第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当社グループは、『ミライの「はたらく」を、明るくする』というミッションのもと、クラウドサービスによる人材開発のソリューションを提供しています。はたらく人々の「成長を実感する瞬間」を増やすことで、ミライの「はたらく」が明るくなることを目指しています。

 さらに、『不確実性が増す現代社会に必要な人材開発プラットフォームを提供する』というビジョンを掲げ、「どうすれば企業の成長を促す人材を開発し、持続可能な信頼関係を構築できるのか」という企業からの根源的な問いに応えられるパートナーでありたいと考えています。

 

(2)経営戦略等

① HCMプラットフォーム提供サービス

 我が国の大企業に特徴的な複雑な組織構造、人材管理手法、業務プロセスなどに対応できるようHCMプラットフォームを長年にわたり進化・改良させてきました。その結果、国内顧客の半数が売上高1,000億円以上の企業となっています。このHCMプラットフォームを競争的な価格で提供することにより他社の参入を難しくするとともに、プラットフォーム上で利用できるサービス(eラーニングコンテンツ、オンライン英会話、キャリア開発サポートなど)を充実させることにより高い収益性を実現していきます。

 

② HCMクラウドを活用したオンライン英会話サービス

 HCMクラウドの優れた受講管理機能を活用するため管理者・監督者(先生、英会話講師、保護者)が介在する学習塾市場でオンライン英会話を提供しています。オンライン英会話以外のサービス(英語および他教科のeラーニングコンテンツ、オンライン個別指導、受験情報の提供など)を充実させることにより高い収益性を実現していきます。また、学習塾向けに確立したサービスのインフラをフル活用するためにBtoC向けにもオンライン英会話レッスンを提供しています。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 成長市場で事業を展開している当社グループは、経営指標として売上高、営業利益を重視しております。尚、当社グループの事業の特徴としてソフトウエアの減価償却が大きな影響を及ぼします。そのため経営指標としてEBITDA※4 および連結ROEついても活用することで収益性および資本効率性を把握することとしております。

※4 EBITDA≒営業利益+減価償却費+長期前払費用償却額+ソフトウエア減価償却費

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループのHCMクラウド事業は、狭義にはHCM市場におけるLMS(Learning Management System)のセグメントを主要なターゲットとしています。わが国ではLMSは学習管理機能を持ったシステムをLMS、パフォーマンス管理やキャリア開発機能を持ったシステムをタレントマネジメントシステムと捉えていますが、世界ではこの両者の機能を兼ね備えたシステムをLMSとしています。当社グループのCAREERSHIPは両者を備えており、世界的にはLMS市場のサービスに分類されます。MarketsandMarkets社によると、世界のLMSの市場規模は2023年の221億ドル(3兆3,150億円、1$=150円で計算。以下同じ)が2028年には519億ドル(7兆7,850億円)となることが予測されており、この間の年間成長率は18.6%となります。世界全体に占める我が国のGDPの割合は4.2%(内閣府)なので、同率程度のLMS市場規模が見込まれるとすると2023年は9.28億ドル(1,207億円)、2028年には21.7億ドル(2,834億円)となります。企業向けのクラウドサービスを利用するのは圧倒的に先進国であることを考えると、我が国のLMS市場の潜在的な規模はさらに大きいと考えられます。

 HCM市場においてはこれまでSFAやCRM※5 など通常業務を円滑に進めるためのサービスや、労務・勤怠管理や財務会計などスタッフ部門の業務効率化のためのサービスが中心でした。しかし、新型コロナウイルス感染症対応により促進されているリモートワークやメンバーシップ型からジョブ型への働き方の変革によって、情報共有やコミュニケーション、さらに人材開発やキャリア開発をターゲットとしたサービスへと展開しつつあります。HCMクラウド事業は、働き方改革、労働生産性向上、人と企業と社会のかかわり方の新たな展開などに大きく貢献することが期待されています。

 当社グループは、このような事業環境下において、経営ビジョンを達成するために、以下の事項を対処すべき課題として認識しております。

※5 SFA(Sales Force Automation)は商談開始してから受注に至るまでの営業プロセスを可視化て活動の支援・管理を行うシステム、CRM(Customer Relationship Management)は顧客情報を管理するシステムを指します。

 

① 人材確保

 昨今の人手不足は深刻で特に優秀なIT技術者の確保が非常に難しくなってきています。優秀なIT技術者を惹きつけるため、従業員が意欲を持って働くことができる職場の構築を進めていきます。

 具体的には、開発のトップまで3階層というフラットな組織設計に基づく権限移譲、クロスファンクショナルチーム(ミライ構想チーム)による開発テーマの決定への参与、BI、AIなどの最先端技術の開発を進めます。

 

② 開発の優先順位の明確化

 当社グループのビジネスモデルは汎用アプリケーションをクラウド上で複数の企業に提供するものです。利用企業数の増加やオンライン英語講座などコンテンツの多様化・高度化にともない機能追加やシステム変更の要望が急増しています。技術的、ビジネス的な要件を熟慮することにより開発現場が混乱しないよう優先順位を明確にしながらシステムの開発を進めていきます。

 開発のテーマとその優先順位はミライ構想チームで毎月検討され、その都度経営会議で検討・承認されます。

 

③ 為替レートの変動について

 当社グループが提供しているオンライン英会話サービスについて、フィリピンの講師センターから講師の提供を受けております。今後為替レートの変動次第で売上原価に影響が出る可能性がありますので、販売価格の変更などにより為替レート変動の影響軽微に努めます。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティの基本方針と取組

 当社グループは、企業理念である『ミライの「はたらく」を、明るくする』に基づき、事業を通じて様々なステークホルダーが働く中での「成長を実感する瞬間」を実感できるよう取り組んでおります。

 

・マテリアリティ:人的資本価値向上への取り組み

ワーキングマザーの活躍できる環境づくり
 当社グループの2024年度の中途入社者の約56%が女性であり、その約31%がワーキングマザーでした。社会全体としてワーキングマザーの就労に対する理解や環境整備が進み、柔軟な働き方を実現するための選択肢が増える中、前年同水準を維持できたことは、当社グループも引き続き求職者の多様なニーズに応えられている結果であると考えます。現在、すべての社員に出社・在宅勤務の選択が可能であると同時に、チーム内での業務補完性の高さも安心感につながり、積極的な採用が可能となっております。ワーキングマザーは業務開始時間・帰宅時間、出社/在宅も様々であることから、ダイバーシティを前提とした日程調整が当たり前になるなど、既存社員にも好影響を与えています。

 入社後の昇進・昇格は時短勤務であっても可能であり、実際に係長職級以上のワーキングマザーは全役職者の約7.6%(2025年1月末時点)となっており、働く時間、場所に捉われず評価する仕組みを整えています。こういった評価が可能になったのは、入退社等の影響により一時的に数字は低下しておりますが、働き方に依らない優秀な人材の積極登用や昇進・昇格を見据えた人材の育成など、指標とする25%の達成へ向けた取り組みを続けています。2018年より全社で行っている1on1ミーティングの中で、働き方やキャリアについて上長と相談する場があり、適切なアドバイスや環境整備ができているためと言えます。また、家庭とのバランスを整えるために重要な時期である、入社から半年間のオンボーディング期においても、「先輩ワーキングマザー」のメンティーとなり過去の自己の経験からアドバイスをすることで、定着に向けたステップを提示できているため、実力を伸ばし、働ける環境が提供できています。

 

個人パートナーの組織化とキャリア支援

 働き方に高い柔軟性が必要な、海外・地方在住、もしくは子育てのために仕事を離れたワーキングマザー人材を中心に、2019年より業務委託組織(※担当する職務によって直接雇用の場合もあり)を構築しており、現在社員61名(2025年1月末時点、全社員の約41%に相当する規模)となっています。専門性の高いアウトソーシング先として社内の生産性向上に寄与している他、社員登用までのキャリアステップを用意することで、質の高い人材プールとしても活用しています。これまでの社員登用実績は8名、参画から半年間の定着率は約87%となっており、働きやすい職場環境の向上に努めるとともに、今後はキャリアマップを定義することで、キャリアアップ支援も行ってまいります。また、エンゲージメントの概念を取り入れた、参画から1か月後のオンボーディング面談、3か月後のフォロー面談、以降1年ごとを目安とした定期面談を実施、またイベントとしてオンラインランチ会や忘年会の実施など、「働いて楽しい職場づくり」を実現すべく、環境を整えています。年1回の職場環境アンケートの結果、「業務にやりがいを感じている」割合は100%となり、子育てのブランクを埋めながら実力を伸ばし、再び活躍の場を見つけてもらえるよう、環境整備を進めています。

 

(2)ガバナンス

 当社グループにおけるサステナビリティ経営強化のためのガバナンス体制は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポ―レート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」に記載の体制と同様であります。なお、サステナビリティに関連した重要な課題については、毎月の取締役会において所轄の取締役より報告・共有され、対応策の検討を行っております。

 

(3)リスク管理

 当社グループは、グループ経営に関する様々なリスクを審議するため、リスク・コンプライアンス委員会を通して主要なリスクの状況について定期的にモニタリング、評価・分析し、グループ各社に必要な指示、監督を行うとともに、その内容を定期的に取締役会へ報告する体制を整えております。

 詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 ③ 企業統治に関するその他の事項 b.リスク管理体制の整備の状況」をご参照ください。

 

(4)指標及び目標

 当社グループは、上記(1)において記載した「人的資本価値向上への取り組み」を遂行してくためにワーキングマザーの活躍と個人パートナーのやりがい向上が必要と考えており、次の指標を用いております。

 課長職以上のワーキングマザーの比率 25%

 個人パートナーの職場アンケートによる「業務にやりがいを感じている」割合 100%

3【事業等のリスク】

 以下には、当社グループが事業展開その他に関してリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項について記載しております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが独自に判断したものであり、将来において発生する可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。また当社グループにとっては必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断において重要であると考えられる事項については記載しております。当社グループはこれらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に取り組む方針ではありますが、当社グループの経営状況、将来の事業についての判断及び当社株式に対する投資判断は、本項記載内容を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 

(1)事業環境に関するリスク

① インターネット利用の規制について

 当社グループは、インターネットを通じてサービスを提供しております。スマートフォンやタブレット型端末等、情報機器端末の普及により、インターネット利用環境が引き続き整備されていくとともに、当社グループが提供するサービスに関連する市場が今後も拡大していくことが事業展開の基本条件であるものと認識しております。

 そのため、インターネットの普及に伴う障害の発生、インターネットの利用に関する新たな規制等によって、インターネット利用の普及に支障が生じる事態が発生した場合には、当社グループが想定するサービス提供を行えないこととなる可能性もあり、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 経営環境の変化について

 当社グループが展開するHCMクラウド事業の分野は、企業による人材開発や教育といったタレントマネジメントに関する需要動向と密接な関係があります。そのため、当社グループは、企業の人材開発に対する投資意欲や企業を取り巻く景気動向に伴う需要の増減に影響を受ける可能性があります。

 当社グループでは、顧客企業との連携を密に取ることで企業の経営環境の変化の兆しを捉え、変化に対応した提案の実施等を行っていくこととしておりますが、これら顧客をはじめとした企業における経営環境の変化に伴い、当社グループが提供するサービスへの需要が減少した場合、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 技術革新について

 当社グループが事業を展開しているインターネット業界においては、技術革新のスピードが速く、それに基づく技術的な進歩や変化が激しく生じております。当社グループでは、こうした新技術やサービスに関する情報収集を常に行い、技術革新に対応した事業展開を進めておりますが、何らかの要因により、そうした技術やサービスへの対応が遅れた場合、当社グループの競争力の低下に繋がり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 競合について

 当社グループが展開するHCMクラウド事業の分野は、企業による人材開発や教育といったタレントマネジメントニーズの高まり、また、新型コロナウイルス感染症の対応により促進される働き方改革に伴うリモートワークの普及により今後更に市場規模が拡大していくことが見込まれております。そのため、当該分野に参入する競合企業が存在しております。特に、資金力のある大手企業が、当社グループと同様のサービスを提供する場合、高い知名度や大規模な広告費の投下などにより、当社グループが提供するサービスの優位性が損なわれ、サービスの収益性に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、引き続き顧客のニーズに則したサービスの提供を行うことにより競争優位性を確保していく方針としておりますが、競合企業の動向により、当社グループの競争優位性が低下した場合、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 顧客企業の購買行動の変化と継続率の低下

 CAREERSHIPをはじめ当社グループのサービスは高い利用継続率を維持しています。企業向けのクラウドシステムは、顧客企業が利用している企業内外の他のシステムとデータを連携する必要があります。また、一旦利用が開始されるとクラウド上に当社システムの形式のデータが蓄積されるため他社のサービスに切り替えにくい性質があります。

 ただ、顧客企業が、利用する外部システムを定期的に変更するというようなプラクティス(経営行動)をとると高い継続率を維持することが困難になり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 為替変動のリスクについて

 当社グループは、日本国外においても事業を展開しており、外貨建てにより収益の一部を受領し、費用の一部を支払っています。特に当社グループのオンライン英会話サービスはフィリピンから講師を調達しており、フィリピンペソの為替変動の影響を受けます。フィリピンペソは米ドルに連動していることから、米ドルの為替変動が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 検索エンジン最適化(SEO)への対応について

 GoogleやYahoo!等の検索エンジンにおいて、CAREERSHIP/クラウティをはじめとする当社グループ製品に関連するキーワードをインターネット検索した際に、検索結果で当社グループのウェブサイトがどの程度上位に表示されるかは、マーケティングの観点から非常に重要であります。当社グループ製品の顧客の多くは、検索エンジンの検索結果から誘導されてきており、検索エンジンからの集客数を確保するため、今後におきましてもSEO対策を実施していく予定であります。

 しかし、当社グループが適時適切にSEO対策を実施しなかった場合、または検索エンジンにおける検索アルゴリズム変更等により、これまでのSEO対策が有効に機能しなかった場合、当社グループへの顧客流入数が想定数を下回り、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業内容に関するリスク

① 海外展開について

 当社グループは、中国に現地法人を設置するとともにフィリピンにある英会話の講師センターから講師の提供を受けた上でサービス提供を行っております。海外事業においては、各国における内乱や大規模な騒乱、各国特有の政治動向やグローバル経済の影響によるカントリーリスク、固有の商習慣や法的規制等の潜在的なリスク要因があります。当社グループにおいては、現地法人や講師センターとの情報連携を密に取りカントリーリスクの兆しを把握し早急に対応する体制としておりますが、これらのリスク要因が顕在化した場合には、提供するサービスに支障が生じる可能性があり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② システム障害について

 当社グループは、サーバーを中心とするコンピュータシステムからインターネットを介してサービスを提供しております。システムの運用においては、バックアップ体制の強化や不正アクセス防御等、安定稼働のための対策を常に講じておりますが、機器の不具合や人為的ミス、想定を上回る急激なアクセス増加、自然災害、コンピュータウィルスの感染等によってコンピュータシステムや通信ネットワークに障害が発生する可能性、及び、不正なアクセスによってプログラム等の内容が改ざんされる可能性があります。その場合、顧客からの信頼を失うことや、損害賠償請求等の懸念があり、当社グループの事業、財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 知的財産権について

 当社グループでは、知的財産権の保護や管理の重要性について認識しており、当社グループの提供するサービスが第三者の商標権、著作権などの知的財産権を侵害しないように細心の注意を払っております。しかしながら、当社グループが、他社の知的財産権を侵害した場合や、その対応が適切に行えなかった場合には、損害賠償請求や訴訟に発展する恐れがあり、それに係る影響や人的・金銭的コストによって、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 訴訟について

 当社グループは本書提出日現在において、訴訟を提起されている事実はありません。しかしながら、将来において、当社グループの事業に起因する訴訟等の提起を受ける可能性があります。これらの訴訟等の内容及び結果によりましては、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 特定取引先への依存について

 当社グループのオンライン英会話サービスの法人向け販売については、主に販売代理店である㈱スタディラボ及び㈱エデュラインを通して営業を行っており、両社は、当社子会社の元取締役が株式の過半数を保有し経営しております。当連結会計年度(自 2024年2月1日 至 2025年1月31日)における両社に対する売上高の当社連結売上高に占める割合は19.2%、オンライン英会話サービス売上高に占める割合は66.3%と、高い水準にあります。当社グループと販売代理店である両社は、Win-Winの関係を維持しながら事業を展開しておりますが、何らかの理由によって関係維持が困難になった場合、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 英語講師の確保について

 当社グループのオンライン英会話サービスの講師はフィリピンから調達しております。学童向けに質の高い授業を行うことができる講師が必要となります。現時点においては、当社グループが求める講師を確保できているものと認識しております。しかしながら、フィリピンにおける自然災害や政情不安などから当社グループが求めるレベルの講師の確保が困難になる可能性があります。その場合、サービスの提供に困難が生じる懸念があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)事業体制に関するリスク

① 特定の人物への依存について

 当社事業の創業メンバーの一員であり、代表取締役である江口夏郎は、当社グループの経営方針や戦略の策定、推進に重要な役割を果たしております。現在、当社グループでは江口に対して過度に依存しないよう、執行役員制度の採用等の経営体制の整備、権限移譲の推進及び人材増強による管理組織の強化を図っておりますが、何らかの理由により、江口の業務執行や当社グループへの関与が困難になった場合、当社グループの事業活動、財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 人材の確保及び育成について

 当社グループの継続的な事業拡大のためには、経営資源となる優秀な人材の採用及び育成を行うことで人材の増強を図っていくことが不可欠であると認識し、人材増強に努めております。

 しかしながら、人員採用計画が何らかの事情により想定通りに進展しない等当社グループとして必要な時期に十分な人材増強ができなかった場合又は人材の流出が進んだ場合には、事業成長の制約要因になる可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 内部管理体制について

 当社グループの従業員は164名(2025年1月31日)であり、経営及び内部管理体制は規模に応じたものになっておりますが、当社グループが継続的に成長し、新たなサービスを開発・提供するためには、拡大していく事業規模に合わせた経営管理体制の強化が不可欠であります。現時点においても、取締役及び監査役の増員や監査役会の設置による経営機能の強化、管理部門人員の増強等内部管理体制の強化を図ってきており、今後も成長に応じた更なる管理体制の強化を図っていくこととしております。しかしながら、今後の事業規模に適した経営及び内部管理体制の構築に遅れが生じた際には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 情報セキュリティについて

 当社グループは、事業遂行に必要な範囲で顧客情報等の個人情報を保有しております。当社グループでは、これら顧客情報等の漏洩、不適切な利用、改ざん等の発生を防ぐための情報セキュリティを重要事項と認識し、情報セキュリティマネジメントシステムを構築・運用しております。2017年9月にはISMS認証(ISO27001)、2022年9月にはQMS認証(ISO9001)を取得し、情報セキュリティ体制に加え、システム全体の品質のさらなる向上を目指しております。しかしながら、コンピュータウィルスの侵入やサイバー攻撃によるハッキング、社内管理におけるヒューマンエラー、その他の想定外の事態の発生によって顧客情報等が漏洩した場合には、顧客からの信用の低下や、損害賠償請求等に繋がる可能性があり、当社グループの事業活動、財政状態及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)その他

① 配当政策について

 当社グループは、株主への利益還元を経営の重要課題であると認識しております。利益配分につきましては、事業の更なる成長のため、経営基盤の強化のために内部留保を確保しつつ、安定的な配当の継続を実施していくことを基本方針としております。しかしながら、剰余金の配当に関しては業績も勘案しその内容を決定することとしているため、業績が悪化した場合、配当が減少又は配当を行わない可能性があります。

 

② 大株主について

 当社の代表取締役であり、大株主である江口夏郎の2025年1月31日現在での議決権所有割合(自己株式を除く。以下同じ)は、8.09%であります。また、江口の資産管理会社の所有株式数を含めた議決権所有割合は56.93%となっております。江口は、安定株主として一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針であります。しかしながら、何らかの事情により、大株主である江口の株式の多くが減少した場合等には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。

③ 自然災害について

 当社グループが提供するサービスは、インターネットを介して提供されるため、基本的には自然災害発生時もサービスを提供することが可能であります。しかしながら、当社グループが展開する国内外の事業拠点において、重大な自然災害が発生した場合に、円滑な業務遂行体制が損なわれ、その結果、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

(資産の部)

 当連結会計年度末における資産合計は2,101,758千円(前連結会計年度末1,949,891千円)となり、前連結会計年度末に比べ151,867千円の増加となりました。

 このうち流動資産は1,477,215千円(前連結会計年度末1,300,492千円)となり、176,723千円の増加となりました。この主な要因は、現金及び預金が212,785千円、仕掛品が4,131千円増加した一方で、受取手形、売掛金及び契約資産が15,957千円、前払費用が28,397千円減少したことなどによるものです。

 また固定資産は624,542千円(前連結会計年度末649,398千円)となり、24,855千円の減少となりました。この主な要因は、繰延税金資産が14,018千円、長期貸付金が40,900千円増加した一方で、ソフトウエアが65,400千円、投資有価証券が10,075千円減少したことなどによるものです。

 

(負債の部)

 当連結会計年度末における負債合計は1,156,201千円(前連結会計年度末972,420千円)となり、前連結会計年度末に比べ183,780千円の増加となりました。

 このうち流動負債は1,139,817千円(前連結会計年度末955,898千円)となり、183,918千円の増加となりました。この主な要因は、短期借入金が30,000千円、未払費用が4,443千円、前受金が187,055千円増加した一方で、未払法人税等が29,032千円減少したことなどによるものです。

 また固定負債は16,383千円(前連結会計年度末16,522千円)となり、138千円の減少となりました。

 

(純資産の部)

 当連結会計年度末における純資産は945,557千円(前連結会計年度末977,470千円)となり、前連結会計年度末に比べ31,912千円の減少となりました。この主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上と配当金の支払いにより利益剰余金が38,274千円減少したことなどによるものです。

 

② 経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果から経済活動の正常化が進んだ一方、急激な為替変動をはじめとした金融市場の変動による世界経済の減速や物価上昇、地政学上のリスクの影響など依然として不透明な状況が続いております。

 当社グループは、生産労働人口の高齢化を背景にしたリスキリングや人的資本経営の実現など、企業の人材開発

分野への投資意欲が年々高まる中で、『ミライの「はたらく」を、明るくする』というミッションのもとに

HCM(ヒューマン・キャピタル・マネジメント)クラウドサービスとして、売上高1,000億円以上の国内企業を中

心に累計1,500社以上への導入実績を持つ当社のクラウド型LMS(Learning Management System)を活用した人材開発プラットフォームとソリューションを提供するHCMプラットフォーム提供サービスとHCMクラウドを活用したオンライン英会話サービスを提供しております。

 HCMプラットフォーム提供サービスは、主にITを活用した人材開発のプラットフォームとして統合型LMSの

「CAREERSHIP」を提供することで顧客企業の「学習する組織」の実現を支援しております。「CAREERSHIP」には、

企業の研修や教育を支援する「eラーニング機能」、従業員のスキルを可視化する「スキル管理機能」及び従業員

の状況を把握するための「キャリアカルテ機能」など、企業のHRに係る業務のDX(デジタルトランスフォーメーシ

ョン)化を支援する機能が搭載されており、我が国の大企業に特徴的な複雑な組織構造、人材管理手法及び業務プ

ロセスなどに対応できるように進化・改良の結果、LXD(ラーニングエクスペリエンスデザイン)コンサルティン

グやBPOサービス、eラーニング受け放題など人材開発に資するトータルソリューションの提供を強みとしており、

「CAREERSHIP」の利用者数が順調に推移しました。

 オンライン英会話サービスについては、学校や学習塾向けの「OLECO」とお子様がいる家族向けの「クラウテ

ィ」という二つのブランドでHCMクラウドを活用したサービスを提供しております。「OLECO」はBtoBtoCという独

自の市場セグメントでサービスを展開しており、当市場セグメントは、決められた時間に決められた数のレッスン

を提供する、大規模な生徒の学習管理といったBtoCにはない複雑なオペレーションが求められるので、強力なHCM

クラウドを活用する当社が競争力を発揮することができます。一方、BtoC市場セグメントについては、「クラウテ

ィ」のブランドで「英語でゲームする」という独自コンテンツを開発して、子供向けサブセグメントの開拓を進め

ております。

 以上の結果、当連結会計年度の売上高は3,534,661千円(前連結会計年度比10.5%増)、営業利益は315,479千円(前連結会計年度比29.7%増)、経常利益は273,983千円(前連結会計年度比12.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は194,074千円(前連結会計年度比12.4%減)となりました。

 なお、当社グループは、HCMクラウド事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前連結会計年度末と比べ212,785千円増加し、1,187,610千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下の通りであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果増加した資金は、768,094千円(前連結会計年度は400,090千円の増加)となりました。これは主として税金等調整前当期純利益263,983千円、減価償却費323,809千円及び前受金の増加額187,053千円、法人税等の支払107,917千円などによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果減少した資金は、300,398千円(前連結会計年度は217,069千円の減少)となりました。これは主として無形固定資産の取得による支出252,254千円、貸付金の貸付による支出50,000千円などによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果減少した資金は261,088千円(前連結会計年度は104,223千円の減少)となりました。これは主として長期借入金の返済による支出16,700千円及び配当金の支払額235,565千円、営業外支払手数料の支出38,633千円などによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.受注実績

 当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社グループはHCMクラウド事業の単一セグメントであるため、サービス別に記載しております。

サービスの名称

当連結会計年度

(自 2024年2月1日

至 2025年1月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

HCMプラットフォーム提供サービス

2,509,223

+14.2

HCMクラウドを活用したオンライン英会話サービス

1,023,612

+2.5

その他

1,825

△52.1

合計

3,534,661

+10.5

 (注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年2月1日

至 2024年1月31日)

当連結会計年度

(自 2024年2月1日

至 2025年1月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

(株)エデュライン

495,977

15.5

516,765

14.6

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

① 経営成績の分析

(売上高)

 HCMプラットフォーム提供サービスは、新規大型案件の増加や、既存顧客の利用促進施策効果により、2,509,223千円(前連結会計年度比14.2%増)となりました。オンライン英会話提供サービスは、個人向けサービスの利用者増加などから、1,023,612千円(前連結会計年度比2.5%増)となり、その結果、売上高は3,534,661千円(前連結会計年度比10.5%増)となりました。

 

(売上原価、売上総利益)

 HCMプラットフォーム提供サービスでのプラットフォームの大型化に伴う大口顧客向けのサービス及びパフォーマンス向上費用の増加や、オンライン英会話提供サービスの売上増加に伴う英会話講師費用の増加などにより、当連結会計年度の売上原価は2,226,436千円(前連結会計年度比12.1%増)となりました。売上総利益は1,308,224千円(前連結会計年度比7.8%増)となり、売上総利益率は37.0%(前連結会計年度は37.9%)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 マーケティング活動等の強化に伴い広告宣伝費及び販売促進費が合わせて25,441千円増加した一方で、採用活動が落ち着いたことで人件費等が前連結会計年度比11,826千円減少したことなどにより、販売費及び一般管理費は992,745千円(前連結会計年度比2.3%増)となりました。

 この結果、営業利益は315,479千円(前連結会計年度比29.7%増)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

 営業外収益は主に受取利息が311千円、補助金収入が360千円増加した一方で、貸倒引当金戻入額が600千円減少したことなどにより1,685千円(前連結会計年度比4.7%減)となりました。

 営業外費用はMBOにかかる関連費用として支払手数料が38,633千円増加したことなどにより43,181千円となりました。

 この結果、経常利益は273,983千円(前連結会計年度比12.2%増)となりました。

 

(特別利益、特別損失、法人税等合計、親会社株主に帰属する当期純利益)

 特別損失は、保有しております投資有価証券に係る投資有価証券評価損を9,999千円を計上しております。

 また法人税、住民税及び事業税を81,718千円、法人税等調整額を13,965千円計上したことにより親会社株主に帰属する当期純利益は194,074千円(前連結会計年度比12.4%減)となりました。

 

② 財政状態の分析

 財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

③ キャッシュ・フローの分析

 キャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社グループの運転資金需要は主として新技術の研究開発費用、販売費及び一般管理費等の営業費用です。また、投資を目的とした資金需要は主としてプラットフォーム開発費用となります。

 当社グループは、短期運転資金に関しましては自己資金及び短期の借入、長期運転資金に関しましては自己資金及び長期の借入により、各々調達することを基本としております。

 

⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 繰延税金資産の認識は、将来の事業計画に基づく課税所得の発生時期及び金額によって見積っております。当該見積りは、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、実際に発生した課税所得の時期及び金額が見積りと異なった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において、繰延税金資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

⑥ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標の進捗については、当連結会計年度において、売上高は3,534,661千円(前連結会計年度比335,079千円の増加)、営業利益は315,479千円(前連結会計年度比72,192千円の増加)、売上高営業利益率は8.9%(前連結会計年度は7.6%)、EBITDAは639,728千円(前連結会計年度比158,459千円の増加)と、事業拡大による売上高の増加、それに伴う営業利益やEBITDAの増加を達成しております。また連結ROEは20.4%(前連結会計年度は24.7%)と、20%を超える高い水準を維持しております。今後も事業拡大を継続していくことで、各指標の増大を達成していく所存であります。

 

⑦ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑧ 経営者の問題認識と今後の方針について

 経営者の問題認識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

技術援助等を受けている契約

契約会社名

相手方の名称

契約品目

契約

締結日

契約内容

契約期間

㈱ライトワークス(当社)

デジタルシープラーニング

人材開発プラットフォーム

2008年  1月23日

独占的使用権許諾

2008年1月23日から

2025年3月31日まで

以後1年ごとの自動更新

  (注)  上記についてはロイヤリティとして売上高の一定率を支払っております。

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度における研究開発費の総額は5,666千円となっております。

 当社グループは『ミライの「はたらく」を、明るくする』をミッションに掲げ、各部門から選抜されたメンバーを中心としたミライ構想タスクチームによって、将来を見据えた新サービスの開発や新規事業の創出を行っております。

 人材開発においてDXを推進する顧客からのニーズが高まっている人材開発プラットフォームの各種関連機能の拡張に対応するため、BI(ビジネスインテリジェンス)機能、蓄積されたデータを戦略的活用するデータベースなどの研究開発を行っております。

 なお、研究開発活動は事業セグメントを横断する内容となっているため、全社として研究開発活動の概要を開示しております。