第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 日本経済は3年目を迎える物価上昇に対して消費マインドにやや足踏み感がみられ、賃金と物価の好循環の実現に注目が集まっております。ドラッグストア業界においては、コロナ禍以降の業績回復に一服感が見られるなか値上げは継続しており、価格競争を避けながらの価格転嫁の巧拙が課題となります。また、競争が厳しくなるなか、規模拡大と採算性改善を両立させる財務体質と管理体制の整備が求められます。

 当社はイオン株式会社とウエルシアホールディングス株式会社と経営統合の協議を開始しており、各社の経営資源を最大限に活用して連携し、様々な分野でシナジーを発揮することを目指してまいります。

 このような状況の中で、当社は「お客様の生活に豊かさと余裕を提供する」という経営理念のもと、地域のお客様の生活を守るライフラインとしての役割を担い、美しく健やかな暮らしのお手伝いをするとともに、地域の生活・雇用や経済活動の場を提供し、地域社会に貢献することを目指してまいります。

 次期(第63期)の重点方針は次のとおりです。

①収益性を重視した店舗展開戦略

出店済み地域においてドミナント戦略の更なる推進を図るとともに、早期黒字化・投資回収期間等の出店におけるKPI管理を強化し、より質の高い新規出店を通じて収益性を高めてまいります。また既存店においても、新たな品種の導入やスクラップ・アンド・ビルドを継続的に行い、収益力改善を図ってまいります。

②調剤薬局の新規開設推進と機能向上

既存店舗への併設を中心とした調剤薬局の新規出店を引き続き推進し、併設するドラッグストア店舗との連携強化によるヘルスケアサポート機能の充実を図ってまいります。システム面を含めた環境整備を進め、自社アプリを起点としたデータ連携などDXの取り組みを通じた治療効果増進・予防推進にも取り組んでまいります。

③プライベートブランドを通じた企業価値・競争力向上

「くらしリズム」「くらしリズムMEDICAL」の開発・販売を推進し、ツルハグループを代表する優れた商品の開発とブランド育成を図るべく、大手メーカーとの共同開発、食品PBの開発の加速、健康志向や付加価値商品の開発を行い、当社へのロイヤリティ向上に取り組んでまいります。同時に、環境配慮型商品の開発および環境配慮パッケージの採用にも取り組み、商品開発を通じた企業価値の向上を図ってまいります。

④デジタル戦略の推進とIT基盤の強化

ドラッグストア業界最大の店舗網を活かし、顧客データプラットフォームを活用した顧客満足度向上と新規顧客の獲得を図る新たなマーケティングの展開に取り組んでまいります。またBIツールによる経営数値の可視化を進め、グループの経営効率向上に取り組んでまいります。

⑤サステナブル経営の推進

地域社会の一員である社員自身の自律的な成長を図るべく「人的資本経営」を策定し、人的資本の価値向上を通じた地域社会への更なる貢献を図るなど、引き続きSDGs(持続可能な開発目標)が掲げる持続可能な社会づくりに取り組んでまいります。同時に、コーポレート・ガバナンス体制の更なる充実により長期的な企業価値向上を目指します。

 

 当社は2022年6月21日に公表いたしました中期経営計画の方針に基づき、上記施策を確実に実行してまいります。

 また、当社はイオン株式会社とウエルシアホールディングス株式会社と経営統合の協議を開始しており、各社の経営資源を最大限に活用して連携し、様々な分野でシナジーを発揮することを目指してまいります。
 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは「お客様の生活に豊かさと余裕を提供しよう」という経営理念に基づき、事業活動を推進して参りました。これからも企業としての責任を果たしていくために、事業を通じた地域社会へのさらなる貢献を図るとともに、社会と環境の様々な課題に向き合い、ステークホルダーの皆様との対話を通じて、SDGs(持続可能な開発目標)の発展に貢献する企業を目指しております。また、2023年5月にサステナブル経営推進部を新設し、ESG・SDGsの推進、人的資本経営・TCFD対応の取り組みを当社グループ全体に広げ、サステナビリティ経営の推進を図っております。

 

(1)ガバナンス

当社グループ全体におけるサステナビリティ推進に向けた活動として年4回開催のESG推進プロジェクト委員会にて、「ガバナンス」・「環境問題」・「人材育成」・「気候関連」を含めたサステナビリティ上の重要課題に関して、活動戦略の報告、策定および実務状況の管理を行っております。事業への影響を最小限にするための状況報告およびリスク管理対策は定期的にグループ執行会議および取締役会への報告を行うなど、監視体制を整備しております。

 

(2)戦略

①気候変動・環境問題に関する取り組み(TCFD提言への対応)

当社グループでは、世界的な課題となっている地球環境問題を含む気候変動リスクへの対応は重要課題の一つと認識しております。気候変動がもたらす環境問題については当社グループへの事業戦略や財務に直接的に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、気候変動がもたらすリスク・機会を基にシナリオ分析を実施しており、気候変動リスクへの対応については、取締役会の監督の下、代表取締役社長を委員長としたグループリスク管理委員会を設置し、気候変動関連を含む当社グループ全体のリスク分析と対応を行っております。

取締役会は、グループリスク管理委員会で審議された重要事項について年に2回報告を受け、気候変動リスクへの対応方針および実行計画等についても審議・監督を行って参ります。詳細な情報につきましては、当社ホームページにて開示しております。

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②人材育成および社内環境整備方針

当社グループが掲げる経営理念の「お客様の生活に豊かさと余裕を提供する」を全うするために最も重要と考えているのが約5万人の社員です。日本全国に展開する事業会社・店舗に勤務する多様な社員を“人的資本”と位置づけ、「人材育成」「職場環境」「心身の健康」3つの視点で構成した総合的な施策を通じ、その価値を高めることで、地域社会へ永続的な貢献を果たすとともに、地域社会の一員でもある社員自身の自律的な成長を図ります。

詳細な情報につきましては、人的資本経営基本方針を当社ホームページに開示しております。

 

 

(3)リスク管理

当社グループは、グループリスク管理委員会を設置し、リスクの発生懸念、発生状況を始め、当社グループを取り巻くリスクに関する情報の収集分析を行い、重点対応すべきリスクを選定し、対応を実施することでリスクのコントロールを進めております。

特定したリスク・機会は年2回開催のグループリスク管理委員会にて審議・議論し、リスク管理の状況や重大なリスクの判断に関しては、グループ執行会議及び取締役会への報告・提言を行っております。

 

(4)指標及び目標

①気候変動・環境問題(TCFD提言への対応)

当社グループは、気候変動が社会の喫緊の課題であると認識し、温室効果ガス削減や省エネルギー化に取り組んでいます。持続可能な社会の実現に向けて、SBT(Science Based Targets)として求められるCO2排出削減レベルを考慮し、Scope1,2について、「2030年度に2013年度比一店舗当たりのCO2排出量を46%削減」の目標を設定しています。また、Scope3においても特に重要と考えるカテゴリについて目標を定め削減を進めてまいります。

 

GHG(温室効果ガス)Scope1,Scope2排出量

2023年度のGHG排出量は、Scope1(事業による直接排出)は3,424t、Scope2(電力消費による間接排出)は275,368tでした。

 

●GHG(温室効果ガス)排出量の推移(Scope1、2)                          (単位:t-CO2)

年度

2017年度

2018年度

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

集計期間

2017年4月

2018年3月

2018 年4月

2019年3月

2019年4月

2020年3月

2020年4月

2021年3月

2021年4月

2022年3月

2022年4月

2023年3月

2023年4月

2024年3月

Scope1(直接排出)

6,415

5,761

5,348

4,408

4,031

3,731

3,424

Scope2(間接排出)

206,458

215,873

226,446

238,776

247,213

261,251

275,368

Scope1+Scope2(店舗のみ)※2

212,873

221,634

231,794

243,184

251,244

264,982

278,792

Scope1+Scope2(全社)※3

-

-

-

-

-

-

280,392

店舗数(店) ※4

1,931

2,082

2,150

2,420

2,522

2,589

2,653

1店舗平均排出量 ※5

110.2

106.5

107.8

100.5

99.6

102.3

105.1

※1.取得データの精度向上を目的とした算定方法の見直しに伴い、過年度データを遡及して修正しております。

※2.当社グループの店舗運営部門のみを対象にGHG排出量を集計しております。

※3.2023年度より、オフィス及び社有車使用によるGHG排出量を「Scope1+Scope2(店舗のみ)」に加算し、全社合計の

  GHG排出量(Scope1+Scope2)を算定しております。

※4.店舗数は、GHG排出量算定期間の当社グループ期末店舗数を記載しております。

※5.一店舗あたりの平均排出量は、「Scope1+Scope2(店舗のみ)」÷「店舗数」により算定しております。

 

●GHG(温室効果ガス)排出量(2023年度、Scope3)      (単位:t-CO2)

Scope3カテゴリ

2023年度

購入した商品・サービス

3,031,230

資本財

107,227

燃料及びエネルギー活動

41,957

輸送、配送(上流)

530,211

事業から出る廃棄物

8,267

雇用者の出張

1,240

雇用者の通勤

15,374

輸送、配送(下流)

3,578

13

リース資産(下流)

8,279

14

フランチャイズ

430

Scope3総計

3,747,793

  ※1.カテゴリ8、10、11、12、15については、対象のない項目または排出量を算定できていない項目です。

  ※2.全カテゴリについて、数値及び算定方法を精査中です。

  ※3.2023年度における集計期間は、2023年3月~2024年2月としております。

 

GHG排出量の削減については、各店舗の省エネ、節電を心掛けるとともに、化石燃料を用いない再生可能エネルギーの導入や国が認証するJ-クレジット制度を積極的に活用し脱炭素社会の実現を目指して参ります。

 

②人材育成および社内環境整備方針

ツルハグループは人的資本経営の3つの視点「人材育成」「職場環境」「心身の健康」を柱としております。この方針にもとづく指標に関する実績および目標は、次のとおりであります。

指標

算出式

2024年5月実績

2025年5月目標数値

2030年5月目標数値

女性管理職比率※係長級を含む

女性管理職者数

÷全管理職者数

※係長級を含む

23.4%

25.0%

37.0%

男女賃金格差

女性平均月例給

÷男性平均月例給

正社員:73.7%

パートアルバイト:100.1%

全社員:60.0%

正社員:75.0%

パートアルバイト:101.2%

全社員:57.7%

正社員:78.0%

パートアルバイト:101.2%

全社員:58.6%

男性育児休業取得率

(男性育児休業・時短取得者)÷配偶者が出産した男性社員数

43.8%

50.0%

95.0%

 

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績、財政状態および投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のようなものがあります。

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1)持株会社としてのリスク

 グループ各社の経営変動リスクについて

  グループ各社の諸要因に基づく業績の急激な変動が、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 のれんの減損リスクについて

  のれんは、各連結子会社の将来の超過収益力の下落に起因する潜在的な減損のリスクにさらされており、減損損失が計上された場合、連結財務諸表に対して重要な影響を生じさせる可能性があります。

  各連結子会社別ののれんの残高については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 ①財政状態の分析 (固定資産)」に記載しております。

2)法的規制について

①「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、「医薬品医療機器等法」という。)」等による規制について

 当社グループは、「医薬品医療機器等法」上の医薬品等を販売するにあたり、各都道府県の許可・登録・指定・免許および届出を必要としております。また、食品、たばこ、酒類等の販売については、食品衛生法等それぞれ関係法令に基づき、所轄官公庁の許可・免許・登録等を必要としております。今後当該法令等の改正により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

②出店に関する規制等について

 「大規模小売店舗立地法」(以下、「大店立地法」という)においては、売場面積が1,000㎡を超える新規出店および既存店の変更について、都道府県知事(政令指定都市においては市長)に届出が義務付けられており、騒音、交通渋滞およびごみ処理等地域への生活環境への配慮が審査事項となります。

 従いまして、上記法的規制により計画どおりの新規出店および既存店の増床等ができない場合は、当社グループの出店政策に影響を及ぼす可能性があります。

3)資格者確保について

 医薬品医療機器等法や薬剤師法の規定により薬剤師または医薬品登録販売者の配置が義務づけられております。医薬品の販売に伴いこれら有資格者を確保することは営業政策上重要な要件となります。

 これら有資格者の確保が十分にできない場合には、当社グループの出店政策に影響を及ぼす可能性があります。

4)人材について

 代表取締役をはじめとする取締役および執行役員は、当社グループの経営において重要な役割を果たしております。これら取締役および執行役員が業務執行できない事態が発生した場合、業績に影響を及ぼす場合があります。

5)調剤業務について

 当社グループは、グループ調剤薬事部を主管部署とする薬剤師の専門的な知識の習得、スキルアップなどに積極的に取り組んでおります。また、当社グループは、調剤過誤を防止すべく調剤過誤防止システムを導入し、服薬指導時における薬品名・用量確認など細心の注意を払って調剤業務を行っております。また、万一に備え、調剤薬局全店舗において「薬剤師賠償責任保険」に加入しております。しかしながら、調剤薬の欠陥・調剤過誤などにより訴訟を受けることがあった場合、社会的信用を損なうなどの理由により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

6)出店政策について

 当社グループは、地域での知名度向上による占有率向上および管理コストの抑制等を目的とするドミナント戦略をとっております。今後の店舗展開において、出店場所が十分に確保できない場合や、ドミナント形成に時間を要する場合には、店舗の収益が悪化し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

7)情報システム・個人情報保護について

 当社グループは、ポイントカードシステムの運用に伴う顧客情報、調剤業務に伴う患者情報等を保持しており、これら情報の中には顧客または患者個人のプライバシーに関わるものが含まれております。これらの情報の取扱いについては情報管理者により、情報の利用・保管等に関する社内ルールを設け、その管理については万全を期してはおりますが、コンピュータの不具合やサイバー攻撃等の犯罪行為によるインシデントがあった場合、社会的信用を損なうなどの理由により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

8)自然災害等について

 当社グループの本社、店舗、物流センター等所在地域において、大規模な地震等自然災害や、予期せぬ事故等により、当社グループの設備に損害や、従業員等の人的被害が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

9)気候変動リスクについて

 世界的な気候変動により、政府の環境規制強化に伴う炭素税の導入や、再生可能エネルギー需要の増加による価格上昇等の費用の増加、世界規模での地球温暖化対策が講じられることによる資源調達費用の増加等が発生する可能性があります。

 なお、当社グループはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による提言に賛同し、気候変動によるリスクを全社リスクの一つとして管理しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

 当連結会計年度 (2023年5月16日~2024年5月15日)における経済情勢は、好調な企業業績に支えられ景気は緩やかに回復しております。米国株高や市場評価を意識した経営により国内株価は上昇し、資産効果や賃上げ機運の高まり、コロナ禍での過剰貯蓄などは消費の下支え要因となりました。一方で円安等による物価上昇、実質賃金の減少は続いており、年明け以降の消費は一進一退で推移しております。

 ドラッグストア業界においては、コロナ沈静化による人流の戻りやインバウンド需要の回復、値上げ効果が寄与し、化粧品や食品を中心に売上高が伸長しており、各社の業績は好調に推移しております。一方で出店競争により1店舗あたりの商圏人口は減少傾向にあり、競争環境が厳しさを増すなか、業界再編に向けた動きがみられます。

 このような状況のもと、当社グループでは中期経営計画の達成に向け、店舗戦略では出店精度の向上・改装推進、調剤戦略では併設店の拡大・オンラインを活用した処方箋枚数の確保、PB(プライベートブランド)戦略では新規商品の開発と既存商品の販売促進による売上構成比のアップ、DX戦略ではMAツールの活用やITシステム開発により生産性向上に取り組んでまいりました。また、業績管理面では予実分析の精度改善により経費コントロールに取り組むとともに、不採算部門に関する管理をさらに厳格化いたしました。

 店舗展開につきましては、既存エリアのさらなるドミナント強化を図るとともに競争力強化のため不採算店舗の改廃を進め、期首より128店舗の新規出店と5店舗の子会社化等、69店舗の閉店を実施いたしました。この結果、当期末のグループ店舗数は直営店で2,653店舗となりました。なお、タイ国内の当社グループ店舗につきましては、2店舗の新規出店、1店舗の閉店を実施し、同国内における店舗数は2024年5月15日現在で19店舗となりました。

 

当社グループの出店・閉店の状況は次のとおり

 

 

 

 

 

 

(単位:店舗)

 

期首

店舗数※

出店

子会社化

閉店

純増

期末店舗数

うち

調剤薬局

北海道

425

16

1

10

7

432

139

東 北

593

27

16

11

604

162

関東甲信越

529

14

10

4

533

221

中部・関西

258

17

6

11

269

162

中 国

345

27

6

21

366

138

四 国

226

8

9

△1

225

67

九州・沖縄

213

19

4

12

11

224

47

国内店舗計

2,589

128

5

69

64

2,653

936

上記のほか、海外店舗19店舗、FC加盟店舗7店舗を展開しております。

※当期首からEC店舗・FC店舗等の店舗数のカウント基準を見直しており、期首店舗数は前期末店舗数と一部

 差異がございます。

 これらの結果、当連結会計年度における業績は、売上高1兆274億62百万円(前年同期比5.9%増)、営業利益471億51百万円(同3.5%増)、経常利益474億66百万円(同3.9%増)となりました。また、連結子会社である㈱ビー・アンド・ディーに係るのれんについて、連結子会社化後における仕入条件の改善等の統合効果創出の取り組み等により、㈱ビー・アンド・ディーの営業利益及び営業利益率等は向上が図られている一方で、市場環境の変化に伴う事業計画の見直しを行った結果、同社の株式取得時に想定していた収益の確保は困難であることから、回収可能価額と帳簿価額との差額41億8百万円をのれんの減損損失として計上したことなどから、親会社株主に帰属する当期純利益は217億43百万円(同13.9%減)となりました。

 

②財政状態の状況

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて97億21百万円増加し、5,495億51百万円となりました。流動資産は前連結会計年度末に比べて118億6百万円減少し、2,734億82百万円となりました。これは主に、現金及び預金の減少203億62百万円、商品64億24百万円の増加などによるものであります。

 固定資産は前連結会計年度末と比べて215億27百万円増加し、2,760億69百万円となりました。これは主に、新規出店等に伴う有形固定資産の増加230億円、のれんの償却及びのれんの減損等に伴う無形固定資産の減少56億73百万円、保有する投資有価証券の時価評価額の上昇等に伴う投資その他の資産の増加42億円などによるものであります。

 

 負債合計は、前連結会計年度末に比べて85億68百万円増加し、2,442億54百万円となりました。これは主に、新規出店等に伴う買掛金の増加59億66百万円、資産除去債務の増加31億20百万円、契約負債の増加26億60百万円、1年内返済予定の長期借入金の減少31億50百万円、長期借入金の減少40億50百万円などによるものであります。

 純資産合計は、前連結会計年度末に比べて11億52百万円増加し、3,052億97百万円となりました。これは主に連結子会社である株式会社ドラッグイレブン株式の追加取得等に伴う資本剰余金の減少80億36百万円及び非支配株主持分の減少20億82百万円、利益剰余金の増加82億78百万円、その他有価証券評価差額金の増加25億37百万円などによるものであります。

 以上の結果、自己資本比率は0.3ポイント減少し、50.9%となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて203億62百万円減少し、585億54百万円となりました。

 当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は、519億64百万円(前期は8億4百万円の獲得)となりました。これはおもに、税金等調整前当期純利益が382億26百万円となったことと、仕入債務の増加59億66百万円と減価償却費138億41百万円等のプラス要因に対し、法人税等の支払額156億28百万円と棚卸資産の増加64億18百万円のマイナス要因によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、360億68百万円(前期は297億74百万円の使用)となりました。これはおもに、新規出店に伴う有形固定資産の取得による支出319億92百万円、新規出店に伴う差入保証金の支出51億66百万円、ソフトウエアの取得による支出33億88百万円となったこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、362億59百万円(前期は190億5百万円の使用)となりました。これはおもに、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出117億68百万円、配当金の支払額134億65百万円と長期借入金の返済による支出72億円等によるものであります。

 

④仕入及び販売の実績

当社グループは小売業を主たる事業としているため、生産実績および受注実績は記載しておりません。

(ⅰ)仕入実績

 品目

 当連結会計年度

(自 2023年5月16日

  至 2024年5月15日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

前期比

(%)

 

 

 

医薬品

139,857

19.4

106.9

化粧品

99,723

13.8

107.3

雑貨

191,985

26.6

104.9

食品

216,366

30.0

106.1

その他

71,367

9.9

98.6

小計

719,299

99.7

105.3

不動産賃貸料原価

518

0.1

132.8

手数料収入等

1,665

0.2

109.7

合計

721,482

100.0

105.3

(注)1.金額は、実際仕入価格によっております。

2.その他のおもな内容は、育児用品・健康食品・医療用具等であります。

 

(ⅱ)販売実績

(品目別売上高)

 品目

 当連結会計年度

(自 2023年5月16日

  至 2024年5月15日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

前期比

(%)

 

 

 

医薬品

240,525

23.4

107.9

化粧品

146,605

14.3

109.8

雑貨

264,939

25.8

103.7

食品

261,366

25.4

108.5

その他

109,377

10.6

97.0

小計

1,022,814

99.5

105.9

不動産賃貸料

1,397

0.1

102.2

手数料収入等

3,251

0.3

106.0

合計

1,027,462

100.0

105.9

(注)その他のおもな内容は、育児用品・健康食品・医療用具等であります。

(地域別売上高)

区分

地域

売上高

店舗数

金額(百万円)

前年同期比(%)

前年同期比(+)

商品売上

北海道

169,216

105.7

432

店舗

7

店舗

青森県

22,611

105.9

68

店舗

1

店舗

岩手県

25,560

105.7

80

店舗

2

店舗

宮城県

57,851

108.0

154

店舗

1

店舗

秋田県

26,368

107.0

82

店舗

1

店舗

山形県

31,170

106.7

100

店舗

2

店舗

福島県

38,564

105.8

120

店舗

4

店舗

茨城県

14,655

89.2

51

店舗

△1

店舗

栃木県

9,965

102.6

35

店舗

△1

店舗

埼玉県

1,901

111.8

8

店舗

1

店舗

千葉県

62,958

107.5

151

店舗

2

店舗

東京都

41,480

104.5

161

店舗

2

店舗

神奈川県

13,227

101.1

40

店舗

△1

店舗

新潟県

9,842

112.7

36

店舗

店舗

山梨県

9,297

99.4

32

店舗

店舗

長野県

5,568

109.6

19

店舗

2

店舗

静岡県

131,827

104.9

102

店舗

7

店舗

愛知県

31,682

102.6

88

店舗

4

店舗

滋賀県

1,697

99.7

7

店舗

店舗

京都府

1,428

140.0

6

店舗

1

店舗

大阪府

10,613

146.0

26

店舗

店舗

兵庫県

7,050

109.8

21

店舗

2

店舗

和歌山県

4,987

104.6

19

店舗

△1

店舗

鳥取県

18,110

104.3

42

店舗

2

店舗

島根県

29,479

105.8

56

店舗

2

店舗

岡山県

4,150

113.2

14

店舗

2

店舗

広島県

83,579

106.0

198

店舗

7

店舗

山口県

18,473

111.9

56

店舗

7

店舗

徳島県

7,832

103.3

25

店舗

1

店舗

香川県

17,106

102.4

51

店舗

1

店舗

愛媛県

44,662

104.3

116

店舗

△4

店舗

高知県

10,306

100.7

33

店舗

店舗

福岡県

28,455

108.1

99

店舗

6

店舗

佐賀県

1,490

112.0

6

店舗

店舗

長崎県

1,147

133.4

8

店舗

4

店舗

熊本県

2,159

110.6

11

店舗

店舗

大分県

1,810

119.5

8

店舗

店舗

宮崎県

1,318

102.9

11

店舗

店舗

鹿児島県

8,566

111.3

40

店舗

店舗

沖縄県

14,635

107.8

41

店舗

1

店舗

小計

1,022,814

105.9

2,653

店舗

64

店舗

不動産賃貸料

1,397

102.2

 

 

 

 

手数料収入等

3,251

106.0

 

 

 

 

合計

1,027,462

105.9

2,653

店舗

64

店舗

 

 

 

 

 

(2)経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

①財政状態の分析

(総資産)

 当連結会計年度末における総資産につきましては、5,495億51百万円と前連結会計年度末に比べて97億21百万円増加となりました。

(流動資産)

 流動資産につきましては、おもに現金及び預金の減少等により、2,734億82百万円と前連結会計年度末に比べ118億6百万円の減少となりました。

(固定資産)

 固定資産につきましては、おもに新規出店に伴う有形固定資産取得と差入保証金の増加等により、2,760億69百万円と前連結会計年度末に比べ215億27百万円の増加となりました。

 なお、のれんの残高を会社別に示すと以下のとおりです。

会社名

金額(百万円)

㈱杏林堂グループ・ホールディングス

8,873

㈱ドラッグイレブン

8,262

㈱ビー・アンド・ディー

2,687

㈱くすりの福太郎

1,553

その他

567

21,944

 

(流動負債)

 流動負債につきましては、1,813億62百万円と前連結会計年度末に比べ70億46百万円の増加となりました。

(固定負債)

 固定負債につきましては、おもに資産除去債務の増加等により、628億91百万円と前連結会計年度末に比べ15億22百万円増加となりました。

(純資産)

 純資産につきましては、おもに利益剰余金の増加等により、3,052億97百万円と前連結会計年度末に比べ11億52百万円の増加となりました。自己資本比率は50.9%と前連結会計年度末に比べ0.3ポイント減少となっており、1株当たり純資産額は5,748.63円と前連結会計年度末に比べ58.1円の増加となりました。

 

②経営成績の分析

 当連結会計年度の業績について以下の通りです。

(単位:百万円)

 

前期実績

計画

当期実績

前年比(%)

計画比(%)

売上高

970,079

1,033,000

1,027,462

105.9

99.5

営業利益

45,572

47,200

47,151

103.5

99.9

経常利益

45,689

47,387

47,466

103.9

100.2

親会社株主に帰属する当期純利益

25,258

25,898

21,743

86.1

84.0

 

(ⅰ)売上高
 売上高は1兆274億62百万円で前年同期比5.9%の増加となりました。

 商品部門別の状況は、次のとおりであります。
(医薬品)

 前年の抗原検査キット等の反動減により伸びは鈍化したものの、風邪薬等の販売が好調であったことに加え、調剤薬局104店舗の新規開設による処方箋枚数の増加により、売上高は前年同期比7.9%増加の2,405億25百万円となりました。

(化粧品)

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響が薄れ、人流が回復したこと、あわせて脱マスク化が進んだことにより、売上高は前期比9.8%増加の1,466億5百万円となりました。

 

(雑貨)

 PB商品をはじめとし、衣料用・台所用洗剤、ヘアケア、ペットフード等が堅調に推移したことから、売上高は前期比3.7%増加の2,649億39百万円となりました。

(食品)

 物価上昇で消費者の価格志向が強まる中、値ごろ感のある価格設定で需要を取り込み、売上高は前期比8.5%増加の2,613億66百万円となりました。

(その他)

 マスクの販売減少や一部健康食品の健康被害による販売不振により、売上高は前期比3.0%減少の1,093億77百万円となりました。

 

(ⅱ)売上総利益
 食品、化粧品、医薬品の売上高が増加したことや、利益率の改善に取り組んだことから、売上総利益は前年同期比6.4%増加の3,122億76百万円となり、売上総利益率においても30.4%を確保いたしました。

 

(ⅲ)販売費及び一般管理費

 販売費及び一般管理費は2,651億25百万円で前年同期比7.0%の増加となりました。

 

(ⅳ)営業利益・経常利益
 上記の結果、営業利益は471億51百万円で前年同期比3.5%の増加となり、経常利益は474億66百万円と前年同期比3.9%の増加となりました。

 

(ⅴ)親会社株主に帰属する当期純利益
 上記に加え、のれんの減損損失を計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益は217億43百万円で前年同期比13.9%の減少となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(ⅰ)キャッシュ・フローの状況の分析

 第一部 企業情報 の「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」における記載内容と同一であるため、記載を省略しております。

 

(ⅱ)資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社グループの運転資金需要のうち、主なものは商品の仕入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、新規出店等によるものであります。これらの資金需要は自己資金または銀行借入により調達しております。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況」 連結財務諸表および財務諸表の注記事項「(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 ⑤今後の方針について

 当社グループは、創業以来「お客様第一主義」を基本的な経営方針とし、「お客様の生活に豊かさと余裕を提供する」という経営理念のもとに利便性と専門性を追求し、お客様の健康で快適な生活に貢献するため、身近で買物しやすい店舗づくりに取り組んでおります。当社を中核とする持株会社体制によりグループの戦略機能を当社に集約し、迅速かつ機動的な意思決定を行い、各子会社は経営理念実践のため、事業活動に専念できる体制をとっております。

 今後も中期経営計画の達成に向け、店舗戦略、調剤戦略、PB戦略、DX戦略、財務戦略を進めるとともに、イオン株式会社及びウエルシアホールディングス株式会社との経営統合に向けた協議を進め、企業価値向上を目指してまいります。

5【経営上の重要な契約等】

(1)イオン株式会社及びウエルシアホールディングス株式会社との資本業務提携契約の締結

 イオン株式会社及びウエルシアホールディングス株式会社と当社は、資本業務提携契約を2024年2月28日に締結致しました。

 詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (追加情報)「イオン株式会社及びウエルシアホールディングス株式会社との資本業務提携契約の締結」に記載のとおりであります。

 

(2)連結子会社間の吸収合併

 当社は、2023年12月8日開催の取締役会において、当社の連結子会社である株式会社ツルハを存続会社、当社の連結子会社である株式会社ビー・アンド・ディーを消滅会社とする吸収合併を行うことを決議し、2024年5月16日付で当該吸収合併を行いました。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、研究開発活動を行っておりませんので該当事項はありません。