第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営の基本方針

当社グループは、1997年の創業以来、インターネットを利用した学習管理システムLMS(Learning Management System)の開発提供、及び、Eラーニングコンテンツの製造販売により、ITエンジニアの研修育成と成長環境の提供を行い、IT業界が抱ええる「ITエンジニア不足」「持続可能なIT環境の構築」「産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進」といった社会課題の解決に取り組んでまいりました。

しかしながら、昨今のグローバル化、デジタル化、IT技術の高度化を踏まえ、2030年までの経営および事業戦略に関する長期構想として「ブロックチェーンサービスカンパニー構想」を策定しました。本構想は、「クシムが描く未来」と「向かうべき方向」を明確に示すべく策定したものであり、従来の既存事業に加えて、ブロックチェーンという成長分野へ経営資源の投下を加速し、ブロックチェーン技術領域に立脚するサービスカンパニーへ事業ドメインの転換を図る方針に基づくものであります。これに加えて、現在および今後の目まぐるしい社会環境の変化を鑑み、「収益力の大幅向上」と「業態のトランスフォーム」の加速に着手しております。

 

(2)経営環境

労働人減少による人材育成の重要性や、政府が推進する働き方改革、経済産業省が論じるデジタル人材政策など生産性の向上に関する対策の重要性はますます高まる一方、新型コロナウイルス感染症対応下での行動制限期間の長期化、2022年5月の米国のFOMC(米連邦公開市場委員会)による利上げの決定や円安、ウクライナ危機等、不透明な状況が継続しております。このような劇的な環境変化は、当社グループを取り巻く事業環境にも影響する一方、当社グループの強みであるブロックチェーン技術に対する社会的認知やマーケットの成長への期待は高まりつつあることから、今後多方面の業界・業種に展開を行い、技術面での一定の参入障壁と独自性を発揮できるように推進してまいります。

なお、当社の事業活動を支える労働力の確保に関しては、即戦力である中途採用の推進と、当社グループ全体で導入しているテレワークの推進による一段の効率化と多様な労働環境の整備・提供を図るとともに内部体制をさらに強化してまいります。

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 売上高の拡大と安定した収益基盤の確立

当社グループは、Web3.0の中核とされるブロックチェーン技術を背景としたサービスを提供するユニークな事業を展開しており、目下成長途上のマーケットにおいて、ストック型のプロジェクトの獲得とブロックチェーンによる課題解決を提供する事業基盤を構築することが重要であると認識しております。このような課題に対処するため、ブロックチェーンの技術革新に関する研究活動、エンジニア等の育成のための投資を継続的に行いテクノロジーの発展への追求を常々行ってまいります。また、当社グループが提供するサービスは、その大半がインターネットを利用したサービスであるため、システムの安定稼働や、各種情報資産の適切な管理、サービス品質の維持・向上は不可欠であると認識しております。このように、事業投資とインフラ整備を並行して行うことで売上高の更なる拡大と安定した収益基盤の確立を図ってまいります。

② 組織体制の強化と人材の育成

当社グループが継続的に企業価値を拡大していくためには、より高いサービスの提供と新たなプロダクトの開発が不可欠であると考えております。そのためには、自律的成長が可能な優秀な人材の採用と育成並びに組織体制の強化が重要であります。労働条件の改善や新しい雇用形態の導入を図り、働きやすい魅力ある職場作りに取り組むとともに、定期的に社内勉強会や外部研修を実施し、社員一人一人のスキルアップ強化を図り、バランスの取れた組織体制の構築に引き続き努めてまいります。

③ ガバナンス及び内部管理体制の強化

当社グループが持続的に成長を遂げるためには、事業運営とガバナンスのバランス、並びに経営上のリスクを適切に掌握しコントロールするための内部管理体制の強化が重要であると認識しております。そのため、社外取締役や監査等委員への報告体制強化、監査等委員と内部監査室並びに会計監査人による実効性のある監査体制を推進するとともに、コンプライアンス研修の実施等を通じた個々人への意識づけ並びに内部監査室による定期的監査を実施してまいります。

 

なお、上記施策に加え、新型コロナウイルス感染拡大影響の顕在化による経営への影響を軽減するため、徹底した間接経費削減や業務効率化による固定費削減、消費動向や顧客動向を踏まえた施策を実施いたします。

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項は、以下のとおりであります。また、リスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。また、投資判断に関連するリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意下さい。

 

(1) 事業に関するリスクについて
① サービス及びシステムの障害について

当社グループの事業は、インターネットとPCを利用する環境下でサービスを提供しております。インターネットによるサービス提供については、様々なリスクが存在しており、当社グループ内のネットワークの不具合、人為的過失等の原因によりシステムダウンが起こる可能性、その他、コンピューターウィルスの感染やハッキング被害が生じる可能性、地震等の天災や火災、停電等の予期できない障害が起こった場合等の様々な問題が発生した場合には顧客へのサービスの提供が不可能になる可能性もあり、このような事態が発生した場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

② 暗号資産の価格の変動について

当社グループは、暗号資産を保有しており、暗号資産の運用を行っております。暗号資産運用のリスクとしては、暗号資産の価格変動や、暗号資産市場の混乱等で暗号資産市場において取引ができなくなる、又は通常より不利な取引を余儀なくされることによる損失リスクや、暗号資産交換所のシステムの障害及び破たん、サーバへの不正アクセスによる盗難等があります。万が一これらのリスクが顕在化した場合には、対応費用の増加、当社グループへの信用の低下等が発生する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、暗号資産の価格変動や流動性により当社グループのブロックチェーン技術を活用したサービスの開発を含む、健全な市場形成を支援するコンサルティング契約にかかる報酬が増減することから、暗号資産の価格の下落や流動性の低下により報酬が減額した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 当社の事業体制に関するリスクについて
① 小規模組織であることについて

当社グループは、2022年10月末現在、従業員60名(内、契約社員2名)と小規模組織であることから、業務が属人的であるために人材の流出時に業務に支障をきたす可能性があります。また、今後の当社グループの成長のためには優秀な技術者等の人材を確保していく必要がございます。現時点においては人材確保に重大な支障を生じておりませんが、適時十分に確保できない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

② 内部管理体制の充実について

当社グループは、当社グループの企業価値を最大化するためには、コーポレート・ガバナンスの充実を経営上の重要課題の一つであると位置づけております。また、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、法令遵守の徹底が必要と認識しており、当社グループではコンプライアンス規程を制定し、内部管理体制の充実に努めております。しかしながら、M&A等による事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかない状況が生じた場合には、適切な業務運営が困難となり当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 個人情報の保護に関するリスクについて

当社グループは、当社グループのサービスを利用する顧客等に個人情報の登録を求めており、当社グループのデータベースサーバには、氏名、住所、電話番号、メールアドレス等の個人情報がデータとして蓄積されております。これらの情報については、当社グループにおいて守秘義務があり、また、データへアクセスできる人数の制限及び外部侵入防止のためのセキュリティ等の採用により当社グループの管理部門及びシステム部門を中心に漏洩防止を図っております。しかし、社内管理体制の問題又は社外からの侵入等によりこれらのデータが外部に漏洩した場合、当社グループへの損害賠償請求や信用低下等によって当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 技術革新への対応に関するリスクについて

当社グループは、Web3.0時代の到来によるパラダイム・シフトに備え、成長分野であるブロックチェーン領域に経営資源の投下を加速し、ブロックチェーン技術に立脚するサービスカンパニーへと事業ドメインの転換を図り、各種サービスを提供しております。当社グループの予想を超えるような革新的な最新技術又はサービスへの対応が遅れる場合、当社グループの技術的優位性やサービス競争力の低下を招き、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 業務提携、戦略的投資、M&Aに関するリスクについて

当社グループは、企業価値向上を目的とした飛躍的成長の実現の有効な手段のひとつとして、引き続き、資本業務提携、戦略的投資及びM&Aを検討していく方針であります。しかしながら、業務提携においては提携先の経営状況により提携の維持が困難になる可能性、戦略的投資については投資先の財務状況等により期待する成果が得られない等により保有株式の評価減処理を行う可能性があります。M&Aについては、買収後に偶発債務の発生や未認識債務の判明等、事前調査で把握できなかった問題が生じた場合や、事業計画どおりに進まずのれんの減損処理を行う必要が生じた場合には、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。また、企業買収等により、当社グループが従来行っていない新規事業が加わる際には、その事業固有のリスク要因が加わります。

 

(6) 感染症流行リスクについて

新型コロナウイルスや悪性鳥インフルエンザ等の感染症の流行に伴い、役職員やその家族が感染し、就業不能となった場合には、事業継続が困難となるリスクが生じます。当社グループは、このリスクに対応するため、役職員への啓発を行うとともに、必要な消毒液・マスクの備蓄を行っております。

なお、今般の新型コロナウイルス感染症の流行に対しては、時差出勤、交代勤務及びテレワーク(在宅勤務)の実施に加えて、社内外の会議への出席についても慎重に対応しております。今後も状況を注視しつつ、機動的に対策を講じてまいります。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における世界経済は、当初新型コロナウイルス感染症の収束期待があったものの、年初からオミクロン株の急速な感染拡大があり、引き続き不透明な状況が続きました。また、2022年2月24日ロシアによるウクライナ侵攻から政情不安も拡大し、急激な原油高騰や円安進行などの影響により、社会経済活動の回復は先行きが懸念されます。わが国経済におきましても、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況が徐々に緩和される中でこのところ持ち直しの動きがみられましたが、2022年年始から「オミクロン型」の猛威による影響が続いており、今後も予断を許さない状況に加えて上記世界経済の影響もあり、景気は依然として厳しい状況が続くと見込まれます。

こうしたマクロ経済動向の中ではありますが、当社グループは中期経営計画(2019年10月期~2024年10月期)における「収益力の大幅向上」に向けて引き続き業態のトランスフォームを推進する方針を掲げております。当連結会計年度においても中期経営計画を羅針盤に事業を推進してまいりました。

当社グループは、産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を使命とする一企業集団として、あらゆるサービスのデジタル化が進む時代に備え、引き続き、自らのビジネスモデルを変革し続けております。併せて、2020年10月期に実施したライツ・オファリングによる調達資金を成長原資として、ダイナミックにケイパビリティの拡充を図ることを狙い、M&A及び資本業務提携と積極的な事業投資を進めております。このような中、当社はWeb3.0時代の到来によるパラダイム・シフトに備え、成長分野であるブロックチェーン領域に経営資源の投下を加速し、ブロックチェーン技術に立脚するサービスカンパニーへと事業ドメインの転換を図る方針に基づいてセグメント変更を実施し、新たに「ブロックチェーンサービス事業」セグメントを新設しました。当連結会計年度におけるブロックチェーンサービス事業は、新たに連結子会社となったチューリンガムを通じてブロックチェーン技術や暗号理論を用いたR&D、システム受託開発、アプリケーション開発、暗号資産開発を行っております。システムエンジニアリング事業では、創業事業であるEラーニング事業の事業譲渡が完了による事業譲渡益163百万円を計上、受託開発においては主にブロックチェーン技術を活用したシステムの開発実現などの成果に至りました。インキュベーション事業では、暗号資産運用を中心に収益獲得に至りました。

以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高1,603百万円(前連結会計年度比18百万円のマイナス)、EBITDA428百万円(前連結会計年度は39百万円のマイナス)、営業利益186百万円(前連結会計年度は134百万円の損失)、経常利益179百万円(前連結会計年度は114百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益605百万円(前連結会計年度は362百万円の損失)となりました。

 

① 経営成績及び財政状態の状況
(ⅰ)経営成績の状況

当連結会計年度における報告セグメント別の概況は以下のとおりであります。

 

当社のセグメント別の製品・サービス分類は次のとおりです。

セグメント

製品・サービス

ブロックチェーンサービス事業

・先端IT技術を適用するシステムの受託開発

・先端IT技術の社会実装を目的とする受託研究

・ブロックチェーン技術の基礎研究

・ブロックチェーン技術に関する教育コンテンツの開発・販売

システムエンジニアリング事業

・法人向け学習管理システム「iStudy LMS」「SLAP」(2022年7月1日に事業譲渡)

・各種研修講座・eラーニングコンテンツ(2022年7月1日に事業譲渡)

・高度IT技術者の育成、並びに紹介及び派遣事業

・SES事業及びシステムの受託開発事業

インキュベーション事業

・経営及び各種コンサルティング事業

・投融資業

 

 

当連結会計年度より、報告セグメント区分を変更しております。詳細は、「第4 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等) セグメント情報 1.報告セグメントの概要 (3)報告セグメントの変更等に関する事項」に記載のとおりであります。

前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分にて組み替えた数値で比較をしております。

なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。

詳細については、「第5経理の状況1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」に記載のとおりであります。

 

[ブロックチェーンサービス事業]

チューリンガムにおいて、ブロックチェーン技術や暗号理論を用いたR&Dをベースとしながら、ブロックチェーン開発支援や受託開発、トークンエコノミクスと言われる暗号資産をどのようにサービスやプロジェクトの中で利活用するのかというトークンのデザインやマーケットへの供給を行う際に誰にどのように分配を行っていくかなどの専門的なコンサルティングを行っております。当連結会計年度については、暗号資産のSkeb Coinの上場支援を行い、海外暗号資産取引所への上場に漕ぎ着けました。さらに、上場後も海外マーケティングも積極的にサポートすることで、暗号資産が低調で冬の時代と言われる中、流動性の維持に寄与しました。また、足元ではGameFiと言われるゲームと分散型金融が融合したサービスに関してのコンサルティングに力を入れており、取引先や業務内容の多様化に努めております。

クシムインサイトにおいて、当社グループが開発に関与し納品済みであるNFT(※)マーケットプレイス、株主様向け議決権行使プラットフォーム、暗号資産のレンディングサービスアプリケーション、暗号資産を対象にしたAPI連携による自動トレーディングシステム等のブロックチェーン技術を用いたプロダクトについて、保守運用により継続的に収益を獲得しております。

以上の結果、当連結会計年度のブロックチェーンサービス事業全体における売上高は491百万円(前連結会計年度比415百万円のプラス)、EBITDAは354百万円(前連結会計年度比336百万円のプラス)、セグメント利益は184百万円(前連結会計年度比173百万円のプラス)となりました。

なお、クシムインサイト、チューリンガムの株式取得に伴うのれん償却額164百万円は当セグメント利益に含めております。

※ Non-Fungible Token の略語。代替の可能性のないブロックチェーン上のトークンです。

 

[システムエンジニアリング事業]

当社において、2022年5月25日付「事業譲渡に関するお知らせ」にて公表の通り、1997年の創業時より提供をして参りました法人向け学習管理システムである「iStudy LMS」及び「SLAP」、及びEラーニングコンテンツの製造販売に係る事業は、2022年7月1日付で予定通り事業譲渡が完了しました。創業以来、延べ2,000社・100万人以上のITエンジニアのスキルアップやキャリア形成を支援させていただいた本事業は、ステークホルダーの皆様にもご支援いただきながら当社の成長を支え続けてまいりました。今後は、譲渡先である株式会社ODKソリューションズにおいて本事業は継続して行われます。

クシムソフトにおいて、SES事業及びシステムの受託開発事業を担っております。SES事業につきましては、ニーズの高いオープン系を中心としたIT技術者の採用と育成により、顧客システム開発の支援、エンジニア派遣事業を拡充しております。当連結会計年度においては、参画中のプロジェクトにおいての継続した取引が続いたことに加えて中途採用者に関しても入社後間もなく該当プロジェクトの増員による参画にてリードタイムが無かったこと、さらには継続して当グループ各社のシナジーにて新しいマーケットの開拓を積極的に続けた結果、全ての月次において計画していた目標稼働率を超える稼働率を実現しました。また継続してエンジニアのスキルアップに向けた社内教育を続けたことで参画プロジェクトの業務内容拡大と市場価値向上を達成させ、部門黒字はさらに拡大いたしました。この好循環を引き続き継続してまいります。

受託開発事業につきましては、先端分野(AIやブロックチェーンを活用したシステム)に対する画面等の開発納品後の運用保守案件を継続しております。さらにシステムのバージョンアップ対応、新規受託開発案件の獲得やPOC案件の獲得等、案件レコードを積み重ねていることで部門黒字を継続しております。なお、同社での先端分野に対するプロジェクトの関わりは、プロジェクト進行とともに高度IT技術者の育成の場としてグループ事業と業績にも寄与しております。

ケア・ダイナミクスにおいて、介護事業者向けASPサービスを中心に、介護業界にIT技術を導入することで成長をしてきました。ASPサービスの「Care Online」は、介護現場における国保請求等の業務負荷軽減ができるサービスであるため、2006年にサービスを開始以来、多くのユーザーにご利用いただいております。保守運営をクシムソフト島根事業所開発センターに移管したことで、一部外注していたメンテナンス業務を自社内で完結できるようになり、経営効率の改善を図りました。なお、効率経営と適切なグループ組織運営を目的として、2022年10月1日付でクシムソフトを存続会社として吸収合併をいたしました。

以上の結果、当連結会計年度のシステムエンジニアリング事業全体における売上高は800百万円(前連結会計年度比746百万円のマイナス)、EBITDAは108百万円(前連結会計年度比74百万円のマイナス)、セグメント利益は37百万円(前連結会計年度比58百万円のマイナス)となりました。

なお、クシムソフト及びケア・ダイナミクスの株式取得に伴うのれん償却額55百万円は当セグメント利益に含めております。

 

[インキュベーション事業]

暗号資産運用につきましては、当社が実施したライツ・オファリングにより発行した第8回新株予約権、及び行使価額修正条項付株式会社クシム第9回新株予約権の行使で調達した資金を充当し、グループ全体で複数の暗号資産への投資を実行した結果、307百万円超の収益獲得に至りました。なお、暗号資産市場はマクロ経済全体の減退による影響を受ける可能性があり、今後もその影響を注視して運用をしてまいります。

M&A及び資本提携による事業投資につきましては、2022年3月2日を効力発生日としてチューリンガムを連結子会社化し、収益貢献をしております。引き続き、M&A仲介企業やデータベースを用いたM&A仲介サービスを活用し候補となる企業のソーシングを継続し、事業承継やバイアウトを目指す企業の増加に伴う譲渡金額相場の上昇傾向に対して、財政状態や将来の獲得キャッシュ・フローに基づく適切な企業価値によるM&Aを推進してまいります。

以上の結果、当連結会計年度のインキュベーション事業全体における売上高は311百万円(前連結会計年度比312百万円のプラス)、EBITDAは160百万円(前連結会計年度比161百万円のプラス)、セグメント利益は160百万円(前連結会計年度はセグメント損失0百万円)となりました。

 
(ⅱ)財政状態の状況
(資産の部)

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて2,636百万円増加し6,430百万円となりました。流動資産の残高は前連結会計年度末に比べて834百万円増加し2,796百万円となりました。これは主に暗号資産が995百万円増加、売掛金及び契約資産が382百万円増加、現金及び預金が523百万円減少、売掛金が103百万円減少したことによるものであります。固定資産の残高は前連結会計年度末に比べて1,802百万円増加し3,634百万円となりました。これは主にのれんが1,939百万円増加、投資有価証券が185百万円増加、繰延税金資産が68百万円増加、ソフトウェアが94百万円減少、長期貸付金が288百万円減少したことによるものであります。

(負債の部)

当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べて132百万円減少し596百万円となりました。流動負債の残高は前連結会計年度末に比べて0百万円増加し284百万円となりました。これは主に買掛金が22百万円増加、未払法人税が45百万円増加、1年内返済予定の長期借入金が7百万円減少、前受収益が48百万円減少したことによるものであります。固定負債の残高は前連結会計年度末に比べて132百万円減少し311百万円となりました。これは主に長期借入金が53百万円減少、繰延税金負債が26百万円減少したことによるものであります。

(純資産の部)

当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べて2,768百万円増加し5,834百万円となりました。これは行使価額修正条項付新株予約権付社債券等に係る新株予約権の行使及び減資の影響により資本剰余金が3,348百万円増加、及び当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益605百万円の計上及び減資の影響により利益剰余金が981百万円増加、行使価額修正条項付新株予約権付社債券等に係る新株予約権の行使及び減資の影響により資本金が1,495百万円減少、その他有価証券評価差額金が66百万円減少したことによるものであります。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ523百万円減少し、1,169百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは999百万円のマイナス(前連結会計年度は49百万円のマイナス)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益595百万円、のれん償却額219百万円、投資有価証券評価損64百万円、事業譲渡益163百万円、段階取得に係る差益359百万円、売上債権の増加額315百万円、暗号資産の増加額692百万円、預り金の減少額114百万円、その他364百万円減少したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは66百万円のプラス(前連結会計年度は380百万円のマイナス)となりました。これは主に、貸付けによる支出40百万円、投資有価証券の取得による支出84百万円、事業譲渡による収入180百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは354百万円のプラス(前連結会計年度は1,569百万円のプラス)となりました。これは主に、株式の発行による収入422百万円、長期借入金の返済による支出67百万円によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

(ⅰ) 生産実績

生産に該当する事項がないため、記載する事項はありません。

 

(ⅱ) 仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年11月1日

至 2022年10月31日)

前年同期比

(%)

金額(千円)

ブロックチェーンサービス事業

システムエンジニアリング事業

56,021

58.7

インキュベーション事業

合計

56,021

53.2

 

(注)1.仕入実績の金額は、製品仕入高、商品仕入高、製品ロイヤリティー仕入高の金額を合計しております。

 

(ⅲ) 受注実績

当社グループの事業は、受注から売上計上までの所要日数が短く、期中の受注高と販売実績とがほぼ対応するため、記載を省略しております。

 

(ⅳ) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年11月1日

至 2022年10月31日)

前年同期比

(%)

金額(千円)

ブロックチェーンサービス事業

491,670

580.7

システムエンジニアリング事業

800,650

50.8

インキュベーション事業

311,078

合計

1,603,399

98.9

 

(注)1.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社ブイキューブ

551,474

34.0

1,547

0.10

株式会社CAICAテクノロジーズ

163,816

10.1

110,064

6.86

Cure Holdings Limited

329,852

20.57

株式会社スケブベンチャーズ

202,342

12.62

 

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において経営者が判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績の分析

(ⅰ) 経営成績
(売上高)

当連結会計年度における売上高は1,603百万円(前連結会計年度比18百万円のマイナス)となりました。この主たる内訳は次の通りです。当社グループは、ブロックチェーン技術に立脚するサービスカンパニーへと事業ドメインの転換を図り、ブロックチェーンサービス事業において、チューリンガムを連結子会社化に伴い同事業の売上高が491百万円(前連結会計年度比415百万円のプラス)となりました。また、グループ全体で複数の暗号資産への投資を実行した結果、インキュベーション事業の売上高が311百万円(前連結会計年度比312百万円のプラス)となりました。その一方でシステムエンジニアリング事業において、創業であるEラーニング事業の譲渡、イーフロンティアの売却による連結の範囲からの除外したことに伴い、同事業の売上高が800百万円(前連結会計年度比746百万円のマイナス)となりました。なお、当社グループは新型コロナウイルスの感染拡大に伴う事業活動の停止等は生じておらず、売上高への影響は軽微にとどまりました。

(売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益)

当連結会計年度における売上原価は831百万円となりました(前連結会計年度比410百万円のマイナス)となりました。この主たる内訳は次の通りです。利益率の高いブロックチェーンサービス事業の暗号資産のコンサルティングの受注増加や暗号資産投融資事業にかかる売却益の計上、創業事業であるEラーニング事業の事業譲渡に伴う売上原価計上額の減少によるものです。販売費及び一般管理費は、585百万円となりました(前連結会計年度比71百万円のプラス)。これは、間接経費削減や業務効率化による固定費削減を実施した一方でチューリンガムを連結子会社化したことに伴い、のれん償却費が大幅に増加したことによるものです。これらの結果、営業利益は186百万円(前連結会計年度は営業損失134百万円)となりました。

(営業外損益、特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度における営業外収益は15百万円となりました(前連結会計年度比17百万円のマイナス)。これは、助成金収入16百万円減少したこと等によるものであります。営業外費用は22百万円となりました(前連結会計年度比9百万円のプラス)。これは、暗号資産売却損17百万円増加、投資事業組合運用損7百万円減少したこと等によるものであります。特別利益は548百万円となりました(前連結会計年度比548百万円のプラス)。これは、Eラーニング事業の売却による事業譲渡益163百万円、チューリンガム取得時に発生した段階取得にかかる差益359百万円等の計上によるものであります。特別損失は132百万円となりました(前連結会計年度比104百万円のマイナス)。当連結会計年度はブロックチェーン技術者育成を目的とする教育コンテンツを無償公開することによる減損損失15百万円、投資有価証券評価損64百万円、イーフロンティア売却による関係会社株式売却損52百万円の計上等の計上によるものであります。これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は605百万円となりました(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失362百万円)。

 

(ⅱ) 財政状態

「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況)

各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

(資本の財源)

当社グループは、営業活動によって獲得した資金を以って事業運営を行うことを原則とし、一部銀行等金融機関からの借入により、資金調達しております。また、借入金の使途は運転資金であります。なお、当連結会計年度末における借入金を含む有利子負債の残高は308百万円となっております。

また、当社は、2021年8月30日に発行した行使価額修正条項付株式会社クシム第9回新株予約権の行使により、当連結会計年度において428百万円の資金調達を行っております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に関する見積りを必要とします。会計上の見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的な見積り金額を判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、異なる可能性があります。なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 2 事業等のリスク」に記載のとおり、事業や事業体制等、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

 

4 【経営上の重要な契約等】

(取得による企業結合)

当社は、2021年12月20日付で締結した株式交換契約に基づき、2022年3月2日を効力発生日として、当社を株式交換完全親会社、チューリンガム株式会社を株式交換完全子会社とする株式交換を実施いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)(取得による企業結合)」に記載のとおりであります。

 

(株式交換)

当社は、2022年3月22日開催の取締役会において、ともに当社の連結子会社である株式会社クシムインサイトを株式交換完全親会社、チューリンガム株式会社を株式交換完全子会社とするための株式交換を実施することを決議し、同年3月29日を効力発生日として実施いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)(共通支配下の取引等)(株式交換)」に記載のとおりであります。

 

(子会社株式の譲渡)

当社は、2022年4月12日開催の取締役会決議において、当社の連結子会社である株式会社イーフロンティアの当社保有株式の全部を株式会社ピアズへ株式譲渡することを決議し、同年4月12日に株式譲渡契約を締結し、同年5月1日に本件株式譲渡を実施いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)(事業分離)(子会社株式の譲渡)」に記載のとおりであります。

 

(分割型分割による子会社の設立)

当社の連結子会社である株式会社クシムソフトは、2022年4月27日開催の取締役会において、2022年6月1日付でクシムソフトが保有する投資有価証券等を切り離して新設会社である株式会社web3テクノロジーズに権利義務を承継させる会社分割(分割型分割)を実施、実施後にクシムソフトが保有するweb3テクノロジーズ株式をクシムソフトの親会社である株式会社クシムインサイトに配当、クシムインサイトの完全子会社とすることを決議し、同年6月1日に会社分割(分割型分割)を実施いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)(共通支配下の取引等)(分割型分割による子会社の設立)」に記載のとおりであります。

 

(事業譲渡)

当社は、2022年5月25日開催の取締役会において、当社が運営するEラーニング事業及びLMSサービスを株式会社ODKソリューションズに譲渡する事業譲渡契約について決議、同年5月31日付で事業譲渡契約を締結し、同年7月1日に実施いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)(事業分離)(事業譲渡)」に記載のとおりであります。

 

(連結子会社間の合併①)

当社の連結子会社であるチューリンガム株式会社及び株式会社SEVENTAGEは、2022年5月16日開催の取締役会において、チューリンガム株式会社を存続会社、株式会社SEVENTAGEを消滅会社とする吸収合併を決議し、同年7月1日に実施いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)(共通支配下の取引等)(吸収合併)」に記載のとおりであります。

 

(連結子会社間の合併②)

当社の連結子会社である株式会社クシムソフト及び株式会社ケア・ダイナミクスは、2022年7月28日開催の取締役会において、株式会社クシムソフトを存続会社、株式会社ケア・ダイナミクスを消滅会社とする吸収合併とすることを決議し、同年10月1日に実施いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)(吸収合併)」に記載のとおりであります。

 

5 【研究開発活動】

 該当事項はありません。