第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、「安全・安心の提供を通じて社会に貢献する」を経営理念として掲げております。

 

(2)コーポレートビジョン

当社グループは、「安全・安心の提供を通じて社会に貢献する」という経営理念の下、2040年の将来像、ありたい姿として「これまでも、そしてこれからも 建設を支える耐震建材メーカーとして培った「創造力」×「つなぐ力」×「人の力」で世界中の人々の生活に安全・安心を提供するグローバル・ソリューションプロバイダー」を掲げ、「okabe コーポレートビジョン 2040」として策定しております。「okabe コーポレートビジョン 2040」の実現に向け、当社グループ一人ひとりが一丸となり、業務に邁進することが、企業価値の向上及び株主共同の利益の確保につながることを確信しております。

同ビジョンに込めた想いは次のとおりであります。

① 創造力

創造的な技術力により、建物と人々の安全・安心を支える会社でありたいと考えており、新しい技術を活用し、建設工事の自動化やゼロエミッション等に向けたソリューションを生み出し続ける会社を目指してまいります。

② つなぐ力

お客様、株主・投資家様、協力会社・サプライヤー様、社員、地域社会とのコミュニケーションで生まれる人とつながる力、建設現場に使われる重要な部材をつなげて安全性を高める力を示しております。

③ 人の力

社是に掲げている「人材の育成に努力し、企業の永遠の発展を期すること」、「社員にとってその一生を託して、悔いることのない職場たること」が示すように、すべての基盤は「人の力」にあると信じており、2040年も不変であることを示しております。

これらの3つの力の根底にあるのは、「安全・安心の提供を通じて社会に貢献する」という想いです。様々な外部環境を想定しながら、地球環境と人類が良い方向に変化するよう、地球の一員として、持続可能な社会に貢献できる会社でありたいという想いを込めております。

 

(3)中長期的な経営戦略

当社グループは、2024年12月期を初年度とする中期経営計画「OX-2026(okabe Transformation 2026)」を策定し、カスタマー・セントリック(顧客が抱える課題を最優先で解決するための体制整備と取組みの実施)、人的資本経営の実践と経営基盤の強化、DXのさらなる推進の3つを事業戦略の骨子として掲げ、会社の持続的発展と企業価値の向上に向け取り組んでおります。

OX-2026の方向性としまして、国内外のマテリアリティ(重要課題)にソリューションを提供し、持続的な成長を図るため、事業ポートフォリオの見直しも含めて経営リソースを集中し、サステナビリティ経営を推進してまいります。

OX-2026の事業戦略の骨子及び主な施策は次のとおりであります。

① カスタマー・セントリック(顧客が抱える課題を最優先で解決するための体制整備と取組みの実施)

・顧客・社会の課題を解決する新製品の開発・新規事業の創出

・国内建設に特化した商品企画室の新設

・北米・ASEAN市場に適したソリューションの提供による建設事業のグローバル展開加速

・海洋事業におけるブルーカーボン事業開始

② 人的資本経営の実践と経営基盤の強化

・人的資本を中心とした非財務KPIのチャレンジングな設定及び目標の達成

・海外子会社ガバナンスの改善

③ DXのさらなる推進

・基幹システムの刷新、業務プロセスの改革

・DXの推進による、顧客への付加価値の提供及び次世代への技術・ノウハウの承継

・IT戦略室の新設

 

(4)経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

今後のわが国経済の先行きにつきましては、公共投資は引き続き底堅く推移することが見込まれ、民間設備投資は堅調な企業収益等を背景に、持ち直しに向かうことが期待されます。しかしながら、労務費の高騰や鋼材価格の高止まりは引き続き注視が必要な状況であり、事業環境は依然として厳しい側面が想定されます。

2025年12月期におきましては、国内においては、省力化・防災減災・環境対策などの社会課題の解決に貢献する製商品の提案に注力するなど、仮設型枠・土木・構造機材分野における成長戦略の推進を一層加速してまいります。また、海外においては、北米とインドネシアにおける営業基盤及びガバナンスの強化に注力してまいります。

当社グループは、戦略的な成長投資による収益基盤の強化と持続的な企業価値向上を図るとともに、資本効率の向上と株主還元の強化を通じ、PBR1倍超の早期実現を目指してまいります。

 

(5)目標とする経営指標

当社グループは、中期経営計画「OX-2026(okabe Transformation 2026)」において、中期的な業績目標(売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益)を設定しております。また、企業価値の向上のため、資産及び株主資本の有効活用が重要との考えから自己資本利益率(ROE)の目標値を設定しております。

2025年度の目標値は、売上高725億円、営業利益47億円、経常利益48億円、親会社株主に帰属する当期純利益31億2千万円、ROE5.2%であります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組み】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ共通

当社グループは、「安全・安心の提供を通じて社会に貢献する」という経営理念のもと、「人とのつながりと価値を創造するグローバルメーカー」を目指し、持続可能な社会の実現に貢献することをサステナビリティ基本方針として定めております。

サステナビリティ基本方針のもと、各種関連方針により、マテリアリティ(重要課題)への取組みを持続的に行い、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

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① ガバナンス

当社では、サステナビリティに知見のある社外取締役を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会は、当社グループにおけるサステナビリティ経営の実施状況の管理・監督を目的として設置しており、取締役会の諮問機関として、当社グループの中長期経営戦略の基盤となるサステナビリティ経営に関する次の事項について審議しております。

[サステナビリティ委員会審議事項]

a.サステナビリティ基本方針及びコミットメントが中長期経営戦略及び成長シナリオに組み込まれており、持続的な成長に貢献しうるかの確認及びその実施状況の審議

b.サステナビリティに係るマテリアリティが外部環境認識や中長期経営戦略に整合、連動しているかの審議

c.SDGs及びESGに関する定量的な目標設定及びその水準が中長期経営戦略と整合しており、持続的な成長に貢献しうるかの確認及びその実施状況の審議

d.サステビリティを脅かすリスク認識の妥当性及びリスクマネジメントの状況の審議

サステナビリティ委員会は、定期的に取締役会に活動内容を報告しており、取締役会で適切に監督される体制を整えております。

また、代表取締役社長執行役員を委員長とし、経営層が中心となり構成されるリスクマネジメント委員会を設置しており、気候関連のリスクを含め、当社グループのリスクマネジメントの全体方針及び計画の策定、リスクマネジメントの推進を実施しております。リスクマネジメント委員会では、気候関連リスクを含めた事業リスクを定性的に評価した上で定量的な評価も織り込み、リスクを評価しております。その評価結果をもとに重要リスクを選定し、半期ごとに状況報告を実施するとともに、全社的な視点から必要な戦略の決定、施策の指示等を実施しております。サステナビリティに関するリスクについては、サステナビリティ委員会と連携して対処しております。

リスクマネジメント委員会は、定期的に取締役会に活動内容を報告しており、取締役会で適切に監督される体制を整えております。

取締役会は、事業戦略の策定・経営判断に際して、気候変動に関する問題を重要な要素の一つとして考慮し、総合的に審議・決定しております。取締役会は毎月1回以上開催され、取締役の業務執行を監督しております。取締役会には、サステナビリティ分野に精通した取締役4名を選任しております。4名の内2名は、気候関連問題をはじめとした、当社グループの企業価値を高めるサステナビリティ戦略の策定、中長期的な企業価値向上の観点から当社グループの事業戦略や計画に対して、客観的な立場から助言や監督が行える社外取締役としております。

なお、当社は、取締役に対する業績連動報酬制度において、「総CO2換算排出量」を業績評価指標の一つに採用しております。詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等(4)役員の報酬等」をご参照ください。

 

 

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[2024年度のサステナビリティ委員会の主な議題]

開催時期

主な議題

2024年3月

・TCFD開示拡充(物理的リスク/機会)に関する審議

・有価証券報告書のサステナビリティ開示に関する審議

・2024年度版統合報告書の制作方針に関する審議

・今後の活動計画に関する審議

2024年9月

・CDPの回答に関する審議

・GHG排出量削減計画に関する審議

・サプライヤー行動規範の策定に関する審議

・TNFDへの対応に関する審議

・GHG排出量の第三者保証に関する審議

 

② 戦略

当社グループは、「安全・安心の提供を通じて社会に貢献する」という経営理念の下、2040年の将来像、ありたい姿として「これまでも、そしてこれからも 建設を支える耐震建材メーカーとして培った「創造力」×「つなぐ力」×「人の力」で世界中の人々の生活に安全・安心を提供するグローバル・ソリューションプロバイダー」を掲げ、「okabe コーポレートビジョン 2040」として策定しております。

また、当社グループは、2024年12月期を初年度とする中期経営計画「OX-2026(okabe Transformation 2026)」を策定し、カスタマー・セントリック(顧客が抱える課題を最優先で解決するための体制整備と取組みの実施)、人的資本経営の実践と経営基盤の強化、DXのさらなる推進の3つを事業戦略の骨子として掲げ、会社の持続的発展と企業価値の向上に向け取り組んでおります。

OX-2026の方向性としまして、国内外のマテリアリティ(重要課題)にソリューションを提供し、持続的な成長を図るため、事業ポートフォリオの見直しも含めて経営リソースを集中し、サステナビリティ経営を推進してまいります。

詳細につきましては、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

[マテリアリティ(重要課題)]

分類

活動テーマ

マテリアリティ

貢献するSDGs

社会

安全・安心で持続可能な

社会づくり

①地震、豪雨等の災害の甚大化

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  0102010_004.png

 

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②建設事業の環境変化

③人口減、高齢化社会

④人とのつながり、人的資本経営

環境

地球環境への配慮と

資源の保全

⑤気候変動、地球温暖化

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⑥環境保全、脱炭素、資源循環の実現

⑦海洋資源の維持

ガバナンス

経営の健全性・

透明性の向上

⑧ガバナンスの強化

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③ リスク管理

上記のマテリアリティ(重要課題)の特定にあたっては、各ガイドライン等を参考に社会課題を抽出し、社会の影響度と事業における重要度の二次元で課題を整理した上で、サステナビリティ委員会で審議し、取締役会での承認を経てマテリアリティとして特定しております。特定したマテリアリティには定量目標を定め、サステナビリティ委員会で進捗状況をモニタリングしております。

全社的な視点でのリスクマネジメントにつきましては、リスクマネジメント委員会を設置し、半期ごとに状況報告を実施するとともに、全社的な視点から必要な戦略の決定、施策の指示等を実施しております。

経営目標の達成や企業の継続性に大きな影響を与えるリスクを的確に認識し、適切な対応を図るために、リスクマネジメント体制を整備しております。リスク評価では、「影響度」及び「発生頻度」から気候関連リスクを含めた事業リスクを定性的に評価した上で、定量的な評価も織り込み、リスクの重要度を評価し、管理しております。特に、新たな戦略や取組みに伴い発生するリスクなどの内部要因によるリスクのほか、大規模自然災害や気候変動などの外部要因によるリスクを、重要リスクと位置づけ、リスク低減に向けた取組みを進めております。

サステナビリティに関するリスクについては、サステナビリティ委員会及びリスクマネジメント委員会の連携により、リスクの特定及びモニタリングを行い、取締役会に適宜報告しております。詳細につきましては、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」をご参照ください。

 

④ 指標と目標

各マテリアリティに対する主なKPIや実績、目標は以下のとおりであります。詳細につきましては、財務・非財務データ集として当社ウェブサイトのサステナビリティページ(https://www.okabe.co.jp/sustainability/)に掲載しております。

マテリアリティ

主なKPI

単位

範囲注1

2023年度実績

2024年度実績

2026年度目標

①地震、豪雨等の災害の甚大化

②建設事業の環境変化

③人口減、高齢化社会

構造機材製品売上高

百万円

国内連結

20,450

20,207

22,300

土木製品売上高

百万円

国内連結

7,428

6,892

8,000

新製品発売数

国内連結

9

11

年間10

④人とのつながり、人的資本経営

共同研究する大学(学識者)の数

国内連結

契約関係 5

協力関係 6

契約関係 6

協力関係 0

10

女性管理職比率

岡部単体

4.7

5.8

10.0

育児休暇取得従業員比率

岡部単体

41.7

55.6

100.0

男性従業員育児休暇取得比率

岡部単体

33.3

38.5

100.0

障がい者雇用比率

岡部単体

2.3

2.5

2.7

IT関連保有資格数

岡部単体

95

114

600

社会・地域貢献活動への投資額

百万円

岡部単体

26

27

26

⑤気候変動、地球温暖化

⑥環境保全、脱炭素、資源循環の実現

⑦海洋資源の維持

CO2排出量(Scope1+2)合計

t-CO2e

グループ連結

8,254

7,311注3

6,174

CO2排出量(Scope3 カテゴリ1+4)合計

t-CO2e

グループ連結

362,420

307,594注3

335,913

CO2吸収固定に貢献する海藻種苗の出荷数

グループ連結

185

2,988

2,000

総廃棄物リサイクル量

トン

岡部単体

2,749

2,711

3,396

(前年比+5%)

使用済みPコンのリサイクル数量

万個

岡部単体

97

80

300

⑧ガバナンスの強化

社外取締役比率

岡部単体

41.7

46.1

1/3以上

女性取締役比率

岡部単体

8.3

15.3

16.7

監査等委員会の社外取締役比率

岡部単体

75.0

75.0

過半数

以上

(注)1 「岡部単体」は、岡部㈱のみの範囲になっております。「国内連結」は、岡部㈱、OMM㈱、㈱富士ボルト製作所及び㈱河原を含んだ範囲になっております。「グループ連結」は、国内連結とあわせてOCM,Inc.、OCM Manufacturing LLC、Okabe Real Estate Holdings LLC、PT. フジボルトインドネシア、PT.Okabe Hardware Indonesia、PT. Okabe Retail Indonesia 及びオカベCO., INC.を含んだ範囲になっております。当社グループ(当社及び当社の関係会社)の詳細につきましては「第1 企業の概況 3.事業の内容 事業系統図」又は「第1 企業の概況 4.関係会社の状況」をご参照ください。

2 「労働者の男女の賃金の差異」につきましては「第1 企業の概況 5.従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」をご参照下さい。なお、該当箇所の数値については、岡部㈱のみの範囲で、当事業年度の実績のみの記載となっております。

3 2024年度のScope1+2、Scope3排出量は速報値となります。確定排出量は、「OKABE INTEGRATED REPORT(統合報告書)2025」にて開示予定でございます。

 

(2)気候変動への対応(TCFD提言に基づく情報開示)

当社グループは、「これまでも、そしてこれからも建設を支える耐震建材メーカーとして培った「創造力」×「つなぐ力」×「人の力」で世界中の人々の生活に安全・安心を提供するグローバル・ソリューションプロバイダー」という「okabe コーポレートビジョン 2040」のもと、「気候変動、地球温暖化」及び「環境保全、脱炭素、資源循環の実現」をマテリアリティの一つとして特定しております。将来的には、GHG排出量の削減に加え、建設現場ゼロエミッションへの貢献、ブルーカーボンの事業化に向けた取組みなど、環境負荷低減への取組みを積極的に進め、カーボンニュートラル企業を目指してまいります。

当社グループは、2021年12月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明し、2022年度より同提言に沿った情報を開示しております。詳細につきましては、当社ウェブサイトの「TCFD提言に基づく情報開示(https://www.okabe.co.jp/sustainability/environment03/)」をご参照ください。

 

① ガバナンス

(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

イ リスク・機会の特定

当社グループの事業に影響を及ぼす気候関連リスク・機会の特定にあたり、事業における移行リスク/機会、物理的リスク/機会を抽出し、それらの財務への影響を大~軽微の3段階で評価いたしました。影響度が中以上となったリスク及び機会は以下のとおりであります。

 

リスク/

機会

領域

要因

事業影響

財務への影響度

移行

リスク

規制

炭素価格導入、GHG排出規制強化

炭素価格上昇による原材料価格・上流コスト上昇分の転嫁によるコスト増加

自社ビル、工場などの操業における炭素価格上昇によるコスト増加

規制

省エネ法規制の強化

再エネ調達コストの増加

設備更新・投資などの対応コストの増加

市場

化石資源の価格の変化

エネルギー価格・原材料価格上昇による鋼材価格の上昇

物流コストの変化

燃料価格上昇による輸送・保管コストの増加

中~大

輸送サービスの脱炭素化に伴う価格上昇による物流コストの増加

技術

代替品の出現

新たな低炭素製品が出現し自社製品の需要が減少

移行・

機会

市場

ZEB建築・ネットゼロカーボン建築需要の高まり

事業機会の拡大・省力化工法/製品・木造関連製品の販売機会の拡大

規制

GHG排出規制の強化

脱炭素・低炭素製品の需要の増加

炭素価格導入

海洋関連製品の販売機会の拡大

物理的

リスク

慢性

気温上昇

生産工程における作業効率低下及び対策コストの増加

中~大

急性

極端気象の増加

自社拠点の被災による操業停止、設備の修復コストの増加による収益減少

サプライチェーンの分断

物理的・

機会

慢性

国土強靭化政策の強化

災害激甚化に備えた設備・インフラの強靭化需要増加/土木工事(法面補強)の需要増加

気温上昇

省力化に寄与する工法/製品の販売機会の拡大

急性

降雨パターンの変化

土木工事(法面補強)の需要拡大

極端気象の増加

土砂災害の防止に使用される製品等の販売の増加

災害危険エリアからの移転

海抜の低い地域からの移転需要の発生

(注)影響度 大;1億円以上,中;1,000万円以上1億円未満,軽微(小);1,000万円未満

 

 

ロ シナリオ分析のテーマ設定

抽出・整理した気候関連リスク及び機会について、事業への影響度、事業戦略との関連性、ステークホルダーの関心度等を勘案し、当社グループとして重要度が高いと評価した次のテーマについてシナリオ分析を実施いたしました。

 

リスク/機会

分析テーマ

移行リスク

自社に係る炭素価格の変化による影響

物理的リスク

気候変動に伴う気象災害の増加が事業拠点に与える影響について、優先的に調査すべき拠点のスクリーニング

機会

気候変動に伴う災害対策工事の増加が事業拠点に与える影響

 

ハ シナリオ分析結果

a.移行リスク: 自社に係る炭素価格の変化による影響

分析内容

炭素価格の変化による将来的な操業コストへの影響を予測するため、当社グループのGHG排出量(Scope1、Scope2)の将来の変化について2℃未満のシナリオを含む複数シナリオで予測し、シナリオ別に想定される炭素価格が導入された場合の財務影響を分析いたしました。

本社及び連結子会社を集計対象としております。(2021年10月に連結子会社化された米国OCM Manufacturing LLCを除く)

分析の

前提条件

分析にあたり2030年、2050年における当社グループの活動量(GHG排出量、再生可能エネルギー調達量)は事業計画をもとに設定いたしました。GHG排出量1トン当たりに対して、先進国において2030年では18,340円、2050年では32,750円、ネットゼロ宣言(CO2などの温室効果ガスの排出量を将来的にゼロとする宣言)をしている新興市場・途上国において2030年では11,790円、2050年では26,200円の炭素価格が課されると仮定し、その影響を試算いたしました。また、当社グループの事業戦略の強靭性を評価するため、GHG排出量・使用エネルギーの削減に取り組まなかった場合に対して、再生可能エネルギーの調達による削減に取り組むことでどれだけ財務影響を抑えることが可能かについても検証いたしました。

なお、炭素価格や電力の排出係数はIEAによるWorld Energy Outlook 2022(Net Zero Emissions by 2050 Scenario、Stated Policies Scenario)を参考にいたしました。

分析において参照いたしました外部情報:

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※IEA:International Energy Agency

WEO: World Energy Outlook

NZE: Net Zero Emissions by 2050 Scenario

STEPS: Stated Policies Scenario

分析結果

炭素価格が導入された場合の、操業コストへの財務影響を試算いたしました。

2030年時点では、当社グループのGHG排出量が削減されなかった場合、2.6℃シナリオに比べて、1.5℃シナリオの方が財務的な影響額が約1,200万円低いことが判明いたしました。また、再生可能エネルギーの活用等を通したGHG排出量の削減に取り組むことによって、約1,200万円抑えることができるため、その影響の程度は限定的となると考えられます。

2050年時点では、当社グループのGHG排出量が削減されなかった場合、2.6℃シナリオに比べて、1.5℃シナリオの方が財務的な影響額が約3,300万円大きいことが判明いたしました。

 

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※1.5℃シナリオにおいては、2050年時点で当社事業拠点の地域で調達する電力の排出係数が0(以下)になると想定し、再生可能エネルギー導入によるGHG排出量削減効果は得られないと想定している。

対応戦略

当社グループは、GHG排出量に関する目標を「2030年までにGHG排出量(Scope1+2マーケット基準)を指標とし、2022年比で50%削減する」と定め、再生可能エネルギーの導入促進等の排出削減策を積極的に進めております。1.5℃シナリオにおいて、再生可能エネルギーの導入に係るコストは導入によって削減されるGHG排出量に係る炭素価格よりも小さくなると想定しており、2030年において計画通り再生可能エネルギーが導入された場合は、導入しなかった場合に比べて財務的影響が小さくなると考えられます。

 

b.物理的リスク:気候変動に伴う気象災害の増加が事業拠点に与える影響について、優先的に調査すべき拠点のスクリーニング

分析内容

気候変動に伴う気象災害の増加が当社グループの事業に与える影響を予測するため、当社グループの国内外10拠点(国内:7拠点、海外:3拠点)について、影響の可能性を評価し、物理的リスクの影響について優先的に調査すべき拠点のスクリーニングを行いました。

分析の

前提条件

分析では、公開資料や外部専門家からの提供資料等に基づき、RCP2.6(又はSSP1-2.6)及びRCP8.5(又はSSP5-8.5)の気候変動シナリオ下における、河川氾濫、高潮による浸水ハザード、及び渇水ハザード、熱波ハザードについて、現在から21世紀半ばまでのグレードの変化を評価いたしました。

分析結果

国内拠点では、洪水リスクについては、リスクに留意すべき(グレードB以上)と評価された拠点が現在で4拠点あり、うち1拠点がハザード大(グレードA)と評価され、21世紀半ばまでの気候変動による変化は見られませんでした。高潮リスク・渇水リスクについては、リスクに留意すべき(グレードB以上)と評価された拠点はありませんでした。熱波リスクについては、SSP5-8.5下の21世紀半ばにおいて1拠点がグレードBと評価され、他の拠点についてもSSP5-8.5下でリスク増加の傾向が見られました。

海外拠点では、洪水リスクについては、リスクに留意すべき(グレードB以上)と評価された拠点はなく、気候変動による将来変化は見られませんでした。高潮リスクについては、全拠点が高潮による浸水ハザードは極めて低いと考えられる(グレードE)と評価され、気候変動による将来変化は見られませんでした。渇水リスクについては、2015年時点で3拠点中1拠点がリスクに留意すべき(グレードB以上)と評価されましたが、ハザード大(グレードA)と評価された拠点はございませんでした。熱波リスクについては、リスクに留意すべき(グレードB以上)と評価された拠点はございませんでしたが、全拠点に気候変動によるリスク増加の傾向が見られました。

 

[物理的リスク評価結果(対象:国内外10拠点)]

グレードB以上:リスクに留意する必要があり、より詳細なリスク評価の実施が望まれる

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対応戦略

今回のシナリオ分析において浸水リスクに留意すべきと評価された当社グループの拠点については、リスク評価の実施を検討し、その結果に応じて浸水対策やBCPの策定を進めてまいります。

 

 

c.機会: 気候変動に伴う災害対策工事の増加が事業活動に与える影響

分析内容

気候変動に伴う災害対策工事の増加が当社グループの事業活動に与える影響を予測するため、2℃のシナリオにおける土砂災害の増加の予測をもとに、将来の土砂災害防止工事の増加による製品需要の変化を分析いたしました。

分析の

前提条件

分析においては、まず初めに、日本全国の土砂災害リスクグレード(段階評価)※1を基に、表層崩壊※2の発生リスクが高いエリアを抽出いたしました。

次に、表層崩壊の主な誘因である降雨を対象に、現在気候、2℃シナリオにおける降雨指標(豪雨度※3 )の変化を分析いたしました。この分析には、「地球温暖化に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)※4」を用いました。これにより算出された気候変動シナリオ下での土砂災害発生頻度の地域別の予測を用いて、現在気候下での将来の土砂災害防止工事は一定と仮定したうえで、2℃シナリオにおける土砂災害防止工事の増加に伴うフリーフレーム、ロックボルトの出荷量の変化を分析いたしました。

※1 東京海上ディーアール㈱

  https://www.tokio-dr.jp/news/2023/20230601/pdf/pdf-20230601-01.pdf

※2 表層崩壊とは、厚さ0.5~2.0m程度の表層土が滑落する比較的規模の小さな崩壊を指します。表層崩壊に対しては、ロックボルト、フリーフレームによる緊急対策工事が有効になります。

※3 林拙郎・山田孝 (2017).土砂災害を発生させた豪雨のファクターとスケールの設定法.自然災害科学J. JSNDS 36-3 307-320

※4 地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース

  https://www.miroc-gcm.jp/d4PDF/about.html

分析結果

●フリーフレームの出荷量の変化

2℃シナリオにおいて、2050年時点では2022年と比較してフリーフレームの出荷量が国内全体で15.4%増加することが予測されました。

●ロックボルトの出荷量の変化

2℃シナリオにおいて、2050年時点では2022年と比較してロックボルトの出荷量が国内全体で15.1%増加することが予測されました。

 

[物理的機会評価結果(2022年と比較した地域別の増加率)]

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対応戦略

当社の災害対策工事関連製品の売上増加の機会と捉え、売上の推移を注視しながら、製品供給体制の拡充を適宜図ってまいります。

 

 

③ リスク管理

(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」をご参照ください。

 

④ 指標と目標

GHG排出量に関する目標を、下記のとおり定めております。

・Scope1+2               2030年度 ▲50%(2022年度比)

・Scope3(カテゴリ1+4)   2030年度 ▲25%(2022年度比)

この目標は「地球の気温上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑える」というパリ協定が定める温室効果ガス排出削減目標と科学的に整合した目標であるとして、国際的なイニシアチブである「SBTi(Science Based Targets Initiative)」より認定を取得いたしました。

GHG排出量の実績は以下のとおりであります。今後、目標の達成に向けて、再生可能エネルギーの活用等を通したGHG排出量削減への取組みを着実に進めてまいります。

 

[GHG排出量の実績と推移]

指標

2022年度実績

<基準>t-CO2e

2023年度実績

t-CO2e

2024年度実績

t-CO2e

2030年度目標

Scope1+2

(マーケット基準)

7,987

8,254

7,311

2022年比

50%削減

Scope3

(カテゴリ1+4)

408,655

362,420

307,594

2022年比

25%削減

 

[詳細]                                            [t-CO2e]

指標

2022年度実績

2023年度実績

2024年度実績

Scope1+2(マーケット基準)

7,987

8,254

7,311

Scope1

2,698

2,769

2,399

Scope2 ロケーション基準

5,026

5,556

5,703

Scope2 マーケット基準

5,289

5,484

4,912

Scope3

466,859

393,972

338,545

Scope3(カテゴリ1+4)

408,655

362,420

307,594

カテゴリ1:購入した製品・サービス

385,024

342,022

287,135

カテゴリ2:資本財

26,391

5,945

6,855

カテゴリ3:エネルギー関連活動

2,004

1,533

1,477

カテゴリ4:輸送、配送(上流)

23,632

20,398

20,460

カテゴリ5:事業から出る廃棄物

151

180

214

カテゴリ6:従業員の出張

454

618

727

カテゴリ7:雇用者の通勤

430

512

511

カテゴリ8:リース資産(上流)

算定対象外

算定対象外

算定対象外

カテゴリ9:輸送、配送(下流)

2,706

2,989

3,192

カテゴリ10:購入した製品の加工

算定対象外

算定対象外

算定対象外

カテゴリ11:購入した製品の使用

15,476

12,741

10,259

カテゴリ12:購入した製品の廃棄

10,591

7,034

7,716

カテゴリ13:リース資産(下流)

算定対象外

算定対象外

算定対象外

カテゴリ14:フランチャイズ

算定対象外

算定対象外

算定対象外

カテゴリ15:投資

算定対象外

算定対象外

算定対象外

(注)1 国際的な算定・開示基準であるGHGプロトコルに基づき算定しております。

2 岡部㈱及び連結子会社を集計対象としております。

3 2022年度及び2024年度のScope1、Scope2、Scope3排出量は、2023年度にウォーター・グレムリン・カンパニー及びウォーター・グレムリン・アクイラ・カンパニーS.p.A.が連結対象外となったためGHG排出量を除外しております。2024年度の Scope1、Scope 2、Scope3排出量は、新たに PT. Okabe Hardware Indonesiaが連結対象となったため GHG排出量を加算しております。

4 2024年度のScope1、Scope2、Scope3排出量は速報値となります。確定排出量は、「OKABE INTEGRATED REPORT(統合報告書)2025」にて開示予定でございます。

(3)生物多様性への対応

当社グループは「okabe コーポレートビジョン 2040」のもと「環境保全」「海洋資源の維持」をマテリアリティの一つに特定し、魚礁・増殖礁・藻場礁や海藻種苗の供給を通して、減少傾向にある藻場の回復やブルーカーボンの創出及び豊かな海づくりに取り組んでおります。

2025年1月に、自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:TNFD)の理念に賛同し、その活動を支援するTNFD フォーラムに参画いたしました。今後はTNFDの情報開示フレームワークに基づき、当社グループの事業と自然資本の関係性(依存と影響)やリスクと機会の整理を行い、情報開示を進めてまいります。

 

(4)人的資本

① ガバナンス

(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

成長戦略を加速させ、持続的な企業価値向上を実現するためには、「人財」こそが最大の財産と捉えております。

2022年度には「岡部グループ 人財方針」を定め、取組みの方針を明確にいたしました。また、「人とのつながり・人的資本経営」をマテリアリティの一つに特定しており、取組みを推進しております。

 

[社是(人財関連)]

・人材の育成に努力し、企業の永遠の発展を期すること

・社員にとってその一生を託して、悔いることのない職場たること

 

[人財方針(抜粋)]

1 ダイバーシティの推進 2 能力・キャリア開発 3 自己実現 4 健康経営 5 法令遵守

※詳細は、当社ウェブサイト(https://www.okabe.co.jp/sustainability/policy/)をご参照ください。

 

[人財育成方針]

岡部グループは、国籍、性別、年齢等を問わず、社員一人ひとりがチャレンジ精神を持ち自律した人財として活躍するために、能力開発に必要とされる機会を提供し、さらなる成長機会を創造してまいります。

 

[社内環境整備方針]

岡部グループは、社員一人ひとりが互いを尊重し、多様な考え方を認め合いながら、いきいきと心身ともに健康で働ける職場環境や風土の整備に取り組んでまいります。

 

[中期経営計画OX-2026重点施策]

0102010_014.png

 

[主な人事施策]

重点施策

2022-2023年度実施施策

中長期計画(3~5年)

人財確保

・不妊治療特別休暇(こうのとり休

暇)の新設

・等級・給与・評価制度の改定

・全国各都市における合同説明会出展(新卒採用募集エリア拡大)

・外国籍人財の採用

・女性管理職増員に向けた総合職社員の採用・育成

・女性総合職社員(営業職)の採用拡充

・事業計画に基づく中長期的人員計画の策定

・再雇用・嘱託社員の職務内容・処遇の見直し

・再雇用上限年齢(65歳)の引き上げ

・リファラル・アルムナイ採用の導入と活用

・業務効率化や各種人財情報の可視化等を目的とした人事システムの拡充

・継続的なベースアップ実施

エンゲージメント向上

・従業員エンゲージメント診断の導入・実施

・男性の育休取得推進に向けた社内啓発

・エンゲージメント向上に関する各種研修・施策の実施

成長環境・機会の提供

・人事機能の高度化、効率化(目標実績管理・評価、業務のワークフロー化など)

・人事処遇の見直し

・等級・給与・評価制度の改定

・職種別研修の導入、法定選任資格の取得促進

・目標設定・評価研修の実施とフォロー

・長期休暇制度(有給休暇の連続取得・日数拡大など)の導入

・柔軟な職群選択(総合職、エリア・ローカル総合職)制度の導入

・役職別研修の追加

・海外人財育成(トレーニー)制度の導入

・自律的なキャリア形成のための各種制度(社内公募異動制度等)の導入

健康経営

・管理職に対するメンタルヘルス教育の実施

・復職可否の判断基準のルール化

・休職復帰後の社内ガイドラインの作成

・健康経営優良法人認定に向けた各種施策の実施

・メンタルヘルス教育の実施

・女性特有の健康課題に関する研修

・特定保健指導の受診率向上施策の実施

・ストレスチェック結果レポートの効果的な活用

・健康経営優良法人継続認定に向けた各種施策の実施

 (注) 2024年度実施施策になります。

 

[主な取組み]

多様な人財の確保・働きがいのある職場環境の整備

当社は、従業員一人ひとりが個々の能力を最大限に発揮し、ワクワクする組織風土の醸成を目指しております。婚姻・育児・介護等のライフステージに合わせた柔軟な働き方ができるよう、短時間勤務制度や育児・介護休業制度の充実、不妊治療のための特別休暇制度(こうのとり休暇)を導入しております。また、完全週休二日制やテレワーク制度の導入等により、長時間労働を抑制し、働きがいのある職場環境を整備し、多様な人財の確保に努めております。

 

・女性活躍の推進

国内企業全体と比較して、女性従業員比率などはまだ低水準であるものの、業界内で先行することを目指し、取組みを強化しております。新卒・中途入社を問わず、女性従業員の適材適所の積極登用を実施するとともに、女性従業員及び女性従業員を部下に持つ管理職を対象に、女性のキャリアを考えるセミナーや分科会を開催するなどして、意欲のある女性社員が活躍できる組織風土の醸成を行っております。

 

・シニア人財が活躍できる環境の整備

活力のある社員の65歳以降の就業機会の確保を図るため、2024年6月に、再雇用契約の上限年齢の段階的引き上げ(毎年、70歳まで1歳ずつ引き上げ)を導入するとともに、定年後の再雇用社員の人生設計の一助となるよう、再雇用規程の一部改定を実施いたしました。

 

・リファラル・アルムナイ採用の導入

「自分たちの仲間を自分たちで集める」という採用手法による人財確保にも取り組むため、2024年9月にリファラル・アルムナイ採用を導入いたしました。当社グループを退職とした社員とのつながりを構築し、社外で様々な知見を培った方の入社や、社員の友人・知人といった安心して一緒に働ける仲間を増やしていくことで新たな価値を創造し、より良い職場環境づくりを推進しております。

 

・従業員エンゲージメント診断・研修

2023年より組織診断アンケートに代わり、従業員エンゲージメント診断を実施しております。従業員にとって働きがいのある組織を構築し、グループ全体で組織改善に活用することを目的としております。また、2024年からは全社向けエンゲージメント研修を実施しており、全従業員のエンゲージメントに関する理解を深め、エンゲージメントスコアの向上につなげてまいります。

 

・育児休暇取得の推進

2026年度100%の取得を目指し取組みを推進しております。研修会等で育児休暇取得従業員比率と当社のKPIの説明を行い、全社的に育児休暇取得者への理解と支援を促しております。

また、男性従業員の育児休暇取得比率向上のため、社内報等を通じて会社全体の意識醸成に取り組んでおります。出生時育児休業の取得については、勤続年数に影響を及ぼさないこととし、勤続表彰や福利厚生制度等への影響が出ないようにするとともに、キャリア形成を弾力化し、仕事と育児の両立を図る体制を整えております。

 

成長環境・機会の提供

「人財の育成に努力し、企業の永遠の発展を期すること」という社是のもと、社員一人ひとりがチャレンジ精神を持ち自律した人財として活躍するために、能力開発に必要とされる機会を提供しております。

 

・人財育成制度

新入社員研修、階層別研修、選抜型研修、製品や技術に関する専門研修、ダイバーシティ研修及びハラスメント研修などをテーマとした対面研修やディスカッション形式の研修とあわせて、eラーニングを導入し、学びたいときに希望するコンテンツを学べる環境を整えております。また、各種資格取得奨励制度等を充実させております。

 

・新規事業アイデア提案制度 OSIP(OKABE Star Incubation Program)

「新規事業の創出」と「新規事業の創出に挑戦する組織風土の醸成」を目的とした社内提案制度になります。従業員が考えた事業アイデアを公募により選定し、優れた提案をした発案者は社内外からの育成支援を受けながら、事業化に向けて専任で参画することができます。

 

・ワクワク推進表彰制度

2017年の創業100周年を機に、当社のワクワク感を高めるという目的で導入した社内表彰制度になります。会社の業績、業務改善、製品品質向上、社会貢献等の社内外における優れた取組みを表彰対象にし、部署長の推薦によって候補者を決定しております。特に、サステナビリティや中期経営計画の施策に貢献する取組みを奨励しております。

 

健康経営

岡部グループは、従業員等の健康増進を重視し経営課題と捉え、従業員等の健康の維持・増進と会社の生産性向上を目指す、健康経営を推進しております。社是である「社員にとってその一生を託して、悔いることのない職場たること」という想いに基づき、経営トップによる「健康経営宣言」の下、健康経営推進体制を整備し、従業員等の健康維持・増進のための各種施策を立案・実施しております。

これらの取組みの結果、経済産業省及び日本健康会議が選定する「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に2024年以降、2年連続で認定されております。今後も、従業員一人ひとりが心身ともにいきいきと働ける環境を構築してまいります。

 

・労働安全衛生

職場及び現場における労働者の健康と安全の確保を経営者と従業員、協力会社が一体となって取組み、人命尊重・安全最優先を徹底しております。また、労働安全衛生方針のもと、基本事項を「安全衛生管理規則」に明記し、新入社員向けの労働安全衛生教育を実施しているだけでなく、協力会社に対しても労働安全衛生を確保できるよう、「安全衛生管理機構」による各種教育や情報発信等の取組みを推進しております。

 

 

人権の尊重

当社グループにとって、人権の尊重は事業活動の前提となるものになります。事業を行う過程で、直接又は間接的に人権に影響を及ぼす可能性があることを認識し、事業に関わる全ての人の人権を尊重しております。2022年12月に「人権方針※」を策定し、取組みを強化・推進しております。

※人権方針 https://www.okabe.co.jp/sustainability/policy/

 

・従業員への周知・浸透

社会的背景や企業への影響、求められる取組み等に関する理解を深めるため、従業員向けの勉強会を実施しております。さらに、eラーニングでの教育も行い、従業員の周知・浸透を図っております。

 

・苦情処理メカニズム

国内・海外グループ会社従業員を対象に内部通報制度を設けております。弁護士事務所通報窓口を設置しているほか、通報受信後の報告ルートとして、社内を介さずに監査等委員会に直接報告するルートも整備し、通報案件に応じてより適切に対応できる体制としております。現在、サプライヤー従業員を対象とした通報窓口の設置を検討しております。

 

・サプライヤーへのCSRアンケート

サプライヤーの取組み状況の調査(人権、環境、コンプライアンス、安全衛生、品質など)を2023年度より開始いたしました。調査票による自己評価形式で、調査対象については、取引額や環境・社会的側面へのインパクトなどを考慮して選定しております。

また、サプライチェーン全体での付加価値向上に取り組み、社会的責任を果たすべく、2024年8月に「パートナーシップ構築宣言」を公表しております。

 

③ リスク管理

(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」をご参照ください。

 

④ 指標と目標

各種施策

KPI

単位

範囲注1

2023年度

実績

2024年度

実績

2026年度

目標

人財確保

女性従業員(総合職)の数

岡部単体

27

41

50

女性従業員(総合職)の比率

岡部単体

4.5

6.6

10.0

女性管理職数

岡部単体

10

12

20

女性管理職比率

岡部単体

4.7

5.8

10.0

女性昇進比率

岡部単体

12.2

12.5

16.7

女性研究員の数

岡部単体

2

3

3

中途採用者比率

岡部単体

45.3

47.7

50.0

外国人従業員の数

岡部単体

0

1

5

障がいのある従業員の数

岡部単体

15

16

18

障がい者雇用比率

岡部単体

2.3

2.5

2.7

エンゲージメント向上

従業員エンゲージメント指標

ポイント

国内連結

63

64

73

従業員離職率

岡部単体

4.7

3.2

3%以下

育児休暇取得従業員比率

岡部単体

41.7

55.6

100.0

男性従業員育児休暇取得比率

岡部単体

33.3

38.5

100.0

成長環境・機会の提供

IT関連保有資格数

岡部単体

95

114

600

ワクワク推進表彰の推挙数

グループ連結

22

22

25

OSIPへの参加人数

国内連結

26

28

135

総研修費用

百万円

岡部単体

46

44

55

健康経営

従業員負傷者数

岡部単体

4

8

0

1人当たりの月平均残業時間

時間

岡部単体

13.5

13.1

10

1人当たりの年間取得有休日数

岡部単体

10.9

9.6

20

メンタルヘルス不調者数

岡部単体

7

3

0

高ストレス者数

(ストレスチェック結果)

岡部単体

86

92

0

健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定

岡部単体

認定

健康経営 優良法人の継続認定

(注)1 「岡部単体」は、岡部㈱のみの範囲になっております。「国内連結」は、岡部㈱、OMM㈱、㈱富士ボルト製作所及び㈱河原を含んだ範囲になっております。「グループ連結」は、国内連結とあわせてOCM, Inc.、OCM Manufacturing LLC、Okabe Real Estate Holdings LLC、PT. フジボルトインドネシア、PT. Okabe Hardware Indonesia、PT. Okabe Retail Indonesia 及びオカベCO., INC.を含んだ範囲になっております。当社グループ(当社及び当社の関係会社)の詳細につきましては「第1 企業の概況 3.事業の内容 事業系統図」又は「第1 企業の概況 4.関係会社の状況」をご参照ください。

2 「労働者の男女の賃金の差異」につきましては「第1 企業の概況 5.従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」をご参照下さい。なお、該当箇所の数値については、岡部㈱のみの範囲で、当事業年度の実績のみの記載となっております。

 

 

 

3【事業等のリスク】

当社グループは持続的な企業価値の向上を図るため、事業等のリスクを適切に管理すべく、代表取締役社長執行役員が委員長、並びに、各部門の担当取締役、監査等委員会委員長及び取締役を兼務しない執行役員が委員を務めるリスクマネジメント委員会を設置しております。

リスクマネジメント委員会では、事業への影響度及び発生頻度などを分析・評価し、気候関連リスクを含めた事業リスクを定量的に評価した上で定性的な評価も織り込み、リスクを評価しております。その評価結果をもとにリスクマネジメント委員会において重要リスクを選定し、半期ごとに状況報告を実施するとともに、全社的な視点から必要な戦略の決定、施策の指示等を実施しております。

リスクマネジメント委員会は、定期的に取締役会に活動内容を報告しており、取締役会で適切に監督される体制を整えております。

2024年度においては、リスクマネジメント委員会は、年2回開催され、次の事項を審議し、取締役会に活動内容を報告しております。

・管理すべき重要リスクの選定

・各リスクが顕在化した場合に想定されるシナリオ

・リスクに対する対策の最終目標

・今年度の計画及び取組み状況

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)成長戦略リスクについて

M&A、海外展開及び新規事業の参入など、当社グループの成長に資する新たな戦略展開が不足又は遅れることにより、機会損失を被る場合、業績等に影響を与える可能性があります。また、当社グループが市場の変化を十分に予測できず、新たな市場ニーズに合致した製品を提供できない場合、新技術・新製品を導入した競合他社に対し競争力が低下し、業績等に影響を与える可能性があります。

また、当社グループの売上高の約7割を占める国内建設市場は、少子高齢化が進行しており、建設業界への就労人口の減少が一層深刻化していくことが予想され、十分な担い手を確保できない場合には、業績等に影響を与える可能性があります。

 (対応策)

当社グループにおいては、M&A、海外展開及び新規事業の参入について、対象領域の市場規模、将来性、既存事業とのシナジー効果等の観点から当社グループの成長に資するかどうかを検討し、機会損失の防止に取り組んでおります。

また、当社グループは、新たな市場ニーズに対応するため、顧客が抱える課題の解決を最優先とする体制整備を目的とした代表取締役社長執行役員直轄部署の「商品企画室」を設置し、営業現場及び顧客からのトレンド・ニーズを把握し、当社グループ内で情報を共有し、連携を強化するとともに、建設業者等との共同開発及び産学連携を推進することで、新技術・新製品の開発に取り組んでおります。

さらに、当社グループは、建設業界の人手不足等に対応するため、省力化に寄与する製品や工法の開発に注力しております。

加えて、顧客に対してより効果的なソリューションを提供し、将来にわたって競争力を維持し成長していくにはDXの重要性が増していることから、代表取締役社長執行役員直轄部署の「IT戦略室」を設置しております。今後は「顧客とデジタルで繋がるDXの推進」に向けて、情報システムとDXを融合し、多様化する注文形態への対応や社内業務の効率化による生産性の向上を目指すとともに、より戦略的なIT投資を進め、全社員のITリテラシーの向上に努めながら、DXをリード・実行できるDX人財を獲得しつつ、DXの推進を強力に実行してまいります。

 

(2)経済危機・景気変動リスクについて

当社グループは、経済状況及び景気変動の見通しの正確な把握に努めておりますが、当社グループの売上高の約7割を占める国内建設市場における景気の後退及びそれに伴う需要の減少、又は、経済動向に影響を及ぼすような事態が発生した場合、業績等に影響を与える可能性があります。また、上昇する鋼材価格について、顧客に適正に価格転嫁できない場合、業績等に影響を与える可能性があります。

 (対応策)

経済危機・景気変動によるリスクの対応策として、鋼材価格の上昇に対しては、当社におけるコスト低減努力及び顧客への適正な価格転嫁に努めてまいります。

加えて、サプライチェーンの強靭性を高めるため、「サプライヤー行動規範」を策定するとともに、「パートナーシップ構築宣言」を公表しております。

また、海外におきましても米国・中国間の分断リスクに備え、主要製品の内製化を進めております。

 

(3)人財関連リスクについて

従業員の高齢化及び離職、並びに、技術及び技能継承の停滞により、当社グループの競争力が低下した場合、業績等に影響を与える可能性があります。

 (対応策)

当社グループは、女性の新卒採用や中途採用の増加及び役職への積極登用などの女性活躍の推進をはじめ、シニア人財や外国人労働者を含む多様な人財が多様な働き方で活躍できる人事制度の整備、並びに、リファラル・アルムナイ採用やeラーニングの導入によるグローバル人財及び技術系人財等の多様な人財の確保・育成など、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでおります。

また、当社グループは、従業員等の健康増進と会社の生産性向上を目指す健康経営を経営課題と捉え、経営トップによる「健康経営宣言」の下、従業員エンゲージメント診断に基づく健康経営体制の整備や従業員等の健康維持・増進のための各種施策を立案・実施しております。

これらの取組みの結果、経済産業省及び日本健康会議が選定する「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に2024年以降、2年連続で認定されております。

 

(4)大規模自然災害リスクについて

地震、津波、噴火、洪水等の自然災害、新たな感染症の発生及び蔓延、大規模事故、テロ、暴動及びその他予期せぬ事態が発生し、当社グループの役職員、事業所、設備やシステムなどが被災し、当社グループの生産活動、販売活動及びその他事業活動に影響が生じた場合、業績等に影響を与える可能性があります。

 (対応策)

自然災害等に関するリスクの対応策につきましては、平時において、避難訓練、ハザードマップの周知及び食糧等の備蓄等を実施しており、また、災害発生時において、迅速な対応を図り、損害の拡大を防止し、被害を最小限にするための対応方法を定めた危機対応・事業継続(BCP)マニュアルを策定し、定期的な訓練を実施しております。

 

(5)気候変動リスクについて

当社グループが、気候変動リスク等の対応を誤り、脱炭素経営に取り組まないことで、市場から評価を得られず、受注が減少した場合には、業績等に影響を与える可能性があります。また、温室効果ガス(GHG)排出基準等の環境規制が変更され、当社グループが法令を遵守できず、ペナルティが課された場合、業績等に影響を与える可能性があります。

 (対応策)

当社グループは、気候変動に対応した経営戦略の開示(TCFD)や脱炭素に向けた目標設定(SBT)などを通じ脱炭素経営に取り組むこと、当社グループのみならず、サプライチェーン全体として脱炭素社会の実現を目指していくこと、及び、当社グループのサステナビリティ経営をさらに強化することを目的とし、代表取締役社長執行役員直轄部署の「サステナビリティ推進室」を設置するとともに、サステナビリティ経営の実施状況の管理・監督の強化することを目的とし、社外取締役が委員長、並びに、代表取締役社長執行役員、各部門の担当取締役、監査等委員会委員長、社外取締役及び取締役を兼務しない執行役員が委員を務めるサステナビリティ委員会を設置し、脱炭素計画の策定及びサステナビリティ経営の推進体制を確立しております。

当社グループは、中期3ヵ年経営計画「OX-2026(okabe Transformation 2026)」の施策として、サステナビリティ経営を掲げており、建設関連製品事業においては、当社製品・工法を通じて、「建設現場の脱炭素・ゼロエミッション」に取り組んでおります。2022年度からは、建設現場で使用後に不要となったPコン(プラスチックコーン)の回収・リサイクルサービスを開始し、2023年度以降、リサイクル材料で製造したEcoPコンを発売開始するなど、廃棄物の焼却処分による温室効果ガス(GHG)排出や、廃プラスチックの海洋流出問題の解決に取り組んでおります。また、海洋事業においては、二酸化炭素を吸収する海藻の成長が期待できる魚礁や藻場礁の普及のほか、磯焼け対策として海藻種苗の移植とその技術の普及に努めているほか、ブルーカーボンの事業化に向けた取組みや洋上風力発電事業と漁業協調への魚礁の提案活動等を通じて、「地球のカーボンニュートラル」への貢献に取り組むなど、脱炭素経営を実施することで、企業価値の向上に努めております。

また、当社グループは、温室効果ガス(GHG)排出基準等の環境規制の変更について、モニタリングする仕組みを構築し、引続き法令を遵守してまいります。

 

<TCFD提言に基づく情報開示>

気候変動対策はグローバル社会が直面している最も重要な社会課題であり、当社にとっても重要な経営課題の一つであることから、当社は2021年12月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しました。

2022年1月から、気候関連のリスク及び機会が当社の事業に与える影響の分析を行い、2023年3月以降、気候変動に関する「ガバナンス」・「リスク管理」・「戦略」・「指標と目標」の4項目について情報開示を行いました。

 

詳細につきましては、当社ウェブサイトのサステナビリティページ(https://www.okabe.co.jp/sustainability/environment03/)に開示しております。

 

<SBT認定の取得>

当社グループは、2022年5月にSBTの水準を満たした温室効果ガス(GHG)目標設定を表明し、2023年10月にSBT認定を取得しております。

 

(6)海外子会社のリスクについて

当社グループは、海外市場において既存事業基盤の成長とM&A戦略の両面を通じたグローバル展開を図ることとしており、事業が拡大するなか、海外子会社の管理が行き届かず、財務内容等が悪化する場合は、業績等に影響を与える可能性があります。

また、海外子会社において、当該国の法律や規制に対する理解が足らずに違法行為を発生させた場合は、業績等に影響を与える可能性があります。

加えて、為替の大幅な変動及び通貨危機が発生した場合は、業績等に影響を与える可能性があります。

 (対応策)

当社グループは、海外子会社の管理リスクについて、リスクマネジメント、コンプライアンス及び監査を含むガバナンス体制の見直し・強化に取り組んでおり、海外子会社の管理リスク軽減及び環境関連法令等の遵守に努めております。また、当社グループは、環境関連法令等の遵守のみならず、環境に負荷を与えない製造工程の推進に取り組んでおります。

また、為替の大幅な変動、通貨危機に対するリスクにつきましては、取引に応じて適宜為替予約等を実施することにより、為替変動リスクの軽減に努めております。

 

(7)情報セキュリティリスクについて

当社グループは、システム障害やコンピューターウイルスへの感染、サイバー攻撃等により、社内システムに障害が発生し、生産・営業・経理業務等の基幹システムが停止する場合は、業務が中断し、顧客に製商品を供給できないなど、業績等に影響を与える可能性があります。また、社内の機密情報や顧客・取引先情報等の重要情報が漏洩した場合は、企業としての信用低下及び顧客等に対する賠償責任が発生するなど、業績等に影響を与える可能性があります。

 (対応策)

当社グループは、重要な情報の紛失、消失及び改ざん等の防止及び外部からのウイルスやサーバー攻撃などの脅威に対応するため、国内だけでなく、北米拠点においてはIT部門を設置、もしくはIT専門会社に外部委託することで様々なセキュリティ対策を講じており、社員に対する教育・啓もう活動も実施しております。

 

(8)レピュテーションリスクについて

当社グループに対する否定的な風評が、マスコミ報道又はインターネット上の書き込み等で発生し、当社グループの社会的信用が毀損し、ブランド価値が低下した場合、業績等に影響を与える可能性があります。

 (対応策)

当社グループは、風評被害の発生時に迅速な対応を図り、損害の拡大を防止しこれを最小限にするための対応方法を定めた危機対応・事業継続(BCP)マニュアルを策定しております。

 

(9)コンプライアンスに関するリスクについて

コンプライアンス違反が発生した場合、当社グループの社会的信用及びブランドに重大な影響を与えるとともに、従業員の組織に対する信用喪失につながり従業員が離職するなど、業績等に影響を与える可能性があります。

 (対応策)

当社グループでは、関連法令等の遵守のみならず、ステークホルダーからの期待に応えるため、常設組織として取締役兼執行役員を委員長とするコンプライアンス委員会を設置し、海外子会社を含む全社横断的なコンプライアンス体制の整備及びコンプライアンス違反等の解消に努めております。また、内部通報制度においても、海外子会社を含めて整備・運用されております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、持続的な賃上げによる雇用・所得環境の改善を背景に、個人消費や設備投資に持ち直しの動きが見られたことで、緩やかな回復基調で推移いたしました。一方で、円安基調に伴う継続的な物価上昇や資源価格の高騰、世界的な金融引き締め、不安定な国際情勢等の景気を下押しするリスク要因により、先行き不透明な状況が続きました。

当社グループの主な需要先であります建設業界におきましては、公共投資が底堅く推移し、民間設備投資に持ち直しの動きがみられたものの、慢性的な建設労働者不足による労務費の高騰や鋼材価格の高止まり等も影響し、依然として厳しい環境で推移いたしました。

このような経営環境のなか、当社グループは、中期経営計画「OX-2026(okabe Transformation 2026)」を策定し、カスタマー・セントリック(顧客が抱える課題を最優先で解決するための体制整備と取組みの実施)、人的資本経営の実践と経営基盤の強化、DXのさらなる推進の3つを事業戦略の骨子として掲げ、会社の持続的発展と企業価値の向上に向け取り組んでまいりました。

 

イ 財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ28億9千1百万円減少し、869億9千3百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ3億7千2百万円減少し、274億5千2百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ25億1千9百万円減少し、595億4千1百万円となりました。

 

ロ 経営成績

当連結会計年度の経営成績は、売上高は678億6百万円(前連結会計年度比13.2%減)、営業利益は41億9千4百万円(前連結会計年度比2.7%増)、経常利益は44億2千2百万円(前連結会計年度比2.8%増)となりました。なお、米国における訴訟に関連する和解について基本合意に至ったことによる和解金及び当該和解金計上に伴う投資有価証券評価損などを特別損失として59億1千8百万円計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は8億7千4百万円(前連結会計年度は54億7千2百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

事業別の経営成績は次のとおりであります。

なお、セグメント情報を記載していないため、事業別に記載しております。

 

〔建設関連製品事業〕

国内における建設関連製品の売上高を製品別にみますと、仮設・型枠製品は鉄筋コンクリート造物件の着工床面積が大幅に減少したことなどにより、仮設材等の販売が低調に推移し売上高が減少したものの、資材の軽量化と施工法の簡素化に寄与する新工法「型枠一本締め工法」関連製品の拡販等に努めた結果、前連結会計年度に比べ3.2%の減少にとどまりました。

土木製品は災害復興や防災・減災関連の需要は堅調であったものの、現場労働者の不足に伴う工事の遅延が影響し、土砂災害の防止に使用される製品の売上高が伸び悩んだ結果、前連結会計年度に比べ7.2%の減少となりました。

構造機材製品は主力となる耐震関連製品のラインナップを強化して市場シェアの拡大に努めたものの、中小物件の減少や建設労働者不足に伴う大規模物件の計画延期などの影響の結果、前連結会計年度に比べ1.2%の減少となりました。

海外における建設関連製品の売上高は、米国において、鋼材価格の下落に伴う販売価格調整圧力により建設資材の販売が伸び悩んだ結果、前連結会計年度に比べ4.9%の減少となりました。

この結果、建設関連製品事業における売上高は614億8千5百万円(前連結会計年度比4.1%減)となり、営業利益は34億4千8百万円(前連結会計年度比15.2%減)となりました。

 

〔その他の事業〕

産業機械製品は、製品ラインナップの整理に伴い売上高は減少したものの、高付加価値製品の拡販に努めたことで、利益率は前連結会計年度に比べて向上いたしました。

海洋事業については、延期となっていた大型案件の出荷が滞りなく進んだことにより、売上高は堅調に推移いたしました。

なお、自動車関連製品事業について、当連結会計年度からその他の事業に含めております。また、同事業において、前連結会計年度から連結の範囲に変更が生じております(後記「(参考)連結事業別・製品別売上高」(注)参照)。同事業は前連結会計年度においては売上高には貢献していたものの営業損失を計上していたため、当該変更は、売上高の減少要因、営業利益の増加要因となっております。

この結果、その他の事業における売上高は63億2千1百万円(前連結会計年度比54.9%減)、営業利益は7億4千6百万円(前連結会計年度は1千6百万円の営業利益)となりました。

 

(参考)連結事業別・製品別売上高

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減率(%)

建設関連

製品事業

仮設・型枠製品

 

7,288

7,057

△3.2

土木製品

 

7,428

6,892

△7.2

構造機材製品

 

20,450

20,207

△1.2

建材商品

 

11,799

11,011

△6.7

国内計

 

46,967

45,167

△3.8

建材製商品

 

17,160

16,318

△4.9

海外計

 

17,160

16,318

△4.9

当事業計

 

64,128

61,485

△4.1

その他の事業

(注)

14,024

6,321

△54.9

合計

 

78,152

67,806

△13.2

(注) その他の事業は、当社のコア事業である建設関連製品事業に属さない事業であり、産業機械製品の製造販売業

   務、海洋資材製品の製造販売業務、自動車向けボルト・ナット類の販売業務及びテナントの賃貸業務を行ってお

   ります。

 なお、前連結会計年度において、自動車関連製品事業のうち、主要な事業を営んでおりました、ウォーター・

グレムリン・ホールディングス, Inc.、ウォーター・グレムリン・カンパニー及びウォーター・グレムリン・ア

クイラ・カンパニーS.p.A.を、連結の範囲より除外しております(連結の範囲から除外するまでの同3社の損益

計算書については連結しております)。

 これにより、自動車関連製品事業に属する事業が自動車向けボルト・ナット類の販売業務のみとなり規模が縮

小したことに伴い、当連結会計年度より、同事業は単独のセグメントとしては記載せず、その他の事業

に含めております。また、前連結会計年度についても、当連結会計年度のセグメント構成にあわせて組み替えて

おります。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ11億7千5百万円減少し、113億6千4百万円となりました。

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローにおける収入は、37億2千9百万円となりました(前連結会計年度は62億2百万円の収入)。主な要因は、棚卸資産の増加及び仕入債務の減少によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローにおける支出は、24億2千3百万円となりました(前連結会計年度は17億6千9百万円の支出)。主な要因は、有形固定資産の取得による支出の増加によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローにおける支出は、24億1千3百万円となりました(前連結会計年度は85億6千7百万円の支出)。主な要因は、短期借入れによる収入の減少及び短期借入金の返済による支出の減少によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

イ 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

事業の名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

建設関連製品事業

26,160

△1.7

その他の事業

3,787

△63.7

合計

29,947

△19.2

(注)1 事業間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、販売価格によっております。

3 当社グループは、単一セグメントであるため、事業別の生産実績を記載しております。

 

ロ 受注実績

当社及び連結子会社は、建設関連製品事業、その他の事業において見込み生産を行っており、その一部について受注形態をとっておりますが、重要性がないため記載を省略しております。

ハ 販売実績

当連結会計年度における販売実績を事業ごとに示すと、次のとおりであります。

事業の名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

建設関連製品事業

61,485

△4.1

その他の事業

6,321

△54.9

合計

67,806

△13.2

(注)1 事業間取引については、相殺消去しております。

2 主要な販売先については、総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先がないため記載を省略しております。

3 当社グループは、単一セグメントであるため、事業別の販売実績を記載しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に係る会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ 経営成績等

a.財政状態

(資産合計)

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ28億9千1百万円減少し、869億9千3百万円となりました。

流動資産は主に現金及び預金の減少により前連結会計年度末に比べ24億1千2百万円減少し、488億2千4百万円となりました。

固定資産は主に投資有価証券の減少により前連結会計年度末に比べ4億7千4百万円減少し、381億4千8百万円となりました。

 

(負債合計)

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ3億7千2百万円減少し、274億5千2百万円となりました。

流動負債は主にその他に含まれる未払金の増加により前連結会計年度末に比べ1億5千2百万円増加し、183億2千9百万円となりました。

固定負債は主に長期借入金の減少により前連結会計年度末に比べ5億2千4百万円減少し、91億2千2百万円となりました。

 

(純資産合計)

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ25億1千9百万円減少し、595億4千1百万円となりました。また、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ0.6ポイント減少し、68.4%となりました。

 

b.経営成績

(売上高)

当社グループの売上高の約7割を占める国内建設関連製品事業においては、仮設・型枠製品は資材の軽量化と施工法の簡素化に寄与する新工法「型枠一本締め工法」関連製品の拡販等に努めたものの、鉄筋コンクリート造物件の着工床面積が大幅に減少したことなどにより、仮設材等の販売が低調に推移し売上高が減少したこと、土木製品は災害復興や防災・減災関連の需要は堅調であったものの、現場労働者の不足に伴う工事の遅延が影響し、土砂災害の防止に使用される製品の売上高が伸び悩んだこと、構造機材製品は中小物件の減少や建設労働者不足に伴う大規模物件の計画延期などの影響により、減収となりました。

また、売上高の約2割を占める海外建設関連製品事業においては、米国において、鋼材価格の下落に伴う販売価格調整圧力により建設資材の販売が伸び悩んだ結果、減収となりました。

その他の事業においては、海洋事業について、延期となっていた大型案件の出荷が滞りなく進んだことで販売は堅調に推移したものの、産業機械製品において製品ラインナップの整理を行ったことなどにより、減収となりました。

以上の結果、売上高は678億6百万円(前連結会計年度比13.2%減)となりました。

 

(営業利益、経常利益)

営業損失要因となっていた自動車関連製品事業について、連結の範囲を変更した影響などにより、営業利益は41億9千4百万円(前連結会計年度比2.7%増)となり、支払利息の減少などにより、営業外損益が2億2千8百万円の利益となった結果、経常利益は44億2千2百万円(前連結会計年度比2.8%増)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

米国における訴訟に関連する和解について基本合意に至ったことによる和解金及び当社が保有するウォーター・グレムリン・ホールディングス, Inc.の株式について全額の減損処理を行ったことに伴う投資有価証券評価損などを特別損失として59億1千8百万円計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は8億7千4百万円(前連結会計年度は54億7千2百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

c.キャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

ロ 資本の財源及び資金の流動性

a.資金需要

当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、生産活動に必要な運転資金(材料・外注費及び人件費等)や、営業活動に必要な運転資金(人件費等の販売費及び一般管理費)であります。

また、設備資金需要としては、建設関連製品事業における生産拠点整備、生産設備増強、研究開発投資等であります。

b.財務政策

当社グループは、事業の「選択と集中」により生産設備、研究開発、企業買収等の投資案件を厳選し、フリーキャッシュ・フローの増加を図るとともに、金融市場動向及び当社財務状況等に応じて最適な資金調達方法を選択し、健全な財務体質を維持することを基本的な財務方針としております。

 

ハ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

(経営上の目標の達成状況について)

 当社グループは中期経営計画「OX-2026(okabe Transformation 2026)」において、中期的な業績目標(売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益)を設定しております。また、企業価値の向上のため、資産及び株主資本の有効活用が重要との考えから自己資本利益率(ROE)の目標値を設定しております。

 当連結会計年度における当初業績予想に対する実績は、売上高は678億6百万円(予想比96.9%)、営業利益は41億9千4百万円(予想比102.3%)、経常利益は44億2千2百万円(予想比100.5%)、親会社株主に帰属する当期純損失は8億7千4百万円(親会社株主に帰属する当期純利損失の予想は10億円)となりました。また、自己資本利益率(ROE)は△1.4%となり、目標値を下回る結果となりました。

 

ニ 事業ごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

〔建設関連製品事業〕

当事業の国内における売上高は、当事業の販売状況を左右する指標の着工床面積につき、鉄筋コンクリート造物件の着工床面積が前年と比べ大幅に減少したことで、仮設・型枠製品について販売が低調に推移し、また、現場労働者の不足に伴う工事の遅延が影響し、土砂災害の防止に使用される製品の売上が伸び悩み、加えて、構造機材製品においては、中小物件の減少や建設労働者不足に伴う大規模物件の計画延期などの影響の結果、仮設・型枠製品、土木製品及び構造機材製品ともに減収となり、前連結会計年度に比べ3.8%の減少となりました。

当事業の海外における売上高は、米国において、鋼材価格の下落に伴う販売価格調整圧力により建設資材の販売が伸び悩んだ結果、前連結会計年度に比べ4.9%の減少となりました。

この結果、当事業の売上高は614億8千5百万円(前連結会計年度比4.1%減)となり、当事業の利益については、営業利益は34億4千8百万円(前連結会計年度比15.2%減)となりました。

 

〔その他の事業〕

売上高は、海洋事業について、延期となっていた大型案件の出荷が滞りなく進んだことで販売は堅調に推移したものの、産業機械製品において製品ラインナップの整理を行ったことなどにより、売上高は63億2千1百万円(前連結会計年度比54.9%減)となった一方で、当事業の利益については、産業機械製品において高付加価値製品の拡販に努めたことで利益率が向上し、営業利益は7億4千6百万円(前連結会計年度は1千6百万円の営業利益)となりました。

 

 

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、「安全・安心の提供を通じて社会に貢献する」という経営理念のもと行われております。

なお、当連結会計年度の研究開発費は786百万円であります。また、事業別の研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(1)建設関連製品事業

省力化・安全確保、環境保全に貢献する工法及び関連製品の開発を中心に実施し、仮設・型枠製品、土木製品及び構造機材製品について当社が研究開発を行っております。

当事業に係る研究開発費は745百万円であります。

なお、主な取組みは次のとおりであります。

①鉄骨構造用露出柱脚工法の開発及び周辺の合理化工法の開発

②鉄骨構造用耐震制振部材の開発(耐震・制振技術研究)

③鉄骨梁開口補強工法の開発(超高層・ロングスパン構造への適用研究)

④鉄骨梁とコンクリート床版の接合工法の開発(合成梁構造の研究)

⑤鉄筋コンクリート構造物用接合工法の開発(鉄筋継手等)

⑥木造用耐震制振工法の開発(耐震金物・住宅用制振工法)

⑦杭頭接合工法の開発(各種コンクリート杭、鋼管杭対応工法)

⑧コンクリート型枠の合理化工法に関する製品開発(型枠一本締め工法、床スラブ開口工法等)

⑨切土斜面の安定化工法製品開発及び同製品の老朽化対策技術の開発(補修改修技術の研究)

⑩石積擁壁の補修補強工法の開発

 

(2)その他の事業

水産資源の保護育成や環境保護に貢献する海洋資材製品の開発及びブルーカーボン事業化に向けた多段式養殖施設等の研究開発を中心に実施し、当社が研究開発を行っております。

当事業に係る研究開発費は40百万円であります。