第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、下記のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

 トランクルームは、海外では「セルフストレージ」と呼ばれ、最も普及が進んでいるアメリカでは1970年代にその数が一気に増え、トランクルームを利用する世帯普及率が現在では、10%超となっています。

 また、トランクルームの世界市場規模は、約380億ドル(約5兆円)となっています。

(出典: Self-storage:How warehouses for personal junk become a $38billion industry-Curbed)

 一方、日本は年々認知度が向上、収納サービス利用者が増加傾向ではありますが、全国で1世帯あたりのレンタル収納スペース数は0.0044室(2022年1月1日時点での「住民基本台帳に基づく人口」の総世帯数で換算)、コンテナ収納スペースは0.0060室となっており、両者を合わせて1.04%の世帯普及率となります。日本の世帯普及率はアメリカの約10分の1程度であり、生活様式の違いなどはありますが、まだ日本における普及率には伸長の余地があるものと推測されます。世帯数の伸び率は鈍化する中、東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の人口は3,670万6,866人(前年比7万3,650人減)で、全国人口に占める割合は29.15%(前年比0.11ポイント増)となり、依然として東京圏集中の構図となっています。また、東京圏の部屋数は増加が続いており、1世帯当たりのレンタル収納スペース数は今後も拡大傾向を見込むことができます。

 2021年度の収納ビジネスの市場規模(レンタル収納+コンテナ収納)は、805.1億円、2022年度の同市場規模は836.5億円、2023年度は867.7億円(前期比3.6%増)、2024年度は918.7億円(前期比5.8%増)と予想されています。2023年度以降は、大手事業者を中心に新規出店のペースが加速していくとみられ、これまで以上の供給状況になるとみられます。(出典:矢野経済研究所「2025年版拡大する収納ビジネス市場の徹底調査」)

 日本におけるサービスの認知度・世帯普及率はまだ高いとは言えず、今後のさらなる市場拡大を見込むことができると考えています。また近年においては不動産価格が右肩上がりで上昇してきたため、ライフステージの変化に伴う住居(特にマンション)の買い替えを行うことができましたが、今後の不動産価格の大幅な上昇が期待できなくなったため、住居の買い替えが進まず一つの物件に長く住むケースが増えてきています。このため、それぞれのライフステージにおいて必要な荷物・家財等を外部のトランクルームを利用することにより、住まいの限られたスペースを調整することが増えてきています。新型コロナウイルス感染症による在宅勤務の増加に対応して室内を広くすることや、いわゆる巣ごもり消費の増加により家庭内に食品などの在庫が増えたことなどもトランクルーム業界にとっては追い風となってきていると考えています。

 

 またトランクルームを不動産投資物件として考えた場合、トランクルームは水回り等がないため、建築費を通常の建物と比べて低く抑えることができるとともに、大規模修繕の頻度も低くなります。さらにアパート・マンションと比較しても経年による賃料の減少幅が小さいため投資物件としては優位性を持っています。これらのトランクルームの特性を活かして事業を発展、強化させるため、当社では以下の事項を重要な課題と認識し、その対応に引き続き取り組んでまいります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、「顧客資産の持続的な価値向上を通じて、人々の暮らしや社会の未来を共創する」を経営理念に掲げ、「不動産所有者の資産価値の向上と、トランクルーム利用者の利便性の向上と満足感を通じて、人々の暮らしや社会の未来を豊かにする」を経営理念に基づくミッションとして、セルフストレージ方式のトランクルームの企画、開発、運営及び管理を行う事業を展開しております。

 上記の経営理念・ミッションを達成するために下記の戦略を推し進めてまいります。

 

① 旺盛な需要があるエリアへ、不動産物件開発力、建築企画力を通じて優良な収益不動産を建設する。また並行して対象地域でのトランクルーム利用者の利便性を高めるサービスを提供する。

 

② オペレーション能力の向上を通じて、管理受託物件の拡大を図る。

 

③ セルフストレージ専用ポータルサイト・Web決済システム等の開発・連携を図り、業務効率向上と販売機会の拡大により、当社の認知度を向上させる。

 

④ 複数の大型案件の投資家に加え、小規模案件の投資家開拓も行い、多様な売却先を確保することにより安定的に投資資金が回収できるようにする。

 

(2)目標とする経営指標

 当社は、下記の指標を重要な経営指標と考えております。

 

① 各物件開業後の稼働率

 トランクルームは一般的に、開設当初は稼働率が高くはありませんが、そのマーケットでの認知度の向上等により時間を経るごとに徐々に稼働率が高まっていく特性があります。当社では、稼働率と経過年数に注目して物件ごとの管理を行っています。経過年数のわりに稼働率が上がっていない物件に対しては、稼働率を向上させる対策をとっています。

 

② 管理する物件の物件数と部屋数

 当社は、当社が管理する物件数とその部屋数を特に意識しております。物件数と部屋数が増加することにより、ユーザー顧客に対する信頼感が獲得できると同時に、トランクルーム業界内での当社の地位向上に役立つものと考えております。

 

③ 物件への問合せ数と契約の成約率

 物件に対する問合せがなければトランクルームの新規契約は進まないことから、問合せ数とその推移に注目しておりますが、それと同時にこれらの問合せが実際の契約に至る成約率も重要な指標と考えております。

(注) 稼働率は、稼働室数÷総室数で算出しております。経過年数は建築2年以上経過物件を既存稼働率、2年未満を新規稼働率として区別しております。

 

(今後の戦略)

 収益力強化、事業拡大のためには、トランクルーム利用者獲得、不動産物件開発力強化、運営力の強化と効率化が必要となります。

 トランクルーム利用者獲得のためには、店舗内覧会の開催やチラシ、看板などにより店舗そのものの認知度を上げることに加え、新規にトランクルームを利用するお客様にトランクルームの利便性についてご理解頂くことが重要となります。そのため、ホームページを活用したトランクルームの利便性、利用方法の説明や問い合わせを頂いた際に、実際に施設を見学頂くご案内などにより新たなお客様の獲得に努めてまいります。

 また、トランクルーム利用者の利便性を高めるため、清潔な環境の維持、温度・湿度管理などの通常の家財保管のための設備管理に加え、宅配ボックスの設置や荷物運搬サービスの提供などお客様がトランクルームをより利用しやすいサービスに努めてまいります。

 不動産物件開発力強化のためには、不動産会社、金融機関などからの情報収集力を強化していくとともに、マンション用地を購入後、開発を見合わせている住宅系開発会社からの情報取得にも努めてまいります。また、2023年1月に提携したクリアル株式会社との協業により、新規物件開発の強化に加え、既存の事務所ビルなどの改装案件開拓にも努めてまいります。同時に物件開発に伴う資金調達力強化のため、金融機関との関係を強化してまいります。

 また、安定的に物件開発を進めるため、従来の建築工事の実績を踏まえ設計・施工を工夫することによりコスト抑制を図るとともに、ゼネコン、設計事務所との協力関係構築により工事体制を強化してまいります。

 運営力の強化、効率化については、2022年11月に提携した株式会社パルマとの協業により、お客様との契約手続きの効率化、内覧会開催の充実などを図り、店舗数、部屋数の増加に対し、運営コストが比例して増加しないように工夫し、安定的、効率的な運営体制を整備してまいります。

 

(3)中期的な経営戦略と会社の対処すべき課題

 当社が対処すべき課題と致しましては以下の課題であると認識しております。

 

① 物件開発力の強化

 既存事業拡大のためには、出店用地の確保及び建設コストの抑制が必要となります。出店用地の確保については、不動産業界における住宅系の新規開発が一部消極的になる中、既存の住宅系開発会社や仲介会社との連携などを密にしてまいります。建設仕入れ価格の高騰により、コストの抑制は容易ではありませんが、設計・施工を工夫することで検討・推進してまいります。また、新規物件獲得、開発力強化に向けて開発部の人員強化を進めております。

 

② 既存物件、新規物件の稼働率向上策

 新規物件の集客力の強化については、建設時の現地看板、チラシ、トランクルームまとめサイトへの掲載及び内覧会の開催等により、物件周辺での認知度を高める策を講じております。また開店後期間が経過した既存物件で稼働率が不十分な場合は、利用料や手数料を一定期間に限り割り引くキャンペーンの実施や部屋サイズの変更を行うことで集客の強化を推進し、稼働率向上に努めております。また、物件全般について、ホームページの活用やWEB広告の実施、トランクルームまとめサイトへの掲載及びGBP(Google Business Profile)を活用して認知度を向上させてまいります。

 

③ 財務体質の改善と資金調達力の強化

 新規物件の開発にあたっては、必要な資金を安定的に調達することが重要となります。そのため複数の金融機関と親密な取引関係を維持し、資金調達の安定性と財務基盤の安全性を高めるように努めております。

 なお、今後は、資金調達の多様化を図り、収益不動産であるトランクルーム開発に長期的に対応できる資金調達を行うことで企業としての財務体質強化を目指してまいります。

 

④ 新規事業(サービス)の拡大

 新規事業としては、2025年1月より一部の対象店舗において、株式会社トーハン様との共同キャンペーンを実施いたしました。これは、本を購入したいが収納スペースに限りがあり、新しい本を購入できないという書店のお客様の収納課題への対応としてトランクルームの活用を提案するサービスとなります。

 梶が谷、東浅草、ときわ台、新大塚、中板橋の各トランクルームにおいては、2023年6月から開始しました家財等を分類整理するためのスチールラック付部屋の提供を継続しております。

 また、2024年9月に大型オフィスビル(新宿フロントタワー)の2階フロアを改装し、屋内型のトランクルームとしてオープンいたしました。これに伴い、2024年10月には、株式会社サマリー様との営業連携により、都心でいつでもすぐに取り出せる当社のトランクルームと配送サービスを組み合わせて、より良いサービスの提供に努めております。

 このほか、バイク収納が人気であることを受けて、屋外型だけでなく屋内型にもバイク専用の駐車場を併設したトランクルームを増やしております。このように、既存建物の有効活用や様々な形態で出店することにより、利用者に身近で利便性の高いトランクルームの提供に努めてまいります。

 

⑤ 新規参入者・同業他社に対する施策

 当社ビジネスモデルは特許権等により法的に他社を排除できる参入障壁を持っておらず、ビジネスモデル自体もシンプルなものであるため、新規参入者・同業他社による競争激化が起こる可能性があります。これに対し、当社としては、これまで作り上げた不動産仲介業者や各種金融機関との情報連携や物件情報に対する迅速な投資判断などで開発力を強化してまいります。

 不動産投資家のニーズへの対応としては、トランクルーム以外の不動産を投資対象とする不動産投資家も当社の取引先に多くみられることから、投資家のニーズに合わせて、トランクルーム以外の不動産の販売、仲介を行っていくことを目指しております。また、若者の車離れや高齢者の利用に備え、運送業者との連携による荷物の集配サービスの強化などお客様の利便性を高める取組みを強化してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものとなります。

 

 当社は「顧客資産の持続的な価値向上を通じて、人々の暮らしや社会の未来を共創する」を経営理念として、「不動産所有者の資産価値の向上とトランクルーム利用者の利便性向上と満足感を通じて、人々の暮らしや社会の未来を豊かにする」ことを会社のミッションとして掲げております。

この経営理念を踏まえ、当社の持続的な成長のためには、環境経営と成長戦略の一体化は不可欠であると考えています。経営資源や蓄積したノウハウなど、当社の強みを活かしながら、環境課題の解決と業績の向上を目指します。

 具体的な取組としては、次のとおりであります。

 

(1)ガバナンス

 当社は、事業を通じて地域社会に貢献しつつ、株主の皆様を始め投資家、顧客、取引先等全てのステークホルダーの皆様の信頼に応え、持続的成長と発展を遂げていくことが重要であるとの認識に立ち、コーポレート・ガバナンスの強化に努めております。

 また、当社の事業モデルを健全に拡大させることが、環境及び社会における貢献に繋がるものと考えており、今後とも持続可能な社会の現実と当社の継続的な企業価値の向上を目指しております。

 

(2)戦略

 当社は、人的資本が持続的な企業価値向上の推進に最も重要な経営資源と考えており、優秀な人材を継続的に確保し、育成することが経営の重要な課題と認識しております。

 

① 人材の育成に関する方針

 当社は、少数精鋭でプロフェッショナル集団を目指します。そのために、不動産開発・運営管理等に係る従業員に対し不動産に関する専門知識の習得を求めるだけでなく、全ての業務に携わる従業員に対し、それぞれの担当分野で高い専門性を身につけるために自己研鑽や自律的キャリアの形成を推奨しています。具体的には、OJTや上長との定期的な面談に加え、社外セミナー、オンライン学習サービスの活用、資格取得支援等により、従業員の能力向上を図り、人材のレベルアップに努めております。

 

② 社内環境整備に関する方針

 当社は、多様なバックグラウンドを持つ人材が、企業の成長と革新を促進すると考えおります。そのため、専門性や経験、感性、価値観の異なる人材を積極的に取り込むことが必要であり、国籍・宗教・年齢・性別等に関係なく、様々な人材が活躍できる環境や仕組みを整備し、多様な人材が意欲をもって活躍する活力ある組織の構築を推進し、従業員が仕事と私生活のバランスを取れるように、安全で健康的な職場環境、育児や介護のための休暇及び短時間勤務に関する制度等、さまざまな支援策を提供し、働きやすい環境と風通しのよい社内環境整備に取り組んでおります。

 

 

(3)リスク管理

 当社は、リスク・コンプライアンス委員会を設置し、リスク管理を行うための体制を構築しております。当委員会において事業を推進していく上で発生し得るリスクに対し、その内容を把握し、分析・評価した上で優先的に対処すべきリスクを抽出し、全社的リスクの低減を図っております。

 

(4)指標及び目標

 当社では、上記(2)戦略において記載した、人材育成、人材の多様性の確保及び社内整備環境における方針に関する指標として次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

 

 

指 標

目 標(2027年1月期

実績(当事業年度)

生産性(一人当たり営業利益)

2027年1月期1,000万円

2025年1月期687万円

従業員の女性労働者割合

現状維持

48.0

※一人当たり営業利益は、期末時点における「営業利益÷従業員」により算出

 

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関するすべてのリスクを網羅しているものではありません。当社は、これらのリスクの発生可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に最大限の努力をする方針であります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)顧客ニーズや不動産市況等事業を取り巻く経営環境リスクについて

 当社が属する不動産業界は、景気動向、金利水準、地価の水準等のマクロ経済要因の変動と企業業績が強く関連しております。こうした経済状況の変化は、当社が貸し出すトランクルームの賃料及び稼働率、土地の購入代金、建築費等の変動要因となり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、当該リスクへの対応策として、定期的に景気動向・不動産市況等のモニタリングを行うとともにエリア・規模・用途・物件特性に応じたマーケット状況の把握、投資判断力・リーシング力の強化等により、リスクの低減を図ります。

 

(2)開発用地仕入れリスクについて

 当社は、不動産市況の動向により、開発用地の価格が変動することで取得が計画どおりに進まない場合や、様々な調査を行い開発用地取得の意思決定をしたものの予想がつかない土壌汚染や地中埋設物等の瑕疵の発見による追加費用が発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、当該リスクへの対応策として、開発用地の仕入れに際して立地条件、面積、地盤、周辺環境及び仕入れ価格等について事前に十分調査し、それらを勘案のうえ用地仕入れを行ってまいります。

 また、用地の仕入れに際し、他社と競合し、価格が上がった場合には、当社売却時の利益が減少することとなりますが、トランクルーム用地は鉄道の駅からの距離よりも自動車によるアクセスを重要視致しますので、可能な限りマンション開発業者と競合の少ない物件を探し、購入価格を抑える工夫をして参ります。さらに、信託銀行などから、不動産所有者により近い情報を入手することにより競合の少ない段階での用地開発を行うことで価格上昇リスクを低減いたします。

 

(3)販売用不動産が売却できないあるいは売却が遅延するリスクについて

 当社は、開発分譲事業で利益の8割程度を確保しておりますので、開発分譲事業において、販売用不動産が売却できない、あるいは売却が遅延した場合には、経常赤字となる可能性があります。

 開発分譲事業において、当社のマーケティングが不十分で、結果として想定の利用料や稼働率が確保できない場合、外部環境が変化し需要が減少する場合、あるいは周辺の賃料相場及び不動産価格相場が大きく変動した場合等は、想定した価格で売却できず、当社で保有する等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、当該リスクへの対応策として、建築確認申請が完了した時点で、納期が制約を受けやすい建築資材の先行手配や、建築会社と綿密なスケジュールの打ち合わせを行うなどの対策を行い、建築工事を発注して、物件完成の目途が立った段階から当該物件の販売活動を開始致します。加えて、複数の買主候補に対し、並行して商談を行うことで、より当社に有利な売却条件を模索するなど、物件が売却できないリスクを低減して参ります。

 

(4)マスターリース契約のリスクについて

 当社が開発したトランクルームは、完成後に投資家へ売却した際に、当社と物件取得先との間でマスターリース契約を締結することがあります。この場合当社には、物件についてリース債務が発生いたします。

 このマスターリース契約を締結した物件について、当初の計画より稼働率が低迷しマスターリース期間内で投資回収を見込めない場合には引当金を計上する可能性があります。その結果、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。(マスターリース契約に基づくリース取引残高については、第5「経理の状況」に記載した注記(リース取引関係)をご参照下さい。)

 

(5)建築費の高騰、建築資材の供給不足のリスクについて

 建築費の高騰、建築資材の供給不足も利益の減少あるいは売却遅延リスクとなり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、これらのリスクを回避するために、複数の建設業者、コンテナ製造者との付き合い、取引先を拡大すること等で対処してまいります。また、工事遅延その他の要因により販売遅延となった場合には、金融機関に対し、融資期間の延長などを事前に打診することによりリスクの軽減を図ります。

 

(6)資金調達について

 当社は、物件の取得及び建築等の事業資金のため、金融機関から短期及び長期の有利子負債を調達しています。今後は、市場金利が上昇する局面において支払利息等の増加により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 資金調達に当たっては、現地取得の商談が始まった時点から金融機関と協議し、必要な資金の確保に努めてまいります。また、手元資金の活用による十分な日程調整を踏まえて、調達活動により十分な流通性を確保し、安定的な資金の確保に努めてまいります。

 

(7)小規模組織であるリスクについて

 当社は、少数の人員体制であり、効率性を重視した運営組織となっております。今後、急速な事業の拡大、新規事業への進出等があった場合や、突発的な事故や退職等による従業員の減少があった場合は、すみやかに適切かつ十分な組織的対応ができず、当社の事業の展開速度や社会的信用、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)自然災害・不測の事故・感染症のリスクについて

 火災、落雷、水災、地震、津波、その他偶然不測の事故並びに暴動、騒乱、テロ等の災害により、当社が保有又は運営する物件が滅失、劣化又は毀損し、トランクルームの事業運営に支障をきたした場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症を含め感染症などで経済活動が停滞した場合も当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)個人情報の管理について

 当社では、見込み客情報、取引顧客情報、事業を通して取得した個人情報を保有しており、個人情報の保護に関する法律等による規制を受けております。これらの個人情報については、当社にて細心の注意を払って管理しておりますが、万が一、外部漏洩等の事態が発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)競合激化のリスクについて

 トランクルームの開発、運営等に関する事業は、特許権等により法的に他社を排除できる参入障壁を持っているものではなく、また事業自体も比較的シンプルなものであり参入障壁が高いとは言えませんので、他業種からの参入或いは同業他社間の競合激化により当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 一方、トランクルーム事業は地域に密着した事業であり、顧客が利用する商圏も物件から半径2キロメートル程度と狭く、飲食店や一般消費財のような競争関係には通常なりません。当社としては、可能な範囲で近隣の他社物件の価格帯を下回る水準で価格設定ができるように、物件確保に係るコストの圧縮、空調、セキュリティなどで他の競合に勝る環境の提供を行うことでリスク回避に努めております。

 

(11)システムトラブルについて

 当社は、ホームページを通じた店舗紹介、問合せ管理、決済サービスを行っております。またトランクルームの契約についてもシステムを利用して管理しております。当社ではセキュリティ対策やシステムの安定性確保に取り組んでおりますが、何らかの原因でシステムトラブルが発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)保有株式に関するリスクについて

 当社は、中長期的な企業価値の向上に資すると判断される他社株式を純投資目的以外の株式(政策保有株式)として保有しております。個別の政策保有株式については、「コーポレートガバナンス・コード(原則1-4)に則り、取締役会へ定期的に報告し保有意義の適否を検証するなど、適切に管理しておりますが、株式の市場価格が下落するなど、保有する株式の価値が大幅に下落した場合には、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)その他の関係会社との関係について

① 特定の法人への依存について

 当社が2022年4月27日付で東京証券取引所グロース市場に上場する前は、現在、その他の関係会社に該当する株式会社デベロップの子会社でありました。当社と同社及び同社グループとは主力事業が異なり、事業の棲み分けがなされており、現在競合となりうる状況は発生しておらず、今後発生する見込みも現時点ではありません。しかしながら、今後、同社及び同社グループ各社の事業ならびに取引形態の見直しによっては、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。

 2025年1月期における株式会社デベロップとの主な取引は、[関連当事者情報]に記載の通りです。

 

(14)当社株式の流動性に関するリスク

 上場後、初回の上場維持基準に係る審査は、2023年1月末の基準日をもって行われました。当社の上場維持基準への適合状況は、株主数、流通株式数、流通株式比率については適合しておりましたが、流通株式時価総額については適合しておりませんでした。その後、2024年1月末で上場維持基準に適合しており、2025年1月末においても上場維持基準への適合を維持しております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度(2024年2月1日~2025年1月31日)における日本経済は、雇用・所得環境の改善などにより個人消費の持ち直しによる景気の緩やかな回復の兆しが見られたものの、物価高に伴う個人消費や設備投資などの内需減少により、回復基調までは届かない足踏み状態とみられます。日本銀行の金利政策、為替リスクや地政学リスクによるエネルギーや原材料価格の高止まりが懸念されるなど、景気の先行きは依然として不透明な状況であります。

 

 このような環境下において、当社は2024年2月に茨城県結城市に「結城」、栃木県鹿沼市に「新鹿沼」、同年3月に千葉県八街市に「八街」、栃木県真岡市に「真岡久下田」、群馬県伊勢崎市に「伊勢崎連取」、同年4月に静岡県沼津市に「沼津下香貫」、同県富士市に「富士津田」、同県菊川市に「菊川」、同年5月に栃木県宇都宮市に「宇都宮御幸町」、同年6月に千葉県木更津市に「木更津畔戸」、同年7月に茨城県土浦市に「土浦第2」、群馬県伊勢崎市に「伊勢崎赤堀」、同年9月に群馬県桐生市に「桐生広沢」、宮崎県児湯郡に「高鍋」、滋賀県甲賀市に「甲賀水口」、同年10月に東京都新宿区に「新宿フロントタワー」、三重県鈴鹿市に「鈴鹿玉垣」、茨城県日立市に「日立滑川」、茨城県水戸市に「水戸石川第2」、同年11月に茨城県ひたちなか市に「ひたちなか田彦」、群馬県前橋市に「前橋関根」、同年12月に栃木県大田原市に「大田原」、静岡県焼津市に「焼津八楠」、岡山県倉敷市に「倉敷中庄第2」、千葉県大網白里市に「大網白里」、神奈川県横浜市に「天王町」、2025年1月に東京都江東区に「南砂」及び「亀戸」、東京都渋谷区に「幡ヶ谷」、東京都杉並区に「杉並宮前」、千葉県八街市に「八街第2」、茨城県土浦に「土浦荒川沖」の各トランクルームを開業致しました。

 また、2024年2月には、バリュークリエーション株式会社と業務提携契約を締結いたしました。同社が運営する「解体の窓口」を利用される空き家・古家の所有者に対し、集合住宅や事務所という不動産に加え、トランクルームという新たな土地活用の選択肢を提供することで、「空き家問題」等の解決に貢献するとともに、市場における双方の競争力強化に向け、連携して取り組んでまいります。

 

 トランクルーム運営管理事業については、既存店舗の稼働室数増加と新規出店32店舗により増収となりました。トランクルームの開発分譲事業については、首都圏6店舗の開発案件「天王町」「世田谷池尻」「幡ヶ谷」「亀戸」「南砂」「杉並宮前」の各トランクルームは売却売上を計上しております。トランクルーム用コンテナ及び内装部分売却売上、新規出店7物件売却売上、不動産仲介手数料売上等を計上しております。

 その他不動産取引事業については、レジデンス1物件、ホテル1物件及び事務所1物件の賃料売上を計上しております。

 

 以上の結果、当事業年度の売上高は4,262,911千円(前年同期比28.2%増)、営業利益は171,987千円(前年同期比13.9%増)、経常利益は170,929千円(前年同期比8.6%増)となりました。当期純利益は、2024年11月に発生した資金流失事案等による特別損失75,493千円の計上により75,392千円(前年同期比31.4%減)となりました。

 

 各セグメントの経営成績は以下のとおりであります。

 

(トランクルーム運営管理事業)

 トランクルーム運営管理事業では、トランクルームを利用者に貸し出し、運営・管理を行うことにより利益を得ております。利用者から受領するトランクルーム利用料及びプロパティマネジメント受託収入が売上であり、トランクルームを所有あるいは賃借するコスト及び運営に必要なコストが原価となります。

 当事業年度は、既存店舗の稼働室数維持・拡大、新規契約者の獲得に努めて参りました。また、コンテナ型トランクルームの新規自社保有物件を増やしたことによるトランクルーム販管費が増加しました。

 この結果、トランクルーム運営管理事業の売上高は889,101千円(前年同期比18.7%増)、セグメント損失は53,224千円(前年同期はセグメント損失75,525千円)となりました。

 

(トランクルーム開発分譲事業)

 トランクルーム開発分譲事業では、トランクルームを企画、開発し、不動産投資家に売却することで利益を得ております。売却代金が主な収入であり、開発に要したコストが原価となります。

 当事業年度は、開発物件仕入の獲得に努めて参りました。また、10物件(コンテナ型トランクルーム)のコンテナ部分及び6物件(ビルイン型トランクルーム)並びに1物件(販売用不動産)を投資家へ売却いたしました。

 この結果、トランクルーム開発分譲事業の売上高は3,313,916千円(前年同期比36.4%増)、セグメント利益は447,529千円(前年同期比11.5%増)となりました。

 

(その他不動産取引事業)

 その他不動産取引事業では、トランクルーム以外の不動産を不動産投資家へ仲介、再販することなどで利益を得ております。仲介手数料または売却代金が主な収入であり、不動産の仲介または仕入に要したコストが原価となります。

 当事業年度は、自社所有の不動産賃料収入が増加しましたが、その他不動産取引事業の売上高は、59,893千円(前年同期比59.0%減)、セグメント利益は17,327千円(前年同期33.0%減)となりました。

 

(資産)

 当事業年度末における流動資産は、前事業年度末に比べて608,261千円増加し2,770,293千円となりました。これは、現金及び預金が532,857千円と前事業年度末に比べて414,568千円減少したものの、開発分譲事業の販売用不動産が1,983,325千円と前事業年度末に比べて845,121千円増加したこと等によるものです。固定資産は、前事業年度末に比べて178,902千円増加し、861,550千円となりました。これは、有形固定資産が4,919千円減少、無形固定資産が19,011千円増加、投資その他の資産が164,810千円増加したことなどによるものです。

 この結果、資産合計は前事業年度末に比べて787,164千円増加し、3,631,843千円となりました。

 

(負債)

 流動負債は、前事業年度末に比べて596,192千円増加し、1,225,425千円となりました。これは、開発7物件等に伴い短期借入金が前事業年度末から376,000千円増加したことなどによるものです。固定負債は、前事業年度末に比べて103,825千円増加し1,286,851千円となりました。これは、長期借入金が前事業年度末から54,184千円減少したものの長期未払金が145,867千円増加したことなどによるものです。

 この結果、負債合計は前事業年度末に比べて700,018千円増加し、2,512,277千円となりました。

 

(純資産)

 純資産合計は、前事業年度末に比べて87,145千円増加し、1,119,566千円となりました。これは、利益剰余金が650,336千円と前事業年度末に比べて75,392千円増加したことなどによるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末に比べ420,568千円減少し、525,856千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況及びこれらの要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度における営業活動の結果、使用した資金は632,718千円(前年同期は459,479千円の支出)となりました。これは主に税引前当期純利益95,436千円、棚卸資産の増加847,119千円、法人税等の支払い71,626千円等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度における投資活動の結果、使用した資金は151,613千円(前年同期は216,044千円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出5,043千円、無形固定資産の取得による支出23,850千円、敷金の差入による支出117,520千円等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度における財務活動の結果、得た資金は364,951千円(前年同期は790,441千円の収入)となりました。これは主に長期借入れによる収入626,600千円等によるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a 生産実績

 当社は生産を行っていないため、生産実績の記載はしておりません。

 

b 受注実績

 当社は受注生産を行っていないため、受注実績の記載はしておりません。

 

c 販売実績

 当事業年度の販売実績を示すと、以下の通りです。

 

当事業年度

セグメントの名称

販売金額(千円)

前期比(%)

トランクルーム運営管理事業(千円)

889,101

118.7

トランクルーム開発分譲事業(千円)

3,313,916

136.4

その他 不 動 産 取 引 事業(千円)

59,893

40.9

(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。

相手先

前事業年度

当事業年度

販売金額(千円)

割合(%)

販売金額(千円)

割合(%)

メットライフ生命保険株式会社

2,424,748

56.9

ルートエス・ジェイ合同会社

1,929,500

58.0

311,850

7.3

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末において当社が判断したものであります。

 

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

 財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・結果内容

(売上高、売上原価)

 当事業年度における売上高は、4,262,911千円となりました。

 その主な要因は、天王町トランクルーム、世田谷池尻トランクルーム、幡ヶ谷トランクルーム、亀戸トランクルーム、南砂トランクルーム及び杉並宮前トランクルームの完成、売却等によるものです。

 また、売上原価は3,631,519千円となりました。これは、売上高同様開発事業の順調な開発によるものです。

 その結果、売上総利益は、631,391千円となりました。

 

(販売費及び一般管理費)

 当事業年度における販売費及び一般管理費は、459,404千円となりました。

 その主な要因は、開発部、営業部共に従業員増加による人件費の増加と、株主優待制度の開始による優待費用の発生によるものです。

 その結果、営業利益は、171,987千円となりました。

 

(営業外損益)

 当事業年度における営業外収益は、33,117千円となりました。これは、主に太陽光売電収入による収益25,701千円を計上したことによります。営業外費用は、34,174千円となりました。これは、主に太陽光売電原価による費用21,667千円を計上したことによります。

 その結果、経常利益は、170,929千円となりました。

 

(特別損益及び当期純利益)

 当事業年度における特別損失は、75,493千円となりました。これは、資金流失事案に伴う損失を計上したことによります。

 

 以上の結果、税引前当期純利益は、95,436千円、当期純利益は、75,392千円となりました。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

④ 資金の財源及び資金の流動性

a.キャッシュ・フローの状況

 「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b.資金の需要

 当社における資金需要は、主として売上原価となります販売用不動産の仕入れ資金であります。これらは、短期借入れ資金として銀行等の金融機関から調達を行っております。

 今後も事業活動を支える資金調達については、低コストかつ安定的、機動的な資金の確保を主眼として多様な資金調達方法に取り組んでまいります。

 なお、事業拡大に伴う多額の先行投資が見込まれる場合は、これらの資金需要に対応するため自己資金、金融機関からの借入れ及びエクイティファイナンス等で調達することを予定しております。

⑤ 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標

a.当社の経営目標

 当社は、個人及び企業がユーザーとなるトランクルームの企画、開発、運営をしております。そのため下記の指標を経営上の管理目標としております。

・トランクルーム利用者の成約、解約の状況及び現在稼働している室数、全体室数に対する稼働室数(稼働率)

・トランクルーム開発及び売却時の、不動産としての物件の仕入れ高と完成後の売却金額による物件売却利益率

 

b.当社の経営方針

イ.トランクルーム開発後の完売による利益率の確保及び向上を図る

ロ.既存物件及び大型マスターリース案件の稼働率アップによる収益拡大を図る

ハ.コンプライアンスの徹底による管理・運営体制の強化を図る

ニ.オフィスビルへの出店や商業施設等への出店等新たな営業戦略を推進する

 

5【経営上の重要な契約等】

相手方の名称

契約内容

備考

契約期間

バリュークリエーション株式会社

業務提携契約

バリュークリエーションが運営する「解体の窓口」を利用される空き家・古家の所有者に対し、集合住宅や事務所という不動産に加え、トランクルームという新たな土地活用の選択肢を提供することで、「空き家問題」等の解決に貢献するとともに、同社と連携して市場におけるお互いの競争力の強化を図る等

契約日令和6年2月6日から令和7年2月5日以後1年間の自動延長

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。