第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、2030年に向けた「長期ビジョンCCC2030」において、サステナブルな長期視点での経営をおこなっていくための経営モデルとして「森林経営モデル」を掲げ、「自律協働社会」の実現に向けた自らの役割を「WORK & LIFE STYLE Company」と定め、「働く」「学ぶ・暮らす」の領域で、豊かな生き方を創造する企業となるべく取り組んでおります。

これまで当社グループでは、圧倒的な顧客起点で少し先のワクワクする未来を提案し、ライブオフィスや直営店、Web コミュニティなどを活用して社員と顧客が具体的にワクワク・共感し、モノだけでなくコト視点でワクワクする新たな体験価値を生む、「ワクワク価値創出サイクル」を強みとして事業を発展させてまいりました。

これからは、これまで培ってきた当社の強みに各事業のナレッジを掛け合わせ、これまで以上に各事業が一体となって事業間シナジーを生み出し、既存事業の成長と領域拡張を進めることで、様々な顧客ニーズに応えながら持続的に成長する売上高5,000億円規模の多様な事業の集合体(森林)へと変化することを目指してまいります。

2025年12月期からは、「長期ビジョンCCC2030」達成に向けた第4次中期経営計画「Unite for Growth 2027」を推進し、既存事業の成長と領域拡張に向けた取り組みを進めてまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 2027年度を最終年度とする第4次中期経営計画の目標数値として、売上高4,300億円、海外売上高比率20%、EBITDA430億円、自己資本当期純利益率(ROE)9%以上の達成を目指します。

(単位:億円)

 

2024年12月期

2027年12月期

実績

目標

2024年12月期比

主要財務目標

売上高

3,382

4,300

+27.1%

海外売上高比率

13%

20%

+7pt

EBITDA

(率)

309

(9.2%)

430

(10%)

+38.8%

(+0.8pt)

ROE

8.5%

9%~

+0.5pt~

参考

営業利益

(率)

220

(6.5%)

約300

(約7%)

+36.2%

(+0.5pt)

 (注)EBITDA は、営業利益+減価償却費+のれん償却額+その他償却額で算出

 

(3)経営環境

 当社グループの経営環境については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績」をご参照ください。

 

(4)中長期的な会社の経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループでは、「長期ビジョンCCC2030」の実現に向けた第4次中期経営計画「Unite for Growth 2027」において、これまで培ってきた当社の強みに各事業のナレッジを掛け合わせ、これまで以上に各事業が一体となって事業間シナジーを生み出し、既存事業の成長と領域拡張に向けた取り組みを進めてまいります。

 

・経営戦略

 第4次中期経営計画「Unite for Growth 2027」の概要は下記のとおりです。

①キャッシュ・フローを重視したフレームワーク

 中長期的な利益成長と企業価値向上に向け、キャッシュ・フロー(≒EBITDA)を重視したフレームワークを設定いたしました。本フレームワークと「森林経営モデル」に基づき、2030年アジアNo.1、長期的なグローバル No.1を目指すとともに、企業価値の最大化を図ってまいります。

②体験価値拡張戦略

 「ワクワク価値創出サイクル」の強みを活かし、体験価値拡張戦略を実行してまいります。戦略と規律ある投資を実行し、日本・海外における既存事業強化による成長とM&Aによるインオーガニック成長を通じた、EBITDA の持続的成長を追求いたします。

 

③経営基盤の強化

 人材やナレッジの充実等により事業成長の再現性を高める経営基盤を強化することで、リスク(資本コスト)を低減するとともに中長期的な観点でも持続的成長を目指してまいります。

 

・事業戦略

 第4次中期経営計画「Unite for Growth 2027」における各事業の戦略の概要は下記のとおりです。

①ファニチャー事業

 働き方の変化に伴う旺盛なオフィス需要を獲得するとともに、Kokuyo Hong Kong Limitedのリソースや日本での強みである空間デザイン力を活用することで海外事業の成長を推進し、コクヨ全社の業績を牽引することを目指しております。

②ビジネスサプライ流通事業

 プラットフォーム型購買管理サービスであるべんりねっとを基盤として、テクノロジーの活用により顧客パーソナライズで最適化された購買体験の実現を目指しております。

③ステーショナリー事業

 提供価値の中心を「まなびかた」に据えたCampusブランドにより、グローバルで、前向きなまなびのチャレンジをする機運を盛り上げる事業への転換を目指しております。

④インテリアリテール事業

 既存事業において接客力と提案力を活用した店舗及びECでの成長を推進するとともに、パートナーとの連携強化による法人事業の領域拡張で事業ポートフォリオの変革を進め、持続的成長の実現を目指しております。

 

・財務戦略/資本政策

第4次中期経営計画「Unite for Growth 2027」における財務戦略及び資本政策のサマリーは下記のとおりです。

①バランスシートマネジメント

EBITDAの成長と資本効率を両立しつつ、2027年9%以上、2030年10%以上のROE目標の達成に向けて、政策保有株式のさらなる売却を含む非事業資産売却や資本構成の改善等を推進してまいります。

②キャピタルアロケーション

 第4次中期経営計画期間に創出するキャッシュ・フローと手元現金、非事業資産の売却を基に、成長戦略の実現に向けて、890億円(成長投資700億円、定常投資190億円)を投資しつつ、640億円(配当性向50%、自己株式取得350億円)の株主還元を実施いたします。

③株主還元

 株主還元方針を以下のとおりといたします。

配当については、原則として年間配当金(特別配当等を除きます。以下同じ。)が前年度の年間配当金を下回らない(いわゆる累進配当)こととし、第4次中期経営計画期間中の連結配当性向50%を目安として算出することを基本方針といたします。ただし、連結配当性向の適用に際し、一過性の損益については、その性質を勘案してこれを除外することがあります。

 また、第4次中期経営計画期間累計で総額350億円の自己株式取得を行うとともに、取得した自己株式については、発行済株式総数の2%を超える部分を原則として随時消却する方針です。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

 コクヨグループは、2030年に向けた「長期ビジョンCCC2030」において、「自律協働社会」の実現に向けた自らの役割を「WORK & LIFE STYLE Company」と定め、「働く」「学ぶ・暮らす」の領域で、豊かな生き方を創造する企業となることに取り組んでいます。

 「自律協働社会」は、自律した個人が互いを認めあって協働することで新しい価値が生まれてくる社会です。多様な視点を持った個が、同調ではなく、親密な関係の中で互いの意見を言い合い、相互に好影響を与えあえる関係の中で、創造性を高めあう。そんな社会を実現することができれば、数多ある社会課題も解決できると本気で考えています。「自らを高めつづける人が(自律)、仲間と高め合い価値を創出する(協働)社会」を実現することが、人と社会と地球のWell-Beingにつながる。これがコクヨの創出すべきソーシャルインパクトだと考えています。そのためにコクヨグループは、事業を通じて社会課題が解決され続ける自律協働社会を実現し、社会価値と経済価値の両立を目指します。

 

(2)戦略

 当社グループは、「長期ビジョンCCC2030」に向けて、重要事項(マテリアリティ)を2022年に特定しました。マテリアリティの特定にあたっては、当社グループが「積極的に解決すべき社会課題」と「実現したい社会像と会社像」から個別課題(リスクと機会)を抽出し、事業成長を実現する「経済性」と「社会性」の2軸で重要性評価を行った上で、より上位の課題にカテゴライズ・統合の上最終化しました。特定プロセスにおいては、全執行役・執行役員が参画し、また社外有識者からの意見を反映しております。

 各マテリアリティにはそれぞれ推進体制を構築し、長期目標としての2030年目標(施策とKPI)、中期目標としての2027年目標(施策とKPI)を設定しています。また、グループ目標とともに事業別の目標を設定し、事業活動を通じたサステナビリティの実現を図っております。

 

戦略テーマ

重点課題

アウトカム

2030年のありたい姿

社内外のWell-beingの向上

新しい働き方の提案

イノベーションを生み、多様な人と社会のWell-beingを向上させる

ライフベーストワーキングを社会に提案、浸透させ自分らしく生きる人を増やしている

ダイバーシティ&インクルージョン&イノベーション

社会のバリアをなくし、活き活きと働き学ぶ人を増やしている

森林経営モデルの実現による事業領域拡大

社会価値創出に向けたマネジメントシステム変革

全事業協働で環境/社会に貢献し、共感の輪を広げ社会課題解決を牽引する

コクヨの新規事業や既存事業が社会を巻き込み課題の解決を牽引している

コクヨ人材があらゆるところで活躍し社会をより良くしている

WORK&LIFEの基盤である地球を守るための活動

気候危機への対応

多くのパートナーと共に、サプライチェーン全体の活動を通じて社会の脱炭素化に貢献する

SBTに準拠した削減目標をパートナーと共に達成しCO2排出量の削減に貢献している

循環型社会への貢献

多くのパートナー、顧客と共に循環を生み出し「捨てない社会」をリードする

コクヨの循環参加者数が日本人口の16%を超え、社会の行動変化を生んでいる

自然共生社会への貢献

自然資本とバランスがとれた事業活動を行い健全な地球を守る

自然環境負荷とその改善に向けた活動を開示し、環境を損なわない意識を市場に形成している

 

 

(3)指標と目標

 指標と目標及び、2024年度の実績と主な取り組みは以下のとおりです。

 

戦略

テーマ

重点課題

2030年

チャレンジ目標

2027年

コミット目標

2024年

コミット目標

2024年度の

実績

2024年度の

主な取り組み

社内外のWell-beingの向上

新しい働き方の提案

多様な働き方の選択肢の挑戦数:27挑戦

・有給休暇取得率:100%

・女性管理職比率:16%

 


社員の可処分時間獲得に向けた価値観変革
・管理職/従業員の有給休暇取得率 :100%

・女性管理職比率 :12%

・有給休暇取得率:71%

・女性管理職比率:11%

・多様な社員の活躍を推進する各種制度の整備

※詳細は下記

(6)人的資本に関する取り組みに記載

ダイバーシティ&インクルージョン&イノベーション

インクルーシブデザインを経た 新シリーズ上市率:50%以上

・インクルーシブデザインを経た商品上市率:35%

・インクルーシブデザインを経た 新シリーズ上市率:20%以上

・26.6%

・インクルーシブデザインによる商品開発

森林経営モデルの実現による事業領域拡大

社会価値創出に向けたマネジメントシステム変革

社会価値と経済価値を両立している売上高:100%

・未来のヨコク実験数:30個

・未来ヨコクの実験数:30個(3次中計累計)

・サステナビリティに関する活動への参加人数 :100%

・ヨコクの実験数:11個

(3次中計累計33個)

・参加率:90.2%

・サステナビリティを学ぶ全社イベントの開催

社会課題解決に関わる人材:100%

・現業を社会課題解決へつなげていく社員:100%

WORK&LIFEの基盤である地球を守るための活動

気候危機への対応

SBTに準拠した削減目標設定と達成

・Scope1~2:2022年比35%削減

Scope3:

・12.5万tに相当するサプライヤーにSBT目標を設定させる(カテゴリ1の12.5%相当)

・2030年目標達成に向けたアクションプランができている

・CO2排出量の削減:2013年比国内 50%削減

・2013年比国内:38.9%削減

※2023年データ

・自社事業所/工場の再生可能エネルギーへの切り替え

・SBT認定の取得

※詳細は下記

(7)気候変動に関する取り組みに記載

CO2吸収:6,000t-CO2以上/年の吸収量に貢献する

 

 

 

戦略

テーマ

重点課題

2030年

チャレンジ目標

2027年

コミット目標

2024年

コミット目標

2024年度の

実績

2024年度の

主な取り組み

WORK&LIFEの基盤である地球を守るための活動

循環型社会への貢献

コクヨグループ(海外含む)が取り扱う循環型商品売上高:80%以上

・循環指針に基づく商品売上比率:40%

・循環指針に基づく新商品:100%

・100%

・循環指針に基づくものづくりの推進

・循環サービスの開発

廃棄物(事業所、施工現場、棚卸在庫)のリサイクル率:100%

・事業所廃棄物(デッドストック含む)リサイクル率:97%

・産業廃棄物のプラスチックリサイクル率:100%

・施工現場混合廃棄物発生率2023年度比:75%減

コクヨの循環指針に賛同するサプライヤー数

100%

・Bランク以上のサプライヤーからの調達先比率:75%以上

・主要サプライヤー(約400社)の評価・改善項目フィードバック 100%

・アンケート実施:566社

(内501社から回答がありフィードバック実施)

・サプライヤーアンケートと改善のためのコミュニケーションの実施

※詳細は下記

(8)持続可能なサプライチェーンの構築に記載

自然共生社会への貢献

事業活動における自然環境負荷可視化を実現し±0達成

・紙木調達基準をクリアする商品売上比率 :75%

・自然環境負荷の見える化:主要事業における見える化完了

・紙/木材調達基準の運用開始

・森林/ヨシ原保全活動の実施

森林保全(毎年150ha程度の間伐)

・自然環境保全活動 :3件

ヨシ原保全(毎年1.5ha程度のヨシ刈り)

 ※目標①に対する実績はコクヨ㈱、㈱カウネット、コクヨマーケティング㈱、コクヨサプライロジスティクス㈱、

  ㈱コクヨロジテムを対象としています。

 ※目標④に対する実績は2023年度のデータを記載しています。

 ※②③⑤⑥については範囲が限定されているため、今後国内外連結子会社に範囲を拡大していきます。

 

(4)ガバナンス

 当社グループでは、サステナビリティ全体の戦略策定や、マテリアリティの進捗管理を行うサステナブル経営会議を設置しています。同会議は、執行役員であるCSV本部長を議長、サステナビリティ推進室を事務局とし、当社の代表執行役社長を含む全執行役及び執行役員をメンバーとしています。また、サステナブル経営会議の下部組織として、環境部会、Well-being部会、調達部会、森林経営部会を設置しています。ここで審議・検討されたサステナビリティに係るリスクと機会、戦略、目標値などは、取締役会に答申・報告を行うとともに、経営上重要な事項については取締役会にて意思決定を行っています。

 

■サステナブル経営体制

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■会議体の構成員及び役割

会議体

議長/部会長

構成員

機能/役割又はマテリアリティ

開催回数

サステナブル

経営会議

執行役員

梅田直孝

代表執行役社長/執行役/執行役員

・マテリアリティの特定

・マテリアリティの優先順位付け、

  実行計画の検討や予算配分を審議

・取締役会への定期報告

8回

環境部会

執行役員

福井正浩

コーポレート部門/各事業部門/事業会社メンバー

・ISO14001の運用

・気候危機への対応

・循環型社会への貢献

・自然共生社会への貢献

4回

調達部会

執行役員

森田耕司

同上

・サプライチェーンマネジメント

・紙・木材調達基準の運用

12回

Well-being部会

執行役員

越川康成

同上

・社内外のWell-beingの向上

4回

森林経営部会

執行役

内藤俊夫

同上

・社会価値創出に向けたマネジメントシステム変革

2回

 

 

(5)リスク管理

 当社グループが事業活動を行う上での様々なリスクを網羅的に把握・評価し、経営への影響を適切にコントロールするため、代表執行役社長の諮問機関としてリスク委員会を設置し、全社的な立場から審議しています。

 サステナビリティに関するリスク・機会に関しては、サステナブル経営会議において管理しています。当社グループにとっての重要なESG課題やリスクと機会に関するテーマをサステナビリティ部門が部会や各事業部門のサステナビリティ担当とともに抽出し、同会議にて審議されます。特に、購買調達、人権及び環境への配慮、人材及び労務は事業上の重要リスクとしてとらえており、リスク委員会と連携し適切に解決に努めております。

 

(6)人的資本に関する取り組み

 当社グループは、「ワクワクする未来のワークとライフをヨコクする。」をパーパスとし、誰もが活き活きと働き、暮らし、つながりあう「自律協働社会」の実現を目指しています。そのために、社会課題に真摯に向き合いながら、「働く」「学ぶ・暮らす」の領域で各事業のナレッジを掛け合わせてシナジーを生み、事業領域を拡大する「森林経営モデル」を推進していきます。

 事業領域を拡張する新しい価値の創出には、多様な人材による創造性豊かな「ヨコク」が鍵となります。ヨコクとは、よりよい未来をつくるための意志や挑戦と定義付けています。当社の価値創出の強みは、顧客が抱える様々な課題に誠実に向き合い、その解決のために従業員一人ひとりが意志・ヨコクを持ち、創造的なアプローチをするところに源泉があります。この強みを最大化させるため、従業員一人ひとりがヨコクを発信しやすい風通しの良い風土の醸成や、ヨコクに共感した多様な人材が協働する「結い合う」環境づくりに注力しています。また、一人ひとりに光を当てた育成を行い、従業員のユニークな個性や強みの発揮を最大化するとともに、ヨコクを実現まで後押しするリーダーを育成します。

 

 意志・ヨコクを持つ多様な人材が挑戦しやすい組織文化の構築と、成長の機会を提供し個々人の能力発揮を促していくことを人的資本経営の根幹に据えて、以下の取り組みを実行しています。

 

■挑戦しやすい組織文化の構築

 

ヨコクを後押しする風土醸成

 

当社には、社会課題を解決したいという意志や想いを発信することで、共感する仲間が集まり、ヨコクの実現に向けて協働・応援する組織文化があります。このような「結い合う」関係性の質をさらに高めていくために、次のような施策を実施しています。

 

・社内の挑戦を共有する「全社ヨコク朝礼」

・挑戦する人を称えあう社内表彰制度「THE AWARDS」

・自身のヨコクを周囲と共有する「ヨコクワークショップ」

 

また、部門を超えたコミュニケーションの活性化によって、社員同士の自発的な活動が増え、挑戦しやすい風土醸成につながっています。

 

・社員が互いに知や興味を共有する「マナビゼミ」「マナビシェア」

・社員が企画運営する交流イベント「サマーフェス」「カルチャースナック

 

 

 

■一人ひとりに光を当てた成長機会

長期ビジョンや戦略の実現に必要な人材の活躍を促すために、2023年に「人材マネジメントポリシー」を策定しました。人材マネジメントポリシーとは、当社が人と向き合う上で大切にすべき考え方をまとめたものです。「人材を社会の財産と捉え、一人ひとりの可能性に伴走しながら、事業成長と社会に貢献できる人材を輩出する」ことを経営陣・社員全員の共通認識として、一人ひとりの価値を引き出し、社員の挑戦を後押しする機会や環境を整えています。

 

 

一人ひとりに光を当て活躍できる機会を提供する

 

自ら手をあげ、業務時間の20%程度を活用して他組織の業務に参画できる「20%チャレンジ(社内複業)」には、若手からミドルシニア層まで幅広い社員が参加しています。2020年の第1期スタート以降、累計で370人以上が参画し、所属事業や組織をまたいだテーマに挑戦しています。

 

キャリア形成の重要な施策として、2024年からは人材流動化の取り組みを開始しました。本人のキャリア志向を尊重した上で、異動はまだ見ぬ自分の可能性を発見し成長するチャンスと捉え、全社視点で部門や国を超えた多様な活躍の機会を提供していきます。

 

 

能力・意欲がある社員の成長スピードを最大化させる

 

2024年に人材育成機関「コクヨアカデミア」を設立しました。コクヨアカデミアでは、会社や個人の成長の源泉となるヨコクを描き、実現に向けたリーダーシップやクリエイティビティを磨くことを促進していきます。社員の成長を後押しする研修として以下のようなプログラムを実施しています。

 

・顧客起点で未充足ニーズを捉えて課題解決を行う「コクヨマーケティング大学」

・未来の事業環境を考察し、コクヨの成長戦略を経営答申する「コクヨマーケティング大学院」

・グローバル人材を育成する「グローバルキャリアワークショップ」

・AIのナレッジを獲得し、AI活用人材になる事を目指す「文系AI塾」

 

若手社員を対象としたキャリア研修「Kokuyo Career Dock」にも注力しています。本研修では若手社員向けの「自己成長プログラム」と、上司向けの「部下育成プログラム」を同時期に進行し、成長やチャレンジについて双方が同じ認識を持つことを目指します。研修には経営層も出席し、若手社員の成長と上司による育成を後押ししています。

 

また、人事制度では、年齢や経験年数にとらわれず早期にステップアップできる仕組みを運用しています。

 

 

チームで価値を創造するリーダーを育成する

 

当社では育成を上司任せにするのではなく、周囲の役職者や他部門の上司・人事も一体となって育成に向き合っています。

 

人材育成会議では、社員一人ひとりのキャリアや成長機会の提供について役職者が複眼で討議しています。女性リーダー育成やビジネスリーダー育成等のテーマを設定し、仕事のアサインや異動を議論し、本人のキャリアの実現とともに戦略的な人材育成につなげています。

 

また、基幹職全員に360度アセスメントを実施し、自身のリーダーシップの内省と、さらなる強みの発揮を目指したワークショップを実施しています。

 

 

多様で豊かなキャリア形成を支援する

 

育児や介護によるキャリアの中断をボトルネックにしないために、ワークルールの改正や両立支援を行っています。

・フレックス勤務者における中抜け勤務ルールの明確化

・子の看護休暇の対象を小6まで拡大

・介護休暇の取得要件の緩和

・ベビーシッターの利用補助

・子連れ出勤トライアル/社内学童保育の実施

 

あわせて産休育休者の評価運用を見直し、評価に空白期間が生じることを解消しました。継続的に能力の蓄積度の把握とフィードバックを行い、本人の成長につなげています。

 

また、ミドルシニアのキャリア自律として、これまで原則禁止としていた副業を一部解禁しました。社員が自身のキャリアや成長について自律的に考え、実践できる仕組みを整えることで、人材の価値の向上を進めています。

 

 

当社では、多様な人材の活躍を測定する指標として、マテリアリティ目標の1つに「2027年 女性管理職比率16%」を設定しています。一人ひとりの人材の価値を引き出す取り組みを通じて多様な人材の活躍が進み、女性管理職比率は2021年度7.8%から、2024年度12.0%(注1)に上昇しました。

 

(注1)

コクヨ㈱、㈱カウネット、コクヨマーケティング㈱、コクヨサプライロジスティクス㈱、㈱コクヨロジテム、コクヨアンドパートナーズ㈱、㈱アクタスを対象としています。

 

(7)気候変動に関する取り組み

 当社グループは、広いサプライチェーンを持つ製造・小売を営む企業の責務として、世界共通の課題である気候変動への取り組みを推進しています。グローバルでカーボンニュートラルに向けた取り組みが強化される中、当社グループとして気候変動のリスクと機会を適切に把握し、対応を進める必要があると考えています。

 当社グループは商品ラインナップが多く、製品や調達先も多岐にわたるため、自社のみで温室効果ガスの排出削減に取り組んでも大きな効果を得ることはできません。そのため、自社の排出削減だけでなく、サプライチェーンのパートナーの皆様と協働し、カーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでまいります。

 

■SBT認定の取得

 2050年までのカーボンニュートラル実現に向けて、2024年8月に当社グループ(コクヨ及び連結会社)が掲げる温室効果ガス排出削減目標が、下記の目標においてSBTi(Science Based Targetsイニシアチブ)による短期目標の認定を取得しました。

● Scope1,2の温室効果ガス排出量を2022年から2030年までに総量で42%削減する

● Scope3の“購入した製品・サービス”による温室効果ガス排出量を2022年から2030年までに総量で25%削減する

● 2028年までに“購入した製品・サービス”による温室効果ガス排出量の12.5%に相当するサプライヤーにSBT目標を設定させる

 

 今後は、温室効果ガスの排出削減対象をScope3(サプライチェーン上の排出)まで拡大し、サプライヤーの皆様との連携を通じて、社会の脱炭素化へ貢献してまいります。

 

■TCFD提言に賛同

 コクヨグループでは、2022年5月にTCFD提言に賛同を表明しました。シナリオ分析の手法を用い、気候変動に関連するリスク・機会の特定、財務への影響分析、及びリスク・機会への対応策の検討を行っております。分析の時間軸については、長期ビジョンを踏まえ、2030年における社会やステークホルダーの変化を想定しております。

 

< ワークスタイル領域 >

シナリオ

ファニチャー事業

1.5℃

シナリオ

脱炭素に向けた政策は日本国内外において強化され、顧客やサプライヤー、社会一般における脱炭素や廃棄物削減に対する取り組みが進展します。財務影響として、リスクの面ではCO2排出コスト増、設備投資等によるコスト増、原材料コストの増加、顧客ニーズの変化による売上高の減少といった影響が想定される一方で、顧客のニーズや行動の変化に対応した新製品・サービスの開発や、低排出型の事業開発によるドメイン拡張の機会も生じます。かかる状況下、新製品・サービスや新事業開発といった機会を活用する取り組みも実施していくことで、顧客や社会の変化に対応した価値創造を実現していきます。

4℃

シナリオ

世界的な消費活動の拡大や気候変動の影響により、木材調達価格の高騰や、災害等による製造活動・輸送への影響への懸念があり、財務影響としては調達価格の大幅の高騰、木製家具製品の価格上昇に伴う需要の減退、物理的リスクの顕在化による機会損失、事業停止、対応コストの発生が想定されます。かかる状況下、自社のレジリエンス向上に取り組むほか、顧客オフィスにおける災害対策や、働き方の変化等、市場のトレンド変化を機会と捉え、新たなソリューションの展開を行うことで価値創造を実現していきます。

 

 

シナリオ

ビジネスサプライ流通事業

1.5℃

シナリオ

脱炭素社会への移行が進んでいく中で、顧客や輸送業者、社会一般においても脱炭素や廃棄物削減に対する取り組みが進展します。財務影響として、リスクの面では炭素税によるコスト増、輸送コストの増加、顧客ニーズの変化による売上高の減少といった影響が想定される一方で、顧客のニーズの変化に対応した製品ラインナップの変更等により売上高を増加させる機会も生じます。かかる状況下、商品ラインナップ変更やデジタル施策の拡大など、機会を活用するための活動を行っていくことで気候変動に対するレジリエンスの向上、及び顧客や社会の変化に対応した価値創造を実現します。

4℃

シナリオ

世界的な消費活動の拡大や気候変動の影響により、製品調達価格の高騰や、物理的リスクの顕在化により、輸送を始めとするサプライチェーンの途絶が起こり、ビジネスモデル上重大な問題が発生する可能性があり、財務影響としては調達価格の上昇、輸送コストの上昇、物理的リスクによる機会損失、対策コストの発生等が想定されます。かかる状況下、製品調達の見直しや、デジタル施策の拡大などにより、事業のレジリエンスを高めていきます。

 

 

< ライフスタイル領域 >

シナリオ

ステーショナリー事業

1.5℃

シナリオ

日本・海外ともに脱炭素社会への移行が進む中で、文具をはじめとする消耗品の消費に関する考え方や、働き方・学び方の変化が生じ、消費行動や市場が変化することが想定され、財務影響としてリスクの面ではCO2排出コスト増、原材料コスト増加、追加的な投資の発生、及びデジタル化の進展による文具市場の縮小等が想定される一方、新たなトレンドに応じた価値提案や商品・サービス展開を日本国内・海外市場に対して行うことで、価値創造機会を実現していきます。

4℃

シナリオ

世界的な消費活動の拡大によるコスト圧力や、気候変動からの物理的なインパクトが懸念され、財務影響としてリスクの面では資源・エネルギー価格の高騰、物理的リスクの顕在化による機会損失、対策コストの発生が想定される一方、海外市場においては文具へのニーズが拡大することが想定され、レジリエンスを高める取り組みを促進し、グローバルなサプライチェーンの実現、市場展開を進めることで機会を捉えていきます。

 

シナリオ

インテリアリテール事業

1.5℃

シナリオ

脱炭素社会への移行が進んでいく中で、生産から廃棄までの家具のライフサイクルを通じてのCO2排出削減、環境配慮の実現が求められると想定され、財務影響としては、CO2排出コスト増、原材料コスト増加、追加的な投資の発生、及び環境への配慮からの家具購入頻度の低下、レンタル・サブスクとの競合などが想定される一方、環境の変化を機会と捉え、カーボンフットプリント表示への対応や、修理のような家具の廃棄を減らすサービスの展開等、環境への配慮とビジネスの両立できる取り組みを推進していきます。

4℃

シナリオ

世界的な消費活動の拡大や気候変動の影響により、木製品をはじめとする製品調達価格へのリスクや、災害等によるサプライチェーンや店舗活動への影響への懸念があり、財務影響としては調達価格の大幅な高騰、木製家具製品の価格上昇に伴う需要の減退、物理的リスクの顕在化による機会損失、対応コストの発生が想定されますが、製品調達の見直しやECサービスの展開等により、レジリエンスを高め、安定的な価値提供を行っていきます。

 

(8)持続可能なサプライチェーンの構築

 当社グループの事業は、紙製品及び木材等の天然資源に依存しており、生態系及び生物多様性の保全・強化、並びにサプライチェーンに関わる全てのステークホルダーの安全確保及び人権尊重が、事業の持続可能性に直結するものと認識しております。当社グループは、社会的責任を遂行し、持続的な社会の発展に貢献するため、取引先との相互理解及び信頼関係の構築を通じて、共創的なパートナーシップの確立に努めてまいります。

 

 「コクヨグループサステナブル調達方針」及び「コクヨグループサステナブル調達ガイドライン」に基づいて、以下の取り組みを進めております。

 ■主な取組内容

 ・取引先への「コクヨグループサステナブル調達方針」及び「コクヨグループサステナブル調達ガイドライン」の周知・賛同のための同意書の取得(同意書の取得対象社数:1,104社、2025年2月現在の取得社数:1,040社、取得率94.2%)

 ・サプライヤーへサステナブルな取り組み状況を確認するためのアンケートの実施(アンケートの実施対象社数:566社、回答社数:501社、回答率:88.5%)

 ・アンケート結果によりサプライヤーをA~Dの4段階でランク付け、Bランク以上のサプライヤーからの調達比率目標を設定(2027年:75%以上)

 ・2024年4月に定めた「コクヨグループ紙・木材調達基準」に関する基準をクリアする商品売上比率目標を設定(2027年:75%以上)

3【事業等のリスク】

 当社グループは、グループ経営を取り巻く様々なリスクを網羅的に把握・評価し、経営への影響を適切にコントロール(回避・低減・移転・受容)するリスクマネジメントの推進のため、代表執行役社長の諮問機関として「リスク委員会」を設置し、リスクマネジメントに関わるテーマについて全社的な立場から審議し、代表執行役社長に答申するとともに重要性や緊急性の高いリスクが認められた場合には、取締役会又は監査委員会に報告することとしております。

 また、グループ全体のリスクマネジメント体制を強化するために、「リスクマネジメント本部」によるグループ全体のインシデント情報の集約化や発生事象別のリスクレベルに応じた適切な対応方針の策定と実行体制の構築を図っております。

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 また、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 外部環境に関連するリスク

1)経済状況

 当社グループの売上は概ね日本国内向けであり、日本国内の景気変動に伴う企業収益や設備投資、公共投資の動向、また国内人口動態の変化が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの販売生産、仕入の一部はアジアをはじめとした世界各地で行っておりますが、当社の主要な海外市場のひとつである中国では、景気の停滞感が続いており、今後の先行きに不透明感があることに加え、米国の政策の影響等、各地域の政治経済・社会情勢の変化や各種規制、ESGを巡る潮流等の影響が増大した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これに対し当社グループは、持続的成長に向けて事業領域を拡大していく方針であり、国内においては「モノからコト」への事業モデルの変革に取り組むことで、既存事業の領域拡大や新規事業の創出を図っております。

 また、海外においては各国各地域のカントリーリスクを注視しており、海外展開のさらなる拡大に伴い、各現地法人と国内関連部門が連携してそれぞれの国、地域の政治、経済情勢等を的確に把握し、適切に対応する体制の一層の強化を図ってまいります。

 

2)市場環境

 当社グループは、顧客にとって付加価値の高い商品開発や提案活動を進めておりますが、事業を展開する市場は景気変動や顧客の購買チャネルの変化等の影響を受けており、分散化やデジタル化の潮流の中にあって、競争はますます激しさを増していることから、当社グループの優位性の維持又は獲得が滞り、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これに対し、当社グループは、市場環境の変化に対応した事業体制の整備を図ってまいります。

 また、当社グループにおいては、原材料の調達から開発、生産、販売、物流、納品施工までを含めたサプライチェーン全体の最適化が競争力確保のための重要な要素となっておりますが、近年特にドライバー不足による輸送能力の低下や働き手不足による工期の遅延が懸念されております。この影響により当社サービスの品質が低下し、競争力の低下を招いた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これに対し当社グループは、ますます激化する競争環境に係るリスクをしっかりと認識する一方で、それらのリスクをむしろチャンスと捉え、前例に固執することなく常に顧客満足を高めながら、より長期目線での経営を推進することによって、さらなる成長に向けて取り組んでおります。

 また、物流業界や建設業界における働き方改革の推進等の社会課題への解決に向けては、事業の持続性の確保においても避けて通れない課題として認識し、物流現場においては、商品のトラックへのパレット積み化やドライバーの入退場時間管理システムの導入、建設現場においては、現場状況写真や図面等を現場とオフィス間でリアルに共有可能なツールの導入等の業務DX化により、負荷の軽減と事業の維持・成長の両立を図っております。

 

3)有価証券の時価変動

 当社グループは、投資有価証券を保有しております。金融市場等の変動により投資有価証券の時価が悪化し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これに対し当社グループは、投資有価証券の四半期ごとの時価評価以外に、定期的な検証を行い、売却や購入の検討をしております。特に政策保有株式については、個別銘柄ごとに定量的及び定性的な観点を踏まえた検証結果を取締役会に報告し、保有の意義が乏しいと判断される銘柄については、引き続き売却又は縮減を検討しております。

(2) 事業運営に関連するリスク

 当社グループを取り巻く事業環境は急激に変化してきており、また、当社グループでは持続的な成長を目指して、既存事業強化と新規事業への参入による成長と、M&Aによるインオーガニックな成長を図っておりますが、このような事業環境の変化を受けて、当初想定していなかった組織内外の環境の変化や非定型的な取引等が生じる場合があります。既存の内部統制がこのような状況には、必ずしも対応しない場合があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これに対し、当社グループでは内部統制強化の一環として、業務プロセスの可視化、標準化及び適正化を図ることで、業務の有効性と効率化を高めてまいります。

 

1)法規制の遵守

 当社グループは、商品の品質、取引関連、環境、労務、安全衛生、会計基準や税務など様々な法規制の適用を受けており、これら法規制等への違反が発見又は認定された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 販売部門は業績目標達成のプレッシャーを感じる可能性があるほか、一部の事業においては、顧客ニーズにあわせて納入物品や施工内容が随時変更され、売上計上時期や金額、外部パートナーへの発注内容や金額が当初契約時から変更となることが多いことから、意図的な売上計上の前倒しや架空売上の計上、不正取引がなされるリスクが存在します。また、当社グループは製造委託、工事発注を含め外部パートナーとの取引が多数ありますが、特定の人物が同一業務を長期間担当する場合には、外部パートナーとの取引関係が歪められ、不正取引を誘発するリスクがあります。なお、当社の連結子会社でインド上場会社であるコクヨカムリンリミテッドの一工場において、会計上計上されている半製品在庫金額が過大となっている事実が判明しています。

 また、現行の法規制の変更や新たな法規制、今後の事業のグローバル化、事業領域の拡大により、遵守すべき法規制が追加された場合には、その対応のための投資や費用が必要になるなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これに対し当社グループは、法令及び社内規則の遵守はもちろん、高い倫理観を持って誠実に行動することをコクヨグループ行動基準において明確にしており、誠実性に対する経営層からの継続的なメッセージ発信や動画視聴をはじめとする教育・研修による啓発活動及び自身の行動の振り返りを通じ、その遵守に努めております。また、法規制の改廃制定などに対して、その対応及び遵守状況の定期的な確認により、法令遵守を図っております。また、談合等の反競争的行為、贈賄の防止や反社会的勢力の排除等については、国内・海外子会社に対して定期的に教育・啓発活動を行っております。コンプライアンス推進体制としては、代表執行役社長の諮問機関である「リスク委員会」を設置して全社的な推進状況の把握を行っております。また、「J-SOX委員会」により財務報告に係る内部統制の評価及びモニタリングを行っております。

 

2)品質保証

 当社グループの製品において、想定が難しい多様な環境での製品の使用などにより、リコールが発生する可能性があります。その結果、当社グループの経営成績及び財政状態、さらに当社グループの社会的評価に悪影響を及ぼす可能性があります。

 これに対し当社グループは国際規格であるISO9001に基づいた品質マネジメントシステムを構築し、それに従った製品及びサービスの設計・開発や製造及びサービス提供の管理を行い、品質チェック体制の整備を図り、品質監査を行うなど、製品・サービスの企画・開発からアフターサービスに至るまでバリューチェーン全体で品質の向上に努めております。リコールが発生した場合のリコール費用及び製造物責任賠償については、保険に加入しておりますが、損失額を全て賄える保証はなく、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

3)購買調達及び環境への配慮

 当社グループが主に使用する原材料は原紙、樹脂、鋼材等であり、これらは国内外の調達先から購入しております。当社が調達先から購入する原材料や仕入商品の価格は、世界的な需給動向や為替変動による影響を受けており、需給動向や為替レートの変動が長期に及んだ場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、ESG観点に基づく社会的要請により、サプライチェーン上の人権状況のチェックや環境への配慮について、より高度な対応が求められており、調達先に対応の不備があれば、原材料の調達停止による当社グループの経営成績及び財政状態への影響だけでなく、社会的評価に悪影響を及ぼす可能性もあります。

 

 これに対し当社グループは需給動向や為替レートの変動に関しては、短期的には海外調達先との外貨建取引の一部について為替予約を行うとともに、中期的には原材料の現地調達比率の適正化や調達先の複数化などにより、需給動向や為替レートの変動リスクの低減に取り組んでおります。また、原材料や仕入商品の調達に関しては、調達先との信頼関係を構築し相互発展を目指すために、財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準の改定、また、サステナビリティ等の非財務情報に係る開示の進展やCOSO(Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission)報告書の改訂を踏まえ、「コクヨグループサステナブル調達方針」及び「コクヨグループサステナブル調達ガイドライン」にも内部統制の整備について明確化し、人権尊重や環境保全などの社会的責任を果たし、社会の発展に寄与することに努めております。そのほかにも「気候危機への対応」「循環型社会への貢献」「自然共生社会への貢献」を当社グループにおける重要な環境課題と特定し、それぞれの課題に対し2030年チャレンジ目標を設定しております。これらを含むサステナブル関連活動については全執行役員が参加する「サステナブル経営会議」にて定期的に議論が行われ、活動における進捗報告やリスクを確認しながら、推進を図っております。

 

4)人材及び労務

 当社グループは、持続的な成長を実現するために、多様な人材の活躍が重要な経営戦略の一つであると認識し、その採用・育成に努めております。しかしながら、日本国内の労働市場における獲得競争は激化しており、事業の維持及び成長において必要な人材の獲得・育成を継続的に推進していくことができない場合は、当社グループの将来の成長が阻害される可能性があります。

 また、労働環境の維持・向上が経営戦略に重要な影響を及ぼすと認識し、多様性の尊重と、働きやすい職場環境の維持・向上に努めております。しかしながら、各施策が計画通りに進捗せず、労働災害や健康被害、ハラスメント等が発生した場合には、業務パフォーマンスの悪化や労災補償、ブランド価値の毀損が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 これに対し当社グループでは、人材マネジメントポリシーを策定し、従業員のキャリア・能力発揮のために会社として大切にする思想とアクションを宣言しております。そこでは、「人材を社会の財産と捉え、一人ひとりの可能性に伴走しながら、事業成長と社会に貢献できる人材を輩出する」ことを経営陣・従業員全員の共通認識としております。このポリシーに基づき、全事業部門で「人材育成会議」を開催し、一人ひとりのキャリア・ポテンシャルについて役職者が複眼で討議することを開始するとともに、OJTだけではない育成のための人材育成機関「コクヨアカデミア」の設置等の取り組みにより人材育成への投資を加速させております。これらの具体的な取り組みは、『2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (6)人的資本に関する取り組み』を参照ください。

 また、カスタマーハラスメントやSOGIハラスメント項目を加えたハラスメント研修や、障がい者の安全な職場環境整備のための介護福祉士事務所の健康管理室設置等、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでおります。

 また、安心・安全で快適な職場づくりや災害時の安全対策などは、社員が生き生きと働き、能力を発揮するための基盤であると考え、安全衛生のグループ統括機能である「コクヨグループ中央安全衛生委員会」が中心となり、各事業所の安全衛生委員会を結び、社員と活発な意見交換をしながら、国内・海外共通のグローバル安全基準マニュアル策定に取り組んでまいります。併せて、「グローバルH&C推進室」により、グループ各社の人材採用・定着に関わる課題解決の施策について横串での共有と解決支援に取り組んでおります。一方、設備の保全に関しては、築年数が古い施設から順に、事業戦略との整合を取りながら大規模修繕・移転・改築等の対処を進めることで、予防に努めております。そのほかにも、全社を挙げて残業時間の短縮に取り組むことで、従業員の健康への配慮とキャリア形成のための可処分時間の捻出に向けた施策を推進しております。

 また、職場内では相談・解決し難い企業倫理・コンプライアンス違反について通報できる窓口として「コクヨグループホットライン」を設置しております。日本国内においては外部の専門会社に受付窓口を委託することで通報者保護を高めるとともに、2024年6月からはお取引先様にも利用範囲を拡大し、健全な関係構築と相互発展を図っており、海外拠点のコクヨグループ社員は当社内に設置した受付窓口へ通報できることとしております。なお、当年度における「コクヨグループホットライン」への内部通報件数は25件であります。

 

5)ITリスク

 当社グループは、事業上の機密情報や事業の過程で入手した顧客情報や個人情報を保有しております。それらの情報に関して、当社グループの想定を超えるウィルス感染やサイバー攻撃等により、重要データの破壊、改ざん、流出、システム停止等を引き起こす可能性があり、その脅威は年々高まっております。また、在宅やリモートワークなど多様な働き方により、影響の範囲は大きくなっております。その結果、これらが発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 また、事業内容の変化拡大に伴う現場での実業務と当社グループで運用する基幹システムのカバー範囲の乖離拡大による業務生産性や内部統制への影響が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これに対し当社グループは、高度化する社外からの脅威に備え、脆弱性診断を実施しセキュリティ強化に努めると同時に、ウィルス感染やサイバー攻撃によるシステム障害への検知及び防御の強化、定期的なバックアップの取得等の対策を行っております。また、サイバー攻撃等による情報セキュリティインシデントが発生した際に被害を最小化することを目的にCSIRT(Computer Security Incident Response Team)を構築しており、有効に機能しております。

 一方で、「リスク委員会」の下部組織である「ITリスク分科会」において、顧客情報や個人情報を適切に管理するために、情報の取扱いに関するルールを整備し、従業員に対してe-ラーニングによる情報セキュリティ意識の啓発、委託先や取引先を含む関係者への教育・啓発活動の推進に加え、個人データの取扱いの定期点検と不要なデータの削除など、安全管理措置を講じております。

 また、基幹システムの導入から相応の期間が経過しており、また成長に伴い事業内容と業務プロセスが変化しており、業務プロセスの見直しと基幹システムの刷新を図ってまいります。

 

6)企業に対する出資等

 当社グループは、持続的に企業価値を向上させていくために企業に対するM&Aや出資等を行っております。第4次中期経営計画において、M&Aを含む約700億円の成長投資(M&Aは案件次第で一層の投資も視野に入れております。)を計画しており、現在、インド、オーストラリア、ASEAN、日本等の地域におけるファニチャー、ステーショナリーの事業のM&Aの検討等を行っております。その実施にあたっては、「投融資審議会」において事前に対象企業の財務内容や契約内容等の審査を行い、リスクと期待リターンのバランスを検討した上で決定しております。また、出資後は利益計画等の達成状況や、資産価値についての定期的なモニタリングを実施しております。しかしながら、事業環境の変化等により、当初想定していた成果が得られないと判断された場合には、有形固定資産やのれん等の無形固定資産、投資有価証券の減損損失等を認識することにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これに対し当社グループは、損失の発生リスクを低減するために、外部アドバイザーからの知見も取り入れながら、投資案件の審査プロセスやモニタリングプロセスを運用し、その継続的な改善に取り組んでおります。また、投資推進に関連する組織へのM&Aや出資に係る知見の蓄積、及び一般社員への教育・啓発活動を通じて、投資に係る能力の向上に努めております。

 

7)不動産資産の有効活用

 当社グループは、不動産資産を保有しておりますが、事業環境の変化により資産価値が低下し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これに対し当社グループは、非事業資産の売却検討等、不動産、ネットキャッシュの効率運用に取り組んでおります。

 また、当社グループは、長期視点でサステナブルな経営に舵を切るために策定した「長期ビジョンCCC2030」の実現に向け、2025年度より新たな第4次中期経営計画「Unite for Growth 2027」をスタートさせております。第4次中期経営計画では、「森林経営モデル」のアップデートのもと、「ワクワク価値創造サイクル」の強みを活かした体験価値提供や事業成長の再現性を高める「経営基盤強化」により、事業領域拡張や海外への拡張を通じた事業価値向上及び企業価値向上を実現することを想定しております。その具体的な施策のひとつとして、本社移転を行う事を決定し、働きやすい職場環境作りや多様なステークホルダーとのコミュニケーションの活性化により、当社らしいクリエイティビティの発揮に取り組んでまいります。尚、本社移転に伴い空室となる現本社土地及び建屋の資産につきましては、売却も含めてその活用方針について継続検討してまいります。

 

(3) その他リスク

1)自然災害、感染症等

 当社グループは、国内外に事業所や工場を有しております。近年の気候変動に伴う自然災害の大規模化や、これまでに類を見ない感染症の発生などによる想定を超える規模の被害や、広域での社会インフラの停止なども考えられます。自然災害や感染症などが発生した場合のリスク全てを回避することは困難であるため、これらが発生した場合、事業活動の一部停止や縮小など、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 これに対し当社グループは、このような自然災害や感染症などの発生に備え、事業の継続や早期復旧を図るために必要な対策・手順について計画を立て、危機管理の徹底に取り組んでおります。また、計画内容は継続的に精査・見直しを行い、その実効性を担保するようにしております。自然災害については、施設・業務に安全対策を講じることで危機の事前回避と災害対策品の備蓄・保険等の付保により危機発生時における対応力の向上に努めております。感染症については、顧客と社員の安全を図りつつ、事業活動への影響を最小限にとどめるよう努めております。

 当社グループは社員の安全確保のガイドラインを策定し、働く場所やコミュニケーション方法を柔軟に使い分けることで政府・社会からの要請に応えるとともに、引き続き顧客及び社員・パートナーの安心安全を第一に、社会インフラを提供する企業として事業継続との両立を目指し取り組んでおります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び当社の関係会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績

(単位:百万円)

 

2023年12月期

2024年12月期

増減率(%)

売上高

328,753

338,227

+2.9

営業利益

23,830

22,028

△7.6

経常利益

25,989

24,410

△6.1

親会社株主に帰属する当期純利益

19,069

21,787

+14.3

 

 当連結会計年度(2024年1月1日から2024年12月31日まで)におけるわが国経済は、企業収益や雇用・所得環境等の改善により、景気は緩やかな回復基調にあるものの、中国経済の先行き懸念等による海外景気の下振れや、資源価格及び原材料価格高騰等の影響により、先行き不透明な状況で推移しております。

 このような状況のもと、当社グループは、「長期ビジョンCCC2030」実現に向けて、既存事業のブラッシュアップと領域拡大による成長を目指す第3次中期経営計画「Field Expansion 2024」において、既存事業からのリソース再配分や戦略経費支出の積極化、海外展開の強化といった事業領域の拡大に向けた取り組みを推進してまいりました。

 当社グループを取り巻く経営環境は大きく変化しておりますが、事業環境や顧客ニーズの変化に柔軟に対応することで、引き続き強い競争力を発揮できているものと考えております。

 売上高は、ファニチャー事業においてオフィス移転案件やリニューアル案件の獲得が進捗したことで、前期比2.9%増の3,382億円となりました。売上総利益は、原材料価格の高騰影響を受けたものの、売価改定の浸透等の取り組みにより、前期比4.3%増の1,329億円、売上総利益率は、前期比0.5ポイント上昇の39.3%となりました。事業領域拡大のために戦略的な経費支出や体制強化を行った結果、販売費及び一般管理費は、前期比7.1%増の1,108億円、売上高販管費率は、前期比1.3ポイント上昇の32.8%となりました。

 以上により、営業利益は、前期比7.6%減の220億円となりました。経常利益は、前期比6.1%減の244億円、親会社株主に帰属する当期純利益は、連結子会社であるKokuyo Hong Kong Limitedののれん及びその他無形固定資産に関する減損損失51億円を特別損失として計上したものの、投資有価証券売却益102億円を特別利益として計上したこと等により、前期比14.3%増の217億円となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は、以下のとおりであります。

 当社グループは、「長期ビジョンCCC2030」の実現に向けて、自らの社会における役割を「WORK & LIFE STYLE Company」と再定義し、「働く」「学ぶ・暮らす」のドメインで、文具や家具だけにとらわれない豊かな生き方を創造する企業となることを目指しております。

 ワークスタイル領域では、新型コロナウイルス感染拡大によって定着した働く場の分散と働き方の多様化により定着したハイブリッドワークにおける新しいニーズに着目しております。

 ライフスタイル領域では、学びや生活の道具におけるライフスタイルツールにおいて、より自分らしく生きることへのこだわりのニーズの高まりに着目しております。

 

(ワークスタイル領域)

・ファニチャー事業

ファニチャー事業は、働き方の変化に伴う旺盛なオフィス需要を獲得するとともに、Kokuyo Hong Kong Limitedのリソースや日本での強みである空間デザイン力を活用することで海外事業の成長を推進し、コクヨ全社の業績を牽引することを目指しております。

日本では、新築オフィス移転需要とオフィスリニューアル需要が旺盛な状況が続いており、顧客の戦略課題に対応したワークスタイル提案の強化及び業務プロセスの効率化等に取り組むことで、業績拡大や収益改善が進捗しております。

中国・アセアンでは、Kokuyo Hong Kong Limitedを中心とした生産改善や販売活動の強化に取り組んでおりますが、中国経済の悪化による影響を受けております。

このような状況のもと、売上高は、前期比4.7%増の1,618億円となりました。営業利益は、前期比2.2%増の229億円となりました。

 

・ビジネスサプライ流通事業

ビジネスサプライ流通事業は、プラットフォーム型購買管理サービスであるべんりねっとを基盤として、テクノロジーの活用により顧客パーソナライズで最適化された購買体験の実現を目指しております。

当連結会計年度は、売価改定の浸透等により収益性が改善したほか、大規模顧客向けソリューションシステムが好調に推移しております。

このような状況のもと、売上高は、前期比1.1%増の989億円となりました。営業利益は、前期比14.9%増の44億円となりました。

 

(ライフスタイル領域)

・ステーショナリー事業

ステーショナリー事業は、提供価値の中心を「まなびかた」に据えたCampusブランドにより、グローバルで、前向きなまなびのチャレンジをする機運を盛り上げる事業への転換を目指しております。

日本では、売価改定の浸透や事業リソースの最適化等により収益性の改善が進むほか、ECの拡大が進捗しております。

中国では、女子中高生をターゲットとした女子文具需要は引き続き旺盛に推移する中、店舗開拓の推進を進めておりますが、中国経済の悪化による影響を受けております。

インドでは、営業生産性の向上や主力商品の供給力拡大、付加価値商品の投入に取り組んでおりますが、インド経済におけるインフレ進行や競争激化による影響を受けております。

このような状況のもと、売上高は、前期比0.4%減の835億円となりました。営業利益は、前期比11.9%減の59億円となりました。

 

・インテリアリテール事業

インテリアリテール事業は、既存事業において接客力と提案力を活用した店舗及びECでの成長を推進するとともに、パートナーとの連携強化による法人事業の領域拡張で事業ポートフォリオの変革を進め、持続的成長の実現を目指しております。

当連結会計年度は、円安の進行等により収益性は低下しましたが、販売促進活動が奏功したほかEC事業が順調に推移したことにより増収となりました。

このような状況のもと、売上高は、前期比4.4%増の212億円となりました。営業利益は、前期比25.3%減の5億円となりました。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

①生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

ワークスタイル領域

  ファニチャー事業

26,624

110.9

ライフスタイル領域

  ステーショナリー事業

32,311

104.6

合計

58,935

107.3

(注)1 金額の表示は製造原価による。

2 ビジネスサプライ流通事業及びインテリアリテール事業は生産活動を行っていないため、記載を省略している。

 

②受注実績

 当社グループは、主に見込生産を行っておりますが、ファニチャー事業の一部について受注生産を行っております。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

ワークスタイル領域

  ファニチャー事業

17,974

125.4

3,086

113.1

(注) 金額の表示は販売価格による。

 

③販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

ワークスタイル領域

253,053

103.8

 

ファニチャー事業

159,896

104.9

 

ビジネスサプライ流通事業

93,157

102.0

ライフスタイル領域

84,931

100.2

 

ステーショナリー事業

63,752

99.0

 

インテリアリテール事業

21,178

104.3

その他

242

105.3

合計

338,227

102.9

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去している。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略している。

 

(2)財政状態

 当連結会計年度末の総資産は3,629億円となり、前連結会計年度末に比べ45億円増加しました。

 流動資産は2,528億円となり、前連結会計年度末に比べ227億円増加しました。主な要因として、現金及び預金が167億円、受取手形、売掛金及び契約資産が68億円、それぞれ増加した一方、商品及び製品が15億円減少したためであります。

 固定資産は1,100億円となり、前連結会計年度末に比べ181億円減少しました。主な要因として、有形固定資産が16億円、退職給付に係る資産が14億円、それぞれ増加した一方、投資有価証券が177億円、のれんが49億円、それぞれ減少したためであります。

 当連結会計年度末の負債は988億円となり、前連結会計年度末に比べ60億円減少しました。主な要因として、未払法人税等が18億円増加した一方、1年内返済予定の長期借入金が48億円、繰延税金負債が32億円、それぞれ減少したためであります。

 当連結会計年度末の純資産は2,640億円となり、前連結会計年度末に比べ106億円増加しました。主な要因として、親会社株主に帰属する当期純利益217億円の計上等による増加の一方、剰余金の配当により81億円、自己株式の取得により16億円、それぞれ減少したためであります。

 

(3)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、1,320億円と前連結会計年度末に比べ169億円増加しました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により獲得した資金は163億円(前期比183億円の収入減)となりました。これは、主として341億円の税金等調整前当期純利益を計上したこと、減価償却費78億円、減損損失52億円等の非資金損益の調整、棚卸資産の減少27億円等による資金の増加があった一方、法人税等の支払額103億円、売上債権の増加50億円等による資金の減少、営業活動によるキャッシュ・フローに算入されない投資有価証券売却益102億円、固定資産売却益48億円等があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により獲得した資金は122億円(前期は37億円の支出)となりました。これは、主として投資有価証券の売却及び償還による収入150億円、有形固定資産の売却による収入55億円の資金収入等があった一方、設備投資による支出77億円の資金支出等があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により支出した資金は156億円(前期比11億円の支出増)となりました。これは、主として自己株式取得のための預託金の減少16億円の資金収入等があった一方、配当金の支払額81億円、長期借入金の返済による支出52億円、自己株式の取得による支出16億円の資金支出等があったことによるものであります。

 

(資本の財源及び資金の流動性)

 運転資金及び投資資金につきましては、内部留保のほか金融機関からの借入により調達しております。また、当社グループにおいてキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、グループ内資金の効率化を図るとともに緊急時の資金調達手段の確保を目的として、取引銀行10行と130億円の貸出コミットメント契約の締結により資金の流動性を確保しております。

 資金需要の動向につきましては、主な使途として、事業領域拡大に向けた戦略投資、原価低減のための設備改善並びに新製品開発投資、製品の製造・販売に係る費用及び製品の品質向上等となります。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(5)経営成績に重要な影響を与える要因について

「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの当連結会計年度における研究開発費の総額は、1,699百万円であり、各セグメントの研究開発活動は、次のとおりであります。

 

1.ファニチャー事業

 多様な個人の価値観を大切にし、一人ひとりが自分らしく働けるような最適なオフィスづくりを伴走型でサポートしていくことに加え、『サステナブル』、『インクルーシブデザイン』に注力し、以下のような商品開発を行いました。

(1)新しいワークスタイルを提案する「Any wayシリーズ」

 「Any way」は2022年12月に発売された家具ブランドで、シンプルなデザインと鮮やかなカラーリングが特徴です。キャスター付きで簡単に移動でき、柔軟なレイアウト変更が可能です。リブランディングにより、チームでのコラボレーションを促進する「Agile Field」と「Custom Base」の2つのスタイルを提案し、新商品として、スタッキング可能な「Any Chair Stack Stool」、360度キャスター付きの「Any Tool」シリーズ(ホワイトボード、ディスプレイスタンド、スクリーン)をラインアップしました。これらのアイテムは軽量で動かしやすく、チームの活動に合わせてフレキシブルに使用できます。

(2)ハイグレードなワークテーブル「SAIBI」「SAIBI-TX」リニューアル

 2014年に発売されたハイグレードなテーブルシリーズ「SAIBI」は、細部までこだわり抜いた機能美が好評で、執務空間や会議、役員空間まで広く採用されています。シリーズはモノトーンが特徴の「SAIBI-TX」などに拡大し、今回のリニューアルでは天板のデザインとファブリックのラインアップを刷新しました。「SAIBI」の天板にはより本物の木に近い質感の素材を3種類、「SAIBI-TX」にはマットで温かみのあるカラーの素材を1種類採用しています。ファブリックにはデンマークのKvadrat社の「Re-wool2」や「Autumn」、当社のノート製造端材を活用した「カミカラ」を取り入れました。「Re-wool2」はリサイクルウールを45%使用し、「Autumn」は100%リサイクルポリエステル製です。「カミカラ」は資源循環への挑戦と紙の素材感を活かした日本らしい風合いが特徴です。これにより、「SAIBI」シリーズはグローバルトレンドを取り入れたデザインとサステナビリティを強化し、さらなる進化を遂げています。

(3)多様な働き方を支援する「DAYS OFFICE」

 「DAYS OFFICE」は、ワーカーのモチベーションとダイバーシティを実現するオフィス家具ブランドです。職場での自然なつながりとボーダレスなコミュニケーションを促進するため、カラー体系をアクセントナチュラル、ライトモダン、コンフォートシックの3テイストにアップデートしました。また、「wired sofa」をリニューアルし、女性や障がいのある方とのワークショップを通じて座奥行や背角度、背パネルの高さを最適化しました。新たに拡充したラウンドタイプは、心地よい距離感を保つことができ、1on1ミーティングや休憩時などに利用できます。張り地カラーは7色、木部は3色から選べ、ライトカーキやモデレートローズなど空間のアクセントになる色合いを揃えました。

(4)インクルーシブデザインのプロセスから誕生したカフェチェアー「Hemming」

 多目的空間に最適なチェアー「Hemming」は、年齢・性別・体格・障がいの有無など多様な特性を持つユーザーとともにインクルーシブワークショップを通じて作り上げられ、片手でも引きやすいハンドルデザインや、立ち上がりやすい座面形状など、使い心地を徹底的に追求しています。デザインは機能的でありながらもシンプルで、カフェやオープンラウンジ、エントランスなど幅広いシーンに馴染む落ち着いたカラーリングが特徴です。ブラウンやグリーンなどのアースカラー5色をラインアップし、インテリアトレンドを反映しています。また、使用する樹脂材料は15%以上再生材料を使用し、廃棄時には100%単一素材に分解可能な設計で、サステナビリティにも貢献しています。

(5)人も家具も活発に動くシーンに適したモバイルバッテリー「Energy bottle」

 コロナ禍を経て、ハイブリッドワークやフリーアドレスの浸透により、新しい働き方が定着しつつあります。これに対応するため、電源設備の制約から解放されるモバイルバッテリー「Energy bottle」を開発しました。このバッテリーは、コンパクトかつ軽量で高いモバイル性を持ち、500mlのペットボトルほどのサイズ感で一般的なカップホルダーにも差し込むことができます。バッテリー容量は207.2whで、65WのノートPCをほぼ終日使用可能です。USB Type-Cポートが2口あり、パソコン充電に適した65Wとスマートフォン充電等に適した18Wのポートを備えています。また、バッテリー残量やエラー表示もわかりやすく、安心して使用できます。チャージャーは正方形の形状で、省スペースで設置が可能です。「Energy bottle」を通じて、柔軟で快適な働き方をサポートします。

 以上の結果、当連結会計年度における研究開発費の金額は、523百万円となりました。

 

 

2.ビジネスサプライ流通事業

 当連結会計年度における研究開発費の金額は、0百万円となりました。

 

3.ステーショナリー事業

 顧客のシーンごとに未充足ニーズを見出し、当社ならではの価値ある商品、差別化された商品を世の中に出すことで、お客様に支持され続ける商品づくりを目指しております。

 際立った価値を提供できる商品や、新たな着眼点で既存の商品の価値を見直すことにより顧客ニーズに応える商品として、以下の商品を開発・発売しました。

(1)置くだけでページを開いておける文鎮「本に寄り添う文鎮」

 2022年6月に中高生の声を反映して製作した「本に寄り添う文鎮」は、開いた本に寄り添う形状にすることで分厚い本でも安定して開いた状態を保持でき、また持ち上げるだけで本をめくることができるといった手軽さから、学生の勉強シーンをはじめ、社会人の在宅ワークや資格試験勉強、料理をする際のレシピ本のページを開いておくといった様々なシーンで活用されています。真鍮製と鉄製の2種類をラインアップしています。

(2)「洗えるハサミ<サクサ>(キッチン・食洗機対応)」「洗えるハサミ<サクサ>(万能・水洗い対応)」

 コロナ禍の巣ごもり需要以降の、機能に特化した用途別ハサミのニーズの高まりを受け、「ハサミ<サクサ>」シリーズに、キッチンやゴミの分別などの生活シーン別の用途を想定した2種をラインアップしました。刃先まで軽い切れ心地を実現する「ハイブリッドアーチ刃」はそのままに、撥水加工を施した刃を採用し、丸ごと洗ってもサビにくく衛生的に使えます。「キッチン・食洗機対応」は、滑って切りにくいものもしっかりと挟みこむギザ刃を搭載し、文具ハサミ同様のコンパクトさが特徴です。食洗機対応でキッチンハサミ初心者をターゲットとしています。「万能・水洗い対応」も、切るものをしっかり挟み込み、滑らず切れるギザ刃を採用し、カーペットなど柔らかく切りにくい布ものから金属やCD・DVDなどの硬い素材まで、快適に切ることができます。

(3)「ハサミ<サクサ>」リニューアル

 厚いものから薄いものまで軽い力で切れる「ハイブリッドアーチ刃」が特長の「ハサミ<サクサ>」をリニューアルしました。ハンドルに対して刃を傾けることで、ハンドルを開閉するだけで刃と刃の隙間が小さくなるよう作用し、使用者の利き手や技量に関わらない切りやすさを実現する業界初(※)の『傾斜インサート』構造を搭載しました。(※)ハサミ業界における傾斜インサートについて。2023年3月コクヨ調べ。

本商品は、当社独自のインクルーシブなものづくりプロセス「HOWS DESIGN(ハウズデザイン)」を取り入れています。開発プロセスで多様な視点を入れることで、より多様なユーザーの快適な使い心地を追求しています。本体のみならず、パッケージでは、多言語表記や音声で情報取得ができる「アクセシブルコード(※)」を表示した紙パッケージを採用しています。(※)アクセシブルコードは、エクスポート・ジャパン株式会社が特許権及び商標権を有します。

(4)ノートのようにパッと開き、サッと取り出せる「ペンケース<パンケース>」

 使いたい文具が埋もれて取り出しづらいというペンケースの困りごとに注目した、ノートのように開いて中身が一覧できるブックタイプのペンケースです。6つのポケットとストラップホルダーに文具を仕分けて収納することで、どこに何が入っているかが分かりやすい仕様になっています。何も入れていない状態での厚さはわずか3㎝でありながら、ペンの想定収容本数は約18本と大容量かつコンパクトです。表面の素材は、触り心地の良いコーデュロイ素材で仕上げています。

(5)携帯に便利なコンパクトサイズ「ソフトリングノート<Sooofa(スーファ)>」A6変形サイズ・A7変形サイズ

 オン・オフのシーンを問わず使用できるデザインが人気の「ソフトリングノート<Sooofa>」より、A6変形サイズのミニノートタイプと、A7変形サイズのメモタイプを拡充しました。テレワークやフリーアドレスの普及に伴うワークツールの携帯需要に対応し、ポケットなどに入れて持ち運びやすいコンパクトな2サイズをラインアップしました。オフィスの移動シーンで邪魔にならず、机の上でも省スペースに使用できます。手に当たっても気になりにくいやわらかリングを採用しているため、リングに手が当たりやすい横開きもしやすく、パソコンの手前に置いても邪魔にならないため、オンラインミーティングの手元のメモなどにも便利です。

 以上の結果、当連結会計年度における研究開発費の金額は、904百万円となりました。

 

4.インテリアリテール事業

 当連結会計年度における研究開発費の金額は、17百万円となりました。

 

5.全社(共通)

 次世代の働き方や学び方の研究をベースにコクヨグループの新たな商品やサービスに関しての開発を行い、当連結会計年度における研究開発費の金額は、254百万円となりました。