当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、2019年に、より長期的な視点から10年後にありたい姿としての経営ビジョンNext10を策定しましたが、新型コロナウイルス感染症の影響、世界的な脱炭素社会への加速などによる外部環境の激変に対応するため、期間を2030年までとしたNext10(2030)に改訂いたしました。Next10(2030)では「事業ポートフォリオの深化」を掲げ社会課題の解決、お客様の価値向上を目指して当社のビジネスモデルを変革してまいります。
当社グループは、2022年度を初年度とする2024年度までの中期経営計画(2024)を策定しております。
中期経営計画(2024)は、Next10の実現に向けた第1ステージである前中期経営計画に引き続き、「土台作り&基盤強化」の第2ステージと位置づけています。「事業ポートフォリオの高度化」に向け、成長市場・分野への投資を拡大し、基盤事業である生活サポート製品群については環境貢献を切り口として再定義することで更なる成長を目指します。
また、「人ひとりを大切に」「地域社会への貢献」「お客様を第一に」という当社グループの経営理念のもと、『「社会から信頼される企業」であり続けるために、事業を通じて、社会との共生を念頭に企業の成長を目指す』をサステナビリティ基本方針として、環境・社会・ガバナンスを重視したESG経営に事業活動を通して取り組むことで持続的な成長と企業価値の向上を実現いたします。
当社グループの対処すべき課題は、経営ビジョンNext10(2030)及び中期経営計画(2024)の目標を達成することであります。中期経営計画(2024)最終年の全社基本方針として、基盤強化の実現に向けて、「選択と集中」を遂行し、収益力の強化を図ってまいります。具体的には、海外も含めて、伸長する市場、製品群へ資源を集中するとともに、付加価値の高い製品群を拡大してまいります。また、事業ポートフォリオで示した注力分野「情報電子」「モビリティ」「環境・エネルギー」「ライフサイエンス」に対して進めている研究開発のスピードアップを図り、早期事業化を目指してまいります。併せて、環境負荷低減など環境課題解決に貢献できる製品群である「環境貢献製品」に対し、廃棄から資源循環、低炭素化などの製品価値を高める仕組みづくりへも取り組みます。特に、資源循環対策としては、リサイクル製品の開発と拡販やケミカルリサイクル原料の製品化に注力してまいります。
中期経営計画(2024)1年目の2022年は、大きな環境変化が生じたことが影響し、連結売上高は計画を達成することができましたが、連結営業利益は計画未達となりました。
中期経営計画(2024)2年目の2023年は、物価上昇に伴う買い控えなどで販売数量は減少するも原材料価格上昇分の製品価格転嫁を維持したことや生産性向上によるコスト削減に努めたことなどにより、連結売上高は計画未達でしたが、連結営業利益は計画達成となりました。
中期経営計画(2024)3年目の2024年は、インフレの高止まりや金利政策、中東情勢などが及ぼす影響により世界経済は依然不透明感があるものの、半導体や自動車、ディスプレイ市場はそれぞれ回復してくるものと予想しております。
このような外部環境の中、当社グループは、Next10(2030)及び中期経営計画(2024)の基本方針を堅持し、引き続き目標達成に向け全社一丸で取り組んでまいります。
具体的な取組みとして、合成樹脂事業では、既存分野において、社会課題、急激な環境変化への即応として環境貢献製品を拡充し、成長分野では高機能製品の提供に注力してまいります。新規材料事業では、テレビ・スマートフォンなどの表示体市場において、今後大画面化、高輝度化に対応するフィルムの生産能力増強を図ります。また、車載・ハイエンドディスプレイ分野での事業拡大を機能性フィルム・加工ソリューションの提供により実現いたします。建材事業では、環境貢献製品であるパーティクルボード製品のフル生産フル販売により売上高を増加させます。また、環境負荷を低減する製品の販売拡大を図ります。その他事業では、引き続き各事業子会社が地域に密着したそれぞれの戦略により拡販を図るとともに、利益体質を強化させていきます。
当社グループは、投下資本の運用効率や収益性を測る指標としてROE(自己資本当期純利益率)を重視しております。当社の目標はROE8%を2024年度に達成することであります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは以下のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
サステナビリティに関する具体的な取組み施策については、「サステナビリティ委員会」において、当社グループのサステナビリティ推進活動が世の中の動向に適応しているかどうかを客観的な視点でチェックし、対応方針や実行計画についての議論と進捗状況の監督を行っています。同委員会は取締役会の直下に設置されており、サステナビリティ推進担当取締役が委員長を務め、取締役及び執行役員を委員として構成されています。定例で年2回開催することに加え、必要に応じて開催しています。討議結果は取締役会において報告される体制としています。当事業年度における同委員会の活動状況は次のとおりです。
委員長:サステナビリティ推進担当取締役
構成:取締役(社外取締役を含む)及び執行役員 計 19名
開催回数:2回
出席率:100%(委員全員)
主な議題・報告
・サステナビリティ推進活動の議論・報告
・CO2排出量削減状況やCO2排出量の開示基準変更に関する議論・報告
・マテリアリティと事業継続のための基盤に関する議論・報告
・人事評価制度の議論・報告 ほか
また、組織を横断するサステナビリティ推進活動に関する基本計画の策定やその推進を担当するセクションとして「サステナビリティ推進部」を設置し、サステナビリティ委員会の事務局を担当します。
当社グループは、経営ビジョンNext10(2030)で掲げた「お客様の価値向上と社会課題の解決に貢献し、事業を通じて、社会・環境価値を創出する」とは、社会との共生を念頭に持続可能な社会の実現に貢献する企業として成長することを意味し、持続的発展可能な社会づくりへの貢献を目指すことが、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上へ繋がると考えています。
当社グループはサステナビリティ基本方針として『「社会から信頼される企業」であり続けるために、事業を通じて、社会との共生を念頭に企業の成長を目指す』を掲げ、2020年に特定した、事業を通じたソリューション提供への重要課題「マテリアリティ」と「事業継続のための基盤」を基に、サステナビリティを経営戦略の中心とした積極的な活動を推進していきます。
当社グループは、SDGsに代表される社会課題やステークホルダーからの要求に対し、マテリアリティとして「脱炭素経営(気候変動対策)の推進」「資源循環対策の更なる推進」「環境貢献製品の創出と拡大」「CSR調達の推進」「DX推進による競争優位性の確保」「イノベーション創出に向けた研究開発」を特定しました。これらの課題を解決することで、企業の持続的な成長を目指します。
更に、当社グループとして事業を継続していくために不可欠な基盤(以下、「事業継続のための基盤」という)となる「汚染防止の徹底」「働きがいのある職場環境の整備」「地域社会との共生」「企業の信頼性・透明性の向上」の4項目を併せて設定し、マテリアリティ同様に積極的な取組みを推進していきます。
当社グループは、気候変動をはじめとした地球規模の環境問題への配慮、人権の尊重、従業員を含むすべてのステークホルダーへの公正・適正な事業活動など、社会や企業のサステナビリティを巡る課題解決を事業機会と捉え、2019年に設立したCSR委員会を「サステナビリティ委員会」に改めるとともに、サステナビリティ推進活動に関する基本計画策定などを担当するセクションとして、「サステナビリティ推進部」を新設しました。サステナビリティ推進担当取締役を委員長とした当委員会は、社外取締役を含む取締役及び執行役員を委員として構成しています。社外取締役も含めることで、当社グループのサステナビリティ推進活動を客観的、専門的な視点でチェックし、当委員会での活発な議論による、より深化した活動を進めています。
更に、当社グループのコンプライアンスを統括する「コンプライアンス委員会」を設置し、実働部隊である「コンプライアンス実行委員会」と連携しながら、周知啓発活動や内部通報への対応等を行っております。
これらの体制のもと、取組み状況をステークホルダーに向けて、積極的な情報開示を行うとともに、継続的に改善を行いながら様々な活動を進めています。
当社グループは2020年に特定した事業を通じたソリューション提供への重要課題「マテリアリティ」と「事業継続のための基盤」のそれぞれについて、取組み指標「KPI」を設定しております。
下記マテリアリティのうち「脱炭素経営(気候変動対策)の推進」「環境貢献製品の創出と拡大」について、取組み指標KPIとして「自社CO2排出量」、「生活サポート群環境貢献製品売上比率」について目標を下記のように設定しております。
・「自社CO2排出量」
CO2排出量(Scope1,2)削減目標
2024年:2021年比12%削減(2013年比30%削減に相当)
2030年:2021年比37%削減(2013年比50%削減に相当)
・「生活サポート群環境貢献製品売上比率」
2024年:50%
2030年:100%
この他の取組み指標KPIの目標値は現在設定中です。
[マテリアリティ]
[事業継続のための基盤]
① 人的資本
(1)ガバナンス
人的資本関連の課題は「社会関連ワーキンググループ」及び社会関連ワーキンググループの下部組織に位置する「女性分科会」を通じて社内の要望等の吸い上げを行います。「社会関連ワーキンググループ」は、サステナビリティ推進部、総務・人事部と各部門から選出された従業員で構成され、新たな施策や制度の検討などを行います。「女性分科会」は、総務・人事部の女性従業員が事務局となり、各部門から選出された女性従業員が会員となり、女性従業員へのアンケートなどを実施し、現状の課題把握や新たな施策や制度の検討などを行います。これらの活動結果については、「サステナビリティ委員会」に報告されます。
(2)戦略
当社グループでは、経営ビジョンNext10(2030)の実現に向けた経営戦略と成長戦略を可能とする人財を育成・確保するため、人材を当社の資本と位置づけ、「教育・育成プログラム」「人事・評価制度」「ダイバーシティ」「従業員エンゲージメント」の充実した環境整備に、投資を継続していきます。
当社グループは、「誠実かつ粘り強い人材」が多数在籍していますが、事業環境の変化に応じた価値創出を使命とする「イノベイティブかつチャレンジブルなリーダーシップ」を求め、「教育・育成プログラムの内容の見直し」「人事・評価制度の再構築」「女性活躍・多様な人材採用」「健康経営」の取組みを推進していきます。
(3)リスク管理
当社グループでは、従業員の要望、意見、提案について会社と従業員が誠実な話し合いを行い、相互の理解と信頼を深め、社業の発展と従業員の生活の向上を図ることを目的とした「職場委員会」が設置されており、総務・人事部が事務局を担当しております。職場委員会を通じて賃金や福利厚生などの様々な人事に関する課題や社内の要望等の吸い上げを行い、施策や制度などの重要な課題や要望については総務・人事部で検討し、取締役会にて報告しています。取締役会で検討・決定された政策や制度については職場委員会を通じて従業員に施策や制度の浸透と啓発を行います。
(4)指標と目標
当社グループでは、人的資本経営に関連するKPIとして、「女性役職者・女性管理職者比率」を設定しております。当社単体は2023年12月31日時点で、女性役職者は52名(全役職者における割合:11.1%)、女性管理職者は3名(全管理職者における割合:2.6%)となっております。また「新卒女性比率」の向上を施策として対応しており、女性分科会で女性従業員の管理職を増やすための意識調査の実施や女性活躍に向けた研修内容の検討を行っております。これらの状況を踏まえた上で、来期中期経営計画の目標を設定する予定としております。
それ以外の「インターンシップ参加者」、「障がい者雇用率」、「年次有給休暇取得率」、「育児・介護休業制度等の利用状況」についての目標は設定中です。これらの推移を確認しながら、人材の確保・育成における取組みを進め、従業員が自らの能力を最大限発揮できる働きやすい職場環境づくり及び従業員の人生設計やライフステージに合わせて柔軟な働き方を選択できる職場環境の整備を推進していきます。
なお、当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
新卒女性比率の推移
インターンシップ参加者の推移
障がい者雇用者数、雇用率の推移
年次有給休暇取得日数、取得率の推移
当事業年度における育児・介護休業制度等の利用状況
② 気候変動
(1)ガバナンス
気候変動関連の課題は、サステナビリティ推進担当取締役が統括する「サステナビリティ推進部」が企画立案し、「サステナビリティ委員会」において議論・意思決定が行われています。課題への対応策は各部門、事業所、工場等で実行され、対応状況は「サステナビリティ推進部」がとりまとめ、「サステナビリティ委員会」に報告されます。
「サステナビリティ委員会」で決議された取組みについて、「サステナビリティ推進部」が企画立案し、「環境保全推進委員会」にて審議されます。気候変動対策の取組み状況については、ステークホルダーに向けて積極的な情報開示を行うとともに、継続的に改善を行いながら環境マネジメントシステム等の仕組みを通じて管理し、その結果についてマネジメントレビューを行っています。
(2)戦略
気候変動のリスクと機会を明確にするために2つのシナリオ(4℃シナリオ、2℃シナリオ)を設定し、シナリオ分析を行いました。シナリオ分析を行う上では、当社の主要事業部である合成樹脂事業部、新規材料事業部、建材事業部ごとにバリューチェーンを設定して具体的な検討を行い、主要なリスクと機会による財務インパクトの算定、対応策の検討を行いました。今後は前記2つのシナリオ分析のブラッシュアップなどを進めていきます。
・4℃シナリオ
「気候変動対策が進まず成行きのまま気温が上昇し、それによる物理的リスク・機会が発生するシナリオ」を4℃シナリオとして、「急性」「慢性」について分析を行いました。
・2℃シナリオ
「温暖化防止に向けて様々な活動が実施され、脱炭酸社会への移行に伴うリスク・機会が発生するシナリオ」を2℃シナリオとして「政策・規制」「技術」「市場」「評判」について分析を行いました。
シナリオ分析の結果、識別した主要なリスク及び機会の対応策は下記のとおりです。
詳細については、下記にて開示しております。
https://www.okr-ind.co.jp/wp/wp-content/themes/okr-ind/images/sustainability/environment/okura_tcfd.pdf
(3)リスク管理
当社グループが気候変動リスク及び機会を選別・評価するプロセスは事業部ごとに以下のステップで実施しています。これらのリスク及び機会の管理は「ガバナンス」の項目で示した体制で実施していきます。
(4)指標と目標
[脱炭素経営の推進]
当社グループでは、脱炭素経営の推進をマテリアリティとして定め、気候変動の要因となるCO2排出量削減活動に取り組んでいます。当社グループ※1の2030年のCO2排出量(Scope1,2)削減目標は、2021年比37%削減(2013年比50%削減に相当)と設定しております。2023年のCO2排出量は105,252t-CO2※2であり、削減目標に対して2021年比約13.9%削減(2013年比約31.7%削減)となっております。2030年までには、既存設備の省エネ設備への導入・更新や燃料転換・電力化と、太陽光発電システム(PPAを含む)やCO2フリー電力などの導入などにより、今後も着実に目標達成に向けて推進していきます。
なお、2020年に対して2021年、2022年のCO2排出量が増加した主要因は、当社グループの生産拠点の大半は香川県にあり、その生産拠点で使用する電気のCO2排出係数が約1.4倍になったためです。
※1:当社+国内連結子会社+大倉産業株式会社+オー・エル・エス有限会社+大友化成株式会社+大倉工業健保組合
※2:2023年のCO2排出量の数値は第三者検証受審予定です。受審後に数値が変更になる場合があります。
※3:2013年~2020年の数値は、各年4月~翌3月累計データ。
2021年~2023年の数値は、1月~12月累計データ。
2021年、2022年の数値は第三者検証受審済。
[環境貢献製品の創出と拡大]
当社グループでは、環境貢献製品の創出と拡大をマテリアリティとして定めています。温室効果ガスの排出削減に貢献できる製品や、廃棄物の削減に貢献できる製品等、環境に対して何らかの貢献が認められる製品を「環境貢献製品」と認定しております。当社の環境貢献製品を「Caerula®(カエルラ)」と命名し、3つのランクに分けて認定しています。Caerula®認定制度を2019年から構築し、SDGsへの貢献や省資源・資源循環、環境汚染防止、廃棄物の適正処理、またライフサイクル思考としてリサイクルしやすい設計の製品、製造上必要不可欠な環境負荷化学物質を極力減らした製品など、独自の認定基準により様々な製品を認定しております。当該目標は、生活サポート群製品(生活に密着した住や食に関わり、人々の安心で快適な生活を支える製品)におけるCaerula®認定製品の割合を、2024年に50%、2030年に100%としています。2023年の当該割合は約48.2%となっております。今後も既存製品でCaerula®認定可能な製品の早期認定、既存製品への環境付加価値の付与及び今後開発される新製品のCaerula®認定製品の創出に取り組むことで着実に目標達成に向けて推進していきます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
これらのリスクが顕在化した場合、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性がありますが、当社といたしましては、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応として、代替する事業計画を機動的に策定し、その遂行に努める方針であります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 合成樹脂事業の経営成績が、原料価格の変動等により影響を受ける可能性があることについて
当社の合成樹脂事業で製造するフィルムの主原料は石油化学製品であるため、原油価格や為替の変動が原料価格動向に大きく影響し、価格変動分を製品価格に転嫁できなかった場合、経営成績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(2) 住友化学株式会社への依存度が高いことについて
当社の新規材料事業における光学機能性フィルム関連製品の過半は住友化学株式会社へ販売しておりますが、将来にわたり当社製品が同社に採用される保証はありません。予期しない契約の打ち切りや販売数量の大きな減少があった場合、経営成績及び財務状況に影響を与える可能性があります。ただし、財務諸表上の売上高は「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第103期の期首から適用しており、第103期以降減少しております。
(3) 建材事業の経営成績が、新設住宅着工戸数の増減により影響を受ける可能性があることについて
当社の建材事業の製品は、主に住宅の建築資材となっているため新設住宅着工戸数の減少による需要の減少及び価格競争の激化が起こった場合、経営成績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(4) 保証債務について
当社は、関連会社のオー・エル・エス㈲に対し、資金調達を円滑に行うための債務保証を行っております。当連結会計年度末現在の保証債務の合計は4億6百万円であります。
今後、同社(非連結)の業績動向により債務履行又は引当を要する場合、当社グループの経営成績及び財政状況に影響を与える可能性があります。
(5) 固定資産の減損について
産業用途向けなどの一部の製品分野においては、技術革新のスピードが速く、市場環境が急激に変化し続けているため、これまでに投資した設備について、資金回収が終わらないうちに稼働率が著しく低下した場合、減損損失などの特別損失が発生し、経営成績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
地震、台風、津波等の自然災害、感染症、事故、火災、停電、戦争、テロ等により、当社グループの事業拠点における生産設備の損壊や、国内外の経済活動の著しい停滞等が生じ、当社グループの事業活動に甚大な影響を及ぼした場合、当社グループの経営成績及び財政状況に影響を与える可能性があります。
(経営成績等の状況の概要)
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下
「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスによる行動制限が緩和され、国内経済活動の正常化の進展や、インバウンド消費が増加していることに加えて、各種経済政策効果などもあり、穏やかな回復基調で推移しました。また、先行きにつきましては、賃上げの広がりやインバウンド需要の増加が続くことへの期待感があるものの、世界経済の減速に伴う需要減少やコスト増加などが懸念されることから、今後を見通すことが依然として困難であり、不透明な状況が続いております。
このような状況のもと、当社グループでは、新規材料事業において大型液晶パネル向け光学フィルムの受注が増加したことなどにより、当連結会計年度の売上高は788億6千3百万円(前年同期比2.1%増)となりました。
利益面では、売上高の増加に加えて、生産性の向上によるコスト削減に努めたことなどにより、営業利益は49億5千6百万円(前年同期比31.4%増)、経常利益は54億1千7百万円(前年同期比26.7%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、保有する投資有価証券の売却に伴う投資有価証券売却益を特別利益に計上したことなどにより、43億1千5百万円(前年同期比13.9%増)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。
〔合成樹脂事業〕
政府によるコロナ対策の緩和措置や円安によるインバウンド需要が期待されるなか、拡販活動に努めましたが、生活必需品を主とした相次ぐ値上げによる消費者の購買意欲低迷が影響し、食品用途を中心とした包装用フィルムにおいて販売数量が減少しました。また、光学・半導体用途の工業用プロセスフィルムにおいても市場の悪化による在庫調整の影響を受けたことにより、販売数量が低調に推移しました。一方、原料価格をはじめとするコスト上昇分の製品価格への転嫁を推し進めたことにより、売上高は510億5百万円(前年同期比1.2%減)にとどまりました。営業利益は、製品価格の上昇に加えて生産性の向上などのコスト削減に努めたことにより、41億4千4百万円(前年同期比19.2%増)となりました。
〔新規材料事業〕
大型液晶パネル向け光学フィルムの受注が増加したことに加えて、自動車用途などの機能材料も好調に推移したことから、売上高は136億9千1百万円(前年同期比26.1%増)となりました。営業利益は売上高の増加に加えて、歩留り改善に注力し生産性の向上に努めた結果、18億5千4百万円(前年同期比38.1%増)となりました。
〔建材事業〕
新規顧客獲得や既存顧客へのアプローチに傾注し、基幹事業であるパーティクルボードの販売量は維持しましたが、新設住宅着工戸数の減少が顕著であった四国を主商圏とする木材加工事業において大幅に販売数量が減少したことなどにより、売上高は126億1千2百万円(前年同期比5.5%減)となりました。営業利益については、引き続きユーティリティコストが増加しているものの、パーティクルボードの安定生産を継続したことなどにより、9億円(前年同期比4.5%増)となりました。
〔その他〕
ホテル事業で新型コロナウイルスによる行動制限が緩和され、宿泊や宴会が回復したことや情報処理システム開発事業が堅調に推移したことにより、その他全体の売上高は15億5千3百万円(前年同期比6.8%増)となりました。営業利益はホテル事業の売上高の増加などにより、4億5千6百万円(前年同期比24.8%増)となりました。
(2) 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ100億3千8百万円増加し、1,002億7千2百万円となりました。その主な内訳は有形固定資産の増加66億4千5百万円、投資有価証券の増加21億4千9百万円、売上債権の増加7億8千万円、現金及び預金の減少6億4千1百万円によるものであります。
一方、負債につきましては、その他流動負債の増加22億7千8百万円、設備関係電子記録債務の増加18億8千3百万円、未払金の増加10億7千5百万円、仕入債務の減少5億1千万円などにより、前連結会計年度末に比べ47億6千万円増加し、394億3百万円となりました。
また、純資産は、利益剰余金の増加33億円、その他有価証券評価差額金の増加15億1千万円などにより、前連結会計年度末に比べ52億7千8百万円増加し、608億6千9百万円となりました。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べて0.9ポイント下落し、60.7%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、78億6百万円(前連結会計年度比6億4千1百万円減)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により増加した資金は84億3百万円(前連結会計年度比47億1百万円増)となりました。
これは、主として税金等調整前当期純利益56億8千8百万円、減価償却費41億6千7百万円による資金の増加及び売上債権の増加7億7千5百万円による資金の減少によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は78億9千7百万円(前連結会計年度比45億8千7百万円増)となりました。
これは、主として製造装置等の有形固定資産の取得による資金の減少によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果減少した資金は11億9千4百万円(前連結会計年度比5億7千8百万円減)となりました。
これは、主として配当金の支払い10億9百万円、借入金の減少4億7千5百万円による資金の減少によるものです。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
当社グループは建材事業のうち、宅地造成及び建物建築事業において一部受注生産を行っており、その受注状況は次のとおりであります。
その他の製品については見込生産を主として行っているので特記すべき受注生産はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10を超える販売先はありません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文
中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(経営成績等の状況の概要) (1)経営成績の状況」に記載しております。
(3) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料、商品等の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入による資金調達で対応しております。
なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりであります。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注) 1.いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
4.有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。
(4) 経営方針、経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、投下資本の運用効率や収益性を測る指標としてROE(自己資本当期純利益率)を重視しております。当社の目標はROE8%を2024年度に達成することであります。
当連結会計年度におけるROEは、7.4%(前年同期比0.4ポイント改善)となりました。翌連結会計年度においても、目標達成に向けて、経営ビジョンNext10(2030)及び中期経営計画(2024)で掲げた戦略に引き続き取り組んでまいります。
当社は、下記のとおり香川県産材や四国地域材を活用した木質構造材料の製造事業を開始することを決定いたしました。また、事業開始に向け、香川県及び香川県森林組合連合会と協定書を2023年12月15日に締結いたしました。
1.事業開始の趣旨と概要
近年の国産材回帰への転換期の到来・木材利用分野の拡大を踏まえ、脱炭素・カーボンニュートラルへの直接的貢献材料にて社会に寄与するべく、香川県産材や四国地域材を活用した木質構造材料の製造事業を開始いたします。なお、本事業開始にあたり、香川県及び香川県森林組合連合会と木材利用促進協定を締結いたしました。協定の締結により、香川県産材の利用促進について相互に協力・連携を図ってまいります。
また、新規事業の開始に伴い、三豊市高瀬町において工場建屋を建設いたします。
2.新工場の概要
(1)建設地 香川県三豊市高瀬町上麻字原乙333番地17
(2)設備内容 工場・倉庫・事務所棟、製品加工機、乾燥機、ボイラー
(3)投資予定額 約53億円
(4)生産品目 木質構造材料(構造用製材・構造用集成材の製品)
3.当該事業を担当する部門
子会社設立も視野に入れ、建材事業での取扱いを予定しております。
4.当該事業の開始のために特別に支出する金額及び内容
工場建屋の建築や設備の導入等の費用が想定されますが、現時点でも検討を進めております。
5.日程
6.損益に与える影響
当連結会計年度において、当社業績に与える影響は軽微であります。
当社グループにおける研究開発の基本方針は、「要素技術を通じて新たな価値を創造し、お客様から選ばれるソリューションパートナー」を目指し、お客様の価値向上と社会課題の解決に貢献し、事業を通じて社会・環境価値を創出することでグループの持続的成長を果たすことであります。
この基本方針のもと、当社グループの強みである押出・延伸等のプラスチック加工技術を基礎に、より競争力のある製品を生み出すべく経営資源を集中し、グループ一体となって取り組んでおります。
当社グループの研究開発活動は、R&Dセンターを中心に各事業部門が密接に連携を取りながら、短期的成果の実現と中期的先行開発のバランスに配慮し、効率的に新たな技術や製品開発に取り組んでおります。
また、各種研究機関、大学、企業とのプロジェクト、共同研究もR&Dセンターを中心に推進しております。
当連結会計年度における主な活動内容は次のとおりであります。
[R&Dセンター]
市場の伸長が期待される「情報電子」「ライフサイエンス」「環境・エネルギー」に加えて、3つの領域を横断するモビリティ領域を注力分野とし、新しい要素技術の獲得に取り組み、事業につながる新製品を開発するべく取り組んでおります。
「情報電子」分野では、優れた電気特性と低吸湿性に加えて、耐熱性を有する素材として液晶ポリマーを使用したフィルムを開発し、次世代通信規格5Gをターゲットとした高速伝送用回路基板やフレキシブル回路基板等の基材用途を中心にユーザー評価を進めております。
「ライフサイエンス」分野では、細胞培養関連部材の開発に取り組み、バイオ医薬品製造用途や細胞培養装置用バッグの販路を広げております。今後更に特徴あるバッグを開発し用途拡大に取り組みます。
「環境・エネルギー」分野では、植物由来の未利用資源から機能性表示食品やスキンケアなどの原料になる機能性成分を抽出し、一部素材で採用が決定いたしました。今後、各種植物で更なる機能性成分抽出を目指して取り組みます。
また、再生可能エネルギーの活用に向け要素技術である塗工・印刷技術に加えて、新たなプロセスを検討し、太陽電池や蓄電池に使用される機能性フィルムの開発を進めております。
[合成樹脂事業]
事業開発部では、プラスチックリサイクルへの取組みとしてクローズドループによる資源循環を目標に掲げ、地方自治体やブランドオーナーとの取組みを進めております。一部の地方自治体においてはマテリアルリサイクルから得られたPCR廃プラスチックのリサイクル原料を使用したエコマーク認定製品の販売を開始しておりますが、今後は更に家庭から排出された廃プラスチックを利用した自治体内でのクローズドリサイクルの実現を目指しております。
また、社会的な課題となっている労働力不足に対しては、パッケージ作業領域の省人化・省力化をテーマとし、お客様の作業業態に合致させた複数の自動包装システムの提案を開始しております。
商品開発部では、CO2削減に貢献する製品開発に取り組んでおります。自動車分野ではエアコンの消費電力削減に貢献する遮熱性に優れた自動車反射天井材の開発を進めており、2025年度からの本格販売を目指しております。建材分野ではGRS(グローバルリサイクルドスタンダード)認証の再生原料を活用した建装材の開発を進めております。
[新規材料事業]
当事業におけるIoT分野での取組みでは、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を実現するウェアラブルデバイスやフレキシブルディスプレイの開発を行い、それらについては一部実用化が始まっております。
また、モビリティー分野への取組みにおいては、ディスプレイの大型化・省エネルギー化に対応した部材及びドライバーの安全運転支援を目的とした各種アプリケーションに求められる部材の開発を継続して取り組んでおります。今後も高精度製膜延伸技術・ファインコーティング技術・各種二次加工技術・評価技術を用い、ディスプレイ・デバイスの進化に対応した機能性部材や脱炭素化社会に貢献する製品開発を継続的に進めてまいります。
[建材事業]
基幹製品であるパーティクルボードをベースに、住宅の高性能化に貢献する製品の開発を進めております。とりわけ、居住者の健康維持増進にかかせない住環境の改善に寄与するフロア基材を開発し、実装が始まりました。
また、これまで市場調査を行ってきた木質素材分野で、四国地域木材を活用した集成材等の事業の開始を決定し、要素技術の応用や異樹種複合などによる特定対象異等級集成材の検討、四国地域木材由来のチップを使用した国産材パーティクルボードの開発に着手いたしました。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は
なお、当連結会計年度末における特許権及び実用新案権の総数は177件であります。