第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)経営方針

〔顧客中心主義〕

 創業以来コンピュータの進歩と共に歩んできました当社では、コンピュータ用帳票の企画、設計、製造、納入までの一貫生産を中心に、システム開発から高速漢字プリンタによるデータ出力、メーリングサービスに至るまでお客様の多種多様なニーズに最新の設備と技術を駆使し迅速、柔軟にかつ責任をもって対応してまいりました。私たちが掲げてまいりましたお客様本位の姿勢は、ときに営業展開に、また機械設備にと、情報化社会の高度化とともに進化してまいりました。これからもお客様に最適な製品、サービスを“光のごとく速やかに”ご提供し、お客様の良きパートナーとしてお役に立てるよう全社一丸となって努力してまいります。

〔収益力の安定強化〕

 当社の強みである顧客ニーズへのきめ細かな対応と、顧客ニーズを先取する複合的な提案力を駆使し新規ユーザーの開拓と、既存ユーザーへの新たなニーズ発掘拡大に努め売上の増強を図り、また生産面においては常に原価率の低減と高品質な製品づくりを最大目標とし、効率性の向上を追求しつつ高収益体質の強固な企業基盤の構築により企業価値の持続的向上をめざしております。

〔社会との調和を重視〕

 私達は公正で透明性の高い経営により、社会と調和し、信頼される企業として努力を続けてまいりました。世界的に関心の高まりがある環境保全管理など、ESGないしSDGsに関する事項の詳細は後記2.サステナビリティに関する考え方及び取組みにあるとおりです。

 ことに情報産業に携わる企業として、情報のセキュリティは不可欠であります。当社が重点施策として取り組んでいるデータ出力業務については、個人情報の保護管理は極めて重要な問題と認識し万全の対処をしております。認定取得済のプライバシーマーク、認証取得済のISO9001、ISO14001等の改善に取り組んでいるのもそれらの一環であります。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略等

 当社は「単一セグメント」の中の製品分類として「ビジネスフォーム」「一般帳票類」「データプリント及び関連加工」「サプライ商品」としていましたが、当事業年度より「印刷関連」「DPP」「WEB」「BPO」の4種類に分類しました。これまでの主力商品でありペーパーレス化が避けられない「印刷関連」「DPP」で一段の効率化に取り組む一方で、お客様のDXの動きに合わせた「WEB」「BPO」を重点分野として顧客ニーズを吸収します。その目的のため、生産体制の抜本的な見直しを行い、現在老朽化した高尾工場の機能を他拠点に順次分散し、跡地には、重点分野に対する設備投資として、新しい機能を備えた拠点の設置を検討します。

 「印刷関連」においては、ビジネスフォーム、一般帳票の製造は工場再編に伴い集約し、これまで印刷機で製造していた製品を環境・省電力化の観点からデジタルプリンターへ移行します。また、従来の印刷オペレーターは今後プリンターなどの技術を身に付けるため、リスキリングを適宜実施します。

 「DPP」においては、業務効率化や人手不足、コスト削減などの観点から引き続きアウトソーシング需要があると予測されるため、更なる強化を目指します。また、パーソナライズな製品・サービスにより、お客様に最適なソリューションを提供します。このほか、近年の異常気象・災害などを考慮し、BCP/BCMをより一層強化します。

 「WEB」においては、単なる電子化ではなく、製品の提供後も様々なサービスを提供し続け、継続的な収益を得るリカーリングビジネスを確立します。また、ITを中心とした組織体制を確立し、WEBシステム開発、運用、保守、データベース及びサーバの構築まで確立します。このほか、郵便料金値上げなどの制度改正を考慮し、お客様のDXを実現します。

 「BPO」においては、パートナー企業との更なる関係強化を図り、提供するサービスに厚みを増すことで総合的なソリューション型ビジネスモデルを展開します。また、電子帳簿保存法に向けた取り組みとして、現在の業務の電子化だけでなく、過去の資料等も電子化(スキャニング)するサービスを提供します。さらに、AI機能を充実させ業務効率化を図ると共に、人と人との繋がりも注視し、共創するリアルな伴走型支援サービスを目指します。

 なお、2024年2月16日に中期経営計画を公表いたしており、その第一に、「新しい製品分類による重点分野の事業拡大」を掲げております。

 

(3)目標とする経営指標

 企業価値を増大させていくためには、利益を継続的に維持していくことが重要と考えております。そのため、自己資本当期純利益率(ROE)と売上高経常利益率(ROS)を重視しており、資本の効率的な運用と収益性の向上に努めております。
 当面の2024年から2026年は、当社が飛躍するための基礎固めの時期と位置付け、これまでに蓄えた資本を有効に活用し、初年度である2024年から人的資本への投資と設備投資を積極的に行います。2026年までの3年間で、重点分野の事業拡大に向けた基礎を築き、環境に配慮した事業を展開しながら人的資本の充実を実現し、情報開示の強化とあわせ、体制を盤石なものとします。そのため、経営指標としては、ROE7%以上、ROS10%以上、2026年度までにPBR1倍を目標として取組んでまいります。

 

(4)経営環境及び優先的に対処すべき事業上、財務上の課題

 我が国では、価格転嫁の進展等により企業業績は堅調な推移が見込まれ、省力化・脱炭素対応をはじめとする企業の設備投資の継続や、前年に続き上昇が見込まれる賃金水準の改善を背景とした個人消費の回復により、内需主導で引き続き景気が緩やかに回復していくことが想定されます。一方で、ロシア・ウクライナの戦争やイスラエル・パレスチナの紛争は未だ終息が見えず、また、米国の通商政策の動向や米中貿易摩擦の再燃懸念など、海外情勢は予断を許さず、国内景気も下振れリスクに依然さらされています。

 フォーム印刷業界におきましては、デジタル化・ペーパレス化の流れが一層加速し、引き続き印刷需要の減少が見込まれる中、原材料のコスト増や人的資本の充実にも対応すべく価格転嫁に取り組むことや、ビジネスフォームの製造で培った技術・ノウハウを活かし、世の中のDX推進の流れに則した新たなビジネスを確立していくことが益々重要となっていくものと思われます。

 このような情勢の中、当社は、フォーム印刷に加え新たな事業の柱を構築すべく、営業面におきましては、ビジネスフォームと情報処理の技術を総合的に組み合わせた新しいサービスを生み出し、顧客ニーズの変化に迅速に対応した、包括的かつ具体的なソリューション提案を積極的に進めてまいります。また、顧客企業の業務改革に伴うアウトソーシングの動きを新たなビジネスチャンスと捉え、自らの業態変革にも一層の拍車をかけ、事業の拡大に取り組んでいくことが極めて重要と考えております。

 生産面におきましては、生産拠点の機能集約・見直し及び人員・設備の効率的再配置、印刷機からプリンターへのシフト等による生産性の向上、新たな事業の柱の構築に向けた設備・人的資本投資により、新しいサービスの提供力増強を目指すとともに、原価率のさらなる低減にも努めてまいります。また、内部統制やISO活動、個人情報保護活動に一層注力するとともに、法令遵守やセキュリティ・環境・女性活躍推進・働き方改革といった企業の社会的責任、さらにはSDGsへの取組みを強化してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 サステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業

年度末現在において当社が判断したものであります。

 

当社は、創業の精神と経営理念のもと、多様化し変化していくビジネスメディアにおいて、必要なものを、必要なときに、必要なかたちでお客さまのニーズに合わせた革新的で最適なサービスを提供してまいりました。事業で培ってきた技術や知識を活かし、デジタルソリューションなどの社会的に有用な財・サービスを開発・提供することで、気候変動に伴い発生している様々な地球環境問題や、貧困・格差等の人権に関わる問題などの社会課題解決に寄与し、公正かつ透明性の高い経営を実現することが真のサステナビリティ経営と捉え推進しております。

 

(1)ガバナンス及びリスク管理

≪ガバナンス≫

 当社は、「コーポレートガバナンス基本方針」に基づき、継続的で当社のESG経営に相応しい活動を展開するための体制の整備・強化を進めてまいりました。2022年6月にサステナビリティ委員会を新設し、まず初めに人的資本に関する施策をスタートしました。2023年1月にサステナビリティ委員会を引き継ぐかたちで経営企画室を新設、代表取締役社長の直轄部門として設置し、専務取締役管理本部長を室長、各部門を統括する取締役・執行役員を経営企画室メンバーの主軸とすることで迅速かつ柔軟な意思決定を行っております。取締役会は、経営企画室より報告を受け、審議・監督を行うガバナンス体制を構築しています。

≪リスク管理≫

 年1回開催する取締役や執行役員、本部長等からなるサステナビリティに関する方針会議にて、当該年度の当社における方針や重要課題(マテリアリティ)の特定、総合的な施策の構想について協議・決議しております。協議・決議された内容については、経営企画室が実行計画の策定及び四半期ごとの定例会議にて進捗のモニタリングを行い、実行計画に基づいて各部門及び環境・品質・セキュリティに関する各委員会が施策を実行します。

取締役会は、サステナビリティに関する方針会議にて協議・決議された内容や実行計画等について、経営企画室より報告を受け、審議・監督を行っております。

 

(2)戦略

 当社は以下のとおり重要課題(マテリアリティ)を特定し、リスクと機会を整理したうえでサステナビリティ経営に取り組みます。

重要課題

(マテリアリティ)

リスク

機会

環境に配慮した

事業展開

重点分野の事業拡大

・ペーパーレス化等の影響による

印刷事業の縮小と新規ビジネス

機会の逸失

・原材料費、燃料費の上昇による

仕入原価の高騰

・デジタルソリューションの充実

によるビジネス機会の拡充

・適正な価格転嫁による事業規模

の拡大

カーボンニュートラルの

実現に向けた施策

・異常気象等に伴う事業活動停止

と損害の発生

・需要予測の難易度の高まりと

既存ビジネスモデルの陳腐化

・社会からの信用低下と企業価値

の低下

・BCM/BCPの整備による競争力

の向上

・DX推進の気運に乗った新規

ビジネスモデルの確立

・社会からの信用向上と企業価値

の向上

生産体制の再構築

・労働生産性の低下による産業と

事業規模の縮小

・品質と生産性の向上による収益

性の向上と産業の活性化

人的資本の

充実に向けた

施策の推進

人事制度改革・人材育成

・優秀な人材の流出

・モチベーションの低下による

生産性の低下

・生産年齢人口の減少

・優秀な人材の確保

・モチベーションの向上による

生産性の向上

・労働力人口の増加

ダイバーシティ・

エクイティ&

インクルージョン

・優秀な人材の流出

・イノベーションの停滞

・社会からの信用低下と企業価値

の低下

・消費者ニーズ、消費者行動の

多様化

・優秀な人材の確保

・イノベーションの創出

・社会からの信用向上と企業価値

の向上

・パーソナライズ製品の提供に

よる競争力の向上

健康経営の推進

・優秀な人材の流出

・モチベーションの低下による

生産性の低下

・社会からの信用低下と企業価値

の低下

・優秀な人材の確保

・モチベーションの向上による

生産性の向上

・社会からの信用向上と企業価値

の向上

 

●環境に配慮した事業展開

 当社は、情報を伝えるための書式・フォーマットであるビジネスフォーム印刷を主力事業として創業いたしました。時代の移り変わりと共に情報を伝える方法は変化し、それにあわせて様々なソリューションを提供してまいりましたが、常にその根幹にあるものは情報や想いを「伝える」という使命です。

 当社の原点である印刷を大切にしながらも、時代やシチュエーションにあわせた最適な方法を提供することが当社のサステナビリティに繋がると考えております。DXが推進される社会の中でデジタルソリューションを提供し、ペーパーレスに対応する一方、紙やインクなどの資材についても必要に応じて持続的に活用していくため、原料である森林の保全等に引き続き留意していきます。

 調達・供給の両面において、環境に配慮した製品サービスの提供を行うことで、社会のエシカル消費に向けた取り組みを強化することにより、社会に貢献します。

 

●人的資本の充実に向けた施策の推進

 2024年にメンバーシップ型人事制度の長所を残しつつジョブ型人事制度の要素を取り入れた、新人事制度への移行を完了しました。制度を活用することで従業員のインセンティブを高め、若年層の自発的な成長及びキャリア層の自律的な貢献を促します。併せて、中期経営計画にて定めた重点分野に係る教育研修の継続的拡充やキャリア採用を、より一層強力に推進します。また、フレックス制度の活用等の働き方改革、育児休業の取得促進等の子育て支援を含む「健康経営」に引き続き取り組み、従業員の幸福(ウェルビーイング)の実現を目指します。

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 具体的な取り組みとして、2023年には評価制度の刷新を行いました。2024年には等級・報酬制度の見直しを行い新人事制度への移行を完了しました。教育研修の拡充についても、当社のサステナブル経営を支える次世代の成長と定着・活躍は特に注力すべき課題として、新入社員研修の充実や、組織開発を意識したマネジメント層のスキル向上・強化に向けた研修を実施しております。

 

(3)指標及び目標

●環境に配慮した事業展開

 当社は、以下の具体的な施策により、カーボンニュートラルの実現を含む、社会課題の解決に寄与する取り組みを強化・推進します。

 ・デジタルソリューションの充実と促進

 ・新生産拠点の設置を含めた生産体制の再編

 ・生産性向上に向けた印刷からデジタルプリントへの切替促進

 ・FSCⓇ 認証紙等の利用拡大・拡販

 ・PCや関連機器の整備に併せたCO2オフセット・サービスの利用

 ・グリーン電力証書制度の活用

 太陽光・風力・水力・バイオマス・地熱などの再生可能エネルギーから発電されるグリーン電力を活用することで、より環境に配慮した事業活動に移行します。2027年までに当社生産4拠点の使用電力量のうち、25%をグリーン電力による生産へ切り替えることを目指します。

 ・ユニバーサルデザインの認証取得支援

 

●人的資本の充実に向けた施策の推進

 当社は、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、企業の持続的な成長を確保する上での強みとなり得るとの認識に立ち、社内における女性の活躍促進を含む多様性の確保を推進しています。多様性の確保については、能力や適性など総合的に判断する管理職登用制度により、性別・国籍や採用ルートによらず登用しております。2023年は管理職に占める女性労働者の割合は0%でしたが、2026年までに10%以上とすることを目指した結果2024年に12.2%を達成しました。今後は2026年までに15%を目指し、積極的な機会の創出と登用を行います。

 また、育児休業について、女性の取得率は該当者なしの年度を除き、当社WEBサイトへのデータ開示時点より毎年100%を達成し、さらにその後の復職率も100%を継続しております。男性の取得率については長年0%でありましたが、社内においての働きかけや理解の促進が功を奏し、2022年33%、2023年20%、2024年50%と取得実績を継続しており、2022年から2024年までの平均が33%となりました。今後は、毎年取得率50%以上の継続を目指します。

 人的資本の充実に向け、経営戦略の実現を牽引する強みや個性を持つ人材採用に加え、属性や価値観等によらず多様な人材が活躍できる環境の整備を進めます。ダイバーシティ推進としてフレックスタイム制度等の働き方改革や、取引先管理や数値管理の運用変更による組織の在り方を再考することで、様々な従業員が働きがいをもって活躍できるよう、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンに対する当社の目指すべき企業文化の構築と企業風土の醸成を目指し、今後もより一層取り組みます。

 

3【事業等のリスク】

 投資者の判断に重要な影響を及ぼす主な事項は、以下のようなものがあります。なお下記におけるリスク項目は、全てのリスクを網羅したものではありません。また、本文中の将来に関する事項は当事業年度末現在において判断したものであります。

(1)景気動向による影響

 当社は官公庁、証券、金融、生損保、一般事業会社等幅広い業種にわたり多くの顧客との取引を行っております。国内景気の変動、消費動向やそれらに伴う顧客サイドのビジネス環境により、受注量の減少や受注単価の低下等、業績に影響が生じる可能性があります。

 

(2)ビジネスフォーム市場変化の影響

 コンピュータ用事務帳票類等の従来型のビジネスフォーム市場は、デジタル化・ネット化が進む中で、縮小傾向にあります。当社の売上高においてデータ出力関連売上高の比率が高まっているとはいえ、ビジネスフォームはまだ主要部分を占めており、その市場変化への対応を著しく損ねた場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、市場の変化に伴い、売上の形態も複雑化しており、売上計上時期の変動により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社といたしましては、市場の変化に対応すべく、自らの業態改革に一層の拍車をかけていかなければならないと考えております。

 

(3)原材料の価格変動

 当社主要製品の材料は印刷用紙で、石油価格や海外チップ・パルプ市場動向などにより製紙メーカー等の仕入価格が上昇し、製造コストの削減で補いきれない場合や、販売価格に転嫁できない場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、印刷用紙の安定的な量の確保と可能な限りの低価格での仕入に努めております。

 

(4)情報のセキュリティ

 個人情報の取扱いについては重要な経営課題の一つとして位置づけ、2002年6月に個人情報保護方針を制定し、一般財団法人日本情報経済社会推進協会のプライバシーマーク使用の許諾(いわゆるプライバシーマーク)については、2003年3月に認定を受け、2025年3月に11度目の更新認定を受けております。

 情報漏洩の可能性は皆無と信じておりますが、想定を超えた条件の中での事故が発生した場合、お客様から損害賠償請求等の事態がおこる可能性があります。

 顧客情報の取扱いについては、今後とも設備及びシステム上での安全管理体制と人的管理措置を整備する等万全を期してまいります。

 

(5)BPO市場変化の影響

 BPO市場は企業のアウトソーシングの受け皿となるものであり、近年ではコロナ禍におけるコールセンター業務、受付窓口業務など、結果的には複数年にわたる業務において実績を積み上げてまいりました。今後も、企業を取り巻く環境は激変し、様々な形で業務のアウトソーシングが行われるものと認識しておりますが、継続的に受注する案件もあれば、極めて短期一過性に終わる案件もあり得ると考えられるため、当社業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績等の状況

 当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルスの5類移行に伴う供給制約の解消や海外からのインバウンドを含む人流の回復、積極的な価格転嫁への取組みの広がり等により業績好調な企業が増加し、人手不足への対応と相まって設備投資は堅調に推移しました。また、春闘での前年を上回る高水準の賃上げにより、個人消費は回復基調が維持され、物価の上昇が続いたものの、景気は、緩やかな回復を継続することとなりました。

 フォーム印刷業界におきましては、ワクチン接種関連の大型の特需は完全になくなり、代わりにマイナンバーカードの健康保険証利用に伴う一時的な需要は発生したものの、デジタル化・ペーパレス化の傾向は益々拡大し、印刷需要は引き続き減少することとなりました。

 このような情勢の下、当社営業部門におきましては、従来からの取引先に加え、ワクチン接種関連案件を契機とした新たな取引先も対象として、これまでに蓄積してきた印刷物・ウェブ・BPO等をワンストップで担える対応力を活かした提案セールスにより、各取引先毎のニーズに肌理細かくかつ包括的に応えることに注力し売上拡大に努めました。

 製造部門におきましては、高尾工場の操業停止とともに印刷機能の野田工場への集約をはじめ、在庫配置や物流工程の見直しも行い、生産各拠点の機能再配置による製造工程の効率化・生産能力の向上に取り組みました。

 また、セキュリティ委員会のもと、業界内でのランサムウェアの被害発生を踏まえ、外部からのサイバー攻撃から社内の情報資産を守り情報漏洩を防ぐ新たな仕組みの導入や専門部署の設置によりセキュリティ体制を一層強化しました。さらに、災害発生等緊急時の事業継続に関する外部認証を取得するとともに、法令遵守、内部統制、ISO、個人情報保護等の諸活動を通じて各製造工程や営業プロセスの質的な見直しを図りつつ、社員教育にも継続的に取り組みました。

 以上のとおり、営業・製造・管理各部門においてそれぞれの体質強化策を推進してまいりました結果、売上高7,915百万円(前期比19.9%減)、経常利益221百万円(前期比83.1%減)、当期純利益161百万円(前期比78.4%減)となり、前事業年度に比べ減収・減益となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当事業年度の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前事業年度末に比べ173百万円減少し、3,810百万円となりました。
 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において営業活動の結果得られた資金は224百万円(前年同期比246百万円の減少)となりました。これは主として税引前当期純利益265百万円、減価償却費363百万円、法人税等の支払額163百万円、及び仕入債務の減少額101百万円によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において投資活動の結果得られた資金は32百万円(前年同期比30百万円の増加)となりました。これは主として投資有価証券の売却による収入153百万円、有価証券の償還による収入30百万円、固定資産の取得による支出99百万円、及び投資有価証券の取得による支出48百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において財務活動の結果使用した資金は430百万円(前年同期比143百万円の減少)となりました。これは配当金の支払295百万円、リース債務の返済による支出108百万円、及び自己株式の取得による支出26百万円よるものであります。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

製品区分

生産高(千円)

前年同期比(%)

印刷関連(サプライ商品を除く)

2,290,303

104.8

DPP

4,447,862

94.0

WEB

266,348

57.0

BPO

642,737

29.9

合計

7,647,251

80.2

(注)1 当社は単一セグメントであるため、製品区分別に記載しております。なお、当事業年度より製品区分の分類を変更しております。前年同期比につきましては、前年同期の数値を変更後の製品区分に組み替えた数値で比較しております。

2 金額は販売価格で表示しております。

 

b.商品仕入実績

製品区分

金額(千円)

前年同期比(%)

印刷関連(サプライ商品)

221,184

98.6

(注)1 当社は単一セグメントであるため、製品区分別に記載しております。なお、当事業年度より製品区分の分類を変更しております。前年同期比につきましては、前年同期の数値を変更後の製品区分に組み替えた数値で比較しております。

2 金額は実際仕入額で表示しております。

 

c.受注実績

製品区分

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

印刷関連

2,534,115

104.3

286,031

94.0

DPP

4,389,422

94.7

385,695

85.7

WEB

270,592

59.6

19,409

128.0

BPO

621,391

32.0

31,904

59.9

合計

7,815,521

82.6

723,040

87.9

(注)1 当社は単一セグメントであるため、製品区分別に記載しております。なお、当事業年度より製品区分の分類を変更しております。前年同期比較につきましては、前年同期の数値を変更後の製品区分に組み替えた数値で比較しております。

2 金額は販売価格で表示しております。

 

d.販売実績

製品区分

販売高(千円)

前年同期比(%)

印刷関連

2,552,487

101.8

DPP

4,453,604

93.7

WEB

266,348

57.0

BPO

642,737

29.9

合計

7,915,177

80.1

(注)1 当社は単一セグメントであるため、製品区分別に記載しております。なお、当事業年度より製品区分の分類を変更しております。前年同期比につきましては、前年同期の数値を変更後の製品区分に組み替えた数値で比較しております。

 

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自  2023年1月1日

至  2023年12月31日)

当事業年度

(自  2024年1月1日

至  2024年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

㈱大和総研

975,800

12.3

  (注) 前事業年度の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が10%未満であるため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態の分析

(資産)

 当事業年度末の総資産は前事業年度末に比べて276百万円減少し、11,099百万円となりました。うち流動資産は5,260百万円(前年同期比171百万円の減少)、固定資産は5,838百万円(前年同期比104百万円の減少)となりました。流動資産の主な減少要因は、立替金が59百万円増加したものの、現金及び預金が173百万円、売上債権が31百万円減少したこと等によるものであります。また固定資産の主な減少要因は、投資有価証券が24百万円増加したものの、有形固定資産が137百万円減少したこと等によるものであります。

(負債)

 当事業年度末の負債は前事業年度末に比べて185百万円減少し、1,763百万円となりました。うち流動負債は1,298百万円(前年同期比168百万円の減少)、固定負債は464百万円(前年同期比17百万円の減少)となりました。流動負債の主な減少要因は、資産除去債務が61百万円増加したものの、仕入債務が104百万円、リース債務が37百万円及び未払金が35百万円減少したこと等によるものであります。また固定負債の主な減少要因は、リース債務が26百万円増加したものの、資産除去債務が26百万円及び繰延税金負債が16百万円減少したこと等によるものであります。

(純資産)

 当事業年度末の純資産は前事業年度末に比べて91百万円減少し、9,335百万円となりました。うち株主資本は8,931百万円(前年同期比151百万円の減少)、評価・換算差額等は404百万円(前年同期比59百万円の増加)となりました。株主資本の主な減少要因は、利益剰余金が134百万円減少したことによるものであります。評価・換算差額等の増加要因は、その他有価証券評価差額金が59百万円増加したことによるものであります。

 

②経営成績の分析

 当事業年度の売上高は前事業年度に比べ1,961百万円減少の7,915百万円、売上原価は前事業年度に比べ851百万円減少の6,301百万円、販売費及び一般管理費は前事業年度に比べ18百万円減少の1,435百万円となりました。この結果、営業利益は前事業年度に比べて1,091百万円減少の178百万円となりました。

 営業外損益は前事業年度に比べて4百万円増益の42百万円となりました。これは、受取利息及び配当金等による営業外収益が52百万円、支払利息等による営業外費用が9百万円計上されたことによるものであります。この結果、経常利益は前事業年度に比べて1,087百万円減少の221百万円となりました。

 特別損益は前事業年度に比べて251百万円増益の44百万円となりました。これは、投資有価証券売却益等による特別利益が44百万円計上されたことによるものであります。この結果、当期純利益は前事業年度に比べて586百万円減少し、161百万円となりました。

 

③キャッシュ・フローの分析

 当事業年度のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金224百万円および投資活動で得た資金32百万円を、財務活動に430百万円使用しました。その結果、当事業年度の現金及び現金同等物の残高は、前事業年度に比べ173百万円減少し、3,810百万円となりました。

 なお、詳細につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

④資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社の主な資金需要は、製造費用や営業費用の運転資金及び設備投資資金であります。資金調達につきましては、運転資金の状況や設備投資計画に照らして必要な資金を、自己資金及び金融機関からの借入等により調達しております。なお、当事業年度末における有利子負債残高はリース債務の186百万円となっております。

⑤経営成績に重要な影響を与える要因

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載しているとおりであります。

 

⑥経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)目標とする経営指標」に記載しているとおり、自己資本当期純利益率(ROE)7%以上、売上高経常利益率(ROS)10%以上を目標としております。当事業年度は、ROEが1.7%、ROSが2.8%となっており、資本の効率的な運用と収益性の向上に努めてまいります。

⑦重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成において、見積りが必要な事項につきましては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性から、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社が採用しております重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しているとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。