第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、「自然の摂理にのっとり、人類の創造的発展と世界平和に寄与する」という企業理念のもと、旅行のみならず様々な事業を通じて、常に変化・発展し続ける企業として、世界の平和に貢献できる新しいビジネスモデルの構築を目指します。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略および目標とする経営指標

当社グループは、既存の事業領域に加え、新たな可能性を追求し続けるべく新規事業領域へのチャレンジに積極的に取り組んでまいります。そして、現在の旅行事業を中心とした経営体制から変革し、より強固な事業ポートフォリオの確立および事業ポートフォリオの転換を通じた収益体質の強化を図り、更なる企業価値の向上を目指してまいります。また、これらを成し遂げるためには事業の持続的な成長が不可欠であり、各事業の売上高・営業利益の成長率を重視の上、財務の安定性基準として自己資本比率20%以上、収益性の基準としてROE10%以上を当面のターゲットといたします。なお、経営指標等を織り込んだ詳細な中期経営計画の策定につきましては、環境変化の予見がある程度可能であることを要件とし、2022年10月期からの3ヵ年計画、もしくは2023年10月期からの3ヵ年計画として検討を進めていく予定です。

 

(3)対処すべき課題

今後の経営環境につきましては、引き続き世界的な新型コロナウイルス感染拡大に伴う景況感の悪化が懸念されており、終息時期が不透明な中、国内外において経済活動の回復が見通せない状況が続くと予想されます。

このような経営環境の中、当社グループが対処すべき主な課題は以下のとおりです。

 

① 新型コロナウイルス感染症拡大への対応

 当社グループにおいても、足元の業績悪化により、財務基盤が毀損されるなど大きな影響が出ているため、新型コロナウイルス感染拡大の影響を軽減することが重要な課題であると認識し、最優先で取り組んでまいります。

 

〇 財務の健全化

 自己資本の充実化及びフリーキャッシュフローを生み出す体制の構築が目下の課題と認識しております。状況に応じた資金調達や蓄積した保有資産の流動化等により、当面の手元流動性を確保しながら、コスト削減の徹底による体質強化、市場環境ビジビリティの改善までは投資計画を慎重に構えるなどキャッシュアウトを抑制し、キャッシュポジションの改善を図ってまいります。

 

〇 ウィズコロナ、アフターコロナ時代を見据えた経営

 コロナ禍における新しいコスト構造をベースとした経営を推進し、独自性や競争優位性を生かした事業展開により、早期の業績回復を目指してまいります。また、業界再編の可能性などアフターコロナの機会を確実に捉え、更なる成長を加速させてまいります。

 

② あらゆる変化への対応

 当社では、認識の視野を広げ、現状を知ることが、未知を考え・守るきっかけとなり、ひいては、SDGsへ繋がると考えています。地域の文化や歴史遺産、自然環境などの地域資源に目を向け、その土地の暮らしに敬意を払うことができるよう、また全ての関係者一人一人が各々の意識や行動に責任を持つよう、持続可能な観光の実現のための取組みに注力してまいります。

 加えて、テクノロジーの進化とともに社会やビジネスが劇的に変貌を遂げている中で、既定概念に捉われることなく新たな可能性を見出し、あらゆる変化に対応し続けていくことが、持続的な成長を可能にすると考えております。

 各事業領域において、生産性の向上や収益性の改善が当面の課題と認識しており、解決に向けデジタルトランスフォーメーションを推進し、効率的な事業構造への変革を図り、新たなビジネスモデルの確立を目指すと共に、今後もグループ企業理念のもと、全てのステークホルダーの理解を深め、サステナブルな取組みを推進すべく、取り組んでまいります。

 

③ 顧客満足の追求と安全・安心な商品の提供

 世界中で信頼され、お客様からご支持いただけるグローバル企業になるために、快適で安全・安心なサービスの提供が不可欠であると考えております。当社グループの持つ世界ネットワークやインフラを最大限に活用し、新たな体験価値の創造や、充実したサービスの提供を図ることで、今後も、安全、安心、高品質な商品やサービス、情報の提供に努めてまいります。また、国内外においてサービスレベルの向上を図ることで、世界中のお客様に喜ばれ、ご支持いただけるよう取り組んでまいります。

 

④ グループガバナンスの強化

 当連結会計年度において、連結子会社の社長等による、GoToトラベル事業の趣旨に反した申請事実が発生いたしました。今般のGoToトラベル不正受給問題に係る調査の過程においては、GoToトラベル事務局による宿泊実態等に関する調査が、2020年12月から開始されていたにも関わらず、その状況に関しては、長期間にわたり上記連結子会社2社から親会社に対する報告がなされておらず、また、親会社としてもそれを把握することができておりませんでした。各社のコンプライアンス意識の乏しさや、親子間の適切な情報共有が行われていなかったという当社の関係会社管理体制については非常に反省すべき点であると認識しております。
 当社としては、こうした事実の発生を重く受け止め、以下の再発防止に向けた改善措置を着実に実施し、より良いグループ運営を実行し信頼回復に努めてまいります。
 

〇 コンプライアンス意識の改革
 当社のリスク・コンプライアンス委員会の活動を通じ、当社グループのコンプライアンス施策の実施、コンプライアンス意識の向上を図ります。事務局としてのリスク管理室は、子会社役職員にコンプライアンス違反が疑われる事案に遭遇した際の報告・相談窓口として機能します。また、経営トップがコンプライアンス遵守を発信するとともに、Go To トラベル事業の趣旨の再確認を含むコンプライアンス研修を実施します。さらに、グループ各社のマネジメント層との面談を実施し、コンプライアンス意識の確認を進めます。

 

〇 各社取締役会による監督機能の強化
 社長の業務執行に対する監視・監督機能を強化するため、各社取締役会における付議事項の見直しを実施するとともに、十分な検討時間や事前の情報共有、事後の進捗報告等により取締役会の審議の実質化・充実化を図ります。また、従前当社役職員からの役員任命が行われてこなかった子会社についての任命要否を再検討するとともに、現在の任命役職員の定期的な見直しを行ってまいります。

 

〇 親会社による子会社管理の強化

 前記のとおり、従前当社役職員からの役員任命が行われてこなかった会社(特に当社から見た孫会社の中で、グループ連結業績に与える影響が大きいと思われる会社)について任命要否を検討します。また、関係会社管理規程を見直して一定金額以上の経常的取引についても報告義務を課すほか、事前承認・報告ルールの周知徹底及び事後チェックを通じて運用状況を改善してまいります。また、人材の採用・育成・確保等を含めた関係会社管理部門の体制の強化を図ります。
 

〇 内部監査の強化

 内部監査については、IT を活用したリスク分析の強化、監査部門の人員補充を含めた監査体制の強化並びに助成金受給に関する項目追加など監査項目の見直しを検討してまいります。
 

〇 不祥事の早期発見のための取組み

 内部通報制度をグループ横断型の制度とし、定期的に制度の周知を図ります。また、グループ各社経営層に対する定期的なアンケートを通じてコンプライアンス意識の浸透や不正発生への抑止力を高めます。
 

〇 その他の再発防止に向けた改善措置(IT 統制について)
 内部不正の早期発見や事後的監査の効率的実施、IT 統制の観点から各種施策を実施してまいります。

 

2【事業等のリスク】

当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

① 継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは、前連結会計年度から継続して多額の営業損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上しているため、監査・保証実務委員会報告第74号「継続企業の前提に関する開示について」に照らすと、当連結会計年度末において継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しているとされます。

当社グループは、このため、固定費用の圧縮や有価証券・不動産など保有資産の売却を進めるとともに、2021年11月2日開催の取締役会において第三者割当増資による資金調達を行うことを決議しており、また、取引先金融機関に対して既存の借入契約の維持(リファイナンス)を要請しております。

当社グループは、新型コロナウイルス感染症の収束時期の合理的な予測とこれらの対応策の効果を反映した資金繰り計画に基づいて、2022年10月31日まで十分な資金を有することが可能と判断しておりますので、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。

 

② 新型コロナウイルス感染拡大の影響に関するリスク

当社グループの事業セグメントへの影響は、以下の通り分析しております。

セグメント名

主なカテゴリー

現状と見通し

旅行事業

海外旅行事業

訪日旅行事業

海外インバウンド事業

海外アウトバウンド事業

・各国の出入国規制等により、需要低迷が継続し甚大な影響を受けている。

・2022年春以降、国境を越えた移動が徐々に再開された後、旅行者数が段階的に回復に向かうと見通す。

 

国内旅行事業

・日本国内でのワクチン接種が進み、緊急事態宣言解除により需要の回復がみられる。

・GoToトラベルキャンペーン再開(期間延長)による需要回復を見通す。

テーマパーク事業

ハウステンボス

ラグーナテンボス

・緊急事態宣言解除以降は回復基調となり、入場者数は増加している。2019年水準に近づきつつある。

・GoToトラベルキャンペーン再開(期間延長)による需要回復を見通す。

ホテル事業

国内ホテル

・緊急事態宣言の解除を受け、宿泊者数は増加傾向にあり、需要の回復がみられる。

・GoToトラベルキャンペーン再開(期間延長)による需要回復を見通す。

 

海外ホテル

・各国の出入国規制等により、需要低迷が継続し甚大な影響を受けている。

・外需への依存度が高く、各国の出入国規制等に左右され、2019年水準までの需要回復は2022年後半以降の想定となる。

九州産交グループ

バス事業

・まん延防止等重点措置の解除に加え、コロナ感染者の減少により徐々に経済活動も再開の兆しが見えており、バス稼働率は上昇傾向である。

・2019年水準までの需要回復は2022年後半の想定となる。

 

③ 旅行需要・業界動向に関するリスク

当社グループにおけるセグメント別売上高は、旅行事業が36.2%を占めております。中でも、国別の売上高は日本に集中しており26.9%を占めております。従って、日本における旅行事業の環境変化によって、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの各事業は、取引先のビジネスモデルの変革や異業種の新規参入など、他企業との厳しい競争状態にあり、持続的に競争優位性の確保に努めているものの、今後の展開によっては当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 自然災害・人為的災害の影響

当社グループにおける事業を取り巻く環境として、台風、津波、地震などの自然災害による、観光や各種インフラへの被害、感染症の流行、加えて、航空事故、テロや戦争などによる各国・各地域の不安定な政治的及び社会的状況などがありますが、これらが発生した場合の様々な影響により、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 情報漏洩・システム管理におけるリスク

当社グループでは、予約手配などの業務にコンピューターシステムを活用しており、多数のお客様の個人情報を管理しております。構築・運営には十分なセキュリティの確保に努めておりますが、通信ネットワークやプログラムの不具合、またコンピューターウイルス感染などにより、システム障害や情報漏洩、改ざんなどの重大な障害が生じた場合、当社グループの業務に重大な支障をきたす可能性があります。また、障害の規模によってはお客様へのサービス提供の中断や修復費用が増加するなど、当社グループの財政状態及び経営成績、社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 商品・サービス提供に関するリスク

当社グループでは、旅行商品内に含まれる飲食店の選定や、その他事業において行っている飲食店の営業において、品質管理基準マニュアルを策定し、食品の安全性に十分留意しておりますが、食中毒など衛生問題が発生した場合には、信用の失墜などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 為替レート・原油価格の変動

当社グループは、外貨建の取引を行っており、これに伴って外貨建の収益・費用及び資産・負債が発生しております。為替レートの変動による影響を軽減すべく為替予約等によるリスクヘッジを行っておりますが、急激な為替変動があった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、在外連結子会社の財務諸表を邦貨換算しているために、為替レートが変動した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。加えて、旅行事業において、原油価格の変動に伴い、海外旅行代金とは別に燃油特別付加運賃をお客様にご負担いただいておりますが、この燃油特別付加運賃の著しい上昇があった場合は、旅行総需要が停滞してしまう可能性があります。急激な原油価格の変動があった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 有価証券等保有資産価値の変動

当社グループは、上場及び非上場の株式及び債券等を保有しております。このため、時価を有する有価証券については株式市況及び債券市況の動向により、また時価のない有価証券については投資先会社の財政状態の動向により、売却損や評価損が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑨ 固定資産等の減損

当社グループは、国内及び海外で実施した投資活動や買収に伴い発生した有形固定資産、無形資産、株式、のれん等を連結貸借対照表に資産として計上し、それぞれの事業価値及び事業統合による将来のシナジー効果が発現すると見積もられる合理的な期間で償却しておりますが、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が得られないと判断される場合には、当該資産等について減損損失を計上し、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ コンプライアンス

当社グループは、日本国内はもとより、海外の現地拠点が所在する国においても、様々な法令・規則・商慣習・社会的道徳などの下で事業活動を行っており、その遵守に努めております。しかしながら、予期しない新たな規制の導入、執行当局の方針の変更、理解や解釈の相違などの何らかの原因により、コンプライアンス違反と判断される事態が生ずる可能性があります。このようなコンプライアンス違反と判断される事態が生じた場合、法的手続き対応費用の発生や、ブランドイメージが毀損することなどにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

(1)経営成績の状況

当連結会計年度における経営環境は、一部で持ち直しの動きが見られたものの、新型コロナウイルス感染の世界的大流行の影響による企業収益の大幅な減少や雇用情勢の悪化など経済活動が停滞しており、依然として厳しい状況となりました。

このような環境の中、当社グループは、各国において政府の助成金を最大限に活用する等コスト削減の徹底に努めるとともに、コロナ禍に対応した体制の再編や働き方改革を推進し、「自然の摂理にのっとり、人類の創造的発展と世界平和に寄与する」という企業理念のもと、旅行のみならず様々な事業を通じて、常に変化・発展し続ける企業として、世界の平和に貢献できる新しいビジネスモデルの構築を目指してまいりました。

当連結会計年度における業績は以下のとおりです。

 

2020年10月期

2021年10月期

売上高(百万円)

430,283

118,564

売上総利益(百万円)

69,853

16,394

営業損失(△)(百万円)

△31,173

△64,048

税金等調整前当期純損失(△)(百万円)

△34,924

△55,207

親会社株主に帰属する当期純損失(△)(百万円)

△27,008

△54,356

売上高は、前期と比較し3,117億18百万円減少し、前期比27.6%の1,185億64百万円となりました。これは、主に新型コロナウイルス感染拡大により甚大な影響を受けた旅行事業の大幅な減収によるものです。

販売費及び一般管理費は、主に人件費、広告費、賃借料等のコロナ禍に即したコスト削減策を実施したことにより205億83百万円減少し、前期比79.6%の804億43百万円となりました。

損益面においては、経営リソース配分の最適化を図りつつコスト削減に努めたものの、売上総利益の減少が大きく影響し、640億48百万円の営業損失(前期は営業損失311億73百万円)となりました。また、雇用調整助成金等による特別利益を168億25百万円計上した一方で、臨時休業による損失及び固定資産の減損損失等による特別損失を84億75百万円計上したことで、税金等調整前当期純損失は552億7百万円(前期は税金等調整前当期純損失349億24百万円)となりました。そして、法人税等を25億36百万円計上したことに加え、非支配株主に帰属する当期純損失33億87百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は543億56百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失270億8百万円)となりました。

なお、セグメント別の当連結会計年度の業績は以下のとおりです。また、各セグメントの金額は、セグメント間取引を相殺消去する前の金額であります。

 

 

(旅行事業)

 

2020年10月期

2021年10月期

売上高(百万円)

359,630

43,029

営業損失(△)(百万円)

△21,128

△38,336

当連結会計年度における旅行事業は、一部の国と地域においては新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、各国内での旅行需要の動きが見られたものの、依然、入国制限や渡航制限等の措置が継続されているため、非常に厳しい状況となりました。当連結会計年度における日本人出国者数は前期比7.4%の47万人、訪日外客数は前期比3.7%の32万人と、ピーク時であった2019年度と比較し、大幅に減少いたしました。(出典:日本政府観光局(JNTO))

当社につきましても、政府支援策であるGoToトラベルキャンペーンの実施や、国内におけるワクチン接種率の拡大により、一時は需要回復の傾向がみられたものの、水際対策に基づいた帰国後の待機期間をはじめ、相次ぐフライトキャンセルや渡航制限の継続、全方面で海外企画旅行の催行を中止したことに加え、約9ヵ月に及ぶまん延防止等重点措置と緊急事態宣言が相次いだため、取り扱いは大幅に減少いたしました。このような状況下、社員のグループ外出向をはじめ、各国においてもコスト削減を継続し、政府からの助成金等を最大限活用するなど、コロナ禍に対応した経営体制の再編や働き方改革を推し進めました。需要の見込める国内旅行事業に経営資源を投入したほか、グローバル拠点を生かした独自のオンライン体験ツアーや非旅行事業の展開を強化するなど業績改善に努めたものの、売上高は前期と比較し12.0%の430億29百万円、営業損失は383億36百万円(前期は営業損失211億28百万円)となりました。

 

(テーマパーク事業)

 

2020年10月期

2021年10月期

売上高(百万円)

14,113

15,126

営業損失(△)(百万円)

△3,403

△3,559

当連結会計年度におけるテーマパーク事業は、GoToトラベルキャンペーンの効果により、一時的に入場者数が増加するも、その後の全国一斉停止に加え、政府による緊急事態宣言の発令や延長により、再び厳しい状況となりました。また各テーマパーク共に、感染防止策を講じつつ積極的なイベント展開を実施するも、新規感染者の全国的増加に引き続き新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、当連結会計年度におけるハウステンボス入場者数は、前期と比較し92.2%の1,277千人と減少し、売上高は前期と比較し107.2%の151億26百万円、営業損失は35億59百万円(前期は営業損失34億3百万円)となりました。

 

(ホテル事業)

 

2020年10月期

2021年10月期

売上高(百万円)

7,952

4,757

営業損失(△)(百万円)

△3,481

△5,868

EBITDA(百万円)

△227

△2,557

当連結会計年度におけるホテル事業は、「変なホテル」での展開を中心に進めており、当連結会計年度におきましては、奈良・石川・宮城に3軒の「変なホテル」を開業いたしました。また、国内初となる既存ホテルの不動産取得および事業継承となった「リゾートホテル久米アイランド」や、ウォーターマークホテル京都、三重県の日本最大級の商業施設リゾート「VISON」に「HOTEL VISON」・「旅籠ヴィソン」、旅館再生事業の第一号となる石川県粟津温泉の「満天ノ 辻のや」を開業するなど、多彩なラインナップで、地域の特性に沿った新規開発を進めてまいりました。しかしながら、国内では新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けました。また、海外のホテルにおいては、各国の出入国規制や移動制限等の措置が継続するなど甚大な影響を受けており、宿泊者数が減少いたしました。その結果、売上高は前期と比較し59.8%の47億57百万円、営業損失は58億68百万円(前期は営業損失34億81百万円)、EBITDAベースにおいては25億57百万円のマイナス(前期は2億27百万円のマイナス)となりました。

 

 

(九州産交グループ)

 

2020年10月期

2021年10月期

売上高(百万円)

19,177

16,362

営業損失(△)(百万円)

△2,132

△2,712

当連結会計年度における九州産交グループは、一時はGoToトラベルキャンペーンの効果や外出自粛の緩和もあり、限定的に需要の回復がみられたものの、政府によるまん延防止等重点措置の発出や、熊本県独自の感染リスクレベルが最上位まで発令されたことを受け、バス事業では路線の運休や減便、飲食物販事業でも時短営業や休業が相次ぎました。また、大型商業施設「サクラマチクマモト」の入館者数も減少するなど、依然として新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、売上高は前期と比較し85.3%の163億62百万円、営業損失は27億12百万円(前期は営業損失21億32百万円)となりました。

 

(エネルギー事業)

 

2020年10月期

2021年10月期

売上高(百万円)

26,393

37,351

営業利益又は営業損失(△)(百万円)

163

△10,264

当連結会計年度におけるエネルギー事業は、電力小売事業において新プランやサービスの拡充を図り契約数の増加に努め、供給量は堅調に推移したものの、電力卸価格の高騰による影響を非常に大きく受けました。また、発電事業においては、バイオマス発電所で使用する燃料の価格高騰の影響が続き、稼働率を調整しながらの運転となりました。

その結果、売上高は前期と比較し141.5%の373億51百万円、営業損失は102億64百万円(前期は営業利益1億63百万円)となりました。

(2)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ76億33百万円増加し、880億79百万円となりました。営業活動により資金は283億97百万円減少、投資活動により資金は70億95百万円減少、財務活動により資金は407億11百万円増加いたしました。

各キャッシュ・フローの状況についての詳細は以下のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、営業活動により資金は283億97百万円の減少となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失(552億7百万円)、預り金を含むその他の負債の増加20億62百万円)、旅行前払金の増加(11億19百万円)により資金が減少し、一方で非資金項目である減価償却費(125億83百万円)、未収入金を含むその他の資産の減少(83億79百万円)、仕入債務の増加(36億74百万円)により資金が増加したことによるものです。

また、前連結会計年度において、営業活動により資金は577億68百万円の減少となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失(349億24百万円)、旅行前受金の減少(779億12百万円)、旅行前払金の減少(441億13百万円)によるものです。

以上の結果、当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ293億70百万円の増加となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、投資活動により資金は70億95百万円の減少となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出(165億67百万円)、定期預金の預入による支出(156億6百万円)により資金が減少し、一方で定期預金の払戻による収入(178億10百万円)、有形及び無形固定資産の売却による収入(85億15百万円)により資金が増加したことによるものです。

また、前連結会計年度において、投資活動により資金は478億51百万円の減少となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出(665億15百万円)、定期預金の預入による支出(189億41百万円)、定期預金の払戻による収入(302億14百万円)によるものです。

以上の結果、当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ407億55百万円の増加となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、財務活動により資金は407億11百万円の増加となりました。これは主に、長・短借入れによる収入(1,122億83百万円)、株式発行による収入(119億94百万円)により資金が増加し、一方で長・短借入金の返済による支出(731億63百万円)、社債の償還による支出(100億円)により資金が減少したことによるものです。

また、前連結会計年度において、財務活動により資金は56億2百万円の減少となりました。これは主に、長・短借入金の返済による支出(867億77百万円)、配当金の支払い(19億円)、長・短借入による収入(751億26百万円)、株式発行による収入(77億28百万円)によるものです。

以上の結果、当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ463億13百万円の増加となりました。

(3)生産、受注及び販売の実績

① 仕入実績

 当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2020年11月1日

  至 2021年10月31日)

 前年同期比(%)

旅行事業(百万円)

33,031

10.7

テーマパーク事業(百万円)

3,041

109.2

ホテル事業(百万円)

2,636

77.8

九州産交グループ(百万円)

17,566

89.2

エネルギー事業(百万円)

43,487

192.3

報告セグメント計(百万円)

99,764

27.8

その他(百万円)

2,405

118.4

 合計(百万円)

102,169

28.3

 (注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ。)は生産形態をとっていないため、生産状況にかわって仕入実績について記載しております。

3.本表の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

② 受注実績

当社グループは受注形態をとっていないため、該当事項はありません。

 

③ 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2020年11月1日

  至 2021年10月31日)

 前年同期比(%)

旅行事業(百万円)

42,919

12.0

テーマパーク事業(百万円)

14,593

107.8

ホテル事業(百万円)

4,494

60.6

九州産交グループ(百万円)

16,358

85.3

エネルギー事業(百万円)

37,233

141.7

報告セグメント計(百万円)

115,599

27.2

その他(百万円)

2,965

59.6

 合計(百万円)

118,564

27.6

 (注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.当社グループは、取扱高(販売価格)を売上高として計上しております。

3.本表の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(4)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 財政状態の分析

(ⅰ)流動資産

当連結会計年度末における流動資産の残高は、1,432億78百万円となり、前連結会計年度末に比べ44億88百万円の増加となりました。

主な要因といたしましては、現金及び預金の増加(前期末比61億77百万円増)、短期貸付金の増加(同31億32百万円増)がある一方で、未収入金の減少(同43億26百万円減)が挙げられます。

 

(ⅱ)固定資産

当連結会計年度末における固定資産の残高は、2,675億80百万円となり、前連結会計年度末に比べ73億58百万円の減少となりました。

主な要因といたしましては、差入保証金の増加(前期末比113億80百万円増)がある一方で、投資有価証券の減少(同48億77百万円減)、長期貸付金の減少(同32億34百万円減)、繰延税金資産の減少(同19億27百万円減)が挙げられます。

 

(ⅲ)流動負債

当連結会計年度末における流動負債の残高は、929億65百万円となり、前連結会計年度末に比べ3億16百万円の減少となりました。

主な要因といたしましては、1年内償還予定の社債の減少(前期末比100億円減)がある一方で、営業未払金の増加(同39億50百万円増)、助成金に係る預り金の増加(同38億1百万円増)、1年内返済予定の長期借入金の増加(同28億67百万円増)が挙げられます。

 

(ⅳ)固定負債

当連結会計年度末における固定負債の残高は、2,605億26百万円となり、前連結会計年度末に比べ351億64百万円の増加となりました。

主な要因といたしましては、長期借入金の増加(前期末比350億37百万円増)が挙げられます。

 

(ⅴ)純資産

当連結会計年度末における純資産の残高は、576億56百万円となり、前連結会計年度末に比べ384億88百万円の減少となりました。

主な要因といたしましては、親会社株主に帰属する当期純損失等の計上による利益剰余金の減少(前期末比542億53百万円減)がある一方で、新株予約権の行使等による資本金及び資本剰余金の増加(同119億26百万円増)、為替換算調整勘定の増加(同43億2百万円増)が挙げられます。

 

② 経営成績の分析

(ⅰ)売上高

当連結会計年度の売上高は、1,185億64百万円となり、前連結会計年度に比べ3,117億18百万円の減少(前期比27.6%)となりました。報告セグメントごとの売上高については、旅行事業は430億29百万円(同12.0%)、テーマパーク事業は151億26百万円(同107.2%)、ホテル事業は47億57百万円(同59.8%)、九州産交グループは163億62百万円(同85.3%)、エネルギー事業は373億51百万円(同141.5%)となりました。

なお、報告セグメントごとの金額は、セグメント間取引を相殺消去する前の金額であります。

 

 

(ⅱ)営業費用

当連結会計年度の営業費用は、1,826億13百万円となり、前連結会計年度に比べ2,788億43百万円の減少(前期比39.6%)となりました。

そのうち、売上原価は1,021億69百万円となり、前連結会計年度に比べ2,582億60百万円の減少(同28.3%)となりました。

また、販売費及び一般管理費は804億43百万円となり、前連結会計年度に比べ205億83百万円の減少(同79.6%)となりました。売上高に対する販売費及び一般管理費の比率は、前連結会計年度より44.4ポイント上昇し67.8%となりました。

(ⅲ)営業損失

当連結会計年度の営業損失は640億48百万円(前期は営業損失311億73百万円)となり、前連結会計年度に比べ328億75百万円の減益となりました。

 

(ⅳ)経常損失

当連結会計年度の経常損失は635億57百万円(前期は経常損失309億94百万円)となり、前連結会計年度に比べ325億62百万円の減益となりました。

主な営業外収益として、為替差益(9億40百万円)、補助金収入(8億26百万円)、また営業外費用として、支払利息(11億75百万円)が挙げられます。

 

(ⅴ)親会社株主に帰属する当期純損失

当連結会計年度の税金等調整前当期純損失は552億7百万円(前期は税金等調整前当期純損失349億24百万円)となり、前連結会計年度に比べ202億82百万円の減益となりました。

また、当連結会計年度の法人税等は25億36百万円(前期は△32億48百万円)となり、前連結会計年度に比べ56億92百万円の増加となりました。

以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は543億56百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失270億8百万円)となり、前連結会計年度に比べ273億48百万円の減益となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析並びに資本の財源及び資金の流動性

キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金及び設備投資等であります。運転資金につきましては金融機関からの借入により資金調達を行っております。設備投資等につきましては金融機関からの借入、社債及び転換社債型新株予約権付社債の発行、増資により資金調達を行っております。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、貸倒引当金、賞与引当金、退職給付に係る負債等の計上について見積り計算を行っており、これらの見積りについては過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。詳細については、「第5 経理の状況  1 連結財務諸表 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しています。

なお、新型コロナウイルスの感染拡大に関する重要な会計上の見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況  1 連結財務諸表 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しています。

 

4【経営上の重要な契約等】

 当社は、IATA(国際航空運送協会)公認旅客代理店として1990年12月31日認可(期限は認可取消しになるまで有効)を受け、旅客代理店契約(PASSENGER SALES AGENCY AGREEMENT)を結んでおります。

(注)IATA(国際航空運送協会)について

1945年に設立され、主に国際線を運航している航空会社が加盟している民間機関です。本部は、カナダのモントリオールと、スイスのジュネーブにあり、IATA公認代理店向けの諸施策の決定や精算事務はジュネーブで行われています。IATAの権限は、運賃の取り決め、運送条件の取り決め、代理店対策、運航上の取り決め及び運賃決済などがあります。IATAの公認代理店の認可を受けることで自社で国際線航空券が発券できます。

 

5【研究開発活動】

該当事項はありません。