第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、「明るく積極堅実経営」を経営理念として掲げ、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けて、資源循環型社会の形成を通じて豊かな住・生活環境を提供することを目的に、都市に埋蔵された資源を解体・収集し、再生のための多様なソリューションを提供する「都市鉱山開発企業」として、お客様から信頼される質の高いサービスを提供し、関係する行政、企業、地域との共生を図り、永続的な発展を目指して、株主と社員をはじめ全てのステークホルダーを大切にすることを経営方針としております。

 

(2)経営戦略等

リサイクルビジネスを展開していく上では、トータルソリューションの実現によるサービスの向上が経営戦略上の重要な課題であると認識しております。当社グループは、解体事業、環境事業及び金属事業が三位一体となった「ワンストップ・サービス」を提供することにより、お客様の工場や倉庫の解体及び設備や在庫の撤去・処分、並びに、有価物の買取り、廃棄物の再資源化及び適正処理に至るまでの統合的なサービスを提供しております。このように、当社グループでは解体事業を成長エンジンとして、金属事業と環境事業とのシナジーを活かしつつ、あらゆるニーズに対してきめ細かく効率的なサービスを提供することにより、売上高の増加を目指してまいります。

解体事業は専門性の高い分野として建設業の中では成長性が見込まれる事業です。従来は、建築一式工事として解体から新築までを総合建設業者(ゼネコン)が一括受注し、その下請けで解体工事業者が施工するという形態でした。しかし、2016年の建設業法改正後は解体工事のみを分離発注される機会が増加しつつあります。当社グループといたしましても、こうした社会的なニーズを追い風に、2017年4月に子会社化した株式会社国徳工業を含む解体事業セグメントの陣容を拡充し、事業を拡大してまいります。

 

(3)経営環境

地球温暖化等の環境問題への意識の高まりと、DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた技術革新と相まって生じる社会構造の変化は、都市鉱山から排出される都市資源の排出元や内容にも変化をもたらし、リサイクルに対する社会的ニーズはますます多様化しつつあります。

他方、わが国の高度経済成長期の波に乗って1960年代以降に建設されたビルや倉庫、工場など膨大な量の建築物が更新・撤去の時期を迎えており、適正・適法な解体工事を実施するとともに、解体時に発生するスクラップや産業廃棄物などの都市資源を効率よく再資源化することが求められております。

このように、当社グループを取り巻く経営環境は、高度経済成長期から成熟循環型社会へ移行するために不可欠である資源循環を安全かつ環境保全に配慮しながら効率的に実現しなければならないという、いわば、安心できる統合された静脈産業の磐石な基盤の形成に対する潜在的な要求であって、そのニーズは今後ますます高まってくるものと認識しております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

  上述の経営方針・経営戦略及び経営環境を踏まえ、対処すべき課題を以下のように認識しております。

  ① 解体事業の拡充

 高度経済成長期に建設されたビルやプラントなどの建築構造物は50年以上が経過し、膨大な数の建築構造物が順次更新されることになるため、安全で環境保全にも配慮した適正な解体工事に対する社会的なニーズは、全国的に広範囲な規模で今後急速に高まってくるものと予想されます。

 国土交通省では、適正・適法な解体工事が施工される施策として1971年に制定された建設業の許可に係る28業種区分を見直し「解体工事業」が新設されました。2019年には完全許可制度となり、2021年には一定の要件を満たす技術者制度が導入されました。

 下請に対する発注金額が4千万円以上の解体工事は特定建設業許可を取得することが義務付けられており、一級国家資格を持つ監督員(監理技術者)が現場に常駐する必要がありますので、大型工事1件の元請受注に対し1名の監理技術者が必要となります。即ち会社に所属する監理技術者数が同時並行して施工できる工事数になります。従来の解体工事業界は下請体質であり、施工技術を有してはいるものの工事管理能力のある工事業者は少なく、多くの業者は「一般建設業」で営業しており、数少ない特定建設業許可業者でも一般的には一級国家資格者が多く在籍する企業は多くないのが実状であります。

 このような中、当社は特定建設業許可を取得し、2024年12月末時点においては9名の一級施工管理技士が在籍しておりますが、今後も有資格者並びに施工管理体制を拡充し、大型工事の元請受注件数を増加させていくことで売上高の増加を目指してまいります。

 

  ② 事業領域の拡充

 当社グループは、ビルやプラントなどの建築物、産業機械や電子機器類等都市に埋蔵された様々な資源を解体・収集し、再生のための多様なソリューションを提供する「都市鉱山開発企業」として、お客様から信頼される質の高いサービスを提供しています。

 地球温暖化等の環境問題への意識の高まりと、DXに向けた技術革新と相まって生じる社会構造の変化は、都市鉱山から排出される都市資源の排出元や内容にも変化をもたらし、リサイクルに対する社会的ニーズはますます多様化することが予想されます。このような変化に対して機敏に反応し、柔軟に対応する体制を構築することが課題となります。

 当社グループが現在行っている金属やプラスチック、木材などのリサイクル事業を深掘りし、リサイクル技術を高めることで、廃棄物から有用金属、プラスチックなどのリサイクル資源の回収率を高めるとともに、リサイクル過程で発生する廃棄物及び外部から受け入れた廃棄物からリサイクル資源を製造する事業を強化し、リサイクル率と再生資源の付加価値を高めてまいります。これらに加えて、ビルやプラントなど建築物を解体する解体事業においては、工事現場で発生する副産物としての鉄スクラップや木材などの有用資源のリサイクル率を高めるとともに、同時に発生する産業廃棄物を環境保全に配慮したうえで、適正・適法に処理を行うことが重要な課題です。

 また、循環資源を継続的に安定して受け入れることも重要な課題であると認識しております。金属事業は、1973年創業以来50年余に亘る事業であり地域における安定的な集荷基盤を有しておりますが、変化に応じた積極的な営業展開を行うことにより、新規仕入先の開拓に努めてまいります。環境事業につきましては、ゼネコンやハウスメーカー等の建設業及び厨房用冷凍・冷蔵機器メーカーや自動販売機等の複合素材並びにMRI等の医療機器メーカーとも多年に亘る信頼関係を元にした安定的な循環資源の受け入れ態勢は整っておりますが、家電量販店やネット通販企業等大規模な排出元となる大手企業に対する積極的な営業展開を行い、新規顧客の開拓に努めてまいります。

 大手リース会社やアセットマネジメント関連企業とのタイアップにより排出元の企業におけるリース資産の除却や廃棄に際して、当社グループのトータルソリューションを提供するリサイクルビジネスを展開しておりますが、今後とも物流倉庫や工場の閉鎖等に関する案件情報を共有し、循環資源の調達の幅を拡げ売上高の増加を目指してまいります。

 

  ③ 事業地域の拡大

 解体工事を全国規模で展開していく中において、工事現場で副産物として発生する有用金属や産業廃棄物のリサイクル及び適正処理が重要な課題であることは前述のとおりですが、これらの静脈産業で取り扱う金属スクラップや産業廃棄物の付加価値は、自動車や電気製品などプロダクトアウトされる動脈産業の製品に比較すると格段に低い傾向にあります。従って、広範な地域をまたがって移動させる経済合理性は望めませんので、それらを取り扱うスクラップや産業廃棄物処理業者も全国に点在しているのが実状です。

 一方、当社グループの顧客となる大手企業は、事業拠点を全国に展開していることから、全国規模で施工される解体工事や、それに伴って発生する廃棄物を一括して安心できる一企業グループに委託したいという潜在的なニーズが存在します。このニーズは、広域での廃棄物処理の場合、煩雑な処理委託先管理の合理化、処理品質、コンプライアンス、価格の合理性といったものとなります。

 当社グループは、全国の優良なリサイクル企業約30社とアライアンス・ネットワークを形成しており、今後当社グループが全国規模で解体事業を展開する過程で発生する副産物のリサイクル資源の販売先及び産業廃棄物の適正な処理委託先として相互の業務提携活動を積極的に推進し、上述のニーズに対応してまいります。

 

  ④ 内部管理体制の充実と機能向上

 当社グループは、企業価値の向上を図るため、コーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であると認識し、業務の適正性、財務報告の信頼性確保及び法令順守の徹底を進め、その整備を実施いたしました。

 コーポレート・ガバナンスに関しては、内部監査により定期的なモニタリングの実施と内部監査室と監査役や監査法人との連携を図ることにより適切に運用しておりますが、当社グループは、経営環境や市場の変化、顧客の動向に対応するために、迅速かつ適正な意思決定及び業務執行の遂行を図るとともに、事業活動に関する監査を強化することにより、取締役会及び監査役会の機能向上を図ってまいります。

 また、当社グループは、今後も一層の事業拡大を見込んでおりますので、更なる内部管理体制の強化を図ることで、より一層のコーポレート・ガバナンスの充実に努めてまいります。

 

  ⑤ 人材の確保と育成

 当社グループは、今後の事業拡大に合わせ、優秀な人材を継続的に確保し、育成することが、当社グループの施工体制や生産工程の拡充並びに安全衛生管理体制及び環境保全体制強化の観点からも、重要な経営課題であると認識しております。

 この課題を克服するために、当社グループは社内教育を充実させ社員の資質向上を図り、社員一人ひとりがレベルアップするとともに、管理職及びリーダーの育成を強化し、事業拡大に伴う組織体制の整備を進めてまいります。

 

  ⑥ 先端技術の導入

 わが国では今後、少子高齢化が進行することによる深刻な人材難が予想され、その傾向は地方都市により顕著となると見込まれます。当社グループを含むリサイクル業界は都市部の郊外から地方にかけての地域に位置することが多く、特に影響が大きいことから業務の効率化が急務となっています。また同時に、より安全、快適で効率的な職場環境を整備する必要があると認識しております。そのために機器の自動化や重機の遠隔操作などの先端技術を導入するなど、研究開発を進めてまいります。

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは、「解体事業」、「環境事業」、「金属事業」の3つの事業を柱として、資源循環型社会の形成のための一翼を担うリサイクル事業を創造し、かつ、長期にわたってお客様から信頼されるサービスを提供することを基本方針とし、事業規模の拡大と収益性の向上が当面の重要な課題と認識しております。従いまして、連結売上高及び連結営業利益が重要な経営指標になると認識し、これを最も重要な指標として位置づけております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社は、人口減少、資源循環意識の高まり、及び温暖化の3つの長期トレンドが、リスクや事業機会になると考え、これらに対するアプローチで長期戦略の立案を行っています。その過程で、サステナビリティを経営の柱と考えており、中でも資源の循環、地球温暖化への対応、及びウェルビーイングの3つをマテリアリティ(最重要項目)としております。このうち資源の循環に関しては当社事業の根幹をなす領域であることから、サステナビリティに限定しない取り組みとして位置付けております。従って個別のガバナンス体制や戦略、リスク管理体制、指標は設けず、中期経営計画の策定及び実行にかかるガバナンス、及びプロセスにて管理しております。

 

(1)ガバナンス

 代表取締役社長は、ISO14001に則った環境マネジメントシステムにおいて、トップマネジメントとして気候変動を含む当社のすべての環境活動を統括しています。社長は、環境に関する方針を掲げ、年1回のマネジメントレビューを通して環境マネジメントシステムの有効性を評価し、その改善を指示する責任と権限を有しています。人材育成に関しては、業績検討会議やリスク管理委員会にて社長への報告がなされ、社長から必要に応じて対応の指示がなされています。

 

(2)戦略

(温室効果ガス排出に関する戦略)

 2030年末までにScope2(外部から得たエネルギーの使用に伴う温室効果ガスの間接排出量)を実質的にゼロとするため、使用する電力のすべてを再生可能エネルギー由来のものに順次置き換えることを計画しています。

 

(人的資本に関する戦略)

 社員が活躍できる場を提供することがサステナブルな経営の基礎になるとの信念から、社員本位の取組みを進めてまいります。

 

人材育成方針

 働くことを通して人として成長すること、そのための環境を整備し支援することは人財をつくることであり、そのことが企業の成長に繋がると考え、互いに貢献し合える関係づくりと新しいことにチャレンジしやすい環境整備を大切にしています。

 長期ビジョン、中期経営計画を実現するため、『積極行動、情熱行動』をスローガンとして、多様な視点や価値観を認めながら、会社発展や、資源を通して社会の平和と発展に貢献する、というバイタリティあふれる人材育成のための教育体系・研修プログラムを確立します。

 

社内環境整備方針

 当社は経営理念のもと、2012年にイボキンフィロソフィ手帳(大感謝手帳)を制定し、毎朝礼にて唱和し、考え方や価値観を共有する機会を研修の場でも実践しています。

 そのことをベースとし、今後の人材戦略としては、働きやすさ、働き甲斐により社員が活き活きと活躍する場づくりを目指し、人材の確保・育成を行いつつ、長期ビジョン、中期経営計画を実現できる体制を整備します。

 働きやすい環境整備として、育児や介護と仕事の両立支援を強化するとともに、安心・安全な作業環境を整備するための活動や健康リスクの低減を図るための活動、DXによる効率化を進めます。

 また、働き甲斐を高めるために、楽しみながらチャレンジすることで個々の能力を高めることができるような施策、人材育成・人材開発を組織的に行うための教育体系・研修プログラムを確立し、人事評価制度や、改善提案制度、営業報奨制度等の継続的運用を行います。

 

(3)リスク管理

 当社は環境に関連するリスク管理の統括機関として「EMS委員会」を設置し、代表取締役社長を議長として、リスクの対応方針や課題について、優先度を選別・評価し迅速な意思決定を図っています。特定した環境に関するリスク及び機会は年度計画として設定し、全社で取り組んでいます。

 

 

(4)指標及び目標

(温室効果ガス排出に関する指標及び目標)

 当社は、2050年末までに、当社の温室効果ガスの排出量を実質的にゼロとすることを目標としております。また2030年末までにScope2(外部から得たエネルギーの使用に伴う温暖化ガスの間接排出量)を実質的にゼロとすることを目標としております。

 

(人的資本に関する指標及び目標)

 当社は、2033年末までに当社及び連結子会社の合計人員数を350名まで増員し、うち、解体工事の監督者数を98名に増員することを目標としております。

 また、当社では、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、有休取得率を指標として用いております。当該指標に関する実績は、次のとおりであります。

2024年12月31日現在

 

2022年度

2023年度

2024年度

有給取得率

65.4

60.4

62.3

 当社は、ワーク・ライフ・バランスを重視した働き方を推進しており、「女性活躍推進法、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画」を公表し、2025年3月31日にまでに有給取得率70%を目指す目標を掲げています。毎月、各部門長に部下の有休取得状況について情報提供し、部下への声掛けの推進を行っています。有給が取得しやすい職場の環境づくりを継続して推進してまいります。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。また、将来において発生する可能性のある全てのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)法的規制のリスク

 当社グループの事業活動においては、建設業法に基づく特定建設業許可、廃棄物処理法に基づく産業廃棄物収集運搬業及び産業廃棄物中間処理業の許可やその他関連する多くの許認可が必要であります。現在は当該基準に適合しておりますので、許認可が更新されない事由はありませんが、万が一、当該基準に当社グループが適合しなくなった場合には、許認可の取消となる可能性がありますので、そのような場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、コンプライアンスの重要性を強く認識し、既存法規等の規制はもとより、規制の改廃や新たな法規制が生じた場合も適切な対応が取れる体制の構築を推進してまいります。

 

① 遵守すべき法令について

 当社グループが事業を行う上で配慮すべき主要な法的規制に抵触することになった場合には、事業の停止命令や許認可の取消し等の行政処分を受ける可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

② 許認可の更新と取消し要件について

 当社グループでは、現在主要な許認可として、解体事業における特定建設業、環境事業における産業廃棄物収集運搬業及び処分業等、金属事業における金属くず商及び古物商等であります。

 

(2)労働災害のリスク

 当社グループでは、多くの生産設備や重機等を使用して業務を行っており、万一重大な事故・労働災害等が発生した場合、一時的な復旧費用、補償金等の負担が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があるため、充実した安全管理が不可欠であると認識しております。

 当社グループでは、安全衛生委員会を設置し、従業員への安全教育、危険予知活動といった啓発活動並びに点検パトロールの継続的実施を通じ、事故を防止するための安全管理を徹底しております。

 

(3)原材料の相場変動リスク

 当社グループの金属事業では、鉄・非鉄等の金属スクラップを原材料として取扱っており、売上高及び売上原価については、相場変動の影響を受けます。販売価格は仕入価格と同時に相場に連動して変動するため、利益は相場変動による影響を受けにくい仕組みになっています。ただし、仕入から販売までの加工に日数を要するため、相場が短期間に急激に変動した場合には損益が大きく変動することとなります。

 当社グループでは、独自の分析及び商社等の取引先との情報共有をもとに相場の変動を監視しており、金属スクラップの仕入、生産、出荷のタイミングを調整することで、相場の変動の影響を最小化しています。

 

(4)工事原価に係るリスク

 当社グループの解体事業は、請負契約による案件が中心であります。解体工事の性質上、有価物の価値を正確に見積ることができず、実際の売却額と見積り額が大きく乖離した場合や当初の見積と異なる作業工数が必要となる場合があり、案件の採算性に不確実性があります。

 当社グループでは、解体工事案件の採算性等に十分留意しつつ受注活動を行い、また、工期中の案件ごとの進捗管理を徹底し、遅延を適時に認識して工法を適宜適切に変更することなどにより、採算性を向上させるための対応を行っております。

 

 

(5)人材の確保と育成に関するリスク

 当社グループにおける建築物の解体工事並びに産業廃棄物等の処理及び加工に際しましては高度な技術を要しますので、それらの技術を継承し、業容を維持、拡大していくためには優秀な人材の採用・育成が重要な経営課題と認識しております。しかしながら、そうした人材の確保・育成ができなかった場合、または、優秀な人材が社外に流出した場合には、当社グループの長期的な経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 そのため、当社グループは社員に対する資格取得の際の支援や研修、有資格者の中途採用等を積極的に実施しております。

 

(6)環境汚染に関するリスク

 当社グループは、産業廃棄物等を取扱っており、解体工事現場や中間処理過程で騒音、振動、粉塵、排水が発生するため、環境責任を負うリスクを抱えております。これらに細心の注意を払いつつ環境負荷の低減に努めておりますが、不測の事態により流出漏洩等の事態が生じた場合及び将来、環境に関する規制がより厳しくなり、環境負荷をより低減させる義務が追加された場合には、これらに係る費用や補償が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、1999年にISO14001の国際認証を取得して以降、毎年、環境目標を設定し、環境の維持・改善活動、モニタリング等を通じて環境マネジメントを実施しています。

 また、当社グループが管理運営する安定型最終処分場においては、埋立処分の品質基準を守るために、一定の基準を満たした廃棄物のみを厳格な監視の下に受け入れております。また、施設の点検、水質検査等を実施し、環境への影響を定期的に監視しております。

 

(7)反社会的勢力との取引に関するリスク

 反社会的勢力を含む犯罪集団との取引を実行してしまった場合、詐欺や違法性のある取引に巻き込まれる可能性があり、当社グループの社会的な評価が失墜することにより当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、反社会的勢力を排除するため、新規の取引に際しては、反社会的勢力との関係の有無についての確認や、反社会的勢力ではないことを各種契約書に記載し締結するなどの手続きを行っております。また、当社グループは、兵庫県企業防衛対策協議会に参加し、警察や近隣企業と連携して情報共有や実践的な対応の研修等を実施し、継続的に反社会的勢力排除の活動を推進しています。

 

(8)個人情報等の漏洩等に関するリスク

 当社グループは、多数のお客様の個人情報をお預かりしているほか、様々な経営情報等を保有しております。これらの重要な情報が外部に漏洩した場合には、当社グループの社会的信用の失墜による売上減少や損害賠償に対応するための費用の発生等により当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社では2021年にISO27001の国際認証を取得し、情報管理に関するポリシーや事務手続等を策定し役職員等に対する教育・研修等により情報管理の重要性の周知徹底、セキュリティ対策等を行っております。

 

(9)自然災害等のリスク

 地震等の自然災害や火災等の事故によって、当社グループの生産拠点等の設備が壊滅的な損害を被る可能性があります。この場合は当社グループの操業が中断し、生産及び出荷が遅延することにより売上高が減少し、生産拠点等の修復のために多額の費用を要することとなる可能性があります。さらに、廃棄物の処理を委託する外部業者が、自然災害による廃棄物の受入れによって、処理費用が高騰した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、約30社とのアライアンス・ネットワークを形成しており、万一災害が発生した際には、スクラップ及び廃棄物の処理を、当該ネットワークを通じて継続させることで、損害を最小限に抑える対策をとっております。

 

(10)感染症の世界的流行のリスク

 感染症の世界的流行が起こり、感染拡大を防ぐための施策が実行された結果として経済活動が停滞すると、解体工事に着工の延期や完工の遅れが生じ、当社グループの解体事業セグメントの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、廃棄物及び再生資源の取扱量が減少すると、環境事業セグメントの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。さらに鉄スクラップ価格等の資源価格が急落した場合、一時的に適正な利幅がとれないこととなり金属事業セグメントの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、十分な自己資本と資金を確保し、また不測の事態に備え堅実な経営戦略を実行することで、安定した経営を心掛けております。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

      文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国の経済は、一部に弱めの動きが見られるものの、緩やかな回復が見られる状況にあります。しかしながら、円安、高水準で推移する資源価格、中国の景気動向、及び米国の今後の外交・通商政策等、依然として先行き不透明な状況が続いています。当連結会計年度における鉄スクラップ価格は上半期は概ね横這いで推移しましたが、下半期に下落し、期間内の平均価格は前年同期を下回りました。

このような経済情勢の下、当社グループは、解体・環境・金属の各事業が総合的にニーズを探り出し、解体工事や設備撤去、スクラップの買取り、産業廃棄物収集運搬・中間処理を経て素材メーカー等に再生資源を提供する「ワンストップ・サービス」をさらに推進させております。

 これらの結果、当連結会計年度における売上高は9,656,672千円(前期比11.5%増)、営業利益は798,551千円(同36.7%増)、経常利益は823,883千円(同36.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は520,398千円(同31.3%増)となりました。

 

各セグメント別の状況は以下のとおりです。

<解体事業>

解体工事については、風力発電所の解体工事や、大規模な工場や医療施設の解体案件が進捗し、増収増益に寄与しました。工事監督者数については、当連結会計年度末時点で31名となりました。さらに施工能力を高めるとともに受注活動を活発化しております。

これらの結果、売上高は2,532,376千円(前期比10.9%増)、営業利益は360,029千円(同33.1%増)となりました。受注残高については、工事の進行度に応じてすでに売上計上された部分を除き1,665,835千円となりました。

<環境事業>

産業廃棄物処理受託の取扱量は19,995トンと軟調でしたが売上高は前年並みとなりました。再生資源販売の取扱量は18,287トンと堅調に推移し、また非鉄金属の相場上昇をうけ売上高は伸長し、増収増益に寄与しました。

これらの結果、売上高は2,097,393千円(前期比20.6%増)、営業利益は280,722千円(同68.5%増)となりました。

<金属事業>

当事業の金属スクラップ取扱量は75,871トン(うち当社工場でのスクラップの取扱量は58,490トン、残りは当社工場を介しない直送取引)となりました。鉄スクラップ相場の期中平均価格が前期を下回る水準となりましたが、非鉄金属相場の伸長や大型解体案件から発生したスクラップの販売が寄与し、増収増益となりました。

これらの結果、売上高は5,026,903千円(前期比8.4%増)、営業利益は157,798千円(同7.2%増)となりました。

 

当連結会計年度末における財政状態は、以下のとおりです。

(資産)

 当連結会計年度末における総資産は6,337,101千円となり、前連結会計年度末に比べて595,732千円増加しました。流動資産は、現金及び預金の増加等により、前連結会計年度末に比べて448,626千円増加の3,560,515千円となりました。固定資産は、投資有価証券の増加等により、前連結会計年度末に比べて147,105千円増加の2,776,586千円となりました。

(負債)

 当連結会計年度末における負債は1,802,909千円となり、前連結会計年度末に比べて88,312千円増加しました。流動負債は、未払法人税等が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べて69,140千円増加の1,388,701千円となりました。固定負債は、繰延税金負債の増加等により、前連結会計年度末に比べて19,172千円増加の414,208千円となりました。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べて507,419千円増加し、4,534,192千円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ527,348千円増加し2,183,038千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

  営業活動の結果、得られた資金は932,384千円となりました。これは主に、資金の増加として、税金等調整前当期純利益822,310千円、減価償却費287,623千円、売上債権の減少額76,884千円等があった一方、資金の減少として、法人税等の支払額223,652千円、仕入債務の減少額141,380千円等があったことによるものであります。

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

  投資活動の結果、支出した資金は239,698千円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出220,965千円等によるものであります。

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

  財務活動の結果、支出した資金は165,338千円となりました。これは、配当金の支払額90,865千円等によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

 

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

 至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

環境事業(千円)

1,449,664

104.3

金属事業(千円)

3,520,957

106.4

合計

4,970,621

105.8

 (注)1.金額は製造原価によっております。

2.解体事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載しておりません。

 

b.受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

 

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

  至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

解体事業

 

 

    受注高(千円)

3,401,458

131.2

    受注残高(千円)

1,665,835

209.1

 (注)環境事業及び金属事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載しておりません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

 

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

  至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

解体事業(千円)

2,532,376

110.9

環境事業(千円)

2,097,393

120.6

金属事業(千円)

5,026,903

108.4

合計

9,656,672

111.5

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社ナベショー

2,059,927

23.8

2,161,562

22.38

アチハ株式会社

902,389

10.4

745,529

7.72

株式会社ヒラタコーポレーション

885,579

10.2

925,221

9.58

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであ

 ります。

  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 ①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、必要な見積りを行っており、それらは資産・負債及び収益・費用の計上金額に影響を与えております。これらの見積りについては、過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 

 ②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき継続的に見積りを行っております。

 工事請負契約について、期間がごく短い工事を除き、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき、一定の期間にわたり収益を認識しています。当該収益の認識にあたり適切に見積りを行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 なお、詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご参照ください。

 

 ③経営成績の分析

イ.当連結会計年度の経営成績の分析

 当連結会計年度の経営成績の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。

ロ.経営成績に重要な影響を与える要因について
 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 ①重要な会計方針及び見積り」をご参照ください。

ハ.資本の財源及び資金の流動性についての分析

(キャッシュ・フロー)

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

(資金需要)

 運転資金、設備投資、借入金の返済及び利息の支払い並びに配当金の支払い等に資金を充当しており、必要とする資金は、営業活動によるキャッシュ・フローにより調達しております。

 当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入により、成長を維持するために将来必要な資金を調達することが可能と考えております。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。