第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

当社グループは、元米国アムジェン社(注1)本社副社長で、同社の日本法人であるアムジェン株式会社(現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受)の創業期から約12年間社長を務めた吉田文紀が、2005年3月に設立した医薬品企業です。

経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)(注2)に応えていくことにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。

当社グループは、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん・血液及びウイルス感染症領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマです。当社グループは、大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い希少疾病分野を中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、高付加価値で高収益を達成し、持続性のある事業展開を行います。

 

(注1) バイオ医薬品業界最大手。1980年、米国カリフォルニア州サウザンド・オークスにおいて、AMGen(Applied Molecular Genetics)として設立。日本においては、1993年5月にアムジェン株式会社として業務を開始しました。

 

(注2) アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)とは、未だ満たされない医療上の必要性を意味し、患者さんや医師から強く望まれているにもかかわらず有効な既存薬や治療がない状態を指します。

 

 (2)目標とする経営指標

当社グループは製薬企業として、自社販売体制の下で新薬を継続的に上市していくことが企業価値の更なる向上を図る上での重要な要素と考えており、営業組織及び流通・物流を含めた営業の一貫体制を構築しました。同時に、継続的に開発候補品を導入し積極的に研究開発活動等に経営資源を投下する方針です。

当社グループは、SyB L-0501が2010年に国内で製造販売承認されて以来継続して製品販売による売上を主として収益を伸ばしています。事業提携契約が有効な2020年12月まではエーザイとの協業によるトレアキシン®の更なる拡販を推し進め、2021年以降は自社による販売体制への切り替えによる更なる収益の拡大を目指してまいります。また、引き続きリゴセルチブの注射剤及び経口剤の承認取得及び上市、抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの国内及び海外における開発開始と商業化、新たなパイプラインの導入・開発推進・承認取得等を通じて、安定的に高収益を確保できる体制の早期実現に取り組んでおります。2021年度から自社販売体制に移行したことによって単年度利益を計上できることになりましたが、引き続き積極的な研究開発投資を行っていくことから、ROEやROAなどの経営指標の目標は設定しておりません。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、中長期的な経営計画を実現すべく、主に以下の5つの事業戦略を展開しています。

 

① ポストPOC戦略による開発リスクの軽減

当社グループの導入候補品は、主として既にヒトでPOCが確認されていることを原則としています。従って、臨床開発ステージが比較的後期段階にある候補品か、既に海外で上市されている製品が対象となります。これらの導入候補品は既に海外で先行して開発が行われており、新薬としてヒトでの有効性・安全性が確認されていることから、開発リスクを軽減でき、また、先行している海外の治験データを活用することにより開発期間を短縮するとともに開発コストを低減し、成功確率を高めることが可能となります

 

② 高度な探索及び評価能力による、優れたパイプラインの構築

当社グループの新薬サーチエンジンは、国内外の製薬企業及びバイオベンチャー企業等との多様なネットワークによって構築され、膨大な化合物の中から、社内の専門家による厳正な評価を経て、有望な導入候補品が抽出されます。これらの導入候補品はさらに、第一線で研究に携わる経験豊かな専門家により構成されるSABに諮られ、そのアドバイスと評価を受けた上で導入候補品を決定しています。この開発品導入決定までの高度なスクリーニングプロセスは、既に海外において有効性・安全性が確認された開発品を導入するポストPOC戦略と相まって開発リスクの軽減と開発期間の短縮につながることになり、また、候補品が医療の現場において求められるものかどうかの医療ニーズの充足度に対する理解、及び上市後の収益予測の精度向上に貢献しています。

 

③ ラボレス・ファブレス戦略による固定費抑制

当社グループは、一切の研究設備や生産設備を保有していません。研究設備・生産設備はともに固定費発生源の代表格ですが、当社グループはこれらを一切保有せずに、開発候補品の探索及び導入後は、開発品の開発戦略策定と実行等の付加価値の高い業務に専念し、そのほかに必要とされる定型的な開発業務は外注しています。研究開発費のうち主なものは業務委託料であり、その金額的・質的重要性は高く、当社グループにおいてはその進捗状況等について厳密な管理を行っております。

 

④ ブルーオーシャン戦略(注3)による高い事業効率の実現

海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない、あるいは海外で新薬として承認された製品が5年近くも遅れて日本で承認される、いわゆるドラッグ・ロス、ドラッグ・ラグの問題が深刻化しており、がん患者の難民という言葉も生まれています。これらの問題は、当社グループの戦略的開発領域である難治性のがん・血液及びウイルス感染症領域で特に目立っています。特に抗がん剤の市場自体は大きく、また高齢化に伴い現在も拡大傾向にあるものの、抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん腫により細分化されているため、各々のがん腫でみると対象患者数がそう多くはない治療領域が数多く存在します。これらの領域での新薬の開発には、極めて高い専門性が求められ、開発の難度が高い半面、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由のひとつといわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。

 

(注3) ブルーオーシャン戦略とは、競合との熾烈な競争により限られたパイを奪い合う市場(レッドオーシャン)を避け、市場を再定義し、競合のいない未開拓な市場(ブルーオーシャン)を創造することで、顧客に高付加価値を与えつつ利潤の最大化を目指す戦略です。

 

 ⑤ アジアからグローバル展開へ

当社グループはこれまで日本を中心としたアジア各国を対象に事業を展開してまいりました。しかしながら、日本の医療を取り巻く環境が大きく変わっていく中、アジアに留まっていては大きな発展は望めません。今後はグローバルな展開を視野に入れた開発候補品の探索及び評価を実施してまいります。2019年9月にはキメリックス社(本社:米国ノースカロライナ州)との間で抗ウイルス薬ブリンシドフォビルに関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、当社グループは天然痘・サル痘を含むオルソポックスウイルスの疾患を除くすべての疾患を対象とした世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得しております。

抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの事業展開については、dsDNAウイルスに対するその広範な活性を有することから、国内及び海外の専門領域の有力な研究施設と共同研究を進めており、研究成果である科学的知見を基にグローバルの臨床試験を検討、実施してまいります。

 

(4)主要な経営課題

当社グループは、以下の点を主要な経営課題と捉え、取り組んでまいります

 

① パイプラインの更なる充実について

製薬ベンチャー企業として企業価値を高めるためには、開発候補品を継続的に導入し、パイプラインを充実させていく必要があります。

当社グループでは、抗がん剤 SyB L-0501、SyB L-1101、SyB C-1101、SyB L-1701及びSyB L-1702、抗ウイルス薬 SyB V-1901において開発を実施または計画しています。また、現在、新薬候補品の導入に関して複数の案件を相手先企業と協議しており、パイプラインの更なる拡充に向けて今後も新規の開発候補品の導入を積極的に進めてまいります。

 

② 既存パイプラインのライフサイクル・マネジメントの追求

企業価値を高めるためには、開発候補品の導入だけではなく、導入した新薬候補品の適応症を追加することにより、開発品目あたりの収益の最大化を図る、ライフサイクル・マネジメントを追求することが重要となります。

トレアキシン®は、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、及び未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を適応症として製造販売承認を取得しています。加えて、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)について2021年3月に製造販売承認を取得しました。また、ライフサイクル・マネジメントを推進することにより、トレアキシン®の事業価値の最大化を図るべく、イーグル社より導入したトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI投与)につきましては、RTD製剤は2020年9月に製造販売承認を取得し、2021年1月より販売を開始しました。RI投与は2021年5月に一変承認申請を完了し、2022年2月に一変承認を取得しました。

リゴセルチブについては、骨髄異形成症候群(MDS)を対象として第Ⅲ相臨床試験(INSPIRE試験)を実施しておりましたが、2020年8月に医師選択療法との比較において主要評価項目を達成しなかったことを発表しました。当社グループは日本における臨床開発を担当しており、INSPIRE試験の追加解析から得られた知見を今後のリゴセルチブの開発に活用するための検討を進めております。

リゴセルチブ又はトレアキシン®に関して、東京大学及び京都大学等との共同研究を通じて、両化合物あるいは他の既存薬との併用により新たな有用性を見出すとともに新規適応症の探索を行い、事業価値の最大化に努めます。

抗ウイルス薬ブリンシドフォビルについては、アンメット・メディカル・ニーズの高い造血幹細胞移植後アデノウイルス感染症及び腎移植後BKウイルス感染症を対象にグローバル開発を先行して進めておりますが、新たに、ウイルスにより誘引されたがん等を対象とした開発も検討しております。また、米国国立衛生研究所や米国タフツ大学等との共同試験のデータの蓄積により、脳神経変性疾患に対する効果の可能性を検討し、ライフサイクル・マネジメントの追求を通じて事業価値の最大化を図るとともに、グローバル市場を対象に事業展開をするスペシャリティ・ファーマへの転換を進めてまいります。

 

③ 後発医薬品への対応

2022年2月に当社グループ製品トレアキシン®RTD製剤を先発医薬品とする後発医薬品が製造販売承認されたことから、当面これら価格の低い後発医薬品との競合が生じ、売上高の減少および利益の減少が生じる可能性が高まっております。この状況に対し、当該製品のライセンス元であるイーグル社の持つ特許に対する侵害及び当社グループが同製品について有する独占的な特許実施権の侵害の可能性が生じたことについて、ライセンス元であるイーグル社と協議し、後発医薬品の製造販売承認を取得した4社に対して当該特許権の侵害の懸念について文書によって通告し、適切な対応を要求しました。2022年12月には、イーグル社と共同でファイザー株式会社及び東和薬品株式会社に対して特許権侵害に基づく後発医薬品の製造販売の差止及び後発医薬品販売により生じる損害の賠償請求訴訟を提起いたしました。

 

④ 更なる成長を求めてグローバル展開へ

当社グループはこれまで日本のみならず、中国・韓国・台湾・シンガポールの4ヶ国を戦略地域として位置付け、アジア地域への展開を進めてまいりました。しかしながら、日本においては高齢化とともに医療費が膨張し、それに伴う国家戦略として後発医薬品80%時代が始まり新薬メーカーにとって厳しい環境が続くことが予想されます。また、アジア各国においても同様の政策が始まることも考えられます。

こうした中、当社グループは更なる発展のためにグローバル展開を進めてまいります。これまでのアジア展開で培った経験を活かし、抗ウイルス薬ブリンシドフォビルに続く新規開発候補品について、米国、欧州等のグローバルの権利を取得するべく、候補品の探索・評価及び交渉を進めてまいります。

 

⑤ 人材の確保について

当社グループの経営資源の第一は人であると考えています。優秀な人材なくして、新薬の探索、開発及び情報提供活動、そして今後のグローバル展開において優れた成果をあげることはできません。当社グループは継続的に優秀な人材の採用を行っており、上場後、特に経営組織をより強固にすべく優れた人材を採用してまいりました。また、OJTや研修等による人材育成を通じて、人材の更なる強化を図ってまいります

 

⑥ 財務上の課題について

当社グループは、パイプラインの開発進展、グローバル事業展開、開発候補品の増加等に伴い、研究開発費を中心とする事業活動に合わせて資金を調達する必要があります。

従って、引き続き資金調達手法の多様化を進めるとともに、予算管理の徹底を通じてコスト抑制を図ることで、財務基盤の更なる強化に努めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、「共創・共生(共に創り、共に生きる)」の理念に基づき、製薬企業として発展していくためには、経済的利益のみを追求するのではなく、コンプライアンス遵守のための活動を誠実かつ積極的に推進し、良き企業市民として高い社会的信頼を得ることが極めて重要であると考えております。
このような考えから、当社は、社会に貢献する製薬企業として、社会的責任と公共的使命を十分に果たすため、コンプライアンスの遵守に努めてまいります。なお、文中における将来に関する事項は、本書発表日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、患者さんを中心とし、科学者・医師・行政・株主が支えあう共創・共生の企業理念のもと、「空白の治療領域」に光を当て、一日でも早く、優れた医薬品を開発・供給することにより、世界の人々の健康と福祉に貢献し、医療の向上に寄与してまいります。この企業理念を追求することこそが当社グループの企業価値を向上させるとの認識のもと、高い倫理観を持ちつつ、コーポレート・ガバナンスを強化し、内部統制システムの適正な構築・運用、さらにはコンプライアンス及びリスク管理の徹底、経営の効率化、経営の健全性確保に努めております。なお、当社は2022年3月29日、監査等委員会設置会社へ移行し、コーポレート・ガバナンスのさらなる充実に取り組んでおります。

 

(2)戦略 

当社グループは、性別・国籍・年齢等に関わらず専門性の高い多様な人材の採用と育成を推進しております。今後のグローバルな事業展開を見据え、達成に向けて進捗を注視していくとともに、指標や目標の設定要否についても引き続き検討する予定です。

また、組織・体制・風土においては社内での取り組み姿勢などについてサーベイを行う他、安心して働ける職場環境を維持するため、ハラスメント防止トレーニングを行い、社員の意識向上に取り組んでおります。

 

(3)指標及び目標

「目標5・ジェンダー平等を実現しよう」に取り組んでおり、すべての社員がその能力を十分に発揮して業績に貢献されるように働きやすい職場環境を整えるため「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画」を下記指標に基づき実施しております。現代社会の一員としてSDGs達成に向けた積極的な行動を推進してまいります。

 

① 実施期間:2022年4月1日〜2027年3月31日の5年間

② 実績及び目標:

  全社員に占める女性社員    2023年12月時点29%(目標2027年3月に40%以上)

  派遣社員に占める女性派遣社員 2023年12月時点65%(目標2027年3月に50%以上については達成)

③ 取組内容:現在の社員への支援

・仕事と育児の両立支援に関連する制度の周知と意識啓発の実施

・女性社員の育児休業取得率100%の実現

・有給休暇の取得促進

・採用における女性候補者の応募増加に向けて会社説明会等で本取り組み等を発信

 

(4)リスク管理

当社グループは、リスク管理基本方針と関連規程に基づき、内部統制委員会がリスク管理を統括しております。日常業務におけるリスクマネジメントは、内部統制委員会が各部門とリスク情報を共有し、対応を確認しており、また緊急時においては、代表取締役社長を対策本部長とした対策本部を設置して迅速な対応を図れる体制としております。内部統制委員会は、経営上のリスクに関して、リスクマネジメントの状況を定期的に、または必要に応じて都度、取締役会に報告しております。

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業活動においてリスクとなる可能性があると考えられる主な事項について記載しています。また、当社グループとして必ずしも重要なリスクとは考えていない事項についても、投資判断の上で、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家及び株主に対する積極的な情報提供の観点から開示しています。当社グループは、これらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本書中の本項以外の記載を慎重に検討した上で行なわれる必要があると考えます。また、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクの全てを網羅するものではありません。なお、文中における将来に関する事項は、本書発表日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)リスクマネジメントの推進体制

リスクマネジメントの推進にあたって、組織横断的リスク状況の監視及び全社的対応は、代表取締役社長の指揮・監督下において内部統制委員会(委員長CFO)が統括し、事業計画策定・実行の年次サイクルに合わせたリスクマネジメント体制の運営を行っています。内部統制委員会の指示のもと、各部門においては部門の責任者が組織の目的・目標の達成に向け、個別リスクにかかわる分析・評価、対応計画の策定・遂行、組織内でのリスクマネジメントにかかわる情報提供など自律的にリスクマネジメントを推進しています

②影響度と発生可能性の評価に基づき、内部統制委員会が常に状況を把握し、代表取締役社長に報告するとともに、企業経営に重大な影響が想定されるリスクについては、経営執行会議及び取締役会において、リスクの内容、担当責任者、リスク対応策を立案し、関係組織と連携の上、リスク対応策を推進・実行しています。リスク対応策の進捗状況については、原則年2回の取締役会で総括しています。重大リスク顕在化の予兆が確認された場合は、速やかに内部統制委員会に情報が集約され、適切な対応を図る体制としています。

 

(2)重大リスクとして認識している事項

① 医薬品の開発事業全般に関するリスク:新薬の開発は長期間にわたり膨大な先行投資を強いられるものの、その研究開発の成功確率は極めて低いことが知られています。一般に、研究所において何らかの生物・生理活性が認められた化合物が新薬として承認にいたる確率は、2万分の1~2万5千分の1と言われています。また、承認を取得した新薬のうち、上市・販売後において採算が取れるのはそのうちの15~20%以下と言われています。当社グループは、このような創薬系事業の難しさを踏まえた事業モデルを構築しています。

ア. 医薬品開発の不確実性について

・リスク:一般的に、製品上市に至る医薬品開発の過程は長期かつ多額の費用を要し、開発が成功する確率は決して高くなく、開発のいずれの段階においても中止や遅延の判断をすることは稀ではありません。医薬品開発においては、様々な開発過程を段階的に進めていく必要があり、それぞれの段階において開発続行の可否が判断されます。従って、その開発途上で中止の決定を行うことは稀なことではなく、開発が順調に進み製品化される確率は低いものとされています。また、開発に成功し、上市された後も、定期的または臨時で当該時点における医学・薬学等の学問水準に照らして、有効性及び安全性を確認するために再評価が行われ、有用性が認められないとされた場合、あるいは重篤な副作用等により健康被害が拡大する恐れがある場合(詳細は「カ.副作用に関するリスクについて」を参照)には、有用性または副作用を原因として承認が取り消されるリスクがあります。当社グループ のような小規模な製薬ベンチャー企業にとって、ひとつの開発候補品がパイプラインから脱落することの影響は大きく、その場合当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

・対応:開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発候補品の臨床試験を迅速・確実に進め、開始から承認取得までの期間を短縮するために、主として既にヒトでPOC(注1)が確立され、前臨床試験データと臨床試験データがある化合物を対象としております。これらの化合物の探索は当社グループ独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用して、社内の経験を有した専門スタッフによる第1次スクリーニングにより絞り込みを最初に行います。その後、科学的諮問委員会(Scientific Advisory Board:以下「SAB」といいます)において、第一線で関連分野における治療の研究に携わる経験豊かな社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社グループにおいて最終的な導入候補品を決定いたします。

 

(注1) POC(Proof of Concept)とは、新薬候補物質の有効性や安全性を臨床で確認し、そのコンセプトの妥当性を検証することを意味します。

 

 

イ. 収益の不確実性について

・リスク:開発を進めている製品から収益を得るためには、当社グループ単独あるいは第三者と共同で、これら新薬候補品の開発、規制当局からの承認、製造及び販売のすべての段階において成功を収める必要があります。しかしながら当社グループは、これらの活動において必ずしも成功しない可能性もあり、また、成功したとしても当社グループの事業を継続するために必要な採算性を確保できない可能性もあります。開発を推進し、製品上市に至ることにより収益を獲得するまでの過程で、開発品によっては開発・販売に関して他の製薬企業と提携契約を締結し、早期に収益化を図ることも想定しています。しかしながら、これらのパイプラインが製品として上市するまでには相当の時間を要することが予想され、また、製品として上市される、あるいは他の製薬企業と提携契約を締結できる保証はありません。

・対応:当社グループの導入候補品は、主として既にヒトでPOCが確認されていることを原則としています。従って、臨床開発ステージが比較的後期段階にある候補品か、既に海外で上市されている製品が対象となります。これらの導入候補品は既に海外で先行して開発が行われており、新薬としてヒトでの有効性・安全性が確認されていることから、開発リスクを軽減でき、また、先行している海外の治験データを活用することにより開発期間を短縮するとともに開発コストを低減し、成功確率を高めることが可能となります。

 

ウ. 遵守すべき法的規制等及び医療保険制度等の不確実性について

・リスク:医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事に関する法律及び薬事行政指導、その他関係法令等により様々な規制を受けており、当社グループは医薬品医療機器等法をはじめとする現行の法的規制及び医療保険制度、それらに基づく医薬品の価格設定動向等を前提として事業計画を策定しています。しかしながら、当社グループが開発を進めている製品が現実に製品として上市されるまでの間、これらの規制や制度・価格設定動向等が変更される可能性もあります。もしこれらに大きな変更が発生した場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

・対応:薬価制度改革並びに流通改善ガイドラインを踏まえた仕切価格・割戻改定を実施しております。また、新薬創出加算品、重点品を中心に売上を拡大する方針です。薬価の毎年改定を含めた薬価制度改革の他、海外を含めた行政動向を継続的に注視し、即時に対応策を検討します。

 

エ. 海外における開発・販売に関するリスクについて

・リスク:当社グループは日本のみならず、欧米やアジア等グローバル地域を戦略事業地域として位置付けております。抗ウイルス薬ブリンシドフォビルについて、欧米を含む世界全域における開発・販売・製造に関するグローバル事業展開を計画しております。海外市場における医薬品の開発・販売事業の展開に際し、一般的に多額の資金と事業リスクを伴うため、当社グループでは開発品によっては海外の開発権、販売権を他の製薬企業等に導出し、投資資金及び事業リスクの低減を図る可能性があります。導出先の経営状況や各国の規制、競争環境等の変動により、当初期待していた通りには開発、販売が進捗せず、計画通りのマイルストーン収入、ロイヤリティ収入等が得られないことにより、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。同様に、他の製薬企業等との共同開発または共同販売、あるいは委受託契約等のパートナーシップの戦略的な活用も検討していますが、パートナーの経営状況や各国の規制、競争環境等の変動により、当初期待していた通りには開発、販売が進捗せず、計画通りの収益が得られないことにより、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:当社グループが保有する権利の導出にあたっては、慎重にデューディリジェンスを実施した上で企業選定を行い、かつ導出後も適宜モニタリングを実施しています。海外導出先の経営状況に関するリスクを管理する担当者を任命しており、定期的に情報収集・情報交換を実施しております。各地で問題が発生した場合には、担当者をハブとする海外導出先との連携により、迅速な課題解決を行っております。

 

オ. 医薬品業界の競合関係について

・リスク:医薬品業界は、国際的な巨大企業を含む国内外の数多くの製薬企業や研究機関等により、激しい競争が繰り広げられており、その技術革新は急速に進歩している状態にあります。これらの競合相手の中には、技術力、マーケティング力、財政状態等が当社グループと比較して優位にある企業が多数あり、当社グループ開発品と競合する医薬品について、有効性の高い製品を効率よく生産・販売する可能性があります。また、競合品や後発品の参入リスクに加え、従来の医薬の範囲を超えた治療手段の進展などライフサイエンス分野での新たな技術・脅威が台頭しております。このような状況におきまして、当社グループ医薬品や開発候補品が対象とする疾患などにおける治療に大きな変化をもたらす新たな技術や治療手段が登場するなど、当社グループ製品を取り巻く環境が想定を超えて大きく変化した場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があり、実際に、2022年には、当社グループの製品についての後発医薬品の承認、発売されたため、当社の売上が減少しており、さらにこの傾向が継続する可能性があります。

・対応:当社グループは、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん・血液及びウイルス感染症領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマです。大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い希少疾病分野を中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、高付加価値で高収益を達成し、持続性のある事業展開を行います。また、特許等に基づく当社グループ製品の保護及びさらなる差別化を行ってくことにより競争力の維持に努めてまいります。

 

カ. 副作用に関するリスクについて

・リスク:医薬品は、臨床試験段階から市販後に至るまで、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。これらのうち重篤または予期せぬ副作用が発現した場合、賠償問題の発生や、状況次第では臨床試験の遅れ、開発中止に至るリスクを伴います。更に、健康被害が拡大する恐れがある場合、承認取消・販売中止に至るリスクを伴います。賠償問題に関しては、当社グループは必要な損害保険に加入することにより、このような事態が発生した場合の財政的負担を最小限に留めるべく対応していますが、賠償額が当該保険により補償される範囲を超える可能性は否定できません。このような場合は、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

・対応:国内外の安全管理情報(副作用情報等)を収集し、客観的に評価・検討・分析した結果を医療現場へ情報提供することで医薬品の適正使用を推進しております。従業員を対象とした安全管理情報についての研修等を実施、安全管理を徹底することで、患者さんの安全性リスクの最小化に努力しております。

 

キ. 製造物責任について

・リスク:医薬品の開発及び製造には、製造物責任賠償のリスクが伴います。当社グループは将来、開発したいずれかの医薬品が健康被害を引き起こした場合、または臨床試験、製造、営業若しくは販売において不適当な事項が発見された場合には、製造物責任を負い、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、製造物責任賠償請求がなされることによるイメージ低下により、当社グループ及び当社グループの医薬品に対する信頼が損なわれ、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:ライセンス先からの製品輸入に際しては厳格な規格基準に基づく受入検査を実施し、販売時に製造物責任回避に努めております。事業活動のモニタリングを適切に実施し、法令・諸基準違反など不適切な活動を早期に発見し、対応を実施する体制を取っております。必要に応じて教育・研修等の再発防止の対応を講じる体制としております。

 

ク. 製造並びに安定供給に関するリスクについて

・リスク:当社グループは、開発品の上市後、製品を安定供給することが必要となりますが、製造委託先の技術上もしくは法規制上の問題、又は火災その他の災害による操業停止等により、製品の供給が休止もしくは著しく停滞した場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

・対応:当社グループの事業継続計画(BCP)は、事業継続へ影響を及ぼす脅威(自然災害、設備事故、感染症、システム障害等)を対象とし、有事の際の速やかな業務復旧、並びに医療体制維持のための医薬品安定供給と品質確保を可能とする体制を整備しております。医薬品の安定供給においては、生産・物流拠点の分散や主要原材料の複数購買の実施といったバックアップ体制を構築することに努めるとともに、主要システムの二重化等IT基盤の強化を行っております。

 

 

 

 

② 当社グループの事業遂行上のリスク

ア. 当社グループのビジネスモデルについて

・リスク:当社グループは自社で研究設備・製造設備は保有せず、がん・血液及びウイルス感染症領域を中心とした希少疾病分野(注2)を中心に、主にヒトでPOCが確立された開発候補品を製薬企業、バイオベンチャー企業等より導入し、これらを日本並びにアジア諸国、更にはグローバルで医薬品として開発・販売することにより収益化を図るビジネスモデルを採用してきました。それに加えて今後は、抗ウイルス薬ブリンシドフォビル(BCV)に関しての独占的グローバルライセンス契約をキメリックス社と締結し、天然痘・サル痘を含むオルソポックスウイルスの疾患を除くすべての疾患を対象としたBCVの世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得したことにより、高品質の医薬品供給のための一貫体制を備えたグローバル市場を対象として事業展開をするスペシャリティ・ファーマへの転換を進めてまいります。

パイプラインの開発・販売においては、製薬企業と提携することも計画していますが、これらの条件を満たす開発候補品を継続的に導入し、また、これらの提携先企業を確保できる保証はありません。また、導入候補品(注3)については主に希少疾病分野を対象としていることから、当社グループが期待する売上高が確保できない可能性もあります。更に、ライセンスの導入元の企業が経営破綻やライセンスを第三者に譲渡することにより開発・販売の継続が困難になる可能性があります。これらのような場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。上記に加えて、医薬品業界の競争環境や、当社グループの財政状態等の変化に伴い、今後、当社グループのビジネスモデルの変更を余儀なくされる可能性があります。その場合、当社グループの事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。

・対応:がん・血液及びウイルス感染症領域における希少疾病分野の研究開発の多くは、海外では既に数々の有用な新薬が医療の現場に提供されています。しかし、これらの分野は開発に高度の専門性が求められることから、開発の難度も高く、また大手の製薬企業が事業効率の面、採算面で着手しにくいため日本を初めとするアジア諸国においては手掛けられていない空白の治療領域となっています。海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない、または使用許可が遅れる、いわゆるドラッグ・ロス、ドラッグ・ラグの問題が深刻化しております。これらの問題は、当社グループの戦略的開発領域である難治性のがん・血液及びウイルス感染症領域で特に目立っています。抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん腫により細分化されているため、各々のがん腫でみると対象患者数がそう多くはない治療領域が数多く存在します。これらの領域での新薬の開発には、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由といわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。また、ライセンス先や事業提携先との重要な契約に関しては、その締結検討段階から、ビジョンと戦略の策定、提携事業の損益管理、開発面及び営業面での投資判断、業績と主要マイルストーン管理、グローバルな上市準備等に十分な協議を行った上契約を締結します。契約締結後は、契約当事者間で定期的に課題を共有・審議する会議体を設け、事業提携を推進します。また、当局との継続的なコミュニケーションを通じた薬事リスクの管理・低減にも努力しております。

 

(注2) 希少疾病分野とは、患者数が少ない疾病分野のことで、この分野に対する医薬品は希少疾病用医薬品(Orphan Drug:オーファンドラッグ)と呼ばれます。厚生労働省はオーファンドラッグ制度を設定し、我が国において患者数が5万人未満の重篤な疾病であること、医療上特にその必要性が高いことをその指定の基準としています。当該指定を受けると、申請から承認までの期間が短縮され、再審査期間が10年になる等の優遇措置があります

 

(注3) 導入候補品とは、当社グループの開発候補品として他社より開発権等の権利取得を検討している化合物または製品を指します

 

イ. 特定の取引先への依存度について

・リスク:当社グループは、抗ウイルス薬ブリンシドフォビルについて天然痘・サル痘を含むオルソポックスウイルスの疾患を除くすべての疾患を対象とした世界全域における製造の独占的権利を所有しているものの、現時点では生産設備を持たない製薬ベンチャー企業であるため、開発品の臨床試験並びに上市後の販売においては他社より製品の供給を受けることとなります。この場合、製品供給元の財政状態、生産状況などによっては、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

・対応:技術的には、既に製品供給元より当社グループへの製造技術の移転を実施中であり、将来的に製品需要がクリティカル・マスを超えた場合には、自社生産を開始することも選択肢の一つです。

 

ウ. 開発・販売の進捗に伴う一時的収入の業績影響

・リスク:一般に当社グループのような製薬ベンチャー企業の提携においては、製品上市前の収益として、「契約一時金」「開発協力金」「マイルストーン」を見込むものとなりますが、このうちマイルストーンは所定の成果達成に基づく収益であることから極めて不安定で予測の困難な収益であり、開発の進捗に遅延等が発生した場合には当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

・対応:当社グループの中長期計画では、契約条項に基づいて一時的収入を業績に織り込んでおり、アライアンス・マネジメントの一環として緊密にフォローしております。

 

エ. 知的財産権に関するリスクについて

・リスク:当社グループは医薬品の開発活動において様々な知的所有権を使用していますが、これらは基本的に製薬企業、バイオベンチャー企業等より使用許諾を受けた権利です。しかしながら、当社グループが導入する開発候補品について、導入元企業における出願中の特許が登録に至らない可能性があります。また、当社グループが使用許諾を受けた知的所有権に優位する知的財産権が第三者によって生み出される可能性を完全に回避することは困難であり、こうした結果、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。さらには、研究機関等との共同研究に取組んでおりますが、各研究機関の方針に従って、研究成果の帰属を協議することが必要となり、必ずしも当社グループ単独で知的財産権の確保ができない場合もあります。当社グループは、今後も知的財産権に関する問題を未然に防止するため、開発候補品の導入にあたっては、弁護士との相談や特許事務所を通じた特許調査を適宜実施していきますが、第三者の知的所有権の侵害に基づく将来の係争を完全に回避することは困難であり、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループが導入する開発候補品は、必ずしも特許で保護されているとは限りません。もっとも、当社グループの開発候補品が特許を有していない場合であっても、当該開発候補品が規制当局より製造販売承認の際に再審査の指定を受けた場合には、再審査期間は後発医薬品の参入が実質的に制限されるため、一定期間市場独占的な保護を受けることとなります。

・対応:当社グループは医薬品の開発活動において様々な知的所有権を使用していますが、これらは基本的に製薬企業、バイオベンチャー企業等より使用許諾を受けた権利です。当社グループが権利の使用許諾を受けるにあたっては、慎重にデューディリジェンスを実施した上で企業選定を行い、かつ導入後も適宜モニタリングを実施しています。海外導入先の経営状況に関するリスクを管理する担当者を任命しており、定期的に情報収集・情報交換を実施しております。各地で問題が発生した場合には、アライアンス・マネジャーをハブとする海外導入先との連携により、迅速な課題解決を行っております。当社グループでは、また、知的財産係争が発生したときには、使用許諾者であるライセンス元と連携して、社内外の関係者と協力のうえ、事業への影響を最小限にとどめるよう対応しております。

 

オ. 情報管理について

・リスク:当社グループパイプラインの開発並びにその他事業遂行等に関する重要な機密情報が流出するリスクを低減するために当社グループは、役職員、科学的諮問委員会(SAB)メンバー、研究機関、外注委託先、取引先等との間で、守秘義務等を定めた契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めています。しかしながら、役職員、SABメンバー、外注委託先、取引先等によりこれが遵守されなかった場合等には、重要な機密情報が漏洩する可能性があり、このような場合には当社グループの事業や財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:当社グループは、新たなデジタル技術、法規制やガイドラインを取り込んだ情報管理に関するポリシー・ルールの整備を進めております。情報管理に関する規程等を整備して従業員に情報管理の重要性を周知徹底するとともに、セキュリティシステムの導入等の対応策を実施していることに加え、クラウド系サービス利用への対応や情報セキュリティ基盤の強化、運用の改善を図っております。

 

カ. 重要な契約に関する事項

・リスク:当社グループの事業展開上重要と考えられる契約につき、将来、期間満了、解除、その他何らかの理由により契約の終了が生じた場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

・対応:ライセンス先や事業提携先との重要な契約に関しては、その締結検討段階から、ビジョンと戦略の策定、提携事業の損益管理、開発面及び営業面での投資判断、業績と主要マイルストーン管理、グローバルな上市準備等に十分な協議を行った上契約を締結します。契約締結後は、契約当事者でステアリング・コミティを組織し、更にその傘下で専門領域を担当する複数のサブ・コミティと連携して、事業提携を推進します。また、当局との継続的なコミュニケーションを通じた薬事リスクの管理・低減にも努力しております。

 

③ 組織に関するリスク

ア.社歴が浅いことについて

・リスク:当社グループは、2005年3月に設立された、社歴の浅い企業です。また当社グループは、創業時より開発候補品の導入活動を開始し、ゼロベースから医薬品開発事業を立ち上げ、2010年8月に、創業以来初となる製品売上による収益を計上しました。今後、未だ経験していない事業上の課題が発生する可能性はありますが、当社グループの業績に影響を及ぼすような外部環境の変化を厳密に予想することは現状においては困難が伴います。従って、今後当社グループが成長を続けられるか等を予測する客観的な判断材料として過年度の経営成績だけでは、不十分な面があると考えられます。

・対応: 当社グループは、開発先行型の創薬ベンチャーであるため、多額の負の利益剰余金を計上していますが、当社グループの事業価値を評価する場合は過去の業績のみではなく、現有のパイプラインが将来創出するキャッシュ・フローに着目した経営を推進して参ります。

 

イ. 小規模組織であることについて

・リスク:当社グループの研究開発活動については、業務受託企業(CRO(注4)等)を活用することにより、比較的少人数による開発体制を敷いていますが、今後のグローバル展開を含む既存パイプラインの開発推進及び新規開発候補品のパイプライン化に伴い、更なる研究開発人員の増加を必要とする可能性があります。しかしながら、何らかの理由により業務受託企業との関係が解消された場合や、計画通りの人員の確保ができない場合、あるいは既存人員の流出が生じた場合には、当社グループの事業活動に支障が生じ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:製薬業・非製薬業、日系・外資系を問わず、有能な人材を確保し、適材適所に人員を配置したことにより組織構築と人材確保には、目途が付いたと言えます。 なお、引き続きグローバル展開を支えるために、必要に応じて、複数の海外の専門家の助言を得ながら開発及び薬事戦略の構築および個別の開発活動の検討・推進を行っております。

 

(注4) CRO(Contract Research Organization)とは、製薬企業が、自社で実施する開発業務を遅滞なく進めるために、一部の業務について委託を行う機関です。委託業務の内容としては、治験が実施計画書どおりに遂行されているかをモニタリングするモニター業務や、臨床データを管理するデータ管理業務などがあります。

 

ウ. 特定人物への依存度について

・リスク:当社の代表取締役社長の吉田文紀は、当社グループ創業者として創業当時より経営全般にわたる事業の推進者として中心的な役割を担ってまいりました。従って、何らかの理由により同氏の業務の遂行に制約が生じた場合には、当社グループの事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

・対応:会社が持続的な成長を遂げていくには、次世代の最高経営責任者の育成が重要であると認識し、今後育成プログラムを作成していきます。

最高経営責任者の後継者の候補者は、会社の本質的な存在意義を踏まえ信念をぶらすことなく、環境の変化に応じたビジョンを立てることができること、さらには、企業理念や経営ビジョンなどをコミットできることを大前提とします。

 

エ. 科学的諮問委員会(SAB)について

・リスク:当社グループは、新規開発候補品の導入評価に関する社長の諮問機関として、科学的諮問委員会(SAB)を組成し、優れた実績と経験を有すると判断される臨床医や基礎科学者を招聘しています。SABは毎年2~3回開催され、世界中から集まる膨大な導入候補品について、医療ニーズの高さや収益性などの観点も踏まえ、リスクバランスのとれたポートフォリオを構築するために、それぞれの専門の立場から活発に意見交換や議論を行っています。当社グループは、今後も優秀なSABメンバーの確保に努めてまいりますが、現在のメンバーとの間の契約が解除、期間満了、更新拒絶、その他の理由で終了するなど、何らかの理由によりメンバーの確保が困難となった場合や、メンバーの流出が生じた場合には、当社グループの開発候補品導入の推進に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:科学的諮問委員会(SAB)は第一線で関連分野における治療の研究に携わる経験豊かな社外専門家によって構成されています。社内外の専門家による、こうした“目利き”のプロセスを経て、当社グループはがん・血液及びウイルス感染症領域を中心として、製薬企業、バイオベンチャー企業等から主にヒトでPOCが確立された開発品の開発・製造・販売権を継続的に確保することにより、持続性のある事業を展開しています。この“目利き”の力に加え、がん・血液及びウイルス感染症という開発の難度が高い治療領域における当社グループの開発力について、開発候補品の提供者であるライセンサーから高い評価を得ることも導入の成否を決める重要なポイントとなります。①適切な治験計画の策定、②治療対象となる適切な治験患者の選定、③その領域における医学専門家と公正な関係を維持・構築できる、専門性の高い優秀な開発スタッフが必要となります。当社グループに取って人材が最も重要であり、がん・血液及びウイルス感染症分野で実績のある大手製薬企業の開発部門で経験を積んだ人材の確保を最重要課題として対応しています。

 

④  経営成績の推移について

ア.過年度における業績推移について

当社グループの主要な経営指標等の推移は以下のとおりです。

回次

第15期

第16期

第17期

第18期

第19期

決算年月

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

売上高(千円)

2,837,753

2,987,051

8,256,924

10,008,338

5,589,708

営業利益又は

営業損失(△)
(千円)

△4,301,615

△4,506,220

1,016,001

1,963,625

△811,668

経常利益又は

経常損失(△)
(千円)

△4,376,655

△4,615,903

1,001,133

1,999,878

△736,130

 

※第18期より連結財務諸表を作成しており、それ以前については、個別財務諸表の数値を記載しております。

・リスク:当社グループは、現在まで、第4期、第17期及び第18期を除き、研究開発費やその他一般管理費の合計が収益を上回り、営業損失、経常損失、当期純損失を計上しています。このため、損失を計上した過年度の財務経営指標は、黒字化以降の期間との業績比較を行うあるいは今後の当社グループ業績を予測するための情報としては不十分な面があります。

・対応:当社グループは、開発先行型の創薬ベンチャーであるため、多額の負の利益剰余金を計上していますが、当社グループの事業価値を評価する場合は過去の業績のみではなく、現有のパイプラインが将来創出する利益及びキャッシュ・フローにも着目すべきです。

 

イ.研究開発費の増加予測について

当社グループの過去5期間の研究開発費の推移は以下のとおりです。

回次

第15期

第16期

第17期

第18期

第19期

決算年月

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

研究開発費
(千円)

2,441,552

2,266,556

1,736,126

2,554,799

2,638,234

 

※第18期より連結財務諸表を作成しており、それ以前については、個別財務諸表の数値を記載しております。

・リスク:当社グループは、今後更に研究開発活動を推進する計画であり、抗ウイルス薬ブリンシドフォビルまたはリゴセルチブの早期の承認取得に伴う製品販売収入の確保、並びに製薬企業等との提携に基づき発生する収入等により、研究開発投資の早期回収及び経営成績の継続的な改善を図ってまいりますが、当社グループの想定どおりに早期回収及び継続的な改善が実現する保証はありません。

・対応:開発計画の策定においては、Probability of Success (POS)を考慮し、十分な検討を行った開発収支を算出しており、実現の蓋然性を高めることに努めております。

 

ウ.マイナスの繰越利益剰余金を計上していることについて

・リスク:製薬ベンチャー企業においては、臨床段階にある開発品が上市し、製品販売収入並びにロイヤリティ収入等の安定した収益を継続して計上できる体制となるまでは、多額の研究開発費用が先行して計上されることとなります。当社グループも、第4期、第17期及び第18期を除き創業以来第19期まで当期純損失を計上しており、第19期連結会計年度末には△ 28,852,303千円の利益剰余金を計上しています。当社グループは、パイプラインの開発を計画通り、迅速、効率的かつ着実に推進することと自社販売体制への移行により、当期純利益の計上を達成しましたが、将来において計画通りに当期純利益を計上できない可能性もあります。また、当社グループの事業が計画通りに進展せず、当期純利益を獲得できない場合には、マイナスの繰越利益剰余金がプラスとなる時期が遅れる可能性があります

・対応:2021年上期に治験を開始したブリンシドフォビル及び今後開発方向性を決定するリゴセルチブの収益化を達成するために開発資源を投入するとともに、並行して、新規開発候補品については、常時、複数品目の評価を継続しております。当社グループの企業価値向上に資する候補品を見出し、しかるべきタイミングで導入交渉をしてまいります。新規開発候補品の探索・評価及び交渉に当たっては今後、日本市場のみならずグローバルのライセンス権利を取得することも含めて検討を行います。これらの施策を通して、負の繰越利益剰余金の早期解消に努めます。

 

エ. 資金繰りについて

・リスク:当社グループはグローバル市場を対象として事業展開をするスペシャリティ・ファーマへの転換を目指す製薬ベンチャー企業として研究開発費用をはじめとする多額の事業展開資金を必要とします。事業計画が計画通りに進展しない等の理由から資金不足が生じた場合には、戦略提携内容の変更、新規提携契約の獲得、新株発行等の方法による資金確保に努めますが、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合には、当社グループ事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。

・対応:現時点の現預金残高に加えて31.5億円の銀行融資枠の設定により事業の継続性に問題はないと判断しています。また今回、発行可能株式総数を6,500万株から1億1,500万株に拡大し、今後の機動的かつ柔軟な資本政策の実行を可能にいたしました。今後の資金需要を想定し、資金調達と共にグローバル製薬会社との業務提携を検討いたします。

 

オ. 税務上の繰越欠損金について

・リスク:当社には現在、税務上の繰越欠損金が存在しています。そのため、現在は通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課せられておらず、今後も数年間はこの状態が続くものと想定しています。しかしながら、現在の繰越欠損金の控除制度が改正されるなどの理由により、想定よりも早期に繰越欠損金が解消され、これによる課税所得の控除が受けられなくなった場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課せられることとなり、現在想定している当期純利益若しくは当期純損失及びキャッシュ・フローの計画に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:現在多額の税務上の繰越欠損金が存在しています。一方、2021年度以降の利益及びキャッシュ・フローの黒字化達成により、仮に税制改正により、現在の想定より税負担が増加した場合でも、事業の継続性に問題はないと判断しています。

 

⑤  その他のリスク

ア.株主還元政策について

・リスク:当社は創業以来配当を実施していません。当社グループの現時点における事業ステージは、医薬品開発とグローバル展開を含む商業化及び自社販売体制の下での持続的成長に向けた先行投資の段階にあるため、今後も当面は資金を財務体質の強化及び研究開発活動の継続的な実施と新規開発候補品の導入に優先的に充当し、配当は行わない方針です。

・対応:しかしながら、当社では株主への利益還元を経営の重要な課題と認識しており、今後の経営成績及び財政状態を勘案し、将来的には利益配当についても検討してまいります。

 

イ. 潜在株式の行使による当社株式価値の希薄化について

・リスク:新規開発候補品の導入等による事業規模の拡大や予期せぬ外部環境の変化に伴う必要経費の増加または想定収益の変動により、次期見通し及び中長期事業計画の想定を大幅に超えた資金需要の増加が生じた場合、株式発行等による追加の資金調達を実施していく可能性があります。

当社は、当社取締役、従業員等の業績向上に対する意欲や士気を高め、また優秀な人材を確保する観点から、ストックオプション制度を導入しており、旧商法第280条ノ19、旧商法第280条ノ20及び旧商法第280条ノ21、並びに、会社法第236条、第238条、第239条及び第240条の規定に基づき、新株予約権を取締役、従業員に対して付与しています。

当社は今後も優秀な人材確保のために、同様のインセンティブプランを継続して実施する可能性があります。さらに、当社は、複数回にわたり第三者割当による新株予約権の発行により資金調達を実施しております。従って、今後付与する新株予約権の行使が行われた場合には、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。

・対応:当社取締役、従業員へのストックオプションの付与は業績向上のためのインセンティブプランの一つであり、発行予定数も限られており、株式価値の希薄化効果は限定的である上に、ストックオプションの付与が業績に貢献した場合、事業価値の向上による株価への好影響が期待できます。

 

ウ. ベンチャーキャピタルによる株式保有について

・リスク:一般的に、ベンチャーキャピタル及び投資事業組合による株式の所有目的は、株式上場後に株式を売却してキャピタルゲインを得ることにあるため、当社株主であるこれらのベンチャーキャピタル及び投資事業組合が、所有する株式の全部または一部を売却した場合には、当社株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:ベンチャーキャピタル及び投資事業組合による株式保有を抑制することが出来ない以上、機関投資家を含む安定株主を増加させる対応が必要と考えています。

 

エ.外国為替損失の発生に関するリスクについて

・リスク:当社グループは現時点では生産設備を持たずに他社より製品の供給を受けており、またパイプライン拡充のために新規開発候補品を導入する際に支払われる一時金を想定し、予め相当の金額を外貨預金あるいは外国為替先物予約にて手当をしています。これらの外貨建て資産は時価評価にて毎期財務諸表に表示していますが、将来の為替変動によってその評価損失が発生するリスクがあり、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:外貨建取引では、輸入品価格決定に為替レート連動条項を付すだけでなく、デリバティブ等により為替リスクヘッジを行い為替変動リスクの低減を図っております。

 

オ. 自然災害等に関するリスクについて

・リスク:当社グループが事業展開している地域や拠点において、災害(地震、台風、火災等)・疫病等が発生し、当社グループ製品の製造、輸入、日本における検査及び出荷、流通業者への販売のサプライチェーンにおいて問題が生じ、業務停止及び遅延が生じた場合、社会的信用の失墜や、補償などによって、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:当社グループの事業継続計画(BCP)は、事業継続へ影響を及ぼす脅威(自然災害、設備事故、感染症、システム障害等)を対象とし、有事の際の速やかな業務復旧、並びに医療体制維持のための医薬品安定供給と品質確保を可能とする体制を整備しております。医薬品の安定供給においては、生産・物流拠点の分散や主要原材料の複数購買の実施といったバックアップ体制を構築することに努めるとともに、主要システムの二重化等IT基盤の強化を行っております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析の検討内容は次のとおりであります。

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(業績等の概要)

(1)事業の進捗の状況

①  当期の経営成績

当社グループは、2020年12月に自社によるトレアキシン®(一般名:ベンダムスチン塩酸塩又はベンダムスチン塩酸塩水和物)の販売を開始し、2021年度の最重要課題である収益化を達成しました。

全国流通体制を確立するため株式会社スズケン及び東邦薬品株式会社との間で両者を総代理店とする医薬品売買に関する取引基本契約を締結、全国流通体制を構築しております。物流につきましては、株式会社エス・ディ・コラボと提携し、東日本地域と西日本地域の2拠点に物流センターを設置しております。また、全国に医薬情報担当者を配置することで、より科学的な情報提供ができる体制を確立しております。

2022年度においては、トレアキシン®点滴静注液100mg/4mL[RTD (Ready-To-Dilute)製剤]の投与時間を10分間に短縮するRI(急速静注)投与について、2022年2月に承認事項一部変更承認(一変承認)を取得しました。RTD製剤は、従来の凍結乾燥製剤(FD製剤)に比べて手動による煩雑な溶解作業に要する時間を短縮することができ、さらに、RI投与により投与時間が従来の60分から10分へと大幅に短縮されるため、患者さん及び医療従事者の負担を大幅に低減することが可能となります。また、輸液量も50mLと、従来の250mLから大幅に少なくなることから塩分量も軽減できます。

RI投与については、2023年12月末時点において90%を超す医療施設で患者さんに投与が行われており、RI投与への切り替えが進んでおります。

営業活動につきましては、新型コロナウイルス感染症等の流行により、血液腫瘍患者、特に悪性リンパ腫患者への感染リスクの増大と、ベンダムスチン治療中もしくは治療後に感染の遷延や重症化を引き起こす可能性を懸念し、ベンダムスチンの処方が控えられている状況は続いておりました。この結果、ベンダムスチンとリツキシマブの併用療法(以下「BR療法」)及びベンダムスチンとリツキシマブ(遺伝子組換え)、ポラツズマブベドチン(遺伝子組換え)との併用療法(以下「Pola-BR療法」)の再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(以下「r/r DLBCL」)の適応追加によるr/r DLBCLの売上により、売上高は5,589,708千円(前年同期比44.1%減)となりました。

販売費及び一般管理費は、研究開発費として2,638,234千円(前年同期比3.3%増)を計上し、その他の販売費及び一般管理費との合計では5,222,681千円(前年同期比7.3%減)となりました。

これらの結果、営業損失は811,668千円(前年同期は営業利益1,963,625千円)、経常損失は736,130千円(前年同期は経常利益1,999,878千円)、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づく回収可能性を検討した結果による減損損失等として560,590千円を計上したこと、繰延税金資産の取り崩しにより法人税等調整額を744,728千円計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は1,962,817千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益1,179,238千円)となりました。

2022年2月に当社製品トレアキシン®RTD製剤を先発医薬品とする後発医薬品の製造販売承認を4社が取得し、内2社が後発医薬品の販売を開始しました。その後、両社がRI(急速静注)の承認を得て販売を開始したことを期して、当該製品のライセンス元であるイーグル社の持つ特許に対する侵害及び当社が同製品について有する独占的な特許実施権に対する侵害の可能性が生じたことから、ライセンス元であるイーグル社と協議し、2022年12月に、イーグル社と共同でファイザー株式会社及び東和薬品株式会社に対して特許権侵害に基づく後発医薬品の製造販売の差止及び損害賠償請求訴訟を提起いたしました。両社に対する裁判は現在係属中であり、権利保全を目的として鋭意対応中です。

なお、当社グループの事業は医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。

 

②  研究開発活動

当連結会計年度においては、各開発パイプラインにおいて、以下のとおり研究開発を推進しました。

(ⅰ) 抗がん剤SyB L-0501(FD製剤)/ SyB L-1701(RTD製剤)/ SyB L-1702(RI投与)(一般名:ベンダムスチン塩酸塩又はベンダムスチン塩酸塩水和物、製品名:トレアキシン®

イーグル社から導入したRTD製剤についてRI投与の安全性に関する臨床試験が終了し、2022年2月に一変承認を取得しました。これによってRTD製剤のすべての適応症への投与方法としてRI投与が可能となりました。

また、トレアキシン®に関しては、東京大学や京都大学との共同研究等に積極的に取り組み、新たな開発の可能性を探索してまいります。

 

(ⅱ) 抗がん剤SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:リゴセルチブナトリウム)

オンコノバ・セラピューティクス社(本社:米国ペンシルベニア州)から導入したリゴセルチブ注射剤については、リゴセルチブとトレアキシン®に関して、東京大学との共同研究及び社会連携講座の設置などを通じて、両化合物あるいは他の既存薬との併用により新たな有用性を見出すとともに新規適応症の探索を行っております。

 

(ⅲ) 抗ウイルス薬SyB V-1901(一般名:brincidofovir<ブリンシドフォビル>「BCV」)

グローバル展開を見据えキメリックス・インク社(本社:米国ノースカロライナ州、以下「キメリックス社」)から導入した抗ウイルス薬BCVの注射剤及び経口剤(SyB V-1901、以下各々「IV BCV」及び「Oral BCV」)の事業展開については、二本鎖DNAウイルス(dsDNAウイルス)に対し広範な活性を有することから、国内及び海外の専門領域の有力な研究施設と共同研究を進めており、研究成果である科学的知見を基にグローバルの臨床試験を検討、実施してまいります。

IV BCVについては、造血幹細胞移植後や臓器移植後などの免疫不全状態にある患者のアデノウイルス感染および感染症の治療を対象に、日本・アメリカ・ヨーロッパを中心としたグローバル開発を優先的に進めることを決定し、2021年3月に、主に小児対象(成人も含む)のアデノウイルス感染および感染症を対象とする前期第Ⅱ相臨床試験を開始するため、米国食品医薬品局(FDA)に治験許可申請(Investigational New Drug(IND)Application)を行いました。本開発プログラムについては、2021年4月に、FDAからファストトラック指定を受けています。2023年5月、本試験において、IV BCVの抗アデノウイルス活性を認め、ヒトPOC(Proof of Concept)を確立しました。2023年12月には、第65回米国血液学会年次総会(The 65th American Society of Hematology (ASH) Annual Meeting and Exposition)において当試験の有効性を示すポジティブ・データが口頭発表されました。また、この結果に基づき出願したアデノウイルス感染および感染症の治療に関するBCVの用途特許が2024年1月に日本において成立し登録されました。

腎移植後のBKウイルス(BKV)感染症は、腎機能低下や移植腎の喪失(グラフトロス)など深刻な経過を辿ることがあり、レシピエント、ドナー、医療者、また社会にとって深刻な結果を招く疾患ですが、2022年5月には独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)に、2022年8月にはオーストラリア保健省薬品・医薬品行政局(TGA:Therapeutic Goods Administration)に、それぞれ腎移植後のBKウイルス感染症患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験の治験計画届を提出し、オーストラリアにおける第1例目の投与(FPD:First Patient Dosing)を開始しました。一方、同試験は 2025 年の終了を計画しておりましたが、計画に対して症例集積に遅れが生じたことから、 再度研究者の方々とプロトコルの修正の検討を行います。

EBウイルス(EBV)の関連疾患であることが近年証明された難病の多発性硬化症について、2022年8月には、米国国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)に所属する国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS:National Institute of Neurological Disorders and Stroke)との間で、共同研究試料提供契約(Collaboration Agreement for The Transfer of Human Materials)を締結しました。2023年3月には、多発性硬化症の治療におけるBCVのEBウイルスに対する効果を検証し、今後の臨床試験の実施に向けて必要とされる情報を得ることを目的として共同研究開発契約(CRADA:Cooperative Research and Development Agreement)を締結し、2023年10月にはその研究成果がDr. Maria Chiara Monacoにより、イタリア・ミラノで開催された第9回ECTRIMS-ACTRIMS合同学会(9th Joint ECTRIMS-ACTRIMS Meeting)において発表されました。また、2023年4月には、米国国立衛生研究所に所属する国立アレルギー・感染症研究所(NIAID:National Institute of Allergy and Infectious Diseases)との間でEBウイルス関連リンパ増殖性疾患に対するBCVの有効性を評価する共同研究開発契約(CRADA)を締結しました。

ポリオーマウイルス、特にJCウイルス(JCV)は、dsDNAウイルスの中でも、その感染によって脳に重篤な疾患を引き起こすことが知られており、既存の抗ウイルス薬ではほとんど効果が見られないため、有効な治療薬の開発が待ち望まれています。2022年11月に米国ペンシルバニア州立大学医学部との間で試料提供契約(MTA:Material Transfer Agreement)を締結し、マウスポリオーマウイルス感染マウスモデルにおけるBCVの効果を検証する非臨床試験を開始しました。

 dsDNAウイルスの中には単純ヘルペスウイルス1型(HSV1)をはじめ水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)等、脳神経組織への指向性を有するものがあり、アルツハイマー型認知症を含めた様々な脳神経領域の重篤性疾患に、それらの潜伏しているウイルスの再活性化が関与している可能性についての研究がこの数年進み、知見が増えています。2022年12月に米国タフツ大学により確立されたヒト神経幹細胞を培養した脳組織を3次元に模倣したHSV感染・再活性化モデルを用いて、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染に対するBCVの効果を検証するための委託研究契約(Sponsored Research Agreement)を締結し、共同研究を開始しました。

BCVは高い抗ウイルス作用に加え、抗腫瘍効果も期待されており、シンガポール国立がんセンター(NCCS: National Cancer Centre Singapore)やカリフォルニア大学サンフランシスコ校脳神経外科脳腫瘍センターとの共同研究等を通じて、EBウイルス陽性リンパ腫、難治性脳腫瘍等、がん領域における新規適応症の探索も行っています。現在有効な治療方法が確立していない進行の早いNK/T細胞リンパ腫に対するBCVの治療効果に関するNCCSとの共同研究成果については、2022年12月、米国ニューオリンズで開催された第64回米国血液学会年次総会(The 64th American Society of Hematology (ASH) Annual Meeting)において口頭発表されました。さらに、2023年6月にはスイス・ルガーノで開催された第17回国際悪性リンパ腫会議(17th International Conference on Malignant Lymphoma: ICML)でBCVの抗腫瘍効果を予測するバイオマーカーに関する研究成果が発表されました。

2022年9月、キメリックス社はエマージェント・バイオソリューションズ社(本社:米国メリーランド州)へのBCVに関する権利の譲渡手続きの完了を発表しましたが、当社の取得したBCVに関する、天然痘・サル痘を含むオルソポックスウイルスの疾患を除いたすべての適応症を対象とした全世界での独占的開発・製造・販売権に対する影響はありません。

 

③  海外事業

IV BCVについて、米国においてアデノウイルス感染および感染症を対象とする第Ⅱ相臨床試験を実施中です。2023年度において、シンバイオファーマUSAの社長兼 CEOを始めとする経営幹部の採用を進め、グローバル開発体制の拡充を行いました。シンバイオファーマUSAを国際臨床試験の推進役として、BCVのグローバル開発計画を進めてまいります。

 

④  新規開発候補品の導入

当社グループは2019年に導入した抗ウイルス薬BCVのグローバル開発を推進するとともに、従来からの取り組みである複数のライセンス案件の検討を進め、新規開発候補品のライセンス権利取得に向けた探索評価の実施を通じて、収益性と成長性を兼ね備えたバイオ製薬企業として中長期的な事業価値の創造を目指してまいります。

 

⑤ 設備投資等の状況

当連結会計年度中に実施いたしました当社グループの設備投資等の総額は、232,797千円で、その主なものは、事務所設備・什器、ネットワーク機器及び業務用ソフトウエアの購入等であります。

 

⑥ 財政状態の状況

当連結会計年度末における総資産は8,170,243千円となりました。流動資産は8,082,526千円となり、主な内訳は、現金及び預金が6,517,007千円、売掛金が913,094千円、商品及び製品が231,650千円であります。

固定資産は収益予測を見直した結果、その全額を当期末にて減損しております。また、本社移転に伴う新本社の敷金及び保証金が増加し、これに対する原状回復費用を減損した結果、87,716千円となりました。

負債の部については、総額960,334千円となりました。流動負債は956,625千円となり、主な内訳は、未払金が853,825千円であります。固定負債は3,709千円となり、内訳は、退職給付に係る負債3,709千円であります。

純資産の部については、総額7,209,909千円となりました。主な内訳は、資本金が17,952,692千円、資本剰余金が17,927,584千円、新株予約権が277,044千円であります。

この結果、自己資本比率は84.9%となりました。

 

⑦ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、6,517,007千円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

税金等調整前当期純損失1,195,387千円の計上、売上債権1,171,821千円の減少、棚卸資産237,277千円の減少、未払又は未収消費税等212,814千円の減少等により、全体では194,685千円の減少となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

有形固定資産の取得による支出204,250千円、無形固定資産の取得による支出28,547千円等により、全体では376,696千円の減少となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

新株の発行による収入692,400千円等により、全体では680,160千円の増加となりました。

 

 

第18期
 2022年12月期

第19期
2023年12月期

自己資本比率(%)

77.6

84.9

時価ベースの自己資本比率(%)

243.6

127.55

債務償還年数(年)

インタレスト・カバレッジ・レシオ

 

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

債務償還年数:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

(注) 1. 当社グループは、第18期より連結財務諸表を作成しているため、第17期以前の各数値は記載しておりません。

2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しています。

3. 2022年12月期及び2023年12月期は利払いがないため、債務償還年数及びインタレスト・カバレッジ・レシオは記載していません。

 

 

⑧ 生産、受注及び販売の状況

(生産実績)

当社グループは生産を行っていないため、該当事項はありません。

 

(仕入実績)

当連結会計年度の仕入実績は次のとおりであります。

 

 

当連結会計年度

(自  2023年1月1日

至  2023年12月31日)

仕入高(千円)

前年同期比(%)

仕入

941,417

37.8

合計

941,417

37.8

 

(注) 当社グループの事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(受注実績)

当社は受注生産を行っていないため、該当事項はありません。

 

(販売実績)

当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。

 

 

当連結会計年度

(自  2023年1月1日

至  2023年12月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

商品及び製品販売

5,589,708

55.9

マイルストーン収入

合計

5,589,708

55.9

 

(注) 1.当社グループの事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントである ため、セグメント別の記載を省略しております。

     2.当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自  2022年1月1日

至  2022年12月31日)

当連結会計年度

(自  2023年1月1日

至  2023年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社スズケン

6,061,579

60.6

3,316,841

59.3

東邦薬品株式会社

3,946,758

39.4

2,272,867

40.7

 

 

 

⑨ 資本の財源及び資金の流動性について

当社グループは、新規開発品の導入と、その研究開発に対して積極的に資金を投下して参りました。

また、安定的に運転資金を確保することを目的として銀行から融資枠の設定を受けております。

当面の資金需要に関しては、事業から生じるキャッシュ・フロー及び自己資金により賄うことを基本方針としております。

一方、今後の資金需要を想定し、内部資金を充当することに加え、資金調達と共にグローバル製薬会社との業務提携を中長期的に検討いたします。

 

⑩ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社グループの経営上の重要な契約は以下のとおりであります。

(1) 技術導入等
①  SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI製剤)

 

契約書名

PRODUCT COLLABORATION AND LICENSE AGREEMENT

契約書相手方名

イーグル・ファーマシューティカルズ社(米国)

契約締結日

2017年9月19日

契約期間

製品の特許期間または市場独占期間のいずれか長い方。

主な契約内容

①  当社は、日本におけるSyB L-1701/L-1702の独占的開発権及び独占的販売権の許諾を受ける。

②  上記①の対価として、当社は契約一時金、マイルストーン及び一定料率のロイヤリティを支払う。

 

 

②  SyB L-1101 / C-1101

 

契約書名

LICENSE AGREEMENT

契約書相手方名

オンコノバ・セラピューティクス社(米国)

契約締結日

2011年7月7日

契約期間

各国、最初の製品の販売から10年(韓国は7年)または、市場独占期間または、特許権の有効期間のいずれか長い方。

主な契約内容

①  当社は、日本及び韓国におけるSyB L-1101/C-1101の独占的開発権及び独占的販売権の許諾を受ける。

②  上記①の対価として、当社は契約一時金、マイルストーン及び一定料率のロイヤリティを支払う。

 

 

③  SyB V-1901

 

契約書名

LICENSE AGREEMENT

契約書相手方名

エマージェント・バイオソリューションズ社(米国)

契約締結日

2019年9月30日

契約期間

製品の適応症例ごとに、また、国ごとに、販売開始から10年間、特許期間または市場独占期間のいずれか長い方が各ロイヤリティ期間であり、その最終の期限が到来する時点が契約期限となる。

主な契約内容

① 当社は、抗ウイルス薬ブリンシドフォビルに関して、開発・販売・製造を含めた独占的権利について世界全域を対象として許諾を受ける。(但し、天然痘疾患に関する適応は除く)

② 上記①に対し、当社は契約一時金及びロイヤリティのほか、承認取得時のマイルストーン及び販売額達成に応じたマイルストーンを支払う。

 

 

 

(2) 国際治験

SyB V-1901

 

契約書名

MASTER CLINICAL SERVICE AGREEMENT

契約書相手方名

サイネオス・ヘルス社(米国)

契約締結日

2020年12月21日

契約期間

契約締結から5年または治験終了のいずれか長い方。

主な契約内容

① 当社は、日本/アメリカ/ヨーロッパを中心としたSyB V-1901のグローバル開発における治験を委託する。

② 上記①の対価として、当社は業務委託料を支払う。

 

 

(3) その他

 

契約書名

取引基本契約書

契約書相手方名

株式会社スズケン(日本)

契約締結日

2019年11月1日

契約期間

契約締結から1年、但し、契約の変更・解約がない限り1年ごと延長。

主な契約内容

医療用医薬品の売買。

 

 

契約書名

取引基本契約書

契約書相手方名

東邦薬品株式会社(日本)

契約締結日

2019年11月1日

契約期間

契約締結から1年、但し、契約の変更・解約がない限り1年ごと延長。

主な契約内容

医療用医薬品の売買。

 

 

契約書名

Securities Purchase Agreement

契約書相手方名

CVI Investment(Grand Cayman)

契約締結日

2022年5月16日

契約期間

期限の定めなし。

主な契約内容

① シンバイオ製薬株式の第三者割当購入及び新株予約権の第三者割当購入。

② 新株予約権の発効条件の定め。

 

 

契約書名

株式発行プログラム設定契約証書

契約書相手方名

EVO FUND (Grand Cayman)

契約締結日

2023年10月6日

契約期間

期限の定めなし。

主な契約内容

EVO FUNDを割当人とする5回に分けたシンバイオ製薬株式の第三者割当購入プログラム。

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、医療上のニーズは極めて高いものの、開発の難度が高く、また大手製薬企業が事業効率面、採算面から手を出しにくいために開発が遅れている、空白の治療領域に焦点を当て、中でも高い専門性が求められ難易度が高いために参入障壁の高いがん・血液及びウイルス感染症領域に特化し、医薬品の研究開発活動を行っています。

当社グループは、新薬が開発されないことで治療上の問題を抱えている患者さんに対して、短期間で開発を行い、迅速に治療薬をお届けすることを最優先に考え、空白の治療領域を埋めるために新薬の開発・提供を行うという企業使命を果たしてまいります。

当社グループの事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は2,638,234千円であります。

 

(研究開発体制)

当社グループは研究設備を保有せず、開発候補品を他の製薬企業、バイオベンチャー企業等から導入することにより、新薬開発を行っています。開発候補化合物については、主にヒトでPOCが確立され、前臨床試験データ、臨床試験データがある化合物を対象とすることにより、開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発開始から承認取得までの期間を短縮することが可能となります。

これらの開発候補化合物の探索は、当社グループ独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用し、当社グループ内の経験を有した専門スタッフによる絞り込みを最初に行い、その後、SABにおいて、第一線でこの分野における治療の研究に携わる経験豊富な社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社において最終的な導入候補品を決定いたします。当社グループはSABを年2~3回開催し、研究開発全般に関する議論・情報交換を活発に行っています。

開発候補品の導入後は、当社グループ内の経験を有した開発スタッフが、短期間で製造販売承認を取得するための開発戦略策定とその実行等の付加価値の高い業務に専念し、その他の定型的な開発業務はCRO等のアウトソーシング先に委託しています。

なお、当社の研究開発人員数は45名となっております。今後、パイプラインの開発の進捗に伴い、必要に応じて開発人員の拡充を図ってまいります。