文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)が判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、『公正、信用を重視し社会を利するという「住友の事業精神」に基づき、人と地球環境にやさしい「木」を活かし、人々の生活に関するあらゆるサービスを通じて、持続可能で豊かな社会の実現に貢献』することを経営理念に掲げ、この理念のもと、企業価値の最大化をめざすことを経営の基本方針としております。
この実現のため、当社グループは、お客様の感動を生む高品質の商品・サービスを提供する、新たな視点で次代の幸福に繋がる仕事を創造する、多様性を尊重し自由闊達な企業風土をつくる、日々研鑽を積み自ら高い目標に挑戦する、正々堂々と行動し社会に信頼される仕事をする、の5つを行動指針として、経営の効率化及び収益性の向上を重視した事業展開を行っております。
また、情報開示を積極化し経営の透明性を高めることで、経営品質の向上を図っております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、「売上高」及び「経常利益」をグループ全体の成長を示す経営指標と位置づけております。また、経営の効率性を測る指標として「自己資本利益率(ROE)」、財務の安定性を測る指標として「自己資本比率」を重視しております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
世界経済は、景気の持ち直しの動きが続くことが期待されるものの、地政学リスクの顕在化等、依然として不透明感は強く、米国では政権交代に伴う移民、財政、通商政策の転換によるインフレの再燃も懸念されます。わが国経済は、引き続き、雇用・所得環境が改善する下で、緩やかに景気回復が続くと考えられますが、政策金利の引き上げに伴う金融市場の変動等の影響に注意する必要があります。
(長期ビジョン「Mission TREEING 2030」)
当社グループは、2022年2月、2050年の脱炭素社会実現を見据え、当社グループが目指すべき姿を具体的な事業構想として落とし込んだ、長期ビジョン「Mission TREEING 2030~地球を、快適な住まいとして受け継いでいくために~」を策定しました。
当社グループは、長期ビジョンにおける目標を「地球環境への価値」「人と社会への価値」「市場経済への価値」という3つの価値の実現に定め、それぞれの価値を高めることにより、また、これらのいずれも損なうことなく3つの価値を同時に満たす事業活動を推進してまいります。
また、事業方針として1.森と木の価値を最大限に活かした脱炭素化とサーキュラーバイオエコノミーの確立、2.グローバル展開の進化、3.変革と新たな価値創造への挑戦、4.成長に向けた事業基盤の改革を掲げ、これらの取り組みを通じ、社会の脱炭素化推進に貢献することで、2030年にはグループ全体で経常利益を3,500億円に伸長させることを目指しております。
当社グループの特長は、再生可能な自然資本である「木」を軸とした川上から川下までのバリューチェーンであるWOOD CYCLE(ウッドサイクル)を回す事業活動にあります。「森林」分野での「循環型森林ビジネスの加速」、「木材」分野における「ウッドチェンジの推進」、そして「建築」分野での「脱炭素設計のスタンダード化」の3つを柱として、森林経営から木材・建材の調達・製造、木造建築、木質バイオマス発電まで、脱炭素社会の実現につながるこれらの事業を展開していきます。3つの柱それぞれの定量目標は下表のとおりです。目標達成に向けた積極的な取り組みを進めることで、自らの事業成長とともに持続可能で豊かな社会の実現に貢献していきます。
なお、当社グループは、長期ビジョン「Mission TREEING 2030」達成への第1段階として、2022年2月に「将来の成長と脱炭素化への貢献に向けた基盤づくりの3年間」をテーマとする中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase 1」(2022年~2024年)を策定し、また、2025年2月には「飛躍的成長に向けた改革と具現化の3年」をテーマとする中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase2」(2025年~2027年)を策定しております。
(中期経営計画 「Mission TREEING 2030 Phase1」の総括)
当社グループは、中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase1」において、「木材資源の活用による脱炭素化への挑戦」、「収益基盤の強靭化の推進」、「グローバル展開の加速」、「持続的成長に向けた経営基盤の強化」、「事業とESGの更なる一体化」という5つの基本方針に基づいて、将来の成長と脱炭素化への貢献に向けた基盤づくりを推進しました。
数値目標及びその結果につきましては、下表のとおりとなりました。
(注)1.中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase1」の数値目標は計画策定時点における2024年12月期の
計画値です。また、経常利益の目標値は退職給付会計に係る数理計算上の差異を除きます。
2.退職給付会計に係る数理計算上の差異を含む経常利益を記載しています。なお、2024年12月期におけ
る退職給付会計に係る数理計算上の差異はプラス98億円です。
(中期経営計画 「Mission TREEING 2030 Phase2」の推進)
当社は、このほど、第86期(2025年12月期)から第88期(2027年12月期)までの3年間を対象とした中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase2」を策定し、3年後の第88期末(2027年12月期末)に売上高3兆2,200億円、経常利益2,800億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,760億円、ROE15%以上を目指すこととしました。また、本中期経営計画の全体テーマを「飛躍的成長に向けた改革と具現化の3年」とし、5つの基本方針として「脱炭素化への挑戦」、「稼ぐ力の向上」、「グローバル展開の深化」、「経営基盤の強化」、「事業とESGの更なる一体化」を掲げ、目標達成に向けて取り組んでまいります。
<基本方針>
① 脱炭素化への挑戦
・ 適切に管理された森林の新たな価値を創造し、持続可能な森林を拡大します。
・ 製造事業の拡大による木材活用の深耕と、用途・消費拡大の基盤づくりを目指します。
・ 国内外における木造住宅の供給拡大と中大規模建築の木造化を推進します。
② 稼ぐ力の向上
・ 国内事業におけるイノベーション、構造改革を加速させます。
・ 国内外における不動産開発事業の基盤を確立します。
・ 資本コストを意識し、資産・投資の効率性・収益性の更なる向上を目指します。
③ グローバル展開の深化
・ 海外住宅・不動産事業の更なる収益性向上と、安定成長に向けた事業基盤を拡充します。
・ 日本、米国、オセアニア、東南アジア及び欧州の各エリア単位で事業領域と規模の拡大を進め、ウッドサイクルの基盤づくりと深耕を図るとともに、コーポレート部門による支援を強化します。
④ 経営基盤の強化
・ 事業の変革と創造を担う人財の確保・育成、自由闊達な組織風土及び健康経営を推進します。
・ IT化・デジタル化による事業基盤の刷新、DX推進による抜本的な業務変革と効率化を図ります。
・ 技術を軸とした価値創造を加速させるとともに、業務品質の向上を推進します。
⑤ 事業とESGの更なる一体化
・ SBT(Science Based Targets)目標の達成に向けた施策を着実に実行します。
・ 持続可能で脱炭素に貢献する製品・サービスの価値を訴求し、市場への浸透を推進します。
・ SAFETY FIRST(安全第一)、ZERO DEFECTS(不具合・不良・不備ゼロ)を徹底します。
・ 地域のステークホルダーに配慮した事業運営を徹底します。
<株主還元方針>
当社は、株主の皆様への利益還元を最重要課題の一つと認識しています。中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase2」における株主還元の方針は、配当性向を親会社株主に帰属する当期純利益の30%以上とし、利益水準に応じた還元を行うとともに、安定的な配当を実施する観点から、1株当たり年間配当金の下限を150円といたします。
当社グループは、長期ビジョン「Mission TREEING 2030」において、事業活動を通じて基盤となる「地球環境への価値」、そこから成り立つ「人と社会への価値」、「市場経済への価値」を社会に提供するため、9つの重要課題を特定しました。
中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase2」では、引き続き基本方針の一つに「事業とESGの更なる一体化」を掲げ、重要課題それぞれにSDGsと紐づいた個別指標を設定しています。気候変動問題に関しましては、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言等の国際的な枠組みに基づいた情報開示やSBT及びRE100の達成等に向けた取り組みを着実に進めてまいります。現在認定を取得しているSBTにおいては、2050年までにネット排出量をゼロにするScope1*、2**及び3***の長期目標を新たに策定するとともに、2030年までの目標の再設定も行いました。また、気候変動問題だけでなく、自然関連課題への取り組みについても、2023年にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った開示を行う意向を表明し、生物多様性、自然保全・回復に向けた取り組みを推進してまいります。
*Scope1とは、自社での燃料使用等による温室効果ガスの直接排出量を意味します。(例:社有車のガソリン使用に伴うCO2排出量)
**Scope2とは、購入した電力・熱による温室効果ガスの間接排出量を意味します。(例:オフィスの電力使用に伴うCO2排出量)
***Scope3とは、サプライチェーンの温室効果ガス排出量を意味します。(例:販売した製品の使用時のCO2排出量)
当社グループは、以上の取り組みとともに、社会の変化を見据え、株主の皆様をはじめとするステークホルダーの声に耳を傾けながら、コーポレート・ガバナンスを充実させ、環境共生、お客様満足の向上、人権・多様性尊重、リスク管理・法令遵守に関する取り組みを引き続き強化し、企業価値の更なる向上に取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
当社グループは、
また、当社グループでは、経営理念や行動指針に基づき、国際規範や国際イニシアティブなどのグローバルな社会的要請に準拠するため、住友林業グループ倫理規範を定めております。当社グループ役職員をはじめ調達先や協力会社などのビジネスパートナーを含め、サプライチェーン全体で、浸透・運用を図っております。さらに、これらの実効性を高めるため、「環境方針」や「調達方針」、「労働安全衛生方針」などの方針、各種ガイドラインを制定しております。
2022年2月には、脱炭素社会の実現に向けて、SDGsの目標年でもある2030年を見据え、当社グループのあるべき姿を見据えた長期ビジョン「Mission TREEING 2030」及び中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase 1」(2022年~2024年)を策定し、新たな価値創造に向けた歩みをスタートさせました。長期ビジョンでは、「地球環境への価値」「人と社会への価値」「市場経済への価値」の視点から9つの重要課題を特定し、ESGの取り組みと事業の更なる一体化を通じて、経営理念の実現に取り組んでおります。また、2025年2月には、「飛躍的成長に向けた改革と具現化の3年」をテーマとする中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase 2」(2025年~2027年)を策定し、更なる企業価値の向上に向けた取り組みを加速させております。
(イ)ガバナンス
当社グループでは、ESG推進委員会を中心にサステナビリティ活動を推進しております。ESG推進委員会は、気候変動、SDGs、及び人権問題への対応など、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)における中長期的な取り組みやその情報開示への要請が高まってきたことから、2018年度から設置しております。
ESG推進委員会は、執行役員兼務取締役及び各本部長から構成され、執行役員社長が委員長を務めております。同委員会では、気候変動や自然関連をはじめとする当社グループの中長期的なESG課題に対する戦略の立案と推進、リスク・機会の分析を含む中期経営計画サステナビリティ編の進捗管理、行動指針・倫理規範などの運用状況と有効性のモニタリングを行っております。なお、2024年1月からは品質・労働安全面の課題への取り組みの強化を目的として、ESG推進委員会の定期開催を年4回から6回としております。また、委員会での議事内容についてはすべて取締役会へ報告されております。
2025年2月には、役員報酬制度における、サステナビリティ指標達成率連動報酬の割合を引き上げる改定を行っております。詳細については
(ロ)戦略
長期ビジョン
長期ビジョン「Mission TREEING 2030」では、事業方針として1.森と木の価値を最大限に活かした脱炭素化とサーキュラーバイオエコノミーの確立、2.グローバル展開の進化、3.変革と新たな価値創造への挑戦、4.成長に向けた事業基盤の改革を掲げております。この長期ビジョンを達成するために、「地球環境への価値」、「人と社会への価値」、「市場経済への価値」、いずれの価値も損なうことなく、また、それぞれの価値を高めることにより、3つの価値を同時に満たすことを目指しております。
WOOD CYCLE(ウッドサイクル)
当社グループは森林経営から木材加工・流通、建築、エネルギーまでの「木」を軸にしたバリューチェーンであるウッドサイクルの実現に向けた事業活動を展開しております。当社グループはこのウッドサイクルを回すこと、すなわち木を植えて育林し、森林のCO2吸収量を増やし、木材を建築物や家具等に使用し長期間にわたり炭素を固定することで脱炭素社会への貢献を目指しております。
9つの重要課題
長期ビジョン「Mission TREEING 2030」において、「地球環境への価値」、「人と社会への価値」、「市場経済への価値」に整理した3つの価値に紐づける形で、以下の9つの重要課題を特定しております。この9つの重要課題を実現するための具体的な数値目標を事業本部ごとに設定し、中期経営計画サステナビリティ編に定めております。
9つの重要課題の特定プロセス
重要課題の特定にあたっては、外発的変化(メガトレンド)をもとに、当社グループに影響を及ぼすと考えられる項目を抽出し、「環境課題(気候変動)」「環境課題(資源と生物多様性)」「社会課題」「ガバナンス」「経済課題」の5つのカテゴリー別に35項目の課題を設定しました。次に、お客様や取引先、株主・投資家、社外の有識者、社員などを対象にしたアンケート調査(約6,000名が回答)、各層の社員への個別ヒアリング結果、経営層による議論を踏まえ、リスクと機会を考慮して重要性判断を行い、9つの重要課題を特定しました。
(ハ)リスク管理
サステナビリティに関する事項を含む、当社グループのリスクマネジメントの体制及びリスクに関する認識につきましては、
ESG推進委員会におきましても、気候変動や自然関連を含む中長期的に重要な環境・社会・ガバナンス面におけるリスクと機会に関して、戦略の立案と推進、進捗管理など具体的な活動を展開しております。ESG推進委員会の活動は、取締役会に報告・答申され、業務執行に反映されております。
(ニ)指標及び目標
当社グループでは、2025年2月に策定した中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase 2」(2025年~2027年)の基本方針の一つに「事業とESGの更なる一体化」を掲げ、中期経営計画におけるESGに関する具体的な目標を設定した「中期経営計画サステナビリティ編Phase 2(2025年~2027年)」を定めております。
各目標の進捗や達成状況については、定期的にESG推進委員会及び取締役会に報告されております。
9つの重要課題に関する数値目標と実績、およびサステナビリティ全般に関する詳細な情報については、
https://sfc.jp/information/sustainability/
(2)重要なサステナビリティ項目
以上のガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。
①気候変動・自然関連課題への対応
②人的資本及び多様性
それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
①気候変動・自然関連課題への対応
CO2吸収・炭素固定の機能や生態系サービスを提供する森林の役割、持続可能な森林から供給される木材及び木材製品、木造建築による炭素固定・温室効果ガス排出量削減、林地未利用木材のバイオマス燃料としての活用などに社会からの期待はますます高まっております。
当社グループは、不確実なあらゆる未来にも対応できる、レジリエント(強靭)な体制の構築を進めるとともに、ウッドサイクル、すなわち川上の森林経営から川中の木材・建材の製造・流通、川下の木造建築や再生可能エネルギー事業を通じて再生可能な自然資本である森林資源を有効に活用し、カーボンニュートラルでネイチャーポジティブな社会の実現に貢献することが当社グループのミッションであると認識しております。
気候変動や生物多様性など自然環境の変化は、森と木を軸に事業を展開している当社グループの企業業績に様々な形で影響を及ぼします。このため当社グループはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)やTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)など国際イニシアティブにいち早く対応してきました。
2017年のTCFD提言を受け、当社グループは2018年7月に同提言へ賛同を表明、同年9月からは環境省の支援事業の一環で初めてのTCFDシナリオ分析を木材建材事業と住宅事業を対象に実施し、2019年7月公表のサステナビリティレポートで開示を開始しました。その後、2021年には資源環境事業と建築・不動産事業を対象に、2022年にはグループ全事業を対象にシナリオ分析を実施し、それぞれ翌年4月公表のサステナビリティレポートで結果を開示しました。
一方、TNFDに関しては、2022年11月に公表されたTNFDフレームワークβ版v0.3を活用して、グループ内で最もデータ蓄積が進んでいる木材調達の分野においてLEAP分析*を試行的に実施し、2023年4月公表のサステナビリティレポート2023で結果を開示しました。また、同年9月にTNFDから最終提言(v1.0)が公表されたことをうけて、同年12月に「TNFD Early Adopter(アーリーアダプター)**」に登録しました。2023年末から2024年にかけては、生活サービス事業を除く4つの事業分野においてLEAP分析を実施し、2024年4月公表のサステナビリティレポート2024で結果を開示しました。
*TNFDが提唱する自然関連のリスクと機会を科学的根拠に基づき体系的に評価するためのプロセスのこと。Locate(発見)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(準備)の4つのフェーズで構成されている。
**TNFD提言に沿った情報開示を行う意思をTNFDのウェブサイト上で登録した企業・組織のこと。登録企業は2024年もしくは2025年のいずれかでTNFD提言に沿った開示を行う意向を表明することが求められる。
2025年以降は、TCFDシナリオ分析、TNFD・LEAP分析の分析対象の拡大・深化に取り組んでいく予定です。
(イ)ガバナンス
気候変動・自然関連課題に関するガバナンスは
(ロ)戦略
気候変動については、気候変動の対策が進まない4℃シナリオと脱炭素に向けた変革が進展する「1.5/2℃シナリオ」に基づいて2030年の状況を考察し、財務面のインパクト評価を行い、特に重要なリスク及び機会について対応策を協議しました。シナリオ分析を行うにあたり、国際エネルギー機関(IEA)及び国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のシナリオを用いて以下の2つのシナリオで分析を行いました。
自然関連課題については、2023年末から2024年にかけ、本社部門、事業部門のメンバーからなるワーキンググループを組成し、自然への依存・影響、リスク・機会に関するLEAP分析を実施し、その結果を2024年3月に取りまとめました。
TCFDシナリオ分析で特定された主な機会とリスク、TNFD・LEAP分析で特定された主な機会とリスクは次表のとおりです。
当社グループの事業の核である森と木は、成長に伴い大気中の炭素を吸収固定すると同時に、生物多様性を育み、生態系サービスを供給する機能も持ちます。そうした特徴からTCFDシナリオ分析、TNFD・LEAP分析では複数の項目で共通又は類似する分析結果が出ており、当社グループの事業においては、脱炭素に向けた取り組みが自然関連の事業機会も拡大させる関係にあることが示唆されました。
C:TCFDシナリオ分析のみで特定された項目
C・N:TCFDシナリオ分析とTNFD・LEAP分析のどちらでも特定された項目
N:TNFD・LEAP分析のみで特定された項目
*生活サービス事業はTCFDシナリオ分析のみの実施
事業別のシナリオ分析及び全社横断的な課題と対応策については、
https://sfc.jp/information/sustainability/
(ハ)リスク管理
気候変動・自然関連課題に関するリスク管理は
(ニ)指標及び目標
気候変動について、当社グループでは、関連した長期目標を策定した上で、中期経営計画及び年度計画に組み込み、取り組みを推進しております。2017年にSBTを策定することを宣言し、グループ全体での新たな温室効果ガス排出量削減目標を策定し、2018年7月に、SBTとして認定されております。2024年11月には、新たに2050年までにネット排出量をゼロにすることを基準に策定した目標とFLAGセクター目標について、認定を取得しました。また、「SBTガイダンス」に準拠した2030年までの短期目標も認定を取得しました。温室効果ガス排出量削減にむけ、2020年3月には、使用する電力の100%再生可能エネルギー化を目指した国際的なイニシアティブ RE100に加盟、2040年までに自社グループの事業活動で使用する電力と発電事業における発電燃料を100%再生可能エネルギーにすることを目指して、再生可能エネルギーの活用及び温室効果ガス削減の取り組みを推進しております。中期経営計画サステナビリティ編Phase 2(2025年~2027年)においても、事業本部ごとに再エネ調達比率の目標を設定し、設備投資など必要な予算措置を講じ、RE100の着実な達成に向け、取り組みを推進していきます。
<当社グループの温室効果ガス削減目標(SBT)>
ネットゼロ目標
FLAGセクター目標
FLAGセクターガイダンス*に則り、SBTイニシアティブが求める「2025年12月31日を最終日とし、デフォレステーションを停止する宣言」に署名。
*森林、土地、農業分野の科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標を設定するためのガイダンス。
自然関連課題について、TNFD最終提言が定めるグローバル中核開示指標とセクター中核開示指標に対応するデータ開示を行っております。
また、2030年までに、2020年のベースラインから測定された自然の損失を食い止め、反転させ、2050年までに自然を完全回復させる「ネイチャーポジティブ」の実現が、世界的にも重要な課題となってきていることを受けて、当社グループにおいては、ネイチャーポジティブ実現に貢献するため、2025年2月にネイチャーポジティブステートメントを策定しました。
温室効果ガス排出量の目標と実績、および気候変動・自然関連課題に関する詳細な情報については、
https://sfc.jp/information/sustainability/
②人的資本及び多様性
(イ)戦略
人財育成方針及び社内環境整備方針
当社グループは、長期ビジョン「Mission TREEING 2030」の業績目標として、2030年経常利益3,500億円を掲げており、この目標の達成には、更なるグローバル化の推進や新たな事業領域への挑戦に加え、既存事業の変革が求められます。このため、グローバル化の進展や事業の多様化に対応した人財の継続的確保・育成・エンゲージメントの向上を図るとともに、新規事業の創出や既存事業の変革を「形にするちから」を有する人財の確保・育成が必要不可欠であると認識しております。
このような背景のもと、当社グループは、人財戦略として、「事業の変革と創造を担う人財の確保・育成」、「社員のパフォーマンスを最大化する仕組みと自由闊達な企業風土」、「健康経営の推進」の3つの柱を定めております。それぞれの柱に基づく各種施策の相乗効果で、更なる強固な事業基盤を構築することで、長期ビジョンの実現を目指しております。
「事業の変革と創造を担う人財の確保・育成」
事業の多角化に対応する専門人財やグローバル人財の獲得などを目的とした人財採用、事業創出に向けた戦略策定に必要なビジネススキルの習得、社員一人ひとりの能力を引き出すマネジメントスキル習得などを目的とした人財育成を基軸に、下記を骨子として各種施策を実施・計画しております。
・高度専門人財の積極的なキャリア採用の継続
・グローバル人財の確保
・職種別スキルマップと1on1ミーティングを通じた人財育成
・社員の多様な可能性と意欲を引き出し、戦略を共創できるマネジメント層の育成
・業務改善・事業変革・事業創出能力をもった社員の育成
・次世代経営者選抜と育成を目的とした計画的なアサインメント
「社員のパフォーマンスを最大化する仕組みと自由闊達な企業風土」
すべての社員が活き活きと働き、社員の主体性を引き出し、多様な能力や価値観を活かすための心理的安全性が担保された自由闊達な組織風土を作り、社員のキャリア志向を尊重し幅広く活躍できるような配置転換の仕組みとリスキリングのサポートを行うため、下記を骨子として各種施策を実施・計画しております。
・職種別・勤務エリア別の新卒・キャリア採用
・本人の志向を踏まえたキャリアアップの仕組みの整備
・社員個々のスキル・行動評価に基づくタレントマネジメント
・国内グループの統合人事基幹システムの構築
・グループ各社の人財ニーズと社員が保有するスキルに応じたリスキリング
・DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の理解浸透並びに意識改革
・事業本部の特性に合わせた組織風土改革プロジェクトの実施
・マネジメント層を対象にした心理的安全性研修の実施
・従業員向け株式報酬制度の導入
<研修体系図>
「健康経営の推進」
社員の健康保持・増進に取り組むことは、社員一人ひとりの幸福に資することはもとより、社員の活力向上や生産性の向上と組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や組織としての価値向上に繋がることが期待されます。
当社グループは、健康経営に対する会社としての姿勢を社内外に示し、取り組みを加速させるため、2021年10月に「住友林業グループ健康経営宣言」を定めました。
<住友林業グループ健康経営宣言>
住友林業グループは、グループを構成する従業員一人ひとりが「木と生きる幸福」を実感しながら、健康にいきいきと働けるよう、すべての従業員とその家族の心と体の健康保持、増進に努めることを宣言します。
・定期健康診断等の結果を従業員と共有し、心と体の健康課題とその対策に取り組みます。
・従業員はもとより、その家族にも利用可能な健康施策を積極的に取り入れます。
・安全衛生に関する法令及び諸規則を順守し、安全の向上及び健康の保持増進に取り組みます。
本宣言をもとに、健康投資を個人と組織のパフォーマンスに向けた重要な投資と捉え、下記を骨子として各種施策を実施・計画しております。
・健康保持・増進のための健康診断・ストレスチェックの結果活用
・健康保持・増進のためのきっかけ、機会作り
・ヘルスリテラシー向上のための教育
健康経営宣言及び健康経営推進体制については下記ウェブサイトにも掲載しておりますので、あわせて参照ください。
https://sfc.jp/information/company/keiei_rinen/health-management/
DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)推進
当社グループでは、行動指針の一つである「多様性を尊重し、自由闊達な企業風土をつくります」に基づき、多様な人財が持つ多様な能力や価値観を新たな挑戦や成長につなぐため、国籍・性別・年齢などの属性に関わらず、誰もが力を存分に発揮できる公平な環境を作り、社員一人ひとりの能力や価値観などを活かすDEI推進を行っております。
女性管理職や子育て世代の男性社員を対象にした社内フォーラムの開催や多様な人財の力を活かすマネジメント力の強化に向けた研修を実施しております。採用活動では、性別や学歴などで選考方法を分けることはなく、応募者の志向や意欲を重視しており、海外グループ会社においても、人種・国籍・性別にかかわらず、現地採用を積極的に推進し、優秀な人財の雇用、管理職への登用を行っております。
当社グループでは、女性社員の活躍をはじめとした多様な働き方を支援する制度を拡充することで、次代を担う優秀な人財の確保に努めております。
また、当社グループにおけるDEIの意義と目的を明確にするため、2024年4月に「住友林業グループ DEI宣言」を定めております。
<住友林業グループ DEI宣言>
住友林業グループは、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)を事業を発展させるための重要な要素の一つとして位置づけています。私たちは、新しい価値の創出やイノベーションを目指し、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)を推進します。
Diversity:(ダイバーシティ、多様性)
一人ひとりの多様性を理解し、認め、尊重することです。
性別、年齢、国籍、民族、人種、出身地、宗教、信条、障害の有無、性的指向、ジェンダーアイデンティティ等はもとより、働き方、キャリア、価値観などの多様性を理解し、受け入れます。
Equity:(エクイティ、公平性)
一人ひとりの状況に応じて最適なリソースや機会を提供することです。
誰もが持てる力を存分に発揮できる公平な環境を作ります。
Inclusion:(インクルージョン、包摂性)
一人ひとりが安心して意見が言え、誰もが受け入れられているという実感が持てることです。
お互いを支え、活かし合い、一体感を持つことで、全員で最大限の力を発揮します。
(ロ)指標及び目標
当社は、人的資本及び多様性の総合指標として、「社員満足度調査」による会社満足度(当社で働いていることに満足している社員比率)を82.0%以上とすることを目指しております。(会社満足度:2023年度実績 76.3%)
また、社員のキャリアに対する志向と配属のミスマッチを防ぐため、職種別での区分採用を行い、職種転換も可能とするなど、社員が幅広く活躍できるための取り組みを行い、新卒社員の定着率(入社3年目)を85.0%まで向上させることを目指しております。(新卒社員の定着率(入社3年目):2023年度実績 83.8%)
多様な働き方を認め、社員一人ひとりの生活を充実させる職場作りの指標として、年間付与日数の70%以上の年次有給休暇取得を推奨しております。時間単位の年次有給休暇制度を導入するとともに、計画的なリフレッシュ休暇の取得を促すことで、休暇を取得しやすい環境を整備しております。(社員有給休暇取得率:2023年度実績 69.0%)
また、男女問わず仕事と育児を両立し将来のキャリアが描ける職場環境を作るため、男性社員の育児休業取得を推進しており、2024年度までに男性育児休業取得率の100%達成を目標としております。(男性育児休業取得率:2023年度実績 70.0%)
※当社グループは国内外において多種多様な事業を推進しており、連結グループ全体で統一的な指標は設定していないため、上記指標の実績は提出会社のものを記載しております。
これらを含む人的資本及び多様性に係る指標及び目標、および詳細な情報については、
https://sfc.jp/information/sustainability/
なお、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、
(1)リスクマネジメントの体制について
当社では、グループ全体のリスクマネジメント体制を強化するため、「リスク管理規程」を制定し、住友林業の執行役員社長を住友林業グループのリスク管理最高責任者、本社管理部門及び各本部の担当執行役員をリスク管理責任者、主管者をリスク管理推進者に選任しております。同規程にて、リスクを「経営戦略リスク」(経営戦略を実行するための経営判断上のリスク)、「事業リスク」(経営の意思決定後、事業遂行において発生するリスク)、「事業継続リスク」(自然災害等の不測の事態により事業の継続に支障が生じるリスク)に分類しております。「経営戦略リスク」については、重要事項につき経営会議で事前協議を実施し、取締役会にて意思決定・監督を行い、「事業リスク」についてはリスク管理委員会を設置し、リスクマネジメントを行っております。
リスク管理委員会は、執行役員社長を委員長とし、委員は、経営企画部・人事部・法務部・ITソリューション部・サステナビリティ推進部の担当執行役員及び各主管者、並びに各本部の本部長及び管理担当部長とし、四半期に1回開催しております。当委員会では、各部門から抽出されたリスク内容の分析、評価を行った上で重点管理リスクを選定し、特に重要度の高い重点管理リスクの対応進捗について優先的にモニタリングを行っております。この委員会の配下には、コンプライアンス小委員会及び事業継続マネジメント(BCM)小委員会を設置し、グループ横断的なリスクと位置づけるコンプライアンスリスク及び事業継続リスクについて、対応の実効性を高めるための活動を展開しております。これらの活動内容は取締役会に報告・答申しております。また、内部監査室は、各部門及びグループ会社への内部監査を通じてリスク管理状況を確認し、その監査結果を取締役会へ報告しております。
(2)主要な事業等のリスクについて
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響については具体的な内容を見積もることは困難であるため、記載しておりません。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①国内外の住宅・不動産市場の動向に関するリスク
当社グループの業績は、国内外における住宅・不動産市場の動向に大きく依存しております。
国内外の経済状況の低迷や景気の見通しの後退、それらに起因する雇用環境の悪化、インフレ圧力の増大、及び個人消費の落ち込みは、お客様の住宅・不動産購買意欲を減退させる可能性があります。また、各国の金利政策や住宅関連政策の変更、地価の変動、木材等の資材価格の変動による建築コストの変動等も、お客様の住宅・不動産購買意欲に大きな影響を与えるため、これらの顧客ニーズの変化が住宅・不動産市況やコスト構造を悪化させ、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
上記リスクに対して、国内の住宅・建築事業では、次のような対策により、当社の独自性を強調し、住宅・不動産市場における優位性の確保を図っております。
(イ)戸建注文住宅事業では、当社独自の商品や技術力・設計力を活かした提案を強化し、お客様の様々な要望にお応えすることで、受注拡大に努めております。具体的には、環境配慮型商品の受注に注力するとともに、天井高、床材・建具の種類やデザインに豊富な選択肢を用意し、お客様の要望に沿って様々な室内空間を実現する提案等を行っております。
(ロ)その他の住宅・建築事業に関して、分譲住宅事業及び賃貸住宅事業では、多様化するライフスタイルに対応して、高性能でより快適な住環境を提供することに努めております。リフォーム事業では、高い技術力を活かした耐震リフォームや旧家再生リフォームに注力し、中大規模木造建築事業では、建築物の木造化・木質化を推進しております。
また、上記リスクに対して、海外住宅・不動産事業では、次のような対策により、参入する市場を分散し、収益基盤の多様化と事業の多角化を図っております。
(イ)米国では、人口成長の著しい都市圏において、当社グループ傘下の各事業会社がエリアに根付いた事業を推進すると同時に、当社グループ全体としてスケールメリットを発揮することで、Local BuilderとNational Builderの双方の利点を活かすことができるポジションで事業を展開しております。また、資材・部材供給体制の安定・効率化、コストダウン、施工安全管理の標準化、工期短縮、建築現場からの廃棄物の抑制等を図る、屋根・床トラス製造からフレーミング工事までの一貫したサービスを提供する「Fully Integrated Turnkey Provider(FITP)」事業を推進しております。さらに、集合住宅・商業施設等の不動産開発事業や宅地開発等、戸建住宅以外の新規事業の取り組みを加速し、事業の多角化を進めることで、事業環境変化への体制を強化しております。
(ロ)豪州では、米国に次ぐ海外木造住宅市場であり、引き続き住宅需要が見込まれる環境下において、資産保有リスクを抑えた事業展開を行っております。注文住宅のみならず分譲住宅において、一次取得者向けから高級住宅まで、幅広いニーズに対応しております。
(ハ)アジアは、中長期で成長が期待されるエリアであり、短期の市場変動による業績への影響を避け、中長期の成長を取り込む収益構造を構築しております。日本国内で培った高い設計力、施工管理、環境性能向上等のノウハウの活用により、戸建、分譲マンション、マスタープラン等を中心に事業を展開しております。
(ニ)上記の各エリアにおける海外住宅・不動産事業の投資実行においては、不動産投資リスクに関する社内ルールの運用を徹底し、事業規模拡大に伴う不動産投資残高の増加に対して、各国の住宅マーケットの的確な把握とモニタリング、適正な在庫管理の徹底を図るなど、投資リスクの低減に努めております。
②原材料、木材・建材等の調達・販売に関するリスク
サプライヤーの倒産や地政学リスク等の顕在化により、原材料や木材・建材等の商品の調達が困難になった場合に、取引先への商品の納入や住宅・不動産の施工が遅延する可能性があります。また、調達価格が高騰し、価格上昇分を販売価格に転嫁できない場合は、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクを最小化するために、当社では以下の対策をとっております。
(イ)木材・建材等の流通事業では、当社グループの国内外での調達力を活かし、主要な原材料や木材・建材等の商品について、複数の産地からの仕入れ、仕入拠点の拡充、新たな樹種の用途開発等に取り組むことで、安定供給の維持及び調達価格の適正化に努め、サプライチェーンの強靭化を図っております。
(ロ)住宅・建築事業では、資材調達の遅延リスクの対策として、各サプライヤーとの生産情報の共有、国産材の取り扱い拡大、複数社からの購買、資材調達先に対して定期的にサプライヤー評価を実施するなど、資材の安定調達の体制強化を図っております。また、調達価格高騰に対しては、仕様の変更や施工の合理化によるコストダウン等により、コスト上昇の抑制に取り組んでおります。
③国内の建設技能労働者の減少に関するリスク
国内の建設業においては、建設技能労働者の高齢化及び若者離れが進み、建設業就業者数は長期間にわたり減少傾向にあります。建設業は労働集約型の産業であり、必要な建設技能労働者を確保できず、施工体制の維持が困難になった場合、住宅事業の受注物件の着工の遅れや工期の長期化及び労務費の高騰等により、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを回避するために、当社では以下の対策をとっております。
(イ)建設技能労働者の確保について、当社グループの施工会社において若手社員を積極的に採用し、企業内訓練校である住友林業建築技術専門校にて建設技能職の教育・育成を行っております。当社の協力施工店に対しては社員大工の採用支援を行うことにより、将来に向けた施工力の維持に努めております。また、建設技能労働者の処遇の改善として、定期的に建築工事の発注価格について協議を行い、労務費の適正化を図っております。
(ロ)現場施工の生産性の向上について、各種プレカットやプレセット*化の推進や納まりのモジュール化により、工事現場の工数削減による生産合理化を推進しております。また、中長期的な市場の変化を見据え、抜本的な構造改革を行うための専門部署を設置し、DX等の推進を行っております。
*プレセットとは、部材や構造物の一部を工場で事前に組み立てること。
④法的規制等に関するリスク
当社グループは、国内外において、木材建材事業や住宅・不動産事業をはじめ人々の生活に関する様々な事業を行っております。各事業を取り巻く法規制は多岐にわたり、建築基準法、建設業法、建築士法、宅地建物取引業法、住宅品質確保促進法、森林法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、金融商品取引法、介護保険法等に加え、会社法、労働基準法、労働安全衛生法、個人情報保護法、公益通報者保護法など、多くの法規制に従う必要があります。また、海外においてはそれぞれの国・地域の法律や規制の適用を受けます。当社グループでは次のような対策によりこれら法規制の遵守に努めておりますが、これらの法規制に適合しない事態が発生した場合、罰金や、行政処分による事業の制約によって社会的信用が低下し、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
(イ)親会社総務部のリスク管理・コンプライアンスグループでは、国内関係会社に対して、各種法令の遵守状況について一斉点検を実施しております。実施後には、点検で見つかった指摘事項について、各関係会社にフィードバックを実施し、各社が体制の強化や是正に取り組むよう指導しております。
(ロ)各事業本部管理部門による、支店や建築現場に対する監査や実査を実施しております。
(ハ)海外事業については、各事業本部主管部門及び各エリアに設置した統括会社による海外関係会社に対するガバナンス体制を構築し、コンプライアンスの強化やリスクマネジメントを推進しております。
(ニ)上記の点検や監査は、事業に応じて取得しているISO規格に基づいて実施するなど、実効性のあるマネジメント体制を構築しております。
⑤為替に関するリスク
当社グループは、海外関係会社を通じて海外での事業活動を展開しているほか、木材・建材の外貨建ての輸出入取引や三国間取引を行っております。海外での事業活動及び外貨建ての取引では、為替変動により外貨建ての収益及び費用の円換算額が増減したり、為替換算調整勘定を通じて純資産が増減したりするリスクが存在します。これらのリスクに対応するため、当社グループでは為替予約を行うなどの対策を取っておりますが、急激な為替変動は、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
⑥資金調達に関するリスク
当社グループは、金融機関からの借入、社債の発行等により資金調達を行っております。そのため、市場金利の上昇、金融市場の混乱や当社格付の低下等により資金調達に制約を受けるとともに資金調達コストが上昇し、その結果当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに対応するため、調達手段をバランスよく組み合わせること、年限を適切に分散することで安定的な資金調達及び金利変動の影響低減を図るとともに、格付けの維持向上に向け財務規律を重視した経営を行っております。
⑦品質保証に関するリスク
当社グループは、国内外で取扱商品・サービス及び住宅等の品質管理に万全を期しておりますが、予期せぬ事態や人為的ミスによる重大な品質問題等が発生することを、完全に回避することはできません。具体的には、品質保証責任を問われる住宅等の重大な欠陥、有料老人ホーム運営事業等における高齢者向け事業特有の事故等が発生する場合があります。また、特に海外においては、品質不良を原因とするクラスアクション等の訴訟により、高額の賠償責任や対応費用が生じるリスクがあります。さらには、合法性や持続可能性に疑義のある木材の調達により、政府によるペナルティや環境保護団体等からの批判を受けるリスクがあります。これらのリスクに備え、当社グループでは「住友林業グループ品質方針」を定め、当社グループから生み出されるすべての商品やサービスは品質そのものであるという認識のもと、全員参加による「ZERO DEFECTS(ゼロディフェクト)」を追求し、次のような対策を通した品質の向上に取り組んでおりますが、多額の損害賠償や社会的信用の失墜が発生した場合には、こうしたリスクの顕在化が、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
(イ)法規制に適合する部材の使用、有資格者の適切な配置、適切な施工体制の整備を徹底しております。
(ロ)戸建住宅事業において、長期保証制度を設け、きめ細やかなアフターサービスを提供しております。
(ハ)有料老人ホーム事業においては、オペレーションミスによる事故を回避するため、サービス提供手順のマニュアルを作成し、周知を徹底するとともに、服薬支援システムや見守りセンサーといったIT 機器の導入を促進しております。また、施設内でインフルエンザ等の感染症が蔓延するのを防止するため、感染症対策のマニュアルの整備や定期的な研修等の対策を講じております。
(ニ)木材の調達に関しては、調達部門及びサステナビリティ推進部門による「木材調達委員会」を定期開催し、合法性と持続可能性の確認及び勉強会などを含む情報共有を実施しております。
⑧取引先への信用供与に関するリスク
当社グループは取引先に対する売上債権等の信用供与を行っており、信用リスクの顕在化を防ぐために適切な限度額を設定するなど、与信管理を徹底しておりますが、それでもなおリスクが顕在化する可能性を完全に回避することは困難です。また、信用リスクが顕在化した場合の損失に備えるため、一定の見積りに基づいて貸倒引当金を設定しておりますが、実際に発生する損失がこれを超過する可能性があります。このため、取引先の支払い不能等の信用リスクの顕在化は、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
⑨海外での事業活動に関するリスク
当社グループは、海外で事業活動を展開しているほか、海外商品の取扱い等、海外の取引先と多くの商取引を行っております。各国の政治・経済・社会情勢の変化を注視し、現地の法規制等の遵守、慣習による贈収賄の横行や従業員による着服の防止、重大労災の発生防止等に努めておりますが、特に、当社グループの木材の調達先及び製造拠点の一部であり、大規模植林事業も展開しているパプアニューギニアやインドネシアなどの新興国においては、これらのリスクが顕在化する可能性を完全に回避することは困難です。社内管理の不備により、法規制への違反や不法行為などのコンプライアンス違反が発生し、高額の金銭の流出事件が発生したり、現地政府からペナルティを受けたり、死亡労災等を防げずに被災者遺族から多額の損害賠償請求を受けたりした場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。こうしたリスクを最小化するために、当社では次のような対策をとっております。
(イ)「住友林業グループ労働安全衛生方針」に定める「SAFETY FIRST(セーフティファースト)」という基本的な考えのもと、海外の各製造拠点においても、労働安全衛生体制の整備に努め、使用する重機の安全装置や作業者の安全装備を充実させるとともに、積極的な従業員教育に取り組んでおります。
(ロ)社内監査、会計監査、税務調査などで発覚した指摘事項を関係会社各社で共有し、より効果的な管理体制の構築に努めております。
(ハ)海外関係会社各社に、贈収賄防止規程を整備しております。
(ニ)海外出張者・海外駐在員に対し、渡航前に安全教育や危機管理研修を実施しております。
⑩保有・管理する山林や植林事業地に関するリスク
当社グループは、国内社有林で計画的な森林経営を展開するほか、海外でも広大な植林地を管理し、生物多様性の保全や地域社会の発展に貢献するための活動を実施しております。国内外で所有・管理する山林・植林地では、以下のような取り組みやリスク対策を実施しておりますが、大規模な山林火災や病害虫による植林木の損失、誤った伐採量の試算による過剰伐採、地域住民からの反発、環境保護団体からの批判活動が長期間続いた場合には、これらのリスクの顕在化が、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
(イ)国内外の社有林及び植林事業地で、植林・育林・収穫を計画的かつ継続的に実施する保続林業の考え方を基本に、持続可能な木材生産に努めております。過剰に木材を伐採することがないよう、施業計画の立案とこれに沿った森林経営を実施しております。
(ロ)山林火災防止のため、火災リスクの高い時期における関係者以外の管理地への立ち入り規制や、数値化した火災リスクに応じた現場オペレーションの制定・遵守等を実施しております。また、火の見櫓から煙の発生を監視したり、パトロールを実施したりするなど、早期の火災発見体制も整備しております。
(ハ)植林木の育成が阻害されないよう、計画的な間伐や下草等の刈払いなどの植林事業地全体の日常的な管理を徹底しております。また、適時生育状況をモニターすることにより病虫害を防止するとともに、獣害防止にも努めております。
(ニ)国内外の社有林及び植林事業地を取り巻く地域社会への貢献に努め、地域社会の発展に寄与する事業を展開しております。特に大規模植林事業を展開するインドネシアやパプアニューギニアでは、地域の雇用創出、ライフライン設備の建設、環境教育等の活動を地道に展開し、地域に根差した活動を目指しております。
(ホ)国内外における森林資源の管理・活用拡大にあたっては、気候変動対策や生物多様性保全に配慮した取り組みを実施しております。具体的には、植林計画立案時の、地形や地質、生息する希少動物の把握に至るまでの詳細な調査実施などに努めております。
⑪情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、国内外の住宅・不動産事業等においてお客様に関する膨大な個人情報を保有しており、筑波研究所等の研究機関においては長年の研究成果等の大量の機密情報を保有しております。重要な情報の管理には万全を期しておりますが、個人情報等を含む書類・社給端末の盗難、従業員及び委託先等の人為的ミスなどの内部要因による情報漏洩、及び悪意ある第三者からの攻撃などの外部要因による情報漏洩を完全に回避することは困難です。個人情報が外部に流出した場合には、お客様及びマーケット等からの社会的信用の失墜や被害にあわれたお客様からの損害賠償請求を招く可能性や、会社の機密情報が流出した場合には、市場における競争力の低下や共同研究先からの損害賠償請求等を招く可能性があり、これらの情報セキュリティリスクの顕在化は、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。なお、このようなリスクを低減するために、当社では次のような対策をとっております。
(イ)全従業員を対象に、個人情報や機密情報の取り扱いに関する研修を定期的に実施しております。
(ロ)個人情報や機密情報の電子化と、一定基準のセキュリティ設定をした社給端末への集約を推進し、書類の紛失による情報流出リスクに対応しております。
(ハ)ハードディスクを暗号化したモバイルパソコン、仮想ネットワーク等を導入し、業務内容や働きかたに合わせたIT環境を整備することで、端末紛失時の情報流出リスクに対応しております。
(ニ)研究・開発に関する機密情報等、企業秘密を取り扱う案件では、必ず関係先と秘密保持契約を締結しております。
(ホ)内部からの情報漏洩と外部からの侵入の両方に対するセキュリティ強化のため、多層防御システムを構築しております。また、システム担当者による情報漏洩を防ぐため、社内システム部門の承認手順を多重化するなどの対策を実施しております。
(ヘ)サイバー攻撃全体への対応として、セキュリティ専門組織であるCSIRT(Computer Security Incident Response Team)・SOC(Security Operation Center)を設置して、有事の際に適切な対応を実現する体制を構築しております。また、有事対応の実効性を高めるため、CSIRT・SOC及び広報などの関連部署を対象にサイバーセキュリティ演習を実施しております。
⑫退職給付会計に関するリスク
当社グループは、退職給付会計に係る数理計算上の差異について、発生年度に一括して費用処理する方法を採用しております。期初時点での想定よりも年金資産の運用環境が悪化した場合や、退職給付債務の計算に用いる割引率が低下した場合、数理計算上の差異の償却費用が発生し、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。このような数理計算上の差異の発生に伴う損益変動リスクに対応するため、確定給付型と確定拠出型を組み合わせた退職給付制度を導入しているほか、年金資産の運用において安全性と収益性を考慮した適切な投資配分などを行っております。
⑬気候変動・自然や生物多様性の損失などをはじめとする環境に関するリスク
気候変動によって生じる異常気象や、自然や生物多様性の損失などは、当社グループの企業努力だけでは回避することが困難であり、地球環境や世界経済に重大な影響を与えるおそれがあると同時に、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。持続可能で豊かな社会の実現に貢献することを経営理念とする当社グループでは、持続可能性の観点から気候変動や自然関連課題に関するリスクを主要なリスクと捉え、様々な取り組みを実施しております。その内容については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりであります。
⑭自然災害等による緊急事態の発生に関するリスク
大規模な地震や風水害等の自然災害、戦争、火災、テロ、新型インフルエンザ等を含む重篤な感染症、暴動などの危機事象が発生し、従業員の生命に危機が生じるような緊急事態に陥った場合、事業継続が困難となる可能性があります。当社グループでは、そうした事態に備え、全社的な事業継続マネジメント(BCM)を推進しております。具体的には、緊急事態の発生に伴う事業中断による業績への影響の最小化を目的に、平時における活動と緊急事態発生時の対応方針等の基本事項を定める「BCM規程」を制定し、事象別の事業継続計画(BCP)を策定しております。個別のBCPを実現させるため、データ保存の二重化、安否確認システムの導入、帰宅困難対策、防災訓練、必要物資の備蓄等を実施しているほか、本社機能喪失を想定した代替拠点の整備や、平常時からのテレワーク環境の整備等によるリスクの分散に取り組んでおります。しかし、危機事象の多くは発生を予測することが困難であり、このような対策をもってしてもすべての被害や影響を回避できるとは限りません。
⑮人権の侵害に関するリスク
当社グループは、森林経営から木材・建材の製造・流通、住宅・建築事業、再生可能エネルギー事業まで、幅広い事業を国内外で展開しており、その活動を通じて多くの人に影響を及ぼすことから、人権を尊重する責任が求められております。また、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」などをはじめとした国際原則も策定されております。当社グループの事業活動において、先住民族・コミュニティや外国人労働者の権利、労働安全衛生への配慮が不十分であるなど、直接又は間接的に人権に負の影響を及ぼした場合、当社グループに対する信頼・信用が失墜するおそれがあります。その結果、当社製品(建設資材・住宅)のボイコットや、企業評価の低下による投融資の引き揚げなど経営成績に重要な影響を与える可能性があります。当社グループでは、バリューチェーンにおける人権リスクを主要なリスクと捉え、次のような取り組みにより、その把握と停止、防止、低減に努めております。
(イ)当社グループでは、住友林業グループ人権方針を策定し、国際的な原則や指針に準拠した人権尊重の考え方を定めております。ビジネスパートナーに対してもこの内容を含む方針の浸透を図り、必要な場合には、ビジネスパートナーによる人権尊重の取り組みに対して可能な限りの支援を行っております。
(ロ)人権デューデリジェンスのしくみを通じて、人権への負の影響を特定しております。事業本部ごとにバリューチェーン上のステークホルダーにおけるリスクのマッピングを行い、インパクトを分析し、事業本部ごとの人権リスクの重要度・優先度の洗い出しを行っております。特定されたリスクについては、それぞれの事業ごとにリスクの低減・是正のための対応を行っております。
(ハ)グループ全社員に、人権に関するeラーニングの受講を毎年義務付けております。また、国内の新入社員研修では人権に関する講義を行い、当社の新任主管者研修においても人権の講習を取り入れております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当期の世界経済は、これまでの主要各国の金融引き締め策の影響により物価上昇に落ち着きが見られ、米国では実質賃金が上昇し個人消費が拡大したほか、欧州では一部を除いて景気の持ち直しの動きが見られました。わが国経済は、物価上昇の影響があったものの、企業における賃上げにより所得環境の改善が進み、個人消費に持ち直しの動きが見られたことから、景気は緩やかに回復しました。
住宅市場に関しましては、国内では、建設資材の高騰による建設費の上昇が続いたほか、政策金利引き上げに伴う住宅ローン金利の上昇懸念等により消費に慎重な動きが見られたことから、新設住宅着工戸数は減少しました。米国では、住宅の供給不足を背景とした販売価格の高止まりに加え、一服感が見られていた長期金利及び住宅ローン金利の再上昇等もあり、市場は調整局面が続きました。豪州では、住宅ローン金利や販売価格の高止まり等を背景として、市場は厳しい状況が続きました。
このような事業環境のもと、当社グループは、当期を最終年度とする中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase1」の目標達成に向け、国内では、福島県いわき市において国産スギを中心に製材及び木材加工品の製造工場の建設に着手するなど、国産材を積極的に活用する取り組みを推進しました。米国においては、戸建住宅事業の更なる拡大を図るべく、フロリダ州における分譲住宅会社の事業を譲り受けたほか、豪州においては、同国最大手の住宅会社を買収し、事業規模の拡大を図るなど、当社グループのより一層の成長に向けた事業の推進に注力しました。
その結果、売上高は2兆536億50百万円(前期比18.5%増)、営業利益は1,945億88百万円(同33.0%増)、経常利益は1,979億55百万円(同24.6%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は1,165億28百万円(同14.1%増)となりました。なお、退職給付会計に係る数理計算上の差異はプラス98億2百万円となり、数理計算上の差異を除いた経常利益は1,881億53百万円となりました。
(事業セグメント別の経営成績)
事業セグメント別の業績は、次のとおりです。なお、当連結会計年度より、従来「海外住宅・建築・不動産事業」としていたセグメント名称を「建築・不動産事業」に変更しております。また、各事業セグメントの売上高には、事業セグメント間の内部売上高を含めております。
<木材建材事業>
流通事業におきましては、国内における新設住宅着工戸数の減少等を背景に厳しい市場環境が続いたなか、取引先との連携強化及び拡販に継続的に取り組んだほか、住宅着工の影響を受けないバイオマス発電向けの木質燃料の拡販に注力しました。その結果、バイオマス発電向け燃料の販売数量及び単価は上昇したものの、住宅建設向けの木材及び木材製品の販売単価が下落したこと等から、業績は伸び悩みました。
製造事業におきましては、国内において、ビルダー向けの建材の販売が減少したことから、業績は伸び悩みました。海外においては、ニュージーランドのLVL(単板積層材)やベトナムのパーティクルボードの販売数量が増加したこと等から業績は回復しました。
また、脱炭素設計の標準化を図る「One Click LCA」*の普及拡大等に引き続き注力するとともに、建材流通事業者の業務効率化を支援する事業として、「JUCORE 見積」**の機能拡充と、首都圏にて「JUCORE 物流」***のサービスを開始しました。
* One Click LCAとは、建設にかかる原材料調達から、加工、輸送、建設、改修、廃棄時のCO2排出量を算定できるソフトウェアです。
** JUCORE 見積とは、物件情報、見積内容、受注見込、予算実績等のデータを一元管理できるソフトウェアです。
*** JUCORE 物流とは、建築現場への邸別物流の効率化・現場工事の生産性向上を実現する建築資材の共同物流サービスです。
以上の結果、木材建材事業の売上高は2,531億56百万円(前期比7.2%増)、経常利益は100億1百万円(同10.6%減)となりました。
戸建注文住宅事業におきましては、エネルギー消費量が正味ゼロとなるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様住宅の高付加価値提案に引き続き努めたほか、Webを通じて1,500の間取りから選択する企画型商品「Forest Selection BF」 の販売促進や、「邸宅設計プロジェクト」を通じた高価格帯の受注拡大に努めました。その結果、前期までに実施した販売価格の改定効果もあり、業績は堅調に推移しました。
賃貸住宅事業におきましては、事務所や医療施設等の木造化・木質化を推進するべく、昨年5月に木造の事業用建築ブランド「The Forest Barque(ザ・フォレスト バーク)」を発売したほか、デザインと性能を両立した賃貸用木造マンション「Forest Maison GRANDE(フォレストメゾン グランデ)」の受注拡大に引き続き注力しました。
分譲住宅事業におきましては、販売棟数は前期を上回ったものの、一部のプロジェクトにおいて価格調整を進めた結果、業績は伸び悩みました。
リフォーム事業におきましては、断熱性能の向上をはじめとする環境配慮型リフォームの受注を促進したことに加え、戸建リフォーム商品「Reforest」において独自の耐震・制震技術のメリットをお客様に訴求したことにより、業績は堅調に推移しました。
なお、当社が施工した一部建物において、軒裏の45分準耐火構造の国土交通大臣認定に適合しない仕様があったことが判明し、昨年12月に国土交通省に報告いたしました。国土交通省並びに特定行政庁の指導のもと、お客様に丁寧な説明を実施させていただき、必要な調査を行ったうえで速やかに改修等を進めてまいります。お客様や関係者の皆様にご心配とご迷惑をお掛けしておりますこと、深くお詫び申し上げます。また、当社は今回の事象を厳粛に受け止め、迅速な是正を実施するとともに全社を挙げて再発防止に努めてまいります。
以上の結果、住宅事業の売上高は5,423億円(前期比1.5%増)、経常利益は351億73百万円(同7.3%増)となりました。
米国での戸建住宅事業におきましては、当社グループが事業活動を展開しているテキサス州、メリーランド州、ユタ州及びワシントン州等の地域において、底堅い住宅需要を背景として販売単価が上昇し、販売戸数も増加したことから業績は堅調に推移しました。また、昨年3月にはフロリダ州で戸建分譲住宅事業を展開するBiscayne Homes 社の事業を譲受し、同州における事業基盤を強化しました。パネル設計、製造、配送、施工までを一貫して提供し生産体制の合理化等を図るFully Integrated Turnkey Provider事業(FITP事業)においては、ノースカロライナ州の新工場が稼働するなど事業体制を拡充したものの、集合住宅市場の低迷が影響したことから、業績は伸び悩みました。
不動産開発事業におきましては、当期に予定していた集合住宅及び商業複合施設の売却を一部延期したことから、業績は伸び悩みました。なお、昨年4月には米国テキサス州において飯野海運株式会社、株式会社熊谷組及び現地大手デベロッパーとの協業により木造7階建のESG配慮型オフィスビルが竣工する等、脱炭素社会の実現に貢献する取り組みを推進しました。
豪州での戸建住宅事業におきましては、政策金利及び建築コストの高止まりにより厳しい市場環境が続きましたが、西オーストラリア州において一次取得者を中心とした需要が堅調に推移したほか、販売単価も上昇したことから業績は回復しました。また、昨年11月には主に豪州東部で注文住宅事業等を展開する同国最大手のMetriconグループの持分を取得し、豪州における戸建住宅事業の更なる拡大に取り組みました。
国内の中大規模木造建築事業では、昨年12月に千葉県八千代市において、株式会社熊谷組との共同企業体による木造及び鉄骨造の混構造である小学校施設を着工する等、同社との協業を着実に進めました。
以上の結果、建築・不動産事業の売上高は1兆2,399億97百万円(前期比30.8%増)、経常利益は1,474億51百万円(同31.6%増)となりました。
<資源環境事業>
再生可能エネルギー事業におきましては、全国6か所で展開する木質バイオマス発電事業所が安定的に稼働しましたが、燃料価格の高騰が続いたことにより利益率が低下し、業績は伸び悩みました。
森林資源事業におきましては、ニュージーランドにおける中国向け原木の販売単価の下落や、インドネシアにおける植林地の整備にかかるコストの上昇により、業績は伸び悩みました。
なお、昨年8月、当社はインドネシアにおいて、先端技術を活用した新たな泥炭地管理技術の実証事業を開始しました。本事業では、日本の環境省とインドネシアの環境林業省で締結した協力覚書の下、泥炭火災や煙害を防止する等の持続可能な熱帯泥炭地の管理モデルの構築に取り組み、経済と環境が両立した森林経営を目指してまいります。
以上の結果、資源環境事業の売上高は269億50百万円(前期比8.5%増)、経常利益は2億36百万円(同58.1%減)となりました。
<その他事業>
当社グループは、上記事業のほか、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の運営事業、住宅顧客等を対象とする保険代理店業等の各種サービス事業等を行っています。また、株式会社熊谷組に係る持分法による投資利益も含まれます。
その他事業の売上高は273億14百万円(前期比4.9%増)、経常利益は7億5百万円(同67.8%減)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
当社グループの展開する事業は多様であり、生産実績を定義することが困難であるため記載しておりません。
当連結会計年度における住宅事業の受注実績を示すと、次のとおりであります。
(注) 1 住宅事業のうち、提出会社における注文住宅及び賃貸住宅の該当金額を記載しております。なお、前連結会計年度の受注高及び受注残高に含まれていたその他請負の金額を控除後の数値で比較しております。
2 受注高には、当連結会計年度の新規受注に加えて、期中の追加工事によるものが含まれております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 各セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高又は振替高を含んでおります。
2 調整額には、特定のセグメントに区分できない管理部門等における売上高を含み、セグメント間の内部売上高を消去しております。
当連結会計年度末における総資産は、主に米国における分譲住宅事業の拡大に伴う販売用不動産の増加や、為替換算や新規連結の影響等により、前連結会計年度末より4,364億2百万円増加し、2兆2,611億28百万円となりました。負債は、借入金の増加等により、前連結会計年度末より2,427億37百万円増加し、1兆2,410億2百万円となりました。なお、純資産は1兆201億27百万円、自己資本比率は40.7%となりました。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
<木材建材事業>
当連結会計年度末における木材建材事業の資産は、主に福島県いわき市における製材及び木材加工品の製造工場の建設による有形固定資産の増加や現預金の増加等により、前連結会計年度末より169億96百万円増加し、2,437億39百万円となりました。
<住宅事業>
当連結会計年度末における住宅事業の資産は、主に分譲住宅事業における販売用不動産や仕掛販売用不動産の増加、注文住宅事業の販売単価の上昇及び販売棟数の増加に伴う契約資産の増加等により、前連結会計年度末より194億41百万円増加し、2,363億58百万円となりました。
<建築・不動産事業>
当連結会計年度末における建築・不動産事業の資産は、主に円安による外貨建資産の円換算金額の増加、米国の分譲住宅事業の拡大に伴う棚卸資産の増加、米国の戸建分譲住宅事業会社の事業譲受や豪州の住宅事業会社の新規連結等により、前連結会計年度末より3,471億68百万円増加し、1兆3,937億53百万円となりました。
<資源環境事業>
当連結会計年度末における資源環境事業の資産は、海外における植林資産の増加に伴う有形固定資産の増加等により、前連結会計年度末より19億17百万円増加し、909億7百万円となりました。
<その他事業>
当連結会計年度末におけるその他事業の資産は、持分法適用会社の投資有価証券の減少等により、前連結会計年度末より21億61百万円減少し、737億25百万円となりました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末より315億26百万円増加して2,062億97百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
営業活動により資金は270億78百万円増加しました(前連結会計年度は1,253億円の増加)。これは、主に米国における分譲住宅事業の拡大に伴う販売用不動産の増加等により資金が減少した一方で、税金等調整前当期純利益1,920億29百万円の計上等により資金が増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により資金は1,351億3百万円減少しました(前連結会計年度は1,124億97百万円の減少)。これは、主に米国における集合住宅の開発や戸建分譲住宅事業会社の事業譲受に資金を使用したこと等によるものであります。
財務活動により資金は1,332億25百万円増加しました(前連結会計年度は102億36百万円の増加)。これは、配当金の支払により資金が減少した一方で、長期借入金の増加等により資金が増加したことによるものであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、長短の資金使途に応じて最適な資金調達手法を機動的に利用し、資金返済時期の分散や調達コストの低減を実現することを基本方針としております。また、金融機関との取引関係の維持、調達先の分散、複数の金融機関とのコミットメントライン(特定融資枠)の設定など、資金調達リスクを軽減するため様々な対応策をとっております。当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は6,134億11百万円となっております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項については、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
当社は特に以下の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定が重要であると考えております。なお、固定資産の減損及び繰延税金資産については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」にも記載しております。
①販売用不動産及び仕掛販売用不動産の評価
販売用不動産及び仕掛販売用不動産について、正味売却価額が帳簿価額を下回る場合、棚卸資産の簿価切下げに伴う評価損を計上しております。正味売却価額の見積りにあたっては、近隣地域における市場価格や直近の販売状況等を踏まえた販売計画に基づいて、当連結会計年度末現在における販売見込額を算定しております。経済情勢や不動産市況の悪化等により、正味売却価額が見込以上に下落した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
②投資有価証券の評価
その他有価証券のうち、市場価格のない株式等以外のものについては時価法を、市場価格のない株式等については移動平均法による原価法を採用しております。市場価格のない株式等について、その実質価額が取得原価に比べ著しく下落した場合、回復の見込が確実と認められなければ、減損処理しております。市場価格のない株式等の実質価額の見積りにあたっては、投資先の直近の業績や事業計画等を総合的に勘案し、当連結会計年度末現在における回収可能見込額を算定しております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が発生した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
③貸倒引当金
売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。貸倒懸念債権等特定の債権の回収可能性の見積りにあたっては、直近の回収状況や取引先の経営状況等を総合的に勘案し、当連結会計年度末現在における回収可能見込額を算定しております。取引先の財政状態及び業況が見込以上に悪化した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
④固定資産の減損
減損の兆候がある資産又は資産グループについて、そこから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が減損損失判定時点の帳簿価額の合計を下回る場合、減損損失判定時点の帳簿価額の合計と回収可能価額との差額を減損損失として計上しております。回収可能価額は、正味売却価額又は使用価値のいずれか高い方の金額としており、正味売却価額については、売却予定価額又は鑑定評価額を基に算定し、また、使用価値については、取締役会等で承認された予算及び中長期の事業計画を基礎として、資産グループから生じる将来キャッシュ・フローを見積り、これを現在価値に割り引いております。これらの見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
⑤繰延税金資産
繰延税金資産は、将来の課税所得の見積り、将来減算一時差異の将来解消見込年度のスケジューリング等に基づき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について計上しております。加えて、当社及び国内の連結子会社については、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第26号)に示される企業の分類を考慮して回収可能性を判断しております。将来の課税所得の見積りは、取締役会等で承認された予算及び中長期の事業計画を基礎としております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りや将来減算一時差異のスケジューリングに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において繰延税金資産の調整額を収益又は費用として計上する可能性があります。
(取得による企業結合)
当社は、2024年2月29日開催の取締役会において、当社の連結子会社であるDRBグループを通じて米国Biscayne Homes, LLC及びBiscayne Homes Lagoon, LLCの事業を取得することを決議し、2024年2月29日(米国時間)付で事業譲受契約を締結しました。なお、当該契約に基づき2024年3月1日(米国時間)付で事業の譲受を完了しております。
また、2024年9月30日開催の取締役会において、当社の連結子会社であるSumitomo Forestry Australia Pty Ltd.の子会社となるPHSF Capital Pty Ltdを新設し、当該新設会社を通じてMetriconグループの持株会社であるMet Group Holdigs Pty Ltdの株式51%を取得することを決議し、2024年11月1日(豪州時間)付で株式譲渡契約を締結しました。なお、同日付で当該持分の取得を完了しております。
詳細は、「第5 経理の状況 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
(合弁会社(子会社)の設立)
2024年3月28日開催の取締役会において、当社の連結子会社であるSumirin Vietnam Company Limitedを通じ、株式会社熊谷組及びエヌ・ティ・ティ都市開発株式会社と合弁会社SKN GREEN DEVELOPMENT LTD.を設立することを決議し、2024年3月28日(ベトナム時間)付で合弁契約を締結しました。なお、当該契約に基づき2024年7月8日(ベトナム時間)付で合弁会社を設立いたしました。
当社は、1691年の創業以来、「森」や「木」とともに歩んでまいりました。現在当社グループでは、経営理念において「公正、信用を重視し社会を利するという「住友の事業精神」に基づき、人と地球環境にやさしい「木」を活かし、人々の生活に関するあらゆるサービスを通じて、持続可能で豊かな社会の実現に貢献」することを謳っており、長期ビジョン「Mission TREEING 2030」では「森と木の価値を最大限に活かした脱炭素化とサーキュラーバイオエコノミーの確立」を事業方針の1つに挙げております。研究開発分野においても、「木の価値を高める」を基本に、地球環境から住環境まで、私たちの暮らしを取り巻く環境を、より豊かに創造することを目指して取り組んでおります。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は
①資源グループ
国内外の植林並びに新たな育種技術等の研究開発を行っており、研究開発費は主に資源環境事業並びに全社(共通)に計上しております。資源グループの当連結会計年度における主な活動は以下のとおりであります。
・育種・増殖植林技術の開発
国内外の優良な形質を持つ樹木の選抜技術(ゲノム選抜育種)や、優良品種を大量に増殖するための組織培養技術、苗木生産技術、泥炭地等せき悪地における生産性向上のための開発等に取り組んでおります。
・森林の公益的機能に関する研究
森林はCO2吸収・固定機能、生物多様性保全、水源涵養機能など環境・社会に関わる様々な公益的機能を有しております。森林の資産価値を高めるため、これらの公益的機能を科学的に定量化する研究に取り組んでおります。
・木質バイオマスの成分利用に向けた技術開発
木材の新たな利用用途を開拓して木材を余すことなく使うカスケード利用を促進するため、木材の成分分離と各成分の有効利用技術などのバイオリファイナリー技術の開発に取り組んでおります。
②材料グループ
新しい木質材料の開発や木材利活用技術の開発等を行っており、研究開発費は主に木材建材事業並びに全社(共通)に計上しております。材料グループの当連結会計年度における主な活動は以下のとおりであります。
・新しい木質材料の開発
中大規模木造建築などで求められる新たな高強度木質構造材や木質耐火材料の開発に取り組んでおります。
・新しい木材利用技術の開発
木材の可能性を引き出してより一層の有効活用を推進するため、新たな機能を持つ生分解性バイオマスプラスチックの加工技術の開発や、木材繊維の新たな領域での用途開拓を進めております。また、海外住宅事業拡大に伴い、その部材の耐久処理技術の開発に取り組んでおります。
③住宅・建築1グループ
戸建住宅・賃貸住宅・事業用建築や中大規模木造建築物に関する構造技術、防耐火技術、音・振動対策技術などの開発を行っており、研究開発費は主に住宅事業、建築・不動産事業並びに全社(共通)に計上しております。住宅・建築1グループの当連結会計年度における主な活動は以下のとおりであります。
・戸建住宅・賃貸住宅・事業用建築に関する技術の開発
BF構法(ビッグフレーム構法)に対応した大スパン対応構造部材や遮音技術の開発に取り組んでおります。
・中大規模木造建築物に関する技術の開発
国内外で普及が期待される中大規模木造建築物に関する構法、耐火関連技術、木質構造部材、音・振動対策技術の開発を進めております。また、実プロジェクトへの技術普及や技術支援並びに、海外のアカデミアとの研究開発にも取り組んでおります。
④住宅・建築2グループ
住環境の改善や省エネ技術、「木」や「緑」が人の快適性や健康に与える影響の検証など、建築環境及び建築計画に関する研究を行っており、研究開発費は主に住宅事業並びに全社(共通)に計上しております。住宅・建築2グループの当連結会計年度における主な活動は以下のとおりであります。
・住環境の改善・省エネルギー技術に関する研究
住宅のローコスト全館空調システムの開発や高断熱仕様の開発、既存住宅の省エネ断熱改修による効果を明確に示すシステムの開発などに取り組んでおります。
・「木」や「緑」が人の快適性や健康に与える影響の検証
主に国内外の当社木造木質化物件を対象に、木質空間・緑化空間による五感刺激が人の心理生理反応やパフォーマンスに及ぼす影響(疲労回復、疲労軽減、創造性、コミュニケーション等)について検証を行い、物件の価値の数値化に取り組んでおります。また、アジア圏における住環境・省エネ技術に関する調査も開始いたしました。
・新たな木材の可能性に関する研究
世界初の木造人工衛星の開発に携わることで、これまで明らかにされてこなかった木材の物性調査やその特性を活かした新たな利用可能性に関する研究にも取り組んでおります。
⑤住宅・建築3グループ
主に戸建住宅・事業用建築に関する施工技術やメンテナンス手法の開発や性能・品質確認試験を行っており、研究開発費は主に住宅事業に計上しております。住宅・建築3グループの当連結会計年度における主な活動は以下のとおりであります。
・次世代戸建住宅・事業用建築工法の開発
職人の人手不足や工期短縮に対応する施工技術、住宅生産技術の開発を進めております。また、海外住宅のGHG排出量削減に向けた代替材料開発や工法改良にも取り組んでおります。
・各種品質・性能確認試験
主に当社が取り扱う住宅部材・建材の品質検査や、住宅の部位に求められる各種性能を確認しております。
その他、国内の建材製造子会社において、安全性や機能性を付与した住宅用部材・建材の開発等を行っております。
なお、当連結会計年度におけるセグメントごとの研究開発費は次のとおりであります。
(注)全社(共通)は特定のセグメントに関連付けられない費用であります。