第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、「自然の摂理にのっとり、人類の創造的発展と世界平和に寄与する」という企業理念のもと、旅行のみならず様々な事業を通じて、常に変化・発展し続ける企業として、世界の平和に貢献できる新しいビジネスモデルの構築を目指します。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略および目標とする経営指標

当社グループは、既存の事業領域に加え、新たな可能性を追求し続けるべく新規事業領域へのチャレンジに積極的に取り組んでまいります。そして、現在の旅行事業を中心とした経営体制から変革し、より強固な事業ポートフォリオの確立および事業ポートフォリオの転換を通じた収益体質の強化を図り、更なる企業価値の向上を目指してまいります。また、これらを成し遂げるためには事業の持続的な成長が不可欠であり、各事業の売上高・営業利益の成長率を重視の上、財務の安定性基準として自己資本比率20%以上、収益性の基準としてROE10%以上を当面のターゲットといたします。なお、経営指標等を織り込んだ詳細な中期経営計画の策定につきましては、環境変化の予見がある程度可能であることを要件とし、2021年10月期からの3ヵ年計画、もしくは2022年10月期からの3ヵ年計画として検討を進めていく予定です。

 

(3)対処すべき課題

今後の経営環境につきましては、引き続き世界的な新型コロナウイルス感染症拡大に伴う景況感の悪化が懸念されており、終息時期が不透明な中、国内外において経済活動の回復が見通せない状況が続くと予想されます。

このような経営環境の中、当社グループが対処すべき主な課題は以下のとおりです。

 

① 新型コロナウイルス感染症拡大への対応

 当社グループにおいても、足元の業績悪化により、財務基盤が毀損されるなど大きな影響が出ているため、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を軽減することが重要な課題であると認識し、最優先で取り組んでまいります。

 

〇 財務の健全化

 自己資本の充実化及びフリーキャッシュフローを生み出す体制の構築が目下の課題と認識しております。状況に応じた資金調達や蓄積した保有資産の流動化等により、当面の手元流動性を確保しながら、コスト削減の徹底による体質強化、市場環境の見通しが改善するまでは投資計画を慎重に構えるなどキャッシュアウトを抑制し、キャッシュポジションの改善を図ってまいります。

 

〇 ウィズコロナ、アフターコロナ時代を見据えた経営

 コロナ禍における新しいコスト構造をベースとした経営を推進し、独自性や競争優位性を生かした事業展開により、早期の業績回復を目指してまいります。また、業界再編の可能性などアフターコロナの機会を確実に捉え、更なる成長を加速させてまいります。

 

② あらゆる変化への対応

 テクノロジーの進化により、社会やビジネスが劇的に変貌を遂げている中、既定概念にとらわれることなく新たな可能性を見出し、あらゆる変化に対応し続けていくことが、持続的な成長を可能にすると考えております。各事業領域において、生産性の向上や収益性の改善が当面の課題と認識しており、解決に向けデジタルトランスフォーメーションを推進し、効率的な事業構造への変革を図り、新たなビジネスモデルの確立を目指してまいります。

 

③ 顧客満足の追求と安全・安心な商品の提供

 世界中で信頼され、お客様からご支持いただけるグローバル企業になるために、快適で安全・安心なサービスの提供が不可欠であると考えております。当社グループの持つ世界ネットワークやインフラを最大限に活用し、新たな体験価値の創造や、充実したサービスの提供を図ることで、今後も、安全、安心、高品質な商品やサービス、情報の提供に努めてまいります。また、国内外においてサービスレベルの向上を図ることで、世界中のお客様に喜ばれ、ご支持いただけるよう取り組んでまいります。

 

2【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、財政状態及び株価等に影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、当社グループは、これらリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応について最大限の努力をする所存であります。

なお、本項に記載した将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2021年1月28日)現在において当社グループが判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限定されるものではありません。

 

① 新型コロナウイルス感染拡大の影響に関するリスク

当社グループの事業セグメントへの影響は、以下の通り分析しております。

セグメント名

主なカテゴリー

現状と見通し

旅行事業

海外旅行事業

訪日旅行事業

海外インバウンド事業

海外アウトバウンド事業

・各国の出入国規制等により、需要低迷が継続し甚大な影響を受けている。

・各国の出入国規制等に左右され、一部で規制解除の動きも見られるものの、2019年水準までの需要回復は2022年以降の想定となる。

 

国内旅行事業

・Go To キャンペーンのスタート以降は段階的に回復基調を辿り、2019年水準を超えて回復していたが、再度の緊急事態宣言等の影響を受け、需要は大きく冷え込んでいる。

・緊急事態宣言解除およびGo To キャンペーン再開(期間延長)による需要回復を見通す。

テーマパーク事業

ハウステンボス

ラグーナテンボス

・Go To キャンペーンのスタート以降は回復基調を辿り、2019年水準を超えて回復していたが、再度の緊急事態宣言等により、入場者数は大幅に減少している。

・緊急事態宣言解除およびGo To キャンペーン再開(期間延長)による需要回復を見通す。

ホテル事業

国内ホテル

・Go To キャンペーンのスタート以降はレジャー需要を中心に堅調に回復していたが、再度の緊急事態宣言等の影響を受け、宿泊者数は大きく減少している。

・緊急事態宣言解除およびGo To キャンペーン再開(期間延長)による需要回復を見通す。

・オリンピック開催方針による機会損失の可能性あり。

 

海外ホテル

・各国の出入国規制等により、需要低迷が継続し甚大な影響を受けている。

・外需への依存度が高く、各国の出入国規制等に左右され、2019年水準までの需要回復は2022年以降の想定となる。

九州産交グループ

バス事業

・バス輸送人員は、移動自粛等による一時的な減少から堅調に回復していたものの、再度の緊急事態宣言等の影響を受け、減少傾向となっている。

・2019年水準までの需要回復は2021年後半の想定となる。

エネルギー事業

電力小売事業

・最初の緊急事態宣言以降、一時的に大口顧客の需要減や営業活動の鈍化が見られたが、電力需要は回復している。

・2020年12月中旬より日本卸電力取引所の電力取引価格が過去に例を見ない高騰を続けており、大幅な原価率の悪化の可能性あり。

 

発電事業

・最初の緊急事態宣言等の影響を受け、発電所の建設に遅れが生じたものの、2020年11月より発電を開始している。

・経済活動の停滞により、発電燃料の生産が滞り在庫が枯渇することで燃料価格が高騰する可能性あり。

当社グループは、新型コロナウイルスの影響が長期化した場合を想定した資金計画に基づき、固定費用の圧縮や金融機関との協議を実施し、事業資金を確保できる体制を構築しています。

これらの対応策を継続して実施することにより、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断し、「継続企業の前提に関する注記」は記載しておりません。

② 旅行需要・業界動向に関するリスク

当社グループにおけるセグメント別売上高は、旅行事業が83.4%を占めております。中でも、国別の売上高は日本に集中してお59.4%を占めております。従って、日本における旅行事業の環境変化によって、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの各事業は、取引先のビジネスモデルの変革や異業種の新規参入など、他企業との厳しい競争状態にあり、持続的に競争優位性の確保に努めているものの、今後の展開によっては当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 自然災害・人為的災害の影響

当社グループにおける事業を取り巻く環境として、台風、津波、地震などの自然災害による、観光や各種インフラへの被害、感染症の流行、加えて、航空事故、テロや戦争などによる各国・各地域の不安定な政治的及び社会的状況などがありますが、これらが発生した場合の様々な影響により、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 情報漏洩・システム管理におけるリスク

当社グループでは、予約手配などの業務にコンピューターシステムを活用しており、多数のお客様の個人情報を管理しております。構築・運営には十分なセキュリティの確保に努めておりますが、通信ネットワークやプログラムの不具合、またコンピューターウィルス感染などにより、システム障害や情報漏洩、改ざんなどの重大な障害が生じた場合、当社グループの業務に重大な支障をきたす可能性があります。また、障害の規模によってはお客様へのサービス提供の中断や修復費用が増加するなど、当社グループの財政状態及び経営成績、社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 商品・サービス提供に関するリスク

当社グループでは、旅行商品内に含まれる飲食店の選定や、その他事業において行っている飲食店の営業において、品質管理基準マニュアルを策定し、食品の安全性に十分留意しておりますが、食中毒など衛生問題が発生した場合には、信用の失墜などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 為替レート・原油価格の変動

当社グループは、外貨建の取引を行っており、これに伴って外貨建の収益・費用及び資産・負債が発生しております。為替レートの変動による影響を軽減すべく為替予約等によるリスクヘッジを行っておりますが、急激な為替変動があった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、在外連結子会社の財務諸表を邦貨換算しているために、為替レートが変動した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。加えて、旅行事業において、原油価格の変動に伴い、海外旅行代金とは別に燃油特別付加運賃をお客様にご負担いただいておりますが、この燃油特別付加運賃の著しい上昇があった場合は、旅行総需要が停滞してしまう可能性があります。急激な原油価格の変動があった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 有価証券等保有資産価値の変動

当社グループは、上場及び非上場の株式及び債券等を保有しております。このため、時価を有する有価証券については株式市況及び債券市況の動向により、また時価のない有価証券については投資先会社の財政状態の動向により、売却損や評価損が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 固定資産等の減損

当社グループは、国内及び海外で実施した投資活動や買収に伴い発生した有形固定資産、無形資産、株式、のれん等を連結貸借対照表に資産として計上し、それぞれの事業価値及び事業統合による将来のシナジー効果が発現すると見積もられる合理的な期間で償却しておりますが、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が得られないと判断される場合には、当該資産等について減損損失を計上し、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ コンプライアンス

当社グループは、日本国内はもとより、海外の現地拠点が所在する国においても、様々な法令・規則・商慣習・社会的道徳などの下で事業活動を行っており、その遵守に努めております。しかしながら、予期しない新たな規制の導入、執行当局の方針の変更、理解や解釈の相違などの何らかの原因により、コンプライアンス違反と判断される事態が生ずる可能性があります。このようなコンプライアンス違反と判断される事態が生じた場合、法的手続き対応費用の発生や、ブランドイメージが毀損することなどにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

(1)経営成績の状況

当連結会計年度における経営環境は、一部で持ち直しの動きが見られたものの、新型コロナウイルス感染の世界的大流行の影響による企業収益の大幅な減少や雇用情勢の悪化など経済活動が停滞しており、依然として厳しい状況となりました。

このような環境の中、当社グループは、各国において政府の助成金を最大限に活用する等コスト削減の徹底に努めるとともに、コロナ禍に対応した体制の再編や働き方改革を推進し、「自然の摂理にのっとり、人類の創造的発展と世界平和に寄与する」という企業理念のもと、旅行のみならず様々な事業を通じて、常に変化・発展し続ける企業として、世界の平和に貢献できる新しいビジネスモデルの構築を目指してまいりました。

当連結会計年度における業績は以下のとおりです。

 

2019年10月期

2020年10月期

売上高(百万円)

808,510

430,283

売上総利益(百万円)

144,134

69,853

営業利益又は営業損失(△)(百万円)

17,540

△31,173

税金等調整前当期純利益

又は税金等調整前当期純損失(△)(百万円)

20,352

△34,924

親会社株主に帰属する当期純利益

又は親会社株主に帰属する当期純損失(△)(百万円)

12,249

△27,008

売上高は、前期と比較し3,782億円減少し、前期比53.2%の4,302億円となりました。これは、主に新型コロナウイルス拡大により甚大な影響を受けた旅行事業の大幅な減収によるものです。

販売費及び一般管理費は、主に人件費、広告費、賃借料等のコロナ禍に即したコスト削減策を実施したことにより255億円減少し、前期比79.8%の1,010億円となりました。

損益面においては、経営リソース配分の最適化を図りつつコスト削減に努めたものの、売上総利益減収が大きく311億円の営業損失(前期は営業利益175億円)となりました。また、雇用調整助成金等による特別利益を89億円計上した一方で、臨時休業による損失及び固定資産の減損損失等による特別損失を128億円計上したことで、税金等調整前当期純損失は349億円(前期は税金等調整前当期純利益203億円)となりました。そして、法人税等が前期と比較し97億円減少したことに加え、非支配株主持分に帰属する当期純損失46億円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は270億円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益122億円)となりました。

なお、セグメント別の当連結会計年度の業績は以下のとおりです。当連結会計年度より、従来「ハウステンボスグループ」として表示していた報告セグメントの名称を「テーマパーク事業」に変更しております。この変更はセグメント名称の変更であり、セグメント情報に与える影響はありません。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 セグメント情報等」をご参照ください。また、各セグメントの金額は、セグメント間取引を相殺消去する前の金額であります。

 

 

(旅行事業)

 

2019年10月期

2020年10月期

売上高(百万円)

722,464

359,630

営業利益又は営業損失(△)(百万円)

13,754

△21,128

当連結会計年度における旅行市場は、新型コロナウイルス感染症が世界的な拡がりとなり、各国で入国制限や渡航制限等の措置が継続するなど甚大な影響を受けており、非常に厳しい状況となりました。また、日本においても、今秋に一部の国・地域で出入国の制限緩和が合意されるなど回復の兆しが見られましたが、当連結会計年度における日本人出国者数は前期比32.3%の646万人、訪日外客数は前期比28.0%の896万人と大幅に減少いたしました。(出典:日本政府観光局(JNTO)当社につきましても、相次ぐフライトキャンセルや渡航制限の継続、全方面で企画旅行の催行を中止したことに加え、政府支援策であるGo To トラベルキャンペーンの効果が9月以降と限定的になったため、取り扱いは大幅に減少いたしました。このような状況下、国内外において人件費の削減や、営業拠点の統廃合等コロナ禍を乗り越えるべくコスト削減策を実施いたしました。また、需要の見込める国内旅行事業に経営資源を投入したほか、グローバル拠点を生かした独自のオンライン体験ツアーを展開するなど業績改善に努めたものの、売上高は、前期と比較し49.8%の3,596億円、営業損失211億円(前期は営業利益137億円)となりました。

 

(テーマパーク事業)

 

2019年10月期

2020年10月期

売上高(百万円)

28,086

13,684

営業利益又は営業損失(△)(百万円)

5,075

△3,393

当連結会計年度におけるテーマパーク市場は、新型コロナウイルス感染拡大により休園を余儀なくされたことに加え、緊急事態宣言による移動自粛の影響も大きく受け、厳しい状況となりました。また、緊急事態宣言解除後においても、Go To キャンペーン等の施策効果が限定的となり、段階的な回復に留まりました。主要テーマパークであるハウステンボスにおいては、感染防止策を講じつつ、自治体と連携した長崎県内限定プランなどの施策を実施した一方で、延べ56日間の休園及び人気イベントの中止等の影響が残りました。その結果、当連結会計年度におけるハウステンボスの入場者数は、前期と比較し54.4%の1,386千人と大きく減少し、売上高は、前期と比較し48.7%の136億円、営業損失33億円(前期は営業利益50億円)となりました。

 

(ホテル事業)

 

2019年10月期

2020年10月期

売上高(百万円)

12,676

8,685

営業損失(△)(百万円)

△217

△3,564

EBITDA(百万円)

1,059

△296

当連結会計年度におけるホテル市場は、新型コロナウイルス感染症が世界的な拡がりとなり、各国の出入国規制や移動制限等の措置が継続するなど甚大な影響を受けており、厳しい状況となりました。変なホテルを中心とした国内ホテルでは、コロナ禍に対応した「感染リスク軽減プラン」の提供や「Go To トラベルキャンペーン」を活用した集客強化に努めたものの回復は限定的となりました。海外ホテルにおいては、外需比率が高く国際旅行の困難な状況が継続するなど、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受け、宿泊者数が減少いたしました。その結果、売上高は前期と比較し68.5%の86億円、営業損失35億円(前期は営業損失2億円)、EBITDAベースにおいてもマイナスとなりました。

 

 

(九州産交グループ)

 

2019年10月期

2020年10月期

売上高(百万円)

22,230

19,177

営業利益又は営業損失(△)(百万円)

158

△2,132

本拠地である熊本県内の景気は、一部に持ち直しの動きがみられるものの、新型コロナウイルス感染症などの影響により、厳しい状態が続いております。九州産交グループにおいても、緊急事態宣言以降、移動自粛によるバス利用者数の落ち込みに加え、大型商業施設「サクラマチクマモト」の来館者数が半減するなど厳しい状況となりました。緊急事態宣言解除後は、回復基調となりましたが、売上高は前期と比較し86.3%の191億円、営業損失21億円(前期は営業利益1億円)となりました。

 

(エネルギー事業)

 

2019年10月期

2020年10月期

売上高(百万円)

20,461

26,393

営業利益(百万円)

974

163

当連結会計年度における電力市場は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、経済活動の停滞や外出自粛の影響が表れた4~6月において、GDP下落率に比べて需要の落ち込みは小さかったものの、電力需要の減少が顕著に見られました(出典:MPX)。一方で、原油価格が下落に転じたことで安定的な調達環境となりました。電力小売事業を担うHTBエナジーでは、需要期である夏季を前にプロモーションを大幅に増やすなど宣伝活動を強化し、契約数の増加に努めました。その結果、売上高は前期と比較し129.0%の263億円、営業利益は前期と比較し16.8%の1億円となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ1,120億96百万円減少し、804億45百万円となりました。営業活動により資金は577億68百万円減少、投資活動により資金は478億51百万円減少、財務活動により資金は56億2百万円減少いたしました。

 各キャッシュ・フローの状況についての詳細は以下のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、営業活動により資金は577億68百万円の減少となりました。これは主に、旅行前受金の減少(779億12百万円)、税金等調整前当期純損失(349億24百万円)により資金が減少し、一方で旅行前払金の減少(441億13百万円)、非資金項目である減価償却費(128億73百万円)により資金が増加したことによるものです。

また、前連結会計年度において、営業活動により資金は393億44百万円の増加となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益(203億52百万円)、非資金項目である減価償却費(88億50百万円)、旅行前受金の増加(54億38百万円)により資金が増加したことによるものです。

以上の結果、当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ971億12百万円の減少となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、投資活動により資金は478億51百万円の減少となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出(665億15百万円)、定期預金の預入による支出(189億41百万円)により資金が減少し、一方で定期預金の払戻による収入(302億14百万円)、投資有価証券の売却による収入(62億99百万円)、有形及び無形固定資産の売却による収入(18億62百万円)により資金が増加したことによるものです。

また、前連結会計年度において、投資活動により資金は521億16百万円の減少となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出(758億85百万円)、投資有価証券の取得による支出(69億87百万円)が、再開発事業による収入(276億58百万円)を上回ったことによるものです。

以上の結果、当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ42億64百万円の増加となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、財務活動により資金は56億2百万円の減少となりました。これは主に、長・短借入金の返済による支出(867億77百万円)、配当金の支払(19億円)により資金が減少し、一方で長・短借入れによる収入(751億26百万円)、株式発行による収入(77億28百万円)により資金が増加したことによるものです。

また、前連結会計年度において、財務活動により資金は153億62百万円の増加となりました。これは主に、長・短借入れによる収入(2,183億91百万円)により資金が増加し、一方で長・短借入金の返済による支出(1,697億37百万円)、社債及び転換社債の償還による支出(300億円)により資金が減少したことによるものです。

以上の結果、当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ209億65百万円の減少となりました。

 

(3)生産、受注及び販売の実績

① 仕入実績

 当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2019年11月1日

  至 2020年10月31日)

 前年同期比(%)

旅行事業(百万円)

309,902

50.5

テーマパーク事業(百万円)

2,451

66.6

ホテル事業(百万円)

3,790

85.6

九州産交グループ(百万円)

19,704

97.3

エネルギー事業(百万円)

22,617

127.1

報告セグメント計(百万円)

358,466

54.3

その他(百万円)

1,963

47.4

 合計(百万円)

360,430

54.3

 (注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ。)は生産形態をとっていないため、生産状況にかわって仕入実績について記載しております。

3.本表の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

② 受注実績

当社グループは受注形態をとっていないため、該当事項はありません。

 

③ 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2019年11月1日

  至 2020年10月31日)

 前年同期比(%)

旅行事業(百万円)

358,904

49.8

テーマパーク事業(百万円)

12,938

49.1

ホテル事業(百万円)

8,142

69.3

九州産交グループ(百万円)

19,174

86.3

エネルギー事業(百万円)

26,279

129.2

報告セグメント計(百万円)

425,439

53.1

その他(百万円)

4,844

65.8

 合計(百万円)

430,283

53.2

 (注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.当社グループは、取扱高(販売価格)を売上高として計上しております。

3.本表の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(4)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 財政状態の分析

(ⅰ)流動資産

当連結会計年度末における流動資産の残高は、1,387億89百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,094億90百万円の減少となりました。

主な要因といたしましては、現金及び預金の減少(前期末比1,239億41百万円減)、旅行前払金の減少(同448億48百万円減)、受取手形及び売掛金の減少(同299億53百万円減)が挙げられます。

 

(ⅱ)固定資産

当連結会計年度末における固定資産の残高は、2,749億39百万円となり、前連結会計年度末に比べ459億88百万円の増加となりました。

主な要因といたしましては、有形固定資産の増加(前期末比551億12百万円増)がある一方で、投資有価証券の減少(同56億76百万円減)が挙げられます。

 

(ⅲ)流動負債

当連結会計年度末における流動負債の残高は、926億49百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,389億22百万円の減少となりました。

主な要因といたしましては、旅行前受金の減少(前期末比787億38百万円減)、営業未払金の減少(同290億53百万円減)、未払金の減少(同172億79百万円減)が挙げられます。

 

(ⅳ)固定負債

当連結会計年度末における固定負債の残高は、2,253億61百万円となり、前連結会計年度末に比べ34億43百万円の増加となりました。

主な要因といたしましては、長期借入金の増加(前期末比32億2百万円増)が挙げられます。

 

(ⅴ)純資産

当連結会計年度末における純資産の残高は、961億44百万円となり、前連結会計年度末に比べ277億64百万円の減少となりました。

主な要因といたしましては、親会社株主に帰属する当期純損失の計上による利益剰余金の減少(前期末比270億8百万円減)、為替換算調整勘定の減少(同35億32百万円減)、非支配株主持分の減少(同29億3百万円減)がある一方で、第三者割当増資による資本金及び資本剰余金の増加(同80億円増)が挙げられます。

 

② 経営成績の分析

(ⅰ)売上高

当連結会計年度の売上高は、4,302億83百万円となり、前連結会計年度に比べ3,782億27百万円の減少(前期比53.2%)となりました。報告セグメントごとの売上高については、旅行事業は3,596億30百万円(同49.8%)、テーマパーク事業は136億84百万円(同48.7%)、ホテル事業は86億85百万円(同68.5%)、九州産交グループは191億77百万円(同86.3%)、エネルギー事業は263億93百万円(同129.0%)となりました。

なお、当連結会計年度より、従来「ハウステンボスグループ」として表示していた報告セグメントの名称を「テーマパーク事業」に変更しております。この変更はセグメント名称の変更であり、セグメント情報に与える影響はありません。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 セグメント情報等」をご参照ください。なお、報告セグメントごとの金額は、セグメント間取引を相殺消去する前の金額であります。

 

 

(ⅱ)営業費用

当連結会計年度の営業費用は、4,614億56百万円となり、前連結会計年度に比べ3,295億13百万円の減少(前期比58.3%)となりました。

そのうち、売上原価は3,604億30百万円となり、前連結会計年度に比べ3,039億45百万円の減少(同54.3%)となりました。

また、販売費及び一般管理費は1,010億26百万円となり、前連結会計年度に比べ255億67百万円の減少(同79.8%)となりました。売上高に対する販売費及び一般管理費の比率は、前連結会計年度より7.8ポイント上昇し23.5%となりました。

 

(ⅲ)営業利益又は営業損失

当連結会計年度の営業損失は、311億73百万円(前期は営業利益175億40百万円)となり、前連結会計年度に比べ487億13百万円の減少となりました。

 

(ⅳ)経常利益又は経常損失

当連結会計年度の経常損失は、309億94百万円(前期は経常利益170億89百万円)となり、前連結会計年度に比べ480億83百万円の減少となりました。

主な営業外収益として、受取利息(12億69百万円)、補助金収入(5億47百万円)、また営業外費用として、支払利息(10億94百万円)が挙げられます。

 

(ⅴ)親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失

当連結会計年度の税金等調整前当期純損失は349億24百万円(前期は税金等調整前当期純利益203億52百万円)となり、前連結会計年度に比べ552億77百万円の減少となりました。

また、当連結会計年度の法人税等は△32億48百万円(前期は64億77百万円)となり、前連結会計年度に比べ97億25百万円の減少となりました。

以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は270億8百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益122億49百万円)となり、前連結会計年度に比べ392億57百万円の減少となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析並びに資本の財源及び資金の流動性

キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金、設備投資及びM&Aであります。運転資金につきましては金融機関からの借入により資金調達を行っております。設備投資及びM&Aにつきましては金融機関からの借入、社債及び転換社債型新株予約権付社債の発行、増資により資金調達を行っております。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、貸倒引当金、賞与引当金、退職給付に係る負債等の計上について見積り計算を行っており、これらの見積りについては過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。詳細については、「第5 経理の状況  1 連結財務諸表 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しています。

なお、新型コロナウイルスの感染拡大に関する重要な会計上の見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況  1 連結財務諸表 (1)連結財務諸表 注記事項 追加情報」に記載しています。

 

4【経営上の重要な契約等】

 当社は、IATA(国際航空運送協会)公認旅客代理店として1990年12月31日認可(期限は認可取消しになるまで有効)を受け、旅客代理店契約(PASSENGER SALES AGENCY AGREEMENT)を結んでおります。

(注)IATA(国際航空運送協会)について

 1945年に設立され、主に国際線を運航している航空会社が加盟している民間機関です。本部は、カナダのモントリオールと、スイスのジュネーブにあり、IATA公認代理店向けの諸施策の決定や精算事務はジュネーブで行われています。

 IATAの権限は、運賃の取り決め、運送条件の取り決め、代理店対策、運航上の取り決め及び運賃決済などがあります。

 IATAの公認代理店の認可を受けることで自社で国際線航空券が発券できます。

 

5【研究開発活動】

該当事項はありません。