第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「人と自然と未来をつなぐ」を企業活動の本質と定め、世界中の自然環境と、共に歩む全ての人々の美しい未来の実現に向け、小型屋外作業機械、農業用管理機械並びに一般産業用機械の3事業の発展に取り組み、企業価値の最大化を目指し、高い倫理観のもとに企業活動を通じて社会に貢献したいと考えております。

 

(2) 経営環境

①企業構造と市場の状況

当社グループは、生産や販売等の機能別の各事業会社で構成され、各事業会社は当社グループが展開する3事業である小型屋外作業機械、農業用管理機械並びに一般産業用機械に関連しています。

主力事業である小型屋外作業機械は、動力源の小型エンジンを鋳造、加工から組立、検査までの工程を一貫して行うことにより、高効率かつ需要に応じた柔軟な生産体制を実現しています。各事業会社の事業内容については、「第一部(企業情報) 第1(企業の概況) 3(事業の内容)」に記載しております。

なお、当社グループを取り巻く市場状況としては、国内の農業市場において、農業従事者の更なる減少と高齢化により、小型屋外作業機械と農業用管理機械の市場規模の縮小が懸念されます。一方で、林業市場は地球温暖化の抑制という社会的要求の高まりにより森林整備に関する市場拡大が予想されます。海外の小型屋外作業機械は、持続的成長を続ける北米の緑地管理市場の旺盛な消費・サービス需要に支えられ、安定的な成長が期待されます。また、一般産業用機械は、北米市場のインフラ案件の活況に伴い、発電機の需要増加が継続する見通しです。

②競合他社との競争優位性

当社グループが展開する3事業には、それぞれに競合他社が存在します。その中でも主力事業である小型屋外作業機械事業においては、製品の主要構成部品である小型エンジンを自社開発しており、素材の配合研究から自社で行うことで、軽量化・高出力化を実現するとともに、世界各国で厳しさを増す排出ガス規制にも適合してきました。また、電動製品においても、エンジン製品の開発を通じて培った技術力やノウハウを活かし、高出力かつ制御技術に優れた製品を開発しており、高い環境性能と作業性を両立させ、市場ニーズを満たす製品を提供できる点が当社の強みとなっております。更には、グローバルに販売ネットワークを展開しており、製品の販売だけでなく代理店などを対象としてサービススクールを実施するなど、お客様へのアフターサービスが充実している点が当社ブランドの市場での信頼獲得と、競争力の向上に寄与しております。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上および財務上の課題

 当社グループでは、2025年を最終年度とする「中期経営計画2025」に取り組んでおり、国際社会の脱炭素への移行を大きな事業環境の変化と捉えるとともに、更なる成長に向けた機会と考えています。これまで培ってきた環境技術を活かし、社会のGX(グリーン・トランスフォーメーション)に貢献するとともに、市場が抱える社会課題の解決策を提案し続けることで、持続的な成長を実現してまいります。

 

「中期経営計画2025」基本方針

 ・持続的な成長を遂げるための「変革期」と位置付け、前中計から着手した「変革」の取り組みを更に加速させ「スピード実行」で推進します。

 ・既存事業領域における着実な成長と収益性の改善を実現するとともに、未来につながる事業を創出し新たな柱となる事業領域の確立に取り組みます。

 ・ESG経営の実践とやまびこDX戦略の推進により、中長期的な企業価値の向上を目指します。

 

事業戦略

 当社グループは、企業理念と経営目標の実現に向けて以下の事業戦略に基づく諸施策に取り組みます。

①既存事業領域の事業規模拡大

 既存事業領域において、当社の強みである環境対応技術を活かしプロユーザー市場向けに注力した事業活動を継続するとともに、他社とのアライアンスを積極的に推進し、市場が抱える課題の解決に寄与する製品・サービスを提供してまいります。

 

<海外OPE事業>(海外 小型屋外作業機械)

・着実な成長が期待できる欧米市場と成長著しいアジア市場におけるプロユーザー市場に向け、高い作業効率と耐久性を備え、環境規制に適合したエンジン製品やバッテリー製品のラインアップ拡充を進めます。

・欧米市場の一般ユーザー市場では、エンジン製品からバッテリー製品への移行が進行しているため、市場ニーズに合ったバッテリー製品のラインアップ拡充を加速し、一般ユーザー市場での販売拡大を図ります。

 

<農林事業>(国内 小型屋外作業機械・国内 農業用管理機械・海外 農業用管理機械)

・農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」に賛同し、国内農業市場における高い安全性と省人・省力化、環境技術を備えた製品の開発スピードの向上を図ります。

・チェンソーの国内トップシェアメーカーとして、森林整備の社会的要求の高まりに対応した製品を迅速に市場導入するため、他社との協業を積極的に推進するとともに、伐木事業体など異業種との業務提携も視野に入れ日本の林業再興に向けた取り組みを進めます。

 

<産機事業>(国内 一般産業用機械・海外 一般産業用機械)

・環境負荷低減と作業効率の向上を目指し、電動化・ハイブリッド化、ならびに再生可能エネルギーを取り入れた環境配慮型システムの開発を推進します。

・現場管理や関連サービスの作業効率向上に貢献する遠隔監視のシステム開発を進めます。

・北米市場では広域レンタル会社向けにサービス力を強化するとともに、大型ディーゼル発電機の現地生産を開始します。

 

②収益性の改善

 「稼ぐ力」を高めて、持続的な成長を確かにします。

 

<海外OPE事業><農林事業>

 ・中国子会社の清算に伴い実施した国内事業所への生産移管による原価低減を見込むとともに、継続的なコストダウンを推進し、生産拠点の戦略的再配置を行うことで、生産効率の改善に取り組みます。

・新たな業務システムの導入によるDXを活用した米国市場の販売商流の変革により、収益性を向上させます。

 

<産機事業>

・北米における大型ディーゼル発電機の現地生産開始(2025年下期予定)により、各種コストの削減や新たな大手顧客獲得に向けた販売活動を推進します。

 

③新規事業創造への取り組み

 社会のGXを成長の機会と捉え、発電・蓄電システム、CNエネルギー、DX & IoT、ロボットといった新規開発テーマに取り組んでおります。更に、異業種を含むパートナー企業との共同開発を推進し、新たな収益の柱となる事業の創出を目指します。

 

④ESG経営の実践

 事業戦略に加えて、ESG経営を実践し中長期的な企業価値向上に邁進します。事業活動を通じて環境問題や作業現場での就労人口不足などの社会課題の解決に貢献するとともに、ガバナンス体制の深化と情報発信の充実に継続して取り組みます。

 詳細は当社ホームページ内「サステナビリティ」をご覧ください。

 URL:https://www.yamabiko-corp.co.jp/sustainability/

 

<E:環境対応>

・グループ気候変動対応方針を定め、気候変動対応を経営の最重要課題として取り組みます。

・環境情報の開示に加え、GHG排出量の削減目標を設定し、削減策を着実に実行します。

・当社はTCFD提言に基づいた開示を行うほか、ESG評価機関からの評価を踏まえ、更なる改善に努めます。

 

<S:社会>

 経営戦略、組織戦略に基づく人材戦略を立案・実践し、従業員一人一人の能力を最大限に引き出すとともに組織の活性化に繋げ中長期的な企業価値向上を図ってまいります。また、新規事業創出への取り組みに対応するため、社内研修や大学等と連携したリスキリング教育を実施しています。さらに、多様な人材の活用に加え、人材育成、社内環境整備など人的資本投資を継続します。

 

<G:コーポレート・ガバナンス>

 企業価値を持続的に向上させるべくコーポレートガバナンス・コードに沿った強固なガバナンス体制を運用し深化させてまいります。

 詳細は当社ホームページ内「ガバナンスへの取組み」をご覧ください。

 URL:https://www.yamabiko-corp.co.jp/sustainability/activities/governance/

 

⑤やまびこのDX戦略

 事業活動全体を通してデジタル技術を活用することで「革新的な生産性の向上」 「既存ビジネスモデルの変革」 「新規ビジネスの創出」を実現します。また、中長期的な企業価値の向上を目指すべく、DX戦略で掲げた具体的施策を着実に実行します。

 詳細は当社ホームページ内「DX戦略」をご覧ください。

 URL:https://www.yamabiko-corp.co.jp/dx-strategy/

 

 中期経営計画2025の詳細につきましては、当社ホームぺージに掲載しておりますのでそちらをご覧ください。

 URL:https://www.yamabiko-corp.co.jp/ir/management/plan/

 

(4) 目標とする経営指標

 中期経営計画2025期間中は、更なる成長に向けて積極的な人的資本投資や先行開発投資を行うとともに、営業利益率、ROEを経営上の重要指標に設定し、経営効率の向上を推進します。最終年度となる2025年12月期には売上高1,700億円、営業利益率7%を見込んでおり、ROEについては10%以上を数値目標として掲げております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは、自然環境や社会環境の課題解決につながる数多くの製品やサービスを世に送り出してまいりました。当社グループの事業領域は農業や林業、緑地管理からまちづくりの現場に至るまで、人々の生活と密接に関わるものであり、事業の拡大・発展そのものがサステナブルな社会の実現につながると確信しております。

 2023年度からスタートした中期経営計画2025では、脱炭素社会への移行を更なる成長に向けた機会と捉え、当社グループがこれまで培ってきた環境技術により社会のGX(グリーン・トランスフォーメーション)に貢献するとともに市場が抱える社会課題の解決策を提案し続けることで、持続的な成長を目指してまいります。

 当社グループはこれからも「人と自然と未来をつなぐ」という企業理念のもと、世界最高レベルの環境技術と革新的で安全・安心な良く働く機器とサービスで、社会と人々に信頼と感動をもたらし、期待され、豊かな自然と共生する未来創りに貢献し続けてまいります。

 なお、文中の将来に関する事項は、2025年3月28日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループでは、取締役会がグループの経営方針、経営戦略及びグループ会社の経営指導・監督に関わる重要な意思決定を行っております。また、取締役会の意思決定に当たっては代表取締役社長が議長を務める経営戦略会議において十分な審議を行った上で取締役会に付議することにより、適正な意思決定を確保しております。当社のコーポレート・ガバナンス体制は、「第4 提出会社の状況 4(1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 サステナビリティ課題への取り組みについても、経営戦略会議にて審議し取締役会へ付議・報告する体制を確立しております。また、サステナビリティ課題の中でも特に気候変動を重要課題と位置付け、経営戦略会議が検討を委嘱する委員会としてTCFD委員会を設置し、TCFD委員会にてGHG排出量の削減目標を定めるとともに、施策、立案などを取りまとめ、経営戦略会議にて審議し取締役会への付議・報告を行っております。

 

 

(2)リスク管理

 当社グループでは、新たな事業分野への進出の成否や新機種開発の成否等、経営上の意思決定に係るリスクは、事業機会関連リスクとして経営戦略会議がリスク管理をしております。また、適正かつ効率的な業務の遂行を阻害すると考えられるリスクについては、事業阻害リスクとしてコンプライアンス・リスク管理委員会がリスク管理をしております。いずれのリスクについても、経営戦略会議にて審議し、取締役会へ付議・報告され取締役会が監督を行う管理体制を構築しております。なお、当社グループが認識している具体的なリスクについては、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」をご参照ください。

 また、当社グループは、サステナビリティに関するリスクは、企業の中長期的な成長に大きく影響を与えることから、経営上の意思決定に係るリスクとして事業機会関連リスクと位置付けております。その中でも気候変動を経営上の重要な外部環境リスクの一つとして位置づけ、適切に管理しております。具体的には、原則的に3ヶ月に1回開催されるTCFD委員会が主管となって部署横断的に課題と対策を取りまとめ、経営戦略会議にて審議し、取締役会へ付議・報告する体制としております。

 以上のようなリスク管理体制により、サステナビリティへの対応を強化してまいります。

 

〈ガバナンス及びリスク管理〉

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(3)気候変動への取り組み

 当社グループは、気候変動への取り組みを重要な経営課題の一つとして認識しTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しております。今後もTCFD提言のフレームワークに基づいた積極的な情報開示に努めるとともに、事業の発展を通じて持続可能な社会の実現に貢献してまいります。TCFDに基づく開示の詳細は、当社ホームページをご参照ください。(https://www.yamabiko-corp.co.jp/sustainability/tcfd/)

 

   〈気候変動に関する戦略〉

当社グループは、気候変動がグループに与えるリスク・機会とそのインパクトの把握、短期・中期・長期におけるカーボンニュートラル実現に向けた施策立案のためにシナリオ分析を実施し、以下のとおり特定したリスク・機会を当社の戦略に反映しております。なお、分析にあたり、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表した世界の平均気温が産業革命前との比較で4℃上昇するシナリオと、2℃未満に抑えられるシナリオを参照しております。

 

  〈気候関連リスク〉

リスクの
属性

気候関連の事象/
経済・社会の変化

事業への影響

シナリオ影響

(注)1

対象

製品

(注)2

発現時期

(注)3

リスクに対する当社の認識及び対応

2℃

4℃

短期

中期

長期

移行リスク
(政策)

GHG排出量抑制に

関する規制強化

物流コスト及びリードタイムの増加

OPE

農機

産機

 

 

物流において、GHG排出量の少ない輸送手段への移行が求められる。コスト増に関しては積載率向上への取り組みや、物流手段の見直しを実施することで抑制する。また、リードタイムの増加に関して生産計画・物流計画を見直す。

移行リスク(政策)

炭素税の導入

部材調達コスト及び省エネ設備導入に関する投資の増加

OPE

農機

産機

 

炭素税の導入により、低炭素な企業運営が財務面からも求められる。省エネ設備導入にかかる投資額を抑制するために、生産ラインの短縮などに取り組んでいく。また、従来部材の価格が高騰することが予想されるため、部材の調達や設計を見直す。

移行リスク(市場)

石油由来品の忌避

販売機会の減少

OPE

農機

産機

 

 

製品の電化が加速することにより石油由来品の需要低下が生じる。製品の電化やカーボンニュートラル燃料などを活用した製品開発など、環境配慮製品の開発・販売に取り組む。

物理リスク(急性)

異常気象の激甚化

物流や操業の

一時停止

OPE

農機

産機

気候変動に起因して、気象災害がより激甚化することが予想される。そのため、一時的に操業や物流が停止する可能性があるが、BCP対応を行うことによって製品の製造や輸送を滞りなく行えるような体制を構築する。

販売機会の減少

OPE

気候変動によって干ばつ被害がより増加することが考えられる。それによって刈払機などの製品の販売機会が減少する可能性があるが、非干ばつ発生地域への販路拡大を行うことによって干ばつ発生による売上への影響を抑制する。

 

 

〈気候変動における機会〉

機会の属性

気候関連の事象/
経済・社会の変化

事業への影響

シナリオ影響

(注)1

対象
製品

(注)2

発現時期

(注)3

機会に対する当社の対応

2℃

4℃

短期

中期

長期

レジリエンス

異常気象の激甚化

チェンソーなどの管理機器及び発電機などのBCP対応機器の販売機会増加

OPE

産機

適切な時期に在庫を増やすとともに販路の拡大を行い、製品の販売機会の増加と自然災害復旧の促進への貢献に取り組む。
BCP対策としては、可搬型発電機の販売を強化する。また、緊急時にもメンテナンスサービスまで請け負える体制を構築する。

製品及び

サービス

環境対応製品の

市場投入活発化

環境対応製品の販売機会の増加


産機・農機セグメントにおける新規事業の浸透

OPE

農機

産機

 

 

OPE:カーボンニュートラル燃料対応製品の開発、市場投入を行い、電動化製品の拡大を含めてプロモーションすることでエンジン製品におけるシェア拡大に取り組む。
産機:ハイブリッド溶接機やマルチハイブリッド発電システム及び(Yamabiko-LINK)を活用した遠隔監視機能付の製品化ならびにメンテナンスサービス事業を展開する。
農機:省人省力化に寄与する農機製品や有機農業への資機材を開発する。

市場

排ガス規制の強化

排ガス規制対応エンジンの販売機会の

増加

OPE

農機

産機

製品開発体制をより強化するとともに、今後排ガス規制が強化されると見られる地域に対して販路を拡大し、売上の拡大を図る。

(注)1.当社グループへの事業及び財務への影響を総合的に勘案し、大(影響が非常に大きくなることが想定)、

     中(影響がやや大きくなることが想定)、小(影響が軽微であることが想定)の3段階で評価

   2.OPE:チェンソー、刈払機、パワーブロワほか、農機:スピードスプレーヤ、乗用管理機、畦草刈機ほか、

     産機:発電機、溶接機、投光機ほか

   3.短期:5年未満、中期:5年~10年未満、長期:10年以上

 

〈気候変動における指標と目標〉

当社グループは、気候関連リスク・機会を管理するためサプライチェーンを含むGHG排出量を指標としております。また、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指しております。中期的な目標として、2030年までにスコープ1、2(注)のGHG排出量50%削減(2020年度比)を掲げており、環境に配慮した生産設備、再生可能エネルギーの導入など全社を挙げてGHG排出量低減活動に取り組んでまいります。

 また、当社グループGHG排出量の約87%を占める販売した製品使用による排出につきましては、セグメント別に道筋を定めGHG排出量低減に努めてまいります。GHG排出量の実績値及びセグメント別のカーボンニュートラルに向けた取り組みなどの詳細については当社ホームページをご参照ください。

https://www.yamabiko-corp.co.jp/sustainability/tcfd/

(注)スコープ1:化石燃料の使用(直接排出)、スコープ2:購入した電力・熱の使用(間接排出)

GHG排出量 削減目標

目標年/基準年

目標値

2030年(中期)/ 2020年度

スコープ1、2で50%削減を目指す。

2050年(長期)/ 2020年度

サプライチェーン全体のGHG排出量実質ゼロを目指す。

※上記目標値は、当社及び国内子会社を対象としています。

(4)人的資本の活用に関する取り組み

 当社グループは、人的資本の投資こそ今後の中長期的な企業価値向上の鍵を握るものと考え、社員一人ひとりの成長が当社グループの成長であるとの考え方に基づき、様々な取り組みを行っております。

 当社の人的資本の活用に関する取り組みは以下のとおりです。なお、戦略、指標および目標につきましては、当社グループ各社の業容や規模が様々であり、連結全体での記載が困難であることから、当社単体における記載としております。

 

<人材の育成および社内環境整備に関する方針、戦略>

 多様な人材の活用に加え、人材育成・社内環境整備など人的資本投資を継続してまいります。経営戦略・組織戦略に基づく人材戦略を立案・実践し、多様性確保のための女性活躍推進、男性育児休業取得促進等の活動を含め、全ての従業員が活き活きと働ける環境整備に取り組み、従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出すとともに組織の活性化に繋がる中長期的な人材戦略を図ります。

 

①女性活躍推進

 女性活躍推進法に基づいた行動計画を策定し、女性社員の活躍推進に取り組んでおります。女性が働きやすい職場環境の整備、長期就業を促進するための制度の導入、女性社員向けキャリアマインド醸成研修などの女性のキャリア形成支援を行っております。

 

(具体的な取り組み)

・女性社員向け主体的キャリア形成支援による管理職志向の促進

・女性社員の上司に向けたキャリア形成支援研修による意識変革と上司の役割理解の促進

・女性交流会を通じた社内ネットワークの構築

・女性を対象としたメンタリングによる不安や課題の解消支援

・育児を目的とした休暇制度の拡充など柔軟な働き方が可能となる制度整備

・『産休・育児ハンドブック』の作成・配布による関連制度の周知

・ジョブリターン制度の継続活用

・くるみんマーク認定取得(2021年度認定)

・新卒およびキャリア採用において女性採用を積極的に促進

 

②男性の育児休業取得の促進

 当社では、仕事と育児の両立を実現するための支援制度の拡充や職場環境づくりに取り組んでおります。また、男性の育児休業取得促進のため、育児休業制度だけでなく、以下の取り組みを労使一体となり進めております。

 

(具体的な取り組み)

・育児・介護相談窓口の設置(各地区担当窓口と人事部が連携し、育児に関する休暇活用に向けた情報提供体制の構築)

・「男性の育休ハンドブック」の作成・配布による関連制度の理解浸透

・子の行事等のため取得することができる育児目的休暇の導入

・1才に満たない子を養育している場合、最大で稼働日連続10日の休暇を取得することができる配偶者の出産

 休暇制度の導入

・子の看護のため時間単位で取得することができる子の看護休暇(小学3年生まで延長)の導入

・男性の育休体験レポートの社内報等への掲載によるPRと取得奨励

 

③人事・評価制度の継続的改善

 当社では、個人の役割と責任の大きさ、その遂行度合と成果の達成度合に応じた適正な評価と処遇を実現することを目的に2022年度に人事制度を職能資格制度から役割等級制度へ刷新しております。

 また、新たな制度を浸透・定着させるために評価者研修の定期開催や被評価者研修の開催のほか、労使協議会による労使間の意見交換を行い、労使一体となって個々の従業員がモチベーションを高く保ち仕事に向かい、仕事にやりがいと誇りを持って臨む状態の実現を目指しております。

 

④エンゲージメント向上

 労働安全衛生法に基づき例年実施しているストレスチェックに加え、2023年度よりエンゲージメントサーベイを同時に実施しております。ストレスチェックとエンゲージメントサーベイを同時に実施することにより、個人や組織において、メンタルヘルスとエンゲージメントのどちらか一方ではなく、両方をバランスよく対策することを狙いとしています。ストレス反応のほか仕事に対する熱意や姿勢、また、組織に対する一体感・愛着感の状態を把握し、改善への取り組みに繋げております。なお、サーベイ結果については職場ごとの要因分析を行い、組織長に対してフィードバックを行うことにより継続的なフォローを行っております。

 更に、組織全体においては以下の各種施策に取り組み、エンゲージメントの更なる向上を図っております。

 

(具体的な取り組み)

・企業理念の浸透を目的とした経営者との座談会やタウンミーティングの開催

・納涼祭や収穫祭、運動会など従業員親睦行事の開催による一体感の醸成

・独身寮、社員食堂のリフォームをはじめとした福利厚生施設やオフィスのリニューアルによる職場環境の整備

・技術報奨、永年勤続表彰など表彰制度の積極的な運用による自己効力感の向上

・安全衛生活動の全社展開による安全・安心な職場環境の実現

・人事評価の納得性を高めるため評価者研修の定期開催のほか被評価者研修を実施

 

⑤人材教育体系(リスキリング・学び直し教育計画、個人のキャリア形成支援)

 社員の能力を最大限に引き出すための環境を整えており、社員一人ひとりのキャリア自律を支援し、新入社員から管理職まで体系的に教育研修や自己啓発支援を行い、充実した会社生活を目指して努力する人を応援しております。また、新規事業創出への取り組みに対応するため、社内研修や大学等と連携したリスキリング教育を実施しております。

 また、組織全体を俯瞰して課題を洗い出し、対処の一環としてミドルマネジメントの更なる強化に着手いたしました。

 更に、DX戦略に基づきデジタルリテラシー教育を全社で展開し、2024年度は約900名が受講を終了しております。

 なお、当社の教育体系は以下のとおりであります。

 

階層別教育

次世代リーダー育成教育

デジタル人材教育

・新入社員研修

・キャリア採用研修

・新入社員フォローアップ研修

・キャリアマネジメント研修

・女性社員向けキャリアマインド醸成研修

・新任管理職研修

・評価者研修

・ミドルマネジメント強化研修

・通信教育(昇格基準、自己啓発)

・技能検定(国家資格)

・退職金・年金セミナー

・安全衛生教育(Eラーニング含む)

・エグゼクティブガバナンスプログラム

・ビジネススクール

・エグゼクティブコーチングプログラム

・デジタルリテラシー教育

・デジタルアカデミー(注)

選抜型教育

語学教育

・リーダーシップ研修

・QIA教育訓練

・リスキリング教育

・語学通信教育

・海外赴任前研修

・語学スクール補助

・TOEIC社内検定

(注)当社のDXを推進するため、一定期間情報システム部に社内出向し、研修を行うことでデジタル人材の育成を

   図ります。

 

<人的資本における指標と目標>

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①女性活躍推進

 中期経営計画2025においては、本社の管理職に占める女性比率を2025年度に9%以上を目標として設定し、また、新卒・キャリア採用における女性の割合を20%以上を目標として設定し、取り組んでおります。

 

 

2022年12月期

2023年12月期

2024年12月期

2025年12月期

女性管理職割合(本社)

7.1%

7.5%

6.0%

9.0%以上

(注)「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載の数値とは定義が異なり、ここでは本社に限定し、管理職待遇の従業員を対象に集計したものであります。

 

 

2022年12月期

2023年12月期

2024年12月期

2025年12月期

新卒・キャリア採用に
おける女性採用比率

33.3%

11.4%

19.2

20.0%以上

(注)当社は技術系職種の採用の割合が多く、理系女性の求職者数が少ないことから女性採用比率は影響を受けます。

 

②男性の育児休業取得の促進

 中期経営計画2025において育児休業を2週間以上取得する男性社員の割合を70%以上とすることを目標として設定し、男性の育児休業取得の促進の取り組みを進めております。

 

2022年12月期

2023年12月期

2024年12月期

2025年12月期

男性育児休業取得率

50.0%

65.5%

66.7

2週間以上取得/対象者

37.5%

51.7%

63.6

70.0%以上

 

 

 

3【事業等のリスク】

当社グループの財務状況および経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは次のとおりであります。これらは当社グループの全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見できないリスクも存在します。そのようなリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 社会情勢等

当社グループは、全世界において事業を展開しておりますが、国内外の各地域の政治、経済、社会情勢や政策の変化、紛争、テロ等による社会的混乱、投資規制、収益の本国への送金規制、輸出入規制、外国為替規制、税制等を含む各種規制の動向が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。特に、主要市場である日本、米国、欧州における経済状況は事業に大きな影響をもたらします。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期について、合理的に判断することは困難ですが、リスクが顕在化した際にはいち早く対応できるよう引き続き注視してまいります。

(2) 市場環境

当社グループの主要市場である日本および海外各国のグリーンメンテナンス市場、および農・林業や建設・土木・鉄工業に関わり、農業政策や公共投資などの政策や産業構造および民間設備投資動向、その他の需給動向などが大きく変化することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期について、合理的に判断することは困難ですが、リスクが顕在化した際にはいち早く対応できるよう引き続き注視してまいります。

(3) 他社との競合

当社グループの各事業分野においては、新製品の開発、低価格化、アフターサービスの充実などをめぐる他社との競争が激化しており、当社グループが品質、取引条件などで他社に劣位する場合には、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期について、合理的に判断することは困難ですが、当社グループでは各事業分野において継続的に顧客のニーズを汲み取り付加価値の高い新製品開発を行っております。価格競争については、高付加価値製品を供給することで売価を下げることなく顧客満足を獲得してまいります。

(4) 為替相場・金融市場の変動

当社グループの売上の半分以上が米ドルを中心とする外国通貨によるものであるため、外国為替相場の動向、また、金利上昇による支払利息の増加などにより、当社グループの業績へ影響が及ぶ可能性があります。通常は他の通貨に対して円高になれば当社グループの業績にマイナスの影響を及ぼし、円安になればプラスの影響を及ぼします。また、外国為替相場の変動は同一市場において当社グループと外国企業が販売する製品の相対的な価格や、製品の製造に使用する材料のコストに影響を与える可能性があります。これに対し当社グループでは、グローバルに生産拠点を配置して生産を行うなど、このリスクの軽減に努めています。また、当社グループは短期の為替変動の影響を最小にするためヘッジ取引も行っておりますが、為替レート水準の予期せぬ変動は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(5) 原材料・部品調達

当社グループでは安定した原材料・部品の供給確保に努めておりますが、原材料価格が高騰した場合、利益を圧迫し当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、原材料の供給が不安定になった場合、製品の生産が困難になることによる販売機会の逸失などにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期について、合理的に判断することは困難ですが、当社グループでは部品の共通化等によるボリュームディスカウントに加え、仕入れ先の財務面を含めた供給能力に注視し原材料を安定して調達できる環境を整備しております。

(6) 各国の安全・環境規制・気候変動関連等

当社グループの主力製品である小型ガソリンエンジンの排ガス規制を始め、当社グループが製造、販売する製品の安全や環境に関する世界各国の法規制の強化や新たな規制の適用、気候変動の要因とされる温室効果ガスの削減の取組みの強化が実施される場合には、これらの規制等に適合するための開発費用や設備投資などにより相当の費用が増加するほか、当社グループがこれらの規制等を遵守できない場合には当該市場での製品販売ができなくなるなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。しかしながら、一般的に法規制等の新規・改訂には事前のアナウンスがなされるほか、規制導入に際しても経過・段階措置が取られることから、当該リスクの顕在化に対しても十分対応が可能であると認識しております。当社グループではいち早くそれらの法規制等に対応するべく、世界各国の動向を注視するとともに、先を見越した計画的な環境対応技術の研究開発に取り組んでおります。また、TCFD提言に即した活動を推進することにより、迅速に対応できる事業体制を構築しております。

(7) 製造物責任

当社グループでは、製品開発、生産にあたっては安全・安心なものづくりを第一として取り組んでおりますが、製品における欠陥および使用時において予測困難な事象が発生した場合には、企業ブランド価値の毀損や販売量の減少が起こるなど、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期について、合理的に判断することは困難ですが、当社グループでは、常に安全性を第一とした組織風土を醸成しており、製品検査体制の充実、ユーザーによる製品使用時において誤った使用方法をしない様、製品に警告表示をするなどの対応を行っており、問題が発生した際には速やかに市場対応が行われる体制を整備しております。また、万一に備えて製造物責任保険に加入しております。

(8) コンプライアンス

当社グループでは、グループ横断的なコンプライアンス体制を整備しており、コンプライアンス・リスク管理委員会の設置、やまびこコンプライアンスプログラムを策定するなど、法令遵守体制の充実に努めておりますが、法令、社会倫理違反行為の発生など、コンプライアンス上の問題が発生した場合には、監督官庁による処分や、訴訟の発生、社会的信頼の失墜などにより、当社グループの業績に重大な影響が及ぶ可能性があります。

(9) 人材確保

当社グループの継続的な成長には優秀な人材の確保が不可欠ですが、著しい採用環境の悪化や人材流出の増加が継続した場合は、当社グループの人材確保が計画通りに進まず、将来の成長に影響が及び、中・長期的に当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。国内では少子化が進展しており、将来的に人材の確保が困難になることが予想されるため、当社グループでは新卒採用だけでなく、専門性の高い人材の中途採用の強化を進めています。また、結婚や育児、介護等の理由により退職した人材を再度雇用する「ジョブ・リターン制度」の採用など多様な働き方に対応できる仕組みの整備にも努めております。さらに、役割・成果をベースとした人事制度への転換を図るべく人事制度を改定し、人・組織の活性化に資する人事制度の構築を進めております。

(10) 気象・自然災害・感染症等

冷害、台風、洪水等々の気象の影響により国内農作物に大規模な被害がもたらされた場合は、国内農家の収入の減少により農家の購買力が減衰することがあり、また、国内、海外とも、干ばつなどにより植物の生長が著しく妨げられた場合は、当社グループの主力製品である刈払機などの需要低下につながるなど、異常気象により当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

また、当社グループの生産拠点が自然災害・感染症の流行などにより直接損害を被った場合や当社グループが直接の損害を受けなくとも、交通網や情報網、電力供給やサプライチェーンの生産などが長期に遮断される場合には、当社グループの生産活動などが停滞し、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期について、合理的に判断することは困難ですが、当社グループでは、災害発生時の直接的な被害を最小限に抑えるため、定期的に設備点検や避難訓練を実施しております。また、BCP(事業継続計画)を作成し、被災・感染症発生時にも重要な事業が継続できる体制整備に努めております。

(11) 情報セキュリティ・知的財産等

当社グループでは事業活動において、顧客情報・個人情報等に接することがあり、また営業上・技術上の機密情報を保有しています。これら各種情報の取り扱い、機密保持には細心の注意を払っており、不正なアクセス、改ざん、破壊、漏洩、紛失等から守るため、管理体制を構築すると共に、合理的な技術的対策を実施するなど、適切な安全措置を講じていますが、近年、手口が高度化・巧妙化しているサイバー攻撃等により情報漏洩等の事故が発生した場合には、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

また、知的財産権については、第三者による不正利用等による侵害あるいは訴追等が発生した場合には、法的責任や賠償責任、訴訟などによる支払い義務の発生のほか、企業ブランド価値の毀損により当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。当社グループでは、秘密保護のための管理体制の構築に加え、従業員に対しても情報セキュリティ教育を定期的に実施してリスクの未然防止に努めております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における当社グループを取り巻く市場環境につきましては、米国経済は良好な所得環境が個人消費を下支えし、堅調に推移しました。欧州は国による違いはあるものの、インフレの緩和により持ち直しの動きが見られましたが、本格回復には至りませんでした。また、国内においても、堅調な企業収益を背景に景気の緩やかな回復が継続しました。

このような環境の下、当社グループの主力である海外小型屋外作業機械(OPE: Outdoor Power Equipment)は、北米市場で実施したテレビ広告などのプロモーション効果に加え、良好な天候が続く市場環境に支えられ、ホームセンター向けを中心に好調に推移しました。また、9月には当社子会社であるエコー・インコーポレイテッドが、販売代理店である孫会社を吸収合併し、新たな業務システムの導入によるDXを活用した販売業務の効率化と人員の最適化を図るとともに、ユーザーニーズの迅速な把握による販売機会の創出に着手しました。さらに、欧州市場につきましても、新たに開発したパターン走行可能なロボット芝刈機の販売が好調に推移しました。

国内については、米価や農作物価格の上昇を背景に農業従事者の購買意欲に回復の兆しが見え始めたことに加え、長引く残暑が草刈りシーズンを長期化させるなか、新製品導入効果も相まって刈払機の販売が伸長しました。

以上の結果、当連結会計年度における当社グループ連結業績は、次のとおりとなりました。

ア.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ212億17百万円増加し、1,557億79百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ15億50百万円増加し、484億25百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ196億66百万円増加し、1,073億54百万円となりました。

イ.経営成績

当連結会計年度の経営成績は、売上高1,648億38百万円(前期比8.9%増)、営業利益196億37百万円(同38.0%増)、経常利益208億99百万円(同48.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は158億89百万円(同74.7%増)となりました。

セグメント別の状況につきましては次のとおりであります。

小型屋外作業機械の売上高は、1,214億18百万円(同12.4%増)となりました。

農業用管理機械の売上高は、246億83百万円(同3.4%増)となりました。

一般産業用機械の売上高は、166億76百万円(同3.6%減)となりました。

その他の売上高は、20億61百万円(同8.2%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動によるキャッシュ・フローが140億33百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローが34億32百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが75億70百万円の支出となりました。その結果、当連結会計年度末の資金残高は157億69百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益209億84百万円、減価償却費41億64百万円、売上債権の増加額25億18百万円、仕入債務の減少額23億21百万円、棚卸資産の増加額16億48百万円、法人税等の支払額33億85百万円等により140億33百万円の収入(前連結会計年度は192億55百万円の収入)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出38億52百万円等により34億32百万円の支出(前連結会計年度は36億46百万円の支出)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純減少額33億78百万円、配当金の支払額28億57百万円等により75億70百万円の支出(前連結会計年度は179億58百万円の支出)となりました。

③生産、受注及び販売の実績

ア.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

小型屋外作業機械

114,917

116.0

農業用管理機械

12,051

92.3

一般産業用機械

13,421

116.7

 報告セグメント計

140,391

113.6

その他

602

108.7

合計

140,993

113.6

 (注)金額は標準販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

イ.受注実績

当社及び連結子会社は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

ウ.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

小型屋外作業機械

121,418

112.4

農業用管理機械

24,683

103.4

一般産業用機械

16,676

96.4

 報告セグメント計

162,777

109.1

その他

2,061

91.8

合計

164,838

108.9

 (注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

THE HOME DEPOT INCORPORATED

28,489

18.8

36,906

22.4

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は1,557億79百万円となり、前連結会計年度末に比べて212億17百万円増加しました。その主な要因は、商品及び製品の増加51億78百万円、売掛金の増加45億48百万円、現金及び預金の増加33億68百万円、リース資産の増加10億3百万円等によるものであります。

負債合計は484億25百万円となり、前連結会計年度末に比べて15億50百万円増加しました。その主な要因は、電子記録債務の減少43億2百万円、借入金の減少32億60百万円、支払手形及び買掛金の増加31億76百万円、未払法人税等の増加26億80百万円、未払金の増加12億39百万円、リース債務の増加10億9百万円等によるものであります。

純資産額は1,073億54百万円となり、前連結会計年度末に比べて196億66百万円増加しました。その主な要因は、利益剰余金の増加130億24百万円、為替換算調整勘定の増加50億48百万円、退職給付に係る調整累計額の増加15億41百万円等によるものであります。

b.経営成績

 

2023年12月期

2024年12月期

増減額

増減率

 

百万円

百万円

百万円

売上高

 

 

151,400

164,838

13,438

8.9

 

国内

41,029

42,805

1,775

4.3

 

海外

110,370

122,033

11,662

10.6

 

 

米州

90,500

103,058

12,558

13.9

 

 

その他海外

19,870

18,974

△895

△4.5

営業利益

14,230

19,637

5,406

38.0

経常利益

14,066

20,899

6,832

48.6

親会社株主に帰属する当期純利益

9,097

15,889

6,792

74.7

[売上高]

 海外は、主力の小型屋外作業機械において、北米市場で実施したテレビ広告などのプロモーション効果や良好な天候を背景にホームセンター向けを中心に伸長したほか、欧州市場において新型ロボット芝刈機の販売が好調でした。また、円安の影響もあり、海外売上高は前年同期比10.6%増の1,220億円となりました。

 国内は、農業用管理機械における草刈り関連製品の伸長に加え、小型屋外作業機械においても新製品効果などにより、刈払機の販売が増加しました。その結果、国内売上高は前年同期比4.3%増の428億円となり、当連結会計年度の売上高は前年同期比8.9%増の1,648億円となりました。

 

[損 益]

 営業利益は、企業価値向上につながる人的資本投資などが売上原価や販管費の増加を招いたものの、生産効率の改善を目的とした中国生産子会社の清算効果と継続的な原価低減活動、国内外での価格改定効果、さらには円安の影響もあり、前年同期比38.0%増の196億円となりました。経常利益は、円安により為替差益(約12億円)が発生したことで、48.6%増の208億円となりました。それに伴い、親会社株主に帰属する当期純利益も74.7%増の158億円となり、いずれも過去最高益となりました。

 

[セグメント別]

① 小型屋外作業機械

 

2023年12月期

2024年12月期

増減額

増減率

 

百万円

百万円

百万円

売上高

107,978

121,418

13,439

12.4

 

国内

13,942

14,108

166

1.2

 

海外

94,036

107,310

13,273

14.1

国内:草刈りシーズンの長期化が続くなかで、新機構(Anti-Vibration System)を採用した刈払機の新製品が好調に推移したことで、増収となりました。

海外:欧州市場は、年央までの代理店の在庫調整の影響を受けて減収となったものの、新たに開発したパターン走行可能なロボット芝刈機が伸長しました。北米市場においては、バッテリー製品におけるラインアップの充実と、エンジン製品との相乗効果を狙った販売促進策が奏功したことなどもあり、ホームセンター向けを中心に増収となりました。

② 農業用管理機械

 

2023年12月期

2024年12月期

増減額

増減率

 

百万円

百万円

百万円

売上高

23,878

24,683

804

3.4

 

国内

14,989

16,753

1,763

11.8

 

海外

8,888

7,929

△959

△10.8

国内:草刈りシーズンの長期化により草刈り作業の省力化に寄与する製品の販売が増加したことに加え、米価や農作物価格の上昇を背景に農業従事者の設備投資意欲が高まったことも影響し、増収となりました。

海外:北米市場において穀物市況下落の影響を受けたことに加え、高い金利水準を背景に一部販売店に在庫圧縮を図る動きが見られたことで減収となりました。

③ 一般産業用機械

 

2023年12月期

2024年12月期

増減額

増減率

 

百万円

百万円

百万円

売上高

17,296

16,676

△620

△3.6

 

国内

9,851

9,884

32

0.3

 

海外

7,445

6,792

△653

△8.8

国内:好調な建設工事需要を背景にディーゼル溶接機の販売が好調に推移したものの、ディーゼル発電機において発生した一部製品の部品納入遅れによる影響が継続したことで前年並みとなりました。

海外:北米市場において年初に発生した製品改修の影響に加え、当初予定した販売体制の立ち上げに時間を要したことで拡販が遅れ、減収となりました。

④ その他

 

2023年12月期

2024年12月期

増減額

増減率

 

百万円

百万円

百万円

売上高

2,246

2,061

△184

△8.2

主要3事業以外の売上高は、主要セグメントに含まれない生産子会社の売上高や商品等で構成されています。

なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

ア.キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

イ.キャッシュ・フローの関連指標

 

2023年12月期

2024年12月期

自己資本比率(%)

65.2

68.9

時価ベースの自己資本比率(%)

46.0

67.2

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(倍)

0.8

0.9

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

29.4

39.6

(注)自己資本比率:自己資本/総資産

   時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

   キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

   インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値によって算出しております。

※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

※ 営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

ウ.資本の財源及び資金の流動性

a.財務戦略の基本的な考え方

当社グループは、資本の効率性の向上、バランスシートの健全性の向上を企業価値向上のための財務戦略の基本方針としております。

資本の効率性の向上については、管理会計の発展を通して、収益性及び資産の回転率と効率性の向上を図ることで、中長期的に資本コストを上回るROEの実現を目指します。

また、現在のネットD/Eレシオの水準を維持し、経済環境の変化に備えるための十分な手元流動性の確保を図ることで、バランスシートの健全性の向上を目指します。

b.経営資源の配分に関する考え方

当社グループは、安定的な経営及び不測の事態に対応可能な手元現預金の水準について、常に検証を実施しております。必要な手元現預金水準を超える分については、追加的に配分可能な経営資源と認識し、企業価値向上に資する経営資源の配分に努めます。

追加的に配分可能な経営資源のうち、特に株主還元を重点施策とし、連結業績及び配当性向を勘案した安定的な配当を実施してまいります。

c.資金需要の主な内容

当社グループの資金需要のうち主なものは、製品の製造に係る原材料仕入、人件費、販売費及び一般管理費等の運転資金であります。

戦略的投資を目的とした資金需要は、新製品の開発・製造に係る設備投資、研究開発投資及びM&A投資であります。

d.資金調達

当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的かつ機動的に確保するため、内部資金及び外部資金を有効に活用しております。

金融機関からの資金調達については、運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行9行と当座貸越契約を締結しております。

また、資金効率の向上を図るため、当社及び国内子会社において、キャッシュ・マネジメント・システムを導入しております。

なお、手元流動性を確保することを目的に取引銀行とコミットメントライン契約を締結しております。

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

  当社グループは「中期経営計画2025」を策定し、最終年度である2025年12月期に売上高1,700億円、営業利益率7%およびROE 10%以上を目標指標としております。中期経営計画の2年目を迎えた2024年12月期は、売上高1,648億円、営業利益率11.9%、ROE 16.3%となり、前年に引き続き、営業利益率とROEは中期経営計画最終年度の目標指標を超える結果となりました。

 

指標

2024年12月期 実績

2025年12月期 目標

売上高

1,648億円

1,700億円

営業利益率

11.9%

7%

ROE

16.3%

10%

 

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、「世界最高の製品とサービスを提供し続けること」を方針として、国内外のお客様のニーズにあった製品の迅速な開発及び提供を目指す体制を構築し、効率的な研究開発を進めております。

 当連結会計年度の研究開発費は総額5,946百万円であります。このうち、報告セグメントに含まれない「その他」の研究開発費は11百万円、セグメントをまたぐ全社共通費は1,722百万円であります。

 当社では、開発部門のさらなる効率化と、一貫した指示命令系統および役割・責任の明確化を目的とし、開発組織を「製品開発本部」と「技術推進本部」の2本部体制とし、研究開発を推進しております。

「製品開発本部」は、短期・中期的な製品開発を主導する組織として、「技術推進本部」は、製品開発サポート、中長期的な商品戦略、技術研究開発を実行する組織としてそれぞれ活動しております。両本部は相互に連携し、効果的な研究開発を実施しております。

 また、2024年1月には、開発部門の新たな組織として「エネルギーソリューション推進室」を社長直下組織に設立し、カーボンニュートラル社会の実現に向け、再生可能エネルギーを活用した環境配慮型発電システムや、新たなエネルギー活用電源システムによる電力ビジネスの事業化展開を加速させております。これらの取り組みを通じて、中長期における成長ドライバーの確立と、サステナブル経営への貢献を目指しております。

 

(1)小型屋外作業機械

 小型屋外作業機械の分野では、国内外の排出ガス規制への対応を効率的に推進するために、エンジンプラットフォームの適正化を進めるとともに、エンジン製品および電動製品において、モジュラー設計を意図した製品開発コンセプトを立案し、効率的な開発プロセスの実現に取り組んでおります。また、対象機種の製品企画から仕様廃止のプロセス、すなわち製品ライフサイクルプロセスを適正にマネジメントする仕組みを定着させ、既存製品ラインアップの統廃合を合理的に進めています。

 上記取り組みに加え、お客様に魅力を感じて頂けるよう製品力の向上を図り、2024年にはヘッジトリマー、ブロワー、コンクリートカッターなどの電動製品ラインナップを更に拡充し、エンジン製品においても、国内市場向けに、独自の防振装置を搭載した刈払機シリーズ、大型プロ向けチェンソー、大型背負いブロワー、海外向けには、市場規模の大きい低価格帯刈払機シリーズをリリースしました。

 さらに、将来に向けた技術開発として、カーボンニュートラル燃料の実証試験に着手するとともに、小型2ストロークエンジンの特長を活かした軽量・コンパクトな電源供給ユニットのフィジビリティスタディを実施しております。

 

当連結会計年度における研究開発費は、3,067百万円であります。

 

(2)農業用管理機械

 農業用管理機械の分野では、主力製品である果樹向けスピードスプレーヤをベースに、鶏舎消毒作業用スプレーヤ2機種(SSVH5020FC/P、SSC434P)を2024年に販売開始し、新規市場の開拓を進めております。東北地区を中心に新たな顧客となる養鶏業者様に好評を得ており、今後は全国展開を予定しております。

 今後も機能面でユーザーの皆様へ訴求できる製品の開発を目指すと共に、安全・安心な農業用管理機械の提供に向けた取り組みを継続してまいります。さらに、カーボンニュートラルへの貢献を目指すと同時に、スマートで効率的な農業用管理機械の開発にも積極的に取り組んでまいります。

 

 当連結会計年度における研究開発費は、496百万円であります。

 

(3)一般産業用機械

 一般産業用機械の分野では、IoT技術の促進、カーボンニュートラル対応、および付加価値の高い製品の開発を推進しております。

 2024年度の主な実績として、カーボンニュートラルに貢献するバイオ燃料(RD:欧州規格EN15940準拠)対応のディーゼル発電機およびディーゼル溶接機19機種の発表を行いました。また、iLabo(株)との共同研究により開発した水素エンジン発電機にて「フォーミュラーE 2024 Tokyo R-Prix」イベント会場のフードトラック10台に対し電力供給を行う実証検証を実施しました。

 さらに「エネルギーソリューション推進室」主導のもと、再生可能エネルギーを活用した環境配慮型発電システムの開発を推進し、2024年度は2件の実証実験を開始しております。

 新製品開発においては、付加価値の高い国内/海外向けディーゼル溶接機の市場投入を順次実施しています。

今後も再生可能エネルギーを活用した環境配慮型発電システムや、お客様のニーズにあった付加価値の高い製品開発を進めてまいります。

 

 当連結会計年度における研究開発費の金額は、649百万円であります。