第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

当社グループは、金子眼鏡株式会社と株式会社フォーナインズという二つのブランドを保有しており、両ブランドの世界観・ロイヤルユーザー・販売網は、両社独自の強みです。それぞれの戦略・ブランド・店舗網を尊重しつつ、両社にとってメリットの多い領域では前向きに事業提携・シナジーを追求することで、当社グループの持続的な成長と当社グループ全体の事業価値の極大化に取り組んでまいります。

 

(2)経営環境及び経営戦略

眼鏡小売市場は、高齢化の進展による老視人口の増加、また、パソコン・スマートフォン等の電子デバイスの普及に伴う若年層の視力低下、眼精疲労、スマホ老眼の増加など、眼鏡需要増加の事象も見られます。また、個人のライフスタイルや価値観の変化に伴いお客様のニーズが多様化することで、眼鏡小売市場は低価格帯と高価格帯に二極化しており、それぞれの市場は堅調に推移しています。

当社グループは、日本発の世界トップクラスの高価格アイウェアブランドを目指しており、高級感を求める顧客の要求を常に意識し、改善・改革に取り組んでいます。国内市場においては、お客様に照準を合わせた商品・技術・接客サービス面のアプローチを積極的に強化・推進することで顧客満足度の向上を実現し、ロイヤルカスタマーに結びつけることで、企業価値の向上に努め、成長を図る所存です。また、グローバル展開を視野に国内発の高価格アイウェア・グループを目指し、新しい展開を拡大してまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、サービスレベルの向上、人材投資、各ステークホルダーへの収益還元のために、更なる事業拡大と経営基盤および収益体質の強化実現を目指しています。持続的な成長と高い収益性の実現を目指す観点から、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、EBITDA(注)を重視し、これらの向上を目指しています。

(注)EBITDA=営業利益+減価償却費+識別可能資産償却費

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、上記のような経営方針等を踏まえ、既存店の収益拡大、新規出店、インバウンド需要取り込みを軸に国内売上の拡大を図るとともに、中国出店を足掛かりとするアジア展開により海外売上の更なる伸長を目指してまいります。具体的な課題は以下の通りです。

 

① 継続的な単価の向上

 当社グループでは、ブランド価値向上を背景にした価格改定を含む戦略的なプライシング、高品質のフレーム に合うレンズ等の高機能・高単価商品の積極的な提案により、継続的な単価の向上を図っております。単価向上を図るためにはカスタマーロイヤリティが構築できていることが前提となりますが、カスタマーロイヤリティ構築及び単価向上を実現するため、高品質のものづくりの追求に加え、ブランドイメージを高める店舗立地や店舗デザインの実現、店舗スタッフの専門性向上に努めています。フォーナインズにおいても引き続き、金子眼鏡のノウハウを活かし、収益性の向上に努めてまいります。

 

直近5期間における一式単価(フレーム及びレンズの購入単価合計)の推移は以下のとおりです。

 

2021年1月期

2022年1月期

2023年1月期

2024年1月期

2025年1月期

金子眼鏡

67,187円

69,157円

69,872円

72,862円

77,557円

フォーナインズ

72,313円

72,927円

74,611円

78,708円

81,973円

 (注)1.直近5期間の各期について、国内直営店の2月1日から1月31日までの集計結果であります。

なお、フォーナインズグループについては当社がグループ化するまでは8月決算であったため、上記は実際の決算期とは異なります。

2.フレームは眼鏡のみ(サングラス、高額品、OEM等は除く)、レンズは眼鏡の単焦点・多焦点の合計(サングラス等のレンズは除く)の集計となっております。

 

② 着実な店舗網の拡大

金子眼鏡グループでは、ブランド力を希薄化させないよう、厳選した立地に年間数店舗程度の新規出店及び既存店舗の近隣好立地への移転を目標として安定的に店舗数を拡大し、当社ブランドの認知向上及び新規顧客需要の創出を図っていく方針であります。

また、従来卸売比率の高かったフォーナインズグループにおいても、金子眼鏡の出店ノウハウを活かし、直営店出店を加速していく方針であります。まずは都心を中心に、年間数店舗程度の新規出店を進めてまいります。

直近5期間の各期末時点における、金子眼鏡株式会社及び株式会社フォーナインズの国内店舗数(直営店)の推移は以下のとおりです。

(単位:店)

 

2021年1月期

2022年1月期

2023年1月期

2024年1月期

2025年1月期

金子眼鏡

63

67

74

80

83

フォーナインズ

13

12

11

14

15

 (注)1.直近5期間の各期については1月末時点の国内直営店店舗数であります。

なお、フォーナインズグループについては当社がグループ化するまでは8月決算であったため、上記は実際の決算期とは異なります。フォーナインズグループでは、2022年1月期に東京・銀座エリアで展開していた銀座本店と銀座並木通りサロン店を統合し、新たな銀座本店を開店しました。また、2023年1月期にはイセタンサローネメンズ(丸の内)の撤退に伴い、店舗数が減少しております。

 

③ 海外展開、インバウンド需要への対応

グローバルブランドとして更なる成長を図るため、高価格帯アイウェアの市場として成長可能性が高く、ラグジュアリーブランドへの嗜好性も高い中国及び周辺諸国を重視すべきと考えており、既に出店済みであるフランス、シンガポールに加え、2023年4月に上海に金子眼鏡の中国1号店(直営店)を出店し、2024年4月及び8月に中国2号店と3号店を、2024年11月には香港1号店をオープンしました。当社グループとして高い成長ポテンシャルを見込んでいる中国及び周辺諸国におけるブランド認知を向上させるとともに、現地売上拡大及び国内インバウンド売上の更なる拡大を目指してまいります。まずは、中国などにおけるブランドイメージが醸成されやすいロケーションを中心に直営店出店を進め、中長期的には、直営店に加えて、必要に応じて現地パートナー企業との提携も検討していく方針です。

 

④ 内部管理体制の強化

今後の業容拡大を展望した場合、各種業務の標準化と効率化によって事業基盤を確立させることが重要な課題であると認識しています。そのため、適切かつ効率的な業務運営を遂行するために従業員に対し業務フローやコンプライアンスなどを周知徹底させ、内部管理体制の強化を図るとともに、業務の効率性と適正化の確保に努めてまいります。

本年2月、当社役員に対しインサイダー取引規制違反に該当する事案が発生しました。そのため、株式の売出しの中止及び市場区分の変更申請の取下げを行いました。このような事態を厳粛に受け止め、独立した外部の弁護士による調査を実施し、本件に関する事実調査、発生原因の究明と分析、再発防止策の提言について検証をまとめ、2025年3月10日に調査結果報告の概要を公表し、当該役員などに対する処分を決定いたしました。当社は、調査報告書記載の再発防止策についての提言に従い、インサイダー取引規制や当社株式売買に関する社内規程に関する研修・勉強会を定期的に実施してまいります。

また、より強固な経営体制の基盤を構築すべく、社外取締役に弁護士を選任いたします。これらの対応と体制により、ガバナンスの強化を図ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは以下の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティの考え方

 当社グループでは、中長期の社会環境変化、当社のリスク・機会等を確認する中で、中長期の時間軸における「将来のありたい姿」を明確にし、長期ビジョンとして「クラフツマンシップの伝統と革新を世界へ」を掲げることで、事業の成長と社会への価値創造を実現していきたいと考えています。また、サステナビリティへの取り組みを重要な経営課題と位置づけ、グループ一体で経営管理高度化を図ってまいります。

 

(2)ガバナンス

 当社グループでは、これまで、地域活性化や多様な人材への投資に取り組んでまいりました。これらサステナビリティに関する取組みをさらに推進すべく、2024年2月にサステナビリティ委員会を発足いたしました。

 サステナビリティ委員会は、代表取締役を委員長とし、監査等委員でない取締役1名をサステナビリティ推進担当役員とするほか、主要な事業子会社である金子眼鏡株式会社及び株式会社フォーナインズの取締役をメンバーとし、必要に応じて社内外関係者が参画し、当社管理本部管理部(IR担当)を事務局としております。同委員会は年2回程度開催し、サステナビリティに関する考え方や基本方針、各施策の検討、目標設定、目標に対する進捗報告を行い、取締役会に対する報告・提言を行います。また、サステナビリティに関連するリスクはサステナビリティ委員会にて分析等を行い、検討内容は適宜、リスク・コンプライアンス委員会に報告します。

 取締役会はサステナビリティ委員会への指示・監督、施策の実施状況や目標達成に向けた進捗確認等を行います。

 

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(3)戦略

  JEHグループでは、企業理念を追求し続けることを企業目的とし、アイウェアを通して様々な提案を行っていきます。この目的を追求するために、長期ビジョンとして、『クラフツマンシップの伝統と革新を世界へ』 を掲げ、事業の成長と社会への価値創造を実現してまいります。

 

■クラフツマンシップとは、純粋な情熱と妥協なき精神のもと、私たちが販売するアイウェアを一本一本丁寧に魂を込めて作ることであり、このクラフツマンシップはJEHグループの確固たる原点です。全ての従業員がクラフツマン(職人)としての気質を持ち、アイウェアを通じて価値を創造します。

 

■鯖江における眼鏡づくりは、明治後半からこの地に広まり、やがて世界屈指のアイウェアの産地となりました。この地に蓄積された高度な技術やものづくりへの情熱と伝統を、国境を越えて世界中の人々へ伝えます。

 

■鯖江の眼鏡づくりの伝統に革新を加えて、デザイン・生産から販売までの一貫体制をJEHグループ全体で構築します。価値創造プロセスの全体にわたる革新を通じて未来を切り開きます。

 

■クラフツマンシップの伝統と革新を世界へ繋げていくことはJEHグループ設立来の強い意思であり、ビジョンの実現を通じて世界の人々に愛されるグローバルトップ・アイウェアブランドを目指します。

 

 当社グループでは、企業理念や長期ビジョン達成に向けてどのような課題に優先的に取り組むべきかを、グループとして大切にする価値観や方向性を踏まえて、6つのマテリアリティを設定しました。これらのマテリアリティを基に具体的なアクションプランを策定して参ります。

 

大分類

マテリアリティ

事業を通じた価値創造

1

世界に誇るグローバルブランドの確立

2

革新的なものづくりへの挑戦と伝統の継承

3

価値を紡ぐコミュニケーション

4

鯖江地域の持続的発展

価値創造の事業基盤

5

誇れる企業文化の醸成

6

コーポレートガバナンスの強化

 

 また、気候変動に関するシナリオを複数設定し、気候関連のリスク・機会がもたらす組織の事業、戦略、財務計画への実際及び潜在的影響を分析、何れのシナリオにおいても対応策を示すことで、自社戦略のレジリエンスを示すことが推奨されています。当社グループでは、下表の通り2つのシナリオを想定し分析を実施しました。それぞれのシナリオ、世界観の概要及び参照シナリオは以下の通りです。

 

 表1 シナリオ分析の前提

名称

世界観の概要

主な参照シナリオ

1.5℃~2℃未満

シナリオ

炭素税導入や再生可能エネルギーの拡大等、脱炭素社会への移行に向けた政策及び法規制等の変化により、企業の対応コストが増加する。

消費者のエシカル消費意識の向上に伴い、サステナブル素材を使用した製品や長く使用できる製品・サービスの需要が高まる。

主に脱炭素社会への移行に関するリスクが顕在化。

IEA World Energy Outlook 2024 Announced Pledges Scenario,

(パリ協定の目標達成シナリオ)

Net Zero Emissions by 2050 Scenario(ネットゼロ達成シナリオ)

IPCC第6次評価報告書

SSP1-2.6

4℃

シナリオ

脱炭素社会への移行に向けた政策及び法規制の導入は限定的。

気候変動の進行に伴い、気候パターンの変化や異常気象の激甚化・頻発化等により、サプライチェーンリスク管理やBCP/BCMの策定、職場環境改善の重要性が高まる。

主に気候変動による物理リスクが顕在化。

IEA World Energy Outlook 2024 Stated Policies Scenario

(現状の政策シナリオ)

IPCC第6次評価報告書

SSP5-8.5

 

 上記シナリオを前提に、以下の通り、当社グループが想定する気候変動関連リスクと機会の整理を行いました。なお、より鮮明にリスクと機会を捉える観点で、移行リスクについては1.5℃~2℃未満シナリオ、物理リスクについては4℃シナリオ、機会については両シナリオと、それぞれのリスクと機会がより顕在化するシナリオを念頭に置いて検討しました。

 

表2 気候変動に関するリスクと機会の特定、影響度の評価

 

 

リスク・機会の概要

影響度

時間軸

対応策

移行リスク

(1.5℃~2℃未満)

政策および法規制

・カーボンプライシングによる、エネルギー調達コストやチタン部品・レンズ等の原価コスト等の増加

・プラスチック規制の対応に伴う調達コストの増加及び取引停止に伴う売上の減少

長期

・省エネ推進や再生可能エネルギーの導入

・サプライチェーンと連携したGHG排出量の削減

・製造工程での材料ロス削減

技術

・GHG排出量削減に資する省エネ対応等に伴う、設備投資コストの増加

短~中期

・長期的な環境への影響度等も考慮した適切な設備投資判断

市場・評判

・エシカル消費ニーズへの対応遅滞による、ブランド価値の毀損や売上の減少

長期

・環境配慮性(より長く使ってもらえる商品設計・アフターメンテナンス等)をブランドストーリーに組込

物理リスク

(4℃)

急性

・異常気象に伴う、サプライチェーン寸断や生産活動停止による売上の減少

・異常気象に伴う、来客数の減少や店舗休業による売上の減少

短~中期

・BCP/BCMの策定

慢性

・慢性的な平均気温上昇に伴う従業員の疾病増加による生産性の低下、店舗販売機会の減少

・干ばつ等による植物由来素材の原材料の減少により、プラスチック原材料の調達が困難化

小~中

長期

・職場環境の改善

・市場の正常回復までの原材料・完成品の在庫確保及び適正化

機会

(1.5℃~2℃未満、4℃)

製品とサービス市場

・紫外線量の増加による、サングラスやUVケアレンズの売上の増加

・より長く使える商品の需要の高まりによる販売機会の増加やアフターメンテナンス及び修理による製品の訴求性向上

・サステナビリティ経営の推進による投資家含むステークホルダーからの共感の獲得と企業価値の向上

長期

・充実したアフターサービスの実施

・バリューチェーンにおける全社的な取組による、廃棄品の削減

・容器・包装などのサステナブル素材への切替・簡素化

・ESG関連開示の強化等を通じた企業価値向上

レジリエンス

・危機発生時に迅速に対応できる体制を構築し、早期回復を実現

短~中期

・BCP/BCMの策定

※時間軸

・短~中期: 2030年まで(SDGs達成年)

・長期:     2050年まで(世界の平均気温を1.5℃上昇に抑える目標年)

※影響度

当社グループ事業への影響を総合的に勘案し、大、中、小の3段階で評価

・小: 影響は軽微

・中: 一定の影響はあるものの、企業や事業の存続・成長に甚大な影響はない

・大: 企業や事業の存続・成長に甚大な影響を及ぼす

 

 今回のシナリオ分析の結果として、当社にとって気候変動関連で、重大かつ対応が困難なリスクについては特段見つかりませんでしたが、その他の特定したリスクに対しては適切に対応を進めていくとともに、生産プロセスの効率化による環境負荷低減に加え、企画・デザイン・製造・販売の一貫体制を活かした製造ストーリー・ブランドストーリーの発信や、ラグジュアリーブランドとしての充実したアフターメンテナンスで長く使える製品の提供等、当社の特徴を活かした取組により、更なるレジリエンスの強化に努めてまいります。

 

指標と目標

今後はGHG排出量実績を算出のうえ、気候変動に関連するリスク及び機会をより詳細に評価し、具体的な指標及び目標の設定を検討してまいります。

 

(4)リスク管理

 当社グループにおけるリスク管理体制全般については、「グループリスク管理規程」に記載の通り、リスク・コンプライアンス委員会を中心に行っております。

 サステナビリティに関連するリスクについては、サステナビリティ委員会において分析・検討・評価を行います。検討内容はリスク・コンプライアンス委員会に対して共有し、重要性等の評価を行った上で、対応の検討と対策の実施を行います。

 

(5)人的資本と多様性

 当社グループでは、店舗・工場・本社で働く全従業員の労働環境の整備は極めて重要なテーマであると考えています。今後ますます多様化することが予想される、お客様のご要望に適切に対応するためにも、従業員の多様性を重視した取り組みが重要であり、従業員の健康や安心・安全の確保に留意し、働きやすい職場環境を実現してまいります。

人的資本への投資については、インバウンド需要の捕捉のため外国籍人材の積極的な採用を行っているほか、男女を問わず働きやすい労働環境の整備に力を入れており、これらの施策を通じて、国籍・性別を問わず優秀な人材の確保に努めております。

人材採用については、即戦力としての活躍を期待する中途採用を中心としており、様々なバックグラウンドを持つ多様な人材を積極的に採用しております。また、工場・本社の従業員に向けて、様々な研修機会を提供しております。

主要な事業子会社である金子眼鏡株式会社及び株式会社フォーナインズにおいては、以下の各指標と目標を設定しており、それぞれ、目標達成に向けた取組みを進めています。また、人材育成につきましては、業務を通じた育成(OJT)を中心としつつ、専門スキルの取得を目的とした社内研修の実施や資格取得の促進などを併せて実施することで、従業員のスキルアップをサポートしております。

また、当社グループでは、上記において記載した労働環境の整備方針及び人材の多様性の確保の方針、人材の育成に関する方針に係る指標については、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業について記載しております。

 

金子眼鏡株式会社における各指標と目標

 

2030年目標

2025年1月時点の実績

女性管理職比率

20以上

14.2%

年次有給休暇取得率

50以上

68.0%

そのほか、育児休業後における原職または原職相当職への復帰のための業務体制見直しを行います。

(具体的な取組み)

・女性社員に対するヒアリングの実施。女性管理職に対する現制度の改善点ヒアリングの実施。これらヒアリングに基づく、課題の把握・改善施策の検討と実施

・勤怠管理を通じた、個人の有給休暇取得状況の把握と上長によるスタッフの取得促進

 

株式会社フォーナインズにおける各指標と目標

 

2030年目標

2025年1月時点の実績

女性管理職比率

20%以上

4.3%

月間平均残業時間

20時間以内

23時間33分

そのほか、育児休業中の待遇や復職後の働き方などの労働条件に関する事項について周知を行います。

(具体的な取組み)

・女性社員に対するヒアリングの実施。女性管理職へのインタビューを通じて、ロールモデルとして社内周知を行う

・部門別の残業実績の把握と一定の残業時間を超過した際の通知。ノー残業デー実施の徹底

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において入手可能な情報に基づき当社グループが判断したものであります。

 当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。また、以下の記載は当社株式への投資に関するリスクをすべて網羅するものではありませんので、この点にご留意ください。

 

※リスク評価は以下を基準に表記しております。

発生可能性

高(1年前後に1回以上発生)/中(5年前後に1回発生)/低(10年超に1回発生)

影響度

大(事業継続が困難となる規模の損失(倒産・廃業)/中(数年間の利益に匹敵、緊急融資等の支援が必要な損失)/小(自社の一年間の利益に匹敵)

 

(1)法的規制について

① 個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)について

(発生可能性 中/発生時期 特定時期なし/影響度 大)

 当社グループは、事業活動において顧客のクレジットカード情報、度数情報等の個人情報の提供を受けているため、個人情報保護法に定める個人情報取扱事業者に該当します。そのため当社グループでは、社内管理体制の整備及び従業員への周知徹底とともに、個人情報の流出防止対策にも万全を期しておりますが、万一個人情報が外部へ流出するような事態となった場合には、信用失墜に伴う売上高の減少その他の理由により、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 医師法第17条の規定に関連する規制について(発生可能性 低/発生時期 特定時期なし/影響度 大)

 日本国内においては、眼鏡販売の際に医師資格を有しない者が行う度数測定が医行為に該当するか否かについて、法律上明確な規定はありませんが、業界慣行や過去の国会での議論等では、眼鏡を選択するための補助行為であって人体に害を及ぼすおそれがほとんどない場合は医行為に該当しないとの意見があり、これを踏まえて、当社では医行為に該当しないと判断しております。

 当社グループの行う度数測定の補助行為は、人体に保健衛生上の危害を生じさせない範疇にとどまるものであり、過去に人体に重要な影響を与えた事実もありません。さらに、当社グループではこのような補助行為でも、充分な技術や知識の裏づけが必要であると考え、社内研修制度の充実に注力しております。

 しかし、法令・諸規則改正やその解釈の変更等により、上記のような度数測定の補助行為が医行為に該当すると判断された場合、ビジネスモデルの転換に伴う売上高の減少その他の理由により、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に関する規制について

(発生可能性 低/発生時期 特定時期なし/影響度 大)

 当社グループは、主要な事業活動として眼鏡レンズの販売を行っております。眼鏡レンズは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」上の一般医療機器に該当し、これらを販売する行為は薬機法の規制を受けておりますが、登録認証機関の認証を受けることは不要となっております。

 当社グループは諸条件及び関係法令の遵守に努めており、現時点において当該法令に抵触することがないように注力しております。

 しかし、法令・諸規則改正やその解釈の変更等により、医療機器の分類の変更によって、厚生労働大臣又は登録認証機関による承認・認証が必要となり、何らかの理由により承認・認証がされなかった場合には、主要な事業活動に支障をきたすとともに、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)業界環境に関するリスクについて

① 景気低迷リスクについて(発生可能性 中/発生時期 特定時期なし/影響度 中)

 当社グループの製品・サービスに対する需要は、その販売国又は地域の経済状況の影響を受けるため、当該市場における景気後退に伴う需要の減少が、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。個人顧客を主力購買層とするものについては、個人顧客の嗜好の変化や可処分所得の増減等により販売数量が左右されやすい性質を持っています。これら個人向け製品の販売動向は、その販売地域における経済状況、景気動向等、個人消費に影響を与える諸要因によって大きく変動する傾向があり、これらの諸要因が当社グループにとって有利に作用しない場合、それに対応した当社グループの事業改革が想定どおりに功を奏しない場合や、これらの悪化要因に対応した製品を適時に開発、製造して市場に提供できない場合には、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、法人顧客を主力購買層とするものについても、経済状況、景気動向、顧客が所在する国・地域の政治・財政動向等によって販売量が左右され、それによって当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクは、発生の時期・内容・規模・地域等が不明確であり、事前に影響の測定が困難なものでありますが、当社グループは当社グループの予測からの変化を常にモニタリングし、日々のオペレーション対応からコンティンジェンシープランの実施までリスク規模に合わせた迅速でフレキシブルな対応をリスクマネジメントプランに則り行い、リスクの回避又は影響の最小化を図っております。ただし、当社グループが想定する規模や期間を上回る環境の変化(悪化)があった場合や、コンティンジェンシープランを何らかの理由により予定通り実施できない場合等には、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 自然災害リスク(発生可能性 中/発生時期 特定時期なし/影響度 中)

 当社グループの店舗施設及び製造拠点の周辺地域において、大雪、台風、地震、津波等の大規模災害が発生したことにより同施設が甚大な被害を受け、又は物流に影響を受け、長期間にわたり販売行為や店舗への商品供給等の事業活動を行うことができなくなった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの自然災害により物流コスト等の上昇が発生した場合には、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ パンデミックの発生(発生可能性 中/発生時期 特定時期なし/影響度 大)

 新型コロナウイルス等の感染症が急速に拡大し、パンデミックが発生した場合、当社グループの生産拠点、事業所の営業停止や店舗の休業の発生の可能性があるほか、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループでは回復が遅れている中国からの訪日観光客の回復により、また海外新規出店等により海外における認知度向上を図ることでインバウンド売上の更なる伸びを見込んでおりますが、インバウンドによる需要が減少した場合、又は需要の回復が想定よりも遅れた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 なお、過年度における金子眼鏡株式会社単体及び株式会社フォーナインズ単体のインバウンド顧客(訪日外国人顧客)による売上高の四半期ごとの推移は以下のとおりです。下段は同期間における金子眼鏡株式会社及び株式会社フォーナインズの全体の店舗売上に占める割合を示しております。

(単位:百万円)

 

2020年1月期

2021年1月期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

238

217

202

278

42

2

1

3

13.9%

12.0%

11.9%

14.5%

4.4%

0.2%

0.1%

0.2%

 

(単位:百万円)

 

2022年1月期

2023年1月期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

4

4

6

3

7

20

51

286

0.2%

0.3%

0.4%

0.2%

0.4%

1.0%

2.8%

12.7%

 

 

(単位:百万円)

2024年1月期

2025年1月期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

268

361

450

587

711

885

790

1,006

12.4%

14.4%

18.3%

20.4%

24.4%

26.8%

26.2%

29.7%

 (注)1.金子眼鏡株式会社は、現金子眼鏡株式会社を2019年7月29日に設立し、2019年10月に旧金子眼鏡株式会社を吸収合併しております。上記の2020年1月期については、旧金子眼鏡株式会社及び現金子眼鏡株式会社の2019年2月から2020年1月までの売上高を3ヶ月ごとに記載しており、実際の決算期とは異なります。また、株式会社フォーナインズについては当社がグループ化するまでは8月決算であったため、上記は実際の決算期とは異なります。

2.なお、インバウンド顧客向け売上高は、店舗において使用している販売管理システムのPOSデータから免税売上高を集計したものです。

 

④ 競合について(発生可能性 低/発生時期 特定時期なし/影響度 小)

 当社グループは、眼鏡製品の製造販売を行っておりますが、価格帯やデザイン性からファッションアイテムやラグジュアリー品としての位置づけと認識しており、競合他社とは異なるポジショニングに位置すると考えております。また、当社グループは常にブランド力の維持向上に努めております。しかしながら、消費者のニーズの変化や業界のコスト構造の変化等により、当社グループが属する市場の規模が想定したほど拡大しない場合、当社グループの市場シェアが低下する場合や、有力な競合他社の出現に伴う価格下落圧力等が生じる場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)ビジネスモデルに関するリスクについて

① 知的財産権について(発生可能性 低/発生時期 特定時期なし/影響度 大)

 当社グループの知的財産の保護や権利行使に何らかの障害が生じ、第三者による当社商品の模倣を効果的に排除できなかった結果、市場シェアを失った場合や、あるいは第三者の知的財産権を侵害したとして損害賠償請求や差止請求などを受けた場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 原材料価格の変動に係るリスクについて(発生可能性 高/発生時期 特定時期なし/影響度 大)

 当社グループは、主要原材料としてアセテート・セルロイド・チタンを使用しております。これらは市況商品であることからその価格が上昇した場合、製品価格に反映させることを基本方針としておりますが、急騰により製品価格への転嫁が遅れた場合や何らかの理由により製品価格への転嫁ができない場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 原材料などの安定供給に係るリスク(発生可能性 低/発生時期 特定時期なし/影響度 大)

 当社グループ商品の原材料やレンズは、生産元が限定されているものが多く、特定業者への発注が必要となります。仕入先とは良好な関係の構築を努めており、今後とも安定的に原材料を仕入れることは可能だと考えておりますが、仕入先における事業継続不能な不測の事態の発生、原料不足や経済環境の激変等何らかの理由により、必要な原材料等の適正な価格での適正な量の確保が困難になった場合には当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 仕入先・外注先の地域集中によるリスク(発生可能性 中/発生時期 特定時期なし/影響度 小)

 当社は、福井県鯖江市に多くの仕入先・外注先が集中しており、これらの地域に当社グループの対応能力を超えるような災害が発生し、材料確保の手段の喪失や外注先の製造能力の喪失により、事業の運営に支障が生じた場合等には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 出店政策及び店舗展開について(発生可能性 中/発生時期 特定時期なし/影響度 中)

 当社グループは、地方を含めた大都市を中心に店舗を展開しており、路面店及び百貨店等の商業施設に店舗を出店しております。それらの店舗は、賃借契約により展開しております。現時点においては、賃貸人との関係性は良好であり、安定した店舗展開を行っております。しかしながら、賃貸人との関係性が悪化した場合や当該店舗の周辺環境に著しい変化があった場合、賃貸人の経営方針に重大な変更があり当社ブランドを毀損しかねない事態となった場合などにおいては、当社グループの今後の出店政策及び店舗展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 人材の確保について(発生可能性 中/発生時期 特定時期なし/影響度 中)

 当社グループが、今後更なる業容拡大を図るためには、優秀な人材の確保と育成が重要課題であると認識しております。

 今後、労働力の減少による人材確保競争の激化、景気回復、雇用環境の好転に伴う賃上げ圧力の増大、処遇格差の縮小を目的とする各種労働関連法、出入国管理及び難民認定法の改正等に起因して労働コストが大幅に増加、もしくは、社内人材の育成が進まない場合、人材が外部に流出した場合、採用自体が困難になった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 海外進出に関するリスク(発生可能性 中/発生時期 特定時期なし/影響度 小)

 当社グループは海外における直営店や取扱店の展開を進めております。海外市場では、政治、文化、法令及び規制等が日本と異なっているため、その業務の遂行には各国政府の法律又は規制への対応、輸送・電力・通信等のインフラ障害、各種法律又は税制の不利な変更、社会・政治及び経済情勢の変化や我が国との関係の悪化、異なる商慣習による取引先の信用リスク、労働環境の変化等、海外事業展開において共通する不可避のリスクが伴います。これらリスクが発現した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)その他に関するリスクについて

① 大株主との関係について(発生可能性 低/発生時期 特定時期なし/影響度 小)

 当社グループは、㈱日本企業成長投資が投資助言を行うファンド(日本企業成長投資1号投資事業有限責任組合、Camellia Fund I Cayman, LP、Cerasus Fund I Cayman, LP、Wisteria Fund I Cayman, LP)からの出資を受けており、本書提出日現在において、同ファンドは当社発行済株式総数の32.1%を保有しております。また、当社の取締役監査等委員の1名である秋里英寿が㈱日本企業成長投資から派遣されております。同氏は今後、ファンドの持株比率変化に応じ、いずれかのタイミングで退任することを想定しております。

 ㈱日本企業成長投資は、当社の上場時において、所有する当社株式の一部を売却しておりますが、当社上場後においても相当数の当社株式を保有しております。従って、今後の当社株式の保有方針及び処分方針によっては、当社株式の流動性や市場価格等に影響を及ぼす可能性があります。また、今後長期にわたって㈱日本企業成長投資が相当数の当社株式を保有し続けたり、又は当社株式を買い増したりする場合には、当社の役員の選解任、他社との合併等の組織再編、減資、定款の変更等の当社の株主総会決議の結果に重要な影響を及ぼす可能性があり、また、㈱日本企業成長投資が当社の事業や経営方針に関して有する利益は、当社の他の株主の利益と異なる可能性があります。

 

② 経営陣について(発生可能性 低/発生時期 特定時期なし/影響度 大)

 当社グループは、代表取締役社長である金子真也を中心とする経営陣のもとで経営を行っていますが、当社グループの各企業は、業務分掌の設定や幹部陣への決裁権限移譲を進め、組織的な企業運営体制をとっており、また、経営陣に不測の事態が発生した場合における意思決定プロセスへの影響を最小限に留めるよう努めております。

 しかしながら、かかる取り組みが奏功する保証はなく、特に当社代表取締役社長である金子真也をはじめとする当社グループの経営陣に不測の事態が生じた場合には、当社グループの活動全般に支障が生じる可能性があります。

 また、当社の継続的な成功は主に金子真也の能力と手腕に依存してきました。同氏が最高経営責任者として経営の責任を担い、当社グループの中期経営計画に沿った目標達成に注力する体制をとってまいります。しかしながら、同氏の離脱があった場合、当社グループの事業、経営成績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 多額の借入金及び金利の変動について(発生可能性 中/発生時期 特定時期なし/影響度 小)

 当社グループは、金融機関を貸付人とする借入契約を締結し多額の借入を行っており、2025年1月末における有利子負債比率((長期借入金(1年内返済予定の残高を含む)+リース負債)÷資本合計)は101.4%であります。当社グループでは、金利上昇によるリスクを軽減するため、金銭消費貸借契約の変更によるスプレッドの引き下げなどの施策は講じておりますが、急激で大幅な金利変動が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの借入金の一部には財務制限条項が付されており、かかる財務制限条項については具体的な数値基準が設けられており、これに抵触する場合、貸付人の請求があれば当該契約上の期限の利益を失うため、ただちに債務の弁済をするための資金の確保が必要となります。財務制限条項への抵触による一括返済リスクに対応するため、余資による期限前弁済や財務コベナンツに係る各種数値の取締役会への報告等を行っておりますが、何らかの事象によって当該条項への抵触が生じる場合は、当社グループの財政状態及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があるとともに、かかる資金の確保ができない場合は、当社グループの他の借入についても期限の利益を喪失することが予測され、当社グループの存続に悪影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、当社が締結している金銭消費貸借契約には、借入人である当社が遵守すべき義務が規定されています。

 なお、財務制限条項及び借入人の義務の主な内容は、「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載しております。

 

④ のれん及び無形資産の商標権について(発生可能性 低/発生時期 特定時期なし/影響度 大)

 のれん及び無形資産の商標権は、当連結会計年度末現在それぞれ13,950百万円及び5,897百万円であり、合わせて当社グループの総資産の51.2%を占めています。IFRSのもとでは、のれん及び無形資産の商標権は償却の対象とはならず、毎年及び減損の兆候があると認められた場合にはその都度、減損テストが実施されます。当連結会計年度末における回収可能価額は、のれんが含まれる資金生成単位又はそのグループの総資産から負債を除いた事業価値の帳簿価額を大幅に上回っていることから、減損テストに用いた主要な仮定が合理的な範囲内で変更されたとしても、当該資金生成単位又はそのグループの回収可能価額が帳簿価額を下回る可能性は低いと考えております。

 当社グループでは、のれん及び無形資産の商標権に係る減損リスクを低減するため、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の通り、事業の収益力強化に努めており、客単価の向上や店舗数の拡大、グローバル展開等の取り組みを実施しております。

 また、当社グループではコストを抑えたものづくり及び店舗運営を図っており、収益性の高い企業体質であると自負しております。具体的には、厳選した立地選定や店舗の人員体制の効率化、広告宣伝費を抑えたブランディング戦略等を進めており、2025年1月期売上収益に対する広告宣伝費率は0.4%となっております。一般的には新規出店店舗は投資先行が継続することが多いと認識しておりますが、当社グループでは上記のような取り組みにより新規出店店舗の早期の黒字化及び投資回収を実現することで、収益力及びフリーキャッシュフロー創出力の維持に努めております。

 しかしながら、上記のような取り組みが十分ではなく、のれんの対象となる事業の収益力が低下し減損損失を計上するに至った場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 減損会計の適用について(発生可能性 低/発生時期 特定時期なし/影響度 小)

 当社グループは、原則として各店舗を独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位と捉え、減損会計を適用し、事業用固定資産の投資回収可能性を適時判断しております。今後、事業環境の変化等により店舗収益性が低下した場合等には、有形固定資産及び使用権資産等について減損損失が発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 航空機オペレーティングリース事業への匿名組合契約に基づく出資について

(発生可能性 低/発生時期 特定時期なし/影響度 小)

 当社子会社である金子眼鏡株式会社は、三菱HCキャピタル株式会社の関連会社が営業者である航空機オペレーティングリース(匿名出資組合)へ投資を行っております。当該投資は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 (4)金融商品」に記載の通り、当該契約において定められている将来キャッシュ・フロー計画に基づき毎期公正価値を測定し、連結財政状態計算書の「その他の金融資産」に計上しております。2025年1月期末の計上額は530百万円となっております。

 毎期末に測定する公正価値の結果次第では、損益への影響が発生する可能性があり、また、航空機の賃借人である航空会社の財務状況が悪化した場合や賃借人が早期購入選択権を行使した場合、現時点で想定しているキャッシュ・フロー計画に見直しが必要となる可能性があります。なお、現時点においては、今後同種の商品への投資を行う方針はございません。

 

⑦ 情報システムリスク(発生可能性 中/発生時期 特定時期なし/影響度 大)

 当社グループは、コンピュータシステムと通信ネットワークを利用して業務処理を行っており、自然災害や事故のほか、コンピュータウイルスに起因するシステムの障害及び外部からの不正侵入等により、システムダウン又は重要データの喪失もしくは漏洩が生じる可能性があります。当社グループでは、当該システム障害等の予防措置として、万一の場合に備え保守・保全の対策を講じ、情報の取扱いに関する社員教育や、情報へのアクセス管理等、内部管理体制についても強化しております。しかしながら、予期せぬ事態によりシステム障害が生じる可能性や情報が流出する可能性は存在し、このような事態が生じた場合、主要な事業活動に支障をきたすことや、社会的信用の失墜を招くことにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

 当社グループは、世界を代表する眼鏡生産地「福井・鯖江」の熟練したクラフトマンシップにより自社で企画・デザインする高品質のアイウェアを製造し、ブランドの世界観を表現した独自の店舗を中心に販売しております。

 当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善を背景として緩やかに回復傾向にあるものの、物価上昇などによる消費者マインドの低下懸念等、先行き不透明な状況が続いています。一方、2024年1月~12月までの訪日外客数は、年間過去最高となる3,686万人となり引き続きインバウンド需要は拡大しております。

 このような状況下で当社グループは、「国内外における新規出店の推進」、「フレーム販売価格の見直し等を通じた一式単価の上昇」、「インバウンド需要の確実な獲得」を軸として事業展開を継続しており、当社グループの主要ブランドである金子眼鏡、フォーナインズともに国内外のお客様から高い支持をいただいております。

 以上の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ4,067百万円増加し、38,833百万円となりました。これは主に、現金及び現金同等物が495百万円減少、使用権資産が1,073百万円、有形固定資産2,114百万円が増加したことなどによるものです。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ916百万円増加し、22,411百万円となりました。これは主に、借入金が897百万円減少、未払法人所得税が363百万円、リース負債が1,087百万円増加したことなどによるものです。

 当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末に比べ3,150百万円増加し、16,421百万円となりました。これは主に、当期利益3,994百万円を計上したことなどによるものです。

b.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、売上収益16,666百万円(前期比23.2%増)、営業利益5,328百万円 (前期比44.0%増)、税引前利益4,912百万円(前期比49.1%増)、当期利益3,994百万円(前期比69.1%増)となりました。

 当連結会計年度における事業セグメント別の売上収益の状況は以下のとおりであります。

[金子眼鏡事業]

 金子眼鏡グループでは、国内個人消費の回復やインバウンド需要の拡大により、店舗販売が引き続き堅調に推移しています。インバウンド顧客向け店舗販売は2022年10月以降急速に回復し引き続き高水準を維持しております。また、当連結会計年度において新規出店計11店舗(国内8店舗、海外3店舗)及び近隣好立地への移転などによる退店5店舗を実施した結果、店舗数は89店舗(国内83店舗、海外6店舗)となりました。なお、2024年4月、中国・上海において中国2号店となる思南公館店をオープンし、2024年8月には中国3号店となる洛克·外灘源店をオープン、さらに2024年11月に香港1号店となるPedder Arcade店をオープンするなど、海外における直営店展開の積極化も順調に進捗しております。

 その結果、金子眼鏡事業の売上収益は10,793百万円(前期比25.2%増)、セグメント利益は4,074百万円(前期比41.1%増)となりました。

[フォーナインズ事業]

フォーナインズグループでは、前連結会計年度に続き2024年2月にフレーム販売価格を改定したことに加え、直営店における国内顧客の回復及びインバウンド顧客の増加と相俟って、店舗販売は順調に推移しています。また、当連結会計年度において国内新規出店1店舗を実施し、店舗数は16店舗(国内15店舗、海外1店舗)となりました。卸売事業についても、2024年4月及び10月に実施した新型商品展示会において国内、海外ともに前期を上回る受注額を獲得しております。さらには、コスト改善にも継続的に取り組んでおり、環境変化に対応しやすい経営体質への転換を継続して行っております。また、2024年5月に鯖江の眼鏡フレーム製造事業者である株式会社タイホウを買収し、フォーナインズ製品の内製化にも取り組んでいます。

 その結果、フォーナインズ事業の売上収益は5,872百万円(前期比19.7%増)、セグメント利益は1,773百万円(前期比35.9%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ495百万円減少し、3,931百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

a.営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動により増加した資金は、5,258百万円(前年同期比52.6%増)となりました。これは主に、税引前利益4,912百万円並びに減価償却費及び償却費1,675百万円の計上があった一方で、営業債権及びその他の債権の増加179百万円、利息の支払額267百万円、法人所得税の支払額1,206百万円等があったことによるものです。

b.投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動により減少した資金は、2,406百万円(前年同期比166.0%増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出2,179百万円、敷金及び保証金の差入による支出108百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出146百万円等によるものです。

c.財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動により減少した資金は、3,379百万円(前年同期比770.2%増)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出14,411百万円、長期借入れによる収入13,375百万円、リース負債の返済による支出1,346百万円等によるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年2月1日

至 2025年1月31日)

前年同期比(%)

金子眼鏡事業(百万円)

815

127.0

フォーナインズ事業(百万円)

137

合計(百万円)

953

148.3

 (注) 金額は製造原価によっております。

 

b.受注実績

 当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年2月1日

至 2025年1月31日)

前年同期比(%)

金子眼鏡事業(百万円)

10,793

125.2

フォーナインズ事業(百万円)

5,872

119.7

合計(百万円)

16,666

123.2

 (注) 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績については、連結売上収益10%以上に該当する販売先がないため、その記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載の通りであります。

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に影響を与えるおそれがあることを認識しております。これらリスク要因の発生を回避するためにも、内部管理体制の強化、人員増強、財務基盤の安定化等、継続的な経営基盤の強化が必要であるものと認識し、実行に努めております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性に関する情報につきましては、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。資金需要の額や使途に合わせて自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していく予定をしております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりましては、決算日における財政状態、報告期間における経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える見積り・予測を必要としております。当社グループは、過去の実績や状況を踏まえ、合理的と判断される前提に基づき、継続してこの見積り・予測の評価を実施しております。なお、重要性がある会計方針及び見積りの詳細及び当該見積りに用いた仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.見積り及び判断の利用」に記載のとおりであります。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なる場合があります。

 

④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析・検討内容

 当社グループの経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、EBITDA(注)があります。当社グループは、EBITDAを用いて業績を測定しており、当社グループの業績評価をより効果的に行うために有用かつ必要な指標であると考えています。

 EBITDAの近時の推移は以下のとおりです。

(注)EBITDA=営業利益+減価償却費+識別可能資産償却費

 

2024年1月期

連結会計年度

2025年1月期

連結会計年度

EBITDA(百万円)

5,181

7,003

 

(参考情報)

 当社グループは、上場後には発生しないと見込まれる上場関連費用や、非経常的損益項目(通常の営業活動の結果を示していると考えられない項目)の影響を除外した上で経営成績の推移を把握するとともに、投資家が当社グループの業績評価を行う上で、当社グループの企業価値について有用な情報を提供することを目的として、以下の算式により算出された調整後EBITDA、調整後当期利益、調整後親会社の所有者に帰属する当期利益及び調整後基本的1株当たり当期利益の推移を以下のとおり記載しております。

 

(1)調整後EBITDA

(単位:百万円)

 

回次

国際会計基準

第5期

第6期

決算年月

2024年1月

2025年1月

EBITDA

5,181

7,003

(調整額)

+上場準備費用(注4)

135

+買収関連費用(注5)

31

+株式市場移行費用(注6)

7

調整後EBITDA(注1)

5,317

7,042

 

(2)調整後当期利益及び調整後親会社の所有者に帰属する当期利益

(単位:百万円)

 

回次

国際会計基準

第5期

第6期

決算年月

2024年1月

2025年1月

当期利益

2,362

3,994

(調整額)

+上場準備費用(注4)

135

+買収関連費用(注5)

31

+株式市場移行費用(注6)

7

-調整項目の税金調整額

41

11

-調整項目の繰延欠損金(注8)

520

調整後当期利益(注2)

2,456

3,500

-調整後非支配持分に帰属する当期利益

156

調整後親会社の所有者に帰属する当期利益(注3)

2,300

3,500

調整後基本的1株当たり当期利益(注7)

114.20

145.87

 (注)1.調整後EBITDA=EBITDA(営業利益+減価償却費+識別可能資産償却費)+上場準備費用(注4)+買収関連費用(注5)+株式市場移行費用(注6)

2.調整後当期利益=当期利益+上場準備費用(注4)+買収関連費用(注5)+株式市場移行費用(注6)-調整項目の税金調整額-調整項目の繰延欠損金(注8)

3.調整後親会社の所有者に帰属する当期利益=調整後当期利益-調整後非支配持分に帰属する当期利益

4.上場準備や国際会計基準(IFRS)導入に係るアドバイザリー費用や外部コンサルタント費用等の上場に関連する一時的な費用であります。

5.2025年1月期に株式会社タイホウを買収した際の費用であります。調整後EBITDAの調整項目には、株式会社タイホウの買収に関連する弁護士費用や印紙税・登録免許税等の費用を加算調整しております。

6.市場区分移行の費用であります。なお、市場区分の変更申請の取下げをしております。

7.調整後基本的1株当たり当期利益は、調整後当期利益÷期中平均株式数により算出しております。また、当社は2023年9月30日付で普通株式1株につき20株の割合で株式分割を行っており、調整後基本的1株当たり当期利益については、当該株式分割を考慮して記載しています。

8.当連結会計年度及び前連結会計年度において税務上の繰越欠損金を認識している会社があり、それらの税務上の繰越欠損金については、当連結会計年度において将来の課税所得の発生が見込まれる範囲内で繰延税金資産を520百万円認識しております。

5【経営上の重要な契約等】

(1)株式会社三菱UFJ銀行との借入契約

 当社は、既存借入金の借り換え(リファイナンス)のため、2024年7月26日付で、株式会社三菱UFJ銀行をエージェントとする金銭消費貸借契約を締結しております。主な契約内容は、以下のとおりであります。

① 契約の相手先

株式会社三菱UFJ銀行、株式会社日本政策投資銀行、株式会社三井住友銀行、株式会社福井銀行、株式会社名古屋銀行、株式会社常陽銀行、株式会社南都銀行

 

② 借入金額

タームローンA借入   2,375百万円

タームローンB借入  11,000百万円

 

③ 借入枠

コミットメントライン借入枠  500百万円

 

④ 返済期限

タームローンA:2025年1月31日より6ヶ月毎に返済(最終返済日2026年9月30日)

タームローンB:最終返済日(2026年9月30日)に返済

コミットメントライン借入枠:1ヶ月、3ヶ月又は6ヶ月のいずれかの期間で返済

 

⑤ 金利

日本円TIBOR(東京銀行間取引金利)+スプレッド

 

⑥ 主な借入人の義務

ア.財務制限条項を遵守すること

a.純資産

 各決算期末の連結貸借対照表上の純資産の部の金額を正の値を維持すること。

 

b.利益維持

 各決算期における連結ベースの営業損益または当期損益のいずれかについて2期連続で損失を計上しないこと。但し、のれん償却費(取得原価配分手続(PPA)を通じて認識される無形資産償却費を含む。)を足し戻す。

 

イ.借入人の計算書類等の定期的な報告を行うこと

 

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。