.多様な人材の確保

・キャリア採用の強化

・女性活躍推進(正社員及び管理職比率)

・障がい者雇用の拡大

b.人材育成

・研修制度の充実

・自発的なスキルアップ及びリスキリング支援

c.人材配置の適正化

・タレントマネジメントシステムの有効活用

・採用機会の拡大(リファラル・カムバック採用)

d.働く環境の整備

・多様な勤務形態と制度の充実

・ウェルビーイング(健康経営の推進)

e.従業員エンゲージメントの最大化

・適正な賃金体系、福利厚生の充実化

・持株会への加入による経営参画意識の向上

・社員の交流とコミュニケーションの活性化

・エンゲージメントサーベイの実施

 

③ 財務戦略

成長投資(設備投資、新規事業への投資、人的投資、システム刷新への投資、研究開発)や株主還元(配当性向35%以上を維持、2024・2025年度各々年間10億円を上限とする自社株買い)において最適な資金使途計画により効率的、継続的な成長を支えてまいります。

 

(5) その他、会社の経営上重要な事項

 大阪工場及び奈良工場はともに築後相当年数が経過しており、今後の作業環境の改善、工場内自動化等による省人化・省力化及び生産性の向上を図るため、大阪工場と奈良工場は建替えを行う予定です。将来を見据えた付加価値の高い製品を生み出す生産体制の構築を目指します。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

① サステイナブル経営の基本方針

 当社グループは「愛し愛され」の社是のもと、パーパス(存在意義)を「パッケージを通して社会を豊かに、人を笑顔に」と定め、サステイナブル経営を実践します。パッケージのトータルソリューション企業として、パッケージの新たな価値を創造することで、ステークホルダーのさまざまな課題を解決し、持続可能で笑顔あふれる豊かな社会を実現します。そのために、どのような社会の変化にも対応できるような体制を整え、持続的に成長することで、環境・社会・経済に対して当社グループならではの価値を提供していきます。

 

② マテリアリティとその取組み

 当社グループはサステイナブル経営推進において、ESGの各テーマに「マテリアリティ」を特定しています。マテリアリティにもとづく重点テーマとして「地球環境への貢献」、「循環型社会への対応・気候変動への対応」、「雇用と人材育成・職場づくり」、「地域社会の発展と共生」、「コーポレートガバナンス体制の強化」を掲げています。またそれぞれのマテリアリティごとに、必要に応じてKPIを設け、実現のためのアクションプランを策定、マネジメント体制を構築しています。これらの活動を推進・強化するとともに、事業活動を通じた社会課題を解決し、当社は持続可能な成長(価値創造)を果たし、ひいては、持続可能で豊かな社会に貢献していきます。

(a)マテリアリティの特定プロセス

 「マテリアリティ」の特定のために、まず、当社バリューチェーンに沿って、「経営資本」を確認しました(財務資本、製造資本、人的資本、知的資本、社会・関係資本、自然資本)。これらの経営資本を維持、拡大するためのテーマとして「社会課題」を整理し、各課題における取組みを定義しました。各種取組みにおいては、「ステークホルダー」及び「当社」における重要性を考慮して、「マテリアリティ」としました。

 なお、「マテリアリティ」については、サステイナブル委員会から取締役会に答申し、承認を得ています。

(b)マテリアリティ一覧

 2022年に5つの主要テーマと12のマテリアリティを特定しました。具体的な取組みは下記のとおりです。これらの活動を推進・強化することで、持続可能で豊かな社会の実現に貢献していきます。

 

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(c)外部環境(リスクと機会)

 「どのような社会の変化にも対応」するため、直面すると想定されるリスク・機会を抽出しました。また、リスク・機会に対応するマテリアリティは下記のとおりです。

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(d)マテリアリティ及びKPIと過去5年実績

 2023年9月、5つのマテリアリティにKPIを定めました。達成に向けたマネジメント体制を構築し、2030年度までの達成を目指します。

 今後は、PDCAサイクルをまわしながら、進捗確認・評価・改善をしていきます。

 

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 マテリアリティ及びKPIを含めた当社サステナビリティへの取組みの詳細については、当社ウェブサイトの「サステイナビリティ」をご参照ください。

(URL https://www.thepack.co.jp/sustainability.html)

 

③ サステナビリティの推進体制

 当社では、取締役会のもと、2023年1月にサステイナブル委員会を設置し、当社グループにおけるサステイナブル経営推進について対応しています。サステイナブル委員会とその業務執行組織であるサステイナブル委員会事務局は、事業部会、業務部門・各グループ会社と連携し、サステイナブル経営の運営・推進及び重要テーマに関する方針の策定、取組みの進捗管理、中期経営計画への反映等について、審議、決定します。サステイナブル委員会事務局は、業務部門・グループ会社と連携して、アクションプランの推進、KPIの管理等を行います。

 取締役会は、サステイナブル委員会に諮問し、方針の決定、監督を実施します。事業部会はサステイナブル委員会と連携して、情報共有を行います。業務部門・各グループ会社は、各種施策を実行し、その結果やデータ等を提供します。

 監査役会及び監査室は、これらの取組みを補助的に監査します。

 

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(2)戦略

① 気候変動

 対象範囲を当社、対象年を2030年と設定し、2℃シナリオと、4℃シナリオの2つを検討しました。検討にあたっては、IEAが発行する「World Energy Outlook」の各シナリオ、IPCCが採用するSSP(共有社会経済経路)シナリオ、及びRCP(代表的濃度経路)シナリオ、日本政府等が発行した各種の将来予測や計画を参照しました。各事象に対しては「発生可能性」と「影響度」の2軸で評価し、事業リスクを大・中・小の3段階で評価しました。

 

② 人的資本

 当社は社是を「愛し愛され」、経営理念には「人を大切にし、人を育てる」を掲げ、人材を最優先すべき資本の一つと位置付けております。人事制度においては「人が育つ環境を作る」「社員が安心して働ける環境を作る」「誰もが認める優秀な社員を育てる」「強い組織を作る」を目指し、人材育成、職場環境整備に取り組んでおります。

 中期経営計画においては、個人・会社の成長と活性化を目指した人的資本戦略を策定し、「多様な人材の確保」「人材育成」「人員配置の適正化」「働く環境の整備」「従業員エンゲージメントの最大化」を図っております。

 

(3)リスク管理

 サステナビリティ関連のリスクについては、サステイナブル委員会の各プロジェクトチームでリスク分析やその重要性を評価し、機会の最大化とリスクの最小化を目指した対応策を策定、実施しております。また、活動状況については、定期的にサステイナブル委員会から取締役会へ報告、提言を行っております。

 気候変動に関連するリスクと機会の管理のため、サステイナブル委員会はリスクと機会の評価の見直しを毎年実施しています。リスクと機会のそれぞれを発生可能性、影響度、対応策の有無などで評価し、重要度を決定しています。リスクと機会の評価の見直しにあたっては、IEA、IPCC等の各種シナリオを参照し、必要に応じて関連する事業部にヒアリングを実施しています。気候変動に関連するリスクと機会のうち、重要度が高いものについては、サステイナブル委員会を通して取締役会に報告しています。サステイナブル委員会ではリスクと機会に対する対応策を立案し、設定した指標により対応策の進捗を管理しています。

 

(4)指標と目標

① 気候変動

 当社が設定した指標と目標は下記のとおりです。サステイナブル委員会のマネジメントのもと、目標達成に向けて各業務部門にて取組みを進めていきます。各工場ではガイドラインに沿って、より効率化できる機械設備を導入・増設しており、2025年以降も引き続き機械設備への投資を継続し、CO2削減に寄与していきます。

[目標]

 CO2排出量(Scope1+2)の削減:2030年までに、2018年度比で46%削減を目指します。

[Scope1+2の実績]

 2024年は対前年で3.6%の減少となりました。製造部門、物流部門の効率化をはじめとする省エネ活動を継続して実施していきます。

 

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[サプライチェーン全体のCO2排出量(Scope1+2+3)]

 サプライチェーン全体におけるCO2排出量においては、Scope3のカテゴリ1(購入した商品・サービス)が全体の80.9%を占めることが判明しました。今後、サプライチェーン全体の排出量削減についても、検討を進めていきます。

Scope/カテゴリ

排出量

(t-CO2)

割合

Scope3

Scope1,2,3

サプライチェーン排出量

699,849

100.0%

 

Scope1

4,870

0.7%

 

Scope2

11,279

1.6%

 

Scope3

683,700

100.0%

97.7%

 

 

カテゴリ1

購入した製品・サービス

566,381

82.8%

80.9%

 

 

カテゴリ2

資本財

19,877

2.9%

2.8%

 

 

カテゴリ3

Scope1,2に含まれない

燃料及びエネルギー関連活動

3,100

0.5%

0.5%

 

 

カテゴリ4

輸送、配送(上流)

28,752

4.2%

4.1%

 

 

カテゴリ5

事業から出る廃棄物

837

0.1%

0.1%

 

 

カテゴリ6

出張

443

0.1%

0.1%

 

 

カテゴリ7

雇用者の通勤

1,339

0.2%

0.2%

 

 

カテゴリ8

リース資産(上流)

 

 

カテゴリ9

輸送、配送(下流)

5,216

0.8%

0.8%

 

 

カテゴリ10

販売した製品の加工

271

0.0%

0.0%

 

 

カテゴリ11

販売した製品の使用

 

 

カテゴリ12

販売した製品の廃棄

57,484

8.4%

8.2%

 

 

カテゴリ13

リース資産(下流)

 

 

カテゴリ14

フランチャイズ

 

 

カテゴリ15

投資

(注)2025年2月時点で環境省ウェブサイトに公表されている排出係数を使用しております。

算定範囲や排出係数等の変更に伴い、排出量の算定結果が今後変動する可能性があります。

 

② 人的資本

 女性が活躍できる環境は、全ての社員にとって働きやすい環境だと当社は考えております。長く安心して勤められる職場環境を作るため、当社の課題を分析し、次の指標と目標を定めました。

指標

2026年3月まで

目標(注)

実績

(当事業年度)

実績

(当連結会計年度)

正社員に占める女性の割合

25以上

23.0

24.4%

正社員(新規学卒)採用に占める女性の割合

35以上

35.7

34.9%

管理職(課長以上)に占める女性の割合

10以上

7.2

9.7%

(注)連結子会社において定量目標を設定していないため、提出会社の目標を記載しております。

 

3 【事業等のリスク】

 本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には次のようなものがあります。なお、本項において将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末において判断したものであります。当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存です。

 

(1)国内需要の減少及び市況価格の下落

 当社グループの売上高は、概ね内需型産業で、国内景気動向の影響を大きく受けます。国内景気の大幅後退による国内需要の減少及び市況価格の下落が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)法規制または訴訟に関するリスク

 当社グループの事業は、環境規制、知的財産等の様々な法規制の適用を受けており、それらによる訴訟等のリスクにさらされる可能性があります。

 訴訟の結果によっては当社グループの財政状態及び経営成績に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)製造物責任

 当社グループの製品につき、当社グループは製造物責任に基づく損害賠償請求の対象となっております。

 現在のところ重大な損害賠償請求を受けておりませんが、将来的に直面する可能性があります。

 製造物責任に係る保険(生産物賠償責任保険)に加入しておりますが、当社グループが負う可能性がある損害賠償責任を保障するには十分でない場合が考えられます。

 

(4)原材料調達及び商品仕入

 原材料調達及び商品仕入は、国内及び海外の複数のメーカーから行い、供給及び価格の安定維持に努めております。しかし、石油価格の高騰などにより需要供給のバランスが崩れた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)減損会計

 保有する固定資産等の使用状況等によっては、損失が発生する場合があります。

 

(6)取引先の信用リスク

 当社グループとしても取引先の信用リスクについては細心の注意を払っておりますが、取引先の業績悪化等により取引額の大きい得意先の信用状況が悪化した場合、当該リスクの顕在化によって、当社グループの財政状態及び経営成績に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)敵対的買収のリスク

 企業価値・株主の共同利益を損なうおそれのある第三者による株の大量買付行為の可能性が存在し、この場合、当社グループの財政状態及び経営成績に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)災害による影響

 当社グループは、災害による影響を最小限に留めるための万全の対策をとっておりますが、災害によるすべての影響を防止・軽減できる保証はありません。災害による影響を防止・軽減できなかった場合、当社グループの生産能力の低下及び製造コストの増加等により、当社グループの財政状態及び経営成績に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国の経済は、企業の価格転嫁が進むことで所得環境の改善により一人当たりの名目賃金の伸びが維持され、インバウンドや財政政策による消費の回復、底堅い設備投資等によって内需主導で緩やかに回復しました。その一方で、ウクライナ紛争の長期化や中東情勢の緊迫化、円安による物価上昇の逆風が強く、さらには賃金の伸びが物価上昇に追いつかない状況が長引くなか、消費者マインドの低迷が続き節約志向は根強く景気への影響について不透明な状況が続いています。

 米国の経済は、良好な雇用・所得環境や株高による資産効果など個人消費を下支えする環境が続いている他、緩やかながらもインフレが鈍化基調をたどり、景気は個人消費を中心に底堅く推移しております。

 中国の経済は、悪循環に歯止めをかける景気刺激政策として内需拡大に力点を置く方針を示したものの、不動産市場は依然として低迷し、民間企業の投資意欲や個人消費の低迷が続いています。

 このような状況の中、当社グループは、「進化 - パーパス経営・サステイナブル経営のスタート -」を中期経営計画のスローガンに掲げ、連結売上高1,070億円、営業利益83億円(2025年12月期)の達成を目標としており、グループ全社が結束して新たな市場開拓、積極的な設備投資、品質管理の改善などにより業績の向上に努めてまいりました。

 この結果、当連結会計年度の業績は、売上高は1,014億61百万円(前年同期比3.8%増加)、営業利益は80億9百万円(前年同期比3.4%増加)、経常利益は82億85百万円(前年同期比2.8%増加)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は63億16百万円(前年同期比11.7%増加)となりました。

 

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 セグメントの経営成績は、次のとおりであります。

 

紙加工品部門

 当社グループ売上高の72.1%を占めるこの部門では、紙袋(対連結売上高構成比31.8%)は、インバウンドの影響等を受けて国内観光需要が盛況なうえに個人消費も緩やかに回復したことで、飲食や観光関連及び小売業向けの販売が伸び、同上売上高は322億14百万円(前年同期比8.6%増加)となりました。

 紙器(同上構成比25.5%)は、食品を中心とした土産物市場やテイクアウト向け製品並びにEC市場向けパッケージの販売が好調に推移した結果、同上売上高は258億82百万円(前年同期比3.5%増加)となりました。

 段ボール(同上構成比12.8%)は、メーカーの輸送用段ボールが大きく伸長し、EC市場向けパッケージについても多方面にわたり拡販できたことで、同上売上高は130億27百万円(前年同期比4.9%増加)となりました。

 印刷(同上構成比2.0%)は、設備の入替に伴う稼働時間の減少により、同上売上高は19億90百万円(前年同期比14.4%減少)となりました。

 以上により、この部門の売上高は731億14百万円(前年同期比5.4%増加)となり、営業利益は71億68百万円(前年同期比4.5%増加)となりました。

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化成品部門

 当社グループ売上高の13.3%を占めるこの部門では、紙化の影響により通販や専門店向けの販売が減少しましたが、生産効率の向上に努めた結果、同部門の売上高は134億99百万円(前年同期比2.2%減少)となり、営業利益は9億33百万円(前年同期比9.0%増加)となりました。

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その他

 当社グループ売上高の14.6%を占めるこの部門では、専門店向けの縫製品や不織布バッグの販売が堅調に推移したことにより、同部門の売上高は148億46百万円(前年同期比2.3%増加)となり、営業利益は12億61百万円(前年同期比0.5%減少)となりました。

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 財政状態につきましては、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末の988億47百万円から44億44百万円増加し、1,032億92百万円となりました。負債は、前連結会計年度末の276億91百万円から11億15百万円増加し、288億6百万円となりました。純資産は、前連結会計年度末の711億56百万円から33億28百万円増加し、744億85百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べて11億56百万円減少し、166億56百万円(前期比6.5%減少)となりました。

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益91億60百万円、減価償却費24億16百万円があった一方、法人税等の支払額24億21百万円、投資有価証券売却益8億52百万円等により71億1百万円の収入(前連結会計年度は44億43百万円の収入、前期比59.8%増加)となりました。

 

投資活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却による収入101億円、投資有価証券の売却による収入9億88百万円等があった一方、有価証券の取得による支出105億円、有形固定資産の取得による支出47億68百万円、無形固定資産の取得による支出9億19百万円等により54億36百万円の支出(前連結会計年度は39億62百万円の支出)となりました。

 

財務活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額20億32百万円、自己株式の取得による支出10億13百万円等により30億41百万円の支出(前連結会計年度は14億7百万円の支出)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

紙加工品事業

29,013

100.1

化成品事業

2,960

88.0

その他

合計

31,973

98.8

(注)金額は製造原価で計算しております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前年同期比

(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比

(%)

紙加工品事業

72,423

105.7

6,620

90.9

化成品事業

13,570

98.8

1,196

112.0

その他

14,643

99.6

116

37.0

合計

100,638

103.8

7,933

91.5

(注)その他事業の一部は受注生産を行っておりません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

紙加工品事業

73,114

105.4

化成品事業

13,499

97.8

その他

14,846

102.3

合計

101,461

103.8

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。

 当社グループの連結財務諸表の作成において、損益または資産の状況に影響を与える見積り及び判断は、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいた合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 なお、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものはありません。

 

② 当連結会計年度の経営成績の分析

a.売上高

 当連結会計年度の売上高は、紙加工品事業が伸長し1,014億61百万円(前期比3.8%増加)となりました。

 

b.売上総利益

 当連結会計年度の売上原価は、売上高の増加により758億58百万円(前期比4.0%増加)となりました。

 売上総利益は、生産性向上によるコスト改善活動に努めた結果、256億3百万円(前期比3.4%増加)となり、前連結会計年度と比べ8億38百万円の増益となりました。

 

c.営業利益

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、経費管理を徹底しグループコストの低減に継続して取り組んだものの、人件費や減価償却費の増加が上回り175億93百万円(前期比3.4%増加)となりました。

 この結果、営業利益は80億9百万円(前期比3.4%増加)となり、前連結会計年度と比べ2億65百万円の増益となりました。

 

d.経常利益

 営業外損益は、為替差損や自己株式取得費用が増加しました。

 この結果、経常利益は82億85百万円(前期比2.8%増加)となり、前連結会計年度と比べ2億22百万円の増益となりました。

 

e.親会社株主に帰属する当期純利益

 親会社株主に帰属する当期純利益は、63億16百万円(前期比11.7%増加)となり、前連結会計年度と比べ6億63百万円の増益となりました。

 

③ 当連結会計年度の財政状態の分析

a.資産の部

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ44億44百万円増加し、1,032億92百万円となりました。これは主に「売掛金」9億74百万円・「機械装置及び運搬具」26億70百万円・「無形固定資産」7億4百万円の増加によるものです。

 

b.負債の部

 当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ11億15百万円増加し、288億6百万円となりました。これは主に「未払法人税等」3億77百万円・「その他」のうち「設備支払手形」4億27百万円の増加によるものです。

 

c.純資産の部

 当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ33億28百万円増加し、744億85百万円となりました。これは主に「利益剰余金」42億83百万円・「自己株式」9億43百万円の増加によるものです。

 

④ 戦略的現状と見通し

 戦略的現状と見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主に商品の仕入れのほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資によるものであります。

 当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 運転資金は、自己資金及び金融機関からの借入を基本としております。なお、当連結会計年度末における借入金の残高は83百万円となっており、また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は166億56百万円となっております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

 当社グループ(当社及び連結子会社)は、段ボール、紙器、紙袋、プラスチックフィルム袋(ポリ袋)等の包装全般について“環境”と“安全”をコンセプトに新製品や加工技術の開発及び将来のための技術や材料の研究を、製造・技術・商品開発部門が連携を図り進めております。

 なお、研究テーマは事業の種類別セグメントに共通しているため、セグメント別には行っておりません。当連結会計年度における、グループ全体の研究開発費用の総額は464百万円であり、以下のテーマを主要課題としております。

 

(1)印刷技術に関して

① フレキソ印刷をはじめ、グラビア印刷やオフセット輪転印刷の機能性付与及び高付加価値性に優れた印刷加工技術の研究に取り組んでおります。

② パッケージ分野への水性フレキソ印刷の導入を推進し、環境対応商品の開発に取り組んでおります。また、最新のフレキソ印刷機を導入し、高精細な印刷を可能にするだけでなく、生産性向上・ロス削減を実現したことにより、これまで以上に省エネ・省資源での生産を可能にし、環境にやさしい加工技術を確立しております。

(2)環境対応素材として

① SDGs(持続可能な開発のために国連が定める国際目標:Sustainable Development Goals)の目標達成に向けて、お客様それぞれのパッケージの状況やシーンに合わせて、紙やプラスチック、環境配慮素材や再生素材などを組み合わせた複合的な視点から最適なパッケージのご提案を行っております。

② レジ袋(プラスチック製買物袋)の有料化実施に伴い、携帯に便利なエコバッグ、50ミクロン以上の厚みがあり繰り返し使用可能な素材、海洋生分解性プラスチック100%の素材やバイオマス素材を25%以上配合の“環境に配慮された袋”の商品化を行っております。

③ 古紙配合率の高い環境対応原紙を商品化するなど、製紙メーカーと共同開発でオリジナル原紙を開発し続けております。このような環境対応型商品の売上の一部を「ザ・パックフォレスト®環境基金」に拠出しており、森林保全活動の費用に充てております。

④ プラスチック製気泡緩衝材に代わる紙製緩衝材として、今まで段ボール用としては利用されていなかった薄紙の効率よい貼合加工を実現させた、フレキシブルな段ボール製緩衝シートの開発提案を行っております。

⑤ 環境に優しい植物性インキや水性フレキソインキを全てのパッケージの印刷に採用し、VOC(volatile organic compounds(揮発性有機化合物))の発生やCO2排出量を抑えた印刷方式を提案しております。

⑥ 食品対応の機能性素材として、紙製軟包装「クラフトシリーズ」の開発に取り組んでおります。

 

(3)その他として

① ユニバーサルデザインパッケージを目的として、デザイン性・機能性・利便性・環境対応などニーズに応じた商品パッケージの開発及び生産機械の開発に取り組んでおります。

② 小ロット短納期生産システムに対応する高速生産設備の改良と新鋭機導入及び印刷時に発生する廃棄物であるインキスラッジの減量化と再資源化について取り組んでおります。

③ 森林管理から消費者の手に届くまでの加工・流通過程を確認した環境意識の高いFSC®森林認証制度(Forest Stewardship Council®: 森林管理協議会)の認証を受けられる製品(段ボール、紙器、紙袋の原紙等)の製造可能な体制を整えております。

④ ユーザーに適した流通・物流ソリューションに効率的な環境設備や包装資材のご提案を積極的に行っております。

⑤ 商品の詰め合わせ用箱において、レイアウトの変更で配送運賃のコストダウンができる箱形式のコーディネートをご提案しております。

⑥ 固定緩衝材を、厚紙・段ボールなどのリサイクルが容易な紙素材を用いて包装設計し、プラスチックの使用量低減、CO₂の排出量低減に取り組んでおります。

⑦ 環境対応素材(フレキシブルな段ボール製緩衝シート)を用いた配送資材CC-PACK®の開発提案を行っております。柔軟性が高いため内容物に応じた大きさで商品を配送できるとともに封入時の作業性を改善することができます。また、プラスチック製気泡緩衝材に代えて使用できるため、プラスチック削減と紙単一素材化による環境負荷低減に貢献できます。

⑧ 複数の商品を同一梱包材で梱包できるように包装設計し、資材管理の合理化提案を行っております。

⑨ 厚みがある収納物を内部に収納可能な配送体で、扁平な袋状に折り畳まれた状態と、箱状に組み立てた組立状態とに変形可能とした段ボール製の配送体について特許権を取得しました。

⑩ 食品のテイクアウトなどに用いられる運搬体で、食品をそのまま収容して手提げ状態で運搬、あるいは箱などに収容して手提げ状態で運搬する運搬体について特許権を取得しました。

⑪ 壁面を折り立てて使用する包装用箱で、もとの畳んだ状態に戻りにくい構造とした包装用箱について意匠権を取得しました。

⑫ 当社ウェブサイトのお客様向けのブログ『つつむを知る』で、パッケージに関するお問合せやご相談に対応する情報、また他のコンテンツでは発信できない最新トレンドを発信し、パッケージ製作をご検討中の皆様に役立つ内容をお伝えしております。