当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営方針
当社グループは引き続き「Payment to the People, Power to the People.」のミッションのもと、個人及びスモールチーム、スタートアップ企業をエンパワーメントすることは変わらず、すべての人が活躍できる社会基盤を提供してまいります。
当社グループは、対象顧客の拡大及びグループ独自の付加価値を向上させることにより、グループの価値創造の最大化を図ってまいります。
この価値創造を推進していくにあたり、中長期の経営方針として、既存プロダクトの成長及びシナジー創出に取り組むことを最優先にしながら、積極的なM&A及び提携等によりグループの非連続な成長を目指すことを掲げております。
<既存プロダクトの成長戦略>
① BASE事業
これまで通り、個人やスモールチームのエンパワーメントに注力する方針に変更はありません。GMV成長とテイクレート向上の両輪で成長させ、収益基盤としてグループの発展を支えてまいります。
2022年に月額有料プラン(グロースプラン)の提供を開始して以降は、テイクレートの向上により注力してまいりましたが、2024年12月期に実施した月額費用の値上げ等により、一定の成果を得られたことを受け、今後は、中長期的にGMVを成長させ続けるために、新規ショップ開設に改めて注力する方針です。
また、購入者向けショッピングサービス「Pay ID」については、BASEグループのショップ及び加盟店と、購入者双方に対するサービス及び機能の拡充により、「Pay ID」のショッピングアプリの収益化を実現し、BASE事業のテイクレート改善を目指してまいります。
プロダクト開発の方針といたしましては、越境ECや集客支援、ロジスティクス等の高付加価値な機能を、外部プラットフォームとの連携も実施しながら提供してまいります。特に、2024年8月に株式取得したwant.jp株式会社との共同開発により、「BASE」を利用するショップが誰でもかんたんに越境ECにチャレンジできる機能の提供を目指してまいります。
(注)「Pay ID」は、ID決済の提供により、購入者のショッピング体験をサポートするショッピングサービスで、登録者数は2024年12月現在、1,500万人を突破しております。
② PAY.JP事業
これまで通り、開発者が使いやすい競争力のあるプロダクトを追求し、プロダクトの付加価値向上を図ると同時に、料金体系の適正化や原価率の改善に加え、セールス&マーケティング等の強化により、引き続き力強いGMV成長と売上総利益率向上の両立に注力いたします。
③ YELL BANK事業
資金調達サービス「YELL BANK」は、BASEがショップの売上実績をもとに将来の売上を予測し、将来の売上債権を買い取ることで資金提供するサービスです。ショップは、商品が売れたときに支払い率に応じた売上金額を自動的にBASEに支払います。
さらに、2024年6月には、「YELL BANK」を「PAY.JP」の加盟店向けに横展開した「PAY.JP YELL BANK」の提供を開始いたしました。資金提供の仕組みは「BASE」のショップ向けと同様です。
このように、BASEグループ独自の資金調達サービスを「BASE」以外のプラットフォームにも横展開することにより、グループがエンパワーメントできる対象顧客の拡大を図ってまいります。
<積極的なM&A及び提携等によるグループの非連続な成長を目指す取組み>
引き続き既存事業の成長を最優先に追求しながらも、グループの非連続な成長の実現に向けて、積極的なM&A等による対象顧客の拡大と、「YELL BANK」の横展開等のBASEグループ独自のバリューアップにより、グループの価値創造の最大化を目指してまいります。
Eストアー社(注1)につきましては、2025年3月よりJG27(注2)がTOBを実施し、7月に当社がJG27からの全株式の譲受を予定しております。このEストアー社のM&Aにおいても、上記の方針のもとシナジー創出に注力し、テイクレートの向上を目指してまいります。
(注1)Eストアー社が提供する「Eストアーショップサーブ」は、ストアフロント型ネットショップの構築に必要な機能が盛り込まれた中小企業向けのSaaSシステムです。
(注2)JG27は、Eストアー及びコマース21の株式保有によるEストアー及びコマース21の事業活動の支配管理を主たる目的として、2024年12月24日に設立された株式会社です。
当社グループでは、売上総利益(売上高から流通総額に応じて決済会社へ支払う決済手数料を控除した金額)の成長を重視した経営を行っております。
当社グループの主な収益は、BASE事業においては、BASEショップの流通総額に対して発生する決済手数料及びサービス利用料であり、PAY.JP事業においては、PAY.JP加盟店の流通総額に対して発生する決済手数料であります。そのため収益の源泉である流通総額の最大化と、さらに提供するサービスの高付加価値化及び売上原価の低減により実現される売上総利益の最大化を目指しております。
国内の電子商取引(BtoC-EC)市場は、ネット上での販売商品の多様化、市場参加者の増加、物流事業者による配達時間の大幅な短縮化、スマートフォンの普及、SNSによる情報流通量の増加等を背景に引き続き順調な市場拡大が見込まれております。経済産業省発表の「令和5年度電子商取引に関する市場調査報告書」によると、BtoC-ECの市場規模は2023年時点で約24.8兆円(物販系約14.6兆円、サービス系約7.5兆円、デジタル系約2.6兆円)となっております。当社設立の2012年の市場規模は約9.5兆円であり、2012年からの10年間で市場規模は2倍を超え大きく成長しております。
また、昨今のSNSの普及により、購入者はネットショップで何らかの商品・サービスを購入する際に、その商品・サービスの販売者と直接交流をして商品・サービスの情報を取得したうえで、商品・サービスの「ユニークさ」や、ショップの世界観や販売者のパーソナリティに価値を見出して、購入するようになってきており、今後もSNSを活用した個人やスモールチームによる情報発信と個人同士のダイレクトな交流による商品販売の流れがさらに強まるものと考えております。
当社の「BASE」におきましても、オリジナル商品を販売するネットショップやブランド独自の世界観を有するネットショップに多数ご利用していただいており、今後想定されうる購入者の志向の変化にもタイムリーに対応可能であると考えております。
また、現在、電子決済普及拡大への取り組みは官民で非常に活発化しており、電子決済やキャッシュレス市場にとっては追い風が吹いている状況とも考えております。
2022年12月期においては、リオープニングに伴うオフライン消費の回復により、国内のオンライン消費が当社の想定以上に減速し、短期的には「BASE」にとって逆風の事業環境となっておりましたが、2023年12月期からは回復基調にあります。当社グループでは、こうした事業環境の変化にも機動的に対応し、現在の入手可能な情報に基づき最善の経営戦略を立案することで、企業価値の最大化に努めております。
上記の経営環境の下、当社グループが対処すべき主な課題として考える事項は以下のとおりであります。
① サステナブルな社会の実現
当社グループは「Payment to the People, Power to the People.」をミッションとして掲げ、インターネットテクノロジーによって、多くの方が必要としながらもまだ享受できずにいる決済や金融領域へのアクセシビリティを高め、これにより個人やスモールチームをエンパワーメントすることで、すべての人が活躍できる社会の実現を目指して企業活動を行っております。当社グループは、1日も早いミッションの実現を目指して、社会に開かれた決済・金融を提供するプラットフォーマーとしての責任と役割に向き合い、サステナブルな社会を実現するためにグループ全体を通じてESGに関する取組みを推進することが重要な課題であると考えております。
そのため、当社グループではサステナビリティ委員会を設置し、当該委員会においてサステナビリティに関する事項の審議、推進施策及び設定したKPIの遂行状況のモニタリングを行い、定期的に取締役会に報告することで、ESGに関する取組みを推進する体制を確保しており、当連結会計年度は、PRIDE指標2024におけるゴールド認定取得やスコープ3(GHG排出量)の開示義務化に備えた一部カテゴリの算出及び情報開示等、DE&Iや気候変動関連の取組みを実施いたしました。
今後も、2022年に特定した当社グループの重点課題であるマテリアリティに関する取組みを中心に、ESGに関する取組みを推進してまいります。
なお、特定したマテリアリティは以下の通りです。
② トップラインの成長と収益性向上の両立
当社グループはこれまで、2025年12月期における営業利益の通期黒字化を目標に掲げておりましたが、グループGMVの増加及びYELL BANK事業の成長、全ての事業における収益性の改善に加え、売上原価の削減と販売費及び一般管理費の効率化等を継続的に実施してきた結果、当連結会計年度において、1期前倒しでの黒字化を達成いたしました。
今後につきましても、規律ある投資方針のもと売上総利益をさらに増加させるとともに、収益性を改善させ、グループ全体の価値創造の最大化を目指してまいります。
③ M&A等による非連続な成長戦略
当社グループはこれまで、BASE事業、PAY.JP事業及びYELL BANK事業(以下既存事業)がグループの柱となり、成長をけん引してきました。
今後につきましては、引き続き既存事業の継続的な成長を追求するとともに、強固な財務基盤を背景に、M&A等による非連続な成長を目指してまいります。
M&Aの対象となる企業は、グループの対象顧客を拡大するだけでなく、既存事業とのシナジー創出による収益性の改善を期待できる先を想定しています。対象企業の事業の成長も追求しながら、BASEグループへのグループジョインによって実現できる新たな付加価値の創出に取り組んでまいります。
④ 人的資本の強化
当社グループは、持続的な成長や事業価値の向上を実現する上で、人材は唯一無二の中核的な経営資源であると考えております。従業員が自身の仕事やキャリアに主体性を持ち、新たなスキル習得や業務改善に挑戦し続けることを支援することが重要であると考え、教育体制や人事制度の整備、具体的な人事施策の実施を行っています。
具体的には、各種研修の企画と実施、DE&I推進による多様性と公平性のある環境の整備、人材育成計画の企画と実施、育児支援策の導入などの取り組みを行っています。
これらを通じて、人材育成や自律的なキャリア構築を支援しています。
⑤ 開発力・技術力の強化
当社グループの事業はインターネット業界と深くかかわっており、競争力のあるプロダクトをEC市場へ提供していくためには、その情報技術やサービスをタイムリーに採用し、常に新しいプロダクトを創造し続けていくことが重要な課題であると考えております。
そのために、EC環境の変化や当社グループのサービス利用者の要望を効率よく吸収し、質の高いプロダクトを提供してまいります。
⑥ サービスの安全性・健全性の確保
当社グループは、取引の場や決済サービスを提供する事業者として、あらゆるステークホルダーが安心して取引を行うことができるよう、サービスの安全性・健全性を確保することが重要な課題であると考えております。
そのため、BASE事業においては、365日対応の専門部署を設置することはもちろん、当社グループが保有する取引データの機械学習の活用等による分析やクレジットカード会社の不正配送先データベースの活用、3Dセキュアの導入等による不正決済や不適切な商品の販売を検知・防止、ネットショップ運営者に対するログイン認証方法の強化等を実施しており、また、PAY.JP事業においては、クレジット業界におけるグローバルセキュリティ基準であるPCI DSSに完全準拠した運用でクレジットカード情報を管理することで、サービスの安全性・健全性の確保を図っております。
⑦ 情報管理体制の強化
当社グループが提供するサービスにおいては、サービス利用者の個人情報をはじめとした様々な情報を預かっており、これらの情報を適切に管理するための体制強化が重要な課題であると考えております。 そのため、当社グループでは情報セキュリティ基本方針や情報セキュリティ基本規程等の社内規程を制定し、これらに基づいて情報の適切な管理を徹底しております。
また、情報セキュリティ専門部署の設置や、全社員向けの情報セキュリティ研修実施による情報セキュリティ対策の強化を図ることはもちろん、情報セキュリティ委員会を定期開催して情報セキュリティ上のリスクの洗い出し及び議論を実施しております。
今後も、グループ全体の教育・研修の実施やシステムの強化・整備を推進し、情報管理体制を強化してまいります。
⑧ 内部管理体制の強化
当社グループは今後もより一層の事業拡大を目指しており、社会的責任を果たし、持続的な成長と企業価値の向上を図るために、業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であると考えております。
そのため、バックオフィス業務の整備を推進し、経営の公正性・透明性を確保するための内部管理体制強化に取り組んでまいります。具体的には、リスクマネジメント及びコンプライアンス委員会を設置の上、業務運営上のリスクの把握及び管理の実施、役職員に対する定期的な研修等による啓蒙活動の実施、定期的な内部監査の実施等によるコンプライアンス体制の強化、監査役監査の実施によるコーポレート・ガバナンス機能の充実等を図っております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、サステナビリティ基本方針、マテリアリティ、サステナビリティに関連する施策案その他サステナビリティに関する重要事項の審議、調整及びモニタリングを行うとともに、経営会議へ上程すべき重要事項を審議・検討することを目的に、2022年3月からサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会を経由して経営会議で審議・決定された事項及び進捗状況については、定期的に取締役会に報告しております。
経営会議において決定した対応方針・施策等は、サステナビリティ委員会委員長である代表取締役上級執行役員CEOを中心として、社内の各部門が主体となって推進しております。
BASEグループは「Payment to the People, Power to the People.」をミッションに掲げ、インターネットテクノロジーによって、多くの方が必要としながらもまだ享受できずにいる決済や金融領域へのアクセシビリティを高め、それにより個人・スモールチームをエンパワーメントすることですべての人が活躍できる社会の実現を目指して企業活動を行っております。
創業当初から、「インターネットによって個人・スモールチームがより強くなったその時に、世界がもっともっとよくなる。」ということを誰よりも信じ続けてプロダクトの企画・開発に取り組んでまいりました。その想いはこれからも変わりません。
Payment to the People, Power to the People.
私たちは1日も早いこのミッションの実現を目指して、社会に開かれた決済・金融を提供するプラットフォーマーとしての責任と役割に向き合い、サステナブルな社会を実現するためにグループ全体を通じてESGの取り組みを推進してまいります。
基本方針に基づき、当社グループのサステナビリティ経営を加速させていくためのマテリアリティ(重要課題)を特定いたしました。今後は、マテリアリティを中心に施策を推進してまいります。
なお、マテリアリティの特定プロセスは以下の通りです。
STEP1 マテリアリティ候補の抽出
GRIスタンダード、SDGs (国連の持続可能な開発目標) 、SASB(サステナビリティ会計基準審議会)といった国際的な指標および、ISOや国際的なESG格付基準を参照し、当社の事業特性などを踏まえ、環境・社会・ガバナンスに係る重要課題候補を抽出いたしました。
STEP2 マテリアリティ候補の絞り込み・評価
社内外の取締役、上級執行役員、監査役および株主・投資家にインタビューを実施いたしました。その結果をもとに、“自社にとって重要な課題”および“ステークホルダーにとって関心度が高い課題”の観点より総合的に判断し、マテリアリティ候補の絞り込み・評価を実施いたしました。
STEP3 マテリアリティの特定
取締役会および経営会議における議論を通じて、当社ビジョンや経営戦略との関連性を評価し、取締役会決議を経て優先的に取り組むべき重要課題を特定いたしました。
特定したマテリアリティは、
当社は、持続的な成長や事業価値の向上を実現していくうえで、人材は最も重要な経営資源であると考えております。そのためには、従業員が自身の仕事やキャリアに主体性を持ち、挑戦し続けることを支援することが従業員の育成のために重要であると考えております。
多様性を尊重する企業文化のもと、一人ひとりの個性や能力が最大限に発揮できる制度や職場環境を整備し、ワークライフバランスの推進とDE&I環境を醸成し、社員のエンゲージメントの向上を実現します。
■具体的な取り組み
人材育成
当社グループは職種を問わず共通のスキルを9つの領域に定義し、優先順位を設定したうえで、各グレード・ポジション・キャリアパスに応じた育成施策を推進しています。これにより、従業員の成長を促し、組織全体の競争力向上を目指します。
すべての人が活躍できる社会の実現を目指す企業として、性別や性自認・性的指向、障がいの有無、国籍などあらゆる個人の違いを理由とした差別やハラスメントを許容しないことを人権方針として定め、DE&I研修の実施や社内制度のアップデート、有志社員のAllyコミュニティの活動支援などを行い、多様なバッググラウンドを持つあらゆるメンバーが働きやすい職場環境づくりを推進しています。女性の労働環境に応じて施策を実施し、女性が活躍できる環境づくりを推進しています。これにより、性別・国籍・障がい などの社内外の多様性を広げ、そこから生まれるさまざまな視点を活用することで、事業の成長に結びつけていくことを目指しています。
ワークライフバランス
ハイブリッドな働き方を提供するため、フレックスタイム制度や在宅勤務制度を継続して運用しており、『有給休暇5日以上の取得率100%』『平均残業時間が10時間未満』等の実績がでております。また従業員のライフステージに合わせた補助制度の導入やテスト運用を定期的におこなっており、2024年度では『育児休暇取得率は女性100%、男性80%以上』を実現し、職場復帰率も『女性、男性ともに100%』となりました。今後も多様な従業員が働ける仕組みを提供し、すべての人材が活躍できる環境を持続的に整備して参ります。
当社では「リスクマネジメント及びコンプライアンス委員会」において、事業活動を行う上で対処すべきリスクを認識・特定し、重点対応の協議を行っています。「リスクマネジメント及びコンプライアンス委員会」は代表取締役上級執行役員CEOを委員長とし、委員長により選任された委員で構成されており、四半期毎に開催され、特に重要と認識されたリスクについては定期的に取締役会へ報告されます。
当社では、決済・金融を提供するプラットフォーマーとして、大規模災害の発生を事業継続に影響をもたらす重要リスクの一つと捉え、従業員およびその家族の安全の確保、事業活動への影響の最小化を最優先事項として速やかな復旧に努められるよう、事前に想定されるリスクを抽出し、リスクの防止や低減等の各種施策を講じております。 2023年6月には、BASEグループとして事業継続計画(BCP)規程の策定を行い、代表取締役CEOを危機対策責任者とする危機管理体制の構築や安否確認システムの導入、各種マニュアル(防災・災害対策マニュアル、重要業務復旧計画書等)を整備する等、緊急事態が発生した場合に迅速な初動対応と事業の継続・早期復旧・正常化を図ることを可能にしております。 また、BCP主管部署にてBCP年間活動計画を策定し、平時から非常事態の発生を想定した安否確認訓練や自衛消防隊訓練を定期的に実施して非常時における各部署の役割と連絡体制が正しくスムーズに機能しているかを確認しており、必要に応じて随時見直しをしております。それらの結果については、四半期に一度開催されるリスクマネジメント及びコンプライアンス委員会に報告され、必要な対応方針の協議および対応状況のモニタリングを行う仕組みを構築しております。
引き続き、事業継続計画(BCP)規程に基づいたPDCAサイクルを回し、リスク管理強化に取り組んでいきます。
今後はサステナビリティに関する事項を所管する部門にて、社内の関係部門の協力の下、特定・評価した気候変動に関するリスクと機会を「サステナビリティ委員会」に報告・提言し、全社的な気候変動への対応を推進してまいります。また、「サステナビリティ委員会」で挙がった気候変動問題に関わる重要な環境リスクや社会課題については、「リスクマネジメント及びコンプライアンス委員会」と連携し、全社リスクに統合していきます。
女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差に関する指標については、
当社では、人材の育成及び社内環境整備に関する方針に基づき、以下の指標及び目標を定めております。なお、2030年までに下記を達成することを目標としております。
女性役員比率30%以上
女性管理職比率30%以上
当社グループでは、気候変動問題を事業に影響をもたらす重要課題のーつと捉え、マテリアリティ(重要改題)の一つとしてグループ全体で気候変動対策に取り組んでおり、2023 年 3 月には、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しました。TCFD 提言にある「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の開示推奨項目に沿って、 気候関連情報を開示いたします。
当社グループでは、気候変動がもたらすリスク及び機会につき、TCFD が提唱するフレームワークに基づいて当社グループ事業の特性を踏まえたシナリオ分析を行った結果、現時点においては以下のとおり認識しております。
当社グループでは、気候変動に関する評価指標として GHG(※1)排出量を算定しております。直近 2 か年における GHG 排出量の実績は下表の通りです。
当社グループにおけるGHG排出量
(※1)Green House Gas(温室効果ガス)の略称
(※2)マーケット基準で算定
(※3)連結子会社であるwant.jp株式会社(別拠点)の使用電力を含めた形で算出
なお、Scope1およびScope2については、本社及びwant.jp社オフィスの使用電力を全て再生可能エネルギー由来の電力に切り替えております。また、都内の商業施設で展開しているネットショップ作成サービス「BASE」が運営するリアル店舗出店スペース(「BASE」利用ショップに提供しているポップアップストアができるスペース)で使用している電力についても、再生可能エネルギー(電力)由来のクレジットを購入することによるカーボンオフセットを実施しており、2023年12月期以降、当社グループにおけるScope1+2のGHG排出量実質ゼロを実現しています。Scope3は2024年12期より段階的に開示をしており、開示範囲はカテゴリ5(事業から出る廃棄物)、カテゴリ6(出張)、カテゴリ7(雇用者の通勤)、カテゴリ9(下流:輸送配送)を対象としています。カテゴリ9(下流:輸送配送)のGHG排出量はヤマト運輸株式会社からデータ提供を受けており、当社プラットフォーム利用に伴って発生する輸送配送(下流)の全体の4割相当(当社調べ)のGHG排出量となります。
引き続き、当社グループにおけるScope1+2のGHG排出量実質ゼロの実現、その他範囲のScope3算出については、当社事業の特性を踏まえた形で、算出可能な範囲についての検討および議論を進めていきます。
当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、リスク要因となる可能性があると考えられる主な事項及びその他投資者の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項を以下のとおり記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上重要であると考えられる事項については積極的に開示することとしております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に取り組む方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の記載事項を慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
経済産業省発表の「令和5年度電子商取引に関する市場調査報告書」によると、BtoC-ECの市場規模は2023年時点で約24.8兆円(物販系約14.6兆円、サービス系約7.5兆円、デジタル系約2.6兆円)となっております。当社設立の2012年の市場規模は約9.5兆円であり、2012年から10年以上経過した現在において市場規模は2倍を超え大きく成長しております。
また、株式会社野村総合研究所発表の「2026年度までのICT・メディア市場の規模とトレンドを展望」によると、電子マネーや各種カードにより支払いをキャッシュレスで行うスマートペイメント(企業と個人間での商取引における電子的な決済手段)の市場の取扱高は2026年において147.8兆円に達する見通しです。
しかしながら、契約当事者の顔が見えず相手方の特定や責任追及が困難なこと等から悪質商法が行われやすい環境であり、電子商取引やオンライン決済サービスをめぐる新たな法的規制や個人消費の減退等により電子商取引やオンライン決済サービス自体が消費者に受け入れられない場合、電子商取引やオンライン決済サービスの普及の低迷や電子商取引やオンライン決済サービス市場の停滞が懸念されます。この場合、電子商取引やオンライン決済サービス市場規模と密接な関係にある当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業が属する電子商取引市場においては、ネットショップ作成サービスやショッピングアプリの開発・提供、及び決済代行サービス等のいずれの分野でも現在複数の競合会社が存在しており、相互に競争関係にあり、機能競争、価格競争が活発化しております。当社グループは引き続き、創業以来培ってきたノウハウを活かし、サービスの機能強化等に取り組んでいくほか、大手企業にはないサービスの開発に注力することで、差別化を図ってまいります。
しかしながら、当社グループと同様のサービスを提供する事業者の参入増加や、資本力、ブランド力、技術力を持つ大手企業の参入、競合他社の価格競争力、サービス開発力、又は全く新しいビジネスモデルや技術によるサービスを提供する事業者の参入等により、当社グループのサービス内容や価格等に優位性がなくなった場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
同様に、オンライン決済サービス市場においても、複数の競合他社が存在しております。当社グループでは引き続き一歩先を行くスピーディーな事業展開と、プロダクト開発体制の強化を進めていくことで、他者との差別化を図ってまいります。
しかしながら、今後競合他社が当社グループのサービスを模倣・追随し、これまでの当社グループの特徴が標準的なものとなり差別化が難しくなること、これまでにない全く新しい技術を活用した画期的なサービス展開をする競合他社が出現することなどの事態が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
インターネット・情報セキュリティの技術革新は著しく、EC市場においても決済手段の多様化やスマートフォン利用の拡大等常に進化しております。当社グループでは、安心で便利なEC環境を創造するため、より堅牢なセキュリティの整ったサービスの追求・新たなサービスの開発を行い、競争力を維持するため技術革新への対応を進めております。
しかしながら、今後当社グループが新たな技術やサービスへの対応が遅れた場合、当社グループのショップオーナーや購入者に対するサービスが陳腐化し、その結果競合他社に対する競争力が低下する恐れがあり、そのような場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが運営する「BASE」、「Pay ID」、「PAY.JP」及び「YELL BANK」では、加盟店及び購入者の決済を円滑化するサービス、加盟店のキャッシュ・フロー改善に資する早期入金サービス、将来債権の買い取りによる資金調達サービス等を提供しており、これらのサービスを提供するにあたっては「個人情報の保護に関する法律」、「割賦販売法」、「不当景品類及び不当表示防止法」、「特定商取引に関する法律」、「資金決済に関する法律」、「貸金業法」等の法令を遵守する必要があります。
そのため、当社グループでは、社内の管理体制の構築等によりこれらの法令を遵守する体制を整備するとともに、当社グループのサービスを利用するショップに対しても、これらの法令遵守を促すよう利用規約に明記しております。また、規制当局の動向及び既存の法規制の改正動向等を踏まえ、適切に対応しておりますが、かかる動向を全て正確に把握することは困難な場合もあり、当社グループがこれに適時適切に対応できない場合や、当社グループが事業を展開するEC業界やオンライン決済サービス業界に関する規制等の新たな制定又は改定が行われた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
地震・雷・台風・津波・悪天候その他の自然災害、長時間の停電、火災、疫病・感染症の蔓延、放射能汚染、その他の予期せぬ自然災害が発生した場合、当社グループの事業の運営又は継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、感染症が拡大した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、政変、戦争、テロリズム、クーデター、外国軍隊からの一方的な攻撃又は占領、政府等による当社グループ設備の接収、第三者による当社グループ設備の不法占拠その他の事故によっても、当社グループの事業の運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、あらゆる事態を想定して事業継続のための計画策定等を進めておりますが、これらのリスクの発現による人的、物的損害が甚大な場合は当社グループの事業の継続自体が不可能となる可能性があります。
当社グループでは、あらゆる事態を想定して事業継続計画(BCP)の策定を行い、危機対策事務局にて、平時から非常事態の発生を想定した安否確認訓練や自衛消防隊訓練を定期的に実施して非常時における各部署の役割と連絡体制が正しくスムーズに機能しているかを確認しており、必要に応じて随時見直しをしておりますが、これらのリスクの発現による人的、物的損害が甚大な場合は当社グループの事業の継続自体が不可能となる可能性があります。
⑥ 経済情勢について
当社グループが運営する「BASE」、「Pay ID」、「PAY.JP」及び「YELL BANK」は、日本国内を主たるマーケットとして事業を展開しており、日本国内の経済情勢の変動による影響を受ける可能性があります。具体的には、国内の景気動向、個人消費の変化、金利の動向、物価上昇(インフレ)やデフレの進行、金融政策の変更等が当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが運営する「want.jp」は、海外市場向けの越境ECサービスを提供しており、為替レートの変動による影響を受ける可能性があります。特に、円高が進行した場合、海外の購入者にとっての価格競争力が低下し売上が減少するリスクがあります。
このような日本国内の経済情勢の変動や為替レートの変動により、当社グループの業績及び財務状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの運営するサービスにおいては、ショップオーナーや購入者等のサービス利用者による法令により禁止されている物品の取引、詐欺等の違法行為、他人の所有権、知的財産権、プライバシー権等の権利侵害行為、法令や公序良俗に反するコンテンツの設置その他不適切な行為が行われる危険性が存在しております。かかる事態が生じることを防止すべく、当社グループのカスタマーサポートが随時、利用状況の監視や、利用規約に基づく警告・違法情報の削除等を行っております。
しかしながら、万が一、かかる事態が生じることを事前に防止することができなかった場合には、当社グループの運営するサービスの信用及びブランドイメージが低下し、ユーザー離脱等が発生する可能性があります。また、問題となる行為を行った当事者だけでなく、当社グループにおいても取引の場を提供する者として責任追及がなされるおそれがあり、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、加盟店に対して簡単にクレジットカード決済等を導入できるサービスを提供しております。当社グループでは、ショップオーナーの債務不履行、購入者が第三者のクレジットカード等を不正に利用する不正決済を防止するために、365日対応の社内の担当部署により取引状況の監視を行うとともに、システムによる不正決済の検知を行っております。
また、当社グループでは、クレジットカード情報や住所等の購入者情報等を登録することで、都度クレジットカード番号や住所を登録することなく、IDとパスワードでログインするだけでスムーズに決済を行うことができる購入者向けショッピングサービス「Pay ID」を提供しております。「Pay ID」にログインする際に二段階認証を要求する等の対応を行うことにより、第三者による不正ログインや、それに伴う不正決済が行われることを防止しております。
しかしながら、万が一、これらの事態を事前に防止できなかった場合、クレジットカード等の売上の取消しによる決済代行会社への売上金の返金、被害者から当社グループへの損害賠償請求、当社グループの信用の下落等による損害が発生し、業績及び今後の事業展開に影響を与える可能性があります。
当社グループは、第三者による当社グループのサーバー等への侵入に対して、ファイヤーウォール等の情報システム対策を施すほか、専門のチームを設置することにより組織的な情報セキュリティ強化を推進しております。
しかしながら、悪意をもった第三者の攻撃等により顧客情報及び顧客の有する重要な情報を不正に入手されるといった機密性が脅かされる可能性、顧客サイトの改ざん等のデータの完全性が脅かされる可能性、及びいわゆるサービス不能攻撃によってサービス自体が提供できなくなる等のシステム障害の可能性があります。このような事態が生じた場合、当社グループに対する法的責任の追及、企業イメージの悪化等により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業は、24時間365日安定したサービスを提供する必要があります。そして、当社グループのサービスを構成しているプログラム及び情報システムは、通信ネットワークに依存しております。そのため、当社グループでは、サービスの情報システムの監視体制やバックアップ等の対応策をとっております。
しかしながら、災害や事故等の発生により通信ネットワークが切断された場合、急激なアクセス数の増大によりサービス提供のためのサーバーが一時的に作動不能になった場合、又はサーバーハードウェアに不具合が発生した場合には、安定したサービス提供ができなくなる可能性があります。この場合、当社グループの顧客への代金支払等に直接的な障害が生じる可能性があることから、信用低下や企業イメージの悪化等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、事業を通じて取得した個人情報を保有しており、「個人情報の保護に関する法律」の規定に則って作成したプライバシーポリシーに沿って個人情報を管理し、その遵守に努めております。また、当社ではショップが購入者から取得した個人情報について委託を受けて管理しており、ショップによる個人情報流出を防止するため、管理画面へのログインについて2段階認証やパスキー認証を導入しています。PAY株式会社はクレジットカード情報を保有しているため、JCB・American Express・Discover・MasterCard・VISAの国際クレジットカードブランド5社が共同で策定した、クレジット業界におけるグローバルセキュリティ基準であるPCI DSS Version4.0に準拠した運用でクレジットカード情報を管理しております。なお、当社ではクレジットカード情報を保有していないものの、必要に応じてPCI DSS Version4.0に準拠しております。
しかしながら、不測の事態により個人情報が漏洩した場合や個人情報の収集過程で問題が生じた場合、クレジットカード情報が漏洩した場合には、当社グループへの損害賠償請求や当社グループの信用の下落等による損害が発生し、業績及び今後の事業展開に影響を与える可能性があります。
⑥ 知的財産権について
当社グループは、当社グループのサービスに関する知的財産権の取得に努め、当社グループが使用する商標、技術等についての知的財産権による保護を図っております。また、インターネットビジネス業界における技術革新、知的財産権ビジネスの拡大等に伴い、知的財産権の社内管理体制を強化しております。
しかしながら、契約条件の解釈の齟齬、当社グループが認識し得ない知的財産権の成立等により、当社グループが第三者から知的財産権侵害の訴訟、使用差止請求等を受けた場合、解決まで多額の費用と時間がかかることにより、当社グループの業績及び今後の事業展開に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、今後の更なる事業拡大と収益源の多様化を図るため、引き続き、積極的に新サービスや新規事業に取り組んでいく考えであります。これにより人材、情報システム投資や広告宣伝費等の追加投資が発生し、損益が悪化する可能性があります。また、新サービスや新規事業を開始した際には、その新たなサービス固有のリスクが加わり、当初想定とは異なる状況が発生することにより当初の計画通りに進まない場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑧ M&A等の投融資について
当社グループでは、今後の事業拡大のために、国内外を問わず出資、子会社設立、業務提携(アライアンス)、M&A等の投融資を実施する可能性があります。投融資の実行にあたっては、リスク及び回収可能性を十分に事前評価した上で決定してまいります。
しかしながら、投融資先の事業環境の変化、想定していたシナジー効果の未達、PMI(Post Merger Integration)の遅延・失敗、経営陣・従業員の統合・適応の困難さ、業務プロセスの統合の失敗等により、期待した事業成果を得られない可能性があります。また、投融資先の財務状況の悪化や事業環境の急変、法規制の変更等により、投融資額を回収できなくなるリスクや、取得した資産の減損処理を行う必要が生じるリスクもあります。特に、M&Aに伴い発生した「のれん」の減損リスクは、当社グループの財務指標や収益に重大な影響を及ぼす可能性があります。
このような要因により、当社グループの業績及び財務状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 特定の業務提携先への依存について
当社グループが提供しております、クレジットカード決済を主とする決済代行サービスやオンライン決済サービスは、特定の業務提携先との契約によるものであります。これら業務提携先からの、手数料引き上げ要求、契約打ち切り、取引内容変更等が発生した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、業務提携先が受領したネットショップ売上金の当社グループへの入金が、何らかの理由で不能又は遅延した場合、当社グループのキャッシュ・フロー及び業績に支障をきたす可能性があります。
当社代表取締役上級執行役員CEOである鶴岡裕太は、創業者であり、創業以来代表を務めております。同氏は、EC及びオンライン決済サービスに関する豊富な知識と経験を有しており、経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において極めて重要な役割を果たしております。
当社グループは、取締役会における役員の情報共有や経営組織の強化を図り、また、執行役員制度を導入することにより、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏が当社グループの業務を継続することが困難となった場合は、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、今後の成長戦略上必要なプロダクト開発計画の達成のため、従業員の育成、人材の採用を行うとともに業務執行体制の充実を図っていく方針ではありますが、これらの施策が適時適切に進行しなかった場合は、当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。
当社グループは、今後更なる事業拡大に対応するため、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。
しかしながら、事業規模に適した内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、今後の事業運営又は事業拡大に支障をきたし、当社グループの業績及び事業展開に影響を与える可能性があります。
第12期連結会計年度末時点において、税務上の繰越欠損金が存在しております。当社グループの業績が事業計画に比して順調に推移することにより、繰越欠損金が解消した場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、当社グループの業績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
当社は、現時点では成長過程にあるため、財務体質の強化に加えて事業拡大のための内部留保の充実等を図ることが重要であると考えており、会社設立以来、配当は行っておりません。しかしながら、株主に対する利益還元も経営の重要課題であると認識しており、2025年2月には自己株式取得を実施いたしました。
今後の配当政策の基本方針につきましては、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、当社を取り巻く事業環境を勘案し、内部留保とのバランスを取りながら検討していく方針であります。内部留保につきましては、財務体質の強化、競争力の維持・強化による将来の収益力向上を図るための資金として、有効に活用する方針であります。
当社グループでは、企業価値の向上を意識した経営の推進を図るとともに、役員及び従業員の業績向上に対する意欲や士気を一層高めることを目的として、当社グループの役員及び従業員等に対して新株予約権(インセンティブを目的とした新株予約権(ストック・オプション)を含む)及び譲渡制限付株式を付与しております。また、今後においても当社グループ役員及び従業員の士気向上や優秀な人材の確保を図るため、ストック・オプションの発行や譲渡制限付株式の発行を実施する可能性があります。
2024年12月末日現在において、これらの新株予約権による潜在株式数は4,848,000株であり、発行済株式総数(自己株式を除く)116,350,048株の4.2%に相当します。
今後、これら新株予約権が行使された場合や、譲渡制限付株式を発行した場合には、将来的に既存株主が保有する株式価値の希薄化や需給関係に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当社グループは「Payment to the People, Power to the People.」をミッションとして掲げ、ネットショップ作成サービス「BASE」及び購入者向けショッピングサービス「Pay ID」を提供するBASE事業、オンライン決済サービス「PAY.JP」を提供するPAY.JP事業、資金調達サービス「YELL BANK」等を提供するYELL BANK事業、及び越境ECサービス「want.jp」を提供するwant.jp事業を展開しており、これらのサービスを通して、個人及びスモールチームをエンパワーメントすること、スタートアップ企業を支援することに注力しております。
「令和5年度 電子商取引に関する市場調査」によると、2023年の国内物販系分野のBtoC-EC市場規模は、COVID-19の影響を受けた2020年や2021年と比べると緩やかではあるものの、堅調に増加しており、スマートフォン経由の販売は全体平均よりも高水準で成長しました。国内サービス系分野は非常に力強く成長しており、2023年はCOVID-19感染拡大前の水準を上回る市場規模に成長しました。これらの状況は、当連結会計年度においても継続していると認識しており、物販ECを主軸とするBASE事業と、サービス系の加盟店が一定の比率を占めるPAY.JP事業が、持続的な成長を続ける要因となっております。
このような事業環境においてBASE事業では、幅広い個人及びスモールチームから圧倒的に選ばれるポジションを維持し、中長期にわたる持続的な成長を実現するために、引き続きプロダクトの強化に努めております。PAY.JP事業では、スタートアップ企業やベンチャー企業をターゲットに、よりシンプルで導入や運用が簡単なオンライン決済機能を目指してプロダクトを強化し、既存加盟店の成長及び新規加盟店の拡大に努めております。YELL BANK事業においては、当社グループのマーチャントを対象に低リスクな資金調達手段を提供し、全てのマーチャントのキャッシュフローにまつわる課題を解決することに注力しております。さらに、2024年8月に子会社化したwant.jp株式会社が運営するwant.jp事業においては、日本の EC 運営者による世界中のローカルな販売網へのアクセスを容易にする越境ECサービスを提供しております。(注)
以上の結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は15,981百万円(前年同期比36.8%増)、営業利益は772百万円(前年同期は営業損失425百万円)、経常利益は796百万円(前年同期は経常損失409百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は340百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失606百万円)となりました。
なお、当連結会計年度より、want.jp株式会社を連結子会社化したことに伴い、「want.jp事業」を報告セグメントとして追加しております。また、従来「その他事業」としていた報告セグメントの名称を「YELL BANK事業」へ変更しております。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
(注)当連結会計年度におけるwant.jp株式会社の連結損益計算書への取り込みは、10月から12月の3カ月分のみです。
当連結会計年度のBASE事業の流通総額は、月間売店数及び1ショップあたり月間平均GMVがともに増加し、前年同期比で増加しました。2024年1月16日より、月額有料プラン(グロースプラン)の月額費用を5,980円から19,980円に値上げいたしましたが、当連結会計年度を通じて、他社への移転等は想定よりも抑制され、多くのショップに継続利用して頂けており、流通総額の成長を維持しながら、収益性を改善させることができました。
以上の結果、当連結会計年度の流通総額は、注文ベースで154,184百万円、決済ベースで、146,766百万円(前年同期比13.4%増(注文ベース)、13.7%増(決済ベース))、売上高は9,092百万円(前年同期比17.1%増)、セグメント利益は691百万円(前年同期は60百万円のセグメント損失)となりました。
当連結会計年度におけるPAY.JP事業の流通総額は、既存加盟店及び新規加盟店両方が引き続き増加しました。さらに、上半期に実施した原価率(対流通総額比)の削減効果により、売上総利益率は大幅に改善し、当事業においても、流通総額の成長を維持しながら、収益性を改善させることができました。
以上の結果、当連結会計年度の流通総額は207,588百万円(前年同期比47.1%増)となりました。売上高は5,726百万円(前年同期比58.8%増)、セグメント利益は245百万円(前年同期は84百万円のセグメント損失)となりました。
当連結会計年度におけるYELL BANK事業は、継続的に実施してきた「YELL BANK」の機能改善等の効果により、期初想定を超えて利用ショップ数及び利用金額が大幅に増加しました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は902百万円(前年同期比192.8%増)、セグメント利益は394百万円(前年同期は25百万円のセグメント損失)となりました。
2024年8月のwant.jp株式会社を子会社化したことにより、2024年10月より損益計算書への取り込みを開始し、当連結会計年度のwant.jp事業の売上高は258百万円、セグメント損失は47百万円となりました。
なお、当第4四半期連結会計期間においては、為替の変動に加え、「want.jp」が出店する海外のECプラットフォームの方針変更等の影響を強く受けたことにより、業績は想定を下回って推移したことを踏まえ、want.jp株式会社の株式取得時に想定していた超過収益力等が減少したと判断されたことから、want.jp株式会社の株式の取得により生じたのれん及びwant.jp株式会社の固定資産全額の減損処理による867百万円を、連結決算において特別損失として計上しました。
(資産)
当連結会計年度末における総資産は46,288百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,990百万円増加いたしました。これは主に、未収入金の増加4,039百万円、現金及び預金の増加3,502百万円によるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は32,687百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,390百万円増加いたしました。これは主に、営業未払金が17,426百万円増加した一方で、その他の負債(主に営業預り金)が9,855百万円減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は13,600百万円となり、前連結会計年度末に比べ600百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が340百万円増加したこと、譲渡制限付株式報酬の付与及びストック・オプションとしての新株予約権の行使により、資本金が66百万円、資本剰余金が66百万円増加したことによるものであります。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、25,730百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,502百万円増加いたしました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は3,657百万円(前年同期は80百万円の使用)となりました。主な増加要因は、営業未払金の増加17,426百万円、減損損失の計上867百万円等であり、主な減少要因は、営業預り金の減少10,247百万円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は159百万円(前年同期は53百万円の使用)となりました。主な増加要因は、敷金の回収による収入240百万円であり、主な減少要因は、敷金の差入による支出234百万円、新規連結子会社の取得による支出87百万円等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は3百万円(前年同期は16百万円の獲得)となりました。主な増加要因は、新株予約権の行使による株式の発行による収入10百万円等であり、主な減少要因は長期借入金の返済による支出10百万円等によるものであります。
当社グループで行う事業は、インターネットを利用したサービスの提供であり、提供するサービスには生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載を省略しております。
当社グループでは、概ね受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績に関する記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用とともに、資産及び負債または損益の状況に影響を与える見積りを用いております。これらの見積りについては、過去の実績や現状等を勘案し、合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なることがあります。
当社の連結財務諸表を作成するにあたって採用している重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(売上高)
当連結会計年度における売上高は15,981百万円(前年同期比36.8%増)となりました。主に、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載の要因により、BASE事業及びPAY.JP事業において、流通総額が増加したことによるものであります。
(売上原価)
当連結会計年度における売上原価は8,814百万円(前年同期比32.6%増)となりました。主な要因は、流通総額の増加により、決済代行業者等への支払手数料が増加したことによるものであります。
この結果、売上総利益は7,166百万円(前年同期比42.4%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は6,393百万円(前年同期比17.1%増)となりました。主な要因は、オンライン広告及びクーポン等の販促支援のプロモーションの増加により、販売促進費が増加したことによるものであります。
この結果、営業利益は772百万円(前年同期は営業損失425百万円)となりました。
(経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は32百万円となりました。主な内容は、受取手数料20百万円、講演料等収入4百万円であります。また、営業外費用は8百万円となりました。主な内容は、コミットメントフィー3百万円、社債利息2百万円であります。
この結果、経常利益は796百万円(前年同期は経常損失409百万円)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における特別損失は、減損損失867百万円の計上によるものであります。また、法人税等合計は△411百万円となり、内容は、法人税、住民税及び事業税203百万円、法人税等調整額△615百万円であります。
この結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は340百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失606百万円)となりました。
当社グループの資金需要のうち主なものは、当社サービスを拡大していくための開発人員の人件費、システム利用料、外注費等であります。これらの資金需要に対しては、自己資金及び銀行借入により調達することを基本方針としております。
当社グループは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、市場動向、競合他社、人材確保・育成等様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保するとともに、市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。
当社グループが今後の事業内容を拡大し、より高品質なサービスを継続提供していくためには、経営者は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対処していく必要があると認識しております。それらの課題に対応するため、経営者は常に市場におけるニーズや事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、現在及び将来における事業環境を認識したうえで、当社グループの経営資源を最適に配分し、最適な解決策を実施していく方針であります。
(注) 契約締結時における相手先の名称は「株式会社イーコンテクスト」でありましたが、同社グループの組織再編に伴い、「株式会社DGフィナンシャルテクノロジー」に契約上の地位が承継されております。
該当事項はありません。