文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「リアルなITコミュニケーションで豊かな社会形成に貢献する」ことを経営理念とし、一部の先進企業だけでなく、全ての企業にすぐれたITのメリットを提供することを目指しております。この経営理念を実践するため具体的には以下の三つを行動指針としております。
①柔軟な思考と発想で、次世代のニーズをつかむ
②ゼロから何かを生み出す喜びをお客様とともに
③一人ひとりがパイオニア精神を持ち続けること
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、技術革新のスピードが速く、常に革新的な製品・サービスが求められるIT業界に属しております。そのような状況の中、当社は研究開発や難易度の高い開発を受託することで社内に技術を蓄積し、技術的優位性を維持しながら、市場ニーズに応じた革新的な製品・サービスを適切な時期に市場に投入することで、販売価格がリーズナブルながらも高い利益率を確保することを目標としております。
具体的な経営指標としては、売上高成長率及び売上高経常利益率の向上に努めてまいります。当連結会計年度の売上高成長率は1.5%(前連結会計年度11.2%)、売上高経常利益率は22.2%(前連結会計年度22.9%)となっております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
2030年までに国内グループウェアのトップブランドとしてのポジションと評価を確立し、シェアNo.1、累計1000万ユーザーを目指してまいります(2023年1月末時点の販売累計ユーザー数:484万ユーザー)。当社グループの強みである信頼のある高い技術力、先進的なITの実用化に対するいち早い取り組みをさらに強化・挑戦し続けてまいります。
事業構造としましては、ソフトウエア事業においてクラウドサービス、サポートサービスの安定したストック型ビジネスに、当社が得意とするエンタープライズ向け製品・サービスのシェアを伸ばすことで、安定的な収益モデルを堅実に成長させるとともに、システム開発サービス事業とのシナジーの追求や海外子会社による新たな収益事業の立ち上げや海外販売にもチャレンジしてまいります。
(4) 経営環境及び対処すべき課題
インターネット関連技術は、技術の進歩が著しく、それに応じて業界標準及び利用者ニーズが急速に変化するなど当社の事業環境は日々変化しております。ソフトウエア事業においては、多様なユーザーニーズに応えるためクラウドサービスおよびライセンス(オンプレミス)の双方で販売を行っておりますが、クラウドサービスの利用が一般的に拡大していることから、今後もクラウドサービスの売上は安定的に成長すると想定しております。この結果、ソフトウエア事業の売上に占めるクラウドサービスの割合は今後も増加していくものと考えております。ライセンスについては、クラウドサービスの利用が広がっているものの、大規模ユーザーにおいては、運用環境が整備されていることや価格面からライセンスを選択する傾向が当面継続すると想定しております。このような中、当社製品は、大規模ユーザーで使用した場合の性能と価格面で特に競争力を有すると考えており、大規模ユーザー向けのライセンス販売は今後も安定的に推移すると見込んでおります。
高性能でありながら低価格な製品・サービスの開発を可能とすることができるのは、社内に蓄積された高い技術力に起因するものであると認識しております。そのため、今後も技術力を維持し、さらに高めていくためには優秀な技術者の採用・育成が重要でありますが、優秀な技術者の採用競争は激化しており、この傾向は継続するものと考えております。
当社は、職場におけるコミュニケーションや情報共有を円滑にすることに資するような製品・サービスの開発を行ってまいりました。一方で、コロナ禍を契機としたリモートワークの拡大による職場という概念自体の変化、働き方に対する意識の変化、デジタルトランスフォーメーション(DX)の急速な進展などの変化が生じており、こうした変化に対応した製品・サービスを継続的に開発していくとともに、既存製品・サービスの認知度を高めていくことが重要であると認識しております。
システム開発サービス事業においては、顧客企業のIT投資動向の影響を受けるものの、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進など競争力を確保するためのIT投資は当面底堅く推移するものと想定しております。このような中、システム開発サービス事業の売上は当面安定的に推移すると想定しておりますが、人員等の制約によりボリュームを大きく増加させることは現実的ではなく、また、将来的にはビジネススピードを重視し内製化が進むことも想定されるため、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に求められる技術力を蓄積し、より付加価値の高いサービスの提供にシフトしていくことが重要であると認識しております。
このような事業環境の中、当社グループが継続的に事業規模を拡大させていくためには、下記の課題への対応が必要であると考えております。
① クラウドサービスの安定的・効率的な運用体制の構築・維持
ソフトウエア事業で展開しているクラウドサービスは、ソフトウエア事業の売上の6割を超える規模に成長しており、中期的に安定的な継続成長を見込んでおります。今後も利用者の増加が見込まれる中、クラウドサービスを安定的に提供するためには、計画的なサービス基盤拡大と、保守・運用体制の充実を図ることが重要であります。一方で、バージョンアップ作業の確実かつ効率的な実施、サービス運用基盤の集約などによる効率化など、クラウドサービスを効率的に運用することも必要となります。安定性を重視しながらも効率的なクラウドサービス運用を行うため、サービス運用技術者の増強、チームの増強を図る他、データセンターとの連携を一層強化し、必要な体制を十分に整備するとともに、今後のサービス提供について、サービス基盤設計や運用設計に取り組んでまいります。
② 人材の確保・育成
当社が属する業界において優秀な人材を確保することは、企業の発展、成長に欠かせない要件となっております。当社は、先進的なITの実用化に挑戦し続けることによって、当社の強みである信頼のある高い技術力をさらに強化し、日本屈指のソフトウエア技術力を持つ会社となることを目指しております。この目標に向けて、当社においては、継続的に新卒採用を行い、その後の技術者等育成に注力してまいりました。今後も新卒採用を中心に人材採用を行い、優秀な人材へと育成していくという基本方針は変わりませんが、我が国は少子高齢化が進み、若い人材の不足は今後一層深刻となり、新卒採用による人材、特に技術者の確保が困難になっていくことが見込まれることから、採用活動の充実、強化に加え、即戦力としての中途採用による技術者の確保・拡大にも努めてまいります。
また、従業員が仕事を通じて自己実現を果たし、従業員満足度が高く、従業員が誇れる会社となるべく継続的に組織、人事制度を見直してまいります。
③ 認知度の向上
当社が今後も成長を続けていく上では、当社の認知度を向上させていくことが重要であると考えております。当連結会計年度の第4四半期会計期間から開始したテレビコマーシャル等を活用した当社製品・サービスの認知度向上に引き続き取り組むとともに、優秀な人材を採用し育成していくために企業としての認知度、さらにはIR・広報活動の強化による投資家への認知度向上に取り組んでまいります。
④ 新たな顧客を創造する新製品・新サービスの開発・提供
スマートフォンやタブレットの普及拡大やクラウドコンピューティング市場の発展、AIやIoT技術の発展、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により大きく変化した働き方などに対応した新製品・新サービス提供の重要性が高まっております。これらの変化に対応するため、付加価値機能の追加などによる既存製品・サービスの強化充実、顧客ニーズを満たす新製品・新サービスの開発に取り組んでまいります。
⑤クロスセルの推進による顧客単価の向上
当社は主力製品・サービスとしてグループウェアdesknet’s NEOを提供しておりますが、この他カスタムメイド型業務アプリ作成ツールのAppSuite、ビジネスチャットのChatLuckなどを提供しております。AppSuiteのクラウドサービスの売上高は前年比45.8%増と大きく増加しておりますが、利用ユーザー数はdesknet's NEOのクラウドサービスの10%未満となっております。AppSuite、ChatLuckともに、既存のdesknet’s NEOユーザーへのクロスセルの推進や組織の一部で利用されているようなお客様での利用ユーザー範囲の拡大等に注力することで、顧客単価の向上に取り組んでまいります。
⑥ ESG・SDGsへの取り組み
当社が中長期的に持続的な成長を実現するためには、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点を重視した企業経営を推進し、当社の事業活動を通じてSDGs(持続可能な開発目標)など社会的課題解決に取り組むことが重要であると考えております。
当社は、「経営理念」、「ビジョン」、「使命」を体現し、持続可能な社会の発展に貢献することを「サステナビリティ方針」としております。この「サステナビリティ方針」に基づき、環境・社会課題を解決し、当社の持続的成長を果たすため、当社では以下の9つを経営重要課題(マテリアリティ)として特定いたしました。
1. 健康で生産的な働き方の実現支援
2. DXを通じた顧客と地域経済へのエンパワーメント
3. 顧客の事業継続リスク軽減
4. 気候変動リスクへの対応
5. デジタル技術を活用したオープンイノベーションによる事業開発
6. 当社ならではのデジタル人材の育成と多様化
7. 健康で生産的な働き方の追求
8. 安全安心な製品の提供
9. 持続可能な経営基盤の構築
今後も、当社の事業活動を通じて上記の経営重要課題への取り組みを推進し、気候変動に係るリスク等については、TCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく情報開示を行うことでステークホルダーの皆様との信頼関係の構築に努め、持続可能な社会の発展に貢献することで企業価値の向上に努めてまいります。
以下において、当社グループの事業展開その他に関してリスク要因となり得る主な事項及び投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しております。
なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅したものではありません。
(1) システムダウン及び情報セキュリティに係るリスクについて
当社グループがクラウドで提供しているソフトウエアは、サービスの基盤をインターネット通信網に依存しております。従って、自然災害や事故によりインターネット通信網が切断された場合には、クラウドサービスの提供が不可能となります。また、予想外の急激なアクセス増加による一時的な過負荷によるサーバーダウンや、データセンターにおける障害等により、当社グループのクラウドサービスが停止する可能性があります。このようなシステム障害等が発生し、サービスの安定的な提供が行えないような事態が発生した場合には、当社グループの業績の低下につながる可能性があります。また、コンピューターウィルスの混入や外部からの不正な手段によるサーバー内への侵入による顧客情報等の漏洩、役職員の過誤等による重要なデータの消去等の可能性があり、このような事態が発生した場合には、当社グループに直接的・間接的な損害が発生する可能性があるほか、当社グループのクラウドサービスへの信用が失墜し、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、上記のリスクに対し、自然災害や停電や火災等の災害に対する耐性やセキュリティ面を慎重に検討した上で、サービス基盤として使用するデータセンターを選定するとともに、複数のデータセンターを利用してリスクの分散を図っております。また、定期的にバックアップ・データを確保して、非常時において当該データを復元し、できる限り速やかにサービスを再開できる体制を整備することで、非常時におけるリスクの軽減を図っております。
(2) 技術者の人材確保と育成について
当社グループは、継続的に技術者の新卒採用を行い技術者の育成に努めております。しかしながら、技術者の採用需要の高まりにより、新卒採用で優秀な人材を適切に確保することの困難性が高まっております。人材の確保及び育成が計画通りに進まなかった場合には、当社グループの事業展開に支障が生じ、当社グループの事業成長及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、上記のリスクに対して、新卒採用方法の見直しを図るとともに、ダイレクトリクルーティング・リファーラル採用の活用、インターンシップへの取組み等により採用を強化しております。また、在籍者については、社内研修内容の改良・改善を図るとともに、外部研修等の活用により人材育成に努めることでリスクの軽減を図っております。
(3) 特定人物への依存について
代表取締役である社長齋藤晶議(戸籍名:齊藤章浩)は、当社グループの創業以来の最高経営責任者であり、事業の立案や運営、開発活動の遂行等についてリーダーシップを発揮しており、不慮の事故等何らかの理由により当人が当社グループの事業展開に関与することが困難になった場合には、当社グループの事業及び業績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループでは、上記のリスクに対し、属人的な経営体制を改めるために、役員及び幹部社員の情報共有や権限の委譲、業務分掌に取り組んでおり、同氏に過度に依存しない経営体制の整備をすすめることでリスクの軽減を図っております。
(4) 知的財産権について
当社グループはIT業界に属しており、知的財産権の保護については重要な課題であると認識しております。当社グループは、製品・サービスの開発にあたりオープンソースソフトウエアを積極的に活用しておりますが、オープンソースソフトウエアについては、ライセンス条件等が不明確なことがあることなどから、製品・サービスの開発過程等において意図しない形で、第三者の知的財産権等を侵害する可能性があります。そうした事態が生じた場合、当該第三者より損害賠償の訴訟等が提起され、不測の損害が生じる可能性があります。
当社グループでは、上記のリスクについて、社内担当部門で慎重に調査を行うとともに、必要に応じて専門家と連携を取り調査可能な範囲で対応を行うことでリスクの軽減を図っております。
(5) 法的規制について
現時点において、当社グループの事業展開上の障害となるような法的規制はないと認識しておりますが、「個人情報の保護に関する法律」、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)」など当社グループの事業に関連する現行法令の拡大や新法令の制定により、当社グループの事業活動の領域が制約を受ける可能性があり、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループでは、上記のリスクについて、法令改正の動向などの情報収集を適宜行い、適時に対応できるようにすることによりリスクの軽減を図っております。
(6) 海外事業の展開について
当社グループでは、海外事業を当社グループの中長期的な成長機会と位置付けております。海外の連結子会社3社につきましては、新型コロナウイルス(COVID-19)による営業活動の影響などに伴い当初の計画よりも事業の立ち上げが遅れております。2023年1月期中より営業活動を本格的に再開することが可能となりましたが、今後、事業の立ち上げが計画通りに進展しない場合には、収益化が遅延し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、海外事業の拡充に伴って、法律・規制・租税制度の予期しない変更や社会的混乱など、各国における諸事情の変化や為替などの市場動向が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、上記のリスクについて、海外子会社の経営陣となっている当社従業員等を中心に経営状況及び事業環境を適時に把握し、必要に応じて当社取締役会等において検討してモニタリングすることで、リスクの低減に努めております。
当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を適用しております。そのため、① 経営成績、② 財政状態及び③キャッシュ・フローの状況における前年同期及び前連結会計年度末との比較は、当該会計基準等を適用する前の前連結会計年度の連結財務諸表を基礎に算定しております。
① 経営成績
当連結会計年度における我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症による影響を受けながらも徐々に経済社会活動の制限が緩和され、景気は緩やかに持ち直しの動きがみられました。しかしながら、ウクライナ情勢の長期化、エネルギー価格や原材料価格の高騰、世界的な金融引き締めによる急激な為替変動など、先行きが不透明な状況が継続しております。
当社グループが属するIT業界におきましては、政府によるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や継続的な働き方改革への取組みに関連し、生産性向上のためのIT投資が継続するものと考えております。
このような状況の中、2022年3月に、組織内のテレワーク状況を可視化する「プレゼンス」機能を搭載したdesknet's NEOバージョン7.0をリリースいたしました。2022年7月には、ビジネスチャットChatLuckのバージョン5.0をリリースし、リアクション機能を新たに追加するとともにSAML認証に対応し、利便性の向上を図りました。2022年9月には、ノーコード業務アプリ作成ツールAppSuiteにプラグイン機能を追加し、手書き入力やリアクションなどの拡張部品を利用可能としたdesknet's NEOバージョン7.1をリリースいたしました。さらに、2023年1月に「トピック」機能等を新たに追加したChatLuckバージョン5.5をリリースいたしました。
また、2022年3月に、法人向けIT製品・サービス比較サイト「ITトレンド」が選出する「ITトレンド Good Product」にdesknet's NEOが選出されたことに加え、2023年1月には、IT製品比較・レビューサイト「ITreview」が主催する「ITreview Grid Award 2023 Winter」において当社主力3製品(desknet's NEO・ChatLuck・AppSuite)がアワードを受賞いたしました。グループウェアdesknet's NEOは16期連続、ビジネスチャットChatLuckは10期連続、ノーコードアプリ作成ツールAppSuiteは初受賞となります。
また、健康経営に取り組む法人として「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に3年連続で認定を受けました。
この他、2022年11月には、横浜市が募集した民間企業のデジタル技術を活用して行政サービスのDX化を進めるプロジェクト「YOKOHAMA Hack!」の第一回実証実験事業者に選定され、当社のノーコードアプリ作成ツールAppSuite及びグループウェアdesknet's NEOを活用し、横浜市と共同で「要配慮施設利用者の安全を守る避難確保計画の取組強化」の実証実験を開始いたしました。実証実験を通じて、災害時の避難確保計画の実効性の向上、避難訓練実施の実施率の向上、施設管理者や市担当課の作業負担の軽減等の実現に貢献するよう努めてまいります。
以上の結果、ソフトウエア事業の業績は堅調に推移いたしましたが、システム開発サービス事業においては、第3四半期連結会計期間まで主要顧客の体制縮小や退職等の影響により売上高の減少が継続いたしました。海外事業においては、米国子会社において新サービスの開発に注力し、関連する投資が増加いたしました。また、次年度において認知度向上のための広告宣伝費の増加等による課税所得の減少が見込まれることにともない、繰延税金資産の取崩し等を行った結果、当連結会計年度の税金費用が増加いたしました。これらを主な要因として、当連結会計年度における売上高は6,007,080千円(前年同期比1.5%増)、営業利益は1,241,167千円(前年同期比0.5%減)、経常利益は1,335,761千円(前年同期比1.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は812,641千円(前年同期比6.2%減)となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により、当連結会計年度の売上高は4,260千円増加し、売上原価は1,524千円減少し、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれ5,784千円増加しております。詳細は、連結財務諸表「注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
当連結会計年度におけるセグメント別の経営成績は以下のとおりであります。
(ソフトウエア事業)
a. クラウドサービス
クラウドサービスの主要サービス別の売上は以下のとおりであります。
クラウドにて提供する、desknet's NEOクラウドのユーザー数が順調に推移したことにより、同サービスの売上高は前年同期比234,923千円増加し、2,236,647千円(前年同期比11.7%増)となりました。前期は、ライセンス持込型サービスの終了に伴うdesknet's NEOクラウド版への移行ユーザーが多かった影響により、前年同期と比較すると増加率は低下しております。desknet's NEOクラウドの売上高は、2022年9月に公表いたしました連結業績予想の修正に織り込んだ見込どおりに推移いたしましたが、期初計画に対しては97%程度となりました。期中の状況を踏まえ、タクシー広告やテレビCMなど認知度向上のための施策を第4四半期連結会計期間に追加で実施いたしました。これら広告の効果測定は今後実施いたしますが、来期も認知度向上のための広告宣伝を従来以上に実施する予定であります。desknet's NEOクラウドの解約率(*1)は0.32%と低い水準を維持していることから、今後も安定的に推移するものと認識しております。また、AppSuiteクラウドはクラウドサービス全体に占める売上の割合はいまだ小さいものの、前年同期と比較して42,155千円増加し、134,276千円(前年同期比45.8%増)と順調にユーザー数が拡大し、年間売上が1億円を超えるサービスに成長しております。AppSuiteクラウドのユーザー数は当連結会計年度末時点においてdesknet's NEOクラウドのユーザー数の9%程度であることから認知度の向上やクロスセル等に注力することなどにより成長余力は大きいと認識しております。その他月額売上につきましては、おおむね前年同期とおおむね同水準の197,846千円(前年同期比1.0%増)となりました。その他役務作業等につきましては、主にASP事業者向けのカスタマイズが増加したことにより67,085千円(前年同期比13.0%増)となりました。
以上の結果、クラウドサービス全体での売上高は前年同期比291,075千円増加し、2,702,621千円(前年同期比12.1%増)となりました。
(*1)desknet's NEOクラウドのユーザーにおける「当月の解約により減少したMRR(*2)÷前月末のMRR」の当連結会計年度の平均で算出しております。
(*2)MRR(Monthly Recurring Revenue)は対象月の月末時点における継続課金ユーザーにかかる月額料金、もしくは年額料金の1/12の合計額で算出しております。
b. プロダクト
プロダクトの主要製品別の売上高は以下のとおりであります。
大規模ユーザー向けのdesknet's NEOエンタープライズライセンスにつきましては、第3四半期連結会計期間まではおおむね前年並みで推移しておりましたが、第4四半期連結会計期間における案件数が前年同期間に対して減少したため、前年同期比19.2%減の164,139千円と前連結会計年度の売上を下回る結果となりました。なお、2022年9月に公表いたしました連結業績予想の修正に織り込んだ見込みに対しては、おおむね見込どおりとなっております。desknet's NEOエンタープライズライセンスにつきましては、大規模ユーザーの企業様等では運用人員を含めた環境が整っていることが多く、クラウドでの利用よりも大規模ユーザーになるほどユーザー単価面でのメリットが大きいことや官公庁で継続的に需要が見込めることから、当面、desknet's NEOエンタープライズライセンスの需要が大きく減少することは想定しておらず、むしろ当社製品の強みが発揮できる領域であり、desknet's NEOクラウドとともに注力していくべきものと認識しております。
中小規模ユーザー向けのdesknet's NEOスモールライセンスにつきましては、クラウドサービスを選択されるお客様が増加傾向にあることに加え、収益認識会計基準の適用に伴い売上高の一部をサポートサービスの売上として、サポートの期間にわたって収益計上処理することとなった影響により、売上高は前年同期比11,023千円減少し、40,889千円(前年同期比21.2%減)となりました。desknet's NEOスモールライセンスにつきましては、クラウドサービスの利用が一般化してきているため減少傾向にあると認識しておりますが、100ユーザー以上のライセンスを中心に当面の間は需要が見込めると考えております。
AppSuiteライセンス及びChatLuckライセンスにつきましては、当連結会計年度において当社主力3製品を導入頂いた鎌倉市のようにdesknet's NEOエンタープライズライセンスとの同時購入をされることが多い傾向にあります。当連結会計年度においては、desknet's NEOエンタープライズライセンスの既存ユーザーにおける追加導入や追加ライセンスによりAppSuiteライセンスが前年同期比19,063千円増加の79,309千円(前年同期比31.6%増)となりました。一方、ChatLuckライセンスにつきましては、前年同期比9,932千円減少の38,440千円(前年同期比20.5%減)とおおむねdesknet's NEOエンタープライズライセンスの減少割合と同程度の減少となりました。
サポートサービスの売上高は、desknet's NEOのサポートサービスの売上高が前年同期比59,571千円増加し、689,683千円(前年同期比9.5%増)となったことに加え、AppSuiteのサポートサービスの売上高が前年同期比17,034千円増加し、45,778千円(前年同期比59.3%増)となったことなどを主な要因として前年同期比86,116千円増加し、801,083千円(前年同期比12.0%増)となりました。また、カスタマイズにつきましては、前連結会計年度のような大規模案件が減少したことを主な要因として、売上高は前年同期比95,594千円減少し、73,020千円(前年同期比56.7%減)となりました。
以上の結果、プロダクト全体での売上高は前年同期比12,005千円減少し、1,435,839千円(前年同期比0.8%減)となりました。
c. 技術開発
技術開発につきましては、積極的に受託開発を行う方針ではありませんが、主に従来からの継続案件の売上により売上高は前年同期比6,396千円増加し、73,961千円(前年同期比9.5%増)となりました。
以上の結果、ソフトウエア事業の売上高は4,212,421千円(前年同期比7.3%増)、セグメント利益は1,229,464千円(前年同期比5.5%増)となりました。なお、売上高の増加率に対し、セグメント利益の増加率が小さくなっているのは、研究開発費が前年同期比51,343千円増加していることを主な要因とするものであります。
(システム開発サービス事業)
システム開発サービス事業は、子会社である株式会社Pro-SPIREが展開する事業で構成されており、同社が長年培ってきたクラウドインテグレーション、システムインテグレーションのノウハウを基礎に技術者の育成を図り、先端技術を活用し新たな顧客ニーズを満たすシステムエンジニアリングサービスを主に提供しております。
当連結会計年度においては、主要顧客の体制縮小の影響及び退職等による人員減少により売上高は前年同期と比較して208,411千円減少いたしました。一方、売上原価も、売上高の減少に伴う協力会社への外注費用の減少及び人件費の減少を主な要因として188,306千円減少いたしました。また、販売費及び一般管理費は、主に人件費の増加により12,626千円増加いたしました。売上高の減少への対応につきましては、既存顧客への追加提案、新規顧客開拓に注力するとともに、従業員の定着を図るための施策の実施、キャリア採用の促進などに取り組んだ結果、第4四半期連結会計期間の売上高は第3四半期連結会計期間と比較して51,790千円増加し、前年同四半期に近い水準にまで売上高が回復いたしました。
以上の結果、システム開発サービス事業の売上高は1,815,662千円(前年同期比10.3%減)、セグメント利益は94,088千円(前年同期比25.8%減)となりました。
(海外事業)
海外事業は、海外子会社3社の事業で構成されており、現地企業向けにdesknet's NEOのライセンス販売、クラウドサービスの提供などを行っております。
ASEAN地域においてはdesknet's NEO及びAppSuiteを中心に販売活動を進めております。当社の子会社が活動を行っているマレーシア、タイにおきましては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う活動制限などにより前連結会計年度は営業活動が計画通りに行えておりませんでしたが、当連結会計年度は、本格的な営業活動の再開に向けて現地営業担当者の採用、マーケティングの見直し、現地展示会への出展等により案件の創出に注力いたしました。ASEAN地域の子会社2社につきましては、当連結会計年度中に単月黒字化が継続するようになることを目標として営業活動を行ってまいりましたが、ストック型の売上が計画どおりに進捗せず目標を達成することができませんでした。マレーシアではさらなる案件の創出、タイでは案件受注までの期間短縮化が課題となっております。
米国においては、現地の市場調査を踏まえ、新サービスの提供に向けて活動を継続している一方、当社からの受託取引は減少しております。
以上の結果、海外事業の売上高は9,822千円(前年同期比61.0%減)、セグメント損失は82,361千円(前年同期はセグメント損失45,306千円)となりました。なお、売上高の減少は、主に上記内部取引の減少に伴うものであります。
② 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は前連結会計年度末より738,089千円増加し、8,025,505千円となりました。これは主に、当期純利益を源泉として現金及び預金が822,957千円増加した一方で、金利の上昇に伴い債券の評価額が減少したことなどにより有価証券及び投資有価証券が41,317千円、回収により貸付金が24,599千円減少したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は前連結会計年度末より175,226千円増加し、2,297,594千円となりました。これは主に、クラウドサービス、サポートサービス等にかかる契約負債がユーザー数の増加に伴い、収益認識会計基準の適用に伴う科目振替の影響を考慮して実質120,237千円増加したことに加え、退職給付に係る負債が44,841千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は前連結会計年度末より562,862千円増加し、5,727,911千円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益が812,641千円計上された一方で、208,720千円の剰余金の配当を実施したことにより、利益剰余金が598,309千円増加したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は前連結会計年度と比較し857,991千円増加し、4,917,378千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は1,190,208千円(前連結会計年度は1,107,344千円の収入)となりました。収入の主な内容は税金等調整前当期純利益1,332,276千円、減価償却費の計上258,900千円、契約負債の増加120,237千円により資金が増加した一方で、法人税等の支払483,692千円により資金が減少したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金は174,402千円(前連結会計年度は326,334千円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の償還による収入137,910千円、保険積立金の払戻による収入33,539千円、貸付金の回収による収入24,599千円により資金が増加した一方で、無形固定資産の取得による支出231,375千円、投資有価証券の取得による支出110,000千円により資金が減少したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は207,261千円(前連結会計年度は255,828千円の支出)となりました。これは主に、配当金の支払208,794千円によるものであります。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
(注)1.各指標の計算方法は、次のとおりであります。
自己資本比率=自己資本÷総資産
時価ベースの自己資本比率=株式時価総額÷総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率=有利子負債÷営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ=営業キャッシュ・フロー÷利払い
2.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
3.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
4.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書におけるキャッシュ・フローを使用しております。
5.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っているすべての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
当社グループは受注開発を行っておりますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はありません。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示しますと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引は相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績や現状を勘案し合理的に判断しておりますが、実績の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a) 経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は前年同期比86,987千円増加し、6,007,080千円(前年同期比1.5%増)となりました。これは主に、ソフトウエア事業の売上高が前年同期比284,941千円増加し4,209,972千円(前年同期比7.3%増)となった一方、システム開発サービス事業の売上高が204,776千円減少し1,787,284千円(前年同期比10.3%減)となったことによるものであります。ソフトウエア事業の売上高は主に、クラウドサービスの売上高(セグメント間の内部売上高を含む)が291,075千円(前年同期比12.1%増)増加したことによるものであります。クラウドサービスの売上高増加は、当社の中核クラウドサービスであるdesknet's NEOクラウド版のユーザー数が堅調に推移したことを主な要因とするものであります。一方、システム開発サービス事業の売上高の減少は、主に主要顧客の体制縮小の影響及び退職等による人員減少によるものであります。
(売上原価)
当連結会計年度における売上原価は前年同期比115,808千円減少し、2,774,775千円(前年同期比4.0%減)となりました。これは主に、システム開発サービス事業において、売上高の減少に伴い外注費が減少したことを主な要因とするものであります。
この結果、当連結会計年度の売上総利益は前年同期比202,795千円増加し、3,232,305千円(前年同期比6.7%増)となりました。
(販売費及び一般管理費)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は前年同期比209,040千円増加し、1,991,138千円(前年同期比11.7%増)となりました。これは主に、人件費、広告広告宣伝費および研究開発費が増加したことによるものであります。
この結果、当連結会計年度の営業利益は前年同期比6,244千円減少し、1,241,167千円(前年同期比0.5%減)となりました。
(営業外損益)
当連結会計年度における営業外収益は前年同期比18,897千円減少し、95,600千円(前年同期比16.5%減)となりました。これは主に、保険解約返戻金が減少したことによるものであります。また、営業外費用は前年同期比203千円増加し、1,006千円(前年同期比25.4%増)となりました。これは主に、前連結会計年度において発生していた投資事業組合運用益が当連結会計年度は投資事業組合運用損となったことによるものであります。
この結果、当連結会計年度の経常利益は前年同期比25,345千円減少し、1,335,761千円(前年同期比1.9%減)となりました。
(特別損益、当期純利益及び親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における特別利益は保有していた外貨建債券の償還益35,899千円によるものであります。また、特別損失は、投資有価証券評価損37,813千円および固定資産の減損損失1,571千円によるものであります。さらに、法人税、住民税及び事業税(法人税等調整額を含む)は、次年度において認知度向上のための広告宣伝費の増加等による課税所得の減少が見込まれることにともない、繰延税金資産の取崩し等を行った結果、前年同期比125,567千円増加し、523,714千円(前年同期比31.5%増)となりました。
この結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比53,685千円減少し、812,641千円(前年同期比6.2%減)となりました。
(b) キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(c) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの主な資金需要は、中長期的な成長を図るための、従業員等の採用・育成に係る費用、人件費、認知度向上のための広告宣伝費、新製品開発のための研究開発費、その他営業費用などとなります。これらにつきましては、基本的に営業活動によるキャッシュ・フローや自己資金で対応していくこととしております。なお、現在の現金及び現金同等物の残高、営業活動から得る現金及び現金同等物の水準については、当面事業を継続していくうえで十分な流動性を確保しているものと考えております。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループは、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境の変化や組織体制の整備等、さまざまなリスク要因が当社の成長や経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社グループは、常に新技術の動向や市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保育成し、顧客ニーズを満たす製品・サービスを開発し提供していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因の低減を図ってまいります。
該当事項はありません。
インターネット関連技術は技術革新のスピードが早く、またそれに応じて業界標準及び利用者ニーズが急速に変化するため、新技術・新製品・新サービスが相次いで登場しております。そこで当社グループは、これらの新技術の習得に積極的に取り組み、顧客の求める質の高い新製品・新サービスを低価格で提供できるように研究開発に取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費の総額は