(1)経営方針・経営戦略等
ア 経営環境
当連結会計年度におきましては、世界経済は、インフレ鎮静化を背景とした緩やかな成長が見え始めたものの、ウクライナや中東情勢の緊迫化、中国経済の停滞、各国での相次ぐ政権交代を受けて先行きの不透明感が増しました。
長期的なトレンドとして自転車への高い関心が続くなか、完成車の店頭販売は弱含みとなり、市場在庫は高い水準で推移しました。また、世界的に過熱気味であった釣具の需要は落ち着きを見せました。
イ 経営方針
当社グループはチームシマノの基本理念の中に「人と自然のふれあいの中で、新しい価値を創造し、健康とよろこびに貢献する。」を使命として掲げております。自転車部品事業、釣具事業ともに、常に新しく、より優れた製品をお届けすることにたゆまぬ努力を続け、皆様の心身の健康に貢献していきたいと考えております。
経営の方針としては次の4項目に重点を置いて運営してまいります。
・お客様に信頼され、満足していただけるサービスと製品を提供する。
・企業価値を高め、開かれた経営を約束する。
・達成感と、よろこびを分かち合える、公正でいきいきとした職場づくりに努める。
・社会の一員として環境を大切にし、共に繁栄することを目指す。
ウ 経営戦略等
当社グループは、上記経営方針を踏まえ、「価値創造企業」を展望し、売上高・営業利益等を客観的な指標とし、次の3点を長期的な経営戦略として事業を展開しております。
①コア・コンピタンスの強化とマーケットの絞り込み: 卓越した発想力、デザイン力、技術力を磨き続け、そこから生まれる新しい製品アイディアを、現実の製品に造り上げる製造力の強化と明確なターゲットを定めたマーケティング。
②自転車文化・釣り文化の創造とブランド強化: 自転車・釣りを趣味、スポーツといった娯楽目的の行為としてではなく、豊かなライフスタイルを提供する文化としてとらえ、自転車・釣りの社会的価値向上を志す。その結果として、当社のプレゼンスが高まり、ブランド価値向上につながる。
③企業価値の向上: こころ躍る製品の継続的な提供を通じて、株主の皆様、顧客、従業員等の全てのステークホルダーにとっての企業価値が高まり続ける「善の循環」を維持する。
これら3点を基本方針とし、今後も、開発型デジタル製造業としての本分を忘れず、こころ躍る製品を提案し続ける価値創造企業としての成長を経営の基本に置き、当社グループの根幹となる競争力を高め、持続可能な事業活動を行ってまいります。
(2)対処すべき課題
世界経済は緩やかな回復基調を辿る事が見込まれるものの、ウクライナ・中東情勢をはじめとした地政学リスクに伴う資源価格の上昇や物流の停滞によるサプライチェーンの混乱、また2024年に相次ぎ実施された各地域の国政選挙結果からの政策変更が景気を下押しする可能性があります。
このような経営環境のなか、当社グループは、自転車や釣具に対する需要動向を注視しつつ、日本発の「開発型デジタル製造業」として、多くの人々に感動していただける「こころ躍る製品」の開発・製造に邁進することはもとより、企業と社会の共有価値を創造し続ける「価値創造企業」として、一歩一歩、前進していくことが大切であると考えております。その実現に向けて、次の3点の強化を課題として取り組んでまいります。
・技術開発力:開発型デジタル製造業として、電動アシスト自転車用ドライブユニットをはじめ、独自の機能を軸とした高性能部品を開発するための体制強化と意識改革などによりデジタルマニュファクチャリングの体制を強化してまいります。
・コスト競争力:製造力を強化する目的で行ってきた投資設備を最大限に活用することは当然ながら、環境負荷の低減に配慮した生産工程の改善と内在する無駄の削減を着実に進めることでコスト競争力を強化してまいります。
・コーポレート・ガバナンス:経営の意思決定機能及び監督機能の強化のため執行役員制度を導入すると共に、取締役会の客観性、透明性の確保に努めております。また、事業がグローバルに広がるなか、当社グループが共有すべき価値観を改めて統一すべく、従業員一人一人が日々の事業活動で遵守すべき方針として「行動規範」を策定し、グループのガバナンスを統括する組織的な体制の強化を進めております。当規範が当社グループに広く浸透し、コンプライアンスがより一層徹底されるよう進めるとともに、当社グループの持続的な企業価値向上に根差した活動などの非財務情報の開示に努めます。
なお、本項に含まれる将来に関する事項につきましては、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する基本的な考え方
シマノグループは、「人と自然のふれあいの中で、新しい価値を創造し、健康とよろこびに貢献する。」という使命を実現するため、グローバル社会の企業市民として世界共通の倫理観と遵法精神に基づいて持続可能な経済成長と環境・社会課題の解決に貢献し、世界の人々に愛される「こころ躍る製品」を提供する「価値創造企業」であり続けたいと考えています。
当社グループは、2022年5月より、企業価値、事業活動に影響を与える環境、社会に係るサステナビリティ課題を審議する組織としてESG委員会(委員長:代表取締役副社長、委員:全執行役員)を立ち上げ議論を重ねてまいりました。
2024年は、審議の質を深め、実質的な議論を行うために、ESG委員会の傘下に、環境委員会、社会倫理委員会、ガバナンス委員会の3つの小委員会を設置いたしました。
各委員会においては、気候変動、資源循環、人権尊重、危機管理体制、内部統制の強化をテーマにしました。その審議の結果は取締役会に報告され、取締役会は報告内容に基づいて、各対策が適切に推進されるよう監督・指示を行っています。
(3)気候変動への取組とTCFD提言に基づく情報開示
[ガバナンス]
気候変動に関するガバナンスは、「(2)ガバナンス体制」をご参照ください。
[戦略]
2022年に当社は、グループ全体に及ぶ影響を確認するため、2030年までの時間軸で財務に影響を与える可能性のある気候変動リスク及び機会を定性的に評価しました。2023年にIEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(1.5℃シナリオ及び4℃シナリオ)を用いて、2030年を対象にシナリオ分析を実施しました。各シナリオの分析の中で、定性的に特定した気候変動リスク及び機会のうち、定量的に評価が可能なものに関しては事業への影響度を定量的にも検証・評価しております。
このうち、事業に大きな影響を与える気候変動リスク及び機会は下表のとおりです。
[リスク管理]
当社では、ESG委員会において気候変動問題のリスクを議論したうえで取締役会に報告しております。
取締役会は、議論内容の報告をうけ、必要に応じて見直しや指示を行うことで監督を行っております。
[指標と目標]
(指標)
スコープ1、スコープ2に該当するCO2排出量
(目標)
・国内外の製造拠点を対象に2030年までに2013年比でスコープ1、スコープ2に該当するCO2排出量を55%削減
・チームシマノ全体で2050年までにカーボンニュートラル
参考情報として、スコープ1及びスコープ2の排出実績は下のグラフのとおりですが、2024年のCO2排出量は1月から11月までは実績値、12月は推定値にて算出しています。
(4)人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について
[人的資本投資への基本的な考え方]
当社グループは、創業以来、「和して厳しく」の精神のもと、多様な価値観・強みを持つ従業員に応じたキャリア開発を推し進めております。一人ひとりの持つ技術や才能が存分に発揮される環境づくり、その上で、個々が高い志で切磋琢磨、鋭意努力することによる自律的な成長が重要と考えております。
上記の実現に向け、従業員一人ひとりの力を最大限に引き出し、必要な能力を伸ばし、中長期的な企業価値の向上に貢献するための人的資本への投資は、当社経営において重要と考えております。
[人材育成方針]
当社では、企業理念や志を体現する人材育成の基本的な考え方として「シマノコンピテンシー」を制定し、「企業」「組織」「個人」の3つの側面から「価値創造企業」を実現するための人材像を可視化しております。当コンピテンシーに基づく人材育成の一環として、従業員が自発的に学ぶ風土の醸成、新しい知識の発見・実践・実体験の場、さらには従業員同士のつながりを生む機会を創出しております。これらの取り組みが、「こころ躍る製品」の提供につながると考えております。
代表的な取り組みとして、2022年に社内大学(Shimano Campus)を創設し、会社の歴史や理念などへの理解を浸透させるためのコンテンツや、従業員同士がつながり、互いの専門知識や経験を共有できる場をバーチャルとリアルの二つの側面で構築し、従業員が新たな知の創造を深めることができる機会を提供しております。具体的にバーチャルの場では、従業員がWEB上で一般教養や専門知識など様々なコンテンツにアクセスできる環境を整えております。リアルの場では、経営層と従業員が車座になり、率直に意見を交換しながらシマノの理解を深め合う対話型セッション『ラウンドテーブルの会』を開催し、これまでに220名以上の従業員が参加しました。
その他にも、職位ごとに求められる資質やスキルの開発を目的とした階層別研修や、業務に関連したスキル、社会人として必要な知識に関する検定、語学研修や通信教育の充実に努めております。階層別研修には、対象となる入社1年目から3年目、各役職への登用者が計224名参加し、また語学研修・通信教育には計431名が取り組み、これらの受講費用は会社が補助し活用の促進を図っております。
グローバル全体としては、国内・海外拠点間、または、海外拠点同士での人材交流プログラム等を通じて、従業員のキャリア開発を推し進めております。
その例として、SLD(Shimano Leadership Development)では、若手技術者が約3ヶ月間、欧米の自転車小売店に滞在し、実際に製品が販売される現場や製品が使われる現場を体験します。また、現地の文化や言語も含めて習得・体感することで、実業のキャリア開発に活かしております。その他にも、海外拠点の次世代リーダーを創業の地「堺」の本社に招き、シマノの企業理念・文化・会社が目指す方向性について理解を深め、グローバルリーダーとしてのマネジメント力を養うことを目的とした研修LTSP(Learning Team Shimano Program)も実施しています。
また、日本および海外地域統括会社では、グローバルリーダーの成長を目的として、一部の管理職層以上に人材アセスメントツールを導入し、組織を円滑に運営する能力を身に付けるための徹底的な自己分析を促しています。また、アセスメント結果を活用した全世界共通の強化トレーニングを開始し、経営幹部の育成を支援する環境づくりに投資を行っています。
加えて、社員ひとりひとりが自ら生産性を飛躍的に高められるように、生成AIをグローバル全体に順次導入を開始し、“With AI”の環境づくりを推し進めています。この理解促進とスキル向上を目的として内製した「生成AI研修」を、受講を希望した社員に対して実施しています。
[社内環境整備方針]
当社では、経営方針の1つである「達成感と、よろこびを分かち合える、公正でいきいきとした職場づくりに努める」を実現するために、多様な経験・知見を持つ人材を積極的に取り入れ、従業員ごとの働き方のニーズに応え、健康に安心して働ける職場環境の構築が重要と考えております。
具体的には、時間や場所に捉われず、柔軟な働き方が可能となる在宅勤務制度・時差出勤制度や、育児・介護・不妊治療と仕事の両立を支援する取り組みの拡充に努めています。育児休業の取得率は女性100%、男性67.6%でした。仕事と介護の両立支援においては、従業員の不安解消や事前準備を促すことを目的に支援制度を新たに導入し、ハンドブックの発行や外部専門相談窓口の設置を開始した他、国内連結でセミナーを年2回実施し情報発信を行っております。
また、職場の心理的安全性は重要であり、コンプライアンス意識の浸透を目的としたE-ラーニングを従業員の94.1%が受講しており、その他、ストレスチェックの結果をもとに部署へのフィードバックやサポートなどを実施しております。
従業員の健康促進の観点では、自転車通勤の促進として、駐輪場、浴場、メンテナンス場の整備、自転車通勤手当の支給や、自転車・ヘルメット購入補助などを実施しております。現在では従業員の約4割にあたる714名が自転車通勤を選択し、社内においても自転車文化の向上、従業員の健康支援を促進しております。
グローバル全体としては、「安全と健康はすべてに優先する」という労働安全衛生の精神に基づき、従業員が安心して安全に働くことができる職場構築に努めています。労働災害ゼロを目指し、2018年に本社でスタートした安全特化プロジェクトの下関工場への展開を終え、現在、海外工場への展開を進めております。また、労働災害や事故事例を国内外の工場全体へ速やかに共有する仕組みの構築も進めております。
なお、本項に含まれる将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。また、指標に関しては、具体的な取組は進めているものの、現時点では必ずしもすべての連結子会社で行われてはいないため、当社グループとしての記載が困難であります。このため、上記指標に関する目標および実績は、当社グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におきましては、世界経済は、インフレ鎮静化を背景とした緩やかな成長が見え始めたものの、ウクライナや中東情勢の緊迫化、中国経済の停滞、各国での相次ぐ政権交代を受けて先行きの不透明感が増しました。
欧州では、物価上昇の落ち着きにより個人消費も持ち直し、景気は緩やかに回復する動きを見せました。
米国では、個人消費が堅調に推移したものの、労働市場の鈍化傾向や金利の高止まりの影響を受け景気回復のペースは緩慢なものとなりました。
中国では、長引く不動産市場の停滞と個人消費の低迷により、景気は力強さを欠きました。
日本では、堅調なインバウンド需要や雇用・所得環境の改善を背景に景気は緩やかな回復基調が続きました。
このような環境の下、自転車、釣具への需要は引き続き弱含みであり、当連結会計年度における売上高は450,993百万円(前年同期比4.9%減)、営業利益は65,085百万円(前年同期比22.2%減)、経常利益は98,674百万円(前年同期比4.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は76,329百万円(前年同期比24.8%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
自転車部品
長期的なトレンドとして自転車への高い関心が続くなか、完成車の店頭販売は弱含みとなり、市場在庫は高い水準で推移しました。
海外市場においては、欧州市場では、春先の天候不順によって完成車の店頭販売は軟調となり、市場在庫は高めの水準で推移しました。
北米市場では、自転車への関心は底堅かったものの、完成車の店頭販売は弱含みとなり、市場在庫はやや高めで推移しました。
アジア・オセアニア・中南米市場においては、市場在庫の水準に改善の兆しが見え始めた一方、個人消費の低迷が継続し、完成車の店頭販売は弱含みで推移しました。中国市場では、スポーツサイクリングへの高い人気は継続した一方、シーズン終盤に市場に対する完成車の出荷量が増え、市場在庫は高めとなりました。
日本市場においては、完成車価格の高騰もあり、店頭販売は低調となり、市場在庫はやや高めで推移しました。
このような市況の下、ロードバイク向けコンポーネントの「SHIMANO 105」やグラベル専用コンポーネント「SHIMANO GRX」などの製品にご好評を頂きました。
この結果、当セグメントの売上高は345,553百万円(前年同期比5.2%減)、営業利益は54,157百万円(前年同期比17.0%減)となりました。
釣具
世界的に過熱気味であった釣具の需要が落ち着き、販売は弱含みで推移したなか、市場在庫の調整に改善の兆しが見えました。
日本市場においては、釣り愛好家の購買意欲は底堅く高価格帯製品の販売は堅調であったものの、販売は総じて力強さを欠き、市場在庫の調整は継続しました。
海外市場においては、北米市場では、安定した需要に支えられ販売は堅調に推移し、市場在庫の適正化が進みました。
欧州市場では、販売は堅調さを取り戻し、市場在庫の調整に進展の兆しが見え始めました。
アジア市場では、個人消費の低迷と悪天候の影響を受け、販売は弱含みとなり、市場在庫はやや高めの水準で推移しました。
豪州市場では、良好な天候と釣況に支えられ、販売は好調に推移し、市場在庫は適正水準を維持しました。
このような市況の下、新製品のスピニングリール「VANFORD」が高い評価を受けるとともに、引き続きスピニングリールの「TWIN POWER」、ロッド「POISON ADRENA」などの製品に多くのご注文をいただきました。
この結果、当セグメントの売上高は104,990百万円(前年同期比3.9%減)、営業利益は10,929百万円(前年同期比40.6%減)となりました。
その他
当セグメントの売上高は449百万円(前年同期比1.9%減)、営業損失は1百万円(前年同期は営業損失11百万円)となりました。
財政状態は次のとおりであります。
当連結会計年度末における資産合計は958,953百万円(前連結会計年度末比87,221百万円増)となりました。これは、現金及び預金が40,112百万円、建設仮勘定が21,629百万円、受取手形及び売掛金が8,299百万円、仕掛品が7,273百万円、建物及び構築物が4,081百万円、ソフトウエア仮勘定が2,859百万円、流動資産のその他が2,194百万円、投資有価証券が2,111百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
負債合計は75,339百万円(前連結会計年度末比6,005百万円増)となりました。これは、固定負債の製品保証引当金が12,151百万円、買掛金が5,085百万円、未払法人税等が4,065百万円それぞれ増加し、流動負債の製品保証引当金が14,843百万円減少したこと等によるものです。
純資産合計は883,613百万円(前連結会計年度末比81,216百万円増)となりました。これは、為替換算調整勘定が50,718百万円、利益剰余金が28,197百万円、その他有価証券評価差額金が2,236百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の91.9%から92.0%となり、1株当たり純資産は8,905円21銭から9,907円24銭となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ48,327百万円増加し、530,310百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは87,032百万円の収入となりました(前連結会計年度は114,567百万円の収入)。主な収入要因は税金等調整前当期純利益98,594百万円、減価償却費25,037百万円、利息及び配当金の受取額24,379百万円等によるものです。主な支出要因は受取利息及び受取配当金23,529百万円、法人税等の支払額18,475百万円、為替差損益9,618百万円、売上債権の増減額6,944百万円等によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは35,810百万円の支出となりました(前連結会計年度は31,760百万円の支出)。主な収入要因は定期預金の払戻による収入13,076百万円によるものです。主な支出要因は有形固定資産の取得による支出36,824百万円、無形固定資産の取得による支出8,753百万円等によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは49,476百万円の支出となりました(前連結会計年度は43,961百万円の支出)。主な支出要因は配当金の支払額26,630百万円、自己株式の取得による支出21,488百万円等によるものです。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格による概算値であります。
当社グループは、自転車部品及び釣具については大部分を見込生産によっております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
(注) 当連結会計年度のPAUL LANGE & CO. OHGについては、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、本報告書「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、過去の実績や他の合理的な方法により見積りを行っております。但し、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれら見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の事項が、当社グループの連結財務諸表の作成において適用される重要な判断と見積りに影響を及ぼすと考えております。
a. 固定資産の減損
当社グループは、事業の区分をもとに概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位として資産のグルーピングを行い、将来キャッシュ・フローを見積もっております。将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損損失の算定に影響を与える可能性があります。
b. 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を十分に検討し、回収見込額を計上しております。その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産の取崩し又は追加計上により利益が変動する可能性があります。
c. 製品保証引当金
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち重要なものは、「「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(売上高)
自転車部品事業では、昨年と同様、世界的な自転車ブームの落ち着きから、自転車の市場在庫は高い水準となり、各市場において在庫の調整が年間を通じて継続したことに加え、欧州市場における春先の天候不順もあり、店頭販売は低調に推移しました。釣具事業では、世界的なアウトドアブームに支えられた釣りへの関心は落ち着きが見られ、国内・アジア市場を中心に販売は鈍化しました。以上の結果、当連結会計年度の売上高は450,993百万円(前年同期比4.9%減)となりました。
(売上総利益)
自転車部品事業、釣具事業ともに各市場での市場在庫の調整が継続しており、当社製品の受注減による生産減少の影響から、当連結会計年度の売上総利益は172,303百万円(前年同期比5.6%減)となりました。売上総利益率は前連結会計年度より0.3ポイント減少し38.2%となりました。
(営業利益)
インフレによる人件費増加や運送費の増加、及び将来に向けた投資を含めたソフトウェア関連費用等が増加したことにより、販売費及び一般管理費が107,217百万円(前年同期比8.5%増)となり、当連結会計年度の営業利益は65,085百万円(前年同期比22.2%減)となりました。営業利益率は前連結会計年度より3.2ポイント減少し14.4%となりました。
(経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益)
営業外収益から営業外費用を差し引いた純額は、受取利息や為替差益の増加等により33,589百万円(前年同期は19,716百万円)となり、当連結会計年度の経常利益は98,674百万円(前年同期比4.5%減)となりました。
当社グループにおいて、工場の建替費用の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益は76,329百万円(前年同期比24.8%増)となりました。
資産、負債および純資産の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社製品製造のための材料及び部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは人件費及び広告宣伝費、販売促進費等のマーケティング費用です。当社の研究開発費は様々な営業費用の一部として計上されていますが、研究開発に携わる従業員の人件費が研究開発費の重要な部分を占めています。
当社グループの運転資金および設備投資資金につきましては、一般的に、内部資金によることとしており、その健全な財務状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力により、当社の成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えています。
当連結会計年度の達成状況は以下のとおりです。
当連結会計年度の売上高は計画比993百万円増(0.2%増)となりました。自転車部品事業では、販売が計画通りに推移した一方で、為替レートが計画と比べて円高で推移したため、計画比で減収となりました。釣具事業では、国内・中国市場を中心に販売が好調に推移したことにより、売上高は計画を上回りました。営業利益につきましては、販売費及び一般管理費の増加により、計画比914百万円減(1.4%減)となり、営業利益率は計画比0.3ポイント減の14.4%となりました。
該当事項はありません。
当社グループは「人と自然と道具の美しい調和」を目指し、基礎的な研究開発から製品化及び生産技術分野まで幅広く研究開発活動を行っております。また、海外におきましても、Shimano(Singapore)Pte. Ltd.を核として、製品化及び生産技術分野の研究開発活動を積極的に行っております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は
当セグメントにおける研究開発の目的は、より多くの人に、自然や日常の中で自転車に乗ることで健康的な生活を提案することです。それにより、環境にも人にもやさしい世界になっていくことを目指しております。
そのために、当社が開発のテーマとしてあげているのが、自転車を操作するときのストレスの軽減と自転車に乗る楽しさの追求です。
これまで電気制御の部品を多く展開していますが、単純にハードウエアを進化させるだけでなく、そのハードウエアをどのように動かしたら快適かを考えて、ソフトウエアのあり方も日々進化させています。また、人々の生活がデジタル化している中で、より楽しく快適に自転車に乗っていただけるようなアプリケーションも開発・提供しています。
2024年は、グラベルカテゴリーにおいて、Di2システムの導入及びワイヤレス化したフラッグシップモデルを提供することで、ハイエンド市場を活性化しています。また、E-BIKEおよびライフスタイルバイクカテゴリーにおいて、上位モデルに搭載されているドライブユニットのコンセプトや、ペダリング状態に応じて適切なギアに自動で変速する「AUTOSHIFT」などの機能の下方展開や、「SHIMANO CUES」へのスペック追加、新ブランド「SHIMANO ESSA」の展開により、中級・普及価格帯マーケットの活性化を行っています。
なお、当セグメントにおける研究開発費は
① グラベル市場におきましては、Di2システムを導入した12速モデル「GRX RX825」を発表しました。グラベルライドに待ち構える様々なシチュエーションにおいて、ワイヤレス化したDi2システムにより、正確で信頼性の高いパフォーマンスを提供しています。また、最適化されたSTIレバーにより快適な握り心地を実現しています。
② E-BIKE市場におきましては、新型「EP5」および「E5100」を発表しました。上位モデルの流れを受け継ぐドライブユニットで、最大トルクを向上させながら、通勤からレジャーサイクリングまで快適で静かな走行を実現しています。また、E-TUBE PROJECT Cyclistアプリでカスタマイズ機能を強化し、ユーザー好みのアシスト特性での走行を実現しています。
③ ライフスタイルバイク市場向けには、1x8速のエントリー向けコンポーネント「SHIMANO ESSA」を発表しました。前年に発表した「SHIMANO CUES」に加えて、スポーツサイクリングを楽しみたい方に向けたドライブトレインで、市場の拡大をサポートしています。また、「SHIMANO CUES」にはショートリーチスペックを追加し、手の小さな人でも変速操作がしやすく、サイクリングの楽しみを強化しています。
当セグメントにおける研究開発は、基本性能の向上と新機能の実現を目指すと共に、感性を具現化するテクノロジーを追求しております。
なお、当セグメントにおける研究開発費は
① 「STELLA SW」(ステラSW)
ソルトウォーター用大型スピニングリールのフラッグシップモデルである「STELLA SW」をリリースします。今回のモデルチェンジでは、大径ドラグワッシャーをスプール上部に搭載することでドラグ作動時の耐熱性能を向上した「XX (ダブルエックス) タフドラグ」、ラインを整然と緻密に巻きつけていくことにより、飛距離・キャストフィーリング・ドラグのスムーズさを向上させる「インフィニティループ」、ギア同士が噛みあう接地面積を拡大することで耐久性をアップさせた「インフィニティクロス」などの各種の新機能を搭載します。ソルトウォーターシーンで大物と真っ向から対峙するための性能にさらなる磨きがかかりました。
② 「MGLスプールⅣ」
新製品「ANTARES」や「ALDEBARAN DC」に搭載するスプールです。スプールの形状を逆テーパー構造とすることで糸をバランス良く巻き取ることができます。それによりキャスト時、スプールが高速回転をする際のブレを低減します。キャストフィーリングを大幅に向上させると同時にスプール回転のエネルギーロスを抑え、優れたキャストパフォーマンスに寄与します。
① 「SEPHIA LIMITED」(セフィア リミテッド)
エギ・スッテゲームロッドである「SEPHIA LIMITED」は、次世代カーボン素材M46Xをシマノ独自のブランクスコアテクノロジー「スパイラルXコア」と融合させる事により、しなやかでありながらパワーのある高性能ブランクスを実現しました。また、新設計となる「カーボンシェルグリップ」及び「カーボンモノコックグリップ」の採用による高感度化と操作性向上を実現する事で、アングラーが求める理想形とも言えるロッドに仕上がっています。
② 「インフィニティコネクト」を軸としたロッド機能性向上の取り組み
釣りに求められる要素を突き詰めて開発されたリール、ロッド、ギアのそれぞれが明確な意図のもとにシナジーを生み出すシステマティックプロダクトの設計思想「インフィニティコネクト」。その一翼を担うオフショアキャスティングロッド「OCEA PLUGGER LIMITED」では、Xガイドタッチフリーチタンによるラインのブランクスタッチ軽減や8000~14000番サイズのシマノリールとのマッチングを徹底追求しました。その結果、「インフィニティコネクト」によるシナジーとして、キャスティングの総合性能(飛距離・キャストフィーリング・ライン強度維持率)向上を実現しました。
① ルアー
本来飛距離の出にくいジョイントルアーのボディをコンパクトに折りたたむことで飛行姿勢を安定させ、遠くに飛ばすアーマブースト機構に、これまで折りたたまれることで犠牲にしていた左右に大きくキビキビ首を振るグライドアクションを両立させた新たなアーマブースト機構を開発し、それを搭載した「グラヴィテーター220SF」を2025年にリリースします。キャスト時はこれまで通り深くボディが折りたたまれ、飛行姿勢が安定して飛び、着水と同時にマグネットの力でそのボディの折れ角が抑制され、キビキビとしたグライドアクションを可能にします。
② クーラーボックス
シンプルな構造でありながら、釣り人が求める機能をふんだんに盛り込んだ釣り用クーラー「ユニフリーズ」を2025年にリリースします。ユニシールド構造という新たな蓋開閉機構を開発し、パーツ点数を徹底的に削減しつつ、密閉性の向上、両側からの開閉、上面からの開閉アクセスという釣り用クーラーに求められる機能を盛り込むことを実現しました。これにより、シマノクーラーの機能性をより多くの釣り人に体感いただける製品になっています。
当セグメントでは主にロウイング関連用品等の開発を行っております。
なお、当セグメントにおける研究開発費は