第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社経営の基本方針

 当社グループは、「アウトソーシングの力で企業変革を支援し、社会課題を解決する」を企業理念に掲げ、事業活動を通じて社会課題を解決するソーシャルビジネスを推進することで、新たな社会的価値を創造し必要不可欠な存在となることを目標としております。経営面では、ポートフォリオ経営を基本方針とし、社会貢献性及び付加価値の高い事業を異なる事業領域で複数展開していくことで、いかなる外部環境の変化にも負けない企業体となることを目指しております。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、付加価値の高い事業を展開することを経営の基本方針としており、その一つの指標として営業利益率10%以上の維持を目標としております。また、継続的な企業価値の向上と、それを通じた株主還元に積極的に取り組むこととしており、連結配当性向30%以上とすることを目指しております。

 

(3)中長期的な経営戦略

 当社グループでは、次の10年の成長を見据えた新たな事業戦略を推し進めてまいります。当社グループの中でも、優良な顧客基盤を有し、高い成長が期待できる「障がい者雇用支援サービス」、「環境経営支援サービス」、「広域行政BPOサービス」を重点注力分野としてまいります。それぞれの分野では、既存サービスの深化によるオーガニック成長に加え、新規事業開発やM&Aを通じて事業領域を拡大していくことで新たな成長を追求してまいります。障がい者雇用支援サービスについては、これまでの農園型のサービスに加え、障がい者の特性に合わせて多様な働き方を可能とするサービスの開発にも取り組んでまいります。環境経営支援サービスでは、環境分野のコンサルティングメニューの拡充に加え、ISSBやESG評価対応の支援など、事業領域をサステナビリティ全般に広げてまいります。広域行政BPOサービスにおいては、地方自治体ネットワークを活用し、事業承継や行政MaaS、移住・定住など地方創生をテーマにしたサービスの開発に取り組んでまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 現状・今後の経営環境を踏まえ、以下、当社グループが中長期観点から対処すべき課題を記載します。

 

① 既存事業の継続的な発展

 当社グループは、持続的な成長を実現するには安定的な収益基盤を構築することが重要であると考えております。その根幹となる既存事業においては、現在の事業領域で継続的な収益を確保しつつ、派生事業の開発に取り組むことで収益構造の多様化を進めてまいります。また、長期的視点での成長を確実なものとするために、既存サービスの継続的な改善及び高付加価値化によって競争優位性を着実に高め、お客様との強固な関係の構築に取り組んでまいります。

 

② 主力事業への依存度の軽減

 当社グループの営業利益の構成比は、障がい者雇用支援サービスと人材派遣サービスの主力2事業で88.6%を占めております。環境変化等により主力事業の収益が悪化した場合には、業績に大きな影響を与える可能性があることから、新たな収益の柱の構築が必要であると認識しております。具体的には、ロジスティクスアウトソーシングサービスをはじめとした既存事業のより一層の推進を図るとともに、市場拡大が期待できる自治体向けのBPOサービス領域や環境ビジネス領域など新たな事業領域での成長機会の獲得を目指してまいります。

 

③ 優秀な人材の採用・育成

 「社員の成長が会社の成長につながる」という方針のもと、当社グループのビジョンに共鳴する優秀な人材を採用し育成していくことが重要であると考えております。社会変化や課題を敏感に察知し、主体的に解決に取り組むことのできる人材を積極的に採用していくために、社会的意義のある事業(ソーシャルビジネス)のより一層の推進はもとより、若手を中心とした次世代リーダーの育成にも注力してまいります。

 

④ 多様な人材の活躍促進

 多様な人材が高い意欲を持ち長期的に活躍できる環境を構築することが企業の競争力を高める上で重要であると考えております。そのためにキャリアチャレンジ制度やカンパニー制など社員の挑戦を後押しする制度や、従業員持株会の奨励金100%付与(積立金額に対して同額の奨励金を会社から支給)や保健室を中心とした健康経営の推進など、長期的に安心して働くことができる仕組みの導入など、環境整備に注力しております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

■サステナビリティ方針

 当社グループは「アウトソーシングの力で企業変革を支援し、社会課題を解決する」をミッションに掲げています。私たちは、地球市民として真摯に社会課題および環境課題に向き合い、事業活動を通じて当社グループらしい付加価値を創造することで、その解決に取り組んでいきます。

 また、ステークホルダーと対話・協働を通じて価値創造プロセスを継続的に循環させていくことで、当社グループの持続的な企業価値向上を図り、社会の持続的な発展に貢献していきます。

 

(1)サステナビリティ全般

① ガバナンス

 当社グループでは、社会の持続的発展への貢献と中長期的な企業価値の向上を目的に、社長室・子会社担当取締役を委員長としたサステナビリティ推進委員会を設置しています。サステナビリティ推進委員会では、半期ごとにサステナビリティに係る経営課題の共有及び施策の立案、目標の設定等に関する協議を行い、それらの進捗管理を行っています。委員会での協議内容は代表取締役に随時報告されるほか、取締役会において進捗に対する監督を行っており、必要に応じて審議および対応の指示を行っています。

 また、代表取締役社長をCHO(最高健康責任者)として配置し、従業員の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に各種施策を実践していく体制を整備しています。

[サステナビリティ推進体制]

[健康経営推進体制]

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② リスク管理

 サステナビリティ関連の重要なリスクに関しては、サステナビリティ推進委員会にて、その特定と評価が行われます。特定されたリスクと機会は同推進委員会にて、種別問わず企業としての優先度及び社会の重要性の2つの観点から統合的に優先順位を評価・検討し、取締役会に報告または審議のうえでマテリアリティ(重要課題)として確定しています。確定したマテリアリティについては、取締役会が現在の対応状況の進捗確認や見直し等を行い、適切にリスクを管理することで、全社的なリスク管理体制の維持、向上を図っています。

 また、リスクの管理に当たっては、社会情勢や市場環境等の情報を収集・分析して事業に関わるリスクの早期発見を行うとともに、リスク発現時には迅速かつ的確な対応をするために、リスク管理委員会を半期ごとに開催しています。影響が大きいと想定されるリスクについては、同推進委員会と連携が図られ、リスクの未然防止と影響緩和のための施策検討が行われます。

 一方、「3.事業等のリスク」に記載のリスクは、経営者が認識している当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性があるリスクに関し、発生の蓋然性及び事業への影響度を踏まえ重要と考えられるものを選定しています。両者は一部重複するものもありますが、当社グループはこれらの2つの観点からリスク管理を行っています。

 

 

(2)気候変動

① 戦略

 当社グループにおける気候変動起因のリスクと機会の特定に当たっては、サステナビリティ推進委員会にて、シナリオ分析の手法を通じて、気候変動に関する重要リスク・重要機会の洗い出しと、それらが及ぼす具体的な財務影響額の評価から実施しています。2022年2月に実施したシナリオ分析では、以下の通り2050年までのカーボンニュートラル達成がなされる前提と、地球温暖化が最も深刻化する2パターンのシナリオを策定し、その前提に基づく考察を実施することで、レジリエンス性の強化を図っています。

 

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 分析対象としては、当社グループにおいて特に気候変動による影響を被ると推察される、障がい者雇用コンサルティング事業(=株式会社エスプールプラス)、及び物流アウトソーシング事業(=株式会社エスプールロジスティクス)の2事業領域を中心に、2030年時点でのグループ全体における影響を考察しています。

 シナリオ分析を踏まえた事業への財務的影響については、定性的な分析、並びに試算が可能な項目に関しては数理モデルを定め試算を行い、2030年時点に想定される収益への影響を項目別に評価を実施しています。特定したリスク及び機会は以下の表のとおりです。

 

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※時間軸の考え方:短期=1年~3年 中期=3年~10年 長期=10年~

※財務影響評価の考え方:大=1億円以上 中=1億円未満 小=影響軽微もしくは無し

 

 全社的な影響として、物理的リスクについては、洪水など風水災害に因る被害が想定されます。特に、被災時の営業停止損失が主に農園・物流拠点で発生し、財務を圧迫することが想定されます。脱炭素化への移行による影響としては、カーボンプライシング制度による追加支出とエネルギーコストの増加が懸念されます。特に、グループ全体を通して共通の主要エネルギーである電力については、気温上昇による空調使用量の増加や再生可能エネルギー発電への転換による電力価格高騰により支出増加に繋がることが想定される一方で、脱炭素化に向けて企業の情報開示がより進むことが想定され、ブルードットグリーン株式会社が展開する環境経営支援サービスについて需要増加が見込まれます。

 

 現在当社グループでは環境方針として事業サービスを通じた環境への貢献を掲げており、機会獲得に向けてはブルードットグリーンを軸にした環境領域での積極的な事業展開を進めています。当期は自治体向けの脱炭素移行支援サービスの提供を開始し、自治体のGHG排出量の算定や削減を支援することで、ゼロカーボンシティの実現を促進しています。物理的なリスクへの対応としては、特に物理的影響が懸念される株式会社エスプールプラスでは、災害の影響を受けにくく節水型の屋内農園拠点の展開を進めています。移行リスク対策としては子会社個別に脱炭素化の検討を進めており、株式会社エスプールロジスティクスでは「再エネ100宣言 RE Action」に参加し、主要拠点でFIT非化石証書を活用し再生可能エネルギーを導入しています。

 

② 指標及び目標

 当社グループは、温室効果ガス排出量に関する目標として、2050年までに、事業活動に伴う温室効果ガスの排出量(注)を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」目標、及び中間目標を策定しています。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

(注)事業活動に伴う温室効果ガスの排出量は、Scope1、Scope2の合計を示しています。

Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)

Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

 

[GHG排出量削減目標]

 

指標

目標(2021年11月期対比)

Scope1+2のGHG排出量

2030年までに40%削減

2050年までにカーボンニュートラル

再生可能エネルギー由来の電力調達割合

2030年までにグループの事業活動で消費する電力の100%調達

 

[GHG排出量実績]

 

2021年11月期

2022年11月期

2023年11月期

Scope1+2のGHG排出量実績[t-CO2]

3,274.63

4,860.24

5,350.93

再生可能エネルギー由来の電力調達割合(%)

0.0

10.81

15.03

(注)排出量は当社および国内連結子会社を対象に算出しており、事業範囲の99.8%をカバーしています。なお、2022年11月期および2023年11月期の実績値においては、第三者認証取得後、統合報告書もしくは当社ウェブサイトで確定数値を開示する予定です。

 

(3)人的資本

① 戦略

 当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進」「従業員のウェルビーイングの推進」「企業価値を高める人材の育成」の3つです。

 「DE&Iの推進」については、女性活躍推進法や障害者雇用促進法等の各種法令に従い、従業員の特性や制約条件に合わせた業務の提供を行うとともに、全従業員の活動が顧客企業や社会への貢献に繋がるよう、専門部署(人材開発課D&I推進グループ)を設置し、キャリア相談やハラスメント相談を随時できる体制を整備し、従業員の成長を阻害する要因の排除に努めております。また、治療、看護、介護、育児、不妊治療に対する「両立支援」の制度を充実化させ、従業員のキャリアの停止を極力避けるための制度を整備しております。

 「従業員のウェルビーイングの推進」については、代表取締役社長をCHO(最高健康責任者)として配置し、従業員の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に各種施策を実践していく体制を整備しております。また、健康経営戦略を実行する専門部署として「保健室」を設置し、従業員の健康増進とプレゼンティーズム/アブセンティーズムへの対策を行うとともに、従業員が自身の健康について気軽に相談できる環境を整備しております。

 「企業価値を高める人材の育成」については、グループ全体の方針と各子会社の個別方針をBSC(バランス・スコアカード)に従って決定し、事業の推進と従業員のキャリア形成を同時に達成できるための取り組みを行っております。また、企業風土醸成や従業員の働きやすい環境整備を促進するために、グループ人事本部に各社専任のHRBP(ヒューマンリソースビジネスパートナー)担当者を配置し、グループ方針遂行のガバナンス強化を実現しつつ各社個別の戦略の実現を推進させる体制を整備するとともに、階層別研修をグループ横断で実施し、次世代の経営を担う人材の輩出に努めております。

 

② 指標及び目標

 当社グループでは、上記「①戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。なお、当社グループにおいては、当社及び各連結子会社において事業モデルが異なることから、その特徴を加味した当社及び各連結子会社単体での指標及び目標も併せて策定しております。

 

(a)連結

指標

目標(2025年11月期)(%)

実績(当連結会計年度)(%)

管理職に占める女性労働者の割合

30.0

21.2

男性労働者の育児休業取得率

100.0

58.3

労働者の男女の賃金の差異

80.0以上の維持

83.7

 

(b)単体

名 称

指標

目標(2025年11月期)(%)

実績(当連結会計年度)(%)

株式会社エスプール

管理職に占める女性労働者の割合

30.0

25.0

男性労働者の育児休業取得率

100.0

100.0

労働者の男女の賃金の差異

70.0

61.0

株式会社エスプールヒューマンソリューションズ

管理職に占める女性労働者の割合

50.0

40.0

男性労働者の育児休業取得率

100.0

80.0

労働者の男女の賃金の差異

90.0

90.7

株式会社エスプールロジスティクス

管理職に占める女性労働者の割合

30.0

19.0

男性労働者の育児休業取得率

100.0

100.0

労働者の男女の賃金の差異

90.0

88.7

株式会社エスプールプラス

管理職に占める女性労働者の割合

30.0

12.2

男性労働者の育児休業取得率

100.0

労働者の男女の賃金の差異

90.0

80.2

株式会社エスプール

セールスサポート

管理職に占める女性労働者の割合

30.0

14.3

男性労働者の育児休業取得率

100.0

労働者の男女の賃金の差異

90.0

96.4

株式会社エスプールリンク

管理職に占める女性労働者の割合

50.0

45.5

男性労働者の育児休業取得率

100.0

100.0

労働者の男女の賃金の差異

70.0

63.8

ブルードットグリーン株式会社

管理職に占める女性労働者の割合

30.0

33.3

男性労働者の育児休業取得率

100.0

0.0

労働者の男女の賃金の差異

80.0

74.1

株式会社エスプールグローカル

管理職に占める女性労働者の割合

30.0

20.0

男性労働者の育児休業取得率

100.0

0.0

労働者の男女の賃金の差異

70.0

62.2

(注)「-」は集計対象となる従業員がいないことを示しております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に記載しております。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、以下の事業等のリスク及び本項以外の記載事項を、慎重に検討した上で行われる必要があります。また、以下の記載は当社グループの事業もしくは当社株式への投資に関するリスクを完全に網羅するものではありませんので、その点ご注意ください。

 なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 事業の許認可について

 当社グループの人材派遣サービスは、労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)に基づく労働者派遣事業として厚生労働大臣の許可を受けています。労働者派遣法は、労働者派遣事業の適正な運営を確保するために、派遣事業を行う事業主が、派遣元事業主としての欠格事由に該当したり、労働者派遣法もしくは職業安定法の規定またはこれらの規定に基づく命令処分に違反したりする場合には、事業の許可を取り消され、または事業の全部もしくは一部の停止を命じられる旨を定めております。本許可には有効期限があり、株式会社エスプールヒューマンソリューションズの労働者派遣事業許可の有効期限は2027年11月30日となっております。株式会社エスプールヒューマンソリューションズでは担当部署を配置して本許可の円滑な更新に努めるとともに、日々の業務における法令遵守のための社内フローの整備や、その遵守状況のチェック体制を整えて法令リスク管理に努めております。

 本書提出日現在、本許可が取り消しとなる事由は発生しておりませんが、万一、将来何らかの理由により法令違反に該当し、労働者派遣事業の許可取り消しや当該業務の全部または一部の停止の命令を受けた場合や許可の有効期間満了後に許可が更新されない場合には、労働者派遣事業を営むことができず、当社グループの事業運営に重大な影響を与える可能性があります。

 また、職業安定法に基づく有料職業紹介についても労働者派遣法と同様の取り扱いがあり、有料職業紹介事業者としての欠格事由に該当したり、当該許可の取消事由に該当したりした場合には、事業の許可を取り消され、または事業の全部もしくは一部の停止を命じられる旨を定めております。本許可には有効期限があり、株式会社エスプールヒューマンソリューションズの有料職業紹介事業許可の有効期限は2027年11月30日、株式会社エスプールプラスの有料職業紹介事業許可の有効期限は2026年4月30日となっております。当社グループでは、許可を取得している会社ごとに担当部署を配置して本許可の円滑な更新に努めるとともに、日々の業務における法令遵守のための社内フローの整備や、その遵守状況のチェック体制を整えて法令リスク管理に努めております。

 本書提出日現在、本許可が取り消しとなる事由は発生しておりませんが、万一、将来何らかの理由により法令違反に該当し、事業許可取り消しや当該業務の全部または一部の停止の命令を受けた場合や許可の有効期間満了後に許可が更新されない場合には、有料職業紹介事業を営むことができず、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

② 法的規制について

 当社グループの行う事業に適用のある労働基準法、労働安全衛生法、労働者派遣法、職業安定法、労働者災害補償保険法、健康保険法及び厚生年金保険法、個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)その他関連法令は、労働市場を取り巻く社会情勢の変化に応じて今後も改正、解釈の変更等が想定されます。今後何らかの制度変更が行われた場合、当社グループが行う事業についても、影響を受ける可能性があります。

 

③ 社会保険・雇用保険について

 当社グループは、業務実施にあたる派遣スタッフについて、健康保険法、厚生年金保険法の範囲内で当社グループにて定めた運用方針に基づき、契約形態及び勤務実績に応じて、社会保険(健康保険及び厚生年金保険)や雇用保険に加入させる取り扱いを行っております。

 当社グループでは関係法令を遵守しておりますが、今後関係法令やその解釈の変更が行われた場合並びに所轄官庁の判断により指摘を受けた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 また、今後、関連法令の改正や社会情勢の変化等により、当社グループの社会保険負担額や雇用保険負担額が増加する可能性があり、この場合には当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

④ 障害者雇用促進法について

 当社グループの提供する障がい者雇用支援サービスは、障がい者雇用に積極的に取り組む企業に向けて、雇用の各場面における課題解決を支援するソリューションを提供するものであります。当該サービスの需要は、障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)が規定する企業の障がい者の雇用義務に係る法定雇用率に一定の影響を受けます。障害者雇用促進法が規定する障がい者の雇用に関する法定雇用率は引き上げる方向で継続的に見直しがなされることとなっておりますが、今後の法改正によって雇用義務が緩和されたり、雇用義務そのものがなくなったりした場合には、当社グループの事業運営に重大な影響を与える可能性があります。

 

⑤ 障がい者雇用支援サービスのビジネスモデルについて

 当社グループの提供する障がい者雇用支援サービスは、知的障がい者の就労機会の創出と経済的自立の支援を目指して当社グループが独自に開発したビジネスモデルであります。そのため、当社グループでは事業主管部門と法務部門が連携し、関連諸法規の遵守に万全の態勢で臨んでおりますが、法律の改正、新たな規制、行政指導等によって事業活動が制限される可能性があります。

 また、当社グループでは社会課題の解決という高い理念のもとに、法令違反等が生じないよう細心の注意を払って事業活動を行っておりますが、競合他社の模倣等により何らかの理由で当社グループのビジネスモデルの評判が損なわれる可能性、または、当社グループに対する好ましくない風評が立つ可能性があります。

 これらの場合には、計画どおりに事業運営を行うことができず、当社グループの業績に重大な影響を与える可能性があります。

 

⑥ 障がい者雇用支援サービスの運営する農園について

 当社グループの提供する障がい者雇用支援サービスにおいては、障がい者を雇用しようとする企業向けの貸農園を運営しております。農園には屋外型と屋内型の2種類があり、外注する工事の発注や進捗管理を担当する専門部署を配置すること等により設備の構築・保守には万全を期して運営しておりますが、台風や地震などの災害や、人為的なミス、事故、設備上の問題、または第三者による不法行為、その他運営上のトラブル等が発生した場合、これらに起因して農園の運営に支障が出る可能性があります。

 その場合、信頼性や企業イメージが低下して顧客の維持・獲得が困難になり、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 また、障がい者雇用支援サービスの成長のためには、運営する企業向け貸農園の新規開設が必要不可欠であります。しかしながら、社内外の要因により企業向け貸農園に適した土地や建物の確保が計画通りに進まない場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

⑦ 個人情報の管理について

 当社グループは、事業を行う上で、派遣スタッフ等の個人情報を保有しており、基幹業務システムにて一括管理しております。そしてこれらの個人情報の取り扱いについては、個人情報の保護に関する規程を定め、万全の管理体制を施しており、個人情報保護法その他関連法令の遵守に努めております。また、不正アクセス、破壊及び改ざんに対して、基幹業務システムのセキュリティ投資を積極的に行い、厳正な対策を講じております。

 また、当社グループの各事業に従事する社員や、派遣先のコールセンター等で就業する派遣スタッフは、顧客管理下の個人情報や営業機密に触れる機会があります。当社グループでは、顧客の営業機密管理及び漏洩防止のため、全ての社員・派遣スタッフに対して、採用時に守秘義務に関する誓約書を取り付けるほか、集合研修やオンライン研修を通じて定期的に教育・研修を行い、情報の取り扱いの重要性の啓蒙に努めております。

 以上のような対策を講じても、個人情報の漏洩や不正使用などの事態が生じた場合、当社グループのイメージの悪化等により、当社グループの事業及び業績に重大な影響を与える可能性があります。

 

⑧ 新規事業及び新規サービスの立ち上げについて

 当社グループでは、中期的な事業方針として環境変化に強い、バランスの取れたポートフォリオ経営の推進を掲げており、今後も環境の変化に応じて柔軟に新規事業や新規サービスを展開して行く所存です。新規事業や新規サービスの展開にあたっては、事前に環境分析や市場分析等を慎重に行ったうえで事業化することとしておりますが、事業着手後、必ずしも計画通りに進むとは限らず、また、予期せぬ事象の発生等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

⑨ 事業投資について

 当社グループは、環境変化に対応するために、同業または関連する事業分野の企業または事業の買収や投資を積極的に検討・実行しております。企業買収や事業投資の際には、事前のデューデリジェンス等により経営状況や市場動向を調査した上で慎重に進めるとともに、当社グループに合流した後においても、既存の子会社と同様にグループ間の情報共有や既存営業網の共有等を通じて業績を向上させていくよう努めております。しかしながら、社内外の要因により必ずしも見込みどおりに進むとは限らず、買収資産の毀損や収益性の低下によって、のれんや固定資産の減損、関係会社株式評価損等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

⑩ 大規模な自然災害及び感染症等の影響について

 当社グループは、全国に事業拠点を有しており、自然災害や新型感染症等が発生した場合、事業活動に支障が生じる可能性があります。新型コロナウイルス感染症に関しては重症化リスクの減少等によりその影響は軽減され、社会経済活動の正常化が進みましたが、今後新たに感染症等の流行が生じた場合、社会経済活動に与える影響の度合いによっては、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 また、障がい者雇用支援サービスにおいて運営する貸農園設備について、台風や地震、大雪や豪雨、竜巻等の自然災害による被害が生じ、長期にわたり農園の稼働が困難になった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

⑪ 情報システム障害について

 当社グループでは、全国の事業拠点での運営を円滑に行うため、事業管理活動の多くをコンピュータシステム及びネットワーク網に依存しております。当社グループでは、コンピュータシステムの障害に備えるため、バックアップサーバーの設置を行っております。また地震等の災害に備えるため、外部のデータセンターに運営を委託しております。しかしながら、予期せぬトラブル等によりコンピュータシステムが停止した場合、あるいは、ネットワーク網に障害が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 また、今後も情報システム投資を積極的に行い、コンピュータシステム及びネットワーク網の安定稼働強化を図っていく計画ですが、これらの投資が収益拡大に直結するとは限らず、投資に見合った利益を上げられない場合、投資資金を回収できない可能性もあります。

 

⑫ 人材の確保について

 当社グループが今後も継続的に成長していくためには優秀な社員や派遣スタッフの確保・育成が重要な要素になります。採用活動においては独自の採用イベントやインターンシップの実施、複数キャリアコースの設定等様々な施策を導入し、派遣スタッフの募集においては募集拠点の増設やWEB面接システムの導入など、採用方法の多様化を推進しています。また、従業員の育成・定着のために階層別研修やジョブローテーションの実施、健康経営の推進等様々な施策を講じています。しかしながら、これら諸施策が十分な効果が得られずに、計画通りに人材の確保・育成が進まない場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当社グループは、当連結会計年度よりIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値もIFRSに組替えて比較分析を行っております。

(1)経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

 当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大による行動制限の緩和を受け、消費活動に回復の兆しが見え始めました。一方で、ウクライナ情勢の長期化、原材料・エネルギー価格の高騰による物価上昇の広がり、世界的な金融引締め等による景気後退リスクなど、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いております。

 そのような中、当社グループは、社会的価値と経済的価値創出の両立を経営の基本方針として、社会貢献性が高く、付加価値の高い事業を複数展開するポートフォリオ経営を推進してまいりました。ビジネスソリューション事業においては、主力の障がい者雇用支援サービスや急成長中の環境経営支援サービスなど、ほぼ全てのサービスが増収となり、売上は堅調な伸びとなりましたが、利益面については、先行投資の影響等により小幅な増加にとどまりました。人材派遣サービスを主力とする人材ソリューション事業においては、インバウンド関連に注力した販売支援業務の売上回復は進んだものの、コールセンター業務のコロナ関連の売上減少の影響が大きく、大幅な減収減益となりました。

 以上の結果、当連結会計年度の売上収益は25,784百万円(前連結会計年度比3.3%減)、営業利益は2,777百万円(前連結会計年度比11.5%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,730百万円(前連結会計年度比11.5%減)となりました。

 

 当連結会計年度のセグメント業績(セグメント間内部取引消去前)は以下のとおりであります。

 

(ビジネスソリューション事業)

[事業概要]

 ビジネスソリューション事業では、シニアや障がい者など潜在労働力の活用を支援するサービスや、企業の業務の一部を受託するアウトソーシングサービスを提供しています。前者においては、株式会社エスプールプラスが、障がい者の就労に適した農園を企業に貸し出し、主に知的障がい者の採用・教育から定着までを支援するサービスを行っています。株式会社エスプールでは、様々な経験やノウハウを有するシニアを企業の経営課題や業務課題の解決に役立てるサービスを提供しています。

 後者のアウトソーシングサービスでは、株式会社エスプールロジスティクスが、通販商品の発送を代行する物流サービスを行っています。株式会社エスプールリンクは、アルバイトやパートの採用業務の一部を代行するサービスを提供しており、株式会社エスプールセールスサポートでは、対面型の会員獲得業務や販売促進業務を行っています。ブルードットグリーン株式会社は、温室効果ガス(GHG)排出量の算定や環境情報の開示に関するコンサルティング、カーボンオフセット仲介など、企業の環境経営を支援するサービスを提供しています。株式会社エスプールグローカルでは、複数の自治体の行政業務を一括で受託する広域行政BPOサービスを行っています。

[当連結会計年度の経営成績]

 障がい者雇用支援サービスについては、法定雇用率の引き上げを2024年4月に控え、営業活動が活発になりました。類似サービスが増える中で、法令順守をはじめとした適正なサービス提供を重視する機運が追い風となっており、第4四半期の新規受注は過去最高となりました。設備販売に関しても、第4四半期は過去2番目となり、通期計画を上回ることができました。ロジスティクスアウトソーシングサービスにおいては、売上収益は計画通りとなりましたが、利益面に関しては2023年7月に新設した流山センターの開設費用に加え、安定稼働に想定よりも時間と費用を要したため減益となりました。採用支援サービスについては、コロナ禍からの需要回復に加え、サービス業を中心とした人手不足感の強まりが大きな追い風となり、売上収益は過去最高となりました。広域行政BPOサービスにおいては、営業活動がすでに来年度以降の案件が中心となっていることから、直近の案件の積み上げはなく、当第4四半期の売上収益は第3四半期と同水準で推移しました。通期の売上収益は前期から約5割増となりましたが、営業活動の遅れ等により新センターの稼働率が計画を大きく下回り、わずかながら営業損失が発生しました。環境経営支援サービスについては、ESG・サステナビリティへの社会的な意識の高まりを背景に企業の環境対応の取り組みが加速しており、環境情報開示に関連したコンサルティングサービスが大幅な伸びとなりました。

 その結果、当連結会計年度の売上収益は12,555百万円(前連結会計年度比23.1%増)、営業利益は3,040百万円(前連結会計年度比3.0%増)となりました。

 

(人材ソリューション事業)

[事業概要]

 人材ソリューション事業は、人材派遣サービスを主力とする株式会社エスプールヒューマンソリューションズが提供するサービスで、コールセンター等のオフィスサポート業務とスマートフォンや家電製品等の店頭販売支援業務、ホテル業など接客業務に関する人材サービスを展開しています。サービスの特徴は、フィールドコンサルタント(FC)と呼ばれる同社の従業員と派遣スタッフをチームで派遣する「グループ型派遣」の形態を採用している点になります。派遣先に常駐するFCが派遣スタッフを現場で手厚くフォローすることで、未経験者を短期間で育成できるだけでなく定着率の向上にもつながり、顧客満足度の向上とシェア拡大につながっています。

[当連結会計年度の経営成績]

 主力のコールセンター向けの人材派遣サービスにおいては、新型コロナウイルス感染症に関連したスポット案件が終了したことにより、大幅な減収となりました。関連業務の終了はほぼ一巡し、第4四半期には売上減少にようやく歯止めがかかりつつある状況がみられましたが、新規案件に対する需要が弱く本格回復には至りませんでした。販売支援業務については、通信キャリア関連の人材派遣ニーズの回復が依然として遅れているため、人手不足が深刻となっているインバウンド関連の営業に注力しました。この取り組みにより、ホテルや空港関連の案件の獲得が進み、回復に転じることができました。

 その結果、当連結会計年度の売上収益は13,310百万円(前連結会計年度比19.7%減)、営業利益は1,265百万円(前連結会計年度比24.4%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度の現金及び現金同等物は166百万円増加し、3,378百万円となりました。各活動によるキャッシュ・フローの状況と要因は以下のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度比72百万円減少の4,097百万円の収入(前連結会計年度は4,169百万円の収入)となりました。これは、税引前利益が前連結会計年度と比較し397百万円減少して2,649百万円であったのに加え、減価償却費及び償却費が2,613百万円、営業債権及びその他の債権の減少が249百万円、及び法人所得税の支払額が1,138百万円あったことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度比1,721百万円増加の4,572百万円の支出(前連結会計年度は2,850百万円の支出)となりました。これは、主に株式会社エスプールプラスの新農園建設等による有形固定資産の取得による支出4,171百万円によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、640百万円の収入(前連結会計年度は2,045百万円の支出)となりました。収入及び支出の内訳は、短期借入金の追加借入による収入350百万円、長期借入金の追加借入による収入3,000百万円、長期借入金の返済471百万円、リース負債の返済による支出1,605百万円、配当金の支払額631百万円です。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

(a)生産実績

 当社グループは、主に人材派遣・業務請負を中心とした人材関連アウトソーシング事業を行っており、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載しておりません。

 

(b)受注実績

 生産実績と同様の理由により、記載しておりません。

 

(c)販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりとなります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前連結会計年度比(%)

ビジネスソリューション事業

12,555

123.1

人材ソリューション事業

13,310

80.3

調整額

△82

合計

25,784

96.7

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

(2021年12月1日から

2022年11月30日まで)

当連結会計年度

(2022年12月1日から

2023年11月30日まで)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

㈱ベルシステム24

2,710

10.2

2,279

8.8

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 本項の全ての財務情報は、本書に記載している連結財務諸表及び財務諸表に基づいております。また、本項に記載した将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針並びに重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 「3.重要な会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。

 

② 財政状態

 当連結会計年度末の流動資産は、前連結会計年度末から175百万円増加し、7,125百万円となりました。業容拡大に備えて棚卸資産が105百万円増加しております。また、法人所得税の還付に伴い、その他の流動資産に含まれる未収入金が104百万円増加しております。

 当連結会計年度末の非流動資産は、前連結会計年度末から7,728百万円増加し、26,254百万円となりました。障がい者雇用支援サービス拡大のため、株式会社エスプールプラスにて、新規農園の建設や既存農園の増設をしており、有形固定資産が3,185百万円増加しました。また、ビジネスソリューション事業の拡大に伴う株式会社エスプールプラス及び株式会社エスプールグローカルの新農園及び拠点の開設により使用権資産が4,023百万円増加しました。

 当連結会計年度末の流動負債は、前連結会計年度末から661百万円増加し、9,160百万円となりました。新規事業を含む業容拡大に伴い、追加の借入により借入金が837百万円増加しております。また、ビジネスソリューション事業の拡大に伴うリース負債が279百万円増加しております。一方、人材ソリューション事業の業績低迷に伴い、未払法人所得税が172百万円、その他の流動負債に含まれる未払消費税等が254百万円、それぞれ減少しております。

 当連結会計年度末の非流動負債は、前連結会計年度末から6,175百万円増加し、15,724百万円となりました。追加の借入により借入金が2,041百万円、ビジネスソリューション事業の拡大に伴うリース負債が3,743百万円、それぞれ増加しております。

 当連結会計年度末の資本は、親会社の所有者に帰属する当期利益により1,730百万円増加し、一方、第23期期末配当により632百万円減少し、8,494百万円となりました。また、有利子負債自己資本比率は233.1%でありました。

 

 

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

親会社所有者帰属持分比率

29.2%

25.5%

有利子負債自己資本比率

173.8%

233.1%

 

③ 経営成績

 当連結会計年度における売上収益は25,784百万円(前連結会計年度比866百万円減)、売上総利益は8,907百万円(前連結会計年度比130百万円増)、販売費及び一般管理費は6,223百万円(前連結会計年度比574百万円増)、営業利益は2,777百万円(前連結会計年度比359百万円減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,730百万円(前連結会計年度比224百万円減)となっております。

 

イ 売上収益

 事業別の外部顧客に対する売上収益の増減は以下のとおりです。

 

前連結会計年度(百万円)

構成比(%)

当連結会計年度(百万円)

構成比(%)

増減

(百万円)

前連結会計年度比(%)

ビジネスソリューション事業

10,145

38.1

12,502

48.5

2,357

123.2

人材ソリューション事業

16,505

61.9

13,281

51.5

△3,224

80.5

合計

26,650

100.0

25,784

100.0

△866

96.8

 事業別でみると、ビジネスソリューション事業が11期連続で前連結会計年度比二桁成長を達成しました。人材ソリューション事業は、前連結会計年度比19.5%減少となり、減収減益となりました。

 ビジネスソリューション事業では、主力の障がい者雇用支援サービスは、新農園の建設が順調に進み、増収に大きく貢献しました。また、2021年6月に事業を開始した広域行政BPOサービスが、急成長して計画を大きく上回りました。その結果、ビジネスソリューション事業全体では23.2%の増収となりました。障がい者雇用支援サービスでは、既存農園の増設の他に新たに9農園を開設して1,446区画の設備を販売し、参画企業は94社増加して606社となりました。当連結会計年度末での稼働農園数は46農園、管理区画数は7,549区画、農園で働く障がい者の人数は3,700名を超え、事業開始以来の雇用定着率は92%を維持しております。

 一方、人材ソリューション事業は、コールセンター業務のスポット案件の縮小により、下期に売上が大きく減少しました。また、販売支援業務も需要の回復が追いつかず、苦戦を強いられる結果となりました。これらにより、人材ソリューション事業全体では19.5%の減収となりました。

 以上の結果、当連結会計年度の売上収益は、前連結会計年度比866百万円減の25,784百万円となりました。

 

ロ 売上総利益率

 売上総利益率は、前連結会計年度から1.6ポイント増加して34.5%となりました。ビジネスソリューション事業においては、相対的に利益率の高い障がい者雇用支援サービス及び環境経営支援サービスの売上収益が増加しましたが、新規事業である広域行政BPOサービスの利益率が低下したため、売上総利益率は前連結会計年度から3.0ポイント減少しております。一方、人材ソリューション事業においては、売上減に対応するためコスト削減に努めましたが期待ほどの効果が出ず、売上総利益率が前連結会計年度から1.1ポイント減少しております。

 

 

ハ 販売費及び一般管理費

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度から574百万円増加し、6,223百万円となりました。主な費目別の内訳は以下のとおりです。

 

前連結会計年度

(百万円)

売上に対する比率(%)

当連結会計年度

(百万円)

売上に対する比率(%)

前連結会計年度比

(%)

従業員給付費用

3,118

11.7

3,358

13.0

107.7

減価償却費及び償却費

738

2.8

842

3.3

114.0

登録スタッフ募集費

316

1.2

255

1.0

80.7

地代家賃・賃借料

242

0.9

261

1.0

107.7

その他

1,232

4.6

1,506

5.8

122.2

合計

5,649

21.2

6,223

24.1

110.2

 

 前連結会計年度と比較して、販売費及び一般管理費は574百万円増加しておりますが、その主な要因は、事業拡大に向けた人員の積極的な採用であります。従業員給付費用の増加だけで239百万円と増加額の約4割を占めます。その他、事業の拡大に伴った拠点の拡大移転・新設により地代家賃及び賃借料が増加しております。事業別の販売費及び一般管理費の内訳は以下のとおりです。

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

前連結会計年度比

(%)

ビジネスソリューション事業

2,553

3,359

131.6

人材ソリューション事業

1,717

1,309

76.2

調整額

1,377

1,555

112.9

合計

5,649

6,223

110.2

その他の損益項目では、採用支援サービス及び広域行政BPOサービスに係る助成金119百万円をその他の収益に、固定資産除却損14百万円をその他の費用に、それぞれ計上しております。

 以上の結果、営業利益は前連結会計年度比359百万円減の2,777百万円となりました。

 

ニ 金融収益及び費用

 金融費用項目には、支払利息122百万円を計上しております。

 

ホ 次期の見通し

 今後のわが国経済の見通しについては、新型コロナウイルス感染症の行動制限が緩和され、経済活動に明るい兆しがあるものの、緊迫する社会情勢や世界的な金融引き締めを背景とした物価高騰などにより、経済の先行きについては依然として不透明な状況にあります。

 そのような中、各セグメントにおける2024年11月期の事業戦略については、以下のとおりとなります。

 ① ビジネスソリューション事業

 障がい者雇用支援サービスについては、法定雇用率の引き上げを控え、更なる需要拡大が見込まれることから、引き続き営業活動に注力してまいります。一方で、障がい者の採用・教育に関しては、従来の新規採用とは別に退職者の補充が課題となっていることから、採用チームの増強を進めるとともに新たな採用チャネルの開拓にも取り組んでまいります。ロジスティクスアウトソーシングサービスにおいては、新センターの安定稼働に一定の目途がついたことから、全センターの満床を目標に営業活動を強化してまいります。採用支援サービスについては、応募受付代行サービスの新規需要の取り込みと、既存顧客を中心とした面接代行サービスの拡販に注力してまいります。広域行政BPOサービスにおいては、早期の収益改善に向けて既存センターの稼働率向上に最優先で取り組んでまいります。営業活動は、すでに2024年度以降の案件が中心となっているため、上半期は苦戦が続く予定ですが、下半期以降の復活に向けて営業を加速してまいります。環境経営支援サービスについては、企業向けに展開していたカーボンニュートラル支援に関するコンサルティングサービスを自治体にも広げてまいります。営業活動は非常に順調で、既に16自治体からの受注を獲得しました。

 ② 人材ソリューション事業

 コールセンター向けの人材派遣サービスについては、下半期以降にかけて緩やかな需要回復を見込むものの、本格的な回復には時間を要することを想定し、上半期はコストコントロールの徹底と主要顧客との関係強化に取り組んでまいります。No.1戦略に関しては、現在の1社から4社を目標に営業を強化してまいります。販売支援業務については、需要が引き続き高いインバウンド関連業務の拡大に注力してまいります。新規出店については、下半期に2支店の出店を予定しております。

 

④ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度は、営業活動によるキャッシュ・フローは4,097百万円の収入(前連結会計年度は4,169百万円の収入)となりました。税引前利益が前連結会計年度に比べて397百万円減少して2,649百万円になったことに加え、減価償却費及び償却費が2,613百万円、営業債権及びその他の債権の減少が249百万円、及び法人所得税の支払額が1,138百万円発生した結果、営業活動によるキャッシュ・フローの収入は前連結会計年度に比べて72百万円減少することとなりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは4,572百万円の支出(前連結会計年度は2,850百万円の支出)となりました。これは、拡大が続く障がい者雇用支援サービスを中心に、積極的に実施した設備投資等に伴う有形固定資産の取得による支出4,171百万円によるものです。

 財務活動によるキャッシュ・フローは640百万円の収入(前連結会計年度は2,045百万円の支出)となりました。これは、配当金の支払631百万円を実施したことに加え、短期借入金の追加借入350百万円、長期借入金の追加借入3,000百万円、長期借入金の返済471百万円、リース負債の返済による支出1,605百万円によるものです。その結果、有利子負債残高は前連結会計年度末比で6,901百万円増加し、19,826百万円となりました。

 当連結会計年度末時点での現金及び現金同等物の残高は3,378百万円であります。今後も、障がい者雇用支援サービスを中心として当連結会計年度以上の投資を予定しております。中期的には現状の利益率が維持できれば、営業キャッシュ・フローの収入によって投資活動によるキャッシュ・フローによる支出を賄えるものと考えておりますが、短期的には営業活動によるキャッシュ・フローの収入が投資活動によるキャッシュ・フローの支出を下回ることもあるものと思われます。しかし、コミットメントライン契約の借入未実行残高も含め、本報告書提出日現在ではこの投資活動を含めた事業遂行に必要な流動性が確保されていると考えております。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの資金需要の主なものは、事業投資資金と経常運転資金の2つであります。事業投資資金には、障がい者雇用支援サービスのための農園建設資金、事業買収に係る資金、拠点開設や移転・増床のための資金及びサーバーやソフトウエア等のIT関連投資資金があります。これらのうち、前者の事業投資資金については、営業活動によるキャッシュ・フローである自己資金及び長期借入金による調達を基本とし、状況に応じて銀行からの短期借入金にて対応する等柔軟な調達を行っております。一方、後者の経常運転資金については、自己資金を基本としつつ必要に応じて銀行からの短期借入金により調達しております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は19,826百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は3,378百万円となっております。

 株主還元につきましては、事業投資資金(成長投資)及び経常運転資金(手許現金)を優先させた上で、連結配当性向を30%以上とすることを目標として、安定的な株主還元に努めてまいります。

 

⑥ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するために収益性を重視しております。その指標としましては、連結売上営業利益率10%以上の継続的な維持を目指しています。

 当連結会計年度における売上営業利益率は、前連結会計年度から1.0ポイント悪化して10.8%であり、引き続き当該指標の維持・改善に邁進していく所存でございます。

 

(3)並行開示情報

 連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下、「日本基準」)により作成した要約連結財務諸表は、以下のとおりであります。

 なお、日本基準により作成した当連結会計年度の要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。

 

① 要約連結貸借対照表(日本基準)

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(2022年11月30日)

当連結会計年度

(2023年11月30日)

資産の部

 

 

流動資産

7,056

7,270

固定資産

 

 

有形固定資産

9,128

12,251

無形固定資産

60

130

投資その他の資産

784

1,262

固定資産合計

9,973

13,643

資産合計

17,030

20,914

 

 

 

負債の部

 

 

流動負債

7,176

7,529

固定負債

2,424

4,563

負債合計

9,601

12,093

 

 

 

純資産の部

 

 

株主資本

7,437

8,831

その他の包括利益累計額

0

△0

非支配株主持分

△8

△9

純資産合計

7,429

8,821

負債純資産合計

17,030

20,914

 

② 要約連結損益計算書及び要約連結包括利益計算書(日本基準)

要約連結損益計算書

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2021年12月1日

至 2022年11月30日)

当連結会計年度

(自 2022年12月1日

至 2023年11月30日)

売上高

26,650

25,784

売上原価

17,909

16,945

売上総利益

8,741

8,838

販売費及び一般管理費

5,649

6,222

営業利益

3,091

2,616

営業外収益

59

121

営業外費用

32

53

経常利益

3,118

2,684

特別利益

31

0

特別損失

241

43

税金等調整前当期純利益

2,908

2,641

法人税等合計

1,075

616

当期純利益

1,833

2,024

非支配株主に帰属する当期純利益又は非支配株主に帰属する当期純損失(△)

24

△1

親会社株主に帰属する当期純利益

1,809

2,026

 

要約連結包括利益計算書

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2021年12月1日

至 2022年11月30日)

当連結会計年度

(自 2022年12月1日

至 2023年11月30日)

当期純利益

1,833

2,024

その他の包括利益

0

△0

包括利益

1,833

2,023

(内訳)

 

 

親会社株主に係る包括利益

1,809

2,025

非支配株主に係る包括利益

24

△1

 

③ 要約連結株主資本等変動計算書(日本基準)

前連結会計年度(自 2021年12月1日 至 2022年11月30日)

(単位:百万円)

 

 

株主資本

その他の包括利益

累計額

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

6,078

0

27

6,106

当期変動額合計

1,359

△0

△36

1,323

当期末残高

7,437

0

△8

7,429

 

当連結会計年度(自 2022年12月1日 至 2023年11月30日)

(単位:百万円)

 

 

株主資本

その他の包括利益

累計額

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

7,437

0

△8

7,429

当期変動額合計

1,393

△1

△1

1,391

当期末残高

8,831

△0

△9

8,821

 

④ 要約連結キャッシュ・フロー計算書(日本基準)

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2021年12月1日

至 2022年11月30日)

当連結会計年度

(自 2022年12月1日

至 2023年11月30日)

営業活動によるキャッシュ・フロー

2,862

2,522

投資活動によるキャッシュ・フロー

△2,839

△4,572

財務活動によるキャッシュ・フロー

△748

2,215

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

△725

166

現金及び現金同等物の期首残高

3,938

3,212

現金及び現金同等物の期末残高

3,212

3,378

 

⑤ 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更(日本基準)

 

前連結会計年度(自 2021年12月1日 至 2022年11月30日)

(連結の範囲に関する事項)

新たに会社分割により設立した株式会社エスプールグローカルを連結の範囲に含めております。

 

(収益認識に関する会計基準等の適用)

 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用し、約束した財又はサービスの支配が顧客に移転した時点で、当該財又はサービスと交換に受け取ると見込まれる金額で収益を認識することとしております。

 当社グループにおける主な収益は、顧客との財及び役務提供契約から生じる収益であり、当該契約における一定の期間にわたる履行義務の充足につれて収益を認識することとしておりますが、従来の取扱いから変更される事項はないため、収益認識会計基準等の適用による当連結会計年度の損益に与える影響はありません。また、利益剰余金の当期首残高及び1株当たり情報に与える影響はありません。

 

 

(時価の算定に関する会計基準等の適用)

 「時価の算定に関する会計基準」(企業会計基準第30号 2019年7月4日。以下「時価算定会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用し、時価算定会計基準第19項及び「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号 2019年7月4日)第44-2項に定める経過的な取扱いに従って、時価算定会計基準等が定める新たな会計方針を、将来にわたって適用することといたしました。なお、連結財務諸表への影響はありません。

 

当連結会計年度(自 2022年12月1日 至 2023年11月30日)

 

該当事項はありません。

 

(4)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報

 IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。

 

前連結会計年度(自 2021年12月1日 至 2022年11月30日)

 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 34.初度適用」に記載のとおりであります。

 

当連結会計年度(自 2022年12月1日 至 2023年11月30日)

 

(リース)

 日本基準では借手のリースについてファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、オペレーティング・リースについては通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っておりましたが、IFRSでは原則としてすべての借手のリースについて使用権資産及びリース負債を計上しております。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて使用権資産及びリース負債がそれぞれ12,365百万円及び12,275百万円増加しております。

 

(有形固定資産の減価償却)

 有形固定資産の減価償却方法について、日本基準では主として定率法を採用しておりましたが、IFRSでは減価償却方法の見直しを行い、定額法を採用しております。

この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて営業利益が35百万円増加しております。

 

(有給休暇に係る債務の調整)

 日本基準においては認識していない有給休暇に係る債務について、IFRSでは未消化の有給休暇について負債認識しております。その結果、IFRSでは日本基準に比べてその他の流動負債が242百万円増加しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。