文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「創造・奉仕・協力」の経営理念のもと、企業価値の最大化と持続可能な事業活動を行うことで、地球環境の保全と持続可能な社会の実現に貢献し、世界にそして未来に誇れる企業を目指します。
(「タダノグループサステナビリティ憲章」より)
(2) 経営環境
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善する中、各種政策効果もあり、緩やかに回復しました。海外においても、一部地域に足踏みがみられるものの、景気は緩やかに回復しました。
一方で、世界的な金融引き締めや米国の政策動向による影響、中国経済の先行き不透明感に加え、地政学的リスクの高まり、物価・人件費をはじめとしたコスト増加等もあり、世界経済の下振れが懸念されます。
私どもの業界は、日本では、大規模工事が実施・計画されているものの、慢性的なオペレーター不足や2024年4月1日から適用された労働時間上限規制の影響見極めの動きもあり、需要は減少しました。海外においては、需要は北米・アジアは横ばいで推移、オセアニア・アフリカは減少したものの、中東・中南米等が増加し、全体としては増加しました。
次期の見通しについては、米国の政策動向による世界の政治・経済への影響や中国・欧州経済の先行き不透明感に加え、地政学的リスクの高まり等もあり、より一層先行き不透明感が増しています。
当社グループを取り巻く市場環境につきましては、日本では、公共投資は堅調に推移し、需要を下支えするものの、住宅関連などの民間工事に弱さが見え始めております。海外では、資源関連やインフラ関連プロジェクトが堅調な中東や中南米が底堅く推移するとみられるものの、先行き不透明感が増す欧州や北米では需要減少が見込まれ、全体として弱含みで推移する見込みです。
原材料価格の上昇は落ち着きつつあるものの、人件費をはじめとしたコストは増加傾向にあり、製品価格の見直し等による利益確保を継続します。また、将来の持続的成長に向け、引き続き電動化などの環境対応をはじめとした新製品開発や、買収企業の統合・生産体制の再構築に向けた投資を計画しております。
なお、2024年(暦年)での建設用クレーンの地域別需要台数について、過去5年間の推移を示すと、以下のような状況になっております。
日本においては需要が減少しましたが、海外では地域差があるものの増加基調が継続しております。下記の表には示しておりませんが、引き続き中国国内の需要が減少傾向にあり、中国域外への輸出ドライブが続いている状況にあります。このため、中南米や中東を始めとする地域において、その影響が大きく出ているものと認識しております。
(建設用クレーン地域別需要台数推移)
※上の表に中国国産の中国市場向け、ロシア国産のクレーンは含んでおりません。
※その他は、アフリカ、CISを含んでおります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略、目標とする経営指標と対処すべき課題
当社グループは、2008年度以降、事業領域を「抗重力・空間作業機械=Lifting Equipment(LE)」と定めております。企業価値の最大化と持続可能な事業活動を行い、長期目標である「LE世界No.1」の実現に向けて、3年毎に中期経営計画を策定しております。
2024年初めに「中期経営計画(24-26)」を策定し、新たな3か年の中期経営計画をスタートしました。
「Reaching new heights ~新たなステージへ~」をスローガンに、業界のリーディングカンパニーとして、お客様の安全と地球環境に配慮した新たな価値を提供するための戦略を推進します。
成長戦略の骨子として、(1)脱炭素化を加速、(2)新たな領域への挑戦、(3)強みを活かしたものづくり改革、(4)変革を支える足場固め、を掲げると同時に、持続的な成長に向けた「資本コストや株価を意識した経営」と「サステナビリティ課題への対応」を重視し、「世界にそして未来に誇れる企業」を目指します。
中期経営計画(24-26) 基本方針:
(1)脱炭素化を加速
当社グループは2023年に世界初のフル電動ラフテレーンクレーン「EVOLT eGR-250N」の販売を日本市場で開始しました。これまで走行、クレーン作業で発生していたCO2排出をゼロにし、当社が掲げる製品における長期環境目標の実現へ近づけます。2024年11月には、フル電動ラフテレーンクレーンの第2弾として、北米向けの「EVOLT eGR-1000XLL」を発売、2025年4月にドイツにて開催される建機展(Bauma展)への出展を予定しております。
また、2024年12月には、有線式電動CC.88.1600-1(超大型クローラクレーン)の開発を発表いたしました。最大 1,600 トンの吊り上げ性能を誇る超大型製品を電気で動かすことで、クレーン作業中の CO2排出をゼロにすることができる世界最大級(当社調べ)の画期的な装置となります。
これら環境負荷の無い製品は「Tadano Green Solutions」として位置づけ、積極的に社会へ届けることで、環境対応をリードしてまいります。
(2)新たな領域への挑戦
これまで日本での販売が中心であった高所作業車の海外展開を加速させてまいります。2024年2月に長野工業株式会社(現:㈱タダノユーティリティ)が当社グループに加わりました。製品ラインナップの拡充と、開発・生産面でのシナジー発揮による新たな製品づくりを進め、当社グループが築いてきた世界中の販売網を活用して拡販に努めてまいります。
2024年9月には、米国Manitex International, Inc.の株式取得等に関する契約を締結いたしました。同社の買収は、当社グループの主要3品目である「建設用クレーン・車両搭載型クレーン・高所作業車」のうち、車両搭載型クレーン・高所作業車のグローバルビジネス拡大につながり、将来的には、よりバランスの取れたポートフォリオ構成となることを期待しております。2025年1月2日に買収が完了し、今後は当社グループが有していなかった新たな製品ラインナップの拡充を図るとともに、既存製品と類似のコンポーネントについては、最適調達によるコストダウンを、販売やカスタマーサポートにおいては効率的な事業運営を目指してまいります。
また、2024年11月には、株式会社IHI(以下、「IHI」)の連結子会社であるIHI運搬機械株式会社の運搬システム事業を当社グループ会社化することを決定いたしました。今後IHIが、新たに設立する会社(以下、「新設会社」)に対して、対象事業を継承させた上で、当社が新設会社の全株式を取得する契約を締結しております。当社グループは「移動式クレーン」の分野では長い歴史とグローバルでの販売実績を有していますが、同事業が有する「固定式クレーン(港湾クレーン・タワークレーン)」は新たな製品群となります。また、当社グループがドイツで生産する「ラチスブーム式クローラクレーン」とも親和性があり、世界中でニーズが高まっている洋上風力分野においても今後の活躍が期待される「リングリフトクレーン」も有しております。当社グループの事業領域(LE:Lifting Equipment)における新事業分野への挑戦として本事業の買収を決定いたしました。なお、買収完了は、2025年7月を予定しております
新たな事業展開を進める一方で、安全で効率的な建設現場の実現に向け、自動操縦や遠隔操作など新技術への取り組みも進めております。
(3)強みを活かしたものづくり改革
当社グループ事業は多品種少量生産であり、ボリュームに頼らない生産効率の改善やコスト低減は、当社だけでなくサプライヤーにおいても大きな課題です。開発生産拠点がある日・独・米それぞれの強みを活かした最適なものづくり体制を構築し、収益力の最大化と安定供給に努めます。
当社の設計思想である「TKN: T=作りやすい K=壊れにくい N=直しやすい」をグローバルに展開し、設計段階から当社だけでなくサプライヤーの作りやすさ・コスト低減を意識したものづくりを推し進めます。
欧州で生産しているオールテレーンクレーンについては、ドイツの工場集約を進め生産効率を改善してまいります。2024年2月に公表した工場再編計画については、関係者との協議を終了し、2025年6月末をもってバラシャイド工場の閉鎖ならびに譲渡を決定しております。ドイツでは中型から大型に至るモデルの生産に特化し、小型モデルについては、日本への生産移管を進めております。日本及びドイツ双方の強みを活かすことで、コスト競争力と品質・納期の安定性を改善してまいります。
(4)変革を支える足場固め
各種戦略を強く推し進めるための足場固めも重要な取り組みとなります。
サービス力の強化では、資源循環型ビジネスの実現に向けて再生事業の拡充に取り組みます。また、既納製品の価値を維持・向上させるレトロフィット(後付け改造・強化部品)についても強化してまいります。加えて、部品供給体制の見直しも進めております。アジアでの部品供給体制の再構築、欧州における部品倉庫の新設など、引き続き顧客満足度向上を図ってまいります。
また、当社グループにとって人財は競争力の源泉であり、「持続可能な経営」を実現する重要な要素のひとつと捉えております。2024年には、当社の「ジョブチャレンジ制度」を通じ、性別を問わず活躍できる環境があることについて、高い評価をいただき、WOMAN's VALUE AWARD~リケジョ応援~2024「優秀賞」を受賞いたしました。採用面においては、新たに海外大学在籍の外国籍学生の採用も開始しております。今後も、中期経営計画に連動した人財基盤の強化を進めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「創造・奉仕・協力」の経営理念のもと、企業価値の最大化と持続可能な事業活動を行うことで、地球環境の保全と持続可能な社会の実現に貢献し、世界にそして未来に誇れる企業を目指します。
当社グループではサステナビリティ課題全般及びテーマごとに「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の観点から考え方を整理し、取り組みを強化しております。
経営におけるサステナビリティの重要課題を定め、方針と目標、進捗を管理するため、社長を委員長とし、全本部長を委員とする「サステナビリティ委員会」を設置しております。同委員会のメンバーは、定例の経営報告会、経営会議・取締役会等の各会議において、各部署のサステナビリティ課題や重要事項について逐次報告・議論をしております。
また各部署における取り組み支援等の専任部署として「サステナビリティ推進グループ」を総務部に設置しております。さらに「サステナビリティ委員会」の下部組織として「リスク委員会」「コンプライアンス委員会」「環境委員会」「人財委員会」の専門委員会があり、全社的なテーマについて取り組んでおります。
なお、人的資本については人財委員会、気候変動については環境委員会にてそれぞれ対応しております。また2021年には、環境委員会の下部組織として「CO2・エネルギー削減部会」「廃棄物・化学物質削減部会」を設置し、具体的な施策検討や各部署の情報共有、長期目標達成に向けた改善継続に取り組んでおります。
当社グループは、「中期経営計画(24-26)」のもと、お客様の安全と地球環境に配慮した新たな価値を提供するための戦略を推進してまいります。「中期経営計画(24-26)」の内容については、
サステナビリティ推進の基本方針として、「人権の尊重」「公正・誠実な事業活動」「社員の尊重と働きがいの確保」「取引先(サプライヤー)と共に成長」「社会貢献」「地球環境の保全」「適切なコミュニケーション活動」の7項目から成る「タダノグループサステナビリティ憲章」を制定しております。上図のとおり関連方針・規程・ガイドライン類を整備し、各部署・グループ会社の年度方針・事業計画から具体的施策へとつなげております。サプライヤー(取引先)におけるサステナビリティ推進については「タダノグループサステナブル調達ガイドライン」を2024年1月に新規制定しております。
また、人的資本活用については、「タダノの人財に対する考え方」を次に定め、変革を支える足場固めとして「タダノグループ人財育成基本方針」「タダノグループ社内環境整備方針」を2024年3月に新規制定しております。
(タダノの人財に対する考え方)
・当社グループは、環境変化に柔軟且つスピーディーに対応し、社会に新しい価値を提供することで世界にそして未来に誇れる企業を目指します。
・人財は競争力の源泉であり、「持続可能な経営」を実現する重要な要素のひとつと捉えています。人種、宗教、性別、性的指向・性自認、年齢、障がい、国籍、出身地、社会的出身、経歴等のあらゆる違いを尊重し、多様な人財の雇用と育成を強化・継続します。
・多様な人財一人ひとりが、自らの能力や個性を活かした組織パフォーマンスの最大化を実現するため、公平な成長機会の提供と組織文化を醸成します。
①人財育成基本方針
当社グループは、社員一人ひとりのパフォーマンスの最大化と更なる価値創造に向けた「組織マネジメント力」と「ソリューション力」に資する人財育成を推進しています。多様な人財が集まり、個の潜在能力を発掘/開発し、高い専門的な発揮能力に変える機会を通じて、変化を捉え、チームでイノベーションを起こし続ける社風「学習し、成長し続ける組織文化」を醸成します。
②社内環境整備方針
当社グループは、タダノで働くことが、生活全般の満足度(Well-being)につながるという考え方の下、安全を第一に、心身ともに健康で活力に満ちた職場環境を築き、仕事と生活のバランスのとれた働き方を推進します。
③「中期経営計画(24-26)」人事戦略
主な取り組み
a. 人財ポートフォリオの再構築
経営戦略、中期経営計画の実現に必要な人財ポートフォリオを明確化し、今後の持続的な売上高・利益の成長を実現していくために、人事戦略と施策を具体化し、現行制度のレビューを行い、組織として必要な人財を育成・確保しながら、適切に処遇できる人事制度の見直しを進めております。また、経営陣と各本部の人員構成・必要人財像について協議した結果、経営視点を持ちグローバルで事業を牽引する人財候補者の分布が本部によって偏っていることや、育成機会を与えられている社員が固定化している現状等が明らかになりました。今後は計画的なグローバル経営人財の輩出に向け、人財要件の定義策定や、継続的な可視化を行い、最適な人員・人件費構造を構築してまいります。そのうえで、これから必要となる能力を持つ人財の獲得と既存人財に対する能力開発の強化を進めてまいります。
b. 女性活躍に関する取り組み
人事戦略の重要施策として全従業員に占める女性従業員比率の向上を目指し、女性活躍推進に取り組んでおります。多くの女性が活躍していくために柔軟な働き方ができるよう、仕事と育児・介護の両立支援制度の改定や、育児休暇取得者が昇進の遅れをとることがないよう制度の改定を行いました。また、業種的にも女性の応募数が少ない理系女性にフォーカスしたインターンシップの開催や職場紹介動画の作成等、技術系職種と技能系職種の女性採用を強化しております。
今後も女性従業員比率を上げていくための環境整備や、管理職登用を見据えた女性リーダー研修の導入、人事制度の変革など、女性活躍推進への取り組みを強化してまいります。
c. 多様な人財採用の取り組み
社員それぞれが持つ背景や能力、経験などを含むさまざまな価値の多様性を受け入れ組織に活かすことが、社員の働きがいや生産性の向上、付加価値の創出につながると考え、国境を超えたダイバーシティ推進の一環として、留学生や、外国の学生、外国人キャリア人財の採用を強化し、2025年度には新卒者3名の採用を内定しております。
また、障がい者雇用の取り組みにつきましては、養護学校への訪問や、障がい者職業センターの見学等で情報収集や理解を深め、2024年度の雇用人員は前年度から4名の増加となっておりますが、従業員総数の増加により法定雇用率に達することができておりません。今後は、障がいの特性に関わらずより多くの方が活躍できるよう環境整備や、周囲の社員と協力して支援を行い、雇用の継続をしてまいります。
d. 従業員エンゲージメント調査の実施
会社も社員も一緒に変革を推進・実践していくために、組織状態・各職場の働く環境を、年2回の従業員エンゲージメント調査を通じて可視化し、組織改善のPDCAサイクルを回しております。健全な職場環境でONE TADANOの実現に向けて日々の業務を推進出来ているか、何が課題なのか、を可視化し、役員・管理監督者が今後の方向性のヒントを掴むツールとして2019年にトライアルで実施後、2021年度より全社展開をしており、全体スコアは年々上昇しております。特に、ものづくりメーカーとして開発本部と生産本部に注力し、エンゲージメント向上ミーティングを開催後、アクションプランに対するサーベイを実施し、データ分析から重点指向で取り組みました。その結果、取り組んだアクションプランは、多くの組織で期待・満足の数値が上昇しております。
なお、2024年度は、株式会社リンクアンドモチベーション主催の「Motivation Team Award 2025」にエントリーし、生産本部が入選しております。
e. ストレスチェックに関する取り組み
毎年、社員全員にストレスチェックを実施しておりますが、その他にも新卒社員研修、健康教室(25・30・35才)などで、ストレスやメンタルヘルスに対して正しい理解を持ってもらい、セルフケアができるよう話し合いの場を設けております。現在保健師が5名在籍しており、健診後の保健師面談の際、希望者にはストレスチェックの結果説明を行い、自分の心の状態に気付き、コントロールすることを促しております。超過勤務者の疲労度チェック及び面談を行い、メンタルヘルス不調者の早期発見、再発の防止を図っております。保健師が、メンタル不調者と会社(関係者)をつなぐ橋渡し(コミュニケーション)の役割を果たしており、高ストレス者の割合は年々減少しております。
※上記の主な取り組みに関する詳細及びその他人事戦略に関する取り組みは、2025年7月発行予定の「
(3) リスク管理
当社グループは、開発・製造の拠点を日本・ドイツ・米国に、販売・サービスの拠点を世界各国に有しており、グローバルに事業を展開しております。
当社グループの業務には、事業戦略リスク、法的リスク、製品安全リスク、情報セキュリティリスク、環境リスク、自然災害リスク等様々なリスクがあります。当社グループは、リスク管理について「タダノグループ事業リスクマネジメント規程」に基づき、リスク委員会を通じて、定期的に社内のリスクの洗い出しと評価を行い、リスク毎に対応部署を定めて対応策を講じることにより、リスクマネジメントの強化を図っております。リスク委員会における評価結果については、原則年2回、取締役会に報告しております。
製造業である当社グループにとって特に重要となる指標及び目標として、2021年に「タダノグループ長期環境目標」を制定しました。「2030年までに事業活動におけるCO2排出量25%削減、製品におけるCO2排出量35%削減、並びに事業活動における産業廃棄物排出量50%削減(いずれも2019年度比)」と目標を定め、地球環境の保全・貢献に取り組んでおります。
また、気候変動対応については、CO2・エネルギー削減部会で、いわゆる2℃シナリオに伴う移行リスク・機会、4℃シナリオに伴う物理リスク・機会を検討し、当社グループのリスクと機会について以下のとおり分析しております。
①事業活動におけるCO2削減
志度工場では2008年に最大出力260kWの太陽光パネルを設置し、生産及びエネルギー使用量のさらなる効率化に向けた再編に取り組んでおります。また、「Next Generation Smart Plant ~人と機械が調和し、次世代につながるスマート工場~」をコンセプトに掲げる香西工場では、エネルギー使用量をリアルタイムで把握できるEMS(エネルギーマネジメントシステム)を導入し、2021年に最大出力1,182kWの太陽光パネルを設置しました。両工場においては、エネルギー効率が良くCO2排出の少ないバージ船を利用した製品輸送にも取り組んでおり、モーダルシフトも積極的に推進しております。2023年1月には多度津工場に最大出力606kWの太陽光パネルを設置し、取り組みをさらに加速させております。
国内外におけるその他の事業所でも、太陽光パネルの設置やエアコンや照明の節電、社有車のEV化・HV化等、環境負荷低減に取り組んでおります。
CO2排出量の推移(SCOPE1・2)
(注)1 日本国内全拠点(グループ会社・工場などを含む)が対象。
2 海外生産拠点が対象。今後、算定範囲をその他海外拠点にも拡大予定。
3 グループ売上高を分母とした原単位を表記(CO2:トン/売上高:億円)。
4 対象会社の範囲については、企業結合等により、基準となる2019年度以降の数値を毎年見直しております。
②製品におけるCO2削減
建設機械のライフサイクルにおけるCO2排出量は、製品の稼働と走行における排出が大部分の割合を占めております。このため、ラフテレーンクレーン CREVO G5 シリーズでは環境に配慮した新世代エンジンに加え、無駄なエンジン回転を抑制する「オートアクセル」、クレーン非操作時にPTOポンプを停止する「ポンプオートストップ」を搭載しております。また、エンジンを起動せずにクレーン作業を可能にする電動パワーユニット「e-PACK」を欧州、そして日本に市場投入するなど、CO2排出量の削減や、燃料消費量の改善、低騒音作業など作業効率と環境に配慮した操作をサポートしてまいりました。
2023年12月には、世界初となる「電動ラフテレーンクレーン」を日本で発売し、2024年11月にはアメリカ・カナダ向けに第2弾となるEVOLT eGR-1000XLL-1を発売いたしました。電気の力でクレーン作業・走行を行うことができ、製品からのCO2排出量をゼロにすることができる画期的な製品であります。また、12月には有線式電動CC 88.1600-1(超大型クローラクレーン)の開発も発表いたしました。
当社グループの製品ラインナップの中で、超大型のクレーンや高揚程の高所作業車は、今後GX(グリーントランスフォーメーション)で増加するとみられる風力発電等の建設現場でも大きな活躍が期待されております。また風力発電設備のメンテナンス用途に特化した、新たな製品開発にも取り組んでおります。
今後も脱炭素化・地球環境の保全に貢献する製品開発を加速してまいります。
③SCOPE3のCO2排出量について
CO2排出量のうち、SCOPE3の排出量については以下のとおりであります。GHGプロトコル・環境省ガイドラインに沿って、対象となる主だった活動が存在するカテゴリーについて算定しております。
各カテゴリーの算出方法、条件につきましては別表のとおりであります。
(単位:t)
また、当社グループの長期環境目標の一つである、カテゴリー11「販売した製品の使用」によるCO2排出量について、2019年度(基準値)と2023年度の数値は以下のとおりです。
SCOPE3(カテゴリー11) (単位:t)
(別表)カテゴリーごとの算出方法・条件
(注)1 集計対象(カテゴリー5を除く)は、日本国内の全拠点(グループ会社・工場などを含む)となっております。
2 カテゴリー5の集計対象は、日本国内の主要生産拠点(高松・志度・香西・多度津・千葉)のみとなっております。
3 海外につきましては、2025年以降の集計・開示を検討・予定しております。
4 対象会社の範囲については、企業結合等により、基準となる2019年度以降の数値を毎年見直しております。
5 排出原単位につきましては、「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位(Ver.3.3)」及び「LCIデータベースIDEAv2.3(サプライチェーン温室効果ガス排出量算定用)」の数値を使用しております。
④事業活動における産業廃棄物削減
当社グループでは、2008年の環境マネジメントシステムISO14001の認証取得を契機に、事業活動における産業廃棄物の削減に取り組んでおります。
当社グループにおける産業廃棄物のおよそ9割は生産拠点から排出されております。分別の徹底、有価物化の推進、部品梱包材の脱プラスチック推進、余剰部品の有効活用等により、産業廃棄物の削減を図っております。2021年には、有価物化の推進として「廃油」をリサイクル化し、2022年にはプラスチック資源循環促進法の施行を受け、廃棄物分別ルールの改訂と「ビニール系プラスチック」の有価物取引を導入いたしました。また2024年には「木製ワイヤドラム」や事業所排出の「ペットボトル」について有価物化するなど、廃棄物削減を着実に進めております。また、部品の納品時に使用する通い箱等の再利用やリサイクルを促進することで、事業活動の中で排出される産業廃棄物の資源化もさらに推進しております。
産業廃棄物排出量の推移
人事戦略に関する指標と目標
人事戦略の課題に対応していくうえで特に重点的に実施している施策について、当社の指標及び目標を以下のとおり設定しております。
(注)1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
3 女性従業員比率については、2024年度実績にて目標値に到達しておりますが、サステナビリティの観点から継続的に目標水準を達成することが必要不可欠と認識し記載しております。
4 株式会社リンクアンドモチベーション「モチベーションクラウド」によるエンゲージメントスコア及びエンゲージメント・レーティングであります。
当社グループは、開発・製造の拠点を日本・ドイツ・米国に、販売・サービスの拠点を世界各国に有しており、グローバルに事業を展開しております。
当社グループの業務には、事業戦略リスク、法的リスク、製品安全リスク、情報セキュリティリスク、環境リスク、自然災害リスク等様々なリスクがあります。当社グループは、リスク管理について「タダノグループ事業リスクマネジメント規程」に基づき、リスク委員会を通じて、定期的に社内のリスクの洗い出しと評価を行い、リスク毎に対応部署を定めて対応策を講じることにより、リスクマネジメントの強化を図っております。リスク委員会における評価結果については、原則年2回、取締役会に報告しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1) 業界特性、需要変動
当社グループが属する業界は、景気変動の山・谷よりも需要の振幅が大きくなる特性を有しております。当社グループ製品である建設用クレーン等LEは耐久性に優れ、製品寿命も長く、中古車としての価格が高いことが特徴です。顧客は景気が良くなると新しい製品に買い替え、景気が冷え込むと買い替えを待つ傾向があります。このため、LEは、他の建設機械と比べて景気の波に左右されやすく、需要の振幅が大きくなる特性を有しており、想定を超えた景気変動が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。なお、主要製品と需要との関連は概ね次のとおりとなっております。
・建設用クレーン
日本及び海外向けで、日本及び海外仕向地の政府建設投資及び民間建設投資やエネルギー関連投資の動向に 影響を受けます。
・車両搭載型クレーン
主に日本向けで、トラック架装用の小型のクレーンであるため、トラックの需要動向に影響を受けます。
・高所作業車
主に日本向けで、電力電工、通信向けは、主に電力電工業界及び通信業界の設備投資の動向に、レンタル、一般向けは、主に民間設備投資の動向に影響を受けます。
(2) 研究開発
当社グループは、IoTやAIを始めとする急速な技術的進歩により世の中が大きな変革期を迎えつつあると認識し、商品競争力の維持・強化や更なる技術革新を目的として、研究と開発要員の増員、大学との共同研究等、研究開発の強化を図っております。開発の遅れや急速な技術革新、市場ニーズとの不一致等により商品競争力が低下した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(3) 原材料等の調達
当社グループでは、SVE(スーパーバリューエンジニアリング)活動に基づき開発段階までさかのぼり、より一層のコストダウンを推進するとともに、生産性の向上に取り組んでおりますが、予測を超えた原材料の価格高騰や品不足が当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
また、取引先の供給能力の不足や供給停止、倒産、品質問題その他の理由により、生産や出荷の遅延・減少等が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
※ SVE:今までのVEを越える本格的本質的なVEで、Super(Sustainable:持続できる)Value Engineeringの略
(4) 製品輸送手段
当社グループの主要製品である建設用クレーンの日本国内における生産機能は香川県に集中しており、四国からの製品輸送について、法規制により本州四国連絡橋を利用できず、フェリーやバージ船を利用した海上輸送を用いております。当社グループ保有のバージ船を導入する等、輸送能力を確保しておりますが、運営会社の経営悪化等の理由によりフェリーやバージ船が利用できなくなった場合、製品の出荷量や出荷費用に変動が生じ、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(5) 貸倒れリスク
当社グループでは、顧客の信用状態を継続的に把握して、与信設定を行い、適切な債権管理に努めておりますが、顧客の信用不安により予期せぬ貸倒れリスクが顕在化し、保険等によってカバー出来ない費用が生じて、追加的な引当の計上が必要になる場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(6) 為替レートの変動
当社グループ海外事業は、為替レートの変動により影響を受けます。これに対し、輸出及び輸入の決済については、為替予約、債権債務の相殺等により為替の変動による影響を最小限に抑える措置を講じておりますが、予測を超えた為替変動が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(7) 保有株式の価値変動
当社グループは、販売・購買・資金調達等において、安定的な取引関係の維持・強化を図ることを目的に他社の株式を保有しております。個別銘柄の保有の適否に関しては毎年1回定期的に見直しを行っており、保有目的に合致しない株式は、売却等により縮減を図っておりますが、当社グループが保有している株式の価値が変動した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(8) 買収・提携
当社グループは、「LE世界No.1」に向け、事業の拡大や競争力の強化等を目的として、国内外において企業買収、事業買収、資本提携等を実施することがあります。これらを行う際には事前調査を十分に行い、リスクを検討することとしておりますが、期待していたシナジー等のメリットを享受できなかった場合や、想定していない新たな負債等の問題が生じ又は発見された場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(9) 法的規制
当社グループは、日本の法的規制のほかに事業展開している各国の法的規制、例えば事業・投資の許可、関税・輸出入規制等の適用を受けております。製品のうち、建設用クレーンは日本及び海外仕向地における自動車及びクレーンの法規制の対象となっております。この法規制は、例えば排出ガス規制のように、各国で異なり、また各国の事情で変更されることがあります。他の製品も同様に日本及び海外仕向地における法規制の対象となっております。
当社グループでは、製品に係る法的規制に関する情報収集と対応を行っておりますが、各法的規制の改正によって対応費用が発生したり、研究開発、生産、販売及びサービス等に支障をきたすことにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(10) 不正・不祥事
当社グループは、「タダノグループサステナビリティ憲章」を定め、ステークホルダーの権利・立場や企業倫理を尊重する企業風土の醸成に努めております。また、「タダノグループコンプライアンス規程」に基づき、コンプライアンス担当役員を設置し、コンプライアンス委員会を通じて、啓発ツール等による法令遵守の教育研修を行い、コンプライアンスを徹底すると共に、内部通報制度によりコンプライアンス体制の強化を図っておりますが、役職員等による重大な不正・不祥事が発生した場合、当社グループの信用失墜や費用の発生等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(11) 税務リスク
当社グループでは、各国の税法に準拠して税額計算し、適正に納税を行っております。グローバルな事業展開の中で、各国の税法だけでなく国際間取引に係る移転価格税制等の国際税務リスクにも注意を払っておりますが、税務当局との見解の相違等により追加の税務コストが発生し、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(12) リコール・製造物責任
当社グループでは、製品安全委員会や品質改善委員会等を設置し、安全と品質を最優先に、製品開発及び製造、サービスに努めておりますが、製品欠陥に基づく大規模なリコールや製造物責任に基づく賠償責任が生じ、保険等によってカバー出来ない費用が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(13) 情報セキュリティ
当社グループは、様々なシステムを利用し、また、業務上必要な取引先の機密情報や個人情報等を保有しております。万一に備えて、サーバを外部のデータセンタで運用し、バックアップデータを複数拠点で保管する等、最大限の保守・保全策を講じ、情報管理体制の強化に努めておりますが、停電、災害、ソフトウエアや機器の欠陥、コンピュータウイルスの感染、不正アクセス等、予測を超える事態により、システム障害や情報漏洩、改ざん等の被害が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(14) 環境規制
当社グループでは、製品及びその製造過程等について、大気汚染、水質汚濁、騒音・振動、廃棄物処理、CO2削減及びエネルギー規制等、様々な環境法令の適用を受け、それらの遵守のために必要な対応を行っておりますが、環境法令の改正による対応費用の発生や、環境事故等に基づく賠償責任が発生し、保険等によってカバー出来ない費用が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(15) 自然災害
当社グループでは、地震等の自然災害や大規模火災等に備えた事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定や防災マニュアルの作成、またテロ・紛争等の発生や感染症等の世界的流行(パンデミック)等のあらゆる緊急事態に対応する情報連絡体制の整備等、事業継続に必要な対策を講じておりますが、これらの災害等によって当社グループやサプライチェーンに重大な損害が発生し、操業停止、生産及び出荷の遅延や減少、販売の減少等が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、経営方針・経営戦略等の内容については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
日本向け売上高は、建設用クレーン・車両搭載型クレーン・高所作業車が揃って増加し、1,098億4千5百万円(前期比110.2%)となりました。海外向け売上高は、北米を中心に増加したものの、欧州・中東が減少し、1,816億5千4百万円(前期比100.6%)となりました。この結果、総売上高は2,915億円(前期比104.0%)、海外売上高比率は62.3%となりました。
売価改善の効果や為替等の影響により、営業利益は237億7千8百万円(前期比129.6%)、経常利益は210億7千7百万円(前期比128.8%)、親会社株主に帰属する当期純利益は欧州事業再生に伴う工場再編関連費用を特別損失に計上したため、66億4千2百万円(前期比85.5%)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。セグメント別の売上高については、セグメント間の取引を含めて記載しております。なお、セグメント別とは、当社及び連結対象子会社の所在地別の売上高・営業利益であり、仕向地別売上高とは異なります。
①日本
日本向け売上高は、建設用クレーン・車両搭載型クレーン・高所作業車が揃って増加、海外向け売上高は横ばいで推移した結果、売上高は1,959億9千万円(前期比106.2%)、営業利益は271億8千1百万円(前期比103.7%)となりました。
②欧州
建設用クレーンの需要は増加したものの、生産制約の解消途上にあることと、工場再編の過程における生産効率低下により、売上高は782億6千2百万円(前期比86.7%)、営業利益は115億2千6百万円の損失(前期138億3千4百万円の営業損失)となりました。
③米州
建設用クレーンの需要が増加する中、売上高は1,047億1千8百万円(前期比110.5%)、営業利益は64億8千1百万円(前期比91.3%)となりました。
④オセアニア
建設用クレーンの需要が減少する中、売上高は157億6百万円(前期比102.6%)、営業利益は13億4千3百万円(前期比64.0%)となりました。
⑤その他
建設用クレーンの需要が増加する中、売上高は74億8千6百万円(前期比104.3%)、営業利益は6億1千7百万円(前期比70.4%)となりました。
主要品目別の状況は次のとおりです。
①建設用クレーン
日本向け売上高は、需要が減少する中、販売に注力した結果、500億4千8百万円(前期比101.7%)となりました。海外向け売上高は、需要が増加したものの、1,492億6千万円(前期比99.5%)となりました。
この結果、建設用クレーンの売上高は1,993億8百万円(前期比100.0%)となりました。
②車両搭載型クレーン
日本向け売上高は、トラックシャシ供給が改善し、需要が増加する中、174億7千6百万円(前期比112.1%)となりました。海外向け売上高は、19億5千6百万円(前期比81.1%)となりました。
この結果、車両搭載型クレーンの売上高は194億3千3百万円(前期比108.0%)となりました。
③高所作業車
日本の需要が減少する中、トラック架装式高所作業車の拡販に加え、長野工業株式会社(現:株式会社タダノユーティリティ)の買収効果もあり、売上高は242億8千3百万円(前期比149.6%)となりました。
④その他
部品、修理、中古車等のその他の売上高は、484億7千4百万円(前期比103.6%)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 生産金額は販売価格で表示しております。
②受注実績
当社グループは、受注見込による生産方式をとっているため、該当事項はありません。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
(資産)
総資産は、4,034億2千2百万円(前連結会計年度比381億7千8百万円増)となりました。主な要因は、棚卸資産の増加157億3千7百万円や前払金の増加159億9千7百万円があったことによるものです。
(負債)
負債は、2,145億2千4百万円(前連結会計年度比306億3千4百万円増)となりました。主な要因は、社債の償還100億円があったものの、短期借入金の増加146億5千6百万円や長期借入金の増加265億円があったことによるものです。
(純資産)
純資産は、1,888億9千7百万円(前連結会計年度比75億4千3百万円増)となりました。主な要因は、利益剰余金の増加34億6千9百万円や為替換算調整勘定の増加30億4千万円があったことによるものです。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ15億5千2百万円減少し、925億7千4百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によって得られた資金は2千6百万円(前連結会計年度比100億9千4百万円減)となりました。主な要因は、減少要因として棚卸資産の増加91億4百万円や法人税等の支払額117億3千2百万円があったものの、増加要因として税金等調整前当期純利益の計上157億4千5百万円や減価償却費の計上67億3千5百万円があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によって使用された資金は251億9百万円(前連結会計年度比211億2千6百万円減)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出77億2千万円や関係会社株式取得のための前払金の支出159億9千7百万円があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によって得られた資金は216億2千3百万円(前連結会計年度比348億7千7百万円増)となりました。主な要因は、減少要因として長期借入金の返済による支出31億6千8百万円や社債の償還による支出100億円に加え、配当金の支払額31億7千3百万円があったものの、増加要因として短期借入金の増加94億8千万円や長期借入れによる収入300億円があったことによるものです。
なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは次のとおりであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 4.会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。
この連結財務諸表は、収益及び費用、資産及び負債の測定にあたり、経営者の見積りや仮定を含んでおります。これらの見積りや仮定は、過去の実績や決算日において合理的であると考えられる様々な要素を勘案し、経営者が判断した結果に基づいております。加えて、継続的な見直しも行なっております。しかしながら、実際には、これらの見積りや仮定とは異なるものとなる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表に重要な影響を与えると考えられる見積りや仮定を含む項目は以下のとおりであります。なお、重要な会計上の見積りとして、繰延税金資産を計上しております。その内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(有形固定資産及び無形固定資産)
当社グループは、有形固定資産及び無形固定資産について、減損の兆候がある場合に減損の判定を行っております。減損判定の契機としては、過去の業績や事業計画と比較して業績の大幅な悪化が見込まれる場合、市場や業界トレンドに大きな変動がある場合、資産の用途やそれらを用いる事業の見直しを行う場合等があります。減損については、公正価値と帳簿価額を比較し、公正価値が帳簿価額を下回っている場合に減損損失を計上しておりますが、公正価値の評価にあたり用いる見積りや仮定が将来的に変化した場合には、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。
(法人税等)
当社グループは、財務諸表上の資産及び負債の計上額と税務上の金額との間に生じる差異について、将来発生すると見込まれる課税所得の範囲において、その差異が解消されると見込まれる期間に適用される法定実効税率を使用し、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の解消については、将来の課税所得の見積りによるところが大きく、その課税所得の見積りが変動する場合には、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。
(退職給付)
当社グループでは、当社、国内子会社及び一部の海外子会社で確定給付型の退職給付制度を設けております。確定給付制度の債務について、その現在価値や関連する勤務費用等は、数理計算上の仮定に基づいて算定しており、割引率や長期期待運用収益率等、基礎率についての見積りが必要になります。当社グループでは、外部の年金数理人からの意見も踏まえ、適切な見積りと判断を行っておりますが、将来の経済状況によりその仮定が変動する場合には、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(経営成績)
当連結会計年度の経営成績については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績」に記載のとおりであります。
(財政状態及びキャッシュ・フローの状況)
当連結会計年度の財政状態の状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)財政状態」に記載のとおりであります。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3)キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。
③資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループでは、事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用、金融機関からの借入及び社債の発行等により、資金調達を行うことを基本方針としております。自己資本比率やD/Eレシオ等の財務健全指標、ROEやROICなどを注視する一方で、資金調達コストの低減や金利変動のリスクも勘案した上で、最適な調達方法を選択しております。また、ミニマムキャッシュ運営を柱とする資金管理方針に基づいて統制し、グループ全体の余剰資金の管理と資金効率の向上に努めております。加えて、金融機関とはコミットメントライン契約を結んでおり、高水準な現預金と併せて、流動性を確保しております。
今後も持続的な成長と企業価値向上に向け、積極的な投資と安定的な経営・財務基盤の確保に努めます。また不測の事態への備えも意識しながら、引き続き資金の流動性も確保してまいります。
④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
「中期経営計画(24-26)」では、「Reaching new heights ~新たなステージへ~」をスローガンに、業界のリーディングカンパニーとして、お客様の安全と地球環境に配慮した新たな価値を提供するための戦略を推進します。
なお、その進捗を計る指標として、売上高、営業利益、ROIC(投下資本営業利益率)、ROE(自己資本利益率)を定めております。「中期経営計画(24-26)」の最終年度、2026年度(第79期)において、売上高は3,300億円、営業利益は300億円(営業利益率9.1%)、ROICは8.0%、ROEは9.5%を、それぞれ数値目標として掲げております。
各指標の推移は以下のとおりです。
※ROIC:税引後営業利益/投下資本
投下資本:純資産+有利子負債(各年度の前年度末及び当年度末を平均して算出)
(1) 技術提携契約
該当事項はありません。
(2) 業務提携契約
提出会社
(3) その他
当社は、2024年9月12日開催の取締役会において、米国Manitex International, Inc.(以下「Manitex社」)の株式の全てを取得すること(以下「本買収」)を決定し、Manitex社との間で本買収に関する契約を米国時間2024年9月12日付で締結いたしました。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
また、当社は、2024年11月6日、株式会社IHI(本社:東京都江東区)より連結子会社であるIHI運搬機械株式会社(本社:東京都中央区)の運搬システム事業を買収するための契約を締結いたしました。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。
当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発活動の大半は、当社の商品開発本部及び技術開発本部で行われており、両本部では国内及び海外の市場ニーズに即したクレーン車、高所作業車及びそれらの応用製品、新技術・先端技術の研究開発活動を行っております。商品開発本部では近年、国内外での次期排ガス規制対応と脱炭素化に向けた研究・開発に取り組んでおります。一方、技術開発本部では大学や他企業との共同研究等を通じ、AI等の最新ICT技術を活用して、作業容易化、自動化、省力化等に関する技術開発に取り組むことで、より安全で迅速、効率的な作業の実現を目指しております。
なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発活動に要した金額は、研究材料費、人件費等、総額
当連結会計年度における各セグメント別の主な研究開発活動は、次のとおりであります。
(1)日本
①技術開発本部の取り組み
技術開発本部は、当社製品が使われる建設現場でのより安全な作業環境確保の要請や、少子高齢化による生産年齢人口の減少を背景に、建設施工の安全性と生産性の向上を目指し、未来を見据えた新技術開発に取り組んでおります。その取り組みの一部として、移動式クレーン遠隔操作システムの現地実証実験を開始しました。移動式クレーンの運転席とその周囲に位置する複数台のカメラによって撮影された映像を、インターネットを経由して離れた場所にあるコックピットエリアの専用モニターへリアルタイムに送信することで、コックピットでは実際の運転席の環境が忠実に再現され、実際の移動式クレーンの運転席と遜色がない作業環境でクレーン操作が可能となります。実用化が進めば、現場への移動時間や現場での待機時間の短縮、熟練オペレーターが複数の現場を連続して担当することも可能となり、効率性や生産性の向上が期待できます。
大学との共同研究においては、包括連携共同研究を行っている京都大学との間で、新たな分野の共同研究を開始し、文系理系の枠にとらわれず、広く応用可能な研究・学術的視点を包括連携で得て研究を推進しております。また、ベンチャーを含め民間企業との共同開発も活発化させ、オープンイノベーションへも積極的に取り組んでおります。
②北米市場向け100st吊りフル電動ラフテレーンクレーン「EVOLT eGR-1000XLL-1」の開発、発売
・特長
1)最大吊上げ性能100st、最大作業半径57.9m、最大地上揚程68.3m、最高速度18km/h。従来エンジン機のタダノビューシステムや車両後方クリアランスソナーを搭載。
2)走行及びクレーン作業時の騒音が大きく改善
3)走行用に高出力電動モータを搭載。ギア変速時のショックがなく、スムーズな走行が可能。
4)バッテリ容量226kWhのリチウムイオン電池を搭載。満充電で平均的な1日のクレーン作業と走行が可能。
5)CCS1急速充電方式と三相交流480Vの普通充電方式を採用
6)従来機にはないLift Visualizerを標準装備。吊り荷監視カメラ映像にクレーン情報を重ねて表示し、作業効率と安全性を向上。
③日本市場向けオールテレーンクレーンAC 7.450-1の開発、発売
・特長
1)現在、世界で最も厳しい排ガス規制のひとつである欧州排ガス規制EU Stage V対応エンジンを搭載。また、クレーン部とキャリヤ部共通のシングルエンジン方式を採用し、定期メンテナンスの負担を低減。
2)7軸でありながら、キャリヤ全長は15.99mとコンパクト。公道走行時はクレーン旋回台付き登録スタイルで、現場での着脱作業時間を短縮。
3)400t吊りクラス最長の79.9mロングブームを採用し、高揚程の作業とパワフルな吊上げ機能を両立
4)ブーム背面にV字型新機構アタッチメントSSL(Sideways Super Lift)を装着し、より高い吊上げ性能を実現
④日本市場向けオールテレーンクレーンAC 5.120-1の開発、発売
・特長
1)従来のATF-120N-5.1の高い搬送性、クレーン性能、ジブ仕様、作業の効率と快適性、安全性はそのままに、新モデルとして開発
2)現在、世界で最も厳しい排ガス規制のひとつである欧州排ガス規制EU Stage V対応エンジンを搭載
3)公道走行時に60mブームを付けたままの移動が可能で、現場での着脱作業時間と手間を最小化
4)テレマティクスWeb情報サービス「HELLO-NET」を標準装備。「HELLO-NET」は携帯通信によるクレーンの稼働状況の掌握と、GPSによる位置情報確認、さらに保守管理のための情報をウェブサイトでサポート。
⑤日本、欧州市場に向け自走式高所作業車NUS21-7、23TCの開発、発売
・特長
1)当社子会社の㈱タダノユーティリティが開発した高所作業車の新モデル
2)クローラ式伸縮ブーム型自走式高所作業車。最大作業床高さ20.9m。
3)バスケット搭載定格荷重が250㎏時と450㎏時のそれぞれに対応した作動が可能
4)日本市場はJIS規格準拠、欧州市場はCE認定、EN280規格準拠
5)安全装置の二重化による作業安全を提供
当事業セグメントに係る研究開発費は
(2)欧州
海外市場向けオールテレーンクレーンAC 5.250-2の開発、発売
・特長
1)新型の5軸、250t吊りオールテレーンクレーン
2)現在、世界で最も厳しい排ガス規制のひとつである欧州排ガス規制EU Stage V対応エンジンを搭載。また、クレーン部とキャリヤ部共通のシングルエンジン方式を採用し、定期メンテナンスの負担を低減。
3)最長70mのブームに最長42mのジブ装置が可能
4)合計80tのカウンタウエイトは分割してトレーラ等で搬送。分割方法を工夫し、80tは3回に分け自力で吊上げが可能。
当事業セグメントに係る研究開発費は
(3)米州
当連結会計年度において新たな製品の発売はありませんが、テレスコピックブームクローラクレーンの開発を継続して行っております。
当事業セグメントに係る研究開発費は