文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 会社の経営基本方針
当社は、創業以来「働いて良かったといえる職場づくり」「社会に存在価値のある職場づくり」を経営理念とし、「建設で拓く豊かな都市づくり」「職域で自己を磨く人こそ建設人」を経営スローガンに、「自然資本と人的資本を明日に継(つな)ぐ建設力」という価値観を常に共有しながら、今般、第59期(2026年1月期)から第61期(2028年1月期)を最終年度とする中期経営計画を新たに策定いたしました。
策定にあたっては、環境サスティナブル経営を長期ビジョンとする「安定成長・100年企業」の礎を築く3年間と位置付け「たゆみない付加価値の提案・提供」を計画の基本方針といたしました。
(2) 中長期的な会社の経営基本戦略と経営目標
その基本方針の下に「人財の確保・育成(技術の伝承)」と「更なるイノベーション」の基本戦略を実行することで今後の成長に繋げてまいります。
経営数値目標としては、計画の最終年度第61期(2028年1月期)に売上高150億円、営業利益7.5億円、ROE自己資本利益率6%、DOE株主資本配当率1.5%を設定いたしました。なお、当社の株主資本コストは4.5~5.9%(CAPMベース)と認識しています。
また、非数値目標では、「建設業の新3K(給与・休暇・希望)を体感できる職場づくり」と「生産性の向上・環境負荷低減の新工法を研究開発し社会に必要な職場づくり」を設定いたしました。
具体的方策では、各種事業戦略、経営基盤の強靭化、ガバナンスの充実、資本コストや株価を意識した経営の実現を鋭意展開してまいります。
(3) 経営環境と会社の対処すべき課題
当社を取り巻く経営環境は変化しており、建設業の人的構造的な課題である建設技能労働力不足と高齢化が慢性的になる中、労務人件費の上昇や建設資材価格の高騰に伴う顕著な建設コストアップの継続(収益圧迫と下請構造下の価格転嫁、日建連調査では最近の48か月間で23~27%上昇)、2024年正式導入の時間外労働上限規制に対応する生産性向上、求人活動売り手市場における初任給大幅引上大手との賃金格差拡大(人材の確保と離職防止)などと認識しています。
また、当社の事業ウエイトが高い主要マーケットの動向については、特殊土木工事等事業部門では自然災害予防復旧工事を含む各種インフラ更新需要の持続、環境関連工事事業部門では再生可能エネルギー分野(ソーラー発電、洋上風力発電)の環境配慮型建設への移行、住宅関連工事事業部門では長期的少子高齢化に伴う横ばい漸減傾向、中規模マンション建設等の建築事業部門では一定ニーズ堅調と予測しています。
これらの経営環境変化を踏まえた会社の業績上の対処すべき課題は「人財の確保・育成(技術の伝承)を強化推進すること」と「前事業年度・当事業年度と2期連続の低調利益を好調決算した前々事業年度2023年1月期並み水準への早期Ⅴ字回復をめざすこと」と捉えており、この達成に向けて全社全力で取り組みます。
さらに、当社の財務上の対処すべき課題は、「ROE自己資本利益率が2.63%に低下したこと」と認識しておりますので、まずは利益回復により、第61期(2028年1月期)の目標6%水準への復活に向けて、鋭意努力する所存です。なお、当社の推定する株主資本コスト(CAPMベース)は4.5~5.9%であります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当会計年度末現在において当社が判断したものであります。
当社は、「働いて良かったといえる職場づくり」「社会に存在価値のある職場づくり」を経営理念としており、サステナビリティ経営に力を入れております。サステナビリティに関する基本的な方針の策定、課題解決に向けた取り組み及び人的資本・知的財産への投資等は常務会で審議したうえで、取締役会に諮ることとしております。
当社を取り巻く経営環境は著しく変化しており、労働集約型ビジネスである建設業において、長期経営計画に基づくサステナビリティに関する重要課題は「労働力の確保」と「イノベーション」であると認識しております。
労働力の確保においては、ダイバーシティマネジメント、健康経営、職場環境整備に取り組んでおります。具体的には、性別や国籍を問わない公正な採用、健康経営推進室設置による社員の健康維持、女性活躍推進に繋がる男性育休取得や勤務体系設定、DX推進による効率的な業務遂行等に注力してまいりました。
人材育成の戦略としましては、各部門の次世代経営者候補を中心としたチームで時事問題や社内の問題解決を図ることによりマネジメント力の高い人材を育成いたします。また、社内外問わず講師を招いて定期的に研修会を行い、知識を全社共有化し一人一人の意識を高めて組織力を向上させております。これからも全社横断的に人材育成を進めて新たな方針・施策を審議・決定することを検討してまいります。
当社は、『SDGsへの取組み~Sustainable Development Goals~』のなかで、環境問題、社会課題、企業統治の分野ごとに、重要課題を設定し取り組んでおります。
特に建設業という業態から「すべての人が健康で安全に働ける作業環境を実現すること」を最重要課題としており、自然環境や作業環境の改善とその普及に取り組んでおります。
当社はリスク管理を経営の重要課題と位置づけ、各部門の業務におけるリスクは担当業務役員が責任者となり、各部門に対してリスクヒヤリングを実施し、リスクの見直しと軽減化を図るとともに発生時に迅速に対応できるよう管理体制の整備に努めております。
損失の危険が発生した場合、危険の内容と損失の程度等について、直ちに代表取締役社長・取締役会・監査等委員会に通報される体制をとっております。
人財の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標については、「採用した労働者に占める女性労働者の割合」の数値目標を「1割以上」と設定しております。当事業年度の実績は、新卒採用者数が5名(男性4名、女性1名)で、採用した労働者に占める女性労働者の割合は2割となりました。求人媒体に活躍している女性労働者を掲載するなど、今後も積極的に募集を行っていく所存でございます。
リスク・マネジメントを推進するにあたり、損失を未然に低減・回避すべき当社が想定する事業等の主なリスクは、以下のとおりです。なお、文中における将来に関する事項については、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
当社の施工管理手法の基本である安全Safety、品質Quality、コストCost、納期Delivery、環境Environmentの各方面からのリスク
… 信用調査を励行する。
… 各支店在籍者を含めて健康診断を100%実施する。産業医を活用し、必要に応じて産業医面談を実施する。
… トラブル防止の観点から、特に新規または中断休眠後の取引については省略することなく正規の再確認ルールを経る。トラブルを未然防止するためには、早い段階から弁護士に相談するよう心掛ける。
(5) 情報セキュリティ…利用頻度が急拡大する中、重要な情報を取り扱うケースも増えている。
(社外)
・セキュリティ事故の内容によっては、高額な損害金を賠償しなければならない。
・見積書や図面など秘匿性が高い情報を扱う場合は、必ずセキュリティーをかけるよう習慣付ける。
(社内)
複数の社員が1つの情報を共有し編集するネットワーク利用するケースも出てきているので、特に注意する。
(6) サプライチェーンなどに起因する連鎖リスク
(7) 気候変動に伴う地震・洪水・山火事などの自然災害ハザードリスクやコロナウイルス感染症などのパンデミックリスク(直接的には制御できないリスク)
… 安否確認システムなどを含めた全社BCP(事業継続計画)訓練を定期的に実施する。
当社の受注高、売上高、繰越高の関連推移(2017年1月期~2025年1月期)は、次のとおりであります。
なお、単品受注生産である建設業では、受注したが売上に至っていない「繰越高」(受注残、施工残、未成工事高とも呼ばれる)も重要な経営指標であるため、いわゆる下支え的な営業財産として「見える化・可視化」しております。
また、足踏み傾向となった当事業年度第58期(2025年1月期)及び前事業年度第57期(2024年1月期)におけるセグメント別の業績内訳(受注高・売上高・営業利益など)は次のとおりです。
・特殊土木工事等事業は、都市再開発事業での計画の見直しや着工の遅れから受注高、売上高が減少。今後は、専業者として多彩な工種で社会のニーズに応えられる施工技術を各地域の建設技術フェアやフォーラムへ積極的に出展PRして工事受注の拡大につなげたい。損益面では、硬質地盤による難解な施工条件から工期延長と機械の故障、人員増員等により、予算を大幅に超える不採算工事を計上した。
・住宅関連工事事業は、地盤改良工事の大型案件と新規顧客からの受注に注力した。戸建住宅主流であった地盤改良工事を工場やマンション・アパートの多用途大型中型案件の地盤改良工事へと施工対象を拡げ、得意先拡大につなげた。
・環境関連工事事業は、太陽光発電設備構築と土壌浄化工事を順調に新規受注できた。
・建築事業は、着実に受注を継続したが、下請施工会社の破産手続により工期延長と新たな下請け契約締結により、関連するマンション建築に係る支出が予算を大幅に超過した。(2期連続赤字)
当事業年度第58期(2025年1月期)及び前事業年度第57期(2024年1月期)のセグメント別業績内訳は下記の表のとおりであります。
(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減があるものについては、当期受注高にその増減額を含んでおります。従いまして、当期売上高にもかかる増減額が含まれております。
2 当期受注高は、再生可能エネルギー等事業を除き(当期売上高+次期繰越高-前期繰越高)に一致いたします。
なお、当事業年度における受注工事高は138億59百万円(前年同期比0.2%減)、前事業年度に比べ31百万円減少いたしました。
売上高合計は134億82百万円(前年同期比7.5%減)となり前事業年度と比べ10億89百万円の減少いたしました。
損益面につきましては、以下のとおりです。
営業利益は1億70百万円(前年同期比24.5%減)となり前事業年度に比べ55百万円の減少いたしました。
経常利益は2億44百万円(前年同期比22.1%減)となり前事業年度に比べ69百万円の減少いたしました。
当期純利益は2億29百万円(前年同期比8.3%増)となり前事業年度に比べ17百万円の増加いたしました。
(2) 財政状態に関する分析
当事業年度末における資産合計は115億30百万円となり、前事業年度末に比べ1億9百万円減少いたしました。これを流動・固定資産別にみますと以下のとおりです。
・流動資産は76億4百万円、前事業年度末に比べ3億3百万円増加。これは主に契約資産の増加によるものであります。
・固定資産は39億26百万円、前事業年度末に比べ4億13百万円減少。これは主に投資有価証券の減少によるものであります。
当事業年度末の負債合計は26億88百万円となり、前事業年度末に比べ2億36百万円減少いたしました。これを流動・固定負債別にみますと以下のとおりです。
・流動負債は22億44百万円、前事業年度末に比べ1億41百万円減少。これは主に電子記録債務の減少によるものであります。
・固定負債は4億44百万円、前事業年度末に比べ94百万円減少。これは主に長期借入金の減少によるものであります。
・当事業年度末における純資産の合計は88億42百万円、前事業年度末に比べ1億26百万円増加。これは主に繰越利益剰余金の増加によるものであります。
また、当社のPBR株価純資産倍率は0.4倍にとどまっているため、長期目標1倍以上をめざして、全社での経営全般にわたる取組みを表明いたしました。
・長期的には「維持・継続」から「効率・成長」型の財務経営への変革を推進する。
・具体的には以下の3施策を検討・実施していく。
① 直面する財務課題への対応…売上・利益の回復(P/L視点の対応)、資本コストの低減や資金の効率化(B/S視点の対応)、資金効率と投資の戦略的検討(B/Sの改善)、1株配当における配当方針宣言型の引上げ
② 資本効率の向上…政策保有株の縮減(前期に一部実施)、事業ポートフォリオによる平準化(建築事業や不動産開発事業)、リスクマネジメントの高度化(海外事業や不動産開発事業)
③ 成長分野への積極的投資…人的資本やDXへの投資、不動産開発市場への投資、新技術の研究開発、再エネ分野への新機械導入、M&Aの検討、ESG関連への投資、社会貢献債権の購入検討
当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況については、現金及び現金同等物が、前事業年度末残高に比べ2億84百万円減少した結果、当事業年度末残高は29億70百万円となりました。
なお、当事業年度における各キャッシュ・フローは次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果得た資金は、3億71百万円(前事業年度は8億58百万円の収入)となりました。この主な要因は、契約資産の増加2億40百万円と仕入債務の増加1億69百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果使用した資金は、4億37百万円(前事業年度は3億43百万円の支出)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出4億58百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果使用した資金は、2億17百万円(前事業年度は4億97百万円の支出)となりました。この主な要因は、長期借入金の返済による支出1億33百万円によるものであります。
なお、当社の運転資金需要の主なものは、工事費、販売費及び一般管理費の営業費用であります。投資を目的とした資金需要のうち主なものは、建設事業に係る工事機械の取得を目的とした設備投資によるものであります。
当社は、運転資金及び投資目的とした資金需要を自己資金および一部を借入金で賄っております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いているため、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社は都市土木を主体とした土木専業者で、都市における多様化、高度化した生活環境の変化への対応、また、自然災害に強く、自然と調和した環境づくりなどの社会基盤整備を目的とした特色ある技術の確立を図るため、新工法、新技術の開発と導入、既存工法の改良などに積極的に取り組んでおります。当事業年度の研究開発費として特殊土木工事等事業部門、住宅関連工事事業部門、環境関連工事事業部門で