第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものです。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループでは、私たちの使命や考え方の基盤、行動の原則をMissionを頂点に据えた「Nissha Philosophy」に定め、大切にしています。Missionは私たちの存在意義・使命を、またShared Valuesは社員一人ひとりの考え方や行動の基本指針をそれぞれ表しています。

 

1. Mission

私たちは世界に広がる多様な人材能力と情熱を結集し、継続的な技術の創出と経済・社会価値への展開を通じて、人々の豊かな生活を実現します。

2. Shared Values

Customer is Our Priority

私たちは、お客さま価値の最大化を追求します。

Diversity and Inclusion

私たちは、多様な人材能力が対等に関わり合うことにより、組織の実行力を高めます。

Commitment to Results

私たちは、成果を出すことにこだわります。

Accomplished with Efficiency

私たちは、スピード重視で仕事を完遂します。

Act with Integrity

私たちは、誠実に行動し、信頼される企業であり続けます。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略と目標とする経営指標

1. サステナビリティビジョン(長期ビジョン)

当社グループは、Missionのもと、2030年のあるべき姿をサステナビリティビジョン(長期ビジョン)として示しています。多様な技術や人材能力の結集・融合により、メディカル・モビリティ・環境に関わるグローバルな社会課題の解決に貢献し、人々の豊かな生活を実現することを目指しています。その骨子は以下のとおりです。

① 社会価値の創出

・事業活動を通じた社会課題の解決

・医療課題の解決、安全・快適なモビリティの実現、循環型社会への貢献

・2050年カーボンニュートラルを見据え、CO2総排出量を30%削減(2020年比)

② 経済価値の創出

・売上高3,000億円(うち1,500億円がメディカル分野)

・ROE15%

・営業利益率12%

2. 第8次中期経営計画

当社グループは、2030年のあるべき姿であるサステナビリティビジョンの実現に向け、第8次中期経営計画(3カ年)を2024年1月から運用しています。第8次中期経営計画では、安定的な成長と資本効率性の向上を志向し、これまでに構築した事業ポートフォリオの強化を通じて、利益率の向上と安定化を実現します。

医療機器、モビリティ、サステナブル資材などの市場においては、オーガニックな成長とM&Aの両面で事業を拡大し、社会課題の解決に資する製品群・サービスの拡充を目指します。IT機器市場においては、生産体制の最適化を含めた生産性・効率性の改善を追求します。

また、将来の持続的な成長を実現するために、自社開発に限らず業務提携やM&Aなどを通じて、新たな事業や製品群の開発を加速します。

 

第8次中期経営計画における業績計画は以下のとおりです。

 

2024年 計画

2025年 計画

2026年 計画

(M&A含まない)

2026年 計画

(M&A含む)

ROE

3.3%

5.9%

9%以上

9%以上

売上高(百万円)

186,500

193,500

210,000

225,000

営業利益(百万円)

5,800

9,000

15,000

16,500

(営業利益率)

(3.1%)

(4.7%)

(7.1%)

(7.3%)

非IT機器の重点3市場

 

 

 

 

営業利益(百万円)

6,250

8,700

13,000

14,500

(営業利益率)

(5.7%)

(7.5%)

(10.2%)

(10.2%)

 

 

(3) 会社の対処すべき課題

サステナビリティビジョンの実現のために「事業機会の創出」「リスクの低減」「経営基盤の強化」「ガバナンスの推進」をマテリアリティとして特定しています。2030年のあるべき姿を起点にバックキャストして具体的な戦略項目、KPIを設定し、取り組んでいます。

NISSHAグループのマテリアリティ

・事業機会の創出

・医療課題の解決

・移動・物流の安全性・快適性、環境負荷の低減に貢献

・サーキュラーエコノミーの推進

・リスクの低減

・人権の尊重

・気候変動への対応

・責任ある製品・サービスの提供

・持続可能な調達

・生成AIの普及に対応したデータセキュリティ

・経営基盤の強化

・人的資本の充実

・効率性・生産性の向上

・ガバナンスの推進

・取締役会の実効性の向上

・グローバルガバナンスの高度化

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

当社グループは、サステナビリティを「企業と社会の持続的な成長・発展を両立する取り組み」と捉えています。この考えのもと、社会課題を事業機会と捉え、当社の強みを活かして、その解決につながる製品・サービスを提供し続けるとともに、事業活動を支える経営基盤の強化や企業の持続性を阻害するリスクの低減、それらを適切に進めるためのガバナンスの推進に努めています。こうした活動によってMissionに掲げる経済・社会価値を創出し、人々の豊かな生活を実現します。

当社グループは、2030年のあるべき姿をサステナビリティビジョン(長期ビジョン)として定めています。多様な技術や人材能力の結集・融合により、メディカル・モビリティ・環境に関わるグローバルな社会課題の解決に貢献することで、社会・経済価値を創出するとともに、2050年のカーボンニュートラルを見据えて、2030年にCO2総排出量の30%削減(2020年比)を実現することを目指しています。

 

(1) ガバナンス

当社は、代表取締役社長を委員長、取締役専務執行役員(ESG推進担当)を副委員長とする、サステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会は、事業組織や担当部門およびESGタスクフォースで構成され、「事業機会の創出」「リスクの低減」「経営基盤の強化」「ガバナンスの推進」のそれぞれのテーマに関連するマテリアリティについて、連携して活動しています。

ESGタスクフォースは、マテリアリティの中でもESGの観点から特に重要と考えられる項目について設置し、それぞれの活動を推進しています。

サステナビリティ委員会は、マテリアリティごとの戦略項目、目標(KPI・アクションアイテム)について、事業組織や担当部門およびESGタスクフォースから、定期的に進捗の報告を受けて確認しています。また、その活動状況を年1回取締役会に報告しています。

取締役会は、サステナビリティ委員会の活動状況を監督するとともに、サステナビリティ委員会からの報告内容について議論し、必要に応じて改善を指示しています。


 

(2) リスク管理

当社グループは、サステナビリティビジョン(長期ビジョン)を実現するために特に重要性の高い項目をマテリアリティとして特定し、2030年を起点にバックキャストして具体的な戦略項目、目標(KPI・アクションアイテム)を設定し取り組んでいます。マテリアリティは「事業機会の創出」「リスクの低減」「経営基盤の強化」「ガバナンスの推進」の視点で、「社会・ステークホルダーにとっての重要度」と「NISSHAにとっての重要度」の2軸を用いて評価しています。抽出された課題および当社グループにおけるその位置付けについてサステナビリティ委員会で優先順位を付け、取締役会での審議および決議を経て、マテリアリティを特定しています。

サステナビリティ委員会は、年1回総会を開催し、取締役会で決議されたマテリアリティを主管する事業組織や担当部門およびESGタスクフォースが設定した戦略項目、目標(KPI・アクションアイテム)を承認します。

事業機会の創出にかかる活動は、事業組織が担当し、月次で開催される会議(ビジネスレビュー)において、代表取締役社長に対して報告し、代表取締役社長は事業戦略の進捗をKPIに基づいて確認し、必要なアクションを指示しています。

 

リスクの低減、経営基盤の強化、ガバナンスの推進にかかる活動は、担当部門およびESGタスクフォースが担当し、サステナビリティ委員会で承認された目標(KPI・アクションアイテム)に基づいて活動し、その状況を四半期ごとにサステナビリティ委員会に対して報告しています。

 

(3) 戦略・組織目標

① 気候変動への対応

(ⅰ) 戦略

当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言の枠組みを活用し、気候変動に関するリスクと機会が当社事業に与える財務的影響について分析しました。

シナリオ分析は、当社が展開するおもな3事業のうち、ディバイス事業と産業資材事業を対象とし、短期・中期・長期の時間軸でリスクと機会を抽出し、脱炭素化がより進展する「1.5℃シナリオ」と気候変動の対策が進展しない「3℃シナリオ」を用いて、2030年時点の当社事業に与える財務的影響について分析しました。

いずれのシナリオにおいても、気候変動の影響による重大なリスクは現段階では見つかりませんでしたが、引き続きそれぞれのリスクに適切な対応策を実施していきます。また、気候変動の影響による機会については、当社の事業機会につながりうる需要の高まりを確認しました。

今後も1.5℃および3℃それぞれのシナリオにおける事業環境の動向を注視し、戦略的に事業を展開していきます。

リスクの分析結果

種別

外部環境の変化

対象事業

時間軸

当社のリスク

リスクの大きさ

※1、※2

3℃

1.5℃

炭素税の導入

産業資材

ディバイス

中期~長期

CO2排出への炭素税課税による生産・対策コストの増加

炭素税課税による製品の生産に必要な原材料調達コストの増加

各国の炭素排出目標・

政策の変化

産業資材

ディバイス

中期~長期

再エネ電力への切り替えや賦課金の高騰等による

電力調達コストの増加

ディバイス

物流(調達・出荷)におけるCO2排出量の削減コストの増加

プラスチック税の導入

産業資材

中期~長期

プラスチック関連規制の進行に伴う

製品の生産に必要な原材料調達コストの増加

フロン規制の導入

ディバイス

中期~長期

生産拠点で使用している特定フロンおよび

代替フロンの使用規制の進行に伴う設備投資コストの増加

原材料価格の変動

産業資材

中期~長期

原油需要の変化に伴う石化原料コストの増加

再生プラスチック使用率の引き上げに伴う原材料コストの増加

EV の販売台数拡大

産業資材

短期~長期

市場構造の変化に伴うEV関連製品の販売機会の減少

お客さまの行動の変化

(お客さまからのCO2排出量削減要請の増加)

ディバイス

短期~中期

お客さま要請への対応不足による

事業機会の損失に伴なう売上高の減少

環境負荷の低い

素材や技術への移行

ディバイス

短期~中期

製品梱包材の素材の置き換えによるコストの増加

当社製品が他社の低炭素製品に代替されることに伴う売上高の減少

低炭素技術の開発遅延による事業機会の損失に伴う売上高の減少

お客さまのサプライヤー

選定におけるESG評価の

重要性の高まり

ディバイス

短期~中期

気候関連問題への対応遅延等によるESG評価の低下、

サプライヤーとして選定されないことに伴う売上高の減少

※3

異常気象の激甚化

産業資材

ディバイス

短期~長期

・生産拠点の被災により生産が遅延・停止することに伴う売上高の減少、建物・設備・在庫等、自社資産の毀損による修繕コストの発生

・サプライヤーの被災による原材料・部品の供給停止の影響に伴う当社売上高の減少

 

※1 リスクの大きさの評価軸: 

   売上高減少(年間)大:-200億円~、中:-50~200億円、小:- ~50億円  利益減少(年間) 大:-30億円~、中:-10~30億円、小:- ~10億円

※2 シナリオにおいて当該リスクが発現しない場合は「―」を記載

※3 物理リスクについては、財務への影響度に発生頻度を考慮して評価

 

機会の分析結果

種別

外部環境の変化

対象事業

時間軸

当社の機会

機会の大きさ

※1、※2

3℃

1.5℃

炭素価格、各国の

炭素排出目標・政策

産業資材

ディバイス

中期~長期

GHG排出量削減に寄与する製品への需要の拡大

(高リサイクル性加飾フィルム成形品、

冷媒検知用ガスセンサーモジュール等)

産業資材

中期~長期

プラスチック関連規制の進行に伴う

植物由来のサステナブル成形品の販売機会の増加

EV の販売台数拡大

産業資材

ディバイス

短期~長期

市場構造の変化に伴うEV関連製品の販売機会の増加

(外装向け加飾フィルム成形品・機能製品、タッチセンサー等)

原材料価格の変動

産業資材

中期~長期

植物由来プラスチックのコスト低下による

サステナブル成形品の需要増加に伴う販売機会の増加

水素活用社会の到来

ディバイス

中期

FCV(燃料電池自動車)関連製品への需要の拡大

(水素ディテクター等)

 

※1 機会の大きさの評価軸:

   売上高増加(年間) 大:+200億円~、中:+50~200億円、小:+~50億円  利益増加(年間) 大:+30億円~、中:+10~30億円、小:+~10億円

※2 シナリオにおいて当該機会が発現しない場合は「―」を記載

 

(ⅱ) 指標と目標

当社は、気候変動に関連するリスクの評価・管理指標をCO2総排出量としています。サステナビリティビジョンでは2050年のカーボンニュートラルを見据え、2030年におけるCO2総排出量(スコープ1および2)を30%削減(2020年比)することを目指しています。

 

② 人的資本・多様性

(ⅰ) 戦略

《人事基本方針》

当社が人事戦略を展開する上で拠り所とする人事基本方針には、「多様な人材能力と情熱の結集」という表現が当社のMissionからそのまま引用されており、また「会社と社員がともに成長する」ことを記載しています。当社は市場環境の変化を事業機会と捉え、人材能力とコア技術の多様化を原動力に、お客さまへの価値提案を向上させ成長を続けてきました。こうした変化による成長は当社の経営戦略の根幹にありますので、人事基本方針には経営戦略と人事戦略が同期すべきものであることを明瞭に示しています。


 

《人事戦略の全体像(戦略マップ)》

当社の人事戦略が目指すところは、次に示す戦略マップの通り、お客さまへの価値提案を向上させる人材能力を育成することに尽きます。当社のお客さまはモビリティや医療機器、IT機器、家電など多業界に渡りますが、その業界を代表するようなグローバル企業が多く、私たちはお客さまが展開する製品の重要なパーツをカスタマイズで手掛けます。そのためにはお客さまの課題を的確に捉え、当社の加工技術を組み合わせ、安定した製品品質を保持し、お客さま価値を実現するような一連の提案力と課題解決力を有した人材能力とチームワークが必要となります。私たちの仕事は、国や地域を超えてグループ会社が連携し、多様な人材能力が協力することで成立しています。

お客さまへの価値提案を向上させるためには、専門性や得意分野の異なる多様な人材が結集しチームとして活躍する必要があり、同時に彼ら個々人が高いモチベーションを保持していることが重要です。したがって、私たちの人事戦略は「価値提案の向上」、「多様な人材の活躍」、「社員エンゲージメントの向上」を起点とし、それを実現するために社内のプロセスはどう進化すべきか、人事制度や組織風土はどう変化すべきか、といった因果関係を意識した施策にブレイクダウンされていきます。それぞれの施策にはその進捗を可視化するためのKPIや具体的なアクションを設定しています。

 

人事戦略の全体像(戦略マップ)


 

(ⅱ) 指標と目標

《多様な人材の活躍》

当社グループは、国籍・性別・年齢などに関わらず、すべての社員が持てる能力を十分に発揮できることを目指しています。社員の行動原則であるShared Valuesの一つとして「Diversity and Inclusion」を掲げており、多様な人材能力が対等に関わり合うことにより、組織の実行力を高めることを宣言しています。当社グループでは多様性の象徴の一つとして女性管理職比率をKPIに設定し、女性管理職比率を女性社員比率に近づけることを目標に、さまざまな取り組みを推進しています。海外グループ会社と比べると日本の女性管理職比率が相対的に低い水準に留まっていますが、管理職昇格直前やそれに次ぐ世代の女性社員の比率は着実に増加しています。多様な働き方を可能にする各種制度の充実や働きやすい職場づくり、研修機会の充実と実践機会の提供などの取り組みを通じて、多様な人材の定着・育成に努めています。

KPI

目標値

実績

2023年

2030年

2022年

2023年末

女性管理職比率(グローバル連結)

21%

25%

21.5%

22.7%

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地域別の

内訳


 

 

(参考)女性社員比率

実績

2023年末

2022年末

2023年末

グローバル連結

38.5%

21.5%

22.7%

 

日本(NISSHA単体)

28.6%

5.9%

7.1%

 

北米

45.1%

32.0%

32.1%

 

南米

68.5%

44.2%

46.5%

 

欧州

32.7%

19.4%

23.7%

 

中国・台湾・韓国

53.2%

40.2%

42.9%

 

東南アジア

49.0%

36.4%

42.9%

 

 

《社員エンゲージメントの向上》

社員が情熱をもって働き、会社と社員がともに成長するためには、会社がそれを後押しする仕組みを整備し、働きやすい組織風土を醸成することで社員エンゲージメントを向上させることが重要だと考えています。その取り組みの一つとしてエンゲージメントサーベイを2022年に開始、2023年の上期には国内で働く全正社員に加えて、契約社員にも対象を拡大し、下期には海外の工場勤務者などを除く社員、合わせて約3,100名の社員に対して実施しました。このサーベイは当社の成長の源泉となる「多様な人材能力と情熱」をより向上させるための課題を特定し、あるべき姿に改善していくことを目的としており、今後も毎年実施予定です。

昨年と比較して、注目している指標においては概ね向上が見られ、この間の職場でのアクションが成果をあげていることを示しています。また、社員の関心が高まったことから、回答率も大幅に向上しました。更なる改善を目指し、会社や事業、職場単位で結果を分析し、具体的なアクションにつなげています。今後も継続的に取り組みを実施することで、すべての社員が情熱をもって働く企業風土を醸成していきます。

 

KPI

目標値

実績

2022年

2023年

回答率(グローバル連結)

80%以上

83.0%

94.2%

 

 

設問に対する肯定的回答者の割合(グローバル連結)

2022年

2023年

組織貢献意欲

私はNISSHAに貢献したいと思う

95.6%

95.5%

組織コミットメント

私はNISSHAで働くことを誇りに思う

87.8%

89.0%

やりがい

私は自分の仕事にやりがいを感じている

82.3%

83.4%

社会貢献実感

私は仕事を通じて社会に貢献していると実感している

78.8%

80.6%

 

 

《学習と成長の機会充実》

当社は経営基盤の強化を目的に、マテリアリティの一つとして「グローバル人材・経営人材の育成」を掲げ、教育研修を充実させるとともに、研修受講者への実践機会を提供しています。当社グループの企業内大学「Nissha Academy」では広範な研修プログラムを用意しています。選抜型研修の「Business School」は経営戦略の立案と実行に関わる知識とスキル習得に重点を置いた当社オリジナルプログラムであり、初級編(職場のリーダークラスを対象)・中級編(管理職への登竜門)・上級編(上級管理職を対象)の3コースが用意されています。特に、初級編・中級編の修了者には、重要プロジェクトや中期経営計画の立案への参画など、学んだことを実践する場を積極的に提供しています。これらの取り組みを測るKPIとして「リーダー候補者の選抜率」を掲げ、2030年までに当社の一般社員の半数がBusiness School(初級編・中級編)を受講することを目指しています(選抜率50%)。2023年は職場のリーダークラスを対象にした初級編を上期と下期の2回に分けて実施し、2023年の選抜率は目標値である36%を上回りました。加えて、海外のグループ会社へのNissha Academyの展開も進めており、欧米では独自のプログラムの検討を進めているほか、2023年前半にはNissha Korea(韓国)から3名の社員が京都本社で開催されたBusiness Schoolの初級編の研修を受講しました。

また、当社グループでは、学びを生かして成果を出した社員へのさまざまな表彰制度を設けています。連結業績への多大な貢献を称える社長賞を始めとする全社表彰のほか、グループ会社においても顕著な活躍をした社員を称える「グループ会社代表賞」などを運用しています。成果を出した社員を称える意味を込めたグローバルなタグライン「Performance Champion」を制定しており、当社グループ内のいずれの表彰も統一した考え方・ビジュアルのもと運用されています。このように「Nissha Academy」を通して教育研修を受けた社員が、学びを職場で実践し、優れた成果を出した社員を「Performance Champion」として称えることで成長を後押しし、会社と社員がともに成長していく姿を目指しています。

 

KPI

目標値

実績

2023年

2030年

2022年

2023年末

リーダー候補者の選抜率(NISSHA単体)

36%

50%

31.2%

43.7%

 

 

 

 

3 【事業等のリスク】

<当社グループのリスク管理体制について>

当社グループはMissionに「人材能力とコア技術の多様性」を成長の原動力として、高い競争力を有する特徴ある製品・サービスの創出によりお客さま価値を実現し、「人々の豊かな生活」の実現に寄与することを掲げています。このMissionのもと、2030年のあるべき姿をサステナビリティビジョン(長期ビジョン)とし、サステナビリティビジョンの実現のために取り組むべき重要な機会・リスクをマテリアリティ(重要項目)として特定し、具体的な戦略項目、KPI・アクションアイテムを設定し取り組んでいます。また、リスク管理基本方針のもと、事業活動の継続性を阻害するリスクを一元的に管理し、リスクを把握・分析・評価した上で、重要なリスクを選定し、モニタリングによりリスクの回避・低減に取り組んでいます。

 

(1) サステナビリティビジョン(長期ビジョン)の実現を阻害するリスク(マテリアリティ)

当社は、代表取締役社長を委員長、取締役専務執行役員(ESG推進担当)を副委員長とする、サステナビリティ委員会を設置しています。詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組  (1) ガバナンス、(2) リスク管理」をご参照ください。

 

(2) 事業活動の継続性を阻害するリスク

当社は、リスク管理基本方針のもと、取締役専務執行役員(法務担当)を委員長とする、リスク管理・コンプライアンス委員会を設置しています。事業活動の継続性を阻害するリスク(事業戦略および事業内容に関するリスク、財務に関するリスク、全社横断的なリスク)を一元的に管理し、リスクを管理する部会や部門と連携して、全社的な視点から優先順位をつけ、適切にコントロールしています。

 

両委員会は、四半期ごとに目標(KPI・アクションアイテム)の進捗を確認し、活動状況を年1回取締役会に報告しています。

 


 

<事業等のリスク>

経営者が当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) サステナビリティビジョン(長期ビジョン)の実現を阻害するリスク(マテリアリティ)

① 気候変動への対応

パリ協定を受けて温室効果ガスの削減に向けた対応が世界共通の解決すべき社会課題と認識され、早急な対応が求められています。

世界全体が低炭素社会に移行する場合、温室効果ガス排出規制、エネルギー効率規制、炭素税など環境関連の法規制の強化やお客さまなどからの要請への対応が必要となり、追加費用が発生する可能性や、要求水準を満たさないことによる機会損失のおそれがあります。一方、気候変動に伴う自然災害の影響により、工場の生産能力の低下、サプライチェーンの寸断による原材料の供給断絶などが発生し、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

気候変動への対応としては、サステナビリティビジョン(長期ビジョン)のなかで、2050年カーボンニュートラルを見据えて、当社グループの事業活動によって発生するCO2総排出量(スコープ1および2)の30%削減(2020年比)を目標として掲げており、再生可能エネルギーへの転換など具体的な取り組みを進めています。

② 人権の尊重

当社グループは、継続的な企業活動を行う上で人権を尊重した事業活動が必要不可欠と認識しています。当社グループおよびサプライチェーン上で、児童労働、強制労働、外国人労働者の差別等の人権にかかる問題が生じた場合は、当社グループの社会的な信用が低下し、お客さまとの取引停止、訴訟や賠償金の支払いが発生するおそれがあります。

当社グループは、関連法令や国際規範を順守するとともに、国際的な行動規範であるRBA(Responsible Business Alliance)を参照した「労働・人権に関する基本方針」を定め、全社員に展開しています。

また、「人権の尊重」について、サステナビリティ委員会のもとにESGタスクフォースを設置して取り組んでいます。2023年度は、労働・人権リスク発生の高い地域(中南米、東南アジア、中華圏)における1次サプライヤーの児童労働・強制労働の発生件数0件をKPIとして、対象サプライヤーに対してアンケート調査し確認するとともに、そのうち9社に対して実地監査を行いました。

③ 人的資本の充実

当社グループでは人種・国籍・性別にかかわらず、さまざまな伝統や文化を持つ社員が働いています。その多様性を尊重し、社員の個性や強みを活かし、当社グループのビジョンを実現することを目指しています。一方で当社の事業ポートフォリオの組み換えに沿った人材を十分に確保・育成ができない場合、ビジョンの実現が困難となり、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループは、人事基本方針に基づき、会社とともに成長しビジョンの実現に資する人材を育成する人事制度の策定、女性活躍の推進や研修によるリーダー・幹部候補の育成に取り組んでいます。また、第8次中期経営計画で定める重点市場に向けた教育研修プログラムにより、社員の能力の拡充を図るなど、リスクの最小化に努めています。

また、「人的資本の充実」について、サステナビリティ委員会のもとにESGタスクフォースを設置し、女性管理職比率やリーダー候補者の選抜率をKPIとして取り組んでいます。

④ 取締役会の実効性の向上・グローバルガバナンスの高度化

当社グループは、グローバルに事業展開を行っています。ガバナンスや内部統制が機能しなかった場合、子会社等の役員・社員による不正行為や、経営方針に従わない取引や判断が抑止できず、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

当社は執行役員制度を導入し、取締役会が担うべき戦略策定および経営監視機能と、執行役員が担うべき業務執行との分化を図っています。独立性が高い社外取締役を3分の1以上選任し、社外取締役はそれぞれの経験や知見から、有益な指摘や意見を述べ、取締役会の議論は活性化しています。また、取締役会の実効性評価を年1回実施し、取締役会の機能のさらなる向上に努めています。当社のコーポレートガバナンス体制の詳細は、「第4  提出会社の状況  4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

 

グローバルガバナンスについては、事業組織に基づく縦のレポートラインを軸とし、海外グループ会社ごとに月次もしくは四半期でビジネスレビューを実施し、業績や事業活動に関する内容について、本社のマネジメント層がチェックする体制を構築しています。加えて、グループで統一したルールで内部統制システムのチェックや事業活動におけるリスク管理の体制を整備しています。その内容を本社で集約することで、グループ全体のガバナンス状況の把握、必要に応じた迅速な施策の立案・実行に活用しています。引き続き、グローバルリスクマネジメント体制を拡充し、グループ会社のリスク管理の支援とともにモニタリングの強化を図っていきます。

また、当社グループは、国内では公益通報者保護法に基づく内部通報窓口(ホットライン相談窓口)を設置するとともに、主要な海外グループ会社には、別途通報窓口を設置することにより、不適切な行為の早期発見、早期是正に取り組んでいます。

⑤ その他サステナビリティビジョン(長期ビジョン)の実現を阻害するリスク

その他、責任ある製品・サービスの提供、持続可能な調達、生成AIの普及に対応したデータセキュリティ、効率性・生産性の向上に関連するリスクが生じた場合、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業戦略および事業内容に関するリスク

① 成長戦略

当社グループは、2030年のあるべき姿であるサステナビリティビジョンの実現に向け、第8次中期経営計画(3カ年)を2024年1月から運用しています。第8次中期経営計画では、安定的な成長と資本効率性の向上を志向し、これまでに構築した事業ポートフォリオの強化を通じて、利益率の向上と安定化を実現します。医療機器、モビリティ、サステナブル資材などの市場において、社会課題の解決に資する製品群・サービスの拡充による成長を目指しています。市場環境や競争環境の変化、社会の動向、技術トレンドの変化、法令・規制の改正などが原因で、成長戦略が想定通りに進捗しない場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループは、中期経営計画の進捗状況を取締役会で定期的にレビューし、1年ごとに事業環境の変化を反映させたローリングプランを策定し、事業環境の変化に迅速に対応することで、中期経営計画の達成に向けた取り組みを強化しています。

② 特定のお客さまの需要変動

当社グループでは売上高に占める特定のお客さまの割合が比較的高い状況にあります。こうした重要なお客さま向けの販売は、当該お客さまの製品需要の増減や仕様の変更、営業戦略の変更など当社グループによる管理が及ばない事項を理由として変動する場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループはこうした状況に対して、第7次中期経営計画において医療機器、モビリティ、サステナブル資材などの複数の重点市場で成長戦略を遂行し、特定のお客さまの需要変動に関するリスクの最小化を図っており、売上高に占める特定のお客さまの割合は低下傾向となっています。

③ 原材料・エネルギー価格や労働賃金の上昇

当社グループでは、産業資材、ディバイス、メディカルテクノロジーなどの事業を展開し、グローバルに調達・生産・供給体制を構築しています。インフレや金融動向、地政学的な情勢により、原材料・エネルギー価格や労働賃金の想定を超える高騰が当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループはこうした状況に対して、原材料・エネルギー価格や労働賃金の高騰を適切に反映した製品値上げを実行するとともに、効率性・生産性の向上を継続しています。

 

(3) 財務に関するリスク

① のれんの減損損失

当社グループでは事業ポートフォリオの組み換え・最適化のための成長戦略としてM&Aを積極的に活用しています。そのため、当連結会計年度末においてのれんを20,238百万円計上しています。市場環境や競争環境がM&A実行時の想定から大きく変化し買収先会社の業績が悪化した場合、また、経済状況や金利変動等の外部環境の変化により使用価値の算定に使用する成長率および割引率が著しく変動し使用価値が減少した場合、のれんの減損損失が発生する可能性があります。

 

M&Aの実行にあたっては事前にデュー・ディリジェンス(対象企業の調査)を徹底するとともに、買収後の経営統合を促進する体制を構築することでリスクの最小化を図っています。

② 為替の変動

当連結会計年度における当社グループの海外売上高比率は86.6%です。これらは外貨建取引が中心であり、急激に為替レートが変動した場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループではこのような状況に対して、生産の現地化や為替予約取引などにより為替リスクを最小化するように努めています。

③ その他の財務に関するリスク

その他、保有有価証券の時価減少や営業債権の貸倒れ、棚卸資産の陳腐化などが発生した場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性がありますが、適正な管理体制の強化に努めており、リスクの最小化を図っています。

 

(4) 事業活動の継続性を阻害するリスク

2023年度に重要なリスクとして選定された天災(地震・台風・洪水等)や火災などに関するリスクについては、経営層を含むBCP(事業継続計画)訓練の定期的な実施、国内全拠点への安否確認システムの導入などにより、継続的にリスクの最小化に努めています。

それぞれの事業において、情報漏えい、独占禁止法や業法その他の各種法令違反が生じた場合に事業活動の継続が困難になることから、公正な事業活動に関するリスクを重要なリスクとして選定し、経営層も対象とする研修等により、リスクの顕在化を抑止しています。

その他、労働安全衛生、製品・サービスの品質・安全性、サプライチェーンマネジメント、貿易管理に関連するリスクが生じた場合、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクについても、主管する部門や部会が目標(KPI・アクションアイテム)を設定し、これに基づく教育や仕組みづくりなどの活動を通じてリスクを低減しています。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度より、報告セグメントの区分を一部変更しており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 4.事業セグメント」の「報告セグメントの変更等に関する事項」をご参照ください。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

① 財政状態および経営成績の状況

当社グループはMissionに、「人材能力とコア技術の多様性」を成長の原動力として、高い競争力を有する特徴ある製品・サービスの創出によりお客さま価値を実現し、「人々の豊かな生活」の実現に寄与することを掲げています。

このMissionのもと、2030年のあるべき姿をサステナビリティビジョン(長期ビジョン)として定め、多様な技術や人材能力の結集・融合により、メディカル・モビリティ・環境に関わるグローバルな社会課題の解決に貢献することで、社会・経済価値の創出を目指しています。また、サステナビリティビジョンを起点にバックキャストして、2021年から当期までの3年間で目指すべき中期ビジョンとそこに至るための戦略を第7次中期経営計画として定め、グローバルベースの事業基盤を活用したシナジーの最大化による成長基盤の確立を目指し、運用してまいりました。

第7次中期経営計画の最終年度にあたる当期のグローバル経済情勢は、景気は持ち直したものの、製造業においては、モビリティなど一部の産業を除き、インフレやコロナ特需の一巡などの影響により、製品需要が低迷する厳しい市場環境となりました。アメリカでは底堅い個人消費や雇用情勢を背景に景気は回復しましたが、ヨーロッパではインフレや金融引き締め、内外需の低迷などが重石となり景気が停滞しました。中国では内外需の減少や貿易摩擦の影響により、景気の回復が鈍化しました。わが国の経済については、低調な外需を受けて、電子部品などの生産活動が減退し、景気回復の動きは緩やかなものとなりました。

このような状況の下、当期の業績については、産業資材事業のモビリティ向けの製品需要が供給制約の緩和を背景に堅調に推移し、メディカルテクノロジー事業の開発製造受託(CDMO)の需要が活発な市場環境の下で拡大しました。一方で、ディバイス事業のタブレット向けの製品需要がコロナ特需の一巡などにより大幅に減退し、産業資材事業のサステナブル資材(蒸着紙)の製品需要がサプライチェーン在庫の調整長期化により低迷しました。これら需要の動向に加え、サステナブル資材を生産・販売する欧州子会社の割引率上昇を主因とするのれんの減損損失が利益を圧迫しました。

これらの結果、当期における連結業績は、売上高は1,677億26百万円(前期比13.5%減)、利益面では営業損失は38億17百万円(前期は95億20百万円の営業利益)、親会社の所有者に帰属する当期損失は29億88百万円(前期は101億40百万円の親会社の所有者に帰属する当期利益)となりました。

 

セグメントの業績を示すと、次のとおりです。

 

産業資材

産業資材事業は、さまざまな素材の表面に付加価値を与える独自技術を有するセグメントです。プラスチックの成形と同時に加飾や機能の付与を行うIMD、IMLおよびIMEは、グローバル市場でモビリティ、家電製品などに広く採用されています。また、金属光沢と印刷適性を兼ね備えた蒸着紙は、飲料品や食品向けのサステナブル資材としてグローバルベースで業界トップのマーケットシェアを有しています。

当期においては、加飾分野のモビリティ向けの製品需要は、供給制約の緩和を背景に堅調に推移したものの、蒸着紙の製品需要はサプライチェーン在庫の調整長期化などにより低迷し、売上高は前期比で減少しました。需要の動向に加え、サステナブル資材を生産・販売する欧州子会社の割引率上昇を主因とするのれんの減損損失の計上により、営業利益は前期比で減少しました。

その結果、当期の連結売上高は687億62百万円(前期比6.5%減)となり、セグメント利益(営業利益)は93百万円(前期比97.2%減)となりました。

 

 

ディバイス

ディバイス事業は、精密で機能性を追求した部品・モジュール製品を提供するセグメントです。主力製品であるフィルムタッチセンサーはグローバル市場でタブレット、業務用端末(物流関連)、モビリティ、ゲーム機などに幅広く採用されています。このほか、気体の状態を検知するガスセンサーなどを提供しています。

当期においては、コロナ特需の一巡などにより、タブレットや業務用端末向けなどの製品需要が大幅に減退し、売上高および営業利益は前期比で減少しました。

その結果、当期の連結売上高は548億62百万円(前期比31.4%減)となり、セグメント損失(営業損失)は15億80百万円(前期は82億86百万円のセグメント利益(営業利益))となりました。

 

メディカルテクノロジー

メディカルテクノロジー事業は、医療機器やその関連市場において高品質で付加価値の高い製品を提供し、人々の健康で豊かな生活に貢献することを目指すセグメントです。幅広い診療領域で使われる低侵襲医療用の手術機器や医療用ウェアラブルセンサーなどの製品を手がけており、現在は欧米中心に大手医療機器メーカー向けの開発製造受託(CDMO)を展開するとともに、医療機関向けに自社ブランド品を製造・販売しています。

当期においては、活発な市場環境の下で主力のCDMOの製品需要が堅調に推移し、売上高は前期比で伸長しました。需要の動向に加え、インフレなどによるコスト増加に対する生産性や効率性の改善により、営業利益は前期比で増加しました。

その結果、当期の連結売上高は360億11百万円(前期比10.9%増)となり、セグメント利益(営業利益)は14億93百万円(前期比204.6%増)となりました。

 

当連結会計年度末における総資産は2,178億53百万円となり、前連結会計年度末(2022年12月期末)に比べ123億59百万円減少しました。

流動資産は1,074億1百万円となり、前連結会計年度末に比べ180億1百万円減少しました。主な要因は、現金及び現金同等物が164億71百万円、営業債権及びその他の債権が19億57百万円減少したこと等によるものです。

非流動資産は1,104億51百万円となり、前連結会計年度末に比べ56億42百万円増加しました。主な要因は、有形固定資産が5億51百万円、のれんが11億72百万円減少した一方、新規および追加取得等により持分法で会計処理されている投資が37億75百万円、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の公正価値の変動等によりその他の金融資産が26億51百万円増加したこと等によるものです。

当連結会計年度末における負債は1,070億円となり、前連結会計年度末に比べ116億92百万円減少しました。

流動負債は465億92百万円となり、前連結会計年度末に比べ110億38百万円減少しました。主な要因は、営業債務及びその他の債務が108億9百万円減少したこと等によるものです。

非流動負債は604億7百万円となり、前連結会計年度末に比べ6億53百万円減少しました。主な要因は、リース負債が6億56百万円増加した一方、社債及び借入金が9億33百万円、その他の金融負債が6億66百万円減少したこと等によるものです。

当連結会計年度末における資本は1,108億52百万円となり、前連結会計年度末に比べ6億66百万円減少しました。主な要因は、為替換算等の影響によりその他の資本の構成要素が64億47百万円増加した一方、親会社の所有者に帰属する当期損失の計上等により利益剰余金が57億24百万円減少したことに加え、自己株式の取得等により自己株式が13億87百万円増加したこと等によるものです。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ164億71百万円減少し、378億54百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は14億86百万円(前期比87.7%減)となりました。これは税引前損失27億62百万円の計上に対して、主に、営業債務及びその他の債務の減少額として114億5百万円計上した一方、減価償却費及び償却費として91億37百万円、営業債権及びその他の債権の減少額として39億25百万円、棚卸資産の減少額として31億46百万円計上したこと等によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は80億19百万円(前期比82.9%増)となりました。これは主に投資有価証券の売却による収入として8億91百万円計上した一方、有形固定資産の取得として44億30百万円、関係会社株式の取得として37億52百万円支出したこと等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は126億29百万円(前期は10億82百万円の獲得)となりました。これは主に短期借入れによる収入として54億53百万円計上した一方、短期借入金の返済による支出として89億39百万円、リース負債の返済による支出として20億6百万円、長期借入金の返済による支出として20億12百万円、親会社の所有者への配当金の支払として29億48百万円計上したこと等によるものです。

 

③ 生産、受注および販売の実績
a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

産業資材

67,679

△9.5

ディバイス

54,355

△31.8

メディカルテクノロジー

36,524

10.3

その他

7,979

△4.5

合計

166,539

△15.0

 

(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しています。

2. 金額は、販売価格によっています。

 

b. 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

産業資材

55,098

△27.1

12,982

△47.5

ディバイス

41,537

△50.9

12,737

△51.1

メディカルテクノロジー

36,916

4.7

18,312

12.5

その他

8,113

1.0

627

4.8

合計

141,666

△30.4

44,660

△34.0

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しています。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

産業資材

68,762

△6.5

ディバイス

54,862

△31.4

メディカルテクノロジー

36,011

10.9

その他

8,088

1.4

合計

167,726

△13.5

 

(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しています。

2. 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

APPLE OPERATIONS LIMITEDおよびそのグループ会社

53,832

27.8

35,173

21.0

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度における経営成績につきましては、売上高は、前連結会計年度に比べ13.5%減少1,677億26百万円となりました。このうち、海外売上高は1,451億92百万円であり、連結売上高に占める割合は86.6%です。海外売上高は主として産業資材、ディバイスおよびメディカルテクノロジーによるものです。また、売上原価は前連結会計年度に比べ10.8%減少1,351億3百万円、販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ6.0%増加330億円となりました。売上原価、販売費及び一般管理費、その他の費用に含まれる減価償却費及び償却費は前連結会計年度に比べ3.7%減少91億37百万円となりました。その他の収益・費用については、前連結会計年度は為替差益などを主としたその他の収益を9億49百万円計上する一方で、遊休資産諸費用などを主としたその他の費用を26億46百万円計上したのに対して、当連結会計年度では政府補助金収入などを主としたその他の収益を6億98百万円計上する一方で、のれんの減損損失などを主としたその他の費用を38億94百万円計上しました。

これらの結果、営業損失は38億17百万円(前期は95億20百万円の営業利益)となりました。

なお、セグメント別の経営成績につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりです。

金融収益・費用については、前連結会計年度は為替差益などを主とした金融収益を37億68百万円計上する一方で、支払利息などを主とした金融費用を9億16百万円計上しました。また、当連結会計年度においても、為替差益などを主とした金融収益を28億97百万円計上する一方で、支払利息などを主とした金融費用を18億42百万円計上しました。

その結果、税引前損失は27億62百万円(前期は123億73百万円の税引前利益)となりました。

法人所得税費用は、前連結会計年度に比べ88.8%減少2億52百万円を計上しました。

これらの結果、親会社の所有者に帰属する当期損失は29億88百万円(前期は101億40百万円の親会社の所有者に帰属する当期利益)となりました。また、基本的1株当たり当期損失は61円13銭(前期は203円65銭の基本的1株当たり当期利益)となりました。

 

財政状態の分析につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりです。

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

② 資本の財源および資金の流動性

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

当社グループの主な資金需要は、事業上必要な運転資金や設備投資、M&Aによる投資です。これらの資金需要については調達規模や調達市場環境に応じて自己資金および金融機関からの借入や社債の発行等により対応します。また、金融コストの最小化と資金効率の向上のため、日本国内のグループ会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、当社への資金フローの集約により一元的な管理を行っています。

 

③ 経営方針・経営戦略等または経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社グループは、2030年のあるべき姿であるサステナビリティビジョンの実現に向け、第8次中期経営計画(3カ年)を2024年1月から運用しています。第8次中期経営計画では、安定的な成長と資本効率性の向上を志向し、これまでに構築した事業ポートフォリオの強化を通じて、利益率の向上と安定化を実現します。

医療機器、モビリティ、サステナブル資材などの市場においては、オーガニックな成長とM&Aの両面で事業を拡大し、社会課題の解決に資する製品群・サービスの拡充を目指します。IT機器市場においては、生産体制の最適化を含めた生産性・効率性の改善を追求します。

また、将来の持続的な成長を実現するために、自社開発に限らず業務提携やM&Aなどを通じて、新たな事業や製品群の開発を加速します。

第8次中期経営計画で目指す業績計画は以下のとおりです。

 

 

2024年 計画

2025年 計画

2026年 計画

(M&A含まない)

2026年 計画

(M&A含む)

ROE

3.3%

5.9%

9%以上

9%以上

売上高(百万円)

186,500

193,500

210,000

225,000

営業利益(百万円)

5,800

9,000

15,000

16,500

(営業利益率)

(3.1%)

(4.7%)

(7.1%)

(7.3%)

非IT機器の重点3市場

 

 

 

 

営業利益(百万円)

6,250

8,700

13,000

14,500

(営業利益率)

(5.7%)

(7.5%)

(10.2%)

(10.2%)

 

 

④ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記  2.作成の基礎(4)重要な会計上の見積りおよび見積りを伴う判断」に記載しています。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは「印刷」「コーティング」「ラミネーション」「成形」「パターンニング」「金属加工」を6つのコア技術と定義し、特徴ある製品群を創出するとともに、対象市場の多様化、グローバル市場への進出などを通じて事業領域を拡大してきました。

お客さまのニーズに対応する中期的な製品開発は事業部内の開発部門が担い、より長期的な視点に立った研究開発・製品開発は事業開発室が担う体制となっています。

事業部内の開発部門は、お客さまの要望に基づく開発を中心に行い、事業の継続・発展に寄与しています。事業開発室は、当社グループの事業領域の拡大を目指し、開発テーマの調査・企画および新製品の開発・事業化を推進する一方、コア技術の拡張に取り組んでいます。また、開発拠点をグローバルに配置し、地域固有の市場環境やお客さまニーズに対応した製品群の創出を目指しています。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、各セグメントに配分できない当社の事業開発室および事業部の開発部門で行っている基礎・応用費用4,656百万円です。