第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

「Oshiete(教えて)」と「Kotaeru(答える)」という気持ちを、波(WAVE)のように広げることで、世界中のあらゆる問題を解決へつなげていくことを目指し、当社は、「互い助け合いの場の創造を通して、物心両面の幸福を実現し、世界の発展に寄与する」を理念に掲げております。
 誰でも気軽に質問と回答ができるQ&Aサイト「OKWAVE」や法人向けに提供しているFAQシステム「OKBIZ.」を発展させることなどで、企業価値を高めてまいります。

 

(2)目標とする経営指標

当社は収益性及び成長性の観点から売上高・営業利益・企業向けサービスの導入数・サイトの月間利用者数(UU)・ページビュー(PV)数・Q&A数を重要な経営指標としております。また、ユーザー満足率の観点から「ありがとう数」を重視しております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社は、創業より19年間 、Q&Aサイト「OKWAVE」に蓄積され続けているQ&Aデータを価値の源泉としていることから、引き続き、より多くの人に活用いただくためにも、サイトの利便性や安全性を高めてまいります。このQ&Aサイト「OKWAVE」を軸に、「良いことをしたら、その善意や感謝により加点され、社会の様々な場面で優待される」新しい経済圏を目指します。基盤となる技術面においては、AI技術、ブロックチェーン技術、チャット技術などの革新的な技術を取り込むことで、サイトのリピート性や回遊性、安全性の向上を図ってまいります。
 高い業界シェアを持つFAQシステムにおきましては、サポート領域でのさらなる提案力の向上に加え、社内外での情報共有プラットフォームとしてもFAQシステムの提案を進めます。また、AIやチャットといった新しい技術や情報チャネルにも対応させてまいります。
 また、インバウンド市場の拡大を追い風に、多言語コンタクトセンターサービスの拡大を図ってまいります。
  さらに、ブロックチェーン技術を進化させ、様々な領域への技術提供やコンサルテーションを行い、認証の安全性とマイニングにかかる費用の圧縮及びの時間の短縮を図ってまいります。

 

(4)会社の対処すべき課題

変化が激しいインターネット業界において、外部環境や市場変化の影響に対応できるサービス・体制作りを構築してまいります。

 

① ナレッジインテリジェンス事業

・Q&Aサイトコンテンツの充実と活性化

・外部環境に依存しない独自のマネタイズの構築

・Q&Aサイトを活用したサポートソリューションの提案

・AI技術者の確保と育成

② エンタープライズソリューション事業

・FAQ/ヘルプデスク業界における占有率の向上

③ 多言語CRM事業

・バイリンガル人材の確保と育成

④ フィンテック事業

・ブロックチェーン技術者の確保と育成

これらの課題に対処していくとともに、情報セキュリティ評価の「ISO27001」の維持やコンプライアンスの強化を図ってまいります。

 

2 【事業等のリスク】

以下については、当社グループの将来的な事業展開その他に関し、リスクとして具体化する可能性があると考えられる事項を記載しております。当社グループは、これらのリスクの可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の早期対応に努める方針であります。
 なお、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末(平成30年6月30日)現在において判断したものであり、すべてのリスク要因が網羅されているわけではありません。

 

1  当社の事業について

(1) 当社グループの事業について

① ナレッジインテリジェンス事業

 当事業では、Q&Aサイト「OKWAVE」のプラットフォームを活用したサービスを運営しており、主に広告収入と有料サイト提供による月額固定収入を得ています。新たな企画や機能開発を行うことで、利用者数の増加に努めておりますが、インターネット広告市場の変化やQ&Aサイト市場の競争激化が起こった場合、利用者数の減少を招く可能性があります。また通信事業者側の制限や端末の技術革新がおこった場合、適時に適切なコンテンツの配信が出来なくなる可能性があることから、業績に影響をもたらす可能性があります。

② エンタープライズソリューション事業

 当事業では、Q&Aコミュニティーの運営ノウハウやシステムを各クライアント企業へ、特にカスタマーリレーションを目的として提供することで収入を得ております。Q&Aコミュニティーを長年運営してきた当社グループならではのソリューションにより、他社との差別化に取り組んでおりますが、CRM市場の動向や競合他社との価格競争等によっては当社グループの業績に影響をもたらす可能性があります。

③ 多言語CRM事業

 当事業では、24時間365日稼働の多言語コンタクトセンターを運営しております。当事業のサービスは通訳、翻訳など人的リソースを基盤としているため、今後何らかの理由により必要なバイリンガル人材の確保が計画通りに進まなかった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、当事業は電話通信を基盤としており、当社グループは安定的な運用のためのシステム強化に努めておりますが、ウイルスの侵入、自然災害、長期的な大規模停電、事故等によりシステムがダウンした場合、当社グループの業績に影響をもたらす可能性があります。

④ フィンテック事業

当事業では、ブロックチェーン・ベースのシステムの受託開発を行っております。ブロックチェーンは、セキュリティやマイニングの面で画期的な技術ですが、限られた技術者のみが開発できる技術であるため、開発者のリソースや新たな人員が確保できなかった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、何らかの技術革新が起こり、ブロックチェーンが汎用的に開発可能なシステムとなった場合には、当社グループが保っていた優位性がなくなり、当社グループの業績に影響をもたらす可能性があります。

 

(2) 情報の提供について

当社グループが運営するQ&Aサイト「OKWAVE」に提供される質問・回答、商品、サービスに関する評価情報等は、全て利用者から提供される情報です。より健全で質の高いサイト運営を実現させるため、参加度合に応じたOK-チップの付与等、参加意欲の醸成を図っておりますが、利用者に質問・回答を強制することはできません。

また、他のWebサイトと同様、Q&Aサイトには有用で好意的な回答だけでなく、誤った内容や誹謗中傷等の悪意的な内容の回答、第三者の著作権やプライバシー権等の権利を侵害する内容の回答も寄せられる可能性があります。

何らかの原因によりQ&Aサイト利用者から質問・回答等が提供されない状況が続いた場合や、誤った内容や誹謗中傷等の悪意的な内容の回答、第三者の著作権やプライバシー権等の権利を侵害する内容の回答が続いた場合、サイトの利用価値が薄れ、利用者からの信頼を失い当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(3) 新規事業への取り組みにともなうリスクの増大について

当社グループでは、収益基盤をさらに拡大するために、今後も新規事業への取り組みを進めていく方針ですが、新規事業が安定して収益を生み出すまでには一定の時間を要することが予想されることから、当社グループ全体の利益率を低下させる可能性があります。また、将来の事業環境の変化等により、新規事業が当社グループの目論見どおりに推移せず、新規事業への投資に対し十分な回収を行うことができなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 技術革新への対応について

当社グループが運営するサービスはインターネット関連技術を基盤としております。当社グループは多様化する顧客ニーズに対応できるよう、最新の技術への迅速な対応及び情報の蓄積・分析に努めます。

しかしながら、今後の技術革新や顧客ニーズの変化によって即座に対応できなくなった場合、今後の事業展開に悪影響が出る可能性があります。

 

(5) 法的規制について

当社グループの事業は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダー責任制限法)」、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」、「特定商取引に関する法律」「資金決済に関する法律」、「金融商品取引法」等の制約を受けますが、当社グループでは遵法精神のもと各法に従って業務を遂行しております。

しかしながら、今後、各省庁等における現行の法解釈に何らかの変化が生じた場合、または、新たにインターネット関連業者を対象とした法的規制等が制定された場合、当社グループの業務の一部が制約を受ける可能性や、新たな対応を余儀なくされる可能性があります。このような場合には、当社グループの業績、及び今後の事業展開に影響を与える可能性があります。

 

(6) 個人情報の取り扱いについて

当社グループが保有する利用者等の個人情報、特定個人情報及び顧客企業に関する情報の取り扱いについては、個人情報保護法の施行に先駆け、平成17年1月にISMS(現ISO27001(※))を取得し、厳重に社内管理並びに委託先管理を行っております。

しかしながら、不正アクセス者等からの侵入や委託先管理不備により、上記の情報が外部に漏えいし、不正使用される可能性が完全に排除されているとはいえません。また、不正使用等に備え、当社は個人情報漏えいに対応する保険に加入しておりますが、全ての損失を完全に補填されるとは限りません。

したがってこのような事態が起こった場合には、当社グループへの損害賠償請求や当社情報セキュリティマネジメントに対する信用の失墜により、当社グループの事業推進及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(※)ISO27001:企業等の組織が情報を適切に管理し機密を守るための包括的な枠組みの国際規格。ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)適合性認証制度がISO27001に移行されました。

 

(7) システムトラブルによるリスクについて

当社グループの事業はインターネットを中心にした通信ネットワークに依存しており、当社グループは安定的な運用のためのシステム強化、セキュリティ強化、負荷分散、ディザスタ・リカバリー(災害時におけるシステム障害からの復旧、修復体制)等、通信環境安定化に努めております。

しかしながら、ウイルスの侵入、自然災害、長期的な大規模停電、事故等によりネットワークが切断された場合、または事業所の損壊やその他の理由により業務継続が困難になった場合は、Webサイト運営に支障が生じ、当社グループの経営に大きな影響を与えます。また、外部からの不正アクセスやウイルスの攻撃等による犯罪、職員の過失等によりデータの書き換え、データの消去や不正流出の恐れがあります。

これらの障害が発生した場合には、当社グループに直接損害が生じるほか、当社グループシステムへの信頼が低下し当社グループの事業、業績並びに企業としての社会的信頼に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(8) 知的財産権について
① 特許権

当社はQ&Aシステム、ヘルプデスクシステム等について、特許を複数出願し、うち一部は特許権を取得しておりますが、その他の特許取得の可否及び時期についてはまだ明らかになっておりません。Q&Aサイトシステム、FAQ/ヘルプデスクシステムに関する特許出願は他社によっても複数行われており、当社は充分に調査を行ってはおりますが、当社が実施済みの技術について、もし競合他社が当社よりも先に特許権を取得した場合、当社は他社の特許を侵害するおそれがあります。さらに、他社から訴訟を提起される等により当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

②  商標権

当社はインターネット上で質問と回答を交換するQ&Aサイトのブランドとして「OKWAVE」を商標として用いており、当該商標をはじめ、当社のサービスに関連する商標権を数十件取得しております。当該ブランドは、商標権の取得により法的に保護されているとはいえ、他の事業者または個人等により無断で商標を使用された場合には、当社ブランドの信頼性が揺らぐ危険性があり、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。当社はブランドも事業活動における重要な財産と認識しており、現在取得済みの商標権以外にも、積極的に取得する方針であります。

しかしながら、当社が使用している商標について競合他社が先に権利を取得した場合、当社の競争力の減退や、当社への訴訟が発生することが考えられ、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

③  著作権

当社は、当社が運営するQ&Aサイト「OKWAVE」上の投稿内容の著作権を有しております。「OKWAVE」上の投稿内容が当社の許可なく第三者によって使用されている事実が発覚した場合、著作権の価値の低下に止まらず、「OKWAVE」のユーザーや当社の取引先からの当社管理体制に対する信用の低下を引き起こす可能性があります。

 

(9) 訴訟リスクについて

①  Q&Aコミュニティ「OKWAVE」の運営に関する訴訟リスク

当社が運営するQ&Aサイト「OKWAVE」においては、サイト閲覧者が自由に質問・回答、及び商品、サービスに関する様々な評価を書き込み、他の閲覧者に情報発信が出来る仕組みになっており、他のWebサイト同様、Q&Aサイトには質問に対する有用で好意的な回答だけでなく、誤った内容や誹謗中傷等の悪意的な内容の回答、第三者の著作権やプライバシー権等の権利を侵害する内容の書き込みも寄せられる可能性があります。

当社におきましては、コミュニティサイト内の情報等については何等の責任を負わない旨を当該サイト内で明示するとともに、システムにより24時間365日体制で自動的にチェックしております。更には社内に専任の投稿監視担当者を配置し、当該担当者は目視でサイト内の書き込み内容を監視し、明らかに誤った内容のものや、誹謗中傷等に該当するような書き込み、第三者の権利侵害の可能性のある書き込みを発見した場合は当該部分を削除します。併せてユーザーが、不適切な投稿を当社に通知できる仕組みも導入することで、より健全で質の高いコミュニティの運営が遂行できるよう努めております。

しかしながら、サイト閲覧者により誹謗中傷や明らかに間違った回答等の書き込みがなされ、当社がそれを発見できなかった場合、発見が遅れた場合、もしくは当社の判断で妥当な回答であると判断して削除しなかった場合には、「OKWAVE」に対するユーザー等の信頼性が低下し、Webサイト運営者として当社の責任が問われ訴訟を提起される可能性があります。

②  エンタープライズソリューション事業および多言語CRM事業に関する訴訟リスク

エンタープライズソリューション事業におけるASPサービスでは、多数のクライアント企業に対し共有サーバーによる運用を原則行っていることから、当社の責めに帰すべき事由によるシステムの障害や不正アクセス等により多数のクライアント企業に対し損害を被らせる事態が生じた場合、多数のクライアント企業から同時期に訴訟を提起される可能性があります。その結果として、多数のクライアント企業に同時期に損害賠償義務を負うことになった場合、多額の損害賠償金の支払いが発生し、当社グループの事業及び業績に大きな影響を与える可能性があります。

多言語CRM事業におけるコンタクトセンター業務においても、多数のクライアント企業に対し、共通のシステムを利用して業務を行っていることから、前記のエンタープライズソリューション事業と同様の訴訟リスクが想定されます。

 

③ フィンテック事業に関する訴訟リスク

ブロックチェーン・ベースのシステムの受託開発においては、受託業務の複雑性から契約や仕様書に関してクライアント企業との認識の相違が生じること、具体的には成果物の内容、業務範囲、納期等について認識の相違が生じることを原因として、訴訟を提起される可能性があります。その結果としてクライアント企業から損害賠償義務を負うことになった場合、多額の損害賠償金の支払いが発生し、当社グループの事業及び業績に大きな影響を与える可能性があります。

 

(10) 国際化に伴うリスクについて

国際的な事業展開を行っていくうえでは、各国の法令、制度、政治・経済・社会情勢、文化、商慣習、為替等様々な潜在的リスクが存在し、これらのリスクに対処できないことなどにより事業推進が困難となった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(11) 資本業務提携及びM&Aについて

当社は、リソースの強化及び収益獲得機会の拡大を目的に企業買収や業務提携を実施しております。対象となる企業については十分な審査によるリスクの把握に努めておりますが、買収後に不測の債務などが発生した場合や業績が悪化した場合、買収時に想定した当社事業との相乗効果が十分に得られなかった場合、当社グループの業績、または財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 内部統制について

当社は、グループを通じて内部統制強化のための連携を行い、当社グループに属する企業への監視や助言を継続的に行っておりますが、事業の急速な拡大等、なんらかの事情により当社が子会社の状況を十分に把握できない場合や、内部管理体制の構築が追い付かないという状況が生じた場合、社会的信用を失墜させ、当社グループの業績、または財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) インターネット等による風評被害に関するリスク

当社グループは、プレスリリース及び適時開示情報開示等により信頼の維持・向上を図っておりますが、インターネット掲示板への憶測や誤った認識による、正確な事実に基づいていない書き込みや、それらを要因とする風評・風説の流布が発生、拡散した場合には、当社グループの業績及び株価に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 開発体制について

当社グループは今後も、新機能追加によるサービスの強化や、新たなシステム開発を進めていく方針であります。
 今後の事業成長を確たるものにするためには、優秀な人材を十分に確保し、育成することが重要であると考えておりますが、これらの体制構築が順調に進まない場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化

当社グループは、役員、従業員に対し、ストック・オプション制度を採用しております。今後についてもストック・オプション制度の利用を検討する可能性があり、現在付与している新株予約権に加えて、今後付与される新株予約権の行使が行われた場合、発行株式の株式価値が希薄化する可能性があります。なお、当連結会計年度末現在における新株予約権による潜在株式数は106,000株であり、発行済株式総数8,781,200株の1.2%に相当します。

 

(16) 税務について

当社グループを構成する事業法人は、各国の税法に準拠して税額を計算し、適正な納税を行っており、適用される各国の移転価格税制など国際税務のリスクについても注意を払っておりますが、税務当局との見解の相違等により、追加課税が発生する可能性があります。 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

①経営成績の状況

ナレッジインテリジェンス事業においてはブロックチェーン導入・運用コンサルテーションが堅調であったこと、エンタープライズソリューション事業においても法人向けの主力製品の売上が堅調に拡大しています。また、当連結会計年度からの新規事業であるフィンテック事業にて大型開発案件を受託した結果、当期の売上高は3,786,769千円(前年同期比57.0%増)と、大幅な増収を達成しました。

利益面においては、とりわけ子会社における専門性の高い付加価値サービスの提供や開発案件による原価構造の改善をはじめ、業務効率の改善、外注費や広告宣伝費等の適正な運用を継続して進めることで、営業利益は1,216,569千円(前年同期比624.6%増)、経常利益は1,194,549千円(前年同期比553.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,071,626千円(前年同期比766.5%増)と全てにおいて過去最高益であった前期通期を上回りました。

 

セグメント別の概況は以下のとおりであります。
 なお、各事業分野のセグメント利益は、全社費用749,551千円(前連結会計年度647,498千円)を含まない額であり、また、当連結会計年度より、新たな事業として「フィンテック事業」を報告セグメントに追加しております。

 

・ナレッジインテリジェンス事業の概況

ナレッジインテリジェンス事業はQ&Aサイト「OKWAVE」の運営と、3,600万件以上のQ&Aビッグデータを軸に、個人および法人向けのサービスを当社ならびに子会社にて提供しています。

当連結会計年度においては、マレーシアに設立した子会社OKfinc LTD.によるブロックチェーン導入・運用コンサルテーションならびに「OKWAVE」運営で培ってきたマーケティングサポートによる売上が堅調に推移しました。

そして今後に向けて、「OKWAVE」を軸に、「良いことをしたら、その善意や感謝により加点され、社会の様々な場面で優待される」新しい経済圏を目指す「感謝経済プラットフォーム」の構築を開始しました。他者からどのくらい感謝されているかを可視化した「感謝指数」や「OKWAVE」のユーザー同士が感謝の気持ちとして贈ることができるサイト内トークン「OK-チップ」を活用し、ユーザーが「感謝経済」参加企業から様々なサービスを受けられる世界観を目指します。そして「感謝経済」上に広告ビジネスに留まらない新たなビジネスモデルを構築します。

以上の結果、売上高は675,178千円(前連結会計年度比229,041千円増)、セグメント利益は13,716千円(前連結会計年度比41,798千円増)となりました。

 

・エンタープライズソリューション事業の概況

エンタープライズソリューション事業のビジネスモデルは、FAQシステム「OKBIZ.」導入の際の初期構築費と月額利用料(基本料金ならびに利用量に応じた従量課金)にて構成しております。これは、昨今「サブスクリプション(定期購読型ビジネス)」と呼ばれ、企業経営にとって安定性をもたらすビジネスモデルとして注目されています。当社では、解約を防止し月額収入を維持するための仕組みである「リテンションビジネス」体制を構築しています。
 「OKBIZ.」は、当社開発のAIを活用した最新版の発売などにより、新規受注が堅調に推移し、特に当連結会計年度の成長戦略であるパートナービジネスの拡大による間接販売が伸長しました。
 以上の結果、売上高は1,388,957千円(前連結会計年度比78,949千円増)、セグメント利益は745,249千円(前連結会計年度比62,753千円増)となりました。

 

 

・多言語CRM事業の概況

当連結会計年度におきましては、訪日外国人客の増加や東京五輪開催決定を追い風に、地方自治体や医療分野、鉄道などの案件が増加しております。これにより多言語コンタクトセンターの基幹事業である電話通訳の案件が堅調に伸びております。前連結会計年度は一時的な受託案件があったため前連結会計年度比では売上は減少したものの、費用の見直しを継続的に実施していることから利益は引き続き伸長しました。

以上の結果、売上高は617,233千円(前連結会計年度比38,345千円減)、セグメント利益は165,404千円(前連結会計年度比4,428千円増)となりました。

 

・フィンテック事業の概況

当連結会計年度から新規事業として開始したフィンテック事業では、子会社OKfinc LTD.にてブロックチェーン・ベースのシステムの受託開発を行っています。

当連結会計年度においては、OKfinc LTD.がブロックチェーン技術を軸とした事業運営コンサルテーションを提供する受注先より、ブロックチェーン・ベースのシステム開発能力を評価され、開発受託に至りました。大型案件を受託できるようなブロックチェーン技術者は世界的にも多くはなく、本案件によって利益率の高い収益を計上することができました。

以上の結果、売上高は1,105,400千円(前連結会計年度比1,105,400千円増)、セグメント利益は1,041,750千円(前連結会計年度比1,041,750千円増)となりました。

 

②財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度における資産残高は、主に現金及び預金、受取手形及び売掛金、投資有価証券の増加により3,221,819千円(前連結会計年度末比1,370,852千円増加)となりました。

(負債)

 当連結会計年度における負債残高は、主に未払金及び未払費用、未払法人税等の増加により620,520千円(前連結会計年度末比261,128千円増加)となりました。

(純資産)

 当連結会計年度における純資産は、主に利益剰余金の増加により2,601,298千円(前連結会計年度末比1,109,724千円増加)となりました。

 経営の安定性を示す自己資本比率は、当連結会計年度において80.2%(前連結会計年度比0.2ポイント増)と高水準であり、財務の安全性が保持されております。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度と比べ779,218千円増加し、1,578,700千円となりました。また、各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増加はあるものの主に減価償却費及び税金等調整前当期純利益により、926,255千円の収入となりました。(前連結会計年度は152,844千円の収入)

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、主に投資有価証券、有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出があったことにより、250,139千円の支出となりました。(前連結会計年度は212,198千円の支出)

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、主に借入金による収入及び非支配株主からの払込みによる収入により、99,377千円の収入となりました。(前連結会計年度は5,741千円の支出)

 

 

④生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

当社グループは、生産に該当する事項がないため記載を省略しております。

 

 b.受注状況

当社グループは、受注から納品までが短期間のため記載を省略しております。

 

 c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  平成29年7月1日

至  平成30年6月30日)

前年同期比(%)

ナレッジインテリジェンス事業(千円)

675,178

51.3

エンタープライズソリューション事業(千円)

1,388,957

6.0

多言語CRM事業(千円)

617,233

△5.8

フィンテック事業(千円)

1,105,400

合計(千円)

3,786,769

57.0

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

Wowoo Pte.Ltd.

1,300,116

34.3

 

3 当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは、フィンテック事業におきまして、ブロックチェーン・ベースの大型開発案件の受託があったことによるものであります。

4 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高の状況)

 ナレッジインテリジェンス事業においてはブロックチェーン導入・運用コンサルテーションが堅調であったこと、エンタープライズソリューション事業においても法人向けの主力製品の売上が堅調に拡大していますが、特に当連結会計年度からの新規事業であるフィンテック事業において大型開発案件を受託した結果、売上高は大きく伸長し、当連結会計年度の売上高は3,786,769千円(前連結会計年度比57.0%増)と大幅な増収となりました。

 

(営業利益の状況)

 フィンテック事業の大型案件の受託による売上高増加の他、原価構造の改善をはじめ、業務効率の改善、外注費や広告宣伝費等の適正な運用を継続して進めたことにより、営業利益は1,216,569千円(前連結会計年度比624.6%増)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益の状況)

 税金費用等の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益は1,071,626千円(前連結会計年度比766.5%増)となりました。

(資本の財源及び資金の流動性についての分析)

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、人件費を中心とした売上原価や販売費及び一般管理費であります。また、継続的なソフトウェアの開発、事業拡大のための株式や事業の取得に関する投資を目的とした資金需要があります。

 当該資金につきましては、内部留保による手元資金で十分に賄えている状況です。今後、資金需要の必要に応じて、外部も含めた資金調達等柔軟に対応する方針としております。

(中長期的な会社の経営戦略)

 当社は「互い助け合いの場の創造を通して、物心両面の幸福を実現し、世界の発展に寄与する」ことを企業理念に掲げています。この理念に沿って、後述のコアとなる「ABCテクノロジー」(AI、Blockchain、Chatの頭文字を取った呼称)の活用ならびにサイバーセキュリティを重視しながら、互い助け合いを実現するプラットフォーム型サービスの開発・提供を進めていきます。
 とくに前期に成長を遂げたブロックチェーン導入・運用コンサルテーションやブロックチェーン技術開発を主軸とするフィンテック領域を業態拡大の成長ドライバーとして今期も注力してまいります。
 また、「感謝経済プラットフォーム」の構築においては、当社の理念を体現するサービスとして事業間の枠組みを超えて全セグメントの知見を投入し、より多く感謝されている人の可視化と彼らが優待されるような経済圏の創出と機能開発、ならびに「感謝経済プラットフォーム」に参画いただく企業への各種ソリューションの提供、これらを既存のサービスと新規サービスを組み合わせて、国内外にて推進してまいります。今後の課題については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
(キャッシュ・フローの分析)
 キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照ください。
(経営成績に重要な影響を与える要因について)
 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
(経営者の問題認識と今後の方針について)
 経営者の問題認識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
 

4 【経営上の重要な契約等】

(株式取得による企業結合)
 当社は、平成30年5月16日開催の取締役会において、プレミア証券株式会社の株式取得し、同社を子会社化することを決議いたしました。平成30年6月11日付で株式譲渡契約を締結し、平成30年7月2日付で株式の取得を完了しております。
 なお、詳細は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な後発事象 (株式取得による企業結合)」に記載のとおりであります。

 

5 【研究開発活動】

インターネット関連技術は技術革新の進歩が著しく、またそれに応じて業界標準及び利用者ニーズが急速に変化するため、新技術も相次いで登場しております。そこで当社グループの研究開発活動は、ユーザー満足度の向上に資するため、これらの新技術への対応を随時進行しております。

当連結会計年度における研究開発費の総額は1,923千円であり、全社共通の費用として管理しております。