第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営方針

 当社グループは、グローバルヘルスケア企業として、アンメット・メディカル・ニーズ(有効な治療法がない疾患に対する医療ニーズ)を満たす技術及び製品の開発、市場開拓及び上市、製造販売を通して、世界中の患者の皆様に希望をお届けすることをミッションとしております。当社グループの経営における基本方針は、革新的な創薬への継続的な投資及び当社グループ全体の収益性拡大です。これらの基本方針の下で、当社グループは外部環境の変化に対応し、来るべき機会を的確に捉え、株主の皆様に対し利益を還元できるよう事業活動に努めております。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、医薬品及び医療機器(生体材料)の研究開発投資を効率よく管理しながら、収益源を多様化させることに重点を置いて、持続的な成長を続けることを目指しております。この観点から目標とする経営指標を売上収益の伸びと研究開発費の売上収益対比としております。当社グループでは医薬品事業と医療機器(生体材料)事業という事業特性も成長ステージも異なる事業を展開しており、目標とする経営指標はそれぞれ異なります。

 

医薬品事業:

(a)新薬の導入及び適応症の拡大等による20-40%の売上収益の伸びを目指します。

(b)医薬品候補のパイプラインを拡充することにより医薬品開発への投資を拡大いたします。

(c)研究開発費を売上収益対比20%以内とするように管理し、収益性を維持いたします。

医療機器(生体材料)事業:

新製品導入及び美容領域の手術等への事業展開により適正な売上収益の伸びを実現し、適正な利益の確保を維持いたします。

 

(3)経営戦略等

 当社グループは、医薬品事業における革新的な創薬活動への投資と製造販売の強化、医療機器(生体材料)事業の拡大を軸に、上記経営方針を満たしてまいります。

 医薬品や医療機器の開発は、その多くの開発候補が各国の規制当局からの承認を受けることができないため、開発のリスクが高いという特徴を持っています。また、医薬品及び医療機器の開発には多額のコストと長い期間が必要であると同時に、厳しい競争と当局の監督管理にも直面します。このような状況と、当社グループの人員、資金及び設備が比較的小規模である点を考慮し、競争の厳しい当業界におけるリスクの軽減と成功確率の向上のために、以下の戦略を着実に実行いたします。

 

① 基本戦略
 中国において、垂直統合により一貫して事業展開を行っていることによるコスト優位性を基に、米国における事業拡大も目指します。医薬品及び医療機器(生体材料)事業を通じ、地理的・事業的に分散された収益を確保することで、リスクを軽減し、クロスボーダー・ライセンス・アウト、提携及び共同開発契約を通じて相乗効果を実現させ、グローバルに収益源の更なる拡大を図ります。グローバル化においては、サプライチェーンの寸断リスクや地政学的リスクが存在しますが(「3 事業等のリスク」参照)、グローバルに多様化されたビジネスのメリットは数多くあります。当社グループのように、世界最大の経済圏一つだけでなく上位の経済圏で複数の事業をグローバルに展開することにより、サプライチェーンを多様化し、多様な人材を惹きつけ、更にそれらの人材間で様々なアイデアを交換する機会が生じる、異なる通貨間のやり取りが自然とヘッジの役割を果たす等の効果が見込めます。そのおかげで、一つの国又は地域でのみ事業を展開している企業に比べ、その一か所での障害が全事業に影響を与えるリスクを軽減することができます。

 

② 新薬開発戦略

 患者のニーズが最も緊急である分野における画期的医薬品の開発に焦点を当て、「ファストトラック」制度(新薬優先審査制度)と小規模臨床試験制度を活用しつつ、より適切なコストでこのような緊急の医療ニーズを充足することを目指します。当社グループは(a)中国における研究開発基盤を活用し、アンメット・メディカルニーズの存在する疾患向けに新薬開発を目指す、(b)より多くの患者の方々を治療するために当該医薬品の適応症拡大を図ると同時に、当該疾患の治療方法について中国の大手病院や重要なオピニオン・リーダーの間で強力なネットワークを構築する、(c)直接販売、ライセンス・アウト、提携等を通して、当該医薬品の世界市場への拡大を図る、という3つのステップを研究開発における戦略に据えております。更に、米国ナスダック市場上場企業であるGyre Therapeutics, Inc.(以下「GYRE」)やリバースマージャーによって米国ナスダック市場の上場企業となることを発表したCullgen Inc.(以下「Cullgen」)を拠点に、米国での医薬品の製品開発も加速してまいります。

 

 

③ 持続的な収益の確保
 当社グループは、連結子会社の中国の北京コンチネント薬業有限公司(以下「北京コンチネント」)の主力医薬品アイスーリュイの製造販売及びマーケティングを強化するとともに、その適応症の更なる拡大や販売ラインナップの強化を通じて、売上収益の継続的な拡大を目指しております。また、北京コンチネント及び米国のCullgenにおける創薬活動を基に、その核となる知的財産権を当社グループ内に確保しつつ、成果物である新規化合物や創薬技術を販売又はライセンス・アウトすることにより、創薬事業の収益化を図ります。更に、米国のBerkeley Advanced Biomaterials LLC(以下「BAB」)及び2023年度に新たに米国に設立し、ナスダック市場上場企業であるElutia Inc.からそのオーソバイオロジクス事業の一部を買収したBerkeley Biologics LLC(以下「BB」)の医療機器(生体材料)事業を引き続き推進するとともに、蓄積した生体材料技術とブランドを美容分野へ応用することで、医療機器事業の収益拡大を目指します。これらの施策を通じ、当社グループ全体の連結売上収益の増大及び多様化を目指します。

 

④ 事業投資

 当社グループは、医薬品及び医療機器(生体材料)事業を通じて培ったノウハウを基に、当社グループと相乗効果が期待できる革新的な企業に対して、適切な時期に戦略的な投資を行います。

 

⑤ 日本における事業の拡大

 当社グループは、これまで米国と中国という経済規模がそれぞれ世界第1位と第2位の国で事業を着実に拡大してまいりました。これまで当社グループ本社は日本で上場しているものの、持株会社としての機能のみを保持しておりました。今後、当社グループ事業の新たな柱を日本で確立すべく、M&Aや事業提携を含めた事業拡大の方策を積極的に模索いたします。

 

⑥ ESGに代表される非財務価値の向上
 当社グループは世界のアンメット・メディカル・ニーズ(有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズ)を満たし、患者の皆様に新たな希望をお届けすることをミッションとして日々事業に励んでおります。従いまして、当社グループの事業活動そのものがESG(環境、社会、ガバナンス)に関する課題を解決することに直結していると考えております。中国におきましては、北京コンチネントがアイスーリュイをNPOに寄付する等、社会面での貢献も積極的に推進し、また、環境面でも、中国の規制に従い、工場の有害排出物を抑制するための環境保護向け支出を継続的に行っております。更に、当社グループ全体で、ダイバーシティを高めるべく、取締役、経営幹部、管理職、実務レベルの各層において、女性の登用を積極的に進めております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 研究開発への持続的投資による成長の実現
 グローバルヘルスケア企業として、当社グループは創薬及び臨床開発活動に継続的に投資を行わなければなりません。新規化合物の探索や臨床開発を常に推進していかなければ、将来の収益機会や市場シェアを失う恐れがあります。当社グループは、研究開発プロジェクトを厳選して投資決定することにより、安定的成長を目指してまいります。

 

② 資金調達の多様化と安定化
 当社グループは、有望な新規開発化合物の研究開発への投資を続け、着実な企業価値の向上を図ります。ビジネス基盤と研究開発活動を強化するため、新たな資金調達先との関係構築、グループ会社の上場や新たなストラクチャーの模索等を通じ、資金調達手段をグローバルに多様化及び安定化させることを目指してまいります。

 

③ グループ会社の連携による企業価値の向上
 当社グループは、日本の東京に本社を置き、世界2大医薬品市場である中国及び米国の子会社を通じて、収益源及び研究開発活動の多様化を実現しております。このグローバル戦略は、財務の安定性と研究開発業務全般にわたるシナジー効果をもたらします。当社グループは、研究開発における主要子会社間の連携強化による生産性の向上とコスト削減に注力していくことで、企業価値の更なる向上を目指してまいります。

 

④ 内部管理体制の強化

 効率性、透明性に富み、説明責任を全うしうる健全な当社グループ運営を行うにあたっては、内部管理体制の強化が必須であると認識しております。このため、有能な人材の確保・育成や情報システムの高度化等ひいてはコーポレート・ガバナンスの強化を通じて、更なる健全な当社グループ運営を目指し、内部管理体制の強化を図ってまいります。

 

⑤ データ管理について

 当社グループは、常に変化し続けるデータローカライゼーション及び国境を越えたデータ転送の規制に関して、日本の親会社レベル及び子会社レベルの両方で、特許及びその他の知的財産のデータが確実に保護されるように注意を払っています。更に、子会社レベルでは、事業を行うそれぞれの国の関連規則及び規制の下で求められる、絶えず変化するローカルデータ管理及び情報共有プロトコルに準拠するよう努めています。現在日本では従業員以外の個人情報を取り扱っていませんが、個人情報保護法(APPI、2020年6月に改正され、2022年4月に発効)の第28条等の重要な規制の変更を注意深く見守り、定期的に手順や業務の更新を図っております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組み】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)ガバナンス

 当社は指名委員会等設置会社制度を採用しており、サステナビリティに係る対応を含む経営上の重要な課題について、取締役会が経営の監督を行い、事業運営に関する意思決定及び執行を執行役へ委任することで、業務執行と監督機能を分離しております。また、執行の重要案件については、経営会議にて議論した上で取締役会へ上程しております。

 

(2)戦略

 当社グループはグローバルヘルスケア企業として、世界中の患者の皆様に希望をお届けすることをミッションとし、アンメット・メディカル・ニーズ(有効な治療法がない疾患に対する医療ニーズ)に応え事業活動において社会的責任を果たすことにより、サステナビリティの向上に貢献することが、当社グループの持続的な成長及び企業価値の向上に寄与すると考えております。

 その実現に向け、事業を牽引する人材の確保と育成は重要な課題であり、当社グループ全体で、取締役、経営幹部、管理職、実務レベルの各層において女性登用をはじめとする人材の多様性を確保し、従業員の個々の能力を最大限に活用する継続的な学習と成長を奨励します。従業員が仕事と私生活のバランスを取れるように、安全で健康的な働きやすい職場環境、育児や介護のための休暇及び短時間勤務に関する制度等、さまざまな支援策を提供し、個々が活躍する場を拡充します。

 また、医薬品の開発及び製造販売を通じて健康を支える企業として、地球環境の保全も最重要課題の一つと位置づけ、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを推進しております。すべての事業活動において環境負担の低減に努めるとともに、気候変動への対応、資源の効率的かつ持続可能な活動、生態系の保全等、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを推進します。またこれらを実現するため、革新的な技術の導入や社内外のステークホルダーとの協力を積極的に進め、次世代に豊かな自然環境を引き継ぐための貢献を続けてまいります。

 

(3)リスク管理

 当社グループは、「第4提出会社の状況、4 コーポレート・ガバナンスの状況等、(1)コーポレート・ガバナンスの概要、④ 企業統治に関するその他の事項(b)リスク管理体制の整備の状況」に記載のとおり、各委員会及び取締役会においてサステナビリティに係る対応を含む経営上の様々なリスク管理プロセスに関与し、直接的な監督機能を果たしております。

 

(4)指標及び目標

 今後も人的資本の価値最大化や環境保全に努めるため、具体的な指標等の設定については、検討を進めてまいります。

 

3【事業等のリスク】

 当社グループにおいて、事業展開に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項は以下のとおりです。なお、リスク要因に該当しないと思われる事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。また、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める責任がございますが、投資家の皆様におかれましては、本株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項目以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われますようお願いいたします。以下の記載は、本株式への投資に関連するリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意下さい。

 本項中の記載内容につきましては、特に断りがない限り2024年12月31日現在の事項であり、将来に関する事項は本書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)医薬品の開発リスク

 当社グループが売上収益を創出し、継続して黒字を達成出来るかどうかは、臨床試験段階にある当社グループの医薬品候補化合物の開発が成功裏に完了し、必要な政府機関の承認を取得し、かつ、上市できるかどうかに左右されます。当社グループは、既存の医薬品候補化合物の開発に相当の人的・財務的資源を投入しておりますが、これらの候補化合物が医薬品として上市されるまでには今後も多額の投資が必要と考えております。しかしながら、当社グループの既存の医薬品候補化合物及び当社グループが今後発見、又はライセンス・イン或いは買収により導入する新規化合物が政府機関の承認を得られる保証はなく、更には政府機関の政策、規制又は承認を取得するために必要な臨床試験データの内容等が当該臨床開発期間中に変更となったり、申請対象国によって異なったりする可能性があります。

 

(2)グローバルな事業展開に伴うリスク

 当社グループの収益の大半を占める連結子会社である北京コンチネント、Cullgen、BAB及びBB等は、それぞれ中国及び米国に拠点があるため、当社グループの事業活動は、グローバル展開に伴うカントリーリスク、為替リスク又は政治的リスクの影響を受ける可能性があります。中国及び米国の医薬品産業は政府の厳格な管理監督下での規制を受けており、当社グループの活動は両政府が公布する法律等に従います。これら両国の政策、規制、法律等に変化が生じた場合には、当社グループの経営戦略や事業活動に制約が加えられる可能性があります。また、種々の理由による国際的なサプライチェーンの混乱等により、医薬品や医療機器(生体材料)の製造、販売、流通、医療行為に制約が加えられる可能性があります。

 

(3)競合に関するリスク

 当社グループは市場競争環境の下で事業を行っておりますが、将来の技術発展や製薬業界における継続的な新薬開発により当社グループの既存製品の陳腐化或いは競争力低下を招いた結果、現在或いは将来の競合他社と有効に競争できなくなる可能性があります。当社グループの創薬の研究開発が競合他社に劣後していると判明した場合、売上収益の減少、販売価格の低迷及びシェアの低下等が起こり、それらが当社グループの経営成績と利益率に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。従って、当社グループの今後の発展は、既存製品の改良及び新規性がありかつ価格競争力のある製品を開発し、それらが絶えず変化する市場において受け入れられるかどうかに大きく左右されます。

 

(4)法的規制に関するリスク

① 訴訟リスク

 グローバルで事業活動を行っている当社は、各国において訴訟、その他の法的手続、又は、当局による調査の対象となる可能性があります。多額の金銭的補償が命じられた場合や当社グループに不利な決定がなされた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

② 規制リスク

 当社グループの医薬品の研究開発活動は、それらを行っている各国の薬事行政により様々な規制を受けております。例えば、当社グループの研究及び製造施設は中国にあり、このことは当社グループの中国における開発、販売並びに承認申請等において利点となっていると考えておりますが、中国の製薬産業は政府の厳格な管理監督下にあり、また、様々な監督官庁による監理監督を受けます。加えて、中国における医薬品の製造、流通、販売、医療行為や医療機器産業も刻々と変化する制度の下で政府の厳格な監理監督を受けており、制度が変化した場合に、当社グループの事業活動に制約が加えられる可能性があります。

 

(5)知的財産権に関するリスク

 当社グループの製品に関して、特許その他の知的財産権を保護するための措置を取ったにもかかわらず、当該知的財産権に関し異議を申し立てられたり無効とされたりする可能性があります。特許侵害や、企業機密の漏洩、その他の知的財産権の侵害に関して係争することは、結果の良し悪しに限らず非常に費用がかかります。従って、当社グループでは、誠実義務に従って、細心の注意を払いながら特許出願を行います。しかしながら、訴訟を提起され、それらが法的に無効或いは実施不能であるという主張がなされる可能性は予測不可能です。当社の知的財産権が侵害された場合、当社の個別製品、製品群或いは事業全体に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)製造物責任のリスク

 当社グループの製品及びその製造プロセスは、所定の品質基準を満たすことが求められます。当社グループは、製品に関する品質問題発生を予防するため、品質管理マネジメント体制及び標準手順書を確立しております。しかしながら、そのような品質管理体制をもってしても、間違い、不具合、故障といった事象を完全に取り除くことは困難です。品質上の不具合は、幾つもの要因の結果、検知も是正もされない可能性がありますが、それらの多くは当社の管理不能な要因です(製造設備の故障、品質管理担当者によるヒューマンエラー又は不正行為、第三者の不正行為、原料の品質問題等)。加えて、当社グループにおいて将来製造能力を拡大した場合、当社グループの既存の設備と新設備とで製品の品質を等しく保つことを保証できない可能性があり、当該品質問題解決のために相当の費用が発生する可能性があります。

 

(7)感染症等の発生に関するリスク

① 創薬の研究開発における影響

 当社グループは、パンデミック発生時に限らず、在宅勤務も極力可能にするための情報インフラを構築し、維持しておりますが、創薬の研究開発の多くは研究所にて行う必要があり、感染症が蔓延して出勤が困難になることにより、研究開発に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 臨床試験における影響

 パンデミックが発生した場合、臨床試験を行う医療機関や医師のリソースがパンデミック対応へ優先的に割かれるため、パンデミックに直接関係ない新薬の臨床試験のスケジュールに悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 通常の事業活動に与える影響

 パンデミックが発生した場合、パンデミックを引き起こしている感染症以外の病気のための通院や治療が抑制され、パンデミック以外の病気向けの薬の処方が減ることにより、当社の医薬品の売上収益に悪影響を及ぼす可能性があります。また、生体材料事業においては、生体材料を使用する手術のキャンセルや延期等により、生体材料の売上収益の目標の達成に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)人的資本に関するリスク

① キーパーソンへの依存

 当社グループは、最高経営責任者(CEO)のイン・ルオ博士ほか経営陣のリーダーシップによって率いられております。特にルオ博士は、当社の企業戦略及び研究開発戦略の考案と実行において重要な役割を果たしております。更に、グループの東京本社は小規模であり、日常業務を少数の主要な従業員に依存しております。ルオ博士をはじめとする経営陣や主要な人員の貢献・サービスが失われると、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 人材の獲得と保持

 当社グループは、事業を展開している主要な地域において、他の製薬会社や大学・研究機関と人材採用の面で競合しております。有能な人材の数が限られているため、損失が発生した場合、当社グループは上級スタッフ及び主要な研究者を十分に置き換えることができない可能性があります。過度な人材獲得競争により、当社グループの人件費が上昇した場合、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。こうした人材の継続的な貢献と、優秀な人材の更なる獲得が、事業の成長と成功の要因の一つであると考えております。適切な人材を確保できない場合、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(9)その他のリスク

① サイバーセキュリティ

 当社グループは事業をグローバルに展開しており、ハッカー、マルウェア、ウイルス及びその他のサイバー脅威を含む悪意のある攻撃者からの脅威に直面しております。その結果、当社グループ及びお客様、従業員、取引先の様々な機密情報が違法に公開、収集、監視、悪用及び消去されると、当社の業務の中断、財務上の損失、評判の低下、法的及び規制上の罰則等の悪影響をもたらす可能性があります。ファイアウォールや多要素認証等、サイバー攻撃から保護するためのさまざまな対策を実施しておりますが、これらの対策はすべてのサイバー攻撃を防ぐのに効果的ではない可能性があり、将来、システムがそのような攻撃を受けないことを保証することはできません。更に、サイバーセキュリティ違反やその他のセキュリティインシデントを是正するために多大なリソースを費やす必要が生じる場合があります。サイバー脅威が進化し続けるにつれて、セキュリティ対策を強化したり、新しい脅威や新たな脅威から保護するために追加のコストを負担したりする必要が出て来る可能性があります。

 

② データ管理

 当社グループは、研究及び開発において多大なデータを取り扱っております。このデータが不正確であったり、完全性に欠けていると、誤った判断や誤った結論を導くリスクがあります。また、多数の人々の個人情報を保有しているため、不正なアクセスや攻撃を受けるリスクがあります。それらのデータの保全には万全の注意を払っておりますが、データの漏洩や盗難、サイバー攻撃等によるデータの改ざんや破壊が発生する可能性があります。更に、当社グループはグローバルに事業を展開しているため、事業基盤のある各地域のデータ管理に関する様々な規制に対応する必要がありますが、これらの規制は流動的であるため、規制が変更された場合等に、対応するための体制整備が間に合わない可能性があります。

 

③ 根拠のない噂と虚偽の情報

 当社グループの事業は、特にソーシャルメディアやその他のインターネットベースのプラットフォームを通じて広まった噂、虚偽の情報及び誤解を招く発言から生じるリスクにさらされております。これらの噂や虚偽の情報は、根拠のないものや真実でないものであっても、急速に広まり、当社の事業、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。このような風説や虚偽の情報が広まると、株価の下落、評判の失墜、顧客の信頼の喪失等の悪影響が生じる可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

2024年の世界経済は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中東情勢の不安定化など、地政学的リスクが引き続き高い水準にあり、不確実性が拭えない状況が続きました。我が国においては、日経平均株価が初の4万円台を記録する等、堅調な雇用環境や観光需要の回復を背景に一定の成長がみられる一方で、為替のボラティリティが高まり、輸入コストの上昇等で物価インフレとなっております。一方、賃金上昇のペースが物価高に追いつかない状況が続いており、家計負担の軽減や持続可能な経済成長への対応が課題となっております。当社が属するバイオテクノロジーセクター及び東証グロース市場につきましては、日本国内の利上げ継続懸念から、引き続き楽観視できない状況が続いております。

 

このような状況下において、株式会社ジーエヌアイグループ(以下「当社」)及びその関係会社(以下合わせて「当社グループ」)は、グローバル中堅製薬企業となることを目指し、将来の事業発展の布石として当社グループを挙げて取り組んできた研究開発や子会社Cullgenの上場等のプロジェクトを着実に推し進めてまいりました。

 

製薬及び創薬事業におきまして、当社グループの主要子会社である北京コンチネントは、中国国内において反腐敗運動が想定より長かったものの、主力製品であるアイスーリュイの販売は年間トータルで昨年並みの売上げを維持しました。肺線維症分野における強固な地位を獲得するため、IPF(特発性肺線維症)以外の肺線維症を適応症に持つニンテダニブの製造販売に関する権利を2024年5月に取得いたしました。更に希少疾患分野(オーファンドラッグ)において、中国にて開発を進めていた慢性肝疾患による血小板減少症の治療薬であるアバトロンボパグマレイン酸塩錠の製造販売承認を2024年6月に受け、2025年1月にはITP(慢性特発性血小板減少症)を対象に適応症拡大の承認を受けました。これにより、既存の販売網を活用した今後の売上収益増大が期待されています。

また、2024年10月、北京コンチネントは次期製品の有力な候補であるB型肝炎起因の肝線維症を適応としたF351の第3相臨床試験を中国にて完了し、臨床試験のトップラインデータの公表ができるよう鋭意進めております。更に、MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)起因の肝線維症適応に向け、グローバル展開を視野に入れております。

 

2024年11月14日に開示しましたとおり、米国及び中国を中心に革新的な新薬の研究開発を行っている米国子会社Cullgenは、リバースマージャーによって米国ナスダック市場の上場会社となることを発表いたしました。無事に上場を果たした際には、GYREに続く2社目となります。

Cullgenは独自の標的タンパク質分解誘導技術プラットフォームuSMITE™(ubiquitin-mediated, small molecule induced target elimination)を活用した創薬に引き続き邁進しております。アステラス製薬株式会社(以下「アステラス製薬」)と革新的なタンパク質分解誘導剤創出に向けた共同研究及びオプション契約を締結しており、本戦略的提携におけるアステラス製薬との共同研究は、順調に進展しております。

同社初のTRK分解剤の抗がん剤候補としてCG001419(開発番号)の臨床試験を中国にて進め、第1/2相臨床試験を開始しております。更に中国、米国に次ぐ3か国目としてオーストラリアに子会社を設立し、2025年1月に急性及び慢性疼痛を対象とした第1相臨床試験を開始いたしました。また、2024年10月9日に開示しましたとおり、中国及び米国で開発を進めている悪性血液腫瘍(白血病)治療薬である CG009301(開発番号)のIND(新薬臨床試験開始申請)が承認されました。他の複数のプログラムにつきましても、臨床試験開始を目指して研究開発を進めております。

 

② 販売費及び一般管理費ならびに研究開発費

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

差額

販売費及び一般管理費

△15,292,839

△15,771,868

△479,029

人件費

△5,318,748

△5,074,682

244,065

研究開発費

△2,557,803

△2,811,801

△253,998

 

販売費及び一般管理費

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、15,771,868千円(前連結会計年度比3.1%増)となりました。

 

研究開発費

当連結会計年度の研究開発費は、主にCullgenにおける臨床試験前と臨床試験の進展により、2,811,801千円(前連結会計年度比9.9%増)となりました。

 

③ 金融収益及び金融費用

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

差額

金融収益

771,527

707,799

△63,728

金融費用

△1,250,685

△1,880,621

△629,935

 

金融収益

当連結会計年度の金融収益は、707,799千円(前連結会計年度比8.3%減)となりました。この金融収益の減少は、主に為替差益の減少によるものです。

 

金融費用

当連結会計年度の金融費用は、1,880,621千円(前連結会計年度比50.4%増)となりました。この金融費用の増加は、主に為替差損の増加及びCullgenの資金調達に関する現金支出を伴わない利息費用の増加によるものです。

 

④ セグメント情報

医薬品事業

 北京コンチネントの主力製品であるアイスーリュイの中国市場での売上収益は順調に推移しました。また、Cullgenにおいて、アステラス製薬との標的タンパク質分解誘導剤の共同開発収益1,438,586千円を計上し、当連結会計年度の医薬品事業セグメントの売上収益とセグメント利益は、それぞれ18,303,785千円(前連結会計年度比20.3%減)、371,073千円(前連結会計年度比96.9%減)となりました。このセグメント利益の大幅な減少は、前連結会計年度において特殊要因であるGYRE普通株式の評価益及びアステラス製薬へのライセンス使用許諾収益等の計上があったことが、主な要因となります。これら特殊要因を除いた場合、セグメント利益は、前連結会計年度に比べ堅調な業績となっております。

 

医療機器事業

 医療機器事業セグメントの売上収益とセグメント利益は、前連結会計年度において取得した子会社を連結範囲に含めたことにより、それぞれ5,307,920千円(前連結会計年度比73.5%増)、1,031,227千円(前連結会計年度比4.7%減)となりました。

 

⑤ 生産、受注及び販売の実績

生産実績

 当社グループの業務は業務の性質上、生産として把握することが困難である為、記載を省略しております。

 

受注実績

 当社グループは受注生産を行っておりませんので、受注状況の記載はしておりません。

 

販売実績

 当連結会計年度の販売実績は次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

医薬品事業

18,303,785

△20.3

医療機器事業

5,307,920

74.9

合計

23,611,705

△9.2

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該総販売実績に対する割合は次のとおりです。

相手先

セグメント

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

Sinopharm

医薬品事業

5,365,748

20.6

5,105,295

21.6

Astellas Pharma Inc.

医薬品事業

5,804,973

22.3

1,438,586

6.1

(注) 相手先は企業グループ毎にまとめて記載しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当連結会計年度における経営指標の実績は次のとおりです。売上収益については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ⑤生産、受注及び販売の実績」に記載しております。

また、研究開発費については、その活動を「第2 事業の状況 6 研究開発活動」に記載しております。

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

売上収益合計

26,010,571

23,611,705

研究開発費

2,557,803

2,811,801

売上収益対比

9.8%

11.9%

 

① 重要性がある会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積り及び判断を行っております。また、実際の結果は見積りによる不確実性がある為、これらの見積りと異なる場合があります。当社の連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表、連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び「4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。

 

② 経営成績に重要な影響を与える要因について

 「第2 事業の状況、3 事業等のリスク」に記載のとおりとなっております。

 

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

a.当期の財政状態の概況

前連結会計年度において行われた企業結合に係る暫定的な会計処理が当連結会計年度に確定しております。この暫定的な会計処理の確定に伴い、当連結会計年度の連結財務諸表に含まれる比較情報において取得原価の当初配分額の見直しを反映しており、前連結会計年度末との比較・分析にあたっては、当該見直しを反映した後の確定額に基づく金額を使用しております。

 

連結財政状態

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

差額

資産合計

64,269,302

71,942,909

7,673,607

負債合計

27,764,834

32,229,009

4,464,174

資本合計

36,504,467

39,713,900

3,209,433

 

資産合計

 当連結会計年度末における資産合計は、71,942,909千円(前連結会計年度比11.9%増)となりました。この資産の増加は、主に無形資産の増加によるものです。

 

負債合計

 当連結会計年度末における負債合計は、32,229,009千円(前連結会計年度比16.1%増)となりました。この負債の増加は、主に短期借入金の増加によるものです。

 

資本合計

 当連結会計年度末における資本合計は、39,713,900千円(前連結会計年度比8.8%増)となりましたこの資本の増加は、主にその他の資本の構成要素の増加によるものです。

 

b.当期のキャッシュ・フローの概況

 

連結キャッシュ・フロー

(単位:千円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

差額

営業活動によるキャッシュ・フロー

6,549,337

△3,164,422

△9,713,759

投資活動によるキャッシュ・フロー

△6,842,661

△10,361,330

△3,518,669

財務活動によるキャッシュ・フロー

10,686,556

694,161

△9,992,394

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、3,164,422千円の支出(前連結会計年度は、6,549,337千円の収入)となりました。これは主に、法人所得税の支払によるものです。

 

投資活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、10,361,330千円の支出(前連結会計年度は、6,842,661千円の支出)となりました。これは主に、差入保証金・敷金の増加による支出及び有価証券の取得による支出によるものです。

 

財務活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、694,161千円の収入(前連結会計年度は、10,686,556千円の収入)となりました。これは主に、短期借入金の増加及び非支配持分からの払込による収入によるものです。

 

c.財務政策

当社グループの核となる事業は医薬品開発です。当社グループでは、当社グループ内にて当該医薬品候補化合物の収益化を成功させることを目指しており、中国市場においてはアイスーリュイにて実際に達成しております。これにより、当社グループは、十分なキャッシュ・フローを創出し、利益を得ることと、将来の売上収益獲得のために当社グループの医薬品開発パイプラインに継続的な投資を行うこととの両方を実現させるという経営戦略を遂行できるようになりました。このためには、研究開発費と売上利益とのバランスを慎重に保つという厳しい財務政策が必要とされます。

当社グループは主として、上記戦略遂行によって生み出された内部留保資金を当社グループの事業運営に活用しますが、当社経営陣は、医薬品開発のリスク及び将来の金融市場混乱の可能性を予見できないことを依然として認識しております。従いまして、当社グループの事業継続を確かなものにし、また、新たな事業機会が訪れた際に先手を打てるに十分な資金を保有しておくため、場合によっては外部資金調達に取り組むことがあります。そのような外部資金調達を行う場合においても、当社への出資拡大に伴う希薄化を最小限に抑えるとともに、当社グループの成長を支援して頂ける長期安定投資家の探索に努める方針であります。

当連結会計年度において予定している設備投資に係る資金需要の主なものは「第3 設備の状況、3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)Cullgenによるアステラス製薬と革新的なタンパク質分解誘導剤創出に向け戦略的提携

契約名

Research Collaboration and Exclusive Option Agreement

相手方の名称

Astellas Pharma Inc.

契約締結日

2023年6月14日

契約期間

特に定めなし

契約内容

本契約において、Cullgen社独自の技術プラットフォームuSMITE™とアステラス製薬の創薬ケイパビリティを融合し、複数の標的タンパク質分解誘導剤を目指します。Cullgenは契約一時金としてアステラス製薬より、3,500万米ドルを受領します。また、アステラス製薬がリードプログラムを行使した場合、更に8,500万ドルを受領します。そのうえ、ライセンスオプションとプログラムの進捗に応じたマイルストーンとして最大19億米ドル及び製品の売り上げに応じたロイヤルティーをアステラス製薬から受領する可能性があります。

 

(2)北京コンチネントによるライセンス契約締結

契約名

北京コンチネントによるライセンス契約締結

相手方の名称

江蘇万高薬業股份有限公司

契約締結日

2024年5月7日

契約期間

特に定めなし

契約内容

ニンテダニブのジェネリック製品販売に関する権利取得

 

(3)Cullgenによる米国ナスダック上場企業であるPulmatrix, Inc.(以下「PULM」)とのリバースマージャー(逆さ合併)に関する契約

契約名

Merger agreement with Cullgen Inc.

相手方の名称

Pulmatrix, Inc.

国名

アメリカ合衆国

契約締結日

2024年11月13日

契約内容

ナスダック上場企業であるPULMがCullgenの発行済株式100%を獲得し、CullgenをPULMの完全子会社にすると同時に、PULMとCullgenが合併、Cullgenの既存株主がPULM株式の半数以上を所有することで、実質的にCullgenが上場企業として存続していく内容となります。

 

6【研究開発活動】

(1)研究活動

当社グループの創薬研究では、Cullgenを中心に革新的な新規開発候補化合物(NCE)の開発を目指しております。Cullgenは、がん、疼痛、及び自己免疫疾患に対する酵素及び非酵素タンパク質を標的とした複数の新規化合物を含む創薬パイプラインの拡充のための研究開発を進めております。

2023年6月に、Cullgenはアステラス製薬と、革新的なタンパク質分解誘導剤創出に向けた共同研究及び独占的オプション契約を締結いたしました。本戦略的提携において、両社は新規E3リガンドを活用したCullgen独自の技術プラットフォームuSMITE™とアステラス製薬の創薬及び商業化能力を融合し、複数の標的タンパク質分解誘導剤の創出を目指します。Cullgenとアステラス製薬は臨床開発対象の化合物を見出すための共同研究を行い、アステラス製薬は見出された分解剤の開発及び商業化を担います。乳がんやその他の固形がんを対象として、アステラス製薬が同定したリードプログラムである細胞周期タンパク質に対する分解誘導剤候補化合物も含むアステラス製薬との共同研究は、順調に進展しております。

 

(2)開発活動

■アイスーリュイ〔中国語:艾思瑞®、英語:ETUARY®(一般名:ピルフェニドン)〕-北京コンチネント

 北京コンチネントは、アイスーリュイの適応を以下の疾患に拡大する臨床試験を進めております。

 

・糖尿病腎症(DKD):第1相完了、今後の進め方を中国当局と継続協議中

・結合組織疾患(CTD-ILD)を伴う間質性肺疾患(全身性硬化症(強皮症、SSc-ILD)と

皮膚筋炎(DM-ILD)):第3相臨床試験継続中

・じん肺治療薬(Pneumoconiosis,PD):第3相臨床試験継続中

 

■ニンテダニブ〔英語:Nintedanib〕-北京コンチネント

 ニンテダニブはIPF、全身性硬化症関連間質性肺疾患(SSc-ILD)及び進行性線維性間質性肺疾患(PF-ILD)を適応症に持つ治療薬です。2024年5月に、北京コンチネントが製造販売の権利を獲得いたしました。

 

■F351(一般名:ヒドロニドン)-北京コンチネント及びGYRE

 F351は肝線維症向け治療薬候補として、当社グループの医薬品ポートフォリオにおける重要な新薬候補であり、

世界の主要医薬品市場への参入に向けた戦略の非常に重要なものとなります。F351は、ブロックバスターと期待さ

れる新薬候補です。

 北京コンチネントは2024年10月、中国におけるB型慢性肝炎に起因する肝線維症患者を対象とした第3相臨床試験を完了いたしました。2025年第2四半期にトップラインデータを公表する予定です。

 GYREは、MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)起因の肝線維症適応に向け、グローバル展開を視野に入れております。

 

■F573(急性肝不全(ALF)・慢性肝不全の急性増悪(ACLF)治療薬)-北京コンチネント

 急性肝不全(ALF)や慢性肝不全の急性増悪(ACLF)の治療薬として、F573の第2相臨床試験を実施しており、2026年12月末までに第2相臨床試験を完了する予定です。

 

■F230(肺動脈性肺高血圧症治療薬)-北京コンチネント

 F230は、肺動脈性肺高血圧症の治療薬であり、2024年5月に、北京コンチネントは中国においてINDの承認を受けました。第1相臨床試験は2025年に開始する予定です。

 

■F528(慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬)-北京コンチネント

 F528は、複数の炎症性サイトカインを抑制する新規の抗炎症剤であり、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の進行を軽減

する可能性のある新薬候補として2026年にIND申請を予定しております。

 

■CG001419(TRK分解剤)-Cullgen

 CG001419は、業界初の選択的かつ強力な標的タンパク質分解誘導剤を活用した経口剤として開発を進めておりま

す。2023年7月に、同社初となるTRK分解剤の抗がん剤候補として第1/2相臨床試験を中国にて開始いたしました。また、2025年1月に急性及び慢性疼痛を対象とした第1相臨床試験をオーストラリアにて開始いたしました。

 

■CG009301(悪性血液腫瘍(白血病)治療薬)-Cullgen

 CG009301は、GSPT1 タンパク質を標的とした新規の分解薬であり、2024年10月に国家薬品監督管理局(NMPA)によりINDが承認されました。今後速やかに臨床試験へ移行いたします。

 

■オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)のジェネリック-北京コンチネント

 北京コンチネントは、オーファンドラッグの販売ラインナップ拡充のため、2024年6月に慢性肝疾患による血小板減少症の治療薬であるアバトロンボパグマレイン酸塩錠の販売承認を取得し、2025年1月にはITP(慢性特発性血小板減少症)を対象に適応症拡大の承認を受けました。

 

以上の結果、当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、全体では2,811,801千円となりました。