第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは「BEYOND SCIENCE FICTION」をグループミッションに掲げ、現在は「個人認証」「個人最適化」「個人情報管理」の3つのソリューションにて事業を展開しております。

個人認証ソリューションで「あなたは誰か」を証明し、個人最適化ソリューションで衣食住における「あなただけの服」「あなただけの店舗」「あなただけの居場所」を実現します。個人情報管理ソリューションでは、個人認証ソリューション及び個人最適化ソリューションで取り扱ってきた個人情報管理のノウハウを通じた、セキュアな個人情報管理を実現します。その結果、「金融犯罪」「未着廃棄」「食品ロス」「エネルギー・ロス」「個人情報漏えい」といった、社会課題の解決に繋がる取り組みを続けてまいります。

 


 

(2) 経営環境

当社グループを取り巻く経営環境は、法律改正や新型コロナウイルス感染症の影響により、日々変化しております。

個人認証ソリューションでは、2018年の犯罪収益移転防止法(犯収法)の改正にて、本人確認をオンラインで完結する方法が認められたことや、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の影響にて非対面サービスの重要性が高まり、従来の対面型サービスから非対面サービスへの移行が急激に進んだことにより、「LIQUID eKYC」の導入が拡大しました。また、金融機関や通信会社など、犯収法により本人確認業務が求められている業種に留まらず、CtoCのシェアリングサービスやマッチングサービス等、日常生活に欠かせない幅広い業種において、成りすましによる不正を防止しユーザーからの信頼性を高めるニーズが高まっており、導入が進んでおります。

eKYC及び当人認証ソリューション市場の市場規模は、2025年に152億円に達すると見込まれております※1。また、個人認証を利用する業界や企業数の拡大、及び提供するサービスと利用シーンの拡大により、将来的には約1.2兆円のマーケットに成長すると想定しております。

個人最適化ソリューションでは、新型コロナウイルス感染症の影響に伴うオフィスへの出社制限や店舗への入場制限、営業時間短縮などにより、導入事業者においてIT投資が一時的に停滞しておりましたが、当社グループでは、withコロナの前提でのサービス設計を進めて参りました。現在、経済活動は感染症拡大前に戻りつつあり、事業者からの問い合わせも増えてきております。経済活動の回復に合わせてIT投資が再開されると、従来リアル店舗で提供されていたサービスをリアルとオンラインで複合的に提供できる当社グループのサービスにとって、中長期的には追い風になることが予想されます。

 

個人情報管理ソリューションでは、近年多くの企業にて問題になっている個人情報管理をサービス対象としています。東京商工リサーチの調査※2によると、2023年だけでも、上場企業とその子会社で個人情報の漏えい・紛失事故を公表したのは147社、事故件数は175件、漏えいした個人情報は4,090万8,718人分(前年比590.2%増)となっております。また大手企業に限らず、近年は、半数以上の病院が利用する電子カルテシステムを狙った個人情報に対する攻撃も増えており、医療機関においても個人情報管理の重要性はますます高まっている状況です。当社グループにおいては、グループでこれまで培った情報セキュリティ技術や暗号鍵分散管理技術を個人情報管理に特化させ、企業の個人情報管理の改善、個人情報の匿名化・仮名化を行うことで、社会全体としての情報の利活用が促進されると考えております。

※1 株式会社矢野経済研究所「eKYC/当人認証ソリューション市場に関する調査」(2023年7月18日発表)

※2 株式会社東京商工リサーチ「2023年「上場企業の個人情報漏えい・紛失事故」調査」(2024年1月19日発表))

 

(3) 経営戦略

当社グループは、経営方針に基づき様々な事業に取り組んできた結果、現在は「個人認証」「個人最適化」「個人情報管理」の3つのソリューションを提供しております。今後も、社会課題の解決とともに、企業価値をさらに高めていくことを目指して参ります。

個人認証ソリューションのサービスである「LIQUID eKYC」は、現在多くの事業者に導入頂き、グループの成長を牽引しております。また、個人認証ソリューションのその他サービス、個人最適化ソリューション、並びに個人情報管理ソリューションにおいては、これまでの研究・開発を活かして、現在は商用化フェーズに移行し、次なる事業の柱となるよう取り組んでおります。各サービスとも当初は研究・開発期の費用負担から赤字となりますが、商用化や事業成長に伴い売上高が増加して損益分岐点を上回ると、営業利益が拡大する収益モデルとなっています。

当社グループ全体の利益構造としては、先行して成長フェーズに入った個人認証ソリューションの継続拡大に加えて、個人最適化ソリューション及び個人情報管理ソリューションの商用化フェーズの進展を通じ、改善していくものと考えております。

 


 

 

当社グループは今後の成長戦略として、「個人認証ソリューションの拡充」「個人最適化ソリューションの成長」「個人情報管理ソリューションの立ち上げ」「アライアンス及びM&Aの活用」の4点を考えております。

 

① 個人認証ソリューションの拡充

個人認証ソリューションにおいては、「LIQUID eKYC」の市場拡大を目指します。現在は、金融業や通信業が主力市場でありますが、CtoCのシェアリングサービスやマッチングサービスへの導入も進んでおります。さらには公共分野や医療分野など、認証を必要とするシーンは日常生活において多岐にわたり、今後はそれらの市場への導入を目指します。また、提供開始済みのオンライン当人認証サービス「LIQUID Auth」に加え、事業者横断で不正利用を検知するサービスなど個人認証ソリューションの拡充による利用シーンの拡大も目指します。加えて、適切な時期において海外市場への積極的な展開を考えております。人口増加に伴い、eKYCが必要とされる各種オンライン取引の規模拡大が期待されるアジア太平洋地域(APAC)での展開を目指します。

 

②個人最適化ソリューションの成長

個人最適化ソリューションにおいては、これまで衣食住の各分野で事業を展開してきました。足元は当社グループ全体の選択と集中の観点からサービスの縮小、撤退を進めてきました。今後は、既存の継続事業に加え、当社グループが培ってきた画像認識技術を活用する生成AI技術を生かした新分野の立ち上げを通じ、パートナー事業者と協業しながら、事業の再成長を目指しております。

 
③個人情報管理ソリューションの立ち上げ

2023年8月に個人情報管理ソリューションである「ELEMENTS CLOUD」の提供開始を発表いたしました。本サービスについては、既存の個人認証ソリューションの提供事業者に加え、医療関連分野の事業者等への導入を図っていきます。

 

④アライアンス及びM&Aの活用

当社は、非連続的な成長の手段としてアライアンス及びM&Aの活用を実施しております。当該戦略の一環として、2024年2月に株式会社アドメディカの子会社化を実施、2025年1月には株式会社ポラリファイの子会社化を発表いたしました。今後も、財務健全性の維持と両立しながら、アライアンス及びM&Aを活用していきます。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、財務指標として、連結売上総利益及びEBITDA(営業利益+減価償却費(有形・無形固定資産)+株式報酬費用+のれん償却額の合計にて算出)を重視しております。連結売上総利益については、事業の成長も考慮した上で、グループ全体としての収益性を示す重要な指標として考えております。EBITDAについては、グループ全体の事業運営状況の健全性及び継続性を示す重要な指標として考えております。

財務指標の推移については以下の通りであります。

 

 

第7期
連結会計年度

(自2019年
  12月1日

 至2020年
  11月30日)

第8期
連結会計年度

(自2020年
  12月1日

 至2021年
  11月30日)

第9期
連結会計年度

(自2021年
  12月1日

 至2022年
  11月30日)

第10期
連結会計年度

(自2022年
  12月1日

 至2023年
  11月30日)

第11期
連結会計年度

(自2023年
  12月1日

 至2024年
  11月30日)

連結売上総利益 (千円)

498,160

816,243

1,088,212

1,499,344

2,183,371

EBITDA(千円)

△912,606

△691,052

△573,451

△125,757

343,089

 

 

 

(5) 対処すべき課題

当社グループは、以下の課題に取り組んでまいります。

 

① サービス設計と品質の維持

当社グループが提供するAIクラウド基盤(IoP Cloud)は、サービス提供の過程で日々取得する「ヒト」に関するデータを継続的に機械学習することで、サービス品質の維持・向上に繋げております。当社グループのサービスは、各導入事業者が展開するサービスに組み込まれる形で、各導入事業者からユーザーに提供されます。ユーザーは、これらのサービスを利用するにあたり、当社グループの管理するデータベースにユーザー自らがデータをアップロードします。ユーザーから取得したデータを当社グループが保管するため、様々な面から機械学習を行い、既存サービスの品質向上のみならず新規サービスの開発に繋げられるのが、当社グループの特徴です。しかしながら、各事業者または産業固有のオペレーション・フローに対応したサービス設計を行うためには、それぞれの事業者または産業の特徴を理解する必要があります。価値が高いサービスを提供するには、大量のデータを日々取得できる、効率的な機械学習環境を整備することが有効であると当社グループは考えており、日常生活の自然な導線上でユーザーにお使い頂けるよう、ユーザビリティの高い自社サービスの設計と品質の維持を心がけております。

 

② 海外展開

当社グループが提供するAIクラウド基盤(IoP Cloud)は、個人が日常生活から発するデータを分析対象としているため、対象市場は国内に留まりません。データ収集の対象数が多い市場で事業を行うことは自然な流れであり、人口増加と経済成長が著しい、アジア太平洋地域(APAC)市場は最重要マーケットと認識しております。当社グループは、インドネシア共和国にて同国の華僑系財閥である「Salim Group」と現地合弁会社「PT. Indoliquid Technology Sukses」を設立し、当社グループが国内で展開するサービスの単純な海外移管に限定しない、現地の文化や市場ニーズにマッチしたサービスの展開を目指して活動を行っております。

 

③ システムの安定性確保

当社グループが提供するAIクラウド基盤(IoP Cloud)は、インターネット上にてサービス提供を行っております。当社グループの事業を支えるサーバーは、主に外部クラウドサービスであるAmazon Web Services, Inc.が提供するAmazon Web Services (AWS)で管理されており、利用者数の増加及びそれに伴うアクセス数の飛躍的な増加への対応並びにユーザビリティ向上のため、複数のサーバーによる負荷の分散・システムの冗長化・定期的なバックアップの実施・各種不正アクセス対策等によるシステムセキュリティの強化・システム稼働状況の監視等を図り、システム障害を未然に防ぐべく取り組みを行っております。

 

④ 情報管理体制の強化

当社グループはサービスの提供において、ヒトに関するデータ(ユーザーの個人情報)を取り扱っており、情報管理を強化していくことが重要であると考えております。現在、連結子会社の株式会社Liquidにおいては、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際標準規格である「ISO/IEC 27001」及び国内規格である「JIS Q 27001」の認証を取得しております。機密情報や個人情報について、以前より社内規程の厳格な運用、定期的な社内教育の実施、セキュリティシステムの整備を行っておりますが、今後も引き続き情報管理の徹底及び体制の強化を図ってまいります。

 

⑤ 知的財産権の確保

当社グループは、日々の開発業務から生じた新規性のある独自技術の保護のために、単独または他社と共同で、それらに関する特許権等の知的財産権の取得を図っております。画像解析及び機械学習領域においては、国内外大手IT企業等が知的財産権の取得に積極的に取り組んでいるため、当社グループも特許権等の取得により活動領域を確保することが課題であると認識しております。今後、様々な業界に対してシステムを開発・提供することによって有用な知見が得られることが期待されるため、外部専門家とも協力しながら、独自の技術領域については、他社に先立って戦略的に特許権を取得していきます。

 

⑥ 人材の確保及び教育の強化

当社グループはこれまで、少人数で効率的な組織運営を行ってまいりました。一方で、今後の業容拡大に向け、当社グループの成長速度に見合った人材の確保及び従業員の実務的なスキル強化も重要な課題と認識しております。そのため、今後も優秀な人材の獲得及び教育に取り組んでまいります。

 

⑦ 内部管理体制の強化

当社グループは、各分野において今後もより一層の事業拡大を見込んでおります。そのため、今後も当社グループの事業拡大に応じた内部管理体制の強化を図り、より一層のコーポレート・ガバナンスの充実に取り組んでまいります。

 

⑧ 財務体質の強化

当社グループは2024年11月期に設立以来初の営業黒字を計上いたしましたが、過去、営業赤字が継続しておりました。今後、十分な売上高が獲得できない場合や研究・開発期のサービスに対する新規投資が増加した場合には営業赤字、営業活動によるキャッシュ・フローの赤字が発生する可能性があります。当社グループは経営の健全性を保つために、キャッシュ・フローを重視した経営に努めておりますが、今後の事業強化や拡大を図るためには資金が必要となります。そのような場合に備え、常に一定水準の手元流動性を確保し、信用獲得に努めてまいります。手元流動性確保のため、資金調達や内部留保の確保を継続的に行い、財務基盤の更なる強化を図ってまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものであり、様々な要因により実際の結果と異なる可能性があります。

 

当社グループは、グループミッションに「BEYOND SCIENCE FICTION」を掲げております。また、「個人認証」「個人最適化」「個人情報管理」の3つのソリューションによって、社会が抱える課題を解決していくことで、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、当社グループの持続的な成長及び企業価値の向上に努めております。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、サステナビリティに関連する取組の検討及び進捗状況について、取締役会、経営会議及びリスク・コンプライアンス委員会において定期的に報告・議論を行っております。

また、内部通報制度の導入・運用を通じたガバナンスの強化や、勉強会等を通じたガバナンス教育を実施しております。

 

(2) 戦略

サステナビリティの課題(マテリアリティ)の特定にあたり、当社グループは、「当社のソリューションにより解決可能な社会課題とインパクト」「ステークホルダーの期待」及び「中長期的な成長」の観点から評価しております。

当連結会計年度末時点において当社グループが判断したマテリアリティは「当社ソリューションを通じた社会課題の解決」及び「人的資本の向上と多様性の確保」となります。当社はこれらのマテリアリティの解決を通じて、当社グループの成長、企業価値の向上及びコーポレート・ビジョンの実現に努めて参ります。

また、当社グループの持続的な成長のためには、当社のグループミッションに共感した高い意欲を持った優秀な人材の採用及び確保が重要な課題であると認識しております。そのためには、「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」「チャレンジの促進」及び「成果に報いるための報酬制度」が重要であると考えております。

「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」に関しては、雇用形態、年齢、性別に拘らない採用活動の実施に加え、フレックスタイム制度やリモートワークの活用、及び育児休業取得の推奨等を通じた柔軟な働き方が可能な環境の整備等を実施しております。「チャレンジの促進」に関しては、タレントマネジメントシステムの整備及び定期的な対話を通じた個人のコンピテンシー及びキャリアプランの把握や、個人のキャリアプランを尊重した配属、配置転換の実現等による成長の促進を会社としても後押ししております。「成果に報いるための報酬制度」としては、「業績達成条件付のストック・オプション制度」の採用による、会社の成長と従業員の報酬のアラインメントを実施しております。

 

(3) リスク管理

当社グループでは、全社的なリスクマネジメント体制についてリスク管理規程を定め平時有事のリスク管理体制等について定めている他、四半期に一度、リスク・コンプライアンス委員会を開催しております。また、経営管理部門が継続的にモニタリングを行うことで、顕在化したリスクへの改善を実施している他、リスク・コンプライアンス委員会や経営会議と有機的に連携することで、全社的なリスクマネジメントを実施しております。

 

(4) 指標及び目標

当社の人的資本に関する指標は以下の通りとなります。当社グループにおいては、男性従業員の割合が8割以上を構成している現状を踏まえ、「男性育児休業取得率」を重要な指標と位置付けております。現状の数値は、令和5年6月13日に閣議決定された「こども未来戦略方針」における令和7年までの目標値である50%を下回っておりますが、引き続き、取得の推進に努め、令和12年までの目標値である85%に近づけていくことを目標としております。

 

(参考)人的資本に関する指標

項目

当事業年度

(自 2023年12月1日 至 2024年11月30日)

女性管理職比率

0

(全社員における管理職比率:10.1%)

男女賃金差異

63.8

男性育児休業取得率

25.0

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業活動に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資家の判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めてまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。また、以下の記載は当社グループの事業もしくは当社株式への投資に関連するリスクを完全に網羅するものではありません。

 

(1) 事業環境に関するリスク
① 競合について

当社グループは、画像解析及び機械学習領域において事業を展開しておりますが、当該領域においては、多くの企業が事業展開していることもあり、競合サービスが増加する可能性があります。また、優れた競合企業の登場、競合企業によるサービス改善や付加価値が高いビジネスモデルの出現等により、当社グループの競争力が低下する可能性があり、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは今後も明確に他社との差別化が図られる分野、収益性の高い分野、競合が少ない分野などにターゲットを絞った戦略的な経営を進めて、引き続き事業の拡大及び競争力の維持・強化に努めてまいります。

 

② 技術革新について

当社グループが提供するAIクラウド基盤(IoP Cloud)の根幹となる画像解析及び機械学習技術は、進展が著しいという特徴を有しております。当社グループでは、研究開発活動によって画像解析及び機械学習技術の進展に常時対応していく方針でありますが、当社グループが想定していないような新技術・新サービスの普及等により事業環境が変化した場合、必ずしも迅速には対応できない可能性があります。また、事業環境の変化に対応するための開発費用が多額となる可能性や、研究開発活動によって得られた成果を事業化できない可能性、さらには事業化した場合でも当社グループが想定している収益を得られない可能性も考えられます。このような場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

このような環境の中で、当社グループは、画像解析及び機械学習技術に関して、最新技術の開発を率先して行うとともに、優秀な人材の確保に取り組んでおります。

 

③ 特定のサービスへの依存について

当社グループは個人認証ソリューションにおいて、オンライン本人確認サービス「LIQUID eKYC」を提供しておりますが、2024年11月末時点で「LIQUID eKYC」の売上高は、グループ全体の約6割を占めております。当該割合に関しては、今後変わる可能性がありますが、売上高の面で相当程度の依存がある状態にあります。

当社グループでは、認証精度やユーザビリティの点で、優位性を高めているものの、強力な競合企業が登場した場合、競争激化により売上高が減少することが考えられます。また、犯罪収益移転防止法(犯収法)上、特定事業者が非対面で本人特定事項を確認する際にeKYCの利用が法律上認められておりますが、今後犯収法が改正され、eKYCの利用に制約が課せられたり、システムを変更する必要が生じたりする場合には、利用者が減少する、または、対応に多額の費用を要した結果、当社グループの売上高及び利益が減少する可能性があります。このような場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、個人認証ソリューションにおける認証精度やユーザビリティの改善により、競合優位性を高めていく方針です。また、今後の成長に向けて次なる事業の柱を確立すべく、新規事業開発に努めております。これらの開発により、特定サービスへの依存度低下に努めてまいります。

 

(2) 事業内容に関するリスク
① 新規サービスの黒字化に長期間要することについて

当社グループが、「AIクラウド基盤(IoP Cloud)」を軸に事業者向けに様々なサービスを提供するためには、実証実験等にて社会実装に向けた要否判定を経て、機能を開発する必要があります。新たな事業を開始する際は、こうした研究・開発及び商用化(実証実験を含む)、そしてその先の成長を見込んでおりますが、新規機能やサービスの開発着手以降、商用化やその先の成長が想定通り進まない場合は、黒字化まで長期間要する可能性があります。さらに、本格運用がスタートした後も軌道に乗った展開ができるとは限らず、方針の変更や見直し、撤退等何らかの問題が発生する可能性も想定されます。

当社グループは各領域において事業を展開することで事業リスクの分散を今後も行っていく方針ですが、新規サービスの黒字化が進まない場合は、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 知的財産権について

当社グループは、第三者との間の知的財産権に関する紛争を未然に防止するため、新サービスの開発の際には、特許事務所に先行特許調査を委託し、また弁護士の助言を得ながら製品のライセンス取得を実施しておりますが、当社グループのようなエンジニア・研究者を中心とする開発型企業の場合、第三者との知的財産権に関する紛争を完全に防止することは事実上不可能であります。当社グループは、特許権等の知的財産権の取得、弁護士や弁理士等の専門家との連携等により知的財産権に関する紛争の防止に努めておりますが、第三者と知的財産権に係る紛争が生じた場合、当該紛争に対応するために多くの人的または資金的負担が当社グループに発生するとともに、場合によっては損害賠償請求、ライセンス料等の支払請求や製品等の差止の請求等を受ける可能性があり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

今後につきましても、第三者との間の知的財産権に関する紛争を防止するための管理を行ってまいりますが、当社グループがこのような紛争等に巻き込まれた場合、弁護士や弁理士と協議のうえ、当該知的財産権によってはライセンサーとも協力し、対応する方針です。

また、当社グループは特許権等の知的財産権を積極的に取得していく方針でありますが、当社グループが出願する特許権等の知的財産権の全てが登録される保証はありません。当社グループが知的財産権を十分に保全できない場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 事業運営体制に関するリスク

① 代表取締役への依存及び当社グループの事業推進体制について

当社の代表取締役会長である久田康弘は、当社設立当初から当社グループ経営に関わっております。また、代表取締役社長である長谷川敬起は、2016年11月に当社に入社後、事業責任者として「LIQUID eKYC」の立ち上げを実施、2020年2月からは株式会社Liquidの代表取締役を務めております。経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において両名の果たす役割は極めて重要となっております。

当社グループでは、取締役会等における役員及び幹部社員の情報共有や経営組織の強化を図り、経営体制の整備を進めており、また、共同代表性を採用し役割を分担することで、個人への依存度を低下させるように努めております。しかし、当面は依然として両名への依存度は高く、近い将来において何らかの理由により両名もしくはいずれかの業務執行が困難となった場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 人材の確保及び教育について

当社グループは、エンジニアを中心として、サービスの開発や画像解析・機械学習等要素技術の開発を行っております。それらを支えるエンジニアについて、既存従業員のスキルアップを図るとともに、新たな人材の確保を行っていきたいと考えております。しかし、今後適切な人材を十分に確保できず、あるいは在職中の従業員の退職等により、十分な開発・販売体制を築くことができない場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループはこのようなリスクを踏まえて、積極的な採用活動や社外ネットワークの強化を行うとともに、働きやすい環境の整備や処遇制度の充実等、従業員のモチベーションを向上させる仕組みの構築を継続して推進してまいります。

 

③ 個人情報の取り扱いについて

当社グループは「BEYOND SCIENCE FICTION」をグループミッションに掲げ、ヒトが直接ネットワークに繋がる世界観「IoP」の実現のために、ヒトに関するデータ(ユーザーの個人情報)を自社で保管していく方針です。

個人認証ソリューションにおいては、容貌・本人確認書類・氏名・住所・生年月日等の個人情報を、当該ソリューションにおけるサービス提供や、収集したデータを機械学習することによる認証精度の向上を目的として取得しております。また、現在は実施しておりませんが、今後、事業者横断で不正利用を検知するサービスや認証サービスを提供する際は、当社グループが事業者から取得した個人情報を第三者提供する可能性があります。

個人最適化ソリューションにおいては、衣食住の領域における最適化を実現するために、体型情報・足型情報・購買情報・位置情報等の個人情報を、当該ソリューションにおけるサービス提供、ヒトに関するデータの機械学習を目的として取得しております。

個人情報の取扱いについては、日本においては「個人情報の保護に関する法律」が適用され、諸外国においては、GDPR(EU一般データ保護規則)や当該国の個人情報に関する法律(個人情報に関する法令等)が適用されることがあります。

当社グループは個人情報に関する法令等や個人情報の取扱いを事業運営上の重要事項と捉え、その重要性を十分に認識し、個人情報保護基本規程をはじめとした個人情報保護に関連する規程等を制定し、運用しております。

当社グループのサービスの提供に際しては、当社グループの責任において第三者となる業務委託先に個人情報の保管等について再委託する場合があります。その場合においても、個人情報に関する法令等を遵守し、適切かつ合理的な方法で業務委託先の安全管理を行っております。

しかしながら、自然災害や事故、外部からの悪意による不正アクセス行為及び内部の故意又は過失による顧客情報の漏洩、消失、改ざんまたは不正利用等により、万一当社グループまたは当社グループの業務委託先から個人情報が漏洩した場合には、信用の失墜又は損害賠償による損失が生じ、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ システム障害等について

当社グループの事業は、インターネットを利用しているため、自然災害、事故、不正アクセスなどによってインターネットの切断、ネットワーク機器の作動不能などのシステム障害が発生する可能性があります。当社グループでは、稼働状況の定期的なモニタリング、異常発生時の対応方法等の明確化などシステム障害の発生防止のための対策を講じておりますが、このような対応にもかかわらず大規模なシステム障害が発生した場合等には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、クラウドベースのサービスのほとんどを、Amazon Web Services (AWS)を利用して提供しています。そのため、顧客へのサービス提供が妨げられるようなシステム障害の発生やサイバー攻撃によるシステムダウン等を回避するために、システム冗長化のみならず複数のアベイラビリティゾーンの利用による冗長性の確保や各種不正アクセス対策等によるシステムセキュリティの強化、また、システム稼働状況の監視等を実施しております。しかしながら、このような対応にも関わらず自然災害、事故、不正アクセスなどによってAWS上の当社グループのサービス及びAWSそのもののシステム障害が発生した場合、またはAWSとの契約が解除される等によりAWSの利用が継続できなくなった場合等には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 情報セキュリティ対策について

当社グループは本人認証関連サービスを提供する事業者として、厳重な情報セキュリティ管理体制のもと自社内の情報を管理しています。また、連結子会社の株式会社Liquidにおいては、情報セキュリティマネジメントシステム (ISMS)の国際標準規格である「ISO/IEC 27001」及び国内規格である「JIS Q 27001」の認証を取得し、情報管理についての各種規程を定めて運用し、従業員への教育を定期的に実施する等、情報管理の対策を講じております。また、金融機関からはFISCの安全対策基準(金融庁が金融機関のシステム管理体制を検査する際に使用する基準)や「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」に準じた体制の構築・運用していることを確認するためのチェック並びに監査等委員及び内部監査担当者による監査を受けております。また主要なサービスに使用するアプリケーションには外部のセキュリティ事業者による定期的な脆弱性診断を実施し、機密情報を含むデータ・ベースへのアクセス可能者を限定し、アクセス履歴を記録するなど、外部の不正アクセス防止や当社グループの従業員による情報漏洩への関与を未然に防ぐ措置を講じております。

このような対策にも関わらず、外部の不正アクセスによる場合や当社グループから情報の漏洩等が発生した場合には、損害賠償責任を負う可能性があるほか、当社グループが企業としての社会的信用を喪失し、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 小規模組織における管理体制について

当社グループの組織体制は小規模であり、内部管理体制についても組織の規模に応じたものとなっております。当社グループは今後も外部からの採用と人材の教育に努め、内部管理体制及び業務執行体制の強化を図り、また、業務効率化や生産性向上のために必要なシステム投資を行っていく方針であります。しかし、急激な事業拡大が生じた場合、十分な人的・組織的対応が取れない可能性があります。また、今後の人員増加に伴い、先行して一時的に固定費負担が増加する場合も想定され、そのような状況が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑦ 業歴が浅いことについて

当社グループは2013年12月に設立された社歴の浅い会社であり、また、主力サービスである「LIQUID eKYC」についても、2019年7月に提供開始と業歴が浅いことから、過年度の業績及び財政状態だけでは、今後の当社グループの業績や成長性を判断する材料としては不十分な面があります。また、過去に生体決済事業の終了など事業変遷の経緯があるため、今後も主力サービスが変遷し、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 財務状況に関するリスク

① マイナスの繰越利益剰余金を計上していることについて

当社グループは現時点では開発活動を中心とした企業であり、AIクラウド基盤(IoP Cloud)を構築し、その後に各種売上を得られるようになるまでは多額の費用が先行して計上されることとなります。そのため、当連結会計年度末においてはマイナスの繰越利益剰余金を計上しております。

当社グループは、これらの初期投資に基づく将来の利益拡大を目指しております。しかしながら、将来において想定どおりに当期純利益を計上できない可能性もあります。また、当社グループの事業が計画どおりに進展せず当期純利益を計上できない場合には、マイナスの利益剰余金がプラスとなる時期が著しく遅れる可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、初期投資に際しては計画的に行うとともに、顧客獲得や売上高の拡大及び収益性の向上に向けた取組みを行っていく方針であります。

 

② 税務上の繰越欠損金について

当社グループには現時点では税務上の繰越欠損金が存在しております。事業計画の進展から順調に当社グループ業績が推移することによる繰越欠損金の使用、または繰越欠損金の期限切れによる消滅により、繰越欠損金による課税所得の控除が受けられなくなった場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、当期純利益又は当期純損失及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、税制改正に係る情報については、当社顧問税理士を通じて早期に捉えるようにしております。また、グループ各社の業績管理プロセスを強化することにより、大幅な業績変化の兆候を早期に捉えるようにしております。

 

③ 資金繰り及び資金調達について

当社グループでは、事業の進捗に伴って運転資金、開発投資及び設備投資等の資金需要の増加が予想されます。このような資金需要に対応すべく当社グループはこれまでに第三者割当増資や金融機関からの借入等による資金調達を実施しましたが、今後さらにエクイティ・ファイナンス、国や地方公共団体をはじめとする公的補助金等の活用、さらには金融機関によるプロジェクトファイナンス等により資金需要に対応していく方針です。継続的に当社グループの財務基盤の強化を図ってまいりますが、エクイティ・ファイナンスや売上収入・提携一時金及び公的助成金・補助金等の獲得を含めた資金調達が想定どおり進まない場合等、資金繰りの状況によっては当社グループの事業活動等に重大な影響を与える可能性があります。

また将来、増資等のエクイティ・ファイナンスを実施した場合には、当社の発行済株式数が増加することにより1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

④ 配当政策について

当社は設立以来配当を実施しておりません。また、当社グループは開発活動を継続的に実施していく必要があることから、当面は内部留保の充実に努め開発資金の確保を優先することを基本方針としております。

事業等の進捗によっては利益配当までに時間を要する可能性がありますが、株主への利益還元も重要な経営課題の1つであると認識しており、経営成績と財政状態を勘案して利益配当も検討してまいります。

 

⑤ ストック・オプション行使による株式の希薄化について

当社は、当社及び当社子会社の取締役及び従業員等の長期的な企業価値向上に対する士気向上及びインセンティブを目的とし、ストック・オプション制度を採用しております。本書提出日の前月末現在における当社発行済株式総数に対する、新株予約権による潜在株式数の割合は16.07%に相当します。これらの新株予約権が行使された場合、当社の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

(5) 法的規制等に関するリスク

当社グループの事業を規制する主な法規制として、「犯罪収益移転防止法」があります。マネーロンダリング対策等の観点から制定された犯罪収益移転防止法では、特定事業者につき取引時確認が求められます。当社グループは、現時点では「特定事業者」に当たらず、直接的な規制の対象ではありません。もっとも、当社グループが提供するオンライン本人確認サービス「LIQUID eKYC」において、犯罪収益移転防止法に基づいた対応を取る必要があります。また、今後、インターネットの利用や関連するサービス及びインターネット関連事業を営む事業者を「特定事業者」として規制対象に含める新たな法令等の制定や、非対面での本人特定事項の確認に関する既存法令等の解釈変更等がなされた場合には、当社グループの事業展開が制約される可能性があります。当社グループにおいては、現時点の法規制等に従って業務を遂行しており、また、弁護士や外部諸団体を通じて新たな法規制及び取引関係先の法規制改正の情報を直ちに入手できる体制を整えております。

 

(6) 知的財産権の侵害によるリスク

当社グループは、自社システム開発をはじめその事業活動において第三者の知的財産権を侵害することのないよう、社内での調査や弁理士等を通じた調査・確認を適宜実施し、細心の注意を払っております。しかしながら、知的財産権を侵害したとして第三者から不測の訴訟を提起され、その結果によって損失が発生する場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 不可抗力によるリスク

① 自然災害・気候変動等に関するリスク

不慮の事故、火災、自然災害等による被害が発生し、当社グループが利用するクラウドサーバーが損壊して利用できなくなった場合や、これらの損害に対して保険では対応できず、修復費用や復旧までの逸失利益等が生じた場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおいては、このようなリスクに対処するため、特に重要なデータについては、安全と考えられるデータセンターで保管しております。

また、新型コロナウイルス等の感染症の蔓延による当社グループの業績への影響は現時点では軽微と考えておりますが、今後の感染拡大の状況によっては当社グループの事業活動及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 紛争・政情不安に関するリスク

当社グループは、インドネシア共和国に合弁会社「PT. Indoliquid Technology Sukses」を設立し、今後も東南アジアを中心に海外事業を展開していく予定であります。テロ・戦争・クーデターあるいは政情不安等により当社グループの拠点やサービスが直接または間接的な被害を受ける等の事態が発生した場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおいては、このようなリスクに対処するため、政治情勢、財政情勢、法規制変更等について、情報収集を行い、政情不安等の兆候の早期把握に努めております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症対策の緩和を背景に、経済活動が正常化に向かい、景気は緩やかに持ち直す動きがみられました。しかしながら、円安の影響による物価高、欧米における金融引き締めの影響や中国経済に対する先行き懸念など、依然として不透明な状況が続いております。

当社グループの提供するAIクラウド基盤(IoP Cloud)は、「個人認証ソリューション」と、主にヒトの生活三大要素であります「衣食住」の分野において、モノやサービスの「個人最適化ソリューション」を提供しております。新型コロナウイルス感染症の蔓延を契機に、社会全体のデジタル化が進む中、当社グループが提供する「個人認証ソリューション」と「個人最適化ソリューション」を用いたDX化の需要は拡大傾向にあります。

「個人認証ソリューション」が提供するオンライン本人確認サービス「LIQUID eKYC」は、犯罪収益移転防止法の改正及びコロナ禍の影響を受け、市場が拡大しております。株式会社矢野経済研究所「eKYC/当人認証ソリューション市場に関する調査(2023年)」(2023年7月18日発表)によれば、eKYC及び当人認証ソリューション市場の規模は2025年度には152億円に達すると見込まれており、業界を横断して更なる広がりが予想されています。また、中長期的には各業界におけるDXは加速し、活発な投資が行われることが見込まれます。

このような環境の中で当社グループは、当連結会計年度を前期に引き続き、国内における主力サービスの拡大期と位置付け、事業を展開してまいりました。

当連結会計年度における売上高は2,545,724千円(前連結会計年度比31.2%増)、EBITDA(注)は343,089千円(前連結会計年度はEBITDA△125,757千円)、営業利益は57,916千円(前連結会計年度は営業損失297,485千円)、経常損失は27,290千円(前連結会計年度は経常損失355,453千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は132,915千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失338,711千円)となりました。

なお、当社グループはIoP Cloud事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

(注)EBITDA=営業利益減価償却費(有形・無形固定資産)+株式報酬費用+のれん償却額

 

 

② 財政状態の状況
(資産)

当連結会計年度末における総資産の残高は、前連結会計年度末に比べ1,287,764千円増加し、4,916,868千円となりました。流動資産は10,281千円増加し、3,207,262千円となりました。主な要因は、現金及び預金の減少45,608千円、売掛金の増加17,655千円、その他の流動資産の増加36,424千円などであります。固定資産は1,295,659千円増加し、1,709,605千円となりました。主な要因は、有形固定資産の増加194,788千円、無形固定資産の増加1,134,662千円などであります。

 

(負債)

当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末に比べ302,317千円減少し、2,307,834千円となりました。流動負債は168,977千円減少し、707,122千円となりました。主な要因は、短期借入金の減少419,468千円、1年内返済予定の長期借入金の増加79,480千円、未払金の増加61,017千円などであります。固定負債は133,339千円減少し、1,600,711千円となりました。要因は、転換による転換社債型新株予約権付社債の減少936,000千円、長期借入金の増加431,499千円、リース債務の増加170,937千円、繰延税金負債の増加200,160千円などであります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末に比べ1,590,082千円増加し、2,609,033千円となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純損失計上による利益剰余金の減少132,915千円、転換社債型新株予約権付社債の転換及び新株予約権の行使に伴う資本金及び資本剰余金それぞれの増加677,313千円、連結範囲の変更による非支配株主持分の増加316,059千円などであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ4,391千円増加し、2,746,276千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは222,732千円の増加となりました。主な要因は、税金等調整前当期純損失27,239千円(前連結会計年度は税金等調整前当期純損失368,889千円)、減価償却費150,588千円、のれん償却額53,720千円、株式報酬費用80,957千円などの非資金損益項目の計上、売上債権の減少46,078千円、未払金の増加53,856千円、法人税等の支払額127,980千円などであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは837,780千円の減少となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出238,616千円、無形固定資産の取得による支出298,360千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出362,221千円などであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは619,439千円の増加となりました。主な要因は、短期借入金の減少499,468千円、長期借入れによる収入575,000千円、セール・アンド・リースバックによる収入251,505千円、新株予約権の行使による株式の発行による収入381,048千円などであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当社グループが提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。

 

b.受注実績

当社グループが提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。なお、当社グループはIoP Cloud事業の単一セグメントであります。

 

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

IoP Cloud事業

2,545,724

131.2

 

 

主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、総販売実績に対する割合が10%未満であるため、記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積もりを必要としております。経営者は、これらの見積もりについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度の売上高につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載の通り、主に個人認証ソリューションの好調が継続したことにより、2,545,724千円(前連結会計年度比31.2%増)となりました。

 

(売上原価、売上総利益)

当連結会計年度の売上原価につきましては、主に個人認証ソリューションの売上原価が減少したことにより、362,352千円(前連結会計年度比17.8%減)となりました。その結果、売上総利益は2,183,371千円(前連結会計年度比45.6%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業損失)

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は2,125,455千円(前連結会計年度比18.3%増)となりました。これは主に、人件費が168,659千円(前連結会計年度比33.9%増)、減価償却費が138,082千円(前連結会計年度比1,112.6%増)、支払手数料が69,837千円(前連結会計年度比64.7%増)、のれん償却額が53,720千円(前連結会計年度は計上なし)それぞれ増加したものの、株式報酬費用が78,358千円(前連結会計年度比49.2%減)、研究開発費が55,198千円(前連結会計年度比21.8%減)、外注費が49,388千円(前連結会計年度比14.6%減)それぞれ減少したことによるものであります。その結果、営業利益は57,916千円(前連結会計年度は営業損失297,485千円)となりました。

 

(営業外損益、経常損失)

当連結会計年度の営業外収益は1,008千円(前連結会計年度比90.8%減)となりました。これは主に、受取利息295千円(前連結会計年度比1,481.6%増)の計上によるものであります。営業外費用は86,214千円(前連結会計年度比25.1%増)となりました。これは主に、持分法による投資損失25,620千円(前連結会計年度比11.0%減)、支払利息25,659千円(前連結会計年度比82.5%増)の計上によるものであります。その結果、経常損失は27,290千円(前連結会計年度は経常損失355,453千円)となりました。

 

(特別損益、法人税等合計、親会社株主に帰属する当期純損失)

当連結会計年度の特別利益は50千円(前連結会計年度比93.9%減)となりました。法人税等合計は55,811千円(前連結会計年度比1,426.6%増)となりました。その結果、親会社株主に帰属する当期純損失は132,915千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失338,711千円)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析

キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性に関する情報

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、事業開発に係る人件費であります。当社グループは、必要な資金を主に事業会社及びベンチャーキャピタルからの第三者割当増資、並びに金融機関からの借入により調達してきました。今後につきましては、更なる事業開発のための投資を引き続き行っていく想定であります。これらの資金需要は内部留保で賄うことを原則としながら、中長期における資金需要並びに金利動向等を注視したうえで必要に応じて機動的に資金調達を行い、財務の健全性を維持する方針であります。

 

⑥ 経営戦略の現状と見通し

経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、持続的な事業拡大と企業価値向上を重要な経営目標とし、各経営課題に取り組んでおります

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社は、2024年1月25日開催の取締役会において、株式会社アドメディカの発行済株式総数の50.1%を取得し、子会社化することについて決議し、同日付で株式譲渡契約を締結し、2024年2月29日付で株式を取得しました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」に記載の通りであります。

当社は、2024年8月22日開催の取締役会において、当社を吸収合併存続会社、当社の完全子会社である株式会社 MYCITYを吸収合併消滅会社とする吸収合併をすることを決議し、同日付で合併契約を締結し、2024 年 11 月1日付で吸収合併いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」に記載の通りであります。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、グループのコアである個人認証ソリューションと、主にヒトの生活三大要素であります「衣食住」の分野において、モノやサービスの個人最適化ソリューション、並びに個人認証ソリューション及び個人最適化ソリューションで取り扱ってきた個人情報管理のノウハウを通じたセキュアな個人情報管理を実現する個人情報管理ソリューションを提供しております。これらのソリューションのうち、研究開発段階及び商用化段階にあるサービスの開発費に関して、研究開発費として計上しております。当連結会計年度における研究開発費は、198,248千円となりました。

なお、当社グループはIoP Cloud事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。