文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、デジタルによるコンテンツの創作から利用・活用に至るまでの諸活動をトータルに支援できる環境の提供を経営理念に掲げ、事業を推進しております。
(2) 目標とする経営指標等
目標とする中長期の経営指標といたしましては、安定した経営を持続していく上で、売上高と営業利益の目標数値を重要な経営指標の一つと考え、その向上に努めてまいります。
(3) 経営戦略等
中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、中長期の目標を実現するため、以下のとおり施策を推進してまいります。
① 開発力の強化
グループ内における研究開発業務の重複を防ぎ、人的リソース等の効率化を図るため、機動的な開発プロジェクト推進を可能にする組織体制の構築を図ってまいります。また、グループ共通の開発環境を整備し、グループ全体で使用できる共通コアエンジンの開発を推進し、各社のアプリケーションソフトウェアに実装する体制を構築し、自社IP製品の開発体制を強化してまいります。
② セグメント別施策
(イ)コンテンツ制作ソリューション事業
主力製品でありますイラスト・マンガ・Webtoon・アニメーション制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」の更なる研究開発と同時に、インターネットを中心としたサービスの充実を図り、当社グループのソフトウェア群を利用して創作活動を行うクリエイター数を国内外で最大化させることに努めてまいります。
(ロ)コンテンツ流通ソリューション事業
デジタルコンテンツ流通基盤ソリューションであるDC3ソリューションの企画・開発・販売を行っております。DC3ソリューションは、あらゆるデジタルデータを唯一無二の“モノ”として扱うことで、Web3時代の新しいデジタルコンテンツ流通を実現する基盤ソリューションであります。
また、当社から譲り受けた電子書籍配信ソリューションにおいては、顧客サポートの強化等、電子書籍市場における現在のポジションを保持しながら、DC3ソリューションとともに、コンテンツ流通ソリューション事業を推進しております。
(4) 優先的に対処すべき課題
① 人材の確保及び育成
当社グループは、急速な技術革新への対応と継続的な研究開発等が事業拡大には不可欠であり、このような環境や変化に対応し、適切にニーズにあったサービスを提供することが可能な体制を構築していくことが重要であると認識しております。
そのために、優秀な人材の確保と育成は事業発展のための根幹と考え、適時必要な戦力となる社員の採用を行い、育成していくことにより、業容拡大への源泉としてまいります。
② グループ経営における経営の効率化
当社グループの事業において、生産性・収益性の高いオペレーションを実現していく必要があります。そのために、組織の統廃合やオペレーションの見直し等による効率化を継続して推進してまいります。
また、グループ各社の製品開発部門の集約化を進めることによって、自社製品開発の効率化を図り収益性の改善を実現してまいります。
③ 新規事業による事業ポートフォリオの拡大
当社グループが継続的な成長を実現するための戦略として、既存事業の成長を図る施策のみならず、新規事業である「DC3ソリューション」の開発等へ投資することにより成長を加速させることが重要であると考えております。
既存事業と異なる事業を組み合わせたポートフォリオ戦略によって、ビジネスモデルを多様化して将来にわたる収益の持続的な成長に繋げてまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは以下となります。なお、記載内容のうち将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
(1) サステナビリティに関する考え方
当社は、サステナビリティを巡る課題への対応はリスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識しております。中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組めるよう、以下のサステナビリティ基本方針を定めております。
当社では、中長期的なサステナビリティ戦略について集中的に議論し、取り組みを推進することを目的に、2024年1月、取締役会の下部組織としてサステナビリティ委員会を取締役会決議にて新設しました。サステナビリティ委員会は代表取締役社長を委員長とし、社内取締役及び各部門の責任者等で構成されます。サステナビリティへの対応方針・施策等は、各部門が主体となって推進し、これらの対応の進捗状況等は、必要に応じてサステナビリティ委員会を通して取締役会に報告される体制となっております。
①サステナビリティ全般
当社のVALUE(夢中をつくりだす3つのバリュー)や、目指す姿とその実現に向けたリスクと機会等の分析を踏まえ、当社全体で優先的に取り組むべき重要テーマとしてマテリアリティを特定し、2024年1月開催のサステナビリティ委員会にて承認しております。
なお、「夢中をつくりだす3つのバリュー」は以下のとおりであります。
・セルシスのVISION実現に向けたマテリアリティと取り組みテーマ
②人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
当社は、従業員の活躍支援に関するマテリアリティ「フラットな組織で働きやすさと成長を支援」を定めているとおり、多様性の確保を含む人材育成と社内環境整備を重要なものと捉えております。
・組織風土改革
当社は、理念に基づくマネジメントが組織を進化させるカルチャーを生み出す土台となると考えており、組織風土改革に取り組んでおります。2023年以降は、MISSION、VISION、VALUEから構成される理念体系を再整理し、その上で理念に基づくマネジメントを行うためのマネジメントポリシーを策定しております。
・独創的な技術者の採用と育成
当社は、採用において最も重要なことは、当社の理念に共感でき、創作文化への深い理解とリスペクトを持つ人材を採用することと考えております。技術を磨き、成長を支援するため、社内技術勉強会の開催や、成果に対するフィードバックを迅速に実現するための年4回の評価を制度化して運用しております。また、当社は採用活動にとどまらず、次世代の人材育成を重視しており、大学との産学連携の取り組みは技術者の採用につながっております。
・多様な人材活躍と働き方支援
新たな良い相乗効果を生む人と人との組み合わせを考えて、組織をデザインすることを重視しております。居住地や働き方に関しては柔軟な制度を運用しております。
(4)リスク管理
サステナビリティ推進に関するリスクの管理は、サステナビリティ委員会が行います。各部門が、リスク・コンプライアンス委員会と必要に応じて連携の上、個別のリスクの認識及び対応方針の策定を推進し、サステナビリティ委員会に報告します。
当該リスクは必要に応じて、サステナビリティ委員会が取締役会に報告します。
①サステナビリティ全般
(3)戦略に記載のマテリアリティに関するモニタリング指標は以下と認識しています。取り組みを進めるために目標が必要なモニタリング指標については、今後設定を検討してまいります。
②人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備
人的資本に係る多様性の確保については、性別・国籍・年齢等によらない積極的な採用活動を継続し、中途採用を含め、優秀な人材は管理職へ積極的に登用しております。なお、女性及び外国人の管理職については、一定程度確保されていると考えておりますが、中核人材の計画的な育成・登用により各管理職比率を高めていくことが重要であると認識しております。
また、性別や年齢にかかわらず、多様な個性や価値観を持つすべての従業員が働きがいを感じながら、個人のライフスタイルやライフステージに合わせた働き方ができる環境の整備に取り組んでおります。具体的には、在宅勤務の導入、フレックスタイム制の採用や育児休業をはじめとした各種休業制度の導入と取得奨励等に取り組んでおります。
・多様性に関する基本情報
※数値は2024年12月31日時点
・育児休業・有給休暇に関する基本情報
(6)気候変動への対応(TCFD提言に沿った情報開示)
①気候変動に関する考え方
当社では、持続可能な社会の実現に向けた貢献と、中長期的な企業価値の向上が重要な経営課題であるとの認識の下、サステナビリティ基本方針に従い積極的・能動的に取り組みを進めております。
それに伴い、特に気候変動に関連するサステナビリティ課題については、TCFD情報開示のテーマごとに考え方を整理し取り組みを進めております。
②ガバナンス
当社では、気候変動を含むサステナビリティへの取り組みを推進していくためにサステナビリティ委員会を設置いたしました。当委員会は、委員長である代表取締役社長の監督の下、気候変動を含むサステナビリティに関する活動方針を検討し、その進捗状況を必要に応じて取締役会に報告します。
取締役会では、報告された内容を踏まえて審議を行っております。
③戦略
当社では、事業を通じた環境負荷低減に関するマテリアリティとして「創作活動のデジタル支援でポジティブな環境インパクトを加速」を定め、気候変動を含む環境課題への取り組みを重要なものととらえております。
そこで、当社においても、気候変動に関連した移行リスク及び物理リスクが自社の事業活動に与える影響を把握し不確実な将来に対応できる事業戦略を検討・立案すべく、TCFD提言に沿ってシナリオ分析を実施しております。
今回実施したシナリオ分析においては、産業革命以前と比較し、気温が4℃上昇する世界観(4℃シナリオ)及び1.5℃を軸として気温上昇を2℃未満に抑える世界観(1.5℃シナリオ)を設定し、2030年時点における気候変動に関連するリスク及び機会について定性的に考察・分析を行いました。今後は、自社事業への影響をさらに可視化すべく、定量的な分析の実施も検討してまいります。
〇4℃シナリオ分析
4℃シナリオにおける分析では、異常気象の激甚化・頻発化に伴い拠点の被災リスクが高まる可能性があると特定しております。拠点が被災した場合には、営業停止や資産の被害による損失が発生することが見込まれるため、今後定量的な分析を検討してまいります。
〇1.5℃シナリオ分析
1.5℃シナリオにおける分析では、脱炭素社会への移行に伴い、炭素税の課税や再生可能エネルギーの需要増加による電力価格の上昇、再生可能エネルギーや省エネルギーに関する各種政策規制などが当社の操業に大きな影響を及ぼす可能性があると特定しております。これらのリスクが、将来当社に与える影響について、今後定量的な分析を検討してまいります。
一方で、脱炭素社会への取り組みが進んだ場合、省エネルギー・省資源商材の需要が増加する可能性があると見込んでおり、そのような需要に応えられる製品の提供などは、当社の機会になると特定しております。 今後、自社事業を通して、「ポジティブな環境インパクトを加速」すべく、環境負荷低減のための取り組みを推進してまいります。
顕在化時期の定義:「短期」0~3年、「中期」4~10年、「長期」11年~30年
財務影響度の定義:「大」事業に大幅な影響がある
「中」事業の一部に影響がある
「小」ほとんど影響を受けない
「―」影響なし
④リスク管理
当社では、サステナビリティ委員会において気候関連のリスクの特定・評価を行っております。特定したリスク・機会に関係する各部門は、リスク・機会に対応するための施策を実施・推進します。サステナビリティ委員会ではその進捗状況等のモニタリングを行い、気候関連のリスクの管理を行います。当該リスクに係る事項については、必要に応じてサステナビリティ委員会から取締役会に報告してまいります。
また、サステナビリティ委員会にて特定・評価された気候関連のリスクについては、リスク・コンプライアンス委員会と連携し、他リスクとの統合をしてまいります。
⑤指標と目標
当社では、当社の事業活動によるGHG排出量の算定を行い、結果は下記の通りとなります。
※1:Scope1+Scope2 (マーケット基準)
今後は、持続可能な社会の実現に向けScope1,2の排出量削減目標やScope3の算定及び削減目標について検討を進めてまいります。
当連結会計年度において、当有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、記載内容のうち将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
(1) 業績の変動について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:常時、影響度:中)
当社の業績は、新しいソフトウェア製品の発売時期に大きな売上計上となりますので、これらの影響により当社の業績も変動するという事業構造となっております。したがって、経営方針や製品の開発スケジュール等に影響を受けるため、当社の業績も四半期毎に変動する可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社のSaaSサービスのビジネスモデルは、サブスクリプション型のリカーリングモデルであることから、新規顧客の獲得、既存顧客の維持及び単価向上により、当社の継続的な成長及び収益の平準化を図ってまいります。
(2) 技術革新について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社が主に事業展開しているソフトウェア業界は、技術革新の速度及びその変化が著しい業界であり、新技術、新サービスが次々と生み出されております。当社としましては、当該技術革新に対応するよう研究開発を続けております。しかしながら、当社が新しい技術に対応できなかった場合、当社が想定していない新技術、新サービスが普及した場合又は競合他社が機能的、価格的に優位な製品で参入し、当社の市場シェアの維持が困難になった場合、当社の提供するソフトウェア、サービス等が陳腐化し、当社の業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社では、採用しているビジネスモデルや技術について、最新の動向を分析するとともに、新たなビジネスモデルや、新規サービスの提供による事業展開を検討しております。また、採用の強化や人材の育成によるサービス価値の向上を図っており、より付加価値の高いサービスの提供を可能にするための体制の整備を図っております。
(3) 法的規制について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:常時、影響度:中)
現在、当社の主な事業を推進するうえで、直接的規制を受けるような法的規制はありませんが、当社は顧客の個人情報を保有・管理しており、「個人情報の保護に関する法律」に規定される個人情報取扱事業者に該当します。完全に外部からの不正アクセスを防止する保障はなく、また、人的ミス等社内管理上の問題により、個人情報が漏洩する可能性は常に存在するため、個人情報の管理コストが増加する等、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。万一、個人情報が外部に漏洩するような事態になった場合には、社会的信用の失墜、損害賠償の請求等により、当社の業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社では、社内教育等により法令遵守に努めているほか、コーポレート・ガバナンス及びコンプライアンス推進体制の強化を実施しております。また、外部の脆弱性診断を実施し、脆弱性が発見された場合には対策を講じる等、不正アクセスを防ぐ対策に務めております。なお、顧問弁護士等の外部専門家とコミュニケーションを取り必要に応じて相談を行い、適時に情報を入手する体制の整備を図っております。更に、リスク・コンプライアンス委員会及び内部監査等において、法令遵守状況のモニタリングを行っております。
(4) 知的財産権について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:常時、影響度:中)
当社は、第三者の知的財産権に関して、これを侵害することのないよう留意し、製品開発、販売を行っております。また、コンテンツ等の受託制作においては、第三者の知的財産権に関する許諾を取得していること等を取引先委託企業に確認するよう努めております。しかしながら、当社の事業分野における知的財産権の現況を全て把握することは非常に困難であり、当社が把握できていないところで第三者の知的財産権を侵害している可能性は否定できません。万一、当社が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者より損害賠償請求又は使用差止請求等の訴えを起こされる可能性があります。こうした場合、当社の業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は研究開発型の企業であり、新製品の開発、販売を行っております。当社では、特許権、商標権等の出願を行い、知的財産権の保全を図っておりますが、これらの出願が認められない可能性や取得済の特許権等が第三者により侵害される可能性があります。このような場合には、解決するまでに多くの費用や時間を費やすことが予想され、当社の業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社が有する知的財産権の侵害について顧問弁護士及び弁理士といった外部専門家に定期的な相談を行うことにより、知的財産権に関する管理を行う体制の整備を行っております。また、新規サービス開始時には、外部専門家に調査を依頼する等、他社の知的財産権を侵害しないための体制の整備を行っております。
(5) 人材の確保及び育成について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社の事業は、その大半がヒューマンリソースに依存しており、事業拡大にあたっては、急速な技術革新への対応、継続的な研究開発等が不可欠であり、これらに対応する優秀な人材を適切な時期に採用し、育成することが必要不可欠であると考えております。そのため、当社では人材確保に注力しておりますが、必要とする能力のある人材を計画どおりに採用又は育成できなかった場合には、当社の業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社は、優秀な人材を獲得すべく、新卒採用向けのインターンシップの機会を設けるほか、キャリア採用にも力を入れております。加えて、適切な育成計画に基づく人材の育成、育児休暇やリモートワークの推奨、有給休暇の取得推奨等働きやすい環境づくりに力を入れて取り組んでおります。
(6) 出資等による業務提携について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社では、当連結会計年度末において、投資有価証券663,486千円を保有しております。当社は事業シナジーが見込める国内外のソフトウェア関連企業に対して出資をしております。
また、研究開発型である当社は技術獲得のためにもM&A及び提携戦略は重要であり、必要に応じてこれらを検討していく方針であります。これらの出資先は今後の当社の事業推進に貢献するものと考えておりますが、出資先の経営環境や経済環境の急変等、何らかの事象により出資・投資の採算が期待どおりにならない可能性を完全に否定できません。このような場合、出資先の株式の減損処理等により当社の業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社は、出資を行う際には、事業内容、法務及び財務等に関して十分に調査し、既存事業とのシナジー等について十分な検討を行っております。その上で、取締役会における承認等の社内手続を経て意思決定を行うこととする等、リスクを十分に検討するための体制の整備を行っております。
(7) システムトラブルによるリスクについて(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:常時、影響度:大)
当社の事業は、コンピューターシステムを結ぶネットワークに依存しており、インターネットを利用したサービスを提供するにあたっては、バックアップ体制の構築等の様々なトラブル対策を施しております。しかしながら、自然災害や不慮の事故等によって、これらのネットワークが正常に機能しなくなった場合には、サービス提供等の当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社では、十分な検証やテストを実施した上でサービス提供を行っております。また、定期的なアップデートやモニタリングの実施により、安定的なサービスの提供を行うことが可能であり、不具合が発生した場合でも迅速な対応をとることができる体制の整備を行っております。
(8) 新規ソフトウェア開発投資について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社が事業を展開するソフトウェア及びインターネットサービスの業界においては技術革新の速度が非常に速いことから、常に魅力ある製品・サービスを提供して競争力を維持する継続的な研究開発及び製品開発を行っております。しかしながら、業界動向の変化等により投資を回収できるだけの収益が得られなかった場合、当社の業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社は、最先端の開発環境と、優秀な開発人材の活用により、常に新技術を活用した開発に注力しております。
(9) 海外展開について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:常時、影響度:中)
当社は、グローバルな事業展開を行っておりますが、所在地の法令、制度、政治、経済、商慣習の違い、為替等の様々な潜在的リスクが存在しております。当社は、当該リスクを最小限にするために十分な対策を講じてまいりますが、それらのリスクに対処できないこと等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社では、各国・地域の法律や規制に係る動向には常に十分な注意を払い、情報の収集に努めております。また、現地の弁護士等と情報共有することにより、適時に必要な情報を収集するための体制の整備を行っております。
(10) 為替相場変動による影響について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:常時、影響度:小)
当社の売上高に対する海外売上高の比率は年々上昇しており、急激な為替変動が生じた場合等において、当社の業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社では、CLIP STUDIO PAINTの多言語化を進めております。併せて各国・地域の様々な通貨での決済が可能な仕組みを構築しており、為替変動リスクを軽減しております。
(11) CLIP STUDIO PAINTへの依存(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社の売上高は、主力事業であるコンテンツ制作ソリューション事業における「CLIP STUDIO PAINT」の販売への依存が大きくなっております。国内外においてユーザー数の増加やサービスの拡充等により、今後もコンテンツ制作ソリューション事業は拡大していくものと考えておりますが、「CLIP STUDIO PAINT」の利用者の減少や市場規模の縮小等の要因によりコンテンツ制作ソリューション事業の売上高が減少した場合には、当社の業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社は、主力製品の売上安定化を図るとともに継続的に新たなシステム開発により新製品・新サービスを生み出し、特定の製品による依存リスクの分散することに注力しております。
(12) CLIP STUDIO PAINT の成長余地(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:大)
当社は、コンテンツ制作ソリューション事業において、「CLIP STUDIO PAINT」を提供しております。当事業が関連する市場は大きく広がっていることが想定され、また、「CLIP STUDIO PAINT」の多言語化対応等により今後の成長余地も大きいものと考えております。
また、「CLIP STUDIO PAINT」のユーザー獲得に向けた取り組みを継続的に実施・強化しております。その一方で、今後の政治情勢や政府・当局の政策・規制の動向、あるいは競合会社との競争状況によっては、当社の売上に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社は、ユーザーの潜在的なニーズを汲み取った新たなサービスの開発ならびに既存サービスの改善を行うほか、当社のノウハウを生かした新たなサービスの創出により、競合他社との更なる差別化を図り、優位性の保持することに注力しております。
(13) インターネット等による風評被害について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:常時、影響度:中)
SNSの普及に伴い、インターネット上の書き込みや、それを発端とするマスコミの報道による風評被害が発生・拡散された場合において、当社の価値が棄損され、当社の業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社は、引き続き高品質の製品提供に努め、顧客等と良好な関係を構築してまいりますが、当該リスクが顕在化した場合には、速やかに削除要請等を行うとともに、顧問弁護士等と連携して警察への通報等も含めたしかるべき措置をとり、被害の回復へ向けた対応を行うこととしております。
(14) ユーザーの嗜好変化について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社はイラスト・マンガ・アニメーションの制作ソフトと趣味性の高い商品を取り扱っているため、消費者の嗜好の変化に対応できず、適切な製品政策が実施できない場合には、当社の業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社は、マーケティング、技術開発、教育への投資及び製品の機能強化といった総合的な施策を継続して行っております。
(15) 事業領域の拡大について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社は、新しい事業やサービスを創出し、新たな事業領域にスピード感をもって参入することにより事業成長を続けております。一方でこのような事業展開を実現するためには、その事業固有のリスク要因が加わることとなり、当社のリスク要因となる可能性があります。そして、新規事業の参入のため、新たな人材の採用、システムの購入や開発、営業体制の強化等追加的な投資が必要とされ、新規事業が安定的な収益を生み出すには長期的な時間が必要とされることがあります。
また、新規事業の拡大スピードや成長規模によっては、当初想定していた成果を挙げることができないことがあり、事業の停止、撤退等を余儀なくされ、当該事業用資産の処分や償却により損失が生じる可能性があり、このような場合には、当社の業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応策)
当社は、検討に際しては、当社の事業計画に照らし合わせ、市場、新規技術の動向や顧客ニーズ等のリスク分析を行ったうえで判断しております。また事業の状況等について定期的な検証を行い、戦略の見直しを実施しております。
当社グループは、デジタルコンテンツの制作から流通までをトータルに支援できる環境の提供を目指して、イラスト・マンガ・Webtoon・アニメーション制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」の開発・提供を中心とした「コンテンツ制作ソリューション事業」と、コンテンツ流通基盤ソリューション「DC3」及び電子書籍配信ソリューションの開発・提供を中心とした「コンテンツ流通ソリューション事業」の2つの分野で事業を展開してまいりました。なお、2025年12月期からは、新たに「中期経営計画 2025-2027」を策定し、事業を推進してまいります。詳しくは、2025年2月14日に開示しました「中期経営計画 2025-2027」をご参照ください。
2024年9月25日に、当社株式は東京証券取引所スタンダード市場から東京証券取引所プライム市場への市場区分を変更いたしました。なお、同日開示しました「2025年12月期(次期)配当(東京証券取引所プライム市場変更記念配当)に関するお知らせ」のとおり、東京証券取引所プライム市場への上場市場区分変更の記念として2025年12月期の中間配当では、普通配当に加えて、1株当たり10円のプライム市場変更記念配当を実施いたします。
また、当社は、2024年11月15日に開示しました「連結子会社の株式取得(完全子会社化)、吸収合併(簡易合併・略式合併)及び債権放棄並びに個別決算における特別損失の計上に関するお知らせ」のとおり、DC3ソリューションの開発完了を受け、当社グループ内でのDC3活用推進や、経営の合理化を目的に、当社の連結子会社であった株式会社&DC3を、2025年1月1日付で吸収合併いたしました。なお、本吸収合併に伴い、2025年12月期より単体決算に移行いたします。
当連結会計年度におきましても、ソフトウェアIPを核とした経営に重点を置き、戦略的な開発投資を継続して行い、企業価値の向上に注力しております。その結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は8,204,959千円(前期比1.4%増)、営業利益は2,146,236千円(同58.7%増)となりました。なお、前連結会計年度には、2023年8月1日付で売却したUI/UX事業の売上高1,071,092千円が含まれておりますが、当期は当該売上の減少を上回る売上増加により、増収となりました。また、利益面に関しては、グループ全体の収支バランスを意識した開発投資の効率化や、コスト見直し施策の実施により、東証プライム市場への上場準備及び上場に伴うコストの上昇を補い、前期比増益となっております。
また、経常利益につきましては、営業外収益として為替差益118,020千円を計上したこと等により2,279,315千円(同62.3%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、法人税等888,777千円を計上したこと等により1,399,893千円(同123.5%増)となりました。
なお、自己資本当期純利益率(ROE)については、23.6%となり前期の8.5%から向上しております。
当社は、株主還元を重視しており、2024年3月1日から1年間で2,000,000千円分の自己株式の取得を予定しています。その一環として2024年6月3日及び同年12月20日に開示しました「自己株式の取得状況及び取得終了に関するお知らせ」のとおり、同年3月から5月の間に999,946千円分(1,202,700株)、同年11月から12月の間に499,875千円分(363,900株)の自己株式を取得いたしました。残りの500,000千円分も同年12月20日に開示しました「自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ」のとおり2025年3月31日までに取得する予定です。あわせて、2024年6月7日に開示しました「中間配当予想の修正(増配)に関するお知らせ」のとおり、2024年12月期の中間配当(2024年9月30日支払)は1株当たり2円の増配を実施いたしました。さらに、同年8月2日に開示しました「配当予想の修正(増配)に関するお知らせ」のとおり、期末配当につきましても1株当たり2円の増配を実施することとし、これにより2024年12月期の配当金につきましては、中間配当12円、期末配当12円の合計24円(前年比12円増配)となっております。
また、2024年2月9日に開示いたしました「資本金及び資本準備金の額の減少に関するお知らせ」のとおり、今後の機動的かつ柔軟な資本政策に備えるため資本金及び資本準備金の額の減少につきましては、予定どおり同年4月17日に効力が発生し、資本金の額が10,000千円、資本準備金の額が2,500千円に減少しております。減資により、増加した剰余金を、配当金、自己株式取得、さらなる株主還元施策や今後の資本政策等に活用してまいります。
その他、2024年2月に、AI及びWeb3関連技術の協業関係強化を目的に、株式会社アクセルと資本業務提携をいたしました。本提携により、当社は株式会社アクセルの株式464,800株を914,726千円で取得いたしました。一方、株式会社アクセルは当社株式を市場買付により1,081,000株取得しております。
各社との資本業務提携契約の進捗状況につきまして、WEBTOON Entertainment Inc.及びLINE Digital Frontier株式会社とは、WEBTOONコンテンツ制作の効率向上、AI分野や「DC3」ソリューションの活用等を推進、株式会社ワコムとはクリエイティブ制作に欠かせないワコム製品と連携した販促活動、株式会社アクセルとはAI技術の共同開発を実施しております。
なお、前連結会計年度において、UI/UX事業を事業譲渡したことに伴い、当連結会計年度からUI/UX事業の報告セグメントを廃止しております。
セグメント別の経営成績は、次のとおりです。
<コンテンツ制作ソリューション事業>
コンテンツ制作ソリューション事業は、グラフィック分野で活動するクリエイターの創作活動をサポートする、イラスト・マンガ・Webtoon・アニメーション制作SaaSサービス及び創作を支援するコミュニティサイトを通じて、コンテンツの制作にまつわるサービスをグローバルに提供しております。なお、2025年12月期からは、新たに策定した中期経営計画にあわせて事業セグメントを単一セグメントに変更いたします。
2024年3月に、イラスト・マンガ・Webtoon・アニメーション制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」の機能向上を目的とした開発投資の成果として、「CLIP STUDIO PAINT」のメジャーバージョンアップを実施し、バージョン3.0をリリースいたしました。あわせて、収益性の向上と継続的なサービス提供を実現することを目的に、「CLIP STUDIO PAINT」のSaaS提供であるサブスクリプション契約価格及び買い切り版の価格を改定いたしました。今後も、サービスの価値向上に応じた価格改定を行ってまいります。
2024年3月にメジャーバージョンアップで提供を開始したバージョン3.0は、最新の機能を利用するためには、買い切りモデルのユーザーも追加のサブスクリプション契約をしていただく、または、新バージョンを優待購入いただく形態としております。バージョン3.0はリリース以来好評をいただき、さらに、リリースにあわせて、新規ユーザーの獲得を目的とした全世界に向けた販売促進キャンペーンも実施いたしました。これにより、サブスクリプション契約の増加や、既存の買い切りモデルユーザーからの新バージョン購入により収益が改善し、より安定的、かつ継続的なサービス提供が可能となりました。
メジャーバージョンアップ施策は、マーケットにおける認知度の向上効果により、売上高及び利用者数の底上げが実現できるため、2025年12月期以降も定期的に実施する予定です。
世界の11言語に対応している「CLIP STUDIO PAINT」は、約80%が日本語以外の海外に向けた出荷となっており、特に中国本土については、サブスクリプション契約数が順調に増加傾向で推移しAppStoreにおける国別売上高構成比では上位7位となる等、今後も成長が見込まれます。
「CLIP STUDIO PAINT」は、累計出荷本数が2024年10月に4,500万本を超え、2025年1月には4,805万本となりました。なお、「CLIP STUDIO PAINT」サブスクリプションモデルによるSaaSサービス提供のARRは、毎月開示しております「月次事業進捗レポート」をご参照ください。
「CLIP STUDIO PAINT」サブスクリプション契約の2024年12月におけるチャーンレートは4.8%となっております。また、イラスト、マンガ、Webtoon、アニメーション分野のクリエイターをサポートするコミュニティ「CLIP STUDIO」のクリエイターの会員数は、2024年7月に900万人に達し、同年12月には全世界で965万人(同17.1%増)となりました。
当社が注力しているサブスクリプションモデルでのライセンス提供は、廉価で利用開始の敷居を下げる反面、一括でまとまった金額のライセンス料を徴収する買い切りモデルに比べ、短期的には収益効果が低くなります。しかしながら、継続してご利用頂くことで中・長期においては安定した収益が期待できるため、引き続きサブスクリプションモデル契約の増加を目指してまいります。
2024年3月にはワイヤレスの片手入力デバイス「CLIP STUDIO TABMATE 2」の販売を開始いたしました。「CLIP STUDIO TABMATE 2」は、はじめてiPad・iPhoneに対応することで、モバイル環境向け「CLIP STUDIO PAINT」の操作性が向上し、競合アプリに対する競争力の強化を実現しました。「CLIP STUDIO TABMATE 2」はリリース以来好評をいただき、出荷本数は当初見込みを上回って推移しております。
2024年10月には、「CLIP STUDIO PAINT」が、Samsungの最新ノートパソコン「Galaxy Book5」にバンドルされ、北米・欧州から販売が開始され、また、12月には、「NEC LAVIE Tab T11」に「CLIP STUDIO PAINT」がプリインストールされました。バンドル・プリインストイールされた「CLIP STUDIO PAINT」は、無料利用期間後にサブスクリプション契約を行うことで継続利用できる形となっており、サブスクリプション契約の増加が期待されます。さらに「Galaxy Book5」はグローバルでのバンドルが順次実施される予定であり、海外ユーザーの増加も期待できます。
2024年12月には、本田技研工業株式会社と協力し、「CLIP STUDIO PAINT」での創作に活用可能な「Honda Super Cub C125」(スーパーカブ C125)の3Dモデルを、素材サービス「CLIP STUDIO ASSETS」で、無料配布を開始しました。
また、「CLIP STUDIO PAINT」の海外における認知度やユーザー層の拡大に向けた取り組みとして、スペイン最大級のマンガ、ゲーム、エンターテインメントの総合イベント「Mangafest」等の海外イベントに協賛を行いました。
この他、海外利用ユーザー及びサブスクリプション契約の増加を目的とした、全世界に向けたプロモーション活動を継続的に実施しております。
以上の結果、売上高は7,143,207千円(前期比18.9%増)、営業利益は2,848,718千円(同30.8%増)となりました。
<コンテンツ流通ソリューション事業>
コンテンツ流通ソリューション事業は、コンテンツ流通基盤ソリューション「DC3」や、電子書籍ソリューションの開発・提供を通じて、コンテンツの流通にまつわるソリューションを提供しております。なお、2025年12月期からは、新たに策定した中期経営計画にあわせて事業セグメントを単一セグメントに変更いたします。
あらゆるデジタルデータを唯一無二の “モノ” として扱うことでデジタルコンテンツの流通を実現する基盤ソリューション「DC3」においては、2024年11月に「DC3」のアップデートによりDC3マイルームの3D部屋モデルを追加したことに加えて、マスターコンテンツ登録画面の刷新、Googleアカウント・CLIP STUDIOアカウントでのログインへの対応によって、UI/UXの向上を図りました。
さらに、12月には、DC3プレイヤー「Hiveチケットプレイヤー」及びチケットコンテンツ作成サービス「チケッティア」のアップデートを実施し、チケットに動画・音声を設定できるようになりました。
あわせて、「DC3」ソリューションの利用促進を目的とした営業・プロモーション活動を推進し、「DC3」ソリューションが、複数のサービス事業者に採用されております。虎の穴グループのクリエイターとファンを結ぶ新しい月額制ファンクラブプラットフォーム「クリエイティア」において、DC3コンテンツの販売機能が2024年1月にリリースされております。また、2024年7月より放送開始しているTVアニメ「俺は全てを『パリイ』する~逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい~」、「北海の魔獣あざらしさん」や、ゲーム「エルシャダイ」等の、IPを保有する事業者とのコラボレーションを実施しました。
なお、「DC3」ソリューションは当初計画していた研究開発が完了しております。今後は安定性及びユーザビリティの向上といった改善フェーズへと移行し、開発投資を抑制しながら、「CLIP STUDIO PAINT」との連携や、当社が提供するサービスでの活用推進に加え、サービス事業者へソリューションの提供も継続してまいります。
また、一般社団法人JCBIの技術推進部会の副部会長を務める&DC3が、経済産業省の「Web3.0・ブロックチェーンを活用したデジタル公共財等構築実証事業」におけるコンテンツIP保護ガイドライン策定に向けて実証実験やヒアリングを実施するコンテンツNFT研究会へ参画しました。2025年12月期からは当社として、参加するコンテンツ企業各社と連携して活動してまいります。
電子書籍ソリューションにおいては、電子書籍ビューア「CLIP STUDIO READER」を始めとする、電子書籍オーサリングソフトウェア等、様々なデバイス・プラットフォームに対応した電子書籍の制作・流通・再生にまつわるソリューションの提供を行っております。2024年10月には、Google社より提供開始されたAndroidの最新OS「Android 15」に対応いたしました。
以上の結果、売上高は1,061,751千円(前期比4.9%増)、営業損失は681,995千円(前期は744,687千円の営業損失)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ213,721千円減少し、5,348,060千円となりました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、3,732,848千円(前連結会計年度は2,344,617千円の獲得)となりました。これは主として、税金等調整前当期純利益2,215,661千円の計上や減価償却費の計上657,896千円、法人税等の還付214,416千円等の資金の増加要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、1,645,953千円(前連結会計年度は1,474,161千円の使用)となりました。これは主として、ソフトウエア等の無形固定資産の取得による支出687,369千円、投資有価証券の取得による支出915,926千円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の使用した資金は、2,300,616千円(前連結会計年度は2,122,989千円の使用)となりました。これは主として、配当金の支払額776,250千円や自己株式の取得による支出1,499,934千円があったことによるものであります。この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、5,348,060千円となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.金額は、当期製造費用によっております。
2.前連結会計年度において、UI/UX事業を事業譲渡したことに伴い、当連結会計年度からUI/UX事業の報告セグメントを廃止しております。そのため、当該セグメントについては記載に含めておりません。
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.金額は、仕入価格によっております。
2.前連結会計年度において、UI/UX事業を事業譲渡したことに伴い、当連結会計年度からUI/UX事業の報告セグメントを廃止しております。そのため、当該セグメントについては記載に含めておりません。
当連結会計年度における生産業務は、ライセンス販売を目的とした見込生産であり、個別受注生産の占める割合が低いため、受注金額の記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.前連結会計年度において、UI/UX事業を事業譲渡したことに伴い、当連結会計年度からUI/UX事業の報告セグメントを廃止しております。そのため、当該セグメントについては記載に含めておりません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、有価証券・固定資産の減損、棚卸資産の評価、貸倒引当金の設定、ビューア利用料売上の見積り計上等の重要な会計方針及び見積りに関する判断を行っています。当社の経営陣は、過去の実績や状況等に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、それらに対して継続して評価を行っております。また実際の結果は、見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(2) 財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べて120,254千円減少し8,431,270千円となりました。この主な要因は、売掛金が20,323千円、原材料及び貯蔵品が63,949千円、投資有価証券が631,435千円増加したものの、自社株買いの実施等により現金及び預金が210,121千円、未収入金が218,714千円、繰延税金資産が153,373千円、その他流動資産が239,775千円減少したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比べて1,121,067千円増加し3,012,475千円となりました。この主な要因は、未払法人税等が688,716千円、前受金が270,804千円、未払金が42,534千円、役員退職慰労金が45,950千円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べて1,241,321千円減少し5,418,795千円となりました。主な要因は、自社株買い等により自己株式が1,492,169千円増加したこと等によるものであります。なお、自己資本比率は、63.4%となりました。
(3) 経営成績の分析
当連結会計年度における当社グループの売上計画、営業利益の達成状況は以下のとおりです。
当連結会計年度における連結売上高は、期初では7,723,000千円、連結営業利益では1,655,000千円の計画を見込んでおりました。2024年8月9日開催の取締役会において、連結売上高を8,009,000千円、連結営業利益を1,988,000千円へ修正いたしました。修正後計画に対し連結売上高では195,959千円上回り、連結営業利益は158,236千円上回りました。
その他、営業利益の状況、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営成績等の状況の概要 (1)財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループが主に事業展開しているソフトウェア業界は、技術革新の速度及びその変化度が著しい業界であり、新技術、新サービスが次々と生み出されております。当社としては、担当部門において当該技術革新に対応するよう研究開発に努めております。
しかしながら、当社グループが想定していない新技術、新サービス等が普及した場合には、当社グループの提供するソフトウェア、サービス等が陳腐化し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、継続的に研究開発に注力し、競争力を維持するために魅力ある製品、サービス等を提供していく所存であります。
(5) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析は、「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営成績等の状況の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(6) 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、ソフトウェア開発に係る人件費のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資及びM&A等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資及びM&A等の資金調達につきましては自己資金及び自己株式の割当並びに金融機関からの長期借入を基本とし、資金調達の多様性を図っております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高はありません。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は5,348,060千円となっております。
(7) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標等
当社グループは、連結営業利益を経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等とし、目標数値を設定しております。
2024年8月9日に発表した連結会計年度の業績予想、売上高8,009,000千円、営業利益1,988,000千円、経常利益2,117,000千円、親会社株主に帰属する当期純利益1,340,000千円の達成状況は、下記のとおりです。
① 売上高
グループ合計の売上高につきましては、8,204,959千円となりました。セグメント別では、下記のとおりとなっております。
<コンテンツ制作ソリューション事業>
コンテンツ制作ソリューション事業では、3月にイラスト・マンガ・Webtoon・アニメーション制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」の機能向上を目的とした開発投資の成果として、「CLIP STUDIO PAINT」のメジャーバージョンアップを実施し、バージョン3.0をリリースいたしました。あわせて、収益性の向上と継続的なサービス提供を実現することを目的に、「CLIP STUDIO PAINT」のSaaS提供であるサブスクリプション契約価格及び買い切り版の価格を改定いたしました。
2024年3月にメジャーバージョンアップで提供を開始したバージョン3.0は、最新の機能を利用するためには、買い切りモデルのユーザーも追加のサブスクリプション契約をしていただく、または、新バージョンを優待購入いただく形態としております。バージョン3.0はリリース以来好評をいただき、さらに、リリースにあわせて、新規ユーザーの獲得を目的とした全世界に向けた販売促進キャンペーンも実施いたしました。これにより、サブスクリプション契約の増加や、既存の買い切りモデルユーザーからの新バージョン購入により収益が改善し、より安定的、かつ継続的なサービス提供が可能となりました。
世界の11言語に対応している「CLIP STUDIO PAINT」は、約80%が日本語以外の海外に向けた出荷となっており、特に中国本土については、サブスクリプション契約数が順調に増加傾向で推移しAppStoreにおける国別売上高構成比では上位7位となる等、今後も成長が見込まれます。
「CLIP STUDIO PAINT」は、累計出荷本数が2024年10月に4,500万本を超え、2025年1月には4,805万本となりました。
「CLIP STUDIO PAINT」サブスクリプション契約の2024年12月におけるチャーンレートは4.8%となっております。また、イラスト、マンガ、Webtoon、アニメーション分野のクリエイターをサポートするコミュニティ「CLIP STUDIO」のクリエイターの会員数は、2024年7月に900万人に達し、同年12月には全世界で965万人(同17.1%増)となりました。
当社が注力しているサブスクリプションモデルでのライセンス提供は、廉価で利用開始の敷居を下げる反面、一括でまとまった金額のライセンス料を徴収する買い切りモデルに比べ、短期的には収益効果が低くなります。しかしながら、継続してご利用頂くことで中・長期においては安定した収益が期待できるため、引き続きサブスクリプションモデル契約の増加を目指してまいります。
この他、海外利用ユーザー及びサブスクリプション契約の増加を目的とした、全世界に向けたプロモーション活動を継続的に実施しております。
<コンテンツ流通ソリューション事業>
あらゆるデジタルデータを唯一無二の “モノ” として扱うことでデジタルコンテンツの流通を実現する基盤ソリューション「DC3」においては、2024年11月に「DC3」のアップデートによりDC3マイルームの3D部屋モデルを追加したことに加えて、マスターコンテンツ登録画面の刷新、Googleアカウント・CLIP STUDIOアカウントでのログインへの対応によって、UI/UXの向上を図りました。
DC3プレイヤー「Hiveチケットプレイヤー」及びチケットコンテンツ作成サービス「チケッティア」のアップデートを実施し、チケットに動画・音声を設定できるようになりました。あわせて、「DC3」ソリューションの利用促進を目的とした営業・プロモーション活動を推進し、「DC3」ソリューションが、複数のサービス事業者に採用されております。
なお、「DC3」ソリューションは当初計画していた研究開発が完了しております。今後は安定性及びユーザビリティの向上といった改善フェーズへと移行し、開発投資を抑制しながら、「CLIP STUDIO PAINT」との連携や、当社が提供するサービスでの活用推進に加え、サービス事業者へソリューションの提供も継続してまいります。
電子書籍ソリューションにおいては、電子書籍ビューア「CLIP STUDIO READER」を始めとする、電子書籍オーサリングソフトウェア等、様々なデバイス・プラットフォームに対応した電子書籍の制作・流通・再生にまつわるソリューションの提供を行っております。10月には、Google社より提供開始されたAndroidの最新OS「Android 15」に対応いたしました。
② 営業利益
上記の「売上高」に記載のとおり、3月に実施した「CLIP STUDIO PAINT」のメジャーバージョンアップ、あわせて、収益性の向上と継続的なサービス提供を実現することを目的に、「CLIP STUDIO PAINT」のSaaS提供であるサブスクリプション契約価格及び買い切り版の価格を改定により増収となる中、原価及び販管費の費用面においてマネージメントに注力しました。外注費、広告宣伝費及び販売促進費のマネジメントに努めた結果、2,146,236千円となりました。
③ 経常利益
営業外収益として受取配当金を37,932千円、為替差益118,020千円計上したこと、営業外費用として自己株式取得に係る支払手数料20,468千円及び子会社の清算に伴う割増退職金3,818千円を計上したこと等により2,279,315千円となりました。
④ 親会社株主に帰属する当期純利益
特別利益として新株予約権戻入益9,280千円、特別損失として減損損失72,631千円をそれぞれ計上、税金費用として法人税、住民税及び事業税を729,756千円、法人税等調整額159,020千円を計上したこと等により、1,399,893千円となりました。
今後も絶対売上高の拡大、営業利益の拡大を目標として経営を行うことにより、当社グループの企業価値の向上を図ってまいります。
(連結子会社の吸収合併)
当社は、2024年11月15日開催の取締役会において、2025年1月1日を効力発生日として、当社の連結子会社である株式会社&DC3との間で、当社を存続会社とする吸収合併を行うことを決議し、同日付で合併契約を締結いたしました。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
当社グループは、デジタルによるコンテンツの創作から利用・活用に至るまでの諸活動を、トータルに支援する環境の提供を経営理念に掲げ、事業を推進しており、既存サービスの付加価値向上、新サービスの開発活動を行っておりますが、当連結会計年度において研究開発費の計上はありません。