第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、国内飲料事業を取り巻く経営環境が大きく変化する中、グループ一丸となって将来の持続的成長をめざすべく、2014年に「グループ理念・グループビジョン」「ブランドメッセージ」を制定しています。

「人と、社会と、共に喜び、共に栄える。その実現のためにDyDoグループは、ダイナミックにチャレンジを続ける。」というグループ理念は、創業以来培ってきた「共存共栄」の精神を謳っています。お客様、従業員、取引先、地域社会、株主といったすべてのステークホルダーの皆様との共存共栄を図りながら、企業の成長とともに従業員が成長していくために、チャレンジする企業風土の醸成に取り組み、当社グループの文化である「共存共栄」の精神を未来へとつないでいきます。

 

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また、当社グループのコアビジネスである国内飲料事業は、清涼飲料という消費者の皆様の日常生活に密着した製品を取り扱っており、セグメント売上高の約90%は地域社会に根差した自販機を通じた販売によるものです。また、自社工場を持たず、生産・物流を全国の協力業者に委託するファブレス経営により、当社は製品の企画・開発と自販機オペレーションに経営資源を集中し、業界有数の自販機網は当社グループの従業員と共栄会(当社機のオペレーションを行うパートナー企業の総称)により管理しています。

このような当社独自のビジネスモデルは、ステークホルダーの皆様との信頼関係によって成り立っていることから、「人と、社会と、共に喜び、共に栄える。」ことが会社としての責務であり、経営上の最重要課題であると認識しています。そして、その実現のために、「ダイナミックにチャレンジを続けていく」ための基盤として、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みであるコーポレート・ガバナンスを継続的に改善していくことが、株主共同の利益に資するものと考えています。

 

(2)経営戦略等

当社グループは、「人と、社会と、共に喜び、共に栄える。その実現のためにDyDoグループは、ダイナミックにチャレンジを続ける。」のグループ理念のもと、2030年のありたい姿を示す「グループミッション2030」“世界中の人々の楽しく健やかな暮らしをクリエイトするDyDoグループへ”を定めています。SDGsのめざす未来の実現に、事業を通じて貢献することが私たちのミッションであり、持続可能な社会の実現によって、私たちも持続的に成長することができるとの思いが、その背景にあります。「共存共栄」の精神は、SDGsの原則である「誰一人取り残さない」にも通じるものです。2030年に向け、世界中の人々が楽しく健やかに暮らせる持続可能な社会の実現に貢献し、社会価値・環境価値・経済価値の創出による持続的成長と中長期的な企業価値向上をめざしていきます。

 

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また、当社グループは、「グループミッション2030」実現への取り組みを通じて、サステナビリティ経営を推進しています。近年、地球規模での人口の増加や、それに伴う資源・エネルギー・食料の逼迫、環境問題、高齢社会の到来や格差の拡大等、企業が直面している課題は多岐にわたっています。このような環境や社会の変化による潜在的なリスクに備えるとともに、事業を通じて社会的課題の解決を図り、豊かで持続可能な社会の実現へ貢献していくことが、企業としての責務です。当社グループは、「中期経営計画2026」のスタートにあたり、サステナビリティの観点から、中長期的な経営課題について議論し、「グループミッション2030」の実現に向けた8つのマテリアリティを特定しました。当社グループのマテリアリティへの取り組みを通じて、世界中の人々が楽しく健やかに暮らせる持続可能な社会の実現に貢献していきます。

 

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「グループミッション2030」では、その達成に向けたロードマップを描いています。具体的には、2030年1月期までの期間を「基盤強化・投資ステージ」「成長ステージ」「飛躍ステージ」の3つに区分し、それぞれのステージに応じた事業戦略を推進することにより、競争優位性の高いビジネスモデルを構築していきます。現在は、将来の飛躍に向けた「成長ステージ」として、5カ年(2023年1月期~2027年1月期)の「中期経営計画2026」に取り組み、国内飲料事業の再成長と海外飲料事業戦略の再構築に注力しつつ、長期視点での事業育成に取り組んでいます。

 

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(3)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標

当社グループは、「グループミッション2030」の経営指針として、社会価値・環境価値・経済価値の創出に向けた定性的・定量的な指標を以下の通り定めています。

 

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① 経済価値創出に向けた財務KPI

当社グループは、「グループミッション2030」における基本方針として、「国内飲料事業のイノベーション」「海外での事業展開の拡大」「非飲料事業での第2の柱の構築」の3つを掲げています。この基本方針のもと、事業の「稼ぐ力」の強化を図るべく、経済価値創出に向けた財務KPIは資本生産性指標である「ROIC」を採用し、「成長ステージ」と「飛躍ステージ」の最終年度における目標数値をそれぞれ設定しています。ROICを活用した事業ポートフォリオ戦略を推進するとともに、事業別ROICツリーを活用した各事業の資本効率の改善に取り組んでいます。

 

●ROIC目標値※1

 

 

国内飲料事業※2

海外飲料事業

非飲料事業※3

連結

成長ステージ

(2023年1月期~2027年1月期)

4%

13%

0%

4%

飛躍ステージ

(2028年1月期~2030年1月期)

17%

5%

17%

8%以上

 

※1 超インフレ会計適用前、投下資本はセグメントへの投下分

※2 サプリメント通販事業を除く

※3 国内飲料事業のうちサプリメント通販事業、医薬品関連事業、食品事業、希少疾病用医薬品事業

 

② 環境価値創出に向けた非財務KPI

近年、気候変動をはじめとする環境問題への企業の取り組み姿勢に対するステークホルダーからの評価や市場の価値観の変化は、消費者の商品・サービスの選択に大きく影響するものとなっており、気候変動抑制のため、世界的規模でのエネルギー使用の合理化や地球温暖化対策等の法令等の規制も強まっています。また、気候変動に起因する水資源の枯渇、コーヒーをはじめとする原材料への影響、大規模な自然災害による製造設備の被害等のサプライチェーンに関わる物理的リスクの高まり等、グローバル社会が直面する重要課題である気候変動問題への対応は、当社グループの持続的成長の実現に向けた大きな経営課題であると認識しています。このような状況を踏まえ、脱炭素社会へ貢献するべく、環境価値創出に向けた非財務KPIとして、グループとしてのCO2排出削減目標を設定しています。

なお、当社グループは、2022年1月に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による提言への賛同を表明しており、TCFDのフレームワークに基づく気候関連情報は、当社ウェブサイトに掲載しています。

 https://www.dydo-ghd.co.jp/sustainability/eco/tcfd/

 

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、2030年のありたい姿を示す「グループミッション2030」として、「世界中の人々の楽しく健やかな暮らしをクリエイトするDyDoグループへ」を掲げています。そして、その実現に向けた「成長ステージ」として、5カ年(2023年1月期~2027年1月期)の「中期経営計画2026」を策定し、「国内飲料事業の再成長」「海外飲料事業戦略の再構築」「非飲料領域の強化・育成」の3つの基本方針のもと、取り組みを推進してきました。

その結果、2023年1月にアサヒ飲料株式会社(以下、アサヒ飲料)との共同出資により自販機の直販チャネルを一体的に運営する新会社としてダイナミックベンディングネットワーク株式会社を設立したほか、2024年2月にはポーランドで清涼飲料の製造・販売を行うWosana S.A.(以下、ヴォサナ社)を子会社化するなど、中長期的な企業価値向上に向けた事業基盤を強化しました。また、2022年以降、国際情勢の変化などを背景に、グループ各社において原材料価格をはじめとするコストが上昇した一方、トルコ飲料事業においては急激なインフレが進行するなど、当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化しています。

このような内部・外部環境の変化を踏まえ、「中期経営計画2026」の残期間(2026年1月期~2027年1月期)における計画の見直しを行いました。基本方針は維持しつつ、経営指標の目標値、事業戦略、投資資金/資金配分を見直しています。本中期経営計画において将来の成長に向けた投資を実行するとともに、収益体質への転換を図ることで、次の「飛躍ステージ」に向けた再成長軌道への道筋を確かなものへとしていきます。

 

●経営指標の目標※1

(単位:百万円)

 

 

最終年度(2027年1月期)目標

当初目標値

修正後目標値

売上高成長率(年平均成長率)※2

+3%※3

+9%

 

(参考)連結売上高

175,000

255,300

営業利益率

4%

3%

 

(参考)連結営業利益

6,800

7,800

連結ROIC※4

6%

4%

 

※1 超インフレ会計適用前

※2 2021年度比

※3 為替中立ベース

※4 投下資本はセグメントへの投下分

 

① 国内飲料事業の再成長

当社グループのコアビジネスである国内飲料事業は、創業来、「お客様の求めるものをお客様に身近なところでお届けする」独自のビジネスモデルによって発展してきました。そして、業界有数の自販機網と、直販と共栄会によって一体的に運営する品質の高いオペレーション体制を強みとしています。

コロナ禍を経て、消費者の行動様式は大きく変容し、自販機市場においては本格的な販売回復に至らない中、自販機に対する業界各社の取り組み姿勢は二極化し、上位寡占化の傾向がより強いものとなっています。このような状況の中、自販機市場における確固たる優位性の確立を最優先課題として注力していくことに加え、お客様の楽しく健やかな暮らしに貢献する「こころとからだに、おいしい商品」の開発・提供に取り組んでいます。

足元では、アサヒ飲料との共同出資で設立したダイナミックベンディングネットワーク株式会社のもと、アサヒ飲料傘下にあった直販チャネルへのスマート・オペレーションの導入を進めるとともに、両社の直販チャネルの一体的運営を通じたシナジー効果の創出に努めています。また、AIをはじめとした最新のテクノロジーを活用し、スマート・オペレーションの高度化にも取り組んでいます。

今後については、国内飲料事業の2030年のありたい姿「自販機市場において絶え間ない挑戦と共創で新しい価値を提供し、トップランナーとして業界をリードし続けます」のもと、スマート・オペレーションのさらなる進化と展開先の拡大に取り組むとともに、DyDoの店舗である自販機を通じて、お客様の求める価値をお届けすることにより、自販機市場における確固たる優位性を確立していきます。

※デジタル技術を活用し効率化を実現した自販機オペレーションを示す当社の造語。

 

② 海外事業戦略の再構築

当社グループは、2010年代から海外展開を積極化し、現在は現地企業のM&Aを通じて進出したトルコとポーランドを中心に、中国、英国に拠点を設け、飲料事業を展開しています。海外飲料事業を将来の収益ドライバーとして育成すべく、既存事業の拡大・安定化を進めるとともに、海外飲料事業戦略の再構築に取り組んでいます。

足元では、トルコ飲料事業において高インフレやリラ安が継続していますが、戦略的な価格改定とサプライチェーンマネジメントによる収益性改善が進んでいます。中国飲料事業においては、2021年より無糖茶の現地製造を開始し、中国国内の無糖茶市場の拡大に貢献しています。また、2024年2月には、海外飲料事業全体の収益基盤の強化を目的に、ポーランドで清涼飲料の製造・販売を行うヴォサナ社を買収しました。

今後については、海外飲料事業の2030年のありたい姿「世界中の人々の健康を支えるグローバルブランドを生み出します」のもと、海外事業戦略の再構築に取り組むとともに、健康ニーズの高まりに対応したグローバルブランドの育成にチャレンジしていきます。

 

③ 非飲料領域の強化・育成

当社グループは、中長期的な成長性・収益性向上に向けて、非飲料領域の強化・育成を基本方針の一つに掲げ、既存事業の強化と新規事業の長期視点での育成に取り組んでいます。

既存事業においては、国内飲料事業を担うダイドードリンコ株式会社(以下、ダイドードリンコ)が運営するサプリメント等の通信販売事業では、足元ではサプリメント業界における消費者の買い控えによる影響を受けていますが、主力商品である「ロコモプロ」を中心に定期顧客の獲得に向けた取り組みを進めています。医薬品関連事業を担う大同薬品工業株式会社では、医薬品・医薬部外品のドリンク剤の受託製造企業としてトップシェアを誇りながら、新たな剤形の受託製造に取り組み、2020年に新たに製造を開始したパウチ製品の受注が好調に推移しています。また、食品事業を担う株式会社たらみは、フルーツゼリー市場においてトップシェアを有し、多様化する消費者ニーズに応じた付加価値の高い商品開発とともに、安定供給と生産性向上に向けたサプライチェーン改革に取り組んでいます。

当社グループの新規事業領域拡大への取り組みとして、希少疾病用医薬品事業に参入すべく2019年に設立したダイドーファーマ株式会社は、2024年9月に、ダイドーファーマ初の新薬となるランバート・イートン筋無力症候群治療剤「ファダプス®錠10mg」の製造販売承認を取得し、2025年1月に日本国内で販売を開始するなど、マテリアリティに掲げる「社会的意義の高い医療用医薬品の提供」に向けて、着実な歩みを進めています。

超高齢化社会・健康長寿社会が進展する中、人々の健康・予防・衛生に対する意識の高まりも相まって、今後、ヘルスケア関連市場は着実に成長していくことが想定されます。今後については、お客様の健康と生活の質の向上に貢献すべく、大きな成長が期待されるヘルスケア領域の事業の強化・育成を図り、非飲料事業での第2の柱の構築にチャレンジしていきます。

 

④ 財務規律と投資戦略

当社グループは、持続的成長の実現に向け、財務健全性を維持できる適正水準の自己資本比率を維持しながら、将来の成長が期待できる分野へ投資するとともに、株主の皆様への安定的な還元を基本的な考え方としています。そして、再投資した資本をもとに資本コストを上回るリターンへとつなげていくことで、さらなる成長投資と株主還元の実現をめざしています。

「中期経営計画2026」の残期間(2026年1月期~2027年1月期)における資金配分の方針は、今後2年間で生み出されるキャッシュ・フロー260億円以上を元手に、自販機関連資産への投資を中心に既存事業の維持・強化に向けた投資と、安定配当方針のもと実施する株主還元へと振り向けていきます。

また、上記とは別に、ネットキャッシュ内の範囲を戦略投資枠として設定し、「飛躍ステージ」での飛躍的成長に向けた投資を検討していきます。投資判断にあたっては、当社グループの経営成績及び財政状態等への影響に十分注意を払いながら、定性的・定量的な基準をもとに、適切な投資判断を実行していきます。

 

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(5)経営環境についての経営者の認識

 

 

近年、気候変動や地政学的なリスクが事業に及ぼす影響が従来と比べて一段と高くなっています。このようなリスクは、国内飲料事業の主要原材料であるコーヒー豆をはじめとした原材料の調達価格の上昇として顕在化しており、この影響は今後も当面続くものと見込んでいます。

このような状況の中、国内飲料事業において、2023年11月に競合他社に先駆けて価格改定を行った結果、想定以上に販売数量が減少し、苦戦する結果となりました。しかしながら、期中において、各自販機の販売状況に応じた柔軟な販売価格の設定、一部商品の自販機推奨価格の値下げなど、迅速な対策を講じたことで、下期にかけて販売数量を持ち直すことができました。不確実で予測が難しい問題に対処することは容易ではありませんが、可能な限り、先を見通して準備をすること、そして、変化に対して大胆かつ機敏に対応する重要性が今後、ますます高くなってくると考えています。

このような外部環境の急激な変化に加え、2024年1月期にはアサヒ飲料傘下にあった自販機オペレーション会社3社とその統括を行う合弁会社ダイナミックベンディングネットワーク、2025年1月期にはポーランドのヴォサナ社がDyDoグループに加わるなど、私たち自身も大きく変化しています。こうした状況を経営計画に反映し、2030年のありたい姿である「グループミッション2030」を実現していくべく、現在進行している「中期経営計画2026」を見直し、その内容を2025年3月に公表しました。経営指標の目標値や事業戦略、投資資金/投資配分は見直しましたが、策定当初に掲げた3つの基本方針「国内飲料事業の再成長」「海外飲料事業戦略の再構築」「非飲料領域の強化・育成」に変わりはなく、引き続き、将来の成長に向けた投資を実行するとともに、収益体質への転換を図ることで、次の「飛躍ステージ」に向けた再成長軌道への道筋を確かなものへとしていきます。

VUCA時代において持続的成長を実現する鍵は、組織のダイバーシティにあると考えています。前述の通り、昨今のDyDoグループには国籍や文化、価値観などが異なる多様な人財が集まっています。今後は、ダイバーシティこそが私たちの強みであると言えるよう、2024年4月に発表した「ダイドーグループがめざす人的資本経営」のもと、それぞれの個性や能力を最大限に発揮できる環境を提供し、従業員とのエンゲージメントを高めていくことで、「グループミッション2030」を実現していきます。

 

ダイドーグループホールディングス株式会社

代表取締役社長 髙松 富也

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)サステナビリティ

 当社グループは、環境に関するマテリアリティとして「脱炭素社会・循環型社会への貢献」を掲げ、2022年1月に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による提言への賛同を表明するとともに、グループとしてのCO2排出削減目標を設定しています。TCFD提言では、「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標と目標」の4つの項目に基づいて開示することを推奨しています。当社グループのTCFDのフレームワークに基づく気候関連情報は、以下の通りです。

 

① ガバナンス

ⅰ. 気候関連のリスクと機会についての取締役会による監督体制

 当社グループは、事業を通じて社会的課題の解決に貢献すべくサステナビリティ課題への取り組みを強化し、持続的成長の実現と中長期的な企業価値向上をめざしています。当社グループのサステナビリティ経営全体の方針の検討及び承認、全社的なサステナビリティプログラムの決定及び改善指示等を行うことにより、当社グループのコーポレートブランドの価値向上を図ることを目的として、「グループサステナビリティ委員会」を年2回開催するほか、必要に応じて都度開催することとしています。取締役会は、「グループサステナビリティ委員会」において検討・協議された内容について報告を受けることにより、当社グループの気候変動リスクと機会への対応方針及び実行計画について監督を行う体制としています。

 

ⅱ. 気候関連のリスクと機会を評価・管理する上での経営者の役割

 代表取締役社長は、当社グループのサステナビリティ経営における最高責任者として、「グループサステナビリティ委員会」の委員長の職務を担っています。

 

② リスク管理

ⅰ. 気候関連リスクの特定・評価プロセス

 当社グループは、TCFDが提唱するフレームワークに則り、シナリオ分析の手法を用いて、2050年時点における外部環境の変化を予測し、気候変動が事業に与えるリスクや機会についての分析を実施しました。2024年1月期には、国内飲料事業、医薬品関連事業及び食品事業に加え、海外飲料事業に関するシナリオ分析を実施したほか、当社グループのビジネスにおいて、最も影響度の高い国内飲料事業における財務インパクトを試算しています。

 

ⅱ. 気候関連リスクの管理プロセス及びグループリスク管理との統合状況

 事業の持続的成長を実現するためには、環境や社会の変化を適切に把握し、事業におけるリスクの低減と機会の最大化に取り組む必要があるものと認識しています。当社グループは、リスクマネジメントとサステナビリティ経営の推進の進捗管理(サステナビリティプログラム)を連動させるべく、代表取締役社長を委員長とする「グループリスク管理委員会」「グループサステナビリティ委員会」を設置し、両委員会を中心としたそれぞれの取り組みを連動させながらマネジメントを行っています。

 気候関連リスクは中長期的に顕在化する可能性を有することから、短期のみならず、中長期の時間軸で、低炭素社会への移行に伴うリスク及び気候変動の顕在化に伴う物理的リスクを評価する体制を構築すべく取り組みを進めています。

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③ 戦略

ⅰ. 当社グループの気候関連のリスクと機会の概要と事業及び財務への影響

 シナリオ分析に基づく気候関連リスク・機会の評価結果は、以下の通りです。

 

(移行リスク)注釈のない記載については、中核事業である国内飲料事業を対象としています。

↑:非常に大きな影響  ↗:やや大きな影響  →:軽微な影響  □:算定済み(非開示)  △:算定検討中

 

リスク/機会項目

考察

事業

インパクト

財務インパクト

現時点で実施している対応策

中分類

小分類

リスク

/機会

2030

2050

1.5℃

4℃

1.5℃

4℃

1.5℃

4℃

政策・

規制

カーボンプライシング

リスク

炭素税導入に伴う、自販機オペレーションコスト、自販機調達にかかるコスト、配送費の増加

約1.5

億円

約4億円

・スマート・オペレーションの推進

・EV・FCEVトラックの導入

・ダイドー・シブサワ・グループロジスティクス株式会社による配送の最適化

・自販機の長寿命化:2030年までに15年

リスク

炭素税導入に伴う、自販機設置先の電気代負担によるコスト増、自販機引上げリスク

・省エネ自販機の展開

・自販機ビジネスのカーボンニュートラルの検討

リスク

水使用量・消費量の削減規制により、各種飲料の生産量が減少

※海外飲料事業

・トルコ国外での水源および製造拠点の確保

リスク

炭素税の導入により、原材料コスト、包材コスト、エネルギーコスト、物流費など、製造に関連する全般的な費用が高騰

※医薬品関連事業・食品事業

・省エネに向けた改善活動及び再生可能エネルギーの導入検討

・調達先の分散などの検討

機会

炭素税導入に伴う、カーボンニュートラルに対応した自販機のニーズの上昇

・計画的な新品自販機の展開

・自販機ビジネスのカーボンニュートラルの検討

市場

需要の

変化

リスク

廃棄処理時に排出するCO2への炭素税導入に伴う、廃棄に関わる処理費用(商品・自販機)の増加

・容器のリデュース

・ラベルを極小化した商品展開

・自販機の長寿命化:2030年までに15年

リスク

消費者や自販機設置先から、環境負荷が高い商品や販売チャネルが選ばれなくなる

・自販機ビジネスのカーボンニュートラルの検討

・環境配慮型商品の開発

・「みんなの LOVE the EARTH PROJECT」の推進

機会

消費者や自販機設置先から、環境負荷が低い商品や販売チャネルが選ばれるようになる

従業員一人ひとりが事業活動のみならず、自身の日常生活においても環境配慮を意識した行動を促進する取り組み

(物理的リスク)注釈のない記載については、中核事業である国内飲料事業を対象としています。

リスク/機会項目

考察

事業

インパクト

財務インパクト

現時点で実施している対応策

中分類

小分類

リスク

/機会

2030

2050

1.5℃

4℃

1.5℃

4℃

1.5℃

4℃

慢性

平均気温上昇

リスク

コーヒー豆などの原材料において、調達先が限定されることによる調達コスト増、品質の低下

コーヒー豆の生育適地面積の減少率

・コーヒー豆の分散調達、生産地に対する情報収集

・コーヒーのみに依存しない品揃え

※1

※2

※3

※4

リスク

平均気温の上昇に伴い、特に植物由来の原材料において、調達量の制限並びに大幅な価格上昇

※医薬品関連事業・食品事業・海外飲料事業

・複数社購買・産地の分散等の検討

・代替方法の検討

リスク

自販機オペレーション活動が過酷な労働条件になることによる労働者不足

・スマート・オペレーションの推進

熱中症搬送人口の増加

機会

熱中症対策飲料のニーズが高まりによる、自販機設置要望の増加

・トリプルペット自販機の導入増

※ペットボトル飲料の販売構成比を上げることを可能にする自販機

汚染・水質悪化

リスク

・土壌汚染や水質の悪化により商品の品質に影響が生じ、製造の停止

・浄化設備の追加設置などのコスト増

※海外飲料事業

・複数製造拠点の確保

・製造委託の検討

急性

自然災害の激甚化

リスク

自販機調達先の稼働停止による供給停止

・自販機の長寿命化:2030年までに15年

リスク

・洪水・台風により自販機の浸水被害が多発し、収益へ影響

・サプライチェーンが寸断し、お客様へ商品を届けることができなくなり、売上・利益が低減

約1.5億円※5

約3億円※5

約5億円※5

約9億円※5

・スマート・オペレーションの推進

・拠点別ハザードマップの作成

リスク

異常気象(大型台風や局地的な豪雨など)により、工場や倉庫の崩壊、従業員の被災などが発生し、製造が長期間休止する

※医薬品関連事業・食品事業

・事業継続計画(BCP)の整備

・外部倉庫拡大検討

※1 ブラジル:△17%、ベトナム:△15%、インドネシア:△11%、コロンビア:△16%、その他:△19%

※2 ブラジル:△28%、ベトナム:△28%、インドネシア:△31%、コロンビア:△22%、その他:△25%

※3 ブラジル:△26%、ベトナム:△25%、インドネシア:△18%、コロンビア:△26%、その他:△31%

※4 ブラジル:△43%、ベトナム:△47%、インドネシア:△51%、コロンビア:△37%、その他:△41%

※5 被害額は2030年もしくは2050年までの累計金額

 

ⅱ. 気候関連リスクと機会への対応・戦略のレジリエンス

 当社グループの中核事業である国内飲料事業を担うダイドードリンコ株式会社は、製造と物流を全国各地の協力企業に委託するファブレス経営を採用し、商品開発と主力販路である自販機のオペレーションに経営資源を集中しています。2050年の自販機ビジネスにおけるカーボンニュートラル実現をめざして、気候変動への緩和策と適応策を強化し、脱炭素社会・循環型社会の形成に貢献していくことが、当社グループのサステナビリティに係る重要課題であると認識しています。

 低炭素社会への移行リスク(1.5℃シナリオ)といたしましては、炭素税の導入を含む規制強化により、配送コストや自販機オペレーションにかかるコストの増加が見込まれるほか、自販機設置先の電気代負担増による引上げリスクが高まる等、国内飲料事業の売上構成比のうち約90%を占める自販機チャネルの事業運営に多大な影響が出ることが想定されますが、営業車両のEV化やスマート・オペレーションの推進による車両台数の削減に取り組むほか、省エネ型自販機の計画的投入や、カーボンニュートラルに対応した“お客様と共にサステナブルな未来を創る”自販機「LOVE the EARTHベンダー」の展開等により、お客様とのパートナーシップを推進し、事業機会の創出につなげていきます。

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 気候変動の顕在化に伴う物理的リスク(主に4℃シナリオ)としましては、自然災害の激甚化により、自販機の水没や生産工場・配送拠点の浸水等による被害が多発するリスクも想定されます。また、自販機ビジネスは、労働集約型産業の側面を持つことから、夏季の平均気温の上昇が、自販機オペレーションに係る労働環境に影響を及ぼし、労働力不足のリスクが高まることも懸念されます。

 気候変動による平均気温の上昇は、熱中症対策飲料の販売増が事業機会となり得る一方で、主要原材料であるコーヒー豆の調達に大きな影響が出るものと認識しています。

 当社グループは、これらのリスクと機会に対応していくために、日頃からコーヒー豆等の生産地に対する情報収集を行い、分散調達できる体制を築き上げるとともに、コーヒーのみに依存しない魅力ある商品ラインアップの拡充に取り組んでいます。また、スマート・オペレーションの構築に加え、AIの導入によって現場における働き方の多様化を図る等、労働力不足の時代への対応を進めるほか、個々のロケーションの特性にあった品揃えの最適化に努める等、自販機の店舗としての魅力をより高めていきます。

 なお、国内飲料事業においては、全国各地の協力工場へ商品の生産を委託することや、全国広範囲に自販機を設置することにより、リスク分散を図っています。

 

④ 指標及び目標

ⅰ. 気候関連リスク・機会の管理に用いる指標及び目標

 当社グループは、2022年1月、サステナビリティの観点をより一層事業活動に組み込むため、「脱炭素社会・循環型社会への貢献」を環境に関するマテリアリティとして特定し、環境価値創出に向けた非財務KPIとして、当社グループにおけるCO2排出削減目標を設定しています。

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 また、国内飲料事業においては、循環型社会への貢献に向けて、以下の3つの重点目標を設定しています。

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ⅱ. CO2排出量

 当社グループの国内主要グループ会社におけるScope1、Scope2及び重要なScope3(自販機の電力消費による排出)のCO2排出量は、以下の通りです。

※ダイドードリンコ株式会社、ダイドービバレッジサービス株式会社、ダイドービジネスサービス株式会社、大同薬品工業株式会社、株式会社たらみ

■ ダイドービバレッジサービス株式会社は、2025年1月21日付でアサヒ飲料販売株式会社を吸収合併し、社名を

ダイドーアサヒベンディング株式会社に変更しました。

 

CO2排出量実績(2023年4月1日から2024年3月31日)

単位:tCO2

(カッコ内の数値は基準年度からの増減率)

 

国内飲料事業

医薬品関連事業

食品事業

合計

Scope1

7,383

3,872

3,834

15,089

Scope2

1,577

4,424

5,377

11,378

小計

8,961

(93.3%)

8,296

(109.1%)

9,211

(112.9%)

26,468

(104.3%)

 

 

 

 

 

Scope3

(カテゴリ1)

68,024

17,674

11,418

97,116

Scope3

(カテゴリ13)

90,213

(92.6%)

 

 

90,213

(92.6%)

 

CO2排出量実績 売上高原単位(2023年4月1日から2024年3月31日)

単位:tCO2/百万円

(カッコ内の数値は基準年度からの増減率)

 

国内飲料事業

医薬品関連事業

食品事業

合計

Scope1

0.07

0.30

0.19

0.10

Scope2

0.01

0.34

0.26

0.08

小計

0.08

(95.1%)

0.64

(86.9%)

0.44

(113.9%)

0.18

(104.1%)

 

 

 

 

 

Scope3

(カテゴリ1)

0.60

1.36

0.55

0.66

Scope3

(カテゴリ13)

0.80

(94.3%)

 

 

0.80

(94.3%)

注1:国内飲料事業における排出量実績は、ダイドードリンコ株式会社、ダイドービバレッジサービス株式会社及びダイドービジネスサービス株式会社が対象となります。

注2:ダイドードリンコ株式会社、ダイドービバレッジサービス株式会社及びダイドービジネスサービス株式会社の国内87拠点における温室効果ガス排出量情報について第三者検証を受けています。

注3:売上高原単位は、対象グループ会社の排出量合計(期間=2023年4月1日~2024年3月31日)÷売上高合計(期間=国内飲料事業、医薬品関連事業:2023年1月21日~2024年1月20日、食品事業:2023年1月1日~2023年12月31日)にて算出しています。

 

 今後とも、「DyDoグループSDGs宣言」のもと、企業としての持続的成長と持続的社会の実現に向けた取り組みをさらに強化していきます。

 

 

(2)人的資本経営

 当社グループは、人財に関するマテリアリティとして「従業員のワークライフシナジーの実現/ダイバーシティの推進」を掲げ、以下の考え方や指標及び目標を設定し、人的資本経営を推進しています。

 

① 戦略

〔人的資本経営の全体像〕

 グループミッション2030を達成するためには、社会の変化へ柔軟に対応しながら、事業変革および新規領域獲得を推進することが重要課題であり、その実現には、多様な価値観や能力を有する人財からなる組織の構築と、人財一人ひとりの主体的な成長と活躍が不可欠だと考えています。

 当社グループは、人財に求める資質として「志」を中心に、「チャレンジ精神」「成長意欲」「達成意欲」「自律心」を重視しています。この5つの資質を持つ人財の成長・活躍を支援するために、当社グループは、人財一人ひとりの主体的なキャリア形成を支援する仕組み(DyDoキャリア・クリエイト)を提供します。併せて多様な価値観が尊重され、誰もが能力を発揮できる心理的安全性を重視した組織開発を行い、またワークライフシナジー(心身ともに健やかで生産性高く働ける状態)を実現できる環境を提供します。

 これらの取り組みにより5つの資質を兼ね備え、高い成果を出し続ける人財、すなわち自律型プロフェッショナル人財を育成します。

 当社グループは、この人的資本経営の方針に基づき人財とのエンゲージメントを高めながら、国内外の事業において変化への対応力・価値の創出力を向上させ、事業の持続的な成長を実現していきます。

 

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② 指標及び目標

 当社グループがめざす人的資本経営における目標は、多様な自律型プロフェッショナル人財からなる組織を構築し、個人の主体的な成長・活躍により社会の変化に柔軟に対応して、国内外の事業変革・事業創造に貢献することと設定しています。その実現度を図る重要な指標として「従業員エンゲージメントスコア」を設定していますが、その目標数値とその他の指標については「人財戦略」、「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」、「労働環境・企業文化」における対応策の具体化に合わせて、順次適切に設定していきます。なお、当事業年度は以下の重要KPIの設定を行いました。

※多様性を尊重し、個々の状況に合わせた公平性のある機会を提供し、全員が能力を発揮できる環境を実現するという考え方

 

当事業年度に設定した重要KPI

重要KPI

当事業年度実績

2030年度目標

正社員女性比率

28.6%

35

女性管理職比率

12.9%

20

男性育児休業取得率

43.3%

100

※ダイドードリンコ株式会社、大同薬品工業株式会社、株式会社たらみ、ダイドーファーマ株式会社の主要子会社を集計対象とし、4社を合計して算出しています。

※「女性管理職比率」は、雇用形態に関係なく、女性管理職の比率を示しています。

 

■人的資本経営の実現に向けた方針と取り組み

ⅰ.人財戦略に関して

 当社グループの人財戦略の方針は、主体的なキャリア形成の支援による、人財の能力とエンゲージメントの向上です。外部環境の変化に対応して目標達成するためには、多様な分野における専門性の強化と、様々な環境における組織やプロジェクトのマネジメント力の強化が極めて重要となります。また、グループミッション2030では「海外での事業展開の拡大」を基本方針の一つに掲げており、グローバルな視点を持つ人財の育成・獲得が欠かせません。当社グループは、その実現に向けて、これまでの人財に関する取り組みを進化させ、従業員の主体的キャリア形成を支援する仕組み「DyDoキャリア・クリエイト」を導入します。グループ全体で個人のキャリア形成に主眼を置いた人事制度・育成プログラム・評価制度等を導入し、これらの運用を通じて、求める資質を備えた人財一人ひとりの成長とエンゲージメントの向上を図り、最終的に能力の多様性に富む強い組織の構築をめざします。なお、「DyDoキャリア・クリエイト」における施策は、優先度の高いものから、各セグメントの状況に合わせて段階的に導入を進めていきます。

 

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 主要子会社であるダイドードリンコ株式会社では、その先行事例として、人事総務部内に自販機営業部門専属のHRBP(ヒューマンリソースビジネスパートナー)を配置し、事業計画達成に必要な営業人員の確保及び飲料補充を行うルート担当者からの転身者や中途採用者など未経験者への体系的な育成プログラムの展開による自販機営業における活躍を支援する取り組みをスタートしました。

 また、国内飲料事業におけるビジネススキル習得支援として2020年9月より副業制度を導入し約170名が本制度を活用していますが、2024年9月より食品事業でも本制度の導入を開始しており、今後はグループ全体でさらなる活用促進を図っていきます。

 

ⅱ.DE&Iに関して

 当社グループは、人財一人ひとりの活躍を後押しするために、多様な価値観が尊重され、誰もが自由に意見を述べ、能力を発揮できる心理的安全性を重視した組織開発を進めます。多様性の実現に向けた課題は事業毎に異なりますが、まずは2023年1月に新設した「ダイバーシティ推進グループ」を中心に、グループ各社のDE&Iにおける課題を把握しながら、解決に必要な制度の拡充、業務プロセスの改善やテクノロジー活用した効率化を実現し、多様な人財が活躍できる組織作りを推進していきます。

 主要子会社であるダイドードリンコ株式会社では、従来は男性中心だった自販機設置先の新規開拓を担う営業職において女性比率を向上させることで、自社における女性人財の活躍推進とともに、女性の視点を生かした新たな価値を提供する自販機の展開を通じて、女性が働きやすい社会・環境づくりへの貢献という付加価値の創出をめざしています。また、女性営業職比率の向上に伴い、女性社員同士でのネットワークの構築や営業スキルアップを目的とした交流会を開催するなど、研修制度の充実化にも取り組んでいます。

 

ⅲ.労働環境・企業文化に関して

 人的資本経営を実行するための基盤となるのが、労働環境・企業文化です。当社グループは、心身ともに健やかでかつ生産性高く働ける状況、すなわちワークライフシナジーを実現できる環境を整備すべく、健康経営の推進やリモートワークなど柔軟な働き方を推進しています。主要子会社ダイドードリンコ株式会社は、経済産業省が推進する「健康経営優良法人認定制度」において、「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に認定されました。

 

 また近年、重要性が高まっているのが、自社やサプライチェーンにおける人権配慮です。当社グループは、創業以来大切にしている「共存共栄の精神」に基づき、一人ひとりの人権が尊重される社会の実現に向け、2024年3月に「DyDoグループ人権方針」を策定しました。これは、当社グループの企業活動における人権尊重を徹底するための最上位方針です。この方針に基づき当事業年度では、グループ会社従業員並びに主要なサプライヤーを対象とする「人権に関するアンケート」を実施し、そのアンケート結果に基づく対応策をグループサステナビリティ委員会の配下に位置する「グループ人権分科会」を中心に協議をし、人権尊重の責任を果たすため取り組みを推進しています。

 

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3【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財政状態などに重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、以下に記載している将来に関する事項は、当連結会計年度において当社グループが判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。

 

当社グループでは、企業理念に基づく経営戦略達成において発生する様々な阻害要因をリスクと位置付け、「内部統制システムの整備に関する基本方針」に基づき、当社グループにおけるリスク管理体制に関する基本的事項を定め、リスク管理の効率的かつ確実な運用を図っています。常設委員会として、代表取締役社長を委員長とする「グループリスク管理委員会」を年2回開催するほか、必要に応じて都度開催することとしています。「グループリスク管理委員会」は、リスク管理の方針や重要リスクの評価及び対策の承認、統制状況の効果検証・是正指導等の役割を担っています。

グループリスク管理委員会においては、リスク項目を「グループ横断のリスク」と「事業特有のリスク」に分類して整理し、評価を行っています。さらに、2023年度より採用した新たなリスクマネジメントの手法として、TCFDのシナリオ分析の枠組みを活用した、人口動態の変化に伴う中長期的なリスクに対する評価並びに対応策の進捗確認を実施しました。

 

(1)グループリスク管理委員会で特に議論された重要リスク

当連結会計年度のグループリスク管理委員会においては、影響度・発生可能性の高い重要リスクを抽出し、足元の業績に影響を与えるリスクが高まっている「原材料・資材の調達」及び「生産・物流体制」について議論を行いました。また、独自で実施した人口動態の変化に伴う中長期リスク分析の結果により、グループとして「人財の確保・育成」に関するリスクについて、中長期的に対策を検討していくべきとの認識が示されました。

 

(2)経営成績等に与える影響の内容及び当該リスクへの対応策等

当連結会計年度のグループリスク管理委員会が評価した重要リスクと対応策等は、次の通りです。

 

①グループ横断のリスク

ⅰ.人財の育成・確保

当社グループは、国内の少子高齢化に伴う人口減少や労働市場の流動化などにより、新たな人財の確保等が進まず、当社グループの安定的な事業継続等に重要な影響を及ぼす可能性があると認識しています。その上で、当社グループの2030年のありたい姿である「グループミッション2030」を実現するためには、多様な価値観や能力を有する人財からなる組織の構築と、人財一人ひとりの主体的な成長と活躍が不可欠と考えています。

当社グループは、これらのリスクの低減を図るため、国内飲料事業において、少ない人数でもオペレーションができる「スマート・オペレーション」の確立に加え、人工知能(AI)の活用により自販機オペレーションの効率化並びに生産性の向上に取り組んでいます。また、事業戦略と連動した人的資本経営を体系的に特定し、人財一人ひとりの主体的なキャリア形成を支援する仕組み「DyDoキャリア・クリエイト」を導入しました。個人のキャリア形成に主眼を置いた人事制度・育成プログラム・評価制度等を導入し、これらの運用を通じて、当社グループが求める資質を備えた人財一人ひとりの成長とエンゲージメントの向上を図り、能力の多様性に富む強い組織の構築に取り組んでいます。

 

ⅱ.原材料・資材の調達

当社グループの商品には、多種多様な原料・資材が使用されていますが、中でも国内飲料事業の主要原料であるコーヒー豆は国際市況商品であり、その価格は、商品相場だけでなく為替レートの変動の影響を受けます。価格変動の影響を受けることについては、他の原材料・資材についても同様であり、直近のエネルギーコスト上昇も相俟って、原材料・資材の調達コストの高騰は、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、これらのリスクの低減を図るため、国内飲料事業及び食品事業において、2022年10月より段階的に商品の価格改定を実施したほか、海外飲料事業(トルコ事業)においては、強いインフレ下にあるトルコにおいて戦略的な価格改定を継続的に実施する等、適正な限界利益率の確保による収益構造の改善に取り組んでいます。また、各事業において定期的に原料、資材及び調達先の見直し並びに複数調達先の検討等を進め、安定的な原料・資材の調達に向けて取り組んでいます。

 

 

ⅲ.生産・物流体制

近年、生産・物流を取り巻く経営環境は大きく変化しており、人手不足やコンプライアンスの厳格化を背景とした物流コストの大幅な上昇や、物流キャパシティーの逼迫による供給リスクが高まっています。

社会情勢の変化を背景とした物流コストの上昇リスクは、当面続くことが想定されることから、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、これらのリスクの低減を図るため、澁澤倉庫株式会社との合弁によるダイドー・シブサワ・グループロジスティクス株式会社を2018年6月に設立し、物流業界との連携強化による安定的な物流網の確保や配送拠点の見直しのほか、医薬品関連事業や食品事業においては、外部委託倉庫の拡大による配送効率の向上に向けた取り組みを推進しています。

 

ⅳ.海外情勢

ロシア・ウクライナ情勢やパレスチナ・イスラエル情勢に起因した資材価格・原油価格の高騰、為替相場の急激な変動等、近年、地政学リスクをはじめとする海外情勢の変化が、日本国内での事業活動にも影響を及ぼす可能性が高まっています。また、海外における事業展開には、各国の法令・制度、政治・経済・社会情勢、文化・宗教・商習慣の違いや為替レートの変動をはじめとした様々なリスクが存在します。

当社グループは、これらのリスクの低減を図るため、持株会社の海外事業統括部が海外子会社を管理・統括する体制とし、既存のトルコ・中国飲料事業の基盤を活かしながら、安定した収益基盤をもつポーランド飲料事業を新たに加え、海外飲料事業戦略の再構築を進めています。

 

ⅴ.環境問題への対応(気候変動問題)

気候変動をはじめとする環境問題への企業の取り組み姿勢に対するステークホルダーからの評価や市場の価値観の変化は、消費者の商品・サービスの選択に大きく影響するものとなっており、気候変動抑制のため、世界的規模でのエネルギー使用の合理化や地球温暖化対策等の法令等の規制も強まっています。

また、気候変動に起因する水資源の枯渇、コーヒーをはじめとする原材料への影響、大規模な自然災害による製造設備の被害等のサプライチェーンに関わる物理的リスクが顕在化した場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、これらのリスクの低減を図るため、TCFDのフレームワークに基づいた実態の把握と対応策の検討を継続的に実施しています。気候変動リスクは中長期的に顕在化する可能性を有することから「グループリスク管理委員会」と「グループサステナビリティ委員会」の両委員会を連動させながらマネジメントを行っています。

 

②事業特有のリスク

ⅰ.トルコ国内のハイパーインフレに関連するリスク

海外飲料事業の中で大きなウエイトを占めるトルコ飲料事業は、2022年度以降の急激なインフレの進行を背景に、戦略的な価格改定と機動的な販売促進活動などを実施したことで、販売単価の改善を図りながら販売ボリュームを伸ばし、着実に業績を改善させており、中長期的にも成長が期待されています。一方、トルコにおける3年間の累積インフレ率が100%を超えたことを示したため、当社グループは、トルコリラを機能通貨とするトルコの子会社について、超インフレ経済下で営業活動を行っていると判断しました。このため、当社グループは、トルコの子会社の財務諸表について、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」に定められる要件およびトルコ現地会計基準に従い、会計上の調整を加えています。今後、トルコにおけるインフレがさらに深刻化した場合、会計上の調整が多額にのぼり、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

また、商標権を含む固定資産の修正再表示額は、通常の固定資産と同様に減損の要否を検討し、その修正再表示額が回収可能価額を超過する場合は回収可能価額まで減損する必要がある等、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、これらのリスクに対応するため、持株会社の財務部による、収益管理、キャッシュ・コンバージョンサイクルに関する管理体制を強化・拡充するとともに、トルコ現地子会社においては、継続的な価格改定の実施による適正な限界利益率の確保や、トルコからの輸出取引の拡大等によるリスクの低減に努めています。

 

 

ⅱ.既存の自販機ビジネスへの集中・依存

当社グループのコアビジネスである国内飲料事業の自販機チャネルは、従来、価格安定性・販売安定性が比較的高く、収益性の高い缶コーヒーを主力商材として、安定的なキャッシュ・フローを確保することが可能でしたが、近年、自販機オペレーションを担う人手不足の問題等による自販機市場全体の総台数の減少傾向や原材料・資材の高騰による収益性の低下が課題となっています。当社グループの既存の自販機ビジネスが、これらの環境変化に対応できなかった場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす能性があります。

当社グループは、「自販機ビジネスの進化による社会的価値の創造」をマテリアリティに掲げ、市場の変化に柔軟に対応できる持続可能な自販機ビジネスモデルの確立をめざしています。

当社グループは、今後の労働力不足の時代に対応すべく、最新のテクノロジーを活用したスマート・オペレーションのさらなる進化に取り組むとともに、カーボンニュートラルに対応した“お客様と共にサステナブルな未来を創る”自販機「LOVE the EARTHベンダー」の展開を進めています。今後とも、自販機の設置先との協働も含め、DyDoの店舗である自販機を通じて、お客様の求める価値をお届けすることにより、自販機市場における確固たる優位性を確立していきます。

 

ⅲ.希少疾病用医薬品事業への参入

当社グループは、成長性の高いライフサイエンス分野をはじめとするヘルスケア関連市場を次なる成長領域と定め、その中でも希少疾病と呼ばれる国内患者数が5万人未満の難病に着目し、2019年1月に、ダイドーファーマ株式会社を設立しました。2024年9月には、ダイドーファーマ株式会社の新薬第1号となる、ランバート・イートン筋無力症候群治療剤「ファダプス®錠10mg」の製造販売承認を取得し、2025年1月に販売を開始するなど、着実に歩みを進めていますが、希少疾病用医薬品の開発には不確実性を伴うことから、開発の延長や中止を行う可能性、想定通りの内容で薬事承認が下りない、または薬事承認に想定以上の時間を要する可能性、想定した薬価を下回る可能性等があります。また、事業基盤が安定するまでの先行投資期間においては、継続的に営業損失を計上し、キャッシュ・フローはマイナスが続くことから、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、これらのリスクの低減を図るため、医薬品業界における豊富な知識と経験を有する独立社外取締役を選任し、個々の開発プロジェクトに基づくダイドーファーマ株式会社の事業計画に対するモニタリングを強化し、また医薬品業界の経験を長く積んだ、事業開発、新薬開発、薬事、メディカルアフェアーズ、そして承認取得後の体制を含めたエキスパート人材を整え、外部の有識者、機関、企業等の協力や支援を仰ぎながら、事業運営を推進していきます。

 

上記以外にも事業活動を進めていく上において、大規模災害、法的規制、情報セキュリティの様々なリスクが当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、こうしたリスクを回避、またはその影響を最小限に抑えるため、リスクの影響度・発生可能性を分析した「リスクマップ」を作成し、環境の変化に応じた重要リスクを決定・対策を講じることにより、リスクマネジメントを推進しています。

 

 

(3)人口動態の変化による中長期的リスク

人口減少・少子高齢化が続く国内市場を中心に、人口動態の変化がビジネスに与える影響は、今後ますます高まっていくと当社グループでは考えています。2023年度より、シナリオ分析のフレームワークを応用し、サプライチェーン全体の中で注視すべき中長期的なリスクに対する評価並びに対応策の進捗確認を実施しました。

 

リスク項目

事業インパクト

↑:非常に大きな影響

 ↗:やや大きな影響

→:軽微な影響

現時点で実施している対応策

分類

サプライ

チェーン

考察

中期(2026年)

長期

(2030年)

生産年齢

人口の減少

営業・
販売

■国内飲料事業
オペレーション人財の不足により自販機稼働台数が減少するリスク

・スマート・オペレーションの推進

製造・
調達

■医薬品関連事業

適切なスキル・知識を持った専門人財の確保ができないリスク

・キャリア採用の強化

■食品事業

製造部門における人財確保が進まないことによる需要に応じた製造ができないリスク

・省人化に向けた設備の導入・更新

・多様な人財の確保

物流

■医薬品関連事業

スケジュール通りに商品を配送できないリスク

・新たな輸送・保管方法の検討

採用

■食品事業

未来の事業を支える新卒採用者の確保ができないリスク

・新卒採用者向けの新たな施策の実施

・グループ連携での人財育成の計画

 

人口減少の影響は、一部の分野で売上・利益への影響を及ぼすものの、事業の縮小に繋がる可能性は限定的で事業戦略による対応が充分可能だと考えています。しかしながら人財の確保においては、中長期的に重要な影響を及ぼす可能性があることを認識しています。

当社グループでは、これらのリスクに対応するために、人財育成や生産性の向上に向けた人財投資を強化しています。今後も継続的なリスクのモニタリングを実施するとともに、リスク低減に向けた対応策の検討を中長期的な視点で実施していきます。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況(以下、「経営成績等」という。)の概要は、以下の通りであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度(2024年1月21日~2025年1月20日)の我が国経済は、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、景気が緩やかに回復しています。しかしながら、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続に伴う影響など、海外景気の下振れが景気の下押しリスクとなっています。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動など、不安定な要素も多い状況が続きました。

 国内飲料業界においては、原材料価格をはじめとしたコスト上昇に伴う価格改定により、消費者の節約志向は継続していますが、平均気温の上昇などが影響し、市場全体の販売数量は前年並みとなりました。一方、当社が主力とする自販機チャネルの販売数量は他チャネルとの価格差の影響などから、前年を下回りました。また、当社グループの海外主要市場であるトルコでは、2023年6月の政策金融会合以降、高インフレ抑制に向けた政策金利の段階的な引き上げが実施され、高い金利水準が維持されていますが、高インフレ、リラ安は継続しています。

 このような市場環境の中、当社グループは2030年のありたい姿「グループミッション2030」に掲げた「世界中の人々の楽しく健やかな暮らしをクリエイトするDyDoグループへ」の実現に向け、5カ年(2023年1月期~2027年1月期)の「中期経営計画2026」を遂行しています。本中期経営計画では、「国内飲料事業の再成長」「海外飲料事業戦略の再構築」「非飲料領域の強化・育成」を3つの基本方針のもと、取り組みを進めています。

 当連結会計年度の連結売上高は、主力の国内飲料事業において減収となりましたが、海外飲料事業において主力のトルコ飲料事業が好調に推移したことに加え、2024年2月に取得したポーランドの海外飲料事業子会社Wosana S.A.(以下、ヴォサナ社)が連結対象となったことから、2,371億89百万円(前連結会計年度比11.2%増)、連結営業利益は、海外飲料事業が躍進したことで、47億89百万円(前連結会計年度比28.3%増)となりました。連結経常利益は、正味貨幣持高に関する損失や為替差損などを営業外費用に計上したことなどから、30億23百万円(前連結会計年度比2.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益51億33百万円を特別利益に計上したものの、法人税等が増加したことなどから、38億4百万円(前連結会計年度比14.0%減)となりました。

 

 〈連結経営成績〉

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

実績

増減率(%)

増減額

売上高

213,370

237,189

11.2

23,819

営業利益

3,732

4,789

28.3

1,056

経常利益

3,115

3,023

△2.9

△91

親会社株主に帰属する当期純利益

4,423

3,804

△14.0

△618

 

 

 海外飲料事業の主要拠点であるトルコにおいて3年間の累積インフレ率が100%を超えたことを受け、トルコリラを機能通貨とするトルコの子会社について、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」(以下、超インフレ会計)に定められる要件に従い、会計上の調整をしています。

 

(ご参考)超インフレ会計に定められる要件による会計上の調整額

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

IAS第29号

調整前

調整額

IAS第29号

調整前

調整額

売上高

213,453

△83

233,124

4,065

営業利益

5,065

△1,332

5,723

△933

経常利益

4,078

△962

4,972

△1,948

親会社株主に帰属する

当期純利益

4,130

292

5,421

△1,616

 

 なお、連結損益計算書の主要項目ごとの前連結会計年度との主な増減要因等は、次の通りであります。

 

 ⅰ.売上高

当連結会計年度の売上高は、2,371億89百万円(前連結会計年度比11.2%増)となりました。

国内飲料事業については、2023年5月及び同年11月に実施した価格改定により販売単価の上昇があった一方で、販売数量へ一定の影響があり、減収となりました。また、海外飲料事業については、トルコにおいて高インフレが継続する中、戦略的な価格改定と機動的な販売促進活動の実施や、中東問題を受けた一部商品への特需の継続により、販売ボリューム・金額ともに前年を大きく上回ったほか、ポーランドのヴォサナ社が、当連結会計年度より連結対象に加わったことで、大幅増収となりました。医薬品関連事業については、パウチ製品の受注が引き続き好調であり、連結会計年度として過去最高の売上高となりました。食品事業については、2024年3月に実施した価格改定による効果のほか、営業活動の奏功により国内の販売は堅調に推移するも、主力輸出先である中国での景気減速の影響を受けて海外向け輸出が苦戦し、減収となりました。

 

 ⅱ.営業利益

当連結会計年度の営業利益は47億89百万円(前連結会計年度比28.3%増)となりました。

国内飲料事業については、自販機チャネルにおける販売数量減による売上総利益の減少のほか、スマート・オペレーションの進化・展開に伴う費用や電子マネーの利用手数料、自販機稼働台数増加に伴う費用など、自販機ネットワーク強化に向けた費用が増加し、減益となりました。海外飲料事業については、トルコ子会社における増収効果やコスト削減による増益に加え、ヴォサナ社を連結対象に加えたことで、大幅な増益となりました。また医薬品関連事業については、原材料コストの上昇や関東工場における製造ラインの入れ替えに伴う撤去予定の設備にかかる減価償却費を当連結会計年度に一部計上したことで、減益となりました。食品事業については、価格改定や原価低減施策による売上総利益の増加、また、工場の生産性改善などが進んだことを背景に、連結会計年度として過去最高の営業利益となりました。

 

 ⅲ.経常利益

当連結会計年度の経常利益は、30億23百万円(前連結会計年度比2.9%減)となりました。

営業外収益は、前連結会計年度と比較して5億18百万円減少し、13億76百万円となりました。また、営業外費用はトルコ飲料事業における通貨安の影響により為替差損8億17百万円を計上したほか、超インフレ会計の適用による影響として正味貨幣持高に関する損失8億59百万円を計上したことなどから、前連結会計年度と比較して6億30百万円増加し、31億41百万円となりました。

 

 

 ⅳ.親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、38億4百万円(前連結会計年度比14.0%減)となりました。

特別利益は、政策保有株式の見直しに伴い一部銘柄の売却により投資有価証券売却益51億33百万円を計上したほか、固定資産売却益3億97百万円を計上し、前連結会計年度と比較して30億83百万円増加し、55億31百万円となりました。また、特別損失は、国内飲料事業における組織の活性化を目的とした「ライフシフト支援施策」の応募者への割増退職金4億80百万円を計上したほか、事業構造改善費用1億59百万円を計上したことから、6億39百万円となりました。また、法人税等調整額は、前連結会計年度においてトルコ現地の税務及び会計処理においてインフレ会計が適用された影響などにより繰延税金資産を計上していたことから、前連結会計年度と比較して30億12百万円増加し、9億81百万円となりました。

当連結会計年度の1株当たり当期純利益は、120.66円(前連結会計年度は140.77円)となりました。なお、当社は2024年1月21日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っており、1株当たり当期純利益については、前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算出しています。

 

〈セグメント別経営成績〉

(単位:百万円)

 

売上高

前連結会計年度

当連結会計年度

増減率
(%)

増減額

国内飲料事業

153,623

147,519

△4.0

△6,104

海外飲料事業

26,444

56,263

112.8

29,819

医薬品関連事業

12,963

13,124

1.2

161

食品事業

20,705

20,651

△0.3

△53

希少疾病用医薬品事業

8

8

調整額

△366

△378

△12

合計

213,370

237,189

11.2

23,819

 

 

(単位:百万円)

 

セグメント利益又は損失(△)

前連結会計年度

当連結会計年度

増減率(%)

増減額

国内飲料事業

4,255

986

△76.8

△3,269

海外飲料事業

1,110

5,083

357.7

3,972

医薬品関連事業

367

277

△24.5

△90

食品事業

993

1,157

16.5

164

希少疾病用医薬品事業

△796

△621

174

調整額

△2,197

△2,093

104

合計

3,732

4,789

28.3

1,056

 

(注1)報告セグメントごとの売上高は、セグメント間の内部売上高を含んでいます。

(注2)報告セグメントごとの営業利益又は営業損失は、ロイヤリティ控除前の数値です。

(注3)海外飲料事業について、超インフレ会計に定められる要件に従い、会計上の調整をしております。この調整により、前連結会計年度において、売上高は83百万円減少、セグメント利益は13億32百万円減少、当連結会計年度において、売上高は40億65百万円増加、セグメント利益は9億33百万円減少しています。

 

ⅰ.国内飲料事業

国内飲料事業は、ダイドードリンコ株式会社とその傘下のグループ会社が担っています。自販機を主力販路とし、商品の製造や物流は外部に委託、自社の経営資源は商品の開発と自販機オペレーションに集中しています。自販機チャネルにおける2030年のありたい姿を「自販機市場において、絶え間ない挑戦と共創で新しい価値を提供し、トップランナーとして業界をリードし続けます」と定め、自販機市場における確固たる優位性の確立に取り組んでいます。

当連結会計年度の国内飲料市場は、業界各社が実施した価格改定による影響があったものの、平均気温の上昇などが影響し、販売数量は前年並みとなりましたが、当社が主力とする自販機チャネルは、他チャネルとの価格差が大きくなり、自販機市場としては前年を下回りました。

このような状況の中、当社グループの国内飲料事業においては、2023年5月及び同年11月の価格改定により販売単価が上昇したものの、販売数量は減少し、減収となりました。一方、自販機稼働台数は新規開拓営業の奏功と既存設置先の引上抑止によって計画以上に増加し、売上基盤を強化しました。流通チャネルにおいては、業界各社の販売促進活動が活発化する厳しい環境下でも、利益重視の方針のもと、選択と集中による投資効果の発揮と販促費の最適化により、前年を上回る利益を確保しました。 

商品戦略としては、主力のコーヒーカテゴリーでは、多様化するお客様の嗜好や価値観にお応えし、ラインアップの強化を図りました。「絶品」シリーズにおいて、SOT缶の「ダイドーブレンド 絶品微糖」及び「ダイドーブレンド 絶品ブラック」について自販機推奨価格をそれぞれ20円値下げし、お客様のお手に取っていただきやすい商品の拡充に努めました。また、皆様に長年愛されている「デミタス」シリーズにおいて各商品のリニューアルを行うとともに、スペシャリティコーヒー豆※1を使用し嗜好性を極めた「ダイドーブレンドプレミアム デミタス甘さに頼らないラテ」を発売し、小容量でプレミアムな味わいを求めるお客様への価値提供も行いました。ソフトドリンクカテゴリ-では、強刺激と冷涼感が体感できる新感覚の炭酸飲料「FRISK SPARKLING(フリスク スパークリング)」の新発売や、肌弾力を維持する※2「肌美精企画監修※3」シリーズをリニューアル発売するなど、当社のブランドメッセージ「こころとからだに、おいしいものを。」を体現した商品ラインアップを拡充しました。

サプリメント通販チャネルは、上期に実施した戦略的な広告投資により、定期顧客に向けた年間累計出荷件数が増加したことで、サプリメント業界における消費者の買い控えによる影響をカバーし、増収となりました。利益面においては、上期に前年同期と比べ積極的に広告宣伝費を投下したことに加え、前述の業界全体の消費者の買い控えによる影響を受けて広告の顧客獲得効率が悪化したことも影響し、減益となりました。

セグメント利益は、自販機チャネルにおける販売数量減による売上総利益の減少に加え、スマート・オペレーションの進化・展開に伴う費用や電子マネーの利用手数料、自販機稼働台数増加に伴う費用など、自販機ネットワーク強化に向けた費用が増加し、減益となりました。

以上の結果、国内飲料事業の売上高は、1,475億19百万円(前連結会計年度比4.0%減)、セグメント利益は、9億86百万円(前連結会計年度比76.8%減)となりました。

※1 10%使用(コーヒー原料に占める割合)

※2 GABAの働きで、 肌の乾燥が気になる方の肌の弾力を維持し、肌の健康を守るのを助ける。

※3 肌美精は、クラシエ㈱の保有する商標且つブランド名です。女性の健康的な生活を応援する商品のコンセプト及びデザインを監修。

 

ⅱ.海外飲料事業

当社グループの海外飲料事業は、2030年のありたい姿を「世界中の人々の健康を支えるグローバルブランドを生み出します」と定めています。中核となるトルコ飲料事業は、炭酸飲料やミネラルウォーターを中心とした自社ブランドの清涼飲料の製造・販売を行っています。2024年2月に子会社化したポーランドのヴォサナ社では、果汁飲料やミネラルウォーターを中心とした自社ブランドの清涼飲料の製造・販売に加え、大手小売企業のプライベート・ブランドや他社飲料ブランドの受託製造を担っています。なお、ヴォサナ社は、当連結会計年度より連結対象となっています。

当連結会計年度におけるトルコ市場は、高インフレ抑制に向けた高金利政策が打ち出されているものの、高インフレ・リラ安が続いています。このような状況の中、トルコ飲料事業においては、戦略的な価格改定と販売促進活動を機動的に実施したほか、中東問題を受けた一部商品への特需を継続的な販売へと繋げるべく、営業活動や広告投資を実施したことなどにより、販売ボリュームと販売単価をともに伸ばし、大幅増収となりました。利益面においては、インフレやリラ安を背景とした原材料価格の高騰、人件費の上昇などの影響を受ける中で、増収効果やサプライチェーンマネジメント改革などによるコスト削減により、利益率を大きく改善しました。

ポーランド飲料事業では、受託製造品の受注が好調に推移しました。また、オレンジ果汁などの原価上昇による影響を商品ミックスの改善などにより吸収し、一定の利益を確保しました。

中国飲料事業では、無糖茶カテゴリーへの競合他社の参入など事業環境が厳しくなる中でも、現地生産品の「おいしい麦茶」をはじめとした無糖茶の都市部の小売店への導入に注力し、中国飲料市場の無糖茶カテゴリーにて一定のポジションを確立しました。

以上の結果、海外飲料事業の売上高は、562億63百万円(前連結会計年度比112.8%増)、セグメント利益は、50億83百万円(前連結会計年度比357.7%増)となりました。

 

ⅲ.医薬品関連事業

医薬品関連事業を担う大同薬品工業株式会社では、医薬品・指定医薬部外品をはじめとする数多くの健康・美容等のドリンク剤・パウチ製品等の受託製造に特化したビジネスを展開し、2030年のありたい姿を「健康・美容分野での製造受託企業No.1になります」と定めています。お客様ニーズにあった製品の開発と、奈良工場・関東工場の2拠点4工場を展開する充実した生産体制と高い品質管理体制を強みとして、医薬品メーカーから化粧品メーカーまでの幅広い顧客基盤を有しています。

当連結会計年度のドリンク剤市場は縮小した一方、パウチ製品市場は引き続き旺盛な需要が続いています。

このような状況の中、当社グループの医薬品関連事業においては、ドリンク剤の受注は減少したものの、パウチ容器入りの指定医薬部外品の受注の増加によって、当連結会計年度の売上高は、連結会計年度として過去最高となりました。

セグメント利益は、原材料コストの上昇や関東工場における製造ラインの入れ替えに伴う撤去予定の設備にかかる減価償却費を当連結会計年度に一部計上したことで、減益となりました。

以上の結果、医薬品関連事業の売上高は、131億24百万円(前連結会計年度比1.2%増)、セグメント利益は、2億77百万円(前連結会計年度比24.5%減)となりました。

 

ⅳ.食品事業

食品事業を担う株式会社たらみは、様々な食感を自在に実現する「おいしいゼリー」を作る技術力とブランド力を大きな強みとして、ドライゼリー市場においてトップシェアを誇るほか、蒟蒻パウチゼリー市場においても一定のシェアを獲得しています。2030年のありたい姿を「フルーツとゼリーを通して、『おいしさ』と『健康』を追求し、すべての人を幸せにします」と定め、「たらみらしい、おいしい、楽しい」 商品をあらゆる販売チャネルで購入できる機会の創造に取り組んでいます。

当連結会計年度のドライゼリー市場は、販売単価の上昇や好天による需要拡大により伸長し、パウチゼリー市場においても、好天や新たな需要の喚起により、市場の拡大が続いています。

このような状況の中、当社グループの食品事業は、2024年3月に価格改定を実施したことによる販売単価の上昇や営業活動の奏功により国内の販売は堅調に推移するも、主力輸出先である中国での景気減速の影響を受けて海外向け輸出が苦戦し、減収となりました。

セグメント利益は、価格改定や原価低減施策による売上総利益の増加、また、工場の生産性改善などが進んだことを背景に、連結会計年度として過去最高となりました。

以上の結果、食品事業の売上高は、206億51百万円(前連結会計年度比0.3%減)、セグメント利益は、11億57百万円(前連結会計年度比16.5%増)となりました。

 

ⅴ.希少疾病用医薬品事業

希少疾病用医薬品事業を担うダイドーファーマ株式会社(以下、ダイドーファーマ)は、当社グループの新規事業領域拡大への取り組みとして、2019年に設立されました。2030年のありたい姿を「治療選択肢のない希少疾病に苦しむ患者様へ治療薬を提供します」と定め、希少疾病を対象とした新たな治療薬の日本国内での製造販売承認を取得して患者様への提供をめざしています。

2024年9月に、ダイドーファーマの新薬第1号となる、ランバート・イートン筋無力症候群治療剤「ファダプス®錠10mg」の製造販売承認を取得し、2025年1月に日本国内で販売を開始しました。また、現在開発中のDYD-701の開発推進、ならびに新たな治療薬候補となる優良なパイプラインの獲得に向けて活動を続けていきます。

以上の結果、希少疾病用医薬品事業の売上高は、8百万円(前連結会計年度は販売開始前のため売上計上なし)、セグメント損失は、6億21百万円(前連結会計年度は7億96百万円のセグメント損失)となりました。

 

 

なお、当社グループは、飲料・食品の製造販売を主たる業務としており、四半期単位での経営成績には、季節的変動があります。

(単位:百万円)

連結売上高

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

2024年1月期

47,102

54,643

63,531

48,092

213,370

通期に占める割合(%)

22.1

25.6

29.8

22.5

100.0

2025年1月期

53,164

64,413

62,594

57,017

237,189

通期に占める割合(%)

22.4

27.2

26.4

24.0

100.0

 

連結営業損益

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

2024年1月期

△539

3,066

3,264

△2,059

3,732

通期に占める割合(%)

82.1

87.5

100.0

2025年1月期

△611

2,930

4,096

△1,626

4,789

通期に占める割合(%)

61.2

85.5

100.0

 

〈ROIC実績※1

 

 

国内飲料事業※2

海外飲料事業

非飲料事業※3

連結

2024年1月期(実績)

5.8%

7.5%

4.1%

3.5%

2025年1月期(実績)

0.4%

13.7%

4.1%

3.5%

 

(ご参考)グループミッション2030で掲げるROIC目標値※1

 

 

 

国内飲料事業※2

海外飲料事業

非飲料事業※3

連結

成長ステージ

(2023年1月期~2027年1月期)

4%

13%

0%

4%

飛躍ステージ

(2028年1月期~2030年1月期)

17%

5%

17%

8%以上

※1 超インフレ会計適用前、投下資本はセグメントへの投下分

※2 サプリメント通販事業を除く

※3 国内飲料事業のうちサプリメント通販事業、医薬品関連事業、食品事業、希少疾病用医薬品事業

 

「グループミッション2030」のKPIの一つとしてROICを設定し、現在遂行中の「中期経営計画2026」に該当する「成長ステージ」と最終ステージである「飛躍ステージ」の最終年度の目標値について、グループ連結目標とともに、「国内飲料事業」「海外飲料事業」「非飲料事業」でそれぞれ目標を設定しています。各セグメントにおいて、それぞれの事業特性に合わせた、利益率改善、資産回転率向上に向けたKPIを設定し、従業員それぞれが資本効率を意識した取り組みを進めることで、当社グループ全体の「稼ぐ力」を高めていきます。

 

〈財政状態〉

(単位:百万円)

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

増減額

 

流動資産

89,093

92,044

2,951

固定資産

88,470

93,202

4,732

資産合計

177,563

185,247

7,683

 

流動負債

48,785

63,547

14,762

固定負債

37,297

28,192

△9,105

負債合計

86,082

91,739

5,657

純資産合計

91,480

93,507

2,026

 

当連結会計年度末の総資産は、ヴォサナ社を新たに連結対象としたことを主因に、前連結会計年度末と比較して76億83百万円増加し、1,852億47百万円となりました。

 

当社グループの連結財政状態の前連結会計年度末と比較した主な増減要因等は、次の通りです。

 

ⅰ.ネット・キャッシュ

当連結会計年度末の金融資産(現金及び預金、有価証券、投資有価証券(関係会社株式を除く)、長期性預金)は、前連結会計年度末と比較して103億19百万円減少し、519億5百万円となりました。また、当連結会計年度末の有利子負債(短期/長期借入金、短期/長期リース負債・債務、社債、長期預り保証金)は、前連結会計年度末と比較して、14億92百万円増加し、367億16百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度末のネット・キャッシュ(金融資産-有利子負債)は、前連結会計年度末と比較して118億12百万円減少し、151億88百万円となりました。

 

ⅱ.運転資本

当連結会計年度末の売上債権は、前連結会計年度末と比較して41億95百万円増加し、263億86百万円となりました。また、当連結会計年度末の棚卸資産は、前連結会計年度末と比較して15億79百万円増加し、158億68百万円となりました。一方、当連結会計年度末の仕入債務は、前連結会計年度末と比較して12億32百万円増加し、251億70百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度末の運転資本(売上債権+棚卸資産-仕入債務)は、前連結会計年度末と比較して45億42百万円増加し、170億84百万円となりました。

 

ⅲ.固定資産

当連結会計年度末の有形固定資産は、ヴォサナ社の連結影響に加え、ヴォサナ社における製造ラインの増設などに伴う建設仮勘定の増加などから、前連結会計年度末と比較して84億38百万円増加し、599億50百万円となりました。無形固定資産は、ヴォサナ社の株式を100%取得したことに伴い、のれんが増加したことなどから、前連結会計年度末と比較して34億8百万円増加し、118億66百万円となりました。また、投資その他の資産は、政策保有株式の一部売却などにより前連結会計年度末と比較して71億14百万円減少し、213億85百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度末の固定資産は、前連結会計年度末と比較して47億32百万円増加し、932億2百万円となりました。

 

ⅳ.流動負債・固定負債

当連結会計年度末の流動負債は、前連結会計年度末と比較して147億62百万円増加し、635億47百万円となりました。また、当連結会計年度末の固定負債は、前連結会計年度末と比較して91億5百万円減少し、281億92百万円となりました。これらの主な増減要因は、第2回無担保社債100億円について償還日まで1年を切ったことから、計上先を社債から1年内償還予定の社債に振り替えたことによるものです。

 

 

ⅴ.純資産

当連結会計年度末の株主資本は、前連結会計年度末と比較して31億50百万円増加し933億9百万円となりました。

当連結会計年度末のその他有価証券評価差額金は、政策保有株式の一部売却と時価変動により、前連結会計年度末と比較して42億22百万円減少し、15億64百万円となりました。また、当連結会計年度末の為替換算調整勘定は、主にトルコリラの為替変動により、前連結会計年度末と比較して33億83百万円増加し、△40億12百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比較して20億26百万円増加し、935億7百万円となりました。

 

〈キャッシュ・フローの状況〉

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

営業活動によるキャッシュ・フロー

9,211

10,824

1,612

投資活動によるキャッシュ・フロー

△1,240

△11,595

△10,354

財務活動によるキャッシュ・フロー

△3,212

△1,708

1,504

現金及び現金同等物に係る換算差額

△952

△899

53

超インフレの調整額

751

△693

△1,444

現金及び現金同等物の増減額

(△は減少)

4,557

△4,071

△8,628

現金及び現金同等物の期首残高

29,156

33,713

4,557

現金及び現金同等物の期末残高

33,713

29,642

△4,071

 

当社グループのキャッシュ・フローの源泉である自販機ビジネスを取り巻く市場環境は、コロナ禍を契機として大きく変化しており、上位寡占化の傾向がより強いものとなっています。このような状況の中、当社グループは、収益性の高い新たな自販機設置先の開拓を進めるとともに、スマート・オペレーションの進化と展開先の拡大に取り組むことで、国内飲料事業の再成長によるキャッシュ・フロー創出力向上を図っていきます。

 

 

②生産、受注及び販売の実績

ⅰ.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメント別に示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月21日

至 2025年1月20日)

前年同期比(%)

海外飲料事業(百万円)

40,833

225.1

医薬品関連事業(百万円)

12,972

101.1

食品事業(百万円)

20,500

100.6

合計(百万円)

74,306

144.7

(注)金額は販売価格によっております。

 

ⅱ.商品仕入実績

当連結会計年度の商品仕入実績をセグメント別に示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月21日

至 2025年1月20日)

前年同期比(%)

国内飲料事業(百万円)

64,619

89.2

海外飲料事業(百万円)

3,704

165.5

合計(百万円)

68,324

91.5

 

ⅲ.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月21日

至 2025年1月20日)

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

海外飲料事業

17,523

275.5

84

153.2

医薬品関連事業

11,933

90.5

2,729

78.9

合計

29,456

150.7

2,814

80.1

 

ⅳ.販売実績

当連結会計年度の販売実績については、「① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。連結財務諸表の作成にあたり、重要となる会計方針については、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

また、当社グループは、連結財務諸表の作成上、固定資産の減損会計、各種引当金の見積り計算、繰延税金資産の回収可能性の判断等に対し、現在入手可能な前提に基づく合理的な見積りを反映させておりますが、将来、これらの見積りと大きな差が生じる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5[経理の状況] 2[財務諸表等](1)[財務諸表][注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は以下のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は、1,223百万円となっております。

 国内飲料事業では、それぞれの分野において商品開発、マーケティングから販売管理までを一貫してマネジメントし、自動販売機という販売網を自社で有する強みを生かしたロングセラー商品の開発と育成に努めております。

 国内飲料事業に係る研究開発費は、448百万円であります。

 海外飲料事業では、トルコ飲料事業において新商品開発及び既存商品の改良を行っております。また、国内飲料事業とのシナジーの発揮による飛躍的成長の実現にチャレンジしております。

 海外飲料事業に係る研究開発費は、45百万円であります。

 医薬品関連事業では、医薬品を中心とする数多くの健康・美容飲料等のドリンク剤の研究開発を重ね、お客様のニーズにあった製品の創造と厳格な品質管理や充実した生産体制により、安全で信頼される製品を製造しております。

 医薬品関連事業に係る研究開発費は、214百万円であります。

 食品事業では、生産から販売に至るまでの構造改革並びに意識改革を加速させ、お客様の多面的なニーズに対応した、驚きや感動を生む商品開発に努めております

 食品事業に係る研究開発費は、152百万円であります。

 希少疾病用医薬品事業では、製造販売承認を取得した新製品「ファダプス®錠10mg」の適正使用に係る情報提供と品質保証・安定供給で市場浸透を図るとともに、DYD-701の日本での臨床開発を進めて製造販売承認を取得すること及び希少疾病対象の新たな導入開発品の獲得をめざします。

 希少疾病用医薬品事業に係る研究開発費は、363百万円であります。