第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、ICTの力で豊かな未来を創造し、社会の持続可能な発展に貢献することで、社会、顧客、社員、ビジネスパートナー、株主など、すべてのステークホルダーにとって、なくてはならない「エッセンシャルカンパニー」として更なる進化と成長を目指します。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、収益力強化と持続的な成長の両立を実現し、さらなる企業価値向上を図るため、2031年1月期に売上高1,000億円、営業利益143億円、当期純利益100億円の達成を目標とした、長期経営計画(VISION 2030)を策定いたしました。また、同時に2026年1月期から2028年1月期の3カ年を対象とした中期経営計画 2025-2027を策定し、最終年度の2028年1月期の事業目標を売上高720億円、営業利益86億円、当期純利益62億円、ROE14%以上と設定いたしました。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、VISION 2030の基本方針に定めた「エッセンシャルカンパニーとしてさらなる進化と成長」を当社グループの将来像として定義し、事業戦略とコーポレート戦略を軸に、サステナビリティへの取り組みを加速させ、新たな価値を創造してまいります。詳細は、2025年3月に発表しました「長期経営計画「VISION 2030」および2026年1月期-2028年1月期の3カ年中期経営計画」をご参照ください。

 ※URL:https://www.cec-ltd.co.jp/ir/aboutus/guide_pdf/vision2030-management_plan2025-27.pdf

 

(4)会社の対処すべき課題

当社グループは、2026年1月期から2028年1月期の3カ年を対象とした中期経営計画 2025-2027を発表いたしました。この3カ年をVISION 2030(2031年1月期)の事業変革を加速させる成長期として捉え、新セグメントでの事業推進、研究開発、M&A活動等に注力してまいります。サステナビリティへの取り組みを加速させ、①事業戦略、②コーポレート戦略を新たな成長戦略の2軸として、事業活動を通じた社会や産業課題の解決を目指し、企業価値の継続的な向上に努めてまいります。

 

 ①事業戦略

・事業モデル転換

・事業領域の面的拡大

・新規事業の創出

 

 ②コーポレート戦略

・人材戦略

・財務戦略

・コーポレートガバナンス

・社内インフラ強化

 

当社グループは、VISION 2030のありたい姿に向け、これらの経営課題に着実に対処し、収益力強化と持続的な成長を両立する事業改革に取り組むことで、エッセンシャルカンパニーとして更なる進化と成長を遂げてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは以下のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社は、取締役会等で協議したサステナビリティ基本方針およびマテリアリティに基づき、各種KPIを設定し取り組みを進めております。2025年2月21日に代表取締役社長を委員長、監査等委員をオブザーバとしたサステナビリティ推進委員会を設置し、当委員会が全社のサステナビリティ経営を推進、支援する役割を担うことで体制の強化を図っております。

 

(2)リスク管理

 当社は、経営に対して大きな影響を及ぼすリスクに適切かつ迅速に対応し機会を捉えるため、経営会議において、

報告・対策の検討を行っております。対処すべき重要なリスクが特定された場合は、取締役会等において対策の協

議が実施できる体制を整備し、リスクの低減、未然防止等を図っております。

 サステナビリティに関するリスクにつきましてはサステナビリティ推進委員会とリスクマネジメント委員会が連携

し、リスクの低減を図っております。

 

 上記、ガバナンスおよびリスク管理を通して識別された重要なサステナビリティ項目は以下のとおりです。

 ①気候変動

 ②人的資本

 

①気候変動への対応

(1) ガバナンス

 当社は、気候変動に向けた対応をサステナビリティ経営における重要課題の一つと認識しており、2020年よりISO14001認証の取得を開始いたしました。当環境マネジメントシステムの体制として、取締役を統括責任者、総務部長を管理責任者、他ISO14001事務局員で組織しております。本組織は気候変動を踏まえた環境活動の推進・統括を目的とし、リスクおよび機会を監視し、経営会議を経たうえでその内容を取締役会へ年2回以上報告しております。

 経営会議および取締役会からの指示事項については、環境マネジメントシステムを通じて統括責任者、管理責任者から各事業部門に展開することで、継続的な改善をしております。

 また、本取り組みの適用範囲をグループ会社に拡大すべく、2024年1月期は大分シーイーシー㈱への適用を開始し、2025年1月期に同社のISO14001認証の取得を予定しております。

 

(2) 戦略

 事業における気候変動に関するリスクおよび機会の洗い出しを行い、それらが戦略および財務計画に及ぼす影響について定性・定量的に評価しております。また、外部環境の変化や様々な状況下を考慮するため、2℃未満シナリオと4℃シナリオの双方において分析を実施しております。

 

・2℃未満シナリオ:気候変動の影響を抑制するためにカーボンニュートラル実現を目指した取り組みが活発化したシナリオ。1.5℃目標達成に向けた各種規制強化、市場・消費者の環境意識も高まり、移行リスクが顕在化する。

・4℃シナリオ  :気候変動対策が現状から進展せず、世界の平均気温が産業革命期以前と比較して今世紀末ごろに4℃上昇するシナリオ。異常気象の激甚化や海面上昇などの物理的リスクが最大化する。

 

 

(3) リスク管理

 気候変動におけるリスクおよび機会については以下のとおりに特定し、それぞれに対応策を取ることで管理をしております。

0102010_001.png

 

 気候変動を含む環境リスクの特定、評価につきましては、ISO14001認証を取得している環境マネジメントシステムを活用し実施しております。特定したリスクへの対応につきましても環境マネジメントシステムに基づき実施を行っております。

0102010_002.png

 

(4) 指標及び目標

 当社は、気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するうえで温室効果ガスの排出量を一つの指標と捉え、GHGプロトコルに基づき当社単体での算定を実施しております。目標として2016年度基準排出量(Scope1、2) 9,282t-COから2030年度に46%以上の削減を掲げており、2024年度までに神奈川第一データセンター、さがみ野システムラボラトリ、宮崎台システムラボラトリ、大分システムラボラトリの自社建物の電力契約をすべて実質COゼロのものに切り替えが完了し、47.3%の削減を達成しております。引き続きCO排出量の削減を進め、2050年度のカーボンニュートラルという高い目標に向け削減に努めてまいります。

〈当社の排出量実績と2030年度の目標値〉

データ年度

2016年度

2024年度

2030年度目標
(2016年度比)

CO₂排出量
(tCO₂)

Scope1+2

9,282

4,888

5,012(△46%)

 また、2025年度より算定対象をグループ全てに拡大し、Scope1~3の温室効果ガス排出量の管理・削減を進めてまいります。グループ全体としての算定結果や取り組みは順次、コーポレートサイトにて開示を予定しております。

 

②人的資本および多様性への対応

 当社グループでは、経営戦略と連動し、従業員の持続的成長が競争力の向上につながると考え、優れた人材の確保と育成、多様性の尊重と公平な環境の整備、エンゲージメントの向上を通じた組織全体のパフォーマンスの最大化を目指し、以下の取り組みを実施しております。

 

<人材確保>

 当社グループは持続的な成長を実現するため、人材確保を最重要課題の一つとして位置付けており、その一環として、キャリア採用による戦力人材の獲得を積極的に推進しております。具体的には、人材エージェントとの連携強化による採用プロセスの迅速化に加え、優秀な人材を獲得するために当社の魅力を多くの人に効果的に伝える採用広報戦略、リファラル採用、アルムナイ(カムバック)採用を行っております。

 

<人材育成>

 人材育成と早期キャリア形成を支援する人事制度のもと、従業員の持続的な成長のために3つの教育プログラムを体系化しております。

 

・人事制度の役割等級や職務行動に基づき上位等級への成長を促す「階層別教育」

・多様化・複雑化する環境変化に対応するスキル別教育としての「専門教育」

・事業戦略の一環であるDX人材やPM人材育成等を重点的に実施する「全社共通教育」

 

 特にDXについては、全従業員向けにDXスキルアセスメントや学習機会を提供し、基本的なリテラシー教育から実践的なDX推進スキル教育のみならず、当社グループにおけるDX変革マインドの醸成、ビジネス変革を牽引する戦略的思考力といった様々なスキルや知識を持つ人材育成に注力しております。

 また、各部門に教育担当者を配置し、教育施策のPDCAサイクルを実施する体制も整備しております。

 人材活用の幅を広げるとともに、従業員一人ひとりが最大限の能力を発揮できる環境を提供し、組織全体のパフォーマンス向上と事業成長につなげております。

 

0102010_003.png

 

<エンゲージメント>

 当社グループは、従業員のエンゲージメントが企業の成長に欠かせない要素と位置づけております。

 ワークライフバランスへの配慮、労働時間の適正化および生活時間の確保、従業員間のコミュニケーションの促進を図っております。また、エンゲージメント調査により、組織の強みおよび課題を把握し、従業員が働きやすさと働きがいを高めるための職場環境改善に取り組んでおります。

 

<健康経営>

 当社グループは、従業員が安全・安心に仕事ができる職場環境づくりと従業員の健康維持・増進を目指し、各事業所の産業保健スタッフが産業医や保健師と連携してフィジカルおよびメンタルの両面から健康をサポートし、疾患の発生予防・早期発見・適切な対応および再発防止策等を行っております。

 積極的な健康経営の取り組みが評価され、3年連続で「健康経営優良法人認定制度」に基づく健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定を受けております。

 

<ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)推進>

 当社グループは、多様な価値観を持つ従業員が相互に理解し、支え合い、様々なアイディアが交わる中で、従業員が共に発展し続ける企業を目指しております。そのために、多様な属性やバックグラウンドを持つ従業員が安心して能力を発揮できる環境整備に努め、組織風土の醸成を進めております。

・女性活躍推進法

 当社グループは、女性従業員の活躍を促進するために、様々な施策を展開しております。女性管理職候補となる幹部職の育成や、フレキシブルな就業環境の提供により、家庭と仕事の両立を支援しております。また、風土や意識の醸成といったソフト面、制度やルールなどのハード面も、引き続き様々な施策を立案・検討し、女性従業員が活躍できる職場環境の実現に向けて邁進してまいります。

・男性の育児休業取得の推進

 男性の育児休業の推進については、社長自らが取得推奨のメッセージを発信し、管理職の取得事例や取得を後押しした上司のインタビューを社内で周知しております。さらに、「プレパパセミナー」や「仕事と育児の両立講座」の開催などを通じて、男性が育児休業を取得しやすい風土を作る取り組みを行っております。

・仕事と介護の両立

 介護に向けた取り組みとして、従業員向けに介護に関する知識を深め、利用できる制度やサービスを理解し、自身の将来や家族の介護を考えることを目的とした介護セミナーを開催しております。また、介護による休職・退職が会社の経営に与える影響を管理職に認識してもらうため、管理職向けの介護セミナーも実施しております。さらに、今期より介護相談窓口と介護相談ブックシェルフを設置し、従業員の個々の介護の悩みを解消し、働き続けることのできる環境を整えております。

・障害者雇用

 当社グループは、障害者の雇用機会を積極的に提供しております。職業能力の向上をサポートするとともに、職場環境のアクセシビリティを向上させ、オフィスのバリアフリー化を行うことで、従業員が働きやすい環境を整えております。

 

指標および目標

 上記人的資本および多様性に関する方針を踏まえ、次の指標と目標値を設定しております。

指標

目標

実績(当事業年度)

女性労働者の割合

2030年度まで30

23.9

管理職に占める女性労働者の割合

2030年度まで12

4.9

男性労働者の育児休業取得率

2030年度まで100

78.6

(注)目標および実績の対象会社は、以下の3社であります。

㈱シーイーシー、フォーサイトシステム㈱、㈱シーイーシーカスタマサービス

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業活動その他に関するリスクについて、投資家の投資判断上、重要であると考えられる主な事項は以下のとおりです。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、2025年2月21日に代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置し、リスク発生の防止およびリスクが顕在化した場合の適切な対処に努めております。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年4月22日)現在において、当社が判断したものです。

 

(1)プロジェクトマネジメントに関するリスク

 当社グループにおいては、様々なプロジェクトを進めていく上で、ますますプロジェクトマネジメントの重要性が高まっており、その強化が不可欠であります。しかしながら、プロジェクトの遂行にあたり、顧客とのコミュニケーションギャップ等により当初見積との差異が生じ、納期遅延や想定外の作業工数・リカバリーコストの発生、協力会社への外注コスト増加等のリスクを完全に回避することができない場合があります。また、法令や社会情勢の変化等の外部要因により、プロジェクトの進行が阻害される場合があり、その結果、プロジェクトの採算が悪化し、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 それに対し、受注前の見積段階において、プロジェクト担当の事業部門、営業部門、品質管理部門における見積検討会の実施、プロジェクト実施段階における予算/実績の乖離モニタリングやプロジェクト監査会での実行状況のチェック、プロジェクト品質向上のための各種研修を行い、プロジェクトマネジメントに起因するリスクの低減に努め、リスク対策の定着を図っております。また、これら取り組みに対し内部監査部門による業務監査、取締役会・経営会議などで、特に業績、財務状況に影響を及ぼす可能性が高いプロジェクトについて、モニタリングを行ってリスクの低減に努めております。

 

(2)人材の確保・育成に関するリスク

 当社グループが事業を遂行する上で重要なことは、高度な技術力やノウハウなどを兼ね備えた優秀な人材を確保することであります。しかしながら、経済情勢や雇用情勢などに加えて人材獲得競争の激化などにより、優秀な人材が確保・育成できない場合、当社グループの業績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 それに対し、当社では従業員エンゲージメント調査を実施し、従業員の意識や職場環境の現状を可視化することで、人材の安定的な確保のための必要な施策の実施に努めております。また、人材ポートフォリオを明確にすることで、事業戦略と連動した育成を推進し、将来の成長を支える人材の確保・育成の強化を図っています。さらに、採用担当者の増員など採用体制の増強、社内における教育体制の充実と社外での教育機会の奨励、従業員のモチベーションを高めるインナーブランディングの強化、健康保険組合との協働による健康経営への取り組みなど、人材に関するリスクの低減に努めております。

 

(3)情報セキュリティ・サイバー攻撃に関するリスク

 当社グループでは、業務遂行上、顧客が有する様々な秘密情報を取り扱う機会がありますが、国際的な情勢によりサイバー攻撃等の外部からの不正アクセス等による情報漏えいリスクや業務の中断リスクが更に高まっており、個人情報や重要秘密情報の漏えい等の情報セキュリティ事故が発生した場合、損害賠償請求や信用失墜につながり、当社グループの業績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、サーバやネットワークに対するサイバー攻撃等によりシステムやネットワークが停止した場合においても同様に、損害賠償や信用失墜につながり、当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 それに対し、各情報セキュリティリスクに対応するセキュリティ機器やサービスの導入、情報セキュリティに関する規程類の整備、日本シーサート協議会など情報セキュリティに関連する団体への加入などによる外部組織との連携強化、当社データセンター等におけるISO/IEC 27001の認証やプライバシーマークの取得など適切な管理、情報セキュリティ教育の実施、インシデント検知と発生時対応のためSOC(Security Operation Center)の活用および、CSIRTである「CEC-SIRT(CEC Security Incident Response Team)」を組織して情報セキュリティ・インシデントへの対応力を強化し、リスクの低減に努めております。

 

(4)知的財産権に関するリスク

 当社グループは、その事業活動において知的財産権の保護に努めるとともに、第三者の知的財産権を尊重し、故意に権利侵害しないだけでなく、意図しない権利侵害が発生しないよう十分な注意を払っております。具体的には、自社製品が他社の知的財産権を侵害しないことを確認するために権利情報を定期的に調査し、知的財産権に関する社内での教育・啓発を図るなど、事業における直接的な損害や機会損失といったリスク低減に努めております。

 

(5)コンプライアンスに関するリスク

 当社グループは、国内外の法令・規制および社内規程を遵守して事業活動を行っておりますが、意図せず法令等に抵触する事態が発生した場合や、従業員による不正行為、長時間労働やハラスメントといった人事労務上の問題が発生した場合には、損害賠償請求や信用失墜等により、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 それに対し、顧問弁護士や社会保険労務士との相談・コミュニケーションの増強、法令情報取得のための機会の拡大、「シーイーシーグループ行動指針」「シーイーシーグループ行動規範」の制定を通じて、コンプライアンス遵守体制の強化、企業倫理の向上、法令・社内規程等の遵守の徹底、役職員の意識向上を図っております。また、コンプライアンス教育を全社員・階層別に実施、社内外に内部通報窓口を設置するなど、コンプライアンスに関するリスクの低減に努めております。

 

(6)顧客・経済情勢に関するリスク

 当社グループの売上高に占める上位10社の比率は約4割程度であり、安定顧客に対する売上比率、および特定業種に対する売上比率が高いことは、当社グループの強みでもあります。しかしながら、経済情勢の変化に伴い顧客の事業環境が変化した場合、当社グループの業績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 それに対し、多様化するお客様の経営課題に合わせて、ソリューションを幅広く提案できよう営業本部を設置し、部門横断の「クロスセル」をさらに推進することで、環境や顧客の変化・経済情勢に起因した影響に対するリスクの低減に努めております。

 

(7)投資に関するリスク

 当社グループは事業拡大や競争力強化のため、設備の充実や、新規事業の立ち上げなどの様々な投資を行っております。しかしながら、社会情勢の変化や景気悪化などにより、投資案件が計画どおりに進まず当初見込んでいた利益が得られない場合や想定外の費用が生じることがあり、当社グループの業績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 それに対し、投資効率を高めるため、事前に投資効果やリスク等を十分に検討し、開発投資や設備投資に対する計画を策定した上で投資を実施し、投資に関するリスクの低減に努めております。

 

(8)感染症や大規模災害に関するリスク

 当社グループの事業所において、大規模災害の発生、長期にわたる電力不足など事業継続に支障が起きた場合、当社グループの業績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 それに対し、従業員の安全確保及び事業継続のため、災害対策計画や事業継続計画を策定、在宅勤務体制の整備、感染者が出た場合の消毒作業等のルール化、被害の防止・軽減および早期復旧等、危機管理の徹底に取り組んでおり、感染症や大規模災害に関するリスクの低減に努めております。

 

(9)外注取引に関するリスク

 当社グループは、外部の技術力やノウハウ等を活用するため、システム開発等、業務の一部を当社グループ外の企業に委託するなど外部発注を行っております。しかしながら、IT需要の高まりによる発注コストの増大、外部発注先に起因する納期遅延や品質低下に加え、ヒューマンエラー等による情報漏えい事故が起きた場合、また、同業他社との競合により優秀な外部発注先が確保できない場合、当社グループの業績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 それに対し、下請法の法令遵守はもちろんのこと、外部発注先の技術力やコスト、財務状況等の信頼性、過去の発注実績などを総合的に勘案した選定、情報セキュリティ等に関するガイドライン等の策定等を行っており、外注取引に関するリスクの低減に努めております。

 

 

(10)国際紛争に関するリスク

 当社グループは、中国上海において子会社を有し、国外の顧客やサプライヤーからのサービスや製品にかかる取引があります。しかしながら、上海における子会社は小規模でありオフショア開発が主要な事業であり、直接的な海外顧客(主に日系企業への現地展開)との取引量は少なく、またサービスや製品のサプライに関しても、経済安全保障上のリスクが高い国を本拠点とする企業によるサービス等の取扱いは少ないため、国際紛争の直接的な影響は大きくありません。一方で、顧客において国際紛争に巻き込まれ、現地工場での操業停止や当該国での市場の閉鎖・撤退等の状況に追い込まれ、業績悪化や計画変更に伴う発注の延期等が発生した場合、また国内のエネルギー供給などに問題が生じ燃料費の高騰に伴う光熱費、特に電気代の高騰が生じた場合、当社グループの業績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 それに対し、子会社、サプライヤー、顧客との密なコミュニケーション、各種メディアからの情報収集を中心に行い、国際紛争が当社グループに与える影響を分析し、影響を考慮の上で紛争に関するリスクの低減に努めております。

 また、当社グループは、国家によるサイバー攻撃を直接受ける可能性があります。その点については、「(3)情報セキュリティ・サイバー攻撃に関するリスク」において、当該可能性を含めて記載しておりますので、そちらをご参照下さい。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

(1) 経営成績

 当連結会計年度(2024年2月1日~2025年1月31日)におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善するなか、政府による景気支援策の効果もあり緩やかな回復基調が続きました。一方で、米国の政策動向や欧州における高い金利水準の継続、中国経済停滞の継続的な影響など、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクに加え、物価上昇、金融資本市場の変動等が影響し不透明な状態が続きました。

 

 情報サービス産業においては、企業の生産性向上や競争力強化を目的としたDX関連への投資意欲は引き続き高く、ビジネス構造改革に向けたシステム刷新やクラウドへの対応等、デジタル化の需要拡大が継続しました。とりわけ、AIを活用した業務効率化や働き方改革への適用が社会に浸透してきており、情報に対するセキュリティ意識の高まりと同時に、高度化するサイバー攻撃に対応するためのサイバーセキュリティ対策需要が高い水準で推移しました。

 

 このような情勢のなか、当社グループは2023年1月期から2025年1月期を対象とした3カ年の中期経営計画の最終年度を迎え、「サステナブルな社会の実現」と「持続的成長」を目指し、「事業力の強化」、「人材・技術力の強化」、「経営基盤の強化」を基本方針に掲げ事業活動に取り組みました。また、資本効率の向上と資本政策の一環として、2024年12月末を期限に30億円を上限とした自己株式を取得し、2025年1月に全株式の消却を実施いたしました。

 

 これらの結果、当連結会計年度の業績については、顧客企業におけるICT投資が増加、主力事業※1は堅調に推移し、注力事業※2は上振れて進捗した結果、売上高は562億8百万円、前期比30億8千4百万円(5.8%)の増となりました。利益面においては、成長投資を含む販管費の増加があったものの、営業利益は66億9千6百万円、前期比3億3千4百万円(5.3%)の増、経常利益は68億7百万円、前期比3億9千7百万円(6.2%)の増となりました。親会社株主に帰属する当期純利益については、データセンター事業の再編に伴う特別損失の計上などにより40億4千万円、前期比5億1百万円(11.0%)の減となりました。

 

※1 主力事業:当社の収益基盤である受託開発をはじめ、ICTインフラの提供および運用構築事業、車載開発、組み込み開発や検証ビジネス等を、当社を支える安定した事業基盤である主力事業として定義しております。

※2 注力事業:①生産・物流ソリューション②モビリティサービス③マイクロソフト連携サービス④マイグレーションサービス⑤セキュリティサービス⑥DXクラウド基盤の6事業を当社の注力事業として定義しております。

 

 

セグメントごとの経営成績は、以下のとおりです。

(デジタルインダストリー事業)

 スマートファクトリー事業では一部で投資抑制の影響が残るものの、工場自動化(FA)開発は増加しました。コネクティッドサービス事業では、注力事業であるモビリティサービスにおいて、ビッグデータ分析基盤構築や、バッテリー式電気自動車(BEV)向けの車載制御開発や品質検証が伸長しました。中部サービス事業では、自動車業界を中心に基幹システム開発が好調を継続しており、西日本サービス事業では物流ソリューションおよびEOLサービスが増加しました。結果、売上高は200億1千6百万円、前期比17億2百万円(9.3%)の増となりました。利益面においては、注力事業の伸長および増収に伴う増益により、営業利益は50億4千8百万円、前期比9億4千8百万円(23.1%)の増となりました。

(サービスインテグレーション事業)

 サービスインテグレーション事業では、注力事業のマイクロソフト連携サービスにおいて、Dynamics 365(CRM)やローコード開発のPower Platformが伸長し、マイグレーションサービスでは、DX推進を背景にクラウド化やセキュリティ強化の需要増加により増収増益となりました。プラットフォームアーキテクト事業では、官民ともにセキュリティ対策需要が底堅く、注力事業であるセキュリティサービスの引き合いが増加しました。また、ICTインフラ構築事業は自治体向け構築案件の延伸により横ばいとなりました。結果、売上高は361億9千2百万円、前期比13億8千1百万円(4.0%)の増となりました。利益面においては、注力事業の伸長および増収に伴う増益により、営業利益は68億5千6百万円、前期比2億5千万円(3.8%)の増となりました。

 

生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

デジタルインダストリー事業

19,598

108.7

サービスインテグレーション事業

32,346

104.8

合計

51,945

106.3

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

② 受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

デジタルインダストリー事業

20,533

111.7

3,935

115.2

サービスインテグレーション事業

36,083

103.6

12,228

99.1

合計

56,617

106.4

16,163

102.6

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

③ 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。

セグメントの名称

売上高(百万円)

構成比(%)

前年同期比(%)

デジタルインダストリー事業

20,016

35.6

109.3

サービスインテグレーション事業

36,192

64.4

104.0

合計

56,208

100.0

105.8

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

 

(2) 財政状態

(流動資産)

 流動資産の残高は391億1千4百万円で、前連結会計年度末と比較して1億9百万円の増加となりました。これは、現金及び預金が12億4千1百万円減少した一方で、受取手形、売掛金及び契約資産が10億9千万円増加、流動資産その他に含まれる前払費用が1億8千3百万円増加したことなどが主な要因です。

(固定資産)

 有形固定資産の残高は68億2千1百万円で、前連結会計年度末と比較して6億1千6百万円の減少となりました。これは、建物及び構築物(純額)が6億1千9百万円減少したことなどが主な要因です。

 無形固定資産の残高は3億9千5百万円で、前連結会計年度末と比較して1億5千6百万円の増加となりました。これは、無形固定資産その他が1億3千1百万円増加したことや、ソフトウエアが4千2百万円増加したことなどが主な要因です。

 投資その他の資産の残高は63億3百万円で、前連結会計年度末と比較して15億9千6百万円の増加となりました。これは、投資有価証券が6億3千1百万円増加、退職給付に係る資産が3億7千9百万円増加、投資その他の資産その他に含まれる保証金・敷金が3億6千3百万円増加したことなどが主な要因です。

 この結果、固定資産の残高は135億2千1百万円で、前連結会計年度末と比較して11億3千6百万円の増加となりました。

(流動負債)

 流動負債の残高は103億8千9百万円で、前連結会計年度末と比較して13億8千3百万円の増加となりました。これは、未払法人税等が8億8百万円増加、買掛金が3億4千5百万円増加したことなどが主な要因です。

(固定負債)

 固定負債の残高は18億4千4百万円で、前連結会計年度末と比較して2億4千7百万円の増加となりました。これは、資産除去債務が3億8百万円増加したことなどが主な要因です。

(純資産)

 純資産の残高は404億1百万円で、前連結会計年度末と比較して3億8千5百万円の減少となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が40億4千万円増加した一方で、自己株式の取得により自己株式が29億9千9百万円増加、剰余金の配当の実施により利益剰余金が18億3千8百万円減少したことなどが主な要因です。なお、自己株式の消却によって、自己株式が18億2百万円減少した一方で利益剰余金が17億9千7百万円減少、資本剰余金が4百万円減少しており、純資産合計に影響はありません。

(3) キャッシュ・フロー

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」)は、254億7千2百万円と前連結会計年度末と比較して12億4千1百万円減少となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金の増加は52億6千9百万円(前期比4億1千3百万円の収入減)となりました。これはおもに税金等調整前当期純利益57億9千5百万円などによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金の減少は16億6千7百万円(前期比9億1千9百万円の支出増)となりました。これはおもに固定資産の取得による支出7億6千7百万円や敷金及び保証金の差入による支出4億3百万円などによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金の減少は48億5千万円(前期比33億2千3百万円の支出増)となりました。これはおもに自己株式の取得による支出29億9千9百万円や配当金の支払額18億3千6百万円などによるものです。

資本の財源および資金の流動性についての分析

(財務戦略の基本的な考え方)

 当社グループの主な資金需要は、生産活動に必要な運転資金、販売費及び一般管理費等の営業活動費であり、これらについては現在手元資金で賄える状況でありますが、変化する経営環境に対処するため、短期借入を行っております。今後も安定した経営基盤に基づく収益向上を図り営業活動によるキャッシュ・フローの増加に努めてまいります。

 なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は254億7千2百万円となっております。

 

(経営資源の配分に関する考え方)

 当社グループの経営資源の配分に関しては、上記基本的な考え方を基に、変化する経営環境に対処するため、事業展開への備えと研究開発費用および設備投資などを考えております。また、当社グループでは株主還元についても経営における重要課題の一つと考えており、当連結会計年度においては、1株当たり年間配当55円、総額18億3千6百万円の配当を実施いたしました。なお、当社の配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。

 

キャッシュ・フロー指標のトレンド

指標

2023年1月期

2024年1月期

2025年1月期

自己資本比率(%)

80.5

79.3

76.7

時価ベースの自己資本比率(%)

109.3

107.7

115.8

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

0.2

0.1

0.1

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

894.8

2,351.6

1,836.7

(注)1.各指標の算出方法は以下のとおりです。

自己資本比率           :自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率     :株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー/利払い

2.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

3.株式時価総額は、期末株価×(期末発行済株式総数-期末自己株式数)により算出しております。

4.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

5.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利息を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結損益計算書の支払利息を使用しております。

 

(4) 重要な会計方針並びに、会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表作成にあたって、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づいて見積りを行っておりますが、見積りには不確実性があるため実際の結果と異なる場合があります。

連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

また、会計方針のうち、重要なものは「第5経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)3 会計方針に関する事項」に記載しております。

なお、同項目のうち「(5)重要な収益及び費用の計上基準」に係る補足情報は以下のとおりです。

 

当社グループは、システム開発業務及び機器等を組み合わせた取引において、多数の財又はサービスを提供することがあるため、そのような場合には履行義務の識別がより主観的となります。履行義務を適切に識別しない場合には、収益認識の時期を誤ることとなるため、履行義務の識別が重要となります。

また、顧客への財又はサービスの提供に他の当事者が関与している場合、当社グループが本人に該当するか、代理人に該当するかを判定するため、当該財又はサービスを顧客に提供する前に当社グループがそれらを支配しているかについて、当事者として財又はサービスの提供に主たる責任を有しているか、在庫リスクや価格裁量権を有しているかの指標等を用いて評価する必要があり、その評価には経営者の主観的な判断が必要となります。当該判定の結果により認識される収益の金額が総額なのか純額なのか、大きく異なることとなるため、本人と代理人の区分の判定が重要となります。

 

(5) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2025年3月に長期経営計画(VISION 2030)を発表しました。VISION 2030の6カ年の前半3カ年を1stステージ「中期経営計画 2025-2027」、事業変革を加速させる成長期として捉えております。1stステージの財務指標として、売上高720億、営業利益86億円、ROE14%以上を目標として掲げております。また、後半3カ年を2ndステージ「中期経営計画 2028-2030」、創出価値の拡大を目指す拡大期として捉えております。2ndステージの財務指標として、売上高1,000億、営業利益143億、ROE20%以上を目標としております。

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当連結会計年度における研究開発活動は、変化する顧客のニーズに対応できる特徴ある製品・サービスを創出することを目的としており、提出会社中心に進めてまいりました。

具体的には、新製品開発をはじめとする自社商品の競争力強化、および顧客に価値あるICTサービスを提供するための技術力強化をテーマに、以下のような活動を行ってまいりました。

当連結会計年度の研究開発費は、425百万円(前期比66.1%の増)であり、主要な研究開発活動は以下のとおりです。

 

(デジタルインダストリー事業)

製造現場および物流におけるデジタル化を支援するスマートファクトリー分野、自動車業界向けを中心に開発を行うコネクティッド分野において、以下の開発研究を行いました。

・Connected CIの技術研究

・コネクティッド分野の技術研究

・SimuFieldシリーズにおけるニーズ探求のための調査研究および実用化検証

・コネクティッド分野におけるクラウド関連サービスの調査研究および実用化検証

・LogiPull機能拡張開発

 

 この結果、当連結会計年度の研究開発費は、69百万円(前期比46.3%の減)となりました。

 

(サービスインテグレーション事業)

ビジネス環境における多種多様な脅威から守るセキュリティサービス分野と、ビジネス成長の加速に不可欠となるクラウドサービス分野において、以下の開発研究を行いました。

・SmartSESAME の機能追加開発、ならびに関連サービスの調査研究および実用化検証

・クラウド関連サービスに関する実用化検証

・at Clapsの開発

・Convergent機能拡張開発

・Re@nove機能拡張開発

 

この結果、当連結会計年度の研究開発費は、356百万円(前期比179.7%の増)となりました。