第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社グループは、1951年に福岡で創業して以来、「“食”を通じて国民生活の向上に寄与すること」を目指してまいりました。2012年からは、ホテル事業の伸張を受け「日本で一番質の高い“食”&“ホスピタリティ”を通じて国民生活の向上に寄与すること」を掲げ、ロイヤルホスト、天丼てんやなどの外食事業をはじめ、空港・高速道路や病院など大規模施設内で食を提供するコントラクト事業、リッチモンドホテルを運営するホテル事業、食品事業など、幅広く事業を展開してまいりました。

 2025年2月には、「食とホスピタリティで、地域と社会を笑顔にする」を掲げる経営ビジョン2035を策定し、併せて策定した「変革から成長、そして飛躍へ」を基本方針とする中期経営計画2025~2027のもと、長期的かつ安定的な企業価値の向上に向け、「ブランド戦略」「グローバル戦略」「サステナビリティ戦略」「人材戦略」を全社戦略として推進し、あらゆるステークホルダーから共感・支持を得られる企業グループであり続けるよう、全社一丸となって取り組んでまいります。

 

(2) 経営環境

 足もとのわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が沈静化していくなかで、人流の動きは活発となり、社会経済活動の正常化が進みました。また、訪日外国人客の増加などが下支えし、国内景気は緩やかな回復基調にあります。しかしながら、自然災害や物価上昇の影響などもあり、個人消費の持ち直しには不確実性が残ります。加えて中国経済の減速懸念、為替相場の変動、少子高齢化に起因した労働力の不足などにより、国内経済は依然として不透明な状況が続いております。

 当業界におきましては、社会経済活動の正常化や訪日外国人客の消費拡大等に伴い、外食および宿泊需要には回復の動きがみられるものの、為替相場の円安傾向や天候不順に伴う原材料費の高止まり、光熱費や物流費、建築費の高騰、労働力不足の深刻化など、事業を取り巻く環境は依然として厳しいものとなっております。

 

(3) 中期的な会社の経営戦略及び優先的に対処すべき課題

 当社グループは、経営ビジョン2035のもと、以下中期経営計画2025~2027を推進してまいります。

 

(中期経営計画の概要)

基本方針

「変革から成長、そして飛躍へ」

 

全社戦略

▶ 「ブランド戦略」

 ・ロイヤルグループブランドの確立、個々のブランドの進化

 ・データ分析基盤の整備とマーケティング機能の高度化

▶ 「グローバル戦略」

 ・グローバル人材の採用・育成

 ・海外における直営事業とフランチャイズ事業の両輪による成長と収益性の追求

 ・国内におけるインバウンド需要の獲得

▶ 「サステナビリティ戦略」

 ・サステナビリティ基盤の整備

 ・推進力、発信力の強化

 ・地域、社会との価値創造の推進

▶ 「人材戦略」

 ・さらなる人的資本投資の推進

 ・企業風土の変革

 

 上記戦略に加え、財務規律を維持しつつ、収益性と資本効率性向上を意識した事業運営、新規事業の早期収益化と事業性の見極めを行い、長期的かつ安定的に企業価値を向上させ、あらゆるステークホルダーから選ばれる企業になるよう、中期経営計画の実現に取り組んでまいります。

 

(4) 目標とする経営指標

 中期経営計画(2025年~2027年)の最終年度における主要財務目標は次のとおりです。

  ・収益力の強化   ⇒ 売上高 1,875億円、経常利益 100億円

  ・株主価値の創出  ⇒ EPS 135円

  ・財務基盤の健全性 ⇒ 自己資本比率 40%

  ・資本効率の向上  ⇒ ROE 12%

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、2025年2月に「『食とホスピタリティ』で地域や社会を笑顔にする」をキーワードにした経営ビジョン2035及び、その実現に向けた「中期経営計画2025~2027」を策定・発表しております。

経営ビジョン2035におけるサステナビリティのビジョンとして、持続可能な社会の実現への貢献と、当社の持続的な成長=SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)の実現を掲げております。

同ビジョンでは、経営戦略に4つの重点領域として「ブランド」「グローバル」「サステナビリティ」「人財中心経営」を設定しております。サステナビリティ戦略については「信頼の源泉」と位置づけ、環境(E)、

社会(S)、ガバナンス(G)の要素を企業戦略や経営の中心に据え、持続可能で新たな価値を創造する取組みを進めてまいります。今後予測される、中長期的な外部環境や事業環境の変化(人口減少や雇用の流動化等による事業成長の鈍化、原材料の高騰、サステナビリティへの意識の高まりなど)を、当社のサステナビリティ経営に影響を与える重要な機会及びリスクと認識しており、これらの変化に対応すべく、当社グループのマテリアリティ「人財」「資源・環境」において定量的な目標を掲げ、取組みを進めております。

これらの事業活動を通して社会価値・経済価値を向上させることで、すべてのステークホルダーから信頼され、選ばれる企業・ブランドとしての企業価値向上を目指してまいります。

 

(基本方針の制定)

当社グループは、サステナビリティ経営の推進と経営基本理念具現化のため「サステナビリティ基本方針」を策定し、2022年2月の取締役会で決議しております。

《サステナビリティ基本方針》

「私たちロイヤルグループは、「食とホスピタリティ」企業グループとして、事業活動を通じて、社会・環境問題への対応に積極的に取組み、各ステークホルダーとのつながりを大切に、明るい未来の創造と持続可能な社会の実現に貢献します。」

 

(当社グループが目指す価値創造)

当社グループはロイヤル経営基本理念を礎に、地域・社会に根付いた企業となり、すべてのステークホルダーから共感・支持を得られる企業を目指しております。ステークホルダーとの良好な関係を尊重することで、社会価値を創造し、また食とホスピタリティの提供を通じて、無形の財産と人気の蓄積をすることで、経済価値を生み出してまいります。

これらの価値創造は、経営基本理念を礎とする当社グループにおいて、各事業セグメントで共通しているお客様への食とホスピタリティの提供をもって、実現を目指したいと考えております。

社会価値においては、品質衛生面の安全性を最優先に考えお客様に美味しい食品を提供することの他、社会貢献に資するものとしてフローズンミール等を更にブラッシュアップすることで、働く女性や育児に参画する男性、多様化する生活様式に対応できるよう、社会を明るくすることを実践してまいります。一方、持続可能な事業継続のために必要なサプライチェーン構想は不可欠であり、今中計においては具体的な施策に落とす重要フェーズだと認識しております。

また、経済価値においては、お客様に社会価値を十分にご満足頂くことをもって、多くのお客様にご利用頂き正当な利潤を頂戴し、企業グループの永続的な繁栄を遂げていきたいと考えております。それらの社会価値と経済価値を両立させ、持続的な企業価値の向上を目指してまいります。

「従業員」「お客様」「お取引先様」「株主様」そして「地域・社会」、すべてのステークホルダーに対して「安全・安心でおいしい“食”の追求」「心が通う“ホスピタリティ”の追求」を通して信頼され、選ばれる企業・ブランドとしての企業価値向上を目指してまいります。

 

(1) サステナビリティ全般

① ガバナンス

当社グループは、取締役会監督の下、2023年1月より代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。年2回開催するサステナビリティ推進委員会では、重要な経営課題と位置付ける気候変動対応や人的資本を含むサステナビリティに関する方針や目標、計画、施策の策定、戦略、リスク、重要課題(マテリアリティ)の特定と見直し及び推進している取組みに係る進捗の評価を協議し、取締役会へ報告しております。取締役会は、サステナビリティに関する重要事項「戦略」「リスク」等を審議し、最高意思決定機関として、サステナビリティ推進状況を監視、監督する体制を整えております。

 

代表取締役社長と全執行役員を主要メンバーとする戦略会議において各種の取組みに係る協議を重ね、執行に係る合意形成を図ることとしております。

取締役会へ報告の他、主要施策に関しては、常勤取締役、社外取締役、執行役員等が出席する経営会議にて議論を行うこととしております。また、具体的アクションのグループ内への浸透を目的に、サステナビリティ本部と各事業会社が、隔月1回定例会議を実施し、進捗状況の確認を行っております。グループ全体での取組み強化に関しては執行責任者の協議の場である戦略会議に定期的に付議・報告し、戦略会議での合意形成が図られた後に各社各部と連携して、様々な施策を推進する体制を構築しております。戦略会議では、企業価値向上を念頭に置き、社会価値・経済価値の創造に資する点を意識した協議を行います。

 

 

◇ガバナンス体制図

0102010_001.png

 

 

 会議体 (有価証券報告書提出日現在)

会議体名称

役割

構成メンバー

開催頻度

取締役会

気候変動のリスクと機会の管理・評価を含めたサステナビリティ課題や、変化するステークホルダーの期待にどのように取り込んでいるか等、適切な対応が行われているかの監視・監督を行う。

代表取締役会長、代表取締役社長、常勤取締役、社外取締役

1回/月

経営会議

サステナビリティ施策に関して、「リスク」「機会」の重要な事項について審議する。

代表取締役社長、常勤取締役、社外取締役、執行役員、子会社社長、及び取締役が指名する者

1回/月

戦略会議

事業会社の取組みについて進捗状況を報告・評価する。

代表取締役社長、執行役員及び代表取締役社長が指名する者

1回/週

サステナビリティ推進委員会

サステナビリティに関わる方針、体制、戦略、リスク、目標に関し、企画・立案・提言を行う。

常勤取締役、執行役員、子会社社長並びに委員長が指名する者

2回/年

リスク管理委員会

リスク管理に関する方針、計画および施策について協議する機関とする。

リスクマネジメント統括部門、経営企画部門(総務部門、法務部門を含む)、品質保証推進部門、人事企画部門、財務企画部門、サステナビリティ部門、システム部門、海外事業開発部門の担当役員、部門長並びにそれに準ずる者、子会社社長、ロイヤルマネジメント株式会社の店舗設計開発部門長

1回/年(定例)

4回/年(重要案件取扱)

マテリアリティ

定例会議

各事業会社のマテリアリティ目標について、取組み進捗状況をモニタリング、方針・戦略・計画に対する意見交換を行う。

委員長:サステナビリティ担当役員

委員:サステナビリティ本部、事業会社社長、事業会社サステナビリティ担当

1回/隔月

 

 

② 戦略

中期経営計画2025~2027におけるサステナビリティ戦略では、サステナビリティに関する基盤整備、推進力・発信力の強化、地域・社会との価値創造に注力し、グループ全体でサステナビリティ経営を推進してまいります。また経営ビジョン2035で掲げるSXの実現に向けては、特に気候変動や人権問題、地域における多様で複雑化するサステナビリティ課題に対して、中長期的なリスクを踏まえた活動やイノベーションが不可欠であり、既存のビジネスモデルや戦略の策定など、抜本的な経営の見直しを行うとともに、新たな分野へチャレンジすることが、企業の競争力と信頼性を高める手段であると考えております。

当社グループは、ロイヤル経営基本理念に基づき、事業及びステークホルダー双方の観点から、様々な社会課題の重要度を調査・検討し「人財」「食とホスピタリティ」「資源・環境」「地域」「ガバナンス」をマテリアリティとして整理しております。

これらマテリアリティごとに定量指標(KPI)及び目標を設定し、各事業において取組みを着実に実行させ、サステナビリティ推進委員会などの会議体で定期的に確認することで、安全・安心、並びに質の高い食とホスピタリティの提供を行い、また、ロイヤルアカデミーの設立による人財育成を通じた価値創造、地域活動やお取引先様との協業による新たな価値創造により、すべてのステークホルダーから共感を頂き、選ばれる企業・ブランドへの変革を遂げることにより企業価値の向上を目指してまいります。

 

◇マテリアリティ特定プロセス

STEP1 課題/リスクの抽出

多様な社会ニーズ・要請に対応するため、社会の期待・お客様や取引先ほかステークホルダーごとの重要課題から社会課題を選択。ロイヤルグループの事業領域やお客様層を考慮し、取り組むべき68項目の課題を抽出しました。

 

STEP2 重要度測定・重要課題の特定

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GRI(Global Reporting Initiative)及びSASB(Sustainability Accounting Standards Board)のフレームワークを参考にしながら取り組むべき重要課題を5つの観点に絞り込み、重要テーマを踏まえたマテリアリティ(案)を整え、外部の総合研究所及び複数の取引金融機関のサステナビリティ関連部門等との意見交換を重ねました。

 

STEP3 重要課題(マテリアリティ)

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ステークホルダー(お客様、従業員、株主、取引先、地域社会等)の意見を集約し、当社グループの事業及びステークホルダー双方の観点から、様々な社会課題の重要度を調査・検討、サステナビリティ推進委員会、戦略会議、経営会議、取締役会での審議、及び取締役会での決議を経て、ロイヤルグループが取り組むマテリアリティを特定しております。

 

 中期経営計画2025~2027策定にあたり、マテリアリティのテーマごとに2027年度の目指す姿や目標値、推進項目、リスクと機会の見直しを行っております。これらのマテリアリティを着実に実行していくことで、安全・安心、並びに質の高い食とホスピタリティの提供をもって、地域・社会から必要とされる企業として、企業価値の向上を目指してまいります。

 

 

③ リスク管理

当社グループは、サステナビリティリスクを含む様々なリスクへの適切な対応を行うとともに、リスクが顕在化した場合の影響を極小化するための体制を構築及び維持するため、リスク管理委員会を設置しており、リスク管理委員会では、16カテゴリー・170項目のリスクを「リスク管理台帳」にて管理しております。

サステナビリティに関するリスクに関しては、主管部門であるサステナビリティ本部が、リスク管理台帳に記載している「気候変動(地球温暖化)」「エネルギー管理と代替エネルギー」「廃棄物の削減とリサイクル」「サステナビリティ報告」「CSRに関する戦略」「地域貢献」の6項目、並びにグループ内におけるその他のサステナビリティ関連リスクを把握し、その現状をサステナビリティ推進委員会に報告しております。なお2024年度に台帳の見直しをおこない、廃棄物の削減とリサイクル及び、サステナビリティ報告の2項目を重要なリスク項目として整理しております。

また、経営上の様々なリスクに迅速かつ的確に対処し、企業価値の維持・向上に努めるミッションを担うリスクマネジメント統括室が、戦略会議を通じてグループ全体のリスクマネジメントを推進し、リスク管理委員会にて全社的なリスク管理に関する取組み方針、計画、施策及び取組みの進捗について全社評価と対応を検討しており、定期的に取締役会へ報告しております。

詳細については当社ホームページに掲載の「統合報告書」をご参照下さい。なお、「統合報告書2024」の59、60ページ「リスクマネジメント」に記載しております。

 https://www.royal-holdings.co.jp/ir/accounts/reporting/

 

④ 指標及び目標

当社グループ中期経営計画2025~2027では、重要課題(マテリアリティ)を「人財」「食&ホスピタリティ」「資源・環境」「地域」「ガバナンス」をテーマに整理し、重要課題(マテリアリティ)ごとに定量指標(KPI)及び目標を設定し、モニタリングをしております。特に当社グループにとって重要と考える人財と気候変動については2027年度の連結会社ベースの目標として、女性管理職25%、離職率6%、CO2排出量36%削減(2013年比)、食品ロス15%削減(2016年比)を設定しております。各社事業特性に即した取組み施策をロードマップ化し、目標達成に向けた取組みを進めており、目標の進捗については、隔月1回開催される事業会社との定例会議で確認のうえ、戦略会議にて付議・報告しております。また年2回開催されるサステナビリティ委員会においても進捗の評価を協議し、これらの内容を取締役会に報告しております。

 

(2) 気候変動

当社グループでは、TCFD提言に即した情報開示を進めております。

① ガバナンス

気候変動課題に対する当社のガバナンスは、(1)サステナビリティ全般に記載の通りであります。

 

② 戦略

当社グループでは、企業の持続的成長がすべてのステークホルダーに対する責務であり、世界規模での取引が必須である現代において、地球全体の持続的成長を果たすため、私たちが直面する社会課題の解決に取り組むことも重要な責務であると考えております。

また、気候変動をはじめとした環境課題へ向き合うことは、その方針を構成する重要な一要素であり、この分野で新たな取組みにチャレンジすることで、社会から必要とされる企業へ進化すると考えております。当社グループとそのサプライチェーン全体における影響の特定評価と対策の検討にあたっては、TCFDのフレームワークを活用した気候変動リスク及び機会の特定及び対応策の策定と経営戦略への統合が、企業価値向上だけでなく地球全体の持続的成長に資するものと考え、TCFD提言に即した情報開示を進めております。今後もシナリオ分析を通じた当社グループの気候変動課題に対するレジリエンス性の強化を図ると同時に、持続可能な社会の実現に向けて貢献してまいります。

 

 

ⅰ シナリオ分析

当社グループでは、気候変動による影響やその対策方針が不透明な将来における影響を特定評価するにあたり、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表するシナリオをベースに、地球温暖化が深刻化する世界及び、脱炭素化への移行が推進され2050年までにカーボンニュートラルが達成されるとした世界の、以下2種類の仮説を設定し、それぞれの前提条件を踏まえた2030年時点における分析評価を実施しております。

項目

4℃シナリオ

2℃以下シナリオ

想定される世界観

地球温暖化が深刻化する世界を想定したシナリオ。産業革命期の世界平均気温と比較して、21世紀末までに世界平均気温が4℃上昇する。気候変動政策は、2021年時点で施行されている規制以上に強化されず、脱炭素化への移行は推進されないため、温暖化の影響が拡大し災害の規模や頻度が拡大する。

脱炭素化が推進される世界を想定したシナリオ。

産業革命期の世界平均気温と比較して、21世紀末頃の世界平均気温の上昇が2℃未満に抑制される。カーボンニュートラルの実現に向けて、積極的な環境政策が推進されるために移行リスクによる影響が拡大する。

参考シナリオ

(4℃シナリオ)

IPCC:RCP8.5/4.5

IEA2021:STEPS

(2℃シナリオ)

IPCC:RCP2.6

IEA2021:SDS

(1.5℃シナリオ)

NZE2050

 

ⅱ リスクと機会

4℃シナリオ

(イ)リスク

4℃シナリオにおいては最も大きな影響として、洪水や気温上昇をはじめとする異常気象災害の激甚化による自社施設の被災や物流網の断絶といった直接的なリスク、原材料高騰や収穫量減少、品質低下、内食需要への傾倒による人流の減少といった間接的なリスクが想定されます。また、エネルギーの観点では化石燃料需要が成行き的に拡大することなどを背景に原油価格が高騰することで、石油由来商品の価格上昇や輸送コストの増加を予測しております。

(ロ)機会

こうした影響はお客様においても想定され、中食・内食需要への傾倒など行動変化があると想定し、フローズンミール「ロイヤルデリ」の価値向上と販路拡大を進めております。ロイヤルデリは、ロイヤルホストの売店や、冷凍自動販売機「ど冷えもん」等でも販売し、女性の社会進出、男性の育児参画といったライフスタイルの変化に対応する商品として、事業機会獲得にも繋がるものと認識しております。また、持続可能なサプライチェーンの見直しについても取り組んでまいります。

 

1.5℃シナリオ(一部2℃シナリオも併用)

(イ)リスク

1.5℃シナリオ(一部2℃シナリオも併用)では脱炭素化に向けてカーボンプライシング制度の導入や再生可能エネルギー由来電力への転換による電力価格の高騰など、事業運営コストの増加が予測されます。また、業界内競争に追いつくためのエシカル消費メニュー開発や省エネ化・脱プラスチック化といった環境配慮ニーズへの対応コストの増加や、その取り組み状況による顧客離れも予測されます。

(ロ)機会

このような環境志向の高まりはプラントベースフードをはじめとした代替食材への需要増も見込まれるほか、新たな顧客行動の変化に対応するサービスを展開することで新規顧客獲得につながる可能性も認識しており、リスク緩和だけでなく脱炭素化の推進による機会拡大が重要課題の1つとなることを認識しております。

 

 

<財務面の考察>

前述を踏まえ、当社グループは、2030年時点を想定した2つのシナリオにおける事業及び財務への影響のうち、特に日本国内における炭素税の導入、原材料仕入れコストの変動、及び店舗における洪水被害の影響が重要なパラメーター指標になると考えております。

 

 

事業インパクト評価(百万円)

 

炭素税導入による追加支出

2℃シナリオ

△1,143.3

※1

牛の生産量変化による影響

4℃シナリオ

△1,094.1

※2

イネの収穫量変化による影響

4℃シナリオ

△81.3

※2

洪水被害額

4℃シナリオ

△1,080.0

※3

※1 Scope1、2算定結果のCO2排出量について、2030年も同様の排出量があると仮定し、IEAによる先進国での炭素税負荷予想額を乗じて試算

※2 2030年の仕入れ量は2022年を基準に同様と仮定して試算。2022年の単価は2020年の統計データを使用

※3 拠点住所からハザードマップにて洪水による浸水深や河川等級を調査し、浸水深に応じた拠点の年平均の洪水被害額を試算

 

なお、特定したリスク及び機会は次の表のとおりであります。

 

◇特定したリスク及び機会

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(注)1 上表の1.5℃シナリオは一部2℃シナリオも併用しています。

2 LED照明への更新は、店舗空調コストの増加への対応として、経費削減を企図しています。

3 影響度評価の基準について

大:影響額が経常利益に対して±10%以上のもの

中:影響額が経常利益に対して±10%に満たないもの

小:影響額が軽微(経常利益対比±1%以下)、もしくは無いもの

 

1.5℃シナリオ(一部2℃シナリオも併用)及び4℃シナリオのいずれのシナリオ下においても、中長期視点から高い戦略レジリエンスを強化していく必要があります。そのため、事業戦略や中期経営計画において、マイナスのリスクに対しては適切な回避策を策定する一方、プラスの機会に対しては、環境変化へ積極的に対応する等、新たな成長機会の獲得を目指してまいります。

具体的には、省エネ活動やLED照明への更新、電気・ガス使用量のシステム化による可視化、一部店舗における再生可能エネルギーの導入、遮熱シートや遮熱フィルム、遮熱塗装といったトライアルの実施、食品ロス削減や食品リサイクル率の向上などを通じた環境負荷低減、脱プラスチックに貢献する自動供給おしぼり機「SAWANNA」の導入、エシカル消費志向の拡大を捉えたメニュー・サービス開発、異常気象の頻発を見据えた内食・中食需要への対応など、環境課題への対応を踏まえた機会の創造に積極的に取り組んでおります。

また、災害対策においても外食業界では初の「DBJ BCM(事業継続管理)格付」を取得し、自然災害の発生に備えています。更には、シナリオ分析を通してハザードリスクが大きいと特定された拠点について、現在取組んでいる予防保全投資においてリスク回避策の織り込みを検討する等、防災対策・事業継続対策を推進しております。

 

③ リスク管理

気候変動課題に対する当社のリスク管理は、(1)サステナビリティ全般に記載の通りであります。

 

④ 指標及び目標

ⅰ 2050年に向けた取組み

2015年のパリ協定の採択、2021年のCOP26における1.5℃目標達成に向けた世界的な合意を踏まえ、2050年のカーボンニュートラル達成は世界的な最優先課題の一つとして捉えています。当社グループの現時点のGHG排出量は、次のとおりであります。

 

 

GHG排出量(千t-CO2)

2021年

2022年

2023年

Scope1

18

20

23

Scope2

(ロケーション基準)

62

63

74

(マーケット基準)

61

合計

(ロケーション基準)

80

83

97

(マーケット基準)

84

(注)2022年までのGHG排出量は、省エネ法定期報告書の集計方法に則り、当年4月~翌年3月の期間にて算出しております。

2023年のGHG排出量は、2023年1月1日~2023年12月31日の数値となります。

2022年までのGHG排出量は、ロケーション基準で算出しています。

2023年以降はマーケット基準も算出開示していきます。

 

 

GHG排出量(千t-CO2)

 

2022年

2023年

Scope3

158

208

 

■カテゴリー別の排出量(t-CO2)

Scope3

 

208,187

71.3%

 

1:財・サービス

163,894

56.1%

 

2:資本財

19,479

6.7%

 

3:エネルギー(調達部分)

15,566

5.3%

 

4:輸送(上流)

5,624

1.9%

 

5:廃棄

979

0.3%

 

6:出張

241

0.1%

 

7:通勤

1,838

0.6%

 

8:リース(上流)

 

9:輸送(下流)

220

0.1%

 

10:加工

 

11:製品利用

30

0.0%

 

12:製品廃棄

 

13:リース(下流)

 

14:フランチャイズ

2,275

0.8%

 

15:投資

(注)1 Scope3のGHG排出量は、当社がみずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社と共同で取組み、同社の支援を受けて算定した現時点での概算値であります。なお算定方法の見直し、算定精度の向上などにより変動する可能性があります。

2 算定基準としては国内法対応として算定・報告・公表制度(SHK法)に基づく算定のほか、国際的な算定方法として利用されているGHGプロトコルの双方に対応する形で算定を実施しています。

3 算定数値の該当期間は2023年1月1日~12月31日の期間中数値となります。

4 Scope3の算定対象カテゴリーは1:財・サービス、2:資本財、3:エネルギー(調達部分)、4:輸送(上流)、5:廃棄、6:出張、7:通勤、9:輸送(下流)、11:製品利用、14:フランチャイズであります。

5 Scope3の算定対象外としたカテゴリーは、対象となる活動が少なく、排出量全体に与える影響が小さいものであります。

 

 

気候変動による影響の適切な評価と対策を通して、2050年のScope1、2カーボンニュートラル達成及び、その中間目標として2030年までに、2013年比での排出量削減46%を掲げ、温室効果ガス排出量削減活動を推進しております。

2023年Scope1、2のGHG排出量は、前年比+14千t‐CO2の排出量となりました。2023年は新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行により行動制限が緩和されるといった外部環境の変化に伴い、売上高が上昇したことにより水光熱の使用量が増えたこと、および水光熱使用量が把握できない一部事業所について、2023年より使用量の算出を始めたことが起因であると考えております。

今後の進め方として、まずはScope1、2数値をシステム化し各拠点の使用量を精緻化することを進めてまいります。また、これらの数値を活用し、サステナブルな施策を、検証、実行できるよう取組みをおこなってまいります。

なお、引き続き省エネ対応機器やLED、エコ給湯・エコ清掃等の導入を進めており、2023年のGHG排出量(Scope1、2)は2013年に比べ約12.7%削減しております。

 

当社グループの温室効果ガス排出量の多くは、購入した製品・サービスに伴う排出(Scope3のカテゴリ1)及び、他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出(Scope2)に由来しており、当社グループの温室効果ガス排出量削減の取組みは、低炭素由来の原材料の調達、及び再生可能エネルギー由来の電力の調達や脱炭素機器・資材の活用に重点を置くことが重要と考えております。

この分野においては、食品事業のロイヤル株式会社の取り組みが重要であり、同社の部門責任者を含めたマテリアリティ定例会議を通じて、温室効果ガス排出量削減のための目標、施策、検証、実行についての評価をしてまいります。

 

また、既存事業・既存店舗においては、前述の取り組みを意識して継続していくこと、さらにGHG排出量削減の指標として、セグメント別の売上高百万円当たり及び国内直営店1店舗当たりのGHG排出量(Scope1、2)を原単位とする方式を採用し、取組みを行ってまいります。

なお、当社グループのセグメント別の原単位当たりのGHG排出量は以下のとおりであります。

 

 

セグメント

売上高百万円当たりGHG排出量(t-CO2/売上高百万円)

2013年

2022年

2023年

増減

外食事業

0.97

0.69

0.49

△0.48

コントラクト事業

0.57

0.60

0.47

△0.10

ホテル事業

1.29

1.03

0.80

△0.49

食品事業

0.90

0.80

0.78

△0.12

(注)1 2013年及び2022年のGHG排出量は、省エネ法定期報告書の集計方法に則り、当年4月~翌年3月の期間にて算出しております。

2 2023年のGHG排出量は、2023年1月~2023年12月の期間で算出しております。

3 ロケーション基準に則り、算出しております。

 

セグメント

1店舗当たりGHG排出量(t-CO2/店)

2013年

2022年

2023年

増減

外食事業

125

97

65

△60

コントラクト事業

80

84

123

43

ホテル事業

737

556

455

△282

食品事業

4,099

4,070

4,652

553

(注)1 食品事業については工場単位としております。

2 2013年及び2022年のGHG排出量は、省エネ法定期報告書の集計方法に則り、当年4月~翌年3月の期間にて算出しております。

3 2023年のGHG排出量は、2023年1月~2023年12月の期間で算出しております。

4 ロケーション基準に則り、算出しております。

 

 

ⅱ 食品廃棄物の削減

食品廃棄物の削減は、環境課題への対応において経営上重要な課題と認識しております。当社グループのマテリアリティ「資源・環境」の観点において、2016年の売上高百万円当たりの廃棄量64.7㎏を指標とし、2024年は2016年比△10%の58.2㎏、2030年は2016年比△20%の51.8㎏を目標値として取組みを行ってまいります。当社グループの現時点における食品廃棄物削減量は、次のとおり通りであります。

 

売上高百万円当たりの廃棄量(kg/売上高百万円)

2016年

2022年

2023年

増減

64.7

63.8

56.3

△7.5

 

店舗では、小盛りメニューの展開、食品廃棄量の可視化等の取り組み、また食べ残し持ち帰りの取り組み「mottECO」を自治体や同業他社と推進し、食品廃棄量の削減に取り組んでおります。工場においては、膠着食材や訳あり商品をフードトラックにて販売し、食品廃棄物削減に関する取組みを行っております。また2024年度には、地域のフードバンクを通じて子ども食堂などへ約750千円の食品や災害備蓄品等を寄贈しております。

 

ⅲ 食品リサイクル食品リサイクル法に基づく「食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針」では、2024年までに食品製造業は95%、外食産業は50%を達成するよう目標が設定されております。

当社グループの食品リサイクル率推移は、次のとおりであります。

食品リサイクル率(%)

2021年

2022年

2023年

増減

50.8

53.0

50.6

△2.4

 

福岡県では2010年以降、工場を中心とする食品リサイクルループを構築しており、回収した食品残渣を肥料化し、その肥料を使って栽培された玉ねぎを使用したメニューを一部期間、ロイヤルグループの商品として販売しております。2025年以降は、福岡市内の工場、店舗から排出される食品廃棄物を回収し、メタン発酵ガスによる電気エネルギーへリサイクルする取組みを予定しております。今後も、立地特性に合わせた食品リサイクルループの取り組みを進めてまいります。

また、工場での生ごみ処理機導入、店舗での「食べ残し持ち帰り」促進、各店舗における廃棄物削減等により、国が定める基本方針の目標達成に向けた取り組みを進めてまいります。

 

(3) 人的資本

■基本的な考え方

私たちロイヤルグループは、すべての人材は付加価値を生む源泉であると捉え、人財の確保・育成・働く環境の整備を最重要課題として、積極的な投資を行います。また、労働市場における外食産業の地位向上を目指し、業界をリードする存在となります。

 

■各種方針

 ⅰ 人材育成方針

日本で一番質の高い食とホスピタリティを提供するために、進化し続けるプロフェッショナル集団

 ⅱ D&I宣言

1.すべての従業員が、お互いをリスペクトし、公平に接する環境を整備します。

2.経営陣・管理職が模範となり、率先して多様なバックグランドを持つ従業員をサポートします。

3.安全で快適に仕事に取組めるように、ハラスメントや差別のない職場環境を作ります。

4.異なる背景や経験を持つ人材を積極的に採用し、公平な採用・教育・昇進の機会を提供します。

 ⅲ ロイヤルグループ健康経営宣言

従業員の健康は、ロイヤルグループの重要な資産です。

従業員とその家族の一人ひとりが、心身ともに健康な生活を送ることが、「生き生きと働ける職場」をつくります。ロイヤルグループの持続的成長に向けて、従業員の健康維持・増進に取組みます。

 

 

① 戦略

当社グループでは「人財中心経営」を戦略の基盤として位置づけており、“食”&“ホスピタリティ”ビジネスのプロフェッショナル集団を目指し、人材への積極的な投資を行っています。従来、人材はヒト・モノ・カネという経営資源の中の一つとして捉えられ、ヒトに投じる費用はコストだと考えられてきました。しかし、現在では、従業員の成長は会社の成長と同一であり、人材は企業や社会に新たな価値を生み出す重要な資本として認識されています。人的資本の価値を最大限に引き出すため、当社では従業員個人のパフォーマンスの最大化とそれを可能にする組織風土の実現に向けて、以下のとおり人材への取り組みを推進してまいります。

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② 指標及び目標

当社グループでは人事戦略の達成度を測る総合指標として「従業員満足度調査」の総合結果を用いております。「従業員満足度調査」は2011年度より毎年実施(コロナ禍による一時中断期間あり)しており、従業員のエンゲージメントを定点観測し、次年度計画に反映するサイクルを継続しております。

「①戦略」の実現に向けて、当社グループでは多様な人材の採用と登用を積極的に進めており、女性管理職の比率をさらに高めていくことを計画しています。また、外国籍人材が活躍できる環境の整備が必須となっており、キャリアパスの整備や日本語の追加教育および生活サポート等、人材の定着に向けた取り組みを推進してまいります。

「①戦略」を推進するための重要な位置づけである従業員の成長を担う教育研修機関として「ロイヤルアカデミー」を2025年4月に立ち上げる予定としています。「ロイヤルアカデミー」では人材育成方針のもと、階層別の研修(部長・課長クラス・管理職候補クラス・店長料理長クラス)を実施してまいります。加えて若手社員に対しては年代別のフォローアップ研修・メンター制度の活用により人材の定着と育成を推進してまいります。

その他、従業員の心と身体の健康を増進するための取り組みとして、ライフプランセミナー・女性の健康管理・ダイバーシティ教育・メンタルヘルス研修等を推進してまいります。

これらの戦略に対する指標及び目標は次のとおりです。

 

(イ)従業員満足度

指標

2024年度実績

2025年度目標

総合満足度

3.35

3.37

 

(ロ)従業員の知識・スキル向上

指標

2024年度実績

2025年度目標

e-ラーニング利用率

42

50

ITパスポート取得率(管理職)

50

 

(ハ)従業員の心と身体の健康増進

指標

2024年度実績

2025年度目標

二次検診受診率

49.0

60.0

喫煙率の減少

26.3

23.3

健康経営優良法人

認定

認定継続

 

 

(ニ)多様な人材の採用と登用

指標

2024年度実績

2025年度目標

外国人比率(社員

5.8

10.0

男女別賃金格差(社員)

77.6

78.0

障がい者雇用率

2.68

2.70

退職率

5.8

5.8

 

(ホ)生き生きと働ける組織風土と職場環境の実現

指標

2024年度実績

2025年度目標

年次有給休暇取得率

56.7

55.0

男性の育児休業取得率

82.6

70.0

 

また、進行年度において人事制度改定を予定しており、定年再雇用後の給与水準を定年前と同水準まで引き上げるとともに雇用上限年齢を70歳まで延長する等、シニア世代が活躍できる環境の構築に取り組んでおります。

人的資本への積極的な投資の一環である賃金改善に関しましては、「ロイヤルグループのすべての従業員は付加価値を生む源泉であり、一過性ではなく継続的な投資による人材の成長そのものが会社の成長に繋がる」との考えを有しており、人材確保の観点からも引き続き改善を進めてまいります。

 

③ 将来ビジョン

ロイヤルグループが目指すべき将来像は、働きがい・働きやすさの観点から従業員に選ばれる企業となることです。それと同時に、従業員一人ひとりの成長が会社の成長にもつながるという好循環を持続させることです。人材への投資が従業員の働きがいにつながり、それがお客様満足度向上にも寄与し、結果としてロイヤルグループが持続的に成長するという好循環を繰り返していくことで、業界をリードする存在を目指します。

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3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 また、以下の記載につきましては、現経営環境下において経営者が重要と判断した順に記載しております。

 

(1) 人材の確保と育成

当社グループの事業において円滑な運営を継続するためには、短時間労働者、外国人労働者を含めた人材の確保が重要な課題であり、社員の配置転換、新卒・中途社員の採用、多様性のある働き方を推進する等、人材の確保に注力しております。また、当社グループが持続的に成長するためには確保した人材を教育し技能の向上を図る必要があります。労働人口の減少が先々見込まれる状況下、計画に沿った人材確保が困難な状況、確保した人材の育成に失敗した状況、新人事制度や処遇面での各種施策等の十分な効果が得られず、人材流失が継続・加速する場合、労働集約型のビジネスモデルが大半を占める当社グループにおいては、お客様に提供する商品やサービスの品質低下が生じる可能性を否めず、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループにおける人件費増加の発生可能性として、労働環境の変化に伴う社員及び短時間労働者の賃金引き上げ、労働・労務関連法規の改正や社会保険制度の変更等、現行制度の改変による影響が挙げられます。これらに対しては、従業員の育成による生産性向上はもとより、デジタルやテクノロジーを活用し効率性の向上に取組む必要があると認識しております。このような状況下、前述の取組みが不十分のため関連法令や労働環境に係わる変化への対応に遅延又は不足が生じた場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 食品の安全性

当社グループでは、飲食店営業、食品製造、食品販売、それぞれについて食品衛生法に基づき、必要な営業許可等を取得し、営業・製造・販売を行っており、品質管理の重要性を十分認識した上で、従業員に対して品質管理の指導教育を徹底するとともに、定期的な点検や検査により品質問題の発生防止に取り組んでおります。さらにグループ横断的に食材の品質衛生状態を管理する独立部署を当社に置き、品質保証体制の強化に努めております。しかしながら、店舗、製造拠点、販売店において食中毒、異物混入等の品質問題が発生した場合には、営業停止あるいは風評悪化等により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループが使用する食材については、法規制に加え自主基準を設けるとともに調達先を選別するなど、安全な食材確保に努めております。しかしながら、当社グループの使用する食材に健康被害をもたらすものが混入する等、使用食材の安全性に疑義が呈された場合、風評被害を含め、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) サステナビリティ戦略

国内外に営業拠点を持ち、様々な取引先と広範なサプライチェーンを構築し、労働集約型の事業を展開する当社グループにおいて、世界人口の増加、気候変動の進行、資源枯渇などの地球規模での構造的な変化による中長期的な経済活動への影響は事業継続に関わるリスクであると認識しております。

当社グループおよび当社グループのサプライチェーンにおける人権問題・環境破壊に起因する不買運動の発生、サステナビリティ課題への対応遅れによるブランドイメージや社会的信用の棄損などは、当社グループの経営成績等に直接的な影響を及ぼす可能性があります。また、ここ数年の地球温暖化の影響による猛暑や大雨等の自然災害による農作物の生育の影響等により、原材料の品質や物量、また調達コストに影響を及ぼす可能性があります。

当社グループの気候変動対応については、TCFDのフレームワークを活用したリスクと機会の特定および対応策の策定をおこなっており、中長期でCO2削減目標を設定し削減に向けた取組みを進めております。

また、食に関わる項目については当社グループの貢献が特に期待されていると認識しており、当社は、グループ全体で食品ロス削減の取組みや災害支援などCSR活動への継続的かつ積極的な参加に努めておりますが、その活動内容や告知が十分でない場合、レピュテーションの毀損、消費者からの反発などを通じて、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(4) 海外事業の展開

海外子会社及び海外関連会社の進出国における政情、経済、法律または規制の変更、為替レートの変動、テロ・戦争その他の要因による社会的混乱、ビジネス慣習等の特有なカントリーリスクにより、計画した事業展開を行うことができない場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、海外子会社及び海外関連会社で必要となる人材の確保が計画通りに進まない場合、新規出店や店舗展開に支障をもたらし、結果として当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、海外において現地企業とフランチャイズ契約を締結し、同国内でのスムーズな多店舗展開及び地域に根付いた店舗運営を行っているため、フランチャイズ加盟企業の減少や業績の悪化により、フランチャイズ・チェーン展開が計画通りに実現できない場合、ロイヤリティ等の収入が減少することなどにより、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、海外事業の拡大を、グループ事業の成長ドライバーの一つとして位置付けている当社グループにおいて、海外事業が計画通りに拡大しない場合、当社グループの事業成長に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 食材・商品等の供給体制と仕入コスト

当社グループは、店舗の食品の安全、効率的な運営と生産性の向上を目的に、食品工場、及び多数の取引先等からなるサプライチェーンを構築しています。

当該サプライチェーンの構成上、重要性が高い食品工場においては、品質安全性、商品差別化と供給の安定性を確保するために、自社にて一部商品の生産と供給を行っております。このため、自社生産部門において供給体制や品質等に問題が生じた場合には、商品の供給中断に伴う営業一時停止や営業制限等により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当該サプライチェーンに取り込んでいる取引先より提供を受ける食材や商品の品質水準や、物流面を担うドライバーの不足等を含む供給体制等に問題が発生した場合、あるいは自然災害や、火災等の不測の事故等が発生した場合、さらに地政学的リスク問題が発生した場合、店舗への食材・商品・備品の供給に支障をきたす可能性があります。その結果、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

加えて、当社グループが使用する食材等の仕入コストは、天候や為替相場など様々な要因により大きく変動する可能性があります。特に昨今、様々な要因により、価格の変動幅が大きくなっております。こうした仕入価格の変動が経営成績に与える影響を極力抑制するための各種施策を実施しておりますが、価格上昇の影響をすべて回避することは困難であり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) ブランド戦略

当社グループが展開する店舗名やロゴタイプ、商品に関する商標等の知的財産権は、重要性が高いものであると考えております。ロイヤルホスト・てんや等のブランドは長年にわたり顧客の支持を受けており、当社グループのブランドイメージの維持・向上やマーケティング戦略に不可欠なものとなっております。これら商標等の知的財産権については、その保護に努めておりますが、その保護に失敗した場合、又は第三者が当社グループの知的財産権を悪用若しくは侵害した場合、ブランドの価値が損なわれ、当社グループの事業、ブランドイメージ、社会的信用に影響を与える可能性があります。

また、当社グループは高付加価値戦略を選択しており、昨今の物価上昇、家計の可処分所得または可処分時間の争奪戦において、見合う価値を提供できなくなった場合に、ブランドの価値が損なわれ、当社グループの事業、ブランドイメージ、社会的信用に影響を与える可能性があります。

あわせて、当社グループ全体でブランディングを強化することで、露出が増える結果として当社グループだけでなく、個別のブランドへの影響度合いが増大する可能性があります。

 

(7) 店舗等拠点の管理

当社グループの外食事業の店舗の多くは借地又は賃借用の建物を使用しておりますが、賃貸借契約は賃貸人側の事情により解約や賃料が改定される可能性があります。当社グループの拠点管理部署にて賃貸人と契約条件・期間の交渉を実施しておりますが、賃貸借契約の期間前解約、賃料の大幅な増加が想定以上に発生した場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループで運営する店舗において建物・設備の計画的、定期的な保守点検、メンテナンスを実施しておりますが、経年による老朽化が進行した場合、昨今の気候変動や自然災害の大型化による影響等により損壊や崩落等の被害の可能性があります。その被害は、店舗の物理的な損壊等にとどまらず、人的被害を伴う可能性があるほか、営業の一時停止や営業制限等により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(8) テクノロジーの導入

当社グループは飲食産業全体が抱える課題に対応すべく、AI等の様々な最新技術の情報を収集・分析し、活用に向けた検証、実証に取り組んでいます。テクノロジーは日進月歩で進化しており、業務拡大及び戦略的業務への有効活用するシステムの導入遅延が生じた場合、競合他社に対する優位性の低下や事業の収益性の低下につながる恐れがあり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 情報管理

当社グループでは事業運営に関わる機密情報や、経営数値情報、また、営業を目的とした顧客情報や、特定個人情報を取り扱っております。当社グループは機密情報の漏洩を重要なリスクと認識し、その取扱いに関するルールを定め、厳重な管理取扱をグループ内に周知しておりますが、昨今頻繁に発生しているSNSによる情報流出やサイバー攻撃等による各種情報の漏洩や取り扱い情報の不正な改ざん等の問題、或いは個人情報の流出等の問題が発生した場合には、当社グループの信用に大きな影響を与えるとともに、損害賠償の責を負うなどにより、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループでは、サプライチェーンの管理、店舗での注文、決済等において情報通信システムに大きく依存しております。当社のグループ内システム部門において、コンピューターウイルス・サイバー攻撃などに対し、適切に防止策を実施してリスクの低減を図っておりますが、情報通信システムが悪意ある攻撃などにより障害が発生した場合、効率的な運営ができず、又は情報喪失や情報流出により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

さらに当社グループに関連し、インターネット上で様々な書き込みや画像等により風評被害が発生した場合、その内容の真偽にかかわらず、当社グループの事業、経営成績、ブランドイメージ及び社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループ以外の風評被害であっても、外食産業の社会的評価や評判が下落するものの場合、当社グループの事業、経営成績、ブランドイメージ及び社会的信用にも影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 景気動向と競合

当社グループの経営成績は景気動向、特に個人消費の動向に大きく影響を受けます。所得税、消費税、社会保険負担、景況感や物価動向など様々な外部要因による個人可処分所得の増減が個人消費に影響するため、政治経済状況を注意深く観察しておりますが、社会環境の見通しの誤りやその変化への対応が遅れる場合、適切な価格改定が行えない場合などにおいては、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、女性の社会進出や少子化など社会構造の変化に伴い、消費者の生活スタイルも変容しており、中食やデリバリーサービスの日常化など消費やマーケットの構造もその影響を受けております。これに伴い外食同業間だけでなく業態・業種を超えて顧客確保のための企業間競争がますます激化するなど、構造変化とその対応如何が当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 自然災害

昨今の気候変動等により地球規模での自然災害が発生しておりますが、特に日本においては東南海を震源とした地震に対する危険度の高まり、温暖化によるゲリラ豪雨の発生、台風の大型化等が見受けられます。このような状況から大規模な地震等の自然災害が発生した場合に備え、当社グループでは専門部署を設置し、事業継続計画(BCP)の策定、防災訓練の実施、社員安否確認システムの整備などの対策を講じております。しかしながら、これらの自然災害により影響を受けた地域では、日常生活も深刻な状況となり、当社グループの店舗においても設備損傷、ライフラインの利用制限、さらに取引先、物流などのサプライチェーンの寸断により、正常な事業活動の継続が困難となり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(12) 法令遵守

当社グループは、国内外の様々な法令の枠のもとで営業活動を行っており、情報開示や研修等による啓蒙活動によって法令遵守の意識向上に努め、当社グループのリスク管理規程に基づきリスク管理委員会を設置し、当社グループ内の様々なリスクを適切に認識し、具体的対策を実施しておりますが、取引先や加盟店への対応徹底も含め、国内外の新たな法令制定、法改正への対応に不備が生じた場合、または法令遵守違反等が発生した場合には、当社グループの信用に大きな影響を与えるとともに、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループはフランチャイズ契約による事業活動も展開しており、フランチャイジーに対する指導不足等により法令遵守に違反する事例が生じた場合、当社グループの信用に大きな影響を与えるとともに、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。加えて、当社グループの事業は食品衛生法を始めとして、国内外の様々な法的規制の枠組みの中で運営しております。このため、食品表示関連も含め、さらなる法的規制が強化された場合、これに対応するための新たな費用の発生等により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 財務健全性

当社の借入金に関して、株式会社みずほ銀行他6行からシンジケーション方式により調達した長期借入金5,625百万円(うち1年内返済予定の長期借入金4,500百万円)には財務制限条項が付されております。当社グループでは、財務規律には十分に留意して事業を展開しておりますが、当社の業績又は財政状態の悪化等の要因で、財務制限条項へ抵触した場合には、当該借入についての返済を求められ、当社グループの財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 経営者の視点による当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績等の状況の概要及び分析・検討内容

 当連結会計年度における当社グループの経営成績等の状況の概要及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 経営成績の状況

(売上高及び営業損益)

 当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度から13,210百万円増加(+9.5%)し、152,150百万円となりました。外食や宿泊の需要が底堅く推移したことに加えて、高付加価値戦略に伴う販売価格の上昇も寄与いたしました。

 当社グループのセグメント別売上高は、「(2) 生産、受注及び販売の実績」に記載のとおりであり、訪日外国人客の増加も下支えし、観光需要が回復基調となったことから、空港ターミナル店舗を中心としたコントラクト事業やホテル事業が大幅な増収となったことに加えて、外食事業や食品事業においても増収となりました。また、高付加価値な商品提供や新規出店、業態転換等の施策も奏功しており、中期経営計画(2022年~2024年)の骨子として掲げた「既存事業の収益性向上」は着実に進捗いたしました。あわせて、各事業セグメントにおいて次世代に向けた新たな業態開発を行うなど、「戦略的事業の創造」を通じた売上創造に取り組みました。これらの取り組みにより、中期経営計画(2022年~2024年)の最終年度における売上目標を1,360億円としておりましたが、最終年度となる当連結会計年度において、目標を大きく上回る結果となっております。

 売上原価につきましては、前連結会計年度に比べ3,184百万円増加(+7.5%)しました。なお、売上原価が売上高に占める比率(売上原価率)は、前連結会計年度から0.6ポイント低下し29.9%となっております。これは、原価率が相対的に低いホテル事業の売上シェアが増加したことによるものであります。

 販売費及び一般管理費につきましては、前連結会計年度に比べ8,733百万円増加(+9.7%)しました。販売費及び一般管理費が売上高に占める比率(販管費率)は、電気やガスの仕入価格高騰が一服し、水道光熱費の比率が低下したことに加えて、増収に伴い、従業員給与や賃借料等の固定的な費用の占める割合が低下しましたが、営業施策の強化に伴う販売手数料や販売促進費、新規出店や改装などの設備投資による減価償却費が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ0.1ポイント上昇し65.2%となっております。

 以上の結果、営業利益は7,366百万円(前期比+21.3%)となっております。

 

(営業外損益及び経常損益)

 営業外収益は、機内食事業やホテル事業を行う関連会社を中心に、持分法による投資利益が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ711百万円増加(152.3%)し、1,179百万円となりました。また、営業外費用は、リース債務に係る利息の減少などにより、前連結会計年度に比べ45百万円減少(△3.6%)し、1,229百万円となりました。

 この結果、経常利益は7,315百万円(前期比+38.9%)、EBITDA(経常利益+減価償却費+のれん償却額+ネット支払利息)は2,557百万円増加(+20.2%)し、15,193百万円となっております。当連結会計年度については、前述営業利益の増益に加えて、上記営業外収益の増加もあり、前期に対して大幅な増益となりました。中期経営計画(2022年~2024年)では、経常利益65億円、EBITDA140億円を最終年度の目標として掲げておりましたが、既存事業への積極的な投資と新規事業の育成などの各種施策を推進した結果、最終年度にあたる当連結会計年度において、目標を大きく上回る結果となっております。

 

(特別損益及び税金等調整前当期純損益)

 特別利益は、当連結会計年度には、固定資産売却益及び受取補償金を計上し、前連結会計年度から17百万円増加(+13.2%)し、147百万円になりました。また、特別損失は、外食事業やホテル事業で積極的な改装・改修を行ったこと等により固定資産除売却損が246百万円増加したことや、収益性の低下又は閉店の決定による減損損失が147百万円増加したことなどにより、前連結会計年度から374百万円増加(+29.0%)し、1,666百万円になりました。

 この結果、税金等調整前当期純利益は5,796百万円(前期比+41.2%)となっております。

 

 

(法人税等、当期純損益、非支配株主に帰属する当期純損益及び親会社株主に帰属する当期純損益)

 法人税等(「法人税、住民税及び事業税」並びに「法人税等調整額」の合計額)は、繰越欠損金の利用による法人税、住民税及び事業税の減少などにより、前連結会計年度は68百万円の費用でしたが、当連結会計年度には104百万円の利益となりました。

 

 これらの結果、当期純利益は5,900百万円(前期比+46.2%)となっております。

 また、非支配株主に帰属する当期純損益は、非支配株主が存在する連結子会社の当期純損益のうち、その持分に相当する額でありますが、当連結会計年度については純損失25百万円を計上しております。

 

 以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は5,926百万円(前期比+46.8%)となりました。また、1株当たり当期純利益は120円40銭(前期比+43円58銭)となっており、中期経営計画(2022年~2024年)の最終年度における1株当たり当期純利益の目標値として掲げた80円を大きく上回る水準となっております。

 

 各セグメント別の経営成績の状況については、次のとおりであります。

 

(外食事業)

 当社グループの基幹である外食事業におきましては、ホスピタリティ・レストラン「ロイヤルホスト」、天丼・天ぷら専門店「てんや」、サラダバー&グリル「シズラー」、ピザレストラン「シェーキーズ」などのチェーン店のほか、ビアレストラン、カフェ、各種専門店等の多種多様な飲食業態を展開しております。

 主力の「ロイヤルホスト」におきましては、国産食材消費を応援する企画として、日本の食材を活かしながらロイヤルホストの洋食メニューと掛け合わせた「Good JAPAN」や「シンガポールフェア」を開催するなど、高付加価値な商品の提供を行いました。また、国内においては、「ロイヤルホスト ららテラスHARUMI FLAG店(東京都中央区)」「ロイヤルホスト あびこ駅前店(大阪府大阪市)」を新規出店いたしました。海外においては、シンガポール・チャンギ国際空港隣接の大型商業施設ジュエル・チャンギ・エアポート内に「ロイヤルホスト シンガポール ジュエル店(シンガポール)」、地元住民や観光客に人気の高いオーチャードロードに「ロイヤルホスト シンガポール高島屋S.C.,Ngee Ann City店(シンガポール)」の2店舗を出店いたしました。

 「てんや」におきましては、全国のご当地食材を使用したメニューの提供を行うとともに、引き続き、テイクアウト需要拡大の取り組みを行いました。また、「天丼てんや あべのキューズモール店(大阪府大阪市)」「天丼てんや 横須賀中央店(神奈川県横須賀市)」「天丼てんや ヨドバシ横浜店(神奈川県横浜市)」を出店し、デジタルの活用によるオペレーションの効率化を実現した次世代型店舗の展開を進めました。あわせて、てんやブランドのリブランディングに向けたテスト店舗として「天丼てんや 平塚田村店(神奈川県平塚市)」「天丼てんや 千歳烏山店(東京都世田谷区)」をリニューアルオープンいたしました。

 「専門店」におきましては、ミドルサイズチェーンの「シズラー」において、日本食材の魅力を伝える企画として「Good JAPAN Fair」を開催いたしました。あわせて、「シズラー 府中店(東京都府中市)」「シズラー 大塚駅前店(東京都豊島区)」の改装を実施し、顧客体験価値の向上に取り組みました。また、「シェーキーズ」においても、「シェーキーズ 吉祥寺店(東京都武蔵野市)」「シェーキーズ 聖蹟桜ヶ丘店(東京都多摩市)」を新型モデルとしてリニューアルオープンし、ブランドの価値向上の取り組みを進めるとともに、「シェーキーズ 新宿セノビル店(東京都新宿区)」を新規で出店いたしました。また、持分法適用の関連会社である双日ロイヤルカフェ株式会社において、「コスタコーヒー 日比谷国際ビル店(東京都千代田区)」「コスタコーヒー 吉祥寺マルイ店(東京都武蔵野市)」「コスタコーヒー L.Biz日本橋店(東京都中央区)」「コスタコーヒー エスポワール阿佐ヶ谷店(東京都杉並区)」の4店舗を出店し、カフェチェーン展開を推進いたしました。当連結会計年度におきましては、上記施策を実施したことなどにより、売上高は63,034百万円(前期比+1.9%)、経常利益は3,197百万円(前期比△23.8%)となりました。

 

(コントラクト事業)

 コントラクト事業におきましては、法人からの委託等により、空港ターミナルビル、高速道路サービスエリア・パーキングエリア、コンベンション施設、エンターテインメント施設、オフィスビル、医療介護施設、百貨店、官公庁等において、それぞれの立地特性に合わせた多種多様な飲食業態を展開しております。

 当連結会計年度におきましては、国内観光やインバウンド需要の回復を受けて、各業態で売上高は増加いたしました。空港ターミナルビルでは「北海道味噌キッチン(北海道千歳市)」「ロイヤルホスト 中部国際空港店(愛知県常滑市)」「ロイヤルホスト 熊本空港店(熊本県上益城郡益城町)」「ソラテラスカフェ鹿児島空港店(鹿児島県霧島市)」を新規で出店いたしました。高速道路サービスエリア・パーキングエリアでは九州自動車道の「北熊本サービスエリア上り線(熊本県熊本市)」をリニューアルオープンいたしました。また、ベースボールスタジアム「ZOZOマリンスタジアム(千葉県千葉市)」、大型多目的アリーナ施設「LaLa arena TOKYO-BAY(千葉県船橋市)」内において飲食店舗の運営を受託いたしました。上記施策を実施したことなどにより、売上高は49,789百万円(前期比+14.3%)、経常利益は2,747百万円(前期比+21.7%)となりました。

 

(ホテル事業)

 ホテル事業におきましては、「ひとと自然にやさしい、常にお客さまのために進化するホテル」を経営理念として掲げ、全国に「リッチモンドホテル」等を47店舗展開しております。

 当連結会計年度におきましては、全国各地で祭礼や催事が再開され、国内観光需要が活発化したことに加えて、インバウンド需要が増加したことなどにより、各ホテルで売上高は堅調なものとなりました。また、「リッチモンドホテル宮崎駅前(宮崎県宮崎市)」「リッチモンドホテル札幌大通(北海道札幌市)」「リッチモンドホテル帯広駅前(北海道帯広市)」「リッチモンドホテル仙台(宮城県仙台市)」の4ホテルを改装し、料飲部門のリニューアルや客室・共用部の改善を行いました。加えて、マーケティング施策の強化を推進し、宿泊価値の向上に注力いたしました。上記施策を実施したことなどにより、売上高は35,072百万円(前期比+18.8%)、経常利益は5,424百万円(前期比+94.6%)となりました。

 

(食品事業)

 食品事業におきましては、主に当社グループの各事業における食品製造、購買、物流業務等のインフラ機能を担っているほか、グループ外企業向けの「業務食」および家庭用フローズンミール「ロイヤルデリ」の製造も行っております。

 当連結会計年度におきましては、ロイヤルホストを中心としたグループ店舗における売上高の増加を受け、内部向けの製造販売量が増加したことなどにより、売上高は12,473百万円(前期比+5.2%)、経常利益は107百万円(前期比△42.2%)となりました。

 

(その他)

 その他の事業は不動産賃貸や持分法適用の関連会社による機内食事業等であり、国際線の航空需要の回復による機内食事業の改善により、売上高は327百万円(前期比+18.2%)、経常利益は601百万円(前期経常損失6百万円)となりました。

 

② 財政状態の状況

(資産)

 流動資産は、コントラクト事業やホテル事業を中心とした売上高の増加等に伴う売掛金の増加1,544百万円、未収入金の増加等に伴うその他の流動資産の増加1,226百万円などの増加要因があった一方、新型コロナウイルス感染症の影響が拡大する中で高めていたキャッシュポジションを見直したことなどにより、現金及び預金が7,044百万円減少したことを主な要因として、前連結会計年度末から4,339百万円減少(△10.7%)し、36,154百万円となりました。

 固定資産のうち有形固定資産は、減価償却費5,702百万円、減損損失910百万円などの減少要因に対し、各事業における新規出店や、既存店舗の改装・改修等の設備投資額(リース資産を含む)として10,274百万円を計上しており、前連結会計年度末から3,442百万円増加(+7.4%)し、49,955百万円となりました。無形固定資産は、主にシステム関連で745百万円の投資を行っておりますが、国内高速道路のサービスエリアのレストラン、フードコート及び売店等を運営する会社を連結子会社とした際に計上した、のれん及び施設運営権の償却を合計で865百万円計上していることなどにより、前連結会計年度末から328百万円減少(△1.9%)し、16,833百万円となりました。また、投資その他の資産は、上場有価証券の時価の上昇や関係会社への出資などにより、投資有価証券が2,602百万円増加したことを主な要因として、前連結会計年度末から3,095百万円増加(+14.3%)し、24,795百万円となりました。

 これらにより、資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,869百万円増加(+1.5%)し、127,738百万円となりました。

 

(負債)

 流動負債は、1年内返済予定の長期借入金の増加1,150百万円を主な要因として、前連結会計年度末に比べ1,717百万円増加(+6.1%)し、30,099百万円となりました。

 固定負債は、長期借入金の減少2,050百万円及びリース債務の減少490百万円などの有利子負債の減少を主な要因として、前連結会計年度末に比べ2,501百万円減少(△5.0%)し、47,164百万円となりました。

 これらにより、負債合計は、前連結会計年度末に比べて784百万円減少(△1.0%)し、77,263百万円となりました。

 

(純資産)

 純資産のうち、株主資本につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益5,926百万円等の増加要因、配当金の支払い1,249百万円、発行済A種優先株式全ての取得3,069百万円等の減少要因により、前連結会計年度から1,609百万円増加(+3.5%)し、47,782百万円となりました。

 その他の包括利益累計額は、投資有価証券の時価の増加等に伴う、その他有価証券評価差額金の増加等により、前連結会計年度から818百万円増加(+49.7%)し、2,466百万円となりました。

 以上により、株主資本にその他の包括利益累計額を加えた自己資本は50,249百万円となり、前連結会計年度末から2,428百万円増加(+5.1%)しております。

 総資産のうち自己資本の占める割合である自己資本比率は、前述、自己資本の増加を主な要因として、前連結会計年度末に比べ1.3ポイント上昇し39.3%となっており、財務基盤の健全性は向上しております。また、親会社株主に帰属する当期純利益の自己資本に対する割合である自己資本利益率は、親会社株主に帰属する当期純利益の増加により、前連結会計年度末に比べ3.3ポイント上昇し12.1%となっております。なお、中期経営計画(2022年~2024年)の最終年度の目標を、自己資本比率40%程度、自己資本利益率8%以上とそれぞれ掲げておりますが、自己資本比率は中期経営計画(2022年~2024年)の期間において8.3ポイント改善し、目標値とした水準まで回復しており、自己資本利益率については目標値を大きく超過する水準となっております。

 なお、自己資本に、非支配株主が存在する連結子会社の資本のうち、その持分に相当する額である非支配株主持分を合計した純資産全体では、前連結会計年度末に比べ2,653百万円増加(+5.5%)し、50,474百万円となっております。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、投資活動による支出及び財務活動による支出の合計額が、営業活動による収入を上回ったため、前連結会計年度末に比べ7,044百万円減少し、19,361百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、外食事業やコントラクト事業などの各事業における顧客からの売上代金の受取から、食材等の仕入、販売費及び一般管理費、法人税等の支払いなどを控除したキャッシュ・フローであります。当連結会計年度の法人税等の還付・支払前のキャッシュ・フロー(収入)は、前連結会計年度に比べ2,115

百万円収入が減少し、11,369百万円の収入になっており、営業活動によるキャッシュ・フロー全体でも、前連結会計年度に比べ2,172百万円収入が減少し、10,364百万円の収入となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、各事業の新規出店や改装・改修などによる設備投資が主なものであります。前連結会計年度との比較では、前連結会計年度に比べ有形固定資産の取得による支出及び無形固定資産の取得による支出が合計で2,466百万円増加したことや、店舗の改装・改修による有形固定資産の除却費用を含めた、店舗閉鎖等による支出が463百万円増加したことなどにより、投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ3,250百万円支出が増加し、9,843百万円の支出となりました。

 以上の結果、営業活動によるキャッシュ・フロー及び投資活動によるキャッシュ・フローにより算定されるフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ5,422百万円収入が減少し、520百万円の収入となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、長期及び短期借入金の借入による収入及び返済による支出、ファイナンス・リース債務の返済による支出などが主なものであります。前連結会計年度との比較では、当連結会計年度に発行済A種優先株式の全部を取得したこと等により自己株式の取得による支出が2,884百万円増加したことを主な要因として、財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ2,546百万円支出が増加し、7,743百万円の支出となりました。

 

(資本の財源)

 当社グループの事業活動において必要となる資金については、営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金を充当することを基本とし、内部資金に不足が生じる場合については、金融機関からの借入による資金調達を行うほか、不動産賃貸借契約等に基づくファイナンス・リース取引などを行っております。

 長期資金の調達については、事業計画に基づく資金の使途、資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の償還時期等を考慮の上、調達規模、調達手段を適宜判断して実施しております。

 当連結会計年度におきましては、取引銀行8行から、総額8,000百万円の長期借入金の資金調達を行っているほか、主としてホテル事業の改装・改修に係るファイナンス・リース取引により、総額2,342百万円のリース債務を計上しております。

 なお、当連結会計年度末時点において決定している重要な設備の新設等の計画については「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりでありますが、新中期経営計画(2025~2027)において、総額465億円の設備投資及び総額16億円の持分法適用会社への出資を予定しており、その内容は次のとおりであります。

 

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(資金の流動性)

 当社グループでは、国内の子会社に対してキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、グループ内の効率的な資金管理を行っており、各社・各部署からの報告に基づき適時に資金繰計画を作成・更新するとともに、手元流動性を維持するなど、当社において当社グループの流動性リスクを一元的に管理する体制を構築しております。

 なお、流動比率(流動負債に対する流動資産の割合)は、新型コロナウイルス感染症の影響が拡大する中で高めていたキャッシュポジションを当連結会計年度において見直したことなどにより、前連結会計年度比22.6ポイント低下し120.1%となっておりますが、依然、当社グループの事業運営上に必要な資金の流動性は十分に確保しているものと認識しております。

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

食品事業(百万円)

9,093

105.8

合計(百万円)

9,093

105.8

(注)金額は製造原価によっております。

 

② 受注実績

当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を立てて生産しております。一部受注生産を行っておりますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はありません。

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

外食事業(百万円)

63,034

101.9

コントラクト事業(百万円)

49,789

114.3

ホテル事業(百万円)

35,072

118.8

食品事業(百万円)

12,473

105.2

報告セグメント計(百万円)

160,369

109.2

その他(百万円)

327

118.2

合計(百万円)

160,696

109.3

(注)セグメント間の取引を含めた金額によっております。

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

特記すべき事項はありません。

 

6【研究開発活動】

特記すべき事項はありません。