当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、バングラデシュの栄養失調問題を解決したいという想いのもと2005年8月に創業し、2005年12月に微細藻類ユーグレナの食用屋外大量培養を世界で初めて成功させたことを起点として、「人と地球を健康にする」というパーパスのもと、ヘルスケアやバイオ燃料などの様々な領域において事業を展開してきました。そして、創業15周年を迎えた2020年9月期に、当社グループのありたい姿として「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」を掲げ、サステナビリティを軸とした事業を展開し、持続的な成長を図っております。
当社は、植物と動物の両方の性質を備えたユニークな生物であるユーグレナを「バイオマスの5F」の「用途」分野に沿って事業化することを基本戦略としつつ、その事業化に伴い「ビジネスモデル」や「素材・技術」の多様化を進めてまいりました。「バイオマスの5F」とは、重量単価(例:1kgあたりの値段)が高い順からFood(食料)、Fiber(繊維)、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)、Fuel(燃料)の各分野へ展開することを指しております。ユーグレナは、その豊富な栄養素や独自成分であるパラミロンの機能性等を活かして、健康食品、化粧品、飼料として活用することが可能です。また、ユーグレナを低コストで大量に培養する技術を確立することで、ユーグレナに含まれる脂質成分をバイオ燃料原料として利用することも可能となります。
図 バイオマスの5F
現在は「バイオマスの5F」のうち、最も価格が高いFood(食料)を主として食品及び化粧品の「用途」で事業化しており、「ビジネスモデル」は、ヘルスケアでは直販を軸としつつ流通卸、OEM供給、原料販売のマルチチャネルで展開しております。また、培養技術の更なる向上・開発により原料の低コスト化を図り、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)及びFuel(燃料)等の「用途」での商業化を目指しております。このように当社グループは、ユーグレナ等の微細藻類の大量培養技術を出発点として、食品、化粧品、飼料、肥料、バイオ燃料等の様々な分野における事業展開と研究開発を行っております。
また当社グループは、ユーグレナの事業展開を通じて培った事業基盤と知見を活かして、「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」という当社グループのありたい姿の実現に向けて、サステナビリティを軸に、ユーグレナ以外の素材や藻類培養以外のテクノロジーを用いた事業展開、並びに既存事業の周辺領域や新規領域への事業進出を進めております。今後も事業成長を通じた社会問題の縮小を目指して、成長投資、パートナーシップ、M&Aも広く活用しながら、多角的に事業を展開してまいります。
(2)中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
当社グループは、2024年より代表取締役社長と2名の代表執行役員Co-CEOによる新経営体制に移行し、フィロソフィーの体現とパーパスの実現に向けて、売上・利益のサステナブルな成長を可能とする事業基盤を構築するべく、以下の3つの中期経営方針を推進しております。
①当社グループの原点である「研究開発力」と「ベンチャー精神」を軸とした競争力と独自性の再構築
当社グループが注力する「サステナビリティ」「バイオ燃料プラント」「微細藻類」に取り組む企業が増加しており、中長期的な競争優位性が損なわれるリスクが高まっております。2024年度からの執行体制の刷新に伴い、当社の原点である「研究開発力」と「ベンチャー精神」をサステナブルな成長の源泉と位置付け、研究開発と事業の連携強化を図るとともに、新たな収益の柱を立ち上げる挑戦を続けることで、競争力と独自性の再構築を進めていきます。
②「バイオマスの5F」と「両利きの経営」による既存事業の安定的拡大と新たな売上シーズの開拓
M&Aの活用により当社グループの事業規模は拡大したものの、事業ポートフォリオの分散が進み、競争の激化等も相まってオーガニック成長が鈍化しつつあります。上場時に掲げた基本戦略「バイオマスの5F」のもとで培ってきた微細藻類ユーグレナやその他独自素材の研究開発力を活かしながら、健康食品や化粧品を軸に収益事業化したヘルスケア事業を「深化」させて安定的な拡大を実現するとともに、バイオ燃料や飼料・肥料等の新規事業のシーズを「探索」し続けて新たな収益の柱を創出する「両利きの経営」により、サステナブルな成長を可能とする事業基盤を構築していきます。
③収益構造の改善とメリハリの利いた投資による黒字体質への転換
新規事業への先行投資、事業ポートフォリオの拡大に伴うバックオフィスの強化、M&A関連費用の増加等により収益構造が悪化しており、調整後EBITDAは黒字を達成する一方で、営業損益等のボトムライン利益に関しては赤字傾向が継続しております。当社を中心にグループ全体で収益構造の改善・最適化を図るとともに、成長ポテンシャルのある領域を厳選して投資を集中することで、グループ全体の利益率改善と早期黒字化に向けた事業基盤の強化を進めていきます。
上記の中期経営方針のもと、2024年12月期においては、売上高は過去最高となる52,500百万円を、調整後EBITDA(※)は3,600百万円を見込んでおります。また2030年に向けて、ヘルスケア事業は売上高600億円、調整後EBITDAマージン15%超を、バイオ燃料事業は商業プラント実現による収益貢献の飛躍的拡大を、その他事業は売上高100億円、EBITDAマージン10%を視野に、研究開発力とベンチャー精神で分散ポートフォリオを強化しながら、成長機会を機動的に捉えることで、サステナブルな成長を目指していきます。
(※)当社グループは、経営指標として2021年9月期より調整後EBITDAを開示しております。調整後EBITDAは、一般に公正妥当と認められた会計基準に基づく営業利益に、当社グループにとって経常的に発生する収益や非現金支出を反映させた、当社のキャッシュ・フロー創出力を示す指標です。
(3)対処すべき課題
現在の市場環境及び事業進捗を踏まえて、各事業において認識している対処すべき課題については以下のように考えております。
(ヘルスケア事業)
当社グループは、微細藻類ユーグレナ等を軸とした独自素材と、健康食品ブランド「からだにユーグレナ」や化粧品ブランド「one」「NEcCO」に加えて、キューサイ、エポラ、MEJ、LIGUNA等の各グループ会社が展開する商品ブランドから構成される多様な商品・ブランド群を、直販、流通、OEM等のマルチチャネルで展開しております。健康食品・化粧品市場は、コロナ禍の影響を乗り越えて継続的な成長が見込まれる一方、競争環境が激化するとともにトレンド変化も速いため、ポジショニングと差別化が持続的成長の鍵を握っております。当社グループは、ヘルスケア事業の中長期的な成長に向けて、ブランド群の育成、デジタル化、マルチチャネル化という3つの基本戦略のもと、2023年度は「成長ブランドの創出」「顧客ロイヤリティの向上」「チャネル販売力の強化」「コストシナジーの創出」に取り組んで一定の成果をあげたものの、売上高のオーガニック成長は伸び悩んでおります。ヘルスケア事業に関して当社グループが対処すべき課題は以下のとおりと認識しており、これらの課題の解決を成長機会に転じることで、市場平均を上回る売上成長と安定した利益率を両立したサステナブルな成長の実現を目指していきます。
①収益構造の筋肉質化
サステナブルな成長の実現に向けて、成長投資を可能とする利益を安定的に生み出せるよう、収益構造の筋肉質化に取り組んでいきます。
商品ポートフォリオや販売チャネルに関しては、成長ポテンシャルと採算性に基づいて選択と集中を進めていきます。ヘルスケア事業の中心を占める直販においては、CPO(定期顧客獲得コスト)に対するLTV(定期顧客から一定期間に生み出されるリターン)の比率を投資効率の指標として位置づけ、ブランドや媒体毎の投資効率をグループ横断で比較分析し、高効率ブランドや媒体に広告宣伝費を機動的に配分することで、ポートフォリオ全体の収益性向上を目指していきます。
コスト構造の観点からは、商品値上げ・製品原価削減・グループ内製造移管促進等による粗利率の改善、販促費の適正化・グループ共通購買やベンダー交渉等による販売費の低減、広告運用・コールセンターの内製化等による外注費の削減を強化することで、限界利益率の改善を徹底してまいります。また、グループ内のバックオフィス・人員の最適化による固定費抑制も進めていきます。
②成長ブランドとファン顧客の育成
競争環境が激しくトレンド変化も速い健康食品・化粧品市場においてサステナブルな成長を実現するためには、直販チャネル等で継続的に購入いただけるようなブランドを育成し、さらに企業ブランドや商品ブランドに対するファン顧客の拡大に取り組むことが重要です。
ブランドの育成に関しては、成長性・市場規模が見込まれるテーマで商品企画・開発を推進し、既存ブランドの商品ラインアップの拡充や新規ブランドの創出に取り組んでいきます。また、メディアでの露出拡大や各種アワード受賞等によりレピュテーションの蓄積を図るとともに、ロイヤリティ(信頼・愛着)向上に資する施策展開や、おまとめ定期/有期間定期の強化等を通じて、ブランドLTVの向上を目指していきます。
ファン顧客の育成に関しては、直販で育成したブランドを流通チャネルでクロス展開することにより相乗効果や認知拡大を図るとともに、コーポレート・ブランドを軸としたECモール展開を進めていきます。
③メーカー機能の強化
当社グループは、健康食品・化粧品の素材や商品のメーカーとして、微細藻類ユーグレナ等の独自素材、素材の機能性解明や新規素材開発を可能とする研究開発力、ならびに食品・化粧品の原料や商品の製造技術・設備を有しており、これらのメーカー機能の拡充を進めることで、収益源の拡大と競争力の強化を目指していきます。
当社グループの商品製造機能は、これまで原料と健康食品に限られていましたが、2024年2月に化粧品ODM製造を手掛けるサティス製薬グループ3社が当社グループに参画したことで、当社グループの化粧品OEM製造機能が大幅に拡充されました。今後、研究開発・営業等における当社グループとの連携を進めながら、サティス製薬グループの成長と相互シナジーの創出を目指していきます。
ユニークな健康食品・化粧品素材を有するメーカーとしての観点からは、マーケットイン視点での機能性研究の推進により既存素材の商品力を強化するとともに、微細藻類オーランチオキトリウム等の新規素材の開発・探索と商品化に取り組むことで、研究開発と事業の連携を図っていきます。また、他企業とのコラボレーション企画や素材プロモーションの強化等を進めることで、自社素材に関する消費者認知向上と理解促進を図るとともに、中長期的な素材ビジネスの拡大に向けてユーグレナやクロレラの海外展開にも取り組んでいきます。
(バイオ燃料事業及びその他事業)
気候変動問題への対応策としてバイオ燃料に対する期待がグローバルに高まっており、国際的な規制強化や政策インセンティブも後押しして、今後飛躍的な市場拡大が見込まれております。当社グループは、バイオ燃料事業及びその他事業において、将来的な商業化を見据えたバイオジェット・ディーゼル燃料の製造・供給体制の構築と微細藻類ユーグレナのバイオ燃料用・飼料用原料としての利用可能性に関する研究開発を推進しております。バイオ燃料事業及びその他事業に関して当社グループが対処すべき課題は以下のとおりと認識しており、これらの課題を早急に解決することで、中長期的に新たな事業の柱として確立することを目指していきます。
①バイオジェット・ディーゼル燃料の供給先の拡大
当社グループは、2020年3月に本格稼働を開始した神奈川県横浜市鶴見区の実証プラントにおいて、バイオジェット・ディーゼル燃料の安定性製造・供給体制を確立するとともに、「陸・海・空」の全ての領域においてバイオ燃料供給先を拡大し、2023年末までの累計導入事例は93件に達しました。実証プラントは、建設時点の目的を全て成功裏に達成できたことを踏まえ、2024年1月末をもって稼働を終了し、以降は海外パートナー企業等から調達したバイオ燃料の販売に移行することで、より大規模なサプライチェーン構築とバイオ燃料供給先の更なる開拓を進めていきます。
②バイオジェット・ディーゼル燃料製造商業プラントの製造・供給体制の構築
当社グループは、2022年12月に、グローバル大手統合エネルギー企業であるPetroliam Nasional Berhad及びEni S.p.A.と共同で、マレーシアにおいて商業規模のバイオ燃料製造プラント(以下「本商業プラント」といいます。)の建設及び運転するプロジェクト(以下「本プロジェクト」といいます。)を検討しており、本商業プラント建設に係る技術的・経済的な実現可能性評価を進めていることを発表し、3社間で最終投資決定に向けた協議、検討を継続しております。本プロジェクトの実現に向けて、商業プラントの建設及び稼働開始に要する一連の建設関連資金の調達、バイオジェット・ディーゼル燃料の原料調達先や製品販売先の確保、プラントの設計・建設、プラント運転に要する人員・用役の確保等、様々な課題に取り組んでいきます。
また、商業化後を見据えたサプライチェーン構築に向けた取り組みとして、国内外パートナー企業と連携したバイオ燃料のテスト取引を進めており、2023年度に複数の大口取引を実行しました。今後更なる取引先・取引規模の拡大に取り組んでいきます。
③バイオマス資源のバイオ燃料・飼料・肥料用原料としての利活用に関する研究開発
当社グループは、ユーグレナを中心とした微細藻類等の商業生産やバイオマス系廃棄物等の未利用資源の活用を目指して、バイオマス資源のバイオ燃料・飼料・肥料用原料としての利用可能性に関する研究開発や実証を進めております。微細藻類等の商業生産の実現には、生産コストの更なる削減、大規模生産技術の確立、大規模生産の候補地調査と現地データ収集、品種改良や脂質抽出後の脱脂藻体活用に関する研究等、様々な課題に取り組む必要があります。微細藻類の大規模培養に関しては、国内の「先端科学研究所」「生産技術研究所」やマレーシアに開設した「熱帯バイオマス技術研究所」において、これまで蓄積してきた微細藻類ユーグレナの大規模培養に関する研究開発成果をはじめとする知見や技術を活用しながら、ユーグレナなどの微細藻類、その他の藻類や植物など、バイオ燃料原料用途のバイオマス生産・利用の最大化・最適化を中心とする研究を推進していきます。また、バイオマス系廃棄物等の未利用資源に関しても、「資源サーキュラー技術研究所」を中心に当社グループ内外で生産や調達の可能性を検討するとともに、バイオ燃料・飼料・肥料用原料への転用に向けた研究開発を進めていきます。
1.サステナビリティ全般
当社グループは、サステナビリティそのものが経営の根幹であり、サステナビリティの推進=経営の推進と考えています。サステナビリティを巡る課題について、当社グループはリスクの減少のみならず、収益機会にもつながる重要な経営課題と認識し、中長期的な企業価値の向上とサステナビリティ課題の解決の両立を目指しています。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
更なるサステナビリティ活動及びESG経営を推進するための各種方針、目標、戦略、リスク管理や対応策を議論する「サステナビリティ委員会」を、2023年2月に設置しました。
サステナビリティ委員会は、取締役会の諮問機関として、取締役会の直下に設置され、年3回以上開催し、グループ全体のサステナビリティに関する目標や取り組みの方向性について審議を行います。グループ全体のサステナビリティ方針、戦略、目標などに関する重要課題については、取締役会に上程され、取締役会で決議されます。
また、当社グループ全体で、気候変動対策などを含むサステナビリティ活動全体を推進していくため、サステナビリティ委員会の傘下に、当社やグループ各社の実務担当者などから構成されるテーマ別ワーキンググループを設置し、課題の特定や対応策の検討も進めています。
2023年度は、サステナビリティ委員会を3回開催し、委員長をユーグレナ社の3代目CFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)が務め、取締役、社外取締役、執行役員が委員となり審議を行いました。当社グループのCO2算定状況報告や削減目標に関する協議、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)施策の方向性、CFO活動報告及び提言に関する協議を行いました。
2024年度より未来世代アドバイザリーボードをサステナビリティ委員会に紐づく形で設置しています。今後も引き続き、グループ全体のサステナビリティ活動について未来世代と共に協議をしてまいります。
(2)戦略
当社グループでは、サステナビリティへの取り組みを攻めと守りに分解し、マテリアリティとの整合性も確認した上で取り組んでいます。
マテリアリティについては、SDGs、SASBなどの国際的なフレームワークや、同業他社の設定した重要課題を参照し、環境・社会・ガバナンスの視点で広範囲に課題を洗い出しました。具体的な課題の抽出にあたっては、当社グループが関連する事業領域及びサプライチェーンを範囲とし、産業への要請事項などを考慮して重要度を評価しました。加えて、「パーパス、フィロソフィー及び今後の事業方針」の策定や経営陣へのインタビューを経て、事業を通して解決する主要課題やありたい姿を整理しています。
(3)リスク管理
当社グループは、全社重要リスクを特定し、PDCAサイクルによってリスクを管理する全社リスクマネジメント体制を構築しております。グループ内におけるリスク情報等に関しては、担当部署を通じて取締役会へ報告し、フィードバックを受けております。気候変動をはじめとするサステナビリティ関連リスクも全社重要リスクの1つと位置付け、必要に応じてサステナビリティ委員会に上程し、対応策の協議を行います。
(4)指標及び目標
当社グループは、気候変動や人的資本等に関連する目標を検討・策定しております。個別テーマの指標及び目標については、下記2、3を参照ください。また、今後は、事業を通した社会インパクトの定量化・指標化にも努めてまいります。
2.気候変動への対応(TCFDに基づく開示)
2005年の創業以来、継続して地球規模の環境問題など様々な社会的課題へのソリューションを提供する革新技術・事業の創出に取り組み、持続可能な社会の発展に貢献してきました。気候変動問題を事業に影響をもたらす重要課題の一つと捉え、経営戦略に取り入れ、グループ全体で気候変動対策に積極的に取り組んでいます。2050年温室効果ガス排出実質ゼロの世界に向け、当社グループの事業を通じた環境負荷の削減を更に推進するとともに、バイオ燃料の普及により社会全体のCO2排出量削減に貢献してまいります。
当社グループは、2019年5月より、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD: Task Force on Climate-related Financial Disclosures)による気候関連財務情報開示を求める提言に賛同し、提言の推進を行うことを目的に設立されたTCFDコンソーシアムに入会しています。TCFDによる提言に基づき、気候関連のリスクと事業機会、ガバナンス体制について情報開示を行っております。
(1)ガバナンス
前述1(1)のガバナンス体制にて、気候変動への対応についても取り組んでいます。
(2)戦略
シナリオ分析においては、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに1.5℃に抑える努力を追求する」というパリ協定目標の達成と脱炭素社会の実現を見据え、1.5℃未満シナリオとともに、世界的に気候変動対策が十分に進展しない場合も想定して、4℃シナリオを検討しました。また、当社の事業の蓋然性が見通せる範囲として、2030年を分析対象としました。
分析の対象事業としては、株式会社ユーグレナにおけるヘルスケア事業とバイオ燃料事業を設定し、気候変動による当社グループへの影響を整理しました。シナリオ分析にあたり、1.5℃未満においては、IEA SDS、IPCC RCP2.6・SR1.5、WRI Aqueduct Optimisticなど、4℃においては、IEA STEPS、IPCC RCP8.5、WRI Aqueduct BaU などを参照しました。
各シナリオで想定した世界像に基づき、第一段階として、準備段階の際に選定した対象事業について、リスク・機会項目を網羅的に列挙しました。第二段階として、リスク・機会が発生する可能性の大きさと、リスク・機会が現実のものとなった場合の事業インパクトの大きさを軸に、リスク重要度を定性的に仮評価しました(図1)。最終段階にて、執行役員や部門担当者とのディスカッションを踏まえ、リスク・機会の事業への影響度と発生度を定性的・定量的に評価し、小・中・大の3段階に分類しました。
図1 リスク・機会項目(ヘルスケア事業)の重要度評価
その結果、主にヘルスケア事業・バイオ燃料事業で想定される気候リスクと機会を次の図表のように整理し、重要なリスク・機会を特定しました。
(ヘルスケア事業)
リスクについては、4℃シナリオ下での異常気象の激甚化による、生産拠点や物流機能への損害、1.5℃未満シナリオ下でのカーボンプライシング導入による設備投資や原材料調達コスト等を、特に考慮すべきリスク要因として特定し、事業へのインパクトについて定量的評価を実施いたしました。今後、より詳細なリスク分析を実施し、より包括的なリスク管理に努めてまいります。
他方、機会については、気候変動対応が進む1.5℃未満シナリオ下では、消費者の環境意識が高まり、当社の環境負荷の低いヘルスケア商品の評価は今後さらに向上していくと想定しています。その他の機会とともに事業発展に向けた活用を進めてまいります。
初代CFOの提言から、商品に使用される石油由来プラスチックの削減を目的に、2020年に既存の飲料用ペットボトル商品の全廃を決定しました。当社の主力飲料商品である「からだにユーグレナ」は、ペットボトルではなくテトラパックやカートカン等、主原料が紙のリサイクル可能な包装容器を現在採用しております。また、一部商品ではバイオマスプラ配合ストローを採用し、継続して石油由来プラスチック削減に努めております。今後も、環境負荷の低い容器包装を用いて当社商品を開発・販売してまいります。
(バイオ燃料事業)
バイオ燃料事業も同様に、リスク・機会の事業への影響度と発生度を定性的・定量的に評価しました。一方で、当事業は本格的な商業化前のフェーズにあり適正な評価は難しいため、2021年度時点でのリスクと機会の定性分析の結果を開示しています。
当社グループが製造・販売するバイオ燃料「サステオ」は、多くの企業・団体に賛同を得ており、バイオ燃料供給先は累計93件(2023年末時点)にのぼります。その賛同の輪をさらに広げるべく、引き続きバイオ燃料に関わる研究・製造・営業努力を続けていきます。現在は、1.5℃未満シナリオ下の事業機会を見据えて、国内外のパートナーと連携しております。2022年12月には、マレーシアにおいて商業規模のバイオ燃料製造プラント(以下「本商業プラント」といいます。)の建設及び運転プロジェクトを、Petroliam Nasional Berhad及びEni S.p.A.と共同で検討していることを発表し、本商業プラントの設計・建設や運用体制の構築、国内外パートナーと連携したバイオ燃料の販売拡大やサプライチェーンの構築、及び、バイオ燃料原料用途のバイオマス生産・利用に関する研究開発に取り組んでいます。
次世代バイオディーゼル燃料とバイオジェット燃料の本格供給を開始し、自動車や船舶、飛行機等の移動体に幅広く導入していくことで、1.5℃未満シナリオの実現、2050年カーボンニュートラル達成に大きく貢献してまいります。
(3)リスク管理
前述1(3)のリスク管理にて、気候変動への対応についても取り組んでいます。
(4)指標及び目標
気候リスクと機会のシナリオ分析結果を踏まえ、2022年12月期実績より国内の当社グループにおけるScope1、2及びScope3の主要カテゴリーにおいて算定・開示を行っています。今後、自社排出量の中期削減目標を設定し、より積極的な削減に努めてまいります。
2023年12月期(2023年1月~12月)CO2排出量実績(注)1.: 単位:トン
Scope |
項目 |
2022年12月期 |
2023年12月期 |
|
Scope 1 (注)2. |
ガス |
1,674 |
1,572 |
|
Scope 2 (注)3. |
電気 |
マーケットベース(注)3. |
3,750 |
3,318 |
ロケーションベース(注)4. |
3,248 |
2,975 |
||
総計(Scope 1とScope 2マーケットベース値合計) |
5,424 |
4,890 |
||
Scope 3 (注)5. |
カテゴリー1(購入した製品・サービス) |
66,056 |
算定中 |
|
カテゴリー4(上流の輸送・流通) |
5,458 |
算定中 |
||
カテゴリー6(出張) |
663 |
算定中 |
||
カテゴリー7(従業員の通勤) |
233 |
算定中 |
(注)1.対象範囲:ユーグレナ本社、鶴見実証プラント、R&D研究所、キューサイグループ、八重山殖産、LIGUNA、エポラ、大協肥糧
2.2022年12月期より、Scope1、2のCO2排出量は、SGSジャパン株式会社による第三者検証を取得しています。
3.マーケットベース(電力会社ごとの温室効果ガス排出係数を算定に使用)で算定
4.ロケーションベース(地域毎の電力網の平均の温室効果ガス排出係数を算定に使用)で算定
5.Scope 3の算定は、環境省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースver.3.2」の金額ベースの排出原単位(購入者価格ベース)を使用しています。
3.人的資本への取り組み
(1)ガバナンス
人的資本に関するガバナンスは、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 1.サステナビリティ全般(1)ガバナンス」をご参照ください。
(2)戦略及び指標・目標
2024年度からの新集団執行体制のもと、中期経営計画実現に必要なユーグレナグループらしい組織ケイパビリティを担保するため、戦略的に人的資本投資を行っています。下記に基づき、2024年度中に仮説検証を行い、その検証フェーズを経て、2024年度末までに適切なKGI及びKPI目標を設定する予定です。
ユーグレナグループの人的資本経営ストーリー
ユーグレナ社の人的資本データは下記をご確認ください。
人的資本データ(2023年12月末時点)
大項目 |
中項目 |
小項目 |
対象範囲 (注)1. |
人数 |
割合 |
連結従業員数 (注)2. |
全体 |
連結(単体) |
846 (240) |
- |
|
男性 |
連結(単体) |
429 (150) |
50.7% (62.5%) |
||
女性 |
連結(単体) |
417 (90) |
49.3% (37.5%) |
||
日本以外の国籍を有する従業員 |
連結(単体) |
58 (8) |
5.9% (3.3%) |
||
非正社員数 |
契約社員・パートアルバイト |
全体 |
連結(単体) |
204 (39) |
- |
派遣社員 |
全体 |
連結(単体) |
47 (6) |
- |
|
経営陣(取締役)における男女比率 (注)3. |
全体 |
連結 |
8 |
- |
|
男性 |
連結 |
5 |
62.5% |
||
女性 |
連結 |
3 |
37.5% |
||
経営陣(執行役員)における男女比率 (注)3. |
全体 |
連結 |
8 |
- |
|
男性 |
連結 |
6 |
75.0% |
||
女性 |
連結 |
2 |
25.0% |
||
管理職数 (注)4. |
全体 |
連結(単体) |
171 (57) |
- |
|
男性 |
連結(単体) |
131 (47) |
76.6% (82.5%) |
||
女性 |
連結(単体) |
40 (10) |
23.4% (17.5%) |
||
新規採用者数 |
新卒採用者数 |
全体 |
連結(単体) |
17 (4) |
- |
男性 |
連結(単体) |
8 (4) |
47.1% (100%) |
||
女性 |
連結(単体) |
9 (0) |
52.9% (0%) |
||
日本以外の国籍を有する採用者 |
連結(単体) |
0 (0) |
0 (0) |
||
中途採用者数 |
全体 |
連結(単体) |
97 (30) |
- |
|
男性 |
連結(単体) |
52 (12) |
53.6% (40.0%) |
||
女性 |
連結(単体) |
45 (18) |
46.4% (60.0%) |
||
日本以外の国籍を有する採用者 |
連結(単体) |
6 (1) |
6.2% (3.3%) |
(注)1.「連結従業員数(正社員)」「非正社員数」は海外拠点を含むグループ連結数値。「管理職数」~「退職者数」の項目は、海外拠点を除く国内グループ連結数値
2.正社員数には委任契約社員は含みません
3.有価証券報告書提出日時点の数値を記載
4.管理職の定義は取締役を除く、課長以上
大項目 |
中項目 |
対象範囲 |
データ |
従業員の年齢の状況 |
30歳未満 |
連結(単体) |
15.6% (9.5%) |
30~39歳 |
連結(単体) |
25.6% (37.9%) |
|
40~49歳 |
連結(単体) |
35.5% (32.9%) |
|
50~59歳 |
連結(単体) |
20.3% (14.0%) |
|
60歳以上 |
連結(単体) |
3.0% (6.2%) |
|
退職率(正社員) (注)5. |
総退職率 |
連結(単体) |
11.0% (12.4%) |
自己都合退職率 |
連結(単体) |
10.2% (11.6%) |
|
平均勤続年数 |
全体 |
単体 |
5年5ヶ月 |
男性 |
単体 |
5年0ヵ月 |
|
女性 |
単体 |
6年0ヵ月 |
|
平均年齢 |
全体 |
単体 |
41歳11ヶ月 |
男性 |
単体 |
42歳5ヶ月 |
|
女性 |
単体 |
40歳11ヶ月 |
|
平均有給取得日数 |
単体 |
15日 |
|
上位職志向 (注)6. |
全体 |
単体 |
60.0% |
男性 |
単体 |
64.0% |
|
女性 |
単体 |
55.0% |
|
育児休業取得率 (注)7. |
全体 |
単体 |
90.9% |
男性 |
単体 |
85.7% |
|
女性 |
単体 |
100.0% |
|
育児休業取得後復職率 (注)8. |
全体 |
単体 |
90.0% |
男性 |
単体 |
100.0% |
|
女性 |
単体 |
80.0% |
|
障がい者雇用率 |
単体 |
2.28% |
|
労働者1人あたりの1カ月の平均残業時間 |
単体 |
18.3時間 |
|
総研修時間 |
単体 |
4,240時間 |
|
人材1人あたりの平均研修時間/日数 |
単体 |
15.0時間/1.9日 |
|
従業員エンゲージメント調査 (注)9. |
回答率 |
単体 |
97% |
スコア |
単体 |
56.6 |
(注)5.分子は2023年12月30日までの退職者数、分母は2023年12月31日の在籍者数
6.社内アンケートで「今のグレードよりも1つ上のグレードを目指したい」「どちらかというと目指したい」と回答した割合
7.男性の育児休業取得率は、1週間以上の取得者を対象
8.2023年1月~2023年12月の間に育休取得し育休を終了した人のうち復職した人の数/2023年1月~2023年12月の間に育休取得し育休を終了した人の数
9.従業員エンゲージメント調査は年2回実施。回答率・スコア(調査に参加している企業群の中での偏差値)は年間の平均値
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ヘルスケア事業
① 特定の外部委託先への依存について
当社グループは、ユーグレナ粉末、クロレラ粉末等を加工した最終製品(食品)の製造については、自社グループ会社工場で製造するとともに、一部を加工委託先に業務委託しております。また、化粧品等の加工については、主に日本コルマー株式会社に加工委託しております。このようなビジネスモデルを採用することにより、設備や生産のための人員といった固定費やラインの管理・立ち上げ等の費用の負担が少なく、営業活動と研究開発に経営資源を集中でき、外部環境の変化、技術革新等への機敏な対応をとれる等のメリットがあります。しかしながら、何らかの理由により、加工委託先における取引方針の変更、収益構造の悪化、供給能力の低下、品質問題の発生、事業活動の停止等が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 製品の品質や安全性について
当社グループは、当社グループのありたい姿として「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」を掲げ、全社一丸となって取り組んでおります。
ヘルスケア事業(食品)におきましては、各製品段階において、以下のとおり検査を実施し、品質と安全性の維持に取り組んでおります。
ユーグレナ粉末等については、基礎栄養成分、菌類、重金属等に関し当社子会社である八重山殖産株式会社における検査を実施するとともに、基礎栄養成分、菌類等に関し当社による検査(第三者分析機関への委託)を実施しております。また、最終製品については、製品別に検査項目が異なりますが、カプセル重量・長さ・錠剤硬度、菌類等に関して、自社グループ会社工場又は加工委託先における検査を実施しております。
ヘルスケア事業(化粧品)におきましては、グループ会社において化粧品の製造販売及び受託製造を行っており、当該グループ会社は薬機法上の製造販売元として製造販売責任を負っているため、製品の規格適合を確認し記録を残すこと等により、品質と安全性の維持に取り組んでおります。
しかしながら、万一、製品の品質や安全性に問題が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 法的規制について
当社グループは、以下に掲げるもののほか、適用法令の遵守を徹底しておりますが、予期しない法律又は規制の変更及び現行の法的規制における法令の解釈・適用によって新たな対策が必要になった場合には、当社グループの事業運営に支障をきたすことにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
A.特定商取引に関する法律
事業者と消費者との間に生じるトラブルを事前に防止することを目的としております。
訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引等、消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、消費者保護の観点から、それぞれ契約に伴う書面の交付、禁止行為、解約事項等を規定しております。例えば、通信販売について、a.広告に記載すべき事項、b.誇大広告の禁止、c.顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為の禁止等を定めます。また訪問販売について、a.事業者の氏名等の明示義務、b.所定の事項を記載した書面の交付義務、c.勧誘の際、又は契約締結後、申込みの撤回(契約の解除)を妨げるために、事実と違うことを告げる行為の禁止等を定めております。
B.不当景品類及び不当表示防止法(景表法)
過大な景品や不当な表示をすることによる顧客の誘因を防止することにより、事業者の公正な競争を確保し、消費者の利益を保護することを目的としております。
a.優良誤認行為(商品・サービスの品質などについて、実際よりも著しく優良又は有利であると見せかけて宣伝する行為等)、b.有利誤認行為(商品・サービスの取引条件について、実際よりも有利であると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に安いわけでもないのに、あたかも著しく安いかのように偽って宣伝する行為等)、c.その他誤認されるおそれのある表示が不当表示として禁止されております。
C.医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)
医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質、有効性、安全性の確保のために必要な規制を行い、保健衛生の向上を図ることを目的としております。
医薬品には、その品質、有効性、安全性の確保のために承認・許可制度をはじめとした様々な規制があり、許可等がないままに「医薬品」に該当するものを販売等することは禁止されております。医薬品とは、「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されること、並びに身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされているものであって器械器具でないもの」とされており、医薬品と紛らわしい効能などの表示・広告を行うと薬機法に違反します。
D.健康増進法
国民の健康の増進の総合的な推進に関して基本的な事項を定めるとともに、国民の栄養の改善その他の国民の健康の増進を図るための措置を講じ、もって国民健康の向上を図ることを目的としております。健康状態の改善又は維持の効果に関し、著しく事実に相違する又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない等を定めております。
E.食品衛生法
飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もって国民の健康の保護を図ることを目的としております。公衆衛生に危害を及ぼすおそれのある虚偽又は誇大な表示又は広告の禁止等を定めております。
F.農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)
JAS規格(日本農林規格)と食品表示(品質表示基準)を定め、一般消費者の商品選択に役立てるため、JASマークや品質表示基準に定める表示を付しております。
G.消費者契約法
事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とすることにより、消費者の利益の擁護を図ることを目的としております。
事業者が重要事項について事実と異なることを告げ(不実告知)、消費者が誤認した場合の取り消し、消費者が支払う損害賠償額の予定条項等の無効等を定めております。
④ 個人情報保護について
当社グループではインターネット販売を行う上で顧客情報を取得しているため、顧客情報が蓄積されております。また、当社グループでは一般消費者向け遺伝子検査サービス事業を展開していることから、更に顧客情報を取得、蓄積することとなります。当社グループでは、プライバシーマークを取得し、公益社団法人日本通信販売協会が定める「個人情報保護ガイドライン」及び個人情報保護規程に基づき個人情報取扱いに関し社内教育を徹底しておりますが、万一、個人情報が外部に漏洩した場合には、顧客からの信用失墜による売上高の減少や顧客に対する損害賠償による損失が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 競合について
当社グループは、ヘルスケア事業(食品)において、ユーグレナという新しい食品を手がけており他の食品等と差別化を図っていく予定ですが、今後他社のユーグレナ食品や新規の競合品が現れ、これらの競合品との充分な差別化が図れない場合には、競争激化による販売価格の低下、販売数の減少等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 健康食品に対する顧客の嗜好の変化について
健康食品は消費者の嗜好に影響を受けやすく、そのライフサイクルは比較的短い傾向にあります。当社グループでは今後も既存製品の販売、新製品の開発、製品応用分野の拡大を目指した事業展開を進める方針でありますが、既存製品が計画どおりに販売できなかった場合、新製品の開発が進まない場合や計画どおりに販売できなかった場合、又は製品応用分野の拡大ができなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 広告宣伝費、販売促進費の先行投資について
当社グループは、自社製品の個人顧客への直接販売の拡大のため、広告宣伝費、販売促進費を積極的に投下しております。投下費用に対し、売上高が適切に増加しなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)バイオ燃料事業及びその他事業
① 研究開発について
当社グループは、ユーグレナを中心とした微細藻類の培養技術を軸に、バイオ燃料、飼料、肥料など、様々な分野での事業展開へ向けた研究開発及び実証を行っております。
これらの研究開発におきましては未だ商業生産段階には至っておりませんが、バイオ燃料開発を中心として、今後研究開発費が増加する可能性があります。
多額の研究開発投資を行ったにもかかわらず、想定どおりに研究開発の結果が得られない場合や、バイオ燃料よりも有利なエネルギーが普及した場合には、当社グループの事業戦略及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② バイオ燃料製造・供給の商業化に向けた投資について
当社グループは、バイオ燃料製造・供給の商業化に向けて、グローバル大手統合エネルギー企業であるPetroliam Nasional Berhad及びEni S.p.A.と共同で、マレーシアにおいて商業規模のバイオ燃料製造プラント(以下「本商業プラント」といいます。)の建設及び運転するプロジェクト(以下「本プロジェクト」といいます。)を検討しており、本商業プラント建設に係る技術的・経済的な実現可能性評価、建設及び資材調達の入札プロセス、本商業プラントの運営体制の検討を進めております。今後、本プロジェクトを具体化する過程で計画の見直しを余儀なくされた場合や、当社グループの本プロジェクトへの参画に要する資金の調達が難航した場合には、当社グループの事業戦略及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 法的規制について
当社グループは、バイオ燃料事業及びその他事業の推進にあたり、バイオ燃料の製造・販売に関する法令のほか、適用法令の遵守を徹底しておりますが、予期しない法律又は規制の変更及び現行の法的規制における法令の解釈・適用によって新たな対策が必要になった場合には、当社グループの事業運営に支障をきたすことにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 原料や製品の市場動向について
バイオ燃料、飼料、肥料はいわゆるコモディティ商材であり、自社製造又は外部から調達した原料から製造した最終製品を顧客向けに販売する過程、ならびに外部から調達した原料や最終製品を顧客向けに販売する過程において、原料及び最終製品の価格や売買数量が市場動向の影響を大きく受ける傾向にあります。当社グループは、原料及び最終製品の調達先や販売先を多様化するとともに、市場における価格や需給の動向を見極めながら原料及び最終製品の調達を行い、また、為替ヘッジや運転資金借入を実施することで、価格や需給の変動リスクや資金繰りリスクの抑制を図る方針でありますが、原料及び最終製品の価格、需給やそれらに影響を及ぼす法規制、地政学的動向、為替、天候等の様々な要因が急激に変動した場合、並びに当社グループがこれらの変動リスクを適切にコントロールできなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)共通
① 特定の技術への依存について
当社グループは、微細藻類ユーグレナの独立栄養培養、従属栄養培養、そして光従属栄養培養の全ての培養技術をコア技術として事業を展開しておりますが、競合他社が同様の技術や他の安価な技術を開発し当社グループの技術が陳腐化した場合あるいは当社グループの技術改良の対応が遅れた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 知的財産権について
当社グループは、当社グループが運営する事業に関する知的財産権の獲得に努めるとともに、第三者の知的財産権を侵害しないように取り組んでおります。しかしながら、今後当該事業分野において第三者の権利が成立した場合や認識していない権利がすでに成立している場合、第三者より損害賠償及び使用差止め等の訴えを起こされる可能性及び権利に関する使用料等の対価の支払が発生する可能性があります。また、当社グループが所有する商標権が、第三者より侵害された場合には当社グループのブランドイメージが低下する可能性があります。それらの場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 海外展開について
当社グループはアジアを中心とした海外市場において、積極的な事業展開を推進していく方針です。海外事業展開には、事業投資に伴う為替リスク、カントリーリスク、出資額又は出資額を超える損失が発生するリスク等を伴う可能性があり、計画どおりに事業展開ができない場合には、当社グループの事業戦略及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ レピュテーションリスクについて
当社グループは、製品の品質・安全性の確保、法令遵守、知的財産権管理、個人情報管理等に努めております。しかしながら、当社グループ及び当社グループを取り巻く環境や競合他社及び競合他社を取り巻く環境において何らかの問題が発生した場合、消費者の評価に悪影響を与え、それにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 自然災害、事故、テロ、戦争等について
当社グループが事業を行っている地域では、地震、台風等の自然災害の影響を受ける可能性があります。同様に火災等の事故災害、テロ、戦争等が発生した場合、当社グループ又は投資先の拠点の設備等に大きな被害を受け、その全部又は一部の操業が中断し、生産及び出荷が遅延する可能性があります。また、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、結果として、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 配当政策について
当社は創業以来、株主に対する利益配当及び剰余金配当を実施しておりません。また、今後も当面は、企業体質の強化及び研究開発活動の継続的な実施に備えた資金の確保を優先し、配当は行わない方針であります。
株主への利益還元については、当社の重要な経営課題と認識しており、将来的には経営成績及び財政状態を勘案しつつ利益配当及び剰余金配当を検討する所存であります。
⑦ 株式関連報酬による株式価値希薄化について
当社は、当社グループの役職員等に対するインセンティブ制度として、譲渡制限付株式報酬、事後交付型株式報酬、従業員株式報酬、ストック・オプション(新株予約権)といった株式関連報酬制度を導入しており、今後も継続的な活用を検討していく方針です。当社の既発行のストック・オプション(新株予約権)が権利行使された場合、業績条件成就に伴い事後交付型株式報酬制度に基づく新株が発行された場合、従業員株式報酬制度に基づく新株が発行された場合、並びに、株式報酬やストック・オプション(新株予約権)が今後新規に付与され、それらに伴い新株が発行された場合又はストック・オプション(新株予約権)が権利行使された場合には、既存株主の株式価値が希薄化する可能性があります。
⑧ 情報システム・情報管理について
当社グループは、各種情報システムを利用して業務を遂行しており、特に自社製品の販売においてパソコンやコンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークに強く依存しております。そのため、システムの停止や機能障害により、効率的な業務の遂行を妨げる可能性があり、また、個人情報を含め多くの情報を保有しているため、社内管理体制を整備し、情報管理の充実を図っておりますが、万一情報漏洩が発生するような場合には、信用失墜により、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 企業買収について
当社グループは、各事業の事業基盤拡大のため、企業買収を行っております。企業買収にあたっては、対象企業の財務内容等について詳細な事前審査を行い、リスクを把握したうえで決定しておりますが、事業環境等の変化等により、当初想定した効果が得られない場合には、のれんの減損損失の計上等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、ロシア・ウクライナ戦争の長期化やイスラエル・ハマス紛争などの地政学的リスク、欧米におけるインフレ率の上昇と利上げの進展といった大きな変化を迎える中、米国経済は堅調な個人消費や雇用に支えられて堅調に推移する一方で、欧州経済や中国経済では減速傾向が見られており、今後の見通しに対する不確実性が高まっています。日本経済は、コロナ禍明け後の需要回復が景気を押し上げるとともに、日米金融政策の乖離に伴う円安基調の継続、コスト増の価格転嫁の進展やインバウンド需要の拡大により物価が上昇に転じ、雇用拡大や賃金上昇も見受けられるなど、デフレ脱却の素地が整いつつあります。
このような事業環境のもと、当社のヘルスケア事業においては、2019年よりブランド群の育成、デジタル化、マルチチャネル展開という3つの基本方針を推進し、当連結会計年度は、売上高成長と利益率を両立するサステナブルな成長の実現に向けて、成長ブランドの創出、顧客ロイヤリティの向上、チャネル販売力の強化、コストシナジーの創出に注力しました。広告投資の機動的運用や定期顧客の継続率改善に取り組んだ直販や、営業力強化に取り組んだ流通・OEM等が概ね横ばいで推移する一方で、株式会社はこの通期連結の影響(2022年7月より連結対象)による増収効果に加えて、バイオ燃料事業におけるテスト取引の拡大により、売上高は46,482百万円(前連結会計年度比4.7%増)となりました。
また、当社は、キャッシュ・フロー重視の経営の観点から、当社のキャッシュ・フロー創出力を示す指標として調整後EBITDAを開示しております。調整後EBITDAは、EBITDA(営業利益+のれん償却費及び減価償却費)+助成金収入+株式関連報酬+棚卸資産ステップアップ影響額、として算出しております。上述のヘルスケア事業における広告投資を継続しているものの広告宣伝費の未消化もあり単年度の利益増に影響しました。これに加えて、バイオ燃料事業や研究開発活動を中心に473百万円の助成金収入を計上しました。結果、当連結会計年度の調整後EBITDAは2,222百万円(前連結会計年度比16.1%減)となりました。
一方、キューサイ株式会社(以下「キューサイ」)の連結子会社化等の過去のM&A案件に伴う無形固定資産及びのれん等の償却費の計上を主因として営業損失は1,464百万円(前連結会計年度は営業損失3,455百万円)となりました。また、助成金収入や支払利息の計上に伴い、経常損失は1,419百万円(前連結会計年度は経常損失2,489百万円)となり、バイオジェット・ディーゼル燃料実証プラント(以下「実証プラント」)の稼働終了に伴う助成金返還等の特別損失を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は2,652百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失2,672百万円)となりました。なお、キューサイの連結子会社化時における棚卸資産のステップアップにより計上した含み益の費用化処理は、前連結会計年度で完了しております。
なお、当連結会計年度の各四半期の業績推移は以下のとおりです。
|
当第1四半期 連結会計期間 |
当第2四半期 連結会計期間 |
当第3四半期 連結会計期間 |
当第4四半期 連結会計期間 |
売上高 (百万円) |
10,837 |
11,967 |
11,274 |
12,402 |
調整後EBITDA(百万円) |
776 |
495 |
707 |
242 |
営業損益 (百万円) |
△176 |
△584 |
△198 |
△505 |
経常損益 (百万円) |
△111 |
△528 |
△157 |
△621 |
セグメント別の状況については、以下のとおりです。
(ヘルスケア事業)
当連結会計年度は、成長ブランドの創出に向けて、前連結会計年度以降にローンチした「NEcCO(ネッコ)」「CONC」「epo」等の新ブランドの育成、「からだにユーグレナ」「C COFFEE」等の既存ブランドの商品ラインアップの拡充等に取り組むとともに、グループ全体で顧客ロイヤリティの向上、チャネル販売力の強化、コストシナジーの創出に向けた施策を推進しました。直販において、広告クリエイティブや広告手法の見直しにより投資効率の改善に取り組みつつ、広告投資を慎重にコントロールしながら継続した他、2022年7月1日に連結子会社化した株式会社はこが収益貢献した結果、セグメント売上高は41,359百万円(前連結会計年度比0.6%減)となりました。
セグメント損益においては、上述のキューサイの連結子会社化に伴う棚卸資産のステップアップにより計上した含み益の費用化処理は前連結会計年度で完了しており、当連結会計年度は、キューサイの連結子会社化等の過去のM&A案件に伴う無形固定資産及びのれん等の償却費2,258百万円を計上しました。物流費率の削減やコストシナジー創出に向けた施策も推進した結果、セグメント利益は1,456百万円(前連結会計年度はセグメント損失638百万円)となりました。
(バイオ燃料事業)
バイオ燃料事業においては、実証プラントにおけるバイオ燃料の実証製造を継続するとともに、当社が製造・供給するバイオ燃料(ブランド名「サステオ」)の導入先の開拓や、バイオジェット・ディーゼル燃料商業プラント(以下「商業プラント」)の建設に向けた取り組みを推進しています。
実証事業については、当社バイオ燃料の導入事例は当連結会計年度に累計93件に達し、当社直販顧客も参画する佐川急便とのサステナブル配送プロジェクト、東京都と締結したバイオ燃料導入促進事業に係る協定やG7広島サミット(主要国首脳会議)を通じた取り組みで「陸・海・空」の全領域において「サステオ」供給先を拡大した他、本邦初となる航空自衛隊戦闘機やブルーインパルスへのSAF給油等を実現しました。なお、実証プラントは、建設時点の目的を全て成功裏に達成できたことを踏まえ、2024年1月末をもって稼働を終了し、以降は海外パートナー企業等から調達したバイオ燃料の販売に移行することで、より大規模なサプライチェーン構築とバイオ燃料供給先の更なる開拓を進めていく予定です。
商業プラントの建設については、2022年12月に、グローバル大手統合エネルギー企業であるPetroliam Nasional Berhad及びEni S.p.A.と共同で、マレーシアにおいて商業規模のバイオ燃料製造プラント(以下「本商業プラント」といいます。)の建設及び運転するプロジェクトを検討しており、本商業プラント建設に係る技術的・経済的な実現可能性評価を進めていることを発表しました。本商業プラントの原料処理能力は年間約65万トン、バイオ燃料の製造能力は最大で日産1万2,500バレル(年産約72.5万KL相当)となる見通しで、3社間で最終投資決定に向けた協議、検討を継続しております。
また、商業化後を見据えて、サプライチェーン構築に向けた取り組みや研究開発活動も展開しております。サプライチェーン構築については、国内外パートナー企業と連携したバイオ燃料のテスト取引を進めており、当連結会計年度に複数の大口取引を実行しました。研究開発活動については、マレーシアに新たな研究開発拠点となる「熱帯バイオマス技術研究所」を開設し、これまで蓄積してきた微細藻類ユーグレナの大規模培養に関する研究開発成果をはじめとする知見や技術を活用しながら、ユーグレナなどの微細藻類、その他の藻類や植物など、バイオ燃料原料用途のバイオマス生産・利用の最大化・最適化を中心とする研究を推進していきます。
以上の結果、当連結会計年度は、セグメント売上高2,851百万円(前連結会計年度はセグメント売上高262百万円)、セグメント損失は800百万円(前連結会計年度はセグメント損失789百万円)となりました。
(その他事業)
当連結会計年度は、大協肥糧株式会社を中心に肥料領域における事業拡大に取り組むとともに、バイオインフォマティクス領域、ソーシャルビジネス領域、先端研究領域においても、事業成長や事業開発に向けた投資を継続しております。以上の結果、当連結会計年度は、セグメント売上高2,273百万円(前連結会計年度比9.5%減)、セグメント損失は519百万円(前連結会計年度はセグメント損失325百万円)となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は59,619百万円となり、前連結会計年度末と比較して2,343百万円の増加となりました。これは主に、商品及び製品が681百万円、無形固定資産が2,258百万円それぞれ減少した一方で、現金及び預金が5,837百万円増加したこと等によるものです。
負債は39,404百万円となり、前連結会計年度末と比較して1,482百万円増加となりました。これは主に、長期借入金が2,524百万円減少した一方で、転換社債型新株予約権付社債が4,800百万円増加したこと等によるものです。
純資産は、前連結会計年度末から860百万円増加し、20,214百万円となりました。この結果、自己資本比率は33.9%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末から5,837百万円増加し、15,651百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失2,110百万円が計上されておりますが、減価償却費2,124百万円及びのれん償却額846百万円、棚卸資産の減少931百万円を計上したこと等により、658百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、無形固定資産の取得による支出380百万円、有形固定資産の取得による支出313百万円等により646百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出2,589百万円があったものの、転換社債型新株予約権付社債の発行による収入4,800百万円、株式の発行による収入2,962百万円等により5,828百万円の収入となりました。
④生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前年同期比(%) |
ヘルスケア事業 (百万円) |
6,744 |
115.6 |
バイオ燃料事業 (百万円) |
6 |
85.5 |
その他事業 (百万円) |
213 |
87.6 |
合計(百万円) |
6,965 |
114.4 |
b. 受注実績
当社グループは、健康食品、化粧品のOEM製品及びユーグレナ粉末等の原料粉末について受注生産を行っておりますが、原料粉末については需給動向を勘案し一部見込生産を行っており、受注生産と見込生産を明確に区別することが困難であることから、記載を省略しております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前年同期比(%) |
ヘルスケア事業 (百万円) |
41,356 |
99.4 |
バイオ燃料事業 (百万円) |
2,851 |
1,086.4 |
その他事業 (百万円) |
2,273 |
90.5 |
合計(百万円) |
46,482 |
104.7 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。
その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績の分析
経営成績の分析について、各事業の売上高及び調整後EBITDAの推移は以下のとおりです。なお、キューサイの連結子会社化時における棚卸資産のステップアップにより計上した含み益の費用化処理は、前連結会計年度で完了しております。
前連結会計年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)
|
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
第4四半期 |
通期合計 |
売上高 (百万円) |
10,822 |
10,761 |
10,752 |
12,056 |
44,392 |
ヘルスケア事業 |
10,124 |
10,103 |
10,107 |
11,282 |
41,617 |
直販 |
8,695 |
8,624 |
8,376 |
8,583 |
34,280 |
流通 |
860 |
1,022 |
944 |
1,311 |
4,138 |
OEM・原料・海外 |
365 |
264 |
228 |
454 |
1,312 |
その他 |
202 |
191 |
557 |
932 |
1,884 |
バイオ燃料事業(注1) |
21 |
41 |
104 |
93 |
262 |
その他事業(注1) |
676 |
616 |
539 |
680 |
2,512 |
調整後EBITDA (百万円) |
1,554 |
665 |
267 |
160 |
2,648 |
ヘルスケア事業 |
1,412 |
1,257 |
826 |
808 |
4,305 |
バイオ燃料事業 |
448 |
△187 |
△119 |
△203 |
△62 |
その他事業 |
26 |
△36 |
△29 |
△64 |
△103 |
調整額(注2) |
△332 |
△367 |
△410 |
△380 |
△1,490 |
当連結会計年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)
|
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
第4四半期 |
通期合計 |
売上高 (百万円) |
10,837 |
11,967 |
11,274 |
12,402 |
46,482 |
ヘルスケア事業 |
10,026 |
10,484 |
9,991 |
10,854 |
41,356 |
直販 |
8,244 |
8,346 |
8,200 |
8,359 |
33,151 |
流通 |
890 |
986 |
953 |
1,172 |
4,003 |
OEM・原料・海外 |
238 |
310 |
353 |
523 |
1,425 |
その他 |
652 |
841 |
483 |
798 |
2,776 |
バイオ燃料事業(注1) |
52 |
849 |
868 |
1,081 |
2,851 |
その他事業(注1) |
758 |
633 |
414 |
466 |
2,273 |
調整後EBITDA (百万円) |
776 |
495 |
707 |
242 |
2,222 |
ヘルスケア事業 |
1,301 |
1,066 |
1,261 |
943 |
4,572 |
バイオ燃料事業 |
△147 |
△141 |
△84 |
△310 |
△683 |
その他事業 |
27 |
△40 |
△113 |
△95 |
△221 |
調整額(注2) |
△404 |
△389 |
△355 |
△295 |
△1,444 |
(注)1. 販売チャネルは「その他」となります。
2.主に各報告セグメントに配分していない一般管理費等の全社費用であります。
(注)調整額は、主に各報告セグメントに配分していない一般管理費等の全社費用であります。
また当社グループの売上原価並びに販売費及び一般管理費に関する分析は次のとおりです。
売上原価については、2022年12月期は13,396百万円(売上原価率30.1%)のところ、2023年12月期は14,707百万円(売上原価率31.6%)となりました。製品構成比の変化として原価率の高いバイオ燃料事業の取引拡大により、売上原価率は増加しました。
販売費については、2022年12月期は21,779百万円(対売上高比率49.0%)のところ、2023年12月期は20,970百万円(対売上高比率45.1%)となりました。製品構成比の影響及び物流改善や共通購買によるコスト最適化の結果、荷造運賃費が減少し、またヘルスケア事業における諸環境を踏まえた広告投資の効率的運用の結果、広告宣伝費及び販売促進費が減少しました。
人件費については、2022年12月期は5,009百万円のところ、2023年12月期は5,270百万円となりました。事業規模の拡大に伴い全社的に増加トレンドとなりました。
管理費については、2022年12月期は6,183百万円のところ、2023年12月期は5,756百万円となりました。事業規模の拡大の中、2022年12月期のM&A費用やキューサイにおける外部コンサル費用が2023年12月期では大きく発生していない影響、そしてバックオフィス最適化により、全社としては減少となりました。
研究開発費については、2022年12月期は1,480百万円のところ、2023年12月期は1,242百万円となりました。実証プラントにおけるコストの見直しを行った結果、減少となりました。
営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失に関する状況の分析については「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載しております。
b. キャッシュ・フローの分析
当社グループでは、ヘルスケア事業からの営業キャッシュ・フローによる収入を原資として、中長期的な事業化を目指すバイオ燃料事業や新規事業に対する投資に資金を投下し、必要に応じて追加の資金を財務活動によって調達することをキャッシュ・フローの基本方針としております。
2023年12月期の詳細なキャッシュ・フローの内訳については「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しており、企業運営に必要となる十分な水準の資金を確保していると評価しております。
c. 資金需要
当社グループの資金需要の主なものは、設備投資、M&A、バイオ燃料商業プラントの建設関連資金等の長期資金需要と運転資金需要です。
このうち、設備投資の概要及び重要な設備の新設の計画については「第3 設備の状況」に記載しております。M&Aについては中長期的成長を目的とした、ヘルスケア事業(特に健康食品・化粧品等の直販及び卸売)における事業基盤の拡充やシナジー創出に資する企業、及び事業ポートフォリオの拡大もしくは新規領域進出に向けた事業基盤獲得に資する企業等を対象としたM&Aを円滑に推進するため、手元現預金の確保が必要となります。また、バイオ燃料事業の商業化に向けたプロジェクトの実現には、相応の規模の建設関連資金等が必要となります。
運転資金需要については、ヘルスケア事業における直販等の事業基盤の拡充に必要となる広告宣伝費や機能性研究・新規素材開発に必要となる研究開発費のための運転資金に加え、バイオ燃料事業における商業化実現後を見据えたサプライチェーン構築やバイオ燃料原料の研究開発に関する運転資金が必要となります。
d. 財政政策
当社グループでは資金需要の見通しや金融市場の動向などを総合的に勘案した上で、最適なタイミング、規模、手段を判断して資金調達を実施し、事業運営上必要な流動性と資金を長期安定的に確保することを基本方針としております。現在、当社グループは事業基盤の拡充や新規領域進出等に向けた将来的なM&A、研究開発投資、バイオ燃料事業の商業化等に必要な資金を内部留保しております。資金需要が発生した場合、自己資金で賄うことを基本としつつ、必要に応じて金融機関からの借入金や資本市場からの調達等を含めた最適な手段を検討した上で資金調達を実施いたします。
当連結会計年度末の総資産は59,619百万円となり、前連結会計年度末と比較して2,343百万円の増加となりました。これは主に、商品及び製品が681百万円、無形固定資産が2,258百万円それぞれ減少した一方で、現金及び預金が5,837百万円増加したこと等によるものです。
負債は39,404百万円となり、前連結会計年度末と比較して1,482百万円増加となりました。これは主に、長期借入金が2,524百万円減少した一方で、転換社債型新株予約権付社債が4,800百万円増加したこと等によるものです。
純資産は、前連結会計年度末から860百万円増加し、20,214百万円となりました。この結果、自己資本比率は33.9%となりました。
(1) 食品用ユーグレナ原料の優先購入等
契約先 |
契約名称 |
契約内容 |
契約期間 |
伊藤忠商事株式会社 |
業務提携に関する覚書 |
ユーグレナ原料及びユーグレナ含有サプリメントの優先購入契約 |
2008年5月2日から下記「原料取引契約書」の終期まで |
伊藤忠商事株式会社 |
原料取引契約書 |
食品利用ユーグレナ原料の取引基本契約 |
2009年3月27日から 2011年3月26日まで (以後1年毎の自動更新) |
伊藤忠商事株式会社 |
独占購入に関する覚書 |
食品利用ユーグレナ原料の独占購入・独占販売契約 |
2009年10月1日から 2012年9月30日まで(以後3年毎の自動更新) |
(2) 加水分解ユーグレナエキス配合化粧品等に関する製造委託
契約先 |
契約名称 |
契約内容 |
契約期間 |
日本コルマー株式会社 |
取引基本契約書 |
化粧品の研究・製造に関する取引基本契約 |
2008年10月1日から 2009年9月30日まで (以後1年毎の自動更新) |
(3) 共同研究
契約先 |
契約名称 |
契約内容 |
契約期間 |
いすゞ自動車株式会社 |
共同研究契約書 |
微細藻類ユーグレナを原料としたディーゼル・エンジン向けのバイオ燃料による車輛走行の実現及び普及に向けた共同研究開発 |
2014年6月14日から 2026年3月31日まで |
(4)業務提携
契約先 |
契約名称 |
契約内容 |
契約期間 |
アリナミン製薬株式会社 |
共同開発契約書 |
ユーグレナを配合する新たな製品の共同開発契約 |
2017年6月19日から 開発終了時まで |
株式会社丸井グループ |
資本業務提携契約書 |
当社普通株式の割当て及び業務提携の推進 |
2023年1月19日から 2024年1月18日まで (以後1年毎の自動更新) |
ロート製薬株式会社 |
資本業務提携契約書 |
当社普通株式の割当て及び業務提携の推進 |
2023年1月19日から 2024年1月18日まで (以後1年毎の自動更新) |
(5)バイオ燃料精製設備に関する契約
契約先 |
契約名称 |
契約内容 |
契約期間 |
Chevron Lummus Global LLC |
Technology License Agreement |
バイオ燃料精製実証設備を建設するために必要なバイオ燃料アイソコンバージョンプロセス技術ライセンスの許諾に関するライセンス契約 |
2015年5月29日から 2030年5月28日まで (以後5年毎の自動更新) |
Chevron Lummus Global LLC |
Services Agreement for Engineering Services |
バイオ燃料精製実証設備を建設するために必要な設備の基本設計に関するエンジニアリング契約 |
2015年5月29日から 対象設備の稼働日から10年を経過する日まで |
(6)株主間契約及び担保設定に関する協定
契約先 |
契約名称 |
契約内容 |
契約期間 |
投資事業有限責任組合アドバンテッジパートナーズⅥ号 APCP VI, L.P. CJIP (AP) VI, L.P. 投資事業有限責任組合AP VI-QG AP Reiwa F6-A, L.P. 投資事業有限責任組合AP令和F6-B1 東京センチュリー株式会社 |
株主間契約書 |
株式会社Q-Partners及びその子会社の運営、株式会社Q-Partnersの株式の取扱い等に関する合意 |
2021年1月26日から、株式会社Q-Partnersの株式を保有する契約当事者が1者以下になったとき等まで |
株式会社Q-Partners 株式会社みずほ銀行 |
担保権設定に関する協定書(ユーグレナ保有借入人株式等) |
株式会社Q-Partnersが2021年1月27日付で株式会社みずほ銀行との間で締結した金銭消費貸借契約に伴う株式会社Q-Partners債務に係る、当社保有の株式会社Q-Partners株式への担保権の設定 |
2021年1月27日から被担保債務の完済時まで |
(7)簡易株式交換による完全子会社化
当社は、2024年1月10日開催の取締役会において、当社を株式交換完全親会社とし、株式会社サティス製薬及び日本ビューテック株式会社を株式交換完全子会社とする簡易株式交換を実施することを決議し、2024年2月1日付で本株式交換を実施いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
(8)投資有価証券売却益の計上
当社は2024年1月24日、当社が保有する沖縄バスケットボール株式会社(本社:沖縄県沖縄市、代表取締役社長:白木 享)の株式の全てを全保連株式会社(本社:沖縄県那覇市、代表取締役社長:迫 幸治、以下「全保連」といいます)に譲渡することを決議し、2024年1月24日付で全保連との間で株式譲渡契約を締結し、2024年1月31日付で譲渡いたしました。これにより、2024年12月期第1四半期連結会計期間に投資有価証券売却益(特別利益)を計上する見込みであります。
詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
(9)子会社株式の売却
当社は2024年3月13日の取締役会において、当社の連結子会社である株式会社はこ(以下「はこ社」といいます)に関して、当社が保有する同社の全株式をはこ社の代表取締役である亀谷誠一郎氏(以下「亀谷氏」といいます)に譲渡することを決議いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
(1) 研究開発戦略及び研究課題
当社グループの研究開発活動は、付加価値の高い順に、Food(食品)、Fiber(繊維、化成品)、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)、Fuel(燃料)と段階的に事業を展開していく「バイオマスの5F」の基本戦略のもと、「ユーグレナ等の藻類及び光合成生物の生産技術の向上」、「ユーグレナ等の藻類及び光合成生物を活用した製品、技術の開発」、「エネルギー・環境関連技術の開発」の3つを研究課題としております。
また、「選択と集中」の観点から、多様な研究開発テーマを、既存あるいは今後事業化の目途が立っている事業へ貢献するテーマ(事業貢献型)と、研究者の自由な発想を活かして将来の事業シーズを創出するテーマ(未来型)の2種類に仕分けており、両利きの経営を支えつつ、長期的な当社事業領域の変化や拡大にも対応できる研究開発活動を推進しております。
(2) 研究体制
当社グループは、外部との共同研究も活用しながら、ユーグレナ等の藻類及び光合成生物に関する機能性解明や生産技術の向上に向けた研究開発活動、並びに新規素材や新技術の開発等を推進する体制を構築しております。
① グループ内における研究体制
当社グループの研究開発体制は、以下の2つの科学研究所と3つの技術研究所から構成されております。5つの研究所体制で科学研究所は科学と技術の両面から社会実装を目的にした研究を行います。また、研究開発の深化と研究・事業間の連携を強化するため、2024年より各研究所はCo-CEO直下で所管されており、Co-CEOに対する諮問機関としてサイエンティフィック・アドバイザリー・ボードを設置しております。
先端科学研究所(神奈川県横浜市鶴見区)
ヒト科学研究所(神奈川県横浜市鶴見区)
資源サーキュラー技術研究所(神奈川県横浜市鶴見区)
生産技術研究所(沖縄県石垣市)
熱帯バイオマス技術研究所(マレーシア国クアラルンプール市)
② 外部との共同研究体制
当社グループ内で実施している研究開発・技術開発に加えて、大学をはじめとする公的研究機関や、企業との連携を進めることで、オープンイノベーションによる社会実装の加速を目指しております。
a.公的研究機関との共同研究体制
大学をはじめとする公的研究機関が得意とする研究領域において、公的研究機関との間で研究委託または共同研究を実施し、その知見を当社グループが活用することで、単独では実現できない研究開発・技術開発を実現しております。
b.企業との共同研究体制
研究開発・技術開発成果の事業化を加速化するために、バイオマスの生産や生産された素材・原料の活用方法を独自で研究開発するだけではなく、実際に商品やサービスを供給するマーケットに近い企業との間で共同研究を実施しております。
(3) 研究主要課題及び研究成果
研究主要課題及び研究成果は次のとおりであります。なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は
① ユーグレナ等の藻類及び光合成生物の生産技術の向上(全事業共通)
「藻類生産の低コスト化」及び「生産技術の普遍化」を主な目的として、生産技術の継続的な向上に取り組んでおります。「藻類生産の低コスト化」に関しては、既存製品の製造原価を低減するとともに、コストが障壁となっていた新たな製品カテゴリーへの参入を可能とすることを目指しております。「生産技術の普遍化」に関しては、ユーグレナ粉末やクロレラ粉末等の生産を、現在の生産拠点である沖縄県の石垣島だけでなく、世界中のあらゆる場所で生産を可能とすることを目指しております。当連結会計年度は、コスト削減に向けた研究開発を継続するとともに、社外との共同研究により、宇宙空間向けの超小型細胞培養モジュールを開発いたしました。
② ユーグレナ等の藻類及び光合成生物を活用した製品、技術の開発(ヘルスケア事業中心)
ユーグレナ等の藻類及び光合成生物を活用した新規素材開発、またそれらの機能性を解明することで、顧客に対する新たな価値提供を可能とすることを目指しております。当連結会計年度は、新たな化粧品原料として「ミドリ麹エキス」や医薬部外品対応も可能な「ユーグレナ発酵オイル」を開発したほか、ユーグレナ粉末抽出物によるインフルエンザウイルスや肺がんの増殖抑制効果に関するフォローアップ研究の成果、ならびに八重山クロレラの摂取がマイコトキシンの排出を促進することを示す研究結果等を発表しました。今後も、これまでに解明された知見を活かすとともに、新規の機能性を解明することで、高付加価値の新製品開発や現在は製品化されていない領域における利用技術の開発を推進してまいります。
③ エネルギー・資源循環関連技術の開発(バイオ燃料事業・その他事業)
当社グループでは、バイオ燃料の研究開発を進めるとともに、藻類生産や未利用資源活用等を通じて地球環境に貢献できる技術開発を進めております。
a.バイオ燃料
光合成生物は大気中のCO2を吸収して増殖するため、光合成生物由来のバイオ燃料はカーボンニュートラルな代替燃料として期待されております。ユーグレナは、体内にて生成される脂質が炭素数14をピークとして12~16の脂肪酸を多く含んでいることから、バイオジェット燃料に適した脂質生産が可能と期待されています。当連結会計年度においては、ユーグレナ由来脂質を原料の一部として製造したバイオジェット燃料や次世代バイオディーゼル燃料の供給先を拡大するとともに、バイオ燃料原料用途のバイオマスの生産・利用に関する研究を推進するために、マレーシアに熱帯バイオマス技術研究所を設立しました。今後も、当社グループが有する独立栄養培養と従属栄養培養の両技術を活用しながら、ユーグレナ等の品種改良、培養・回収・加工関連の各要素技術の開発を継続し、独自性の高いバイオ燃料原料としての大規模商業生産の早期実現を目指します。
b.飼料・肥料
当社グループは、ユーグレナ等の微細藻類を飼料・肥料の原料や付加価値向上素材として活用する研究開発を推進しております。また、バイオ燃料の研究開発を進める中で、発電所の排ガスに含まれるCO2、排水場等で不可避的に発生する窒素やリン、食品廃棄物等の多様な未利用資源を、微細藻類生産のための原料として利活用することを目指しております。さらに、未利用資源の収集・加工・活用技術に関する研究開発を通じて、資源をバイオ燃料・飼料・肥料等の原料として循環利用する技術の確立も目指しております。当連結会計年度においては、ユーグレナと海藻のカギケノリの混合飼料が反芻家畜のメタン排出を軽減する効果や、脱脂ユーグレナを飼料の一部に用いた水産養殖試験にて養魚用飼料の代替原料になる可能性を確認しました。また、サステナブルアグリテック事業部と連携し、ユーグレナ配合培養土を用いた個人向け栽培キットのテスト販売を実施したほか、当社グループとパートナーによる国内未利用資源である鶏ふん堆肥を用いたペレット肥料開発が農林水産省の「ペレット堆肥の広域流通促進モデル実証」に採択されました。
(4) 研究開発成果の特許化
当社グループは、研究開発活動における成果について、積極的に特許化に取り組んでおります。
主要なグループ会社において保有している特許は、当連結会計年度末現在、国内68件、海外19件であり、また現在出願中の特許は国内37件、海外10件(特許協力条約による出願は含まない)であります。