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独立監査人の監査報告書 |
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2025年3月31日 |
株式会社エイチ・アイ・エス |
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取締役会 御中 |
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有限責任監査法人トーマツ |
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東京事務所 |
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指定有限責任社員 業務執行社員 |
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公認会計士 |
久世 浩一 |
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指定有限責任社員 業務執行社員 |
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公認会計士 |
井上 卓也 |
監査意見
当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明を行うため、「経理の状況」に掲げられている株式会社エイチ・アイ・エスの2021年11月1日から2022年10月31日までの連結会計年度の訂正後の連結財務諸表、すなわち、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結包括利益計算書、連結株主資本等変動計算書、連結キャッシュ・フロー計算書、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項、その他の注記及び連結附属明細表について監査を行った。
当監査法人は、上記の連結財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、株式会社エイチ・アイ・エス及び連結子会社の2022年10月31日現在の財政状態並びに同日をもって終了する連結会計年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況を、全ての重要な点において適正に表示しているものと認める。
監査意見の根拠
当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準における当監査法人の責任は、「連結財務諸表監査における監査人の責任」に記載されている。当監査法人は、我が国における職業倫理に関する規定に従って、会社及び連結子会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている。当監査法人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。
監査上の主要な検討事項
監査上の主要な検討事項とは、当連結会計年度の連結財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。監査上の主要な検討事項は、連結財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において対応した事項であり、当監査法人は、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。
継続企業の前提に関する経営者による対応策の評価 |
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監査上の主要な検討事項の 内容及び決定理由 |
監査上の対応 |
株式会社エイチ・アイ・エス及び連結子会社(以下「HISグループ」という。)では、主に新型コロナウイルス感染症の影響による国内海外旅行需要の大幅な減少、原油高や円安等の影響を受けた海外旅行需要の回復の遅れにより、新型コロナウイルス感染症の影響が出る以前の連結会計年度と比し売上高が著しく減少した結果、当連結会計年度において営業損失48,034百万円を計上している。 新型コロナウイルス感染症や原油高、円安の影響は期末日現在も継続しており、当該影響を含む将来計画を基礎として、継続企業の前提に関する評価を実施している。 HISグループでは、前連結会計年度から継続して多額の営業損失を計上しているため、監査・保証実務委員会報告第74号「継続企業の前提に関する開示について」に照らすと、当連結会計年度末において継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しているとされる。 このため、経営者は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況を解消し、または改善するための施策として固定費用の圧縮や有価証券・不動産・主要子会社などの売却を進めている。また、取引先金融機関に対して既存の借入契約の維持(リファイナンス)を要請しており、当連結会計年度末において、シンジケートローンの財務制限条項に抵触したが、エージェントを含むシンジケートローン参加金融機関と建設的に協議を継続し、緊密な関係を維持しており、今後も継続的な支援が得られるものと考えている。 経営者は、新型コロナウイルス感染症や原油高、円安の将来における影響の合理的な予測とこれらへの対応策の効果を反映した資金繰り計画に基づいて、2023年10月31日まで十分な資金を有することが可能と判断していることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断している。 継続企業の前提に関する評価は、新型コロナウイルス感染症等の外部環境の影響を含む将来計画を基礎として行われている。その中で、将来計画における旅行需要の回復に関する仮定、及び資金繰り計画に含まれる資金調達やリファイナンスの実行可能性については、特に不確実性が高く経営者の判断に依存し、将来の資金繰りに重要な影響を与える。 以上より、当監査法人は当該事項を監査上の主要な検討事項であると判断した。 |
当監査法人は、継続企業の前提に関する重要な不確実性の有無についての経営者による判断の基礎となる将来計画と資金繰り計画の重要な仮定を検討するにあたって、主として以下の監査手続を実施した。
【内部統制の評価】 ●将来計画の策定に関連する内部統制の整備及び運用状況の有効性を評価した。評価にあたっては、将来計画の策定の前提となる売上回復時期の予測に関する統制に特に焦点を当てた。
【将来計画の重要な仮定の検討】 ●HISグループの将来売上の見通しについて、代表取締役及び事業担当取締役に質問を実施した。 ●国際航空運送協会(IATA)による市場予測レポートや、複数の外部機関が公表した需要回復シナリオ、直近の利用可能な外部データと比較することにより、将来計画の重要な仮定の合理性を検討した。 ●将来計画について、経営者の見積りの偏向の有無や過年度の計画の達成度合いに基づく見積りの精度を評価した。また、将来計画数値の基礎データを検討し、経営者の仮定との整合性を検討した。
【資金繰り計画の検討】 ●資金繰り計画の前提となる基礎データの信頼性を検討するため、HISグループの売上回復時期の見通しを考慮して取締役会で承認された将来計画との整合性を検討した。 ●取引先金融機関が既存の借入契約維持の要請に応じるとの仮定の合理性を評価するための以下の手続を実施した。 ・取引先金融機関との交渉状況について、代表取締役社長及び財務部門の責任者に対する質問 ・関連する借入契約書及び取締役会議事録の閲覧 ・HISグループに対する支援方針について、主要取引先金融機関に対する質問 ●資金繰り計画に含まれる不確実性の影響を評価するため、経営者が作成した資金繰り計画に、一定の不確実性を織り込んだ場合の2023年10月31日までの期間の資金繰りを独自に見積もった。その上で、当該独自の見積りに基づいた場合の各月末の資金残高が、翌月の収支見込み及び各収支項目の月中での入金及び支払時期に照らして十分か否かを検討した。
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ハウステンボス株式売却取引の会計処理の妥当性 |
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監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由 |
監査上の対応 |
株式会社エイチ・アイ・エス(以下「HIS」という。)は、「【注記事項】(企業結合等関係)ハウステンボス株式会社の株式譲渡」に記載のとおり、2022年9月30日付でHISの連結子会社であったハウステンボス株式会社(以下「ハウステンボス」という。)の全株式をPAG HTB Holdings株式会社(以下「譲受会社」という。)に譲渡しており(以下「本株式譲渡」という。)、連結損益計算書において関係会社株式売却益40,842百万円を計上し、ハウステンボスを連結の範囲から除外している。 本株式譲渡に係る会計処理は、会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する連結実務指針」及び企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」等に従っており、関係会社株式売却益は、支配喪失日までに連結財務諸表に計上した取得後利益剰余金等の投資の修正額を考慮した上で算定している。 また、本株式譲渡の実行日と同日に、ハウステンボスは非支配株主が保有する全ての株式を自己株式として取得しており(以下「本自己株式取得」という。)、本自己株式取得及び本株式譲渡の実行により、譲受会社はハウステンボスにかかる議決権所有割合の100%を取得している。 本株式譲渡は、本株式譲渡と本自己株式取得が一つの事業分離を構成しているかどうかの判断、株式譲渡価額の妥当性、ハウステンボスに対する重要な継続的関与の有無等、複数の監査上の考慮事項があり、金額的重要性もあることから、連結財務諸表に与える影響が大きい。 以上より、当監査法人はハウステンボス株式売却取引の会計処理の妥当性について慎重な検討が必要であり、監査上の主要な検討事項に該当すると判断した。 |
当監査法人は、ハウステンボス株式売却取引の会計処理の妥当性を検討するにあたり、主として以下の監査手続を実施した。
●本株式譲渡と本自己株式取得が一つの事業分離を構成しているかどうか、またハウステンボスに対する重要な継続的関与の有無を検討するため、適切な役職者等への質問、取締役会資料の閲覧、株式譲渡契約書等の閲覧を実施した。
●譲渡先及び譲渡価額の決定プロセスを理解するとともに、適正な価額で取引が実行されているかを検討するため、当監査法人の内部専門家を関与させ株式譲渡価額の妥当性について検討した。
●譲渡価額について、株式譲渡契約書の閲覧及び入金証憑等の照合により確かめた。
●連結除外の会計処理について、移転した事業に係る純資産及び譲渡価額並びに関係会社株式売却益との関係が整合的であることを確かめた。
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雇用調整助成金等の不正受給及び不適正受給に係る会計処理 |
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監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由 |
監査上の対応 |
株式会社エイチ・アイ・エス(以下、「HIS」という。)の連結子会社である株式会社ナンバーワントラベル渋谷における雇用調整助成金等の不正受給疑義及びHISにおける雇用調整助成金等の不適正受給疑義の発覚を受け、HIS及びHISの連結子会社における雇用調整助成金等の受給実態の解明のため、経営者は2024年12月13日に弁護士・公認会計士を含む特別調査委員会を設置して調査を開始し、2025年3月21日、同委員会より調査報告書を受領した。その結果、HISの連結子会社である株式会社ナンバーワントラベル渋谷、株式会社クルーズプラネット及び株式会社欧州エキスプレスにおいて雇用調整助成金等の不正受給があったと認められ、HIS及びHIS連結子会社14社において雇用調整助成金等の不適正受給があったと認められた。 経営者は調査結果を受け、HIS及びHIS連結子会社における雇用調整助成金等の不正受給または不適正受給について判明した事実関係に基づいた会計処理への修正を行うとともに、過年度の有価証券報告書及び四半期報告書の訂正報告書の提出、並びに四半期決算短信の訂正開示を2025年3月31日に行った。 HIS及びHIS連結子会社における雇用調整助成金等の不正受給または不適正受給に関し、適切に会計処理の修正が行われているかどうかを確かめるためには、HIS及びHIS連結子会社における雇用調整助成金等の受給実態の把握、不正受給または不適正受給の発生原因、不正受給または不適正受給が行われた範囲及び関連する他の勘定科目への影響等を検討する必要がある。 これらの検討には広範にわたる事実関係の確認及び事実関係を踏まえた慎重な判断が必要となることから、当監査法人は当該事項を監査上の主要な検討事項であると判断した。 |
当監査法人は、HIS及びHISの連結子会社における雇用調整助成金等の不正受給または不適正受給に関する不適切な会計処理が網羅的に把握され、適切に訂正等の処理がなされているかどうかを確かめるため、主として以下の監査手続を実施した。
●雇用調整助成金等の不正受給または不適正受給が網羅的に把握されているかどうかを確かめるため、特別調査委員会の作成した調査報告書の信頼性を以下の観点で検討した。 ・特別調査委員会メンバーの能力、独立性、業務の客観性 ・特別調査委員会が行った調査の範囲、実施した手続、調査結果、結論及びその根拠
●識別した雇用調整助成金等の不正受給または不適正受給に関する会計処理の修正について、特別調査委員会による調査結果に基づき必要な処理が網羅的かつ正確に行われていることを検討した。
●不正受給があったと認められた連結子会社3社について、重要な虚偽表示の発生している可能性のある領域が本事案に係る取引以外にないことを確かめるため、財務諸表の趨勢分析及び勘定明細の通査等の追加的な手続を実施した。
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その他の事項
有価証券報告書の訂正報告書の提出理由に記載されているとおり、会社は、連結財務諸表を訂正している。なお、当監査法人は、訂正前の連結財務諸表に対して2023年1月27日に監査報告書を提出しているが、当該訂正に伴い、訂正後の連結財務諸表に対して本監査報告書を提出する。
その他の記載内容
その他の記載内容は、有価証券報告書の訂正報告書に含まれる情報のうち、連結財務諸表及び財務諸表並びにこれらの監査報告書以外の情報である。経営者の責任は、その他の記載内容を作成し開示することにある。また、監査等委員会の責任は、その他の記載内容の報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。
当監査法人の訂正後の連結財務諸表に対する監査意見の対象にはその他の記載内容は含まれておらず、当監査法人はその他の記載内容に対して意見を表明するものではない。
連結財務諸表監査における当監査法人の責任は、その他の記載内容を通読し、通読の過程において、その他の記載内容と連結財務諸表又は当監査法人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうか検討すること、また、そのような重要な相違以外にその他の記載内容に重要な誤りの兆候があるかどうか注意を払うことにある。
当監査法人は、実施した作業に基づき、その他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合には、その事実を報告することが求められている。
その他の記載内容に関して、当監査法人が報告すべき事項はない。
連結財務諸表に対する経営者及び監査等委員会の責任
経営者の責任は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して連結財務諸表を作成し適正に表示することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない連結財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用することが含まれる。
連結財務諸表を作成するに当たり、経営者は、継続企業の前提に基づき連結財務諸表を作成することが適切であるかどうかを評価し、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて継続企業に関する事項を開示する必要がある場合には当該事項を開示する責任がある。
監査等委員会の責任は、財務報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。
連結財務諸表監査における監査人の責任
監査人の責任は、監査人が実施した監査に基づいて、全体としての連結財務諸表に不正又は誤謬による重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得て、監査報告書において独立の立場から連結財務諸表に対する意見を表明することにある。虚偽表示は、不正又は誤謬により発生する可能性があり、個別に又は集計すると、連結財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。
監査人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って、監査の過程を通じて、職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持して以下を実施する。
・ 不正又は誤謬による重要な虚偽表示リスクを識別し、評価する。また、重要な虚偽表示リスクに対応した監査手続を立案し、実施する。監査手続の選択及び適用は監査人の判断による。さらに、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手する。
・ 連結財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないが、監査人は、リスク評価の実施に際して、状況に応じた適切な監査手続を立案するために、監査に関連する内部統制を検討する。
・ 経営者が採用した会計方針及びその適用方法の適切性、並びに経営者によって行われた会計上の見積りの合理性及び関連する注記事項の妥当性を評価する。
・ 経営者が継続企業を前提として連結財務諸表を作成することが適切であるかどうか、また、入手した監査証拠に基づき、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認められるかどうか結論付ける。継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合は、監査報告書において連結財務諸表の注記事項に注意を喚起すること、又は重要な不確実性に関する連結財務諸表の注記事項が適切でない場合は、連結財務諸表に対して除外事項付意見を表明することが求められている。監査人の結論は、監査報告書日までに入手した監査証拠に基づいているが、将来の事象や状況により、企業は継続企業として存続できなくなる可能性がある。
・ 連結財務諸表の表示及び注記事項が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠しているかどうかとともに、関連する注記事項を含めた連結財務諸表の表示、構成及び内容、並びに連結財務諸表が基礎となる取引や会計事象を適正に表示しているかどうかを評価する。
・ 連結財務諸表に対する意見を表明するために、会社及び連結子会社の財務情報に関する十分かつ適切な監査証拠を入手する。監査人は、連結財務諸表の監査に関する指示、監督及び実施に関して責任がある。監査人は、単独で監査意見に対して責任を負う。
監査人は、監査等委員会に対して、計画した監査の範囲とその実施時期、監査の実施過程で識別した内部統制の重要な不備を含む監査上の重要な発見事項、及び監査の基準で求められているその他の事項について報告を行う。
監査人は、監査等委員会に対して、独立性についての我が国における職業倫理に関する規定を遵守したこと、並びに監査人の独立性に影響を与えると合理的に考えられる事項、及び阻害要因を除去又は軽減するためにセーフガードを講じている場合はその内容について報告を行う。
監査人は、監査等委員会と協議した事項のうち、当連結会計年度の連結財務諸表の監査で特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項と決定し、監査報告書において記載する。ただし、法令等により当該事項の公表が禁止されている場合や、極めて限定的ではあるが、監査報告書において報告することにより生じる不利益が公共の利益を上回ると合理的に見込まれるため、監査人が報告すべきでないと判断した場合は、当該事項を記載しない。
利害関係
会社及び連結子会社と当監査法人又は業務執行社員との間には、公認会計士法の規定により記載すべき利害関係はない。
以 上
(注)1.上記は監査報告書の原本に記載された事項を電子化したものであり、その原本は当社(有価証券報告書提出会社)が別途保管しております。 2.XBRLデータは監査の対象には含まれていません。 |