第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

I.経営方針

 当社グループは、「Evenな社会の実現 ~すべての人が平等に機会を得られる社会の実現~」をミッションに掲げ、ビジュアルコミュニケーション技術を基盤とした事業を展開しております。

 本年度は、事業ポートフォリオの再編を進めるとともに、成長領域への投資を強化し、収益性の向上を目指してまいります。また、プライム市場の上場維持基準を満たすことを重要課題と位置付け、業績回復及び成長戦略を推進してまいります。

 

<各事業の成長戦略>

エンタープライズDX事業

・サービスの選択と集中が完了し、成長を見込むサービスへの注力

・生成AIを活用した新規サービスの拡充

・AI×ロボティクス事業の拡大

イベントDX事業

・コロナ後のポートフォリオ変化を元にしたオーガニックな成長

・データを徹底活用するイベントの効果分析等による差別化

・TEN Holdings, Inc.を中心としたロールアップ戦略

サードプレイスDX事業

・テレキューブのラインナップ拡充と利用用途の拡大によるオーガニックな成長

・EV充電サービスの本格拡大による成長

 

Ⅱ.経営環境及び対処すべき課題

(1)当連結会計年度の実績数値と振り返り

 2024年12月期の売上高は10,463百万円となり、計画値の11,400百万円を下回りました。これは、TEN Holdings, Inc.を中心としたイベントDX事業の回復の遅れ及び一部のエンタープライズDX案件の売上計上タイミングのずれが影響したためであります。

 営業利益は236百万円の損失となり、計画値の300百万円を大きく下回りました。主な要因として、TEN Holdings, Inc.の業績低迷とNASDAQ上場準備に伴う費用負担の増加が挙げられます。

 当期純利益は1,417百万円の損失となり、計画値の100百万円から大幅に乖離しました。これは、TEN Holdings, Inc.の事業環境の悪化の影響や、一部のソフトウエアについての減損損失の計上並びに繰延税金資産の一部取崩しが発生したこと等によるものであります。

 2025年12月期以降は、事業ポートフォリオの最適化やコスト管理の強化、NASDAQ上場後のTEN Holdings, Inc.の成長戦略の見直しを進め、収益性の改善を目指します。

 

 当連結会計年度の計画と実績の比較

主要経営目標(連結ベース)

2024年12月期

(計画)

2024年12月期

(実績)

売上高

11,400百万円

10,463百万円

営業利益又は営業損失(△)

300

△236

 

 2025年12月期は連結売上高108~120億円、2026年12月期は連結売上高120~130億円を目標としています。

 

(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①財務体質の改善

・TEN Holdings, Inc.のNASDAQ市場への上場後の、同社株式の一部売却及び追加の資金調達

・TEN Holdings, Inc.の業績回復によるフリーキャッシュ・フローの改善及びガバナンス強化

・有利子負債の削減と自己資本比率の改善

・ROI(投資収益率)の最大化を目的とした開発投資の適正化

 

②売上成長の促進

・コア事業の強化と新規事業の創出

・エンタープライズDX、イベントDX、サードプレイスDXの各分野での拡大

・MRRの成長、新規事業創出、社内外連携の強化

 

 これらの課題に対し、全社一丸となって取り組むことで、社会課題の解決と企業価値の向上を同時に実現し、「Evenな社会」の実現に向けて前進してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは「Evenな社会の実現」をMissionに掲げ、豊かな社会づくりに向けて様々な事業活動に取り組んでいます。当社は社会を構成する一員として企業が果たす役割の重要度はますます高まっていると考える中で、特に「社会の持続的な成長」と「中長期的な企業価値の向上」の実現のため、環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)への取り組みが経営の重要事項と認識しております。

 当社の展開する事業は、映像技術を活用して物理的な距離の壁を取り払うことにより、移動による環境負荷の軽減のみならず、社会課題となる「東京一極集中」「雇用機会の不均等」「雇用継続の課題」「情報格差」「医療や教育などをはじめとした地域格差」などの是正につながる事業となっております。これらの技術・事業を通じて、新たな価値創造・社会課題の解決とともに、社会的課題に「誠実」かつ「真面目」に取り組み、ステークホルダーとの対話を通じて深化させていきます。

 

(1)ガバナンス

 経営理念、Missionのもと、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、取締役及び全従業員が法令を遵守し、健全な社会規範のもとにその職務を遂行するとともに、コーポレート・ガバナンスの充実に継続的に取り組んでおります。

 サステナビリティに関する基本方針、リスク・機会認識に基づく対応方針・施策等については取締役会にて監督し、社内各部署で検討されている対応方針・施策の進捗状況等は定期的に取締役会に報告され、最終決定されます。

 また、社外取締役の比率を3分の1以上とすることや取締役のダイバーシティ(創業メンバーの他、会社経営経験者、女性、外国人、専門家)を保つことで、企業倫理や経営の健全性向上、企業価値向上に資する方針決定が行える構成としております。

 サステナビリティに対するガバナンスを含むコーポレート・ガバナンスの詳細は、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

(2)リスク管理

 サステナビリティに関する事業への影響を把握・評価し、認識したリスクと機会について、必要に応じ取締役会に報告・協議してまいります。

 なお、気候変動に係るリスクにおいて、気候パターンの変化や異常気象は我々の社会に大きな影響を及ぼすリスクがありますが、当社グループはリモート・オンラインを活用した映像コミュニケーションサービスを展開しており、気候変動に係るリスクによる影響は少ないと認識しております。

 

(3)気候変動に関する考え方及び取組

① 戦略

 当社グループはWeb会議サービス、イベント配信サービス、テレワークを支援する個室ブース「テレキューブ」といった情報通信技術を活用した映像コミュニケーションサービスを提供しており、前述のとおり、現時点においては気候変動が顧客のサービスご利用シーンやご利用頻度等のニーズに直接的に影響を与えるリスクは少ないと考えております。

 また、当社グループの事業展開自体が物理的な移動機会や物理的なモノの利用機会を減少させることにつながっており、気候変動への対応という観点では、当社グループの持続的な成長とともに社会全体の環境負荷低減を実現できる機会と捉えております。

 

 

② 指標及び目標

 当社グループは気候変動対策として温室効果ガス排出量の測定・開示・削減に取り組んでおります。また、再生可能エネルギーの活用として、2025年までに事業活動に伴う電力の100%再生可能エネルギー化に取り組んでおります。

・再生可能エネルギーの比率が高い先端データセンター活用によるCO2の削減

・本社オフィスにおける利用電力(電灯・コンセント電源)において、非化石証書付電力を利用

 

 当社グループの温室効果ガス排出量は以下のとおりです。Scope1(事業による直接排出)は0であり、Scope2(電力消費による間接排出)はオフィスにおいて使用する電力消費に伴うものであります。

環境負荷抑制のため、更なる電力消費の削減や再生エネルギーの活用を進めるとともに、今後の目標設定等に向けて取り組みを進めてまいります。

 

 当社における温室効果ガス排出量

                (単位:t-CO2)

 

2022年12月期

2023年12月期

2024年12月期

Scope1

0

0

0

Scope2

205

176

162

(注)集計対象は本社(東京)及び大阪営業所

 

(4)人的資本に関する考え方及び取組

 当社グループの中で主要な事業を展開する株式会社ブイキューブ単体について記載しております。

 

①人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

 当社は人財方針「ピープル・サクセスポリシー」を基に、人財育成方針「新たな価値を共創しつづける人財の育成」を定め、社会に貢献できるビジネスを創出できる人財育成を目指して、挑戦を生む環境づくり・仕組づくりを行っております。

ⅰ)中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方

 当社の人財における基本方針として「ピープル・サクセスポリシー」を掲げ、当社ミッションである「Evenな社会の実現」を社内外問わず推進しております。そのため、中核人財の登用の前提として、性別、国籍、新卒既卒という区分は関係なくEvenな機会を提供しております。

ⅱ)多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針とその実施状況

 当社は人財方針「ピープル・サクセスポリシー」を基に、社員の成長こそが会社の成長と考え「新たな価値を共創しつづける人財の育成」を人財育成方針と定め、評価報酬制度を含むブイキューブ独自の人財開発総合施策「The GOLD」を通じて、自らの成長を志し挑戦する社員に対しキャリア開発や成長・学習機会の提供といった総合的支援を行っています。さらに「ブイキューブ・マネジメントポリシー」を策定し、マネジメント人財の育成も含め、次世代を担う人財への投資も積極的に行っています。

 具体的な人財育成施策として、階層別研修、全社員向けe-ラーニング、対話力向上のためのコーチング体験プログラム、スキルマップ構築、キャリア自律のための対話による支援「キャリアドック」などを行っております。

 また、社会に貢献できるビジネスを創出できる人財育成を目指して、挑戦を生む環境づくり・仕組みづくりを推進しており、部署や役職を越えたチームによる新規事業立案コンテスト「Next ATARIMAE Challenge」を開催しております。誰もが当たり前に感じ利用できる仕組み、「次のあたりまえ」をつくることをテーマとしており、入賞者・グループには事業開発のサポートを各専門部署から提供し、事業化に向けて準備しております。前述の人財施策の定量評価としてエンゲージメントスコアを2018年より導入しており、職場環境や評価への納得感、挑戦する文化の定着等について効果測定と改善のサイクルを継続しております。

 また、子どもを育みたいという選択肢への支援や、育児や介護といったライフステージの変化等、多様な状況下にある社員が働きやすい職場環境づくりを行うための施策を実施しております。

 詳細は、当社ピープル・サクセスサイトにて公開している「人的資本経営レポート」をご参照ください。

 

 人的資本経営レポート

 URL: https://ps.vcube.com/human_capital/

 

② 指標及び目標

<中核人材の多様性確保のための測定可能な目標とその状況>

(女性) 2022年4月1日より、2025年までに女性管理職を10名(管理職のうち約30%)輩出する目標を掲げております。なお、2024年12月末時点で女性従業員数108名(39.7%)、女性管理職は5名(管理職のうち16.7%)です。また、2018年から女性の育休取得率は100%であり、男性の育休取得率は50%の目標に対して2024年は57.1%となりました。今後も男性の育休取得率向上に向けて取り組んでまいります。

 

2023年12月期

2024年12月期

2025年12月期(目標)

女性管理職人数

6名

5

10

女性管理職割合

17.6%

16.7

30

女性育休取得率

100%

100

100

男性育休取得率

68.4%

57.1

50

 

(外国人) 現時点で目標設定及び現況は開示しておりませんが、国籍、バックグラウンドを問わず採用・管理職の登用を行っております。また、取締役会に社内取締役のランドルフ・ジョーンズ(米国)がおり、マネジメントの国際化も進んでおります。

 

(中途) 管理職の登用において採用時期によって特段の差が生じているとは認識していないため、現時点では目標設定は行っておりません。なお、管理職のうち中途採用者は2024年12月末時点で22名(管理職のうち73.3%)です。

 詳細は、当社ピープル・サクセスサイトにて公開している「人的資本経営レポート」をご参照ください。

 

 人的資本経営レポート

 URL: https://ps.vcube.com/human_capital/

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1.継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは、主に連結子会社TEN Holdings, Inc.の業績悪化の継続と、NASDAQ上場準備に伴う費用負担等により2期連続で連結営業損失を計上し、さらにソフトウエアの減損損失等の影響も加わったことで、純資産が毀損いたしました。これにより、金融機関と締結した借入契約における財務制限条項に抵触いたしました。当該財務制限条項が適用され、期限の利益喪失請求権が行使された場合、資金繰りに影響が生じるため、当連結会計年度末においても、前連結会計年度に引き続き継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しております。

このような事象又は状況を解消するために、当連結会計年度は財務体質の改善施策の一環として、第三者割当による新株式の発行の他、プロフェッショナルワーク事業の事業譲渡を実行してまいりました。さらに、今後は様々な施策を推進し、収益性をより一層改善した経営基盤の再構築を目指してまいります。

具体的には、会社法に基づく連結計算書類作成時点においては、以下の施策の推進を想定しておりました。

・選択と集中による開発投資の適正化と継続的な固定費の削減

・2025年2月に実施したTEN Holdings, Inc.のNASDAQ市場への上場と、それに伴う追加の資金調達及び同社株式の一部売却

しかしながら、2025年3月に入り、TEN Holdings, Inc.のNASDAQ市場における株価が当初の想定を上回る変動幅で推移し、売却の実施判断が困難な状況が続いたことから、追加的な資金調達施策として、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおり、連結子会社であるWizlearn Technologies Pte. Ltd.が保有する投資有価証券の売却を行うことを決定いたしました。また、当社は金融機関との連携を強めており、上記の施策に加えて、金融機関と協議の上で財務体質の改善に向けた施策を実行してまいります。これにより、今回の財務制限条項への抵触に関しても、期限の利益の喪失の権利行使をせず、事業継続に必要と認められる支援を継続していく旨の同意を得ております。以上により、当面の資金繰りには問題なく、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。

 

2.当社の事業及び業界固有の重要なリスク

項目名

影響度

評価

前年

比較

2.当社の事業及び業界固有の重要なリスク

(1)AI技術の進展による事業への影響について

重要

(2)イベントDX事業の収益性低下に関するリスク

重要

(3)サードプレイスDX事業の市場環境の変化に関するリスク

注視

(4)エンタープライズDX事業の不確実性に関するリスク

注視

(注) 上記リスクはいずれも年間を通じて常時発生する可能性があると認識しております。

 

(1) AI技術の進展による事業への影響について

 AI技術の急速な進展により、当社グループが提供するコミュニケーションツールやソリューションが、AIエージェント等の新技術により代替される可能性があります。このような競合環境の変化は、当社グループの競争力に影響を与え、事業戦略の見直しや既存サービスの陳腐化リスクを引き起こすおそれがあります。当社グループでは、AI関連技術の動向を注視しつつ、新たな技術との連携や独自価値の訴求に努めております。

 

(2) イベントDX事業の収益性低下に関するリスク

 オンラインイベント市場においては、需要の鈍化やリアルイベントへの回帰傾向がみられており、当社グループのイベントDX事業の収益性に影響を及ぼす可能性があります。特に、特定の大型顧客や大型イベントへの依存度が高い収益構造においては、顧客方針やイベントの有無が業績に大きく影響することが懸念されます。また、価格競争の激化により、案件単価の値下げにより利益率が低下するリスクも存在します。当社グループでは、オンラインイベントへの付加価値の提供、ハイブリッド対応サービスの強化や案件ポートフォリオの見直しを通じて、収益の安定化を図っております。

 

(3) サードプレイスDX事業の市場環境の変化に関するリスク

 出社とテレワークを組み合わせたハイブリッドワークが定着する中で、社内外でのウェブ会議の実施機会が増加しており、静かな個室空間を求めるニーズが高まっております。当社グループが展開するサードプレイス型サービスは、こうしたニーズを捉えて拡大してきましたが、一方で一部企業ではオフィスへの完全回帰の動きもみられ、設置先の稼働率や導入意欲に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、設置環境の最適化や用途拡大に向けた取り組みを進めることで、稼働率と収益性の改善を図っております。

 

(4) エンタープライズDX事業の不確実性に関するリスク

 企業の働き方が対面中心に戻る動きが広がった場合、当社グループが提供するオンライン会議・配信ソリューションの利用率に影響を及ぼす可能性があります。特に、ZoomやQumu等のサブスクリプション型顧客の解約が進行した場合、売上高が減少し、収益性が悪化するリスクが懸念されます。これに対し、当社グループは機能改善や顧客接点の強化を図り、継続的な価値提供を目指しております。

 

 

3.技術及びシステムリスク

項目名

影響度

評価

前年

比較

3.技術及びシステムリスク

(1)技術革新及び市場変化のリスク

重要

(2)システム障害及び情報セキュリティのリスク

注視

(注) 上記リスクはいずれも年間を通じて常時発生する可能性があると認識しております。

 

(1) 技術革新及び市場変化のリスク

 インターネット関連市場では、新技術の導入やサービスモデルの転換が急速に進んでおります。当社グループのサービスがこれらの変化に迅速に適応できない場合、競争力が低下し、収益に影響を与える可能性があります。また、AIや先端技術への対応には、追加的な開発費用や人材投資が必要となることから、費用対効果の管理が課題となります。当社グループでは、先端技術のモニタリング体制を整備し、機動的な事業開発を推進しております。

 

(2) システム障害及び情報セキュリティのリスク

 当社グループが提供するサービスは、外部クラウドインフラに依存しており、これらの障害が発生した場合には、サービスの提供が一時的に停止し、顧客満足度や信頼性の低下につながる可能性があります。また、サイバー攻撃や内部不正等により、顧客情報の漏洩やデータ改ざん等が生じた場合、法的責任やレピュテーションリスクが顕在化するおそれがあります。これらに対しては、継続的なシステム監視体制の整備や外部監査の活用などを通じて、リスク管理の強化に取り組んでおります。

 

4.財務リスク

項目名

影響度

評価

前年

比較

4.財務リスク

(1)有利子負債の水準と財務制限条項に関するリスク

重要

(2)TEN Holdings, Inc.の事業・財務リスク

重要

(注) 上記リスクはいずれも年間を通じて常時発生する可能性があると認識しております。

 

(1) 有利子負債の水準と財務制限条項に関するリスク

 当社グループは、過年度から続く業績の悪化により、財務制限条項に2期連続で抵触しております。これにより、新規の資金調達や借換交渉等における柔軟性が制約される可能性があり、資金繰りへの影響が懸念されます。金融機関との関係強化や負債圧縮の施策を講じるとともに、収益性の改善を通じて自己資本比率の回復に努めております。

 

(2) TEN Holdings, Inc.の事業・財務リスク

 連結子会社であるTEN Holdings, Inc.は、2期連続で営業赤字を計上しており、同社の成長性や収益性が当社グループ全体の財務状況に影響を及ぼしております。今後、成長加速のための資金調達が必要となる見込みであり、資金調達手段の選択や条件次第では当社の連結財務に一定の影響を及ぼす可能性があります。

 

なお、本報告書に記載したリスク要因は、当社グループの持続的な成長を図る上での重要な課題であり、取締役会等においても随時検討を行いながら、引き続き適切な対策を講じてまいります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、判断したものであります。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、ロシア・ウクライナ戦争の継続や中東情勢の不安定化、長期化する円安に加え、エネルギー価格や原材料費の高騰、労働市場の逼迫などの影響を受けました。これにより、企業のコスト負担が増大し、個人消費や設備投資の回復に足踏みが見られる一方で、生成AIをはじめとする新技術の台頭が産業構造の変革を加速させるなど、先行き不透明ながらも変化の兆しが見られる年となりました。

日本市場では、行動制限の緩和と経済活動の正常化が進み、リアルイベントや対面でのビジネス活動が回復基調となる中で、デジタルとの融合を前提とした新たな市場環境が形成されつつあります。当社においても、この市場の変化に対応し、リアルとオンラインのハイブリッドモデルを強化することで、安定的な業績を維持しました。

一方、米国市場では、コロナ後に獲得した新規顧客との案件開始の遅れや、為替の影響が引き続き業績の下押し要因となりました。しかしながら、当社米国子会社においてはNASDAQ市場へ上場し、これを契機に財務基盤の安定化を進め、今後の成長に向けた戦略的な展開を加速させてまいります。

こうした環境の中、当社グループは収益構造の最適化を継続的に進めております。国内においては、事業ポートフォリオの見直しを含む経営資源の適正化を進め、コストコントロールを徹底するとともに、収益力の強化を図りました。今後も、国内外における収益性の改善に向けた施策を継続し、持続的な成長を実現するための経営基盤の強化に取り組んでまいります。

2025年以降は、これらの取り組みに加え、当連結会計年度に開始した新規事業の本格展開、新製品の市場投入、及び米国市場における新たな顧客基盤の確立を推進し、売上高の堅調な成長を見込んでおります。引き続き、事業の拡大と収益の向上に向けた施策を着実に進めてまいります。

 また、テレワークの定着及びリモートを活用したコミュニケーションDXによる生産性・生活の質の向上の実現に向けて、当連結会計年度において以下の項目を実施いたしました。

(ⅰ)Web会議ツールの継続的提供と市場拡大への貢献

 緊急事態宣言下における必須ツールとしてWeb会議ツールを導入する企業が増加し、当社のWeb会議サービスである「V-CUBEミーティング」のほか、当社が代理店として販売する「Zoom」も堅調に推移しました。また、テレワークの定着によりサービス利用数や利用時間は依然としてコロナ禍以前よりも高水準で推移しております。Web会議ツールは今や企業活動に欠かせない社会インフラとなったため、今後も提供サービスの安定運用ができるよう機能開発・品質改善活動を継続してまいります。

(ⅱ)イベント配信サービス事業の拡大

 様々な業界ではイベント及びセミナー開催がオンラインとリアル回帰のハイブリット型が進む中、配信件数は前年度に比べ減少いたしました。しかしながら、オンラインイベントの需要は今後も堅調に推移していく見込みであることから、人材や機材等のキャパシティ拡大とともに、他社サービスとの差別化となる高付加価値のオンラインイベントを提供するための開発投資を積極的に実施いたしました。

 

(ⅲ)テレワークを支援するセキュアな個室ブース「テレキューブ」の提供

 企業においてテレワークが普及した一方でオフィスへ出社する機会も戻りつつある中で、在宅勤務者とのWeb会議を開催するための場所の需要が拡大した結果、企業におけるテレキューブの設置台数も大幅に増加いたしました。また、コロナ禍により自宅でも職場でもない「第三の場所」を求める傾向を踏まえ、前年度に引き続き駅やオフィスビルなど公共向けのテレキューブ設置台数を積極的に拡大いたしました。

 これらのミッション実現施策とともに、企業として持続的成長を実現していくための新規事業領域の創出や、株式会社としての使命たる企業価値最大化のための業績向上と株主還元も併せて実施いたしております。

 

 当連結会計年度の業績は以下のとおりです。

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

増減率
(%)

売上高

11,084,673

10,463,846

△620,827

△5.6

営業損失(△)

△156,098

△236,769

△80,671

経常損失(△)

△275,470

△320,861

△45,391

親会社株主に帰属する当期純損失(△)

△5,623,183

△1,417,278

4,205,905

 

 当連結会計年度において、売上高は前年同期比で5.6%減少いたしました。これは、主にプロフェッショナルワーク事業の譲渡の影響のほか、国内の製薬業界の講演会市場の縮小や大口顧客の案件減少の影響によるものです。また、国内事業のセールスミックスの変化や、北米地域の連結子会社TEN Holdings, Inc.における営業人員の増強及びIPO関連費用の計上により、営業損失は236,769千円(前年同期は156,098千円の営業損失)となりました。

 営業外損益においては、前連結会計年度の財務制限条項への抵触に起因して経営改善に向けた財務関連手数料として56,024千円計上したほか、支払利息63,143千円を計上いたしました。

 特別損益においては、投資有価証券売却益を11,037千円計上したほか、主に収益性の低下した一部のソフトウエアについて減損損失598,518千円を計上いたしました。

 

 セグメント別の業績は、以下のとおりです。

 なお、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおり、当連結会計年度より、当社グループ内の一部のセグメント区分の変更及び全社費用の配賦基準の変更を行っております。前連結会計年度のセグメント情報については、新しい方法により作成しており、以下の前年同期比については、新しい方法により組み替えた数値で比較しております。

 

Ⅰ.エンタープライズDX事業

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

増減率

(%)

売上高

4,337,866

4,058,584

△279,282

△6.4

セグメント利益

694,436

667,446

△26,990

△3.9

 

 エンタープライズDX事業は、主に企業や官公庁等を対象に、社内外のコミュニケーションにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するサービスを提供しております。

 具体的には、自社開発の汎用Web会議システム「V-CUBE ミーティング」の販売及び「Zoom」「Zoomphone」等のZoom Communications Inc.の提供するサービスのリセール販売を中心とした「ハイブリッド」事業、高品質な通話・配信・会話型AIの機能を簡単に実装できる「Agora」を中心とした「ビジネスグロース」事業、動画の制作・管理・配信が可能な企業向け動画配信プラットフォーム「Qumu」を中心とした「リスキリング」事業で構成されています。

 

 当連結会計年度のセグメント売上高は、前年同期比6.4%減の4,058,584千円となりました。これは主に、第2四半期連結会計期間にプロフェッショナルワーク事業を譲渡した影響によるものであります。

 また、販売価格の値上げや仕入価格の低減の施策が利益率の改善に寄与したこと等により、セグメント利益率は16.0%から16.4%に上昇したものの、セグメント利益は前年同期比3.9%減の667,446千円となりました。

 

Ⅱ.イベントDX事業

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

増減率

(%)

売上高

4,196,623

3,763,996

△432,627

△10.3

セグメント損失(△)

△507,938

△566,367

△58,429

 

 イベントDX事業は、様々な分野におけるイベント、セミナーのリモート化を支援する事業であります。

 具体的には、Webセミナー配信サービス「V-CUBE セミナー」や「EventIn」などのセミナー配信ソフトウエアを提供するほか、イベント配信に係る運用設計、当日の配信サポートや後日のイベントデータ解析などの運用支援サービスを提供しております。

 

 当連結会計年度では、国内の製薬業界の講演会市場の縮小は底打ちし、今後の注力領域であるハイブリッドイベントが成長したものの、大口顧客の案件減少の影響により、セグメント売上高は前年同期比10.3%減の3,763,996千円となりました。

 また、米国の連結子会社TEN Holdings, Inc.における営業人員の増加及びIPO関連費用の計上により収益性が低下したことから、セグメント損失は566,367千円(前年同期は507,938千円のセグメント損失)となりました。

 

 

Ⅲ.サードプレイスDX事業

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

増減率

(%)

売上高

2,550,184

2,641,265

91,081

3.6

セグメント利益

764,703

746,632

△18,071

△2.4

 

 サードプレイスDX事業は、自宅や職場とは異なるサードプレイス(第3の場所)の提供や運用支援を行うことで、昨今日本に浸透しつつあるテレワークを1つのワークスタイルとして定着させることを目的とする事業であります。

 具体的には、企業及び公共空間への「テレキューブ」の提供、公共空間におけるワークブースの管理運営システムの開発、「テレキューブ」において提供する関連サービスの開発を行っております。

 

 当連結会計年度では、セグメント売上高は前年同期比3.6%増の2,641,265千円となりました。これは、主に企業向けの防音型個室ブースの多様な販売モデルを通じた提供が堅調に推移したことによるものであります。

 また、セグメント利益は前年同期比2.4%減の746,632千円となりました。これは、多様な販売モデルを提供したことによるセールスミックスが変化したためであります。

 

② 財政状態の状況

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

資産

12,329,168

10,481,052

△1,848,116

負債

11,583,111

10,457,387

△1,125,724

純資産

746,056

23,664

△722,392

 

a.資産

 当連結会計年度末において、資産残高は前期末比1,848,116千円減の10,481,052千円となりました。これは主に、ソフトウエアの減損損失を計上したことによる無形固定資産残高の減少のほか、主に米国の連結子会社TEN Holdings, Inc.の取得資金のローンの返済等により現金及び預金が減少したことによるものであります。

 

b.負債

 負債残高は前期末比1,125,724千円減の10,457,387千円となりました。これは主に、米国の連結子会社TEN Holdings, Inc.の取得資金のローンの返済等により有利子負債の約定弁済が行われたことによるものであります。

 

c.純資産

 純資産残高は前期末比722,392千円減の23,664千円となりました。これは主に、2024年3月22日付及び2024年6月13日付で第三者割当増資の払込みを受けた一方、親会社株主に帰属する当期純損失1,417,278千円の計上により利益剰余金が減少したこと、欠損填補を目的とした減資により、資本金及び資本剰余金が1,587,695千円減少し、利益剰余金が652,956千円増加したこと等によるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

990,958

815,786

△175,172

投資活動によるキャッシュ・フロー

△1,916,914

△473,127

1,443,787

財務活動によるキャッシュ・フロー

562,404

△759,595

△1,321,999

現金及び現金同等物の当期末残高

1,389,327

1,006,735

△382,592

 

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において営業活動により得られた資金は815,786千円となりました。これは主に、非資金項目である減価償却費及び減損損失の計上による増加があった一方で、税金等調整前当期純損失の計上によって減少となったことによるものであります。

 

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において投資活動の結果支出した資金は473,127千円となりました。これは主に、プロフェッショナルワーク事業の売却により661,384千円の収入があった一方、事業の選択と集中による開発投資の適正化の推進により前連結会計年度から大幅に削減したものの無形固定資産の取得に1,129,202千円支出したことによるものであります。

 

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において財務活動の結果支出した資金は759,595千円となりました。これは主に、資本増強のための株式の発行による収入434,236千円があった一方、米国の連結子会社TEN Holdings, Inc.の取得資金のローンの返済が開始されたこと等、有利子負債の削減を進めたことによるものであります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの主な資金需要は、当社サービスの新規開発や機能拡充のための開発投資、イベント配信サービス(オンラインセミナー配信サービス)に使用する配信機材の調達、テレキューブを中心とするハードウェアの仕入調達であります。

 開発投資についてはソフトウエア償却額と同程度の水準を目安とすることにより財務健全性を維持することとしております。また、配信機材やハードウェアは自己資金またはリースによる調達を行っておりますが、特に配信機材の調達については回収期間や機材の陳腐化を総合的に判断して、リースの期間を決定しております。

 また、得られたフリーキャッシュ・フローについては、上述の開発投資やイベント配信ビジネスへの投資のほか、配当性向20%を目安とし、中長期的には30%を想定した株主還元を行ってまいります。なお、株価が割安と判断された場合は手許資金及び会社法上の分配可能額を勘案しながら積極的に自社株買いを実施してまいります。
 

 

 なお、キャッシュ・フロー関連指標は以下のとおりです。

 

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2020年12月期

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

2024年12月期

自己資本比率(%)

37.8

33.1

34.9

5.0

△1.3

時価ベースの

自己資本比率(%)

738.8

171.5

104.7

64.2

48.0

キャッシュ・フロー対

有利子負債比率(年)

1.8

3.3

4.1

8.6

9.1

インタレスト・

カバレッジ・レシオ(倍)

88.8

58.5

40.6

21.7

13.0

(注)1.各指標の計算方法は以下のとおりであります。

自己資本比率           :自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率     :株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー/利払い

2.いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

3.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。

4.有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。

5.利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を利用しております。

 

⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は異なることがあります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績及び受注実績

 当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績及び受注状況の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

② 販売実績

 「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、判断したものであります。

 なお、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおり、当連結会計年度より、当社グループ内の一部のセグメント区分の変更及び全社費用の配賦基準の変更を行っております。前連結会計年度のセグメント情報については、新しい方法により作成しており、以下の前年同期比については、新しい方法により組み替えた数値で比較しております。

 

Ⅰ.エンタープライズDX事業

 エンタープライズDX事業ではハイブリッドワーク、ビジネスグロース、プロフェッショナルワーク、リスキリングの4つのカテゴリでサービス提供を行っております。各サービスの売上高推移は以下のとおりです。

サービス別売上高推移                                 (単位:千円)

種別

2023年

第1四半期

2023年

第2四半期

2023年

第3四半期

2023年

第4四半期

2024年

第1四半期

2024年

第2四半期

2024年

第3四半期

2024年

第4四半期

ハイブリッド

ワーク

438,869

416,834

427,611

472,357

469,269

413,889

446,500

516,844

ビジネス

グロース

294,036

269,076

267,227

248,427

267,492

251,837

273,165

273,528

プロフェッショナルワーク

179,949

124,570

83,081

241,024

164,278

144,133

リスキリング

225,170

207,983

228,493

213,152

212,551

208,154

219,653

197,287

合計

1,138,025

1,018,465

1,006,413

1,174,962

1,113,591

1,018,014

939,319

987,659

 

 当連結会計年度においては、官公庁や製造業を主な顧客とするプロフェッショナルワーク事業において売上高が前年同期比50.9%減の308,411千円となりました。第2四半期連結会計期間において、プロフェッショナルワーク事業はテクノホライゾン株式会社へ事業譲渡しております。

 また、主にシンガポール子会社で展開しているリスキリング事業についても前年同期比4.2%減の837,646千円となりました。

 Web会議システムが主力商材であるハイブリッドワーク事業については、世の中にテレワークが定着したことで需要が堅調に推移しており、前年同期比5.2%増の1,846,502千円となりました。ハイブリッドワーク事業については、世界的な企業によるサービス提供がなされる競争の激しい分野であることから、将来的には大きな成長は見込めず、横ばいで推移すると考えております。

 一方、映像組み込み型サービスの開発を容易にするSDKを主力商材とするビジネスグロース事業については、前年同期比1.2%減の1,066,023千円となりました。

 

Ⅱ.イベントDX事業

 イベントDX事業においては、その後、大規模配信案件や高付加価値案件の割合の上昇により配信1回当たりの平均単価は上昇したものの、年間配信回数は減少し、売上高は前連結会計年度より減少いたしました。

イベントDX事業の連結売上高推移                            (単位:千円)

種別

2023年

第1四半期

2023年

第2四半期

2023年

第3四半期

2023年

第4四半期

2024年

第1四半期

2024年

第2四半期

2024年

第3四半期

2024年

第4四半期

配信回数

1,578回

1,313回

1,018回

1,317回

1,149回

1,155回

931回

1,171回

平均単価

704

921

806

802

832

968

780

823

セグメント

売上高

1,110,695

1,209,218

820,924

1,055,784

955,890

1,117,927

726,614

963,563

 

 季節的変動については大きくはないものの、配信回数については第1四半期に増加し、第3四半期に減少、平均単価については株主総会開催が集中する第2四半期に増加するという傾向が見受けられます。当連結会計年度においては、大規模配信案件や高付加価値案件の割合が増加したために1配信あたりの単価は前年同期比で平均4万円程度増加したものの、一方で配信回数が3ヶ月平均1,100回前後(前年同期比約200回減)となったために、当連結会計年度における連結売上高は前年同期比10.3%減の3,763,996千円となりました。

 来期以降については、配信回数自体は本年度と同水準であるものの、法定の議事進行を要し失敗の許されない株主総会やクオリティの高いオンラインイベントを提供する高付加価値案件など、1配信当たり単価の高い案件の需要が増加すると予測されること、また米国においては当連結会計年度に生じた急激なリアル回帰が沈静化し、再びオンライン配信への揺り戻しが起きることが見込まれることから、当該事業については今後も緩やかに成長を続けていくものと考えております。

 

Ⅲ.サードプレイスDX事業

 サードプレイスDX事業においては、企業及び公共空間においてWeb会議に対応したセキュアな防音型個室ブースである「テレキューブ」の需要が根強く、当連結会計年度における販売実績台数は7,355台(前年同期比8.3%減)と前連結会計年度より減少したものの、累計設置台数は32,144台に拡大いたしました。

 主要駅やオフィスビルを中心とした公共空間に設置するテレキューブを販売する公共向けについては、Web会議の定着に伴い、公共空間における会議スペース需要が増加したことから設置箇所が拡大し、累計設置台数は前年同期比17.1%増の1,206台となりました。テレワークが定着した昨今の状況を鑑みれば、来期以降においても公共空間におけるセキュアなスペースに対する需要は高まっていくと考えられ、2025年12月期においても設置数は増加する見込みであります。

 企業向けテレキューブの販売形態については、テレキューブ本体を購入いただく「販売型」に加えて、契約期間中は月額定額料金で利用することが可能な「サブスクリプション型」の2つの形態で提供しております。「サブスクリプション型」は「販売型」に比べて初期導入コストが抑えられるメリットがあるため、より幅広い顧客層へのアプローチが可能であります。

 当連結会計年度における企業向けの販売実績台数は、前年同期比7.9%減の7,179台となり、累計設置台数は30,938台となりました。これは、企業オフィスへの出社と在宅勤務のハイブリッドな勤務形態が定着しつつあり、企業内においてのWeb会議に対応したセキュアな会議スペースの需要が一巡し、増加ペースが緩やかになったためであります。

 しかしながら、今後もこのような勤務形態が主流になると見込まれることから、企業向けテレキューブの需要は引き続き今後も堅調に推移していくものと考えております。

テレキューブ累計設置台数                                  (単位:台)

種別

2023年

第1四半期末

2023年

第2四半期末

2023年

第3四半期末

2023年期末

2024年

第1四半期末

2024年

第2四半期末

2024年

第3四半期末

2024年期末

公共向け

899

929

965

1,030

1,098

1,128

1,149

1,206

企業向け(販売型)

17,805

19,491

21,199

23,055

25,249

27,191

28,666

30,196

企業向け

(サブスクリプション型)

591

632

655

704

705

714

729

742

合計

19,295

21,052

22,819

24,789

27,052

29,033

30,544

32,144

 

(4)経営成績に重要な影響を与える要因について

 「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)事業譲渡契約

当社は、2024年5月10日付の取締役会において、エンタープライズDX事業の一部である緊急対策とフィールドワークの専門領域に特化したDX支援を行うプロフェッショナルワーク事業を、テクノホライゾン株式会社に譲渡することについて決議し、同日付で基本合意書を締結、2024年5月24日付で事業譲渡契約を締結し、2024年6月30日付で譲渡いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

(2)財務制限条項が付された借入金契約

主な借入先

株式会社三菱UFJ銀行

株式会社みずほ銀行

(アレンジャー株式会社三菱UFJ銀行)

契約形態

シンジケートローン契約

当初借入金額

3,649百万円

資金使途

TEN Events, Inc.(旧Xyvid, Inc.)の株式取得資金

借入期間

自 2023年11月30日

至 2028年11月30日

担保の有無

なし

保証の有無

なし

財務制限条項

あり(注)

(注)詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結貸借対照表関係)」に記載しております。

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度の研究開発費の総額は1,710千円であります。

 なお、セグメントごとの研究開発活動を示すと、以下のとおりであります。

(サードプレイスDX事業)

主として、防音型スマートワークブース「テレキューブ」に関わる研究開発であり、当連結会計年度の研究開発費は1,710千円であります。