第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は有価証券報告書提出日(2025年3月28日)現在における、当社グループの将来に関する見通し及び計画等に基づいた将来予測です。これらの将来予測には、リスクや不確定な要素などの要因が含まれており、実際の成果や業績などは記載の見通しと異なる可能性があります。

 

(1) 企業理念及び目指す企業像

 当社は、変化し続ける時代において、世の中から広く求められ社会の基盤となるような事業の創造を目指しております。

Mission 存在意義 社会と人々に豊かさを

Vision  将来の姿 No.1/Only1を創造し続ける事業グループ

Value  行動指針 時代のニーズを掴み、一歩先を考える

生活を豊かにする商品/サービスを追求する

成長性と革新性を尊重し、チャレンジを応援する

 

 当社グループは、コア事業を「ものづくり(部品・材料)」「ものづくり(音響機器関連)」と定め、「No.1/Only1を創造し続ける事業グループ」という事業ビジョンに基づき、収益力を高め成長分野へ適切な投資を行い、以下の基本戦略に沿って中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。

 

 [グループ経営の基本戦略]

・コア事業である「ものづくり」事業のシェアと収益力の向上

・非連続的成長に向けたデジタル技術の事業領域横断的な活用

・成長投資財務体質強化を両立させるリスクコントロール

 

 [ものづくり分野の事業における課題]

・素材開発技術を用いたペン先部材・コスメ部材・金属部材等の収益力拡大の継続

・音楽・エンターテイメント向け音響機器事業の収益力拡大

・研究開発やアライアンスによる保有技術の新分野への展開

 

 [中期経営計画 FY25の繰上げ達成と、中期経営計画 FY30の骨子]

① 中期経営計画 FY25の結果

 既存事業の成長を中心として掲げた中計FY25は、進行中の施策はあるものの全ての定量目標に対して1年前倒しで達成いたしました。中計FY21と比較し、各項目いずれも伸長して終了することができました。

 ROEについては中計FY25の目標としていなかったものの、期待水準以下にあることを経営課題として認識し、次期中計では期待水準以上に引き上げていくことを目標といたします。

 

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② 中期経営計画 FY30について

 経営を取り巻く環境の変化を鑑み、方針を3つに分類し、設定いたしました。

 

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 既存事業の方針については、CAGR10%以上を目標としました。オーガニック成長の極大化に挑戦する一方、グループ事業各々が特定の市場でのトップ・リーダー企業である中、また、外部環境を踏まえても、安定的な供給体制の確保は非常に重要なテーマであり、サプライチェーンの強化に向け、投資を実行してまいります。加えて、周辺事業に関連するM&Aにも注力し、成長率目標の達成に邁進いたします。

 財務方針については、ROE10%以上とする目標を掲げました。中期経営計画 FY25の期間における振り返りも踏まえ、足元の水準からはハードルは高いものの、期待される水準に引き上げるため、新領域へのM&Aによるリターンと株主還元の強化により、達成を目指してまいります。

 全社方針については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりでありますが、中期経営計画を構成するものとして、グループをあげて取り組んでまいります。

 

(2) 経営環境

 当社グループはポートフォリオ経営を実施しているため、経営環境は事業セグメントにより異なります。セグメントごとの経営環境は以下のとおりです。

 継続するロシア・ウクライナ危機や米中対立など、地政学リスクが世界経済情勢に影響を及ぼすなど、先行き不透明な状況が継続しております。また、外部環境とは別に、すべての事業において、中期経営計画 FY30の初年度として、必要な投資を織り込んでいるため、事業EBITDAマージンは低下する見込みです。

 このような状況下、ものづくり(部品・材料)分野においては、ペン先の筆記分野は緩やかではあるものの、需要が回復基調であると見込んでおります。一方、コスメ分野は停滞が続く見込みであります。MIMは、新規開拓が進み、引き続き成長すると見込んでおりますが、原材料、燃料費の高騰や人件費の増加に加え、売上拡大のため難易度の高い製造に挑戦している時期であり、歩留まりが改善するまではマージンの低下を見込んでおります。

 ものづくり(音響機器関連)分野においては、AlphaThetaについては、主力の欧米を中心に通年で堅調な需要が継続し、上半期においては前年同期の受注残高の解消に取り組んだ結果による一過性の売上収益の増加の影響があり、減収の見込みでありますが、通年では増収を見込んでおります。売上収益の増加に伴い粗利率は良化する見込みでありますが、拡充した拠点の本格稼働や自社工場の検討等の費用により、EBITDAマージンは低下する見込みであります。またJLabについては、米国において、新製品導入効果等によるシェア拡大により成長する見込みであります。米国以外へのアプローチについては、新たな地域及び国への展開が進み、継続して成長できる見通しであります。売上の拡大に伴い、粗利率は引き続き良化するものと見込んでおりますが、事業EBITDAマージンについては、ブランド認知拡大のための広告宣伝費を継続して投下する計画であり、また、サプライチェーンの改善に取り組むため、自社倉庫設置等の費用が発生するため、低下することを見込んでおります。

 

(3) 経営目標

 「中期経営計画 FY30」の定量目標は、以下のとおりであります。

 

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(事業EBITDA=営業利益±その他の収益・費用+減価償却費及び償却費(使用権資産の減価償却費を除く))

 

 株主還元方針については、総還元性向50%以上を目標といたします。配当については、従来の配当性向に加えDOE目標も導入し、継続的かつ安定的な配当を目指します。

 

 2024年12月期の配当は1株当たり181円となりました。

 2025年12月期の配当予想は株式分割前で1株当たり221円の予想です。

 

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月28日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、足元十数年で迎えた急速かつ急激な社会の変化に実直に向き合い、世の中から広く求められ、社会の基盤となるような事業の創出に挑戦してまいりました。今後、ますます深刻化していくと考えられる社会課題や地球環境課題に対応し、当社グループのミッションである「社会と人々に豊かさを」を提供し続けていくうえで必要と考える課題を4つのマテリアリティ(重要課題)として設定し、経営と統合したサステナビリティの推進を図っております。

 グループの経営資源を活かし、マテリアリティを基礎とした環境・社会・ガバナンス(以下「ESG」という。)上の課題を解決することで、顧客価値と社会価値の創出に取り組み、持続的成長を目指してまいります。

 

(1)当社グループのサステナビリティの考え方及び取組

① ガバナンス

 当社グループでは、代表取締役CEOを委員長、当社の取締役CFO・執行役員及びグループ会社の社長を委員として構成する「サステナビリティ委員会」を設置しております。詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のとおりであります。当該委員会は、サステナビリティ経営の方針・戦略・取り組み計画を策定するとともに、ESGリスクに関する討議や計画実行状況のモニタリングを行い、取締役会に報告や提言を行っております。

 

(サステナビリティ推進体制)

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② 戦略

 当社グループの存在意義は、事業を通じて「社会と人々に豊かさを」を提供し続けることです。これを実現していくために、当社グループが注力すべきサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を特定し、中長期戦略に組み込んで具体的な取り組みと目標を設定し、事業を通じて実行しております。

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 新たに策定した「中期経営計画 FY30」においても、2030年に向けた全社方針としてサステナビリティ経営及び人的資本経営の推進を掲げております。サステナビリティ重要課題への取り組み推進及び人的資本の最大化を追求し、持続的な事業成長を実現していくことを目指しております。

 サステナビリティ重要課題に対して、個別に策定した各種方針は以下のとおりです。

 

・コーポレートガバナンス基本方針

・コンプライアンス基本方針

・品質管理方針

・調達方針

・調達ガイドライン

・人権方針

・人材育成方針

・健康経営方針

・情報セキュリティ方針

・腐敗・贈収賄防止方針

・責任ある鉱物調達方針

 詳細は、当社ホームページに公表しております。
(https://www.noritsu.co.jp/sustainability/)

 

③ リスク管理

 当社グループは、サステナビリティに関する課題を把握し評価するため、リスクアセスメントを行っております。特定したリスク及び機会はリスク管理統括委員会と相互補完することにより、サステナビリティ推進体制のもと管理しております。グループ会社のリスク管理委員会にて議論された内容は、当社リスク管理統括委員会、コンプライアンス委員会及びサステナビリティ委員会にテーマに沿って共有され、案件によって、当社取締役会に報告され、議論されます。企業戦略に影響すると考えられる法令・規制等の変更や世の中の動向等の外部要因の共有や、グループ各社のリスク対応施策の進捗状況などの内部要因を踏まえて、戦略・施策等の検討を行っていきます。

 

④ 指標及び目標

 当社グループは特定したマテリアリティに取り組むために、年度毎に目標を定めた「マテリアリティ対応計画」を策定し、グループ全体で取り組みを推進しております。対応計画はグループのサステナビリティ推進体制のもとで進捗管理を行っております。

 

<事業を通じた社会・人々への貢献>

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<事業を支える基盤の構築>

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(2)気候変動への対応

 世界各地で異常気象による大規模な自然災害が多発する中、気候変動は当社グループが取り組むべき重要課題であると捉え、気候変動への対応をマテリアリティの1つとして掲げ、気候変動の影響や課題の緩和に貢献し、適応する取り組みを推進しております。2022年10月には、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明し、気候変動が事業に与えるリスク・機会に対しグループのレジリエンス性の強化や新たな戦略の検討を目的としてTCFD提言への対応を行っております。TCFD提言に沿って、事業に与えるリスク・機会を把握し経営戦略へ反映させるとともに、情報開示を進め、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な成長を目指してまいります。

 

① ガバナンス

 気候変動対応を含むサステナビリティに関する重要案件は、当社代表取締役CEOを委員長とするサステナビリティ委員会において年1回以上審議し、取締役会に年1回以上報告や提言を行うことにより、取締役会による適切な監督体制を整えています。取締役会では報告された気候変動による重要なリスク・機会について、審議・決定を行い、対応の指示及びその進捗に対する監督を行います。なお、サステナビリティ委員会の審議に先立ち、当社執行役員が管掌するサステナビリティ推進会議において十分に議論するとともに、事業を通じた気候変動に関わる取り組みの実績や温室効果ガス排出量削減の進捗状況を確認します。

 

② 戦略

 シナリオ分析の前提

 気候関連課題が当社グループの事業、戦略、財務計画に大きな影響を与える可能性があるという認識のもと、シナリオ分析によるリスクや機会の整理及び戦略の見直しを定期的に実施しております。2024年度は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)が公表する「1.5℃~2℃シナリオ」と「4℃シナリオ」を用い、脱炭素社会への移行に向けた政策や規制が強化されることによって影響が顕在化する移行リスクと異常気象の激甚化や平均気温の上昇等によって影響が顕在化する物理リスクに整理してシナリオ分析を行いました。また、定量分析では2030年に想定される財務影響を試算しました。

 シナリオ分析により明確化された重要なリスクと機会に対してそれぞれの対策を講じ、リスクの低減と機会の確実な獲得につなげてまいります。

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(リスク・機会と対応策)

想定期間:2030年まで

財務影響の評価指標:小 5億円未満/中 5億円以上30億円未満/大 30億円以上

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③ リスク管理

 気候変動によるリスク・機会については、サステナビリティ委員会において評価・識別し、グループにとって重要なリスク・機会を特定します。それらに対する取り組み方針や対応策について策定し、取締役会に報告や提言を行います。取締役会ではサステナビリティ委員会からの報告等により、リスク管理の有効性や推進状況の確認・監督を行います。また、グループ全体のリスクを統合的に管理するリスク管理統括委員会においても、当リスクを共有し、必要に応じてさらなる対応策を検討していきます。

 

④ 指標及び目標

 気候変動が及ぼす当社グループ事業への影響を評価・管理するために、温室効果ガス排出量(Scope1・2)を指標として、「SBT1.5℃」目標に整合する水準で見直しを行い、2030年までに42%削減(2023年度比)することを目標に設定しました(2024年9月公表)。

 また、2023年からScope3の算定に着手しました。今後は、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量削減を検討していく予定です。

 

(目標)

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(実績)

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(注)1 「2023年GHG排出量(Scope1・2)報告規準」は、当社ホームページに公表しております。

(https://www.noritsu.co.jp/sustainability/)

2 2023年の排出量は、排出係数の見直し及びエネルギー起源のCH4、N2O、非エネルギー起源のGHGを算定対象に追加したことにより修正

3 「統合報告書2024」において開示している2023年のGHG Scope1・2排出量は、第三者機関による保証を取得しています。「統合報告書2024」P.35及びP.57をご参照ください。

4 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)

Scope2:他社から共有された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

Scope3:Scope1・2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

 

 Scope3の排出量は、2023年度の実績から算定を開始しました。提出日現在、算定方法について第三者保証レビュー(レディネス)を受けている最中です。レビュー中の算定方法に基づく参考値については、当社ホームページに公表しております。(https://www.noritsu.co.jp/sustainability/)

 なお、取り組みの詳細を含めた最新の実績は、2025年6月に発行予定の当社統合報告書をご参照ください。

 

(3)人的資本に関する取り組み

 当社グループは、No.1/Only1を創造し続けることを目指してビジネスを展開しております。持続的な成長と企業価値の拡大を実現するためには、グループすべての従業員が広い視野を持ち、主体的かつ未来志向の姿勢・発想を持って邁進することが重要だと考えます。従業員の多様性を尊重しつつ、公正な評価と処遇を行うことでモチベーションの向上を図るとともに、働きやすい職場環境の構築を通じて活力ある組織風土の醸成に努めております。

 

① ガバナンス

 当社グループの人的資本マネジメントは、持株会社とテイボー、AlphaTheta、JLabの中核事業会社がそれぞれの役割と機能を果たし、グループ全体の人的資本の拡充を目指しております。持株会社である当社は、グループ共通の人材育成計画と人権やコンプライアンスの取り組み方針を策定し、グループ各社への周知を図っております。計画及び方針の進捗や課題については、当社代表取締役CEOを委員長とするサステナビリティ委員会において年1回以上審議し、取締役会に年1回以上報告や提言を行うことにより、取締役会による適切な監督体制を整えています。取締役会では報告された人的資本に関する管理指標のモニタリング結果等から、重要なリスクや機会について、審議・決定を行い、対応の指示及びその進捗に対する監督を行います。なお、サステナビリティ委員会の審議に先立ち、当社執行役員管掌のサステナビリティ推進会議において管理指標のモニタリング結果や対応施策について議論しております。また、グループ全体のリスクを統合的に管理するリスク管理統括委員会においても、リスクを共有し、必要に応じてさらなる対応策を検討していきます。

 

② 戦略

 2021年10月にサステナビリティに関する4つのマテリアリティ(重要課題)を特定しました。その1つが、人的資本に関する「一人ひとりの多様な価値観を尊重し、すべての人材が未来志向で活躍できる職場基盤の構築」です。「安全で健康な職場環境の整備」「グループを牽引する未来志向で優秀な人材を育てるための環境整備」「多様な価値観の尊重と柔軟な働き方の推進」をマテリアリティ対応計画の具体的な取り組みとし、KPIを設定して進捗をモニタリングし、課題認識・解決にあたります。

 

③ リスク及び機会

 キャリアに関する価値観が多様化し、これまで以上に人材の流動化が進んでいます。また、先端技術を保有する人材など、希少なスキルや経験を持つ人材の獲得競争も激化しています。このような環境下において、人材から選ばれる人的資本経営の実行がより重要となってくると考えます。加えて、近年は社会から人的資本の情報開示が求められるようになってまいりました。また、法令遵守の観点からも従業員一人ひとりについても責任のある行動が求められます。これらのリスクに対応するため、マテリアリティ対応計画の中で3つの具体的な取り組みの推進及びグループ行動規範に基づく倫理的な企業文化の醸成を通じて、リスクの適切な管理と低減に努めております。加えてリスク低減のための活動を通じ、人材から選ばれる企業グループとなるべくリスクを機会に転じさせるための戦略の検討を行っております。グループ各社のリスク管理委員会及びリスク管理統括委員会にて「人材確保」「人材育成」「コンプライアンス」等の面からモニタリング、課題認識・対応を行い、サステナビリティ委員会やコンプライアンス委員会への情報連携、取締役会での議論を通じ、リスクヘッジ及び機会の獲得に努めております。

 

④ 指標と目標

 人的資本に関するマテリアリティ対応計画の中の3つの具体的な取り組みについて、それぞれ以下の目標・指標を設定して推進しております。なお、各KPI項目は数値目標を達成することが目的ではなく、これらの指標をモニタリングすることにより、会社の制度や組織風土に関連する定性的な課題抽出を目的としております。それぞれの会社固有の課題についてグループ横断で現状や考え方などを共有し、検討する機会を設けることで、個別課題の発展的解消と、グループとしての共通した価値観の醸成にもつなげていくことを目的としております。その目的を踏まえ、以下、3つの項目の具体的な取り組みについて、説明いたします。

 

(安全で健康な職場環境の整備)

 2022年に策定したグループ方針のもと、2024年は、グループ各社がそれぞれに把握している健康経営指標の課題解決のための具体施策を実行してまいりました、具体的には、健康診断受診率の向上に向けた受診施設の更新、食生活の改善のための研修や社食のメニュー更新、運動機会の拡大に向けた研修会やイベントの開催等、指標の達成に向けて各社積極的な活動を行いました。2025年度についても、KPIのモニタリングに加え、グループ各社がそれぞれに認識した健康課題解決のための具体施策を実行してまいります。また、自社製造拠点をもつテイボーについては、労働安全衛生指標のモニタリングも行ってまいります。

 

(グループを牽引する未来志向で優秀な人材を育てるための環境整備)

 2024年は、人材育成に関わる定量目標として、グループ全従業員の1人あたり年間研修時間を平均22.8時間と定めました。各社ごとに必要な研修メニューの充実や、支援体制の整備を進めてまいりました。その結果、2024年度のグループ全体の平均は1人あたり16.4時間、72%の達成率となりました。達成率が芳しくなかった状況を踏まえ、2025年度は、1人あたり教育時間という定量目標に加え、教育と育成の関連性の見える化に取り組み、グループ各社に必要とされる人材育成のための質的アプローチを推進してまいります。

 

(多様な価値観の尊重と柔軟な働き方の推進)

 2022年に多様な働き方モニタリング・グループ共通指標を設定いたしました。

 具体的な項目と2024年度の実績は以下のとおりです。2025年度も、これらの指標のモニタリングを継続し、従業員一人ひとりが責任をもって自律的に業務に取り組むことができる開かれた職場環境を目指してまいります。また、人権研修を通じて多様な価値観が尊重される企業文化の醸成を進めてまいります。

 

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有給休暇取得率

71.0

テレワーク実施率

85.5

育児休業取得率

56.0%/125.0%/72.7(男性/女性/全従業員)

育休平均取得日数

57.4日/143.8日/93.4(男性/女性/全従業員)

介護休業取得率

0.0

障がい者雇用率

テイボー 3.0% AlphaTheta 1.7%

定年再雇用率

100

(注)障がい者雇用率は内国法人で「障害者の雇用の促進に関する法律」の雇用義務のある会社を対象とし、算定は同法に基づき算出したものであります。特に個社名の記載のない項目は、連結グループの合算ベースで算出しております。

 

3【事業等のリスク】

(1) 基本的な考え方

 当社グループは、リスクを事業計画の進捗を阻む可能性のあるものと捉え、経営と事業に影響を及ぼす可能性のあるリスク要因につき、それぞれのリスクの発生可能性と当社グループに対する影響度を評価したうえで、重要リスクを特定しています。特定した重要リスクについて、リスク発生要因の分析と発生防止の取り組みを推進する一方、回避できないリスクに関しては個別に検討を行い、的確な管理と影響の低減を図っています。

 当社グループは、「ものづくり」分野において、事業機会創出・拡大と収益力の強化に取り組んでおります。事業計画策定及び投資にあたっては、既存分野の強化、成長分野への投資・育成、新技術や新素材の開発、市場拡大・市場創造等への取り組み等、事業セグメント毎に細かな方針・目標を設定し、その進捗管理を行っておりますが、予期せぬ事態の発生により、計画どおりに進捗しなかった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクにつきましては、事業計画の達成状況について定期的に分析することでモニタリングを実施し、改善を図っております。また災害時事業継続計画(BCP)等により事業環境の変化に対応する体制を整え事業継続・計画達成に努めております。

 なお、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、「(3) 重要なリスク」に記載のとおりであり、文中の将来に関する事項は、特段記載のないものは有価証券報告書提出日(2025年3月28日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(2) リスクマネジメント体制

 当社では、代表取締役CEOをリスク管理統括責任者とするリスク管理統括委員会を設置し、全社的な視点で各種リスク・危機に関する事案を総合的に管理しています。また、リスクが発現した場合に速やかな初動対応をとることができるよう、事業継続計画(BCP)を策定するとともに、従業員の危機管理の指針となる各種マニュアルを整備しています。さらに、グループ全体のリスク管理の高度化を図るため、グループ各社にリスク管理委員会を設置してリスク管理に関わる諸事案を審議し、対応策を講じています。

 

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 なお、リスクマネジメントの運用プロセスとしましては、年度ごとにグループ各社にてリスクの分析・評価等の見直しとその対応策の確認を行い、リスクマネジメントのPDCAを回しております。また、グループ全体としてはリスク管理統括委員会がグループ各社で抽出された重要なリスクについて審議、評価、モニタリングを実施しグループ全体のリスクマネジメントを行っております。

 

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(3) 重要なリスク

① 為替の影響について(発生可能性:大  影響度:中)

 当社グループの連結売上収益に占める海外売上収益の割合は、2023年12月期91.5%、2024年12月期91.2%となっております。そのため、為替の変動が当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクについては非常に多種多様なファンダメンタルズに影響を受けるため、顕在化する時期について予想が困難であります。現時点では主として本邦通貨建を中心に取引を行うこと及び債権債務の通貨の組み合わせによるナチュラルヘッジを用い、当該リスクについて対策しております。リスク分析については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 5.金融商品 (2) 財務上のリスク管理方針 ① 為替リスク管理」をご参照ください。

 

② カントリーリスクについて(発生可能性:中  影響度:中)

 当社グループの事業は、世界に販路を拡大しております。当社グループが事業活動をしている様々な市場における景気後退やそれに伴う需要の縮小、あるいは海外各国における予期せぬ事故、法規制等の変更により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、海外売上規模については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.事業セグメント (5) 地域ごとの情報」をご参照ください。各事業体が日常的に取引先とコミュニケーションを行うことにより、業務フローを通じて当該リスク管理を行っております。

 

③ 取引先の与信リスクについて(発生可能性:小  影響度:中)

 当社グループは、新たな成長分野における事業機会を模索する中、各業域における新たな取引先の開拓を積極的に行っております。すべてのセグメントにおいて、取引先の個別与信の判断及び各業域の取引慣行等の事業ノウハウを習得しておりますが、景気後退等による不測の取引先の倒産等が発生することで、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する時期については個別事情によるところがあり予想が困難でありますが、すべての営業債権についてグループ方針に則り予想信用損失を引き当てております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 5.金融商品 (2) 財務上のリスク管理方針 ④ 信用リスク管理」をご参照ください。

 

④ 生産活動について(発生可能性:中  影響度:大)

 当社グループで生産している製品の多くは、国内の工場及びアジア拠点の委託先において生産を行っております。そのため、天災や人災等により工場設備に著しい被害が生じた場合、又は、甚大かつ広域的に発生した大震災の影響で電力需給問題等が生じた場合、生産活動に支障を来す、又は、生産活動ができなくなる可能性があることを認識しております。これらの工場における生産活動の停滞や本社工場の復旧費用等は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクについては発生の時期の予想は困難でありますが、災害時には各社の事業継続計画書に基づき適切な対応が行えるよう体制を整備しております。設備への影響の程度については、「第3 設備の状況」をご参照ください。

 

⑤ サイバーリスクについて(発生可能性:小  影響度:大)

 当社グループは、様々な事業活動を通じて、顧客や取引先の個人情報あるいは機密情報を入手することがあります。サイバー攻撃等の予測しない不正アクセス等により、顧客情報や当社グループの機密情報が漏洩し、また、その漏洩した情報が悪用された場合、顧客の経済的・精神的損害に対する損害賠償等が発生する可能性があります。さらに顧客情報の漏洩等が当社グループの信用低下や企業イメージの悪化につながることで、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクについては発生時期の予想は困難でありますが、当社グループでは情報セキュリティポリシーを制定し、ネットワークセキュリティの強化、監視・管理体制の強化、全従業員を対象とした情報セキュリティ教育、標的型攻撃メール訓練等の継続実施など安全性及び信頼性に万全の対策を講じるとともに、特に関連性の高い傘下のグループ会社では「プライバシーマーク」を取得する等個人情報保護に努めております。

 

⑥ 特許及びその他の知的財産について(発生可能性:小  影響度:大)

 当社グループが研究開発及び生産活動を行う中で様々な知的財産権にかかわる技術を使用しており、それらの知的財産権は当社グループが所有しているもの、あるいは適法に使用許諾を受けたもの等であると認識しておりますが、当社グループの認識の範囲外で第三者から知的財産権を侵害したと主張され、係争等が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクにつきましては、商品開発及び設計にあたっての第三者の知的財産権調査の実施、非侵害の主張やライセンス条件等の交渉・訴訟対応に備え、経験豊富な弁護士と連携し、事案の内容に応じて適切に対応する体制を整えています。

 

⑦ 企業買収について(発生可能性:中  影響度:中)

 当社グループは、成長戦略実現のため、今後も積極的に企業買収を実施する予定です。企業買収にあたり、対象となる企業の資産内容や事業状況についてデューディリジェンス(適正価値精査)を実施し、事前にリスクを把握しております。しかしながら、事業環境や競合状況の変化等に伴って当社グループが期待する利益成長やシナジー効果が目論見どおりに実現できない可能性があり、また今後予期しない債務又は追加投入資金等が発生する可能性があり、これらが顕在化した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクにつきましては発生時期の予想は困難でありますが、定期的なモニタリングを通じ、最重要会議体にて適宜報告・議論を行う体制をとり、リスクに備えております。また、発生の兆候が認識された際は、適切な測定手続きを通じて、適正に財務諸表に反映する体制をとっております。業務執行と監督の体制は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を、リスクが顕在化したときの影響額については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 10.のれん及び無形資産」をご参照ください。

 

⑧ のれんについて(発生可能性:中  影響度:中)

 当社グループは、企業買収に伴い発生した相当額ののれんを計上しております。当社グループは、当該のれんにつきまして、それぞれの事業価値及び事業統合による将来のシナジー効果が発揮された結果得られる将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が得られない場合、減損損失が発生し、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。リスクの発生時期、対策、規模等については上記「⑦ 企業買収について」をご参照ください。

 

⑨ サプライチェーンに関するリスク(発生可能性:中  影響度:大)

 当社グループは生産に使用する様々な原材料・部品等を国内外の調達先から購入しております。当社グループが調達先から購入する原材料や仕入商品の価格やリードタイムは、世界的な需給動向や輸送環境の動向による影響を受けており、これらの要因が長期にわたる混乱に及んだ場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクの発生時期を見積ることは困難ですが、当社グループは、代替部品の検討、製品設計や調達先の多角化、また製品への適正な価格転嫁などにより、需給動向や輸送環境の動向の変動リスクの低減に取り組んでおります。また、社会的要請により、サプライチェーン上の人権状況のチェックや、環境への配慮について、より高度な対応が求められており、調達先に対応の不備があれば、原材料や仕入商品の調達停止による当社グループの財政状態及び経営成績への影響だけでなく、社会的評価が悪影響を受ける可能性もあります。当該不備によるリスクが顕在化する時期を見積ることは困難ですが、当社グループはサステナビリティの取り組みの中で、サプライチェーン管理体制の構築を通じ、リスクの低減に向けた活動を推進しております。詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) 当社グループのサステナビリティの考え方及び取組 ④ 指標及び目標 <事業を通じた社会・人々への貢献> 環境・社会に配慮したサプライチェーン体制を整備」に記載のとおりであります。

 

⑩ 気候変動に関するリスク(発生可能性:中 影響度:中)

 当社グループは気候変動への対策を重要課題(マテリアリティ)の1つとして掲げ、2022年10月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しました。TCFD提言に沿って、事業に与えるリスク・機会を把握し経営戦略へ反映させるとともに、情報開示を進め、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な成長を目指してまいります。気候変動が事業に与えるリスク・機会に対し当社グループのレジリエンス性の強化や新たな戦略の検討を目的として、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)が公表する「2℃未満シナリオ(一部1.5℃)」と「4℃シナリオ」を用い、シナリオ分析を行いました。また、定量分析では2030年に想定される財務影響を試算しました。

 2℃未満シナリオでは、脱炭素社会への移行に向けた政策や規制が強化されることにより、対応コストが増加、発生することが想定されます。

 4℃シナリオでは、異常気象の激甚化や平均気温の上昇等により対応コストが増加、発生することが想定されます。

 詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 気候変動への対応」に記載のとおりであります。

 

⑪ 人権に関するリスク(発生可能性:小  影響度:中)

 当社グループは、グローバルに事業を展開し、また、生産に使用する様々な原材料・部品等を国内外の調達先から購入しております。当社グループでは、人権尊重をすべての活動の基本原則と考え、人権尊重の取り組みをグループ全体で推進しその責務を果たすための人権方針を策定し、人権尊重の取り組みをグループ全体で推進しておりますが、当社グループ又はサプライチェーン等の取引先の事業活動が人権への負の影響を引き起こしている場合、レピュテーションの悪化による社会的信用の低下により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクの発生時期の予想は困難ではありますが、当社グループの人権方針に基づき、調達ガイドラインを制定し、グループ全役員・従業員に対しての教育、研修、またサプライヤー等の事業に関わるビジネスパートナーへ本方針の理解と実行を促す働きかけを実施し人権尊重に努め、人権への負の影響を引き起こすリスクを回避しています。また、人権デュー・デリジェンスの仕組みの構築と継続的な実施、当社グループの調達方針に基づき人権・労働環境・安全衛生に配慮した調達活動を推進しています。万が一、人権に対する負の影響を引き起こした、又は助長したことが明らかになった場合は、適切な手段を通じて救済に取り組む方針です。詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) 当社グループのサステナビリティの考え方及び取組 ④ 指標及び目標 <事業を支える基盤の構築> 一人ひとりの多様な価値観を尊重し、すべての人材が未来志向で活躍できる職場基盤の構築」に記載のとおりであります。

 

⑫ 人材に関するリスク(発生可能性:小  影響度:中)

 労働力人口の減少による働き手の不足、及び人材の流動性の高まり、 キャリアに関する価値観の多様化等により、先端技術を保有する人材、希少なスキルや経験を持つ人材を含めた必要な能力を有する人材の獲得競争の激化・人材確保の環境が変化しております。このような環境下において、人材から選ばれる人的資本経営の実行がより重要であります。必要な人材の確保・維持ができない場合や有能な社員の離職転職、人材採用の遅滞等が発生した場合には、業務の停滞・遅延等により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクの発生時期の予想は困難ではありますが、グループ全体の重要課題として捉え、サステナビリティ委員会を中心に、課題認識に対する基本方針を制定し、グループ各社の人事部門が主管となり課題対応を行い、リスクの適切な管理と低減に努めております。詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本に関する取り組み」に記載のとおりであります。

 

⑬ コンプライアンスに関するリスク(発生可能性:小  影響度:中)

 当社グループは、グローバルに事業を展開し、国内外の法令、規制に準拠しております。当社グループでは、コンプライアンス基本方針を制定し、遵法経営の徹底とコンプライアンス意識向上を目的としコンプライアンス委員会を設置しておりますが、万が一予期せず当社グループが法令又は規制を遵守できなかった場合や不正、社内規程に違反した行為が行われた場合、当社グループの社会的信用やブランド価値の毀損また課徴金等によるコストの増加により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクの発生時期の予想は困難ではありますが、コンプライアンス基本方針、行動規範並びに腐敗・贈収賄防止方針の下、当社グループ全体を対象としたコンプライアンス研修を年1回以上実施しコンプライアンスに対する意識の向上と定着を図り、また、コンプライアンス上の課題や再発防止策等について定期的にコンプライアンス委員会にて審議を行うなど未然防止活動を推進しております。また、法令違反やコンプライアンス等に関する事実についての社内報告体制として、内部通報制度運用規程に基づき運用を行っております。詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のとおりであります。

 

⑭ 自然災害に関するリスク(発生可能性:中  影響度:大)

 当社グループは、グローバルに事業を展開し、また、生産に使用する様々な原材料・部品等を国内外の調達先から購入しております。近年、世界的気候変動による大規模な台風・洪水・森林火災等の災害や日本国内での巨大地震の発生リスクが高まっています。当社グループが事業活動を展開する国や地域において、大洪水、地震等の自然災害が発生した場合には、設備の損壊、電力・水・ガス等の供給停止、公共交通機関や通信手段の停止また人的被害等により生産及び出荷の遅延・停止など事業運営に重大な支障を来たし、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクについては発生の時期の予想は困難でありますが、当社グループでは、災害・事故等の発生時の事業の継続性を確保するため事業継続計画(BCP)を策定、またその見直しを継続的に実施し、災害発生時の対応に備えた危機管理体制を整備、毎年、全従業員を対象とした防災訓練等を実施し、当該リスクに備えております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当社グループは、資本市場における財務諸表の国際的な比較可能性の向上及びグループ内での会計処理の統一等を目的とし、2016年3月期から従来の日本基準に替えてIFRS会計基準を任意適用し、連結財務諸表を作成し開示しております。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(2023年12月31日)

 

当連結会計年度

(2024年12月31日)

 

対前連結会計年度

増減率(%)

資産合計

279,471

 

299,368

 

7.1

 流動資産

114,967

 

135,122

 

17.5

 非流動資産

164,504

 

164,245

 

△0.2

負債合計

73,626

 

76,408

 

3.8

 流動負債

30,752

 

37,798

 

22.9

 非流動負債

42,874

 

38,610

 

△9.9

資本合計

205,844

 

222,960

 

8.3

 親会社の所有者に帰属する持分

205,374

 

222,246

 

8.2

 非支配持分

469

 

713

 

51.9

 

(資産、負債及び資本の状況)

 当連結会計年度末の資産合計は2,993億68百万円となり、前連結会計年度末と比較して198億96百万円増加いたしました。科目別の詳細は以下のとおりであります。

 

 流動資産は、201億55百万円の増加となりました。これは主に現金及び現金同等物が226億66百万円増加したことによるものであります。

 非流動資産は、2億58百万円の減少となりました。これは主にのれんが11億95百万円、その他の金融資産が6億22百万円増加し、無形資産が5億19百万円、持分法で会計処理されている投資が5億48百万円、繰延税金資産が4億8百万円減少したことによるものであります。

 

 負債合計は27億81百万円の増加となりました。これは主に仕入債務及びその他の債務が37億97百万円、未払法人所得税が30億90百万円増加し、借入金(流動・非流動)が51億92百万円減少したことによるものであります。

 

 資本合計は、171億15百万円の増加となりました。これは主に配当金の支払53億17百万円があったものの、親会社の所有者に帰属する当期利益161億20百万円及びその他の包括利益61億93百万円を計上したことによるものであります。

 

 資本の財源及び資金の流動性に関しては以下のとおりであります。

 2022年1月より開始した「中期経営計画 FY25」において、当社グループでは純有利子負債EBITDA倍率が3倍を超過しない範囲を目安として調達をコントロールしてまいりました。新たに策定した「中期経営計画 FY30」においても同指標を3倍としてコントロールする方針であります。

 2025年12月期に計画している主な設備投資はものづくり(部品・材料)セグメントにおける生産設備とものづくり(音響機器関連)セグメントにおける自社倉庫システム等であります。その他、提出日現在、大規模な投資計画については予定しておりません。

 なお、予期せぬリスクが顕在化した場合、短期的にも一定の影響を受ける可能性があるため、その対策として、当社グループは手元現預金を一定の水準で保っており、親子間の融資を機動的に実施できる体制にしております。さらに当社及び一部の連結子会社は取引金融機関との間で短期借入枠を設定し、外部からの資金調達も可能な状態としております。当連結会計年度末の現金及び現金同等物のアロケーション及び借入枠の未使用残高は以下のとおりであります。

(国内会社保有分)    80,593百万円

(海外子会社保有分)      12,263

(借入枠の未使用残高)  24,318

 

 当連結会計年度において、プリメディカの株式の全てを売却したことにより、同社及びその子会社を非継続事業に分類いたしました。その結果、報告セグメントは「ものづくり(部品・材料)」及び「ものづくり(音響機器関連)」の2つのセグメントで構成されることとなりました。

 当連結会計年度における事業の状況は、以下のとおりであります。

 なお、上記の非継続事業への分類に伴い、前連結会計年度の関連する数値は修正再表示しております。

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

 

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

 

前年同期比

売上収益

90,052

 

106,539

 

16,487

(18.3%)

事業EBITDA(注)

17,696

 

24,283

 

6,587

(37.2%)

営業利益

14,388

 

20,507

 

6,118

(42.5%)

税引前当期利益

13,677

 

20,437

 

6,759

(49.4%)

親会社の所有者に帰属する当期利益

10,199

 

16,120

 

5,921

(58.1%)

基本的1株当たり当期利益(円)

285.88

 

451.61

 

165.73

(58.0%)

(注)事業EBITDA=営業利益±その他の収益・費用+減価償却費及び償却費(使用権資産の減価償却費を除く)

 

(売上収益)

 「音響機器関連」事業においては、引き続き強い需要に支えられ、好調に推移いたしました。「部品・材料」事業においては、欧州、アジアにおける需要の停滞等により前年並みとなりました。連結では「音響機器関連」事業の牽引により、売上収益は1,065億39百万円(前年同期比18.3%増)と大きく伸長いたしました。

 

(事業EBITDA)

 上記のとおり売上収益は前年同期比18.3%増と好調に推移し、研究開発費や体制強化などの先行投資は計画通りに行っておりますが、特に「音響機器関連」事業における収益性の向上が寄与し、事業EBITDAは242億83百万円(前年同期比37.2%増)となりました。

 

(営業利益)

 上述の事業EBITDAの増加が寄与し、営業利益は205億7百万円(前年同期比42.5%増)となりました。

 

(親会社の所有者に帰属する当期利益)

 上述に加え、当連結会計年度において、プリメディカの株式譲渡に伴い非継続事業からの当期利益を計上したことから、親会社の所有者に帰属する当期利益は161億20百万円(前年同期比58.1%増)となりました。

 

 セグメント別の経営成績は、以下のとおりであります。

 各セグメント別の売上収益は外部顧客への売上収益を記載しており、また、セグメント利益を表す事業EBITDAは営業利益±その他の収益・費用+減価償却費及び償却費(使用権資産の減価償却費を除く)の計算式で算出しております。

(単位:百万円)

 

 

 

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

 

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

 

前年同期比

売上収益

 

事業EBITDA

 

事業EBITDA

マージン

(%)

 

売上収益

 

事業EBITDA

 

事業EBITDA

マージン

(%)

 

売上収益

 

事業EBITDA

 

事業EBITDA

マージン

(pt)

ものづくり

部品・材料

11,781

 

3,198

 

27.2

 

11,975

 

3,270

 

27.3

 

193

 

71

 

0.2

 

音響機器関連

78,270

 

15,814

 

20.2

 

94,564

 

22,024

 

23.3

 

16,293

 

6,209

 

3.1

 

合計

90,052

 

19,013

 

21.1

 

106,539

 

25,294

 

23.7

 

16,487

 

6,281

 

2.6

全社費用

 

 

△1,316

 

 

 

△1,010

 

 

 

306

 

 

a.ものづくり(部品・材料)

 部品・材料事業のコスメカテゴリにおいては、中国、欧州を中心とした地域の需要の停滞の影響を受けました。しかしながら筆記カテゴリにおいては北米を中心に需要の回復の兆しが見え、MIMカテゴリにおいては、輸送機器部品が順調に伸び、トータルでは前年を上回り着地いたしました。引き続き原価低減には取り組んでおり、売上収益は119億75百万円(前年同期比1.6%増)、事業EBITDAは32億70百万円(前年同期比2.2%増)と前年同期と比べ71百万円の増益となりました。

 

b.ものづくり(音響機器関連)

 音響機器関連事業においては、欧米での販売好調、為替が有利に働いたこと等により増収となりました。加えて原価低減施策が奏功し、新規事業や研究開発投資を計画通り遂行しているものの、売上収益は945億64百万円(前年同期比20.8%増)、事業EBITDAは220億24百万円(前年同期比39.3%増)と前年同期と比べ62億9百万円の増益となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

 

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

営業活動によるキャッシュ・フロー

△31,588

 

32,595

投資活動によるキャッシュ・フロー

23,166

 

38

財務活動によるキャッシュ・フロー

△18,892

 

△11,828

現金及び現金同等物の為替変動による影響額

1,068

 

1,861

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

△26,246

 

22,666

現金及び現金同等物の期末残高

70,190

 

92,856

 

 

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ226億66百万円増加し、928億56百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは325億95百万円の資金の増加となりました。

 表示科目単位での資金の増加の主な要因は、税引前当期利益204億37百万円、減価償却費及び償却費55億39百万円、法人所得税費用の還付額73億62百万円となっております。なお、法人所得税費用は、前連結会計年度において実施した中間納付の額が過大となったため還付を受けたものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは38百万円の資金の増加となりました。

 表示科目単位での資金の増加の主な要因は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入34億28百万円、その他の金融資産の売却及び償還による収入10億28百万円となっております。資金の減少の主な要因は、有形固定資産の取得による支出9億54百万円、無形資産の取得による支出6億85百万円、その他の金融資産の取得による支出27億43百万円となっております。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは118億28百万円の資金の減少となりました。

 表示科目単位での資金の減少の主な要因は、長期借入金の返済による支出53億35百万円、配当金の支払額53億17百万円となっております。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(単位:百万円)

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

ものづくり(部品・材料)

11,894

2.0

合計

11,894

2.0

(注)1 金額は標準的販売価格にて算出しております。

2 上記には非継続事業からの実績は含んでおりません。

 

b.仕入実績

 ものづくり(音響機器関連)セグメントにおいては、ファブレス経営を実施しております。

 製造委託の仕入実績は、次のとおりであります。

(単位:百万円)

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

ものづくり(音響機器関連)

40,990

16.9

合計

40,990

16.9

 

c.受注実績

 当社グループは、受注生産方式の該当事項はありません。

 

d.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(単位:百万円)

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

ものづくり(部品・材料)

11,975

1.6

ものづくり(音響機器関連)

94,564

20.8

合計

106,539

18.3

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 総販売実績に対する割合が10%を超える相手先はありません。

3 上記には非継続事業からの実績は含んでおりません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループは、「No.1/Only1を創造し続ける事業グループ」を目指し、事業活動を行っております。当連結会計年度においても、コア事業である「ものづくり」事業の収益力・組織力の強化に集中的に取り組んでまいりました。具体的には、「部品・材料」セグメントを営むテイボー、「音響機器関連」セグメントを営むAlphaTheta及びJLabそれぞれの基盤事業の収益力・キャッシュ創出力の向上を図ってまいりました。当社グループは収益力・成長分野への投資実効性の指標として、事業EBITDAを重要な管理指標として結果を分析、評価しております。その詳細は「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであり、当連結会計年度において「中期経営計画 FY25」の数値目標を繰り上げて達成いたしました。2025年2月に次期中期経営計画である「中期経営計画 FY30」を策定し、2030年度までの経営目標を新たに設定いたしました。詳細については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営目標」をご参照ください。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループは、新たに発表した「中期経営計画 FY30」において、財務方針としてROE10%の達成を目標といたしました。次なるコア事業の獲得によるリターンと、株主還元の強化の二軸で目標達成に向けて活動してまいります。中長期のキャピタルアロケーションと成長投資の内訳については、以下のとおりであります。

 

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 引き続き、基盤事業の収益力を高め、成長分野に適切に投資し、中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRS会計基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び「2.作成の基礎 (3) 重要な会計上の見積り及び判断の利用」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、2024年4月30日開催の取締役会において、当社が保有するプリメディカの全株式を譲渡することを決議し、2024年5月31日に譲渡いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 35.非継続事業」に記載のとおりであります。

 なお、第69期有価証券報告書「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載した当社の連結子会社であるAlphaTheta株式会社が、Serato Audio Research Limited(以下「Serato」という。)の株式を取得するための株式譲渡契約について、2024年7月18日開催の取締役会において、Seratoの株式取得の中止並びにそれに伴う株式譲渡契約の解除を決議いたしました。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動につきましては、多様化するお客様のニーズに対応し、独自のノウハウとアイデアを盛り込んだ魅力ある商品開発を目的として、常に未来を見据え、果敢にチャレンジし、進化しつづける研究開発活動に注力しております。当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は7,215百万円であり、主にものづくり(音響機器関連)セグメントにおいて発生しております。

 なお、研究開発費の総額に受託研究等の金額はありません。