第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、1887年(明治20年)の創業以来、「最高の品質こそ 最大のサービス」を社是として、「書く(かく)、描く(えがく)」ことにこだわり、品質向上と技術革新に努め、お客様にご満足いただける「もの」づくりに取り組んでまいりました。

 当社の事業は、創業者である眞崎仁六が日本にも鉛筆を普及させたいと願い、「はさみ鉛筆」を一本ずつ販売することから始まりました。その後、海外製品にも負けない鉛筆をつくりたいと考え、1958年に最高品質の鉛筆「ユニ」が生まれました。そして現在では、当社の筆記具は、日本だけでなく世界100ヵ国以上のお客様にご愛顧いただいております。また、いつの時代も幅広い年齢層の方々にとって身近な存在であり続け、お客様の日常と生活に寄り添ってまいりました。

 しかし、近年当社グループを取り巻く外部環境は、デジタル化の進展に伴う筆記機会の減少や価値観の多様化、社会課題への意識の高まりといった激しい変化の時代を迎えております。そのような中で、当社がこれまでの事業活動のなかでお客様に対してお届けしてきた提供価値を問い直して再定義したうえで、2022年に「ありたい姿2036(長期ビジョン)」を公表するに至りました。当社が筆記具という製品を介してお届けしてきた提供価値とは、「書く、描く」ことによって、お客様一人ひとりが生まれながらに持つ個性や才能をかたちにすることであり、またそういった活動を支えることであると考えております。

 そして、創業から積み重ねてきたお客様への提供価値を起点として、筆記するための道具をつくる「筆記具メーカー」から、お客様それぞれが持つユニークを表現する喜びをお届けする「表現革新カンパニー」へと生まれ変わり「生まれながらにすべての人がユニークである」という信念に基づき、「書く、描く」ことを通じて、世界中のあらゆる人々の生まれながらに持つ個性と創造性を解き放つというお客様への提供価値を具現化してまいりたいと考えております。

 筆記具には、お客様一人ひとりのユニークを引き出し、高め、彩り、共感しあえるものへと変える力があります。当社は、創業から取り組んできた筆記具事業でお客様にお届けしてきた提供価値と真摯に向き合い、性別、文化、障がいを始めとする一人ひとりが生まれ持った様々な違いを可能性に変えることで、豊かな表現や新たなつながりを生み出すことにより、違いを美しさととらえ、新たな技術で世界を彩ることに尽力してまいります。そういった活動を通じて、より一層のお客様の信頼をいただき、時間を超えてお客様にご愛顧いただける商品をご提供すべく、引き続き努力してまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、お客様お一人おひとりに支えられ、1887年(明治20年)の創業より当社グループの考える「書く、描く」ということを、商品というかたちにしてご提案してまいりました。この永きにわたるお客様からの信頼にお応えするべく、収益性及び安全性に関する経営指標を総合的に勘案し、長期的な企業価値の向上を目標としております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

 当社グループは、創業150年である2036年に向け、お客様への提供価値を見つめ直し、実現したい将来の「ありたい姿2036(長期ビジョン)」、そこへ向かうためのパーパス・事業ドメインを含んだ「コーポレートブランドコンセプト(企業理念)」を策定しております。

 グループ全体のありたい姿(長期ビジョン)を「世界一の表現革新カンパニー」とし、「生まれながらにすべての人がユニークである」という信念に基づき、「書く、描く」ことを通じて、世界中あらゆる人々の個性と創造性を解き放ち、表現する喜びをお届けするという価値を提供してまいります。

 また、コーポレートブランドコンセプト(企業理念)を「違いが、美しい。」としております。「書く、描く」という行為には、人それぞれのユニークを引き出し、高め、彩り、共感しあえるものへと変える力があります。当社グループは、新たな技術と常に向き合い、性別、文化、障がい、人が生まれ持ったさまざまな違いを可能性に変え、豊かな表現や新しいつながりを生み出していきたいと考えております。さらに、違いを美しさと捉え、これまでも、そしてこれからも、新たな技術で一人ひとりのユニークを輝かせ、世界を彩りたいと考えております。

 この長期ビジョンの達成への足掛かりとすると同時に企業価値の向上を図るための取り組みとして、3年毎の中期経営計画に基づき活動しております。そして、2022年より取り組んできた前中期経営計画での進捗を踏まえた施策をさらに推し進め、企業変容とイノベーションを実現することを意図し、2025年1月より「uni Advance」を基本方針とした2027年までの中期経営計画をスタートさせました。なお、中期経営計画の基本方針に基づいた重点方針と財務目標は以下の通りです。詳細につきましては、2025年2月13日に公表いたしました「「中期経営計画2025-2027」の策定に関するお知らせ」をご参照ください。

 

〔中期経営計画 2025-2027〕

①筆記具事業の成長継続と多角化推進

 さらなるマーケティング機能の強化と当社グループ全体の協働的な活動によりブランドを価値向上させ、高付加価値商品の提供と潜在的なニーズを踏まえた体験価値の創造を推進するとともに、新興国市場を始めとするエリアの拡大と次の事業展開を見据えた体制構築を通じて、より多くの人々に体験価値を提供してまいります。加えて、販売と生産の連携強化によるグローバルサプライチェーンの最適化により、生産効率向上と環境負荷低減を両立し、持続可能な事業基盤を構築してまいります。

②非筆記具事業分野における規模拡大とグループにおけるありたい姿実現を牽引する活動の深化

 非筆記具事業を企業成長の原動力となる事業の柱に育成するとともに、これらの事業を通じて社会に貢献することを目指します。また、異業種共創を通じたイノベーション創出などにより、ありたい姿実現に向けた企業力強化を推し進めてまいります。

③ステークホルダーと連携した成長基盤強化

 当社を取り巻くステークホルダーの皆様との関係のさらなる強化に加えて、人的資本や技術力を始めとする保有する有形無形を問わない資産を活かした事業成長における基盤の強化に取り組んでまいります。

 

(2027年財務目標)

 売上高  :1,030億円

 営業利益 : 155億円

 営業利益率: 15.0%

 

(4)経営環境

 当社グループを取り巻く市場環境は、多くの先進諸国では人口減少と成熟化が進む市場となりつつあります。一方で、新興国においては経済成長に伴う中間所得層の増加を背景に、高品質かつ高機能な筆記具への需要が高まりを見せており、消費の拡大が期待されます。

 デジタル技術の発展により、AIやスマートデバイスが日常のさまざまな場面で活用されるようになり、筆記具に求められる役割にも変化が生じております。また、ライフスタイルや価値観の多様化に加えて、持続可能な社会の実現に向けた意識が高まりつつあることで、お客様が商品やサービスを選択する際の基準に大きな影響を与えています。市場のボーダーレス化や新興企業の参入などにより、品質やコストを含めた競争が激しさを増しており、こうした市場環境の変化に適応しながら新たな価値を提供することが求められています。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、1887年(明治20年)の創業以来、「最高の品質こそ 最大のサービス」という社是のもと、「書く、描く」ということを筆記具という商品を通じてお届けし、より多くのお客様に喜んでいただくことを使命と考え、活動してまいりました。

 当社グループを取り巻く市場環境に目を向けると、先進諸国では人口減少と市場の成熟化が進む一方で、新興国では経済成長に伴う消費の拡大が期待されます。また、デジタル技術の発展により、AIやスマートデバイスが日常のさまざまな場面で活用されるようになり、筆記具に求められる役割にも変化が生じています。そのうえ、ライフスタイルや価値観の多様化に加えて、持続可能な社会の実現に向けた意識が高まりつつあることで、お客様が商品やサービスを選択する際の基準に大きな影響を与えています。さらに、市場のボーダーレス化や新興企業の参入などにより、品質やコストを含めた競争が激しさを増しており、こうした変化に適応しながら新たな価値を提供することが求められております。

 このような市場環境のもと、当社グループは、創業150年を迎える2036年に向けた「ありたい姿2036(長期ビジョン)」において、これまでの高付加価値筆記具の提供に加えて、多くの人が生まれながらに持つ個性や創造性を解き放つ表現体験そのものを提供していくことを経営方針として掲げています。そして、「世界一の表現革新カンパニー」となることを目指し、進化を続けてまいります。当社グループが今後さらなる発展を遂げるためには、「生まれながらにすべての人がユニークである」という信念のもと、「書く、描く」ことを通じて、お客様一人ひとりが持つ個性や才能を解き放つこと、そしてこうした“表現体験そのもの”を創造していくことが不可欠であると認識しております。

 当社グループは、「ありたい姿2036」の実現に向け、2036年を起点としたバックキャスト思考に基づき、2022年より中期経営計画を段階的に推進しています。その第二段階として、2025年から2027年を対象とする中期経営計画を策定し、基本方針を「uni Advance」と定めました。この方針のもと、筆記具事業の成長継続と多角化を進め、マーケティング強化やエリア拡大を図りながら、高付加価値商品の提供と体験価値の創造に取り組みます。また、非筆記具事業の規模拡大を推進し、異業種との共創を通じたイノベーション創出にも注力してまいります。さらに、当社に関係される多くのステークホルダーの方々との連携を深め、経営基盤を強化することで、持続的な企業成長を実現してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)サステナビリティに関する基本的な考え方及び取組み

当社は、「違いが、美しい。」というコーポレートブランドコンセプト(企業理念)のもと、ESG(環境・社会・ガバナンス)の視点から持続可能な社会の実現に向けて取組みを行い、多様性あふれる豊かな自然、世界中の多様な個性や文化が混ざり合う美しい世界で、だれもが自由に表現をたのしみ続けられる未来を目指しております。

(2)ガバナンス

当社は、取締役会の監督に基づき、サステナビリティ担当役員を議長とするサステナビリティ推進委員会を設置しております。サステナビリティ推進委員会は、グループ全体のサステナビリティ活動の方針策定と、各取組みのモニタリング等を行っています。また、サステナビリティ推進委員会下に部会を設置し、部門横断的な重要性の高いテーマについて活動方針の策定や各専門分野のモニタリングを行っております。

サステナビリティ担当役員は、取締役会に対して、年1回定期報告を行うほか、必要に応じてサステナビリティ活動の状況等について報告を行っております。

<サステナビリティ推進体制>

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(3)リスク管理

当社では、リスク管理委員会を設置し、外部環境の変化等を踏まえてリスクを特定、分析、評価及び重要性の高いリスクの抽出を行ったうえで、リスクへの対応方針を定め、企業価値の毀損を回避するよう努めております。

リスク管理委員会は、代表取締役を委員長として、経営企画、財務、法務、総務、サステナビリティをはじめとする各分野を担当する執行役員等により構成しており、毎年1回以上、リスクマネジメント会議を開催し、リスクの見直しを行うとともに、活動報告や新規の活動テーマの策定などを行うことを通じて、当社グループ全体のリスク管理を行っております。詳細につきましては、[事業等のリスク]をご参照ください。

 

 

(4)気候変動に関する取組み

当社グループでは、気候変動を環境に関する重要課題のひとつととらえ、気候変動対策に積極的に取り組んでおります。事業活動に気候変動が及ぼすリスクと機会を把握するために、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言の枠組みに基づき分析を行いました。結果の概要は以下の通りです。

①ガバナンスとリスク管理

当社は、取締役会の下にサステナビリティ推進委員会を設置しており、気候変動に関するリスクと機会の管理を含む、当社グループ全体のサステナビリティ活動の方針策定及び各取組みのモニタリングを行っております。また、サステナビリティ担当役員は、取締役会において年1回以上活動内容について報告を行っております。

 

②戦略・シナリオ分析

将来の気候変動が事業活動にもたらす影響について、下記の前提条件に基づいて、シナリオ分析を実施いたしました。前提条件およびシナリオ分析の結果は、以下の通りです。

<前提条件>

・ 時間軸   :2030年、2050年

・ 事業対象  :筆記具事業

・ 想定シナリオ:「+4℃(SSP3-7.0)」と「+2℃(SSP1-2.6)」を用いております。

<シナリオ分析結果>

a.「+2℃」のシナリオ分析結果

社会の方向性

リスク

機会

内容

程度

(注1)

対応策

内容

程度

(注2)

対応策

気候変動対応の重視

炭素税等によるコスト増

省エネ活動の

さらなる推進

低炭素型製品の需要拡大

低炭素型製品の開発強化

循環型社会の

形成推進

再生プラ利用へのシフト

再生材利用技術の確立

再生プラ製品の需要拡大

再生プラ製品の開発強化

プラスチック使用量削減への

取組み不足

プラスチックの削減と代替

(包装材等)

プラスチック削減製品の需要拡大

プラスチック削減製品の開発強化(包装材等)

生物多様性の

維持・保全

森林保全の

厳格化

森林認証財の

利用増大

森林認証材使用製品の需要拡大

森林認証材使用製品の開発強化

環境規制の

厳格化

化学物質等の規制強化

現在の環境管理体制の維持強化

環境規制対応製品の需要拡大

環境規制対応製品の開発強化

 

b.「+4℃」のシナリオ分析結果

社会の方向性

リスク

機会

内容

程度

(注1)

対応策

内容

程度

(注2)

対応策

気象災害の

激甚化

災害被害による工場稼働停止

気候変動を想定したBCP整備

平均・最高

気温の上昇

従業員の健康への悪影響

適切な

労働環境の整備

(注)1.リスクにおける程度の判断は、以下の基準に基づき行っております。

・大:ビジネスへの影響があり、何らかの対応を早急に検討する必要があると想定される

・中:ビジネスへの影響があり、何らかの対応の検討が必要と想定される

・小:ビジネスへの影響はあり得るものの、かなり影響が低いと想定される

2.機会における程度の判断は、以下の基準に基づき行っております。

・大:新規の、もしくは更なるビジネス展開の早期・具体的な可能性が想定される

・中:新規の、もしくは更なるビジネス展開の可能性が想定される

・小:ビジネス展開の可能性はあるものの、さほどの影響はないと想定される

 

シナリオ分析の結果、いずれのシナリオにおいても、気候変動の影響による財務リスクはあるものの、大きな影響を及ぼすと考えられるリスクについては、対応策を講じることで事業が継続できることが確認できております。また、当社グループの目指す社会は、気候変動の緩和と事業成長の両立が実現可能な「+2℃」のシナリオであることも確認できました。

また、当該分析を踏まえ、「気候変動への対応」、「サステナブルな資源利用」、「環境汚染の抑制」、「生物多様性の保全」の4つを環境重要課題として環境方針を策定するとともに、以下の通り活動方針を策定しております。

<活動方針>

・二酸化炭素(CO2)排出削減とエネルギーの効率的な利用を推進し、気候変動の緩和に貢献する

・省資源、及びリサイクルの推進に努め、資源循環社会の実現に貢献する

・製品及び製造過程で使用する化学物質を的確に管理し、環境負荷の少ない社会づくりに貢献する

・事業活動を通じ、生物多様性及び生態系の保護に貢献する

・環境保護を推進する社内体制の整備を図り、社員の意識と行動の徹底に努める

 

③指標及び目標

当社グループは、上記のシナリオ分析を踏まえて、気候変動を緩和するための目標を定めております。

<気候変動を緩和するための目標>

 

2030年

2050年

CO2排出量

50%削減

100%削減

エネルギーの効率的な利用(エネルギー使用量)

15%削減

35%削減

再生可能エネルギー

50%導入

100%導入

 

(5)人的資本への考え方及び取組み

当社グループは、外部環境が大きく変化するなかで、当社の持続的な成長を実現するためには、「違いが、美しい。」というコーポレートブランドコンセプトのもと、新たな技術に向き合い、性別、文化、障がい等の様々な違いを可能性に変えることで、従業員一人ひとりが自分の創造性を解き放ち、自律して仕事に取組み、企業とともに成長できる環境づくりを推進することが必要と考えております。

 

①戦略

当社グループは、持続的な成長のための6つのキーコンセプト(多様性、長期視点、自律、創新(挑戦)、スピード、共創・利他)を設定し、ありたい姿2036の実現に向け、人材像(期待役割)を定義し、階層別に求められる行動、スキル等を明確化しております。

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②人材の育成に関する方針及びその取り組み

当社グループでは、「違いが、美しい。」というコーポレートブランドコンセプトに基づき、従業員一人ひとりの能力、スキル、専門性を最大限発揮した上で、期待役割に応じた“自律的な成長”を実現することを人材の育成方針としており、これらを通じて企業価値を向上することを目指しています。従業員が自律的に学び、また前向きにチャレンジする姿勢を持つことに加えて、従業員の多様な個性を活かしながら相互に支援し合い、また適切に権限委譲することを通じて、お客様への提供価値を高め、ひいては企業価値の向上に繋げていくこととしています。

総合的なキャリア形成を支援するために、知性・社会性・人間性に関する教育を開発するとともに、環境を提供することで、自己決定感のある人事制度・労働環境を整備し、自律型人材の育成に努めています。また、従業員をはじめとするステークホルダーの多種多様な考えを共有することを通じて、大きな成果を生み出す仕組みづくりを行っております。また、人材育成方針をさらに推し進める目的で、新人社員研修や階層別の研修などに加え、自己啓発の手段としてビジネススクール(通信教育)を実施しています。さらに、今後は6つのキーコンセプトに沿った対象レベル別の選択式研修を整備し展開予定です。

 

③社内環境整備に関する方針及びその取組み

当社グループは、「ありたい姿2036」の実現にあたっては、多様な人材が活躍することが不可欠と考えており、年齢、性別、国籍にとらわれることなく、従業員一人ひとりの能力を最大限に活かすことができる職場環境の整備に努めています。具体的な取組みは、以下の通りです。

・ 人権方針の策定

当社グループは、人権尊重の考え方や責任を明確化する目的で人権方針を策定しております。

当社グループは、「違いが、美しい。」というコーポレートブランドコンセプトとともに、すべての人々の尊厳が守られる社会における企業としての責任を自覚し、すべてのステークホルダーの方々の人権を尊重するとともに、負の影響が生じた場合は適切に対応することで企業としての責任を果たすことに努め、「安心して使える、安全な道具をすべての人々にお届けする」ことを目指しております。また、安全で健康な職場環境の維持・促進に取り組むとともに、強制労働や児童労働の禁止及び雇用慣行におけるあらゆる差別の禁止、並びに非人道的な扱いの抑止に努め、サプライヤーを含む当社グループのお取引先の皆様にもこれらの考え方の遵守を求めております。また、事業活動が地域社会に影響を与える可能性があることを認識し、地域社会に対して調和を図るよう努めております。

・ 女性活躍推進

女性が活躍できる環境づくりとして、女性が出産や子育てのためキャリアの中断や退社をすることはなく、育児支援ハンドブック、育休前面談、育休復帰セミナーによる育児支援に取り組んでおります。また、複数企業が合同で開催した「異業種ビジネスリーダーシップ塾2024~しなやかに一歩前に~」に女性中堅社員が参加し、キャリアの考え方及びリーダーシップなどをテーマとして、他社の参加者とディスカッションを行う機会を設定しております。

・ 障がいのある社員の活躍推進

当社グループで勤務する障がいのある社員が長く安心して勤務を可能にするため、ステップアップの仕組みの整備、障がい者の所属する部門のみならず、会社全体で障がい者及び周辺の社員を支える仕組みの2つを整備しております。具体的には、障がいのある社員においても期待役割を明確化し、本人の意向と会社の判断を踏まえて正社員へ転換できる制度を整備しております。また、期待役割に応じた評価に基づき、自立した生活環境を確保できる賃金制度を設計しております。

・ エンゲージメント

経営戦略に基づき、事業の成長と当社グループの従業員の成長のベクトルを合わせることを目的として、職務に対する納得感や達成感を意識し、共に働く従業員としてエンゲージメントを重要視しています。さらに、会社と社員が対等につながりあうことで、社員一人ひとりが自発的に考えて行動し、それが組織としての成長と成果につながる状態を実現するための様々な施策を検討しております。具体的な取組みとして、当社では2024年度よりエンゲージメント調査を実施いたしました。その結果を踏まえて、今後の各種人事に関する取組みの策定や見直しを図ってまいります。

 

④多様性の確保に向けた指標及び目標

当社は、「ありたい姿2036」の実現に向け、多様な人材が活躍することが重要と考え、多様性の確保に向けた指標及び目標として、以下の通り設定しております。

・管理職における女性の割合は、2024年12月31日時点で5.6%であり、2030年までに管理職に期待される役割を担うことができる女性の割合を15%程度に引き上げていくことを目指しております。

・管理職における外国人の割合は、2024年12月31日時点で0.9%であり、この割合を維持しつつ、今後の事業展開を踏まえながら、必要に応じて外国人の登用を進めてまいります。なお、海外の子会社においては、役員及び管理職等の中核的な立場に外国人を登用しており、今後も積極的に登用してまいります。

・管理職における中途採用者の割合は、2024年12月31日時点で13.0%であり、この割合を維持しつつ、今後の事業展開を踏まえながら、必要に応じて中途採用者の登用を進めてまいります。

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績、財政状態に大きな影響を及ぼす可能性のあるリスクには次のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

(1)為替等のリスク

当社グループの当連結会計年度の売上高に占める米国、アジア、欧州、中近東、オセアニアなど海外市場に対する売上高は59.7%であります。これらの国々との取引におきましては大部分が外貨建ての決済を行っており、外貨建て取引は為替の変動リスクを負っております。これらの取引では先物為替予約などによるヘッジ策を講じておりますが、それにより完全に為替リスクが回避される保証はありません。同様に、樹脂材や板材といった当社製品に使用する輸入部材は日本円以外の通貨で決済しております。そのため、今後当社の予測を超える範囲で為替が変動した場合などは、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(2)カントリーリスク

当社グループは、米国、アジア、欧州、中近東、オセアニアなど世界各国において販売事業を、アジア、欧州において製造事業を展開しております。当社グループでは、これらの国のカントリーリスクを事前に調査、察知して対処するよう努力しておりますが、予測できない急激な政治的・経済的変動、あるいは租税制度などの大幅な改定、テロ・戦争の勃発、感染症などによる社会混乱は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(3)新製品開発

当社グループの主たる事業である筆記具の市場におきましては、付加価値の高い魅力的な商品・サービスを継続的に提供することが将来の成長を支える大きな要因であると考えております。しかしながら、今後ますます消費者のニーズが多様化し、商品サイクルが短縮化することが予想されます。さらに、急激なデジタルシフトにより筆記具に対する需要構造が大きく変化する可能性もあります。これらの市場環境の変化が、今後加速度的に進み、市場ニーズに合った魅力的な商品・サービスをタイムリーに提供できない、あるいは需要を十分にとらえることができない場合、当社グループにおける将来の事業の成長性と収益性に影響を与える可能性があります。

 

(4)資産の減損

 当社グループでは筆記具等の生産のための設備やのれん等を含む固定資産を保有しておりますが、急激な売上げの減少などにより収益性が悪化し、減損損失の認識が必要と判定された場合には、回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として認識いたします。また、当社グループでは市場価格のない株式等以外の有価証券を保有しておりますが、株式相場が大幅に下落した場合には、明らかに回復見込みがある場合を除いて減損処理を行います。これら資産の減損処理は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(5)情報システム

当社グループは、重要な情報の紛失、誤用改ざん等を防止するため、情報システムに対して適切なセキュリティを実施しております。しかしながら、停電、災害、ソフトウェアや情報機器の欠陥、停止、一時的な混乱、内部情報の紛失、改ざん、サイバー攻撃による情報漏洩やシステムの障害などのリスクがあります。このような事象が事業活動に支障をきたした場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(6)棚卸資産

 当社グループでは、「棚卸資産の評価に関する会計基準」を適用しており、販売目的の棚卸資産の収益性を期末において評価し、収益性が低下していると判断される場合には評価損を計上することになります。このため、当社グループの棚卸資産について、市場環境の急激な変化や消費者ニーズの変化により収益性が低下していると判断し評価損を計上する場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(7)原材料等の調達や費用の高騰

 当社グループは、主な原材料として原油価格の影響を強く受ける樹脂材、需給バランスに加えて原産地国の資源政策、環境政策の影響を受ける金属材や板材を使用しております。これらの原材料が予期せぬ経済的あるいは政治的な事情により、安定的に調達できなくなった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。現在の原油価格や物流費の高騰が更に長期化する場合は当社グループの総利益や営業利益に影響を与える可能性があります。

 

(8)法規制

当社グループが行っている事業は、国内外の関連法規制を受け、その規制内容には保安安全に係るもの、環境や化学物質に係るもの、その他事業活動に関するものなど様々なものがあります。当社グループは、これらの法規制を遵守し、種々の事業活動を行っておりますが、将来的に法規制の大幅な変更や規制強化が行われた場合は、当社グループの活動の制限やコストの増加につながり、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(9)自然災害

当社グループは、東京に本社機能を持ち、神奈川県、群馬県、山形県及び栃木県に生産及び研究拠点があります。また、中国やベトナム、ドイツにも生産拠点を有しております。当該地域において地震、洪水、台風、津波を始めとする大規模自然災害や感染症などによるパンデミック等が発生した場合、本社機能の麻痺や生産及び研究活動が停止する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(10)サステナビリティに向けた対応

当社グループは、環境・社会に関するリスク評価等、リスク管理に積極的に取り組んでおります。具体的には、サプライチェーン全体での環境負荷低減に取り組むとともに、お客様や社員を始めとする当社を取り巻くステークホルダーとの関係性を通じて中長期的な企業価値向上と持続的な社会の実現に向けた取り組みなどを推進しております。しかしながら、環境・社会に関する法規制や社会要請に十分に対応できていない、またはこれらに違反する事態が発生した場合には、事業活動の大幅な停滞や停止、重大な対策費用の発生、さらには社会的評価の低下等につながり、当社グループの経営成績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)人的資本

当社グループの持続的な成長のためには、多様な人材の活躍が不可欠と考えており、従業員一人ひとりの能力を最大限に活かすことができる職場環境の整備に努めております。しかしながら、労働市場を巡る環境が大きく変化するなかで、適切な人材の採用・育成・定着が困難な状況に陥った場合には、当社グループの事業運営および成長に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。

 また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度(2024年1月1日から2024年12月31日まで)におけるわが国経済は、企業収益の改善や雇用環境の安定を背景に所得の増加から個人消費の堅調さが見られ、緩やかな回復基調にあります。一方で、海外に目を向けると、地政学的要因をはじめとする不安定な国際情勢から原材料やエネルギー価格が高止まりの様相を呈していることに加え、主要国の金融政策の動向や中国経済の先行き懸念が世界経済に与える影響の不確実性から、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

 当社グループを取り巻く外部環境といたしましては、国内市場に限定されず多くの先進諸国で少子高齢化や人口減少といった構造的な問題を抱えていることに加え、デジタル化の進展によって事務用品としての筆記具の需要は縮小傾向にあります。他方、ライフスタイルや価値観の多様化により、お客様が商品に求める役割や体験価値は変化しております。また、インターネットを介した流通の普及により一層ボーダーレス化が進んだことや新興企業の参入といった背景から、品質・コスト面を中心として業界全体の競争環境は激化しつつあります。さらに、環境問題をはじめとするサステナビリティという共通課題は、今や企業活動の中心的な価値観となり、商品やサービスの提供において不可欠なものとなりました。こうした市場環境の変化に迅速に対応し、お客様の求める価値を具現化し続けていくことがより重要となっております。

 このような経営環境のなか、当社グループは、「書く、描く」を通じた“表現体験そのもの”を創造することで、すべての人が生まれながらにして持つ個性や才能といった「ユニーク」を表現する機会を創り出すことが、お客様への提供価値ととらえ、「違いが、美しい。」というコーポレートブランドコンセプト(企業理念)に基づき、活動してまいりました。

 

 具体的な活動として、世界販売本数が年間1億本以上の「ジェットストリーム」シリーズから、従来の高級感を維持しつつ、ビジネスシーンだけでなく日常のあらゆる場面に調和するデザインへとリニューアルした「JETSTREAM PRIME(ジェットストリーム プライム)」を発売しました。また、同シリーズの新たな選択肢として、よりかろやかな書き心地を特長とする「JETSTREAM Lite touch ink(ジェットストリーム ライトタッチインク)」を搭載した商品の展開を拡充しました。さらに、十人十色、多様な表現に寄り添える存在になりたい、暮らしやコミュニケーションが豊かになる色の楽しさを伝えていきたいという想いから企画した色鉛筆「toirono(トイロノ)」を発売しました。加えて、長期的な成長戦略の一環として、「書く、描く」という体験そのものの価値を広げ、誰もが自分らしく表現できる場を創造するための取り組みとして、本格的に一般財団法人表現革新振興財団の活動を開始するとともに、グローバル市場での事業基盤強化に向け、2024年3月に当社グループに加わったC.Josef Lamy GmbH(Lamy社)との連携を強めることでシナジーを最大化するための体制構築を進め、またインド・東南アジア市場への展開を見据えたインドでの合弁会社設立に着手いたしました。

 これらの活動の結果、当連結会計年度における売上高は88,820百万円(対前年同期比18.7%増)、営業利益は12,189百万円(対前年同期比2.9%増)、経常利益は12,952百万円(対前年同期比0.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は11,272百万円(対前年同期比10.9%増)となりました。また、「中期経営計画2022-2024」の最終年にあたる当期は、海外売上高の構成比が約60%に到達するなど、筆記具事業のグローバル化が着実に進展いたしました。新規事業分野においては主に化粧品が好調に推移しております。

 

 セグメント別の業績を概観いたしますと、筆記具及び筆記具周辺商品事業におきましては、欧米市場における売上が堅調に推移したことや、為替による押し上げ影響により、外部顧客への売上高は86,490百万円(対前年同期比19.3%増)となりました。粘着テープ事業、手工芸品事業といったその他の事業におきましては、事業を取り巻く市場環境は依然として厳しいものの、外部顧客への売上高は2,329百万円(対前年同期比1.9%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べて16,268百万円減少し、39,587百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、主に税金等調整前当期純利益16,642百万円、減価償却費4,069百万円に対し、法人税等の支払額4,524百万円、固定資産売却損益3,543百万円により、合計で6,467百万円(前年同期比5,296百万円の収入の減少)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果支出した資金は、主に連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出21,122百万円、投資不動産の取得による支出5,993百万円に対し、固定資産の売却による収入3,746百万円により、合計で27,910百万円(前年同期比27,838百万円の支出の増加)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果得られた資金は、主に配当金の支払額2,360百万円、自己株式の取得による支出1,540百万円に対し、長期借入れによる収入10,000百万円により、合計で4,108百万円(前年同期比7,830百万円の収入の増加)となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年1月1日

  至 2024年12月31日)

 前年同期比(%)

筆記具及び筆記具周辺商品事業

(百万円)

64,219

134.8

その他の事業

(百万円)

937

114.1

合計

(百万円)

65,157

134.4

 (注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.上記の金額は、販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当社グループ(当社及び連結子会社。以下同じ)は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年1月1日

  至 2024年12月31日)

 前年同期比(%)

筆記具及び筆記具周辺商品事業

(百万円)

86,490

119.3

その他の事業

(百万円)

2,329

101.9

合計

(百万円)

88,820

118.7

 (注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①重要な会計方針及び見積り

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

・ 売上高

 国内市場ではジェットストリーム、KURUTOGAの販売が堅調に推移したことに加え、ノベルティ需要も堅調に推移いたしました。海外市場では欧米における販売が堅調に推移したことや為替の押し上げ影響もあり、売上高は大きく伸長しました。その結果、売上高は前連結会計年度に比べて14,018百万円増加し88,820百万円(前年同期比18.7%増)となりました。

・ 営業利益

 資源価格、原材料価格、物流費の高騰など利益を押し下げる要因はありましたが、売上高の増加に伴い販売差益額が増加したことにより、営業利益は前連結会計年度に比べて337百万円増加し12,189百万円(前年同期比2.9%増)となりました。

・ 経常利益

 営業利益の増加に加え、主に受取利息や受取配当金、受取地代家賃の増加により、経常利益は前連結会計年度に比べて62百万円増加し12,952百万円(前年同期比0.5%増)となりました。

・ 税金等調整前当期純利益

 経常利益の増加に加え、固定資産売却益の増加により、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べて2,345百万円増加し16,642百万円(前年同期比16.4%増)となりました。

・ 親会社株主に帰属する当期純利益

 税金等調整前当期純利益が前連結会計年度に比べて2,345百万円増加し、非支配株主に帰属する当期純利益が11百万円増加したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度から1,105百万円増加し11,272百万円(前年同期比10.9%増)となりました。

・ 資産、負債及び純資産の状況

 当連結会計年度末の資産、負債、純資産の状況は次のとおりであります。

 資産は、主に投資不動産やのれん、商標権が増加したことにより、前連結会計年度末に比べて30,874百万円増加し176,881百万円となりました。

 負債は、主に繰延税金負債や長期借入金が増加したことにより、前連結会計年度末に比べて17,026百万円増加し46,173百万円となりました。

 純資産は、主に利益剰余金やその他有価証券評価差額金、為替換算調整勘定が増加したことにより、前連結会計年度末に比べて13,848百万円増加し130,708百万円となりました。

・ キャッシュ・フロー

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]②キャッシュ・フローの状況に記載のとおりであります。

 

③資本の財源及び資金の流動性に係る分析

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料の購入費用、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に筆記具及び筆記具周辺商品事業に係る設備投資、M&A等によるものであります。

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関等からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関等からの長期借入を基本としております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は12,162百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は39,587百万円となっております。

 

5【経営上の重要な契約等】

(持分取得の連結子会社化)

当社は、2024年2月28日開催の取締役会において、C. Josef Lamy GmbH及びLamy Vermietungs GmbHの全持分を取得し子会社化することを決議し、2024年3月15日付で同社を連結子会社化いたしました。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、「最高の品質こそ 最大のサービス」の社是のもと、筆記具及びその周辺商品等における新製品の開発と品質向上、安全性の確保、環境問題への対応を目的としております。また筆記具以外の分野にもこれらの成果を広く応用展開することも積極的に進めております。

 なお、当連結会計年度における研究開発費は4,392百万円でした。このうち4,326百万円は筆記具及び筆記具周辺商品事業に係るものであります。以下は筆記具及び筆記具周辺商品の主な研究開発活動及び成果であります。

 

(1)筆記具事業

①世界販売本数が年間1億本以上の「ジェットストリーム」シリーズから、新開発の”かろやか”なインク『JETSTREAM Lite touch ink(ジェットストリーム ライトタッチインク)』を搭載した単色タイプおよび多機能タイプを発売いたしました。

『JETSTREAM Lite touch ink』は、従来のジェットストリームのインクよりさらに粘度を下げたことで筆記抵抗を減らし、より“かろやか”な書き心地を実現した新インクです。またインクのボテ(ペン先に溜まったインクが紙に付くこと)や紙すべり(紙質などの条件により、ボールがすべり筆記しにくい現象)を改良したことで、よりストレスの無い安定した筆記を提供いたします。時代や環境により「書く・描く」シーンが多様化する中で生まれた、どんな人にも「ちょうどいい」ジェットストリームの新しい選択肢となっております。

単色タイプ「JETSTREAM シングル」では新インクの性能を最大化し「誰にとっても、普通に使いやすい」設計を突き詰めました。ノック棒には、筆記時の微細な振動や異音を抑える機構を搭載し、より心地よくお使いいただけます。クリップは折れにくく、手帳やポケットに収まりのよい形状を追求しております。先端までラバーで覆われたグリップは、人それぞれで異なる持ち方に対応する機能性とシームレスなデザインを両立しております。プレーンでシンプルながら、細部には「JETSTREAM スタンダード」のDNAをさりげなく引き継いでおります。

1本でマルチに使える「JETSTREAM 多機能ペン 4&1」は、いつでもそばに置いておきたくなる親しみやすいデザインにいたしました。従来品より軸の全長を短くし、その全長に適したバランスとなるように軽量化したことで、持ち運びやすさと操作性を向上させました。またペン後端をノックしてシャープペンシルを繰り出せる機構を採用しており、実用性も兼ね備えております。かろやかな書き心地とリンクする角の取れた優しい形状と、ペールトーンでマットな優しいカラーリングはプライベート空間にもしっくりとなじみます。ノック部分のインク色表示はノック部分全体ではなく、ユーザーから見える位置のみに絞ることで、デザイン性と利便性の双方を損なわず快適にお使いいただけるものに仕上げました。

 

②芯が回ってトガりつづけるシャープ「クルトガ」シリーズから、永く使うほどに愛着のわくメタルボディ『KURUTOGA Metal』を発売いたしました。

今回新発売する『KURUTOGA Metal』は、メタル製の軸による上質さと、より安定した筆記感を実現したモデルです。

表層はカメラやオーディオ機器をほうふつとさせるような上質感のあるメタル製で、グリップ部分は手になじむよう表面加工を施した「マイルドエッジグリップ」を採用し、握りやすさにこだわったアイテムに仕上げました。クリップ形状などの細部にもこだわっており質感のある仕上がりとなっております。

また『KURUTOGA Metal』では、筆記中のペン先のブレを最小限に軽減した「クルトガエンジン」を搭載しており、さらにペン先に樹脂製パーツ「ニブダンパー」を新たに搭載することで、筆記時の衝撃を和らげ安定した筆記感を実現しております。

 

③十人十色、多彩な表現を楽しめる新しい色鉛筆が登場

“軽い力で発色よく描ける色鉛筆”として『toirono(トイロノ)』を発売いたしました。

『toirono(トイロノ)』は、「十人十色、多様な表現に寄り添える存在になりたい、暮らしやコミュニケーションが豊かになる色の楽しさを伝えていきたい」という想いを込めた商品です。

色鉛筆は多彩な色展開を持ち、芯の削り方や持ち方、そして筆圧によって描線の太さや色の濃さなどを自由に調整できる特徴を持つアイテムです。『toirono(トイロノ)』は、太くやわらかい芯を採用することによって、従来の色鉛筆よりも濃淡やグラデーションをつけやすく、重ね塗りをしやすいように濃い色の上からでも発色よく描ける設計にしております。さらに、色相、明度、彩度についての説明書きを付属しており、日常的に描くことに親しみがない方でも、多彩な表現を楽しむことができます。表現の幅が広がることで、より豊かな発想やアイデアを引き出し、描く楽しさが一層増すことが期待されます。未就学のお子様から大人まで、色を使った表現を気軽に楽しめる、ワクワクするような新しい色鉛筆として、多くの方にご愛用いただける商品となっております。

 

(2)筆記具周辺商品事業

①化粧品事業

筆記具で培ったコア技術を応用展開したアイメイク商品、毛染め商品を国内・海外の化粧品ブランドにODM/OEM供給することで、美の多様性に貢献しております。注力領域であるアイメイク商品は、自在なメイク表現を実現させるアプリケーター開発と液流出機構の設計、顔料分散技術から多様なスキントーンにも映える処方設計(リキッド・固形)、ユーザーフレンドリーな容器&外装設計、各国のレギュレーションやガイドラインを遵守した処方設計を含む製造方法、これらを実現することで高い評価を得ております。

 

②産業資材事業

これまで筆記具の開発を通して培ってきた「分散」、「焼成(カーボン)」、「微細加工」、「容器設計」など当社独自のコア技術を活用し、将来成長領域での新規事業開発に取り組んでおります。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やカーボンナノチューブ(CNT)など機能性材料の分散液、音響整合層や電極材料などのカーボン製品及び定量吐出など精密機構を備えた特殊容器などを開発し様々な分野へ幅広く提案しております。特に最近では電池材料に注力しているほか医療分野への展開も図っており、当社技術を活用した非筆記具事業の新規開拓を積極的に進めております。