第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります

 なお文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります

(1) 経営方針

 当社グループは「すべてはエンタープライズOSSエコシステム(注)発展のために より高速に、より安全に、より安心してオープンソースソフトウェアをお客様のビジネスでご活用いただくために、私たちは、IT業界におけるユーザーの期待とベンダーの現実のギャップを解消し、エンタープライズOSS(オープンソースソフトウェア)エコシステム発展のために全力を尽くして参ります。」を企業理念に掲げ、超高速CMS実行環境「KUSANAGI」及びオペレーティングシステム、処理エンジン、AIにより構成する「KUSANAGI Stack」の開発・提供により、顧客課題の解決と高度な自動化による生産性向上の実現に貢献することを通じ、企業価値の最大化を図る方針です。

 

(注)エンタープライズOSSエコシステム:OSS(オープンソースソフトウェア)とは作成者がソースコードを無償で公開し、利用や改変、再配布が自由に許可されているソフトウェアのことで、小規模のものから大規模に世界中に開発者がいて協力して開発しているものまであります。特に商業向けのものがエンタープライズOSSと呼ばれ、代表的なOSSである「Linux」はオペレーティングシステムとして基幹業務系システムから最新のデジタルサービス向けシステムまで幅広い領域で採用されております。このように世界中の開発者が参加し、それぞれのソフトウェアが相互に補完しながら、高い価値を生み出している様相を「エンタープライズOSSエコシステム」と呼んでおります。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社グループでは、ストック型ビジネスの売上高を重視して、その向上に努めてまいります。中心となる「KUSANAGIマネージドサービス」の新規の月額課金額の増大及び解約率の低減のための事業活動、事業の基礎となる「KUSANAGI」及び「KUSANAGI Stack」の開発を通じて、継続的な企業価値の向上を目指してまいります。

 また、「売上高経常利益率」を重要経営指標として考えております。利益率の成長は当社グループの知的資本の優位性が具現化した結果であると考えており、これが競争優位性になるものと考えているためです。

 

(3) 経営環境及び中長期的な経営戦略

 当社グループのKUSANAGI Stack事業の成長は、クラウドサービスの普及・市場の拡大の動きに影響されます。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)の トレンドが進展する中、生産性の向上や業務の効率化を目的として、クラウドを前提に事業運営を行おうとするクラウドファースト戦略を実行する企業が増加しており、2021年の国内クラウド市場規模は、前年比34.7%増の4兆2,018億円となりました。また、2021年~2026年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は21.1%で推移し、2026年の市場規模は2021年比約2.6倍の10兆9,381億円になると予測されております。(出所:IDCJapan株式会社「国内クラウド市場 用途別 売上額予測、2021年~2026年」)この市場予測から当社グループの属するクラウド市場は、本格的な普及期に入ったものと認識しております。

また、クラウドサービスにおけるオープンソースソフトウェアの活用は、サーバ、ソフトウェアライセンス、ネットワーク機器等の初期投資及び運用にあたって従来のオンプレミス(自社運用)における商用ソフトウェアの活用と比較し、調達コスト、運用コスト等においてメリットがあり、また特定企業の製品ではないためベンダーロックインの回避のメリットもあり、企業の情報システム構築・運用にあたり主要な選択肢となりつつあると同時に十分なクオリティとサポート体制が求められています。

 さらに、国内における働き方改革の機運に加え、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機としたテレワーク拡大等の企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みは、クラウドコンピューティングの活用やAI技術による高度な自動化への取り組みを推進させるものと考えております。具体的に新型コロナウイルス感染症拡大が当社グループに与える影響については以下に示す「マイナス影響」と「プラス影響」に大別して認識しております。

 マイナス影響

 ・顧客の収益悪化に伴う当社サービスの解約(すべてが新型コロナウイルス感染症に起因する訳ではありませんが、小規模の顧客等について一定の解約が続いたと認識しております。)

 ・感染症対策に伴うコストの増加

 プラス影響

 ・WEBサイトが集客チャネルの中心になるため、当社サービスに対するニーズの増加

 ・顧客のDX推進に伴うクラウド活用に対する機運の上昇

 

 このような経営環境のもと当社グループは以下の事項を中期的な経営戦略として、事業を推進してまいります。

① 業界標準となる製品開発

 当社グループの開発する超高速CMS実行環境「KUSANAGI」は2023年11月現在34カ国206リージョン、国内外の主要な26クラウド事業者でご利用いただくことが可能であり、累計稼働台数も8万台を超えるに至りました(2023年10月末現在)。

 市場に求められる機能の開発を強化し、累計稼働台数の増加、海外での利用比率の向上を進め、エンタープライズCMS実行環境としての業界標準を目指してまいります。

 

② 提供サービスの付加価値の増加と収益構造の変革

 当社グループの開発する「KUSANAGI Stack」はAI技術を活用した高度な自動化による生産性の向上を実現し、当社グループの企業価値を向上させるものと考えております。

 具体的には主力サービスである「KUSANAGIマネージドサービス」の売上高に対しては、付加価値の向上による単価・件数の向上に寄与し、経常利益については、工数の削減等による原価率の低減が寄与することが見込まれると考えておりますが、「KUSANAGI Stack」の提供の形態の多様化とクラウドサービス化を進め、より容易なサービス提供及び単体サービスとしての提供が可能となるよう開発を進めてまいります。

 あわせて、顧客及び顧客のグループ内にある複数の管理されていないWebシステムを統合し、「KUSANAGIマネージドサービス」上で統合管理してほしいというニーズも出てきており、統合運用基盤としての「KUSANAGIマネージドサービス」の開発とその営業活動も進めてまいります。

 

③ 研究開発及びパートナーシップによる新市場、販路の開拓

 当社グループが開発する「KUSANAGI」は国内外の主要な26クラウド事業者でご利用いただくことができますが、同時に、当社グループは主要なクラウド事業者11社と、13のパートナーシップを結んでおり、協業のチャネルとしても機能しております。

 「KUSANAGI Stack」の社内での研究開発によるWeb高速化以外の分野への応用、また、パートナーシップを中心とする他社との協業を進め、新市場の開拓及び販路の拡大を目指してまいります。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 優秀な人材の確保

 当社グループは国内外各分野において、人工知能や機械学習を活用した自動化技術であるハイパーオートメーションを実現するために、また同時に外部環境の不確実性及び新型コロナウイルス感染症の拡大の影響等による経済活動の停滞に備え、従来からの取り組みを前倒して実施する機会ととらえて、一段階上の体制づくり、すなわち管理部門に至るまで全ての社員がエンジニアレベルの知識を有し、日々の業務においてそれを遺憾無く発揮できる「全社一丸となったAIカンパニー」化を進めることが必須であると考えております。

全社的に先端AI技術の研究・開発 、及び応用を推し進めるAIカンパニー化を実現することによって、「KUSANAGI Stack」を中心としたプロダクト開発とサービス展開をさらに加速させ、各分野の皆様のビジネスにおけるハイパーオートメーションの実現に貢献できるものと考えております。

 「KUSANAGI Stack」の顧客に対する提供では、高速性、自動化という2つのアプローチにより、より短い時間で、かつ作業工数・人員数を大幅に減らしたミスの少ない事業を推進することができるようになり、顧客課題の解決、及び生産性向上、付加価値の増加を継続的に実現することが可能となります。

 一方でそれを支える技術力の高い優秀な人材を確保することは当面の当社グループの最大の課題となります。顧客の数歩先をいく、管理部門を含めた全社的なデジタルトランスフォーメーションと業務の自動化を推進し、一人当たりの生産性、収益力の高い状態を作り出すため、開発力に優れたエンジニア、経験とスキルを持った優秀な人材を採用し、確保することを積極的に進めております。

 

② 「KUSANAGI」及び「KUSANAGI Stack」の提供形態及び適用分野の拡大

 今後の当社グループの構想図として、「KUSANAGI Stack」は現状ではWebの高速化、セキュリティ強化、コスト削減を実現するプロダクト群としての位置付けに止まりますが、今後はより汎用性のある技術として、機械学習(AI)や自動化ツール等を組み合わせて、業務の自動化、経営資源の最適化に貢献するソリューションとしての開発を推し進めて参ります。これにより、各分野でのハイパーオートメーションの本格的実現、更には、医療等での高速なデータ収集や解析のシステム等としての応用も可能になると考えています。

 

③内部管理体制の強化

 顧客満足度の高いサービス提供のためには、内部管理体制の強化が必要であると認識しております。また、事業規模拡大に対応した十分な内部管理体制の整備が必要であることも認識しております。当社グループは、内部管理部門についても積極的な人材採用を進めてまいりますが、社内業務のIT化、自動化を図ると共に、積極的に外部委託を活用し、より効率的で効果的な内部管理体制を構築してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する基本的な考え方

 当社グループは「すべてはエンタープライズOSSエコシステム発展のために。より高速に、より安全に、より安心してオープンソースソフトウェアをお客様のビジネスでご活用いただくために、私たちは、IT業界におけるユーザーの期待とベンダーの現実のギャップを解消し、エンタープライズOSS(オープンソースソフトウェア)エコシステム発展のために全力を尽くして参ります。」を企業理念に掲げております。この企業理念を、事業を通じて追求することにより、経済的・社会的課題を認識し、その解決を図ることによって持続的成長と中長期的な企業価値の向上を図ることができるものと考えております。

 

(2)ガバナンス

 当社グループは、法令、定款及び各種の社内規程等の定めるところにより、重要な意思決定及び業務執行の監督を行い、株主をはじめとする顧客、取引先、従業員、地域社会等の様々な利害関係者への責任を果たし、持続的成長と中長期的な企業価値の向上に責任を負うものとして、毎月1回の取締役会を開催し、法令、定款及び社内規程等の遵守状況、業務活動の適正性や有効性について確認し、利害関係者の信頼に応えるガバナンス体制が確立されているかを確認しております。

 

(3)戦略

 企業価値の向上のために当社グループは、人材の多様性の確保を含めた人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

・従業員がその能力を発揮し、仕事と生活の両立を図りやすい雇用環境を整備しており、なかでも2020年3月から実施しているテレワーク体制は維持してまいります。

・資格取得支援制度の導入、社内勉強会の実施及びナレッジやノウハウの共有化を図ることで、多様な人材の受入、既存従業員の能力向上を図ってまいります。

 

(4)リスク管理

 当社グループは、「リスク管理規程」「コンプライアンス規程」及び「コンプライアンス・リスク管理委員会規程」をリスク管理の基礎として定めております。それらの規程に基づき、コンプライアンス・リスク管理委員会を開催しております。コンプライアンス・リスク管理委員会により、内在するリスクの把握や各リスクの状況に関して継続的なモニタリングを行い、法令違反や不正行為等の早期発見と未然防止に努めております。

 

(5)指標及び目標

 当社グループでは、上記「(3)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含めた人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針については、次の指標を用いております。当該指標に関する目標および実績は、以下のとおりであります。

指標

目標

実績(当連結会計年度末)

従業員の生産性評価(※1)

15.1%

17.8%

リモートワーク比率(※2)

80.0%

78.3%

※1 従業員の生産性の指標として「プレゼンティーズム」を採用しております。「プレゼンティーズム」とは、健康問題の理由により生産性が低下している状態を数値化したもので、従業員に対して毎月サーベイを実施して数値を取得しております。

※2 リモートワーク比率 全従業員の月当たりの在宅等の勤務日数の割合

 

 

3【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項については、以下のようなものがあります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

また、当社ではリスクの防止及び会社損失の最小化を図ることを目的としたリスク管理規程を設けており、コンプライアンス規程、内部通報規程と合わせてこれら規程の遵守のために、コンプライアンス・リスク管理委員会を設けております。詳細は「第4提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照ください。

 

 

発生可能性

発生時期

影響度

(1)事業環境に関するリスク

 

 

 

 ① 競合リスク

不特定

 ② クラウド事業者のシステム障害リスク

不特定

 ③ クラウドコンピューティング市場の成長鈍化リスク

不特定

 ④ プラットフォームリスク

不特定

 ⑤ WordPressへの依存リスク

不特定

(2)事業運営に関するリスク

 

 

 

① 人材の確保リスク

不特定

② 知的財産権についてのリスク

不特定

③ 技術革新の対応リスク

不特定

④ クラウドインテグレーションにおける不具合・瑕疵リスク

不特定

⑤ リザーブドインスタンス購入リスク

不特定

(3)組織運営に関するリスク

 

 

 

① 情報管理体制についてのリスク

不特定

② 小規模組織リスク

不特定

③ 財務報告に係る内部統制に関するリスク

不特定

(4)その他のリスク

 

 

 

① 支配株主との関係についてのリスク

不特定

② 訴訟・係争リスク

不特定

③ 自然災害等のリスク

不特定

④ 配当政策についてのリスク

不特定

⑤ 資金使途についてのリスク

不特定

⑥ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化リスク

不特定

⑦ 当社株式の流動性に関するリスク

不特定

 

(1)事業環境に関するリスク

① 競合リスク

 「KUSANAGI」には強力な競合サービスは現れていないと認識しております。これは「KUSANAGI」の開発や当社主力サービスであるKUSANAGIマネージドサービスの展開においては、アプリケーション(WordPress)に関する知識だけでなく、AWSやMicrosoft Azureなどクラウド環境、オペレーティングシステムやプログラミング言語(PHP)、データベースなどWebサーバに必要とされるすべてのレイヤーに対して高い開発力が必要となるためです。

 もし競合の参入があっても競争力を保てるよう、これまで当社グループは既存顧客との対話を通じて顧客ニーズに沿った機能等の開発を積極的に行ってまいりました。今後も、「KUSANAGI」ブランドを確立するとともに、さらなる機能開発、商標権や特許権等の知的財産権の取得及び保持に努めることにより、競争力を維持してまいります。

 しかしながら、クラウドインテグレーションサービスにおいては、規模の大小を問わず競合企業が複数存在しており、クラウドの普及に伴い、今後も競合企業の新規参入が予測されます。これら競合他社の中には、当社グループに比べ大きな資本力、技術力、販売力等の経営資源及び顧客基盤等を保有している企業が含まれます。競合企業の動向は市場に大きな影響を与える可能性があり、新規参入の拡大等により、価格面も含め競争が激化し、類似サービスの出現により当社グループが競合企業との差別化を有効に図ることが出来ない場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、技術力の強化、サービス品質の向上等により、主要製品の機能や導入実績、ノウハウによる技術的優位を確保できていると認識しており、このまま先行して実績を積み上げていき他社との差別化を図り、市場での地位を早期に確立してまいります。

 

② クラウド事業者のシステム障害リスク

 当社グループの事業は、クラウド事業者が提供する各種サービス上で稼働する「KUSANAGI」をはじめ、アプリケーション等の保守・運用を顧客企業に提供することを前提としております。したがいまして、自然災害や事故等による不測の事態が発生し、万が一、クラウド事業者自体にシステム障害が起こるような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、クラウド事業者の障害に対して迅速に対応するため、サービスが継続的に稼働しているかを常時監視しており、システム障害の発生又はその予兆を検知した場合、長期間にわたりサービスが停止しないよう早急に対策・復旧するための体制を整えております。

 

③ クラウドコンピューティング市場の成長鈍化リスク

 「デジタルトランスフォーメーション(DX)」「クラウドファースト(クラウドを前提に事業運営を行おうとする戦略)」という言葉が浸透しているように、クラウドコンピューティング市場は、急速な成長を続けており、今後もこの成長傾向は継続するものと見込んでおります。しかしながら、国内外の経済情勢や景気動向等の理由により、顧客企業のIT投資マインドが減退し、クラウドコンピューティング市場の成長が鈍化するような場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループはストック型ビジネスを中心としたビジネスモデルとなっているため、急激な市場の成長の鈍化が発生した場合でも、極端な事業縮小はないものと考えておりますが、調査会社が発行する市況レポートを確認し、鈍化が予想されている場合は新たな成長市場に投資する等、状況に応じて適切に対応してまいります。

 

④ プラットフォームリスク

 当社グループのコンテンツ(製品・ライセンス)は、各クラウド事業者のマーケットプレイス利用に関する契約に基づき、クラウド事業者を介してユーザーに提供しております。このため、クラウド事業者の事業方針の変更や手数料率の変動等があった場合、また、当社グループのコンテンツがクラウド事業者側の要件を十分に満たさない等の理由により、不適当であると判断され、コンテンツ提供に関する契約を締結または継続できない場合、及びクラウド事業者において不測の事態が発生した場合等、クラウド事業者を介してユーザーに当社グループのコンテンツを提供できなくなる場合には、当社グループの業績及び事業展開に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、定期的に各社の担当者からの情報収集を行うことで、各クラウド事業者の動向に適切に対応してまいります。なお、本書提出日現在において契約継続等に影響を及ぼす事態は発生しておりません。

 

⑤ WordPressへの依存リスク

 「WordPress」は代表的なCMSの1つであり、企業のWebサイト作成において多く利用されております。当社グループの事業は、WordPressを中心に展開しており、WordPressのシェアが低下した場合には、当社グループの製品・サービスへのニーズが低下し、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、WordPress以外のCMSに対しても対応していき、各CMSのシェアに関係することなく優位性を保てるように製品・サービスの開発を行っていく方針です。

 

(2)事業運営に関するリスク

① 人材の確保リスク

 当社グループはクラウドサーバの保守からアプリケーションの開発まで一貫して行っているため、これらに精通した高い技術力の人材の確保が重要な課題となります。当社グループが必要とする人材の確保が計画通りに進まずに事業上の制約要因になる場合には、当社グループの事業展開及び業績に一定の影響を及ぼす可能性があるため、AIによる自動化やKUSANAGI基盤統一による環境の標準化等による業務効率化を推進し、深刻なリスクにならないように努めております。

 なお、従業員数は第17期末の50名から第18期末の19名になりました。これは当社ビジネスの中心がWordPressのインテグレーションサービスからKUSANAGIの開発及びKUSANAGIマネージドサービスの提供に代わっていく過程で、組織内改革及び一部従業員に対して退職勧奨を実施したことによるものであります。具体的には顧客層のニーズの変化及び増加に伴い、その品質水準を担保するためハイパーオートメーション化を進めていく過程で人事を刷新したことによるものであります。今後は事業環境の変化や顧客のニーズをいち早く察知し、適宜、適切な人事戦略を推進してまいります。

 

② 知的財産権についてのリスク

 当社グループが開発する製品であるソフトウェアにかかる知的財産権について、第三者の知的財産権に抵触しないよう細心の注意を払っており、これまで第三者から侵害訴訟を提起されたことはなく、知的財産権の侵害を行っていないと認識しております。しかしながら、第三者の知的財産権の状況を完全に調査することは極めて困難であり、知的財産権侵害とされた場合には、損害賠償の請求、当該知的財産権の使用に対する対価の支払いまたはサービスの停止等が発生する可能性があり、その際には当社グループの業績に一定の影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクが顕在化する可能性は低いものの、リスクは常に存在すると認識しております。

 

③ 技術革新の対応リスク

 当社グループが事業を展開しているクラウドコンピューティング市場は、技術革新が速く、当社グループの優位性を維持するためには、技術革新に即座に対応する必要があります。当社グループでは、各種イベントやセミナーへの参加や社内の定期的な勉強会等を通じて、クラウドコンピューティング市場の技術革新の動向を把握するとともに、それに対応した新サービスの提供ができるよう努めております。しかしながら、当社グループが技術革新に対応できないような場合、または、当社グループが対応できないような技術革新が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、常に最新の技術動向や市場動向を分析し、新技術や製品の研究開発に努め、製品サービスの競争力向上に取り組むことで、技術や顧客ニーズの変化に対応しております。

 

④ クラウドインテグレーションにおける不具合・瑕疵リスク

 一般的にソフトウェアは高度化、複雑化すると不具合を完全に解消することは不可能と言われており、当社グループのクラウドインテグレーションの提供・開発過程において各種不具合が発生する可能性も否定できません。納品・検収完了後において重大な不具合・瑕疵等が発見され適切に解決できない場合、原則として損害賠償額の上限を開発委託料とする契約を締結しておりますが、かかる損害賠償責任の発生や顧客の当社グループに対する信頼性を著しく毀損する可能性があり、当社グループの業績に一定の影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、クラウドインテグレーションの提供・開発過程において、品質管理の向上を念頭に置いて活動しており、提供・開発手順の標準化と標準化プロセスを遵守すること等により不具合・瑕疵の発生防止に努めております。

 

⑤ リザーブドインスタンス購入リスク

 当社グループでは、必要に応じて顧客に提供するコンピューティングリソースの利用料金を抑えるためにクラウド事業者からリザーブドインスタンスを購入しております。リザーブドインスタンスとは、定額の予約金を前払いで支払い、一定期間のコンピューティングリソースの利用を確約することにより、利用料金の割引を受けることが可能となるサービスであります。

 そのため、顧客サービスにおけるコンピューティングリソース利用量が予測を下回り、リザーブドインスタンスを過剰に保有したまま期日が到来してしまう場合には、利用されなかったコンピューティングリソース分の予約金が無駄になり、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローにマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、顧客からの販売料金回収サイクルと前払費用負担のギャップを注視し、利用実態の把握を強化していく方針です。

 

(3)組織運営に関するリスク

① 情報管理体制についてのリスク

 当社グループでは、業務に関連して多数の顧客企業の情報資産を取り扱っており、重要な情報資産について、漏えい、改ざん又は、不正使用等が生じる可能性が完全に排除されているとはいえず、何らかの要因からこれらの問題が発生した場合には、当社グループの社会的信用の失墜、損害賠償責任の発生等により当社経営に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、情報セキュリティに関連する各種規程を整備するとともに、外部からの不正アクセス、コンピュータウイルスの侵入防止等についてシステム的な対策を講じて情報セキュリティ事故の未然防止に努めております。

 

② 小規模組織リスク

 当社グループは、2023年11月30日現在において従業員23名にとどまっており、小規模な組織であると認識しております。現状はこれに応じた内部管理体制及び業務執行体制となっておりますが、今後の成長に伴う事業規模の拡大によっては、内部管理体制とのアンバランスが生じ、適切な業務運営が困難となり当社グループの事業活動に支障を来し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 財務報告に係る内部統制に関するリスク

 内部統制報告制度のもとで、当社グループの財務報告に係る内部統制に重要な不備が発見される可能性は否定できず、将来にわたって常に有効な内部統制を整備及び運用できる保証はありません。さらに、内部統制には本質的に内在する固有の限界があるため、今後当社グループの財務報告に係る内部統制が有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制に重要な不備が発生した場合には、当社グループの財務報告の信頼性に一定の影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループは、財務報告の信頼性に係る内部統制の整備及び運用を重要な経営課題の一つとして位置づけ、グループを挙げて管理体制等の点検・改善等に継続的に取り組んでおります。

 

(4)その他のリスク

① 支配株主との関係についてのリスク

 当社創業者である中村けん牛は支配株主に該当しております。中村けん牛氏は、二親等内の親族との合算分を含めて、2023年11月末時点で当社株式の50%超を保有しております。同氏は、安定株主として引き続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。当社といたしましても、同氏は安定株主であると認識しておりますが、今後、市場で当該株式の売却が行われた場合、又は売却の可能性が生じた場合には、当社株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。さらに、市場での売却ではなく特定の相手先へ譲渡を行った場合には、当該譲渡先の保有株数や当社に対する方針によっては、当社グループの経営戦略等に影響を与える可能性があります。

 

② 訴訟・係争リスク

 当社グループでは、当連結会計年度末現在、重要な訴訟事件等に該当するものはございません。しかしながら、今後重要な訴訟等が提起された場合は、当社グループの業績に一定の影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループでは、事業活動の遂行に際し、内部統制の充実やコンプライアンスの強化に努めております。

 

③ 自然災害等のリスク

 地震や台風等の自然災害、未知のコンピュータウイルス、テロ攻撃またはシステムトラブルといった予見し難い事由により、当社グループの事業活動に必要なサービス基盤が稼働できない状況になった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、サービスを安定的に提供するためのシステム運用管理体制を整備し、自然災害等が発生した場合に備え、パブリッククラウドを利用しております。また、データ二重化対策、稼働状況のモニタリング等を実施することにより、自然災害等への対応を図っております。

 

④ 配当政策についてのリスク

 当社は、株主利益の最大化は重要な経営目標の一つとして認識しており、株主への利益配当につきましては、業績の推移・財務状況、今後の事業・投資計画等を総合的に勘案し、バランスを取りながら検討していく方針としております。依然として成長拡大の過程にあり、経営基盤の長期安定に向けた財務体質の強化及び事業の継続的な拡大発展を目指すために、内部留保の充実が重要であると考え、会社設立以来配当は実施しておりませんでしたが、2023年11月期においては、内部留保の確保、財政状態、経営成績等の状況等を総合的に勘案するとともに、株主に対する継続的な利益還元の実施が可能であるとの判断のもと、剰余金の配当を実施いたしました。今後につきましても、継続的な利益還元の実施を行っていく方針でありますが、事業環境の急激な変化などにより、目標とする利益還元の実施ができなくなる可能性があります。

 

⑤ 資金使途についてのリスク

 当社グループの株式上場時の公募増資による調達資金の使途につきましては、主に「KUSANAGI Stack」の開発費、事業拡大のための技術系人材の採用・育成費、当社グループのブランド認知向上及び顧客基盤拡大のための広告宣伝費用、借入金の返済等に充当する計画です。

 しかしながら、急速に変化する経営環境に柔軟に対応していくため、現時点の資金使途計画以外の使途へ充当する可能性があります。また、当初の計画に沿って資金を使用したとしても、想定どおりの投資効果を上げられない可能性があります。

 

⑥ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化リスク

 当社は、役員及び従業員に対して、ストック・オプションとして新株予約権を付与しております。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、これらの新株予約権が権利行使された場合、当社の株式価値が希薄化し、株価形成に影響を与える可能性があり、このようなリスクが中長期的に顕在化する可能性があると認識しております。なお、2023年11月末時点における新株予約権による潜在株式数は272,400株であり、発行済株式総数3,459,000株の7.9%に相当します。

 

⑦ 当社株式の流動性に関するリスク

 当社は、株式会社東京証券取引所への上場に際して公募増資及び売出しを行うなど、当社株式の流動性の確保に努めております。今後も大株主からの売出し協力や当社の事業計画に沿った成長資金の公募増資による調達等により、流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は1,443,823千円となり前連結会計年度末に比べ777,147千円増加いたしましたこれは主に新株発行等により現金及び預金が767,341千円増加したことによるものであります

 固定資産は58,342千円となり前連結会計年度末に比べ4,092千円減少いたしましたこれは主に無形固定資産が3,238千円減少したことによるものであります

 この結果総資産は1,502,165千円となり前連結会計年度末に比べ773,055千円増加いたしました

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は148,924千円となり前連結会計年度末に比べ89,756千円減少いたしましたこれは主に未払法人税等が44,682千円1年内返済予定の長期借入金が26,004千円減少したことによるものであります

 固定負債は54,279千円となり前連結会計年度末に比べ102,166千円減少いたしましたこれは長期借入金が102,166千円減少したことによるものであります

 この結果負債合計は203,203千円となり前連結会計年度末に比べ191,922千円減少いたしました

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は1,298,961千円となり前連結会計年度末に比べ964,977千円増加いたしましたこれは主に新株発行により資本金が389,394千円資本剰余金が389,394千円親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が185,376千円増加したことによるものであります

 この結果自己資本比率は86.5%(前連結会計年度末は45.8%)となりました

 

② 経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は新型コロナウイルス感染症の社会的影響が薄れる一方で物価高による個人消費の低迷や内需のもう一つの柱である設備投資においても製造業を中心として機械投資に弱さが出ており緩やかな成長にとどまるなど厳しい状況が継続しております

 一方で当社を取り巻く国内ITサービス市場においては経済産業省の推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)に関連するシステム投資が継続してその存在感を強めております政府情報システムの構築・整備においてはクラウドサービスの利用を第1候補(デフォルト)とするクラウド・バイ・デフォルト原則が方針とされておりますデジタルトランスフォーメーション(DX)のトレンドが進展する中生産性の向上や業務の効率化を目的としてクラウドサービスを優先的に採用するクラウドファースト戦略を実行する企業が増加しており2022年の国内クラウドサービス市場規模は前年比37.8%増の5兆8,142億円となりました2022年~2027年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は17.9%で推移し2027年の市場規模は2022年比約2.3倍の13兆2,571億円になると予測されております(出所:IDCJapan株式会社国内クラウド市場用途別売上額予測2022年~2027年

 このような経営環境のもと当社は超高速CMS実行環境KUSANAGIをはじめとしたサーバ高速化ソリューションKUSANAGI StackでKUSANAGI Stack事業を展開し一気通貫でWebサイトの保守・運用を行うKUSANAGIマネージドサービスの拡大を図ってまいりました

 以上の結果当連結会計年度における当社グループの業績は売上高877,193千円(前年度比13.8%増)営業利益287,436千円(前年度比3.1%減)経常利益265,884千円(前年度比8.9%減)親会社株主に帰属する当期純利益185,376千円(前年度比6.2%減)となりました

 なお当社グループの事業セグメントはKUSANAGI Stack事業の単一セグメントであるためセグメント別の記載は省略しております

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下資金という)は前連結会計年度末に比べ767,341千円増加し当連結会計年度末には1,326,025千円となりました

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は155,893千円(前連結会計年度は246,633千円の獲得)となりましたこれは主に税金等調整前当期純利益269,034千円等によるものであります

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は20,707千円(前連結会計年度は12,962千円の使用)となりましたこれは主に敷金の差入による支出17,625千円等によるものであります

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果獲得した資金は630,179千円(前連結会計年度は32,819千円の獲得)となりましたこれは主に株式の発行による収入778,789千円等によるものであります

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループは、生産活動を行っておりませんので、記載しておりません。

 

b.受注実績

 当社グループは、受注実績の記載になじまないため、記載しておりません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。なお、当社グループはKUSANAGI Stack事業の単一セグメントであるため、サービス別に記載しております。

サービスの名称

当連結会計年度

(自 2022年12月1日

  至 2023年11月30日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

KUSANAGIマネージドサービス

607,264

121.8

クラウドインテグレーションサービス

137,141

79.0

ライセンス販売

132,787

134.5

合計

877,193

113.8

 (注)1.金額は販売価格によっております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2021年12月1日

至 2022年11月30日)

当連結会計年度

(自 2022年12月1日

至 2023年11月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

住友不動産株式会社

152,448

19.8

202,597

23.1

3.最近2連結会計年度のKUSANAGIマネージドサービスの実績は次のとおりであります。

 

前連結会計年度

(自 2021年12月1日

至 2022年11月30日)

当連結会計年度

(自 2022年12月1日

至 2023年11月30日)

MRR(百万円)

51

48

顧客数(社数)

114

109

 

新規顧客数

10

 

解約顧客数

10

14

顧客単価(千円)

363

445

解約率(%)

0.7

1.0

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 文中、将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積り及び判断が行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なる場合があります。

 当社グループが連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 なお、当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 

 

(固定資産の減損)

 当社グループは「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しており、資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象(減損の兆候)がある場合は、回収可能性を評価し、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上する可能性があります。固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しています。このうち、将来キャッシュ・フローは、中期経営計画を基礎として、資産グループの現在の使用状況等を考慮し見積っております。中期経営計画の見積期間を超える期間の将来キャッシュ・フローは、中期経営計画を基礎として、それまでの計画に基づく趨勢を踏まえた一定の仮定をおいて見積っております。

 これらの仮定は、経営者が最善と判断した見積りに基づいて決定しておりますが、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更が生じた場合には、固定資産の減損損失を認識し、翌連結会計年度以降の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

1)財政状態の分析

 前述の「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

2) 経営成績の分析

(売上高、売上総利益)

 顧客単価の増加に伴う「KUSANAGIマネージメントサービス」売上の増加、既存ライセンスのアップセルなどに伴う「ライセンス販売」売上の増加等があった結果、売上高は877,193千円(前年同期比13.8%増)、売上総利益は577,209千円(前年同期比4.8%増)となりました。サービス別の売上高につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ④ 生産、受注及び販売の実績」に記載しております。

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 販売費及び一般管理費は、主に営業及びマーケティング施策としての支出が増加したことや、外形標準課税の計上に伴い、289,772千円(前年同期比13.9%増)となりました。その結果、営業利益は287,436千円(前年同期比3.1%減)となりました。

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

 営業外収益については、153千円(前年同期比51.4%減)となりました。営業外費用については、主に上場関連費用が増加したことにより、21,705千円(前年同期比327.0%増)となりました。その結果、経常利益は265,884千円(前年同期比8.9%減)となりました。

(特別利益、特別損失、税金等調整前当期純利益)

 特別利益については、関係会社株式を売却したことに伴い、関係会社株式売却益が3,201千円発生しました。特別損失については、有形固定資産を除却したことに伴い、固定資産除却損が51千円発生しました。その結果、税金等調整前当期純利益は269,034千円(前年同期比7.8%減)となりました。

(法人税等、親会社株主に帰属する当期純利益)

 主に法人税、住民税及び事業税の減少に伴い、法人税等は83,657千円(前年同期比11.2%減)となりました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は185,376千円(前年同期6.2%減)となりました。

 

3) キャッシュ・フローの分析

 前述の「(1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、クラウドの購入資金の他、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。なお、当社グループの資金の源泉は主に営業活動によるキャッシュ・フローによるものであります。

 

④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは、「ストック型ビジネスの売上高」と事業の収益力を示す「売上高経常利益率」を重要な指標と位置付けております。ストック型ビジネスは当社のビジネスモデルの中心であり、また売上高経常利益率は当社グループ内で開発してきた知的資本や自動化の仕組み(ハイパーオートメーションの導入による工数や作業量の低減など)の効果が出てきており、他社と大きな差別化ができていることの証明であるため、これら2つの指標を重要指標と位置付けております。

最近2連結会計年度における主な経営指標は以下の通りであり、引き続き対処すべき経営課題の改善を図りながら、経営戦略を推進してまいります。

経営指標

2022年11月期

(前連結会計年度実績)

2023年11月期

(当連結会計年度実績)

売上高(千円)

770,988

877,193

内 ストック型ビジネス(千円)

597,321

740,051

経常利益(千円)

291,774

265,884

売上高経常利益率(%)

37.8

30.3

※ストック型ビジネスはKUSANAGIマネージドサービスとライセンス販売の合計値となります。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の通り、事業内容や外部環境、事業体制等、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

 そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、優秀な人材を確保し特定の技術並びにマーケットに偏らないサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行って参ります。

 

⑥ 経営戦略の現状と今後の見通し

 経営戦略の現状と今後の見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

⑦ 経営者の問題意識と今後の方針について

 当社グループが属するクラウド市場は、「クラウドファースト」という言葉が浸透しつつあり、本格的な普及期に入ったものと認識しております。

 また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「DX白書2023」によると、日本でDXに取組んでいる企業の割合は2021年度調査の55.8%から2022年度調査は69.3%に増加し、2022年度調査の米国の77.9%に近づいており、この1年でDXに取組む企業の割合は増加しているとの調査結果が示されております。DX取組みの増加は、クラウドコンピューティングの活用やAI技術による高度な自動化への取り組みを推進させるものと考えております。

 このような状況下において、当社グループがさらなる成長を実現し、持続的に成長していくために、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の内容について重点的に取り組んでいく方針であります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 

(1)定期建物賃貸借契約

 当社は2023年4月13日開催の取締役会において本社移転に関する定期建物賃貸借契約を締結することを決議 し2023年4月18日付で定期建物賃貸借契約を締結いたしました

 本社の移転の概要につきましては以下のとおりであります

 

1.新本社所在地  東京都千代田区一番町8番地 住友不動産一番町ビル1階

 

2.移転時期  2024年3月6日

 

3.移転理由

(1)会社の成長に伴い将来的に従業員が増えることが予測されるため

(2)社内コミュニケーションを改善しチーム間の連携を強化するため

(3)新たな広いオフィスに移転することにより会社のブランドイメージを向上させ採用を有利にするため

(4)当社得意先とのより一層の関係強化を図るため

 

(2)業務提携契約及び技術支援

相手方の名称

契約内容

契約締結日

契約期間

GMOインターネットグループ株式会社

・当社の有する登録商標[WEXAL」「Page Speed Technology]の国内の共用レンタルサーバー領域における独占的な利用許諾及び国際出願済み特許[ウェブコンテンツの自動表示制御方法およびウェブコンテンツの自動高速表示制御方法]の国内の共用レンタルサ ーバー領域における独占的な使用実施

・広告宣伝GMOインターネットグループ株式会社による事例許諾等による相互のブランド力の向上

2023年4月28日

2023年5月1日から

2024年4月30日まで

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループは技術、知的資本こそが現代の情報技術社会における企業競争力・優位性の源泉であると考えており、その開発に経営資源を集中させる方針であります。新しい技術、知的資本は社会的価値へ転嫁され、当社グループ自身の社会的価値も永続的になると考えております。

 コアとなる技術、知的財産権を開発し、それらを十分に活用できる分野にフォーカスし、その分野でNo.1の位置にポジショニングすることを目指し、超高速CMS実行環境「KUSANAGI」およびオペレーティングシステム、処理エンジン、AIにより構成する「KUSANAGI Stack」の開発、およびハイパーオートメーションに関わる各種技術の開発を主要なテーマとして研究開発活動をおこなっております。

 研究開発体制といたしましては、企画開発部が中心となり四半期・当月の開発計画を策定したうえで、技術のトレンドや顧客ニーズを遅延なく取り入れ、計画に反映できるようつとめております。また、人材開発部において、ハイパーオートメーションに関わる各種技術の開発も実施しております。これは当社がAIを人材としてとらえているためであります。

 当連結会計年度では、前年度に続き主に「KUSANAGI」と「WEXAL® Page Speed Technology®」および戦略AI「David」の機能拡充を行いました。また、2019年に提供を開始した「WEXAL® Page Speed Technology®」および戦略AI「David」に関連する技術として「ウェブコンテンツの自動高速表示制御方法」に関する国際特許2件を出願しております。

 なお、当連結会計年度の研究開発費は22,800千円となっております。