第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

①基本方針

当社グループは、社会と共に持続的に発展する企業を目指し、社員が自律的に判断し行動するための指針として、以下のとおり企業理念、パーパス(存在意義)、経営方針、行動指針の見直しを行うと同時に、2030年の目指す姿を設定し推進しております。

 

[企業理念]

企業は永遠に発展させるもの、従業員の生活はたゆまず向上するもの

 

[パーパス(存在意義)]

世界に挑戦する「偉大な中小企業」として社会の持続的発展に貢献する

 

[経営方針]

(1) いたずらに規模を追わず、資本効率と労働生産性を最重要評価指標とする。

(2) 環境の変化に合わせて新たな価値を継続的に生み出す機能を有する。

(3) 個々の事業においては常に世界市場を見据え、グローバルニッチを戦略の柱とする。

(4) 社員がその能力を最大限に発揮することができる環境構築のための投資、および独自技術を追求するための投資は、長期的視野に立ち、事業環境に関わらず継続する。

(5) 事業を通じて社会と共に永遠に発展する企業を目指す。

 

[行動指針]

(1) みずから行動する

自身の仕事に責任と誇りを持ち、主体的に考え、判断し、行動する。

(2) 学び続ける

志高く、自身と企業の価値向上のため、常に学び続け、成長し続ける。

(3) 技術にこだわる

社会に新しい価値を提供するため、技術を追求し、技術を磨き続ける。

(4) 集団としての価値を重視する

仲間を尊重し、力を合わせ、同志的集団として高い生産性を実現する。

 

[2030年の目指す姿]

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②対処すべき課題

2030年の目指す姿の実現に向けて、2022年12月期から2030年12月期の9年間を「変革の土台作り」、「変革の推進」、「目指す姿の実現」の3つに区分し、その第2次として2025年12月期から2027年12月期までの3年間を対象とする中期経営計画を策定しました。そのなかで取り組むべき課題は以下のとおりです。

主力の工作機械事業においては、市場成長期待が高い医療関連分野での販売を強化するため、複雑加工ニーズを満たす製品ラインナップの拡充を図ると同時に、医療関連分野向けを中心とした先端モデル製造を担う生産工場(国内工場リニューアル第2期 牧之原工場)の増強等を進め、ソリューションセンターを活用した技術サポートを拡充するなど医療関連分野向けの拡販を目指します。

特機事業においては、過剰な流通在庫などにかかる事業環境の課題が前期で解消するなか、製造のベトナム拠点集約等を含むサプライチェーンの最適化を図り、また、アジア地域における販売体制の再構築を進めると同時に、事業全般における固定費の大幅な低減を図ることで高収益性への早期回復を目指します。

新規事業への取り組みとしては、市場の成長性に加えて需要の安定性も期待できる医療機器市場を対象に、これまでに培ってきた精密加工や高度な位置決め制御などの技術力や海外展開ノウハウなど自社の強みを活用するだけでなく、M&Aを含むオープンイノベーションを駆使することでメディカル事業への段階的な参入を目指します。

グループ全体としては、コーポレート・ガバナンス体制をさらに強化し、第1次で構築した新人事制度に基づく企業風土改革を進めると同時に、サステナビリティ方針に基づくマテリアリティへの取り組みを積極的に進めてまいります。

 

③経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは2024年12月期を最終年度として策定した第1次中期経営計画を推進しており、2022年12月期から2024年12月期までの期間における累計値として営業キャッシュ・フロー200億円~250億円、2022年12月期から2024年12月期までの期間における平均値として1人あたり営業利益/年(連結)600万円、ROE10.0%以上、売上高研究開発費率5.0%、1人あたり教育研修費用/年(単体)100千円を目標としております。

最終年度である当連結会計年度は、2022年12月期から2024年12月期までの期間における累計値として営業キャッシュ・フロー208億円、2022年12月期から2024年12月期までの期間における平均値として1人あたり営業利益/年(連結)567万円、ROE9.5%、売上高研究開発費率2.5%、1人あたり教育研修費用/年(単体)86千円となりました。

なお、2025年12月期以降につきましては、2027年12月期を最終年度とした第2次中期経営計画を策定し2025年12月期から2027年12月期までの期間における累計値として営業キャッシュ・フロー240億円、2027年12月期のROE13.0%、1人あたり営業利益/年(連結)730万円を目標としております。

引き続き積極的に事業と経営の改革を続け、企業価値の向上に向けてグループ一丸となって努力してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

サステナビリティに関する考え方および取組

当社グループでは、2022年2月に『「企業と社員が共に成長し、社会に貢献する」という基本的な考えのもと、その実践を通じて持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します』をサステナビリティ基本方針と定め、事業活動においては経済的側面だけではなく、社会的、環境的側面の重要性を認識し経営に取り組んでおります。

また、当社グループは世界各国、地域で事業展開するグローバル企業として、気候変動などの社会課題への対応を重要な経営課題と認識しており、ステークホルダーの皆様からの期待や要請にグループ全体としてお応えしていくため、環境に関する重点課題(マテリアリティ)として、「CO2排出削減による気候変動への対応」「環境配慮型製品の創出」、社会に関するマテリアリティとして「多様な人材の育成と活用」、ガバナンスに関するマテリアリティとして「コーポレート・ガバナンスの深化」を特定し、取り組みを進めております。こうした中、当社グループは、2023年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明しています。気候変動が事業に与える影響とそれによるリスクと機会をシナリオに基づいて分析し、事業戦略へ反映していく取り組みを推進しています。

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みについては、当社ウェブサイトもご参照ください。

https://star-m.jp/company/sustainability/index.html

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)ガバナンス

当社グループでは、サステナビリティに関わる重要事項を決定する機関としてサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会は代表取締役 社長執行役員が委員長を務め、常勤取締役および執行役員を委員として構成されており、気候変動を含むサステナビリティに関するマテリアリティを特定するとともに、その課題解決に向けた達成目標を設定し、グループ全体での取り組みを推進しています。

サステナビリティ委員会における決定事項は、サステナビリティ委員会の下部組織の部会を通じて、その対応方針等が各事業部、グループ会社へ展開されます。また、各事業部・グループ会社における活動結果は、部会を通じてサステナビリティ委員会に定期的に報告されることで、その実行性を高めています。

これらの一連の活動実績および進捗状況については、定期的にサステナビリティ委員会から取締役会に報告し、取締役会の監督を受ける体制としています。

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(2)戦略

気候変動への対応は、マテリアリティの中の重要な取り組みと位置付けており、当社グループでは、気候変動がもたらすリスクと機会、その影響度を把握し、適切に戦略立案に反映させるために中長期的なリスクと機会を想定するためのシナリオ分析を行っています。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表するシナリオを参照し、パリ協定の目標である「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること」の実現に向けて、1.5℃シナリオ、および現在のペースで温室効果ガスが排出されることを想定した4℃シナリオの2つのシナリオを用いて分析し、事業への影響の重要性を評価しています。

気候変動のリスクおよび機会に関する戦略の詳細については、当社ウェブサイトをご参照ください。

https://star-m.jp/company/sustainability/esgissues/tcfd.html

 

また、当社の人材の多様性の確保を含む人材の育成および社内環境整備に関する方針は以下のとおりです。

①人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針

当社では、意欲ある同志的集団として、新しい価値を世の中に提供し、企業価値を高め続けるとともに、同じ志を持った社員がその能力を最大限に発揮できる場を提供することで社員の人生を豊かなものにし、同時に集団として大企業にも負けない高い生産性を実現することによって、日本の中小企業の先駆けのような存在でありたい、世界に挑戦する偉大な中小企業、グレートスモールカンパニーとして、社会の持続的発展に貢献していきたいと考えています。

そのためには従業員一人ひとりが「みずから行動する」「学び続ける」「技術にこだわる」「集団としての価値を重視する」という行動指針を実践し、会社はそのような人材を育成・評価していくための仕組みや環境整備を積極的に進めてまいります。

 

②社内環境整備に関する方針

当社では、「性別、年齢、人種を問わず、すべての社員が能力を最大限に発揮できる環境構築」を目指し、新たな人事制度の構築、積極的な教育投資を行うほか、柔軟で多様な働き方の実現を推進しています。また、定期的にエンゲージメントサーベイを実施することで、従業員のエンゲージメントや各職場の実態を可視化し、各組織では調査結果を踏まえた「対話」を行うことで、さまざまなテーマでの改善活動やマネジメントの強化などに役立て、より良い企業風土の醸成および働きがいのある環境づくりに取り組んでいます。

 

(3)リスク管理

サステナビリティに関するリスクは、サステナビリティ委員会が評価および管理を行っています。また、必要に応じてリスク管理委員会へ情報共有を行います。

各リスクは、サステナビリティ委員会において特定され、部会において当該リスクの影響評価と対応策の検討がなされて、各事業部・グループ会社に展開されます。

サステナビリティ委員会での検討結果は、取締役会に定期的に報告され、取締役会はサステナビリティ委員会の取り組みに対し諮問・監督を行います。

 

(4)指標及び目標

指標

当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、気候変動に関するリスクと機会を管理するために温室効果ガス排出量を指標としています。

 

目標

当社グループでは、Scope1,2について、「2030年度に2013年度比46%削減」「2050年度に実質ゼロ」の目標を設定し、1.5℃シナリオの実現に向けて温室効果ガス排出量の削減を推進しています。

その一環として、2013年度以降、生産性向上を目的としてグローバルで生産拠点の選択と集中を進め、温室効果ガス排出量の削減を実現しています。

今後は国内生産拠点のリニューアルを予定しており、省エネ設備導入やDX推進によりさらなる生産効率の向上を目指しつつ、再生可能エネルギーの導入も含め、削減目標の達成に向けた取り組みを強化していきます。

気候関連の指標および目標の詳細については、当社ウェブサイトをご参照ください。なお、当該サイトは2025

年6月に更新予定です。

https://star-m.jp/company/sustainability/esgissues/tcfd.html

 

また、当社では、上記「(2)戦略」において記載した人材の多様性の確保を含む人材の育成および社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標および実績は、次のとおりであります。なお、当該指標に関するデータ管理および具体的な取り組みは、当社では行われているものの、当社グループに属する全ての会社では行われておりません。このため、当該指標に関する目標および実績は、提出会社のものを記載しております。

指標

目標

実績(当期)

管理職層に占める女性労働者の割合(注)

2030年10以上

4.4

(注)係長相当職以上にある者に占める女性労働者の割合

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

①景気変動

当社グループは、各事業を世界各地で展開しておりますが、それらの需要は販売先の景気動向に左右されやすく、特に主力の工作機械事業は、企業の設備投資需要の影響を受けやすい業界であります。当社グループは、各事業ともに景気サイクルの影響を受けにくい体質にすべく、顧客の開拓や製品開発などに努めておりますが、景気動向が悪化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

②為替

当社グループは、各事業を世界各地で展開しており、生産および販売の海外比率が高いため、為替リスクを負っております。当社グループは、為替予約などにより為替リスクの低減に努めておりますが、為替相場が大きく変動した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

③価格競争

当社グループは、取り扱う多くの製品で競合との厳しい価格競争を迫られております。当社グループは、常に他社を上回る高付加価値の製品および技術開発、また市場開拓やコストダウン活動などを進めておりますが、価格競争が激化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

④生産拠点

当社グループは、海外生産比率が高く、生産委託先を含む海外の生産拠点は主に中国およびタイにあります。当社グループは、各事業ともに生産拠点を分散させておりますが、生産拠点における社会情勢の変化や災害等の不測の事象が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑤特定の仕入先への依存

当社グループは、一部の部品の調達について、特定の仕入先に依存しております。当社グループは、これらの仕入先と長年にわたり良好な関係を維持し、安定的に供給を受ける体制を構築しておりますが、供給量の減少や価格高騰、品質問題等が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑥地震等による自然災害

当社グループは、生産拠点の多くは海外にありますが、当社が本社および国内工場を構える静岡県は、南海トラフ地震の発生が予想されている地域であります。当社グループは、BCPを策定し、本社ビルでは免震構造を採用するなどの対策を講じておりますが、南海トラフ地震を含め大規模地震が発生した場合、本社機能および生産活動のみならず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、世界各地に展開する当社グループの販売拠点、生産拠点およびそれらの周辺地域において、大規模な自然災害が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑦人材の確保および育成

当社グループは、グローバルに事業活動を展開しており、多様な価値観や専門性等を持つ優秀な人材を確保・育成することが中長期的な成長に不可欠と考えております。そのために当社は、新たな人事制度の構築や積極的な教育投資を行うほか、柔軟で多様な働き方の実現を推進しておりますが、人材獲得競争の激化等により人材の確保および育成が十分にできない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑧情報セキュリティ

当社グループは、事業活動を通じて入手した顧客や取引先関係者、従業員の機密情報および個人情報などの情報資産について、外部への流失や目的外の利用等を防ぐため情報セキュリティポリシー等を定めております。また、継続的に海外拠点を含めたセキュリティ管理体制の強化を図り、すべての役員および従業員に向けて必要な教育および訓練を実施しておりますが、人的および技術的な過失や違法または不正なアクセス等により漏洩した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑨その他

当社グループは、その他のリスクとして、貿易摩擦や公的規制、特許紛争、環境問題、品質問題などを認識しております。当社グループは、それらのリスクに対し、適宜情報収集に努めておりますが、リスクが顕在化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、各国の金融の引き締め政策の長期化などによるインフレの鈍化傾向がみられるなか、全般に景気は緩やかな回復基調で推移しました。米国や欧州では利下げに転じるなど変化は見られたものの、金利の高止まりなどによる景気後退の懸念が続いたことに加え、中国における不動産市況の低迷などによる景気全般の停滞や、わが国においては為替相場の円安傾向などにより、依然として先行きが不透明な経済情勢が続きました。

当社グループの主要関連市場におきましては、小型プリンターの需要については全般的に低調ながらも米国では回復傾向に転じました。また、主力の工作機械の需要は米国、欧州および国内で低調に推移した一方、中国においては補助金政策等により一時的に需要の回復がみられました。

このような状況のなか、当連結会計年度の売上高は、全体に為替の円安による影響を受けたものの、主に工作機械の売上が大幅に減少したことから649億9千4百万円(前期比16.9%減)となりました。利益につきましては、営業利益は40億2千1百万円(同61.2%減)、経常利益は45億1千5百万円(同58.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は18億5千5百万円(同77.3%減)となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

 

(特機事業)

小型プリンターでは、全般に為替の円安の影響を受けたものの、主に米国市場の影響により売上は大幅に減少しました。地域別の売上につきましては、米国市場は期後半に入り、流通在庫が適正水準に戻り回復してきたものの、期前半の低迷が影響し売上は大幅に減少しました。また、欧州市場は市況が堅調に推移し、売上は前期並みとなりました。一方、国内市場は市況が堅調に推移するなか、主には2023年12月期第2四半期の株式会社スマート・ソリューション・テクノロジーの新規連結により、売上は増加しました。

以上の結果、当事業の売上高は135億7千4百万円(前期比15.7%減)と減少し、営業利益は8億8千5百万円(同54.7%減)と大幅な減益となりました。

 

(工作機械事業)

CNC自動旋盤では、為替の円安の影響を受けたものの、米国市場や欧州市場の低迷などにより売上は大幅に減少しました。地域別の売上につきましては、米国市場では大統領選挙の影響や金利の高止まりなどから設備投資への慎重な動きが継続し、また、欧州市場では依然として需要は全般に低迷したことから売上は大幅に減少しました。一方、アジア市場では主に中国において直近で販売代理店の在庫調整等の影響がみられるものの、売上は大幅に増加しました。また、国内市場では自動車関連を中心に全般に振るわず、売上は大幅に減少しました。

以上の結果、当事業の売上高は514億1千9百万円(前期比17.2%減)と減少し、営業利益は50億4千7百万円(同51.2%減)と大幅な減益となりました。

 

②財政状態の状況

当連結会計年度末の資産は、売上債権や有形固定資産が増加したものの、現金及び預金が減少したことなどにより、前期末に比べ6億1千3百万円減少の927億8千4百万円となりました。負債は、仕入債務や短期借入金が増加したことなどにより、前期末に比べ53億1百万円増加の183億5千3百万円となりました。純資産は、為替換算調整勘定が増加したものの、自己株式の取得などにより、前期末に比べ59億1千5百万円減少の744億3千1百万円となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、営業活動では61億5千3百万円の収入の一方、投資活動では54億5千6百万円の支出、財務活動では102億7千5百万円の支出となり、これらに現金及び現金同等物に係る換算差額を加え、前期末に比べ78億1千4百万円減少の236億1千9百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動では、法人税等の支払いなどがあったものの、税金等調整前当期純利益や減価償却費などにより、61億5千3百万円の収入(前期は71億2千6百万円の収入)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動では、有形固定資産の取得による支出などにより、54億5千6百万円の支出(前期は20億3千8百万円の支出)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動では、短期借入金の純増減額による収入などがあったものの、自己株式の取得による支出や配当金の支払いなどにより、102億7千5百万円の支出(前期は50億5千4百万円の支出)となりました。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(千円)

前期比(%)

特機事業

14,235,217

△8.2

工作機械事業

50,237,029

△20.2

合計

64,472,246

△17.8

(注)工作機械事業には、自社の固定資産となるものが153,461千円含まれております。
 

b.受注実績

当社グループは見込生産を主体としているため受注実績の記載を省略しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前期比(%)

特機事業

13,574,876

△15.7

工作機械事業

51,419,817

△17.2

合計

64,994,694

△16.9

(注)主要な販売先については、総販売実績の100分の10を占める販売先がないため記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、重要な会計方針に基づき見積りおよび判断を行っており、実際の結果は、見積りによる不確実性のために異なる可能性があります。重要な会計方針及び見積りにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等

当連結会計年度における売上高は、132億1百万円減少の649億9千4百万円(前期比16.9%減)となりました。これは主に工作機械事業の需要が中国においては一時的な回復が見られたものの、米国、欧州および国内で低調に推移し、売上が減少したことによるものであります。また、営業利益は63億2千9百万円減少の40億2千1百万円(同61.2%減)となり、売上高営業利益率は前期に比べ7.0ポイント低下し6.2%となりました。

セグメント別の売上高及び営業利益については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。

営業外損益は、1億1千5百万円減少の4億9千3百万円の利益となりました。これは主に雑収入が1億5千6百万円減少したことなどによるものであります。

特別損益は、2億7千4百万円減少の1億3千4百万円の損失となりました。これは主に前連結会計年度に退職給付制度改定益を2億3百万円計上したことなどによるものであります。

以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は、63億2千万円減少の18億5千5百万円(同77.3%減)となりました。

 

③資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための材料および部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資であります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

運転資金や設備投資資金につきましては、自己資金による充当を基本としておりますが、必要に応じて外部調達を実施し、十分な手元流動性を確保しております。

また、経営資源配分の考え方につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。

なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は30億9千万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は236億1千9百万円となっております。

 

5【経営上の重要な契約等】

  特記すべき事項はありません。

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、長年培ってきた精密加工、組立ての技術を基礎とし、さらなる付加価値創造のため、現行の事業品目に直結した製品開発・技術開発とともに新規事業立ち上げに向けた活動を行っております。

当連結会計年度の主な研究開発の成果は次のとおりであり、研究開発費の総額は1,962百万円であります。

(特機事業)

当期は、接続方法の選択肢を広げたプリンターとキャッシュドロワの一体型製品「POP10CBI」および従来モデルからの小型化を実現した新興国市場向けサーマルプリンター「BSC10II」を開発しました。

「POP10CBI」は、有線Type-C専用モデルである「POP10CI」にBluetooth接続機能と拡張用USB-Aポートを追加し、ホスト端末(タブレット、スマートフォン、PC等)との接続オプションを拡充したことにより、多様なニーズに1台で応えることを可能としております。また、PowerLEDは、接続状態を一目で確認できる2色表示に対応し、従来モデルからも容易に置き換え可能なアプリケーションの互換性も備えています。

「BSC10II」は、小型キューブデザインおよび内臓電源仕様で、従来モデルからの小型化を実現しました。新興国市場の中でも異なるニーズを持つお客様へ柔軟に対応するため、徹底したコスト削減と既存モデルとの互換性を重視した「BSC10II-U」、様々なアプリケーションとの接続を容易にするインターフェイスを備えた「BSC10II-UE」の2モデルを展開しています。また、環境配慮への取り組みの1つとして、製品梱包を従来のビニール個装を廃止し、クラフト紙を採用しました。

当事業部門に係わる研究開発費の金額は768百万円であります。

(工作機械事業)

当期は、ベストセラー機であるSBシリーズの最新モデル「SB-20RII」を開発しました。

SBシリーズは、伝統の「スラント型滑り案内構造」の刃物台を搭載し、高い剛性により累計27,000台以上の販売実績を誇っています。「SB-20RII」では、従来モデルの特徴を継承しながらも、背面加工能力を増強した他、オーバーサイズとして最大加工径φ1インチ(φ25.4mm)にも対応し、より多くの加工が対応可能となりました。また、奥行きを小さくすることにより機械の設置面積を約10%削減し、省スペース化を実現しています。従来モデルにおける様々なニーズを反映し、折れ戸式扉を採用する等の作業性にも配慮した設計となっています。

NC装置は、使い慣れた操作性を引き継ぐモデルのほかに、タッチパネルや無線LAN機能を標準搭載したモデルを選択することが可能であり、新規開発したAndroid端末用モバイルアプリにより、無線でのプログラム入出力、稼働監視、アラーム診断等の機能を工場内LAN環境を構築することなく実現できます。また、オプションの機内カメラを利用することで、モバイル端末で加工の様子を確認できます。

当事業部門に係わる研究開発費の金額は936百万円であります。

(開発本部)

当期は、既存事業領域に向けたDX支援システムの開発に加え、当社のコア技術である高精度加工・組立・位置決め制御技術を活用したメディカル事業への参入検討を開始しました。

製造DXでは「SB-20R」に対応した「加工時間見積もり支援システム」のプロトタイプを工作機械事業にて運用を開始しました。また、追加の対象機種として、当社の売れ筋製品である「SR-20JⅡ」および「SR-32JⅢ」についても開発を進めました。JIMTOF2024では、顧客のシステム維持や管理の負担を軽減できるようにSaaSでの提供を目指してWebブラウザーで動作する「加工時間見積もり支援システム」のサンプルソフトウェアを出展しました。

物流DXでは小売業および製造業向けに「在庫最適化分析システム」のプロトタイプを開発し、在庫に課題を抱えている協力企業とのPoCを実施しました。

メディカル事業では、オープンイノベーションを推進すべく、マイクロサージャリー手術支援ロボットやロボットに組み込まれる小型減速機を開発しているスタートアップ企業に出資し、当社の提供シナジーとして、工作機械事業での受託製造を検討しました。

当事業部門に係わる研究開発費の金額は138百万円であります。