当第1四半期連結累計期間において、新たな事業等のリスクの発生、または、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
再生可能エネルギー市場では、米政権のパリ協定*1への復帰や欧州を始めとする主要各国におけるカーボンニュートラル*2宣言など、世界的に脱炭素化の動きが活発化しております。金融・世界経済に関する首脳会合(G20サミット)、第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)等の国際会議において、排出削減目標に関する詳細規定のルール化等に課題を残しながらも、脱炭素化の普及や技術革新を図るための政策・制度の確立や環境整備等は今後も進んでいくものと予測されます。金融資本市場においても、機関投資家を中心にESG投資やグリーンボンドへの需要が拡大しており、持続可能な開発目標(SDGs*3)との両輪で、RE100を目指す企業や、自社用の再生可能エネルギーの安価な調達のため遠隔発電施設を購入し自己託送を目指す企業など、地球環境温暖化の原因とされる温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギーを志向する企業が支持を集めております。
国内市場においても、2050年カーボンニュートラル*2宣言に続き、2030年度の温暖化ガス排出を2013年度比で46%削減する政府目標が示され、本年5月には、官民一体となった気候変動対策を促す改正地球温暖化対策推進法が成立しました。更に、第6次エネルギー基本計画においても、主力電源として再生可能エネルギーの導入に最優先で取り組む方針が示されるなど、環境にやさしいグリーンエネルギー由来の電力需要は、今後も高まるものと推測されます。
このような外部環境のなか、当社グループでは、「再生可能エネルギーの中核的グローバル企業」を目指し、脱炭素化社会の実現に貢献し続けることを経営目標としております。2030年までに国内・海外を合わせて保有発電容量1GW(原発1基分相当規模)、年間パネル製造目標8GWを成長戦略とする“2030年グループビジョン”を達成するため、「Abalanceグループ 中期経営計画(2022-24)」(本年10月18日付)を策定いたしました。
当第1四半期連結会計期間においては、主力の太陽光パネル製造事業にて、ベトナム現地での新型コロナウイルス感染症拡大に伴う外出自粛令等のため、VSUN社の工場稼働や製品出荷に一部影響を受けながらも、当社グループの継続的支援や現地生産・勤務体制の見直しなどを講じたことにより、同社の売上高は比較的堅調に推移いたしました。他方で、原油価格の高騰化に伴う製造用部材価格の値上がりや、世界的なコンテナ不足等を背景とする海上輸送費の高騰化等を主因とする追加的費用が複合的に発生したため、営業利益を大きく圧迫いたしました。足元の受注状況は好調な推移を示していることから、第2四半期以降は太陽光パネル製造事業の利益改善を見込んでおります。
グリーンエネルギー事業においては、太陽光発電所の販売、及び太陽光発電設備に係る物品販売のほか、前期中に売電を開始した福島市大波太陽光発電所、角田市太陽光発電所、花畑太陽光発電所(一部区画)に加え、新たに河口湖太陽光発電所が売電を開始するなど、保有発電所からの売電収入が業績を牽引しております。また、過年度における太陽光発電所工事請負契約に関して、工事受注者との合意に基づく解決金10億2千万円を収受しており、特別利益に計上しております。
この他にも、バーディフュエルセルズ合同会社において、水素を活用したエネルギー貯蔵システムの開発に着手したほか、PV Repower株式会社にてパネル廃棄問題や資源の有効活用を図るリサイクル・リユース事業を開始しております。
以上の結果、当第1四半期連結累計期間の売上高は9,492百万円(前年同四半期比393.5%増)、営業利益は254百万円(前年同四半期比34.7%減)、経常利益は172百万円(前年同四半期比48.7%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は789百万円(前年同四半期比310.7%増)となりました。
セグメント毎の経営成績については、次の通りです
1.太陽光パネル製造事業
世界の太陽光パネル市場は、その上位を中国企業が占めるなかで、ベトナム法人のVSUN社は、日系資本の世界的な太陽光パネルメーカーとして稀有な存在となっております。グループ内に、自動生産ラインを完備する太陽光パネルの製造機能を保有することは、太陽光発電に係るグローバルなサプライチェーンを形成し、垂直統合型のワンストップソリューションを展開するうえで、大きな強みとなっております。
VSUN社は、ベトナムのほか日本、ドイツ、中国、米国等に支社機能を有する拠点を持ち、再生可能エネルギーの世界的な需要拡大を受けて、主に産業用、家庭用太陽光パネルの欧州向け販売により業績を拡大させ、近年では米国市場への販売も伸長しております。VSUN社のパネル製造能力を更に高めるため、本年5月には、第3工場の設備投資の実行を決議し(年間生産能力1GW、総投資額12百万米ドル)、年間製造能力を2.6GWへと拡大しております。
2021年5月以降、ベトナム現地で新型コロナウイルス感染症が拡大し、ベトナム政府、地方行政当局による外出自粛令等の拡散防止策に伴い、VSUN社の工場稼働や製品出荷に一部影響を受けながらも、グループのWWB株式会社を中心とした継続的支援、及び現地生産・勤務体制の見直しなどの措置を講じました。同5-6月の状況と比較すれば、同年7月以降には、現地コロナ禍に伴う各種制限等は緩和傾向となり、VSUN社の売上高は比較的堅調に推移いたしました。前記の通り、利益面では原油価格の高騰化や、海上輸送費の高騰化等が複合的に発生したことから、営業利益の大きな圧迫要因となりました。
以上の結果、売上高7,398百万円、セグメント損失29百万円となりました。上記の収益圧迫要因は期首時点である程度想定されていたものであり、すでに部材調達価格交渉や調達先の見直し、更なる生産効率化等によるコスト改善、客先への価格転嫁交渉といった施策を進めております。また、新型コロナウィルス感染症の業績への影響も薄れつつあることから、改善活動の効果は単月業績に現れて来ております。
なお、太陽光パネル製造事業は前期の第2四半期から新規に連結したセグメントのため、前年同期の記載はございません。
2.グリーンエネルギー事業
近年、当社グループでは、WWB株式会社、株式会社バローズを中心に、太陽光発電所の販売は継続しつつ、安定収益確保のため、完工後も発電所を継続して保有するストック型ビジネスモデルを推進しております。太陽光発電所の販売、及びパネル、PCS、産業用及び住宅用蓄電池等の太陽光発電設備に係る物品販売のほか、既存の福島市大波太陽光発電所、角田市太陽光発電所、花畑太陽光発電所(一部区画)、湖西市太田ソーラーパーク、宮之浦太陽光発電所、勝間太陽光発電所、高梁太陽光発電所、国東太陽光発電所、及び風力発電所(陸上小型・北海道檜山エリア)などから売電収入を収受しております。当第1四半期連結会計期間においては、新たに河口湖太陽光発電所(2021年7月稼働、初年度通期売電収入:約6千万円見込)が売電を開始したほか、長嶺ソーラーパーク(2021年11月以降連系予定、初年度通期売電収入:約1.7億円見込)、大和町・大衡村太陽光発電所(2022年12月以降連系予定、初年度通期売電収入:約5.3億円見込)、神戸市太陽光発電所(買収案件)、蔵波太陽光発電所等の開発過程にある発電所について、計画的に開発を推進いたしました。ストック型ビジネスモデルを更に促進するため、発電所の取得を目的としたM&Aを積極的に活用していく方針です。
売電収入のほか、O&M収入も安定収益源として定着しており、WWB株式会社の実績に加え、株式会社バローズエンジニアリングにおいて、落雷対策に効果のあるアース線配線、施設内カメラの設置によるセキュリティの確保、RPAシステムを通じた異常点探知等のシステム完備により、本事業を引き続き推進いたしました。
海外事業では、ベトナム、台湾、カンボジア等、東南アジアの旺盛な電力需要に対して、現地企業との合弁等による事業参画のほか、環境省が実施する2019 年度「二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism:JCM)資金支援事業のうち設備補助事業*4」の公募案件の採択を受けて、カンボジア国内において日本政府協力の下、WWB株式会社は本案件を推進する予定です。
以上の結果、売上高1,852百万円(前年同四半期比8.1%増)、セグメント利益401百万円(前年同四半期比20.4%減)となりました。
3.IT事業
企業によるDX投資の本格化がIT市場の成長を支えるなか、5Gサービス、クラウドを活用したSaaSが注目を集めると共に、IoTの浸透によって集められたビッグデータをAIで解析し、業務効率・予測精度の向上による単純作業の効率化や人間への提案に転化させるなど、IT市場では新たな事業機会が創出されております。このような市場変化に対応するため、グループのAbit株式会社では、ナレッジ(情報・知識・経験)の共有や業務プロセスの再構築による労働生産性の向上を目的とした自社製品「KnowledgeMarket®」、Microsoft パートナーとしてMicrosoft 365を活用したDX支援サービス、その他RPA製品を活用した効率化・省力化サービス等を提供したほか、IoTを駆使したデータ計測から最適解を導出する支援等を実施いたしました。また、グリーンエネルギーの供給やRE100の推進等に関連してSDGsを志向する企業・自治体等のニーズについては、グループのグリーンエネルギー事業、ヘルスケア関連事業との連携を図りつつ事業を推進いたしました。
以上の結果、売上高9百万円(前年同四半期比45.5%増)、セグメント利益0百万円(前年同四半期はセグメント損失5百万円)となりました。
4.光触媒事業
光触媒の市場では、可視光を吸収して接触する有害物質などを分解する可視光応答型光触媒による新型コロナウイルスの不活化が確認されたとの報道があるなど、感染症対策における光触媒への期待が高まっております。
グループの日本光触媒センター株式会社では、大手不動産、総合商社、ホテル、大型イベント会場、ヘルスケア分野(病院・介護施設)等をメインに、温室効果ガスを排出しない“未来の街づくり”や、皆様が安心して日常生活を送れるようにする感染症対策を促進する「光触媒LIFE」事業へのフランチャイズ、代理店の募集を一層強化いたしました。
また、同社ではこれまで一般消費者向けの市場にはあまり見られなかった光触媒を活用した抗菌・抗ウイルス製品「blocKIN」を市場投入しており、本製品の抗菌・抗ウイルス効果は業界トップレベルにあるものと認識しております。光触媒の働きにより、菌・ウイルス成分を分解・除去し、消臭効果のほか、花粉にも作用して付着物近くの空間を浄化するなど、一般的な消毒剤とは異なる製品特長を有しております。更に、ハイラインの製品として、銀イオンを配合した「blocKINハイパー」の取扱いも開始いたしました。
以上の結果、売上高24百万円(前年同四半期比7.2%増)、セグメント利益5百万円(前年同四半期はセグメント損失2百万円)となりました。
(文中注釈)
(SDGsに関する取組みについて)
当社グループは、「安全・安心」でクリーンなエネルギーを提供し続けることを通じて、SDGs7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに)、SDGs11(住み続けられるまちづくりを)、SDGs13(気候変動に具体的な対策を)への貢献にコミットしております。また、光触媒事業等により、SDGs3(すべての人に健康と福祉を)についても積極的に取り組んでおります。当社グループのSDGsに関する近年の主な取り組みは、以下の通りです。
■再生可能エネルギーに係る事業実績(累計):3,440MW、CO2排出削減量約200万トン(VSUN社のパネル製造、及びWWB株式会社、株式会社バローズによる発電所の販売・保守管理、開発予定の案件を含む)。
■台風による各地の被災・停電の発生を受けて、折り畳み式軽量のポータブルバッテリー「楽でんくん」をリリース(WWB株式会社が自社開発し、熊本県人吉市、宮崎県えびの市、小林市、宮城県角田市等へ寄贈)。
■光触媒の塗布により殺菌・防虫効果のある、発電するビニールハウス「Maxar® EneZone」 等の開発。
■次世代エネルギーを担うと期待される水素を活用したエネルギー貯蔵システムの開発に着手(バーディフュエルセルズ合同会社)。
■パネルの廃棄問題への貢献、資源の有効活用のため、リサイクル・リユース事業の開始(PV Repower株式会社)。
■福島第一原発事故の発生時に寄贈協力を行った三一重工製、大型コンクリートポンプ車(大キリン)に係る交換部品の無償提供、技術協力を実施。近年では、バングラデシュなど東南アジアのインフラ整備のため、コロナ禍においても現地へ建設機械を投入(WWB株式会社 建機事業)。
■抗菌・抗ウイルス製品「blocKIN」に銀イオンを配合、抗菌・消臭効果を更に高めた製品「blocKINハイパー」の取扱いを開始(日本光触媒センター株式会社)。
■金融機関と共同で営む活動として、発行額の一部が地域の学校、医療機関、環境保護団体等へ寄付される仕組みのSDGs私募債、CSR私募債を発行。
■社外役員として、SDGsの専門家を登用(研究論文、教育研修等多数)。
■SDGs関連団体への加盟として、(外務省) JAPAN SDGs Action Platform、(内閣府)地方創生SDGs官民連携プラットフォーム、(JCLP)日本気候リーダーズ・パートナーシップ賛助会員ほか。
■社会活動イベントの支援・技術協賛(Peace On Earth、Earth Day等)。
当第1四半期連結会計期間末における総資産は42,702百万円となり、前連結会計年度末に比べて3,313百万円増加しました。事業の拡大に伴う売掛金や棚卸資産、前渡金等の増加が主な要因です。これに伴い流動資産合計は25,687百万円となり、前連結会計年度末対比で3,150百万円増加しております。
また、固定資産についても、自社保有発電所の開発・本稼働によって機械装置等が259百万円増加する一方で建設仮勘定が205百万円減少し、固定資産合計は前連結会計年度末対比164百万円増加し16,999百万円となりました。
負債合計は37,077百万円となり、前連結会計年度末に比べて2,466百万円増加しました。主に、投資資金需要や運転資金需要に対応した有利子負債の増加によるものです。なお、流動負債が19,896百万円と6,316百万円減少する一方、固定負債は17,181百万円と8,782百万円増加しております。これは、自社保有発電所の開発資金について、短期のつなぎ資金から長期割賦未払金等への借り換えを行ったことが主な要因です。
純資産合計は5,624百万円となり、前連結会計年度末対比846百万円増加しました。主として四半期純利益の計上による利益剰余金の増加によるものです。
以上の結果、自己資本比率は11.3%となり、前連結会計年度末の10.2%から1.1ポイント改善いたしました。
当第1四半期連結会計期間において、事業上及び財務上の課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
当第1四半期連結会計期間におけるグループ全体の研究開発費の金額は13百万円であります。
再生可能エネルギー業界においては、固定価格買取制度(FIT)の見直しが続いていますが、国内エネルギー供給の一翼を担う長期安定的な主力電源としての役割が期待され、エネルギーミックスの確実な実現と脱炭素化への取り組みを強化する国の方向性が示され、事業分野として今度も拡大していくものと考えられます。当社グループが推進するグリーンエネルギー事業は、ESG投資への関心の高まりや世界的潮流となっているSDGsの趣旨に沿った事業であります。今後も、自社保有に基づく安定収益を確保する収益構造の転換を進め、上場企業としての持続的成長を図っていく方針です。
(融資契約の締結)
連結子会社の株式会社バローズは、大阪厚生信用金庫との間で、大和町・大衡村太陽光発電所(宮城県大和町、大
衡村)の建設のための融資契約を2021年7月に締結しました。
(1)借入先 大阪厚生信用金庫
(2)借入額 1,600百万円
(3)資金使途 大和町・大衡村太陽光発電所(宮城県大和町、大衡村)の建設
株式会社バローズはまた、株式会社みずほ銀行との間で、長嶺ソーラーファーム(宮崎県宮崎市)の開発のため
の融資契約を2021年8月に締結しました。
(1)借入先 株式会社みずほ銀行
(2)借入額 1,200百万円
(3)資金使途 長嶺ソーラーファーム(宮崎県宮崎市)の開発