第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

私たち積水ハウスグループは、企業理念として、根本哲学を「人間愛」、基本姿勢を「真実・信頼」、目標を「最高の品質と技術」、事業の意義を「人間性豊かな住まいと環境の創造」に据えています。

根本哲学である「人間愛」とは、「人間は夫々かけがえのない貴重な存在であると云う認識の下に、相手の幸せを願いその喜びを我が喜びとする奉仕の心を以て何事も誠実に実践する事」であり、積水ハウスグループは、この「人間愛」に根差し、「真実・信頼」を旨として、「最高の品質と技術」の提供を通して、「人間性豊かな住まいと環境の創造」という使命を担ってまいります。

このような企業理念のもと、1960年の創業以来、30年を一つの区切りとして、1990年までの第1フェーズでは、お客様の命や財産を守る「安全・安心」な住まいの提供に注力しました。続く2020年までの第2フェーズでは、住まい手にとって快適さと環境配慮を追求する住宅の提案を行い、新たな価値の創出を行ってきました。

2020年からスタートした2050年に向けた第3フェーズでは、“「わが家」を世界一幸せな場所にする”というグローバルビジョンならびに、“ハード・ソフト・サービスを融合し幸せを提案”、“積水ハウステクノロジーを世界のデファクトスタンダードに”、“ESG経営のリーディングカンパニーに”という3つのサブビジョンを掲げ、住まい手の「幸せ」につながる「健康・つながり・学び」を追求し、人生100年時代への住まい手価値の創出と持続可能な社会の実現を目指し、「住」を基軸に、融合したハード・ソフト・サービスを提供するグローバル企業へと着実に変革を進めてまいります。

また、2024年には、積水ハウスグループ従業員が誇りと責任をもって行動するための道標として、“イノベーションで、新しい価値を生みだす。”“コミュニケーションで、アイデアを育てる。”“自律して、主体的に考え、動く。”“感性を大切に、技術と美意識をともに磨く。”“「世界一幸せな場所」のためのプロを目指す。”の5つの要素による「SEKISUI HOUSE_SHIP」を制定しました。世界中の積水ハウスグループ従業員とともに、「SEKISUI HOUSE_SHIP」を深めながら、グローバルビジョンの達成に向けて価値創造を紡ぎ続けていきます。

 


 

 

(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題ならびに中長期的な会社の経営戦略

世界経済は、各国におけるインフレ率の低下と漸進的な政策金利の引き下げが景気の押し上げ要因として見込まれるものの、米国における経済政策の動向、ならびに為替変動や地政学リスクが、エネルギーや原材料価格及び調達コストに与える影響に注視が必要な状況が継続するものとみられます。

国内の住宅市場では、資材価格や労務費の上昇を受けた建設費の高騰が需要を下押ししているものの、人生100年時代の到来によるライフスタイル・価値観の多様化、気候変動に伴う自然災害の激甚化、及び長期優良住宅の認定制度の見直しや建築物省エネ法の改正等を背景に、省エネルギー性能が高い住宅等、安全・安心と快適性・環境配慮を両立する高品質な住宅へのニーズが高まることが想定され、多様化する顧客のニーズへの対応が求められます。

また、アメリカの住宅市場では、高水準で推移する住宅ローン金利の影響により住宅着工は調整局面にあるものの、安定的な人口増と良質な住宅の供給不足を背景とした潜在的な需要は強く、物価と金利水準の安定化とともに回復することが想定される新築住宅需要の顕在化への対応が求められます。

当社は、このような事業上の課題認識に基づき、2050年を見据えたグローバルビジョン“「わが家」を世界一幸せな場所にする”の実現に向けて2023年3月に策定・公表した、「国内の“安定成長”と海外の“積極的成長”」を基本方針とする第6次中期経営計画(2023年度~2025年度)を推進していきます。

当社グループのコアコンピタンスである「技術力」「施工力」「顧客基盤」と、商品・技術開発から、営業・設計・施工・アフターサービスまで、住まいづくりに関わる全てのプロセスを当社グループが担う独自のバリューチェーンを活かし、既存事業の深化と拡張を図ります。

また、日本で培った積水ハウステクノロジーの移植による海外での事業展開や、社会・事業環境の変化への対応やデジタル技術の活用による新規事業の開拓と拡張を推進します。

国内においては、戸建住宅ブランドの強化を図るべく、3ブランド戦略を深化させ、「SI事業」に取り組み、1stレンジの強化を図ります。また、徹底したエリア戦略に基づく高付加価値「シャーメゾン」ブランドの向上とともに、CRE(法人)やPRE(公共団体)事業を強化させることで事業領域を拡張させ、国内事業の安定成長を図ります。また、第5次中期経営計画からサービスを開始した、新しいライフスタイルの基盤「健康」「つながり」「学び」を住宅にインストールする「プラットフォームハウス構想」の推進やIoTの活用など、新規事業の開拓を継続・推進するとともに、DXを活用したサービスやマネジメント業務を新たに取り入れ、積水ハウステクノロジーとして国際事業に活かすなど、新規事業の拡張を目指します。

2025年2月には、当社の連結子会社である積水ハウス不動産グループ各社を、各事業の専門性強化を目的として仲介・不動産事業専門の積水ハウス不動産株式会社と賃貸事業専門の積水ハウスシャーメゾン各社に再編するとともに、当社アフターサービス事業を分社化し、当該事業を承継した積水ハウスサポートプラス株式会社にて、アフターサービスの高付加価値化を積極的に推進する体制を構築しました。

このように、第6次中期経営計画期間においては、「事業の探索と深化」の両利きの経営を実践しながら国内及び海外双方の成長戦略を遂行し、さらなる企業価値の向上を図ります。

加えて、従業員のキャリア自律支援やベクトルの一致、ダイバーシティ&インクルージョンの推進等の取組みを通じ、当社グループのさらなる人財価値の向上を図り、グローバル企業としての成長を加速させます。

財務面においては、資本効率を意識した成長投資の推進と財務健全性のバランスを保つことが重要という認識のもと、キャッシュリターン創出力の強化によるROE向上と、ESG経営推進の相乗効果により企業価値の向上を目指します。

また、成長投資については、国内外の不動産投資と、人財、IT・DX、研究開発、M&A等への成長基盤投資を積極的に実施します。

2024年4月に完了したM.D.C. Holdings, Inc.(本社:米国コロラド州、以下「MDC社」)の買収により、一時的に財務健全性にストレスがかかる状況となっていますが、MDC社の買収により強化されたキャッシュ・フローを活用することにより、成長戦略を支える財務基盤のさらなる強化を図ります。

MDC社の買収資金として借入したブリッジローンは、2025年2月までに全てのパーマネント化が完了しました。このうちの一部は、長期信用格付けを下支えする目的で、格付機関より調達額の50%に対し資本性の認定を受けられる公募ハイブリッド社債を発行しています。また、外貨建て普通社債を発行するなど、資金調達手段の多様化を図っています。引き続き、財務健全性及び信用格付けを意識した財務運営を行い、成長戦略と財務戦略の両立に取り組みます。

株主還元については、中期的な平均配当性向を40%以上とし、株主還元のさらなる安定性向上を図るべく第6次中期経営計画期間の1株当たり配当金の下限を年間110円(2022年度実績)とするとともに、機動的な自己株式取得の実施により株主価値向上を図ります。

※ 3ブランド戦略:価格帯で3つのレンジに分け、それぞれの価格帯・スペックに応じた戦略・施策を実行すること

 

■各ビジネスモデルの事業方針と戦略

上記の事業上及び財務上の課題に対応するため、事業戦略と組織の連動性を高め、資本効率の向上を図ることを目的として2023年度よりセグメント構成を見直し、以下のとおり事業戦略(注1)を策定しました。

セグメント

事業方針と戦略

請負型

ビジネス

モデル

戸建住宅事業

価格レンジ別戦略の深化により戸建住宅ブランドの強化を図る

■ 3ブランド戦略の深化

■ CRM(注2)戦略の推進

■ ハード・ソフト・サービスの融合

賃貸・事業用建物事業

エリア戦略に基づく高付加価値物件を供給し、シャーメゾンブランド向上を図る

■ エリアマーケティング強化

■ 高付加価値シャーメゾン

■ CRE(法人)・PRE(公共団体)事業(注3)強化

建築・土木事業

環境対応・技術力をドライバーに、顧客・社会への持続的な価値創出の安定基盤を築く

■ 建築:受注チャネルの拡大・深化

■ 土木:環境・技術による差異化

ストック型

ビジネス

モデル

賃貸住宅管理事業

オーナー様・入居者様への充実したサービスを提供するプロパティ・マネジメントを実践する

■ オーナー向け:資産価値の最大化

■ 入居者向け:サービスの強化

リフォーム事業

累積建築250万戸から形成される住宅ストックの資産価値向上と長寿命化を提案

■ 戸建住宅:大型リフォーム強化

■ 賃貸住宅:資産価値向上リノベーション

開発型

ビジネス

モデル

仲介・不動産事業

徹底したエリアマーケティングと中長期視点の投資判断により、都市と地方の開発を実施

■ 四大都市圏の都市再開発

住宅(グランドメゾン・プライムメゾン)、非住宅(オフィス・ホテル・商業施設)

■ 地方創生に資する開発事業

戸建宅地開発(分譲・売買仲介)、地方創生施設

マンション事業

都市再開発事業

国際事業

開発事業中心型から開発事業・戸建住宅事業を両輪とする2本柱の事業ポートフォリオとするべく、戸建住宅事業の積極的な成長戦略を継続する。米国・豪州を中心に戸建住宅事業で、2025年までに海外での供給戸数1万戸を目指す。開発事業においてはパートナーとの連携強化及び多様化により利益最大化と安定化を目指す。

■ アメリカ

戸建住宅・コミュニティ開発:M&Aにより販売エリアを拡大し、商品・生活提案を含む一気通貫のテクノロジー移植を総合的に進める

賃貸住宅開発:事業エリアとパートナーシップの多様化を図りながら新規開発を推進する

■ オーストラリア

 エリア戦略とブランド確立で、国際事業の2本目の柱に拡大

■ シンガポール

 有力なアジア企業との緊密なパートナーシップ

■ 英国

 M&Aによる技術・事業の進出

 

(注)1 第6次中期経営計画の詳細は、当社ホームページにてご確認ください。

<中期経営計画>

https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/plan/index.html

2 CRM:Customer Relationship Management。顧客から得られた情報を一元的に管理し、適時適切に活用することによって、顧客との良好な関係を構築・維持し、価値創出と収益向上を目指すマネジメントの仕組み・手法。

3 CRE・PRE事業:Corporate Real Estate(企業不動産)、Public Real Estate(公的不動産)を指し、法人・企業・公共団体・行政機関の保有する不動産の有効活用を提案する事業。

 

(3) 目標とする経営指標

①第6次中期経営計画策定時における3ヵ年業績目標(2023年3月9日公表)

(単位:億円)

 

2024年1月期

2025年1月期

2026年1月期

3ヵ年合計

売上高

30,800

32,700

36,760

100,260

営業利益

2,650

2,750

3,180

8,580

経常利益

2,590

2,690

3,110

8,390

親会社株主に帰属する

当期純利益

1,930

1,960

2,140

6,030

ROE(自己資本利益率)

11.6%

安定的に11%以上

 

※目安とする財務健全性指標

当社は、国内格付機関からAA格・海外格付機関からA格の長期信用格付けを確保すべくD/Eレシオ0.5倍程度、債務償還年数(Net Debt/EBITDA 倍率)1.5年を下回る水準を目途とし、積極的な成長投資と財務健全性のバランス保持に努めます。

 

②2024年1月期・2025年1月期実績及び2026年1月期の業績目標

(単位:億円)

 

2024年1月期

実績

2025年1月期

実績

2026年1月期

計画(注1)

3ヵ年合計

売上高

31,072

40,585

45,000

116,658

営業利益

2,709

3,313

3,620

9,643

経常利益

2,682

3,016

3,390

9,088

親会社株主に帰属する

当期純利益

2,023

2,177

2,320

6,520

EPS(1株当たり当期純利益)

309.29円

335.95円

357.97円

ROA(総資産事業利益率)

8.7%

8.3%

7.9%

ROE(自己資本利益率)

11.9%

11.7%

11.9%

1株当たり配当金

123.00円

135.00円

144.00円

配当性向

39.8%

40.2%

40.2%

D/Eレシオ(注2)

0.44倍

0.86倍

0.84倍

債務償還年数

(Net Debt/EBITDA倍率)(注2)

1.57年

3.54年

3.20年

 

(注)1 2026年1月期計画は、2025年3月6日付で公表した連結業績予想に基づく数値です。

2  D/Eレシオ及び債務償還年数(Net Debt/EBITDA倍率)は、2024年7月に発行した公募ハイブリッド社債の調達額に対し格付機関より資本性の認定を受けた1,000億円を考慮した数値です。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

<サステナビリティの基本方針>

積水ハウスグループのESG経営は、企業理念の根本哲学である「人間愛」を実践することが根底にあります。お客様や社会が直面する課題解決を事業と一体的に推進していくとともに、ガバナンスの強化に努めることで、ESG経営の領域においてさらなるリーダーシップを発揮することを目指し、「ESG経営のリーディングカンパニーに」というサブビジョンを策定しています。

その実現に向け、従業員一人ひとりが自ら考え、行動することが重要であると考え、2020年より、全従業員参画を重視したESG経営に取り組んでいます。参画のきっかけとして、対話を通じてお互いの考えや価値観に触れ、ESGに対する理解を深めてきました。また、従業員が主体的に行動に移すことができるよう、自律や創発につながる制度の構築や職場風土の醸成に努めています。

2022年には、当社グループが果たすべき使命を明確にするため、持続可能な未来に向けたマテリアリティの見直しを行いました。1960年代、高度経済成長期の住宅の確保と、住まいの基本性能の確立に貢献した当社グループは、以来一心に住まいの「安全・安心」「快適性・環境配慮」を追求し、技術の進化を図ってきました。こうした私たちの取組み自体がマテリアリティそのものであると認識し、人生100年時代を迎えたこれからは、住まいを通じた「幸せ」を実現する上で、「良質な住宅ストックの形成」「持続可能な社会の実現」「ダイバーシティ&インクルージョン」という3つを、経営の重要課題に位置づけました。

第6次中期経営計画(2023年度~2025年度)においては、ESG経営の基本方針を「マテリアリティを軸としたESG経営の深化」と掲げ、「住まいを通じて環境課題の解決に貢献」「従業員の自律を成長ドライバーにする」「イノベーション&コミュニケーション」に重点を置いた取組みを推進しています。

 


 

(1) サステナビリティ共通の取組み

①ガバナンス

当社グループは、取締役会の諮問機関として、専門的な知見、能力を有する少なくとも2名の社外委員を含むESG推進委員会を設置し、ESG経営の取組みの進捗と課題等についての意見交換を通じて実効性を高めています。

ESG推進委員会は3ヵ月に1回のペースで開催し、内容は取締役会に報告され、審議することとしています。

ESG推進委員会では、その推進を担う3つの部会、「環境事業部会」「社会性向上部会」「ガバナンス部会」を設置、ESG3部会長には、それぞれ職責者を任命し、目標・KPIを設定しています。

この3部会は、各部門・国内外のグループ会社と連携しながら、ESG経営の旗振り役として先導していくとともに、実効性ある取組みを行います。また、取組みの進捗報告と普及に向けた課題・改善提案のフィードバックを通じて、全従業員の理解・浸透を図ります。

ESG経営推進本部においては、ESG経営に関する基本方針の企画・立案及び推進に関する事項を掌理し、取組みの推進、情報の収集・分析、社内外への情報発信、ESG推進委員会の運営を通じて、ESG経営のさらなる推進を図っています。

 

 


・ 環境事業部会

グループ全体を対象とした事業活動全体の脱炭素化、生物多様性保全や資源循環に関する環境マネジメントシステムを計画・実行するとともに、環境関連情報を年次集計し、社内外のステークホルダーの環境意識向上・環境負荷低減に向けた認知向上を目的に情報公開しています。

グローバルビジョン“「わが家」を世界一幸せな場所にする ”ためには環境への取組みが必要不可欠との考えのもと、これからも先進的な取組みで環境負荷と事業リスクの低減、及び事業機会の創出に努めていきます。

・ 社会性向上部会

人財価値の向上と事業・活動を通じた社会課題の解決を推進し、企業価値を高めていくことを目指しています。人財価値は、従業員の自律とベクトルの一致の掛け算という考えのもと、従業員にとっての「わが家」である会社と一人ひとりの幸せを実現する施策の計画・実行に努めます。社会価値は、子ども・環境・人権・地方創生を軸に、社会の幸せづくりに寄与する事業・活動を実現します。各施策の方針と推進体制・進捗を包括的にモニタリングし、お客様・社会・従業員の「幸せ」を最大化していきます。

・ ガバナンス部会

グループガバナンスの強化に向けて、本社コーポレート部門と国内外のグループ会社各社とのコミュニケーション活性化が重要と考え、情報連携に努めています。

国内外グループ会社におけるコーポレート機能の強化、ガバナンス人財の育成・適正配置、コンプライアンス意識向上などの現状把握、改善に関する議論などを通じて、事業マネジメントレベルでのガバナンス強化に取り組んでいます。

 

※ 当事業年度におけるESG推進委員会の主な議題については、「第4 提出会社の状況  4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ①コーポレートガバナンスの体制 <ESG推進委員会>」に記載しています。

 

②戦略

当社グループは、外部環境の変化に伴うリスク・機会を分析し、ステークホルダーである、お客様・社会・従業員それぞれの幸せを実現するため提供できる価値とは何か考え、「良質な住宅ストックの形成」、「持続可能な社会の実現」、「ダイバーシティ&インクルージョン」という3つのマテリアリティを軸に、第6次中期経営計画において、それぞれKPIを設定しサステナビリティの取組みを推進しています。

<リスク・機会と重点テーマ>

積水ハウスグループでは、価値創造に影響をもたらす中長期の課題を分析し、外部環境の変化に伴うリスク要因を洗い出すとともに、リスクを将来の事業創出の機会でもあると位置付け、事業戦略立案に活かしています。

 

外部環境の変化

リスク

機会

重点テーマ

・人生100年時代の到来

・With/Afterコロナ

・健康志向の高まり

・人口・世帯数の減少

・住宅内の事故増加

・資産継承の複雑化やトラブルの増加

・ライフスタイルや価値観の変化への対応不足

・健康に関する先進的技術への対応不足

・新築住宅着工戸数の減少、空き家問題の深刻化

・訪日外国人増加等の情勢変化の対応不足

・ライフスタイルや価値観の多様化

・既存住宅流通、不動産管理信託のニーズ

・健康に配慮した住宅等の需要増

・良質な住宅の需要増

・新たな住宅等のニーズ

・安全・安心・快適性

・資産価値の創出

・住宅の長寿命化

・省エネ基準適合義務化

・コンパクトシティの加速

・建設労働者の不足

・住宅の長期優良化、木造建築の耐震化

・建設費の増加による需要減

・地方の衰退

・施工力不足による供給能力の低下、施工技術伝承の断絶

・省エネルギー性能の高い住宅等の需要増

・地方創生のニーズ

・建設労働者の働きがい

・高耐久な住宅等の需要増

・脱炭素化

・地域社会との共生

・労働安全衛生・サプライチェーン

・住宅の長寿命化

・ネットゼロ推進

・生物多様性の保全

・サーキュラーエコノミー推進

・多発する自然災害

・気候災害の激甚化・頻発化

・カーボンプライシングの導入によるコストの上昇

・生物多様性の毀損、森林の減少

・大量廃棄による社会問題の増加

・自然災害の激甚化

・省エネルギー性能の高い住宅等の需要増

・再生可能エネルギーの増加

・自然資本や生物多様性保全を踏まえた事業機会

・循環型社会を踏まえた事業機会

・高耐久な住宅等の需要増

・脱炭素化

・生物多様性保全

・資源循環

・住宅の長寿命化

・地政学的リスクの懸念

・資材価格の高騰

・エネルギーコストの上昇

・金利上昇・為替変動

・資材供給の不安定化

・建設費の増加による需要減

・需要減少、賃料相場変動への対応不足

・事業や体制の見直しによる持続的な成長への機会

・政府による住宅関連政策や税制による事業機会

・地域・顧客ニーズを捉えた事業機会

・資産価値の創出

・住宅の長寿命化

・人財の多様性尊重

・従業員の自律支援、キャリアアップ

・育児や介護との両立

・グローバル化の加速

・心理的安全性の悪化による生産性の低下

・人財獲得の機会損失と人財の流出

・成長力の鈍化

・政治・経済の不確実性の増加

・人権問題に起因する社会的評価の低下

・多様な人財による価値創出

・自律した従業員による価値創出

・保育・介護等の施設の需要増

・海外における良質な住宅の需要増

・ダイバーシティ推進

・従業員の幸せ・健康

・多様な働き方・働きがい

人財育成・キャリア自律

・労働安全衛生・サプライチェーン

・安全・安心・快適性

・多様化するIT技術

・蓄電技術の発展、EVシフト

・レガシーシステムの更新

・先端テクノロジーの適用

・情報セキュリティ事案発生による社会的評価の低下

・デジタル技術を活用した事業機会

・資産価値の創出

 

 

<重点テーマに対応するマテリアリティ>

重点テーマ

マテリアリティ

・安全・安心・快適性

・資産価値の創出

・住宅の長寿命化

良質な住宅ストックの形成

・脱炭素化

・生物多様性保全

・資源循環

・地域社会との共生

・労働安全衛生・サプライチェーン

持続可能な社会の実現

・ダイバーシティ推進

・従業員の幸せ・健康

・多様な働き方・働きがい

・人財育成・キャリア自律

ダイバーシティ&インクルージョン

 

 

<マテリアリティごとの果たすべき使命と重点方針>

マテリアリティ

果たすべき使命

重点方針

良質な住宅ストックの形成

住まいの性能と美しさを追求することで、永く住み続けていただける価値ある住宅を提供します。

住宅とは、道路や鉄道、ガス・電気・水道と同様に、重要な社会資本の一つだと考えています。社会資本だからこそ、長期にわたり住み継がれていく良質な住宅を残し、次世代へ受け継いでいくことが当社の使命だと認識しています。

持続可能な社会の実現

環境負荷低減や再生可能エネルギー活用などを積極的に推進し、地域との共創を通じて、より幸せに暮らしつづけられる未来を切り拓きます。

人・まち・地球の調和を目指し、サプライチェーンを含めた事業活動を通じて持続可能な社会の実現に取り組みます。

ダイバーシティ&

インクルージョン

多様な視点や価値観が認められ、誰もが安心して自己実現や成長の機会を見つけ、特性や能力を活かしながら、活躍できる職場環境を築きます。

従業員にとっての「わが家」である職場の幸せを実現し、自らの意思でチャレンジし続けられる組織と人財の自律を支援します。

 

 

 

③リスク管理

当社グループは、サステナビリティを軸に、価値創造に影響をもたらす中長期の課題を分析し、リスク要因を洗い出すとともに、リスクを将来の事業創出の機会と位置付け、中長期の事業戦略立案に繋げています。ESG経営の取組みの進捗と課題については、取締役会の諮問機関であるESG推進委員会において検討した後に、取締役会に報告する体制としています。また、取締役会はESG推進委員会からの報告を受け、当社グループのサステナビリティに関する対応等についての審議・監督を行うこととしています。

サステナビリティの各アジェンダに関するリスク管理の詳細については、「(2)気候変動関連に対する取組み、(3)自然資本・生物多様性に対する取組み、(4)人的資本に関する取組み、(5)人権尊重に関する取組み」をご参照ください。

なお、これら以外のリスク管理については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

④指標及び目標

当社グループは、第6次中期経営計画においてマテリアリティの取組みに向けたテーマごとのKPIを設定しています。そのうち、業績連動型株式報酬(PSU)に係るESG経営指標(注1)も含めた主なKPIは下記のとおりです。その他のKPIについては、2024年7月発行のValue Report 2024をご参照ください。また、その他のKPIの2024年度実績については2025年6月に発行予定のESG Fact Book 2025に記載します。

マテリアリティ

KPI

2023年度

2024年度

2025年度

実績

実績

目標

良質な住宅ストックの形成

戸建住宅の長期優良住宅認定取得率(注2)

92.3%

91.7%

90%以上

賃貸住宅リノベーション戸数(注3)

7,058戸

5,756戸

6,300戸

持続可能な社会の実現

戸建住宅ZEH比率

(注4)

95%

96%

90%

賃貸住戸ZEH比率

(注5)

76%

77%

75%

事業活動におけるCO2排出削減率(注6)

56.3%

62.3%

2030年度までに75%

ダイバーシティ&

インクルージョン

女性管理職人数
(注7)

342人

415人

380人以上

男性の育児休業取得率(注8)

100%

100%

100%

年次有給休暇取得率

(注9)

80.3%

79.9%

70%

 

(注)1 業績連動型株式報酬(PSU)に係るESG経営指標の詳細については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4)役員の報酬等 ① 役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針に係る事項 (ⅲ) 業績連動型株式報酬(付与される基準株式ユニット数の20%に相当するESG経営指標連動部分)」に記載しています。

2 集計対象会社は、当社。当社が当年度に契約した戸建住宅において、国が定めた長期優良住宅認定制度の基準をクリアし、行政の認定を受けた棟数の割合を表した指標。集計対象期間は2024年4月1日~2025年3月31日。

3 集計対象会社は、積水ハウス不動産グループ各社。賃貸住宅において、間取りの変更を伴い、資産価値の向上が見込める内装・設備リノベーション工事の契約戸数を表した指標。

2024年度より、良質な住宅ストックの形成とお客様の幸せに資するリノベーションを実施することに主眼を置き、戸数から質の向上に注力する方針にシフトしたため、2025年度の目標数値を変更しました。

4 集計対象会社は、当社。当社が当年度に建築した戸建住宅(北海道の請負・分譲住宅は除く) に占めるZEH(Net Zero Energy Houseの略称) の割合を表した指標。集計対象期間は2024年4月1日~2025年3月31日。

5 集計対象会社は、当社。当年度に契約した賃貸住宅「シャーメゾン」に占めるZEH 戸数(ZEH Ready基準以上かつ入居者売電物件)の割合を表した指標。

6 集計対象会社は、当社グループ。当社グループの事業活動全体で直接的に排出するCO2(スコープ1)と、調達電力など間接的に 排出するCO2(スコープ2)を2013年度比で表した指標。

7 集計対象会社は、2023年度は、当社、積水ハウス不動産グループ各社、積水ハウス建設グループ各社、積水ハウス ノイエ㈱、積水ハウスリフォーム㈱ 、㈱鴻池組とその国内連結子会社、2024年度、2025年度は、当社及び国内連結子会社。

8 集計対象会社は、当社、積水ハウス不動産グループ各社、積水ハウス建設グループ各社、積水ハウス ノイエ㈱、積水ハウスリフォーム㈱。「積水ハウスグループ 女性活躍推進行動計画」で掲げた「当社グループ全体の男性育児休業取得率」で、3歳未満の子を持つ男性従業員が、1ヵ月以上の育児休業を取得した割合を表した指標。

9 集計対象会社は、当社、積水ハウス不動産グループ各社、積水ハウスリフォーム㈱。働き方改革関連法に基づき義務化された年5日取得の促進及び総労働時間削減への取組みを推進するため、当社グループ従業員の年次有給休暇の取得率を表した指標。集計対象期間は2024年3月11日~2025年3月10日。

 

(2) 気候変動関連に対する取組み(TCFD提言に沿った情報開示)

①ガバナンス

当社グループでは、気候変動対応はESG推進委員会の重要議題の一つとして位置づけており、活動方針の妥当性や進捗状況の評価を行うとともに、重要事案については取締役会に報告しています。

ESG推進委員会の傘下に、環境経営に関わる本社部門の職責部長及び各事業部門の環境責任者を中心とした全社横断の「環境事業部会」を設置し、3ヵ月に1回開催しており、環境関連の情報共有ならびに活動方針等の決議事項の検討など、組織全体のベクトルの一致に向けて活動しています。

また、ESG推進委員会の決定事項は環境事業部会を通じて、関連会社を含む全グループに展開し浸透させています。

ESG推進委員会を通じた経営層の監視の実効性確保のために、取組みの推進は、各業務の担当取締役や経営層との日常的な報告と指示を経て進めており、これによってタイムリーな監視・監督機能を確保しています。

②戦略

当社グループは目指すべき事業全般の脱炭素化への歩みを着実に進めるために、今後起こり得る様々な事態を想定し、戦略の妥当性や課題を把握すべく、事業活動及び資源の固有の状況や、物理的リスクについて想定される事業活動・期間・資産の耐用年数などを考慮したシナリオ分析を行っています。

また、移行リスクについて法制化、技術開発、市況に係る潜在的なシナリオに基づき評価し、事業活動に与える気候関連のリスク(物理的リスク及び移行リスク)と機会を抽出し、対応しています。

2025年2月には、ネットゼロ達成に向けた日本の新たな温室効果ガス削減目標として、「2035年度及び2040年度において温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%、73%削減」が設定され、これに基づき住宅産業関連で「2050年にストック平均でのZEH(Net Zero Energy House)・ZEB(Net Zero Energy Building)基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指し、これに至る2030年度以降に新築される住宅・建築物はZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」「家庭部門の非化石転換やディマンド・リスポンス(DR)も併せて進めていく観点から、家庭部門のエネルギー消費の約3割を占める給湯器の省エネルギーや非化石転換の加速、DRに必要な機能の具備の促進、開示を通じたエネルギー供給事業者の取組強化などの制度面での対応を進める」などの方向性も示されました。

そのため、全事業を対象としてあらためて大規模なシナリオ分析を実施し、戦略の見直しを行っています。

シナリオ分析により特定した、財務影響が大であると想定された主要なリスク・機会と対応を示します。

 

<シナリオ分析の前提>

参照したシナリオ

・IPCC(注1)SSP1-1.9(1.5℃以下を実現するため各国が野心的な気候政策を導入、2050年にCO2排出正味ゼロを実現する)

・IPCC SSP3-7.0(CO2排出が2050年でも減少に転じず、結果として高温、豪雨、暴風をはじめとする影響が大きい)

・IEA(注2)SDS(エネルギー政策や投資の展開によりパリ協定などの目標が達成される。多くの国や企業が2050年ネットゼロを実現する)

・IEA NZE2050(世界全体が2050年ネットゼロを実現する)

・NGFS(注3) Delayed Transition(新しい気候政策の導入が遅れ、また各国の行動のレベルが異なり、2030年までは減少に転じず、その後ネットゼロに向かう)

・日本政府及び審議会「2030年日本の温室効果ガス排出量2013年比46%削減、2050年までに実質排出ゼロ」、「2035年度、2040年度の日本の温室効果ガス排出量2013年度比60%、73%削減」、「2030年までに家庭部門の温室効果ガス排出量2013年比66%削減」、「2040年までに家庭部門の温室効果ガス排出量2013年比71~81%削減」、「2030年度以降に新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能を確保」、「2050年カーボンニュートラルに資する住宅をストック全体に普及」

上記の各国際機関等が発表しているシナリオ、日本政府及び関連する審議会の発表等を考慮しています。

なお、IPCC SSP1-1.9やIEA SDS、IEA NZE2050で示される、2030年までに地球全体のCO2排出量が約半減し2050年頃にはゼロとするシナリオの実現には、高額な炭素税の導入や脱炭素に向けた市場の移行といった政策導入などが必要と想定し、移行リスクの前提条件として活用しています。また、NGFS Delayed Transitionで示される、2030年までは現状の政策の延長として各国や企業が取り組むもののCO2排出削減は1.5℃シナリオに整合しない、さらにIPCC SSP3-7.0で示される中期2041~2060年に気温上昇の最良推定値が2.1℃であるなどを想定し、物理的リスクの前提条件として活用しています。

対象企業・事業

米国等の海外子会社を含む積水ハウスグループの既存全事業(バリューチェーンの上流・下流の全体を含む)

 

(注)1 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change):気候変動に関する政府間パネル

2 IEA(International Energy Agency):国際エネルギー機関

3 NGFS(Network for Greening the Financial System):気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク

なお、財務影響と想定期間については以下のとおり定義します。

財務影響 大:300億円以上、中:100億円以上、小:100億円未満

想定期間 短期:2024年から3年間、中期:2030年まで、長期:2050年まで

 

<主な移行リスク/物理的リスク>

リスク

影響

対応

財務

影響

想定

期間

移行リスク

カーボンプライシングの導入

カーボンプライシングは世界で広く採用されている。日本においても政府による排出量取引(GX-ETS)導入の検討がなされており、比較的早期に導入される可能性がある。導入された場合、直接及び間接的な事業コストの増加や競争力低下の可能性がある。

グループ全体やサプライヤー企業の事業活動における脱炭素に向けた取組みは中期では道半ばであり、仮に炭素税や排出量取引単価が1万円/t-CO2程度かかると、その影響は大きい。RE100の推進、事務所や生産設備などの省エネルギー化、サプライヤーに対するアンケート調査や勉強会の開催等を通じた建材製造段階のCO2排出削減など、既にバリューチェーン全体において様々な取組みを始めており、この影響をできるだけ早期に減らしていくことを検討している。

短期

住宅の価格上昇・市場の縮小

長期的には、ネットゼロに求められる規制強化に対応するための住宅価格の高騰、また省エネルギー性能や耐震性能に劣る住宅が減り、良質な住宅ストックの住み継ぎが増えることにより、新築市場自体が縮小する可能性がある。また、海外においても、特にファーストホームバイヤーを対象とした低価格帯の商品については、原価上昇の影響が甚大なものとなり得る。

短中期の規制強化に対する当社への影響は小さい見込みだが、長期のさらなる規制強化に対しては、コストを抑えた脱炭素住宅の開発に計画的に取り組む必要がある。また、あわせて新築市場縮小に備え、ストック型ビジネスを強化することを検討している。

長期

市場の変化による賃貸事業収益の低下

管理物件の内、脱炭素化性能が不十分な物件は競争力を失い、入居率・家賃の低下につながる。

管理物件のZEH住戸比率を高めるとともに、非ZEH住戸の脱炭素化リフォームを推進し、借り手に訴求力のある賃貸住宅の価値の維持・向上に努める。

長期

被災リスクの高い管理物件の賃貸事業収益の低下

気候変動に伴う災害(河川の氾濫による浸水、土砂災害等)の増加により、被災するリスクが高い区域に立地する管理物件において、入居率・家賃の低下につながる。

行政のハザードマップを確認し建設予定地の危険について把握するなど、課題として認識し、継続して検討している。

長期

物理的リスク

当社保有資産の気象災害による被害

全国規模での気象災害により、当社グループで保有する資産(工場、オフィスビルなどの事業拠点、生産設備や車両など)が罹災し、事業が継続できなくなる、また、補修や交換のための大きなコストが発生する可能性がある。

当社グループは日本国内では沖縄県を除く全国で事業展開しており、本社機能を含み一部エリアで災害が起こった場合は、被害のないエリアがサポートすることで事業を継続できる体制を既に構築済みである。このような事業継続性に関するBCP対応は、リスク管理委員会により適切に管理され、必要に応じて更新している。なお、日本国内の5工場について河川氾濫ハザードマップまたは内水氾濫シミュレーションにより浸水深を想定して被害額を算定したところ、浸水被害を受ける可能性のあるのは兵庫工場を除く4工場であり、最も大きい被害が想定される関東工場についてIPCC RCP8.5シナリオに基づくさらに詳細な分析を行った結果、既に加入済みの保険の補償範囲内であることを確認済みである。ただし、今後、さらに自然災害の激甚化が増加し、大規模災害が全国で同時に発生した場合を想定すると、当社事業も甚大な被害が想定されることから、災害へのレジリエンス性強化の検討は継続する。

中期

 

 

<主な機会>

機会

影響

対応

財務

影響

想定

期間

ZEH・ZEB受注の増加

日本政府が家庭部門の温室効果ガス排出量を2030年までに2013年度比で66%削減することを目標に掲げるなど、ZEH・ZEBの普及は重要施策として位置づけられている。また、消費者のエシカル志向や、事業者の脱炭素指向が進み、今後ますますZEH・ZEBの需要が高まると考えられる。さらに、海外でもZEH仕様の製品需要が高まることも想定される。

当社の戸建ZEH比率は90%を超えており、既に標準仕様の状況。現在は、賃貸住宅・分譲マンションでも積極的に推進を始めている。これまで培った日本一のZEH受注実績を活かし、グループ全体においてZEH・ZEB受注を拡大していく。また、海外においては太陽光発電パネル及び蓄電池設置義務化が進んだ場合、早期にZEHの標準化に対応している当社は、調達面等で優位性をもつほか、将来にわたり高いリセールバリューを維持できるなどの顧客メリットを訴求できる。

中期

賃貸管理物件のZEH化による賃貸事業収益の増加

日本政府は2030年以降に新築される全ての建物でZEH水準の省エネルギー性能を求める考えであり、いずれは賃貸住宅のZEH化が一般化する中、消費者のエシカル志向の高まりとともに、ZEH賃貸住戸のニーズが飛躍的に高まる可能性がある。

当社は2018年に日本で初めて全住戸ZEH基準を満たす賃貸住宅を竣工して以来、入居者様に訴求できるZEH住戸の普及に取り組んでいる。着実に受注実績を伸ばし、将来のエシカル消費者を中心とした賃貸ZEHの需要拡大に備えている。

中期

脱炭素リフォーム受注の増加

2030年までの政府目標「家庭部門の温室効果ガス排出量2013年比66%削減」の達成にはストックの省エネ改修も不可欠であり、様々なリフォーム支援の政策も実施され、脱炭素リフォームの受注が好調に推移している。

カスタマー対応、リフォーム提案などにより、断熱改修や燃料電池・蓄電池の受注は増加傾向にある。特に、居住エリア中心の部分的な断熱強化を行う「いどころ暖熱」は、工期やコストのお客様負担が少なく好評。これらのリフォームは災害レジリエンス性を高める点も訴求している。今後も現実的に普及可能なリフォーム提案を推進していくことを検討している。

中期

 

 

③リスク管理

当社グループでは、グループ全体のリスクマネジメントプロセスの一環として、気候変動関連リスク及び機会を判断するための評価をTCFDの提言に基づき実施しています。リスクと機会の抽出は、グループ全体を対象に各事業の主管部署を中心に行い、その結果を環境事業部会で集約し、財務影響評価を行っています。このプロセスに基づき特定した主要なリスクと機会については、取締役会の諮問機関であるESG推進委員会において検討した後に、取締役会に報告し、必要に応じてリスクの緩和・移動・受容・コントロールについて検討します。また、「事業運営リスク」や「ハザードリスク」に関係する事項についてはリスク管理委員会にも共有し、グループ全体のリスク管理体制の中で検討・管理しています。

 

 

④指標及び目標

当社グループでは、2008年に、2050年までに住まいからのCO2排出ゼロを目指す「2050年ビジョン」を宣言し、事業活動全体において、再生可能エネルギーの利用も含めてネットゼロを目指し、既に様々な取組みを開始しています。

この目標達成へのマイルストーンとして、2030年までにスコープ1(直接排出量:自社の工場・オフィス・車両などによる燃料消費)とスコープ2(間接排出量:購入した電力など自社で消費したエネルギー)において75%削減(2013年度比)、及びスコープ3カテゴリ11(販売した製品の使用)において55%削減(2013年度比)することを目指し、SBTi(注4)の1.5℃に整合する目標として設定しています。なお、現在は2023年度実績を基準年として同等の削減目標を設定、さらに同時に2050年までにバリューチェーン全体のネットゼロ目標も設定の上、SBTiによる認証をそれぞれ取得しています。スコープ1、2については、2022年度で2030年を目標としていた50%削減を既に達成したため、より野心的な目標に上方修正したものです。

(注)4 SBTi(Science Based Targets initiative):2015年にWWF、CDP、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトにより設立された共同イニシアティブ

GHG排出量に関する実績(スコープ1、2)(t-CO2e)

分類

実績

集計対象

2023年度

2024年度

2023年度

2024年度

スコープ1

50,371

42,919

積水ハウス㈱、国内外の主要な連結子会社(43社)

積水ハウス㈱、国内外の主要な連結子会社(40社)

スコープ2

22,502

19,895

同上

同上

合計

72,873

62,814

同上

同上

 

GHG排出量に関する実績(スコープ3カテゴリ11)(t-CO2e)(注5)

分類

実績

集計対象

2023年度

2024年度

2023年度

2024年度

スコープ3

カテゴリ11

8,300,245

8,162,118

積水ハウス㈱、㈱鴻池組、積水ハウス ノイエ㈱、積水ハウス建設グループ各社、積水ハウス不動産グループ各社、SEKISUI HOUSE US HOLDINGS,LLC 傘下の住宅販売子会社、SEKISUI HOUSE AUSTRALIA HOLDINGS PTY LIMITED

同左

 

(注)5 販売した製品の使用に伴う(供給した住宅及び非住宅建築物の使用段階における)排出量。年間に供給した全ての住宅及び非住宅建築物の使用時のエネルギー消費に基づくCO2排出量を算出。供用年数は60年を想定。住宅(国内)については、ZEH(*1) 計算等で使用する「建築物エネルギー消費性能の向上に関する法律」に準拠したエネルギー消費性能計算プログラムを用い算出された一次エネルギー消費量をCO2排出量に換算し算出。CO2排出係数は「地球温暖化対策の推進に関する法律」の値を採用(*2)。非住宅建築物(国内)については、床面積に用途別の床面積当たりのエネルギー消費量を乗じる方法または前述のプログラムを用いて住宅と同様の方法で算出した一次エネルギー消費量をCO2排出量に換算し算出。用途別の床面積当たりのエネルギー消費量及びエネルギー種別一次エネルギー構成比率は「CASBEE-建築(新築)2021年SDGs対応版」(一般財団法人 住宅・建築 SDGs推進センター)の値を採用。住宅(米国)については、エネルギー省(DOE)(*3)が公開する住宅のエネルギー消費量シミュレーション結果をCO2排出量に換算し算出。CO2排出係数は環境保護庁(EPA)(*4)が公開する値を採用。住宅(豪州)についてはエネルギー規制当局(AER)(*5)が公開する、住宅のエネルギー消費に関するデータをCO2 排出量に換算し算出。CO2排出係数は、気候変動・エネルギー・環境・水資源省(DCCEEW)(*6)の公開する値を採用。

*1 外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギー等を導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅。

 

*2 電力排出係数については「電気事業者別排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用)R5年度実績」(R7.3.18 環境省・経済産業省公表)の全国平均係数を使用。都市ガスの排出係数については「ガス事業者別排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用) R5年度供給実績」(R6.6.28 環境省・経済産業省公表)の代替値(省令の排出係数)を使用。

*3 United States Department of Energy:アメリカ合衆国エネルギー省

*4 Environmental Protection Agency:米国環境保護庁

*5 Australian Energy Regulator:オーストラリアエネルギー規制当局

*6 Department of Climate Change, Energy, the Environment and Water:気候変動・エネルギー・環境・水資源省

※ 当社グループでは、2024年7月に発行したValue Report 2024において、詳細なTCFD提言に沿った情報開示を行っています。当社WEBサイトをご参照ください。

Value Report

https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/library/annual/

ESG Fact Book 2025を2025年6月に発行する予定であり、本誌でより詳細なTCFD提言に沿った情報開示を行います。また、上記表のスコープ1、2及び3カテゴリ11 のGHG排出量については有価証券報告書作成時点での暫定値であり、確定値、並びに算定基準、スコープ3の他のカテゴリにかかるGHG排出量等は、2025年5月末に発行予定のESG Data Book 2025(確定版)で開示します。

 

(3) 自然資本・生物多様性に対する取組み(TNFD提言に沿った情報開示)

①ガバナンス

当社グループでは、ESG推進委員会において、自然関連の対応を気候変動同様に本委員会の重要議題の一つとして位置づけており、活動方針の妥当性や進捗状況の評価を行うとともに、重要事案については取締役会に報告しています。

また、積水ハウスグループ人権方針では、国際人権章典、労働における基本的原則及び権利に関するILO(国際労働機関)宣言、ビジネスと人権に関する指導原則など国際規範を尊重し、国連グローバル・コンパクトの10原則を支持しています。さらに、CSR調達ガイドライン、木材調達ガイドラインにおいて、人権侵害の防止に対する方針や基準を定めています。それらの方針や基準の遵守により、当社による事業活動や調達において、人権侵害が発生しないよう配慮しています。特に、木材調達ガイドラインでは、調達地の先住民を含むステークホルダーのFPIC(注1)を尊重することを規定するとともに、サプライチェーン上でのあらゆる紛争を認めない木材の調達方針なども定めて実行しています。

(注)1 FPIC(Free, Prior and Informed Consent):自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意

②戦略

当社グループは、気候変動同様、自然資本や生物多様性保全においても、人と自然の共生社会への歩みを着実に進めるために、今後起こり得るさまざまな事態を想定し、戦略の妥当性や課題の把握に努めています。

当社では、自然関連リスク・機会及び影響・依存評価を、TNFDのLEAPアプローチ(注2)に基づき実施しています(図1)。まず、当社の主要事業である住宅事業における自然関連の影響・依存の分析と診断を行い(1-1)、当社の取組みを整理したうえで、シナリオ分析によりリスクと機会への対応の優先度を検討しました(3-1)。次に、住宅事業に関する4つの工程(原料調達、製造加工、建設、解体)の中で自然への影響度及び依存度の高い原料調達工程における木材調達について、株式会社シンク・ネイチャーの協力のもと、同社の持つ生物多様性ビッグデータを用いて、高度化した分析を行い、当社にとってより重要な自然との接点の特定と影響と依存の把握を行ったうえで(1-2,2-1,2-2)、リスクの定性的な財務影響評価を行いました(3-2)。さらに、2024年度は影響・依存の分析と診断を全事業の直接操業に拡大し(1-3)、全事業におけるリスク・機会の特定と定量的な財務影響評価を行いました(3-3,3-4)。1-3,3-3,3-4については、2025年6月に発行予定のESG Fact Book 2025(注3)で開示します。

(注)2 LEAPアプローチ:組織の自然との接点、依存、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題を判定するための統合的な評価手法。スコーピングを経て、Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、 Assess(評価する)、Prepare(準備する)のステップをとおして影響を評価し、開示を行う。


図1 TNFD LEAPアプローチ実施状況

 

1-1 住宅事業における自然への影響・依存の分析と診断(Locate・Evaluate)

住宅事業(戸建住宅・賃貸住宅)について、調達データをもとにENCORE等を使用して潜在的な影響と依存の分析を実施した結果、原料調達工程において、多くの生態系サービスに依存している可能性があること、また、木材の伐採や鉱物資源の採掘における陸域・淡水域・海域の土地改変や、大気・水域・土壌・廃棄物の汚染などの影響を及ぼしている可能性があることを確認しました。詳細はValue Report 2024(注3)をご参照ください。

 

1-2 木材調達における生物多様性の観点でセンシティブな場所の発見(Locate)

当社の2022 年度における木材調達量の約90%を占める上位11か国を対象に、天然林については「生物多様性の重要性」「生物多様性の完全性」を、人工林については「生物多様性の重要性」を評価しました。これにより、天然林についてはインドネシア・マレーシア、人工林についてはインドネシア・マレーシア・日本・ベトナムが11か国の中でも特に保全優先度が高いエリアであり、優先的に影響の把握が必要であることが分かりました。詳細はValue Report 2024(注3)をご参照ください。

1-3 全事業における自然への影響・依存の分析と診断(Locate・Evaluate)

当社グループの全事業範囲の直接操業における自然への影響と依存をポートフォリオ分類別に、ENCOREを用いて評価しました。その結果、直接操業では多くの事業が水循環や土壌に関する生態系サービスに関連していることが分かりました。

2-1,2-2 木材調達における自然への影響・依存診断(Evaluate)

ENCOREにて林業に関連すると評価されている「陸域生態系利用」、「地盤安定化と浸食抑制機能」、「害虫抑制機能」について調達量上位11か国について分析を行いました。詳細はValue Report 2024(注3)をご参照ください。

3-1,3-2 住宅事業におけるリスク・機会の特定と評価、リスクの定性的な財務影響評価

3-1,3-2で行った内容については、2024年度にスコープを拡大した3-3,3-4に含めているため、記載を割愛しています。

3-3 全事業におけるリスク・機会の特定と評価(Assess)

1-3で当社グループの直接操業において自然への影響・依存の度合いが大きかった項目に関連する可能性のあるリスク・機会事項と、1-1で住宅事業において自然への影響・依存の度合いが大きいとされた原料調達工程に関連する可能性のあるリスク・機会事項の一覧を整理しました。その後、その一覧の中から特に当社グループにとって特に重要度の高いものを洗い出し、具体的なリスク・機会を特定しました。この主要なリスク・機会を導き出すプロセスとして、当社グループ内の各事業範囲に関連する23部署から52名が参加する横断的なワーキンググループを設け、計16回のワークショップを開催し、自然関連の将来的なリスク・機会とそのレジリエンスについて議論できる場を構築しました。

ワークショップを開催するにあたり、TNFDが推奨する2つの不確実性から構成される4象限のシナリオ(図2)のうち、シナリオ①を「持続可能なシステムが回る世界」、シナリオ③を「破滅へ進む世界」として、生物多様性の状態と気温上昇という自然の状態に関する観点(横軸)と、技術・社会・規制/政治という世界動向に関する観点(縦軸)で、短期を2024年から3年間、中期を2030年まで、長期を2050年までと設定して探索的にシナリオを構築しました。ワークショップでは、それぞれのシナリオにおける当社の直面しうるリスク・機会を議論しました。


図2 TNFDが推奨する2つの不確実性から構成される4象限のシナリオ

 

シナリオ構築にあたり、WWF のLiving Planet Report 2022 とIPCCのSixth Assessment Report(2021)等を参考に2040年時点の自然の状態を固定条件として設定をしました。まず、シナリオ①では横軸の自然状態について、生態系は徐々に回復傾向にあり、気候変動でも1.5℃シナリオが達成されることで環境が改善に向かう世界を想定しました。縦軸である市場と非市場原理は一致する方向、すなわち社会や法規制、経済が、自然にとってポジティブな方向へ移行する世界を想定しています。一方で、シナリオ③では生態系は劣化し、気候変動による気温上昇が進む世界を想定しており、縦軸においても市場と非市場原理は不一致の方向、すなわち社会や法規制、経済が自然にとってネガティブな方向もしくは現状と変わらないという世界を想定しています。

3-4 リスク・機会の財務影響評価(Assess)

全社的なワークショップを通してシナリオ分析により特定した、主要なリスク・機会とその潜在的な財務影響を算定しました。財務影響評価が大となったリスク・機会のうち主なものを以下に示します。今後は、社内での議論をさらに深め、それぞれのリスク・機会が関連する自然へのインパクト・依存への詳細情報の把握や優先地域の精緻化とそのアプローチを検討したうえで、対応がさらに必要な事項について行動方針を検討していくとともに、財務影響についてもより精査していきます。

なお、財務影響と想定期間については以下のとおり定義します。

財務影響 大:300億円以上、中:100億円以上、小:100億円未満

想定期間 短期:2024年から3年間、中期:2030年まで、長期:2050年まで

<主な移行リスク/物理的リスク>

リスクの

分類

要因となる

影響/依存

の種類

説明

財務影響

シナリオ

想定期間

短期

中期

長期

移行

評判

影響

漏出や廃棄物の蓄積による汚染された土壌及び水

生態系保全への関心が高まり、環境関連の不誠実な対応が不信感となり、レピュテーションリスクにより、プロジェクト中止や売上縮小、株価下落が起こる。

 

 

物理的

 

急性

依存

洪水/暴風雨/地滑り

土壌浸食からの防護

開発行為により自然が劣化した結果、地滑り・嵐の被害・洪水が発生し、開発行為が災害と関連づけられ、賠償責任が発生する。

 

 

慢性

依存

建築物の原材料調達

生態系の衰退に伴い、絶滅危惧種の生息地に関連する原材料や環境負荷の大きなサプライチェーン製品の調達が困難となり、あらゆる原材料の価格が高騰することで、複合的に住宅の供給能力に影響を及ぼす。

 

 

慢性

依存

建築物の原材料調達

森林火災の発生により、木材の安定調達へ影響を及ぼし、材料の調達価格が高騰する。

 

 

 

 

<主な機会>

リスクの分類

要因となる影響/依存の種類

説明

財務影響

シナリオ

想定期間

短期

中期

長期

サステナビリティパフォーマンス

資源利用

影響

General

建築物の再利用等の取組みを通じて、サーキュラーエコノミー戦略を実施する先進企業としての認知が高まり、顧客や市場からの評価が高まる。

 

 

ビジネス/サステナビリティパフォーマンス

製品/サービス

影響

土地の開墾

生息地の分断・劣化

「5本の樹」計画におけるノウハウ・技術を生かし、住環境における緑化を推進するとともに、都市における緑地の価値を向上させることで新たな事業の展開につなげる。

 

 

ビジネスパフォーマンス

市場/

評判

影響

建設資材の生産

バージン材を廃棄物やロスを利用した代替製品に変えることで、環境に配慮した企業としての評価が高まり、取引先にも環境への意識が広がる。これにより、新しいビジネスの開拓や売上の増加につながる。

 

 

③リスクとインパクト管理

当社グループでは、グループ全体のリスクマネジメントプロセスの一環として自然関連リスク・機会及びインパクト・依存評価を、TNFDのLEAPアプローチに基づき実施しています。まず、整理したバリューチェーン全体において、潜在的な自然関連のインパクトと依存が存在する活動を洗い出しました。木材については、詳細な調達情報をもとに生態学的にセンシティブな場所との地理的な接点の発見を行ったうえで、インパクトと依存を特定し、それらを定量的・定性的に分析して重大性を評価しています。

リスクと機会の抽出は、シナリオ分析を用いながらグループ全体を対象に各事業の主管部署を中心に行い、その結果は環境事業部会で集約し、財務影響評価を行っています。このプロセスに基づき特定した主要なリスクと機会については、取締役会の諮問機関であるESG推進委員会において検討した後に、取締役会に共有し、必要に応じてリスクの緩和や対応について検討します。また、「事業運営リスク」や「ハザードリスク」に関係する事項についてはリスク管理委員会にも共有し、グループ全体のリスク管理体制の中で検討・管理しています。

さらに、当社の事業活動に関係するサプライヤーをはじめとする主要なステークホルダーとのエンゲージメントも引き続き取組みを強化していきます。

④指標及び目標

当社グループでは、自然に関連する重要な影響・依存やリスク・機会の適切な評価と管理を目的として、TNFD 提言内容に沿って適切な「アセスメント指標」を選定し、「開示指標」のコア指標を中心に実績値を開示します。2024年度の実績値については、2025年6月に発行予定のESG Fact Book 2025(注3)をご参照ください。

今後は今回開示できていないコア指標と、アセスメント指標のうち重要なものを「開示指標」の追加指標として実績値の算出を進めていきます。今後は、アセスメント指標の中から、洗い出したリスク・機会に関連する指標を中心に目標設定を行い、モニタリングすることを検討しています。さらに、指標以外の目標設定として、木材調達方針に掲げた2030年の天然林における森林減少ゼロ(ゼロ・デフォレステーション)達成のため、ゼロ・デフォレステーション比率を2023年度よりKPIとして設定し、進捗を管理しています。目標達成のため、サプライヤーエンゲージメントの強化や詳細な現地デュー・ディリジェンス、仕様変更による原材料の切り替えなど、さまざまな取組みを推進しています。

 

 

カテゴリー

Metric No.

TNFD指標概要

当社が設定する指標

気候変動

 

GHG排出量

GHG排出量に関する実績(スコープ1、2)(t-CO2e)

陸域/陸水域/海域利用の変化

C1.0

総空間フットプリント

製造拠点の総面積

自然共生サイト面積

C1.1

利用目的で改変された陸/淡水/海の面積

一定期間における、施工面積

汚染/汚染除去

 

C2.0

土壌に放出された汚染物質の種類別内訳

直接操業における環境(土壌を含む)への有害廃棄物排出量

C2.1

排出された廃水

グループ全体での排水量と、排水中の汚染物質濃度

C2.2

発生する廃棄物と処分される廃棄物

製造加工・施工・解体・オフィスにおける廃棄物発生量

製造加工・施工・解体・オフィスにおけるリサイクル実施量と実施率

新築施工におけるリサイクル実施率

C2.3

プラスチック汚染

新築施工におけるプラスチックのマテリアルリサイクル実施率

C2.4

GHG以外の大気汚染物質

製造加工におけるGHG以外の大気汚染物質排出量

資源の使用/補充

C3.0

水危機の地域からの取水と水消費

製造加工における水ストレス地域からの取水量と消費量

C3.1

陸/淡水/海から調達するリスクの高い天然資源の量

絶滅危惧種に指定されている樹種などリスクのある木材以外からの調達量(持続可能な木材調達量)

侵略的外来種とその他

C4.0

プレースホルダー指標:意図的でない侵略的外来種(IAS)の持ち込みに対する対策

「5本の樹」計画実施によるIAS植栽リスク

自然の状態

C5.0

プレースホルダー指標:生態系の状態

木材生産における影響・依存が大きい地域

「5本の樹」計画実施による三大都市圏の多様性統合指数の増加量

 

 

(注)3 当社グループでは、2024年7月に発行したValue Report 2024において、詳細なTNFD提言に沿った情報開示を行っています。当社WEBサイトをご参照ください。

Value Report

https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/library/annual/

また、ESG Fact Book 2025を2025年6月に発行する予定であり、本誌でより詳細なTNFD提言に沿った情報開示を行います。

 

(4) 人的資本に関する取組み

①ガバナンス

人的資本の施策に関する重要事項については、内容に応じて取締役会の諮問機関である「人事・報酬諮問委員会」、「ESG推進委員会」または「リスク管理委員会」での討議を経て、経営会議または取締役会で付議・報告され全社施策として実行・運営されます。人財戦略の推進にあたっては、人事総務部、人財開発部、ダイバーシティ推進部などといった当社関係部署が、施策の実施及びKPI進捗管理を行っており、ESG推進委員会の傘下にある社会性向上部会にて意見交換の上、部署間の連携を図っています。また、当社はグループ各社の課題及びKPIの進捗について、前述の関係部署が報告を受ける体制を構築しており、グループ全体を包括的に管理しています。

 

②戦略

人財開発基本方針・社内環境整備方針展開にあたっての基本的考え方 

従業員が自律するためには、従業員が当社グループという資源を利用しながら、一人ひとりが主体的に行動し、継続的にキャリア開発に取り組むことが重要です。自律的なキャリア形成を促すため、従業員と企業がともに持続可能な成長を実践できる環境や仕組みづくりを進めます。あわせて、年齢、性別、国籍、障がいの有無などを問わず、誰もが自分らしく働き、その能力を最大限に発揮できる環境や制度づくりを推進するとともに、多様な働き方ができる柔軟性の高い勤務制度の導入・運用を積極的に進めています。また、インテグリティが高いリーダーを計画的に育成するとともに、事業戦略に必要な人員確保や適正配置に努めます。

 

人財開発基本方針

グローバルビジョン“「わが家」を世界一幸せな場所にする”の実現に向け「人財価値を最大化し、知と経験のD&Iで事業成長を牽引する」を方針とし、人財開発に関する取組みを推進していきます。

 

社内環境整備方針

グローバルビジョン実現に向け、その原動力である従業員が集う積水ハウスが世界一幸せな会社であることが重要と考えます。「誰もが働くことに、やりがいや幸せを感じられる会社」を目指し、従業員のキャリア自律支援、D&Iの推進、多様な働き方の推進、幸せの基盤づくりなど、重点テーマの推進を支える環境整備を行います。

 

第6次中期経営計画(2023年度~2025年度) 人財戦略

人財価値の向上は、企業の成長のドライバーです。

当社はその価値を「人財価値向上=従業員の自律(注1) × ベクトルの一致(注2)」と表現し、以下の図のとおり、人財戦略の重点テーマを整理しています。

1.キャリア自律支援、2.D&Iの推進、3.多様な働き方の推進、4.幸せの基盤づくり、これら4つのテーマに基づく、制度改革や組織風土づくり、取組み推進などを戦略的に遂行しながら従業員の自律を支援・促進していきます。さらに、これらによって創出された自律した従業員が積水ハウスグループの目指す方向性に共感し、自ら行動するために、企業理念と戦略を浸透させるリーダー育成、戦略に応じた人員確保と適正配置を実施していきます。

「人財価値向上=従業員の自律 × ベクトルの一致」については、乗算であることが重要であり、「従業員の自律」及び「ベクトルの一致」のいずれも高い水準を目指すことで人財価値がますます向上し、社会への価値提供が大きくなります。当社が成し遂げたいことは、社会への提供価値の最大化であり、これを支える人財への投資を着実に行っていきます。

(注)1 従業員の自律:従業員一人ひとりが考え、主体的に行動すること。

2 ベクトルの一致:会社のビジョンや戦略が従業員に浸透し、理解されている状態であること。

 

 


 

[従業員の自律に関する取組み]

1.キャリア自律支援

「イノベーション&コミュニケーション」を合言葉に、従業員間でアイデアを出し合い、活発なコミュニケーションを通じて新たなイノベーションを生み出すという創発型企業文化の醸成や、従業員が主体性を発揮する機会をつくることを通じて、一人ひとりのキャリア自律を支援しています。2003年に開始したキャリア自律意識を醸成する各種研修については累計21,110名が受講(2024年度末実績)し、仕事だけではない人生全体を見据えたキャリア形成への意欲を高めています。また、マネージャー職の責任範囲、職務内容、必要な知識・スキルを定めた職務記述書の従業員への公開の他、業務上必要な主要資格の取得支援も行っています。

・ 直近の取組み例

- 2021年:創発型表彰制度「SHIP」のスタート

- 2022年:人財公募制度のリニューアル

- 2023年:MBA等の自律的学習を支援する高度学習支援制度、キャリア自律休業支援制度のスタート、

キャリア自律コースの拡充

- 2024年:オンライン学習サービスのトライアル、職責者向けのキャリアコーチ資格プログラム、

英語学習プログラム、Myキャリアシートによるスキルと経験の可視化のスタート

2.D&Iの推進(注3)

i)女性活躍支援

当社グループの使命は「幸せづくりのパートナー」として、お客様や社会に新たな価値を提供し続けることであり、多様な価値観や感性・視点が求められる住まいづくりにおいて、あらゆる分野での女性の活躍は不可欠であると考えます。このことから、女性活躍支援を経営課題として認識し、2006年に経営企画部に女性活躍推進グループ(現在のダイバーシティ推進部)を設置し、以下の採用、定着、育成における活躍支援施策を継続して実施しています。

定着へ向けた取組みとして、職種毎の課題に即した施策を展開しており、女性営業職には2007年から「全国女性営業交流会」を実施し、女性営業同士のネットワークを構築しています。3年目以下の離職率の高さが課題であったため、現場での育成はもちろん、3年目以下の女性営業全員とダイバーシティ推進部が面談を実施し、課題の早期発見や改善に努めるなど一人ひとりに寄り添ったサポートを展開しています。女性現場監督職には2014年から「全国女性現場監督交流会」を毎年開催、2015年からは「女性現場監督サポートプログラム」も実施し、職域の拡大を推進、在籍率30%を超える女性設計職においては専門性の強化と、育児との両立に関するロールモデルを全国へ水平展開し多様なキャリア形成の支援を実施しています。2025年2月より事業所表彰におけるESG指標の一つとして「女性活躍推進指標」を新設し、さらなる女性活躍の推進を図ります。

 

当社グループでは女性活躍推進法に基づく行動計画(2021年に策定)にて、2025年度までに女性管理職を310人以上(注4)登用することを目標とし、女性管理職候補人財の育成にも注力してきました。2014年から、管理職候補者研修「積水ハウス ウィメンズ カレッジ」を開講。毎年、手挙げかつ上司推薦を経て決定した20人の受講者に、約2年間OJT及び組織課題解決の実践プログラムを提供し、納得性のある育成・登用へとつなげています。開講当初から、代表取締役が自ら受講生との直接対話の機会を持ち、2018年からは、社外女性取締役も参加して受講生に直接エールを送り、女性管理職育成の大きな後押しとなっています。女性従業員の採用、定着、育成を進めてきた結果、当社及び国内連結子会社の新卒の女性採用率は、2024年度実績では営業職23.6%、技術職27.4%となっています。また、当社及び主要国内子会社(鴻池組を除く、注5)の女性正社員比率は29.8%となり、建設業界平均(注6)の約2倍の比率の女性正社員が活躍しています。「積水ハウス ウィメンズ カレッジ」修了生170人のうち、122人が管理職となり、当社及び国内連結子会社の女性管理職数は415人まで増加しています(2025年1月31日現在)。

現在実行している女性活躍推進諸施策の継続の結果、女性正社員、女性管理職候補数が増加しつつあり、今後も様々な取組みを強力に推進し、従業員の男女賃金格差の縮小にも努めてまいります。

(注)3 2023年3月策定の第6次中期経営計画における人財戦略において、「DE&I」の推進と表記していましたが、「Equity」という概念の捉え方に国際的な違いが見られることを鑑み、かつ当社グループのマテリアリティである「ダイバーシティ&インクルージョン」との整合を図り、「D&I」と表記しています。

4 310人以上は計画策定時の目標。提出日現在の目標は380人以上。

5 集計対象会社は当社、積水ハウス不動産グループ各社、積水ハウス建設グループ各社、

積水ハウス ノイエ㈱、積水ハウスリフォーム㈱。

6 出典:「令和5年度雇用均等基本調査 付属統計表 企業調査 第1表 男女及び職種別正社員・正職員割合」(厚生労働省)


※女性正社員比率の集計範囲は(注5)

ii) グローバル人財の活躍推進

国籍を問わない人財採用と能力適性を考慮した登用を進めています。海外子会社においては、人員体制強化の観点から、現地採用を積極的に行い、優秀な現地採用者の重要ポストへの登用を進めています。

iii) 障がい者の活躍支援

2025年1月末時点での障がい者雇用率は、当社で3.08%、国内連結会社のうち障がい者法定雇用義務のある27社(当社を含む)で3.07%です。現法定雇用率2.50%を上回る状況ですが、今後も当社は各本部単位で、グループは各社で法定雇用数の達成を目標に、積極的に雇用を促進します。活躍支援に向けた取組みとして、障がいのある従業員とその上司・同僚を対象に所属部署を超えたネットワークの構築、相互に発信・相談できる関係づくり、職場環境改善を図ることを目的として、2015年から毎年「ダイバーシティ交流会」を実施しており、2024年は東京・大阪の2拠点で開催しました。また配慮を必要とされるお客様への取組みとして、お客様への対応と各施設(住宅展示場・ショールーム・事務所等)の設計に関する指針を作成し、各種研修や全国の住宅展示場・ショールームでの実習を通して、当該指針浸透と障がいに対する理解促進を図りました。ウェブサイトやテレビCMにおいても、「ウェブアクセシビリティ方針」を策定・公開し、アクセシビリティ向上に取組むとともに、テレビCMの字幕対応(クローズドキャプション方式)を開始しました。

iv)LGBTQの理解促進

社内のLGBTQ理解促進を図るため、2014年から毎年、ヒューマンリレーション研修にLGBTQのテーマを設け、学習やディスカッションを継続しています。セミナーやイベントも定期的に開催し、理解者・支援者である社内のアライが増えています。またアライ主導で、社会の理解促進を促す発信も継続し、PRIDE指標において、7年連続でゴールドの認定を受けました。また、「レインボー認定」も3年連続受賞しています。誰もが自分らしく安心して暮らせる社会の実現を目指しています。

3.多様な働き方の推進

従業員一人ひとりが働く場所や時間にとらわれず、柔軟かつ自律的に働きながら自分の個性や能力を最大限に活かすため、多様な働き方を推進しています。多様な働き方を推進するためには、まず、信頼関係に基づく安心安全な風土が職場に必要であり、全ての従業員が役職や雇用形態にかかわらず、少人数のグループで対話する機会を設け、心理的安全性の高い職場風土醸成に取り組んでいます。さらに、2024年から総務責任者及びマネージャー職を対象にラインケア研修を開始し、これらの取組みについては、当社が行う幸せ度調査の「職場の幸せ力」のスコアによりモニタリングをしています。

また、従業員が育児や介護、治療などによるキャリアロスなく安心して働けるよう、働く場所にとらわれないテレワーク制度や働く時間帯にとらわれないスライド勤務制度(時差通勤制度)などに代表される、両立を支援する制度の整備や情報提供を行っています。

4.幸せの基盤づくり

i)家族の幸せ支援

従業員と家族の幸せのため、2018年より「男性従業員1ヵ月以上の育児休業完全取得」(注7)を推進しています。社内全体の意識改革、制度整備、家族や職場とのコミュニケーションツールの開発などを行った結果、2019年2月の本格運用開始以降、期限を迎えた対象者全員(2025年1月末3,187人)が1ヵ月以上の育休取得を完了(2021年4月以降はグループ会社も全員取得)し、育休取得者の配偶者満足度は99.0%と高く、家族の幸せづくりに貢献しています。社外に向けても「日本でも男性の育児休業取得が当たり前になる社会」を目指し、2019年より積極的に情報発信を行っています。2024年には154の賛同企業・団体様と共に発信し、男性育休取得促進の気運醸成に寄与しました。

(注)7 3歳未満の子を持つ男性従業員が、1ヵ月以上の育児休業を取得すること。

ii)健康づくり支援

当社グループでは、従業員の幸せの源泉は健康の維持・増進であると考え、健康の維持・増進に向けた活動を重要な経営課題と位置づけ戦略的に取り組むため「幸せ健康経営」と名付けて推進しています。取締役会傘下のESG推進委員会で承認された年度目標や計画に基づき、関係部署横断で構成されたワーキンググループにて、健康保険組合や産業医などと連携して、課題の抽出、全社方針の策定、具体施策の立案をおこない、各事業所と連携しながら全従業員への周知・浸透を図っています。

AIによる健康診断結果活用サービスや従業員の課題別セミナー実施など「幸せ健康経営」に取り組んだ結果、健康経営優良法人(ホワイト500)に5年連続(2020年~2024年)認定されています。

iii)幸せ度調査の継続

従業員一人ひとりの幸せの実現のために、2020年11月から、全従業員を対象とした「幸せ度調査」を実施し2024年11月で5回目を完了しました。幸福経営学の第一人者である武蔵野大学ウェルビーイング学部長・慶應義塾大学名誉教授の前野 隆司氏の監修により、日本企業で初めて従業員と職場の幸せを多面的に計測、相関性を分析し、幸せを「見える化」しました。この調査結果を振り返り、職場での幸せ対話などの具体策につなげています。

 

[ベクトルの一致に関する取組み]

・企業理念と戦略を浸透するリーダーの育成

当社グループとしてお客様と社会に幸せを届けるためには、自律した従業員に企業理念と事業戦略を浸透させ、組織力を生み出すリーダーの存在が不可欠であり、そのようなリーダーを計画的に育成することが企業の持続可能な成長には必要です。

組織成果創出力・人財育成力・組織活性化力などの強化のためのマネジメント対象の階層別研修を実施しています。また、支店長・本社部長・工場長などの組織リーダー候補の選抜と育成を目的に2018年から実施している経営塾、2019年にスタートした若手(35歳以下)リーダー候補者を育成する「SHINE! Challenge Program」によって、次世代のビジネスリーダーを計画的に生み出す土壌づくりを継続的に実施しています。2021年からは執行役員、業務役員及びキーポジションの後継者候補を挙げ、全社的かつ多様な視点で透明度の高い議論を行うサクセッションプラン会議を開始しました。候補者全員の個別育成計画を立案し、定期的な進捗確認により、リーダーパイプラインのさらなる充実に努め、後継者候補準備率(注8)をモニタリングしています。また、グループリーダー以上の全マネージャー職を対象に多面観察を実施しています。フィードバックされた結果を基に、マネジメント行動の変革に向けたアクションプランを作成し、定期的なコーチングによる内省を通じてマネジメント力の向上に取り組んでいます。


(注)8 後継者候補準備率:(後継者プールにいる人数÷リーダーのポジション数)×100

・戦略に応じた人員の確保と適正配置

既存事業の深化と新規事業への挑戦を担う人員確保に努めるとともに、各ビジネスユニットの事業戦略に基づく人財ニーズを把握し、適正配置を実現すべく、持続的成長に必要な人財の採用・育成を計画的に進めています。なかでも、多様性と専門性を強化する方針の下、採用全体に占めるキャリア採用に力を入れ、着実にその数を増やしています。特に、海外事業の拡大という大きな変化については、コーポレート部門を中心に人財獲得を強化し、グローバル要員として直近1年間で37名採用しています。グローバル化に向けて必要な人員規模やスキルを今後さらに精査していく予定です。

また、新たな取組みとして2024年から「Welcome Home制度(アルムナイ制度、注9)」をスタートしています。これまでのリファラル採用(注10)なども含めて多様な手法やチャネルを活用し、採用力の強化を図っています。

2024年度はキャリア採用者を679名採用し、採用者全体に占めるキャリア採用者の割合は40.9%です(注11)。入社直後からの活躍を支援するオンボーディングプログラム(注12)を拡充し早期の活躍を支援しています。

(注)9 一度退職した従業員を再度、採用する制度。

 10 自社で働いている従業員からの紹介、推薦による採用制度。

11 集計対象会社は当社、国内連結子会社。

12 新しく組織に加わった従業員が会社の文化や業務内容に馴染み、早期に活躍できるように支援する仕組み。

 

③リスク管理

人的資本に関するリスクと機会については、人財開発部や人事総務部、ダイバーシティ推進部といった当社関係部署においてリスクと機会の分析、対応策などを検討しており、ESG推進委員会の傘下にある社会性向上部会にて意見交換の上、部署間の連携を図っています。このプロセスに基づき特定した主要なリスクと機会については、取締役会の諮問機関であるESG推進委員会において検討した後に、取締役会に報告し、中長期の戦略立案に繋げています。また、当社はグループ各社が作成したリスクマップをモニタリングし、人員確保に関する事項などの重要事項についてはリスク管理委員会にも報告の上、グループ全体のリスク管理体制の中で検討・管理しています。

当社グループの持続的成長を実現するためには、既存事業の深化と新規事業への挑戦を担う優秀な人財を国内外で獲得し、雇用を維持していく必要があります。採用競争力が低下した場合や、離職による人財流出が深刻化した場合には、成長力が鈍化し、社会的評価が低下する可能性があります。事業戦略に必要な人財を要員計画策定により明確にし、採用ブランディングの強化、採用活動における募集経路・選考手法の多様化を積極的に進め、年齢、性別、国籍、障がいの有無などによらない人財採用を行っています。

 

④指標及び目標

人財価値向上を加速させるため、各重点テーマに対し以下の目標を設定して取り組んでいます。

人財価値向上を加速する

取組み(狙い)

指標

2024年度

目標

2024年度

実績

2025年度

目標

<キャリア自律支援>

 

キャリア自律意識の醸成と浸透

キャリア自律研修累積
受講者数(注1)

20,505人

21,110

22,030

SHIP(創発型表彰制度)の実施

SHIP参加率(注2)

33%

30.7

36

SHIP応募件数(注2)

2,700件

2,537

3,000

業務上必要な主要資格取得の推進

主要資格取得者数
(注1、3)

24,600人

25,068

25,100

<D&Iの推進>

 

女性活躍支援諸施策の推進

女性取締役数(注1)

3人以上

3

3人以上

女性管理職人数
(注2)

350人

415

380

女性正社員比率(注4)

29.5%

29.8

29.8

女性新卒採用比率(注5)

40%

35.9

40

障がい者活躍支援策の推進

障がい者雇用率(当社)(注1、12)

2.97%

3.08

2.72

障がい者雇用率
(国内連結会社)

(注6、12)

2.86%

3.07

2.66

<多様な働き方の推進>

心理的安全性の高い職場づくりの推進とモニタリング

幸せ度調査
「職場の幸せ力」
(注7、8)

67.44

ポイント

<幸せの基盤づくり>

 

家族の幸せ支援とモニタリング

男性育児休業1ヵ月の完全取得率(注4)

100%

100

100

育休取得者配偶者の
満足度(注4、8、9)

99.0

幸せ度調査実施による従業員の幸せの定量化

Well-Being Circle
総合値(注8、10)

66.57

ポイント

<ベクトルの一致>

 

サクセッションプラン会議を通じたリーダーパイプラインの拡充

キーポジションの
後継者候補準備率
(注1、8)

224.8

人財育成への投資

教育訓練費(注11)

1,478百万円

1,994百万円

2,400百万円

 

(注)1 集計対象会社は当社。

2  集計対象会社は当社、国内連結子会社。

3 「一級建築士」「1級建築施工管理技士」「FP2級」「宅地建物取引士」を含む業務上必要な11の資格。

4 集計対象会社は、当社、積水ハウス不動産グループ各社、積水ハウス建設グループ各社、

積水ハウス ノイエ㈱、積水ハウスリフォーム㈱。

5 集計対象会社は、当社、積水ハウス不動産グループ各社、積水ハウス建設グループ各社、

積水ハウス ノイエ㈱、積水ハウスリフォーム㈱ 、㈱鴻池組とその国内連結子会社。

6 集計対象会社は、当社及び国内連結子会社のうち、障がい者法定雇用義務のある27社。

7 集計対象会社は当社、国内連結子会社(㈱鴻池組とその国内連結子会社を除く)。多様な幸せを多面的に測って数値化している「幸福度診断 Well-Being Circle」における、安心安全な風土、信頼関係のある職場の雰囲気、チャレンジを推奨する雰囲気及び職場オススメ度の平均値。

8 実績値のみ公開しています。

9 配偶者アンケートで「良かった」・「まあ良かった」の回答者がアンケート全回答者に占める割合。

10 集計対象会社は当社、国内連結子会社(㈱鴻池組とその国内子会社を除く)。「幸福度診断Well-Being Circle」の34項目の平均値。

11 集計対象会社は当社グループ。

12 2025年度の目標値は、建設業の除外率が2025年4月に20%から10%に法改定されることを考慮の上設定しています。

 

(5) 人権尊重に関する取組み

①ガバナンス

当社グループは、2020年4月に公表した「積水ハウスグループ人権方針」(以下、「人権方針」)に定めるとおり、取締役会が人権方針の遵守及び取組みを監督しています。取締役会の傘下には、経営会議、ESG推進委員会、リスク管理委員会を置き、それぞれの機関が有機的に機能することにより、当社グループ全体の人権尊重の推進体制を構築しています。

当社グループの人権に関する重点課題と方針は、ESG経営推進委員会のもと、社会性向上部会で決定しています。社会性向上部会には複数の関連部署が参加する「人権デュー・ディリジェンスミーティング」(以下、「人権DDミーティング」。事務局:人権・コンプライアンス推進部)を設置しており、これら関連部署が互いに連携し情報共有、意見交換などを行うことにより、当社グループの人権尊重推進に取り組んでいます。

人権尊重推進の取組みは、リスク管理委員会にも定期的に報告されています。リスク管理委員会では、人権に関するテーマとして主にグループ従業員の労働や健康に関する戦略的な取組み、ハラスメントや労働災害などについて、リスク管理の観点から議論しています。

 

②戦略

当社グループは、「人権方針」において、従業員やサプライヤーをはじめとした事業活動によって影響を受ける可能性のある、すべてのステークホルダーの人権を尊重することを表明しています。また、「人権DDミーティング」において、毎年、人権リスクマップを作成するプロセスで重要な人権課題を特定し、定期的に検証をしています。

以下のマップの中の赤いポイントが2024年度に特定した重点課題です。

 


 

特定した重点課題:1.職場のハラスメント

2.施工現場の安全衛生

3.サプライチェーン上の労働課題

4.施工現場の外国人就労

 

 

特定した重点課題に対応するため、当社グループは以下の取組みを推進しています。

1.職場のハラスメント

多くの従業員が働く当社グループにとって、心理的安全性が確保された適切な職場環境の整備は、優先して取り組むべき重点課題の一つです。

従業員が安心して働けるように「セクハラ・パワハラホットライン」を設置し、必要に応じて調査し、是正・救済措置、再発防止策を講じています。あらゆる人権課題に幅広く相談を受け付けています。相談を受け付けた場合には、迅速な対応を行い、必要に応じて調査し、是正・救済措置、再発防止策を講じます。これらの相談内容を検証した結果を、全従業員向けに実施している「ヒューマンリレーション研修」のテーマに反映させハラスメントの防止に努めています。

※「セクハラ・パワハラホットライン」の対象拡大

2024年6月に内部通報・相談制度を改正しました。改正に伴い、当社及び国内連結子会社(注1)の役員・従業員向けに展開していたセクハラ・パワハラホットラインの受付対象を取引先まで拡げ、その変更内容について、全国の安全衛生大会で周知活動を行いました。2024年度に受け付けた相談の中から、当社の事業が与える重大な人権侵害は確認されませんでしたが、引き続き周知活動を行い、安心して利用できる通報窓口としての浸透を図ります。なお、相談受付件数は、通報窓口の周知と信頼性向上のKPIとして設定しており、しばらくは増加していくものと考えています。

(注)1 海外子会社向けには「積水ハウスグローバルヘルプライン」を設置して相談を受け付けています。


2.施工現場の安全衛生

危険が伴う建設現場では、労働環境が人命に関わる災害に直結する可能性があることから、施工現場の労働安全衛生は当社グループにとって最も根底にある重要課題です。施工従事者が安全に働ける環境の整備のために、さまざまな措置を行っています。

当社では、労働安全衛生に関する法令など当社の就業規則に基づき、「安全衛生管理規則」を定めています。安全衛生の基本事項を定め、現場における安全と健康を確保し、快適な作業環境を形成することを目的としています。施工協力会社・施工従事者に対しては、施工管理部が統括管理しています。施工管理部は、全社的な「安全衛生年間計画」を毎年策定するほか、必要に応じ、「労働災害防止対策」も実施しています。

 

3.サプライチェーン上の労働課題

当社グループは、サプライチェーンにおける「人権・労働」に関しても、重要な課題と認識しています。「積水ハウスグループ人権方針」 を公表し、ビジネスパートナーの皆様に対して、この人権方針の理解と支持への期待を表明しており、サプライチェーンにおける人権尊重の輪を広げるべく、取組みを進めています。

当社は2018年の国連グローバル・コンパクトへの署名を機に「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)」のサプライチェーン分科会に参加し、このGCNJ版SAQ(自己問診票)に準拠した「CSR調達ガイドライン」を制定しました。このガイドラインでは、人権尊重に関し、「国籍や人種等による差別」「非人道的な扱い」「強制労働」「児童労働」などの禁止がうたわれており、また従業員の安全衛生や健康についても適切な管理が求められています。

以来、主要なサプライヤーに対し、ガイドラインの趣旨と内容を理解して遵守すること、その取組みに関する確認等にも協力することについて「同意確認書」の提出を要請するとともに、毎年2月の「年度活動方針説明会」において、CSR調達の意義や重要性を共有してきました。

4.施工現場の外国人就労

建設現場においては、国籍・性別に関係なく多くの施工従事者が働いていますが、中でも異なる背景(文化・言語など)を持つ外国人施工従事者の就労環境を整えることを重視しています。特に、技能実習生には、積水ハウス建設各社、積水ハウス建設協力会社、本体工事店ごとに、受け入れ後のメンター(実習責任者・実習指導員・生活指導員)を定め、実習支援と生活支援の2つの支援を行っています。これらの支援体制は、対面での定期面談や、生活及び仕事に関するアンケート(ベトナム語版・日本語版)などによる外国人就労者との直接の対話より生まれてきたものです。これらを活用して、職場や日常生活でのトラブルを未然に防ぎ、さらなる労働環境の整備に努めます。

 

③リスク管理

人権課題の内容ごとに関係する部署、事業所、グループ会社など(以下、「関係部署など」)が人権デュー・ディリジェンスを担当し、ステークホルダーとの対話、及び専門家や人権団体からの情報提供・助言を通して収集した情報をもとに、人権リスクを洗い出し、啓発や対策を実施しています。人権デュー・ディリジェンスに関する情報は、関係部署などから事業部門ごとに共有・集約し、または人権DDミーティングなどで内容の検証を行うことで、全社的な課題の抽出、啓発、改善の取組みに統合・展開していきます。

こうした取組みについては、取締役会の諮問機関である「リスク管理委員会」にも報告されています。

 

④指標及び目標

当社グループは、リスクマップで特定した重点課題に対応する指標として、以下のKPIを掲げています。

<公開ウェブサイト 人権に関する問い合わせ件数>

 

2022年度

2023年度

2024年度

お問い合わせ件数

21

32

10

 

※2020年4月の「積水ハウスグループ人権方針」策定時より、公開ウェブサイトで、人権に関する問い合わせを外部からも受け付けています。これまで全ての問い合わせに対して、状況確認と対応を完了していますが、問い合わせの中に当社の事業に影響を及ぼす可能性がある人権侵害は確認されていません。

<セクハラ・パワハラホットライン 取り扱い件数>(注2)

 

2022年度

2023年度

2024年度

相談受付件数

213

253

258

 

相談受付件数のうち、ハラスメントに関する申し出の件数

125

131

150

 

ハラスメントに関する申し出のうち、解決是正に向けて対応した件数(注3)

66

76

83

 

(注)2 集計対象は当社、国内連結子会社。

3 相談内容と相談者の意向をヒアリングし、組織として対応すべき問題と判断して対応した件数。それ以外にも、内容に応じて相談者への助言などの支援を行っています。

 

 

3 【事業等のリスク】

◆リスク管理体制について

当社グループの事業活動における重要なリスクを的確に把握するとともに、万一リスクが顕在化した際にはグループ事業への影響の低減に向けて適正に対応する体制を構築しています。

「戦略リスク」や「財務・市場リスク」については、経営方針や経営戦略、重要な業務執行を審議する取締役会や経営会議等の会議体で検討しています。また、「事業運営リスク」や「ハザードリスク」については、取締役会の諮問機関として、「リスク管理委員会」(委員長:代表取締役副社長執行役員)を設置して、リスク管理状況のモニタリングを進めています。

リスク管理委員会は取締役会決議で選任された委員を中心に構成されており、原則月1回開催されています。委員会で選定した重要リスク項目については、本社専門部署や会議体など主管組織におけるリスク管理状況のモニタリング内容を踏まえ、リスク管理体制の整備状況の集約・検証及び必要な助言を行い、その内容を年2回、取締役会へ報告しています。委員会には内部監査部門からも委員として参加しており、定期監査の実施内容との連携も図っています。

また、「品質管理」及び「情報セキュリティ」の重要性を鑑み、傘下に「品質管理委員会」及び「情報セキュリティ委員会」を設置し、より専門的視点におけるリスク認識及び対応策について部署横断的に審議しており、両委員会における運営方針や審議内容については、年3回、リスク管理委員会に報告されています。

なお、ESG経営に係るリスク管理の詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しています。

 


 

◆リスク管理のプロセスについて

当社グループ会社の各主管部門で識別された「戦略リスク」や「財務・市場リスク」については、取締役会、経営会議等において、中期経営計画をはじめとする事業戦略全体に関する議題及び個別案件に関する議題の中で協議され、リスク評価及びその対策について検討するとともに、重要な影響を及ぼす事象が発生していないかをモニタリングしています。

リスク管理委員会では、主に「事業運営リスク」や「ハザードリスク」について、当社グループの国内事業所・国内子会社・海外子会社を対象として前年度に実施したモニタリング内容及び本社各部署からのヒアリング内容をもとに、リスク課題を抽出しています。その中から発生可能性及び全社的影響度を、リスク管理委員会で評価し、その評価に基づいて「リスクマップ」を作成して重要リスク項目を選定しています。各重要リスク項目を主管する部署または会議体は、期初にリスク管理に関する計画を策定し、その進捗についてリスク管理委員会へ報告し、委員会で出た意見を踏まえ改善を進めるという、リスク管理におけるPDCAサイクルを推進しています。


 

グループ会社に関して、グループ各社の経営全般を管理する「経営管理主管部署」と専門領域について横断的に管理する「専門機能部署」を当社内で明確化して、マトリックスでのリスク管理を推進しています。グループ全体のリスク情報の把握に向けて、国内外のグループ各社における総務責任者による牽制機能の強化及び本社専門機能部署との情報共有の活性化に向けて、「ガバナンスネットワーク」の構築に努めています。主要な事業グループ会社に関しては、一定以上の重要な業務執行について、当社の稟議決裁または取締役会決議を経ることとしています。また、主要グループ会社のリスク認識を把握するため、当社と同様にリスクマップにより重要リスクの評価を行い、その内容についてはリスク管理委員会で共有・審議することとしています。

 

全社レベルで影響を及ぼすおそれのある事案が発生した際には、「クライシス対応マニュアル」に則って本社主管部署よりリスク管理委員会へ報告されます。報告を受けたリスク管理委員会は、本マニュアルに規定された基準に基づいてクライシスレベルの判定を行い、クライシスレベルにおいて一定レベル以上の重大な内容が認められる場合には、リスク管理委員会委員長の判断のもと、専門チーム「クライシス対策本部」を立ち上げて、事態の拡大防止と早期収束に向けて具体的対応を検討する体制を整えています。また、定期的にクライシス対応トレーニングを実施し、本マニュアルが機能するかどうかの検証・改善を行っています。

 

◆個別のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を与える可能性のある事項については、以下のようなものが挙げられます。

なお、これらについては、提出日現在において判断したものです。

 

<戦略リスク、財務・市場リスク>

1.住宅市場環境の変化に関するリスク

[リスクシナリオ]

当社グループは、国内及び海外において住宅を中心とした事業活動を行っているため、個人消費動向、金利動向、地価動向、資材価格及び労務費等の動向、住宅関連政策や税制の動向、それらに起因する賃料相場の変動、さらには地方経済動向等に影響を受けやすい傾向があり、今後これらの事業環境の変化により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

[対策]

市場環境の変化に対応した諸施策を機動的に実施するため、事業本部長・営業本部長を中心とした会議体において、市場動向を踏まえた施策の進捗状況や現場で発見された課題を共有し、次の施策の立案に活かしています。重要な施策については、経営会議の場で十分な審議を経て進めることとしています。

また、海外進出国における市場環境についても、海外各拠点と本社が継続的に情報連携を重ね、専門部署において市場分析の上、戦略立案を行っています。

 

2.企業買収・事業再編に関するリスク

[リスクシナリオ]

当社グループは、国内外の事業戦略に基づき、企業や事業の買収、組織再編等による事業規模の拡大を進めています。しかしながら、その統合に向けた手続き及び実行後において期待通りの成果が得られない場合、または想定外の事業環境の変化等により、想定した収益が達成できない場合には、のれん等の無形固定資産の減損損失の計上等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

[対策]

企業や事業の買収、組織再編等の検討の際は、各専門機能部署が買収前に外部の専門家とともにデューディリジェンスや株式価値評価を行うことで、買収先の企業価値、事業計画の実現可能性等を適正に評価し、経営会議、取締役会等の審議を経て買収の是非の判断を行う体制としています。買収実施後は、各専門機能部署が適切なPMIを推進することで円滑な統合を促し、シナジーの最大化を進めています。さらにPMIとして一定の目的を達した後は、経営管理主管部署主導でシナジーを追求し、グループ全体での持続的な企業価値向上を実現できるよう取り組んでいます。

2024年4月には米国のM.D.C. Holdings, Inc.の買収を行いました。買収後、米国の既存グループビルダーを含めたPMIの推進のため、当社関係部門の役員及び職責者で構成した米国戸建委員会において全体方針・戦略の策定を行い、現地に設立したSHRH委員会が各グループビルダーに方針・戦略の落とし込みを実行する等、米国戸建事業を推進する体制を構築し、シナジーの最大化を図る施策を進めています。

 

3.保有する資産に関するリスク

[リスクシナリオ]

当社グループが国内及び海外において保有している販売用不動産、固定資産、投資有価証券及びその他の資産について、時価の下落等による減損損失または評価損の計上や、為替相場の変動によって、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

特に販売用不動産については、取得から引渡しまで長期間を要する場合もあり、投資回収には一定の期間を要します。プロジェクト進行中において、不動産市況の変化、許認可の取得の遅延、資材価格及び労務費の上昇、自然災害、その他予期し得ない事象等の影響により、想定外の費用の発生、開発スケジュールの遅延もしくは中止などの影響を受ける可能性があります。

 

[対策]

当社グループでは、国内外の投資案件が一定金額以上となる場合、積水ハウス本社における稟議審査、経営会議ならびに取締役会の審議により各案件に対する事業性やリスクを評価して投資の可否を慎重に検討しています。投資回収まで長期間を要する案件については、内部収益率(IRR)を主要な指標としています。

不動産については、優良土地の取得及び資産回転率の向上による安定経営を図り、政策保有株式については、資本・資産効率向上の観点から必要最小限の保有を基本とし、保有の妥当性について、毎年、取締役会において検証するとともに、定量的な目標を設けて段階的に縮減を図っています。為替相場の変動に対しては、為替予約等必要に応じヘッジ手続きを実行することにより、その影響を低減しています。なお、保有する資産については、減損損失及び評価損のリスクを定期的に把握し、必要に応じ適宜会計処理を実施しています。

 

4. 資金調達コストに関するリスク

[リスクシナリオ]

当社グループは、金融機関からの借入、社債の発行等によって資金調達を行っています。市場金利の急激な変動や金融市場の混乱、格付機関による信用格付けの大幅な引下げ等が生じた場合には、資金調達コストが増加する可能性があり、その結果、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

[対策]

財務規律を重視し、適切な水準の格付けを維持することで資金調達コストを低減するとともに、資金調達手段の多様化及び年限の適切な分散を図ることで金利変動リスクの軽減に努めています。

 

5.退職給付債務に関するリスク

[リスクシナリオ]

当社グループの従業員に対する退職給付債務及び退職給付費用は、割引率や年金資産の期待運用収益率等の数理計算上設定した前提条件に基づいて算出しています。この前提条件が変更となった場合、または実際の結果が前提条件と大きく異なった場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

[対策]

当社グループでは、退職給付債務については定期的に実績に基づいて見積りの検証と見直しを行っています。年金資産の運用については、外部コンサルタントの助言をもとに、リスク・リターン特性の異なる複数の資産クラス・運用スタイルへの分散投資を行っており、年金資産全体のリスク・リターンの分析を定期的に実施する事で分散効果の有効性について評価を実施しています。また、企業年金基金においてスチュワードシップ・コードの受け入れを表明し、運用機関に対するモニタリングを強化するとともに、企業年金基金の諮問機関である資産運用委員会では、市場環境や運用状況等について定期的に協議を行っています。

 

<事業運営リスク、ハザードリスク>

1.法令規制に関するリスク

[リスクシナリオ]

当社グループは、国内では宅地建物取引業法、建設業法、建築士法等の主要法令に基づく許認可を受けるとともに、建築、労働、環境その他事業の遂行に関連する各種の法令及び条例に則り事業活動を行っています。また、海外においてもそれぞれの国における法令規制を受けています。これら法令規制において違反が生じた場合に、改善に向けて多額の費用が発生すること、または業務停止等の行政処分を受けることなどで当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

[対策]

国内請負事業においては、設計における建築基準法上のチェックミス・手続き漏れを防ぐための法規制チェックシステムを導入し、型式認定不適合の発生を抑えるために、事業所及び本社でのダブルチェック体制を構築しています。また、建設業法上の専任の配置技術者の適正運用に向けて、配置状況のチェックを専門機能部署で行うとともに有資格者の人財確保・能力向上に継続して取り組んでいます。その他、国内外の各種法令の動向について、各専門部署にて情報収集・分析を行い、必要に応じて当社グループ内の関係先へ情報発信の上、適切な対応に努めています。

 

2.品質管理に関するリスク

[リスクシナリオ]

当社グループは、設計・生産・施工上の品質において万全を期すとともに、主要な戸建住宅及び共同住宅においては、長期保証制度及び定期的な点検サービスを実施していますが、長期にわたるサポート期間の中で、予期せぬ人的ミス等により重大な品質問題が生じた場合には、多額の費用発生や当社グループの評価を大きく毀損することになり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

[対策]

リスク管理委員会傘下の「品質管理委員会」により、製品・設計・生産・施工・CSの5つの検討会をまとめる組織として、品質に関する一元的な管理を進めています。特に施工品質不具合の発生を抑えるために、期初に策定する「全社施工品質管理年間計画」に基づく「品質管理重点項目」に対する改善に取り組んでいます。また、同委員会では製品の安全性に関する検証、生産現場の検査、品質に関わる法令遵守、CS 対応の充実についても議論されており、その内容については定期的にリスク管理委員会へ報告されています。

 

3.国内の建設技能者の減少に関するリスク

[リスクシナリオ]

国内の建設業界においては、建設技能者の高齢化と若年就業者の減少が進行するとともに、時間外労働の上限規制が2024年4月1日から適用となりました。必要な建設技能者を確保できず、施工体制の維持が困難になった場合、受注物件の着工の遅れや工期の長期化及び労務費の高騰等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

[対策]

当社のグループ会社である積水ハウス建設各社と施工協力会社からなる「積水ハウス会」による「責任施工体制」を構築し、高い施工品質を提供する施工環境の整備や施工技術の開発の実現を図るとともに、「施工力の確保」に向けて、工事量の平準化、DXの推進等による現場生産性の向上、建設技能者の積極的な育成等多角的な取組みを進めています。

 

4.情報セキュリティに関するリスク

[リスクシナリオ]

コンピューターウィルスの侵入や高度なサイバー攻撃等により、個人情報・機密情報の漏洩や改竄、システム停止等が生じることで、お客様等からの損害賠償請求を受ける可能性やお客様及び市場等からの信頼を失い、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

[対策]

リスク管理委員会傘下の「情報セキュリティ委員会」では、グループ内の基本方針である「情報セキュリティポリシー」や「秘密情報管理規則」に基づき、情報セキュリティ及び情報管理に関する施策を検討・実施しています。これに加えてコンピューターウィルスをはじめとしたサイバー攻撃や秘密情報の漏洩・改竄を防止するため、社内外からのアクセス制御システムを強化し、標的型メール訓練や研修、情報セキュリティ監査などを通じてITリテラシーの向上に努めています。また、ITデザイン部セキュリティシステム推進室にセキュリティインシデントに対応する専門チーム(CSIRT)を設置し、インシデント対応力を高めるために各部門参加のセキュリティインシデント発生を想定した訓練を実施するなど、万一の事態に備えています。

これまで様々な対応策を講じてきましたが、2024年5月24日に公表したサイバー攻撃事案を受けて、改めてグループ全社の情報資産の棚卸を実施するとともに、第三者(大手セキュリティ専門会社)の支援を受けて脆弱性診断や防御強化策を実施し、更なるセキュリティ強化に取り組んでいます。さらに、内部統制に基づくディフェンスラインを確立し、社内体制の構築を進めています。また、定期的に外部機関によるセキュリティアセスメントを実施し、セキュリティガバナンス体制の強化に努めています。

お客様情報の管理については、「お客様情報保護方針」に基づき、各組織において個人情報取扱責任者を定めて、安全対策の実施、周知徹底を図る体制を整えています。全従業員を対象に個人情報の取扱いに関するeラーニングを継続的に推進し、個人情報保護に関する従業員一人ひとりの役割・責任の認識を高めています。

また、各事業所及び各グループ会社におけるセキュリティ意識を高めるため、情報セキュリティ委員会の下に、「情報セキュリティ推進部会」を設置しています。これにより幹部から従業員一人ひとりへのセキュリティ意識啓発や対策の徹底を図っています。

 

5.施工中の災害に関するリスク

[リスクシナリオ]

施工現場では作業環境や作業手順・作業方法の誤りが災害につながる恐れがあり、死亡災害など重篤な災害が発生すると、工事の中断及び工期の延長に加えて、損害賠償負担や社会からの信用失墜を招く可能性もあります。

[対策]

施工現場での災害の抑制を目指し、各組織において施工安全衛生委員会を開催し、災害予防に向けた定期点検や安全パトロール及び災害発生事案に対する検証・再発防止策の推進等を行っています。また、技術・生産部門が連携し、独自の安全仮設材等を設定・整備することで作業環境改善を進めています。特に施工現場では、期初に設定する「全社施工安全衛生年間計画」に基づき、安心安全な施工環境の整備に努めているとともに、発生頻度及び重篤性の高い災害の削減に向けて、本社施工本部の指揮のもと事例共有による類似災害発生防止、DX推進による作業方法の遵守指導や現場確認体制の強化など対策に取り組んでいます。

 

6.労務管理に関するリスク

[リスクシナリオ]

従業員の長時間労働は、36協定違反など各種労働法への抵触、精神疾患を含めた健康障害による長期休業につながる恐れがあり、場合によっては労働問題に発展するリスクがあります。

[対策]

総労働時間の削減に向けて、部門毎に1人当たりの月平均総労働時間の目標を設定し、各事業所において働き方の改善に取り組んでいます。加えて、自律的に働くことのできる職場環境を目指して、年次有給休暇も計画的に取得する取組みをグループ全体で推進しています。本社、工場、事業所の組織ごとに勤務状況の確認を月次で行うとともに、必要に応じて本社人事総務部によるモニタリング、労務管理研修を実施して適正な労務管理を促しています。

 

7.資材供給停止に関するリスク

[リスクシナリオ]

大規模自然災害や社会不安(戦争、テロ、感染症、地政学的リスク等)により、資材調達先が被害を受け、資材の供給が困難になった場合、または受注量の増大により資材調達が間に合わない場合、施工がストップして契約工期に影響が出る可能性があります。

[対策]

当社グループでは、一つの資材調達先が被災等で調達が困難になった場合及び受注量の増大等を想定し、3つの側面から備えを進めています。

・供給面の備えとして、部材ラインナップ複数化、複数社調達、複数生産拠点化、国内供給拠点の強化を進めています。また、受注と供給の情報についても各部署と共有する体制を構築しています。

・仕様面の備えとして、部材の汎用化等、調達の容易な材料や仕様への変更に取り組んでいます。

・情報面の備えとして、サプライヤー拠点のデータベース化により、迅速な対応を行う体制を構築しています。

さらに具体的な対策を強化するために、資材調達に関するリスクと影響度を分析し図示することで、従業員の意識向上を図るとともに、ターゲットを明確にした活動の推進を図っています。また、サプライヤーに対しても自社サプライチェーンの強化を求めることで、備えの輪を広げ、サプライチェーン全体の強靭化に努めています。

 

8.大規模自然災害等に関するリスク

[リスクシナリオ]

大規模自然災害やパンデミックの発生時など緊急事態への対応計画が不明確なことにより初動対応が遅れた場合、各拠点における事業継続が困難になり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

[対策]

当社グループでは、「積水ハウスグループ事業継続計画管理基本方針」を定め、事業継続に影響を及ぼすような緊急事態が発生した場合にも、重要な事業を中断させず、また、中断せざるを得ない場合でも可及的速やかに復旧させる手順と体制を整備しています。

大規模自然災害等の発生に対しては、「積水ハウスグループ災害対策基本方針」を定め、各組織の「災害マニュアル」を策定し、災害時の各事業拠点における情報収集及び事業継続に向けた準備を進めています。また、大規模自然災害等により本社での業務継続が困難となった場合に備え、本社災害対策本部の設置等を規定した初動対応マニュアルの整備を行っており、代替拠点として東京拠点(東京都港区赤坂)やテレワーク環境を利用した重要業務の継続などの準備を進めています。

海外事業を展開する上において、海外子会社の従業員や出張者が自然災害やテロ・暴動等に巻き込まれるリスクに備えて、対応マニュアルを各国別に整備し、迅速な情報共有体制の構築を図るとともに、海外専門の危機対応支援会社と提携して緊急事態発生時の現地従業員へのサポート体制も整えています。

 

※ サステナビリティに関わる、「気候変動に関するリスク」、「自然資本・生物多様性に関するリスク」、「人財確保に関するリスク」及び「人権に関するリスク」については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しています。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりです。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、各国の金融政策を背景とした物価情勢や国際金融資本市場の動向、地政学リスクが与える影響に注視が必要な状況が継続しているものの、米国において個人消費や設備投資の増加等、内需を中心とした景気拡大が継続するなど、総じて堅調に推移しました。また、わが国の経済は、個人消費の一部に弱い動きがみられたものの、企業の全般的な業況感の改善が継続する中、雇用・所得環境の改善もあり、緩やかに回復しています。

住宅市場は、国内においては、建設コストが高止まりしている影響もあり新設住宅着工戸数が弱含みで推移していますが、持家や貸家の着工には底堅い動きもみられます。一方、米国では、住宅ローン金利が高水準で推移する中、住宅着工の調整局面や中古住宅の在庫減少が継続していますが、人口増に対する慢性的な住宅供給不足を背景に住宅に対する潜在需要は強く、持ち直しの動きもみられています。

このような事業環境の中、当社グループは、2050年を見据えたグローバルビジョン“「わが家」を世界一幸せな場所にする”の実現に向け、「国内の“安定成長”と海外の“積極的成長”」を基本方針とする第6次中期経営計画(2023年度~2025年度)に基づき、ハード・ソフト・サービスを融合した様々な高付加価値提案等を積極的に推進しました。米国においては、過去50年以上にわたり良質な住宅を供給してきたM.D.C. Holdings, Inc.(以下「MDC社」)を2024年4月に当社の完全子会社とし、米国における戸建住宅事業の展開エリアを拡大しました。

その結果、当連結会計年度における業績は、連結受注高は4,052,604百万円(前期比26.8%増)、連結売上高は4,058,583百万円(前期比30.6%増)となりました。

利益については、連結営業利益は331,366百万円(前期比22.3%増)、連結経常利益は301,627百万円(前期比12.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は217,705百万円(前期比7.6%増)となりました。

 


 

セグメント別の経営成績は次のとおりです

なお、当連結会計年度より、従来「その他」に計上していた連結子会社の一部のセグメントの区分を、「開発事業」セグメントの区分に変更しており、当連結会計年度における比較・分析は、変更後の報告セグメントの区分に基づいています。

 

 


 

当事業の当連結会計年度における売上高は479,091百万円(前期比1.7%増)、営業利益は46,069百万円(前期比12.2%増)となりました。

前期から全国展開を開始した新デザイン提案システム「life knit design」によるお客様の感性に寄り添う住まいづくりに加え、各分野の専門家で組織するDESIGN OFFICEチームによる戸建住宅のブランディング推進等により、2nd・3rdレンジの中高級商品の拡販に注力しました。ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)「グリーンファースト ゼロ」をはじめ、大空間リビング「ファミリー スイート」、次世代室内環境システム「スマート イクス」や間取り連動スマートホームサービス「PLATFORM HOUSE touch」等の高付加価値提案が好評で、受注は好調に推移しました。

また、前期から開始した木造住宅の耐震性向上を実現する共同建築事業「SI事業」については、各地域におけるパートナー企業とのネットワークが着実に広がっています。当社独自の耐震技術「ダイレクトジョイント構法」をはじめとする安全・安心の技術をオープン化し、各パートナー企業が建築する木造住宅の基礎と構造躯体の施工を積水ハウス建設グループ各社が請け負うことで、国内の良質な住宅ストック形成と1stレンジ商品の強化を推進しています。

※SI(エス・アイ):S=スケルトン(建物の構造躯体)とI=インフィル(外装・内装)のこと

 


 

当事業の当連結会計年度における売上高は544,934百万円(前期比4.0%増)、営業利益は81,796百万円(前期比4.8%増)となりました。

当社独自のエリアマーケティングに基づき長期間にわたり入居需要の見込まれる都市部(S・Aエリア)を中心とした事業展開により、当社オリジナル構法を用いた3・4階建て賃貸住宅の拡販、ネット・ゼロ・エネルギーの賃貸住宅「シャーメゾンZEH」の普及に注力したことに加え、高い入居率と賃料水準を実現するプライスリーダー戦略が奏功し、賃貸住宅の受注は好調に推移しました。特に、太陽光パネルを住戸ごとに接続する「シャーメゾンZEH」においては、入居者がメリットを実感できる光熱費の節約やエシカル志向への対応を考慮した入居者売電方式が好評で、賃貸住宅受注に占めるZEH住戸割合が77%となりました。

また、収益不動産拡大のための土地仕入及びESGソリューション提案の強化により、CRE(法人)・PRE(公共団体)事業における受注も好調に推移しました。

戸建住宅事業で培ったノウハウをオフィス空間等に活用するネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)「グリーンファースト オフィス」をはじめとした非住宅分野の提案強化を推進しています。

 


 

当事業の当連結会計年度における売上高は325,024百万円(前期比18.3%増)、営業利益は15,218百万円(前期比17.9%増)となりました。

建築・土木事業ともに、工事原価が上昇傾向にあるものの、前期から続く旺盛な建設需要を背景に手持工事が順調に増加したことや、前期から当期にかけて受注した大型工事の良好な進捗が増収に寄与しました。また、競争案件における提案力強化をはじめとした戦略的な取組みにより受注は好調に推移しました。

 


 

当事業の当連結会計年度における売上高は687,119百万円(前期比6.3%増)、営業利益は56,804百万円(前期比13.2%増)となりました。

S・Aエリアを中心とした好立地に供給する高品質・高性能な賃貸住宅「シャーメゾン」の継続的な受注と、オーナーとのコミュニケーション強化により管理受託戸数が堅調に増加しました。既存管理物件については、リテナント時の賃料上昇、空室期間の短縮化を企図した戦略的なリーシング活動等を実施しています。入居者ファーストを目指し、アプリを用いた入居手続き・入居後の問い合わせ対応のオンライン化、ブロックチェーンを用いた入退去手続きのワンストップ対応等、DX推進による入居者ニーズに合わせたサービスの拡充により高水準の入居率と賃料を維持し、増収に寄与しました。

 

 


 

当事業の当連結会計年度における売上高は183,868百万円(前期比5.1%増)、営業利益は26,624百万円(前期比13.4%増)となりました。

住宅ストックの資産価値向上と長寿命化を図るべく、戸建住宅では、家族構成やライフスタイルの変化に合わせた生活提案等の提案型リフォーム、断熱改修や最新の省エネ・創エネ・蓄エネ設備等を導入する環境型リフォームに注力しました。特に環境型リフォームにおいては、住生活空間に範囲を絞った「いどころ暖熱」や開口部断熱改修を中心に1999年に制定された次世代省エネ基準仕様の物件の断熱性能を更にレベルアップさせる提案を強化しました。また、賃貸住宅では、オーナーとのコミュニケーションを強化し、マーケット分析に基づく入居者ニーズをとらえたリノベーション提案に注力しています。これらの取組みにより、受注は好調に推移しました。

 

(開発事業)

 当事業の当連結会計年度における売上高は582,576百万円(前期比9.3%増)、営業利益は70,285百万円(前期比6.7%増)となりました。当事業に集約された仲介・不動産事業、マンション事業、都市再開発事業の経営成績は次のとおりです。

 


 

当事業の当連結会計年度における売上高は356,060百万円(前期比23.4%増)、営業利益は28,971百万円(前期比12.0%増)となりました。

とりわけ積水ハウス不動産各社においては、継続的に事業法人や金融機関など引合ルートの拡大や深化に取り組み、良質な販売用不動産の仕入れ強化と販売ルートの拡大に注力した結果、住宅用地を中心とした販売用不動産の売却が順調に進捗しました。

仲介事業についても、当社グループの全国ネットワークと多彩な販売ルートの活用により堅調に推移しています。

 


 

当事業の当連結会計年度における売上高は102,494百万円(前期比6.4%減)、営業利益は14,648百万円(前期比16.4%減)となりました。

物件引渡し時期の端境期に重なった影響などもあり減収となるも、「グランドメゾン代官山 THE PARK」(東京都渋谷区)の引渡しが完了したほか、「グランドメゾン北堀江レジデンス」(大阪市西区)の引渡しが順調に進むなど、販売物件の引渡しは計画通りに進捗しました。

東京・名古屋・大阪・福岡の中心地を戦略エリアとして集中的に展開する高付加価値の分譲マンション「グランドメゾン」については、ブランド価値の更なる向上を図るべく開発用地を厳選したうえで、生涯住宅思想に基づく設計・デザインを追求するとともに、家庭部門の脱炭素化への貢献を目指して全住戸ZEH仕様とするなど、環境配慮に関する先進技術の採用を積極的に進めています。これらの取組みが評価され、「グランドメゾン武蔵小杉の杜」(川崎市中原区)、「グランドメゾン福岡 鴻臚館前」(福岡市中央区)等の販売が好調に推移しました。また、JV9社にて共同開発を進めている「グラングリーン大阪」内に建築中の分譲マンション「グラングリーン大阪 THE NORTH RESIDENCE」(大阪市北区)についても、完売となりました。

 

 


 

当事業の当連結会計年度における売上高は124,021百万円(前期比8.2%減)、営業利益は26,665百万円(前期比18.8%増)となりました。

積水ハウス・リート投資法人に「プライムメゾン湯島」(東京都文京区)など都市型賃貸マンション「プライムメゾン」9物件を売却した他、投資家の旺盛な投資意欲を背景に、「W OSAKA」(大阪市中央区)の持分などホテル物件の売却を積極的に進めました。また、当社が保有を継続する物件については、「プライムメゾン」等の入居率が堅調に推移しました。

また、日本生命保険相互会社との共同事業として開発を進めてきた高層オフィスビル「赤坂グリーンクロス」(東京都港区)が2024年5月に竣工するとともに、JV9社で進めてきたJR大阪駅に隣接する合わせて約9.1haの大規模複合開発「グラングリーン大阪」(大阪市北区)が2024年9月に先行まちびらきを迎えました。

 


 

当事業の当連結会計年度における売上高は1,278,511百万円(前期比150.2%増)、営業利益は78,945百万円(前期比61.4%増)となりました。

米国では、戸建住宅事業においては、住宅ローン金利の高止まりの影響で中古住宅が在庫不足となり、新築住宅へのニーズが高まったことから既存ビルダーの受注・引渡しが好調に推移したことに加え、米国での更なる事業展開エリアの拡大に向け2024年4月にMDC社を完全子会社化したことにより増収となりました。また、コミュニティ開発事業も好調に推移し増収となりました。賃貸住宅開発事業においては、出口戦略の強化を推進し、新たな売却先となる積水ハウス・リート投資法人が組成したSPCに対して、「The Ivey on Boren」(シアトル)と「City Ridge」(ワシントンD.C.)の一部の引渡しが完了したことで増収となりました。

オーストラリアでは、戸建住宅の受注が改善傾向で推移し、マンション開発事業においてはシドニー近郊の分譲マンション「Melrose Park」の一部持分売却が2024年9月に完了したものの、大型開発物件を前期に引渡した影響により減収となりました。

 

 


 

当事業の当連結会計年度における売上高は14,066百万円(前期比25.9%増)、営業利益は2,466百万円(前期比51.3%増)となりました。

 

 

ESG経営のリーディングカンパニーを目指す当社グループは、第6次中期経営計画において「住まいを通じて環境課題の解決に貢献」「従業員の自律を成長ドライバーにする」「イノベーション&コミュニケーション」を基本方針とし、積水ハウスグループらしい「全従業員参画型ESG経営」を推進しています。

環境面では、ZEH基準をクリアする戸建住宅「グリーンファースト ゼロ」を発売してからの累積販売棟数が8万棟を超え、2023年度の新築戸建住宅ZEH比率が95%と過去最高を更新するとともに、賃貸住宅「シャーメゾン」や分譲マンション「グランドメゾン」等の集合住宅におけるZEH化、非住宅建築物におけるZEB化を推進してきました。住宅物流の分野においても、いわゆる「2024年問題」を受けたドライバー不足と脱炭素社会への貢献に向けたこれらの課題に対応すべく、センコー株式会社、旭化成ホームズ株式会社及び積水化学工業株式会社と協業を開始しました。生物多様性保全に向けた取組みとしては、住宅事業を通じ地域の気候風土・鳥や蝶等と相性の良い在来樹種を中心とした植栽を提案する「5本の樹」計画の推進に加え、国際目標であるネイチャー・ポジティブの実現に向け共創を推進してきた株式会社シンク・ネイチャーとともに、お客様の庭における生物多様性保全効果を最大化できる樹木等を提案する「生物多様性可視化提案ツール(仮称)」を2024年6月に共同開発しました。これに加えて、住宅業界におけるサーキュラーエコノミー移行を目指し、具体的なアクション「家がまた誰かの家に生まれ変わる『循環する家』 Circular Design from House to House」と2050年までの達成目標を、2024年12月に宣言しました。このような取組みを推進した結果、国際環境非営利団体CDPから「フォレスト」で3年連続、「水セキュリティ」で2年連続の最高評価「Aリスト」に選定されました。

社会性向上に関しては、重要な経営戦略の一つである「女性活躍の推進」において、2014年から開始している女性管理職候補者研修「積水ハウス ウィメンズ カレッジ」が10年経過するなど、女性のキャリアパスの形成支援や女性がリーダーシップを発揮しやすい環境の整備が進んだことにより、女性管理職が着実に増加しました。また、当社及び積水ハウス イノベーション&コミュニケーション株式会社は、「住まいと暮らし」にまつわる社会課題解決へ向けた事業創造と人財育成をさらに加速させるべく、2024年9月、「赤坂グリーンクロス」内に、オープンイノベーション施設「InnoCom Square(イノコム・スクエア)」を開設しました。これに加えて、第2回「積水ハウス大工選手権大会 WAZA 2024」を2024年11月に開催し、当社グループのコアコンピタンスの一つである「施工力」を支える大工職人に改めて敬意を表すとともに、その高い技能と仕事そのものの魅力を積極的に発信しました。

ガバナンス面では、トップマネジメント・事業マネジメント両輪でガバナンス強化を推進する第6次中期経営計画の方針のもと、取締役会においては、第三者機関による2023年度の実効性評価の結果及びMDC社の完全子会社化を受けて、グローバルレベルでのグループ経営や財務の観点から討議を行う機会が増加し、DX・IT・セキュリティの議論も進捗しました。米国戸建住宅事業においては、MDC社のPMIを米国の既存グループビルダーを含めて本社各部と連携の上で推進する体制を構築するなど、グループガバナンスのグローバル展開を進めています。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動により62,885百万円、財務活動により720,967百万円それぞれ増加し、投資活動により697,687百万円減少した結果、前連結会計年度末と比較して97,405百万円増加となり、当連結会計年度末の資金残高は390,307百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、得られた資金は62,885百万円(前期比47,202百万円資金増)となりました。税金等調整前当期純利益を305,586百万円計上したこと等により、資金の増加となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、減少した資金は697,687百万円(前期比628,562百万円資金減)となりました。MDC社等の買収に伴う子会社株式の取得による支出が557,022百万円(前期比542,403百万円資金減)あったこと等により、資金の減少となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、得られた資金は720,967百万円(前期比714,483百万円資金増)となりました。長期借入れによる収入が464,564百万円(前期比409,028百万円資金増)や、社債の発行による収入が352,540百万円(前期比322,540百万円資金増)あったこと等により、資金の増加となりました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績
(イ)生産実績

当社グループ(当社及び連結子会社)の展開する事業は多様であり、生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載していません。

 

(ロ)受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

受注高

受注残高

金額(百万円)

前期比(%)

金額(百万円)

前期比(%)

戸建住宅事業

479,113

2.9

230,018

0.0

賃貸・事業用建物事業

592,370

7.7

563,887

9.2

建築・土木事業

324,732

8.1

401,005

△0.1

賃貸住宅管理事業

687,119

6.3

リフォーム事業

186,012

7.5

36,749

6.2

開発事業

637,165

12.7

206,947

35.8

(仲介・不動産事業)

367,617

19.8

72,376

19.0

(マンション事業)

136,075

12.4

122,570

37.7

(都市再開発事業)

133,471

△3.1

12,000

370.6

国際事業

1,172,423

125.4

338,070

43.2

報告セグメント計

4,078,937

26.6

1,776,679

13.1

その他

14,007

25.8

1,037

78.9

消去又は全社

△40,340

△23,138

合計

4,052,604

26.8

1,754,577

13.1

 

 

(ハ)販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

戸建住宅事業

479,091

1.7

賃貸・事業用建物事業

544,934

4.0

建築・土木事業

325,024

18.3

賃貸住宅管理事業

687,119

6.3

リフォーム事業

183,868

5.1

開発事業

582,576

9.3

(仲介・不動産事業)

356,060

23.4

(マンション事業)

102,494

△6.4

(都市再開発事業)

124,021

△8.2

国際事業

1,278,511

150.2

報告セグメント計

4,081,126

30.2

その他

14,066

25.9

消去又は全社

△36,610

合計

4,058,583

30.6

 

(注) 主な相手先別の販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載

    を省略しました。

 

※  当連結会計年度より連結子会社の一部の報告セグメントの区分を変更しており、前期比は前年同期の数値をセグメント変更後に組み替えて算出しています。

※ 当連結会計年度に連結子会社化したM.D.C. Holdings, Inc. 及びその子会社について、同社の数値を各指標の「国際事業」に含めて表示しています。

※ 当連結会計年度に連結子会社化した鳳コンサルタント株式会社について、同社の数値を各指標の「その他」に含めて表示しています。

 

(参考) 提出会社個別の事業の受注高、売上高、繰越高の状況は次のとおりです。

期別

事業別の名称

前期繰越高

(百万円)

当期受注高

(百万円)

(百万円)

当期売上高

(百万円)

次期繰越高

(百万円)

手持高

第73期

自 2023年
2月1日

至 2024年
1月31日

住宅請負事業

710,690

1,004,705

1,715,395

983,525

731,870

不動産事業

97,321

314,989

412,310

299,908

112,402

合計

808,011

1,319,695

2,127,706

1,283,433

844,272

第74期

自 2024年
2月1日

至 2025年
1月31日

住宅請負事業

731,870

1,071,055

1,802,926

1,016,650

786,275

不動産事業

112,402

338,017

450,419

295,522

154,897

合計

844,272

1,409,073

2,253,346

1,312,172

941,173

 

(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の更改により請負金額に変更のあるものについては、その増減額を「当期受注高」並びに「当期売上高」に含めています。

2 損益計算書において、住宅請負事業は「完成工事高」、不動産事業は「不動産事業売上高」として表示しています。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

① 経営成績

当連結会計年度の連結売上高は、すべてのビジネスモデルが増収となった結果、前期比951,341百万円増加4,058,583百万円(前期比30.6%増)となりました。

連結営業利益は、請負型ビジネスにおける利益率の改善、ストック型ビジネスの継続的な増収効果及び開発型ビジネスにおける順調な販売用不動産の売却に加え、既存の米国戸建住宅事業やMDC社の連結化が牽引した国際ビジネスの積極的な成長が寄与し、前期比60,410百万円増加331,366百万円(前期比22.3%増)となりました。

連結経常利益は、MDC社の買収に伴い有利子負債に係る支払利息が増加したものの、連結営業利益の増加等により、前期比33,379百万円増加301,627百万円(前期比12.4%増)となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式の縮減方針に基づく投資有価証券売却益を特別利益に計上するとともに、MDC社の買収関連費用を特別損失として計上した影響等により、前期比15,379百万円増加217,705百万円(前期比7.6%増)となりました。

 

 

(参考) 連結売上高、連結営業利益をビジネスモデル及びセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

売上高

営業利益

2024年1月

2025年1月

前期比(%)

2024年1月

2025年1月

前期比(%)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

戸建住宅事業

471,056

479,091

1.7

41,065

46,069

12.2

賃貸・事業用建物事業

524,121

544,934

4.0

78,016

81,796

4.8

建築・土木事業

274,653

325,024

18.3

12,904

15,218

17.9

小計

1,269,832

1,349,050

6.2

131,986

143,084

8.4

賃貸住宅管理事業

646,588

687,119

6.3

50,180

56,804

13.2

リフォーム事業

174,996

183,868

5.1

23,482

26,624

13.4

小計

821,584

870,988

6.0

73,663

83,429

13.3

仲介・不動産事業

288,456

356,060

23.4

25,857

28,971

12.0

マンション事業

109,450

102,494

△6.4

17,532

14,648

△16.4

都市再開発事業

135,131

124,021

△8.2

22,454

26,665

18.8

開発事業 計

533,039

582,576

9.3

65,845

70,285

6.7

国際事業

511,055

1,278,511

150.2

48,898

78,945

61.4

その他

11,171

14,066

25.9

1,630

2,466

51.3

消去又は全社

△39,440

△36,610

△51,067

△46,844

連結

3,107,242

4,058,583

30.6

270,956

331,366

22.3

 

 

② 財政状態

資産、負債及び純資産の状況

当連結会計年度末における資産総額は、前連結会計年度末と比較して43.4%増4,808,848百万円となりました。流動資産は、MDC社を買収したことに伴う販売用不動産の増加等により、3,712,106百万円と増加(前期比48.7%増)しました。固定資産は、のれんの増加等により、1,096,742百万円と増加(前期比28.1%増)しました。

負債総額は、長期借入金の増加や社債の発行等により、前連結会計年度末と比較して79.0%増2,790,249百万円となりました。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益を217,705百万円計上したことによる利益剰余金の増加等により2,018,599百万円と増加(前期比12.5%増)しました。

 

③ キャッシュ・フロー

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

 

④ 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金及び不動産(棚卸資産を含む)の取得・開発をはじめとする投資資金等であります。また、「国内の“安定成長”と海外の“積極的成長”」を基本方針とする第6次中期経営計画(2023年度~2025年度)に基づき、米国戸建住宅事業の更なる展開エリアの拡大に向け、2024年4月にはMDC社の買収を完了しています。

これらの資金需要に対し、運転資金については、自己資金の活用又は借入金、コマーシャル・ペーパーにより調達し、投資資金等については、主に社債、借入金により調達しています。資金調達に際しては、これら多様な調達手段から時機に応じて最適な手段を選択することで、安定的な財源の確保及び調達コストの低減を図り、長期資金については年度別償還額の集中を避けることで借換リスクの低減を図っています。さらに、MDC社の買収では、政府系金融機関からの借入も活用しています。

また、複数の金融機関とコミットメントライン契約及び当座貸越契約を締結することで、十分な資金の流動性を確保しています。

 

⑤ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)目標とする経営指標」に記載のとおりです。

当連結会計年度においては、2024年9月に上方修正した2025年1月期の業績目標(連結売上高40,000億円、連結営業利益3,200億円、連結経常利益2,880億円、親会社株主に帰属する当期純利益2,090億円)に対し、実績は連結売上高40,585億円、連結営業利益3,313億円、連結経常利益3,016億円、親会社株主に帰属する当期純利益2,177億円となり、目標を上回る結果となりました。また、EPSは335.95円(目標322.56円)、ROAは8.3%(目標8.2%)、ROEは11.7%(目標11.7%)、1株当たり配当金は135.00円(目標129.00円)及び配当性向は40.2%(目標40.0%)となりました。引き続き、目標数値の達成を目指します。

 

⑥ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。

この連結財務諸表の作成にあたり、資産、負債、収益及び費用の報告額に不確実性がある場合、作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出するために見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に用いた会計上の見積り及び仮定のうち、特に重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」の「(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 標章使用許諾に関する契約(提出会社)

① 相手方

積水化学工業株式会社

② 契約の内容

上記会社の所有する一定の標章(商標を含む)の使用許諾を受ける。

③ 期間

 

1990年8月1日より3年間。但し、期間満了後特別の事情のない限り更に3年継続し、以後この例による。

④ 対価

上記会社に対し一定の対価を支払う。

 

 

(2) 資金の借入に関する契約

当社は、当社の完全子会社Sekisui House US Holdings, LLC(以下「SHUSH社」)の子会社であるSH Residential Holdings, LLC(以下「SHRH社」)を通じて、米国において戸建住宅事業を行うM.D.C. Holdings, Inc.(本社:米国 コロラド州、CEO:David D. Mandarich、米国ニューヨーク証券取引所上場:MDC、以下「MDC社」)の株式の全てを取得すること(以下「本買収」)を2024年1月18日開催の取締役会において決議し、MDC社との間で本買収に関する合併契約を2024年1月18日(米国デンバー時間2024年1月17日)付で締結し、2024年4月19日に買収が完了しました。

当社は、本買収に必要な資金を調達するため2024年3月21日開催及び2024年4月12日開催の取締役会において、借入契約を締結することを決議し、以下のとおり、2024年4月16日及び2024年4月17日に借入を実行しました。

 

① 借入先     株式会社三菱UFJ銀行、株式会社三井住友銀行、株式会社みずほ銀行

② 借入金額(注) 円建て:418,250百万円

         米ドル建て:1,550百万米ドル

③ 借入利率    基準金利+スプレッド

④ 返済期限    2025年4月3日

⑤ 担保・保証   無担保、無保証

⑥ 資金の使途   MDC社買収に係るSHUSH社への増資及びSHRH社への貸付

 

(注)当該借入金額については、公募ハイブリッド社債・米ドル建て普通社債・政府系金融機関等及び円建て普通社債により調達し、期限前返済を都度行い、2025年2月28日に完済しました。

 

6 【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)では、グローバルビジョン“「わが家」を世界一幸せな場所にする”の実現に向け、ハード・ソフト・サービスを融合させた住まいの研究開発が使命と考えています。創業以来積み上げてきた安全・安心・快適の技術を土台として、住まい手の「幸せ」につながる「健康・つながり・学び」という2030年に提供すべき価値を見据え、デザイン研究開発・環境技術開発・オリジナル技術開発を推進するとともに、新たな研究開発領域の拡大も図っていきます。

住宅は個人資産であると同時に、社会資本であり、住まいが次世代に引き継がれるために、持続可能性、環境への配慮、美しさの追究は必須です。そのために、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」や「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」の推進をはじめとする2050年の脱炭素社会を目指した研究、自然と共生するまちなみ等、住む人の感性や価値観に合わせたデザイン研究に積極的に取り組んでいます。

そして、これらの研究開発成果を国内事業とともに海外事業にも展開し、幸せなわが家づくりを通して積水ハウステクノロジーが世界のデファクトスタンダードとなるように推進していきます。

また、研究開発における当社の強みは、「総合住宅研究所」の徹底した技術検証によるエビデンス構築とともに、「しあわせ住まい研究所」の時間軸を意識した「幸せ住まい」の提案力です。「最高の技術と品質」を技術開発の根本に据え、業界のトップランナーとして、経営戦略にベクトルを合わせた研究開発を行っています。

ハードとソフトの融合により、家族の「幸せ」を実現する「ファミリー スイート」は、当社の研究開発の成果の一つです。柱をなくし、最大スパン7mの大空間リビングを支えるオリジナル構法「ダイナミックフレーム・システム」は、当社独自の技術であり、「ファミリー スイート」の新築戸建住宅での採用率は60%を超えています。また、ウイルスや花粉等の汚染物質に配慮した、次世代室内環境システム「スマート イクス」の採用率は70%を超えています。

当社グループでは、R&D本部において、「総合住宅研究所」や「しあわせ住まい研究所」による建築新技術、住生活の研究開発に加え、住を基軸としたデザイン、商品開発並びに知的財産戦略の立案に関する事項を掌握し、技術開発の更なる推進を図っています。

今後もR&D領域をさらに拡大し、「住」を基軸としたあらゆる分野の情報を収集・分析するとともに、一つの事象をより深掘りし多くのエビデンスを取得しながら研究開発を進める体制を強化していきます。そのために、社内だけでなく社外のリソースを有効的に活用することが必要であり、オープンイノベーションやM&A等による同業種・異業種との交流・連携の強化を推進していきます。

当連結会計年度の研究開発活動の概況と成果は以下のとおりであり、研究開発費総額は10,581百万円です。なお、当社グループの行っている研究開発活動は、各事業に共通するものであり、セグメントに分類することができません。そのため、研究開発活動の概要は、以下のとおり研究開発の項目別に記載します。

 

(1)商品開発

・2023年6月にスタートした新デザイン提案システム「life knit design」は、人生100年時代、良質な住まいに“愛着”を持って、より長く住み続ける循環型社会を目指し、流行り廃りではないお客様の“感性”を大切にした住まいづくりを提供しています。「life knit design」のインテリアの考え方である「6つの感性フィールド」をお客様が実際に体感し、ご自身の感性を見つける「場」として、リアルサイズで同じ間取りの6棟のインテリアデザインハウス「6 HOUSES」を、2024年8月から10月の期間限定で「コモンステージみどりのⅡ」(茨城県つくば市)にオープンしました。

・2024年9月には、西日本初となるミナ ペルホネンのファウンダー/デザイナー皆川 明氏とのコラボレーションモデルハウス「HUE(ヒュー)」を、当社の住まいの体験型ミュージアム「Tomorrow's Life Museum 山口」にライフスタイル提案モデルハウスとしてオープンしました。なお、ミナ ペルホネンとのコラボレーションモデルハウスの第一弾となる、2023年4月オープンの「駒沢シャーウッド展示場 HUE(ヒュー)」は、iF International Forum Design GmbHが主催する国際的なデザインアワード「iFデザインアワード2024」の「Architecture(建築)」部門において、「iFデザイン賞」を受賞しました。

当社の2024年度の新築戸建住宅ZEH比率は96%(北海道を除く)となり、供給を開始した2013年以降の累積棟数も89,352棟(2025年3月末現在)となりました。また、集合住宅においても、「賃貸ZEH」をシャーメゾンブランドで展開し、2024年度の受注戸数は14,722戸、住戸ZEH比率は77%と、第6次中期経営計画の2024年度目標である73%を上回り、累計戸数も57,284戸となりました。また、賃貸ZEHでは、住戸毎に専用接続するEV充電スタンドの設置を推進し、モビリティにおけるCO2排出量削減にも貢献します。

・「住生活研究所」から改称した「しあわせ住まい研究所」は、2024年9月に開設したオープンイノベーション施設「イノコム・スクエア」を拠点とし、今後迎える「人生100年時代」には、暮らしにおける「幸せ」のさらなる追求が重要と考え、時間軸を意識した「住めば住むほど幸せ住まい」研究に取り組んでいます。

2023年6月に発売した“たべる”だけでなく“つくる”もコミュニケーションの時間とする、テーブルとコンロが一体になった、座って囲める「キッチンテーブル」が2024年9月発表の「第18回キッズデザイン賞」において、男女共同参画担当大臣賞を受賞しました。

 

(2)技術開発

国内の良質な住宅ストックの形成に貢献すべく、2023年9月に性能規定に基づく「基礎ダイレクトジョイント構法」を開発し、業界初の共同建築事業「SI事業」に導入。2025年1月にはバージョンアップを行い、耐力壁や屋根、床の強度を向上させて、耐震性の確保と間取りの自由度を実現しました。

・重量鉄骨の強さと設計自由度を両立した「フレキシブルβシステム」においては、耐震性能を更に高めるβⅢ基礎仕様(ダブル配筋、基礎立ち上がり幅300)を2024年11月に発売しました。

・2022年4月に開始した千葉大学予防医学センターとの共同研究を基に、健康を意識しなくても健康的な生活習慣が実行できるような環境づくり、いわゆる「ゼロ次予防住環境」の創造を目指し、住環境と健康の因果を疫学の観点から研究しています。

・2023年6月より総合住宅研究所内実験検証棟にて進めてきた検証により、太陽光の余剰電力と水から水素製造、合金への貯蔵、必要な時に水素を使って発電するシステムの有用性を確認し、電力のオフラインに向けた可能性をつかむことができました。

2024年5月に、株式会社ブリヂストンと住宅で使用する給水給湯樹脂配管について、新築施工時に排出される端材の同製品部材への水平リサイクルを開始しました。

2020年6月にスタートした、東京大学×積水ハウス「国際建築教育拠点(SEKISUI HOUSE - KUMA LAB)」は、研究施設「T-BOX(2021年10月運用開始)」を活用し、次世代の人財育成及び住宅イノベーションの実現に向けた研究を継続しています。

庭などに生態系に配慮した地域の在来樹種を中心とした植栽を行う「5本の樹」計画による累計植栽数は2,069万本となりました(2025年1月末時点)。

当社の植栽実績データと居住者へのアンケート調査を活用した、東京大学大学院農学生命科学研究科の曽我 昌史准教授との「生物多様性と健康に関する共同研究」(2022年12月に開始)の成果として、2024年7月、「5本の樹」計画を取り入れた在来種を中心とした植栽は、身近な生き物とのふれあいの頻度の高まりにより、居住者のウェルビーイングの向上や自然の価値の認識、環境配慮意識の高まりに寄与するという分析結果を発表しました。

・琉球大学の久保田 康裕教授が立ち上げたスタートアップ企業の株式会社シンク・ネイチャーと生物多様性ネットゲインの共同推進に関する協定を2023年7月に締結し、2030年ネイチャー・ポジティブ実現に向けて「5本の樹」計画の新たな価値創造に取り組んでいます。

・積水ハウステクノロジーの海外移植を推進すべく、米国では、2024年1月よりカリフォルニア州南部の「Sommers Bend」におけるシャーウッドの販売を開始しました。また、オーストラリアでは、現地の気候・風土・ニーズに合わせた独自のシャーウッド構法で日本品質の快適な住宅を提供し、シドニー近郊で展開エリアを拡大するなど、ブランド認知を進めています。