当グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針・経営環境
当社最終製品市場環境は、生成AI革命により、光学、半導体光学融合、電子デバイスの全事業を通じて、成膜需要拡大が期待されます。光学領域では、スマートフォン上位機種の生成AI機能搭載、カメラの複眼化・大判化による高機能化は続くと見込んでおります。半導体光学融合領域では、当社創業期からの技術である光通信機器への成膜技術を応用した光電融合デバイスへの成膜、スマートグラスやヘッドマウントディスプレイの空間コンピュータへのセンサ・カメラ・ディスプレイへの成膜需要及び市場拡大を見込んでおります。電子デバイス領域では、パワー半導体や全固体電池等のグリーンエネルギー関連分野やBAW/SAW/RFフィルタの通信デバイス関連の成膜需要及び市場規模拡大を見込んでおります。
このように市場は、光学から半導体光学融合・電子デバイスへと事業領域が拡大していることから、当社製品群の構成を見直し、より市場・顧客ニーズを的確にとらえた事業運営を行うため、光学・半導体光学融合・電子デバイスの3つの領域をコア事業と位置づけます。今後、より市場規模拡大が見込める半導体光学融合及び電子デバイスを、光学に次ぐ事業成長の柱にする方針です。
中期経営目標として、営業利益率20%超、ROE(自己資本利益率)10%超と定め、さらなる収益拡大・高効率経営を目指します。キャッシュ・アロケーションは、将来の企業価値の創出に向けた成長・戦略投資に優先的に配分し、必要な運転資金を確保したうえで、継続的・安定的に株主還元を実施いたします。
これらの取り組みを通じ、さらなる成長機会の獲得や顧客価値を創造し、市場環境を勝ち抜く経営基盤の拡充を目指します。
(2) 対処すべき課題
上記、経営方針・経営環境を踏まえ、当社が認識している課題は以下のとおりであります。
① 事業領域別グローバル事業運営体制構築
競争激化するグローバル市場において持続的成長を実現するためには、顧客起点で、本社と各拠点がより一体となって製品・ソリューションを提供していく体制が必要です。従来の地域・拠点を中心とした事業運営から、市場動向・当社製品群にあった事業運営を行うため、光学・半導体光学融合・電子デバイスの3つのコア事業領域に対し、各地域・拠点と各事業領域に属する研究開発・生産・販売・管理の各機能を相互横断的に組織することで、事業領域ごとに権限と責任を明確にしたグローバル運営体制を構築します。事業領域別グローバル運営体制構築により、さらなる成長機会の獲得や顧客価値を創造し、市場競争を勝ち抜く経営基盤の拡充を図ります。
また、中長期的な成長に資する人財への投資を積極的に行い、グローバルで多様な人財採用・育成やエンゲージメントを重視した経営に取り組み、持続的成長を実現する企業を目指します。
② 持続可能なサプライチェーン構築及び成長・戦略投資
異常気象による自然災害や地政学リスクが高まっております。当社グループ事業は中華圏市場への依存度が高く、不測の自体が発生した際にサプライチェーンが寸断される可能性があることから、持続可能なサプライチェーン構築が急務であります。
当社グループは、日本において埼玉県鶴ヶ島市に本社を移転し、グローバル研究開発・生産活動の統括機能を拡充するとともに、新たな研究開発・生産拠点としてベトナムハノイ近郊にOptorun Vina Company Limitedを新設し、東南アジア市場での橋頭保を築くことによってグローバルサプライチェーンのリスク分散を図ります。
中国においては、光馳科技(上海)有限公司の設備投資や光馳半導体技術(上海)有限公司の工場稼働開始に伴い、両拠点における「地産地消」体制を確立し、研究開発強化やさらなるコスト削減・生産効率向上・品質管理を徹底いたします。
また、中長期的な事業成長を目指すため、研究開発支出を通じて成膜技術・ノウハウを進化させるとともに、自社に無い技術の獲得に向けて、他社と技術・事業提携等の連携やM&Aを通じた成長・戦略投資を実施し、事業規模拡大を目指します。また、産学連携による新技術開発及び新事業の創出に取り組み、より一層の企業価値向上を図ります。
③ 資本コストや株価を意識した経営の実現
当社は資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、中期経営計画の経営目標として、営業利益率20%超およびROE(自己資本利益率)10%超を掲げております。株主価値の向上に向けて、持続的な成長を見据え、資本コストを意識した積極的な研究開発、設備投資、M&Aを含む戦略事業提携を推進すると同時に、株主還元としては、安定配当を実施し、機動的な自己株式取得を検討してまいります。
④ サステナブル経営の推進
持続可能な社会の実現と企業の社会的価値向上を目指し、SDGs・ESGへの取り組みを重視したサステナブル経営を推進いたします。
環境・社会においては、昨年、TCFDへの賛同を表明し、CO2排出に関する情報開示を開始しております他、環境負荷を低減する製品開発や地域貢献活動に積極的に取り組み、環境社会に配慮した企業を目指します。また、人的資本に関わる開示も進めております。
ガバナンスにおいては、経営の透明性・公正性を高め、コーポレート・ガバナンスの充実を図るとともに、ステークホルダーと積極的な対話を行い、持続的成長に向けた強固なガバナンスを目指します。
(1) サステナビリティに関する考え方
当社は、創業以来「薄膜技術の限界にチャレンジすることを通じ、高度情報化社会への貢献を実現する」こと
を目指し、人々がより豊かに暮らせる社会の実現に貢献すべく事業を展開しております。事業を行うにあたり、
社会の一員として多くの方々から信頼される企業でありつづけるため、「SDGs(Sustainable Development
Goals)」の達成に貢献すべく、「環境」「社会」「ガバナンス」の観点での取組みを事業運営に反映させており
ます。
詳細は、当社ホームページの「SDGs・ESG」の頁をご参照下さい。
(2)ガバナンス
代表取締役社長執行役員を委員長とし、常勤取締役・執行役員・本社各部長を委員として構成される「リスク管理委員会」を、3ヵ月に1回開催しており、サステナビリティを巡る課題について、リスク管理委員会にて検討・対応を行っております。また、2022年度からは、取締役会に対しても、サステナビリティに関する課題を報告し、課題の検討・対応を監督していく体制を築いております。
(3)戦略
① 人材の育成及び社内環境整備に関する方針
当社の継続的成長実現に向けては、専門性の高い人材の確保および人的資本への投資が重要なります。当社で
は、当社費用負担による社員研修の実施・株式報酬の不要等のフリンジベネフィットの拡充や、大学博士課程へ
の派遣、インターンシップ制の受け入れ等の各種施策を行っております。
また当社では、持続的な成長の土台となる個々の社員の職場環境の意識調査のため、2023年に当社単体の正社
員を対象として従業員エンゲージメント調査を実施致しました。従業員意識について得た情報を、人事・研修制
度をはじめ社内制度の改善に生かして参ります。
当社では、創業以来、当社はグローバルなバックグランドを持つ経営陣による事業運営により、性別や人種・
国籍等を問わず能力ある人材を採用し、適材適所の要員配置により成長を続けてきました。
国内外各拠点では現地化を基本とし、現地の法制度・文化・人員構成に適した組織運営を行っています。
今後も多様な社員構成を最大限に生かし能力向上を目指した取組を行っていくことにしております。主な注力
ポイントは下記の通りです。
・多様性ある人材の採用と適切な役割付与
・グローバル事業を支える多様な労働環境の整備・拡充
・性別・人種・国籍等を問わず、社員の業務貢献に応じた公正な評価・処遇
詳細は、当社ホームページの「SDGs・ESG」の頁をご参照下さい。
なお、多様性確保のために、性別、人種、国籍等の測定可能な目標値を設けることは、適材適所の要員配置以
外の要素により、適材適所の要員配置を阻害する要因になり得ることから、属性毎の目標数値を掲げておりませ
ん。
② 環境社会
当社では、事業を通じてスマート社会や脱炭素社会の進展に大きく貢献することができるとの考えの下、製造
装置の省電力化や太陽光発電の導入等、様々なCO2排出量削減努力に取り組んでおります(詳細につきましては
当社ホームページの「SDGs・ESG」をご参照ください)。
また、TCFD提言の枠組みを活用し、Scope1、Scope2、及びScope3カテゴリ11のCO2排出量の把握を行うと共
に、気候変動が中長期的に事業に影響を及ぼすリスクを特定しております。
③ 人権
人権においては、当社は社員の勤務環境を良好に維持し、社員に関する人権に配慮した会社運営を行っており
ます。また業務面でもとりわけ資材調達・装置営業等で人権尊重の考え方を徹底しており、資材調達関連では、
お取引先に人権尊重に関する規範の遵守を求めております。
(4)リスク管理
「リスク管理委員会」にて気候変動関連リスクを含むグループ全体のリスクを総括的に特定し、管理しております。「リスク管理委員会」では各部署から報告を求め、事業に関する一切のリスクを認識し、かつ、リスクが顕在化したときの会社への影響を評価したうえで、対策立案や実行済みの対策の再検討を行い、成果の発揮につなげております。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財務状況、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断にとって重要であると当社グループが考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。
当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
1.事業環境に由来するリスク
(1) 顧客ニーズへの対応について
顧客の光学薄膜装置に対する要求は益々多様化しています。当社グループが、顧客の要請に応えられなかったり、顧客と共同で製品設計及び開発を行う場合、当社グループによる多大な経営資源を投入しても顧客の要求水準に見合った製品を開発できないか、適切なタイミングで効率的に顧客の要請に応えることができない可能性があります。その結果、当社グループの市場占有率が低下し、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 顧客の設備投資の変動について
当社グループの光学薄膜装置の主要な用途は、従来、スマートフォンが大きな比率を占めておりましたが、新たな市場拡大の流れが加速しております。監視カメラ・IoT(自動車・半導体光学融合・生体認証・AR/VR・光通信)・AI・LED等、様々な分野で光学薄膜機能の応用が進んでおります。特にALD装置がグループ製品ラインナップに加わり、半導体光学融合の分野での市場機会はますます拡がりを見せています。このような状況で、各分野の最終製品のライフサイクルは短期化の傾向を強めており、顧客の設備投資の動向も短期で変動する傾向があります。光学薄膜装置に対する顧客の需要が、当社の想定よりも急激な増減を起こした場合、急激な需要増に対応し切れずに受注機会を逸したり、急激な需要減により受注獲得が困難になるあるいは受注のキャンセルが生じる可能性があり、当社グループの事業展開、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」記載の経営方針、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 新型装置の販売について
ALD装置、新型スパッタ装置等の新たに開発された装置が今後の当社グループの売上高及び利益の中で比率を高
めるものと見込んでおり、見込みどおり新たに開発された装置が販売出来ない場合、業績見込みが達成できず、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 販売代金の決済条件について
当社グループの標準的な決済条件は受注時及び出荷時に販売代金の一部を回収する条件としておりますが、顧客によっては検収後に販売代金の全額を回収する条件となることもあります。従って、当該取引が増加した場合、当社グループの必要運転資金が増加し、資金繰りに影響した場合、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 原材料の仕入価格の影響について
光学薄膜装置は部品数約2,000にも及ぶ部品組み立てが必要な製品です。さらに高い性能を発揮するために、部品を外部部品メーカーに特注する場合も多くあります。また装置性能を試験するために二酸化ケイ素等の高価な化合材料を蒸着に使用しております。従って、これら部品、化合材料の価格推移が装置原価に大きく影響します。
他方で原材料価格は上昇傾向にあります。とりわけ真空部品メーカーは限られており、装置メーカーや類似する部品ニーズのある半導体メーカーが集中して部品を発注する場合、部品メーカーの売り手市場となり、価格高騰の原因となる可能性があります。当社グループは極力計画的な部品発注を行うとともに、協力部品メーカーとの関係強化、新たな部品メーカーの発掘、育成に努力しております。しかしながら、さらに市場が拡大し、各メーカーによる装置生産が増大した場合、一層の部品価格上昇を招き、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 国際情勢の影響について
当社グループは今後の業績伸展には海外での事業展開が不可欠と考えております。このため、東アジアを生産、販売の拠点として、2000年12月に光馳科技(上海)有限公司、2013年9月に光馳科技股份有限公司(台湾)、2021年9月に光馳半導体技術(上海)有限公司をそれぞれ設立し、2020年9月にAfly solution Oyを連結子会社化いたしました。また、2023年7月には、部品加工・販売、設計、顧客支援等の拠点として、Optorun Vina Company Limitedを設立いたしました。さらに、中国、台湾、韓国の企業と販売代理店契約を締結しております。
このような当社グループの海外展開は業績伸展に不可欠と考えておりますが、昨今の国際情勢は、各国の国情を敏感に反映した複雑な状況になっており、政治的な背景が各国経済に影響を与える可能性があります。何らかの関連法規制の変更、紛争等が発生した場合、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社の部品の一部は欧州製であり、2022年2月下旬に開始されたロシアによるウクライナ侵攻は、当社の部品調達計画に影響を与える可能性があります。
(7) 特定の地域情勢の影響について
当社グループの連結売上高は、中国向けが多くを占めております。当社の顧客となる光学部品メーカー及び最終製品メーカーの多くが製造拠点を中国に集中していることに伴い、当社製品の納入先も顧客の製造拠点である中国となるケースが多いためです。また、当社グループは、生産活動を主として光馳科技(上海)有限公司及び光馳半導体技術(上海)有限公司において行っております。当社にとって中国は重要な事業展開地域であり、今後中国の経済、政治、法律、社会情勢等に何らかの変化があった場合、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 外国為替相場の変動について
当社グループは円建て売上の他に、大手スマートフォンメーカーや大手光学部品メーカー等を中心に米ドル建て取引が多くあります。また、当社グループの仕入や賃金の支払の多くは人民元建てで行われております。今後外貨建てによる売上がさらに増えた場合、もしくは外貨建てによる費用支払いが増えた場合、外国為替相場の変動が当社グループの業績に大きく影響を与える可能性があります。当社グループは、外貨ポジションの調整や為替予約等を用いて変動リスクを最小化するよう努めておりますが、当社グループの想定を超える外国為替相場の変動があった場合等には、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 法的規制について
当社グループ製品に使われる部品の一部は、安全保障貿易管理制度の下での規制の対象となりうるものです。当社グループでは、取引先の事業や信用に関する調査を実施しており、上記規制の対象企業の情報を当局からも入手し、関連する省庁への届出や連携を適宜行うことで、上記規制に抵触しないよう細心の注意を払っております。しかしながら、上記規制が変更された場合や、万が一に意図せず上記規制に抵触してしまった場合、そのための対応費用が生じる可能性があり、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 環境法規制について
当社グループは、環境理念及び行動指針を定め、環境問題に積極的に取り組んでおります。しかしながら、天災、人為的なミス等により環境汚染等に至るリスクが発生した場合や、関係法令の改正等により新たな設備投資等の必要性が生じた場合には、コストの増加を招き、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
2.事業内容に由来するリスク
(1) 売上計上について
当社グループの製品は受注生産を行っております。個別装置により仕様は様々であり、生産ラインでの装置完成後、工場内検収を行い、完了した装置について、出荷、顧客工場での据付、再検収を行います。このプロセスが終了した時点で、検収書を顧客より受領し、納品が完了いたします。場合によってはこのプロセスで顧客からの性能に関する追加的な要望や検収までに装置の使用方法を納入先の従業員に教育することが求められる等の当社グループではコントロールしがたい追加的なプロセスに時間を要し、最終の検収期間が遅れる可能性があります。当社グループは、売上を顧客による製品検収後に計上するため、上記のような理由により、製品の納入又は検収が当初予定の時期よりも遅れた場合には、売上計上が遅れることになり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 特定顧客への依存について
当社グループは、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ④ 生産、受注及び販売の実績(ハ)販売実績」に記載のとおり、特定顧客への依存度が比較的高い状況にあります。当社グループは、新規事業や新規得意先の開拓により特定の得意先に依存しない収益体制を構築しつつあります。しかしながら何らかの理由により特定顧客との関係に変化が生じた場合や、既に受注した案件についてキャンセルが生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 特定技術への依存について
当社グループの主要製品はイオンビームアシスト蒸着方式(IAD)、スパッタリング方式による成膜装置でしたが、これに加えALD技術や3D成膜技術等による新型装置が装置ラインアップに加わってきており、コスト、時間、品質を総合的に勘案して、最良の方式を顧客に提案しております。ただし、技術開発の方法や顧客の要求内容によっては、他社が当社グループの用いる成膜方法より優れた方法を提供できる可能性があります。当社グループとしましては、既存製品についてより競争力を持たせるために改良開発を加速化するとともに、他の技術を用いた成膜方法にも注目し、研究開発を展開するようにしております。しかしながら、加工対象物である最終製品に使われる光学部品の形状、材質が今後大きく変化したり、格段の技術的進歩があり当社グループの技術が陳腐化した場合には、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 専門性の高い技術力に見合う人材の確保について
当社グループが事業拡大を進めていくためには、物理学、電気工学等の専門スキルの高い優秀な人材を確保することが重要であると考えており、そのために、当社費用負担による社員研修の実施・株式報酬の付与等のフリンジベネフィットの充実や、大学の人材育成プログラムへの寄付・インターンシップ生の受け入れ等の各種施策を行っております。しかしながら、これらの人材の獲得競争は激しく、業務上必要とされる知識及び経験を備えた人材を確保することができない可能性があります。
当社グループでは、優秀な人材の採用については最重要課題として積極的に取り組んでおりますが、優秀な人材を十分かつ適時に確保できない場合や社内の有能な人材が流出する場合には、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 特許・知的財産権の制約について
当社グループは、国内外において特許を保有し、また、特許管理委員会を設置し、積極的に新規権利獲得や取得権利の保護に努めています。しかしながら、特許の登録を受けられるとは限らず、また特許を獲得しても将来において知的財産権を充分に保護できない可能性もあります。さらに製品等の開発、製造、使用及び販売、その他事業活動によって、第三者の特許・知的財産権、その他の権利を侵害しないよう、あらかじめ調査を行い、かつ継続的に他社特許出願・許諾状況をモニターしておりますが、第三者の特許・知的財産権を侵害し紛争となる可能性は否定できません。これらの知的財産に関する問題が発生した場合、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 生産拠点の集中について
当社グループは主として光馳科技(上海)有限公司、光馳科技股份有限公司(台湾)及び光馳半導体技術(上海)有限公司で生産を行っております。複数拠点での生産により、生産コスト、部品品質の両面で最善の成果を上げることが出来ると考えておりますが、今後、中国・台湾における雇用環境の変化により、外注も含めた人員確保や育成が計画通りに進まなかった場合や、労働条件に係る諸規制に変更が生じた場合、現地での労働争議の発生、自然災害、ウイルス等の感染症の流行、政治的状況の変化による生産への制約等の外的要因が生じた場合、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 光学薄膜装置の開発及び製造に関するリスクについて
光学薄膜装置の設計及び製造過程は極めて複雑であり、顧客の規格に合わない製品や、欠陥を含む製品又は欠陥を含むと顧客が認識する製品、あるいは顧客が対象とするエンドユーザーの規格に適合しない製品が製造される可能性があります。当社グループでは品質管理部門の強化により、常時綿密な品質チェックを行う体制を確保するとともに、外部業者からの部品入手時の受け入れ品質検査、装置生産時の工場品質管理及び装置出荷時の最終品質チェックを十分に行っておりますが、これらの作業の対応には多額の費用(人件費や在庫の評価減を含む)を要することもあります。当社グループの製品の出荷後に、顧客の規格との不一致、不適合又は欠陥等の問題が生じた場合には、当社グループは、製品の交換又は顧客への補償にかかる債務を負うこととなる場合があるだけでなく、重要な顧客との関係や業界における評判が長期にわたって損なわれる可能性がある他、顧客や部品の仕入先である外部業者との間で訴訟が発生し、多額の訴訟対応費用が生じる可能性があります。これらはいずれも、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 製造物責任について
当社グループが提供する製品は、厳しい品質管理のもとに設計・製造されておりますが、当社グループ製品の使用により万一顧客に深刻な損失をもたらした場合には損失に対する責任を問われる可能性があります。さらに、これらの問題による当社グループの企業イメージの低下は、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 価格競争の激化について
光学薄膜装置業界は日本国内メーカーに加え中国、ヨーロッパ等にメーカーが存在しており、激しい競争の状況にあります。当社グループは、高機能の成膜装置を提供し続けることを目指し、販売を拡大させていますが、今後の技術開発競争及び価格競争等により競争がさらに激化した場合には、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)新規事業について
当社グループは事業拡大のためにM&Aや出資により新規事業への展開を行う可能性がありますが、新規事業が安定して収益を生み出すまでには一定の時間を要することが予想されます。このため当社グループ全体の利益率を低下させる可能性があります。また、これらの事業が必ずしも当社グループの計画どおりに推移する保証はなく、その場合には当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
3.その他のリスク
災害・感染症に関するリスク
当社グループでは、地震、台風等の自然災害及びウイルス等の感染症の流行による操業停止をせざるを得ない様な事態の発生に備え、リスク分散を実施し従業員の安全確保、災害及び感染症の未然防止、早期復旧、取引先との連携等を実施しております。しかしながら、予想を超える規模の被災により建物や設備の倒壊・破損や感染症などによる生産の中断等が生じた場合、顧客への製品供給が遅れること等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度(2023年1月1日~2023年12月31日)における世界経済は、緩やかな回復が見られる一方、世界的なインフレに伴う金融引き締め長期化や地政学リスクの高まり等、先行きは不透明な状況が続いております。
光学薄膜装置分野の世界市場においては、スマートフォンの機能高度化、自動車のインストルメントパネルタッチパネル化、ヘッドアップディスプレイの搭載率増加、自動運転に伴うセンサ・カメラ機能の拡充、光電子分野のスマートグラスやヘッドアップディプレイ等のAR/VRデバイス、ミニLED、マイクロLED等の応用範囲拡大、さらにはBAW/SAWやRFフィルタ等の通信デバイス関連、太陽電池、リチウム電池、パワーデバイス等のグリーンエネルギー分野も加わり、事業機会は拡大を続けております。
このような状況の下、受注高は、前年同期比で減少であったものの、スマートフォンカメラモジュール及びタッチパネル、自動車、LED向けが堅調に推移すると共に、AIスマートフォン向け受注も始まりました。
分野別売上高は、スマートフォンカメラモジュール、自動車、AR/VR、LED向け装置販売が好調であったことにより、前年同期比で増収となりました。
利益面では、利益率の高いALD装置販売の貢献、調達コスト削減や作業効率改善等の原価改善活動の取り組みにより、営業利益は前年同期比で増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、為替予約決済による為替差損の計上があり、前年同期比で減益となりました。
その結果、受注高は24,080百万円(前年同期比44.2%減)、売上高は36,807百万円(同7.3%増)、営業利益は9,751百万円(同30.9%増)、経常利益は6,051百万円(同30.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,631百万円(同32.8%減)となりました。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末の流動資産は、57,631百万円と前連結会計年度末と比べ7,769百万円の減少となりました。減少した要因は、受取手形及び売掛金や現金及び預金が減少したことなどによるものです。
固定資産は、20,858百万円と前連結会計年度末と比べ3,343百万円の増加となりました。増加した要因は、建設仮勘定や機械装置及び運搬具が増加したことなどによるものです。
(負債)
流動負債は、19,096百万円と前連結会計年度末と比べ9,303百万円の減少となりました。減少した要因は、契約負債や支払手形及び買掛金が減少したことなどによるものです。
固定負債は、2,478百万円と前連結会計年度末と比べ121百万円の増加となりました。増加した要因は、繰延税金負債が増加したことなどによるものです。
(純資産)
純資産は、56,915百万円と前連結会計年度末と比べ4,757百万円の増加となりました。増加した要因は、利益剰余金や為替換算調整勘定が増加したことなどによるものです。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、32,976百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,946百万円の減少となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の減少3,127百万円や売上債権の減少2,982百万円などにより、3,180百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出3,115百万円などにより、3,599百万円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額2,173百万円などにより、2,206百万円の支出となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
(イ)生産実績
当連結会計年度の生産実績は、次のとおりであります。なお、当社グループは成膜装置事業の単一セグメントであります。
セグメントの名称 |
生産高(千円) |
前年同期比(%) |
成膜装置事業 |
13,650,431 |
64.4 |
(注)金額は製造原価によっております。
(ロ)受注実績
当連結会計年度の受注実績は、次のとおりであります。なお、当社グループは成膜装置事業の単一セグメントであります。
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
成膜装置事業 |
24,080,225 |
55.8 |
24,219,463 |
65.6 |
(ハ)販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社グループは成膜装置事業の単一セグメントであります。
セグメントの名称 |
売上高(千円) |
前年同期比(%) |
成膜装置事業 |
36,807,389 |
107.3 |
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
A社 |
8,225,327 |
24.0 |
5,897,769 |
16.0 |
2.事業への影響等が懸念されることから、社名の公表は控えさせていただきます。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績等は、以下のとおりであります。
(売上高)
売上高は、スマートフォンカメラモジュール・自動車・AR/VR・LED向け装置販売が好調に推移したことにより、前連結会計年度に比べ7.3%増加の36,807百万円となりました。その内、ALD装置や新型スパッタ装置等の売上高は16,375百万円でした。
(営業利益)
売上原価は、売上高の増加に伴い、前連結会計年度に比べ5.2%減少し、18,353万円となりました。調達コスト削減や作業効率改善等の原価改善活動の取り組み、利益率の高い新型装置販売が堅調であったことによる原価率改善等により、売上原価率は6.5ポイント減少し、49.9%となりました。
販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ16.0%増加し、8,702百万円となりました。
以上の結果、営業利益は前連結会計年度に比べ30.9%増加し、9,751百万円となりました。
(経常利益)
営業外損益は、為替差損3,831百万円やデリバティブ評価損216百万円等があったことにより、経常利益は前連結会計年度に比べ30.9%減少し、6,051百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
特別損益は、固定資産除却損53百万円等があったことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ32.8%減少し、4,631百万円となりました。
今後の見通しにつきましては、世界的なインフレに伴う金融引き締め長期化や地政学リスクの高まり等、不透明な状況にあるものの、米国を中心とした堅調な雇用環境を背景に世界経済は回復基調を維持するものと想定しております。
当社関連市場の最終製品の動向は、以下のように見込んでおります。
スマートフォンは、生成AIを搭載したAIスマートフォンの普及が急速に進んでおり、当社が得意とするハイエンドモデルを中心に高機能需要の拡大が予想されます。また、リアカメラの多眼化・大判化が主流となっており、一部ハイエンドモデルでは超望遠カメラを搭載したクアッドタイプといったさらなる多眼化、動画撮影機能強化等の画質機能高度化がみられる等、カメラモジュールの高機能化も継続するものと見込みます。
EV/車載は、自動運転技術の進展やコネクテッドカー普及に伴い、AI技術・通信技術・センシング技術・表示技術が進化しております。車載レンズ枚数の増加による高画素化、広角化に伴う広範囲を高解像度で認識する高機能化した車載カメラの搭載率が上昇しております。さらに車両周辺の障害物検知の向上からLiDARも高解像度化が進むものと見込みます。また、車内表示デバイスのディスプレイ化は増加しており、ディスプレイの視認性向上に伴う成膜需要、ヘッドアップディスプレイの搭載率上昇や表示領域の拡大による成膜需要が期待されます。
空間コンピュータにおいては、ARスマートグラスやヘッドマウントディスプレイ等、ディスプレイの高解像度化や広視野角等の表示機能の性能向上による成膜需要の拡大を見込みます。
最終製品市場動向を確実に捉え、市場ニーズ・顧客ニーズを新型成膜装置に反映するために、最先端分野への研究開発投資を積極的に行い、さらなる成長を図ってまいります。
これらの状況をふまえ、2024年12月期の連結業績見通しにつきましては、売上高37,000百万円(前年同期比0.5%増)営業利益7,500百万円(同23.1%減)、経常利益7,600百万円(同25.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,400百万円(同16.6%増)を見込んでおります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、当社グループの運転資金需要のうち主なものは、材料の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資や事業拡大を図るためのM&A等の投資であります。
運転資金については、自己資金の活用を行い、流動性が不足する見込みの場合は、短期長期ともに金融機関からの借入を基本としております。
また、原材料価格高騰や地政学リスクの高まり等により先行き不透明な中、不測の事態に備えるため、十分な手元流動性を確保するとともに、当座貸越枠を設定し、適時に必要資金を確保する体制としております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表作成には、資産、負債、収益及び費用の測定等に経営者の見積り及び仮定を含んでおります。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループは顧客のニーズを把握し、的確かつ現実的な研究開発目標を設定し、市場変化に対応した開発スピードを維持しながら、顧客の求める開発成果を成膜装置に迅速に反映することを基本方針としております。
当社技術開発部門を中心に、光馳科技(上海)有限公司・光馳科技股份有限公司(台湾)・Afly solution Oy・光馳半導体技術(上海)有限公司の5拠点体制で、研究開発活動を行っております。このグローバル研究開発体制の下で、当社グループはグローバルな研究開発人材確保を行いつつ、世界市場での高度成膜技術ニーズの捕捉を積極的に進め、将来の顧客ニーズに狙いを定めた研究開発活動を継続的に展開してきております。こうした研究開発活動の成果は、最近のスマートフォンカメラモジュールの高機能化や半導体光学融合の動きにタイムリーに対応した、ALD装置をはじめとする新型装置の受注実績に表れております。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、
スマートフォン向け各種膜成膜装置及びプロセス開発、自動車向け各種膜成膜装置及びプロセス開発、半導体光学向け水平・両面スパッタ装置及びプロセス開発、BAW/SAW向け成膜装置及びプロセス開発、エッチング技術開発等の研究開発活動を行っております。