第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境、及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、経営理念を以下のとおり定め、経営を行なっております。

 

―私たちが目指すこと―

私たちは、医療や健康分野での革新的な活動を通じ、生活者のメリット創出に貢献します。

 

―私たちの使命―

私たちは、医療や健康分野のICT化を推進し、情報の高度活用を図ります。

 

―私たちがお約束すること―

<医療や健康に関わる全ての皆様に>

私たちは、皆様の立場で考え抜き、課題解決を通じてともに発展することを目指します。

<ともに働く仲間たちに>

私たちは、傍観者でなく全員が主役です。立場を超えた有益な意見交換を歓迎します。

 

―私たちが大切にする想い―

「正々堂々」

私たちは、いつでも、どこでも、そして誰に対しても「正々堂々」とした企業活動を行います。

 

(2)経営戦略等

 当社グループは、「生活者が生涯を通じて自身の医療・健康情報を把握できる社会」および「それらの情報をもとに、自身で医療・健康分野のサービスを選択できる社会」の実現を、ビジョンとして定義しております。

 また当社グループは、医療・健康情報を集積し有効活用することが、今以上の医療の質向上、ひいては生活者にとってのメリット創出につながると考え、医療や健康分野のICT化を推進しております。

 当社グループが掲げるビジョンを実現し、中長期的な成長を目指していくうえで、2025年までの中期経営計画を策定し、2022年11月に公表いたしました。中期経営計画を達成するためのテーマとして、「医療データを中核とした圧倒的なデータ基盤の拡大」と「オープンアライアンスによる関連分野への進出」という2つを設定し、これらを実現するためのチャレンジを継続し、計画の実現に努めてまいります。

 

<テーマ1>医療データを中核とした圧倒的なデータ基盤の拡大

 これまでのオンプレミス型中心の医療機関向けサービスを、早期にクラウド型に移行し、クラウド間でのデータ連携を強化します。さらに、サービスメニューを増やすことで、販売対象を急性期病院から広げ、顧客基盤を拡大し、データの提供先と種類の拡大を目指します。また、PHRシステム「カルテコ」により個人の同意による医療・健康情報の集積も進めてまいります。

 

<テーマ2>オープンアライアンスによる関連分野への進出

 社会環境の変化にあわせ、スピードを重視した経営を展開するには、囲い込みではなくアライアンスが最適であると当社グループは判断しております。一方で当社が他社からのアライアンス先として魅力的であり続けるためにも、当社自身が強固なビジネス基盤を保つ必要があり、強みを持つ者同士のアライアンス実現を通じて、データ市場における関連分野への進出とシェアの拡大を進めてまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、売上高成長率、売上高経常利益率、ROE(自己資本利益率)を経営上の重要な指標と位置づけ、高い成長率の持続と収益性及び資本効率のさらなる向上を図り、企業価値の増大を目指してまいります。

 売上高成長率、売上高経常利益率、ROE(自己資本利益率)の状況について、直近3年間の推移及び今期業績予想に関する数値は下表のとおりです。

 なお、業績予想に関する数値は、当社グループが現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により異なる可能性があります。

 

(参考)売上高成長率、売上高経常利益率、ROE(自己資本利益率)の状況

[連 結]

売上高成長率

(対前期増減率)

売上高経常利益率

ROE

(自己資本利益率)

 

売上高

経常利益

2022年12月期

(実 績)

7.6%

28.7%

24.2%

 

6,104百万円

1,750百万円

2023年12月期

(実 績)

5.2%

26.5%

25.2%

 

6,419百万円

1,700百万円

2024年12月期

(実 績)

△8.0%

△8.6%

△21.6%

 

5,906百万円

△509百万円

2025年12月期

(予 想)

52.4%

27.8%

53.3%

 

9,000百万円

2,500百万円

(注)1.2022年12月期の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用しており、2022年12月期以降の連結業績は当該会計基準等を適用した後の金額となっております。

   2.2022年12月期の売上高成長率は会計基準変更の影響を受けるため、2021年12月期の実績値と2022年12月期の実績値の比較は困難ですが、参考数値として単純比較結果の7.6%を記載しております。

 

(4)経営環境

 当連結会計年度における当社グループの主たる事業領域である医療関連業界におきましては、柔軟な医療提供体制、データ利活用、予防医療の重要性などが当たり前のこととなってまいりました。また、都道府県による医療機能の分化・連携や病院と診療所の機能分化・連携、医療・介護分野におけるデータ利活用やオンライン化、PHRの拡充、多職種連携による生活習慣病などの予防・重症化予防を推進する動きが続いております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは創業以来、蓄積された医療・健康情報を有効利用し、今以上の医療の質の向上、ひいては生活者メリットの創出を目指し事業に取り組んでおります。

 医療データ利活用のパイオニアである当社グループは、現段階において既に、『信頼関係の上に構築された日本全国の病院との顧客基盤』に支えられた、『日本最大級である5,000万人超の診療データベース』を保有し、またそのデータを利用した『医療ビッグデータ構築・利活用のためのノウハウ』を保有しております。

 また株式会社ディー・エヌ・エー、日本システム技術株式会社とのアライアンスにより強化をした保険者データベースも2,300万人超となり、こちらも日本最大級のデータベースとなりました。

 当社グループのさらなる成長のため、医療・健康情報の利活用拡大やB2Cビジネスの拡大を目指すため、以下に記載した取り組みを当面の課題と考えております。

 

① 大規模診療データベース「さくらDB」の拡充及びリアルタイム性の向上

 当社グループは、日本最大級である5,000万人超の診療データベースを保有しておりますが、今後、新規ビジネスを飛躍的に拡大していくためには、大規模診療データベース「さくらDB」を拡充し、リアルタイム性を向上させることが必要であると考えております。今後も引き続き、『「カルテコ」を中心としたPHR関連サービスの開発・展開』、『医療・健康分野における新サービスの開発・展開』を積極的に進めていくことにより、さらなるリアルタイム診療データベースの規模拡大を進めてまいります。併せて、医療機関だけでなく様々な機関と連携することで情報ソースを多様化し、大規模診療データベース「さくらDB」の拡充を図ってまいります。

 

② 医療・健康データの一元化

 さらなる医療・健康情報の利活用のためには、医療・健康に関わる様々なデータを、患者を中心として一元化することが必要であると考えております。そのために、急性期病院を中心とした診療データはもちろんのこと、健康診断データ、診療所(クリニック)の診療データ、院外薬局データ、介護データなど、画像や日々のバイタルデータも含めたこれら各種データを連携し、蓄積してまいります。同時に、膨大な医療ビッグデータを、高いセキュリティ環境の下、統合的に保管・運用できるデータベース運用環境の整備を進めてまいります。

 

③ 新規事業の推進

 事業成長を継続・加速化していく上では、当社グループの強みを最大限活用した新規事業の積極的な推進が必須であると考えております。『データベースの拡充にあわせたデータ利活用サービス』、『B2Cサービス』、『海外事業』等の成長ポテンシャルが高いと考えられるビジネス領域において、新規事業を積極的に推進してまいります。

 

④ M&A及びアライアンスの積極的推進と最新情報処理技術の活用

 先に記載した、①大規模診療データベース「さくらDB」の拡充及びリアルタイム性の向上、②医療・健康データの一元化、③新規事業の推進をドラスティックに進めていくためには、各種アライアンスによりそのスピードを上げていく必要があると考えており、M&A及びアライアンス戦略の立案・実行を積極的に推進し、AIをはじめとした最新情報処理技術の活用も進めてまいります。

 

⑤ 優秀な人材の確保と育成

 当社グループが持続的に成長していくには、多様なバックグラウンドを持つ人材による豊かな発想と、従業員一人ひとりが当社の文化を理解・実践し、挑戦し続けることが可能な組織・文化を形成することが必要不可欠であると考えております。人材育成方針と社内環境整備方針に基づき、優秀な人材の確保と育成を進めるとともに、多様な人材が活躍できる組織づくりや環境整備に取り組んでまいります。

 

⑥ 脱炭素社会への貢献による持続的成長の実現

 当社グループが創業以来の理念を実現する上で、生活者が生涯を通じて自身の医療・健康情報を把握でき、それらの情報をもとに自身で医療・健康分野のサービスを選択できる社会の実現と、脱炭素社会への貢献を重要課題として掲げております。自社及びサプライチェーン上のGHG排出量削減の推進を通じて持続可能な社会の実現に貢献するとともに、ステークホルダーに選ばれ続けることで持続的な成長を実現してまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

 文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、本書提出日現在において、当社及び当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1) サステナビリティ共通

 

<MDVグループサステナビリティ基本方針>

 私たちMDVグループは、「医療や健康分野の ICT 化を推進し、情報の高度活用を図ります」という使命のもと、医療や健康分野における社会課題の解決を経営の最重要事項の一つと捉え、持続的な企業価値向上を目指します。

 

<サステナビリティの考え方>

 医療を取り巻く社会課題の一つに、データ活用の遅れが挙げられます。

技術の進歩に伴い、さまざまなデータの活用が私たちの生活の質向上につながっています。しかしながら、我が国における医療データの活用は、他産業や他国と比較して遅れていると言えます。高齢化が進む中、医療データの活用促進は急務であり、私たちはこのような課題に対し、事業活動を通して解決に挑むことが使命であると捉えています。

当社グループが注力すべき重要課題を特定したうえで、具体的な取り組みと目標を設定し、その実行を通じて持続的な発展を目指していきます。

 

<MDVグループのマテリアリティ>

 当社は、医療を選択できる社会を実現するために優先的に対応すべき重要な事項をマテリアリティ(重要課題)として特定しました。各マテリアリティの取り組みを推進し、企業価値向上と持続的成長の実現を目指していきます。

 

0102010_001.png

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<マテリアリティ一覧>

0102010_002.jpg

 

<ガバナンス>

当社グループは、取締役会の下部組織として、「サステナビリティ推進委員会」を設置しています。当委員会は代表取締役社長を委員長とし、取締役、執行役員、リスク・コンプライアンスを統括する部門責任者、常勤監査役等で構成されています。

当委員会は、サステナビリティ推進の専任部署として設置したCSR室を運営事務局として、当社グループのサステナビリティ推進活動(人的資本活用、環境保護、人権、知的財産保護など)に関する全体計画や戦略・施策などの企画・立案、その進捗状況のモニタリング、達成状況の評価を行い、四半期ごとにその内容を取締役会に報告・提言を行っています。

 

  <サステナビリティ推進体制>

0102010_003.jpg

 

 

(2) 気候変動への対応

 当社グループは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿って、気候変動に関する重要情報を以下のとおり開示します。

 

① ガバナンス

 当社グループは、「環境」、「社会」、「経済」に配慮した企業活動の実践を通じ、持続可能な社会の実現と企業価値向上の両立を図るため、2022年7月より取締役会の直下にサステナビリティ推進委員会を設置しております。当委員会は四半期に一回開催され、ESG関連の最高責任者である代表取締役社長を委員長とし、常勤監査役や各事業本部長や室長から構成されており、当社グループのサステナビリティ推進活動に関する全体計画や戦略・施策等の企画・立案、その進捗状況のモニタリング、達成状況の評価を行っています。特に気候変動事項については、経営企画本部長を分科会長とした「環境への配慮と持続可能な社会の達成に向けた分科会」を委員会の下部組織として設置し、全社横断的な重要テーマとして活動方針の策定やモニタリングを実施しております。その内容を四半期に一回の頻度で取締役会に報告しており、取締役会では報告内容について諮問、監督を行う仕組みとしています。

 

0102010_004.jpg

 

② 戦略

<分析プロセス>

 TCFD提言で示された各リスク・機会の項目を参考に、気候変動問題が当社グループの事業に及ぼすリスク・機会に関して、以下のステップで検討いたしました。

 また、1.5℃シナリオと、4℃シナリオの二つのシナリオを用いて、政策や市場動向の移行(移行リスク・機会)に関する分析と、災害などによる物理的変化(物理リスク・機会)に関する分析を実施しました。

 

0102010_005.png

 

<気候変動シナリオについて>

・1.5℃シナリオ(脱炭素シナリオ)

 気候変動の影響を抑制するためにカーボンニュートラル実現を目指した取り組みが活発化し、世界の平均気温を産業革命期以前と比較して1.5℃に抑えることを目指したシナリオ。1.5℃シナリオでは、移行リスクの中でも政策・法規制リスクの影響が2℃シナリオに比べて大きくなると想定されている。

 

・4℃シナリオ(高排出シナリオ)

 気候変動対策が現状から進展せず、世界の平均気温が産業革命期以前と比較して今世紀末頃に約4℃上昇するとされるシナリオ。物理リスクにおける異常気象の激甚化や海面上昇リスクによる影響が大きくなると想定されている。

 

 

   ・1850~1900年を基準とした世界の平均気温の変化

0102010_006.png

出典:IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書 政策決定者向け要約 暫定訳(文部科学省及び気象庁)より、図SPM.8を転載

 

<リスク・機会のインパクト評価と対応策の選定>

 気候変動シナリオをもとに当社グループの事業に与えるリスク・機会に関して、重要リスク・機会として以下の項目を抽出しました。抽出したリスク・機会の項目が事業に与える影響を、シナリオ分析を通して定性・定量評価を行い、対応策を立案しております。評価に用いたシナリオは主に、1.5℃シナリオとしてIEA Net Zero Emission、4℃シナリオとしてIPCC SSP5-8.5を用いました。

0102010_007.png

・時間軸 短期:3年以内、中期:3~10年、長期:10~30年

・影響度 重大:巨大な損失、大:甚大な損失、中:大きな損失、小:中程度の損失、極小:わずかな損失

 

③ リスク管理

<気候関連リスクを識別・評価するプロセス>
 当社では、「統制委員会規程」を制定し、事業運営上において発生しうるあらゆるリスクの予防、発見、是正、及び再発防止に係る管理体制の整備と発生したリスクへ対応するために、代表取締役を委員長とした「統制委員会」を設置しております。気候変動に伴うリスクについては、短期的なリスクのみならず中・長期的なリスクに関してもサステナビリティ推進委員会にて特定、評価をしており、特に重要であるリスクについては必要に応じて取締役会に報告される体制となっております。

 

<気候関連リスクを管理するプロセス>
 識別・評価された気候関連リスクに関しては、リスク軽減のためにサステナビリティ推進委員会にて予防策、対応方針を決定します。なお、その他全社のリスクについては統制委員会にて管理しており、リスク対応策に関しては取締役会に報告された後、取締役会から統制委員会を経て、関連する対応組織にて実行されます。また、図のとおり「リスク影響度」と「発生頻度」を軸にそれぞれ5段階で評価し、総合評価としてリスクの重要性を4段階にて分類することで対処すべきリスクの重要性を決定しております。

 

0102010_008.jpg

 

<全社のリスク管理への統合プロセス>
 「統制委員会」は原則として四半期に一度開催され、当社のリスクマネジメント取組において対象とするリスク項目への対応状況を評価しております。気候変動に係るリスクに関してもサステナビリティ推進委員会とリスク・コンプライアンス委員会が連携することにより全社的なリスクと同様のプロセスで管理され、統合的なリスク管理体制を構築しております。

 

④ 指標と目標

 当社グループは、気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、2022年度よりGHGプロトコルの基準に基づき温室効果ガス排出量(Scope1-3)の算定を実施しております。温室効果ガス排出量の削減目標については、当社グループを対象に2030年度に2023年度の基準排出量からScope1,2は42%以上、Scope3は25%以上の削減水準を設定しております。本目標は、2025年3月に、国際的イニシアチブである Science Based Targets initiative(SBTi)から「1.5℃水準」のSBTの認定を取得しました。認証を受けた目標は、短期目標(Near-Term)です。目標の達成に向けて、再生可能エネルギーの導入や、省エネルギーの徹底など各種削減活動を推進いたします。

 

  <当社グループにおける温室効果ガス排出量>

0102010_009.jpg

0102010_010.jpg

 

・算定対象としては以下のとおりとなります。

Scope1,2,3:メディカル・データ・ビジョン株式会社,CADA株式会社,MDVニューコネクト株式会社,株式会社Doctorbook,メディカルドメイン株式会社,株式会社AIRBIOS,株式会社システムビィー・アルファ(2024年7月1日付で当社に吸収合併)

 ・環境省、経産省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出量の算定に関するガイドライン」に基づき算出しております。

  上記に記載のないカテゴリーは、排出源が存在しない、もしくはScope1,2に含めて算定しております。

 ・Scope2排出量に関しては、マーケット基準にて算定しております。

 ・環境省 算定・報告・公表制度、環境省 Ver.3.1、一部自社係数を用いて算定しております。

 ・2024年度の排出量に関しては、2025年2月時点の排出係数を使用しております。

 

(3)人的資本

 ①戦略

 当社グループのマテリアリティの一つは、「創造力・行動力・連携力のある人材によるイノベーション創出」です。

 当社グループにとって「人」こそが価値創造の源泉であり、多様なバックグラウンドを持つ人材による豊かな発想が必要です。すべての従業員と、これから仲間になるすべての人にとって主体的・意欲的に働ける環境を整備し、新たな価値創造に挑戦する文化を醸成するため、「人材育成方針」と「社内環境整備方針」を掲げました。

 

<人材育成方針>

 MDVの持続的な成長を達成し創業当初からの想いである経営理念を実現するためには社員一人ひとりが当社の文化を理解・実践し、挑戦し続けることが可能な組織・文化を形成することが必要です。そのような文化を形成する社員を輩出するために、MDVでは人材育成を最重要の経営施策の一つとして位置づけ、「① 理念の浸透 」「② 挑戦を促す環境の整備 」「③ 成長実感に結びつける 」という3つの柱となる考え方のもと、多様な人材が活躍できる組織づくりを目指します。

 

<人材育成方針に基づく3つの柱>

 1.当社の理念・経営方針の浸透による社員の意識変革(理念を浸透する)

 2.既存の事業だけに囚われず挑戦し続けられる環境の整備(挑戦を促す)

 3.成長を実感し、還元することが可能な制度の整備(成長実感に結びつける)

 

<社内環境整備方針>

 人材育成方針に基づき、社員それぞれが心身共に健康な状態を維持でき、最大限のパフォーマンスを発揮できる社内環境のもとで、公平性ある機会提供のもと、挑戦し、成長実感をもって活躍する事ができるよう、以下の3 点を整備します。

 

<社内環境整備方針に基づく3つの柱>

 1.多様な人材を登用・理解し、挑戦、活躍に繋げられる環境整備

 2.社員の健康と安全の確保

 3.連携・協力可能で良好な労使関係・職場環境の創出

 

<求める人材像>

 当社グループが目指す社会を実現するためには、既存事業の延長線上だけでなく、常に挑戦し、新しい価値を生み出し続ける必要があります。そのため、主体的、積極的に挑戦する人材が活躍できる組織を目指しています。しかし、一人でできることは限られます。他者・他社に協力を求め、お互いに補い合いながらチームで目的を達成できる力が同時に求められます。このような力を持った人材が高く評価され、また次の挑戦につなげることができるよう、組織の仕組みを整備していきます。

 

<3つのC>

 創造力 Creativity

  自ら知識や情報を取りに行き、失敗を恐れずに新しい価値を生み出し続ける力

 行動力 Challenge

  主体的かつ積極的にスピード感をもってチャレンジできる力

 連携力 Cooperation

  社外も含め、チームで連携・協力できる力

 

② 指標と目標

<DE&Iの推進>

 当社のさらなる発展のためには、多様なバックグラウンドを持つ人材による豊かな発想が必要です。多様な人材の活躍を後押しする取り組みの一つとして、ジェンダー・ギャップの縮小を目指し、女性管理職比率の向上と男性の育児休業取得率向上を目標に掲げました。

 当社の現状を見ると、育児休業から復帰する女性従業員は多いものの、管理職に就く者が少ないという課題があります。管理職としての仕事と、育児を含む本人の生活を両立させるため、働く環境や制度の整備と、本人の希望に合わせたキャリアアップ支援、男女公正な機会の提供、周囲の意識改革を行っていく方針です。

 

計画期間

 2023年11月10日~2026年12月31日

 

数値目標

 目標1:管理職に占める女性割合を30%以上とする

 (取組内容)

  2024年1月~ キャリア形成の方向性に関する面談機会を設定・実施する

  2024年3月~ キャリア形成研修の内容を検討する

  2024年6月~ 候補者の選定とキャリア形成研修を実施する

  2025年1月~ 登用を行う

 

 目標2:男性の育休取得率を100%とする

 (取組内容)

  2024年1月~ 育児休業を促進するため、利用可能な両立支援制度に関する周知を行う

  2024年3月~ 両立支援制度について情報収集し、都度検討する

  2024年6月~ 管理職向けダイバーシティマネジメント研修を実施する

 

※本指標と目標については、主要な事業を営む会社においては、関連する指標のデータの管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む、当社のものを記載しております。

 

③ 取り組み

<新卒採用の強化と育成体系の構築>

 当社はマテリアリティに基づき、人的資本投資に注力しています。

これまで長年、即戦力の中途採用を中心としておりましたが、2024年入社の代より、新卒中心の採用にシフトしました。当社の理念に共感した人材をキャリアの早い段階から育成し、当社の求める力「3つのC」を体現する人材を増やしていきます。そのような新卒入社者の割合を増やすことで、既存の従業員にも影響を与え、会社全体の共感を高めていきます。

 

・オンボーディング研修

 「3つのC」を体現している人材を「自らストーリーを描いて、形にできる人」と表現し、従業員の自発的な発想と行動を促すプログラムを構築しました。

広く、高く、深く考える習慣をつける施策から、一般的なビジネスマナー研修まで、幅広く実施しています。入社後1年間を通じ、教わったことをそのまま実行するのではなく、どうあるべきか、自分はどうしたいかを起点に行動する人材を育成します。

 

<人事制度改定>

 人員増強に伴い、従前の人事制度が実態と合わなくなっていたことや、新卒採用重視に舵を切ったことにより人事制度全体を見直し、2025年1月に施行いたしました。マテリアリティに基づき、当社で働くすべての従業員が主体的・意欲的に働ける環境を整備することを通じて、「3つのC」を強化していきます。

 

・テーマ

①評価と報酬の連動性を高める

②目標設定のルール明確化

従業員一人一人の出した成果に対して報いることができるように設計しました。

 

・等級制度

 飛び級ありの職能等級制度です。新卒入社者に、等級定義に合わせた能力を順々に獲得させるとともに、飛躍的な活躍をする人材は飛び級させる設計です。

 

・背景

 これまで、中途採用メインで各領域のスペシャリストが活躍する組織でした。新卒入社者にとっては、社内における人材の流動性が少ないことにより、成長機会の創出が難しいと同時に、企業経営全体を見る力を育成しにくいデメリットがありました。職能等級制度を導入することで、一定のスペシャリスト性を担保しながらも、ローテーションをしやすくし、次世代の経営者を育成できる環境を整備しました。

 

・評価制度

MBO(目標管理制度)を導入

 成果と能力に対してそれぞれ目標をたて、半期ごとに評価するサイクルです。成果目標は、全社目標からブレイクダウンされ、個人の等級に合わせて設計します。能力目標は、各等級に定義された要件を満たすように個人に合わせて設計します。それぞれの達成度を評価します。

 

・報酬制度

 月例給与と賞与から成り立ちます。賞与は、年に1回、会社業績と部門業績に加え、成果目標の達成度に応じた個人業績の係数をかけ、その年の成果に報いる形で支給する設計です。

 月例給与は、成果目標と能力目標の達成度に応じて昇給額が決定します。

 

<社内環境整備実施事項>

・フレックスタイム制の導入

 様々な事情を持つ方が働き続けられる環境を整備するとともに、各個人にとって効率のよい時間の使い方をすることで、1人あたりの生産性を高めるため、フレックスタイム制を導入しました。

 

・補助制度

 従業員の行動変容を促す補助制度を整備しました。

「3つのCを強化する施策」と「社会問題の解決に資する施策」の2軸で設計しています。

 

0102010_011.png

0102010_012.png

 

・従業員エンゲージメントサーベイの実施

 当社は、個々を活かし働きがいを生み出す組織を目指すには、従業員エンゲージメントが重要であると考えています。組織課題の認識と解決に向けて、 2023年度に従業員エンゲージメントサーベイを導入しました。2024年度の結果では、2023年度と同様、階層間の意思疎通の項目や戦略目標への納得感が課題として出ました。

 課題に対する取り組みとして、本部ごとに重点的に取り組む課題を抽出するため、本部長を集めた勉強会を行いました。各本部で課題を特定し、それに向けたアクションプランを作成して取り組んでいます。また、全社の取り組みとしては、重点事業において、全社員に向けに事業推進の背景説明と半年毎の進捗報告を行い、質疑応答を通じて納得感の醸成を図っています。

 

 

2023年

2024年

エンゲージメントスコア

51.1

51.6

レーティング

B

B

 

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、リスク要因となる可能性があると考えられる主な事項及びその他投資者の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項を以下のとおり記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に取り組む方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
 なお、本項記載のうち将来に関する事項は、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではなく、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)新規サービス展開に伴うリスクについて

 当社グループでは、今後も引き続き、積極的に新規事業に取り組んでまいりますが、これによりシステム投資などの支出が発生し、利益率が低下する可能性があります。また、予測とは異なる状況が発生し新規事業の展開が計画どおりに進まない場合、投資を回収できず、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)特定役員への依存について

 当社代表取締役社長 岩崎博之は、当社グループ経営の最高責任者であり、営業活動、開発活動に深く関与をしております。当社グループでは、過度な依存を回避すべく、会議体における意思決定の徹底、経営管理体制の強化、マネジメント層の採用、育成を図っておりますが、現時点において当該役員に対する依存度は高い状況にあるといえます。そのため、何らかの理由により当該役員が当社グループ業務を遂行することが困難な状態となり、後任となる経営層の採用、育成が進捗していなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)人材の確保・育成について

 当社グループは、今後の事業拡大を進めていくにあたり、優秀な人材を確保するとともに人材育成が重要な課題であると認識しております。このため、採用活動の充実、人材流出の防止に努めておりますが、必要とする人材の確保ができなかった場合や中核となる優秀な人材の流出等が生じた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)主要顧客の動向について

 当社グループのユーザである医療機関の経営環境は、医療保険制度の変更及びDPC制度の導入等により厳しさを増しております。そのため医療機関では、業務を効率化し医療サービスを向上させることが経営上必要不可欠となっております。データネットワークサービスにおける主要サービスである「MDV Act」、「EVE」及び「Medical Code」は、病院経営支援システムであり、経営状況の向上を目指す医療機関からのニーズは益々増加するものと考えられます。しかしながら、法規制、医療制度改革等の動向によっては、市場が順調に拡大しない可能性があり、当社グループの経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、データ利活用サービスとして、製薬会社から、傷病名毎の医薬品の処方状況等の解析及び各製薬会社が提供している医薬品の処方状況の解析調査等委託業務を請け負っているため、製薬業界の経済環境及び製薬会社の経営方針の影響を強く受ける特性があります。したがって製薬会社が事業縮小したり、製薬会社の経営が悪化した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)診療報酬について

 当社グループの製品・サービスは医療業界向けであります。2年に一度改定される診療報酬制度に対応した開発・保守体制を構築することを最重要項目と認識しており、製品・サービスの提供において万全の対策を講じております。しかしながら、万一予想し得ない事故等により、サービス提供が間に合わない場合、または、新診療報酬に適合できない場合は、当社の信用を失墜させることになりかねないとともに、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
 また、今後、診療報酬がマイナスとなるような改定等が行われた場合、当社グループの顧客である医療機関の収益を圧迫させることとなり、医療機関の投資意欲・投資余力に影響を及ぼすものと考えられます。その場合、当社グループが提供するサービスの導入を中止、延期する医療機関が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)情報セキュリティに関する事故について

 当社グループでは、ASPによるサービス提供を行う等、情報システムに依存した事業を展開しております。当社は、2011年5月に情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の認証であるISO/IEC 27001:2005 / JIS Q 27001:2006を取得し、それらの規格基準に沿って日常業務のあらゆる局面において、各種のセキュリティ管理策を講じ、個人情報を含む情報資源管理を実施し、情報漏洩等のリスクの回避を行っております。しかしながら、コンピュータウイルス等は、日々、新種が増殖していると言われ、その時点で考え得る万全の対策を行っていたとしても、予想し得ない悪意による不正行為等により、個人情報等の情報資源の漏洩、破壊等の事故が発生した場合、当社グループの信用を失墜させることになりかねないとともに、損害賠償等により当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)システム障害について

 当社グループは、医療機関及び製薬会社に対して、ASPによるサービスの提供を行っております。また、サーバ運用に際しては、大手クラウドプラットフォームへクラウドホスティングを中心とした利用を行っております。しかしながら、自然災害、火災、コンピュータウイルス、通信トラブル、第三者による不正行為、サーバへの過剰負荷、人為的ミス等の原因によりサーバ及びシステムが正常に稼動できなくなった場合、あるいはサーバ上の情報が消失した場合、当社グループのサービスが停止する可能性があります。当社グループでは上記のような場合に備え、災害等に対応する冗長構成環境であるクラウドプラットフォームを採用し、適切な設定で利用・運用しており、また不測の事態が生じた場合にも、クラウドプラットフォームに保存されている情報を全てバックアップすることで事業運営が行える体制を整えております。当社グループでは、このような対策を行っておりますが、何らかのシステム障害により当社グループのサービスが停止した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)個人情報の保護、顧客情報の保護について

 当社グループは、多数の医療機関・製薬会社・個人に対してサービスを提供しております。提供に際して、顧客より、要配慮個人情報である診療情報等の機密情報を受け取る場合があり、その取扱いには、現時点で考え得る最善の情報セキュリティ管理策を講じるとともに、各担当者が細心の注意を払い運用しております。しかしながら、機密情報の流出等の重大なトラブルが当社グループで発生した場合には、当社グループの社会的信用は低下し、お客様に対する賠償責任が発生する可能性があり、その場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、個人情報を含む情報資源に関して、個人情報保護法等の関連規制を遵守しながら、その管理体制を整備しておりますが、今後個人情報保護法の改廃や新たな法的規制が設けられる場合や個人情報をめぐる社会情勢の変化、関係官庁等の対応の厳格化等により対応が必要な場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)知的財産権について

 当社グループは、システムの設計及びプログラム開発を自らで行っておりますが、知的財産権の出願・取得を行っておりません。これまで、当社グループは第三者より知的財産権に関する侵害訴訟等を提起されたことはありませんが、ソフトウエアに関する技術革新の顕著な進展により、当社グループのソフトウエアが第三者の知的財産権に抵触する可能性を的確に想定、判断できない場合も考えられます。また、当社グループの業務分野において認識していない特許等が成立している場合、当該第三者より損害賠償及び使用差し止め等の訴えを起こされる可能性があり、並びに当該訴えに対する法的手続諸費用が発生する可能性等があります。このような場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)政府の施策とその影響について

 当社グループの医療機関向けデータネットワーク事業は、DPC制度導入対象病院に対し、経営支援システム等のサービスを提供しております。DPC制度とは、2003年に導入された、急性期入院医療を対象とした診療報酬の包括評価制度であり、2024年6月1日現在、DPC対象病院は日本全国で1,786病院あります。DPC制度は、今後、対象病棟を拡充していく動きもあるなど、今後も引き続き見直しを行いながら継続していくものと予測されます。しかしながら、政府の施策により、その仕組みが根底より大きく変更となった場合、または、制度そのものが消滅した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)SBIホールディングスとの関係について

 SBIホールディングス株式会社は、2024年12月31日現在、当社株式の発行済株式総数(自己株式を除く。)の38.3%を保有しております。

 当社グループとSBIホールディングスグループ(以下「同社グループ」という。)は、SBIホールディングス子会社並びに同社グループの出資先企業と必要に応じた協力関係を保ちながら事業を展開しており、役員の兼務、従業員の派遣、出向及び受け入れ出向等の人的関係はありません。

 また、当社グループの事業戦略、人事政策及び資本政策等について、何ら制約等も受けておりません。

 なお、同社グループは、今後も当社株式を安定保有する意向を有しており、当社グループと同社グループとの関係について重大な変化は生じないものと考えております。しかしながら、将来において、何らかの要因により、同社グループが経営方針や営業戦略等(当社株式の保有方針を含む)を変更した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)ストック・オプション行使による株式価値の希薄化について

 当社は、当社の取締役及び従業員に対して、当社役職員がより一層意欲と士気を向上させ、当社の結束力をさらに高めることを目的として、2023年3月13日開催の取締役会及び2024年3月11日開催の取締役会において、会社法第236条、第238条及び第240条の規定に基づき、新株予約権(有償ストック・オプション)の発行をそれぞれ決議しております。これらの新株予約権の行使がなされた場合には、当社グループの1株当たりの株式価値が希薄化することになり、将来における株価へ影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)製品に関する不具合、クレームについて

 当社グループは、本書提出日現在まで、当社グループが開発・販売するシステム等に関し、ユーザ等から訴訟を提起され、または損害賠償請求を受けたことはありません。当社グループは、その開発・販売に係る全てのシステム等につき、欠陥等の不具合を発生させないよう、また、不具合が生じたとしても早期に発見し、かつ是正し得るよう、管理体制を構築しております。しかし当社グループが提供したシステム等に予期しがたい欠陥等が発生し、製品回収や損害賠償等が発生した場合、多大な損害賠償金及び訴訟費用を必要とすることにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)競合について

 当社グループは、医療機関向けサービスとして、DPC制度を導入または導入を検討している急性期病院に対して、経営支援システム等を販売しております。当該製品は、大手コンピュータメーカー、医療情報システム会社など数社と競合状況にあり、これらの競合先との競争に備えて、技術開発の強化、営業力・営業体制の強化や保守体制の強化を講じておりますが、競争の結果、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、製薬会社向けサービスとして、傷病名から患者における医薬品の処方状況等の解析及び各製薬会社が提供している医薬品の処方状況の解析調査等委託業務を行っております。当社グループの最大の強みは、大規模なデータ量と質(病名、全診療行為、薬剤情報、身長体重、腫瘍ステージ、臨床検査値、入退院経路等の診療情報)を保持していることで、製薬会社からの受注状況を鑑み、後発他社に対する新規参入障壁は比較的高いと認識しています。しかしながら今後、市場規模の拡大に伴い、当社グループより認知度の高いブランドを有する企業等が新規参入してきた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)決済サービスにおける貸倒れについて

 当社グループでは、医療費専門の決済サービスを営んでおります。債権の貸倒れによる損失に備えるための必要額を計上しておりますが、景気の変動、顧客の信用状況の変化、その他の事由により、貸倒損失、または貸倒引当金繰入の負担が増加し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)製品・サービスの陳腐化について

 当社グループは、当社システム開発部門において、既存製品の改良と新製品等の研究開発に取り組んでおりますが、万一、当社グループが想定していない新技術及び新サービスが普及等した場合には、当社グループの提供するソフトウエア、サービス等が陳腐化し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの製品の競合先との競争激化による製品価格の引下げは、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)重要な契約について

 当社グループの事業展開上、重要な契約を「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載しております。これらの契約が解除された場合、当社グループにとって不利な契約改定が行われた場合、契約期間満了後に契約が継続されない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)外注先について

 当社グループでは、外部専門家の知識・ノウハウの活用あるいは生産性向上のため、システムの構築に係る業務の一部を外部委託しております。当社グループでは外部委託先に対して、継続的に良好な提携関係を図ることが可能な取引先を選定しており、品質水準管理体制に関して十分な管理を行うとともに、良好な関係の維持に努めております。しかしながら、将来において取引条件の変更、契約の解消等が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(19)買収(M&A)等の投資について

 当社グループは、事業拡大の一環としてM&A等の投資を行っており、それに伴うのれんが計上されております。今後も新たにのれんが発生し、償却費用が増加する可能性があります。また、投資先の業績が当初計画に及ばず、将来の期間にわたりその状態が継続すると予想される場合には、減損処理等を行う必要が生じ、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(20)先進的な取り組みを実施する企業との資本業務提携について

 当社グループは、最先端技術を取り入れるために、スタートアップを含む先進的な取り組みを実施する企業と、戦略的な資本及び業務提携を行っております。しかしながら、出資及び提携等を行うに際して、その効果を事前に全て予測することは困難であり、また当初見込みに沿った期間で予想どおりの効果を得られる保証はなく、出資及び提携等による効果を得られない可能性があります。また、それらによる出資先企業の経営状況変化により、株式評価を変更する可能性があり、当社グループの経営成績、財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

 当社グループは、「生活者が生涯を通じて自身の医療・健康情報を把握できる社会」および「それらの情報をもとに、自身で医療・健康分野のサービスを選択できる社会」の実現をビジョンとして定義しております。当社グループは、主にデータネットワークサービスとデータ利活用サービス、その他サービスの3つのサービス区分で事業を展開しており、高いセキュリティ環境の下、膨大な医療・健康に係るデータを蓄積し、それを有効活用することが、医療の質向上、ひいては患者や生活者へのメリット創出につながると考えております。

 データネットワークサービスは、情報の発生元の一つである医療機関にクラウド型アプリケーションの「MDV Act」をはじめとする各種経営支援システムを提供すると同時に、医療機関及び患者から二次利用の許諾・同意を得たうえで医療・健康情報を収集・蓄積するものであります。これに加え、クラウド型健診システムの「アルファ・サルース」の拡販や2023年11月に全面リニューアルしたPHRシステムの「カルテコ」の普及に努めており、収益基盤の強化や各種サービスを通じた新たな医療データの集積を図っております。データ利活用サービスは、当社グループがデータネットワークサービスを通じて収集・蓄積した大規模診療データベース「さくらDB」を中心とする医療・健康情報を活用したサービスであります。主に製薬会社、研究機関などに対して、WEB分析ツールである「MDV analyzer」や、各種分析データ等を「アドホック調査サービス」として提供しております。その他サービスは、子会社である株式会社Doctorbookが扱う医療動画配信サービスなどで構成されております。引き続き、当社が培ってきたノウハウやアライアンス活動を通じた新たな収益の柱を創出すべく、事業を推進してまいります。

 当連結会計年度においては、2022年11月に発表した中期経営計画の2カ年目となりました。中期経営計画達成に向けての2つのテーマであるデータ獲得基盤の強化とオープンアライアンス戦略を事業活動の軸とし、医療機関向けサービスである「MDV Act」と「アルファ・サルース」、2023年11月に全面リニューアルをしたPHRシステムの「カルテコ」の3サービスの拡販による売上成長と、データ利活用サービスの飛躍的な事業成長に向けた新たな医療・健康情報の収集・蓄積を目指しそれぞれの事業を推進してまいりました。

 「MDV Act」については新規導入が堅調に推移し顧客数を着実に積み上げることができました。「アルファ・サルース」についてはプログラムに関する不具合の改修に時間を要したこともあり新規導入に対しての当初計画の遅延が発生しましたが、2024年10月より導入を再開し、導入体制の強化も合わせて進めております。「カルテコ」についてはAI予測分析ツールを用いた疾患発症リスク予測機能や、非接触型生体情報取得技術を活用したねこセンシング機能などのコンテンツ拡充を図りました。また、これらの注力サービスに加え、企業向けの従業員メンタルヘルス対策ソリューションである「カルテコworkwell」、医療機関向けの電子カルテや医事会計システムなどのデータ一元管理サービスである「MDV Act Link」をそれぞれリリースいたしました。

 データ利活用サービスについては、営業人員減少の影響により売上高を伸ばすことができませんでしたが、人員増強と戦力化は進んでおり、成長に向けた営業体制の構築は完了しております。

 当連結会計年度において、人員とサービスに関する問題を解消し、事業拡大に向けた準備は整いましたので、2025年12月期の通期連結業績予想の達成に向けて事業に取り組んでまいります。

 この結果、当連結会計年度の売上高は5,906,958千円(前期比8.0%減)、売上総利益は4,331,384千円(前期比13.9%減)、販売費及び一般管理費は4,327,619千円(前期比32.7%増)、営業利益は3,765千円(前期比99.8%減)、経常損失は509,609千円(前期は1,700,418千円の経常利益)、親会社株主に帰属する当期純損失は791,169千円(前期は979,125千円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

 また、当社グループは、医療データネットワーク事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。(以下、「② キャッシュ・フローの状況」においても同じ。)

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、1,347,266千円となりました。当連結会計期間末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は、877,849千円(前期は1,616,314千円の収入)となりました。これは主に、法人税等の支払額が759,487千円であったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、592,972千円(前期は437,831千円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出が301,300千円、有形固定資産の取得による支出が154,495千円であったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、399,985千円(前期は225,264千円の支出)となりました。これは主に、配当金の支払額が248,050千円であったことによるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

 当社グループは、医療データネットワーク事業の単一セグメントであります。

 

a. 生産実績

 当連結会計年度の生産実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。

サービスの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

生産高

データネットワークサービス(千円)

938,140

112.7

データ利活用サービス   (千円)

552,710

123.9

その他          (千円)

84,722

77.2

合計(千円)

1,575,573

113.5

 (注)金額は売上原価によっております。

 

 

b. 受注実績

 当社グループのサービスは、受注から納品までの期間が極めて短いため、記載を省略しております。

 

c. 販売実績

 当連結会計年度の販売実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。

サービスの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

販売高

データネットワークサービス(千円)

1,222,663

83.6

データ利活用サービス   (千円)

4,168,506

94.0

その他          (千円)

515,788

98.9

合計(千円)

5,906,958

92.0

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。これらの連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、過去の実績等を勘案して合理的な見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 

② 財政状態の分析

(資産)

 当連結会計期間末の資産残高は、前連結会計年度末と比べて1,472,108千円減少し、4,749,108千円となりました。

 流動資産は、前連結会計年度末と比べて1,550,749千円減少し、3,111,471千円となりました。これは主に、現金及び預金が1,870,807千円減少したことによるものです。

 固定資産は、前連結会計年度末と比べて78,640千円増加し、1,637,636千円となりました。これは主に、有形固定資産が79,611千円増加したことによるものです。

(負債)

 当連結会計期間末の負債残高は、前連結会計年度末と比べて309,575千円減少し、1,594,566千円となりました。

 流動負債は、前連結会計年度末と比べて366,946千円減少し、1,438,566千円となりました。これは主に、未払法人税等が464,265千円減少したことによるものです。

 固定負債は、前連結会計年度末と比べて57,371千円増加し、156,000千円となりました。これは、主に資産除去債務が56,884千円増加したことによるものです。

(純資産)

 当連結会計年度末の純資産残高は、前連結会計年度末と比べて1,162,533千円減少し、3,154,541千円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失が791,169千円であることと、剰余金の配当の結果、利益剰余金が1,039,449千円減少したことによるものです。

 

③ 当連結会計年度の経営成績の分析

(売上高)

 データネットワークサービスにおいては、「MDV Act」の有料契約病院数が順調に積み上がったものの、クラウド型健診システム「アルファ・サルース」のプログラムの不具合や、PHRシステム「カルテコ」の機能開発が遅延した影響により拡販が計画通りに進まなかったことなどから、売上高は1,222,663千円(前期比16.4%減)となりました。データ利活用サービスにおいては、営業人員の増員及び退職者補充のための採用が遅れたことや、戦力化が遅れたことが影響し、売上高は4,168,506千円(前期比6.0%減)となりました。その他サービスにおいては、LIVE配信受託の減少などの影響などから、売上高は515,788千円(前期比1.1%減)となりました。

 以上の結果、当連結会計年度の売上高は5,906,958千円(前期比8.0%減)となりました。

 

(売上総利益)

 売上高が前期比で減収したこと、データネットワークサービスにおけるクラウドサービスの提供開始に伴う費用の増加や、データ利活用サービスにおける解析業務をはじめとした業務委託費用の増加などによる原価の増加により、売上総利益は4,331,384千円(前期比13.9%減)となりました。

 

(販売費及び一般管理費及び営業利益)

 販売費及び一般管理費においては、人員増強・既存人員の昇給などによる人件費の増加、PHRシステム「カルテコ」の普及促進のための広告宣伝費の増加、「MDV Act」や「アルファ・サルース」などクラウドサービスの新規開発にかかる研究開発費の増加など、将来成長のための先行投資を積極的に実行したことにより4,327,619千円(前期比32.7%増)となりました。この結果、営業利益については3,765千円(前期比99.8%減)となりました。

 

(経常利益)

 営業外費用において、持分法適用会社である株式会社センシングの投資損失を計上したことなどにより、経常損失は509,609千円(前期は1,700,418千円の経常利益)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 特別損失において、投資有価証券評価損を計上しました。また、法人税、住民税及び事業税を126,242千円、法人税等調整額を△50,073千円などを計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は791,169千円(前期は979,125千円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社グループは財務の安全性を重視するとともに、銀行借入に依存しない経営を継続しております。資金の運用は短期的な預金等に限定するとともに、運転資金については内部資金により調達することを原則としております。

 当社グループの運転資金需要の主なものは、人件費をはじめとする販売費及び一般管理費等の営業費用であり、これらの支出は内部資金によっております。また設備投資資金等についても、現金及び預金を使用することとしており、安全性を重視しつつも効率的な資金運用を目指しています。

 また、利益配分に関して、当社は株主に対する利益還元を重要な経営課題の一つと位置付けており、連結配当性向20%以上程度を目途に、長期安定的な配当を行っていくことを基本方針としています。加えて、資本効率の向上を通じた株主利益の向上及び機動的な資本政策の遂行のため状況に応じて自己株式取得を機動的に行ってまいります。

 

⑥ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、売上高成長率、売上高経常利益率、ROEを経営上の重要な指標と位置づけ、高い成長率の持続と収益性及び資本効率のさらなる向上を図り、企業価値のさらなる増大を目指しております。

 当連結会計年度の売上高成長率は△8.0%、売上高経常利益率は△8.6%、ROEは△21.6%となりました。

 前掲の経営方針、経営戦略に基づき事業を推進することで持続的な成長を図り、これら指標の改善と向上に取り組んでまいります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

  当社は、下記のとおり業務提携契約を締結しております。

 

契約相手

契約書名

契約締結日

契約期間

契約内容

株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン

業務提携契約書

2006年4月1日

2006年4月1日から2007年3月31日まで

以後1年ごとの自動更新

DPC分析ベンチマークシステム「EVE」の開発、販売、コンサルティングなどのサービス事業に関する業務提携

株式会社メディパルホールディングス

包括業務提携に関する契約書

2006年12月26日

2006年12月26日から2007年12月25日まで

以後1年ごとの自動更新

当社が保有・開発するシステムの販売サポート等

 

株式会社メディパルホールディングス

資本業務提携契約書

2019年1月30日

2019年1月30日から2024年1月29日まで

以後自動継続

株式会社Doctorbookに対する出資及び業務提携等

 

SBIホールディングス株式会社

資本業務提携契約書

2020年11月10日

2020年11月10日から2022年11月9日まで

以後1年ごとの自動更新

協業及び相互の企業価値を向上させることを目的とした資本業務提携

 

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度の研究開発活動は、主として新サービス開発によるものであり、研究開発費の総額は290,606千円であります。

 なお、当社グループは医療データネットワーク事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。